(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】加飾フィルム、加飾フィルムの製造方法、加飾フィルム付き3次元成形品の製造方法および含フッ素重合体組成物
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20221004BHJP
C08F 214/18 20060101ALI20221004BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B32B27/30 D
C08F214/18
B29C51/10
(21)【出願番号】P 2019560563
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2018046992
(87)【国際公開番号】W WO2019124496
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2017243772
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】尾知 修平
(72)【発明者】
【氏名】五味 智秋
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-048732(JP,A)
【文献】特開2004-307666(JP,A)
【文献】特開2005-162994(JP,A)
【文献】特開2010-174175(JP,A)
【文献】特開2010-172852(JP,A)
【文献】特開2011-098282(JP,A)
【文献】国際公開第2001/044390(WO,A1)
【文献】特表2015-509997(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168987(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079775(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 51/10
51/12
51/14
C08F214/18
C08L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム層と、架橋含フッ素重合体を含む含フッ素層とを有する加飾フィルムであって、
前記架橋含フッ素重合体が、フルオロオレフィンに基づく単位および架橋性基を有する単位を含む架橋性の重合体の架橋物であり、
前記架橋含フッ素重合体の平均架橋点間分子量が500~50,000であることを特徴とする加飾フィルム。
【請求項2】
前記架橋含フッ素重合体の平均架橋点間分子量に対する、前記架橋性の重合体の数平均分子量の比が、0.01~15である、請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項3】
前記架橋性の重合体の数平均分子量が3,000~30,000である、請求項1または2に記載の加飾フィルム。
【請求項4】
前記架橋性の重合体が含む全単位に対する、前記架橋性基を有する単位の含有量が、3~30モル%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項5】
前記架橋含フッ素重合体が、第一の架橋性基を有する前記架橋性の重合体と第二の架橋性基を有する非フッ素化合物とが、前記第一の架橋性基と第二の架橋性基のいずれにも反応し得る基を2以上有する硬化剤によって共架橋された、架橋含フッ素重合体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項6】
さらに接合層を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項7】
前記加飾フィルムが、前記接合層、前記含フッ素層、前記基材フィルムの順に配置されている構造を有し、前記含フッ素層と前記基材フィルムとが接している、請求項6に記載の加飾フィルム。
【請求項8】
前記加飾フィルムが、前記接合層、前記基材フィルム、前記含フッ素層の順に配置されている構造を有する、請求項6に記載の加飾フィルム。
【請求項9】
自動車外装部品または自動車内装部品に用いられる3次元成形品を加飾するために用いられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の加飾フィルムの製造方法であって、
前記含フッ素層を、
フルオロオレフィンに基づく単位および第一の架橋性基を有する単位を含む架橋性の重合体と、第二の架橋性基を有する非フッ素化合物と、前記第一の架橋性基および前記第二の架橋性基のいずれにも反応し得る基を2以上有する硬化剤と、を含み、前記架橋性の重合体の数平均分子量が3,000~30,000であり、前記非フッ素化合物の数平均分子量が500~30,000である組成物を用いて形成する、加飾フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記第一の架橋性基および前記第二の架橋性基がともに水酸基である、請求項10に記載の
加飾フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記架橋性の重合体の水酸基価および前記非フッ素化合物の水酸基価がともに10~150mgKOH/gである、請求項11に記載の
加飾フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載の加飾フィルムと3次元成形品の被加飾面とを減圧下で圧着し、前記含フッ素層を最表面に有する加飾フィルム付き3次元成形品を得る、加飾フィルム付き3次元成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾フィルム、加飾フィルムの製造方法、加飾フィルム付き3次元成形品の製造方法および含フッ素重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用内外装品等の分野で使用される3次元成形品の表面は、意匠性の付与や表面の保護を目的として、加飾フィルムによる加飾が施される場合がある。特許文献1には、ポリフッ化ビニリデンを含む含フッ素層を有する加飾フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の加飾フィルムは、伸長させながら、または伸長させた状態で3次元成形品に貼着する。しかしながら、特許文献1に記載のポリフッ化ビニリデンを含む含フッ素層を有する加飾フィルムを、伸長させながら、または伸長させた状態で3次元成形品に貼着したところ、加飾フィルムにシワが発生する場合があるのを知見した。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて、伸長させながら、または伸長させた状態で3次元成形品に貼着したときに、シワの発生が抑制された加飾フィルム、加飾フィルムの製造方法、加飾フィルム付き3次元成形品の製造方法および含フッ素重合体組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、含フッ素重合体を含む含フッ素層において、上記含フッ素層の平均架橋点間分子量が所定範囲内にあれば、所望の効果が得られるのを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できるのを見出した。
【0007】
[1] 基材フィルム層と、架橋含フッ素重合体を含む含フッ素層とを有する加飾フィルムであって、前記架橋含フッ素重合体が、フルオロオレフィンに基づく単位および架橋性基を有する単位を含む架橋性の重合体の架橋物であり、前記架橋含フッ素重合体の平均架橋点間分子量が500~50,000であることを特徴とする加飾フィルム。
[2] 前記架橋含フッ素重合体の平均架橋点間分子量に対する、前記架橋性の重合体の数平均分子量の比が、0.01~15である、[1]に記載の加飾フィルム。
[3] 前記架橋性の重合体の数平均分子量が3,000~30,000である、[1]または[2]に記載の加飾フィルム。
[4] 前記架橋性の重合体が含む全単位に対する、前記架橋性基を有する単位の含有量が、3~30モル%である、[1]~[3]のいずれかに記載の加飾フィルム。
【0008】
[5] 前記架橋含フッ素重合体が、第一の架橋性基を有する前記架橋性の重合体と第二の架橋性基を有する非フッ素化合物とが、前記第一の架橋性基と第二の架橋性基のいずれにも反応し得る基を2以上有する硬化剤によって共架橋された、架橋含フッ素重合体である、[1]~[4]のいずれかに記載の加飾フィルム。
[6] さらに接合層を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の加飾フィルム。
[7] 前記加飾フィルムが、前記接合層、前記含フッ素層、前記基材フィルムの順に配置されている構造を有し、前記含フッ素層と前記基材フィルムとが接している、[6]に記載の加飾フィルム。
[8] 前記加飾フィルムが、前記接合層、前記基材フィルム、前記含フッ素層の順に配置されている構造を有する、[6]に記載の加飾フィルム。
[9] 自動車外装部品または自動車内装部品に用いられる3次元成形品を加飾するために用いられる、[1]~[8]のいずれかに記載の加飾フィルム。
【0009】
[10] フルオロオレフィンに基づく単位および第一の架橋性基を有する単位を含む架橋性の重合体と、第二の橋性基を有する非フッ素化合物と、前記第一の架橋性基および前記第二の架橋性基のいずれにも反応し得る基を2以上有する硬化剤と、を含み、
前記架橋性の重合体の数平均分子量が3,000~30,000であり、前記非フッ素化合物の数平均分子量が500~30,000であることを特徴とする組成物。
[11] 前記第一の架橋性基および前記第二の架橋性基がともに水酸基である、[10]に記載の組成物。
[12] 前記架橋性の重合体の水酸基価および前記非フッ素化合物の水酸基価がともに10~150mgKOH/gである、[11]に記載の組成物。
[13] [1]~[9]のいずれかに記載の加飾フィルムの製造方法であって、前記含フッ素層を、[10]~[12]のいずれかに記載の組成物を用いて形成する、加飾フィルムの製造方法。
[14] [1]~[9]のいずれかに記載の加飾フィルムと3次元成形品の被加飾面とを減圧下で圧着し、前記含フッ素層を最表面に有する加飾フィルム付き3次元成形品を得る、加飾フィルム付き3次元成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、伸長させながら、または伸長させた状態で3次元成形品に貼着したときに、シワの発生が抑制された加飾フィルム、加飾フィルムの製造方法、加飾フィルム付き3次元成形品の製造方法および含フッ素重合体組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の加飾フィルムの層構造の一例を示す概略側面図である。
【
図2】本発明の加飾フィルムの層構造の一例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における用語の意味は以下の通りである。
本明細書において、加飾とは、意匠性の付与や表面の保護等を意味し、加飾フィルムとは、被加飾物を加飾するために用いられるフィルムを意味する。
(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリルとは、アクリルとメタクリルの総称である。また、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリレートに基づく単位を主とする重合体からなる樹脂を意味する。
単位とは、単量体が重合して直接形成された、上記単量体1分子に基づく原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。なお、重合体が含む全単位に対する、それぞれの単位の含有量(モル%)は、重合体を核磁気共鳴スペクトル(NMR)法により分析して求められる。
酸価および水酸基価は、それぞれ、JIS K 0070-3(1992)の方法に準じて測定される値である。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定される、重合体の中間点ガラス転移温度である。ガラス転移温度はTgともいう。
軟化温度は、JIS K 7196(1991)の方法に準じて測定される値である。
数平均分子量および重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される値である。数平均分子量はMnともいい、重量平均分子量はMwともいう。
【0013】
平均架橋点間分子量は、動的粘弾測定装置により測定される値である。平均架橋点間分子量はMcともいう。
具体的には、平均架橋点間分子量は、動的粘弾性測定装置(DMS7100、セイコーインスツル社製)を用いて、下記条件にて貯蔵弾性率E’(単位:Pa)を測定して、貯蔵弾性率E’の極小値(E’min)、試料の密度(p)、気体定数(R)およびE’minの絶対温度(T)から、式E’min=3pRT/Mcにより算出する。
(測定条件)
つかみ間距離:30mm
昇温速度:2℃/分
測定温度範囲:30℃~150℃
周波数:1Hz
【0014】
各層の厚さは、渦電流式膜厚計を用いて測定される値である。なお、実施例では、渦電流式膜厚計として「EDY-5000」(サンコウ電子社製品)を使用した。
加飾フィルムにおける各層の厚さは、エネルギー分散型X線分析装置を備えた走査型電子顕微鏡によって加飾フィルムの断面を観察して得られる各層の厚さの比と、加飾フィルム全体の厚さとから算出できる。
全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997に準拠し、D光源にて測定される値である。
固形分の質量とは、組成物等が溶媒を含む場合に、組成物等から溶媒を除去した質量である。なお、溶媒以外の組成物の固形分を構成する成分に関して、その性状が液体状であっても、固形分とみなす。組成物の固形分の質量は、組成物1gを130℃で20分加熱した後に残存する質量として求められる。
【0015】
本発明の加飾フィルム(以下、本加飾フィルムともいう。)は、基材フィルム層と、架橋含フッ素重合体を含む含フッ素層とを有する加飾フィルムであって、上記架橋含フッ素重合体が、フルオロオレフィンに基づく単位(以下、単位(F)ともいう。)および架橋性基を有する単位(以下、単位(1)ともいう。)を含む架橋性の重合体の架橋物であり、上記架橋含フッ素重合体のMcが500~50,000である。
なお、以下、単位(1)が有する架橋性基を第一の架橋性基ともいう。
【0016】
通常、架橋含フッ素重合体の架橋密度が上昇すると、塗膜の硬度が上昇する一方で、塗膜の伸長性が不充分になるという問題がある。また、含フッ素層の伸長性が優れる場合であっても、伸長させながら、または伸長させた状態で3次元成形品に貼着したときに、加飾フィルムにシワが生じるという新たな問題が生じる場合がある。
この問題に対して、本発明者らは、含フッ素層中の架橋含フッ素重合体のMcを所定範囲内にすれば、含フッ素層の伸長性に優れつつ、均一に伸長するのを知見した。この理由としては、架橋含フッ素重合体のMcが所定範囲内にあることで、含フッ素重合体の分子鎖間に充分な距離が確保されて、含フッ素重合体が有するフッ素原子に由来する分子間力の影響が好適となり、伸長によって生じる架橋含フッ素重合体内のエネルギーが一定方向に制御されたためと考えられる。その結果、含フッ素層の伸長性に優れるとともに、伸長性が均一になり、本加飾フィルムの伸長時におけるシワの発生が抑制されたと推測される。
【0017】
まず、本発明の加飾フィルムの構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態である加飾フィルム10の層構造を示す概略側面図である。加飾フィルム10は、接合層12、含フッ素層14、基材フィルム16を有し、各層がこの順に配置されている。
また、
図1の例では、含フッ素層14と基材フィルム16とが接するように配置されている。ただし、含フッ素層14と基材フィルム16との間に、後述する離形層を設ける場合には、含フッ素層14と基材フィルム16とは接していなくてもよい。
加飾フィルム10の接合層12と3次元成形品(後述)の被加飾面とを減圧下で圧着し、次いで基材フィルム16を加飾フィルム10から剥離することで、含フッ素層14、接合層12、3次元成形品の順に配置された加飾フィルム付き3次元成形品が得られる。このように、含フッ素層14は、加飾フィルム付き3次元成形品の最表面に位置する。
含フッ素層14は、後述する含フッ素重合体を含むため、基材フィルム16との離形性に優れる。
【0018】
図2は、本発明の他の実施形態である加飾フィルム100の層構造を示す概略側面図である。加飾フィルム100は、接合層120、基材フィルム160、含フッ素層140を有し、各層がこの順に配置されている。
加飾フィルム100の接合層120と3次元成形品(後述)の被加飾面とを減圧下で圧着することで、含フッ素層140、基材フィルム160、接合層120、3次元成形品の順に配置された加飾フィルム付き3次元成形品が得られる。このように、含フッ素層140は、加飾フィルム付き3次元成形品の最表面に位置する。
【0019】
図1および
図2では示していないが、加飾フィルムの意匠性等を向上させるために、加飾フィルムは意匠層を有してもよい。意匠層は、接合層と含フッ素層との間に配置されるのが好ましい。
具体的には、
図1の加飾フィルム10が意匠層を有する場合、接合層12、意匠層、含フッ素層14、基材フィルム16の順に配置される態様が挙げられる。
また、
図2の加飾フィルム100が意匠層を有する場合、接合層120、意匠層、基材フィルム160、含フッ素層140の順に配置される態様、および、接合層120、基材フィルム160、意匠層、含フッ素層140の順に配置される態様が挙げられる。
なお、接合層、基材フィルム、または含フッ素層が意匠層を兼ねていてもよく、この場合には意匠層は設けなくてもよい。
また、
図1および
図2の例では、加飾フィルム10が接合層12を有する場合を例示として挙げて説明したが、これに限定されず、本加飾フィルムを3次元成形品に貼着できるのであれば、本加飾フィルムは接合層を有しなくてもよい。
つまり、本加飾フィルムは、基材フィルムと、含フッ素層とを少なくとも有すればよい。
【0020】
本加飾フィルムは、3次元成形品との密着性の点から、接合層を有するのが好ましい。
接合層は、本加飾フィルムと3次元成形品を接着させる層であり、接合性樹脂を含むのが好ましい。接合性樹脂の具体例としては、接着性樹脂、融着性樹脂、粘着性樹脂等が挙げられる。接合層は、例えば、接合性樹脂や、熱等により反応して接合性樹脂となる成分を含む組成物を用いて形成できる。なお、以下、熱等により反応して接合性樹脂となる成分を含む組成物を組成物(a)ともいう。
接合性樹脂としては、熱融着性樹脂、熱架橋性樹脂が好ましい。
熱融着性樹脂の場合は、熱軟化した樹脂を3次元成形品の表面に接した状態で冷却固化させて、その表面に接合できる。熱架橋性樹脂の場合は、樹脂を3次元成形品の表面に接した状態で熱架橋させて、その表面に接合できる。
熱融着性樹脂の具体例としては、軟化温度の低い部分架橋熱融着性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられる。熱融着性樹脂を含む接合層は、熱融着性樹脂や組成物(a)を用いて形成できる。例えば、ポリオールとポリイソシアネートを含む組成物(a)を用いて、熱融着性ポリウレタン樹脂を含む接合層を形成できる。
【0021】
熱融着性樹脂の軟化温度は、本加飾フィルムの耐ブロッキング性および成形性の点から、20~100℃が好ましく、25~90℃が特に好ましい。
熱融着性樹脂のMwは、成膜性および接着性の点から、5,000~150,000が好ましく、6,000~130,000が特に好ましい。
熱融着性樹脂としては、3次元成形品との接着性が優れる点から、熱融着性の、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂、ブチラール樹脂等が好ましい。
【0022】
接合性樹脂は、主剤の樹脂と硬化剤を含む熱架橋性樹脂であってもよい。このような熱架橋性樹脂としては、固体ポリオールや固体状のヒドロキシ末端ポリウレタンプレポリマーと、固体ポリイソシアネートや固体ブロック化ポリイソシアネートとを含む熱架橋性ウレタン樹脂、固体ポリエポキシドと固体エポキシ樹脂硬化剤とを含むエポキシ樹脂等が挙げられる。
組成物(a)は、上記熱架橋性樹脂を含んでもよく、熱架橋性樹脂となる成分を含むものであってもよい。
【0023】
接合層は、後述する意匠層の機能を兼ね備えていてもよい。この場合、接合層に着色剤等を含ませれば、意匠層としての機能を兼ね備えた接合層が得られる。
【0024】
接合層は、上記以外の成分を含んでいてもよい。上記以外の成分の具体例としては、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、酸化防止剤、表面調整剤、レベリング剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、導電性充填剤が挙げられる。
接合層の厚さは、成膜性および接着性の点から、0.001~0.1mmが好ましく、0.004~0.08mmがより好ましく、0.01~0.06mmが特に好ましい。
【0025】
組成物(a)が含んでよい成分は、上述した接合層が含んでよい成分と同様である。接合性樹脂および接合層が含んでよい成分は、水や有機溶剤等の溶媒によって接合層形成剤中に溶解していてもよく、分散していてもよい。
【0026】
基材フィルムは、加飾フィルムを製造する際に、各層を支持するための支持フィルムとして機能する。
基材フィルムを構成する材料の具体例は、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂、本発明の含フッ素重合体以外の含フッ素重合体(架橋性基を有する単量体に基づく単位を含まない含フッ素重合体。ポリフッ化ビニリデン等。)が挙げられる。これらの中でも、基材フィルム層を構成する材料は、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、(メタ)アクリル樹脂、およびポリフッ化ビニリデンからなる群より選択される1種以上を含むのが好ましい。
基材フィルムの厚さは、0.01~0.5mmが好ましく、0.02~0.3mmが特に好ましい。
【0027】
基材フィルムは、少なくとも片面に凹凸模様を有していてもよい。凹凸模様は、エンボス加工、ヘアーライン加工、ケミカルエッチング加工等の加工方法により形成できる。
基材フィルムが凹凸模様を有すれば、基材フィルムの剥離後の加飾フィルムにも凹凸模様が付されるので、凹凸模様に起因する意匠性を加飾フィルム付き3次元成形品に付与できる。
【0028】
本加飾フィルムにおける含フッ素層は、架橋含フッ素重合体を含むため、防汚性、耐久耐候性および耐薬品性等に優れる。そのため、含フッ素層を有する加飾フィルム付き3次元成形品も同様の効果を有する。
含フッ素層に含まれる架橋含フッ素重合体は、架橋性基を有する架橋性の重合体が硬化剤等によって架橋してなる硬化物である。以下、架橋含フッ素重合体を含フッ素重合体F1といい、架橋構造を有さない未硬化物である、単位(F)および単位(1)を含む架橋性の重合体を含フッ素重合体F0という。含フッ素層に含まれる架橋含フッ素重合体は、一部が含フッ素重合体F1であってもよく、全部が含フッ素重合体F1であってもよい。
また、含フッ素層は、加飾フィルム付き3次元成形品の製造に供する前に、既に一定の塗膜(層)を形成している。そのため、本加飾フィルムと3次元成形品とを貼着する際に、含フッ素層以外の層に含まれる成分の揮発を抑制できる。
含フッ素層は、例えば、後述する含フッ素重合体F0を含む組成物を用いて形成できる。
また、含フッ素層は、後述する意匠層の機能を兼ね備えていてもよい。この場合、含フッ素層に着色剤等を含ませれば、意匠層としての機能を兼ね備えた含フッ素層が得られる。
【0029】
フルオロオレフィンは、水素原子の1個以上がフッ素原子で置換されたオレフィンである。フルオロオレフィンは、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。
フルオロオレフィンの具体例としては、CF2=CF2、CF2=CFCl、CF2=CHF、CH2=CF2、CF2=CFCF3、CF2=CHCF3、CF3CH=CHF、CF3CF=CH2が挙げられらる。フルオロオレフィンとしては、CF2=CF2、CF2=CFCl、CF3CH=CHFおよびCF3CF=CH2が好ましく、共重合性の点から、CF2=CFClが特に好ましい。フルオロオレフィンは、2種以上を併用してもよい。
単位(F)の含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、本加飾フィルムの耐候性の点から、20~70モル%が好ましく、40~60モル%がより好ましく、45~55モル%が特に好ましい。
【0030】
単位(1)は、フッ素原子を含まないのが好ましい。
単位(1)が有する第一の架橋性基の具体例としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、エポキシ基、オキセタニル基が挙げられ、含フッ素層の耐衝撃性、柔軟性および耐薬品性がより向上する点から、水酸基またはカルボキシ基が好ましく、水酸基が特に好ましい。
単位(1)は、第一の架橋性基を有する単量体(以下、単量体(1)ともいう。)に基づく単位であってもよく、単位(1)を含む重合体の架橋性基を、異なる架橋性基に変換させて得られる単位であってもよい。このような単位としては、水酸基を有する単位を含む重合体に、ポリカルボン酸やその酸無水物(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、無水シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ハイミック酸等)を反応させて、水酸基の一部または全部をカルボキシ基に変換させて得られる単位が挙げられる。
単量体(1)は、2種以上を併用してもよい。
また、単量体(1)は、架橋性基の2種以上を有していてもよい。
【0031】
第一の架橋性基がカルボキシ基である単量体(1)としては、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸等が挙げられ、式X11-Y11で表される単量体(以下、単量体(11)ともいう。)が好ましい。
X11は、CH2=CH-、CH(CH3)=CH-またはCH2=C(CH3)-であり、CH2=CH-またはCH(CH3)=CH-であることが好ましい。
Y11は、カルボキシ基またはカルボキシ基を有する炭素数1~12の1価の飽和炭化水素基であり、カルボキシ基または炭素数1~10のカルボキシアルキル基であることが好ましい。
【0032】
単量体(11)の具体例としては、CH2=CHCOOH、CH(CH3)=CHCOOH、CH2=C(CH3)COOH、式CH2=CH(CH2)n1COOHで表される化合物(ただし、n1は1~10の整数を示す。)が挙げられる。
【0033】
第一の架橋性基が水酸基である単量体(1)としては、アリルアルコール、および、水酸基を有する、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、アリルアルコールまたは式X12-Y12で表される単量体(以下、単量体(12)ともいう。)が好ましい。
X12は、CH2=CHC(O)O-、CH2=C(CH3)C(O)O-、CH2=CHOC(O)-、CH2=CHCH2OC(O)-、CH2=CHO-またはCH2=CHCH2O-であり、CH2=CHO-またはCH2=CHCH2O-であることが好ましい。
Y12は、水酸基を有する炭素数2~42の1価の有機基である。上記有機基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。また、上記有機基は、環構造からなっていてもよく、環構造を含んでいてもよい。
上記有機基としては、水酸基を有する炭素数2~6のアルキル基、水酸基を有する炭素数6~8のシクロアルキレン基を含むアルキル基、水酸基を有するポリオキシアルキレン基が好ましい。
【0034】
単量体(12)の具体例としては、CH2=CHO-CH2-cycloC6H10-CH2OH、CH2=CHCH2O-CH2-cycloC6H10-CH2OH、CH2=CHOCH2CH2OH、CH2=CHCH2OCH2CH2OH、CH2=CHOCH2CH2CH2CH2OH、CH2=CHCH2OCH2CH2CH2CH2OH、CH2=CHOCH2-cycloC6H10-CH2O(CH2CH2O)15Hが挙げられる。なお、-cycloC6H10-はシクロへキシレン基を表し、(-cycloC6H10-)の結合部位は、通常1,4-である。
【0035】
含フッ素重合体F1は、含フッ素重合体F0における単位(1)の架橋性基が架橋点となって、含フッ素重合体F0間や、含フッ素重合体F0と後述する非フッ素化合物との間で架橋が形成されることによって生成する架橋物である。そのため、含フッ素層の硬度や柔軟性が向上し、その耐候性、耐水性、耐薬品性、耐熱性、伸長性等の塗膜物性が向上する。
単位(1)の含有量は、含フッ素重合体F0が含む全単位に対して、0.5~35モル%が好ましく、3~25モル%がより好ましく、5~25モル%が特に好ましく、5~20モル%が最も好ましい。単位(1)の含有量が0.5モル%以上であれば、加飾フィルムの破断強度に優れる。単位(1)の含有量が35モル%以下であれば、加飾フィルムの伸長性に優れる。
【0036】
含フッ素重合体F0は、さらに、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される、架橋性基を有さない単量体(以下、単量体(2)ともいう。)に基づく単位(以下、単位(2)ともいう。)を含むのが好ましく、フルオロオレフィンとの共重合性に優れる点から、ビニルエーテルに基づく単位を含むのが特に好ましい。
また、単位(2)は、フッ素原子を含まないのが好ましい。
【0037】
単位(2)は、式X2-Y2で表される単量体に基づく単位が好ましい。
X2は、CH2=CHC(O)O-、CH2=C(CH3)C(O)O-、CH2=CHOC(O)-、CH2=CHCH2OC(O)-、CH2=CHO-またはCH2=CHCH2O-であり、本加飾フィルムの耐候性に優れる点から、CH2=CHOC(O)-、CH2=CHCH2OC(O)-、CH2=CHO-またはCH2=CHCH2O-であることが好ましく、CH2=CHO-が特に好ましい。
【0038】
Y2は炭素数1~24の1価の炭化水素基である。1価の炭化水素基は、直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。また、1価の炭化水素基は、環構造からなっていてもよく、環構造を含んでいてもよい。また、1価の炭化水素基は、1価の飽和炭化水素基であってもよく1価の不飽和炭化水素基であってもよい。
1価の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびシクロアルキルアルキル基が好ましく、炭素数2~12のアルキル基、炭素数6~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基および炭素数6~10のシクロアルキルアルキル基が特に好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基が挙げられる。
シクロアルキル基の具体例としては、シクロヘキシル基が挙げられる。
アラルキル基の具体例としては、ベンジル基が挙げられる。
シクロアルキルアルキル基の具体例としては、シクロヘキシルメチル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
なお、シクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基のシクロアルキル部分、アリール基またはアラルキル基の水素原子は、アルキル基で置換されていてもよい。この場合、置換基としてのアルキル基の炭素数は、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基の炭素数には含めない。
【0039】
単量体(2)は、2種以上を併用してもよい。
単量体(2)の具体例としては、エチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、ピバル酸ビニルエステル、ネオノナン酸ビニルエステル(HEXION社商品名「ベオバ9」)、ネオデカン酸ビニルエステル(HEXION社商品名「ベオバ10」)、安息香酸ビニルエステル、tert-ブチル安息香酸ビニルエステル、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
単位(2)の含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、5~60モル%が好ましく、10~50モル%が特に好ましい。
【0040】
含フッ素重合体F0は、含フッ素重合体が有する全単位に対して、単位(F)と単位(1)と単位(2)とを、この順に20~70モル%、0.5~35モル%、5~60モル%含むのが好ましい。
含フッ素重合体F0のTgは、本加飾フィルムの耐擦り傷性が優れる点から、25~120℃が好ましく、30~100℃がより好ましく、40~60℃が特に好ましい。
含フッ素重合体F0のMnは、含フッ素層の追従性の点から、3,000~30,000が好ましく、5,000~25,000がより好ましく、7,000~20,000が特に好ましい。なお、含フッ素層中の含フッ素重合体F1が2種以上の含フッ素重合体F0から形成される場合、含フッ素重合体F0のMnとは、各含フッ素重合体F0のMnを各含フッ素重合体の含有量で重み付けした加重平均値を意味する。
含フッ素重合体F0の酸価は、本加飾フィルムの耐衝撃性、柔軟性および耐薬品性の点から、1~150mgKOH/gが好ましく、3~100mgKOH/gがより好ましく、5~50mgKOH/gが特に好ましい。
含フッ素重合体F0の水酸基価は、本加飾フィルムの耐衝撃性、柔軟性および耐薬品性の点から、1~150mgKOH/gが好ましく、3~100mgKOH/gがより好ましく、10~60mgKOH/gが特に好ましい。
含フッ素重合体F0は、酸価または水酸基価のどちらか一方のみを有してもよく、両方を有してもよい。
酸価および水酸基価が上記範囲内にあれば、含フッ素重合体F0のTgを好適に調整でき、また、本加飾フィルムの物性(耐衝撃性、柔軟性、耐薬品性等)が良好となる。
【0041】
本発明における含フッ素重合体F0として好ましい具体的な態様は、以下の通りである。
・CF2=CFClおよびCF2=CF2から選択される単量体に基づく単位の1種以上からなる単位(F)、カルボキシ基を有する単量体、水酸基を有するビニルエーテルおよび水酸基を有するアリルエーテルから選択される単量体に基づく単位の1種以上からなる単位(1)、ならびに架橋性基を有しないビニルエーテルおよびビニルエステルから選択される単量体に基づく単位の1種以上からなる単位(2)、からなる含フッ素重合体。
・CF2=CFClに基づく単位(F)、水酸基を有するビニルエーテルおよび水酸基を有するアリルエーテルから選択される単量体に基づく単位の1種以上からなる単位(1)、ならびに架橋性基を有しないビニルエーテルに基づく単位(2)、からなる含フッ素重合体。
・CF2=CFClに基づく単位(F)、水酸基を有するビニルエーテルおよび水酸基を有するアリルエーテルから選択される単量体に基づく単位の1種以上からなる単位(1)、ならびに架橋性基を有しないビニルエーテルに基づく単位(2)、からなる含フッ素重合体であって、含フッ素重合体F0が有する全単位に対する上記単位の含有量が、この順にそれぞれ、40~60モル%、3~30モル%、5~60モル%である含フッ素重合体。
上記態様であれば、含フッ素重合体F0が含む単位(F)と、単位(F)以外の単位と、の交互共重合率が90%以上となりやすく、本加飾フィルムの耐候性に優れると考えられる。さらに、含フッ素重合体F0中に単位(1)が均等に配置されるため、含フッ素重合体F0から形成される含フッ素重合体F1における平均架橋点間分子量を均一に設定しやすく、加飾フィルムの伸長性に優れると考えられる。さらに、含フッ素重合体F1における平均架橋点間分子量が均一となるため、含フッ素層を伸長した際に、伸長によって生じる含フッ素重合体F1内のエネルギーを一定方向に制御しやすく、加飾フィルムを伸長した際のシワを抑制しやすいと考えられる。
【0042】
含フッ素層は、2種以上の含フッ素重合体F0から形成される含フッ素重合体F1を含むのがより好ましい。2種以上の含フッ素重合体F0は、互いにTgが異なるのが好ましい。
2種以上の含フッ素重合体F0としては、前記含フッ素重合体F0のTgの好ましい範囲内で、Tgが50℃未満である含フッ素重合体F0と、Tgが50℃以上の含フッ素重合体F0と、の組み合わせが好ましい。
Tgが50℃未満である含フッ素重合体F0を用いると、本加飾フィルムの伸長性および耐擦り傷性が優れる一方で、本加飾フィルムの耐薬品性および硬度が充分でない場合がある。また、Tgが50℃以上である含フッ素重合体F0を用いると、本加飾フィルムの耐薬品性および硬度が優れる一方で、本加飾フィルムの伸長性および耐擦り傷性が充分でない場合がある。このように、本加飾フィルムにおける、伸長性および耐擦り傷性と、耐薬品性および硬度と、はトレードオフの関係にある。したがって、Tgの異なる含フッ素重合体F0の2種以上を用いれば、本加飾フィルムの伸長性および耐擦り傷性と、耐薬品性および硬度と、をバランスした状態で具備できると考えられる。
特に、本加飾フィルムの伸長性と硬度とがバランスすると、本加飾フィルムを伸長させた際の伸びの均一性が良好となり、本加飾フィルムを、伸長させながら、また伸長させた状態で3次元成形品に貼着したときに、シワの発生をより抑制できると考えられる。
上述の物性がバランスする点から、本加飾フィルムにおける、Tgが50℃以上である含フッ素重合体F0に対する、Tgが50℃未満である含フッ素重合体F0の質量比(Tgが50℃未満である含フッ素重合体F0/Tgが50℃以上である含フッ素重合体F0)は、0.1~9が好ましく、1~9がより好ましく、2~4が特に好ましい。
また、Tgが50℃以上である含フッ素重合体F0と、Tgが50℃未満である含フッ素重合体F0とのTgの差の絶対値は、5~20℃が好ましく、10~15℃が特に好ましい。
【0043】
含フッ素層中の含フッ素重合体F1の含有量は、本加飾フィルムの耐候性の点から、含フッ素層の全質量に対して、30~100質量%が好ましく、50~95質量%が特に好ましい。
【0044】
含フッ素重合体F1の架橋構造は、硬化剤等により形成される架橋構造であってもよく、電子線架橋等により直接形成される架橋構造であってもよい。架橋構造としては、硬化剤により形成される架橋構造が好ましい。架橋構造としては、硬化剤により形成される含フッ素重合体F0間の架橋構造、硬化剤により形成される含フッ素重合体F0と後述する非フッ素化合物との架橋構造が好ましい。後者の架橋構造を共架橋という。
含フッ素重合体F0と後述する非フッ素化合物との共架橋物は、第一の架橋性基を有する含フッ素重合体である含フッ素重合体F0と、第二の架橋性基を有する非フッ素化合物とが、第一の架橋性基と第二の架橋性基のいずれにも反応し得る基を2以上有する硬化剤によって共架橋された、含フッ素重合体F1である。
硬化剤は、架橋性基と反応し得る基を1分子中に2以上有する化合物である。硬化剤と、含フッ素重合体F0が含む架橋性基とが反応することで、含フッ素重合体が架橋し、含フッ素重合体F0が硬化する。硬化剤は、架橋性基と反応し得る基を、通常2~30有する。
硬化剤は、含フッ素重合体F0が有する第一の架橋性基および後述する非フッ素化合物が有する第二の架橋性基のいずれにも反応し得る基を有することが好ましい。このような基としては、含フッ素重合体F0が有する第一の架橋性基として上述した基が挙げられる。
含フッ素重合体F0および非フッ素化合物が水酸基を有する場合の硬化剤は、イソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物が好ましい。
含フッ素重合体F0および非フッ素化合物がカルボキシ基を有する場合の硬化剤は、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基またはβ-ヒドロキシアルキルアミド基を、1分子中に2以上有する化合物が好ましい。
含フッ素重合体F0および非フッ素化合物が水酸基およびカルボキシ基の両方を有する場合は、イソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物と、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基またはβ-ヒドロキシアルキルアミド基を1分子中に2以上有する化合物と、のどちらか一方のみを使用してもよく、併用してもよい。
【0045】
イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物は、ポリイソシアネート単量体またはポリイソシアネート誘導体が好ましい。
ポリイソシアネート単量体は、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートまたは芳香族ポリイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネート誘導体は、ポリイソシアネート単量体の多量体または変性体(ビウレット体、イソシアヌレート体またはアダクト体)が好ましい。
【0046】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、およびリジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、リジントリイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0047】
硬化剤は、弾性とクラックの発生の少ない塗膜が得られる点から、ポリイソシアネート単量体の変性体が好ましく、ポリイソシアネート単量体のアダクト体がより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアナートのアダクト体が特に好ましい。
【0048】
ブロック化イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物は、上述したポリイソシアネート単量体またはポリイソシアネート誘導体が有する2以上のイソシアネート基が、ブロック化剤によってブロックされている化合物が好ましい。
ブロック化剤は、活性水素を有する化合物であり、具体例としては、アルコール、フェノール、活性メチレン、アミン、イミン、酸アミド、ラクタム、オキシム、ピラゾール、イミダゾール、イミダゾリン、ピリミジン、グアニジンが挙げられる。
【0049】
エポキシ基を1分子中に2以上有する化合物の具体例としては、ビスフェノール型エポキシ化合物(A型、F型、S型等)、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ハイドロキノン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ化合物、ポリプロピレングリコール型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、グリオキザール型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物、脂環式多官能エポキシ化合物、複素環型エポキシ化合物(トリグリシジルイソシアヌレート等)が挙げられる。
【0050】
カルボジイミド基を1分子中に2以上有する化合物の具体例としては、脂環族カルボジイミド、脂肪族カルボジイミド、および芳香族カルボジイミド、ならびにこれらの多量体および変性体が挙げられる。
【0051】
オキサゾリン基を1分子中に2以上有する化合物の具体例としては、2-オキサゾリン基を有する付加重合性オキサゾリン、該付加重合性オキサゾリンの重合体が挙げられる。
【0052】
β-ヒドロキシアルキルアミド基を1分子中に2以上有する化合物の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)-アジパミド(PrimidXL-552、EMS社製)、N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシプロピル)-アジパミド(Primid QM 1260、EMS社製)が挙げられる。
【0053】
含フッ素層は、硬化触媒を含んでもよい。硬化触媒は、硬化剤を用いた際の硬化反応を促進する化合物であり、硬化剤の種類に応じて、公知の硬化触媒から選択できる。
【0054】
含フッ素層は、本加飾フィルムの伸長性がより優れる点から、第二の架橋性基を有する非フッ素化合物が共架橋してなる含フッ素重合体F1を含むのが好ましい。含フッ素層は、共架橋物である含フッ素重合体F1以外に、含フッ素重合体F0同士の架橋物や非フッ素化合物同士の架橋物が含まれていてもよい。しかし、含フッ素重合体F0と第二の架橋性基を有する非フッ素化合物と第一の架橋性基と第二の架橋性基のいずれにも反応し得る基を2以上有する硬化剤の混合物から形成される共架橋物においては、通常、これらの区別は困難である。本発明においては、この含フッ素重合体F0と非フッ素化合物と硬化剤との反応生成物を共架橋物といい、含フッ素重合体F1の範疇のものとみなす。
【0055】
第二の架橋性基を有する非フッ素化合物は、電子線架橋等により単独で架橋していてもよく、上述した硬化剤によって架橋していてもよく、上述した硬化剤によって、含フッ素重合体F0と架橋していてもよい。含フッ素層は、第二の架橋性基を有する非フッ素化合物と第一の架橋性基を有する含フッ素重合体F0と、硬化剤との共架橋構造を有するのが特に好ましい。この場合、含フッ素層中において、含フッ素重合体F0の複数の分子鎖が非フッ素化合物鎖によって互いに充分な距離を保って存在するので、含フッ素層の伸長性がより優れる。
なお、第二の架橋性基を有する非フッ素化合物は、上述の硬化剤とは異なる化合物である。第二の架橋性基は、前記第一の架橋性基と同様に硬化剤と反応し得る基である。第二の架橋性基を有する非フッ素化合物は、第二の架橋性基を2以上有するのが好ましい。第二の架橋性基の具体例としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基が挙げられ、水酸基およびカルボキシ基が好ましく、水酸基が特に好ましい。
【0056】
第二の架橋性基を有する非フッ素化合物としては、脂肪族ポリエーテル鎖を有する非フッ素化合物、脂肪族ポリエステル鎖を有する非フッ素化合物、脂肪族ポリエーテルエステル鎖を有する非フッ素化合物および脂肪族ポリカーボネート鎖を有する非フッ素化合物が好ましい。また、脂肪族ポリエーテル鎖、脂肪族ポリエステル鎖等は分岐を有する鎖であってもよい。また、上記非フッ素化合物における架橋性基の数は、2~6が好ましく、2~4がより好ましい。
脂肪族ポリエーテル鎖を有する非フッ素化合物としては、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリオキシアルキレンモノオール、それらのアルキルエーテル化物等が挙げられる。脂肪族ポリエステル鎖を有する非フッ素化合物としては、脂肪族ジカルボン酸残基と脂肪族ジオール残基とから構成されるポリエステルジオールやポリエステルジカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基から構成されるポリエステルジオールやポリエステルジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族ポリエーテルエステル鎖を有する非フッ素化合物としては脂肪族ポリエーテルジオール残基と脂肪族ジカルボン酸残基とを有するポリエーテルエステルジオール等が挙げられる。脂肪族ポリエーテル鎖を有する非フッ素化合物としては、脂肪族ジオール残基とカルボニル基とを有するポリアルキレンカーボネートジオール等が挙げられる。
分岐鎖を有する非フッ素化合物は、例えば、3価以上の多価アルコールにアルキレンオキシドを付加して得られる3価以上のポリオキシアルキレンポリオール、3価以上の脂肪族ポリカルボン酸残基または3価以上の脂肪族ポリオール残基と脂肪族ジカルボン酸残基と脂肪族ジオール残基とを有する3価以上のポリエステルポリオールやポリエステルポリカルボン酸等が挙げられる。
上記非フッ素化合物としては、本加飾フィルムの伸長性に優れる点から、2~4価のポリオキシプロピレンポリオール、脂肪族ポリエステルジオール、脂肪族ポリエステルジカルボン酸および脂肪族ポリカーボネートジオールがより好ましく、ポリオキシプロピレントリオールが特に好ましい。
【0057】
上記非フッ素化合物は、上記機能がより発揮できる点から、式:A-[(X)l(Y)m-Z]nで表される化合物(以下、化合物(1)ともいう。)が好ましい。
【0058】
Aは、n個の水酸基を有するアルコールから、上記水酸基の水素原子を除いたn価の基を表す。
nは、1~12の整数であり、2~12の整数が好ましく、2~10の整数が好ましく、2~6の整数がより好ましく、2~4が特に好ましい。
n個の水酸基を有するアルコールとしては、1個の水酸基を有するアルコールと、2個以上の水酸基を有するアルコール(以下、多価アルコールともいう。)とが挙げられる。 1個の水酸基を有するアルコールは、炭素数1~14のアルコールが好ましく、その具体例としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1ブタノール、2-ブタノール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、イソオクチルアルコール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノールが挙げられる。
多価アルコールの具体例としては、2価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール等)、3価以上の多価アルコール(グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等)が挙げられる。
n個の[(X)l(Y)m-Z]のうち、少なくとも1つの[(X)l(Y)m-Z]におけるl+mは、1以上の整数である。
なお、nが2以上の場合、少なくとも1個の[(X)l(Y)m-Z]は、l+mが0であり、かつ、Zが水素原子であってもよい。すなわち、nが2以上の場合、少なくとも1個の[(X)l(Y)m-Z]は、水素原子であってもよく、この場合、化合物(1)は、多価アルコールの残基の一部である水酸基を有する。
【0059】
Xは、-(CpH2pO)-、-(CO-CqH2qO)-、-[CO-CqH2qCOO-(CpH2pO)r]-、または、-(COO-CsH2s-O)-で表される2価の基であり、加飾フィルムの伸長性に優れる点から、-(CpH2pO)-で表される2価の基が好ましい。
-(X)l-は、-(CpH2pO)l-で表されるポリオキシアルキレン鎖、-(CO-CqH2qO)l-で表されるポリエステル鎖、-[CO-CqH2qCOO-(CpH2pO)r]l-で表されるポリエステル鎖、または、-(COO-CsH2s-O)l-で表されるポリカーボネート鎖を表す。ただし、lが2以上の場合、-(X)l-は、-(CpH2pO)-、-(CO-CqH2qO)-、-(CO-CqH2qCOO-CpH2pO)-、または、-(COO-CsH2s-O)lで表される2価の基のうち2種以上を有する鎖であってもよい。
なお、-(CpH2pO)l-の末端炭素原子の結合手はA側に結合し、末端酸素原子の結合手はY側に結合する。同様に、-(CO-CqH2qO)l-の末端カルボニル基の結合手はA側に結合し、末端酸素原子の結合手はY側に結合する。同様に、-[CO-CqH2qCOO-(CpH2pO)r]l-の末端カルボニル基の結合手はA側に結合し、末端酸素原子の結合手はY側に結合する。同様に、-(COO-CsH2s-O)l-の末端カルボニル基の結合手はA側に結合し、末端酸素原子の結合手はY側に結合する。
lは0~100の整数であり、nが2個以上の場合、2個以上の[(X)l(Y)m-Z]における各々のlは、互いに同一であっても異なっていてもよい。nが2個以上の場合、各々のlは1以上が好ましい。本発明の作用機構の観点から、各々のlは2~75が好ましく、20~70がより好ましい。
【0060】
nが2以上の場合、2個以上の-(X)l-は、互いに同一であっても異なっていてもよい。例えば、-(X)l-が-(CpH2pO)l-である場合、各-(X)l-のlが互いに異なる場合がある。また、例えば-(X)l-が-(CpH2pO)-からなる場合、各-(X)l-における、pが互いに異なる場合もある。
【0061】
Xが-(CpH2pO)-で表される基、すなわちオキシアルキレン基である場合、Xは、炭素数2~4のオキシアルキレン基である(すなわち、pは、2~4の整数である)。オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシ-1,2-ブチレン基、オキシ-2,3-ブチレン基およびオキシテトラメチレン基が好ましく、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がより好ましく、オキシプロピレン基が特に好ましい(すなわち、pは2または3の整数が特に好ましい)。
-(X)l-が2種以上のオキシアルキレン基を有する場合、異なるオキシアルキレン基の配列は、ランダム状であってもブロック状であってもよく、ランダム状部分とブロック状部分の両者を有していてもよい。
【0062】
Xが-(CO-CqH2qO)-で表される基である場合、Xは、ラクトンの開環により形成される基や、ヒドロキシカルボン酸より形成される基である。
qは2~8の整数であり、3~6の整数が好ましい。
また、qの異なる2種以上の(CO-CqH2qO)を含む鎖に関して、qの数値の調整やqの異なる(CO-CqH2qO)の割合を調整することもできる。qの異なる2種以上の(CO-CqH2qO)の配列は、ランダム状であってもブロック状であってもよい。
【0063】
Xが-[CO-CqH2qCOO-(CpH2pO)r]-で表される基である場合、Xは、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合により形成される基である。
qは2~8の整数であり、3~6の整数が好ましい。pは上述の通り、2~4の整数であり、2または3の整数が好ましい。rは、1以上の整数であり、1~100の整数が好ましい。
Xを構成する多価アルコールの具体例は、上述の通りである。また、多価アルコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールも使用できる。
Xを構成する多価カルボン酸の具体例としては、ジカルボン酸が好ましく、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸が挙げられ、アジピン酸が好ましい。
また、p、qおよびrの少なくとも1つが異なる2種以上の-[CO-CqH2qCOO-(CpH2pO)r]-を含むポリエステル鎖に関して、p、qおよびrの数値の調整や、p、qおよびrの少なくとも1つが異なる-[CO-CqH2qCOO-(CpH2pO)r]-の割合の調整をすることもできる。p、qおよびrの少なくとも1つが異なる2種以上の-[CO-CqH2qCOO-(CpH2pO)r]-の配列は、ランダム状であってもブロック状であってもよい。
【0064】
Xが-(COO-CsH2s-O)-で表される基である場合、Xは、ホスゲン法、または、ジアルキルカーボネートおよびジフェニルカーボネートの少なくとも一方を用いるカーボネート交換反応等を用い、ホスゲン、または、ジアルキルカーボネートおよびジフェニルカーボネートの少なくとも一方と多価アルコールとを反応させて形成される基である。
sは2~8の整数であり、3~6の整数が好ましい。
Xを構成する多価アルコールの具体例は、上述の通りである。
【0065】
さらに、-(X)l-は、-(CpH2pO)-と、-(CO-CqH2qO)-と、-[CO-CqH2qCOO-(CpH2pO)r]-と、-(COO-CsH2s-O)-とからなる群から選択される2種以上を含む鎖であってもよい。この場合、-(CpH2pO)-と、-(CO-CqH2qO)-と、-[CO-CqH2qCOO-(CpH2pO)r]-と、-(COO-CsH2s-O)-との配列は、ランダム状であってもブロック状であってもよい。
【0066】
Yは、-(CO-CqH2qCOO)-で表される基である。Yは、多価カルボン酸により形成される基であり、多価カルボン酸の具体例は、上述の通りである。qは、上述の通り、2~8の整数であり、3~6の整数が好ましい。
mは、0または1の整数である。
【0067】
Zは、水素原子またはアルキル基であり、水素原子が好ましい。
Zがアルキル基である場合の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
nが2個以上の場合、2個以上のZは、互いに同一であっても異なっていてもよく、少なくとも一部は水素原子であるのが好ましく、全てが水素原子であるのがより好ましい。すなわち、化合物(1)は少なくとも1個の水酸基を有する化合物であるのが好ましく、n個の水酸基を有する化合物であるのがより好ましい。
特に、nが3以上であり、かつ、3個以上のZのうちの3つが水素原子であると(すなわち、化合物(1)が3つの水酸基を有する場合)、含フッ素層の伸長性および伸びの均一性がより優れるため、本加飾フィルムの伸長時におけるシワの発生がより抑制されるので好ましい。
【0068】
化合物(1)としては、式 A-[(X)l(Y)m-Z]nにおいて、Xが-(CpH2pO)-で表される2価の基および-(CO-CqH2qO)-で表される2価の基から選択される1種以上であり、Zが水素原子であり、lが1~100の整数であり、mが0であり、nが2~12の整数であるのが好ましい。化合物(1)がこの態様であると、加飾フィルムの伸長性がより優れる。
化合物(1)としては、さらに、式 A-[(X)l(Y)m-Z]nにおいて、Xが-(CpH2pO)-で表される2価の基であり、Zが水素原子であり、lが1~100の整数であり、mが0であり、nが2~6の整数であるのが好ましい。化合物(1)がこの態様であると、加飾フィルムの伸長性に優れ、かつ耐擦り傷性にもより優れる。
【0069】
化合物(1)の具体例としては、サンニックス GP-250、サンニックス GP-400、サンニックス GP-600、サンニックス GP-700、サンニックス GP-1000、サンニックス GP-1500、サンニックス GP-3000、サンニックス GP-3000V、サンニックス GP-3030、サンニックス GP-3700M、サンニックス GP-4000(いずれも三洋化成社商品名)、ポリサイザー W-230-H、ポリサイザー W-1410-EL(いずれもDIC社商品名)、デュラノールT4692(旭化成社商品名)が挙げられる。
【0070】
第二の架橋性基を有する非フッ素化合物のMnは、200~30,000が好ましく、500~30,000がより好ましく、500~25,000がさらに好ましく、1500~20,000が特に好ましい。第二の架橋性基を有する非フッ素化合物のMnが上記範囲内にあれば、本加飾フィルムのMcを所定範囲内に調整しやすくなる。
また、第二の架橋性基を有する非フッ素化合物のMnが200~30,000の範囲であり、かつ、含フッ素重合体F0のMnが3,000~30,000の範囲であれば、本加飾フィルムを加熱した後の熱収縮を抑制しやすい。
第二の架橋性基を有する非フッ素化合物は、含フッ素重合体F0と同じ架橋性基を有するのが好ましい。つまり、第一の架橋性基と第二の架橋性基とは同一であることが好ましい。各架橋性基の種類は上述した通りであり、水酸基が好ましい。水酸基を有する場合、第二の架橋性基を有する非フッ素化合物の水酸基価は、本加飾フィルムの伸長性の点から、10~150mgKOH/gが好ましく、20~130mgKOH/gがより好ましく、30~70mgKOH/gが特に好ましい。
特に、第一の架橋性基と第二の架橋性基とがいずれも水酸基であり、含フッ素重合体F0の水酸基価および第二の架橋性基を有する非フッ素化合物の水酸基価が、ともに10~150mgKOH/gであるのが好ましい。これにより、含フッ素層のMcを後述の範囲内に調整しやすくなるため、本加飾フィルムの伸長時におけるシワの発生がより抑制される。
含フッ素層が第二の架橋性基を有する非フッ素化合物の共架橋物を含む場合、共架橋物を形成させる非フッ素化合物と含フッ素重合体F0との組合せにおける非フッ素化合物の量は、含フッ素重合体F0の100質量部に対して、0.1~90質量部が好ましく、0.5~30質量部がより好ましく、1~25質量部がさらに好ましく、3~10質量部が特に好ましい。
【0071】
含フッ素層は、紫外線吸収剤および光安定剤からなる群より選択される1種以上を含むのが好ましい。紫外線吸収剤および光安定剤としては、有機系、無機系が挙げられ、含フッ素重合体との相溶性の点から有機系が好ましい。
すなわち、含フッ素層は、有機系紫外線吸収剤と有機系光安定剤との両方を含んでもよいし、いずれか一方のみを含んでもよい。
【0072】
紫外線吸収剤は、紫外線から本加飾フィルムを保護する化合物である。
紫外線吸収剤としては、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物(好ましくは、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物)が好ましい。
有機系紫外線吸収剤の具体例としては、BASF製の「Tinuvin 326」(分子量:315.8、融点:139℃)、「Tinuvin 405」(分子量:583.8、融点:74~77℃)、「Tinuvin 460」(分子量:629.8、融点:93~102℃)、「Tinuvin 900」(分子量:447.6、融点:137~141℃)、「Tinuvin 928」(分子量:441.6、融点:109~113℃)、Clariant製の「Sanduvor VSU powder」(分子量:312.0、融点:123~127℃)、Clariant製の「Hastavin PR-25 Gran」(分子量:250.0、融点:55~59℃)が挙げられる。
紫外線吸収剤は、2種以上を併用してもよい。
含フッ素層が紫外線吸収剤を含む場合、含フッ素層の全光線透過率の点から、紫外線吸収剤の含有量は、含フッ素層の全質量に対して、0.001~10質量%が好ましく、0.1~5質量%が特に好ましい。
【0073】
光安定剤は、本加飾フィルムの耐光性を向上させる化合物である。
光安定剤としては、ヒンダードアミン化合物が好ましい。ヒンダードアミン化合物の具体例としては、BASF製の「Tinuvin 111FDL」(分子量:2,000~4,000、融点:63℃)、「Tinuvin 144」(分子量:685、融点:146~150℃)、「Tinuvin 152」(分子量:756.6、融点:83~90℃)、Clariant製の「Sanduvor 3051 powder」(分子量:364.0、融点:225℃)、Clariant製の「Sanduvor 3070 powder」(分子量:1,500、融点:148℃)、Clariant製の「VP Sanduvor PR-31」(分子量:529、融点:120~125℃)が挙げられる。
光安定剤は2種以上を併用してもよい。
トップ層が光安定剤を含む場合、光安定剤の含有量は、含フッ素層の全質量に対して、0.01~15質量%が好ましく、0.1~3質量%が特に好ましい。
【0074】
含フッ素層は、含フッ素重合体F1以外の含フッ素重合体を含んでもよく、含フッ素重合体以外の樹脂を含んでもよい。
本発明における含フッ素重合体以外の含フッ素重合体の具体例としては、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。含フッ素重合体F1以外の樹脂の具体例としては、アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0075】
含フッ素層は、必要に応じて上記以外の成分、例えば、フィラー(シリカ等の無機フィラー、樹脂ビーズ等の有機フィラー等)、着色剤(染料、有機顔料、無機顔料、金属またはマイカ等を用いた光輝顔料等)、つや消し剤、レベリング剤、表面調整剤、脱ガス剤、充填剤、熱安定剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、防錆剤、シランカップリング剤、防汚剤、低汚染化処理剤を含んでもよい。
【0076】
含フッ素重合体F1のMcは、500~50,000であり、1,000~28,000がより好ましく、1,500~20,000が特に好ましい。Mcが上記範囲内にあれば、含フッ素重合体F1の分子鎖間に充分な距離を確保できるので、含フッ素層の伸長性が優れる。
含フッ素重合体F1のMcに対する、含フッ素重合体F0のMnの比(含フッ素重合体F0のMn/含フッ素重合体F1のMc)は、0.01~15が好ましく、0.02~13がより好ましく、0.10~12が特に好ましい。上記比が上記範囲内にあれば、本加飾フィルムの伸長時におけるシワの発生がより抑制される。この理由としては、伸長によって生じる含フッ素重合体F1内のエネルギーが一定方向により制御されるためと考えられる。
【0077】
含フッ素層の厚さは、1~200μmが好ましく、5~100μmが特に好ましい。本加飾フィルムであれば、薄膜であっても、厚膜であっても、成形性に優れる。また、本加飾フィルムは、均一に伸長するため、膜厚のばらつきが少なく、色むら等の色相の差異が発生しにくいと考えられる。
含フッ素層の全光線透過率は、本発明の加飾フィルム付き3次元成形品の意匠性の点から、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。なお、上記紫外線吸収剤を用いる場合は、含フッ素層の全光線透過率が上記範囲に調節されるように添加するのが好ましい。
【0078】
含フッ素層は、含フッ素重合体F0と、第二の架橋性基を有する非フッ素化合物と、
前記架橋性の重合体が有する第一の架橋性基および前記非フッ素化合物が有する第二の架橋性基のいずれにも反応し得る基を2以上有する硬化剤と、を含む組成物を用いて形成される層であることが好ましい。このような組成物としては、後述する含フッ素重合体組成物が挙げられる。
【0079】
本加飾フィルムは、意匠層を有していてもよい。意匠層は、3次元成形品に意匠性を付与するための層である。
意匠層の具体例としては、意匠層を形成するための組成物(以下、組成物(d)ともいう。)を用いて形成された層、印刷法によって形成された層、金属蒸着法によって形成された層が挙げられる。
組成物(d)を用いて形成される意匠層は、好ましくは組成物(d)を塗布して形成される。組成物(d)に含まれる成分としては、バインダー樹脂(ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等)、着色剤(染料、有機顔料、無機顔料、金属またはマイカ等を用いた光輝顔料等)が挙げられ、該成分は溶媒(水、有機溶媒等)等に溶解または分散していてもよい。
印刷法によって形成された層は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷およびフレキソ印刷等の各印刷方法に適したインク(例えば、バインダー樹脂、着色剤、溶媒を含む)を用いて形成される。
金属蒸着法によって形成された層は、例えば、アルミニウム、インジウム、スズ等の金属を用いて形成される。
意匠層は、必要に応じて上記以外の成分を含んでいてもよく、具体的には、組成物(a)で挙げた成分、後述の含フッ素重合体組成物で挙げる成分が挙げられる。
意匠層の厚さは特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。
【0080】
本発明の加飾フィルムは、上記以外の層を有していてもよく、例えば、離形層、保護層が挙げられる。
離形層は、
図1の加飾フィルム10のように、基材フィルム16を最終的に剥離する場合に設けられ得る層である。
図1の態様では、離形層は、基材フィルム16に接するように、基材フィルム16と含フッ素層14との間に設けられるのが好ましい。離形層は、例えば、シリコーン系離型剤を用いて形成できる。
保護層は、意匠層の保護を目的として設けられ得る層であり、意匠層と接するように設けられるのが好ましい。保護層は、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ABS樹脂等の樹脂を用いて形成できる。
【0081】
本加飾フィルムを構成する基材フィルム以外の各層は、例えば、各層を構成する成分を溶媒(水、有機溶媒等)に溶解させた各組成物を調製し、所望の層上に塗布し、乾燥させて形成できる。
各層を形成するための塗布方法の具体例としては、スプレー、アプリケーター、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマコーター、ローラブラシ、はけ、へらを用いた方法が挙げられる。
各組成物を塗布した後、組成物中の溶媒を除去するため、または各組成物が硬化性の成分を含む場合は該成分を硬化させるために、加熱することが好ましい。組成物中の溶媒を除去するための加熱温度としては、0~50℃が好ましい。組成物を硬化するための加熱温度としては、50~150℃が好ましい。加熱時間は、通常1分~2週間である。
ここで、含フッ素層の形成に用いる後述の含フッ素重合体組成物が、溶媒を含まないいわゆる粉体タイプである場合、含フッ素層は、静電塗装等によっても形成できる。この場合、組成物を硬化するための加熱温度としては、100~300℃が好ましい。
また、意匠層は、上述したように、塗布以外の方法(印刷法、蒸着法)によっても形成できる。
また、含フッ素層および接合層は、予めフィルム状に成形しておき、これを任意の層にラミネートして積層させてもよい。
【0082】
本加飾フィルムは、被加飾体(例えば、後述の3次元成形品)に意匠性を付与もしくは被加飾体の表面を保護するために、好ましくは伸長させて用いられ、より好ましくは1.2倍以上伸長させて用いられる。伸長方向および伸長方法は、3次元成形品の形状、成形時の製造条件等によって適宜選択できる。上記伸長方向は、いずれの方向であってもよく、また上記伸長方法は、いずれの方法であってもよい。つまり、本加飾フィルムの伸長は、所定の一方向または全方向に本加飾フィルムを引っ張って実施してもよく、また、本加飾フィルムを適宜加熱して膨張させて実施してもよい。
【0083】
本加飾フィルムは、自動車外装部品または自動車内装部品に用いられる3次元成形品を加飾するために好適に用いられる。自動車外装部品および自動車内装部品に用いられる3次元成形品の具体例については、後述する。
【0084】
本発明の加飾フィルム付き3次元成形品(以下、本成形体ともいう。)は、本加飾フィルムと3次元成形品の被加飾面とを減圧下で圧着して得られる。
本成形体の製造方法における減圧下での圧着方法は、真空成形法(オーバーレイ成形法)とも称され、例えば両面真空成形装置を用いて実施できる。
減圧下とは、標準大気圧より圧力が低い状態を意味する。減圧下の圧力は、具体的には70kPa以下が好ましい。
本成形体は、本加飾フィルムと3次元成形品の被加飾面とを減圧下で圧着させた後、または圧着と同時に、加飾フィルムを加熱してもよい。加熱温度としては、50~150℃が好ましい。
【0085】
図1に示すような加飾フィルム10を用いる場合には、減圧下での圧着後、基材フィルムを剥離すれば、本成形体が得られる。この場合、本加飾フィルムの加熱は、基材フィルムの剥離前後のいずれのタイミングで実施してもよい。
【0086】
また、本発明の加飾フィルム付き3次元成形品は、適宜真空成形法以外の成形方法によって得てもよい。このような成形方法の具体例としては、インモールド成形、インモールド転写成形、インモールド貼合成形、オーバーレイ転写成形、オーバーレイ貼合成形、水圧転写等が挙げられる。また、成形前の3次元成形品に加飾フィルムを圧着したのち、加工して加飾フィルム付き3次元成形品を得てもよい。
【0087】
3次元成形品を構成する材料の具体例としては、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリカーボネートが挙げられる。
3次元成形品の具体例としては、ドアミラー、フロントアンダースポイラー、リヤーアンダースポイラー、サイドアンダースカート、バンパー、サイドガーニッシュ等の自動車外装部品、センターコンソール、インパネ、ドアスイッチパネル等の自動車内装部品が挙げられる。本加飾フィルムは、ディスプレイの液晶面、壁材、標識看板等にも好適に使用できる。
【0088】
本発明の含フッ素重合体組成物(以下、組成物(s)ともいう。)は、含フッ素重合体F0と、第二の架橋性基を有する非フッ素化合物と、含フッ素重合体が有する第一の架橋性基および非フッ素化合物が有する第二の架橋性基のいずれにも反応し得る基を2以上有する硬化剤と、を含み、上記含フッ素重合体F0のMnが3,000~30,000であり、上記化合物のMnが500~30,000である。
組成物(s)が含む含フッ素重合体F0は、上述した含フッ素層における含フッ素重合体F0と同様であり、好適態様も同様であるので、その説明を省略する。
組成物(s)中の含フッ素重合体の含有量は、組成物(s)の全固形分質量に対して、5~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、40~80質量%が特に好ましい。
【0089】
組成物(s)が含む硬化剤は、上述の含フッ素層において説明したとおりであり、好適態様も同様であるので、その説明を省略する。
組成物(s)における、上記硬化剤の含有量は、組成物(s)中の含フッ素重合体100質量部に対して、10~200質量部が好ましく、50~150質量部が特に好ましい。
【0090】
組成物(s)が含む、第二の架橋性基を有する非フッ素化合物は、上述の含フッ素層において説明したとおりであり、好適態様も同様であるので、その説明を省略する。
組成物(s)が第二の架橋性基を有する非フッ素化合物を含む場合、第二の架橋性基を有する非フッ素化合物の含有量は、含フッ素重合体100質量部に対して、0.1~90質量部が好ましく、0.5~30質量部がより好ましく、1~25質量部がさらに好ましく、3~10質量部が特に好ましい。
特に、本発明の組成物(s)において、含フッ素重合体F0が有する第一の架橋性基および非フッ素化合物が有する第二の架橋性基がともに水酸基であり、含フッ素重合体F0の水酸基価および上記非フッ素化合物の水酸基価がともに10~150mgKOH/gであるのが好ましい。
【0091】
また、組成物(s)は、硬化触媒、紫外線吸収剤および光安定剤からなる群より選択される1種以上、本発明における含フッ素重合体以外の含フッ素重合体、含フッ素重合体以外の樹脂、ならびに、上述した含フッ素層が含んでよい成分を含んでもよく、各々の詳細は、上述と同様であるので、その説明を省略する。
組成物(s)が紫外線吸収剤を含む場合、含フッ素層の全光線透過率の点から、紫外線吸収剤の含有量は、組成物(s)が含む全固形分の質量に対して、0.001~10質量%が好ましく、0.1~5質量%が特に好ましい。
含フッ素重合体組成物が光安定剤を含む場合、光安定剤の含有量は、組成物(s)が含む全固形分の質量に対して、0.01~15質量%が好ましく、0.1~3質量%が特に好ましい。
【0092】
組成物(s)は、均一な含フッ素層を形成できる点から、上記組成物(s)が含む各主成分を溶解または分散させる溶媒(水、有機溶剤等)を含むことが好ましい。溶媒としては有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、アルコール、ケトン、エステル、炭化水素等の溶剤が好ましい。溶媒は2種以上を併用してもよい。
組成物(s)が溶媒を含む場合、組成物(s)の全質量に対する固形分の割合は、10~90質量%が好ましく、40~80質量%が特に好ましい。
【0093】
本発明の組成物(s)から形成された含フッ素層における含フッ素重合体F1のMcは、500~50,000である。
本発明の組成物(s)から形成された含フッ素層における含フッ素重合体F1のMcに対する含フッ素重合体F0のMnの比(Mn/Mc)は、0.01~15が好ましい。
本発明の組成物(s)から形成された含フッ素層の好適態様は、上述した本加飾フィルムにおける含フッ素層と同様であるので、その説明を省略する。
【0094】
本発明の加飾フィルムであれば、架橋含フッ素重合体における平均架橋点間分子量が好適に設定されているため、被加飾品が複雑形状を有する場合や、被加飾品が大面積の部品である場合のように、加飾フィルムの伸長状態にばらつきが出る場合であっても、成形品における加飾フィルムのシワが生じにくい。特に、複雑形状を有する部品においてはフィルムのシワが、大面積の部品においては端部と中心部との表面状態の差異が問題になりやすいが、本発明の加飾フィルムであれば、上記問題を解決することができる。したがって、本発明の加飾フィルムは、複雑形状を有する場合が多い車両内装部材や、大面積の部品が多い車両外装部材に対して、特に好適に適用できる。
【実施例】
【0095】
以下、例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれらの例に限定されない。なお、後述する表中における各成分の配合量は、質量基準を示す。また、例1~4は実施例であり、例5~7は比較例である。
【0096】
<使用した成分の略称と詳細>
重合体1溶液~重合体3溶液:クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)、エチルビニルエーテル(EVE)から選択される単量体を用いて、後述の例1~3に従って製造
重合体4溶液:GK-570(ダイキン社製、テトラフルオロエチレンとビニルエステルとヒドロキシアリルエーテルの共重合体、Tg35℃)
重合体5溶液:KYNAR761(アルケマ社製、ポリフッ化ビニリデン)をN-メチル-2-ピロリドンで重合体濃度50質量%に調製したもの(Tg-40℃)
重合体6溶液:水酸基を有するアクリル樹脂をメチルエチルケトンで重合体濃度50質量%に調製したもの(Tg25℃)
【0097】
(添加剤)
硬化剤:E405-70B(イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物(アダクト体)、旭化成社製)
硬化触媒:アデカスタブBT-11(ADEKA社製)
化合物(1A):ポリエーテルポリオール(グリセリンにプロピレンオキシドを開環付加重合させ、次いでエチレンオキシドを開環付加重合させて得られた、ポリ(オキシプロピレン-オキシエチレン)トリオール。Mn3,500、水酸基価45~49mgKOH/g)
化合物(1B):デュラノールT4692(旭化成社製、脂肪族ポリカーボネートジオール。Mn2,000、水酸基価51~61mgKOH/g)
化合物2:水酸基を有するアクリル樹脂(Mn70,000、水酸基価65mgKOH/g)
紫外線吸収剤:TINUVIN384-2(BASF社製)
表面調整剤:KF69(ジメチルシリコーンオイル、信越シリコーン社製)
消泡剤:ディスパロンOX-60(楠本化成社製)
【0098】
〔重合体1の製造例〕
オートクレーブ内に、キシレン(503g)、エタノール(142g)、CTFE(387g)、CHVE(326g)、HBVE(84.9g)、炭酸カリウム(12.3g)、およびtert-ブチルペルオキシピバレートの50質量%キシレン溶液(20mL)を導入して昇温し、65℃で11時間重合した。続いて、オートクレーブ内溶液をろ過し、含フッ素重合体である重合体1を含むキシレン溶液を得たのち、酢酸ブチルにて溶媒置換して、重合体1を含む酢酸ブチル溶液(重合体1溶液、重合体濃度50質量%)を得た。
重合体1は、重合体1が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位、CHVEに基づく単位、HBVEに基づく単位をこの順に50モル%、39モル%、11モル%含む重合体であった。重合体1の水酸基価は50mgKOH/gであり、Tgは52℃であり、Mnは10,000であった。
【0099】
〔重合体2の製造例〕
使用する単量体の量を変更する以外は同様にして、含フッ素重合体である重合体2を含む酢酸ブチル溶液(重合体2溶液、重合体濃度50質量%)を得た。
重合体2は、重合体2が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位、CHVEに基づく単位、HBVEに基づく単位をこの順に50モル%、25モル%、25モル%含む重合体であった。重合体1の水酸基価は118mgKOH/gであり、Tgは45℃であり、Mnは7,000であった。
【0100】
〔重合体3の製造例〕
使用する単量体としてEVEを追加し、さらに使用する単量体の量を変更する以外は同様にして、含フッ素重合体である重合体3を含む酢酸ブチル溶液(重合体3溶液、重合体濃度50質量%)を得た。
重合体3は、重合体3が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位、EVEに基づく単位、CHVEに基づく単位、HBVEに基づく単位をこの順に50モル%、25モル%、15モル%、10モル%含む重合体であった。重合体3の水酸基価は52mgKOH/gであり、Tgは40℃であり、Mnは20,000であった。
【0101】
〔例1〕
<組成物(s)の製造>
表1の例1に記載の、「組成物(s)に含まれる成分」欄に記載の各成分を混合して組成物(s1)を得た。各成分の添加量の詳細を、後述の表1に示す。
【0102】
<加飾フィルムの製造>
基材フィルム(ポリエチレンテレフタラートフィルム)上に、組成物(s1)をアプリケーターを用いて塗布し、80℃にて5分間加熱して乾燥硬化させて、平均膜厚20μmの硬化塗膜からなる含フッ素層を形成した。
次いで、上記基材フィルムにおける、含フッ素層が形成されていない面に、組成物(d1)(TU240 FDSS、東洋インキ社製)を塗布し、80℃にて5分間加熱して、平均膜厚10μmの塗膜からなる意匠層を形成した。
次いで、上記意匠層上に、組成物(a1)(アクリル系接着剤)を塗布し、80℃にて5分間加熱して、平均膜厚20μmの塗膜からなる接合層を形成した。
上記方法により、含フッ素層、基材フィルム、意匠層、および接合層が、この順に配置されている加飾フィルム(1)を得た。
【0103】
<成形体の製造>
両面真空成形装置を用いて、加飾フィルム(1)と、基材(3次元成形品、ポリオレフィン樹脂(TSOP GP6BS、プライムポリマー社製)からなる、長さ250mm×幅100mm×厚さ3mmの平板状の樹脂成形体)とを、TOM成形(オーバーレイ成形)により、減圧下で圧着しながら140℃で1分間加熱して、加飾フィルム付き3次元成形品である成形体(1)を得た。TOM成型機の箱型の窪みの深さは、セットした加飾フィルム(1)から箱型の窪みの底面までの距離を85mmとなるように調整した。これによって、TOM成形に際して加飾フィルム(1)が1.2倍に伸長され、伸長した状態で基材に貼付される。得られた成形体(1)を、後述の評価に供した。
【0104】
〔例2~7〕
表1の例2~7に記載の成分をそれぞれ混合して、組成物(s2)~(s7)を得た。
例1において、組成物(s1)を組成物(s2)~(s7)にそれぞれ変更する以外は同様にして、加飾フィルム(2)~(7)および成形体(2)~(7)を得て、後述の評価に供した。評価結果を後述の表1に示す。なお、表1における「重合体のMn」欄、「化合物のMn」欄、および「重合体のMn/Mc」欄に記載の重合体のMcの各数値は、含フッ素層を形成するために用いた組成物中における重合体および化合物の数値である。
【0105】
<評価方法>
〔成形体の外観〕
成形体の外観を目視で確認し、成形体の外観を以下の基準に従って評価した。
S:成形体の加飾フィルム部分にシワが見られない。
A:成形体の加飾フィルム部分にシワが見られ、シワが発生している部分は、成形体の表面積に対して10%未満である。
B:成形体の加飾フィルム部分にシワが見られ、シワが発生している部分は、成形体の表面積に対して10%以上50%未満である。
C:成形体の加飾フィルム部分にシワが見られ、シワが発生している部分は、成形体の表面積に対して50%以上である。また、破れの発生が見られる。
【0106】
〔収縮率〕
加飾フィルムの収縮率を、下記方法によって評価した。
加飾フィルムを100mm×100mmに切り出し、80℃に加熱したベーキング試験装置(大栄科学精器製作所製、DK-1M)中に入れ、80℃で1時間の加熱を行ったのち、加熱した加飾フィルムを取り出し、25℃まで徐冷した。
加熱前の加飾フィルムの寸法L0と加熱冷却後の加飾フィルムの寸法L1とを測定し、下記式に従って加飾フィルムの収縮率を求めた。なお、収縮率が低いほど、加熱後の加飾フィルムにシワが生じにくい傾向がある。
収縮率(%)={(L0-L1)/L0}×100
【0107】
〔最大伸び率〕
加飾フィルムの最大伸び率を、下記方法によって評価した。
ORIENTEC TENSILON RTC-1310A(ORIENTEC社製)を用いて、加飾フィルムサイズ10mm×100mm、チャック間50mm、引っ張り速度50mm/min、引張恒温槽の温度23℃の条件にて引張試験を行い、引張方向における加飾フィルムの最大伸び率(引張試験後の長さ/引張試験前の長さ×100)(%)を測定した。
【0108】
評価結果を表1に示す。なお、例6においては、トップ塗膜中に架橋に寄与する成分が存在しないため、平均架橋点間分子量を観測しなかった。
【0109】
【0110】
表1に示すように、Mcが500~50,000の範囲内であれば(例1~4)、成形体の加飾フィルム部分におけるシワの発生が少なく、外観が良好であるのが確認された。
なお2017年12月20日に出願された日本特許出願2017-243772号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0111】
10、100 加飾フィルム
12、120 接着層
14、140 含フッ素層
16、160 基材フィルム層