(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】半導体装置製造用仮保護フィルム、リール体、及び、半導体装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20221004BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20221004BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20221004BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221004BHJP
C09J 7/25 20180101ALI20221004BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20221004BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221004BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221004BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01L23/30 Z
H01L23/14 S
C09J7/38
C09J7/25
C09J133/00
C09J11/06
B32B27/00 M
B32B27/30 A
(21)【出願番号】P 2020555602
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2019043750
(87)【国際公開番号】W WO2020096011
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2018211552
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】黒田 孝博
(72)【発明者】
【氏名】名児耶 友宏
(72)【発明者】
【氏名】友利 直己
【審査官】行武 哲太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-086614(JP,A)
【文献】国際公開第2009/044732(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/181536(WO,A1)
【文献】特開2011-190419(JP,A)
【文献】特開2004-217838(JP,A)
【文献】特開2006-312703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/14
C09J 7/38
C09J 7/25
C09J 133/00
C09J 11/06
B32B 27/00
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板及び該半導体基板に搭載された半導体素子を有する半導体装置を製造する方法において、前記半導体基板の前記半導体素子が搭載される面とは反対側の面を仮保護するための半導体装置製造用仮保護フィルムであって、
当該仮保護フィルムが、支持フィルムと、前記支持フィルムの片面又は両面上に設けられた接着層と、を備え、
前記接着層がアクリルゴムを含有し、
前記アクリルゴムの含有量が、前記接着層の質量を基準として50質量%以上であり、
前記接着層が、剥離性付与剤を更に含有し、
前記接着層の厚さが8μm以上100μm以下であり、
前記支持フィルムの厚さが10μm以上200μm以下であり、
前記仮保護フィルムを、銅合金の表面を有する銅合金板に、前記接着層が前記銅合金板に接するように25℃で貼り付け、それにより得られた貼合体を180℃で60分間及び200℃で60分間の順で加熱したときに、前記仮保護フィルムの前記銅合金板に対する90度ピール強度が、前記貼合体が加熱される前に25℃において5N/m以上で、前記貼合体が加熱された後に50℃において150N/m以下である、半導体装置製造用仮保護フィルム。
【請求項2】
前記アクリルゴムが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位と、(メタ)アクリル酸単位及び/又はアクリル酸2-ヒドロキシエチル単位と、アクリロニトリル単位とを含む共重合体であり、これら単量体単位の合計の割合が、前記アクリルゴム全体の質量に対して90質量%以上である、請求項
1に記載の半導体装置製造用仮保護フィルム。
【請求項3】
前記アクリルゴムのガラス転移温度が-50~20℃である。請求項1
又は2に記載の半導体装置製造用仮保護フィルム。
【請求項4】
前記アクリルゴムの重量平均分子量が150000~900000である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の半導体装置製造用仮保護フィルム。
【請求項5】
前記剥離性付与剤の含有量が、前記アクリルゴム100質量部に対して0.1質量部以上50質量部未満である、請求項
1~4のいずれか一項に記載の半導体装置製造用仮保護フィルム。
【請求項6】
前記剥離性付与剤が、脂肪族基及び該脂肪族基に結合したグリシジルエーテル基を有する脂肪族エポキシ化合物を含む、請求項
1~5のいずれか一項に記載の半導体装置製造用仮保護フィルム。
【請求項7】
前記接着層の前記支持フィルムとは反対側の面を覆うカバーフィルムを更に備える、請求項1~
6のいずれか一項に記載の半導体装置製造用仮保護フィルム。
【請求項8】
筒状の巻取部を有するリールと、前記巻取部に巻き取られた請求項1~
7のいずれか一項に記載の半導体装置製造用仮保護フィルムと、を備える、リール体。
【請求項9】
半導体基板の片面に、請求項1~
7のいずれか一項に記載の半導体装置製造用仮保護フィルムを、その接着層が前記半導体基板に接する向きで貼り付ける工程と、
前記半導体基板の前記仮保護フィルムとは反対側の面上に半導体素子を搭載する工程と、
前記半導体素子を封止する封止層を形成して、前記半導体基板、前記半導体素子及び前記封止層を有する封止成形体を得る工程と、
前記封止成形体から前記仮保護フィルムを剥離する工程と、
をこの順に備える、半導体装置を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造用仮保護フィルム、リール体、及び、半導体装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を封止する封止層がリードフレーム及び有機基板等の半導体用基板の一方の面側だけに設けられ、半導体用基板の裏面がむき出しになっている構造の半導体パッケージが提案されている。このような構造の半導体パッケージは、例えば、接着層を有する仮保護フィルムを開口部のある半導体用基板の裏面に貼り付けることで半導体用基板の裏面を仮保護し、その状態で半導体用基板の表面側に搭載された半導体素子を封止し、次いで仮保護フィルムを剥離する方法によって製造される。仮保護フィルムを使用することで、封止成形時に半導体用基板の裏面に封止樹脂がまわり込む等の不具合を防ぐことができる。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の製造に用いられる仮保護フィルムは、半導体用基板に対して常温で貼り付けが可能で、かつ、高温での加熱後に容易に半導体用基板から剥離できることが望ましい。しかし、常温での貼り付け性が比較的良好な仮保護フィルムの場合、例えば180℃以上の高温での加熱後、仮保護フィルムを半導体用基板から剥離し難い、又は、仮保護フィルムを剥離した後、半導体用基板上、又は封止層上に接着層の一部が残存することがあった。
【0005】
そこで、本発明は、半導体用基板に常温で容易に貼り付けできるとともに、高温で加熱された後に、半導体用基板及び封止層上の残存物の発生を抑制しながら容易に剥離できる、半導体装置製造用仮保護フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、半導体用基板及び該半導体用基板に搭載された半導体素子を有する半導体装置を製造する方法において、前記半導体用基板の前記半導体素子が搭載される面とは反対側の面を仮保護するための半導体装置製造用仮保護フィルムに関する。当該仮保護フィルムは、支持フィルムと、前記支持フィルムの片面又は両面上に設けられた接着層と、を備える。前記接着層はアクリルゴムを含有する。前記仮保護フィルムを、銅合金の表面を有する銅合金板に、前記接着層が前記銅合金板に接するように25℃で貼り付け、それにより得られた貼合体を180℃で60分間及び200℃で60分間の順で加熱したときに、前記仮保護フィルムの前記銅合金板に対する90度ピール強度が、前記貼合体が加熱される前に25℃において5N/m以上で、前記貼合体が加熱された後に50℃において150N/m以下である。
【0007】
本発明の別の一側面は、筒状の巻取部を有するリールと、前記巻取部に巻き取られた上記半導体装置製造用仮保護フィルムと、を備える、リール体に関する。
【0008】
本発明の更に別の一側面は、半導体用基板の片面に、上記半導体装置製造用仮保護フィルムを、その接着層が前記半導体用基板に接する向きで貼り付ける工程と、前記半導体用基板の前記仮保護フィルムとは反対側の面上に半導体素子を搭載する工程と、前記半導体素子を封止する封止層を形成して、前記半導体用基板、前記半導体素子及び前記封止層を有する封止成形体を得る工程と、前記封止成形体から前記仮保護フィルムを剥離する工程と、をこの順に備える、半導体装置を製造する方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体用基板に常温で容易に貼り付けできるとともに、高温で加熱された後に、封止層上の残存物の発生を抑制しながら容易に剥離できる、半導体装置製造用仮保護フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】仮保護フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書に記載される数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。実施例に記載される数値も、数値範囲の上限値又は下限値として用いることができる。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」を意味する。
【0012】
<仮保護フィルム>
図1は、一実施形態に係る仮保護フィルムを示す断面図である。
図1に示す仮保護フィルム10は、支持フィルム1と、支持フィルム1の片面上に設けられた接着層2と、から構成される。支持フィルム1の両面上に接着層が形成されていてもよい。この仮保護フィルムは、半導体基板及び半導体基板に搭載された半導体素子を有する半導体装置を製造する方法において、半導体基板の半導体素子が搭載される面とは反対側の面を仮保護するために用いられる。例えば、半導体基板(例えばリードフレーム)に搭載された半導体素子を封止する封止層を形成する工程の間、仮保護フィルムを半導体基板に貼り付けて、半導体基板を仮保護することができる。
【0013】
接着層2は、アクリルゴムを含有する。アクリルゴムは、一般に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主な単量体単位として含む共重合体である。アクリルゴムにおける(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する単量体単位((メタ)アクリル酸アルキルエステル単位)の割合が、アクリルゴム全体に対して50質量%以上であってもよい。アクリルゴムを構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、及び(メタ)アクリル酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0014】
アクリルゴムを構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル及びアクリロニトリルが挙げられる。アクリルゴムが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位と、(メタ)アクリル酸単位及び/又はアクリル酸2-ヒドロキシエチル単位と、アクリロニトリル単位とを含む共重合体であってもよく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位と、(メタ)アクリル酸単位及び/又はアクリル酸2-ヒドロキシエチル単位と、アクリロニトリル単位と、(メタ)アクリル酸グリシジル単位とを含む共重合体であってもよい。これら単量体単位から主として構成されるアクリルゴムを用いることにより、後述の所定の接着力を有する仮保護フィルムを、特に容易に得ることができる。置換基を有しないアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位と、(メタ)アクリル酸単位、アクリル酸2-ヒドロキシエチル単位、及びアクリロニトリル単位の合計の割合、又は、置換基を有しないアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位と、(メタ)アクリル酸単位、アクリル酸2-ヒドロキシエチル単位、アクリロニトリル単位、及び(メタ)アクリル酸グリシジル単位の合計の割合が、アクリルゴム全体の質量に対して90質量%以上、95質量%以上、又は97質量%以上であってもよい。
【0015】
アクリルゴムのガラス転移温度(Tg)は、接着層の常温での貼り付け性を維持する観点から、-70~40℃、-60℃~30℃、又は-50℃~20℃であってもよい。ここで、アクリルゴムのガラス転移温度は、示差走査熱量測定、示差熱測定、動的粘弾性測定、又は熱機械分析により測定される値を意味する。ガラス転移温度が、単量体単位の種類及び共重合比から求められる理論値であってもよい。
【0016】
アクリルゴムの重量平均分子量は接着層の凝集力に影響し得る。凝集力の弱い接着層は、剥離後に封止層上に残存物を発生させ易い傾向がある。係る観点から、アクリルゴムの重量平均分子量は、50000以上、100000以上、又は150000以上であってもよく、900000以下であってもよい。ここでのアクリルゴムの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される値を意味する。
【0017】
アクリルゴムは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、市販品として入手したものを用いてもよい。アクリルゴムの市販品としては、例えば、HTR-280 DR(ナガセケムテックス株式会社製、重量平均分子量80万~90万)、WS-023 EK30(ナガセケムテックス株式会社製、重量平均分子量45万~50万)が挙げられる。2種以上のアクリルゴムを組み合わせて用いてもよい。
【0018】
接着層2におけるアクリルゴムの含有量は、接着層2の質量を基準として、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上であってもよく、100質量%以下であってもよい。
【0019】
仮保護フィルム10は、常温での半導体基板への貼付け後、及び、その後の加熱処理の後に、半導体基板に対する所定の接着力を有する。仮保護フィルム10の半導体基板に対する接着力は、半導体基板の一例としてのリードフレームを想定した、銅合金の表面を有する銅合金板に対する仮保護フィルム10の90度ピール強度によって評価することができる。具体的には、仮保護フィルム10を、銅合金板に、接着層2が銅合金板に接するように25℃で貼り付け、得られた貼合体を180℃で60分間及び200℃で60分間の順で加熱したときに、仮保護フィルムの銅合金板に対する90度ピール強度が、貼合体が加熱される前に25℃において5N/m以上で、貼合体が加熱された後に50℃において150N/m以下である。貼合体が180℃で60分間及び200℃で60分間の順で加熱される前の90度ピール強度を、「常温貼付け後の接着力」ということがある。貼合体が180℃で60分間及び200℃で60分間の順で加熱された後の90度ピール強度を「加熱処理後の接着力」ということがある。
【0020】
上記貼合体を得るために、例えば、40mm×160mmのサイズを有する仮保護フィルムが、25℃の環境下で、20Nの荷重により銅合金板に圧着される。銅合金板は、例えば50mm×157mmのサイズを有する。銅合金板を構成する銅合金は、例えば、CDA194のようなCu-Fe-P系合金であってもよい。銅合金板としては、パラジウムメッキ等によって被覆されていない、銅合金の最表層を有するものが用いられる。90度ピール強度は、銅合金板に貼り付けられた仮保護フィルムを、銅合金板の主面に対して90度の方向に引き剥がしたときの、仮保護フィルムの接着層の幅10mm当たりの荷重(N/m)の最大値である。引き剥がしの速度は50mm/分である。常温貼付け後の接着力は、25℃の環境下で測定される。加熱処理後の接着力は、50℃の環境下で測定される。
【0021】
仮保護フィルムの常温貼付け後の接着力は、25℃において10N/m以上、20N/m以上又は30N/m以上であってもよく、200N/m以下、又は150N/m以下であってもよい。仮保護フィルムの加熱処理後の接着力は、50℃において100N/m以下、又は90N/m以下であってもよく、10N/m以上であってもよい。
【0022】
接着層2は、剥離性付与剤を更に含有してもよい。アクリルゴムと剥離性付与剤との組み合わせを含む接着層を用いることにより、上述の所定の接着力を有する仮保護フィルムを、特に容易に得ることができる。剥離性付与剤とは、加熱後の接着層の半導体用基板または封止層に対する接着力を、接着層が剥離性付与剤を含有しない場合と比較して低下させる成分である。接着層に剥離性付与剤に添加されると、表面に存在する官能基の影響によって半導体基板との相互作用が弱くなる、又は表面自由エネルギーが変化して濡れ性が低下するといった、接着層の最表面の状態の変化が生じる。
【0023】
剥離性付与剤は、例えば直鎖状、分岐状、又は脂環式の炭化水素基を有する脂肪族化合物を含むことができる。脂肪族化合物は、エポキシ基、ヒドロキシル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有していてもよい。脂肪族化合物が、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、及びウレイド基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有していてもよい。特に、剥離性付与剤が、脂肪族基及び脂肪族基に結合したグリシジルエーテル基を有する脂肪族エポキシ化合物を含んでいてもよい。脂肪族エポキシ化合物が2以上のエポキシ基を有していてもよく、ヒドロキシル基を更に有していてもよい。脂肪族エポキシ化合物は、炭素数2~10の炭化水素基を有していてもよい。剥離性付与剤として用いられ得る脂肪族エポキシ化合物の例としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、及びグリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の脂肪族化合物(又は脂肪族エポキシ樹脂)を含んでいてもよい。これらの脂肪族化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
剥離性付与剤が、アルコキシシリル基を有する化合物であってもよい。アルコキシシリル基を有する化合物は、例えば下記式(1)で表される。
【化1】
式(1)中、Xは、フェニル基、グリシドキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、メルカプト基、アミノ基、ビニル基、又はイソシアネート基を示し、sは0~10の整数を示し、R
11、R
12及びR
13はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示す。R
11、R
12又はR
13で示される炭素数1~10のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、及びイソブチル基が挙げられる。R
11、R
12及びR
13がそれぞれ独立にメチル基、エチル基又はペンチル基であってもよい。Xは、耐熱性の観点から、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基又はイソシアネート基であってもよく、グリシドキシ基又はメルカプト基であってもよい。
【0025】
剥離性付与剤の合計の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、0.1質量部以上で50質量部未満、40質量部以下、35質量部以下又は30質量部以下であってもよく、1質量部以上で50質量部未満、40質量部以下、35質量部以下又は30質量部以下であってもよく、3質量部以上で50質量部未満、40質量部以下、35質量部以下又は30質量部以下であってもよく、5質量部以上で50質量部未満、40質量部以下、35質量部以下又は30質量部以下であってもよく、7質量部以上で50質量部未満、40質量部以下、35質量部以下又は30質量部以下であってもよい。剥離性付与剤の含有量がこれら数値範囲内にあると、上述の所定の接着力を有する仮保護フィルムが特に得られ易い。アクリルゴム及び剥離性付与剤の含有量が、接着層の質量を基準として80~100質量%、90~100質量%又は95~100質量%であってもよい。
【0026】
接着層2は、その他の成分を更に含んでもよい。その他の成分の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤(例えば無機フィラー、導電性粒子又は顔料)、ワックス等の滑剤、粘着付与剤、可塑剤、硬化促進剤、及び蛍光色素が挙げられる。
【0027】
接着層2の厚さは、例えば1~100μmであってもよい。接着層2が厚いと、剥離後の接着層の残留物が更に抑制される傾向がある。そのため、接着層2の厚さが、2μm以上、5μm以上、6μm以上、又は8μm以上であってもよい。ワイヤボンディングにおける不具合の抑制等の観点から、接着層2の厚さは、80μm以下、又は60μm以下であってもよい。接着層2の厚さが2μmより薄くなると、接着力が不足し、工程の途中で被着体からはがれる不具合が発生することがある。接着層2の厚さが、2μm以上で80μm以下、又は60μm以下であってもよく、5μm以上で80μm以下、又は60μm以下であってもよく、6μm以上で80μm以下、又は60μm以下であってもよく、8μm以上で80μm以下、又は60μm以下であってもよい。
【0028】
支持フィルム1は、例えば、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリエーテルケトン、ポリアリレート、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、又はポリエチレンナフタレートのフィルムであってもよい。
【0029】
支持フィルム1の20~200℃における線熱膨張係数が、3.0×10-5/℃以下であってもよい。支持フィルム1の200℃で2時間加熱されたときの加熱収縮率が、0.15%以下であってもよい。例えば芳香族ポリイミドフィルムは、これらの特性を有することが多い。
【0030】
支持フィルム1は、プラズマ処理、コロナ処理、プライマ処理等の表面処理をされていてもよい。
【0031】
支持フィルム1の厚さは、仮保護フィルムを半導体基板に貼り付けた後の半導体基板の反り抑制の観点から、200μm以下、100μm以下、又は50μm以下であってもよく、10μm以上であってもよい。
【0032】
仮保護フィルムは、接着層2の支持フィルム1とは反対側の面を覆うカバーフィルムを更に備えていてもよい。カバーフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)であってもよい。カバーフィルムが剥離性層を有していてもよい。カバーフィルムの厚さは、10~100μm、又は20~100μmであってもよい。
【0033】
仮保護フィルム10は、例えば、アクリルゴムと、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の溶剤と、必要に応じて剥離性付与剤等の他の成分とを含有するワニスを支持フィルム1に塗布することと、加熱により塗膜から溶剤を除去して、支持フィルム1上に接着層2を形成することとを含む方法により、得ることができる。
【0034】
ワニスを支持フィルムに塗布する方法としては、特に制限されないが、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、コンマコート、ダイコート、減圧ダイコートを用いた方法が挙げられる。
【0035】
長尺の仮保護フィルムをリールに巻き取り、得られたリール体から仮保護フィルムを巻き出しながら、半導体装置を製造してもよい。この場合のリール体は、筒状の巻取部を有するリールと、巻取部に巻き取られた上述の実施形態に係る仮保護フィルムとを有する。
【0036】
<半導体装置の製造方法>
一実施形態に係る仮保護フィルムを用いて、例えば、半導体基板の一例としてのリードフレーム及びこれに搭載された半導体素子と、リードフレームの半導体素子側で半導体素子を封止する封止層とを有し、リードフレームの裏面が外部接続用に露出している、半導体装置を製造することができる。このような構成を有する半導体装置は、Non Lead Type Packageといわれることがある。その具体例としては、QFN(QuadFlat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)が挙げられる。
【0037】
以下、半導体装置の製造方法に関して図面を参照して具体的に説明する。ただし、本実施形態の製造方法によって得られる半導体装置は、以下に例示される構造を有するのに限定されない。
図2及び
図3は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図2及び
図3の実施形態に係る方法は、複数のダイパッド11a及びインナーリード11bを有するリードフレーム11の片面(裏面)に、仮保護フィルム10を、接着層2がリードフレーム11に接する向きで貼り付ける工程と、ダイパッド11aに半導体素子14を接着する(搭載する)工程と、半導体素子14とインナーリード11bとを接続するワイヤ12を設ける工程と、リードフレーム11の半導体素子14側の表面、半導体素子14及びワイヤ12を覆う封止層13を形成して、リードフレーム11、半導体素子14及び封止層13を有する封止成形体20を得る工程と、封止成形体20から仮保護フィルム10を剥離する工程と、封止成形体20を分割して、それぞれ1個の半導体素子14を有する半導体装置100を複数得る工程と、を含む。
【0038】
リードフレーム11への仮保護フィルム10の貼り付けは、常温(例えば、5~35℃)で行うことができる。貼り付けの方法は、特に制限されないが、例えば、ロールラミネート法であってもよい。
【0039】
リードフレーム11の材質は、特に制限されないが、例えば、42アロイ等の鉄系合金、銅、又は銅合金であってもよい。銅及び銅合金のリードフレームを用いる場合、リードフレームの表面に、パラジウム、金、銀等の被覆処理を施してもよい。封止材との密着力を向上させるため、リードフレーム表面を、物理的に粗化処理してもよい。銀ペーストのブリードアウトを防止するエポキシブリードアウト(EBO)防止処理等の化学的処理をリードフレーム表面に施してもよい。
【0040】
半導体素子14は、通常、接着剤(例えば、銀ペースト)を介してダイパッド11aに接着される。加熱処理(例えば、140~200℃、30分~2時間)によって、接着剤を硬化させてもよい。
【0041】
ワイヤ12は、特に制限されないが、例えば、金線、銅線、アルミ又はパラジウム被覆銅線であってもよい。例えば、200~270℃で3~60分加熱して超音波と押し付け圧力を利用して、半導体素子及びインナーリードをワイヤ12と接合してもよい。
【0042】
ワイヤ12によるワイヤボンディングの後、封止層13を形成する工程の前に、リードフレーム11にプラズマ処理を施してもよい。プラズマ処理により、封止層とリードフレームとの密着性をより高め、それにより半導体装置の信頼性をより向上させることができる。プラズマ処理としては、例えば、減圧条件(例えば、10Pa以下)で、アルゴン、窒素、酸素等のガスを所定のガス流量で注入して、プラズマ照射する方法が挙げられる。プラズマ処理におけるプラズマの照射出力は、例えば、10~500Wであってもよい。プラズマ処理の時間は、例えば、5~50秒間であってもよい。プラズマ処理におけるガス流量は、5~50sccmであってもよい。
【0043】
封止成形の工程では、封止材を用いて封止層13が形成される。封止成形によって、複数の半導体素子14及びそれらを一括して封止する封止層13を有する封止成形体20が得られる。封止成形の間、仮保護フィルム10が設けられていることにより、封止材がリードフレーム11の裏面側に回り込むことが抑制される。
【0044】
封止層13を形成する間の温度(封止温度)は、140~200℃であってもよく、160~180℃であってもよい。封止層を形成する間の圧力(封止圧力)は、6~15MPaであってもよく、7~10MPaであってもよい。封止成形における加熱時間(封止時間)は、1~5分であってもよく、2~3分であってもよい。
【0045】
封止材の材質は特に制限されないが、例えば、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルジエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂が挙げられる。封止材は、フィラー、難燃性物質(例えば臭素化化合物)、ワックス等の添加材を含んでもよい。
【0046】
封止層13の形成の後、得られた封止成形体20のリードフレーム11及び封止層13から、仮保護フィルム10が剥離される。封止層13を硬化する場合、仮保護フィルム10を、封止層13の硬化の前又は後のいずれの時点で剥離してもよい。
【0047】
仮保護フィルム10を剥離する際の温度は、特に制限されないが、常温(例えば、5~35℃)であってもよい。この温度は、接着層のガラス転移温度以上であってもよい。この場合、仮保護フィルムの、リードフレーム及び封止層に対する剥離性がより一層良好なものとなる。接着層中のアクリルゴムのTgが例えば、5℃以下、又は0℃以下であると、常温での良好な剥離性が得られ易い。
【0048】
一実施形態に係る仮保護フィルムを用いて製造される半導体装置は、高密度化、小面積化、薄型化等の点で優れている。そのため半導体装置を例えば、携帯電話、スマートフォン、パソコン、タブレット等の電子機器に利用することができる。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
1.仮保護フィルムの製造
1-1.塗工用ワニスの作製
表1に示す組成(単位:質量部)を有する樹脂組成物と溶剤としてのシクロヘキサノンとを混合し、混合物を攪拌して、溶剤以外の成分の濃度が12質量%であるワニスA~Eを得た。表に示すアクリルゴム及び剥離性付与剤の詳細は以下のとおりである。
アクリルゴム
・WS-023 EK30(商品名、ナガセケムテックス株式会社製、重量平均分子量:50万、ガラス転移温度(共重合比から計算される理論値):-10℃)
・HTR-280 DR(商品名、ナガセケムテックス株式会社製、重量平均分子量:90万、ガラス転移温度(共重合比から計算される理論値):-29℃)
剥離性付与剤
・EX-614B(商品名、ナガセケムテックス株式会社製、ソルビトールポリグリシジルエーテル、エポキシ当量:174)
・EX-810(商品名、ナガセケムテックス株式会社製、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量:113)
【0051】
【0052】
1-2.仮保護フィルム
支持フィルムとして、芳香族ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:UPILEX25SGADS、膜厚:25μm)を準備した。この支持フィルム上に、ワニスA、B、C、D又はEを塗布した。塗膜を90℃で2分間、及び180℃で2分間の加熱によって乾燥し、厚さ2、6、10又は60μmの接着層を形成して、実施例1~9及び比較例1、2の仮保護フィルムを得た。各実施例及び比較例におけるワニスと接着層の厚さとの組み合わせは、表2に示されるとおりである。
【0053】
2.評価
2-1.接着層の接着力
(1)常温での貼付け後の接着力
被着体として、CDA194板(Cu-Fe-P系合金、新光電気工業株式会社製)、及びCDA194パラジウムメッキ板(PPF、新光電気工業株式会社製)を準備した。これらリードフレームは、50mm×157mmのサイズを有していた。これらリードフレームに、40mm×160mmのサイズに切り出された各仮保護フィルムを、接着層がリードフレームに接する向きで、ハンドローラーを用いて25℃、荷重20Nの条件で貼り付けた。次いで、フォースゲージを用いて、25℃においてリードフレームの主面に対して90度の方向に50mm/分の速度で各仮保護フィルムを引き剥がした。そのときの接着層の幅10mm当たりの荷重の最大値(N/m)を、常温貼付け後の接着力(90度ピール強度)として記録した。
【0054】
(2)加熱処理後の接着力
被着体として、CDA194板(Cu-Fe-P系合金、新光電気工業株式会社製)、及びCDA194パラジウムメッキ板(PPF、新光電気工業株式会社製)を準備した。これらリードフレームは、50mm×157mmのサイズを有していた。これらリードフレームに、40mm×160mmのサイズに切り出された各仮保護フィルムを、接着層がリードフレームに接する向きで、ハンドローラーを用いて25℃、荷重20Nの条件で貼り付けた。得られた貼合体を、空気雰囲気下、オーブン内で、180℃で60分間、次いで200℃で60分間の加熱処理に供した。その後、フォースゲージを用いて、50℃においてリードフレームの主面に対して90度の方向に50mm/分の速度で仮保護フィルムを引き剥がした。そのときの接着層の幅10mm当たりの荷重の最大値(N/m)を、加熱処理後の接着力(90度ピール強度)として記録した。
【0055】
2-2.封止成形後の接着層の残留物
CDA194フレーム(リードフレーム、新光電気工業株式会社製)に、実施例及び比較例の仮保護フィルムを、接着層がリードフレームに接する向きで、25℃、荷重20Nの条件で貼り付けた。得られた貼合体を、空気雰囲気下、オーブン内で、180℃で60分間、次いで200℃で60分の順で条件を変更しながら加熱した。リードフレームの仮保護フィルムとは反対側の面を、アルゴンガス雰囲気下(流量:20sccm)、150W、15秒の条件でプラズマ処理した。
モールド成形機(アピックヤマダ株式会社製)を用いて、リードフレームの仮保護フィルムとは反対側の面上に封止材(商品名:GE-300、日立化成株式会社製)により封止層を形成した。封止条件は、175℃、6.8MPa、2分間とした。その後、50℃においてリードフレームの面に対して90°の方向に50mm/分の速度で各仮保護フィルムを引き剥がした。仮保護フィルムを引き剥がした後の封止層上に残存した接着層の状態を確認した。封止層の表面の面積に対する、接着層の残留物が占める面積の割合を求めた。接着層の残留物が占める面積の割合に基づいて、封止成形後の剥離性を以下の5段階の基準で評価した。
5:60~100%
4:40~60%未満
3:20%以上40%未満
2:10%以上20%未満
1:0%~10%未満
【0056】
以上の評価結果を表2に示す。各実施例の仮保護フィルムは、リードフレームに常温で貼り付けが可能であり、加熱処理後にリードフレームから容易に剥離できた。封止成形後、リードフレーム上及び封止層上の残存物の発生を抑制しながら、封止成形体から仮保護フィルムを剥離することができた。
【0057】
【符号の説明】
【0058】
1…支持フィルム、2…接着層、10…仮保護フィルム、11…リードフレーム、11a…ダイパッド、11b…インナーリード、12…ワイヤ、13…封止層、14…半導体素子、20…封止成形体、100…半導体装置。