(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】熱伝導シート、熱伝導シートの製造方法及び放熱装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/373 20060101AFI20221004BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20221004BHJP
C08L 23/22 20060101ALI20221004BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20221004BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20221004BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221004BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20221004BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H01L23/36 D
C08L23/22
C08L23/16
C08L23/08
C08K3/04
C08K7/00
C08L45/00
(21)【出願番号】P 2021055538
(22)【出願日】2021-03-29
(62)【分割の表示】P 2018558604の分割
【原出願日】2016-12-28
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 倫明
(72)【発明者】
【氏名】小舩 美香
(72)【発明者】
【氏名】五十幡 貴弘
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-040811(JP,A)
【文献】特開2013-016647(JP,A)
【文献】特開平11-121953(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133587(WO,A1)
【文献】特開2003-218296(JP,A)
【文献】特開2009-055021(JP,A)
【文献】国際公開第2009/142290(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34-23/473
C08L 23/08、23/16、23/22
C08L 45/00
C08K 3/00-3/40
C08K 7/00-7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、
イソブチレン構造を有する重合体(B)と、
エチレンプロピレン共重合体(C)と、
エチレンオクテンエラストマー(D)と、を含有し、
前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向している熱伝導シート。
【請求項2】
鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、
150℃での貯蔵弾性率G’が8Pa・s以上である樹脂成分と、を含有し、
前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向しており、
前記樹脂成分は、
エチレンプロピレン共重合体(C)及びエチレンオクテンエラストマー(D)を含む熱伝導シート。
【請求項3】
鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、
樹脂成分と、を含有し、
150℃にて処理した後の圧縮永久ひずみ(%)が4%以下であり、
前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向しており、
前記樹脂成分は、
エチレンプロピレン共重合体(C)及びエチレンオクテンエラストマー(D)を含む熱伝導シート。
【請求項4】
鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、
樹脂成分と、を含有し、
表面の算術平均粗さが2.1μm以下であり、
前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向しており、
前記樹脂成分は、
エチレンプロピレン共重合体(C)及びエチレンオクテンエラストマー(D)を含む熱伝導シート。
【請求項5】
鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、
樹脂成分と、を含有し、
空隙率が10%以下であり、
前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向しており、
前記樹脂成分は、
エチレンプロピレン共重合体(C)及びエチレンオクテンエラストマー(D)を含む熱伝導シート。
【請求項6】
前記エチレンプロピレン共重合体(C)の含有率は、10体積%~50体積%であり、
前記エチレンオクテンエラストマー(D)の含有率は、5体積%~30体積%である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の熱伝導シート。
【請求項7】
前記黒鉛粒子(A)の鱗片状粒子が、膨張黒鉛粒子を含む請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の熱伝導シート。
【請求項8】
脂環族炭化水素樹脂(E)をさらに含有する請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の熱伝導シート。
【請求項9】
酸化防止剤をさらに含有する請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の熱伝導シート。
【請求項10】
前記黒鉛粒子(A)の含有率が、15体積%~50体積%である請求項1~請求項
9のいずれか1項に記載の熱伝導シート。
【請求項11】
鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、イソブチレン構造を有する重合体(B)と、エチレンプロピレン共重合体(C)と、エチレンオクテンエラストマー(D)と、を含有する組成物を準備する工程と、
前記組成物をシート化してシートを得る工程と、
前記シートの複数枚を重ねるか、前記シートの1枚を折り畳むか、又は前記シートの1枚を捲回させるかにより積層体を作製する工程と、
前記積層体の側端面をスライスする工程と、
を有する請求項1に記載の熱伝導シートの製造方法。
【請求項12】
請求項1~請求項
10のいずれか1項に記載の熱伝導シートを、発熱体と放熱体の間に介在させてなる放熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導シート、熱伝導シートの製造方法及び放熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多層配線板を用いた半導体パッケージにおける配線及び電子部品の搭載密度の高密度化による発熱量が増大し、半導体素子の高集積化による単位面積当たりの発熱量が増大しており、半導体パッケージからの熱放散性を高めることが望まれている。
【0003】
半導体パッケージ等の発熱体とアルミ、銅等の放熱体との間に、熱伝導グリース又は熱伝導シートを挟んで密着させることにより熱を放散する放熱装置が一般に簡便に使用されている。通常、熱伝導グリースよりも熱伝導シートの方が、放熱装置を組み立てる際の作業性に優れている。
【0004】
近年、CPU(中央処理装置、Central Processing Unit)のチップはマルチコア化及びマルチチップ化により大面積化する傾向にある。また、発熱体であるCPUと放熱体との圧着圧力を低くする傾向にある。そのため、熱伝導シートには圧着時の柔軟性が求められている。また、チップ段差によって熱伝導シートが厚くなっても低熱抵抗となるよう、熱伝導シートは熱伝導性に優れることが求められている。
【0005】
発熱体と放熱体とを熱伝導シートを介して密着する方法としては、常温でバネ等の治具により加圧する方法、加熱圧着する方法などが挙げられる。いずれの方法でも、密着時の温度において十分に熱伝導シートが柔軟であることが、高い密着を得る上で重要である。
【0006】
加熱圧着する方法としては、熱伝導シートとして金属インジウム等の低融点金属を用いて発熱体と放熱体とを溶融圧着する方法が挙げられる。この方法では、得られる放熱装置は極めて熱伝導性に優れるが、修理等のために発熱体から放熱体を剥離することが困難な場合がある。また、金属の融液は粘度が低いため、融点を超える温度に再加熱した場合に金属が流出してしまうおそれがある。このような点では加熱しても粘性を保つことが可能な樹脂系の熱伝導シートが有利であるが、一般に、樹脂系の熱伝導シートは金属インジウム等に比べて、熱伝導率が劣る。
【0007】
一方、常温でバネ等の治具により加圧する方法では、半導体素子等が動作して発生する熱により溶融して固体シートから液状流動性体に変化することで高い密着性を得る、いわゆるフェイズチェンジシートも一般に使用されている。しかし、一般に、フェイズチェンジシートは熱伝導率が低く、また、液化して厚さが薄くなることで低熱抵抗化するため、チップ段差が生じるマルチチップ化に対応することは困難である。
【0008】
熱伝導シートとして、熱伝導フィラを充填した樹脂シートも知られている。熱伝導フィラを充填した熱伝導性に優れる樹脂シートとして、熱伝導性の高い無機粒子を熱伝導フィラとして選択し、さらに無機粒子をシート面に対し垂直に配向させた樹脂シートが種々提案されている。
例えば、シート面に関してほぼ垂直な方向に熱伝導フィラ(窒化ホウ素)が配向した熱伝導シート(例えば、特許文献1参照)、及びゲル状物質に分散された炭素繊維がシート面に対して垂直に配向した構造の熱伝導シート(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2002-26202号公報
【文献】特開2001-250894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、一般に、樹脂系の熱伝導シートは、使用により熱又は湿度に曝されると酸化したり、加水分解したり、場合によっては可塑剤が揮発したり、架橋の進行等により樹脂が硬くなったりする傾向にある。そのため、温度変動に伴う部材の熱膨張に追従して変形できなくなる結果、熱伝導シートの密着性が低下し、熱抵抗が高くなり、熱伝導性が低下する傾向にある。
【0011】
本発明の一態様の目的は、熱抵抗が小さい熱伝導シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための具体的手段は、以下の態様を含む。
<1> 鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、イソブチレン構造を有する重合体(B)と、エチレンプロピレン共重合体(C)と、エチレンオクテンエラストマー(D)と、を含有し、前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向している熱伝導シート。
<2> 鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、150℃での貯蔵弾性率G’が8Pa・s以上である樹脂成分と、を含有し、前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向している熱伝導シート。
<3> 鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、樹脂成分と、を含有し、150℃にて処理した後の圧縮永久ひずみ(%)が4%以下であり、前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向している熱伝導シート。
<4> 鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、樹脂成分と、を含有し、表面の算術平均粗さが2.1μm以下であり、前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向している熱伝導シート。
<5> 鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、樹脂成分と、を含有し、空隙率が10%以下であり、前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向している熱伝導シート。
<6> 前記黒鉛粒子(A)の鱗片状粒子が、膨張黒鉛粒子を含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の熱伝導シート。
<7> 脂環族炭化水素樹脂(E)をさらに含有する<1>~<6>のいずれか1つに記載の熱伝導シート。
<8> 酸化防止剤をさらに含有する<1>~<7>のいずれか1つに記載の熱伝導シート。
<9> 前記黒鉛粒子(A)の含有率が、15体積%~50体積%である<1>~<8>のいずれか1つに記載の熱伝導シート。
【0013】
<10> 鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、イソブチレン構造を有する重合体(B)と、エチレンプロピレン共重合体(C)と、エチレンオクテンエラストマー(D)と、を含有する組成物を準備する工程と、前記組成物をシート化してシートを得る工程と、前記シートの複数枚を重ねるか、前記シートの1枚を折り畳むか、又は前記シートの1枚を捲回させるかにより積層体を作製する工程と、前記積層体の側端面をスライスする工程と、
を有する<1>に記載の熱伝導シートの製造方法。
【0014】
<11> <1>~<9>のいずれか1つに記載の熱伝導シートを、発熱体と放熱体の間に介在させてなる放熱装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、熱抵抗が小さい熱伝導シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
【0017】
[第1実施形態]
〔熱伝導シート〕
第1実施形態の熱伝導シートは、鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)(以下、「黒鉛粒子(A)」ともいう)と、イソブチレン構造を有する重合体(B)(以下、「重合体(B)」ともいう)と、エチレンプロピレン共重合体(C)と、エチレンオクテンエラストマー(D)と、を含有し、前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向している。
かかる構成であることで、熱伝導シートは、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れる。
【0018】
<黒鉛粒子(A)>
熱伝導シートは、黒鉛粒子(A)の少なくとも1種を含有する。
黒鉛粒子(A)は、高熱伝導性フィラとして主に機能すると考えられる。黒鉛粒子(A)は、鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種である。また、黒鉛粒子(A)が、鱗片状粒子の場合には面方向、楕円体状粒子の場合には長軸方向、及び棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向している。また、黒鉛粒子(A)は、鱗片状粒子の場合には面方向、楕円体状粒子の場合には長軸方向、及び棒状粒子の場合には長軸方向に、その六員環面が配向していることが好ましい。
【0019】
黒鉛粒子(A)の形状は、鱗片状がより好ましい。鱗片状の黒鉛粒子を選択することで、熱伝導性がより向上する傾向にある。これは例えば、鱗片状の黒鉛粒子は、熱伝導シート中で、所定の方向へより容易に配向するためと考えることができる。なお、六員環面とは、六方晶系において六員環が形成されている面であり、(0001)結晶面を意味する。
【0020】
黒鉛粒子(A)の結晶中の六員環面が、鱗片状粒子の面方向、楕円体状粒子の長軸方向又は棒状粒子の長軸方向に配向しているかどうかは、X線回折測定により確認することができる。黒鉛粒子(A)の結晶中の六員環面の配向方向は、具体的には以下の方法で確認する。
【0021】
まず、黒鉛粒子(A)の鱗片状粒子の面方向、楕円体状粒子の長軸方向又は棒状粒子の長軸方向が、シートの面方向に沿って配向した測定用サンプルシートを作製する。測定用サンプルシートの具体的な作製方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0022】
樹脂と、樹脂に対して10体積%以上の量の黒鉛粒子(A)との混合物をシート化する。ここで用いる「樹脂」とは、X線回折の妨げになるピークが現れない材料で、かつシート物を形成可能な材料であれば特に制限されない。具体的には、アクリルゴム、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、SIBS(スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体)等、バインダとしての凝集力を有する非晶質樹脂を使用することができる。
【0023】
この混合物のシートが、元の厚みの1/10以下となるようにプレスし、プレスしたシートの複数枚を積層して積層体を形成する。この積層体をさらに1/10以下まで押しつぶす操作を3回以上繰り返して測定用サンプルシートを得る。この操作により、測定用サンプルシート中では、黒鉛粒子(A)が鱗片状粒子の場合には面方向、楕円体状粒子の場合には長軸方向、及び棒状粒子の場合には長軸方向が、測定用サンプルシートの面方向に沿って配向した状態になる。
【0024】
上記のように作製した測定用サンプルシートの表面に対してX線回折測定を行う。2θ=77°付近に現れる黒鉛の(110)面に対応するピークの高さH1と、2θ=27°付近に現れる黒鉛の(002)面に対応するピークの高さH2とを測定する。このように作製した測定用サンプルシートでは、H1をH2で割った値が0~0.02となる。
【0025】
このことより、「黒鉛粒子(A)の結晶中の六員環面が、鱗片状粒子の場合には面方向、楕円体状粒子の場合には長軸方向、及び棒状粒子の場合には長軸方向に配向している」とは、黒鉛粒子(A)を含有するシートの表面に対し、X線回折測定を行い、2θ=77°付近に現れる黒鉛粒子(A)の(110)面に対応するピークの高さを、2θ=27°付近に現れる黒鉛粒子(A)の(002)面に対応するピークの高さで割った値が0~0.02となる状態をいう。
【0026】
本明細書において、X線回折測定は以下の条件で行なう。
装置:ブルカー・エイエックスエス株式会社製「D8DISCOVER」
X線源:波長1.5406nmのCuKα、40kV、40mA
ステップ(測定刻み幅):0.01°
ステップタイム:720sec
【0027】
ここで、「黒鉛粒子が鱗片状粒子の場合には面方向、楕円体状粒子の場合には長軸方向、及び棒状粒子の場合には長軸方向が熱伝導シートの厚み方向に配向している」とは、鱗片状粒子の場合には面方向、楕円体状粒子の場合には長軸方向、及び棒状粒子の場合には長軸方向と、熱伝導シートの表面とのなす角度(以下、「配向角度」ともいう)が、60°以上であることをいう。配向角度は、80°以上であることが好ましく、85°以上であることがより好ましく、88°以上であることがさらに好ましい。
【0028】
配向角度は、熱伝導シートの断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個の黒鉛粒子(A)について、鱗片状粒子の場合には面方向と、楕円体状粒子の場合には長軸方向と、及び棒状粒子の場合には長軸方向と、熱伝導シート表面(主面)とのなす角度(配向角度)を測定したときの平均値である。
【0029】
黒鉛粒子(A)の粒子径は特に制限されない。黒鉛粒子(A)の平均粒子径は、熱伝導シートの平均厚みの1/2~平均厚みであることが好ましい。黒鉛粒子(A)の平均粒子径が熱伝導シートの平均厚みの1/2以上であると、熱伝導シート中に効率的な熱伝導パスが形成され、熱伝導率が向上する傾向にある。黒鉛粒子(A)の平均粒子径が熱伝導シートの平均厚み以下であると、熱伝導シートの表面からの黒鉛粒子(A)の突出が抑えられ、熱伝導シートの表面の密着性に優れる傾向にある。
【0030】
尚、特開2008-280496号公報に記載されているような積層スライス法を用いる場合、原料として用いる黒鉛粒子(A)の粒子径は、質量平均粒子径として、熱伝導シートの平均厚みの1/2倍以上であることが好ましく、平均厚みを超えてもよい。原料として用いる黒鉛粒子(A)の粒子径が熱伝導シートの平均厚みを超えてもよい理由は、例えば、熱伝導シートの平均厚みを超える粒子径の黒鉛粒子(A)を含んでいても、黒鉛粒子(A)ごとスライスして熱伝導シートを形成するため、結果的に黒鉛粒子(A)が熱伝導シートの表面から突出しないからである。またこのように黒鉛粒子(A)ごとスライスすると、熱伝導シートの厚み方向に貫通する黒鉛粒子(A)が多数生じ、極めて効率的な熱伝導パスが形成され、熱伝導性がより向上する傾向にある。
【0031】
積層スライス法を用いる場合、原料として用いる黒鉛粒子(A)の粒子径は、質量平均粒子径として、熱伝導シートの平均厚みの1倍~5倍であることがより好ましい。黒鉛粒子(A)の質量平均粒子径が、熱伝導シートの平均厚みの1倍以上であると、さらに効率的な熱伝導パスが形成され、熱伝導性がより向上する。熱伝導シートの平均厚みの5倍以下であると、黒鉛粒子(A)の表面部に占める面積が大きくなりすぎるのが抑えられ、密着性の低下が抑制できる。
【0032】
黒鉛粒子(A)の質量平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法を適応したレーザー回折式粒度分布装置(例えば、日機装株式会社製「マイクロトラックシリーズMT3300」)を用いて測定され、重量累積粒度分布曲線を小粒径側から描いた場合に、重量累積が50%となる粒子径に対応する。
【0033】
熱伝導シートは黒鉛粒子として、鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子以外の粒子を含んでいてもよく、球状黒鉛粒子、人造黒鉛粒子、薄片化黒鉛粒子、酸処理黒鉛粒子、膨張黒鉛粒子、炭素繊維フレーク等を含んでいてもよい。
黒鉛粒子(A)としては、鱗片状粒子が好ましく、結晶化度が高くかつ大粒径の鱗片が得やすい観点から、シート化した膨張黒鉛を粉砕して得られる、鱗片状の膨張黒鉛粒子が好ましい。
【0034】
黒鉛粒子(A)の粒子径分布は特に制限されず、横軸に粒子径を、縦軸に頻度をとった粒子径分布が単一のピークを有する単分散系であっても、粒子径分布が複数のピークを有する多分散系であってもよい。また粒子径分布が狭いものであっても、粒子径分布が広いものであってもよい。
前述のように大粒子の方が効率的な熱伝導パスを形成でき、熱伝導性の観点から好適であるが、大粒子かつ粒度分布が狭いと、大粒子どうしにより形成される空隙も大きくなる傾向にあるため、熱伝導シートの面内で熱伝導性のバラツキが大きくなる傾向にある。このため、適度に小粒子を存在させて大粒子により生じた空隙に小粒子が充填できるよう、ある程度広い粒子径分布であるか、又は複数のピークが存在する多分散の粒径分布であることが好ましい。粒子径分布の形状は、粒子形状等により大きく異なるため、定量的に一概に限定されないが、上記の理由から、熱伝導シートの平均厚みに近い平均粒子径を有する大粒子と、大粒子により形成される空隙の大きさよりも小さい平均粒子径を有する小粒子とを含有し、且つ小粒子がその空隙に収まる量で含有されるような粒子径分布であることが特に好ましい。
【0035】
熱伝導シート中の黒鉛粒子(A)の含有率は、例えば、熱伝導性と密着性のバランスの観点から、15体積%~50体積%であることが好ましく、20体積%~45体積%であることがより好ましく、25体積%~40体積%であることがさらに好ましい。
黒鉛粒子(A)の含有率が15体積%以上であると、熱伝導性がより向上する傾向にある。黒鉛粒子(A)の含有率が50体積%以下であると、粘着性及び密着性の低下をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0036】
黒鉛粒子(A)の含有率(体積%)は、次式により求めた値である。
黒鉛粒子(A)の含有率(体積%)=(Aw/Ad)/((Aw/Ad)+(Bw/Bd)+(Cw/Cd)+(Dw/Dd)+(Ew/Ed))×100
Aw:黒鉛粒子(A)の質量組成(質量%)
Bw:重合体(B)の質量組成(質量%)
Cw:エチレンプロピレン共重合体(C)の質量組成(質量%)
Dw:エチレンオクテンエラストマー(D)の質量組成(質量%)
Ew:その他の任意成分の質量組成(質量%)
Ad:黒鉛粒子(A)の密度(本明細書においてAdは2.1で計算する。)
Bd:重合体(B)の密度
Cd:エチレンプロピレン共重合体(C)の質量組成(質量%)
Dd:エチレンオクテンエラストマー(D)の質量組成(質量%)
Ed:その他の任意成分の密度
【0037】
<イソブチレン構造を有する重合体(B)>
熱伝導シートは、イソブチレン構造を有する重合体(B)の少なくとも1種を含有する。ここで、「イソブチレン構造」とは、「-CH2-C(CH3)2-」をいう。
イソブチレン構造を有する重合体(B)は、例えば、耐熱性及び耐湿度性に優れた応力緩和剤と粘着性付与剤とを兼ねて主に機能すると考えられる。また、後述する脂環族炭化水素樹脂(E)と併用することにより、凝集力及び加熱時の流動性をより高めることができる。
【0038】
イソブチレン構造を有する重合体(B)は、イソブチレン構造を含んでいればその他の構造については特に制限されない。イソブチレン構造を有する重合体(B)としては、例えば、イソブテン(別名:イソブチレン)の単独重合体、及びイソブテンと他のモノマー成分との共重合体が挙げられる。イソブテンと他のモノマー成分との共重合体としては、例えば、イソブテンとスチレン及びエチレンの少なくとも一方との共重合体が挙げられる。イソブチレン構造を有する重合体(B)は、靭性、柔軟性及び粘着性を両立する観点から、イソブテンとスチレンとの共重合体、イソブテンとエチレンとの共重合体及びイソブテンの単独重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0039】
共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びグラフト共重合体のいずれであってもよく、ブロック共重合体(つまり、ポリイソブチレン構造を有する共重合体)であることが好ましい。
【0040】
共重合体中のイソブチレン構造の含有率は特に制限されない。例えば、共重合体中のイソブチレン構造の含有率は、40質量%~99質量%であってもよく、50質量%~95質量%であってもよく、60質量%~95質量%であってもよい。
【0041】
イソブチレン構造を有する重合体(B)は、固形状であっても液状であってもよい。本明細書において「液状」とは、25℃において流動性と粘性とを示し、かつ粘性を示す尺度である粘度が25℃において0.0001Pa・s~1000Pa・sである物質を意味する。本明細書において「粘度」とは、25℃でレオメーターを用いて5.0s-1のせん断速度で測定したときの値と定義する。詳細には、「粘度」は、せん断粘度として、コーンプレート(直径40mm、コーン角0°)を装着した回転式のせん断粘度計を用いて、温度25℃で測定される。一方、本明細書において「固形状」とは、上記「液状」の定義に該当しないものをいう。
【0042】
イソブチレン構造を有する重合体(B)は、1種を単独で用いても又は2種以上を併用してもよい。例えば、イソブテンの単独重合体は、固形状のものと液状のものとを併用してもよい。
【0043】
イソブチレン構造を有する重合体(B)の分子量は、特に制限されない。
固形状のイソブテンの単独重合体は、重量平均分子量(Mw)又は粘度平均分子量(Mv)が40000以上であることが好ましく、40000~100000であることがより好ましく、50000~80000であることがさらに好ましい。
固形状のイソブテンの単独重合体の重量平均分子量(Mw)又は粘度平均分子量(Mv)が40000以上であると、仮固定に必要な粘着力を十分に得ることができ、また耐熱性に優れ、熱伝導シートの強度にも優れる傾向にある。また、粘度平均分子量が100000以下であると、後述する脂環族炭化水素樹脂(E)との相溶性に優れる傾向にある。
【0044】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法によって測定される。粘度平均分子量(Mv)は、FCC法によって測定される。
GPC法では、分子量分布から標準ポリスチレンの検量線を使用して換算して、重量平均分子量が求められる。検量線は、標準ポリスチレンの5サンプルセット(東ソー株式会社、PStQuick MP-H、PStQuick B)を用いて3次式で近似する。本明細書におけるGPCの測定条件を以下に示す。
【0045】
装置:(ポンプ:L-2130型[株式会社日立ハイテクノロジーズ])
(検出器:L-2490型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ])
(カラムオーブン:L-2350[株式会社日立ハイテクノロジーズ])
カラム:Gelpack GL-R440 + Gelpack GL-R450 + Gelpack GL-R400M(計3本)(日立化成株式会社、商品名)
カラムサイズ:10.7mm(内径)×300mm
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:10mg/2mL
注入量:200μL
流量:2.05mL/分
測定温度:25℃
【0046】
FCC法では、次のMark-Houwinkの式から、粘度平均分子量(Mv)を算出する。
[η] = K Mvα
α及びKは、それぞれ、測定温度、溶媒の種類、及び高分子の種類によって決まる既知の定数であり、化学便覧等を参照できる。固有粘度[η]は、JIS K 7367-1:2002(プラスチック-毛細管形粘度計を用いたエラストマー希釈溶液の粘度の求め方-)に準拠して測定する。
【0047】
液状のイソブテンの単独重合体は、数平均分子量(Mn)が1000~3000であることが好ましく、1300~3000であることがより好ましく、2000~3000であることがさらに好ましい。数平均分子量が3000以下であると軟化効果が十分となる傾向にあり、1000以上であると耐熱性が十分となる傾向にある。数平均分子量(Mn)はVPO法(蒸気圧式分子量測定法、Vapor Pressure Osomometry)により測定される。
【0048】
VPO法では、イソブテンの単独重合体を溶媒に溶解し、濃度の異なる3種類以上のサンプル溶液を調製し、サンプル溶液及びリファレンスとしての純溶媒の凝縮時のエンタルピーの変化によって生じた温度差を、サーミスタープローブ等で測定することで分子量を求める。
【0049】
熱伝導シート中、イソブチレン構造を有する重合体(B)の含有率は、例えば、粘着力、密着性、シート強度及び耐加水分解性をより高める観点から、5体積%~50体積%であることが好ましく、10体積%~40体積%であることがより好ましく、20体積%~30体積%であることがさらに好ましい。
イソブチレン構造を有する重合体(B)の含有率が5体積%以上であると、粘着性及び密着性がより向上する傾向にある。イソブチレン構造を有する重合体(B)の含有率が50体積%以下であると、シート強度及び熱伝導性の低下をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0050】
熱伝導シートは、イソブチレン構造を有する重合体(B)に加えてその他の重合体を含有していてもよい。その他の重合体としては、例えば、ポリブテンが挙げられる。ポリブテンの分子量は特に制限されない。
【0051】
ポリブテンの含有率は、20体積%以下であってもよく、10体積%以下であってもよく、5体積%以下であってもよい。
【0052】
<エチレンプロピレン共重合体(C)>
熱伝導シートは、エチレンプロピレン共重合体(C)の少なくとも1種を含有する。エチレンプロピレン共重合体(C)は、例えば、成形性、高温での弾性率及び長期耐熱性の向上に主に寄与すると考えられる。また、後述するエチレンオクテンエラストマー(D)と併用することにより、熱伝導シート表面の平滑性が向上し、かつ、熱伝導シート表面への樹脂成分のしみ出しが抑制されるため、熱伝導率の低下が抑制できる。また、熱伝導シートの加圧時に、樹脂成分のしみ出しを抑制しつつ、シート密度を高めることができる。
【0053】
エチレンプロピレン共重合体(C)は、エチレンとプロピレンとの共重合体であればよく、エチレンとプロピレンとの共重合比率(エチレン/プロピレン)は、特に限定されない。
【0054】
また、エチレンプロピレン共重合体(C)は、エチレン及びプロピレンと、これら以外のモノマー(他のモノマー)との共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、炭素数が4以上である、直鎖状、分岐状又は環状のオレフィン、ビニル化合物等が挙げられる。
【0055】
エチレンプロピレン共重合体(C)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びグラフト共重合体のいずれであってもよく、ブロック共重合体(つまり、ポリエチレン構造及びポリプロピレン構造を有する共重合体)であることが好ましい。
【0056】
エチレンプロピレン共重合体(C)の分子量は、特に制限されない。
エチレンプロピレン共重合体(C)は、重量平均分子量(Mw)が15000以下であることが好ましく、2000~10000であることがより好ましく、3000~8000であることがさらに好ましい。
【0057】
エチレンプロピレン共重合体(C)としては、例えば、三井化学株式会社製の「ルーカントHC-2000」及び「ルーカントHC-3000X」が挙げられる。
【0058】
熱伝導シート中、エチレンプロピレン共重合体(C)の含有率は、例えば、高温での弾性率をより高める観点から、10体積%~50体積%であることが好ましく、15体積%~40体積%であることがより好ましく、20体積%~30体積%であることがさらに好ましい。
【0059】
<エチレンオクテンエラストマー(D)>
熱伝導シートは、エチレンオクテンエラストマー(D)の少なくとも1種を含有する。エチレンオクテンエラストマー(D)は、例えば、弾性及び長期耐熱性の向上に主に寄与すると考えられる。
【0060】
エチレンオクテンエラストマー(D)は、エチレンと1-オクテンとの共重合体であればよく、エチレンと1-オクテンとの共重合比率(エチレン/1-オクテン)は、特に限定されない。
【0061】
エチレンオクテンエラストマー(D)の分子量は、特に制限されない。
エチレンオクテンエラストマー(D)は、分子量の指標でもあるメルトフローレート(MFR)(温度190℃、荷重2.16kg)が50g/10min以下であることが好ましく、3g/10min~40g/10minであることがより好ましく、5g/10min~35g/10minであることがさらに好ましい。なお、本明細書においてメルトフローレート(MFR)とあるのは、断りのない限り、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)を意味する。メルトフローレート(MFR)は、メルトインデックスと同義である。測定方法はJIS K 7210:1999に示される。
【0062】
エチレンオクテンエラストマーとしては、例えば、ダウ・ケミカル社製の「EOR8407」が挙げられる。
【0063】
熱伝導シート中、エチレンオクテンエラストマー(D)の含有率は、例えば、好適に弾性を付与する観点から、5体積%~30体積%であることが好ましく、5体積%~20体積%であることがより好ましく、5体積%~15体積%であることがさらに好ましい。
【0064】
<脂環族炭化水素樹脂(E)>
熱伝導シートは脂環族炭化水素樹脂(E)の少なくとも1種を含有していてもよい。脂環族炭化水素樹脂(E)は、例えば、上述の通り、重合体(B)との併用により、耐熱性と耐湿度性に優れた凝集力及び加熱時の流動性を向上する効果を奏すると考えられる。
【0065】
脂環族炭化水素樹脂(E)としては、例えば、水素化された芳香族系石油樹脂、水素化テルペンフェノール樹脂、及びシクロペンタジエン系石油樹脂が挙げられる。これらの脂環族炭化水素樹脂(E)は、市販の脂環族炭化水素樹脂から適宜選択して用いることができる。
【0066】
中でも、脂環族炭化水素樹脂(E)は、水素化された芳香族系石油樹脂、及び水素化テルペンフェノール樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの脂環族炭化水素樹脂(E)は、安定性が高く、かつイソブチレン構造を有する重合体(B)との相溶性に優れるため、熱伝導シートを構成した場合に、より優れた熱伝導性、柔軟性、及びハンドリング性が達成できる傾向にある。
【0067】
水素化された芳香族系石油樹脂としては、例えば、荒川化学工業株式会社製「アルコン」、及び出光興産株式会社製「アイマーブ」が挙げられる。
また、水素化テルペンフェノール樹脂としては、例えば、ヤスハラケミカル株式会社製「クリアロン」が挙げられる。
また、シクロペンタジエン系石油樹脂としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「クイントン」、及び丸善石油化学株式会社製「マルカレッツ」が挙げられる。
【0068】
脂環族炭化水素樹脂(E)は、25℃で固形であることが好ましい。
脂環族炭化水素樹脂(E)は、熱可塑性であることが好ましく、軟化温度が40℃~150℃であることが好ましい。熱可塑性の樹脂を使用すると、熱圧着時の軟化流動性が向上する結果、密着性が向上する傾向にある。また、軟化温度が40℃以上であると、室温付近での凝集力を保てる結果、必要なシート強度が得やすくなって取扱い性に優れる傾向にある。軟化温度が150℃以下であると、熱圧着時の軟化流動性が高くなる結果、密着性が向上する傾向にある。軟化温度は、80℃~130℃であることがより好ましい。尚、軟化温度は、環球法(JIS K 2207:1996)で測定される。
【0069】
脂環族炭化水素樹脂(E)の重量平均分子量は、特に制限されない。熱伝導シートの強度と柔軟性の観点から、脂環族炭化水素樹脂(E)の重量平均分子量は、200~10000であることが好ましく、500~2000であることがより好ましい。
【0070】
熱伝導シート中の脂環族炭化水素樹脂(E)の含有率は、例えば、粘着力、密着性、及びシート強度を高める観点から、3体積%~20体積%であることが好ましく、4体積%~15体積%であることがより好ましく、5体積%~10体積%であることがさらに好ましい。
脂環族炭化水素樹脂(E)の含有率5体積%以上であると、粘着力、加熱流動性、及びシート強度が十分となる傾向にあり、10体積%以下であると、柔軟性が十分となってハンドリング性及び耐サーマルサイクル性に優れる傾向にある。
【0071】
<その他の成分>
熱伝導シートは、黒鉛粒子(A)、重合体(B)、エチレンプロピレン共重合体(C)、エチレンオクテンエラストマー(D)、及び脂環族炭化水素樹脂(E)以外のその他の成分を、目的に応じて含有していてもよい。例えば、熱伝導シートは、難燃性を付与する目的で、難燃剤を含有していてもよい。
【0072】
難燃剤は特に限定されず、通常用いられる難燃剤から適宜選択することができる。例えば、赤りん系難燃剤及びりん酸エステル系難燃剤が挙げられる。中でも、安全性に優れ、可塑性効果により密着性が向上する観点から、りん酸エステル系難燃剤が好ましい。
【0073】
赤りん系難燃剤としては、純粋な赤りん粒子の他に、安全性又は安定性を高める目的で種々のコーティングを施したもの、マスターバッチ化したもの等を用いてもよい。具体的には、燐化学工業株式会社製のノーバレッド、ノーバエクセル、ノーバクエル、ノーバペレット(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0074】
りん酸エステル系難燃剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等の脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート、トリス(t-ブチル化フェニル)ホスフェート、トリス(イソプロピル化フェニル)ホスフェート、リン酸トリアリールイソプロピル化物等の芳香族リン酸エステル;レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビスジキシレニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステルなどが挙げられる。
これらの中でもビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)が、耐加水分解性に優れ、かつ可塑効果により密着性を向上する効果に優れる観点から好ましい。
【0075】
熱伝導シート中の難燃剤の含有率は制限されず、難燃性が発揮される量で用いることができ、30体積%以下程度とすることが好ましく、難燃剤成分が熱伝導シートの表面に染み出すことによる熱抵抗の悪化を抑制する観点から、20体積%以下とすることが好ましい。
【0076】
熱伝導シートは、必要に応じて、酸化防止剤、ラジカルトラップ剤、pH調整剤等の添加剤を含有していてもよく、好ましくは酸化防止剤を含有してもいてもよい。これらの添加剤の含有率は、熱伝導シート中、5体積%以下であることが好ましく、3体積%以下であることがより好ましく、1体積%以下であることがさらに好ましい。
【0077】
熱伝導シートの平均厚みは特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、熱伝導シートの平均厚みは、50μm~3000μmとすることができ、熱伝導性及び密着性の観点から、100μm~1000μmであることが好ましい。
熱伝導シートの平均厚みは、マイクロメータを用いて3箇所の厚みを測定し、その算術平均値として与えられる。
【0078】
熱伝導シートは、少なくとも一方の面に保護フィルムを有していてもよく、両面に保護フィルムを有していることが好ましい。これにより、熱伝導シートの粘着面を保護することができる。
【0079】
保護フィルムは、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルナフタレート、メチルペンテン等の樹脂フィルム、コート紙、コート布、及びアルミ等の金属箔が使用できる。これらの保護フィルムは、1種単独で使用しても、2種以上組み合わせて多層フィルムとしてもよい。保護フィルムは、シリコーン系、シリカ系等の離型剤などで表面処理されていることが好ましい。
【0080】
また、本実施形態の熱伝導シートの構成要素である、イソブチレン構造を有する重合体(B)と、エチレンプロピレン共重合体(C)と、エチレンオクテンエラストマー(D)と、必要に応じて脂環族炭化水素樹脂(E)と、を含む樹脂成分は、150℃での貯蔵弾性率G’が8Pa・s以上であることが好ましく、8Pa・s~50Pa・sであることがより好ましく、10Pa・s~25Pa・sであることがさらに好ましい。これにより、熱伝導シートは、熱抵抗がより小さく、熱伝導性により優れる傾向にある。樹脂成分の150℃での貯蔵弾性率G’は、後述する実施例にて記載の方法により求めることができる。
【0081】
また、熱伝導シートに含まれる前述の樹脂成分は、150℃にて処理した後の貯蔵弾性率G’が5Pa・s以上であることが好ましく、7Pa・sであることがより好ましい。これにより、熱伝導シートは高温に長時間曝された際であっても、発熱体への追従性により優れ、熱抵抗がより小さくなる傾向にある。樹脂成分の150℃にて処理した後の貯蔵弾性率G’は、後述する実施例にて記載の方法により求めることができる。
【0082】
また、熱伝導シートは、150℃にて処理した後の圧縮永久ひずみ(%)が4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、0.5%~2%であることがさらに好ましい。これにより、熱伝導シートが高温に長時間曝された際であっても、発熱体への追従性がより高く、熱抵抗がより小さくなる傾向にある。熱伝導シートの150℃にて処理した後の圧縮永久ひずみは後述する実施例にて記載の方法により求めることができる。
【0083】
また、熱伝導シートは、表面の算術平均粗さが2.1μm以下であることが好ましく、1.9μm以下であることがより好ましく、1.4μm~1.8μmであることがさらに好ましく、1.5μm~1.7μmであることが特に好ましい。これにより、熱伝導シートと発熱体との隙間に存在する空気の量が低減し、熱抵抗がより小さくなる傾向にある。熱伝導シート表面の算術平均粗さは、後述する実施例にて記載の方法により求めることができる。
【0084】
また、熱伝導シートは、空隙率が10%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましく、4%~8%であることがさらに好ましく、5%~7%以下であることが特に好ましい。これにより、内部の気泡の割合が少なく、熱抵抗がより小さくなる傾向にある。熱伝導シートの空隙率は、後述する実施例にて記載の方法により求めることができる。
【0085】
また、熱伝導シートは、熱伝導性を高める観点から、熱抵抗Rth(K・cm2/W)は、0.11以下であることが好ましく、0.105以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましく、0.09以下であることが特に好ましい。熱伝導シートの熱抵抗Rth(K・cm2/W)は、後述する実施例にて記載の方法により求めることができる。
【0086】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態の熱伝導シートについて説明する。なお、第1実施形態と共通する事項については、その説明を省略する。
【0087】
第2実施形態の熱伝導シートは、鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、150℃での貯蔵弾性率G’が8Pa・s以上である樹脂成分と、を含有し、前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向している。
【0088】
本実施形態の熱伝導シートは、樹脂成分の150℃での貯蔵弾性率G’が8Pa・s以上であるため、高温での弾性が高い。そのため、熱伝導シートは、高温に曝された際に発熱体への追従性が高く、熱抵抗が小さくなる。したがって、本実施形態の熱伝導シートは、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れる。
【0089】
熱伝導シートは、後述する表面の算術平均粗さにおいて、表面の算術平均粗さが2.1μm以下であると表面の凹凸が小さくなり、熱伝導シートと発熱体との隙間に存在する空気の量が低減し、熱抵抗が小さくなる。後述する熱伝導シートの製造方法におけるスライシング工程では、樹脂成分の150℃の貯蔵弾性率G’が100Pa・s以上の場合、樹脂成分の硬度が大きくなるため、スライシング工程で用いられる超硬刃の強度が足りず、表面の算術平均粗さが2.1μm超になる傾向にある。これによりスライシング工程後の熱伝導シートの表面の算術平均粗さが非常に大きくなるため、その後のラミネート工程においても表面の算術平均粗さを2.1μm以下に低減できず、熱抵抗が大きくなる傾向にある。そこで、樹脂成分の150℃での貯蔵弾性率G’が8Pa・s~50Pa・sであることが好ましく、10Pa・s~25Pa・sであることがより好ましい。樹脂成分の150℃での貯蔵弾性率G’は、後述する実施例にて記載の方法により求めることができる。
【0090】
本実施形態の熱伝導シートに含まれる樹脂成分は、150℃にて処理した後の貯蔵弾性率G’が5Pa・s以上であることが好ましく、7Pa・sであることがより好ましい。これにより、熱伝導シートは高温に長時間曝された際であっても、発熱体への追従性に優れ、熱抵抗が小さくなる。樹脂成分の150℃にて処理した後の貯蔵弾性率G’は、後述する実施例にて記載の方法により求めることができる。
【0091】
本実施形態において、樹脂成分は、イソブチレン構造を有する重合体(B)、エチレンプロピレン共重合体(C)、及びエチレンオクテンエラストマー(D)を含有していることが好ましく、さらに脂環族炭化水素樹脂(E)を含有していることがより好ましい。また、本実施形態の熱伝導シートは、前述のその他の成分を含有していてもよい。
【0092】
[第3実施形態]
第3実施形態の熱伝導シートは、鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、樹脂成分と、を含有し、150℃にて処理した後の圧縮永久ひずみ(%)が4%以下であり、前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向している。
【0093】
本明細書において、「150℃にて処理した後の圧縮永久ひずみ(%)」は、温度150℃の条件で500時間加熱し、マイクロフォース試験機(Instoron社製、Micro Tester 5948)にて、温度150℃で、1cm2当たりに掛かる圧力が20Psiに加圧されるまで0.1mm/minで圧縮し、20Psiに達した直後から1cm2当たりに掛かる圧力が0Psiになるまで0.1mm/minで開放し、その後室温(25℃)に30分放置した後に測定される圧縮永久ひずみ(%)である。
【0094】
本実施形態の熱伝導シートは、150℃にて処理した後の圧縮永久ひずみ(%)が4%以下であるため、高温に長時間曝された際であっても、発熱体への追従性が高く、熱抵抗が小さくなる。したがって、本実施形態の熱伝導シートは、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れる。
【0095】
熱電導シートの樹脂成分の150℃の貯蔵弾性率G’が100Pa・s以上の場合、スライシング工程の影響で表面の算術平均粗さが大きくなり、熱抵抗が大きくなる傾向にある。したがって、樹脂成分の150℃での貯蔵弾性率G’が8Pa・s~50Pa・sであることが好ましく、10Pa・s~25Pa・sであることがより好ましい。また、熱伝導シートは、圧縮永久ひずみ(%)が3%以下であることが好ましく、0.5%~2%であることがより好ましい。圧縮永久ひずみは後述する実施例にて記載の式により求めることができる。
【0096】
本実施形態において、樹脂成分は、イソブチレン構造を有する重合体(B)、エチレンプロピレン共重合体(C)、及びエチレンオクテンエラストマー(D)を含有していることが好ましく、さらに脂環族炭化水素樹脂(E)を含有していることがより好ましい。また、本実施形態の熱伝導シートは、前述のその他の成分を含有していてもよい。
【0097】
[第4実施形態]
第4実施形態の熱伝導シートは、鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、樹脂成分と、を含有し、表面の算術平均粗さが2.1μm以下であり、前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向している。
【0098】
本実施形態の熱伝導シートは、表面の算術平均粗さが2.1μm以下であるため、表面の凹凸が小さくなる。そのため、熱伝導シートと発熱体との隙間に存在する空気の量が低減し、熱抵抗が小さくなる。したがって、本実施形態の熱伝導シートは、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れる。
【0099】
熱伝導シートは、スライシング工程では低減しきれなかった表面の算術平均粗さを、ラミネート工程でのゴムロールラミネータによる加温及び加圧により表面の算術平均粗さを2.1μm以下にすることで熱抵抗を小さくしてもよい。ゴムロールラミネータの加温及び加圧の条件によって表面の算術平均粗さは小さくなるが、熱伝導シートの表面が樹脂成分の染み出しに覆われてしまい、黒鉛粒子と放熱体との接触が妨げられ、熱抵抗が増加するおそれがある。
そこで、熱伝導シートは、樹脂成分の染み出しを抑制する観点から、表面の算術平均粗さが、1.9μm以下であることが好ましく、1.4μm~1.8μmであることがより好ましく、1.5μm~1.7μmであることがさらに好ましい。熱伝導シート表面の算術平均粗さは、後述する実施例にて記載の方法により求めることができる。
【0100】
本実施形態において、樹脂成分は、イソブチレン構造を有する重合体(B)、エチレンプロピレン共重合体(C)、及びエチレンオクテンエラストマー(D)を含有していることが好ましく、さらに脂環族炭化水素樹脂(E)を含有していることがより好ましい。また、本実施形態の熱伝導シートは、前述のその他の成分を含有していてもよい。
【0101】
[第5実施形態]
第5実施形態の熱伝導シートは、鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、樹脂成分と、を含有し、空隙率が10%以下であり、前記鱗片状粒子の場合には面方向、前記楕円体状粒子の場合には長軸方向又は前記棒状粒子の場合には長軸方向が、厚み方向に配向している。
【0102】
本実施形態の熱伝導シートは、空隙率が10%以下であるため、内部の気泡の割合が少なく、熱抵抗が小さくなる。したがって、本実施形態の熱伝導シートは、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れる。
【0103】
熱伝導シートは、内部の気泡の割合をより少なくすることで熱抵抗をより小さくする観点から、空隙率は、9%以下であることが好ましく、4%~8%であることがより好ましく、5%~7%であることがさらに好ましい。なお、空隙率Pは、熱伝導シートの嵩密度をρ及び熱伝導シートの真密度をρ’としたとき、以下の式(1)に基づき算出される。
空隙率P=[1-(ρ/ρ’)]×100(%)・・・(1)
【0104】
熱伝導シートは、熱伝導性を高める観点から、熱抵抗Rth(K・cm2/W)は、0.11以下であることが好ましく、0.105以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましく、0.09以下であることが特に好ましい。熱抵抗Rth(K・cm2/W)は、後述する実施例にて記載の方法により求めることができる。
【0105】
本実施形態において、樹脂成分は、イソブチレン構造を有する重合体(B)、エチレンプロピレン共重合体(C)、及びエチレンオクテンエラストマー(D)を含有していることが好ましく、さらに脂環族炭化水素樹脂(E)を含有していることがより好ましい。また、本実施形態の熱伝導シートは、前述のその他の成分を含有していてもよい。
【0106】
空隙率及び熱抵抗は、黒鉛粒子(A)及び樹脂成分、好ましくは、黒鉛粒子(A)、イソブチレン構造を有する重合体(B)、エチレンプロピレン共重合体(C)及びエチレンオクテンエラストマー(D)ならびに必要に応じて含有される脂環族炭化水素樹脂(E)の種類及び含有率を、上述のそれぞれの好適な範囲で適宜選択することで、調整することが可能である。
【0107】
なお、前述の第1実施形態~第5実施形態の熱伝導シートに関する構成を適宜組み合わせてもよく、例えば、前述の第1実施形態~第5実施形態の熱伝導シートに関する物性値の数値範囲を適宜組み合わせてもよい。具体的には、前述した、樹脂成分の150℃での貯蔵弾性率G’、樹脂成分の150℃にて処理した後の貯蔵弾性率G’、熱伝導シートの150℃にて処理した後の圧縮永久ひずみ、熱伝導シートの表面の算術平均粗さ、熱伝導シートの空隙率、熱伝導シートの熱抵抗等の物性値の数値範囲を任意に組み合わせてもよい。
【0108】
〔熱伝導シートの製造方法〕
熱伝導シートの製造方法は、上記の構成を有するものが得られるのであれば特に制限されない。熱伝導シートの製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
【0109】
その製造方法は、鱗片状粒子、楕円体状粒子及び棒状粒子からなる群より選択される少なくとも1種の黒鉛粒子(A)と、イソブチレン構造を有する重合体(B)と、エチレンプロピレン共重合体(C)と、エチレンオクテンエラストマー(D)と、必要に応じて脂環族炭化水素樹脂(E)と、を含有する組成物を準備する工程(「準備工程」ともいう)と、前記組成物をシート化してシートを得る工程(「シート作製工程」ともいう)と、前記シートの複数枚を重ねて、前記シートの1枚を折り畳んで、又は前記シートの1枚を捲回させて積層体を作製する工程(「積層体作製工程」ともいう)と、前記積層体の側端面をスライスする工程(スライシング工程)と、を有する。また、熱伝導シートの製造方法は、スライシング工程にて得られたスライスシートを保護フィルムに貼り付けてラミネートする工程(ラミネート工程)をさらに有していてもよい。
【0110】
熱伝導シートをかかる方法で製造することで、効率的な熱伝導パスが形成され易く、そのため高熱伝導性と密着性に優れる熱伝導シートが得られる傾向にある。
【0111】
<準備工程>
熱伝導シートを構成する組成物の調製は、黒鉛粒子(A)、重合体(B)、エチレンプロピレン共重合体(C)、エチレンオクテンエラストマー(D)及び必要に応じて脂環族炭化水素樹脂(E)、その他の成分等を均一に混合することが可能であれば、いずれの方法であってもよく、特に限定されない。また、組成物は市販のものを入手して準備してもよい。組成物の調製の詳細は、特開2008-280496号公報の段落[0033]を参照することができる。
【0112】
<シート作製工程>
シート作製工程は、先の工程で得られた組成物をシート化できれば、いずれの方法であってもよく、特に限定されない。例えば、圧延、プレス、押出、及び塗工からなる群から選択される少なくとも1つの成形方法を用いて実施することが好ましい。シート作製工程の詳細は、特開2008-280496号公報の段落[0034]を参照することができる。
【0113】
<積層体作製工程>
積層体作製工程は、先の工程で得られたシートの積層体を形成する。積層体は、例えば、独立した複数枚のシートを順に重ね合わせた形態に限らず、1枚のシートを切断せずに折り畳んだ形態であっても、又はシートの1枚を捲回させた形態であってもよい。積層体作製工程の詳細は、特開2008-280496号公報の段落[0035]~[0037]を参照することができる。
【0114】
<スライシング工程>
スライシング工程は、先の工程で得られた積層体の側端面をスライスできれば、いずれの方法であってもよく、特に限定されない。熱伝導シートの厚み方向に貫通する黒鉛粒子(A)によって極めて効率的な熱伝導パスが形成され、熱伝導性がより向上する観点から、黒鉛粒子(A)の質量平均粒子径の2倍以下の厚みでスライスすることが好ましい。スライシング工程の詳細は、特開2008-280496号公報の段落[0038]を参照することができる。
【0115】
<ラミネート工程>
ラミネート工程は、スライシング工程にて得られたスライスシートを保護フィルムに貼り付けられれば、いずれの方法であってもよく、特に限定されない。
【0116】
〔放熱装置〕
放熱装置は、発熱体と放熱体の間に、上述の熱伝導シートを介在させてなる。熱伝導シートを介して発熱体と放熱体とが積層されていることで、発熱体からの熱を放熱体に効率よく伝導することができる。また、発熱体から放熱体を取り外す際に容易に熱伝導シートを除去することができる。
【0117】
熱伝導シートを特に好適に使用できる温度範囲が、例えば、-10℃~150℃であることから、発熱体としては、例えば、半導体パッケージ、ディスプレイ、LED、電灯、自動車用パワーモジュール及び産業用パワーモジュールを好適な発熱体の例として挙げることができる。
【0118】
放熱体としては、例えば、アルミ又は銅のフィン、板等を利用したヒートシンク、ヒートパイプに接続されているアルミ又は銅のブロック、内部に冷却液体をポンプで循環させているアルミ又は銅のブロック、及びペルチェ素子ならびにこれを備えたアルミ又は銅のブロックが挙げられる。
【0119】
放熱装置は、発熱体と放熱体とに熱伝導シートの各々の面を接触させることで構成される。発熱体と熱伝導シートの一方の面とを接触させる方法、及び放熱体と熱伝導シートの他方の面とを接触させる方法は、それぞれを十分に密着させた状態で固定できる方法であれば特に制限されない。
【0120】
具体的には、発熱体と放熱体との間に熱伝導シートを配置し、0.1MPa~2MPa程度に加圧可能なクリップ等の治具で固定し、この状態で発熱体を発熱させるか、又はオーブン等により80℃~180℃程度に加熱する方法が挙げられる。この方法で好ましい圧力の範囲は、0.15MPa~1MPaであり、好ましい温度の範囲は、100℃~170℃である。圧力を0.1MPa以上又は加熱温度を80℃以上とすることで、優れた密着性が得られる傾向にある。また、圧力が2MPa以下又は加熱温度が180℃以下であることで、密着の信頼性がより向上する傾向にある。これは熱伝導シートが過度に圧縮されて厚みが薄くなったり、周辺部材の歪み又は残留応力が大きくなりすぎたりすることを抑制できるためと考えられる。
【0121】
熱伝導シートは、発熱体と放熱体との間に配置して圧着する前の初期厚みに対する、圧着後により減少した厚みの割合(圧縮率)が、5%~35%であってもよい。
【0122】
固定においては、クリップの他、ネジ、バネ等の治具を用いてもよく、接着剤等の通常用いられる手段でさらに固定されていることが、密着を持続させる上で好ましい。
【実施例】
【0123】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0124】
(実施例1)
下記材料を4L加圧ニーダに投入し、到達温度170℃の条件で混練し、組成物を調製した。
【0125】
<黒鉛粒子(A)>
・鱗片状の膨張黒鉛粒子(日立化成株式会社製「HGF-L」、質量平均粒子径:270μm、前述のX線回折測定を用いた方法により、結晶中の六員環面が、鱗片状粒子の面方向に配向していることを確認した。):2369g
<重合体(B)>
・イソブテンの単独重合体(新日本石油株式会社製「テトラックス6T」、粘度平均分子量:60000、25℃で固形状、密度:0.92g/cm3):710g
<エチレンプロピレン共重合体(C)>
・エチレンプロピレン共重合体(三井化学株式会社製「ルーカントHC-2000」、重量平均分子量Mw<7000、25℃で液状、密度:0.85g/cm3):565g
<エチレンオクテンエラストマー(D)>
・エチレンオクテンエラストマー(ダウ・ケミカル社製「EOR8407」、メルトフローレート(MFR):30g/10min、密度:0.87g/cm3):245g
<脂環族炭化水素樹脂(E)>
・水素化石油樹脂(荒川化学工業株式会社製「アルコンP90」、密度:0.991g/cm3):175g
【0126】
組成物全体に対する、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分のそれぞれの含有率(体積%)は、以下の表1に示すように、順に、37.3体積%、25.5体積%、22.1体積%、9.3体積%及び5.8体積%であった。
【0127】
次に、算術平均粗さ及び熱抵抗の測定に用いる熱伝導シートを作製した。算術平均粗さ及び熱抵抗の測定に用いる熱伝導シートは、以下に示すように作製条件を変更して4種類作製した。
【0128】
(熱伝導シートの作製1)
まず、調製した組成物を押出機に入れ、幅20cm、1.5mm~1.6mm厚の平板形状に押出して一次シートを得た。得られた一次シートを、40mm×150mmの型刃を用いてプレス打ち抜きし、打ち抜いたシートを61枚積層し、高さが80mmになるよう、高さ80mmのスペーサを挟んで積層方向に90℃で30分間圧力をかけ、積層体を得た。次いで、この80mm×150mmの積層体の側端面を木工用スライサーでスライスし二次シートを得た。得られた二次シートを保護フィルムで挟み、40℃に加温したゴムロールラミネータで、上下のギャップが150μmのゴムロールの間を、速度0.6m/minで通過させることでラミネーションを行い、縦80mm×横150mm×厚さ0.15mmの熱伝導シート(I)を得た。
【0129】
(熱伝導シートの作製2)
(熱伝導シートの作製1)と同様に二次シートを作製し、得られた二次シートを保護フィルムで挟み、60℃に加温したゴムロールラミネータで、上下のギャップが0μmのゴムロールの間を、速度0.6m/minで通過させることでラミネーションを行い、縦80mm×横150mm×厚さ0.15mmの熱伝導シート(II)を得た。
【0130】
(熱伝導シートの作製3)
(熱伝導シートの作製1)と同様に二次シートを作製し、得られた二次シートを保護フィルムで挟み、80℃に加温したゴムロールラミネータで、上下のギャップが0μmのゴムロールの間を、速度0.6m/minで通過させることでラミネーションを行い、縦80mm×横150mm×厚さ0.15mmの熱伝導シート(III)を得た。
【0131】
(熱伝導シートの作製4)
(熱伝導シートの作製1)と同様に二次シートを作製し、得られた二次シートを保護フィルムで挟み、100℃に加温したゴムロールラミネータで、上下のギャップが0μmのゴムロールの間を、速度0.6m/minで通過させることでラミネーションを行い、縦80mm×横150mm×厚さ0.15mmの熱伝導シート(IV)を得た。
【0132】
熱伝導シート(I)~(IV)の断面をSEMで観察し、任意の50個の黒鉛粒子(A)について、鱗片状粒子の面方向と熱伝導シート表面とのなす角度(以下、「配向角度」ともいう)を測定したところ、配向角度の平均値は90度であり、黒鉛粒子(A)の鱗片状粒子の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。
【0133】
(算術平均粗さ)
作製した各熱伝導シートの算術平均粗さを、JIS B 0601:2013に準じて測定した。
具体的には、熱伝導シートの表面をVR-3200(キーエンス株式会社製)にてレンズ倍率40倍で撮影し、解析ソフトウェアVR-3000(キーエンス株式会社製)にて5000μm×4000μmの範囲の算術平均粗さを求めた。
作製した各熱伝導シート(熱伝導シート(I)~(IV))の算術平均粗さは、順に、3.074μm、2.056μm、1.697μm及び1.497μmであった。
【0134】
(熱抵抗の測定)
作製した各熱伝導シートの熱伝導率λ(W/mK)を求めた後、熱抵抗Rth(K・cm2/W)を求めた。
まず、作製した各熱伝導シートを直径14mmの円形に打ち抜き、厚さ1mmの27mm角の銅板を2枚準備し、この2枚の銅板の間の中央に打ち抜いた熱伝導シートを挟んだ。これを23N~24Nの強さを持つクリップ2個で固定した。加圧力はそれぞれ0.3MPaに相当する。この試料を165℃のオーブンで1時間加熱した。室温(25℃)まで冷却後、ずれないように銅板の縁をエポキシ接着剤で固定し、そしてクリップを取り外して、圧着サンプルを得た。
【0135】
続いて、圧着サンプルの25℃での熱伝導率を、熱拡散率測定装置(NETZCH社製「LFA447」)を用いて測定した。予め銅板の熱伝導率を測定しておき、熱拡散率測定装置の3層法により、熱伝導シート部分の熱伝導率λ(W/mK)を求めた。
【0136】
次に、熱抵抗Rth(K・cm2/W)は、上記の熱伝導率λと熱伝導シートの厚みt(mm)から下式により求めた。なお、熱伝導シートの厚みt(mm)は、圧着サンプルの厚みから予め測定しておいた2枚の銅板の厚みを引くことで求めた値である。圧着サンプル及び銅板の厚みは、それぞれマイクロメータで測定した。圧着サンプルは3個作製し、各3ショット測定し、その平均値を採用した。
Rth=10×t/λ
また、前述の熱抵抗の測定に用いる熱伝導シートについて、温度150℃の条件で500時間加熱処理した後、前述のように熱抵抗Rth(K・cm2/W)を求めた。
作製した各熱伝導シート(熱伝導シート(I)~(IV))の熱抵抗は、順に、0.111、0.110、0.089及び0.107であった。
【0137】
次に、貯蔵弾性率G’の測定に用いる樹脂成分を以下の条件で調製し、かつ、圧縮永久ひずみの測定に用いる熱伝導シートを以下の条件で作製した。
まず、(A)成分である黒鉛粒子を含まない点以外は、前述の実施例1の組成物と同様の混合比率で(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分を混合し、貯蔵弾性率G’の測定に用いる樹脂成分を調製した。
また、前述の実施例1の組成物を押出機に入れ、幅20cm、1.5mm~1.6mm厚の平板形状に押出して一次シートを得た。得られた一次シートを、40mm×150mmの型刃を用いてプレス打ち抜きし、打ち抜いたシートを61枚積層し、高さが80mmになるよう、高さ80mmのスペーサを挟んで積層方向に90℃で30分間圧力をかけ、積層体を得た。次いで、この80mm×150mmの積層体の側端面を木工用スライサーでスライスし二次シートを得た。得られた二次シートを保護フィルムで挟み、40℃に加温したゴムロールラミネータで、上下のゴムロール間のギャップを150μmにし、ラミネーションを行い、縦80mm×横150mm×厚さ0.15mmである圧縮永久ひずみの測定に用いる熱伝導シートを得た。
【0138】
(貯蔵弾性率G’の測定)
調製した樹脂成分を、動的粘弾性測定装置(アントンパール社製、商品名:MCR-301)を用い、正弦振動数1Hz、測定温度200℃~20℃、温度変化速度5℃/minの測定条件で、貯蔵弾性率G’を測定した。
また、前述の貯蔵弾性率G’の測定に用いる樹脂成分について、温度150℃の条件で500時間加熱処理した後、前述のように貯蔵弾性率G’を求めた。
結果を表2及び表3に示す。
【0139】
(圧縮永久ひずみの測定)
厚さ150μmの熱伝導シートを温度150℃の条件で0時間(加熱なし)及び500時間加熱し、マイクロフォース試験機(Instoron社製、Micro Tester 5948)にて、温度150℃で、1cm2当たりに掛かる圧力が20Psiに加圧されるまで0.1mm/minで圧縮し、20Psiに達した直後から1cm2当たりに掛かる圧力が0Psiになるまで0.1mm/minで開放し、その後室温(25℃)に30分放置してから永久ひずみを測定し、以下の式に基づき、圧縮永久ひずみ(%)を測定した。
圧縮永久ひずみ(%)=[(T0-T1)/T0]×100
T0:圧縮前の熱伝導シートの厚さ(μm)
T1:マイクロフォース試験機により圧縮ひずみを加え、室温で放置した後の熱伝導シートの厚さ(μm)
また、圧縮永久ひずみの測定に用いた熱伝導シートと同様の条件で作製した熱伝導シートについても、前述のように熱抵抗を測定した。
結果を表2及び表3に示す。
【0140】
(空隙率の測定)
作製した熱伝導シートを1cm2に打ち抜き、さらに厚みを5点測定し、打ち抜いた熱伝導シートの体積を求めた。その後、精密電子天秤にて質量を測定し、この質量と先に測定した体積から打ち抜いた熱伝導シートの嵩密度ρを求めた。また、この熱伝導シートに含有する全ての材料の比重と体積割合から1cm2の真密度ρ’を求めた。これらを用いて、以下の式から空隙率Pを算出した。
空隙率P=[1-(ρ/ρ’)]×100(%))・・・(1)
作製した各熱伝導シート(熱伝導シート(I)~(IV))の空隙率は、順に、11.0%、7.3%、6.8%及び4.5%であった。
【0141】
(実施例2)
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び酸化防止剤を含有する組成物を実施例1と同様の方法で組成物を調製した。実施例2で調製した組成物の各成分比率を表1に示す。なお、実施例2に含有する(C)成分及び酸化防止剤は以下の通りである。
・エチレンプロピレン共重合体(三井化学株式会社製「ルーカントHC-3000X」)
・ヒンダートフェノール系酸化防止剤(株式会社ADEKA製「AO-60」)
【0142】
(比較例1~比較例4)
以下の表1に示す各材料を表1の混合比率で4L加圧ニーダに投入し、到達温度170℃の条件で混練し、各組成物を調製した。なお、比較例1~比較例4の組成物に含有されるその他ポリマーについては、以下の通りである。
・ポリブテン3N(日油株式会社製、数平均分子量:720、密度:0.880g/cm3)
・ポリブテン30N(日油株式会社製、数平均分子量:1350、密度:0.899g/cm3)
【0143】
【0144】
比較例3について、実施例1の熱伝導シート(I)及び熱伝導シート(II)と同様の条件で算術平均粗さ、空隙率、熱抵抗の測定に用いる熱伝導シート(熱伝導シート(V)及び熱伝導シート(VI))を作製した。
また、比較例4についても、実施例1の熱伝導シート(I)及び熱伝導シート(II)と同様の条件で算術平均粗さ、空隙率、熱抵抗の測定に用いる熱伝導シート(熱伝導シート(VII)及び熱伝導シート(VIII))を作製した。
そして、作製した熱伝導シート(V)及び熱伝導シート(VII)について、実施例1と同様の条件で算術平均粗さ、空隙率及び熱抵抗を測定し、作製した熱伝導シート(VI)及び熱伝導シート(VIII)について、実施例1と同様の条件で算術平均粗さ及び熱抵抗を測定した。
比較例3の熱伝導シート(V)について、算術平均粗さは3.809μm、空隙率は13.9%及び熱抵抗は0.113であった。
比較例3の熱伝導シート(VI)について、算術平均粗さは2.346μm及び熱抵抗は0.112であった。
比較例4の熱伝導シート(VII)について、算術平均粗さは3.435μm、空隙率は11.0%及び熱抵抗は0.112であった。
比較例4における熱伝導シート(VIII)について、算術平均粗さは2.274μm及び熱抵抗は0.111であった。
【0145】
また、実施例2及び比較例1~比較例4について、貯蔵弾性率G’の測定に用いる樹脂成分及び圧縮永久ひずみの測定に用いる熱伝導シートを実施例1と同様の条件(段落[0137]に記載の条件)で作製した。そして、実施例1と同様の条件で貯蔵弾性率G’、圧縮永久ひずみ及び熱抵抗を測定した。
結果を表2及び表3に示す。
【0146】
【0147】
【0148】
以上から、(A)成分~(D)成分を含む実施例1の熱伝導シート、特に、熱伝導シート(II)~(IV)では、例えば、比較例3及び比較例4の熱伝導シート(V)~(VIII)と比較して、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れていることが示された。
また、表2及び表3に示すように、(A)成分~(D)成分を含む実施例1及び実施例2の熱伝導シートは、比較例1~比較例4の熱伝導シートと比較して、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れていることが示された。
【0149】
また、表2に示すように、150℃での貯蔵弾性率G’が8Pa・s以上である実施例1及び実施例2の熱伝導シートは、比較例1~比較例4の熱伝導シートと比較して、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れていることが示された。
特に、表3に示すように、150℃にて処理した後の貯蔵弾性率G’が5Pa・s以上である実施例1及び実施例2の熱伝導シートは、比較例1~比較例4の熱伝導シートと比較して、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れていることが示された。
【0150】
また、表3に示すように、150℃にて処理した後の圧縮永久ひずみ(%)が4%以下である実施例1及び実施例2の熱伝導シートは、比較例1~比較例4の熱伝導シートと比較して、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れていることが示された。
【0151】
また、表面の算術平均粗さが2.1μm以下である実施例1の熱伝導シート(II)~(IV)では、比較例3及び比較例4の熱伝導シート(V)~(VIII)と比較して、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れていることが示された。
【0152】
さらに、空隙率が10%以下である実施例1の熱伝導シート(II)~(IV)では、空隙率が10%超である比較例3及び比較例4の熱伝導シート(V)及び(VII)と比較して、熱抵抗が小さく、熱伝導性に優れていることが示された。
【0153】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。