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特許7151914ナノ結晶含有組成物、インク組成物、光変換層および発光素子
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  • 特許-ナノ結晶含有組成物、インク組成物、光変換層および発光素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ナノ結晶含有組成物、インク組成物、光変換層および発光素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20221004BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221004BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20221004BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20221004BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G02B5/20
H05B33/14 A
H05B33/12 E
C09K11/08 G ZNM
C09K11/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021571713
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036032
(87)【国際公開番号】W WO2022080143
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2020173811
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】初阪 一輝
(72)【発明者】
【氏名】延藤 浩一
(72)【発明者】
【氏名】青木 良夫
(72)【発明者】
【氏名】野中 祐貴
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-204756(JP,A)
【文献】特許第6506488(JP,B1)
【文献】特開2020-070443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
H01L 51/50
H05B 33/12
C09K 11/08
C09K 11/02
C09K 11/61
C09K 11/85
C09D 11/32
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は2種以上の光重合性モノマーと、メタルハライドからなりペロブスカイト型構造を有する発光性ナノ結晶の表面に1種又は2種以上の配位子を備えた発光微粒子とを含有し、
任意の光重合性モノマーの立体パラメーターMRと任意の配位子の立体パラメーターMRの差の絶対値|ΔMR|を算出したとき、下記式(A)を満足する光重合性モノマー及び配位子の組み合わせが1以上存在し、且つ、
前記ナノ結晶含有組成物中に含まれる各前記光重合性モノマー及び各前記配位子の全ての組み合わせについて、各前記光重合性モノマーの含有量及び各前記配位子が前記発光性ナノ結晶の表面に配位する比率を考慮して算出した|ΔMR|の加重平均値|ΔMR|加重平均が下式(B)を満足し、
前記式(A)を満足する光重合性モノマー及び配位子の組み合わせにおいて、当該光重合性モノマー又は当該配位子のいずれか一方が環状構造を含む化合物を含有し、
前記式(A)を満足する光重合性モノマー及び配位子の組み合わせにおいて前記光重合性モノマーが前記環状構造を含む化合物を含有するとき、前記配位子が直鎖状の分子構造を含む化合物を含有し、当該光重合性モノマーの立体パラメーターMRが50~70の範囲であり且つ当該配位子の立体パラメーターMRが80~90の範囲であり、
前記式(A)を満足する光重合性モノマー及び配位子の組み合わせにおいて前記配位子が前記環状構造を含む化合物を含有するとき、前記光重合性モノマーが直鎖状の分子構造を含む化合物を含有し、当該光重合性モノマーの立体パラメーターMRが60~100の範囲であり且つ当該配位子の立体パラメーターMRが40~80の範囲である
ことを特徴とするナノ結晶含有組成物。
|ΔMR|=|(光重合性モノマーの立体パラメーターMR)-(配位子の立体パラメーターMR)|≧12 (A)
|ΔMR|加重平均≧12 (B)
(但し、立体パラメーターMRは下式(C)
【化1】
で表され、式(C)中、nは屈折率を表し、Mは分子量を表し、dは密度を表す。)
【請求項2】
前記環状構造を含む化合物は、下記式(1-2)~(1-24)で表される環状構造を含む請求項記載のナノ結晶含有組成物。
【化2】

【化3】
【化4】
【請求項3】
前記発光微粒子が、前記発光性ナノ結晶の表面にシロキサン結合を形成可能な反応性基を有する配位子を備え、当該配位子によってSiを含む無機被覆層が形成されている請求項1又は請求項2に記載のナノ結晶含有組成物。
【請求項4】
さらに、光重合開始剤、光散乱剤及び分散剤のうちの少なくとも1つ以上を含有する請求項1~のいずれか1項に記載のナノ結晶含有組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のナノ結晶含有組成物を用いたことを特徴とするインク組成物。
【請求項6】
請求項項に記載のインク組成物の硬化物を含むことを特徴とする光変換層。
【請求項7】
請求項に記載の光変換層を備えたことを特徴とする発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ結晶含有組成物、当該組成物を用いたインク組成物、当該インク組成物の硬化物を含む光変換層、並びにその光変換層を備えた発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代表示デバイスとして要求されるBT2020は、極めて意欲的な基準であり、現在の顔料を用いたカラーフィルタや有機ELでも、これを満たすことは困難である。一方、量子ドットは、発光波長の半値幅が狭い赤、緑、青等の蛍光を発する材料であり、BT2020をクリアできる発光材料として注目を集めている。初期の量子ドットでは、CdSeなどを用いたコアシェル型ナノ粒子が用いられたが、その有害性を回避するため最近はInPなどが用いられている。しかしながら、コアシェル型量子ドットは、その粒子サイズにより発光波長が決まるため、半値幅の狭い発光を得るためには粒子径の分散度を精密に制御することが必要になっており、その生産には課題が多い。
【0003】
近年、メタルハライドからなる発光性ナノ結晶、特にペロブスカイト型結晶構造を有する量子ドットが見出され、注目を集めている。一般的なペロブスカイト量子ドット(以下、「PeQD」と記載することがある。)はCsPbX(X=Cl,Br,I)で表される構造のナノサイズ結晶粒子である。PeQDは、ハロゲン元素の割合によって発光波長を制御可能であること、InP量子ドットなどと比較して粒子サイズの制御が容易であることから、従来の量子ドットと比較して生産性面で有利である。
【0004】
非特許文献1には、PeQDとポリ(メチルメタクリレート)(以下、「PMMA」と記載することがある。)とを含むインク組成物が報告されている。これに対し、特許文献1には、PeQDとPMMAとを含むインク組成物は、塗膜の耐溶剤性が必ずしも十分でないという問題が指摘されている。特許文献1には、PeQDと光重合性モノマーとを含み、さらに溶媒を含んでもよく、光重合性モノマー及び溶媒中に含まれる炭素、酸素、窒素の割合を規定したインク組成物が開示されている。さらに、特許文献1に類似の技術として、特許文献2には、ペロブスカイト化合物を含む蛍光粒子と光重合性モノマーと光重合開始剤とを含み、光重合性モノマーのLogP値を規定した硬化性組成物としてのナノ結晶含有組成物が開示されている。特許文献1および特許文献2の技術的なポイントは、光重合性モノマーの極性に着目し、その極性が低いものが好ましいことにあると考えられる。しかし、これら公知文献に開示されたインク組成物又はナノ結晶含有組成物のように、光重合性モノマーの極性に着目するだけでは、PeQDの分散性および発光特性を両立するためには十分でないという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6506488号
【文献】特開2020-70443
【非特許文献】
【0006】
【文献】Nano Lett.2015,15,3692-3696
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、分散安定性および発光特性に優れたナノ結晶含有組成物、当該組成物を含むインク組成物、当該インク組成物の硬化物を含む光変換層、並びにその光変換層を備えた発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、メタルハライドからなる発光性ナノ結晶の表面に配位子を設けると共に、当該配位子と光重合性モノマーとして特定の条件を満足するものを用いることにより、分散安定性及び発光特性に優れたナノ結晶含有組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、1種又は2種以上のモノマーと、メタルハライドからなる発光性ナノ結晶の表面に1種又は2種以上の配位子を備えた発光微粒子とを含有し、任意の光重合性モノマーの立体パラメーターMRと任意の立体パラメーターMRの差の絶対値|ΔMR|を算出したとき、下記式(A)を満足する光重合性モノマー及び配位子の組み合わせが1以上存在し、且つ、前記ナノ結晶含有組成物中に含まれる各前記光重合性モノマー及び各前記配位子の全ての組み合わせについて、各前記光重合性モノマーの含有量及び各前記配位子が前記発光性ナノ結晶の表面に配位する比率を考慮して算出した|ΔMR|の加重平均値|ΔMR|加重平均が下式(B)を満足することを特徴とするナノ結晶含有組成物を提供する。
|ΔMR|=|(モノマーの立体パラメーターMR)-(配位子の立体パラメーターMR)|≧12 (A)
|ΔMR|加重平均≧12 (B)
(但し、立体パラメーターMRは下式(C)
【化1】
で表され、式(C)中、nは屈折率を表し、Mは分子量を表し、dは密度を表す。)
【0010】
本発明は、上述のナノ結晶含有組成物を含むインク組成物を提供する。
【0011】
本発明は、上述のインク組成物の硬化物を含むことを特徴とする光変換層を提供する。
【0012】
本発明は、上述の光変換層を備えたことを特徴とする発光素子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る発光ナノ結晶含有組成物に含有される発光微粒子の一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係る発光ナノ結晶含有組成物に含有される発光微粒子の他の一実施形態を示す断面図である。
図3】本発明に係る発光素子の一実施形態を示す断面図である。
図4】アクティブマトリックス回路の構成を示す概略図である。
図5】アクティブマトリックス回路の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のナノ結晶含有組成物、インク組成物、光変換層及び発光素子と、それらの製造方法の実施の形態について、詳細について説明する。
【0015】
1.ナノ結晶含有組成物
本発明の実施形態のナノ結晶含有組成物は、1種又は2種以上の光重合性モノマーと、メタルハライドからなる発光性ナノ結晶の表面に1種又は2種以上の配位子を備えた発光微粒子とを含有する。発光微粒子の具体的構成については、後述する。
【0016】
1-1.立体パラメーターに関する条件
本発明のナノ結晶含有組成物は、任意の光重合性モノマーの立体パラメーターMRと任意の配位子の立体パラメーターMRの差の絶対値|ΔMR|を算出したとき、下記式(A)を満足する光重合性モノマー及び配位子の組み合わせが1以上存在し、且つ、前記ナノ結晶含有組成物中に含まれる各前記光重合性モノマー及び各前記配位子の全ての組み合わせについて、各前記光重合性モノマーの含有量及び各前記配位子が前記発光性ナノ結晶の表面に配位する比率を考慮して算出した|ΔMR|の加重平均値|ΔMR|加重平均が下式(B)を満足することを特徴とする。
|ΔMR|=|(モノマーの立体パラメーターMR)-(配位子の立体パラメーターMR)|≧12 (A)
|ΔMR|加重平均≧12 (B)
【0017】
各光重合性モノマー又は各配位子の立体パラメーターMRは、下式(C)で表される。式(C)中、nは屈折率を表し、Mは分子量を表し、dは密度を表す。
【化2】
【0018】
上記立体パラメーターMRは、例えば分子の構造と薬理活性との相関を調べるために利用されている化合物全体の3次元的な大きさを表す指標であり、例えば、「オペレーションズ・リサーチ,(25)394-401,7月号,1982年」や「日本農薬学会誌 実験技術講座Vol.38,No.2,195-203(2013)」に開示されている。立体パラメーターMRは、分子の全体的な大きさを表す指標であるため、化合物の立体的な構造の違いを表す指標として適していると考えられる。
【0019】
本発明においては、この立体パラメーターMRを、光重合性モノマー又は配位子を構成する化合物の立体的な構造の違いを表す指標として適用する。ナノ結晶含有組成物中に含まれる光重合性モノマーを構成する化合物と配位子を構成する化合物とが互いに似た構造を備える場合には、|ΔMR|は小さな値(例えば、10以下)となる。その場合、ナノ結晶含有組成物において、光重合性モノマーを構成する化合物と配位子を構成する化合物とが互いに似た構造であるために、発光性ナノ結晶に配位する配位子が光重合性モノマーと容易に交換しやすくなる結果、配位子によって保たれていたナノ結晶のエネルギー準位が変化することで発光特性が変化し、また分散安定性も低下するなど、優れた発光特性を維持するのが困難となる。
【0020】
これに対し、|ΔMR|が式(A)を満足する場合には、光重合性モノマーを構成する化合物と配位子を構成する化合物とが互いに大きく異なる構造を備えることを意味する。その場合、ナノ結晶含有組成物において、発光性ナノ結晶に配位する配位子と光重合性モノマーとの交換を抑制することができる。
【0021】
|ΔMR|は、12以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、20以上であることが特に好ましい。また、|ΔMR|の上限値については特に規定はないが、光重合性モノマーと配位子を構成する化合物の立体的な構造の違いが大きくなり過ぎると、メタルハライドからなる発光性ナノ結晶の表面に配位子を備えた発光微粒子と光重合性モノマーとの相溶性が低くなることから50以下であることが好ましい。
【0022】
本発明のナノ結晶含有組成物は、2種以上の光重合性モノマーと2種以上の配位子とを含む場合に、光重合性モノマー及び配位子の少なくとも1つ以上の組み合わせにおいて|ΔMR|が上述の式(A)を満たせばよく、|ΔMR|が上述の式(A)を満足しない光重合性モノマー及び配位子の使用を制限するものではない。例えば、ナノ結晶含有組成物が光重合性モノマー2種P、Qと配位子2種Y、Zとを使用し、光重合性モノマーPと配位子Yとの組み合わせにおける|ΔMR|PYが式(A)を満足するとき、光重合性モノマーPと配位子Zとの組み合わせにおける|ΔMR|PZ、光重合性モノマーQと配位子Yとの組み合わせにおける|ΔMR|QY及び光重合性モノマーQと配位子Zとの組み合わせにおける|ΔMR|QZが式(A)を満たしてもよく、満たさなくてもよい。
【0023】
そして、本発明のナノ結晶含有組成物は、光重合性モノマー及び配位子の少なくとも1つの組み合わせにおける|ΔMR|が上述の式(A)を満たした上で、さらに、光重合性モノマー及び配位子の全ての組み合わせにおける|ΔMR|の加重平均|ΔMR|加重平均が下式(B)を満足する。但し、|ΔMR|加重平均は、ナノ結晶含有組成物に含まれる各光重合性モノマーの含有量及び各配位子がナノ結晶の表面に配位する比率を考慮して算出したものである。
|ΔMR|加重平均≧12 (B)
【0024】
|ΔMR|の加重平均|ΔMR|加重平均が上述の式(B)を満足するとは、ナノ結晶含有組成物に含まれる光重合性モノマーと配位子との組み合わせの大部分において、光重合性モノマーを構成する化合物と配位子を構成する化合物とが互いに大きく異なる構造を備えることを意味する。ナノ結晶含有組成物において、発光性ナノ結晶に配位する配位子と光重合性モノマーとの交換を抑制するという上述の効果を確実に得ることができため、優れた分散安定性と優れた発光特性とを両立して実現することができる。
【0025】
一方、ナノ結晶含有組成物において、|ΔMR|の加重平均|ΔMR|加重平均が上述の式(B)を満足しない場合には、配位子と光重合性モノマーとの交換を抑制することができないため、良好な分散安定性及び発光特性を確保できない。
【0026】
|ΔMR|加重平均は、ナノ結晶含有組成物に含まれる各光重合性モノマーの含有量及び各配位子がナノ結晶の表面に配位する比率を考慮して算出する。例えば、ナノ結晶含有組成物が、m質量部の光重合性モノマーP(立体パラメーターMR)及びm質量部の光重合性モノマーQ(立体パラメーターがMR)の2種類を含有し、発光性ナノ結晶の表面にカチオン性の配位子Y(立体パラメーターMR)及びアニオン性の配位子Z(立体パラメーターMR)の2種類が配位している場合に、以下のようにして算出することができる。なお、ナノ結晶含有組成物に含まれる光重合性モノマーが1種類又は3種類以上であっても、また、配位子が1種類又は3種類以上であっても、|ΔMR|加重平均を同様に算出可能である。
【0027】
まず、光重合性モノマーと配位子との各組み合わせにおける立体パラメーターの差の絶対値|ΔMR|をそれぞれ算出する。
|ΔMR|PY=|MR-MR
|ΔMR|PZ=|MR-MR
|ΔMR|QY=|MR-MR
|ΔMR|QZ=|MR-MR
【0028】
次に、得られた|ΔMR|PY~|ΔMR|QZに対して光重合性モノマーの配合比(質量換算)及び配位子の配位比率によって重みづけすることにより、|ΔMR|加重平均を算出する。もし、カチオン性の配位子とアニオン性の配位子の配位する割合がわかる場合は、その比率に応じて計算することが好ましい。例えば、配位子Yと配位子Zとが発光性ナノ結晶の表面にr:rの割合で配位している場合には、以下のように算出する。
|ΔMR|加重平均={(|ΔMR|PY×r+|ΔMR|PZ×r)×m+(|ΔMR|QY×r+|ΔMR|QZ×r)×m}/(m+m
【0029】
但し、配位子Yと配位子Zとの配位比率が明らかでない場合には、発光性ナノ結晶の表面に0.5:0.5の割合で配位していると仮定して、以下のように計算する。
|ΔMR|加重平均={(|ΔMR|PY×0.5+|ΔMR|PZ×0.5)×m+(|ΔMR|QY×0.5+|ΔMR|QZ×0.5)×m}/(m+m
【0030】
前記式(A)を満足する光重合性モノマー及び配位子の組み合わせにおいて、当該光重合性モノマー又は当該配位子の少なくとも一方が環状構造を含む化合物であることが好ましい。特にメタルハライドからなる発光性ナノ結晶の表面には、オレイルアミンやオレイン酸のような直鎖状の化合物が配位子として利用されていることが多い。配位子がこのような直鎖状の分子構造を有する化合物である場合には、特に環状構造を含む光重合性モノマーを用いることが好ましい。立体障害の大きな環状構造を含む光重合性モノマーは、直鎖状の分子構造をもつ配位子に覆われた表面に対して、入り込むことが困難となるため、光重合性モノマーと配位子との交換が生じ難くなる。一方、環状構造を含む化合物を配位子として用いる場合には、配位子とは形状の異なる直鎖状の光重合性モノマーが発光性ナノ結晶に入り込むことはエネルギー的に不利となるため、光重合性モノマーと配位子との交換が生じ難くなる。このように、光重合性モノマー及び配位子の少なくとも一方に環状構造を含む化合物を用いることにより、光重合性モノマーと配位子の交換を抑制することができる。その結果、メタルハライドからなる発光性ナノ結晶の表面を配位子で安定して覆った状態を維持することができ、発光性ナノ結晶の中でトラップされるエネルギー準位が発生せず、良好な発光特性を維持することができる。
【0031】
前記式(A)を満足する光重合性モノマー及び配位子の組み合わせとなるためには、光重合性モノマーが環状構造を含む化合物である場合、あるいは配位子が環状構造の化合物を含む化合物である場合、それぞれ好ましい立体パラメーターの範囲は以下に示す範囲となることが好ましい。
【0032】
(1)光重合性モノマーが環状構造を含む化合物を用いる場合、光重合性モノマーの立体パラメーターが40~90、かつ直鎖状の分子構造をもつ配位子の立体パラメーターが60~110の範囲にあることが、発光性ナノ結晶の表面を配位子で安定して覆った状態を維持する上で好ましい。さらには、光重合性モノマーの立体パラメーターが50~70、かつ直鎖状の分子構造をもつ配位子の立体パラメーターが80~90の範囲になることが、配位子の被覆安定性、発光性ナノ結晶の分散安定性、および発光特性を発揮する上で特に好ましい。
【0033】
(2)配位子が環状構造を含む化合物を用いる場合、直鎖状の分子構造をもつ光重合性モノマーの立体パラメーターが60~100、かつ配位子の立体パラメーターが40~80の範囲にあることが、発光性ナノ結晶の表面を配位子で安定して覆った状態を維持する上で好ましい。さらには、直鎖状の分子構造をもつ光重合性モノマーの立体パラメーターが75~85、かつ配位子の立体パラメーターが55~65の範囲になることが、配位子の被覆安定性、発光性ナノ結晶の分散安定性、および発光特性を発揮する上で特に好ましい。
【0034】
環状構造を含む化合物の環状構造は、具体的には、下記式(1-2)~(1-24)で表すことができる。式(1-2)~(1-24)で表される各環状構造は、当該環状構造中の任意の炭素原子において他の構造部位と結合し得る。
【化3】
【化4】
【化5】
【0035】
前記式(1-2)~(1-24)中の任意の-CH-は、-O-、-S-、-N=、又は-NH-に置換されていてもよい。光重合性モノマー又は配位子の少なくとも一方が、式(1-3)、(1-4)、(1-6)、(1-8)、(1-10)、(1-15)及び(1-19)~(1-24)で表される環状構造を含む化合物である場合には、発光微粒子との相溶性に優れ分散性を向上できるため好ましい。さらに、光重合性モノマー又は配位子の少なくとも一方が、式(1-3)、(1-4)及び(1-19)~(1-24)で表される環状構造を含む化合物である場合には、発光微粒子との分散性に加え、高い量子収率を確保することができるためより好ましい。特に、式(1-3)、(1-19)及び(1-21)で表される環状構造を含む化合物は、光重合性モノマー及び配位子の両方に利用できる点で一層好ましい。
【0036】
前記式(1-2)~(1-24)中の任意の水素原子はRに置換することができる。Rが官能基である場合、Rとして、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、ボロン酸基、アミド基、及びチオアミド基を挙げることができる。特に、配位子が、Rがカルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、アミド基、チオアミド基である環状構造を含む化合物である場合には、発光微粒子への配位能力を高めることができるため好ましい。
【0037】
がアルキル基である場合、炭素数1~20の分岐又は直鎖のアルキル基を表し、前記アルキル基の末端にある-CHが-NH、-OH、-SH、-COOH、-CONH、-CSNHに置換されてもよく、該アルキル基中の-CH-が-Si-、-NH-又は-O-に置換されてもよく、該アルキル基中の-(CH-が-(CH=CH)-に置換されてもよい。発光微粒子との分散性を高めるためにはRの炭素数は1~10が好ましく、発光微粒子との分散性を高め、量子収率も高めるためにはRの炭素数は1~5が特に好ましい。発光微粒子の量子収率保持率を高めるためには、Siを含む無機被覆層を形成しうるポリアルコキシシラン、ポリシラノール、ポリシラザン構造を含むことが好ましい。
【0038】
がアルコキシ基である場合、炭素数1~20の分岐又は直鎖のアルコキシル基を表す。前記アルコキシ基の末端にある-CHが-NH、-OH、-SH、-COOH、-CONH、-CSNHに置換されてもよく、該アルコキシ基中の-CH-が-Si-、-NH-又は-O-に置換されてもよく、該アルコキシ基中の-(CH-が-(CH=CH)-に置換されてもよい。発光微粒子との分散性を高めるためにはRの炭素数は1~10が好ましく、発光微粒子との分散性を高め、量子収率も高めるためにはRの炭素数は1~5が特に好ましい。発光微粒子の量子収率保持率を高めるためには、Siを含む無機被覆層を形成しうるポリアルコキシシラン、ポリシラノール、ポリシラザン構造を含むことが好ましい。
【0039】
前記式(1-2)~(1-24)中の任意の水素原子はPに置換することができる。Pは、それぞれ独立して下記一般式(P-1)~(P-16)で表される。式中の黒点は結合手を表す。Pが複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【化6】
【0040】
より好ましくは(P-1)、(P-2)、(P-3)が好ましく、(P-2)、(P-3)が発光微粒子の量子収率の低下を抑制できる点で好ましく、特に(P-2)が好ましい。
【0041】
光重合性モノマーとして前記(1-2)~(1-24)で表される環状構造を含む化合物を用いる場合、より具体的には下記式(1-3-1)~(1-3-8)、(1-4-1)~(1-4-8)、(1-19-1)~(1-19-16)、(1-21-1)~(1-21-8)、(1-22-1)~(1-22-4)、(1-23-1)~(1-23-8)及び(1-24-1)~(1-24-4)で表される化合物を好適に用いることができる。下記式中のx及びzは、それぞれ独立して0~18が好ましく、y及びzzは、それぞれ独立して1~18が好ましい。さらに、これらの環状構造を含む化合物からなる光重合性モノマーの立体パラメーターが40~90となるためには、下記式中のx及びzは、それぞれ独立して0~5が好ましく、y及びzzは、それぞれ独立して1~5となることが好ましい。発光微粒子との分散性を維持しながら、立体パラメーターとが60~70となるためには下記式(1-3-1)~(1-3-6)、(1-4-1)~(1-4-8)、(1-19-1)~(1-19-8)、(1-21-1)~(1-21-4)、(1-22-1)~(1-22-4)、(1-23-5)~(1-23-8)で表される化合物が好ましく、下記式中のx及びzは、それぞれ独立して0~5が好ましく、y及びzzは、それぞれ独立して1~5となることが好ましい。さらに、環状構造として立体パラメーターを65より高めたい場合には、アダマンチル構造をもつ(1-19-1)~(1-19-8)、または1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル構造をもつ(1-23-5)~(1-23-8)が特に好ましく、下記式中のx及びzは、それぞれ独立して0~5が好ましく、y及びzzは、それぞれ独立して1~5となることが特に好ましい。
【0042】
【化7】
【化8】
【0043】
【化9】
【化10】
【化11】
【0044】
【化12】
【化13】
【0045】
【化14】
【0046】
【化15】
【化16】
【0047】
【化17】
【0048】
前述したように、環状の分子構造をもつ光重合性モノマーの立体パラメーターが40~90となる化合物を用いる場合、好適な組み合わせとなる配位子は、直鎖状の分子構造をもつ配位子の立体パラメーターが60~110の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは、環状の分子構造をもつ光重合性モノマーの立体パラメーターが50~70、かつ直鎖状の分子構造をもつ配位子の立体パラメーターが80~90の範囲になることより好ましい。このような条件を満たす配位子の化合物としては、末端の官能基がカルボン酸、あるいはアミンとなる配位子が好ましい。また、これらの末端官能基がカルボン酸、あるいはアミンとなる配位子は、1:1の比率で用いることが好ましい。
【0049】
末端の官能基がカルボン酸となる直鎖状の分子構造をもつ配位子としては、具体的には下記の化合物が好ましく、(1)トリデカン酸、2-トリデセン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、パルミチン酸、2-ヘキサデセン酸、ヘプタデカン酸、ペトロセリン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ステアリン酸、リノレン酸、オレイン酸、エライジン酸、リシノール酸、cis-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、cis-8,11,14-エイコサトリエン酸、アラキドン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、cis-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸、エルカ酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、トリコサン酸が、配位子の立体パラメーターが60~110となる配位として好ましく、(2)より好ましくは、ペンタデカン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、パルミチン酸、2-ヘキサデセン酸、ヘプタデカン酸、ペトロセリン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ステアリン酸、リノレン酸、オレイン酸、エライジン酸、リシノール酸、cis-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、cis-8,11,14-エイコサトリエン酸、アラキドン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸が、配位子の立体パラメーターが70~100となる配位として好ましく、(3)特に好ましくは、ヘプタデカン酸、ペトロセリン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ステアリン酸、リノレン酸、オレイン酸が、配位子の立体パラメーターが80~90となる配位子として特に好ましい。
【0050】
末端の官能基がアミンとなる直鎖状の分子構造をもつ配位子としては、具体的には下記の化合物が好ましく、(1)ドデシルアミン、テトラデシルアミン、1-アミノトリデカン、1-アミノペンタデカン、ヘキサデシルアミン、1-アミノヘプタデカン、ステアリルアミン、ヘプタデカン-9-アミン、オレイルアミン、1-アミノノナデカン、2-n-オクチル-1-ドデシルアミンが、配位子の立体パラメーターが60~110となる配位として好ましく、(2)より好ましくは、1-アミノペンタデカン、ヘキサデシルアミン、1-アミノヘプタデカン、ステアリルアミン、ヘプタデカン-9-アミン、オレイルアミン、1-アミノノナデカン、2-n-オクチル-1-ドデシルアミンが、配位子の立体パラメーターが70~100となる配位として好ましく、(3)特に好ましくは、ヘキサデシルアミン、1-アミノヘプタデカン、ステアリルアミン、ヘプタデカン-9-アミン、オレイルアミンが、配位子の立体パラメーターが80~90となる配位子として特に好ましい。
【0051】
一方、メタルハライドからなる発光性ナノ結晶の表面に配位させる配位子として前記(1-2)~(1-24)で表される環状構造を含む化合物を用いる場合、環状構造を含む化合物からなる配位子の立体パラメーターが40~80の範囲となるためには、下記(1-19-A)~(1-19-H)で表される化合物を好適に用いることができ、(1-19-A)~(1-19-F)で表される化合物が特に好ましい。下記式中のxx、及びyyは、それぞれ独立して1~18が好ましく、配位子の立体パラメーターが55~65の範囲になるためには、下記式中のxx、およびyyは、それぞれ独立して1~5がより好ましい。
【0052】
【化18】
【0053】
環状の分子構造をもつ配位子の立体パラメーターが40~80となる化合物を用いる場合、好適な組み合わせとなる直鎖状の分子構造をもつ光重合性モノマーは、直鎖状の分子構造をもつ光重合性モノマーの立体パラメーターが50~100の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは、環状の分子構造をもつ配位子の立体パラメーターが55~65、かつ直鎖状の分子構造をもつ光重合性モノマーの立体パラメーターが75~85の範囲になることより好ましい。具体的には、下記に示す化合物を用いることが好ましい。
【0054】
すなわち、(1)メタクリレート化合物としては、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸テトラデシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ヘキサデシルが、アクリレート化合物としては、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸テトラデシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸ヘプタデシルが、立体パラメーターが60~100の範囲になる直鎖状の分子構造をもつ光重合性モノマーとして好ましく、(2)より好ましくは、メタクリレート化合物としては、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリデシルが、アクリレート化合物としては、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸テトラデシルが、立体パラメーターが75~85の範囲になる直鎖状の分子構造をもつ光重合性モノマーとして特に好ましい。
【0055】
より具体的に、前記式(A)を満足する光重合性モノマー及び配位子の好ましい組み合わせは、次の組み合わせが好ましい。
【0056】
光重合性モノマーが環状構造を含む化合物を用いる場合、光重合性モノマーの立体パラメーターが40~90、かつ直鎖状の分子構造をもつ配位子の立体パラメーターが60~110の範囲にあることが、発光性ナノ結晶の表面を配位子で安定して覆った状態を維持する上で好ましいく、具体的には、立体パラメーターが40~90となる光重合性モノマーとして式(1-3-1)~(1-3-8)、(1-4-1)~(1-4-8)、(1-19-1)~(1-19-16)、(1-21-1)~(1-21-8)、(1-22-1)~(1-22-4)、(1-23-1)~(1-23-8)及び(1-24-1)~(1-24-4)で表される化合物であって、式中のx及びzは、それぞれ独立して0~5、y及びzzは、それぞれ独立して1~5である光重合性モノマーと、立体パラメーターが60~110となる末端の官能基がカルボン酸となる直鎖状の分子構造をもつ配位子としては、トリデカン酸、2-トリデセン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、パルミチン酸、2-ヘキサデセン酸、ヘプタデカン酸、ペトロセリン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ステアリン酸、リノレン酸、オレイン酸、エライジン酸、リシノール酸、cis-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、cis-8,11,14-エイコサトリエン酸、アラキドン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、cis-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸、エルカ酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、トリコサン酸が、立体パラメーターが60~110となる末端の官能基がアミンとなる直鎖状の分子構造をもつ配位子としては、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、1-アミノトリデカン、1-アミノペンタデカン、ヘキサデシルアミン、1-アミノヘプタデカン、ステアリルアミン、ヘプタデカン-9-アミン、オレイルアミン、1-アミノノナデカン、2-n-オクチル-1-ドデシルアミン、から選ばれる配位子を組み合わせることが好ましい。
【0057】
さらに好ましくは、光重合性モノマーの立体パラメーターが50~70、かつ直鎖状の分子構造をもつ配位子の立体パラメーターが80~90の範囲になることが、配位子の被覆安定性、発光性ナノ結晶の分散安定性、および発光特性を発揮する上で特に好ましく、具体的には、立体パラメーターが50~70となる光重合性モノマーとして、式(1-3-1)~(1-3-6)、(1-4-1)~(1-4-8)、(1-19-1)~(1-19-8)、(1-21-1)~(1-21-4)、(1-22-1)~(1-22-4)、(1-23-5)~(1-23-8)、(1-24-1)~(1-24-4)で表される化合物が好ましく、発光性ナノ結晶の発光特性を高めるためには、アクリレート化合物よりはメタクリレート化合物である、(1-3-5)、(1-3-6)、(1-4-5)~(1-4-8)、(1-19-3)~(1-19-8)、(1-21-3)、(1-21-4)、(1-22-3)、(1-22-4)、(1-23-3)、(1-23-4)、(1-23-7)、(1-23-8)、(1-24-3)、(1-24-4)で表される化合物が好ましく、(1-24-3)と(1-24-4)の中でも、QD分散体またはQDインクの分散安定性を維持しながら、QD分散体および光変換層のPLQY保持率を高めるためには(1-24-4)が好ましく、環状構造をもつ光重合性モノマーとして立体パラメーターを65より高めたい場合には、アダマンチル構造をもつ(1-19-1)~(1-19-8)、または1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル構造をもつ(1-23-5)~(1-23-8)が特に好ましく、式中のx及びzは、それぞれ独立して0~5、y及びzzは、それぞれ独立して1~5である光重合性モノマーと、立体パラメーターが80~90となる末端の官能基がカルボン酸となる直鎖状の分子構造をもつ配位子としては、ヘプタデカン酸、ペトロセリン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ステアリン酸、リノレン酸、オレイン酸、立体パラメーターが80~90となる末端の官能基がアミンとなる直鎖状の分子構造をもつ配位子としては、ヘキサデシルアミン、1-アミノヘプタデカン、ステアリルアミン、ヘプタデカン-9-アミン、オレイルアミン、から選ばれる配位子を組み合わせることが好ましく、特に配位子としては、アルキル鎖中に二重結合をもつペトロセリン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、リノレン酸、オレイン酸、およびオレイルアミンは、配位子の被覆安定性、発光性ナノ結晶の分散安定性、および発光特性を発揮する上で特に好ましい。
【0058】
(2)配位子として環状構造を含む化合物を用いる場合、直鎖状の分子構造をもつ光重合性モノマーの立体パラメーターが60~100、かつ配位子の立体パラメーターが40~80の範囲にあることが、発光性ナノ結晶の表面を配位子で安定して覆った状態を維持する上で好ましく、具体的には、立体パラメーターが60~100となる直鎖状の分子構造をもつ光重合性モノマーとして、炭素数6~17となるアクリレート化合物、またはメタクリレート化合物が好ましく、立体パラメーターが40~80となる環状構造を含む配位子として、(1-19-A)~(1-19-H)で表される化合物が好ましい。
【0059】
さらに好ましくは、立体パラメーターが75~85となる直鎖状の分子構造をもつ光重合性モノマーとして、炭素数11~13となるアクリレート化合物、またはメタクリレート化合物が好ましく、発光性ナノ結晶の発光特性を高めるためには、アクリレート化合物よりはメタクリレート化合物が好ましく、立体パラメーターが55~65の範囲となるかつ配位子としては、式(1-19-A)~(1-19-F)で表される化合物が、配位子の被覆安定性、発光性ナノ結晶の分散安定性、および発光特性を発揮する上で特に好ましい。
【0060】
1-2.発光微粒子
上述したナノ結晶含有組成物に含まれる発光微粒子について説明する。図1に示す発光微粒子910は、発光性ナノ結晶911の表面に1種又は2種以上の配位子を備えたものである。発光性ナノ結晶911の表面に配位した多数の配位子によって配位子層912が形成されている。
【0061】
1-2-1.発光性ナノ結晶
まず、発光性ナノ結晶911(以下、単に「ナノ結晶911」と記載することがある。)について説明する。発光性ナノ結晶は、メタルハライドからなり、励起光を吸収して蛍光または燐光を発光するナノサイズの半導体ナノ結晶(ナノ結晶粒子)である。
【0062】
メタルハライドからなる発光性ナノ結晶としては、例えば、後述のペロブスカイト型結晶構造を有する量子ドットが広く知られている。前記発光性ナノ結晶は、例えば、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径(平均粒子径であってもよい)が100nm以下である結晶体である。前記発光性ナノ結晶は、例えば、所定の波長の光エネルギーや電気エネルギーにより励起され、蛍光または燐光を発することができる。
【0063】
メタルハライドからなる発光性ナノ結晶は、一般式:Aで表される化合物からなる。
式中、Aは、有機カチオンおよび金属カチオンのうちの少なくとも1種である。有機カチオンとしては、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、プロトン化チオウレア等が挙げられ、金属カチオンとしては、Cs、Rb、K、Na、Li等のカチオンが挙げられる。
Mは、少なくとも1種の金属カチオンである。金属カチオンとしては、1族、2族、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族から選ばれる金属カチオンが挙げられる。より好ましくは、Ag、Au、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Eu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、Ir、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Sb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、V、W、Zn、Zr等のカチオンが挙げられる。
Xは、少なくとも1種のアニオンである。アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン等が挙げられ、少なくとも1種のハロゲンを含む。
aは、1~7の整数であり、mは、1~4の整数であり、xは、3~16の整数である。
【0064】
一般式Aで表される化合物は、具体的には、AMX、AMX、AMX、AMX、AMX、AM、AMX、AMX、AMX、A、AMX、AMX、AM、AMX、A、AMX、A、A、A10、A16で表される化合物が好ましい。
式中、Aは、有機カチオンおよび金属カチオンのうちの少なくとも1種である。有機カチオンとしては、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、プロトン化チオウレア等が挙げられ、金属カチオンとしては、Cs、Rb、K、Na、Li等のカチオンが挙げられる。
式中、Mは、少なくとも1種の金属カチオンである。具体的には、1種の金属カチオン(M)、2種の金属カチオン(M α β)、3種の金属カチオン(M α β γ)、4種の金属カチオン(M α β γ δ)などが挙げられる。ただし、α、β、γ、δは、それぞれ0~1の実数を表し、かつα+β+γ+δ=1を表す。金属カチオンとしては、1族、2族、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族から選ばれる金属カチオンが挙げられる。より好ましくは、Ag、Au、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Eu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、Ir、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Sb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、V、W、Zn、Zr等のカチオンが挙げられる。
式中、Xは、少なくとも1種のハロゲンを含むアニオンである。具体的には、1種のハロゲンアニオン(X)、2種のハロゲンアニオン(X α β)などが挙げられる。アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン等が挙げられ、少なくとも1種のハロゲンを含む。
【0065】
上記一般式Aで表されるメタルハライドからなる化合物は、発光特性をよくするために、Bi、Mn、Ca、Eu、Sb、Ybなどの金属イオンが添加(ドープ)されたものであってもよい。
【0066】
上記一般式Aで表されるメタルハライドからなる化合物の中で、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、その粒子サイズ、Mサイトを構成する金属カチオンの種類および存在割合を調整し、さらにXサイトを構成するアニオンの種類および存在割合を調整することにより、発光波長(発光色)を制御することができる点で、発光性ナノ結晶として利用する上で特に好ましい。具体的には、AMX、AMX、AMX、AMX、AMXで表される化合物が好ましい。式中のA、M及びXは上記のとおりである。また、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、上述のように、Bi、Mn、Ca、Eu、Sb、Ybなどの金属イオンが添加(ドープ)されたものであってもよい。
【0067】
ペロブスカイト型結晶構造を示す化合物の中でも、さらに良好な発光特性を示すために、AはCs、Rb、K、Na、Liであり、Mは1種の金属カチオン(M)、または2種の金属カチオン(M α β)であり、Xは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンであることが好ましい。但し、αとβはそれぞれ0~1の実数を表し、α+β=1を表す。具体的には、Mは、Ag、Au、Bi、Cu、Eu、Fe、Ge、K、In、Na、Mn、Pb、Pd、Sb、Si、Sn、Yb、Zn、Zrから選ばれることが好ましい。
【0068】
ペロブスカイト型結晶構造を示すメタルハライドからなる発光性ナノ結晶の具体的な組成として、CsPbBr、CHNHPbBr、CHNPbBr等のMとしてPbを用いた発光性ナノ結晶は、光強度に優れると共に量子効率に優れることから、好ましい。また、CsSnBr、CsEuBrCsYbI等のMとしてPb以外の金属カチオンを用いた発光性ナノ結晶は、低毒性であって環境への影響が少ないことから、好ましい。
【0069】
発光性ナノ結晶は、605~665nmの波長範囲に発光ピークを有する光(赤色光)を発する赤色発光性の結晶であってよく、500~560nmの波長範囲に発光ピークを有する光(緑色光)を発する緑色発光性の結晶であってよく、420~480nmの波長範囲に発光ピークを有する光(青色光)を発する青色発光性の結晶であってもよい。また、一実施形態において、複数種の発光性ナノ結晶を組み合わせて用いてもよい。なお、発光性ナノ結晶の発光ピークの波長は、例えば、絶対PL量子収率測定装置を用いて測定される蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルにおいて確認することができる。
【0070】
赤色発光性の発光性ナノ結晶は、665nm以下、663nm以下、660nm以下、658nm以下、655nm以下、653nm以下、651nm以下、650nm以下、647nm以下、645nm以下、643nm以下、640nm以下、637nm以下、635nm以下、632nm以下または630nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、628nm以上、625nm以上、623nm以上、620nm以上、615nm以上、610nm以上、607nm以上または605nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。これらの上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値および下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0071】
緑色発光性の発光性ナノ結晶は、560nm以下、557nm以下、555nm以下、550nm以下、547nm以下、545nm以下、543nm以下、540nm以下、537nm以下、535nm以下、532nm以下または530nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、528nm以上、525nm以上、523nm以上、520nm以上、515nm以上、510nm以上、507nm以上、505nm以上、503nm以上または500nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
【0072】
青色発光性の発光性ナノ結晶は、480nm以下、477nm以下、475nm以下、470nm以下、467nm以下、465nm以下、463nm以下、460nm以下、457nm以下、455nm以下、452nm以下または450nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、450nm以上、445nm以上、440nm以上、435nm以上、430nm以上、428nm以上、425nm以上、422nm以上または420nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
【0073】
発光性ナノ結晶の形状は、特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。発光性ナノ結晶の形状としては、例えば、直方体状、立方体状、球状、正四面体状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状等が挙げられる。なお、発光性ナノ結晶の形状としては、直方体状、立方体状または球状が好ましい。
【0074】
発光性ナノ結晶の平均粒子径(体積平均径)は、40nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。また、発光性ナノ結晶の平均粒子径は、1nm以上であることが好ましく、1.5nm以上であることがより好ましく、2nm以上であることがさらに好ましい。かかる平均粒子径を有する発光性ナノ結晶は、所望の波長の光を容易に得ることができることから好ましい。なお、発光性ナノ結晶の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
好ましい。
【0075】
1-2-2.配位子
配位子は、メタルハライドからなる発光性ナノ結晶を合成する際に、形成された発光性ナノ結晶の表面に配位することによって結晶成長を抑制して、ナノサイズの結晶を得るために必須である。また、配位子は、メタルハライドからなる発光性ナノ結晶の表面を安定して覆った状態を維持することができるため、発光性ナノ結晶の表面にトラップ準位が生じることを防ぎ、良好な発光特性を維持することができる。さらに、配位子は、無機材料からなる発光性ナノ結晶の表面に配位することによって、光重合性モノマーとの相溶性を高め、発光性ナノ結晶の分散性を確保する機能も併せ持っている。したがって、発光ナノ結晶の表面から配位子が失われることは、発光ナノ結晶の凝集や、発光特性および分散性の低下を招くことになるので、配位子が光重合性モノマーと交換することなく、発光ナノ結晶表面に安定して配位することが重要となる。発光性ナノ結晶の表面に配位する配位子としては、ナノ結晶含有組成物に含まれる任意の光重合性モノマーと組み合わせたときに上述の式(A)を満足する配位子を1種以上用いることが必須であるが、さらに、上述の式(A)を満足しない配位子を使用してもよい。また、配位子として、上記環状構造を含む化合物の他に、環状構造を含まず直鎖構造を含む化合物を使用することもできる。
【0076】
かかる直鎖構造となる配位子としては、発光性ナノ結晶に含まれるカチオン、又はアニオンに結合する結合性基を有する化合物が好ましい。結合性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、アミド基、チオアミド基およびボロン酸基のうちの少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシル基およびアミノ基のうちの少なくとも1種であることがより好ましい。かかる配位子としては、カルボキシル基またはアミノ基含有化合物等が挙げられ、これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用することもできる。
【0077】
カルボキシル基含有化合物としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族カルボン酸が挙げられる。かかるカルボキシル基含有化合物の具体例としては、例えば、アラキドン酸、クロトン酸、trans-2-デセン酸、エルカ酸、3-デセン酸、cis-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸、4-デセン酸、all cis-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、all cis-8,11,14-エイコサトリエン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、trans-3-ヘキセン酸、trans-2-ヘキセン酸、2-ヘプテン酸、3-ヘプテン酸、2-ヘキサデセン酸、リノレン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、3-ノネン酸、2-ノネン酸、trans-2-オクテン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、オレイン酸、3-オクテン酸、trans-2-ペンテン酸、trans-3-ペンテン酸、リシノール酸、ソルビン酸、2-トリデセン酸、cis-15-テトラコセン酸、10-ウンデセン酸、2-ウンデセン酸、酢酸、酪酸、ベヘン酸、セロチン酸、デカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、ヘプタデカン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヘプタコサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、メリシン酸、オクタコサン酸、ノナデカン酸、ノナコサン酸、n-オクタン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、プロピオン酸、ペンタコサン酸、ノナン酸、ステアリン酸、リグノセリン酸、トリコサン酸、トリデカン酸、ウンデカン酸、吉草酸等が挙げられる。
【0078】
アミノ基含有化合物としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族アミンが挙げられる。かかるアミノ基含有化合物の具体例としては、例えば、1-アミノヘプタデカン、1-アミノノナデカン、ヘプタデカン-9-アミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、2-n-オクチル-1-ドデシルアミン、アリルアミン、アミルアミン、2-エトキシエチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、3-メトキシプロピルアミン、2-メトキシエチルアミン、2-メチルブチルアミン、ネオペンチルアミン、プロピルアミン、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、1-アミノデカン、ノニルアミン、1-アミノウンデカン、ドデシルアミン、1-アミノペンタデカン、1-アミノトリデカン、ヘキサデシルアミン、テトラデシルアミン等が挙げられる。
【0079】
1-2-3.発光微粒子の調製方法
次に、図1に示す発光微粒子910の調製方法について説明する。発光微粒子910は、発光性ナノ結晶911の表面に1種又は2種以上の上述の配位子を備えたものであって、発光性ナノ結晶911の表面に配位した多数の配位子によって配位子層912を備える。このような発光微粒子910の製造方法としては、加熱を行う方法と加熱を行わない方法とがある。
【0080】
まず、加熱を行って発光微粒子910を製造する方法の一例について説明する。はじめに、上述の一般式Aで表される化合物を合成可能な原料化合物を含む溶液(以下、「半導体原料含有溶液」と記載することがある。)を2つ調製する。2種の半導体原料含有溶液のうち、一方は、Aを含む化合物を含有するか或いはA及びXを含む化合物を含有する溶液であり、他方はM及びXを含む化合物を含有する溶液である。この際、少なくともいずれか一方の半導体原料含有溶液に、上述の式(A)を満足する配位子を形成可能な化合物を添加しておく。
【0081】
次いで、これら2種の半導体原料含有溶液を不活性ガス雰囲気下で混合し、140~260℃の温度条件下に反応させる。次いで、-20~30℃に冷却し、攪拌することにより、ナノ結晶を析出させる。析出したナノ結晶911は、その表面に配位した配位子からなる配位子層912が形成されている。このナノ結晶911を、遠心分離等の定法によって回収することにより、発光微粒子910を得ることができる。
【0082】
具体的には、例えば、半導体原料である炭酸セシウムと配位子となるオレイン酸とを有機溶媒とを含む溶液を調製する。有機溶媒として、1-オクタデセン、ジオクチルエーテル、ジフェニルエーテル等を用いることができる。このとき、有機溶媒40mLに対して、炭酸セシウムが0.2~2g、オレイン酸が0.1~10mLとなるように、それぞれの添加量を調製することが好ましい。得られた溶液を90~150℃で10~180分間減圧乾燥した後、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下で100~200℃に加熱することにより、セシウム-オレイン酸溶液を得る。
【0083】
一方、半導体原料である臭化鉛(II)と、前述のものと同一の有機溶媒とを含む溶液を調製する。このとき、有機溶媒5mLに対して臭化鉛(II)を20~100mg、オレイルアミンを0.1~10mLを添加する。得られた溶液を90~150℃で10~180分間減圧乾燥する。
【0084】
そして、臭化鉛(II)を含む溶液を140~260℃に加熱した状態で上述のセシウム-オレイン酸溶液を添加し、1~10秒間加熱撹拌させることにより反応させた後に、得られた反応液を氷浴で冷却する。このとき、臭化鉛(II)を含む溶液5mLに対して、セシウム-オレイン酸溶液を0.1~1mL添加することが好ましい。-20~30℃で撹拌中に、三臭化鉛セシウムからなるナノ結晶911が析出すると共に、ナノ結晶911の表面にオレイン酸及びオレイルアミンが配位する。
【0085】
得られた懸濁液を遠心分離することにより固形物を回収し、固形物をトルエンに添加することにより、オレイン酸が配位したナノ結晶911の表面にオレイン酸、及びオレイルアミンの配位子層912を備えた発光微粒子910がトルエンに分散した発光微粒子分散液を得ることができる。
【0086】
次に、加熱を行わずに発光微粒子910を製造する方法の一例について説明する。まず、半導体ナノ結晶を反応によって合成可能な原料化合物含有溶液を調製する。この際、上述の式(A)を満足する配位子を形成可能な化合物を前記原料化合物含有溶液に添加しておく。次いで、得られた溶液をナノ結晶に対して貧溶媒である多量の有機溶媒に加えることにより、配位子が表面に配位したナノ結晶を析出させる。このとき、有機溶媒の使用量は半導体ナノ結晶に対して質量基準で10~1000倍量であることが好ましい。
【0087】
具体的には、半導体原料含有溶液として、例えば、臭化鉛(II)と臭化セシウムと、上述の式(A)を満足する配位子を形成する化合物と、有機溶媒とを含む溶液を調製する。有機溶媒は、ナノ結晶の良溶媒であればよいが、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、及びこれらの混合溶媒であることが相溶性の点から好ましい。このとき、有機溶媒10mLに対して、臭化鉛(II)が50~200mg、臭化セシウムが10~100mgとなるように、それぞれの添加量を調整することが好ましい。
【0088】
そして、上述の臭化鉛(II)及び臭化セシウムを含む溶液0.1~5mLに対して、大量の負溶媒に添加し、大気下で5~180秒間撹拌した後に、遠心分離によって固形物を回収する。混合物を大量の負溶媒に添加したときに、ナノ結晶911が析出すると共に、ナノ結晶911の表面に上述の式(A)を満足する配位子を形成する化合物が配位する。
【0089】
この回収された固形物をトルエンに添加することにより、ナノ結晶911の表面に上述の式(A)を満足する配位子を形成する化合物による配位子層912を備えた覆発光微粒子910がトルエンに分散した発光微粒子分散液を得ることができる。
【0090】
1-3.光重合性モノマー
本発明に使用する光重合性モノマーとしては、上記環状構造を含む光重合性モノマーの他に、光の照射によって重合する一般的な光ラジカル重合性モノマーを用いることができ、光重合性のモノマーまたはオリゴマーであってよい。これらは、光重合開始剤と共に用いられる。光重合性モノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
かかる光ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートであってよく、(メタ)アクリロイル基を複数有する多官能(メタ)アクリレートであってもよい。
【0092】
ナノ結晶含有組成物をインク組成物として用いる際に流動性に優れる観点、吐出安定性により優れる観点および発光微粒子塗膜製造時における硬化収縮に起因する平滑性の低下を抑制し得る観点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0093】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0094】
多官能(メタ)アクリレートは、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレート、5官能(メタ)アクリレート、6官能(メタ)アクリレート等であってよく、例えば、ジオール化合物の2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、トリオール化合物の2つまたは3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジまたはトリ(メタ)アクリレート等であってよい。
【0095】
2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのネオペンチルグリコールに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに2モルのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0096】
3官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
4官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
5官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
6官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0097】
多官能(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトールの複数の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたポリ(メタ)アクリレートであってもよい。
(メタ)アクリレート化合物は、リン酸基を有する、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸(メタ)アクリレート等であってもよい。
【0098】
本発明のナノ結晶含有組成物中において、硬化可能成分を、光重合性モノマーのみまたはそれを主成分として構成する場合には、上記したような光重合性モノマーとしては、重合性官能基を1分子中に2以上有する2官能以上の多官能の光重合性モノマーを必須成分として用いることが、硬化物の耐久性(強度、耐熱性等)をより高めることができることからより好ましい。
【0099】
ナノ結晶含有組成物中に含まれる光重合性モノマー量は、50~99質量%であることが好ましく、60~99質量%であることがより好ましく、70~99質量%であることがさらに好ましい。ナノ結晶含有組成物中に含まれる光重合性モノマーの量を前記範囲に設定することにより、発光ナノ粒子の発光効率を高めることができる。さらに、ナノ結晶含有組成物を含むインク組成物を硬化して得られる発光層(光変換層)において、発光微粒子の分散状態が良好になり、よって外部量子効率をより高めることもできる。
【0100】
1-4.発光微粒子の他の構成例
以上、発光性ナノ結晶911の表面に1種又は2種以上の配位子を備えた発光微粒子910を含有するナノ結晶含有組成物について説明したが、発光微粒子の構成は図1に示すものに限定されない。例えば、発光性ナノ結晶911の表面に、上述の式(A)を満足する配位子に加えて、シロキサン結合を形成可能な反応性基を有する配位子が配位し、シロキサン結合を形成可能な反応性基を有する配位子によって形成されたSiを含む無機被覆層を備えた発光微粒子を用いることができる。次に、この無機被覆層を備えた発光微粒子について説明する。なお、無機被覆層を備えた発光微粒子を「無機被覆発光微粒子」と記載することがあり、無機被覆層を備えていない発光微粒子を「無被覆発光微粒子」と記載することがある。
【0101】
図2に示す発光微粒子90(無機被覆発光微粒子)は、発光性ナノ結晶911の表面に、少なくとも、上述の式(A)を満足する配位子と、シロキサン結合を形成可能な反応性基を有する配位子とが配位していて、少なくとも上述の式(A)を満足する配位子の分子長がシロキサン結合を形成可能な反応性基を有する配位子よりも長いことが好ましく、この場合、シロキサン結合を形成可能な反応性基を有する配位子は、発光性ナノ結晶911近傍でシロキサン結合を形成することによって、多数のシロキサン結合からなる網目構造を形成すると共に、Siを含む無機被覆層91を形成する。発光性ナノ結晶911の表面に配位した少なくとも上述の式(A)を満足する配位子は、無機被覆層91の網目構造の間から露出した形で配位子層912を形成する。
【0102】
無機被覆発光微粒子90は、配位子が無機被覆層91から露出しているため、光重合性モノマーと混合したときに分散性を確保することができる。このとき、配位子の少なくとも1つは、上述の式(A)を満足する配位子であるため、光重合性モノマーとの配位子交換を生じにくくすることができる。また、無機被覆発光微粒子90は、Siを含む無機被覆層91を備えることによって、発光性ナノ結晶911を光、熱、水分等から保護することができるため、無被覆発光微粒子910と比較して、量子収率保持率及び外部量子効率保持率がより向上することができる。
【0103】
無機被覆層層91の厚さは、0.5~50nmであることが好ましく、1.0~30nmであることがより好ましい。かかる厚さの無機被覆層91を有する発光微粒子90であれば、ナノ結晶911の光、熱、水分等に対する安定性を十分に高めることができる。なお、無機被覆層91の厚さは、配位子の結合基と反応性基とを連結する連結構造の原子数(鎖長)を調製することで変更することができる。
【0104】
前記シロキサン結合を形成可能な反応性基を有する配位子において、反応性基としては、シロキサン結合が容易に形成されることから、シラノール基、炭素原子数が1~6のアルコキシシリル基のような加水分解性シリル基が好ましい。
【0105】
また、前記シロキサン結合を形成可能な反応性基を有する配位子は、メタルハライドからなる発光性ナノ結晶911に含まれるカチオン、又はアニオンと結合する結合性基を有することが好ましい。
【0106】
結合性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、ボロン酸基等が挙げられる。中でも、結合性基としては、カルボキシル基およびアミノ基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。これらの結合性基は、反応性基よりもペロブスカイト型結晶構造を有する発光性ナノ結晶に含まれるカチオン、又はアニオンに対する親和性(反応性)が高い。このため、配位子にある結合性基は、無機被覆発光微粒子90を構成する発光性ナノ結晶911に配位し、シロキサン結合によって形成された無機被覆層91をより容易かつ確実に形成することができる。
【0107】
これらのことから、前記シロキサン結合を形成可能な反応性基を有する配位子としては、カルボキシル基またはアミノ基含有ケイ素化合物等が挙げられ、これらの1種を単独で使用し、または2種以上を併用することができる。
【0108】
カルボキシル基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、トリメトキシシリルプロピル酸、トリエトキシシリルプロピル酸、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N’-カルボキシメチルエチレンジアミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]フタルアミド、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸等が挙げられる。
【0109】
一方、アミノ基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルジメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、N-[2-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリイソプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン等が挙げられる。
【0110】
メルカプト基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール等が挙げられる。
【0111】
上述の無機被覆発光微粒子90は、半導体原料含有溶液と、Siを含む無機被覆層を形成し得る反応性基を有する配位子とを含む溶液と、上述の式(A)を満足する配位子を形成する化合物とを混合することにより、発光性を有するメタルハライドからなる半導体ナノ結晶を析出させると共に当該半導体ナノ結晶の表面に、無機被覆層を形成し得る反応性基を有する配位子、及び上述の式(A)を満足する配位子とを配位させ、その後、前記反応性基を有する無機被覆層91を形成する方法により製造することができる。無機被覆発光微粒子90の製造方法としては、加熱を行う方法と、加熱を行わない方法とがある。
【0112】
まず、加熱を行って無機被覆発光微粒子91を製造する方法について説明する。2種の原料化合物含有溶液をそれぞれ調製する。この際、2種の原料化合物含有溶液の何れか一方又は両方に、上述の式(A)を満足する配位子を形成する化合物と、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物を加えておく。次いで、これらを不活性ガス雰囲気下で混合、140~260℃の温度条件下に反応させる。次いで、-20~30℃に冷却し、攪拌することにより、ナノ結晶を析出させる方法が挙げられる。析出したナノ結晶はナノ結晶911の表面に配位子が配位し、さらにシロキサン結合を有する無機被覆層91が形成されたものとなる。その後、得られた粒子を遠心分離等の定法によって回収することにより、シリカ被覆発光微粒子91を得ることができる。
【0113】
具体的には、例えば、炭酸セシウムとオレイン酸と有機溶媒とを含む溶液を調製する。有機溶媒として、1-オクタデセン、ジオクチルエーテル、ジフェニルエーテル等を用いることができる。このとき、有機溶媒40mLに対して、炭酸セシウムが0.2~2g、オレイン酸が0.1~10mLとなるように、それぞれの添加量を調製することが好ましい。得られた溶液を90~150℃で10~180分間減圧乾燥した後、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下で100~200℃に加熱することにより、セシウム-オレイン酸溶液を得る。
【0114】
一方、臭化鉛(II)と前述のものと同一の有機溶媒とを含む溶液を調製する。このとき、有機溶媒5mLに対して臭化鉛(II)を20~100mg添加する。得られた溶液を90~150℃で10~180分間減圧乾燥した後、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下で0.1~2mLの3-アミノプロピルトリエトキシシランを添加する。
【0115】
そして、臭化鉛(II)及び3-アミノプロピルトリエトキシシランを含む溶液を140~260℃に加熱した状態で上述のセシウム-オレイン酸溶液を添加し、1~10秒間加熱撹拌させることにより反応させた後に、得られた反応液を氷浴で冷却する。このとき、臭化鉛(II)及び3-アミノプロピルトリエトキシシランを含む溶液5mLに対して、セシウム-オレイン酸溶液を0.1~1mL添加することが好ましい。-20~30℃で撹拌中に、ナノ結晶911が析出すると共に、ナノ結晶911の表面に3-アミノプロピルトリエトキシシラン及びオレイン酸が配位する。
【0116】
その後、得られた反応液を、大気下、室温(10~30℃、湿度5~60%)で5~300分間撹拌した後、0.1~50mLのエタノールを添加することにより懸濁液を得る。大気下、室温での撹拌中に3-アミノプロピルトリエトキシシランのアルコキシシリル基が縮合し、オレイン酸が配位したナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する無機被覆層91が形成される。
【0117】
得られた懸濁液を遠心分離することにより固形物を回収し、固形物をトルエンに添加することにより、ナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する無機被覆層91を備え、及びナノ結晶911の表面にオレイン酸も配位し無機被覆粒子の間から露出して配位子層912を備えた、シリカ被覆発光微粒子90がトルエンに分散した発光微粒子分散液を得ることができる。
【0118】
次に、加熱を行わずにシリカ被覆発光微粒子90を製造する方法について説明する。半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液と、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物を含む溶液とを大気下に混合し、次いで、得られた混合物をナノ結晶に対して貧溶媒である多量の有機溶媒に加えることにより、ナノ結晶を析出させる方法が挙げられる。有機溶媒の使用量は半導体ナノ結晶に対して質量基準で10~1000倍量であることが好ましい。また、析出したナノ結晶はナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する無機被覆層91が形成されたものとなる。得られた粒子を遠心分離等の定法により回収することにより、シリカ被覆発光微粒子90を得ることができる。
【0119】
具体的には、半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液として、例えば、臭化鉛(II)とメチルアミン臭化水素酸塩とを有機溶媒とを含む溶液を調製する。有機溶媒は、ナノ結晶の良溶媒であればよいが、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、及びこれらの混合溶媒であることが相溶性の点から好ましい。このとき、有機溶媒10mLに対して、臭化鉛(II)が50~200mg、メチルアミン臭化水素酸塩が10~100mgとなるように、それぞれの添加量を調整することが好ましい。
【0120】
一方、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物を含む溶液として、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシランと、オレイン酸と、貧溶媒とを調製する。貧溶媒としては、イソプロピルアルコール、トルエン、ヘキサン等を用いることができる。このとき、貧溶媒5mLに対して、3-アミノプロピルトリエトキシシランが0.01~0.5mL、オレイン酸が0.01~0.5mLとなるように、それぞれの添加量を調整することが好ましい。
【0121】
そして、上述の臭化鉛(II)及びメチルアミン臭化水素酸塩を含む溶液0.1~5mLに対して、上述の3-アミノプロピルトリエトキシシランを含む溶液5mLを、大気下、0~60℃で添加して混合物を得る。その直後に、得られた混合物を大量の負溶媒に添加し、大気下で5~180秒間撹拌した後に、遠心分離によって固形物を回収する。混合物を大量の負溶媒に添加したときに、ナノ結晶911が析出すると共に、ナノ結晶911の表面に3-アミノプロピルトリエトキシシラン及びオレイン酸が配位する。そして、大気下での撹拌中に3-アミノプロピルトリエトキシシランのアルコキシシリル基が縮合し、ナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する表面層91が形成される。
【0122】
この回収された固形物をトルエンに添加することにより、メチルアンモニウム三臭化鉛結晶からなるナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する表面層91を備えたシリカ被覆発光微粒子90がトルエンに分散した発光微粒子分散液を得ることができる。
【0123】
1-5.光重合開始剤
本発明のナノ結晶含有組成物は、さらに重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤は、アルキルフェノン系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物およびオキシムエステル系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0124】
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、式(b-1)で表される化合物が挙げられる。
【化19】
【0125】
式(b-1)中、R1aは、下記式(R1a-1)~式(R1a-6)から選ばれる基を表し、R2a、R2bおよびR2cは、それぞれ独立して、下記式(R-1)~式(R-7)から選ばれる基を表す。
【化20】
【化21】
【0126】
上記式(b-1)で表される化合物の具体例としては、下記式(b-1-1)~式(b-1-6)で表される化合物が好ましく、下記式(b-1-1)、式(b-1-5)または式(b-1-6)で表される化合物がより好ましい。
【化22】
【0127】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、式(b-2)で表される化合物が挙げられる。
【化23】
【0128】
式(b-2)中、R24はアルキル基、アリール基または複素環基を表し、R25およびR26は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、複素環基またはアルカノイル基を表すが、これらの基は、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン基、アリール基、アルコキシ基、アリールチオ基で置換されてもよい。
【0129】
上記式(b-2)で表される化合物の具体例としては、下記式(b-2-1)~式(b-2-5)で表される化合物が好ましく、下記式(b-2-1)または式(b-2-5)で表される化合物がより好ましい。
【化24】
【0130】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、下記式(b-3-1)または式(b-3-2)で表される化合物が挙げられる。
【化25】
【0131】
上記式中、R27~R31は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~12の環状、直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、またはフェニル基を表し、各アルキル基およびフェニル基は、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルコキシル基およびフェニル基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよく、Xは、酸素原子または窒素原子を表し、Xは、酸素原子またはNRを表し、Rは炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0132】
上記式(b-3-1)および式(b-3-2)で表される化合物の具体例としては、下記式(b-3-1-1)~式(b-3-1-2)および下記式(b-3-2-1)~(b-3-2-2)で表される化合物が好ましく、下記式(b-3-1-1)、式(b-3-2-1)または式(b-3-2-2)で表される化合物がより好ましい。
【化26】
【化27】
【0133】
光重合開始剤の配合量は、ナノ結晶含有組成物に含まれる光重合性モノマーの総量に対して、0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~8質量%であることがより好ましく、1~6質量%であることがさらに好ましい。なお、光重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用することもできる。かかる量で光重合開始剤を含むナノ結晶含有組成物は、光硬化時の感光度を十分に維持するとともに、塗膜の乾燥時に光重合開始剤の結晶が析出し難く、よって塗膜物性の劣化を抑制することができる。
【0134】
ナノ結晶含有組成物中に光重合開始剤を溶解する際には、予め光重合性モノマー中に溶解してから使用することが好ましい。
光重合性モノマーに溶解させるには、熱による反応が開始されないように、光重合性モノマーを攪拌しながら光重合開始剤を添加することにより均一溶解させることが好ましい。
光重合開始剤の溶解温度は、用いる光重合開始剤の光重合性モノマーに対する溶解性、および光重合性モノマーの熱による重合性を考慮して適宜調節すればよいが、光重合性モノマーの重合を開始させない観点から10~60℃であることが好ましく、10~40℃であることがより好ましく、10~30℃であることがさらに好ましい。
【0135】
1-6.光散乱剤
本発明のナノ結晶含有組成物は、さらに光散乱剤を含有することが好ましい。光散乱剤は、一般に粒子状であるので、以下「光散乱性粒子」と記載する。光散乱性粒子は、例えば、光学的に不活性な無機微粒子である。光散乱性粒子は、ナノ結晶含有組成物又は当該組成物を含有するインク組成物を硬化して形成された発光層(光変換層)において、照射された光源部からの光を散乱させることができる。
【0136】
光散乱性粒子を構成する材料としては、例えば、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、プラチナ、金のような単体金属;シリカ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛のような金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウムのような金属炭酸塩;水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の複合酸化物、次硝酸ビスマスのような金属塩等が挙げられる。中でも、光散乱性粒子を構成する材料としては、漏れ光の低減効果により優れる観点から、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウムおよびシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0137】
光散乱性粒子の形状は、球状、フィラメント状、不定形状等であってよい。しかしながら、光散乱性粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、ナノ結晶含有組成物の均一性、流動性及び光散乱性をより高められる点で好ましい。
【0138】
ナノ結晶含有組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、0.05μm以上であってよく、0.2μm以上であってもよく、0.3μm以上であってもよい。ナノ結晶含有組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、吐出安定性に優れる観点から、1.0μm以下であってもよく、0.6μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。ナノ結晶含有組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、0.05~1.0μm、0.05~0.6μm、0.05~0.4μm、0.2~1.0μm、0.2~0.6μm、0.2~0.4μm、0.3~1.0μm、0.3~0.6μm、又は0.3~0.4μmであってもよい。このような平均粒子径(体積平均径)が得られやすい観点から、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、50nm以上であってよく、1000nm以下であってよい。ナノ結晶含有組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。また、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、例えば透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により各粒子の粒子径を測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
【0139】
光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、ナノ結晶含有組成物の不揮発分の質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、12質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果により優れる観点及び吐出安定性に優れる観点から、ナノ結晶含有組成物の不揮発分の質量を基準として、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。本実施形態では、ナノ結晶含有組成物が高分子分散剤を含むため、光散乱性粒子の含有量を上記範囲とした場合であっても光散乱性粒子の良好に分散させることができる。
発光微粒子の含有量に対する光散乱性粒子の含有量の質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶)は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、0.1以上であってよく、0.2以上であってもよく、0.5以上であってもよい。質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶)は、漏れ光の低減効果により優れ、インクジェット印刷時の連続吐出性に優れる観点から、5.0以下であってよく、2.0以下であってもよく、1.5以下であってもよい。なお、光散乱性粒子による漏れ光低減は、次のようなメカニズムによると考えられる。すなわち、光散乱性粒子が存在しない場合、バックライト光は画素部内をほぼ直進して通過するのみであり、発光微粒子に吸収される機会が少ないと考えられる。一方、光散乱性粒子を発光微粒子と同一の画素部内に存在させると、その画素部内でバックライト光が全方位に散乱され、それを発光微粒子が受光することができるため、同一のバックライトを用いていても、画素部における光吸収量が増大すると考えられる。結果的に、このようなメカニズムで漏れ光を防ぐことが可能になったと考えられる。
【0140】
1-7.分散剤
本発明のナノ結晶含有組成物は、さらに分散剤を含有することが好ましい。分散剤は、ナノ結晶含有組成物中での発光微粒子の分散安定性をさらに向上させ得る化合物であれば、特に限定されない。分散剤は、低分子分散剤と高分子分散剤とに分類される。本明細書中において、「低分子」とは、重量平均分子量(Mw)が5,000以下の分子を意味し、「高分子」とは、重量平均分子量(Mw)が5,000超の分子を意味する。なお、本明細書中において、「重量平均分子量(Mw)」は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて測定された値を採用することができる。
【0141】
低分子分散剤としては、例えば、オレイン酸;リン酸トリエチル、TOP(トリオクチルフォスフィン)、TOPO(トリオクチルフォスフィンオキサイド)、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、オクチルホスフィン酸(OPA)のようなリン原子含有化合物;オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルアミンのような窒素原子含有化合物;1-デカンチオール、オクタンチオール、ドデカンチオール、アミルスルフィドのような硫黄原子含有化合物等が挙げられる。
【0142】
一方、高分子分散剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アミノ系樹脂、ポリアミン系樹脂(ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等)、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジンのような天然ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、酸化ロジン、マレイン化ロジンのような変性ロジン、ロジンアミン、ライムロジン、ロジンアルキレンオキシド付加物、ロジンアルキド付加物、ロジン変性フェノールのようなロジン誘導体等が挙げられる。
【0143】
高分子分散剤の市販品としては、例えば、ビックケミー社製のDISPERBYKシリーズ、エボニック社製のTEGO Dispersシリーズ、BASF社製のEFKAシリーズ、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSEシリーズ、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ、楠本化成製のDISPARLONシリーズ、共栄社化学社製のフローレンシリーズ等を使用することができる。
【0144】
分散剤の配合量は、100質量部の発光微粒子910、90に対して、それぞれ0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。
【0145】
ところで、従来のインク組成物を用いてインクジェット方式でカラーフィルタ画素部を形成する場合、発光微粒子及び光散乱性粒子の凝集等によりインクジェットノズルからの吐出安定性が低下する場合があった。また、発光微粒子及び光散乱性粒子を微細化すること、発光微粒子及び光散乱性粒子の含有量を減らすこと等により、吐出安定性を向上させることが考えられるが、この場合、漏れ光の低減効果が低下しやすく、充分な吐出安定性と漏れ光の低減効果とを両立することは困難であった。これに対し、分散剤を更に含有する本発明のナノ結晶含有組成物によれば、充分な吐出安定性を確保しつつ、漏れ光をより低減することができる。このような効果が得られる理由は、明らかではないが、分散剤によって、発光微粒子及び光散乱性粒子(特に、光散乱性粒子)の凝集が顕著に抑制されるためであると推察される。
【0146】
光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基としては、酸性官能基、塩基性官能基及び非イオン性官能基が挙げられる。酸性官能基は解離性のプロトンを有しており、アミン、水酸化物イオン等の塩基により中和されていてもよく、塩基性官能基は有機酸、無機酸等の酸により中和されていてもよい。
【0147】
酸性官能基としては、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、硫酸基(-OSO3H)、ホスホン酸基(-PO(OH)3)、リン酸基(-OPO(OH)3)、ホスフィン酸基(-PO(OH)-)、メルカプト基(-SH)、が挙げられる。
【0148】
塩基性官能基としては、一級、二級及び三級アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、並びに、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、トリアゾール等の含窒素ヘテロ環基等が挙げられる。
【0149】
非イオン性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、チオエーテル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO2-)、カルボニル基、ホルミル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオアミド基、チオウレイド基、スルファモイル基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基が挙げられる。
【0150】
光散乱性粒子の分散安定性の観点、発光微粒子が沈降するという副作用を起こしにくい観点、高分子分散剤の合成の容易性の観点、及び官能基の安定性の観点から、酸性官能基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基及びリン酸基が好ましく用いられ、塩基性官能基としては、アミノ基が好ましく用いられる。これらの中でも、カルボキシル基、ホスホン酸基及びアミノ基がより好ましく用いられ、最も好ましくはアミノ基が用いられる。
【0151】
酸性官能基を有する分散剤は酸価を有する。酸性官能基を有する高分子分散剤の酸価は、好ましくは、固形分換算で、1~150mgKOH/gである。酸価が1以上であると、光散乱性粒子の充分な分散性が得られやすく、酸価が150以下であると、画素部(インク組成物の硬化物)の保存安定性が低下しにくい。
また、塩基性官能基を有する分散剤はアミン価を有する。塩基性官能基を有する分散剤のアミン価は、好ましくは、固形分換算で、1~200mgKOH/gである。アミン価が1以上であると、光散乱性粒子の充分な分散性が得られやすく、アミン価が200以下であると、画素部(インク組成物の硬化物)の保存安定性が低下しにくい。
分散剤の重量平均分子量は、光散乱性粒子を良好に分散することができ、漏れ光の低減効果をより向上させることができる観点から、750以上であってよく、1000以上であってよく、2000以上であってよく、3000以上であってもよい。また、分散剤の重量平均分子量は、光散乱性粒子を良好に分散することができ、漏れ光の低減効果をより向上させることができ、また、インクジェットインクの粘度を吐出可能で安定吐出に適する粘度とする観点から、100000以下であってよく、50000以下であってもよく、30000以下であってもよい。
【0152】
分散剤の含有量は、光散乱性粒子の分散性の観点から、光散乱性粒子100質量部に対して、0.5質量部以上であってよく、2質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよい。高分子分散の含有量は、画素部(インク組成物の硬化物)の湿熱安定性の観点から、光散乱性粒子100質量部に対して、50質量部以下であってよく、30質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよい。
【0153】
1-8.その他の成分
本発明に用いるナノ結晶含有組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、発光微粒子910、90、光重合性モノマー、光重合開始剤、光散乱性粒子以外の他の成分を含有してもよい。かかる他の成分としては、重合禁止剤、酸化防止剤、レベリング剤、連鎖移動剤、分散助剤、熱可塑性樹脂、増感剤等が挙げられる。
【0154】
1-8-1.重合禁止剤
重合禁止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、クレゾール、t-ブチルカテコール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4-メトキシ-1-ナフトール、4,4’-ジアルコキシ-2,2’-ビ-1-ナフトールのようなフェノール系化合物;ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、tert-ブチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニルベンゾキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、ジフェノキノンのようなキノン系化合物;p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-i-プロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1.3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N-フェニル-β-ナフチルアミン、4,4’-ジクミル-ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチル-ジフェニルアミンのようなアミン系化合物;フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネートのようなチオエーテル系化合物;2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカルのようなN-オキシル化合物;N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、N-ニトロソジナフチルアミン、p-ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p-ニトロソジフェニルアミン、α-ニトロソ-β-ナフトール、N、N-ジメチル-p-ニトロソアニリン、p-ニトロソジフェニルアミン、p-ニトロンジメチルアミン、p-ニトロン-N,N-ジエチルアミン、N-ニトロソエタノールアミン、N-ニトロソ-ジ-n-ブチルアミン、N-ニトロソ-N-n-ブチル-4-ブタノールアミン、N-ニトロソ-ジイソプロパノールアミン、N-ニトロソ-N-エチル-4-ブタノールアミン、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、N-ニトロソモルホリン、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩(富士フィルム和光純薬株式会社製、「Q-1300」)、ニトロソベンゼン、2,4,6-トリ-tert-ブチルニトロンベンゼン、N-ニトロソ-N-メチル-p-トルエンスルホンアミド、N-ニトロソ-N-エチルウレタン、N-ニトロソ-N-n-プロピルウレタン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、1-ニトロソ-2-ナフトール-3,6-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩、Q-1301(富士フィルム和光純薬株式会社製)のようなニトロソ系化合物等が挙げられる。
重合禁止剤の添加量は、ナノ結晶含有組成物に含まれる光重合性モノマーの総量に対して、0.01~1.0質量%であることが好ましく、0.02~0.5質量%であることがより好ましい。
【0155】
1-8-2.酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「IRGANOX1010」)、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「IRGANOX1035」)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「IRGANOX1076」)、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1330」、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(「IRGANOX1520L」)、「IRGANOX1726」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」(以上、BASF株式会社製);「アデカスタブAO-20」、「アデカスタブAO-30」、「アデカスタブAO-40」、「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」、「アデカスタブAO-80」(以上、株式会社ADEKA製);「JP-360」、「JP-308E」、「JPE-10」(以上、城北化学工業株式会社製);「スミライザーBHT」、「スミライザーBBM-S」、「スミライザーGA-80」(以上、住友化学株式会社製)等が挙げられる。
【0156】
酸化防止剤の添加量は、ナノ結晶含有組成物に含まれる光重合性モノマーの総量に対して、0.01~2.0質量%であることが好ましく、0.02~1.0質量%であることがより好ましい。
【0157】
1-8-3.レベリング剤
レベリング剤としては、特に限定はないが、発光微粒子90の薄膜を形成する場合に、膜厚ムラを低減させ得る化合物が好ましい。
かかるレベリング剤としては、例えば、アルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルリン酸塩、フルオロアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン誘導体、フルオロアルキルエチレンオキシド誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、アルキルアンモニウム塩、フルオロアルキルアンモニウム塩類等が挙げられる。
【0158】
レベリング剤の具体例としては、例えば、「メガファックF-114」、「メガファックF-251」、「メガファックF-281」、「メガファックF-410」、「メガファックF-430」、「メガファックF-444」、「メガファックF-472SF」、「メガファックF-477」、「メガファックF-510」、「メガファックF-511」、「メガファックF-552」、「メガファックF-553」、「メガファックF-554」、「メガファックF-555」、「メガファックF-556」、「メガファックF-557」、「メガファックF-558」、「メガファックF-559」、「メガファックF-560」、「メガファックF-561」、「メガファックF-562」、「メガファックF-563」、「メガファックF-565」、「メガファックF-567」、「メガファックF-568」、「メガファックF-569」、「メガファックF-570」、「メガファックF-571」、「メガファックR-40」、「メガファックR-41」、「メガファックR-43」、「メガファックR-94」、「メガファックRS-72-K」、「メガファックRS-75」、「メガファックRS-76-E」、「メガファックRS-76-NS」、「メガファックRS-90」、「メガファックEXP.TF-1367」、「メガファックEXP.TF1437」、「メガファックEXP.TF1537」、「メガファックEXP.TF-2066」(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0159】
レベリング剤の他の具体例としては、例えば、「フタージェント100」、「フタージェント100C」、「フタージェント110」、「フタージェント150」、「フタージェント150CH」、「フタージェント100A-K」、「フタージェント300」、「フタージェント310」、「フタージェント320」、「フタージェント400SW」、「フタージェント251」、「フタージェント215M」、「フタージェント212M」、「フタージェント215M」、「フタージェント250」、「フタージェント222F」、「フタージェント212D」、「FTX-218」、「フタージェント209F」、「フタージェント245F」、「フタージェント208G」、「フタージェント240G」、「フタージェント212P」、「フタージェント220P」、「フタージェント228P」、「DFX-18」、「フタージェント601AD」、「フタージェント602A」、「フタージェント650A」、「フタージェント750FM」、「FTX-730FM」、「フタージェント730FL」、「フタージェント710FS」、「フタージェント710FM」、「フタージェント710FL」、「フタージェント750LL」、「FTX-730LS」、「フタージェント730LM」、(以上、株式会社ネオス製)等が挙げられる。
【0160】
レベリング剤の他の具体例としては、例えば、「BYK-300」、「BYK-302」、「BYK-306」、「BYK-307」、「BYK-310」、「BYK-315」、「BYK-320」、「BYK-322」、「BYK-323」、「BYK-325」、「BYK-330」、「BYK-331」、「BYK-333」、「BYK-337」、「BYK-340」、「BYK-344」、「BYK-370」、「BYK-375」、「BYK-377」、「BYK-350」、「BYK-352」、「BYK-354」、「BYK-355」、「BYK-356」、「BYK-358N」、「BYK-361N」、「BYK-357」、「BYK-390」、「BYK-392」、「BYK-UV3500」、「BYK-UV3510」、「BYK-UV3570」、「BYK-Silclean3700」(以上、BYK株式会社製)等が挙げられる。
【0161】
レベリング剤の他の具体例としては、例えば、「TEGO Rad2100」、「TEGO Rad2011」、「TEGO Rad2200N」、「TEGO Rad2250」、「TEGO Rad2300」、「TEGO Rad2500」、「TEGO Rad2600」、「TEGO Rad2650」、「TEGO Rad2700」、「TEGO Flow300」、「TEGO Flow370」、「TEGO Flow425」、「TEGO Flow ATF2」、「TEGO Flow ZFS460」、「TEGO Glide100」、「TEGO Glide110」、「TEGO Glide130」、「TEGO Glide410」、「TEGO Glide411」、「TEGO Glide415」、「TEGO Glide432」、「TEGO Glide440」、「TEGO Glide450」、「TEGO Glide482」、「TEGO Glide A115」、「TEGO Glide B1484」、「TEGO Glide ZG400」、「TEGO Twin4000」、「TEGO Twin4100」、「TEGO Twin4200」、「TEGO Wet240」、「TEGO Wet250」、「TEGO Wet260」、「TEGO Wet265」、「TEGO Wet270」、「TEGO Wet280」、「TEGO Wet500」、「TEGO Wet505」、「TEGO Wet510」、「TEGO Wet520」、「TEGO Wet KL245」(以上、エボニック・インダストリーズ株式会社製)等が挙げられる。
【0162】
レベリング剤の他の具体例としては、例えば、「FC-4430」、「FC-4432」(以上、スリーエムジャパン株式会社製)、「ユニダインNS」(以上、ダイキン工業株式会社製);「サーフロンS-241」、「サーフロンS-242」、「サーフロンS-243」、「サーフロンS-420」、「サーフロンS-611」、「サーフロンS-651」、「サーフロンS-386」(以上、AGCセイミケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0163】
レベリング剤の他の具体例としては、例えば、「DISPARLON OX-880EF」、「DISPARLON OX-881」、「DISPARLON OX-883」、「DISPARLON OX-77EF」、「DISPARLON OX-710」、「DISPARLON 1922」、「DISPARLON 1927」、「DISPARLON 1958」、「DISPARLON P-410EF」、「DISPARLON P-420」、「DISPARLON P-425」、「DISPARLON PD-7」、「DISPARLON 1970」、「DISPARLON 230」、「DISPARLON LF-1980」、「DISPARLON LF-1982」、「DISPARLON LF-1983」、「DISPARLON LF-1084」、「DISPARLON LF-1985」、「DISPARLON LHP-90」、「DISPARLON LHP-91」、「DISPARLON LHP-95」、「DISPARLON LHP-96」、「DISPARLON OX-715」、「DISPARLON 1930N」、「DISPARLON 1931」、「DISPARLON 1933」、「DISPARLON 1934」、「DISPARLON 1711EF」、「DISPARLON 1751N」、「DISPARLON 1761」、「DISPARLON LS-009」、「DISPARLON LS-001」、「DISPARLON LS-050」(以上、楠本化成株式会社製)等が挙げられる。
【0164】
レベリング剤の他の具体例としては、例えば、「PF-151N」、「PF-636」、「PF-6320」、「PF-656」、「PF-6520」、「PF-652-NF」、「PF-3320」(以上、OMNOVA SOLUTIONS社製);「ポリフローNo.7」、「ポリフローNo.50E」、「ポリフローNo.50EHF」、「ポリフローNo.54N」、「ポリフローNo.75」、「ポリフローNo.77」、「ポリフローNo.85」、「ポリフローNo.85HF」、「ポリフローNo.90」、「ポリフローNo.90D-50」、「ポリフローNo.95」、「ポリフローNo.99C」、「ポリフローKL-400K」、「ポリフローKL-400HF」、「ポリフローKL-401」、「ポリフローKL-402」、「ポリフローKL-403」、「ポリフローKL-404」、「ポリフローKL-100」、「ポリフローLE-604」、「ポリフローKL-700」、「フローレンAC-300」、「フローレンAC-303」、「フローレンAC-324」、「フローレンAC-326F」、「フローレンAC-530」、「フローレンAC-903」、「フローレンAC-903HF」、「フローレンAC-1160」、「フローレンAC-1190」、「フローレンAC-2000」、「フローレンAC-2300C」、「フローレンAO-82」、「フローレンAO-98」、「フローレンAO-108」(以上、共栄社化学株式会社製)等が挙げられる。
【0165】
また、レベリング剤の他の具体例としては、例えば、「L-7001」、「L-7002」、「8032ADDITIVE」、「57ADDTIVE」、「L-7064」、「FZ-2110」、「FZ-2105」、「67ADDTIVE」、「8616ADDTIVE」(以上、東レ・ダウシリコーン株式会社製)等が挙げられる。
レベリング剤の添加量は、ナノ結晶含有組成物に含まれる光重合性モノマーの総量に対して、0.005~2質量%であることが好ましく、0.01~0.5質量%であることがより好ましい。
【0166】
1-8-4.連鎖移動剤
連鎖移動剤は、ナノ結晶含有組成物をインク組成物として用いる際に、インク組成物の基材との密着性をより向上させること等を目的として使用される成分である。
連鎖移動剤としては、例えば、芳香族炭化水素類;クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、ブロモトリクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素類;オクチルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、n-ペンチルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-テトラデシルメル、n―ドデシルメルカプタン、t-テトラデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンのようなメルカプタン化合物;ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4-ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンのようなチオール化合物;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドのようなスルフィド化合物;N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジビニルアニリン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー、アクロレイン、アリルアルコール、ターピノーレン、α-テルピネン、γ-テルビネン、ジペンテン等が挙げられるが、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、チオール化合物が好ましい。
【0167】
連鎖移動剤の具体例としては、例えば、下記一般式(9-1)~(9-12)で表される化合物が好ましい。
【化28】
【化29】
【0168】
式中、R95は炭素原子数2~18のアルキル基を表し、該アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、該アルキル基中の1つ以上のメチレン基は酸素原子および硫黄原子が相互に直接結合することなく、酸素原子、硫黄原子、-CO-、-OCO-、-COO-または-CH=CH-で置換されていてもよい。
96は炭素原子数2~18のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ以上のメチレン基は酸素原子および硫黄原子が相互に直接結合することなく、酸素原子、硫黄原子、-CO-、-OCO-、-COO-または-CH=CH-で置換されていてもよい。
連鎖移動剤の添加量は、ナノ結晶含有組成物に含まれる光重合性モノマーの総量に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、1.0~5質量%であることがより好ましい。
【0169】
1-8-5.分散助剤
分散助剤としては、例えば、フタルイミドメチル誘導体、フタルイミドスルホン酸誘導体、フタルイミドN-(ジアルキルアミノ)メチル誘導体、フタルイミドN-(ジアルキルアミノアルキル)スルホン酸アミド誘導体のような有機顔料誘導体等が挙げられる。これらの分散助剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
1-8-6.熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂等が挙げられる。
1-8-7.増感剤
増感剤としては、光重合性モノマーと付加反応を起こさないアミン類を使用することができる。かかる増感剤としては、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N-ジメチルベンジルアミン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0170】
1-9.ナノ結晶含有組成物の調製方法
以上のようなナノ結晶含有組成物は、上述の発光微粒子910、90を、光重合性モノマーおよび光重合開始剤等を混合した溶液中に分散させて調製することができる。発光微粒子910、90の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、3本ロールミル、ペイントコンディショナー、アトライター、分散攪拌機、超音波等の分散機を使用することにより行うことができる。
【0171】
ナノ結晶含有組成物中の発光微粒子910、91の含有量は、1~50質量%であることが好ましく、1~45質量%であることがより好ましく、1~40質量%であることがさらに好ましい。ナノ結晶含有組成物中の発光微粒子910、90の含有量を前記範囲に設定することにより、当該ナノ結晶含有モノマーを用いて構成したインク組成物をインクジェット印刷法により吐出する場合に、その吐出安定性をより向上させることができる。また、無被覆発光微粒子910又は無機被覆発光微粒子91同士が凝集し難くなり、得られる発光層(光変換層)の外部量子効率を高めることもできる。
【0172】
本発明のナノ結晶含有組成物は、インクジェットプリンター、フォトリソグラフィー、スピンコーター等、種々の方法によって基板上に被膜を形成し、この被膜を加熱して硬化させることにより硬化物を得ることができる。中でも、本発明のナノ結晶含有組成物は、インクジェットプリンターで使用されるインク組成物として、特に好適である。
【0173】
インク組成物としてのナノ結晶含有組成物の粘度は、インクジェット印刷時の吐出安定性の観点から、2~20mPa・sの範囲であることが好ましく、5~15mPa・sの範囲であることがより好ましく、7~12mPa・sの範囲であることがさらに好ましい。この場合、吐出ヘッドのインク吐出孔におけるナノ結晶含有組成物のメニスカス形状が安定するため、インクの吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。また、インク吐出孔からインクを円滑に吐出させることができる。なお、ナノ結晶含有組成物の粘度は、例えば、E型粘度計によって測定することができる。
【0174】
また、インク組成物としてのナノ結晶含有組成物の表面張力は、インクジェット印刷法に適した表面張力であることが好ましい。表面張力の具体的な値は、20~40mN/mの範囲であることが好ましく、25~35mN/mの範囲であることがより好ましい。表面張力を前記範囲に設定することにより、インクの液滴の飛行曲がりの発生を抑制することができる。なお、飛行曲がりとは、インクをインク吐出孔から吐出させたとき、インクの着弾位置が目標位置に対して30μm以上のズレることをいう。
【0175】
2.ナノ結晶含有組成物を用いて形成した発光素子
上述のナノ結晶含有組成物は、例えば、インクジェットプリンター、フォトリソグラフィー、スピンコーター等、種々の方法によって基板上に被膜を形成し、この被膜を加熱して硬化させることにより硬化物を得ることができる。以下、インク組成物としてのナノ結晶含有組成物を用いて、青色有機LEDバックライトを備えた発光素子のカラーフィルタ画素部を形成する場合を例に挙げて説明する。
【0176】
図3は、本発明の発光素子の一実施形態を示す断面図であり、図4および図5は、それぞれアクティブマトリックス回路の構成を示す概略図である。なお、図3では、便宜上、各部の寸法およびそれらの比率を誇張して示し、実際とは異なる場合がある。また、以下に示す材料、寸法等は一例であって、本発明は、それらに限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更することが可能である。以下では、説明の都合上、図3の上側を「上側」または「上方」と、上側を「下側」または「下方」と言う。また、図3では、図面が煩雑になることを避けるため、断面を示すハッチングの記載を省略している。
【0177】
図3に示すように、発光素子100は、下基板1と、EL光源部200と、充填層10と、保護層11と、上述の発光微粒子を含有し発光層として作用する光変換層12と、上基板13とをこの順に積層した構造を備える。光変換層12に含有される発光微粒子は、無機被覆層も樹脂被覆層も備えていない無被覆発光微粒子910であってもよく、無機被覆発光微粒子90であってもよい。EL光源部200は、陽極2と、複数の層からなるEL層14と、陰極8と、図示しない偏光板と、封止層9とを順に備える。EL層14は、陽極2側から順次積層された正孔注入層3と、正孔輸送層4と、発光層5と、電子輸送層6と、電子注入層7とを含む。
【0178】
かかる発光素子100は、EL光源部200(EL層14)から発せられた光を光変換層12によって吸収及び再放出するか或いは透過させ、上基板13側から外部に取り出すフォトルミネセンス素子である。このとき、光変換層12に含まれる発光微粒子910、又は90によって所定の色の光に変換される。以下、各層について順次説明する。
【0179】
2-1.下基板1および上基板13
下基板1および上基板13は、それぞれ発光素子100を構成する各層を支持および/または保護する機能を有する。発光素子100がトップエミッション型である場合、上基板13が透明基板で構成される。一方、発光素子100がボトムエミッション型である場合、下基板1が透明基板で構成される。ここで、透明基板とは、可視光領域の波長の光を透過可能な基板を意味し、透明には、無色透明、着色透明、半透明が含まれる。
【0180】
透明基板としては、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の透明なガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅等で構成される金属基板、シリコン基板、ガリウム砒素基板等を用いることができる。これらの中でも、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスからなるガラス基板を用いることが好ましい。具体的には、コーニング社製の「7059ガラス」、「1737ガラス」、「イーグル200」及び「イーグルXG」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA-10G」及び「OA-11」が好適である。これらは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れる。また、発光素子100に可撓性を付与する場合には、下基板1および上基板13には、それぞれ、プラスチック基板(高分子材料を主材料として構成された基板)、比較的厚さの小さい金属基板が選択される。
【0181】
下基板1および上基板13の厚さは、それぞれ特に限定されないが、100~1,000μmの範囲であることが好ましく、300~800μmの範囲であることがより好ましい。
なお、発光素子100の使用形態に応じて、下基板1および上基板13のいずれか一方または双方を省略することもできる。
【0182】
図4に示すように、下基板1上には、R、G、Bで示される画素電極PEを構成する陽極2への電流の供給を制御する信号線駆動回路C1および走査線駆動回路C2と、これらの回路の作動を制御する制御回路C3と、信号線駆動回路C1に接続された複数の信号線706と、走査線駆動回路C2に接続された複数の走査線707とを備えている。また、各信号線706と各走査線707との交差部近傍には、図5に示すように、コンデンサ701と、駆動トランジスタ702と、スイッチングトランジスタ708とが設けられている。
【0183】
コンデンサ701は、一方の電極が駆動トランジスタ702のゲート電極に接続され、他方の電極が駆動トランジスタ702のソース電極に接続されている。駆動トランジスタ702は、ゲート電極がコンデンサ701の一方の電極に接続され、ソース電極がコンデンサ701の他方の電極および駆動電流を供給する電源線703に接続され、ドレイン電極がEL光源部200の陽極4に接続されている。
【0184】
スイッチングトランジスタ708は、ゲート電極が走査線707に接続され、ソース電極が信号線706に接続され、ドレイン電極が駆動トランジスタ702のゲート電極に接続されている。また、本実施形態において、共通電極705は、EL光源部200の陰極8を構成している。なお、駆動トランジスタ702およびスイッチングトランジスタ708は、例えば、薄膜トランジスタ等で構成することができる。
【0185】
走査線駆動回路C2は、走査線707を介して、スイッチングトランジスタ708のゲート電極に走査信号に応じた走査電圧を供給または遮断し、スイッチングトランジスタ708のオンまたはオフする。これにより、走査線駆動回路C2は、信号線駆動回路C1が信号電圧を書き込むタイミングを調整する。一方、信号線駆動回路C1は、信号線706およびスイッチングトランジスタ708を介して、駆動トランジスタ702のゲート電極に映像信号に応じた信号電圧を供給または遮断し、EL光源部200に供給する信号電流の量を調整する。
【0186】
したがって、走査線駆動回路C2から走査電圧がスイッチングトランジスタ708のゲート電極に供給され、スイッチングトランジスタ708がオンすると、信号線駆動回路C1から信号電圧がスイッチングトランジスタ708のゲート電極に供給される。このとき、この信号電圧に対応したドレイン電流が電源線703から信号電流としてEL光源部200に供給される。その結果、EL光源部200は、供給される信号電流に応じて発光する。
【0187】
2-2.EL光源部200
2-2-1.陽極2
陽極2は、外部電源から発光層5に向かって正孔を供給する機能を有する。陽極2の構成材料(陽極材料)としては、特に限定されないが、例えば、金(Au)のような金属、ヨウ化銅(CuI)のようなハロゲン化金属、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)のような金属酸化物等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0188】
陽極2の厚さは、特に制限されないが、10~1,000nmの範囲であることが好ましく、10~200nmの範囲であることがより好ましい。
【0189】
陽極2は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法のような乾式成膜法により形成することができる。この際、フォトリソグラフィー法やマスクを用いた方法により、所定のパターンを有する陽極2を形成してもよい。
【0190】
2-2-2.陰極8
陰極8は、外部電源から発光層5に向かって電子を供給する機能を有する。陰極8の構成材料(陰極材料)としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、銀、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、希土類金属等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0191】
陰極8の厚さは、特に限定されないが、0.1~1,000nmの範囲であることが好ましく、1~200nmの範囲であることがより好ましい。
【0192】
陰極3は、例えば、蒸着法やスパッタリング法のような乾式成膜法により形成することができる。
【0193】
2-2-3.正孔注入層3
正孔注入層3は、陽極2から供給された正孔を受け取り、正孔輸送層4に注入する機能を有する。なお、正孔注入層3は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
【0194】
正孔注入層3の構成材料(正孔注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、銅フタロシアニンのようなフタロシアニン化合物;4,4’,4’’-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミンのようなトリフェニルアミン誘導体;1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノ-キノジメタンのようなシアノ化合物;酸化バナジウム、酸化モリブデンのような金属酸化物;アモルファスカーボン;ポリアニリン(エメラルディン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT-PSS)、ポリピロールのような高分子等が挙げられる。これらの中でも、正孔注入材料としては、高分子であることが好ましく、PEDOT-PSSであることがより好ましい。また、上述の正孔注入材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0195】
正孔注入層3の厚さは、特に限定されないが、0.1~500mmの範囲であることが好ましく、1~300nmの範囲であることがより好ましく、2~200nmの範囲であることがさらに好ましい。正孔注入層3は、単層構成であっても、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
【0196】
このような正孔注入層4は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。正孔注入層3を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の正孔注入材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、正孔注入層3を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等を好適に用いることができる。
【0197】
2-2-4.正孔輸送層4
正孔輸送層4は、正孔注入層3から正孔を受け取り、発光層6まで効率的に輸送する機能を有する。また、正孔輸送層4は、電子の輸送を防止する機能を有していてもよい。なお、正孔輸送層4は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
【0198】
正孔輸送層4の構成材料(正孔輸送材料)としては、特に限定されないが、例えば、TPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’ジアミン)、α-NPD(4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル)、m-MTDATA(4、4’,4’’-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)のような低分子トリフェニルアミン誘導体;ポリビニルカルバゾール;ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン](poly-TPA)、ポリフルオレン(PF)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン(Poly-TPD)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-コ-(4,4’-(N-(sec-ブチルフェニル)ジフェニルアミン))(TFB)、ポリフェニレンビニレン(PPV)のような共役系化合物重合体;およびこれらのモノマー単位を含む共重合体等が挙げられる。
【0199】
これらの中でも、正孔輸送材料としては、トリフェニルアミン誘導体、置換基が導入されたトリフェニルアミン誘導体を重合することにより得られた高分子化合物であることが好ましく、置換基が導入されたトリフェニルアミン誘導体を重合することにより得られた高分子化合物であることがより好ましい。また、上述の正孔輸送材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0200】
正孔輸送層4の厚さは、特に限定されないが、1~500nmの範囲であることが好ましく、5~300nmの範囲であることがより好ましく、10~200nmの範囲であることがさらに好ましい。正孔輸送層4は、単層構成であっても、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
【0201】
このような正孔輸送層4は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。正孔輸送層4を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の正孔輸送材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、正孔輸送層4を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等を好適に用いることができる。
【0202】
2-2-5.電子注入層7
電子注入層7は、陰極8から供給された電子を受け取り、電子輸送層6に注入する機能を有する。なお、電子注入層7は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
【0203】
電子注入層7の構成材料(電子注入材料)としては、特に制限されないが、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe、NaOのようなアルカリ金属カルコゲナイド;CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSeのようなアルカリ土類金属カルコゲナイド;CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaClのようなアルカリ金属ハライド;8-ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)のようなアルカリ金属塩;CaF、BaF、SrF、MgF、BeFのようなアルカリ土類金属ハライド等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属ハライド、アルカリ金属塩であることが好ましい。また、上述の電子注入材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0204】
電子注入層7の厚さは、特に限定されないが、0.1~100nmの範囲であることが好ましく、0.2~50nmの範囲であることがより好ましく、0.5~10nmの範囲であることがさらに好ましい。電子注入層7は、単層構成であっても、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
【0205】
このような電子注入層7は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。電子注入層7を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の電子注入材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、電子注入層7を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用されうる。
【0206】
2-2-6.電子輸送層8
電子輸送層8は、電子注入層7から電子を受け取り、発光層5まで効率的に輸送する機能を有する。また、電子輸送層8は、正孔の輸送を防止する機能を有していてもよい。なお、電子輸送層8は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
【0207】
電子輸送層8の構成材料(電子輸送材料)としては、特に制限されないが、例えば、トリス(8-キノリラート)アルミニウム(Alq3)、トリス(4-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム(Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム(BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(p-フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq)、ビス(8-キノリノラート)亜鉛(Znq)のようなキノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体;ビス[2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラート]亜鉛(Zn(BOX)2)のようなベンズオキサゾリン骨格を有する金属錯体;ビス[2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラート]亜鉛(Zn(BTZ)2)のようなベンゾチアゾリン骨格を有する金属錯体;2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]カルバゾール(CO11)のようなトリまたはジアゾール誘導体;2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(mDBTBIm-II)のようなイミダゾール誘導体;キノリン誘導体;ペリレン誘導体;4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BPhen)のようなピリジン誘導体;ピリミジン誘導体;トリアジン誘導体;キノキサリン誘導体;ジフェニルキノン誘導体;ニトロ置換フルオレン誘導体;酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)のような金属酸化物等が挙げられる。これらの中でも、電子輸送材料としては、イミダゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、金属酸化物(無機酸化物)であることが好ましい。また、上述の電子輸送材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0208】
電子輸送層7の厚さは、特に限定されないが、5~500nmの範囲であることが好ましく、5~200nmの範囲であることがより好ましい。電子輸送層6は、単層であっても、2以上が積層されたものであってもよい。
【0209】
このような電子輸送層7は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。電子輸送層6を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の電子輸送材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、電子輸送層6を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用され得る。
【0210】
2-2-7.発光層5
発光層5は、発光層5に注入された正孔および電子の再結合により生じるエネルギーを利用して発光を生じさせる機能を有する。本実施形態の発光層5は、400~500nmの範囲の波長の青色光を発し、より好ましくは420~480nmの範囲である。
【0211】
発光層5は、発光材料(ゲスト材料またはドーパント材料)およびホスト材料を含むことが好ましい。この場合、ホスト材料と発光材料との質量比は、特に制限されないが、10:1~300:1の範囲であることが好ましい。発光材料には、一重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物または三重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物を使用することができる。また、発光材料としては、有機低分子蛍光材料、有機高分子蛍光材料および有機燐光材料からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0212】
一重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物としては、蛍光を発する有機低分子蛍光材料または有機高分子蛍光材料が挙げられる。
【0213】
有機低分子蛍光材料としては、アントラセン構造、テトラセン構造、クリセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、ペリレン構造、スチルベン構造、アクリドン構造、クマリン構造、フェノキサジン構造またはフェノチアジン構造を有する化合物が好ましい。
【0214】
有機低分子蛍光材料の具体例としては、例えば、5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン、4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ビス(ジベンゾフラン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ビス(ジベンゾチオフェン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン]、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン、クマリン6、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン、ルブレン、5,12-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、5,10,15,20-テトラフェニルビスベンゾ[5,6]インデノ[1,2,3-cd:1’,2’,3’-lm]ペリレン等が挙げられる。
【0215】
有機高分子蛍光材料の具体例としては、例えば、フルオレン誘導体に基づく単位からなるホモポリマー、フルオレン誘導体に基づく単位とテトラフェニルフェニレンジアミン誘導体に基づく単位とからなるコポリマー、タ―フェニル誘導体に基づく単位からなるホモポリマー、ジフェニルベンゾフルオレン誘導体に基づく単位からなるホモポリマー等が挙げられる。
【0216】
三重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物としては、燐光を発する有機燐光材料が好ましい。有機燐光材料の具体例としては、例えば、イリジウム、ロジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、スカンジウム、イットリウム、ガドリニウム、パラジウム、銀、金、アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む金属錯体が挙げられる。中でも、有機燐光材料としては、イリジウム、ロジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、スカンジウム、イットリウム、ガドリニウムおよびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む金属錯体が好ましく、イリジウム、ロジウム、白金およびルテニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む金属錯体がより好ましく、イリジウム錯体または白金錯体がさらに好ましい。
【0217】
ホスト材料としては、発光材料のエネルギーギャップより大きいエネルギーギャップを有する化合物の少なくとも1種を使用することが好ましい。さらに、発光材料が燐光材料である場合、ホスト材料としては、発光材料の三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)よりも三重項励起エネルギーの大きい化合物を選択することが好ましい。
【0218】
ホスト材料としては、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)、バソフェナントロリン、バソキュプロイン、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9,10-ジフェニルアントラセン、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン、9-フェニル-10-{4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)ビフェニル-4’-イル}アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン、5,12-ジフェニルテトラセンまたは5,12-ビス(ビフェニル-2-イル)テトラセン等が挙げられる。これらのホスト材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0219】
発光層5の厚さは、特に限定されないが、1~100nmの範囲であることが好ましく、1~50nmの範囲であることがより好ましい。
【0220】
このような発光層5は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。発光層5を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の発光材料およびホスト材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、発光層5を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用され得る。
【0221】
なお、EL光源部200は、さらに、例えば、正孔注入層3、正孔輸送層4および発光層5を区画するバンク(隔壁)を有していてもよい。バンクの高さは、特に限定されないが、0.1~5μmの範囲であることが好ましく、0.2~4μmの範囲であることがより好ましく、0.2~3μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0222】
バンクの開口の幅は、10~200μmの範囲であることが好ましく、30~200μmの範囲であることがより好ましく、50~100μmの範囲であることがさらに好ましい。バンクの開口の長さは、10~400μmの範囲であることが好ましく、20~200μmの範囲であることがより好ましく、50~200μmの範囲であることがさらに好ましい。また、バンクの傾斜角度は、10~100°の範囲であることが好ましく、10~90°の範囲であることがより
好ましく、10~80°の範囲であることがさらに好ましい。
【0223】
2-3.光変換層12
光変換層12は、EL光源部200から発せられた光を変換して再発光するか、或いは、EL光源部200から発せられた光を透過する。図3に示すように、画素部20として、前記範囲の波長の光を変換して赤色光を発する第1の画素部20aと、前記範囲の波長の光を変換して緑色光を発する第2の画素部20bと、前記範囲の波長の光を透過する第3の画素部20cとを有している。複数の第1の画素部20a、第2の画素部20b及び第3の画素部20cが、この順に繰り返すように格子状に配列されている。そして、隣り合う画素部の間、すなわち、第1の画素部20aと第2の画素部20bとの間、第2の画素部20bと第3の画素部20cとの間、第3の画素部20cと第1の画素部20aとの間に、光を遮蔽する遮光部30が設けられている。言い換えれば、これらの隣り合う画素部同士は、遮光部30によって離間されている。なお、第1の画素部20aおよび第2の画素部20bは、それぞれの色に対応した色材を含んでもよい。
【0224】
第1の画素部20a及び第2の画素部20bは、それぞれ上述した実施形態のナノ結晶含有組成物の硬化物を含む。硬化物は、発光微粒子90と硬化成分とを必須として含有し、さらに、光を散乱させて外部へ確実に取り出すために光散乱粒子を含むことが好ましい。硬化成分は、熱硬化性樹脂の硬化物であり、例えばエポキシ基を含有する樹脂の重合によって得られる硬化物である。すなわち、第1の画素部20aは、第1の硬化成分22aと、第1の硬化成分22a中にそれぞれ分散された第1の発光微粒子90aおよび第1の光散乱粒子21aとを含む。同様に、第2の画素部20bは、第2の硬化成分22bと、第2の硬化成分22b中にそれぞれ分散された第1の発光微粒子90b及び第1の光散乱粒子21bとを含む。第1の画素部20a及び第2の画素部20bにおいて、第1の硬化成分22aと第2の硬化成分22bとは同一であっても異なっていてもよく、第1の光散乱性粒子22aと第2の光散乱性粒子22bとは同一であっても異なっていてもよい。
【0225】
第1の発光微粒子90aは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、赤色発光微粒子である。すなわち、第1の画素部20aは、青色光を赤色光に変換するための赤色画素部と言い換えてよい。また、第2の発光微粒子90bは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、緑色発光微粒子である。すなわち、第2の画素部20bは、青色光を緑色光に変換するための緑色画素部と言い換えてよい。
【0226】
ナノ結晶含有組成物の硬化物を含む画素部20a、20bにおける発光微粒子90の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、ナノ結晶含有組成物の硬化物の全質量を基準として、好ましくは1質量%以上である。同様の観点から、発光微粒子90の含有量は、ナノ結晶含有組成物の硬化物の全質量を基準として、5質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよい。発光微粒子90の含有量は、画素部20a、20bの信頼性に優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、ナノ結晶含有組成物の全質量を基準として、好ましくは40質量%以下である。同様の観点から、発光性粒子90の含有量は、ナノ結晶含有組成物の硬化物の全質量を基準として、30質量%以下であってもよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以上であってもよい。
【0227】
ナノ結晶含有組成物の硬化物を含む画素部20a、20bにおける光散乱性粒子21a、21bの含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点から、ナノ結晶含有組成物の硬化物の全質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、12質量%以上であってもよい。光散乱性粒子21a、21bの含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び画素部20の信頼性に優れる観点から、ナノ結晶含有組成物の硬化物の全質量を基準として、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。
【0228】
第3の画素部20cは、420~480nmの範囲の波長の光に対し30%以上の透過率を有する。そのため、第3の画素部20cは、420~480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に、青色画素部として機能する。第3の画素部20cは、例えば、上述の熱硬化性樹脂を含有する組成物の硬化物を含む。硬化物は、第3の硬化成分22ccを含有する。第3の硬化成分22cは、熱硬化性樹脂の硬化物であり、具体的には、エポキシ基を含有する樹脂の重合によって得られる硬化物である。すなわち、第3の画素部20cは、第3の硬化成分22cを含む。第3の画素部20cが上述の硬化物を含む場合、熱硬化性樹脂を含有する組成物は、420~480nmの範囲の波長の光に対する透過率が30%以上となる限りにおいて、上述のナノ結晶含有組成物に含有される成分のうち、熱硬化性樹脂、硬化剤、溶剤以外の成分を更に含有していてもよい。なお、第3の画素部20cの透過率は、顕微分光装置により測定することができる。
【0229】
画素部(第1の画素部20a、第2の画素部20b及び第3の画素部20c)の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上であってよく、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。画素部(第1の画素部20a、第2の画素部20b及び第3の画素部20c)の厚さは、例えば、30μm以下であってよく、25μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。
【0230】
以上の第1~3の画素部20a~20cを備える光変換層12は、湿式成膜法により形成した塗膜を乾燥、加熱して硬化させることより形成することができる。第1の画素部20a及び第2の画素部20bは、本発明のナノ結晶含有組成物を用いて形成することができる。一方、第3の画素部20cは、当該ナノ結晶含有組成物に含まれる発光微粒子90を含まない樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0231】
以下、本発明のナノ結晶含有組成物を用いたインク組成物を用いて、光変換層12としての塗膜を形成する方法について説明する。塗膜を得るための塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(ピエゾ方式またはサーマル方式の液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。ここで、ノズルプリント印刷法とは、インク組成物をノズル孔から液柱としてストライプ状に塗布する方法である。中でも、塗布法としては、インクジェット印刷法(特に、ピエゾ方式の液滴吐出法)が好ましい。これにより、インク組成物を吐出する際の熱負荷を小さくすることができ、発光微粒子90の熱による劣化を防ぐことができる。
【0232】
インクジェット印刷法の条件は、次のように設定することが好ましい。インク組成物の吐出量は、特に限定されないが、1~50pL/回であることが好ましく、1~30pL/回であることがより好ましく、1~20pL/回であることがさらに好ましい。
【0233】
また、ノズル孔の開口径は、5~50μmの範囲であることが好ましく、10~30μmの範囲であることがより好ましい。これにより、ノズル孔の目詰まりを防止しつつ、インク組成物の吐出精度を高めることができる。
【0234】
塗膜を形成する際の温度は、特に限定されないが、10~50℃の範囲であることが好ましく、15~40℃の範囲であることがより好ましく、15~30℃の範囲であることがさらに好ましい。かかる温度で液滴を吐出するようにすれば、インク組成物中に含まれる各種成分の結晶化を抑制することができる。
【0235】
また、塗膜を形成する際の相対湿度も、特に限定されないが、0.01ppm~80%の範囲であることが好ましく、0.05ppm~60%の範囲であることがより好ましく、0.1ppm~15%の範囲であることがさらに好ましく、1ppm~1%の範囲であることが特に好ましく、5~100ppmの範囲であることが最も好ましい。相対湿度が上記下限値以上であると、塗膜を形成する際の条件の制御が容易となる。一方、相対湿度が上記上限値以下であると、得られる光変換層12に悪影響を及ぼし得る塗膜に吸着する水分量を低減することができる。
【0236】
得られた塗膜の乾燥は、室温(25℃)で放置して行っても、加熱することにより行ってもよいが、生産性の観点から加熱することによって行うのが好ましい。乾燥を加熱により行う場合、乾燥温度は特に限定されないが、インク組成物に使用される有機溶剤の沸点及び蒸気圧を考慮した温度とすることが好ましい。乾燥温度は、塗膜中の有機溶剤を除去するプリベーク工程として、50~130℃であることが好ましく、60~120℃であることがより好ましく、70~110℃であることが特に好ましい。乾燥温度が50℃以下であると有機溶剤が除去できず、一方、130℃以上であると有機溶剤の除去および塗膜の硬化が同時に起こるため、硬化した塗膜の外観は著しく劣ることとなり、好ましくない。また、乾燥は、減圧下で行うことが好ましく、0.001~100Paの減圧下で行うことがより好ましい。さらに、乾燥時間は、1~30分間であることが好ましく、1~15分間であることがより好ましく、1~10分間であることが特に好ましい。このような乾燥条件で塗膜を乾燥することにより、有機溶剤が確実に塗膜中から除去され、得られる光変換層12の外部量子効率をより向上させることができる。
【0237】
本発明のインク組成物は、前記塗膜のプリベーク工程後にさらに加熱することにより完全に硬化させることができる。完全硬化させるための加熱温度は、150~260℃であることが好ましく、160~230℃であることがより好ましく、170~210℃であることが特に好ましい。
【0238】
また、完全硬化させるための加熱時間は、1~30分間であることが好ましく、1~15分間であることがより好ましく、1~10分間であることが特に好ましい。さらに、完全硬化させるための加熱は、空気中あるいは不活性ガス中で行うことができるが、塗膜の酸化を抑制するために、不活性ガス中で行うことがより好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、二酸化炭素等が挙げられる。このような加熱条件で塗膜を硬化させることにより、塗膜が完全に硬化できることから、得られる光変換層9の外部量子効率をより向上させることができる。
【0239】
本発明のインク組成物は、加熱による硬化の他に、活性エネルギー線(例えば、紫外線)の照射を併用することにより硬化させてもよい。照射源(光源)としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等が使用される。
照射する光の波長は、200nm以上であることが好ましく、440nm以下であることがより好ましい。また、光の照射量(露光量)は、10mJ/cm以上であることが好ましく、4000mJ/cm以下であることがより好ましい。
【0240】
上述したように、本発明のナノ結晶含有組成物は熱に対する安定性が優れることから、熱硬化後の成形体である画素部20においても、良好な発光を実現することができる。さらには、本発明の発光微粒子組成物は分散性に優れるため、発光微粒子910、90の分散性に優れ、且つ、平坦な画素部20を得ることができる。
【0241】
さらに、第1の画素部20a及び第2の画素部20bに含まれる発光微粒子90は、メタルハライドからなる半導体ナノ結晶を含むため、300~500nmの波長領域の吸収が大きい。そのため、第1の画素部20a及び第2の画素部20bにおいて、第1の画素部20a及び第2の画素部20bに入射した青色光が上基板13側へ透過する、すなわち、青色光が上基板13側へ漏れることを防ぐことができる。したがって、本発明の第1の画素部20a及び第2の画素部20bによれば、青色光が混色されることなく、色純度の高い赤色光及び緑色光を取り出すことができる。
【0242】
遮光部30は、隣り合う画素部20を離間して混色を防ぐ目的及び光源からの光漏れを防ぐ目的で設けられる、いわゆるブラックマトリックスである。遮光部30を構成する材料は、特に限定されず、クロム等の金属の他、バインダーポリマーにカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の硬化物等を用いることができる。ここで用いられるバインダーポリマーとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種又は2種以上混合したもの、感光性樹脂、O/Wエマルジョン型の樹脂組成物(例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの)などを用いることができる。遮光部30の厚さは、例えば、1μm以上であってよく、15μm以下であってよい。
【0243】
発光素子100は、トップエミッション型に代えて、ボトムエミッション型として構成することもできる。
また、発光素子100は、EL光源部200に代えて、他の光源を使用することもできる。
【0244】
以上、本発明のナノ結晶含有組成物、インク組成物及びその製造方法、並びに、当該インク組成物を用いて製造した光変換層を備えた発光素子について説明したが、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、本発明の発光微粒子、発光微粒子分散体、ナノ結晶含有組成物、インク組成物および発光素子は、それぞれ、上述した実施形態の構成において、他の任意の構成を追加して有していてもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。また、本発明の発光微粒子の製造方法は、上述した実施形態の構成において、他の任意の目的の工程を有していてもよいし、同様の効果を発揮する任意の工程と置換されていてよい。
【実施例
【0245】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。実施例で用いた全ての材料は、アルゴンガスを導入して溶存酸素をアルゴンガスに置換したものである。酸化チタンは、混合前に、1mmHgの減圧下、2時間、120℃で加熱し、アルゴンガス雰囲気下で放冷したものである。実施例で用いた液状の材料は、混合前にあらかじめ、モレキュラーシーブス3Aで48時間以上脱水したものである。
【0246】
<発光微粒子の調製>
(発光微粒子Aの調製)
三口フラスコに炭酸セシウム(0.815g)、1-オクタデセン(40ml)、オレイン酸(2.5ml)を加え、真空下120℃で1時間乾燥させた後、150℃まで加熱してオレイン酸セシウムを調製した。
【0247】
別の三口フラスコに臭化鉛(II)(55mg)、1-オクタデセン(5ml)、オレイルアミン(0.5ml)、およびオレイン酸(0.5ml)を加え、真空下110℃で30分間加熱した後、アルゴン気流下180℃に昇温した。さらに、150℃で加熱中の上記オレイン酸セシウム溶液(0.8ml)をシリンジで加え、15秒反応させた後、氷浴で急冷した。
【0248】
得られた反応溶液に対して遠心分離(8000G×5分間)を行い、固形物を回収した。得られた固形物にトルエン(20ml)を添加して懸濁液を得た。この懸濁液に対して遠心分離(8000G×5分間)を行い、デカンテーションによって不純物を含む沈殿物を除き、上澄みのトルエン溶液を回収した。回収したトルエン溶液に酢酸エチル(20ml)を加え、固形物を再沈殿させることにより、発光微粒子Aを得た。得られた発光微粒子Aは、ペロブスカイト型結晶構造を有し発光を呈する三臭化鉛セシウム結晶の表面にオレイルアミン及びオレイン酸からなる配位子を備えたものであり、上述の無被覆発光微粒子910に相当する。発光微粒子Aの平均粒子径は10nmであった。発光微粒子Aの平均粒子径をNanotrac WaveII(Microtrac社製)によって測定したところ、平均10nmであった。
【0249】
(発光微粒子Bの調製)
N-1(1-アダマンチル)エチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)のトルエン溶液(0.05M)を調製した。ナスフラスコに上記発光微粒子A、オレイン酸(50ml)、上記N-1(1-アダマンチル)エチレンジアミン溶液(2ml)を加え、1分間撹拌した。このとき、濃度が15mg/mLとなるように上記発光微粒子Aを加えた。得られた溶液に酢酸エチル(100ml)を加えた後、遠心分離(8000G×5分間)を行うことにより、発光微粒子Bを得た。発光微粒子Bは、ペロブスカイト型結晶構造を有し発光を呈する三臭化鉛セシウム結晶の表面にN-1(1-アダマンチル)エチレンジアミンからなる配位子を備えたものであり、上述の無被覆発光微粒子910に相当する。発光微粒子Bの平均粒子径は10nmであった。
【0250】
(発光微粒子Cの調製)
炭酸セシウム(0.81g)と、1-オクタデセン(40ml)と、オレイン酸(2.5ml)とを混合して混合液を得た。次に、この混合液を120℃で10分間、減圧乾燥した後、アルゴン雰囲気下に150℃で加熱した。これにより、セシウム-オレイン酸溶液を得た。
【0251】
一方、臭化鉛(II)(138.0mg)と1-オクタデセン(10mL)とを混合して混合液を得た。次に、この混合液を120℃で10分間、減圧乾燥した後、アルゴン雰囲気でこの混合液に3-アミノプロピルトリエトキシシラン(1ml)を添加して、混合液(1)を得た。
【0252】
その後、上記混合液(1)を140℃に昇温させた後、前記セシウム-オレイン酸溶液(1.3ml)を添加し、5秒間加熱撹拌することにより反応させた後、氷浴で冷却した。
【0253】
次いで、得られた反応液を大気下(23℃、湿度45%)で60分間撹拌した後、エタノール(20ml)を添加して懸濁液を得た。得られた懸濁液を遠心分離(3,000回転/分、5分間)して固形物を回収した。
【0254】
回収した固形物を16mlのヘキサンに添加することにより、発光微粒子Cのヘキサン分散液を得た。発光微粒子Cは、ペロブスカイト型結晶構造を有し発光を呈する三臭化鉛セシウム結晶の表面にオレイン酸からなる配位子、及び反応性基を有する3-アミノプロピルトリエトキシシランからなる配位子とを備え、さらにその反応性基が反応して図2のSiを含む無機被覆層91に相当するシリカ被覆層を備えた、上述の無機被覆発光微粒子90に相当する。発光微粒子Cの平均粒子径は10nmであり、無機被覆層の厚さは1nmであった。
【0255】
<モノマー溶液の調製>
(モノマー溶液1)
光重合性モノマーとしてのメタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル(8.85質量部、東京化成工業株式会社製)を、ライトアクリレートDCP-A(0.5質量部、共栄社化学株式会社製)に混合し、室温で攪拌することにより均一溶解させ、モノマー溶液1を得た。
【0256】
(モノマー溶液2)
モノマー溶液1の調製方法において、光重合性モノマーであるメタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルの代わりに、イソボニルメタクリレート(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、モノマー溶液1の調製方法と同様にして、モノマー溶液2を得た。
【0257】
(モノマー溶液3)
モノマー溶液1の調製方法において、光重合性モノマーであるメタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルの代わりに、メタクリル酸ジシクロペンタニル(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、モノマー溶液1の調製方法と同様にして、モノマー溶液3を得た。
【0258】
(モノマー溶液4)
モノマー溶液1の調製方法において、光重合性モノマーであるメタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルの代わりに、メタクリル酸1-アダマンチル(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、モノマー溶液1の調製方法と同様にして、モノマー溶液4を得た。
【0259】
(モノマー溶液5)
モノマー溶液1の調製方法において、光重合性モノマーであるメタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルの代わりに、メタクリル酸2-メチル-2-アダマンチル(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、モノマー溶液1の調製方法と同様にして、モノマー溶液5を得た。
【0260】
(モノマー溶液6)
モノマー溶液1の調製方法において、光重合性モノマーであるメタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルの代わりに、イソボニルメタクリレート(4.85質量部、東京化成工業株式会社製)、およびメタクリル酸1-アダマンチル(4.00質量部、東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、モノマー溶液1の調製方法と同様にして、モノマー溶液6を得た。
【0261】
(モノマー溶液7)
モノマー溶液1の調製方法において、光重合性モノマーであるメタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルの代わりに、ライトエステルL(0.30質量部、共栄社化学株式会社製)、およびメタクリル酸1-アダマンチル(8.55質量部、東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、モノマー溶液1の調製方法と同様にして、モノマー溶液7を得た。
【0262】
(モノマー溶液8)
モノマー溶液1の調製方法において、光重合性モノマーであるメタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルの代わりに、ライトエステルL(3.00質量部、共栄社化学株式会社製)、およびメタクリル酸1-アダマンチル(5.85質量部、東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、モノマー溶液1の調製方法と同様にして、モノマー溶液8を得た。
【0263】
(モノマー溶液9)
モノマー溶液1の調製方法において、光重合性モノマーであるメタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルの代わりに、ライトエステルL(8.85質量部、共栄社化学株式会社製)を用いた以外は、モノマー溶液1の調製方法と同様にして、モノマー溶液9を得た。
【0264】
(モノマー溶液10)
モノマー溶液1の調製方法において、光重合性モノマーであるメタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルの代わりにイソボニルメタクリレート(8.85質量部、東京化成工業株式会社製)を用い、ライトアクリレートDCP-Aの代わりにTMPTA(0.5質量部、大阪有機化学工業株式会社製)を用いた以外は、モノマー溶液1の調製方法と同様にして、モノマー溶液10を得た。
【0265】
(モノマー溶液11)
モノマー溶液1の調製方法において、光重合性モノマーであるメタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルの代わりにライトエステルL(8.85質量部、共栄社化学株式会社製)を用い、ライトアクリレートDCP-Aの代わりにTMPTA(0.5質量部、大阪有機化学工業株式会社製)を用いた以外は、モノマー溶液1の調製方法と同様にして、モノマー溶液11を得た。
【0266】
(モノマー溶液12)
モノマー溶液1の調製方法において、光重合性モノマーであるメタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルの代わりにライトエステルPO-A(8.85質量部、共栄社化学株式会社製)を用いた以外は、モノマー溶液1の調製方法と同様にして、モノマー溶液12を得た。
【0267】
<QD分散体の調製>
(実施例1)
モノマー溶液1(0.935質量部)に、発光微粒子A(0.015質量部)を混合し、室温で撹拌して均一分散させた。得られた分散液を孔径5μmのフィルターでろ過することにより、ナノ結晶含有組成物としてのQD分散体1を得た。
【0268】
(実施例2~8、10、40)
QD分散体1の調製方法において、モノマー溶液1の代わりにモノマー溶液2~8、モノマー溶液10、及びモノマー溶液12をそれぞれ用いた以外は同様にして、QD分散体2~8、QD分散体10、及びQD分散体13を得た。
【0269】
(実施例9)
QD分散体1の調製方法において、モノマー溶液1の代わりにモノマー溶液9を用い、発光微粒子Aの代わりに発光微粒子Bを用いた以外は同様にして、QD分散体9を得た。
【0270】
(実施例11)
QD分散体1の調製方法において、モノマー溶液1の代わりにモノマー溶液11を用い、発光微粒子Aの代わりに発光微粒子Bを用いる以外は同様にして、QD分散体11を得た。
【0271】
(実施例12)
QD分散体1の調製方法において、モノマー溶液1の代わりにモノマー溶液4を用い、発光微粒子Aの代わりに発光微粒子Cを用いる以外は同様にして、QD分散体12を得た。
【0272】
(比較例1)
QD分散体1の調製方法において、モノマー溶液1の代わりにモノマー溶液9を用いた以外は同様にして、QD分散体C1を得た。
【0273】
下表に、実施例1~12のQD分散体1~12及び比較例1のQD分散体C1におけるモノマー溶液1~11及び発光微粒子A~Cの含有量を示す。なお、数値の単位は質量部である。
【0274】
【表1】
【0275】
【表2】
【0276】
【表3】
【0277】
<開始剤を含むモノマー溶液の調製>
(モノマー溶液B1)
モノマー溶液1の調製方法において、上述の光重合性モノマーに加えて、2種の光重合開始剤を添加した点と、室温に代えて60℃で撹拌した点以外は同様にして、光重合開始剤を含むモノマー溶液B1を得た。2種の光重合開始剤として、IGM Resin社製、「Omnirad TPO」を0.3質量部と、IGM Resin社製、「Omnirad 819」0.2質量部とを添加した。
【0278】
(モノマー溶液B2~モノマー溶液B11、13)
モノマー溶液B1の調製方法において、モノマー溶液1に代えてモノマー溶液2~モノマー溶液11を用いた以外は同様にして、光重合開始剤を含むモノマー溶液B2~モノマー溶液B11、及びモノマー溶液B13を得た。
【0279】
(モノマー溶液B12)
モノマー溶液B1の調製方法において、モノマー溶液1に代えてモノマー溶液2を用い、2種の光重合性開始剤に代えて、1種のみを添加した点以外は同様にして、光重合開始剤を含むモノマー溶液B12を得た。1種の光重合開始剤として、IGM Resin社製、「Omnirad TPO」を0.5質量部添加した。
【0280】
下表に、モノマー溶液B1~B12の含有量を示す。なお、表中の数値の単位は質量部である。
【0281】
【表4】
【0282】
【表5】
【0283】
【表6】
【0284】
<QD分散体Bの調製>
(QD分散体B1)
光重合開始剤を含むモノマー溶液B1(0.985質量部)に、発光微粒子A(0.015質量部)を混合し、室温にて撹拌して均一分散させることにより、QD分散体B1を得た。
【0285】
(QD分散体B2~QD分散体B8)
QD分散体B1の調製方法において、光重合開始剤を含むモノマー溶液B1に代えて光重合開始剤を含むモノマー溶液B2~B8を用いた以外は同様にして、QD分散体B2~B8を得た。
【0286】
(QD分散体B9)
QD分散体B1の調製方法において、光重合開始剤を含むモノマー溶液B1に代えて光重合開始剤を含むモノマー溶液B9を用い、発光微粒子Aに代えて発光微粒子Bを用いた以外は同様にして、QD分散体B9を得た。
【0287】
(QD分散体B10)
QD分散体B1の調製方法において、光重合開始剤を含むモノマー溶液B1に代えて光重合開始剤を含むモノマー溶液B10を用いた以外は同様にして、QD分散体B10を得た。
【0288】
(QD分散体B11)
QD分散体B1の調製方法において、光重合開始剤を含むモノマー溶液B1に代えて光重合開始剤を含むモノマー溶液B11を用い、発光微粒子Aに代えて発光微粒子Bを用いた以外は同様にして、QD分散体B11を得た。
【0289】
(QD分散体B12)
QD分散体B1の調製方法において、光重合開始剤を含むモノマー溶液B1に代えて光重合開始剤を含むモノマー溶液B4を用い、発光微粒子Aに代えて発光微粒子Cを用いた以外は同様にして、QD分散体B12を得た。
【0290】
(QD分散体B13)
QD分散体B1の調製方法において、光重合開始剤を含むモノマー溶液B1に代えて光重合開始剤を含むモノマー溶液B12を用いた以外は同様にして、QD分散体B13を得た。
(QD分散体B14)
QD分散体B1の調製方法において、光重合開始剤を含むモノマー溶液B1に代えて光重合開始剤を含むモノマー溶液B13を用いた以外は同様にして、QD分散体B14を得た。
【0291】
(QD分散体BC1)
QD分散体B9の調製方法において、発光微粒子Bに代えて発光微粒子Aを用いた以外は同様にして、QD分散体BC1を得た。
【0292】
下表に、QD分散体B1~B14、及びQD分散体BC1の含有量を示す。なお、表中の数値の単位は質量部である。
【0293】
【表7】
【0294】
【表8】
【0295】
【表9】
【0296】
<光散乱性粒子分散体の調製>
(光散乱性粒子分散体1)
酸化チタン粒子(55質量部、石原産業株式会社製、「CR-60-2」)と、光重合性モノマーであるメタクリル酸ジシクロペンタニル(45質量部、東京化成工業株式会社製)とを混合した。なお、酸化チタン粒子の平均粒子径(体積平均径)は300nmである。次に、得られた配合物にジルコニアビーズ(直径:0.3mm)を加えた後、ペイントコンディショナーを用いて2時間振とうさせることで配合物の分散処理を行った。これにより光散乱性粒子分散体1を得た。
【0297】
(光散乱性粒子分散体2)
光散乱性粒子分散体1の調製方法において、メタクリル酸ジシクロペンタニルの代わりに、ライトエステルL(共栄社化学株式会社製)を用いた以外は、光散乱性粒子分散体1の調製方法と同様にして、光散乱性粒子分散体2を得た。
【0298】
<QDインクの調製>
(実施例13)
QD分散体B1(94質量部)に、光散乱性粒子分散体1(6質量部)を混合し、室温にて撹拌して均一分散させた。得られた分散液を孔径5μmのフィルターでろ過することにより、ナノ結晶含有組成物及びインク組成物としてのQDインク1を得た。
【0299】
(実施例14~24、41)
実施例13のQDインク1の調製方法において、QD分散体B1に代えてにQD分散体B2~12、及びQD分散体B14をそれぞれ用いた以外は、QDインク1の調製方法と同様にして、QDインク2~12、及びQDインク14を得た。
【0300】
(実施例25)
実施例13のQDインク1の調製方法において、QD分散体B1の代わりにQD分散体B13、及び光散乱性分散体1の代わりに光散乱性分散体2をそれぞれ用いた以外は、QDインク1の調製方法と同様にして、QDインク13を得た。
【0301】
(比較例2)
実施例13のQDインク1の調製方法において、QD分散体B1の代わりにQD分散体CB1を用いた以外は、QDインク1の調製方法と同様にして、QDインクC1を得た。
【0302】
下表に、実施例13のQDインク1~実施例25のQDインク13、実施例41のQDインク14、及び比較例2のQDインクC1の含有量を示す。なお、表中の数値の単位は質量部である。
【0303】
【表10】
【0304】
【表11】
【0305】
【表12】
【0306】
<光変換層の作製>
(実施例26)
得られた実施例13のQDインク1を、ガラス基板(コーニング社製、「EagleXG」)上に、乾燥後の膜厚が10μmとなるように、スピンコーターにて塗布した。
【0307】
得られた塗膜に窒素雰囲気下でLEDランプ波長365nmの紫外光を2000mJ/cmの露光量で照射した。これにより、実施例13のQDインク1を硬化させて、ガラス基板上にインク組成物の硬化物からなる層を形成し、これを実施例26の光変換層1とした。
【0308】
(実施例27~38、42)
実施例26の光変換層1の作製方法において、実施例13のQDインク1に代えて実施例14のQDインク2~実施例25のQDインク13、実施例41のQDインク14を用いた以外は同様にして、実施例27の光変換層2~実施例38の光変換層13、及び実施例42の光変換層14を作製した。
【0309】
(比較例3)
実施例26の光変換層1の作製方法において、実施例13のQDインク1に代えて比較例2のQDインクC1を用いた以外は同様にして、比較例3の光変換層C1を作製した。
【0310】
<評価>
[量子収率(PLQY)保持率]
実施例1のQD分散体1~実施例12のQD分散体1~12、実施例40のQD分散体13、及び比較例1のQD分散体C1の量子収率(PLQY)を、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス株式会社製、「Quantaurus-QY」)で測定し、量子収率保持率(調製後大気下で10日静置した後の量子収率を、調製直後の量子収率で除した値)を算出した。量子収率保持率が高いほど、発光微粒子の酸素ガスおよび水蒸気に対する安定性が高いことを意味する。
【0311】
[分散安定性]
実施例13~25のQDインク1~13、実施例41のQDインク14、及び比較例2のQDインクC1を大気下で放置した後、沈殿物の有無を確認し、以下の基準に従って評価した。
〔評価基準〕
A:10日後、沈殿物が生じていない。
B:10日後、沈殿物がごくわずかに生じている。振とうすることにより沈殿物が溶解する。
C:10日後、沈殿物がやや多く生じている。振とうしても沈殿物が残る。
【0312】
[光変換層の外部量子効率保持率]
実施例26~38の光変換層1~13、実施例42の光変換層14、及び比較例3の光変換層C1の外部量子効率を以下のようにして測定し、光変換層の外部量子効率保持率(光変換層の形成10日後の外部量子効率を、光変換層の形成直後の外部量子効率で除した値)を算出した。
【0313】
面発光光源として青色LED(ピーク発光波長450nm;シーシーエス株式会社製)を用い、この光源上にガラス基板側を下側にして光変換層を設置した。放射分光光度計(大塚電子株式会社製、「MCPD-9800」)に積分球を接続し、青色LED上に設置した光変換層上に積分球を近接させた。この状態で青色LEDを点灯させ、励起光および光変換層の発光(蛍光)の量子数を測定し、外部量子効率を算出した。外部量子効率保持率が高いほど、発光微粒子を含む光変換層の酸素ガスおよび水蒸気に対する安定性が高いことを意味する。
【0314】
[立体パラメーター]
下表に、上述の発光性ナノ結晶の表面に配位した配位子として用いた化合物の構造式を示す。
【0315】
【表13】
【0316】
下表に、上述のQD分散体及びQDインクの調製に用いたモノマーとして用いた化合物の構造式を示す。
【0317】
【表14】
【0318】
【表15】
【0319】
上述の化合物について、下式(C)を用いて立体パラメーターMRを算出した。
【化30】
式(C)中、nは屈折率を表し、Mは分子量を表し、dは密度を表す。密度、及び屈折率は20℃または25℃の値を用いた。算出した立体パラメーターMRを下表に示す。
【0320】
【表16】
【0321】
<QD分散体の評価>
以下、実施例1~12のQD分散体1~12、実施例40のQD分散体13、及び比較例1のQD分散体C1について検討する。
【0322】
まず、比較例1のQD分散体C1について、以下のようにして、各モノマーの立体パラメーターMRと配位子の立体パラメーターMRとの差の絶対値|ΔMR|と、全ての|ΔMR|の加重平均|ΔMR|加重平均とを算出した。さらに、比較例1のQD分散体C1について、PLQY保持率を測定したところ、53.0%であった。

(1)ライトエステルLとオレイン酸の組み合わせにおける|ΔMR|PY
=|(ライトエステルLのMR)-(オレイン酸のMR)|
=|78.6-88.3|
=9.7
(2)ライトエステルLとオレイルアミンの組み合わせにおける|ΔMR|PZ
=|(ライトエステルLのMR)-(オレイルアミンのMR)|
=|78.6-86.9|
=8.3
(3)ライトアクリレートDCP-Aとオレイン酸の組み合わせにおける|ΔMR|QX
=|(ライトアクリレートDCP-AのMR)-(オレイン酸のMR)|
=|82.2-88.3|
=6.1
(4)ライトアクリレートDCP-Aとオレイルアミンの組み合わせにおける|ΔMR|QZ
=|(ライトアクリレートDCP-AのMR)-(オレイルアミンのMR)|
=|82.2-86.9|
=4.7
【0323】
(5)|MR|の加重平均|ΔMR|加重平均
={(|ΔMR|PY×0.5+|ΔMR|PZ×0.5)×m+(|ΔMR|QY×0.5+|ΔMR|QZ×0.5)×m}/(m+m
={(9.7×0.5+8.3×0.5)×8.85+(6.1×0.5+4.7×0.5)×0.5}/(8.85+0.5)
=8.8
但し、発光性ナノ結晶の表面に配位したオレイン酸及びオレイルアミンの配位比率は0.5:0.5として、|ΔMR|加重平均を算出した。
【0324】
次に、実施例1~12のQD分散体1~12、及び実施例40のQD分散体13についても、比較例1と同様にして、それぞれの|ΔMR|及び|ΔMR|加重平均を算出し、PLQY保持率を測定した。各QD分散体1~12では、2種類の配位子を用いており、各配位子の配位比率を0.5:0.5としてΔMR|加重平均を算出した。但し、実施例12のQD分散体12では、三臭化鉛セシウム結晶からなる発光性ナノ結晶の表面にオレイン酸からなる配位子と3-アミノプロピルトリエトキシシランからなる配位子とが配位している。3-アミノプロピルトリエトキシシランは、発光性ナノ結晶の表面に配位した後、シロキサン結合を形成して発光性ナノ結晶の表面を網目状に覆うため、後述するように、配位子として用いたオレイン酸とQD分散体中の光重合性モノマーとの交換が抑制されると考えられる。このことから、実施例12については、発光性ナノ結晶の表面にはオレイン酸のみが配位している、すなわち、オレイン酸の配位比率が1として、|ΔMR|加重平均を算出した。結果を下表に示す。
【0325】
【表17】
【0326】
【表18】
【0327】
上記表のとおり、実施例1~12のQD分散体、及び実施例40のQD分散体は、|ΔMR|の最大値が12以上であり、且つ、全ての|ΔMR|の加重平均|ΔMR|加重平均が12以上である。これに対し、比較例1のQD分散体は|ΔMR|の最大値が12を大きく下回り、且つ、|ΔMR|加重平均が12を大きく下回っている。そして、実施例1~12のQD分散体、及び実施例40のQD分散体は、比較例1のQD分散体と比較して、高いPLQY保持率を示すことがわかる。
【0328】
実施例1~8、10及び比較例1のQD分散体は、カチオン性のオレイルアミン、及びアニオン性のオレイン酸が配位した発光微粒子を含有するのに対し、実施例9、11のQD分散体は、カチオン性のN-(1-アダマンチル)エチレンジアミン、およびアニオン性のオレイン酸が配位した発光微粒子を含有する。配位子として、オレイルアミン、オレイン酸に代えて、N-(1-アダマンチル)エチレンジアミンを用いた実施例9及び実施例11の場合も、QD分散体のPLQY保持率は、比較例1よりも優れる。このことから、配位子として環状構造を有していない化合物を用い、モノマーとして環状構造を有する化合物を用いた場合、及び、配位子として環状構造を有する化合物を用い、モノマーとして環状構造を有していない化合物を用いた場合のいずれにおいても、高いPLQY保持率を示すことが明らかである。また、実施例1~5と実施例40の結果から、環状構造が脂肪族と同様に芳香族であっても、高いPLQYを示すことがわかる。
【0329】
また、実施例1~12の結果から、|ΔMR|加重平均が大きいほどPLQY保持率を高くできる傾向にあることが明らかである。
【0330】
さらに、発光微粒子における無機被覆層の有無について検討する。実施例12のQD分散体は、発光性ナノ結晶の表面に、カチオン性の配位子としてオレイルアミンに代えて3-アミノプロピルトリエトキシシランが配位しさらにこの配位子がシロキサン結合を形成し、発光性ナノ結晶の表面にSiを含む無機被覆層を備える点を除いて、実施例4のQD分散体と同一である。実施例4のQD分散体における|ΔMR|加重平均が24.8であるのに対し、実施例12のQD分散体は24.1であって0.7小さい。ところが、実施例4のQD分散体におけるPLQY保持率は71.9であるのに対して、実施例12のQD分散体は75.8であって3.9高かった。この結果より、実施例12のQD分散体では、発光性ナノ結晶の表面にSiを含む無機被覆層を形成したことによって、発光性ナノ結晶が保護されると共に、オレイン酸と光重合性モノマーとの交換が抑制された結果、PLQY保持率が高くなったと考えられる。
【0331】
<QDインクの評価>
得られた実施例13~25、実施例41、及び比較例2のQDインクについて、QD分散体と同様にして、|ΔMR|の最大値及びΔMR|加重平均を算出した。|ΔMR|の最大値及びΔMR|加重平均は、光散乱性粒子分散体1~2の調製に用いたメタクリル酸ジシクロペンタニル及びライトエステルLの立体パラメーターMRも考慮して算出した。さらに、QDインクの分散安定性の評価を行った。結果を下表に示す。
【0332】
【表19】
【0333】
上記表のとおり、実施例13~25のQDインク、及び実施例41のQDインクは、|ΔMR|の最大値が12以上であり、且つ、全ての|ΔMR|の加重平均|ΔMR|加重平均が12以上である。これに対し、比較例2のQDインクは|ΔMR|の最大値が12以上であるが、|ΔMR|加重平均が12を大きく下回っている。そして、実施例13~25のQDインクは、比較例2のQDインクと比較して、分散安定性に優れることがわかる。特に、|ΔMR|加重平均が20以上であるときには、いずれも「A」であって、優れた分散安定性を示すことが分かる。
【0334】
<光変換層の評価>
次に、上述した方法で光変換層を作製し評価した。結果を下表に示す。
【0335】
【表20】
【0336】
上記表に示すように、比較例3の光変換層C1は、外部量子効率保持率が67.0%と低いのに対して、実施例26~38の光変換層1~13、及び実施例42の光変換層14は比較例3の光変換層C1よりも高い値を示した。
【0337】
以上の実施例1~12のQD分散体1~12、実施例40のQD分散体13、及び実施例13~25のQDインク1~13、実施例41のQDインク14の結果から、光重合性モノマーと、メタルハライドからなる発光性ナノ結晶の表面に配位子を備えた発光微粒子とを含有し、|ΔMR|加重平均が12以上であるナノ結晶含有組成物は、|ΔMR|加重平均が12未満であるものと比較して、PLQY保持率が優れるだけでなく、分散安定性も優れることが明らかである。
【0338】
さらに、実施例26~38の光変換層1~13、実施例42の光変換層14の結果から、|ΔMR|加重平均が12以上のナノ結晶含有組成物の硬化物を含む光変換層は、|ΔMR|加重平均が12未満のナノ結晶含有組成物の硬化物を含む光変換層を比較して、外部量子効率保持率が優れることが明らかである。このことから、本発明のナノ結晶含有組成物によって形成した光変換層を備えた発光素子もまた、優れた外部量子効率保持率を備えるものと期待できる。
【符号の説明】
【0339】
90 発光微粒子、無機被覆発光微粒子、シリカ被覆発光微粒子
91 無機被覆層、シリカ被覆層
910 発光微粒子、無被覆発光微粒子
911 ナノ結晶
912 配位子層
100 発光素子
200 EL光源部
1 下基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
9 封止層
10 充填層
11 保護層
12 光変換層
13 上基板
14 EL層
20 画素部、
20a 第1の画素部
20b 第2の画素部
20c 第3の画素部
21a 第1の光散乱粒子
21b 第2の光散乱粒子
21c 第3の光散乱粒子
22a 第1の硬化成分
22b 第2の硬化成分
22c 第3の硬化成分
90a 第1の発光微粒子
90b 第1の発光微粒子
30 遮光部
701 コンデンサ
702 駆動トランジスタ
705 共通電極
706 信号線
707 走査線
708 スイッチングトランジスタ
C1 信号線駆動回路
C2 走査線駆動回路
C3 制御回路
PE,R,G,B 画素電極
X 共重合体
XA 会合体
x1 脂肪族ポリアミン鎖
x2 疎水性有機セグメント
YA コア-シェル型シリカナノ粒子
Z 半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液
図1
図2
図3
図4
図5