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特許7151943金属錯体、組成物、レジスト材料、パターン形成方法及び電子デバイスの製造方法
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  • 特許-金属錯体、組成物、レジスト材料、パターン形成方法及び電子デバイスの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】金属錯体、組成物、レジスト材料、パターン形成方法及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 65/105 20060101AFI20221004BHJP
   C07F 7/00 20060101ALI20221004BHJP
   C07F 7/22 20060101ALI20221004BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221004BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C07C65/105 CSP
C07F7/00 A
C07F7/00 Z
C07F7/22 U
G03F7/004
G03F7/20 501
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022532642
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2021037087
(87)【国際公開番号】W WO2022091731
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2020179489
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】今田 知之
(72)【発明者】
【氏名】長田 裕仁
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-209473(JP,A)
【文献】特開平10-273461(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140057(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY(STN)
C07C
C07F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアニオン化合物(A)を配位子とすることを特徴とする金属錯体。
【化1】
[上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~4のアルキル基を表す。m及びnは、それぞれ独立に、1~3の整数を表す。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。]
【請求項2】
中心金属が、ジルコニウム、スズ、ハフニウムのいずれかである請求項1記載の金属錯体。
【請求項3】
下記一般式(2)で表される化合物(a)と金属錯体(b)とを含有することを特徴とする組成物。
【化2】
[上記一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~4のアルキル基を表す。m及びnは、それぞれ独立に、1~3の整数を表す。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。]
【請求項4】
前記金属錯体(b)が、ジルコニウム錯体、スズ錯体、ハフニウム錯体のいずれか一種類以上である請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記金属錯体(b)が、金属アルコキシドである請求項3記載の組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の金属錯体を含有するレジスト材料。
【請求項7】
レジスト材料である請求項3~5のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のレジスト材料を用いてレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
前記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像してパターンを形成する工程とを含むパターン形成方法。
【請求項9】
前記露光が、電子線又は極端紫外線による露光である請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体、組成物、レジスト材料、パターン形成方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の半導体製造の分野では、より微細なパターンの形成が可能となることから、電子線(EB)や極端紫外線(EUV)等の放射線を用いたリソグラフィ技術の開発が進められている。これら放射線を用いたリソグラフィ技術においては、現状、光源強度が低いという課題があり、より高感度なリソグラフィレジスト材料の開発が求められている。リソグラフィレジスト材料を高感度化する技術の一つとして、例えば、金属酸化物ナノ粒子を用いた技術が検討されている(特許文献1参照)。当該技術においては、粒子径20nm以下の金属酸化物ナノ粒子が該放射線を吸収することにより、レジスト組成物中のポリマ等から二次電子が発生し、これが光酸発生剤分解を促進するため、より高感度のポジ型フォトレジストとして機能する。しかしながら、金属酸化物ナノ粒子が凝集しやすく、工業材料としての安定性に乏しい上、金属酸化物ナノ粒子の凝集に伴い、放射線の吸収効率が徐々に低下するという課題があった。
【0003】
この他の技術としては、例えば、金属錯体を用いた技術が検討されている(特許文献2参照)。当該技術においては、放射線の照射によりβジケトン類の金属錯体から金属酸化物が発生し、これがアルカリ現像液に不溶であることから、ネガ型フォトレジストとして機能する。しかしながら、実際には、放射線照射による金属酸化物の発生効率が十分ではなく、市場要求に応え得る感度の実現とはなっていなかった。また、実用上は比較的高分子量のポリマの添加が必要であり、幅数nmの超微細パターンの作製には適していないものであった。
【0004】
このように、放射線を用いたリソグラフィ技術においては、高感度でありながら、且つ、微細なパターンを形成し得るレジスト材料の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/088655号
【文献】特開2012-185485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高感度でありながら、且つ、微細なパターンを形成し得る、放射線リソグラフィに利用可能なレジスト材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するアニオン化合物を配位子とする金属錯体を用いることにより、高感度でありながら、且つ、微細なパターンを形成し得る、放射線リソグラフィに利用可能なレジスト材料が実現可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるアニオン化合物(A)を配位子とすることを特徴とする金属錯体に関する。
【0009】
【化1】
[上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又はハロゲン原子を表す。m、n及びpは、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。Rは、水素原子、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、又は炭化水素基上にアルコキシ基、ハロゲン基及び水酸基から選択される置換基を1以上有する構造部位を表す。Rは、水酸基、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。]
【0010】
また、本発明は、下記一般式(2)で表される化合物(a)と金属錯体(b)とを含有することを特徴とする組成物に関する。
【0011】
【化2】
[上記一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又はハロゲン原子を表す。m、n及びpは、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。Rは、水素原子、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、又は炭化水素基上にアルコキシ基、ハロゲン基及び水酸基から選択される置換基を1以上有する構造部位を表す。Rは、水酸基、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。]
【0012】
また、本発明は、前記金属錯体又は組成物を用いたレジスト材料に関する。
【0013】
また、本発明は、前記レジスト材料を用いたパターン形成方法、及び当該パターン形成方法を含む電子デバイスの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高感度でありながら、且つ、微細なパターンを形成し得る、放射線リソグラフィに利用可能なレジスト材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】合成例1で得られた化合物(a)のGPCチャート図である。
図2】合成例1で得られた化合物(a)の13C-NMRチャート図である。
図3】実施例1で得られた金属錯体(1)溶液のFT-IRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0017】
本発明の金属錯体は、下記一般式(1)で表されるアニオン化合物(A)を配位子とすることを特徴とする。
【0018】
【化3】
[上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又はハロゲン原子を表す。m、n及びpは、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。Rは、水素原子、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、又は炭化水素基上にアルコキシ基、ハロゲン基及び水酸基から選択される置換基を1以上有する構造部位を表す。Rは、水酸基、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。]
【0019】
前記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又はハロゲン原子を表す。前記脂肪族炭化水素基は直鎖型でもよいし、分岐構造を有していてもよい。また、シクロ環構造を有していてもよい。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。前記アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。前記アラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0020】
中でも、レジスト材料として用いた際の微細なパターンの形成能に優れることから、R及びRは炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。また、構造式(1)中のm及びnは0~4の整数であるが、それぞれ1~3の整数であることがより好ましく、特に2であることが好ましい。この時、2つのR及び2つのRは、それぞれフェノール性水酸基の2,5-位に結合していることが好ましい。
【0021】
前記一般式(1)中、Rは、水素原子、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、又は炭化水素基上にアルコキシ基、ハロゲン基及び水酸基から選択される置換基を1以上有する構造部位を表す。前記炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基としては、前記R及びRとして例示したものが挙げられる。また、「炭化水素基上にアルコキシ基、ハロゲン基及び水酸基から選択される置換基を1以上有する構造部位」としては、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基、ヒドロキシ基で置換されたアルキルアルコキシ基等が挙げられる。中でも、Rが水素原子であることが好ましい。
【0022】
前記一般式(1)中、Rは、水酸基、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。それぞれの具体例は、前記R及びRとして例示したものが挙げられる。また、pは0~4の整数を表す。中でも、pが0であるものが好ましい。
【0023】
本発明では、前記アニオン化合物(A)として、同一構造のものを単独で用いてもよいし、異なる分子構造を有する複数の化合物を用いてもよい。
【0024】
本発明の金属錯体において、中心金属の種類は特に限定されず、多種多様なものを用いることができる。また、金属錯体として、中心金属が同一のものを単独で用いてもよいし、中心金属の異なるものを複数種用いてもよい。中心金属の具体例としては、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、セシウム、ハフニウム等が挙げられる。中でも、ジルコニウム、スズ、ハフニウムのいずれかであることが好ましい。また、中心金属の価数は特に限定されず、何価の錯体であってもよい。
【0025】
本発明の金属錯体は、前記アニオン化合物(A)の他、これ以外の他の配位子を有していてもよい。他の配位子の具体例としては、RO(Rは炭素原子数1~10の炭化水素基)、RCOO(Rは炭素原子数1~10の炭化水素基)、[RCOCHCOR(R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数1~10の炭化水素基)、アミン系配位子、イミン系配位子、ホスフィン系配位子、アルキル系配位子、アルケン系配位子、アルキン系配位子、アリール系配位子等が挙げられる。中でも、レジスト材料として用いた際の光感度及びアルカリ溶解性に優れることから、RO(Rは炭素原子数1~22の炭化水素基)が好ましく、Rが炭素原子数2~6の炭化水素基であることが好ましい。
【0026】
本発明の金属錯体が、前記アニオン化合物(A)の他、これ以外の他の配位子を有する場合、前記アニオン化合物(A)と他の配位子との比率は、本願発明の効果が十分に発揮されることから、両者の合計に対する前記アニオン化合物(A)の割合が20モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが特に好ましい。なお、当該比率は、各分子における値の平均値である。
【0027】
本発明の金属錯体を製造する方法は特に限定されず、どのような方法で製造されたものであってもよい。一例として、例えば、下記一般式(2)で表される化合物(a)と、原料となる金属錯体(b)とを溶媒中で混合することにより、製造することができる。
【0028】
【化4】
[上記一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又はハロゲン原子を表す。m、n及びpは、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。Rは、水素原子、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、又は炭化水素基上にアルコキシ基、ハロゲン基及び水酸基から選択される置換基を1以上有する構造部位を表す。Rは、水酸基、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rが複数ある場合、複数のRは互いに同じでも異なってもよい。]
【0029】
前記一般式(2)中の各記号は、前記構造式(1)中のものと同義であり、また、好ましい形態も前記一般式(1)と同様である。前記化合物(a)は同一構造のものを単独で用いてもよいし、構造の異なる複数種の化合物を併用してもよい。
【0030】
前記化合物(a)は、どのような方法にて製造されたものであってもよいが、一例として、例えば、フェノール化合物(a1)とホルミル安息香酸類(a2)とを酸触媒存在下で、必要に応じて溶媒を用いて、60~140℃の範囲で加熱し、重縮合することにより得ることができる。
【0031】
前記フェノール化合物(a1)は、フェノールの他、フェノールの芳香環上に炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又はハロゲン原子等の置換基を、一つないし複数有する化合物が挙げられる。これらの置換基の具体例としては、前記構造式(1)及び(2)中のR、Rとして例示したもの等が挙げられる。中でも、レジスト材料として用いた際の微細なパターンの形成能に優れることから、炭素原子数1~4のアルキル基を1つ乃至3つ有することが好ましく、2つ有することが特に好ましい。この時、2つのアルキル基は、それぞれフェノール性水酸基の2,5-位に結合していることが好ましい。また、アルキル基としては、メチル基が特に好ましい。
【0032】
前記ホルミル安息香酸類(a2)は、例えば、ホルミル安息香酸や、その芳香環上に水酸基、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基又はハロゲン原子を一つ乃至複数有する化合物、アセチル安息香酸等のカルボキシ基を有する芳香族ケトン及びその芳香環上に水酸基、炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基又はハロゲン原子を一つ乃至複数有する化合物等が挙げられる。前記炭素原子数1~9の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基又はハロゲン原子の具体例としては、前記構造式(1)及び(2)中のRとして例示したもの等が挙げられる。中でも、前記フェノール化合物(a1)との反応性に優れることから、ホルミル安息香酸が好ましく、金属原子上に配位しやすい分子構造となることから4-ホルミル安息香酸がより好ましい。
【0033】
前記化合物(a)の製造で用いる酸触媒は、例えば、酢酸、シュウ酸、硫酸、塩酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸亜鉛、酢酸マンガン等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。これらの酸触媒の中でも、活性に優れる点から、硫酸、パラトルエンスルホン酸が好ましくい。なお、前記酸触媒は、反応前に加えても、反応途中で加えても構わない。
【0034】
前記化合物(a)の製造で溶媒を用いる場合、その具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等のカルボン酸化合物;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル化合物;1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル化合物;エチレングリコールアセテート等のグリコールエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの溶媒の中でも、得られる化合物の溶解性に優れる点から、酢酸が好ましい。
【0035】
前記フェノール化合物(a1)と前記ホルミル安息香酸類(a2)との仕込み比率[(a1)/(a2)]は、未反応のフェノール化合物(a1)の除去性や、得られる化合物(a)の収率及び純度に優れることから、モル比で1/0.8~1/0.2の範囲が好ましく、1/0.6~1/0.4の範囲がより好ましい。
【0036】
反応終了後は、例えば、反応生成物が不溶又は難溶である貧溶媒(S1)に反応溶液を投入し、得られた沈殿物を濾別して粗生成物を得た後、貧溶媒(S1)にも混和し、かつ、反応生成物を溶解し得る溶媒(S2)に粗生成物を再溶解させ、再度貧溶媒(S1)に投入して生じた沈殿物を濾別する方法等により、化合物(a)を精製単離することができる。また、反応溶媒としてトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いた場合には、80℃以上で加熱することにより生成物である化合物(a)が溶媒中に溶解するため、そのまま冷却することにより、前記化合物(a)の結晶が析出し、これを濾別することで前記化合物(a)を単離することができる。この場合は、前記貧溶媒(S1)及び溶媒(S2)を使用しなくてもよい。
【0037】
前記前記貧溶媒(S1)としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のモノアルコール;n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロヒキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。これらの貧溶媒(S1)の中でも、効率よく酸触媒の除去も同時に行えることから、水、メタノールが好ましい。
【0038】
また、前記溶媒(S2)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のモノアルコール;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等のポリオール;2-エトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル;1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコールアセテート等のグリコールエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン等が挙げられる。また、前記貧溶媒(S1)として水を用いた場合には、前記(S2)としては、アセトンが好ましい。なお、前記貧溶媒(S1)及び溶媒(S2)は、それぞれ1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0039】
前記化合物(a)の純度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のチャート図から算出される値で90%以上であることが好ましく、94%以上であることがより好ましく、98%以上であることが特に好ましい。なお、GPCの測定条件は実施例に記載のものである。
【0040】
前記金属錯体(b)は、前記化合物(a)と混合することにより配位子交換を生じ、本願発明の金属錯体を形成し得るものであれば、特に限定されず、多種多様なものを用いることができる。また、前記金属錯体(b)は一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記金属錯体(b)の中心金属としては、本発明の金属錯体同様、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、セシウム、ハフニウム等が挙げられる。中でも、ジルコニウム、スズ、ハフニウムのいずれかであることが好ましい。また、中心金属の価数は特に限定されず、何価の錯体であってもよい。
【0041】
前記金属錯体(b)が有する配位子は、例えば、RO(Rは炭素原子数1~10の炭化水素基)、RCOO(Rは炭素原子数1~10の炭化水素基)、[RCOCHCOR(R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数1~10の炭化水素基)、[RCOCHCOOR(R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数1~10の炭化水素基)、アミン系配位子、イミン系配位子、ホスフィン系配位子、アルキル系配位子、アルケン系配位子、アルキン系配位子、アリール系配位子等が挙げられる。中でも、得られる金属錯体をレジスト材料として用いた際の光感度及びアルカリ溶解性に優れることから、RO(Rは炭素原子数1~22の炭化水素基)が好ましく、Rが炭素原子数2~6の炭化水素基であることが好ましい。
【0042】
前記化合物(a)と前記金属錯体(b)との混合比率は、本願発明の効果が十分に発揮されることから、前記金属錯体(b)の中心金属1モルに対し、前記化合物(a)が0.5~10モルの範囲となる割合であることが好ましく、2~6モルの範囲となる割合であることがより好ましい。
【0043】
前記溶媒は、前記化合物(a)と前記金属錯体(b)とを溶解し得るものであれば特に限定されず、多種多様なものを用いることができる。具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のモノアルコール;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等のポリオール;2-エトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のグリコールエーテル;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート;テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコールアセテート等のグリコールエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル化合物:アセトニトリル、アクリロニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等のニトリル化合物などが挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上の混合溶媒としてもよい。
【0044】
前記溶媒の使用量は特に限定されないが、金属錯体の原料成分1質量部に対し、1~500質量部の範囲であることが好ましい。
【0045】
金属錯体の原料を混合する際の温度条件は特に限定されず、20~25℃程度の室温でもよいし、必要に応じて適宜加熱してもよい。
【0046】
金属錯体の生成は、例えば、IRスペクトルにて1400cm-1のピークから確認することができる。
【0047】
本発明の金属錯体を含有するレジスト材料は、予め製造した金属錯体を用いてもよいし、前記金属錯体の原料である化合物(a)と金属錯体(b)とを個別に配合し、レジスト材料内で金属錯体を発生させてもよい。
【0048】
本発明のレジスト材料は、溶媒を含有していてもよい。溶媒種としては、前記化合物(a)と前記金属錯体(b)とを混合する際に用いたもの等が挙げられる。溶媒の使用量は特に限定なく、具体的な用途等に応じて適宜調整される。特に、スピンコート法等による塗布の際に均一な膜厚が得られることから、レジスト材料中の固形分濃度が0.1~50質量%の範囲であることが好ましい。
【0049】
本発明のレジスト材料においては、金属錯体の配位子であるアニオン化合物(A)が十分な製膜性を有することから、他の樹脂成分を用いずとも、金属錯体自体をレジスト材料として用いることができるが、必要に応じてアルカリ溶解性樹脂を用いてもよい。アルカリ溶解性樹脂としては、各種のノボラック型フェノール樹脂等が挙げられる。アルカリ溶解性樹脂を用いる場合、本願発明の効果が十分に発揮されることから、前記金属錯体とアルカリ溶解性樹脂との合計質量に対する前記金属錯体の割合が50質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0050】
本発明のレジスト材料は、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の具体例としては、例えば、硬化剤、光酸発生剤、感光剤、充填材、顔料、レベリング剤等の界面活性剤、密着性向上剤、溶解促進剤等が挙げられる。これらその他の成分を用いる場合、本願発明の効果が十分に発揮されることから、レジスト材料の溶媒以外の成分の合計質量に対する前記金属錯体の割合が50質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0051】
前記硬化剤は、例えば、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、レゾール樹脂、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基等の2重結合を含む化合物、酸無水物、オキサゾリン化合物等が挙げられる。
【0052】
前記メラミン化合物としては、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1~6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1~6個がアシロキシメチル化した化合物等が挙げられる。
【0053】
前記グアナミン化合物としては、例えば、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物等が挙げられる。
【0054】
前記グリコールウリル化合物としては、例えば、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル等が挙げられる。
【0055】
前記ウレア化合物としては、例えば、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素及び1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素等が挙げられる。
【0056】
前記レゾール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾールやキシレノール等のアルキルフェノール、フェニルフェノール、レゾルシノール、ビフェニル、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール性水酸基含有化合物と、アルデヒド化合物とをアルカリ性触媒条件下で反応させて得られる重合体が挙げられる。
【0057】
前記エポキシ化合物としては、例えば、ジグリシジルオキシナフタレン、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、1,1-ビス(2,7-ジグリシジルオキシ-1-ナフチル)アルカン、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、リン原子含有エポキシ樹脂、フェノール性水酸基含有化合物とアルコキシ基含有芳香族化合物との共縮合物のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0058】
前記イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0059】
前記アジド化合物としては、例えば、1,1’-ビフェニル-4,4’-ビスアジド、4,4’-メチリデンビスアジド、4,4’-オキシビスアジド等が挙げられる。
【0060】
前記アルケニルエーテル基等の2重結合を含む化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2-プロパンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0061】
前記酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(イソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物等の芳香族酸無水物;無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水ドデセニルコハク酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸等の脂環式カルボン酸無水物等が挙げられる。前記硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
前記レジスト材料における前記硬化剤の含有量は、レジスト材料の固形分中、5~50質量%の範囲であることが好ましい。レジスト材料の固形分とは、レジスト材料中の溶剤以外の成分の合計を指す。
【0063】
前記光酸発生剤は、例えば、、例えばオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。これらのうち、オニウム塩化合物が好ましい。
【0064】
前記オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0065】
前記スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4-シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、4-シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、4-シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、4-シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4-メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、4-メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、4-メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、4-メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルスルホニウム2-(1-アダマンチル)-1,1-ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム6-(1-アダマンチルカルボニルオキシ)-1,1,2,2-テトラフルオロヘキサン-1-スルホネート、トリフェニルスルホニウム6-(1-アダマンチルカルボニルオキシ)-1,1,2-トリフルオロブタン-1-スルホネート、トリフェニルスルホニウム2-(4-オキソ-1-アダマンチルカルボニルオキシ)-1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロパン-1-スルホネート、トリフェニルスルホニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1-ジフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0066】
前記テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1-(6-n-ブトキシナフタレン-2-イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-(6-n-ブトキシナフタレン-2-イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、1-(6-n-ブトキシナフタレン-2-イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、1-(6-n-ブトキシナフタレン-2-イル)テトラヒドロチオフェニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、1-(6-n-ブトキシナフタレン-2-イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、1-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、1-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、1-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等が挙げられる。
【0067】
前記レジスト材料における前記光酸発生剤の含有量は、レジスト材料の固形分中、5~50質量%の範囲であることが好ましい。レジスト材料の固形分とは、レジスト材料中の溶剤以外の成分の合計を指す。
【0068】
本発明のレジスト材料が充填材や顔料等の固形のもの含有する場合には、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散、混合させることが好ましい。また、粗粒や不純物を除去するため、メッシュフィルター、メンブレンフィルター等を用いてろ過することもできる。
【0069】
本発明のレジスト材料は、一般的なレジスト材料と同様の使い方により、パターン形成に用いることができる。その一例としては、例えば、レジスト材料を用いてレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を露光する工程と、前記露光されたレジスト膜を現像液にて現像し、パターンを形成する工程とを経る方法が挙げられる。
【0070】
前記レジスト膜を形成する工程において、塗工方法は特に限定されず、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターブレードコート等の何れの方法でもよい。レジスト材料が溶剤を含有する場合には、塗工後に60~150℃の温度条件でプリベークするなどして溶剤を除去し、塗膜を得ることができる。また、塗工対象物としては、シリコン基板、炭化シリコン基板、窒化ガリウム基板、透明導電膜等が挙げられ、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0071】
前記露光工程では、パターンが描写されたマスクを介して露光する。露光光源としては、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極端紫外線、X線、電子線等が挙げられる。本発明のレジスト材料は、高感度でありながら、且つ、微細なパターンを形成し得ることから、極端紫外線や電子線による露光にも公的に用いることができる。
【0072】
前記現像工程で用いるアルカリ現像液は、一般的なアルカリ現像用途で用いられるものを広く利用でき、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ性物質;エチルアミン、n-プロピルアミン等の1級アミン類;ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の2級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の3級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミンなどのアルカリ性水溶液を使用することができる。これらのアルカリ現像液には、必要に応じてアルコール、界面活性剤等を適宜添加して用いることもできる。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常2~5質量%の範囲が好ましく、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液が一般的に用いられる。
【0073】
本発明のパターン形成方法は、電子デバイスの製造工程で好適に用いられる。上記電子デバイスとしては、家庭用電気機器、オフィスオートメーション機器、メディア関連機器、光学用機器、通信機器等が挙げられる。
【実施例
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
<GPCの測定条件>
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8220 GPC」
カラム:昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmФ×300mm)
+昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmФ×300mm)
+昭和電工株式会社製「Shodex KF803」(8.0mmФ×300mm)
+昭和電工株式会社製「Shodex KF804」(8.0mmФ×300mm)
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC-8020モデルIIバージョン4.30」
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料:測定対象物の0.5質量%テトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
標準試料:下記単分散ポリスチレン
【0076】
(標準試料:単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
【0077】
13C-NMRの測定条件>
装置:日本電子株式会社製 JNM-ECA500
測定モード:逆ゲート付きデカップリング
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
パルス角度:30°パルス
試料濃度 :30質量%
積算回数 :4000回
ケミカルシフトの基準:ジメチルスルホキシドのピーク:39.5ppm
【0078】
合成例1 化合物(a)の合成
冷却管を設置した2000mlの4口フラスコに2,5-キシレノール293.2g(2.4mol)、4-ホルミル安息香酸150g(1mol)を仕込み、酢酸500mlに溶解させた。氷浴中で冷却しながら硫酸5mlを添加した後、マントルヒーターで100℃まで加熱し、2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた溶液に水を加えて粗生成物を沈殿させた。次いで、粗生成物をアセトンに再溶解し、水を加えて再沈殿させた。沈殿物を濾別して真空乾燥し、淡桃色結晶の化合物(a)292gを得た。
【0079】
得られた化合物(a)について、13C-NMRスペクトル測定を行った結果、下記構造式で表される化合物であることを確認した。また、GPCチャート図から算出される純度は95.3%であった。化合物(a)のGPCチャートを図1に、13C-NMRチャートを図2に示す。
【0080】
【化5】
【0081】
実施例1 金属錯体(1)溶液の製造
合成例1で得た化合物(a)0.20g(0.48mmol)とジルコニウム(IV)・ジブトキシド(マツモトファインケミカル株式会社製)「オルガチックスZC-580」)0.10g(0.11mmol)、テトラヒドロフラン20gを30mlスクリュー管内に入れ、室温で30分間混合した。得られた溶液を孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製ディスクフィルタを用いて精密濾過し、金属錯体(1)溶液を得た。得られた金属錯体(1)溶液のFT-IRスペクトルを図3に示す。
【0082】
実施例2 金属錯体(2)溶液の製造
ジルコニウム(IV)・ジブトキシドを、ハフニウム(IV)・イソプロポキシドモノイソプロピレート0.045g(0.11mmol)に変更した以外は、実施例1と同様にして、金属錯体(2)溶液を得た。
【0083】
実施例3 金属錯体(3)溶液の製造
ジルコニウム(IV)・ジブトキシドを、テトラ-n-ブトキシスズ0.045g(0.11mmol)に変更した以外は、実施例1と同様にして、金属錯体(3)溶液を得た。
【0084】
比較合成例1 シルセスキオキサン樹脂の合成
300mLの四つ口フラスコにイオン交換水25.0g、2-プロパノール(関東化学株式会社製)93.6g、及び35%塩酸(シグマアルドリッチ製)0.2gを仕込み、ここにメチルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製)75.1g(0.42mol)を25℃で2時間かけて滴下した。混合液を40℃まで昇温し、3時間撹拌して、オリゴマー溶液を得た。得られたオリゴマーの重量平均分子量は1,200であった。得られたオリゴマー溶液にイオン交換水6.6g、及び35%塩酸1.1gを加え、混合液を79℃まで昇温し、12時間撹拌した。得られた混合液を濾過精度1μmの濾紙で濾過した後、濾液に酢酸n-プロピル(関東化学株式会社製)169gとイオン交換水169gを追加し、分液洗浄した。酢酸n-プロピル相をイオン交換水169gでpHが4以上になるまで水洗した後、濾過精度1μmの濾紙で濾過し、ロータリーエバポレータで溶剤を除去することにより、シルセスキオキサン樹脂粉末26.9gを得た。得られたシルセスキオキサン樹脂の重量平均分子量は4,500であった。
【0085】
先で得たシルセスキオキサン樹脂0.5g、テトラ(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)ジルコニウム0.4g、プロピレングリコールモノプロピルエーテル45.0g、純水5.0gを100mスクリュー管内に入れ、室温で30分間混合した。孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製ディスクフィルタを用いて精密濾過し、金属錯体(1’)溶液を得た。
【0086】
実施例4~6及び比較例1
先で得た金属錯体(1)~(3)溶液、及び金属錯体(1’)溶液をレジスト材料として用い、以下の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0087】
複合化評価
30ml耐熱チューブに金属錯体溶液5gを入れ、振盪しながら100℃まで加熱し、状態変化観察した。本願発明の金属錯体(1)~(3)溶液は、いずれも不動ゲル化したのに対し、金属錯体(1’)溶液は粘度変化が見られなかった。
次いで、不動ゲル化した金属錯体(1)~(3)溶液に1Nの塩酸水溶液1gを加え、室温で3時間振盪し状態変化を観察したところ、いずれも低粘度の液体に変化した。
【0088】
電子ビームによるパターンの作成
ヘキサメチレンジシラザン処理した直径6インチのシリコンウエハに、スピンコーターを用いて塗布した。110℃のホットプレート上で60秒間乾燥させ、30nm厚の薄膜を得た。
超高速電子ビーム描画システム(株式会社日立製作所製「HL-800D」)を用いて高圧側電圧(HV)を50keVに設定し、真空チャンバー内で露光量を10μC/cm刻みで段階的に変化させながら70nmのラインアンドスペースを1:1で描画した。
描画後、直ちに110℃のホットプレート上で60秒間ポストエクスポージャベーク(PEB)し、2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液で20秒間パドル現像を行い、ネガ型のパターンを得た。
なお、本発明のレジスト材料は酸触媒による化学増幅型レジスト材料ではないので、PEBプロセスは必ずしも必須ではないが、PEBにより金属塩の金属酸化物への反応を促進することができる。
【0089】
感度の評価
得られたパターンを走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、下記のように評価した。評価基準は以下の通りである。
A:パターン現像可能な露光量が80μC/cm未満
B:パターン現像可能な露光量が80μC/cm以上
とした。
【0090】
エッジラフネス(LWR)の評価
得られたパターンにおいて、70nmラインアンドスペースのエッジラフネス(LWR)を走査電子顕微鏡(SEM)で評価した。評価基準は以下の通りである。
A:LWRが3nm未満
B:LWRが3nm以上
【0091】
【表1】
図1
図2
図3