(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】位置測定装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/347 20060101AFI20221004BHJP
G01D 5/38 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G01D5/347 110U
G01D5/38 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018011118
(22)【出願日】2018-01-26
【審査請求日】2020-10-28
(31)【優先権主張番号】10 2017 201 257.9
(32)【優先日】2017-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ホルツアップフェル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・リンク
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・トラウトナー
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-327321(JP,A)
【文献】特開2013-140146(JP,A)
【文献】特開2009-115801(JP,A)
【文献】特開2015-169602(JP,A)
【文献】特開2007-183296(JP,A)
【文献】特開平5-223599(JP,A)
【文献】実開昭56-97713(JP,U)
【文献】特開昭60-243514(JP,A)
【文献】特開2015-49167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26-5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの測定方向(x)に沿って相対的に移動可能な第2の物体に対する第1の物体の位置を決定するための位置測定装置において、該位置測定装置が、
測定方向(x)に沿って延在する基準器(10)であって、第1の物体に結合されており、少なくとも1つの周期的な基準回折格子(13)を含み、該基準回折格子が透過型回折格子として形成されており、第1周期(d
1)を備える基準器(10)、および
第2の物体に結合された走査ユニット(20)を備え、該走査ユニットが
少なくとも1つの光源(21)、
第2周期(d
2)を備える少なくとも1つの周期的な走査回折格子(24;124;224)、および
検出装置(26)であって、検出平面に測定方向(x)に沿って第3周期(d
3)により周期的に配置された感光性の検出範囲(26.1~26.n)からなる検出装置(26)を備え、
前記光源(21)から放出された光線束が、まず前記基準回折格子(13)に入射し、次いで前記走査回折格子(24;124;224)を通過し、光線束と、前記基準回折格子(13)および前記走査回折格子(24;124;224)との相互作用により、前記第3周期(d
3)を備える周期的なストライプパターンが前記検出平面に生じ、前記検出装置(26)によって前記ストライプパターンを走査することにより、互いに位相をずらされた複数のインクリメンタル信号が生成可能であり、
前記走査回折格子(24;124;224)が、少なくとも第1および第2の透明なプレート状の担体要素(25.1,25.2;125.1,125.2;225.1,225.2)の間に配置されており、前記走査回折格子(24;124;224)と検出範囲(26.1~26.n)との間のスペースが、n>1.3の屈折率を備える
第2担体要素(25.2)により完全に充填されており、
前記基準回折格子(13)と、第1担体要素(25.1)の隣接する境界面(G1)との間の間隔(u
1)が、10μm~200μmの間の範囲で選択されている位置検出装置。
【請求項2】
少なくとも1つの測定方向(x)に沿って相対的に移動可能な第2の物体に対する第1の物体の位置を決定するための位置測定装置において、該位置測定装置が、
測定方向(x)に沿って延在する基準器(10)であって、第1の物体に結合されており、少なくとも1つの周期的な基準回折格子(13)を含み、該基準回折格子が透過型回折格子として形成されており、第1周期(d
1
)を備える基準器(10)、および
第2の物体に結合された走査ユニット(20)を備え、該走査ユニットが
少なくとも1つの光源(21)、
第2周期(d
2
)を備える少なくとも1つの周期的な走査回折格子(24;124;224)、および
検出装置(26)であって、検出平面に測定方向(x)に沿って第3周期(d
3
)により周期的に配置された感光性の検出範囲(26.1~26.n)からなる検出装置(26)を備え、
前記光源(21)から放出された光線束が、まず前記基準回折格子(13)に入射し、次いで前記走査回折格子(24;124;224)を通過し、光線束と、前記基準回折格子(13)および前記走査回折格子(24;124;224)との相互作用により、前記第3周期(d
3
)を備える周期的なストライプパターンが前記検出平面に生じ、前記検出装置(26)によって前記ストライプパターンを走査することにより、互いに位相をずらされた複数のインクリメンタル信号が生成可能であり、
前記走査回折格子(24;124;224)が、少なくとも第1および第2の透明なプレート状の担体要素(25.1,25.2;125.1,125.2;225.1,225.2)の間に配置されており、前記走査回折格子(24;124;224)と検出範囲(26.1~26.n)との間のスペースが、n>1.3の屈折率を備える材料により完全に充填されており、
前記基準回折格子(13)と、第1担体要素(25.1)の隣接する境界面(G1)との間の間隔(u
1
)が、10μm~200μmの間の範囲で選択され、
プレート状の前記担体要素(25.1,25.2;125.1,125.2;225.1,225.2)が5mmの最大厚さを備える位置測定装置。
【請求項3】
少なくとも1つの測定方向(x)に沿って相対的に移動可能な第2の物体に対する第1の物体の位置を決定するための位置測定装置において、該位置測定装置が、
測定方向(x)に沿って延在する基準器(10)であって、第1の物体に結合されており、少なくとも1つの周期的な基準回折格子(13)を含み、該基準回折格子が透過型回折格子として形成されており、第1周期(d
1
)を備える基準器(10)、および
第2の物体に結合された走査ユニット(20)を備え、該走査ユニットが
少なくとも1つの光源(21)、
第2周期(d
2
)を備える少なくとも1つの周期的な走査回折格子(24;124;224)、および
検出装置(26)であって、検出平面に測定方向(x)に沿って第3周期(d
3
)により周期的に配置された感光性の検出範囲(26.1~26.n)からなる検出装置(26)を備え、
前記光源(21)から放出された光線束が、まず前記基準回折格子(13)に入射し、次いで前記走査回折格子(24;124;224)を通過し、光線束と、前記基準回折格子(13)および前記走査回折格子(24;124;224)との相互作用により、前記第3周期(d
3
)を備える周期的なストライプパターンが前記検出平面に生じ、前記検出装置(26)によって前記ストライプパターンを走査することにより、互いに位相をずらされた複数のインクリメンタル信号が生成可能であり、
前記走査回折格子(24;124;224)が、少なくとも第1および第2の透明なプレート状の担体要素(25.1,25.2;125.1,125.2;225.1,225.2)の間に配置されており、前記走査回折格子(24;124;224)と検出範囲(26.1~26.n)との間のスペースが、n>1.3の屈折率を備える材料により完全に充填されており、
前記基準回折格子(13)と、第1担体要素(25.1)の隣接する境界面(G1)との間の間隔(u
1
)が、10μm~200μmの間の範囲で選択され、
基準回折格子(13)の第1周期(d
1)および検出平面に生じたストライプパターンの第3周期(d
3)について、関係式
【数1】
【数2】
が成り立ち、
d
1は、基準回折格子の第1周期であり、
d
2は、走査回折格子の有効な第2周期であり、
d
3は、検出平面に生じたストライプパターンの第3周期であり、
u
1は、基準回折格子と、第1担体要素の隣接する境界面との間の間隔であり、
u
2は、基準回折格子と走査回折格子との間に配置された第1担体要素の厚さであり、
vは、走査回折格子と検出平面との間に配置された第2担体要素の厚さであり、
n
u2は、第1担体要素の屈折率であり、
n
vは、第2担体要素の屈折率である位置測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の位置測定装置において、
前記基準回折格子(13)と、前記第1担体要素(25.1)の隣接する境界面(G1)との間の間隔が、20μm~50μmの間の範囲で選択されている位置測定装置。
【請求項5】
請求項1
または2に記載の位置測定装置において、
プレート状の前記担体要素(25.1,25.2;125.1,125.2;225.1,225.2)がガラスにより形成されている位置測定装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載の位置測定装置において、
第1のプレート状の担体要素がガラスにより形成されており、第2のプレート状の担体要素が透明なプラスチックにより形成されている位置測定装置。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一項に記載の位置測定装置において、
プレート状の前記担体要素(25.1,25.2;125.1,125.2;225.1,225.2)が少なくとも0.1mmの厚さを備える位置測定装置。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の位置測定装置において、
前記走査回折格子(24;124;224)が、両方の担体要素(25.1,25.2;125.1,125.2;225.1,225.2)の互いに向かい合った両方の境界面(G2,G3)のいずれか一方に配置されている位置測定装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の位置測定装置において、
走査回折格子(24;124)が振幅型回折格子として形成されており、光学的な透過性が異なる走査回折格子範囲(24a;24b;124.a;124.b)を備える位置測定装置。
【請求項10】
請求項
8に記載の位置測定装置において、
前記走査回折格子(224)が位相型回折格子として形成されており、光学的なピーク値ずれが異なる走査回折格子範囲(224.a,224.b)を備える位置測定装置。
【請求項11】
請求項1
または2に記載の位置測定装置において、
基準回折格子(13)の第1周期(d
1)および検出平面に生じたストライプパターンの第3周期(d
3)について、関係式
【数3】
【数4】
が成り立ち、
d
1は、基準回折格子の第1周期であり、
d
2は、走査回折格子の有効な第2周期であり、
d
3は、検出平面に生じたストライプパターンの第3周期であり、
u
1は、基準回折格子と、第1担体要素の隣接する境界面との間の間隔であり、
u
2は、基準回折格子と走査回折格子との間に配置された第1担体要素の厚さであり、
vは、走査回折格子と検出平面との間に配置された第2担体要素の厚さであり、
n
u2は、第1担体要素の屈折率であり、
n
vは、第2担体要素の屈折率である位置測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの測定方向に沿って互いに相対的に移動可能に配置された2つの物体の相対位置を高精度で決定するために適した位置測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
R.ペッティグリュー(R.Pettigrew)により「格子イメージングの分析と位置測定へのその応用」(Analysis of Grating Imaging and its Application to Displacement Metrology)というタイトルで、測定に応用される光学に関する第1回欧州会議(1977)、エス・ピー・アイ・イー(SPIE)第36号、S.325~332(in SPIE Vol. 36, 1st European Congress on Optics applied to Metrology (1977), S. 325 - 332)において公表された刊行物により光学式3回折格子走査原理に基づいた位置測定装置が既知である。このような位置測定装置によって、少なくとも1つの測定方向に沿って互いに相対移動可能な2つの物体の相対移動に関して、位相をずらされたインクリメンタル信号を生成することができる。この場合、両方の物体のいずれか一方は基準器に結合されており、基準器は、測定方向に沿って延在し、少なくとも1つの基準回折格子を含む。透光性の場合には、基準回折格子は、光学的な透過性が異なる基準回折格子範囲を備え、これらの基準回折格子範囲は測定方向に沿って第1周期d1により周期的に配置されている。他方の物体には、位置測定装置の走査側の構成要素を含む走査ユニットは結合されている。走査ユニットには、少なくとも1つの光源、走査回折格子、または検出装置が属する。走査回折格子は、測定方向に沿って周期d2により周期的に配置された走査回折格子範囲を備え、これらの走査回折格子範囲は異なる光学特性を有する。検出装置は、複数の感光性の検出範囲を含み、これらの検出範囲は、検出平面に測定方向に沿って第3周期d3により配置されている。光源から放出される光線束は、まず基準回折格子に入射し、続いて走査回折格子を通過する。光線束と基準回折格子および走査回折格子との相互作用により、検出装置の検出平面には、第3周期d3を有する周期的なストライプパターンが生じる。検出装置もしくは周期的に配置された検出範囲を走査することにより、位相をずらされた複数のインクリメンタル信号を生成することができる。
【0003】
このような位置測定装置は、例えば、機械において定置の機械部分に対して移動可能な機械部分の位置を高精度に検出する必要がある用途で、機械制御によってこれらの機械部分の正確な相対的位置決めを行うために使用される。これらの機械が、例えば工作機械である場合には、光学式の位置測定装置の機能に影響を及ぼす恐れのある使用条件が生じることもある。したがって、位置測定装置の光学的な構成要素、例えば走査回折格子に冷却潤滑剤または油膜などの汚れが堆積する可能性もある。
【0004】
ドイツ国特許第3210614号明細書では、光学式の位置測定装置の走査が比較可能に構成されており、走査回折格子を保護するために、走査回折格子を配置した担体要素の側が基準器に向かないように配置される。さらに走査回折格子には透光性の保護要素が被覆されている。この位置測定装置では、基準器は、入射される第2回折格子なので、基準器保護層の汚れや基準器と第3回折格子との間の中間スペースの汚れは、特に信号に不利な影響を及ぼす場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】“Analysis of Grating Imaging and its Application to Displacement Metrology” in SPIE Vol. 36, 1st European Congress on Optics applied to Metrology (1977), 325 - 332頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、光学式の3回折格子走査原理に基づいた位置測定装置において、場合によって生じる汚れに対して走査回折格子ができるだけ確実に保護されることが確保されており、同時に、生成された信号の良好な品質が保証されている位置測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を備える位置測定装置によって解決される。
【0009】
本発明による位置測定装置の好ましい構成が従属請求項に記載した措置によって得られる。
【0010】
少なくとも1つの測定方向に沿って相対的に移動可能な第2の物体に対する第1の物体の位置を決定するための本発明による位置測定装置は、測定方向に沿って延在し、第1の物体に結合された基準器ならびに第2の物体に結合された走査ユニットを含む。基準器の側には少なくとも1つの周期的な基準回折格子が設けられており、基準回折格子は透過型回折格子として形成されており、第1周期d1を備える。走査ユニットは、少なくとも1つの光源、第2周期d2を有する少なくとも1つの周期的な走査回折格子、および検出装置を備え、検出装置は、検出平面に、測定方向に沿って第3周期d3により周期的に配置された感光性の検出範囲を備える。光源から放出された光線束は、まず基準回折格子に入射し、続いて走査回折格子を通過し、この場合に、光線束と基準回折格子および走査回折格子との相互作用により、第3周期d3を有する周期的なストライプパターンが検出平面に生じ、検出装置によってこのストライプパターンを走査することにより、互いに位相をずらされた複数のインクリメンタル信号が生成可能である。走査回折格子は、少なくとも第1および第2の透明なプレート状の担体要素の間に配置されており、走査回折格子と検出範囲との間のスペースは、n>1.3の屈折率を備える材料により完全に充填されている。基準回折格子と第1担体要素の隣接する境界面との間の間隔は、10μm~200μmの間の範囲で選択されている。
【0011】
特に好ましくは、基準回折格子と、第1担体要素の隣接する境界面との間の間隔は、20μm~50μmの間の範囲で選択されている。
【0012】
プレート状の担体要素がガラスにより形成されていることも可能である。
【0013】
代替的には、プレート状の第1担体要素がガラスにより形成されており、プレート状の第2担体要素が透明なプラスチックにより形成されていることも可能である。
【0014】
さらに、プレート状の担体要素が少なくとも0.1mmの厚さを備えている場合には有利である。
【0015】
同様にプレート状の担体要素が5mmの最大厚さを備えている場合には好ましいことが明らかである。
【0016】
可能な一実施形態では、走査回折格子は両方の担体要素の互いに向かい合った両方の境界面のいずれか一方に配置されていてもよい。
【0017】
この場合、走査回折格子は振幅型回折格子として形成されていてもよく、光学的な透過性が異なる走査回折格子範囲を備えていてもよい。
【0018】
これに対して代替的には、走査回折格子は位相型回折格子として形成されており、光学的なピーク値ずれが異なる走査回折格子範囲を備えていてもよい。
【0019】
さらに、基準回折格子の第1周期および検出平面に生じたストライプパターンの第3周期について、関係式
【数1】
【数2】
が成り立ち、
d
1は、基準回折格子の第1周期であり、
d
2は、走査回折格子の有効な第2周期であり、
d
3は、検出平面に生じたストライプパターンの第3周期であり、
u
1は、基準回折格子と、第1担体要素の隣接する境界面との間の間隔であり、
u
2は、基準回折格子と走査回折格子との間に配置された第1担体要素の厚さであり、
vは、走査回折格子と検出平面との間に配置された第2担体要素の厚さであり、
n
u2は、第1担体要素の屈折率であり、
n
vは、第2担体要素の屈折率である。
【0020】
本発明による措置により、位置測定装置の走査回折格子が汚れに対して確実に保護されていることが保証されている。この場合、一方では走査回折格子の表面が液体による汚れから保護されている;他方では走査回折格子と検出平面との間の中間スペースをこのような汚れから確実に保護することもできる。生じる可能性のある走査回折格子の汚れに対する光学走査の感受性はこれにより著しく減じられる。好ましくない条件下であっても光学式の位置測定装置の高い使用可能性が得られる。
【0021】
さらに、本発明による措置により、基準器および走査ユニットの互いに向かい合った境界面の間の間隔を極めて小さくすることができる。間隔が小さいことに基づいて、基準器の表面に生じる場合のある液滴を平坦に押圧することができ、このような液滴が光学的な走査および信号生成にはネガティブな影響を及ぼすことはない。
【0022】
次に本発明による装置の実施例を図面に関連して説明し、本発明の他の詳細および利点を明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による位置測定装置の実施例を示す概略断面図である。
【
図2a】
図1の実施例の基準器を示す平面図である。
【
図2b】
図1の実施例の走査プレートを示す平面図である。
【
図2c】
図1の実施例の検出装置を示す平面図である。
【
図3】本発明による位置測定装置の光路を異なるシステムパラメータを含めて示す概略図である。
【
図4】
図1の実施例の走査ユニットを拡大して示す部分図である。
【
図5a】本発明による位置測定装置の異なる実施形態における走査ユニットを示す部分図である。
【
図5b】本発明による位置測定装置の異なる実施形態における走査ユニットを示す部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に本発明による光学式の位置測定装置の実施例を
図1、
図2a~2c、および
図3に基づいて説明する。この場合、
図1は概略的な断面図を示し、
図2a~
図2cは基準器、走査プレート、および検出装置の平面図を示し、
図3は、様々なシステムパラメータを含めて信号生成するための原理的な光路を示し、
図4は、走査ユニットを拡大した部分図を示す。
【0025】
図面に示した光学式の位置測定装置は、一方では基準器10を含み、この基準器は、測定方向xに延在し、第1周期d1を有する周期的な基準回折格子13を備える。他方では、測定方向xに沿って基準器10に対して相対的に移動可能な走査ユニット20が設けられている。走査ユニット20は、少なくとも1つの光源21、第2周期d2を有する周期的な走査回折格子24、および検出装置26を備える。この実施例では、測定方向xは線形に配向されている。すなわち、基準器10と走査ユニット20とは互いに対して線形に移動可能である。検出装置26は、検出平面に測定方向xに沿って第3周期d3により周期的に配置された感光性の検出範囲26.1~26.nからなる。この実施例では、さらに光源21の前方にはコリメーョン光学系22が配置されており、このコリメーション光学系を介して、光源21から放出された光線が基準回折格子に入射する前にコリメートされる;しかしながら、このようなコリメーション光学系は、本発明では必ずしも必要ではない。
【0026】
本発明による光学式の位置測定装置の基準器10および走査ユニット20は、一般に機械構成要素の形式の物体に結合されており、これらの物体は、測定方向xに沿って互いに対して相対的に移動可能である。本発明による位置測定装置によって位相をずらされたインクリメンタル信号が生成され、これらのインクリメンタル信号から、機械制御ユニット(図示しない)において、測定方向xに沿った基準器10に対する走査ユニット20の相対位置、および互いに対して移動可能な物体の相対位置を決定し、移動可能な機械構成要素を制御するために使用することができる。
【0027】
本発明による光学式の位置測定装置は、図示の実施例では透過光システムとして形成されている。例えばガラス片などの基準器担体11に配置された透過型回折格子が、周期的な基準回折格子13(
図2aに部分平面図を示す)としての役割を果たす。基準回折格子13は、測定方向xに沿って第1周期d
1で交互に配置された透過特性が異なる基準回折格子範囲13a,13bを備える。すなわち、基準回折格子13は振幅型回折格子として形成されている。この場合には、
図2aに黒で示した基準回折格子範囲13bは不透過性に形成されており、明るく示した基準回折格子範囲13aは透過性に形成されている。
【0028】
ずれに応じたインクリメンタル信号を生成するためには、本発明による光学式の位置測定装置では、冒頭で述べたR.Pettigrewによって“Analysis of Grating Imaging and its Application to Displacement Metrology”というタイトルでSPIE Vol. 36, 1st European Congress on Optics applied to Metrology (1977), S. 325 - 332に公表された刊行物により既知の3回折格子走査原理が使用され、その原理的な走査光路が
図3に示されている。この場合、周期的な基準回折格子13は走査光路の第1回折格子であり、第1回折格子は、光源21から放出される光線束によって照射される。基準回折格子13は第1周期d
1を有する。第1周期d
1は、
図2aに示すように、測定方向xに連続して配置された透過性の範囲13aおよび不透過性の範囲13bの幅の合計を表す。走査ユニット20の走査回折格子24が走査光路で入射される第2回折格子としての役割を果たし、走査回折格子24は、上記刊行物により既知の構成で、光線伝搬方向に基準回折格子13から垂線間隔uをおいて配置されている。この場合には、振幅型回折格子として形成された走査回折格子24は第2周期d
2を備える。第2周期d
2は、
図2bに示すように、測定方向xに走査回折格子24に連続して配置された透過性の範囲24aおよび不透過性の範囲24bの幅の合計を表す。走査光路の最後の第3回折格子は検出装置26を示し、
図2cに示すように、この検出装置は構造化された検出器として形成されており、検出平面に長方形に形成された多数の感光性の検出範囲26.1~26.nからなる。検出平面には、n個の検出範囲26.1~26.nが、測定方向xに沿って第3周期d
3により周期的に配置されている;周期d
3は、この実施例では測定方向xに連続して配置された4つの検出範囲26.1~26.nの幅に対応している;したがって、検出装置26によって、それぞれ90°だけ互いに対して位相をずらされた4つのインクリメンタル信号の生成が行われる。検出装置26の検出平面は、
図3に概略的に示すように、上記刊行物により既知の構成で光線伝搬方向に走査回折格子24から垂線間隔vだけ間隔をおいて配置されている。
【0029】
検出平面もしくは検出装置26では、このような走査において、光源21から放出された光線束と基準回折格子13および走査回折格子24との相互作用によって、周期的なストライプパターンが生じ、このストライプパターンは周期d
3を備える。上記刊行物により、ストライプパターンの周期d
3もしくは基準回折格子13の周期と、この走査原理に基づいた位置測定装置の他の幾何学的なシステムパラメータとの間において次の式(1)および(2)に記述された関係が既知である;これらの関係式は、約90°のピーク値ずれを有する振幅型回折格子または位相型回折格子の形式の走査回折格子が使用された場合に有効である:
【数3】
【数4】
d
1は、基準器における基準回折格子の周期であり、
d
2は、走査回折格子の有効な周期であり、
d
3は、検出装置の検出平面におけるストライプパターンの周期であり、
vは、走査回折格子と検出平面との間の垂線間隔であり、
uは、基準回折格子と走査回折格子との間の垂線間隔である。
【0030】
180°のピーク値ずれを備える位相型回折格子の形式の走査回折格子24が使用された場合には、これらの式において周期d2は、d2=2・d2Pによって得られる有効な目盛周期を示し、d2Pは、位相型回折格子の実際の周期を表す。
【0031】
基準器10と走査ユニット20とが相対移動した場合、ひいては基準回折格子13が走査回折格子24および検出装置26に対して相対移動した場合には、生成されたストライプパターンは検出装置26の上方で検出平面において測定装置xに沿って移動する。このようにして、検出装置26の多数の検出範囲26.1~26.nによって、既知のように互いに位相をずらされた複数の正弦状のインクリメンタル信号、例えば120°だけ互いに位相をずらされた3つのインクリメンタル信号、またはそれぞれ90°だけ互いに位相をずらされた4つのインクリメンタル信号を生成することができ、これらのインクリメンタル信号は、例えば機械制御部によってさらに処理可能である。
【0032】
本発明による位置測定装置においては、上記刊行物により既知の構成が、特に走査回折格子24の汚れ、ひいては信号品質に影響が及ぼされることを防止するために変更される。
図1に示すように、このために走査回折格子24が第1および第2の透明なプレート状の担体要素25.1,25.2の間に配置されている。担体要素25.1,25.2として、この場合には、例えば、適切な厚さおよび適切な屈折率nを有するガラスプレートを使用してもよい。好ましくは、プレート状の担体要素25.1,25.2の厚さは、0.1mm~5mmの範囲で選択される。さらに、走査回折格子24と検出範囲26.1~26.nとの間のスペースは、屈折率n>1.3の材料によって完全に充填されている。この実施例では、このスペースは
図1に示すように第2担体要素25.2によって充填されている。
【0033】
図4は、
図1の走査ユニット20を拡大した部分図を示す。
図4には、本発明による位置測定装置の特に重要な幾何学的な変数が書き込まれている。これらの変数について次にさらに詳述する。
図4に示すように、変更された走査ユニット20の構成に基づいて、上記式(1)および(2)において、基準回折格子13と走査回折格子24との間の垂線間隔uを式u
1+u
2/n
u2によって置き換え、走査回折格子24と検出平面との間の垂線間隔vを式v/n
vによって置き換える必要がある。この場合、n
u2もしくはn
vは、考慮する必要がある両方の担体要素25.1,25.2の屈折率を表す。この場合、基準回折格子の第1周期d
1および検出平面に生じたストライプパターンの第3周期d
3について上記式(1)および(2)に対して変更された関係式(1.1)もしくは(1.2)が生じる。
【数5】
【数6】
d
1は、基準回折格子の第1周期であり、
d
2は、走査回折格子の有効な第2周期であり、
d
3は、検出平面に生じたストライプパターンの第3周期であり、
u
1は、基準回折格子と、第1担体要素の隣接する境界面との間の間隔であり、
u
2は、基準回折格子と走査回折格子との間に配置された第1担体要素の厚さであり、
vは、走査回折格子と検出平面との間に配置された第2担体要素の厚さであり、
n
u2は、第1担体要素の屈折率であり、
n
vは、第2担体要素の屈折率である。
【0034】
このように担体要素25.1,25.2の互いに向かい合った両方の境界面のいずれか一方に走査回折格子24を配置することにより、例えば液体が走査回折格子24に到達することはできないので、走査回折格子24は起こり得る汚れに対して確実に保護されている。これにより、好ましくない汚れによって生成されたインクリメンタル信号の品質に影響が及ぼされることを防止することができる。
【0035】
さらに、走査回折格子24と検出装置26との間のスペースを第2担体要素25.2によって完全に充填することによって、この領域が液体によって汚されることもなく、走査に影響が及ぼされることはない。さらに、第2担体要素25.2の厚さによって、走査回折格子24と検出平面との間に必要な間隔vを極めて正確に、再現可能に調節することができる。
【0036】
この場合、光線伝搬方向にまず通過された第1担体要素25.1または第2担体要素25.2、すなわち、担体要素25.1,25.2の互いに向かい合った両方の境界面G2,G3のいずれか一方に走査回折格子24を取り付けるか、もしくは配置することができる。それぞれ他方の担体要素25.2もしくは25.1は、走査回折格子24が配置される担体要素25.1,25.2に続いて接着される。接着された両方の担体要素25.1,25.2および内部の走査回折格子24からなる厚さv+u2を備えるスタックを、続いて検出装置26に接着することができる。検出装置26と、走査回折格子24を備える担体要素スタックとからなるこのユニットを基準回折格子13に対して望ましい間隔u1をおいて組み付けることができる。
【0037】
式(1.1)および(2.1)では、この場合、当然ながらさらに担体要素25.1,25.2の間もしくは境界面G2およびG3の間の接着層の厚さおよび屈折率ならびに担体要素25.2と検出装置26との間もしくは境界面G4と検出装置26との間の接着層の厚さがそれぞれ考慮される。
【0038】
さらに、本発明による位置測定装置において、基準回折格子13と、光路において入射される第1担体要素25.1の隣接する境界面G1との間の間隔u1が10μm~200μmの間の範囲、特に20μm~50μmの間の範囲で選択される場合には有利であることが明らかである。このように選択された小さい間隔u1により、基準器10の表面に場合によって生じた液滴を平坦に押圧することができ、もはや光学式走査に影響が及ぼされることはない。本発明にしたがって、u2>0である少なくとも2つの担体要素25.1,25.2の間に走査回折格子24が配置されていない場合には、このように小さい間隔u1は、このような走査原理においてu2=0の場合に、対応する刊行物による上記関係式(1)および(2)を使用して信号品質の低下を甘受してのみ選択することが可能である。
【0039】
本発明による位置測定装置の具体的な一実施例では、様々な幾何学的なシステムパラメータが次のように選択される:
d1=20μm
d2=16μm
d3=80μm
λ=850nm(使用される光源の波長)
u1=0.033mm
u2は=0.514mm;nu2=1.5
v=2.256mm;nv=1.5
【0040】
最後に、
図5aおよび
図5bに基づいて本発明による位置測定装置の他の実施形態を説明する。この場合、図面はそれぞれ互いに接着された2つの担体要素の詳細図を示し、これらの担体要素の間には様々に形成された走査回折格子が配置されている。
【0041】
図5aには、上記実施例と原理的に同一の構成が示されており、担体要素125.1,125.2としての役割を果たす2つのガラスプレートの間には、振幅型回折格子として形成された走査回折格子124が配置されている;この走査回折格子124は、測定方向xに沿って交互に配置された光学的な透過性が異なる走査回折格子範囲124.a,124.bからなる。この場合、符号124.aによって透過性の走査回折格子範囲が示されている;符号124.bによって、例えば肉薄のクロム層として形成された不透過性の走査回折格子範囲が示されている。走査回折格子124の周期d
2は、測定方向xに沿った透過特性が異なる2つの走査回折格子範囲124.a,124.bの合計に相当する。同様に
図5aに示すように、走査回折格子124は、第1担体要素125.1に向いた第2担体要素125.2の境界面G3に配置されている。さらにこの図面に示すように、厚さd
Kを有する接着層129が両方の担体要素125.1,125.2の間に設けられており、この接着層を介して両方の担体要素125.1,125.2は相互に結合される。
【0042】
これに対して、
図5bは、本発明による位置測定装置の可能な構成のための変更された一実施形態を示す。両方の担体要素225.1,225.2の間の走査回折格子224は、位相型回折格子として形成されており、測定方向xに交互に配置された走査回折格子範囲224.a,224.bからなる。これらの走査回折格子範囲は、異なる光学的なピーク値ずれ、ひいては異なる位相シフト作用を備える。走査回折格子範囲224.bには、このために、第2担体要素225.2の境界面G3に、好ましくは高屈折率の材料、例えばTa
2O
5からなるウェブ高さtの位相ウェブが配置されている。走査回折格子範囲224.aは、位相ウェブのないそれぞれの溝によって形成される。厚さd
Kの接着層229を介して両方の担体要素225.1,225.2が相互に結合されている。この場合、接着層229の厚さd
Kは、位相ウェブもしくは走査回折格子範囲224.bのウェブ高さtよりも大きく選択する必要がある。さらに位相ウェブ材料を選択する場合には、位相ウェブ材料が、両方の担体要素225.1,225.2の間の接着層229の屈折率よりもできるだけ明白に大きい屈折率を備えることが重要である。位相ウェブのウェブ高さを選択する場合には、走査回折格子の望ましい光学的なピーク値ずれを得るために、当然ながら接着層229の屈折率を考慮する必要がある。走査回折格子224の周期d
2は、測定方向xに沿って異なる位相シフト作用を備える2つの走査範囲224.a,224.bの幅の合計に相当する。位相型回折格子として形成された走査回折格子224が本発明により両方の担体要素225.1,225.2の間に配置されていることは、特に好ましいことが明らかである;これにより、液体が位相ウェブのない走査回折格子範囲224.aに溜まり、走査回折格子224の光学作用に望ましくない影響が及ぼされないことを確保できる。
【0043】
具体的に説明した実施例の他に、本発明の範囲において当然ながらさらに他の構成の可能性がある。
【0044】
例えば、ガラスの代わりに担体要素の材料として、適合する屈折率を備える適切な透明のプラスチックまたはガラスセラミックスを使用することも可能である。この場合、例えば、基準器に向いたガラスからなる第1担体要素と、プラスチックからなる第2担体要素とを組み合わせることも可能である。この場合、ガラスからなる第1担体要素は、金属片により生じることのあるひっかき傷および/または冷却潤滑剤による化学的作用に対する良好な保護を保証する。プラスチックからなる第2担体要素は極めて有利に製造することができ、ガラスからなる第1担体要素と検出装置の間で保護されている。この場合、プラスチックからなる第2担体要素の外縁部は、適切な鋳込み材によって化学的作用に対して付加的に保護することができる。
【0045】
さらに、必要に応じて、スタック状に配置された3つ以上の担体要素を備える構成を設けることもできる。
【0046】
さらに、線形以外の相対移動を検出するための位置測定装置を本発明により形成することも当然ながら可能である;回転式の位置測定装置では、対応して形成された走査ユニットを設けることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 基準器
11 基準器担体
13 基準回折格子
13a,13b 基準回折格子範囲
20 走査ユニット
21 光源
22 コリメーョン光学系
24 走査回折格子
24a,24b 走査回折格子範囲
25.1,25.2 担体要素
26 検出装置
26.1~26n 検出範囲
124 走査回折格子
124.a,124.b 走査回折格子範囲
125.1,125.2 担体要素
129 接着層
224 走査回折格子
224.a,224.b 走査回折格子範囲
225.1,225.2 担体要素
229 接着層
d1 周期
d2 周期
d3 周期
G1,G2 境界面
n 屈折率
u 垂線間隔
u1 間隔
u2 厚さ
v 垂線間隔,厚さ
x 測定装置