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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】電磁誘導式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20221004BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G01D5/20 J
G01D5/245 E
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018226214
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2019101041
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】10 2017 222 063.5
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】マルク・オーリヴァー・ティーマン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・フランク
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ホイマン
(72)【発明者】
【氏名】ダーニエール・アウアー
(72)【発明者】
【氏名】オーリヴァー・ゼル
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-36783(JP,A)
【文献】特開2000-4575(JP,A)
【文献】特開2015-156348(JP,A)
【文献】特開2014-119453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの走査要素(1)と1つの目盛要素(2)とを有する電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記目盛要素(2)が、前記走査要素(1)に対して軸(A)を中心にして回転可能に配置されていて、
前記走査要素(1)が、
少なくとも1つの励磁配線(1.3,1.4)を有し、
第1方向(X)に沿って第1周期(P1.1)を成す第1周期パターンにしたがって延在する少なくとも1つの受信配線(1.11,1.12)を含む1つの第1受信トラック(1.1)を有し、
少なくとも1つの受信配線(1.21,1.22)を含む1つの第2受信トラック(1.2)を有し、
前記目盛要素(2)が、前記軸(A)に対して円周方向(U)に延在し、この円周方向(U)に沿って1つの目盛周期(P2.1)を成す1つの目盛トラック(2.1)を有し、
さらに、前記目盛トラック(2.1)を介して前記少なくとも1つの励磁配線(1.3,1.4)から生成された電磁場が変調可能である結果、前記走査要素(1)に対する前記目盛要素(2)の角度位置(φ)が、前記第1受信トラック(1.1)の前記受信配線(1.11,1.12)によって検出可能であるように、前記電磁誘導式エンコーダが構成されていて、
前記走査要素(1)に対する前記目盛要素(2)の前記第1方向(X)の位置(ξ)が、前記第2受信トラック(1.2)の前記受信配線(1.21,1.22)によって検出可能である当該電磁誘導式エンコーダ。
【請求項2】
前記第1受信トラック(1.1)及び/又は前記第2受信トラック(1.2)は、少なくとも2つの受信配線(1.11,1.12;1.21,1.22)を有する請求項1に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項3】
前記第1周期(P1.1)が、前記目盛周期(P2.1)にほぼ一致する結果、
1.5>[第1周期(P1.1)目盛周期P(2.1)]>0.75
が成立する請求項1又は2に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項4】
前記第1受信トラック(1.1)は、少なくとも1つの受信配線(1.11,1.12)を有し、前記少なくとも1つの受信配線(1.11,1.12)は、前記第1方向(X)に沿って1つの長さ(L11)にわたって延在し、この長さ(L11)は、前記第1周期(P1.1)よりも少なくとも3倍大きい請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項5】
前記第2受信トラック(1.2)の前記受信配線(1.21,1.22)が、第2周期(P1.2)を成す第2周期パターンにしたがって配置されていて、前記第2周期(P1.2)は、前記目盛トラック(2.1)の目盛周期(P2.1)よりも大きい請求項1~4のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項6】
前記第2受信トラック(1.2)の前記受信配線(1.21,1.22)が、第2周期(P1.2)を成す第2周期パターンにしたがって配置されていて、前記第2周期(P1.2)は、前記第1周期(P1.1)よりも大きい請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項7】
前記第1受信トラック(1.1)は、前記第2受信トラック(1.2)から半径方向にずらして前記軸(A)に対して配置されている請求項1~6のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項8】
前記第1受信トラック(1.1)は、前記軸(A)に対して前記第2受信トラック(1.2)よりも小さい半径方向の間隔で配置されている請求項5に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項9】
前記目盛要素(2)は、前記目盛トラック(2.1)が配置されている湾曲した側面を有する請求項1~8のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項10】
前記第1受信トラック(1.1)及び/又は前記第2受信トラック(1.2)は、1つの平面上に配置されている請求項1~9のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項11】
前記第1受信トラック(1.1)及び/又は前記第2受信トラック(1.2)は、1つの湾曲面上に配置されていて、前記湾曲面の曲率半径は、前記目盛トラック(2.1)が配置されている前記湾曲した側面の曲率半径とは異なる請求項9に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項12】
前記目盛トラック(2.1)は、交互に配置された複数の突出片部(2.11)と複数の欠落部(2.12)とを有する請求項1~11のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項13】
前記目盛要素(2)は、1つの直径(D)を成す円形の外輪郭を有し、
前記第2受信トラック(1.2)は、前記第1方向(X)に沿って1つの長さ(L12)にわたって延在する少なくとも1つの受信配線(1.21;1.22)を有し、この長さ(L12)は、前記直径(D)の半分よりも大きい請求項1~12のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項14】
前記目盛要素(2)は、1つの直径(D)を成す円形の外輪郭を有し、
前記第1受信トラック(1.1)は、前記第1方向(X)に沿って1つの長さ(L11)にわたって延在する少なくとも1つの受信配線(1.11;1.12)を有し、この長さ(L11)は、前記直径(D)よりも大きい請求項1~13のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項15】
前記目盛要素(2)は、1つの直径(D)を成す円形の外輪郭を有し、
前記第2受信トラック(1.2)の前記受信配線(1.21,1.22)は、第2周期(P1.2)を成す第2周期パターンにしたがって配置されていて、前記第2周期(P1.2)は、前記直径(D)よりも大きい請求項1~14のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項16】
第1振幅値(M1)を有する第1信号が、前記第1受信トラック(1.1)の前記受信配線(1.11,1.12)によって生成可能であり、
第2振幅値(M2)を有する第2信号が、前記第2受信トラック(1.2)の前記受信配線(1.21,1.22)によって生成可能であり、
前記走査要素(1)と前記目盛要素(2)との間の第2方向(Y)の間隔(Ψ)が、前記第1振幅値(M1)と前記第2振幅値(M2)とに基づいて測定可能であるように、前記電磁誘導式エンコーダは構成されている請求項1~15のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の相対位置を測定するための電磁誘導式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導式エンコーダは、例えば、互いに相対回転可能な2つの機械部品の角度位置を測定するための測角装置として使用される。電磁誘導式エンコーダの場合、大抵は、励磁コイル及び受信コイルが、例えば導電路として、多くの場合は多層の共通の1つの配線基板上に実装されている。当該配線基板は、例えば、測角装置のステータに固定接合されている。1つの目盛要素が、この配線基板に対向して存在する。導電性の面と非導電性の面又は突出片部と欠落部とが、目盛パターンとして周期的な間隔で交互してこの目盛要素上に形成されていて、この目盛要素は、測角装置のロータに固定接合されている。交番励磁電流が、当該励磁コイルに通電されるときに、角度位置に依存する信号が、ロータとステータとの間の相対回転中に当該受信コイルに生成される。次いで、当該信号は、評価電子装置内でさらに処理される。
【0003】
多くの場合、このような電磁誘導式エンコーダは、電気駆動部用の測定装置として対応する複数の機械部品の相対移動又は相対位置を測定するために使用される。この場合、当該生成された位置値は、対応するインタフェース装置を通じて当該駆動部を制御するための後続の電子機器に供給される。
【0004】
本出願人の独国特許出願公開第102012223037号明細書には、測角装置が記載されている。この測角装置の場合、目盛要素の軸方向の移動が、角度位置の測定と共に測定可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102012223037号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、相対角度位置と受信トラックに沿って延在する第1方向の位置との測定が簡単に可能である電磁誘導式エンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この課題は、請求項1に記載の特徴によって解決される。
【0008】
したがって、当該電磁誘導式エンコーダは、1つの走査要素と1つの目盛要素とを有する。この場合、当該目盛要素は、当該走査要素に対して軸を中心にして回転可能に配置されているか又は回転移動可能である。当該走査要素は、1つの励磁配線又は複数の励磁配線を有する。さらに、当該走査要素は、1つの第1受信トラックを有する。この第1受信トラックは、第1周期を成す第1周期パターンにしたがって第1方向に沿って延在する少なくとも1つの受信配線を有する。特に、当該第1受信トラックは、第1周期を成す第1周期パターンにしたがって第1方向に沿って延在する複数の受信配線を有し得る。さらに、当該走査要素は、少なくとも1つの受信配線を含む1つの第2受信トラックを有する。当該目盛要素は、当該軸に対して円周方向に延在し、この円周方向に接線に沿って1つの目盛周期を成す1つの目盛トラックを有する。当該目盛トラックを介して当該少なくとも1つの励磁配線から生成された電磁場が変調可能である結果、当該走査要素に対する当該目盛要素の角度位置が、当該第1受信トラックの当該受信配線によって検出可能であるか又は測定可能であるように、当該エンコーダが構成されている。さらに、当該走査要素に対する当該目盛要素の当該第1方向の位置が、当該第2受信トラックの当該受信配線によって検出可能であるか又は測定可能である。
【0009】
当該第2受信トラックは、第2周期を成す第2周期パターンにしたがって当該第1方向に沿って有益に延在する少なくとも1つの受信配線を有する。特に、当該第2受信トラックは、第2周期を成す第2周期パターンにしたがって当該第1方向に沿って延在する複数の受信配線を有する。
【0010】
したがって、1つの周期は、幾何学的な長さである。
【0011】
当該第1受信トラックは、当該第1方向につなげられた複数のコイルから成る少なくとも1つの受信配線を有する。さらに、当該走査要素は、少なくとも1つのコイルから成る少なくとも1つの受信配線を含む1つの第2受信トラックを有する。
【0012】
当該軸を中心にした回転移動又は角度位置が、当該第1受信トラックの当該受信配線によって検出可能である。しかしながら、当該回転移動又は角度位置は、例えば、当該目盛要素の偏心誤差によって、又は当該走査要素に対する当該目盛要素の当該第1方向の不正確な配置によって誤差を含み得る。上記の第1方向の並進位置又は直線位置が、当該第2受信トラックの当該受信配線によって検出可能である。したがって、当該第2受信トラックによる測定を実行することで、当該第1受信トラックの当該受信配線によって測定された角度位置を補正することが可能である。その結果、最終的に、当該システムの精度が、当該角度位置の測定に関して向上する。
【0013】
一般に、当該走査要素と当該目盛要素とは、互いに対向して配置されていて、第2方向に延在する空隙によって互いに離間している。当該第2方向は、特に、当該第1方向に対して直交して配向されていて、特に、当該目盛要素が当該走査要素に対して回転可能に配置されている軸に対しても直交して配向されている。
【0014】
好ましくは、当該第1受信トラック若しくは当該第2受信トラック又は当該両受信トラックは、特に位相シフトを伴って(例えば、90°の位相シフトを伴って)互いに配置されているそれぞれ少なくとも2つの受信配線を有する。
【0015】
本発明の好適な構成では、当該第1周期の長さは、当該目盛周期の長さにほぼ一致する。特に:
1.5>[第1周期目盛周期]>0.75又は
1.25>[第1周期目盛周期]>0.85又は
1.15>[第1周期目盛周期]>0.9
が有益に成立する。
【0016】
好ましくは、当該第1受信トラックは、当該第1方向に沿って第1長さにわたって延在する少なくとも1つの受信配線を有する。この場合、当該第1長さは、当該第1周期よりも少なくとも3倍(例えば、3倍程度)大きい(又は当該第1周期よりも3倍程度大きい)。特に、当該第1長さは、当該第1周期よりも少なくとも4倍又は6倍大きくてもよい。
【0017】
本発明の別の構成では、当該受信トラックの受信配線は、少なくとも2つのコイルを有する。
【0018】
特に、当該第1受信トラックの受信配線は、当該第2受信トラックの受信配線よりも多いコイルをから成り得る。
【0019】
本発明の好適な構成では、当該第2受信トラックの受信配線が、第2周期を成す第2周期パターンにしたがって配置されている。この場合、当該第2周期は、当該第1周期よりも大きいか又は長い。例えば、当該第1又は第2周期パターンは、正弦波状の推移を有し得る。好ましくは、当該第2周期は、当該第1周期よりも少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍大きいか又は6倍大きい。
【0020】
本発明の別の構成では、当該第2受信トラックの受信配線が、第2周期を成す第2周期パターンにしたがって配置されていて、当該第2周期の目盛周期は、当該目盛トラックの周期よりも大きい。
【0021】
好ましくは、当該第1受信トラックが、当該第2受信トラックに対して半径方向に空隙をあけて配置されている。特に、当該第1受信トラックは、当該第2受信トラックよりも小さい当該軸に対する半径距離である。
【0022】
当該目盛トラックは、特に円柱状の固体の側面に沿って配置されていて、凹部を円周方向に有する。したがって、当該目盛要素は、当該目盛トラックが配置されている湾曲した側面を有する。
【0023】
好ましくは、当該第1受信トラック若しくは当該第2受信トラック又は両受信トラックは、湾曲した1つの面上に配置され得る。この場合、当該湾曲した面の曲率半径は、当該目盛トラックが配置されている湾曲した側面とは異なる。特に、当該第1受信トラック若しくは当該第2受信トラック又は両受信トラックは、1つの平面上に配置され得る。
【0024】
好ましくは、当該目盛トラックは、当該第1方向に沿って交互に配置された複数の突出片部と複数の欠落部とを有する。代わりに、当該目盛トラックは、当該第1方向に沿て交互に配置された導電性の複数の領域と非導電性の複数の領域とを有する目盛パターンから形成され得る。当該目盛パターンは、別の強磁性構造から成ってもよい。1つの目盛周期は、当該目盛パターンによって規定されている幾何学的な長さである。例えば、1つの導電面と1つの非導電面とがそれぞれ、又は、1つの突出片部と1つの欠落部とがそれぞれ、1つの目盛周期内に存在する。1つの信号周期が、1つの目盛周期の走査時に当該走査要素によって生成され得る。
【0025】
好ましくは、当該目盛要素は、1つの直径を成す円形の外輪郭を有する。さらに、当該第2受信トラックは、当該第1方向に沿って所定の長さにわたって延在する少なくとも1つの受信配線を有する。この場合、当該長さは、当該直径の半分よりも大きい。好ましくは、当該長さは、当該直径よりも少なくとも0.75倍大きい。さらに、当該第1受信トラックは、当該第1方向に沿って第1長さにわたって延在する少なくとも1つの受信配線を有し得る。この場合、当該第1長さは、当該直径よりも大きい。好ましくは、当該第1長さは、当該直径の1.5倍よりも大きいか又は当該直径の2倍よりも大きい。
【0026】
本発明の別の構成では、当該目盛要素は、1つの直径を成す円形の外輪郭を有し、当該第2受信トラックの受信配線が、第2周期を成す第2周期パターンにしたがって配置されている。この場合、当該第2周期は、当該直径よりも大きい。
【0027】
当該エンコーダは、特に、当該目盛要素の角度位置に依存しないで、当該第1横方向の当該目盛要素の相対位置を取得することを可能にする。
【0028】
本発明の別の構成では、第1振幅値を有する第1信号が、当該第1受信トラックの受信配線によって生成可能であり、第2振幅値を有する第2信号が、当該第2受信トラックの受信配線によって生成可能である。当該走査要素と当該目盛要素との間の第2方向の間隔が、当該第1振幅値と当該第2振幅値とに基づいて測定可能であるように、当該エンコーダは構成されている。例えば、当該間隔に関する情報を含む除算が、当該第1振幅値と当該第2振幅値とから作成され得る。代わりに、この目的のために、差が、当該第1振幅値と当該第2振幅値とから作成されてもよい。
【0029】
本発明は、例えばノギス原理にしたがって絶対角度位置を検出するために、走査要素が軸方向にずらして配置された複数の第1受信トラックを有するエンコーダも含む。この場合、当該目盛要素も、軸方向にずらして配置された複数の目盛トラックを有する。このようなエンコーダは、軸方向にずらして配置された複数の第2受信トラックを有してもよい。この配置の場合、当該検出された信号又は当該信号の振幅値を適切に処理することによって、当該走査要素に対する当該軸の傾斜もさらに測定され得る。
【0030】
本発明の好適な構成は、従属請求項に記載されている。
【0031】
以下に、本発明の電磁誘導式エンコーダのその他の詳細及び利点を、添付図面に基づく1つの実施の形態から説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】相対角度位置を測定するためのエンコーダの斜視図である。
図2】目盛要素の正面図である。
図3】走査要素の一部及び目盛要素の斜視図である。
図4】走査要素の第1受信トラック及び励磁配線の正面図である。
図5】走査要素の第2受信トラック及び励磁配線の正面図である。
図6】走査要素と目盛要素との間を測定するためのグラフである。
図7】目盛要素及び走査要素の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明を、走査要素1と軸Aを中心にして回転可能な目盛要素2又はスケールとの間の角度位置φを取得するために提供されている(図1)エンコーダに基づいて説明する。
【0034】
動作に適合した状態にするため、走査要素1と目盛要素2とが、第2方向Yに延在する空隙をあけて互いに対向するように、目盛要素2が、第1方向Xに沿って走査要素1に対して位置決めされる。
【0035】
目盛要素2は、軸Aを有するほぼ円柱状の固体として形成されている。目盛トラック2.1が、当該固体の側面に存在する(図2も参照)。目盛トラック2.1は、円周方向Uに延在し、この円周方向Uに沿って目盛周期P2.1を有する。図示された実施の形態では、目盛トラック2.1は、複数の突出片部2.11とこれらの突出片部2.11の間に存在する欠落部2.12とを有する。この場合、第1目盛トラック2.1は、このような突出片部2.11と欠落部2.12とを12個ずつ有する(n=12)。したがって、目盛トラック2.1は、周期的に交互に連続して配置された複数の突出片部2.11と複数の欠落部2.12とから成る。目盛トラック2.1の目盛トラック2.1は、これらの突出片部2.11のうちの1つの突出片部2.11の長さT1と、これらの欠落部2.12のうちの1つの欠落部2.12の長さG1との和から得られる。この場合、長さT1,G1は、円周方向Uに延在する。これらの欠落部2.12のそれぞれの長さG1と同様に、長さT1は、全ての突出片部2.11に対して同じである。当該図示された実施の形態では、目盛要素2の直径Dは、9ミリメートルである。したがって、目盛周期P2.1は、以下のように算出され得る:
P2.1=D・π/n=9mm・π/12=2.36mm
【0036】
図3には、エンコーダの部品が概略的に示されている。走査要素1は、平坦な1つの多層配線基板から成る。第1受信トラック1.1及び励磁配線1.3並びに第2受信トラック1.2及び励磁配線1.4が、この多層配線基板の複数の平面上に配置されている。分かりやすく説明するため、図3中のこれらの平面は別々に示されている。実際には、当該両平面は、密接して配置されている。第1受信トラック1.1は、第2受信トラック1.2から半径方向にずらして軸Aに対して配置されているように、当該エンコーダは構成されている。したがって、第1受信トラック1.1は、第2受信トラック1.2よりも軸Aの近くに配置されている。
【0037】
受信トラック1.1,1.2はそれぞれ、2つの受信配線1.11,1.12;1.21,1.22を有する。図示された実施の形態では、これらの受信配線1.11,1.12;1.21,1.22は、導電路として形成されている。特に、これらの受信配線1.11,1.12;1.21,1.22又は導電路は、ビアを有する異なる複数の平面上に延在する。その結果、望まない短絡が、交点で回避される。当該図示された実施の形態では、少なくとも4つの層が、当該基板組付体に設けられている。
【0038】
図4によれば、第1受信トラック1.1の受信配線1.11,1.12はそれぞれ、(当該図示された実施の形態では、L11=10.2mmである)延在部L11を方向Xに沿って有し、周期的なパターンにしたがって、当該図示された実施の形態では、正弦波状のパターンにしたがって配置されている。ここでは、これらの第1受信配線1.11,1.12が、2.4mmの第1周期P1.1を有するように、これらの第1受信配線1.11,1.12はそれぞれ、8つの蛇行コイルを有する。したがって、第1周期P1.1は、目盛周期P2.1にほぼ一致する。その結果、
(第1周期P1.1)(目盛周期P2.1)=2.4mm2.36mm=1.017が成立する。
【0039】
走査配線基板1に対する目盛要素2の相対回転時に、基本的に、比較的高い分解能のインクリメンタル信号が、第1受信配線1.11,1.12によって生成され得る。これに対して、第2受信トラック1.2の第2受信配線1.21,1.22はそれぞれ、ただ1つのコイルを有し(図5)、(当該図示された実施の形態では、L12=11mmである)延在部L12を方向Xに沿って有する。その結果、これらの第1受信配線1.11,1.12はそれぞれ、同様に11mmの周期P1.2を有する。
【0040】
さらに、図面に示されていない電子回路及びコネクタ要素が、走査要素1上に配置されている。走査要素1は、ハウジング11内(図1)に設置されている。走査要素1は、ケーブル10を通じて後続の電子機器に接続可能である。
【0041】
図3~5から分かるように、励磁配線1.3,1.4が第1受信トラック1.1と第2受信トラック1.2との双方の周囲にそれぞれ配置されている。この代わりに、ただ1つの励磁配線が使用されてもよい。
【0042】
多くの場合、目盛要素2は、機械部品に固定されている。この場合、エンコーダを動作に適合した構造にするためには、目盛要素2を有する機械部品は、例えばサーボアクチュエータによって走査要素1の前方に設置される必要がある。例えば、目盛要素2は、図7に破線によって示されているように、X方向に対応する動作位置へ直線移動され得る。当該直線移動の代わりに、軸Aが、湾曲した軌道に沿って移動するように、旋回移動又は回転移動も可能である。その後に、走査要素1と目盛要素2とが接触することなしに、目盛要素2は、走査要素1に対して半径方向に空隙をあけて又は間隔Ψをあけて設置される(図7)。一般に、目盛要素2は、回転子として使用され、軸Aを中心にして回転可能な機械部品に固定されている。これに対して、走査要素1が、直立している機械部品に固定されるように、この走査要素1は、エンコーダのステータを形成する。軸Aを中心とした走査要素1に対する目盛要素2の相対回転時に、それぞれの角度位置φに依存する信号が、電磁誘導効果によって第1受信トラック1.1の受信配線1.11,1.12で生成可能であり、したがって、走査要素1に対する目盛要素2角度位置φが検出可能である。
【0043】
対応する信号の当該生成のための前提条件は、励磁配線1.3,1.4が交番励磁場を受信トラック1.1,1.2の領域内に又はこれらの受信トラックによって走査される目盛トラック2.1の領域内に生成することである。当該図示された実施の形態では、励磁配線1.3,1.4は、電流を通電させる平行な複数の個別導電路として形成されている。励磁配線1.3,1.4が通電されると、パイプ状に又は円柱状に配向された電磁場が、それぞれの励磁配線1.3,1.4の周りに発生する。当該発生した電磁場の磁力線が、励磁配線1.3,1.4を中心にして同心円状に延在する。この場合、当該磁力線の方向が、知られているように、励磁配線1.3,1.4における通電方向に依存する。当該磁場が、角度位置φに依存して変調されるように、渦電流が、突出片部2.11の領域内に誘導される。これに応じて、相対角度位置φが、受信トラック1.1によって測定され得る。第1受信トラック1.1の受信配線1.11,1.12の複数の対がそれぞれ、90°だけ位相シフトした信号を提供するように、これらの対は配置されている。その結果、回転方向も測定され得る。角度位置φを測定するための受信トラック1.1は、個別の励磁配線1.3によって包囲される。しかし、こうして測定された角度位置φは、一般に著しい誤差を含む。当該誤差は、第2受信トラック1.2を用いた測定によって補正又は除去される。
【0044】
目盛要素2と走査要素1との間の方向Xの相対位置ξが、第2受信トラック1.2によって検出される。受信配線1.21,1.22によって生成された信号は、走査要素1.1に対する目盛要素1.2の方向Xの位置ξに依存する。
【0045】
第2受信トラック1.2によってX位置ξに関する信号を取得するために必要な励磁場が、励磁配線1.3によって生成される。第2受信トラック1.2の受信配線1.21,1.22が、第1周期P1.1よりも大きい第2周期P1.2を有するので、受信配線1.21,1.22によって生成された信号が、目盛要素2.1の角度位置φから影響を受けない。当該図示された実施の形態では、第2周期P1.2は、第1周期P1.1よりも約4.6倍大きいか又は長い。
【0046】
したがって、電磁場を生成する励磁配線1.3,1.4を使用することで、目盛要素2の側面の、軸Aに対して直交して配向されている方向Xの相対位置ξが、エンコーダによって正確に検出され得る。当該励磁配線1.3,1.4を使用することで、最終的に、当該エンコーダは、角度位置φも検出可能である。
【0047】
走査要素1の電子回路、例えばASICモジュールは、評価装置として作動するだけではなくて、励磁制御要素としても作動する。このとき、励磁配線1.3,1.4に通電する励磁電流が、この励磁制御要素の制御下で生成される。したがって、両励磁配線1.3,1.4は、1つの同じ励磁制御要素によって通電される。したがって、X方向の相対位置ξを検出するための特別な励磁配線が省略され得る。
【0048】
こうして取得された目盛要素2のX方向の正確な相対位置ξに関する情報が、角度位置φに対する値を補正するために評価要素内で使用される。その結果、この値は、従来の測角装置に比べて向上した測定精度で生成可能である。
【0049】
さらに、走査要素1に対する目盛要素2の方向Yの相対位置Ψ、すなわち空隙の大きさも、図示された実施の形態に示されているエンコーダによって測定され得る。このため、振幅値M1,M2が、例えば信号振幅S1,S190の二乗和の平方根から生成される(M1=√(S1 +S190 ))。振幅変調された高周波入力信号が、位相制御整流されることによって、当該信号振幅が取得される。図6は、目盛要素2の第2方向Yの間隔Ψが横軸上に描かれていて、振幅Mが縦軸上に描かれているグラフを示す。当該両曲線は、第1受信トラック1.1と第2受信トラック1.2とから取得される振幅値M1(Ψ),M2(Ψ)の推移を示す。当該両曲線の間隔が、増大する間隔Ψと共に小さくなることが、図6から分かる。したがって、第2方向Yの間隔Ψが、第1振幅値M1と第2振幅値M2とに基づいて一義的に測定され得る。例えば、除算Q(Ψ)=M1(Ψ)/M2(Ψ)が作成され得る。第2方向Yの間隔Ψが、この除算の変数から一義的に測定可能である。
【0050】
当該図示された実施の形態では、励磁配線1.3,1.4が、ただ1つの励磁制御要素によって提供される。その結果、同じ励磁電流が、励磁配線1.3,1.4に通電する。目盛要素2の第2方向Yの間隔Ψを測定するための上記の方法によって、励磁電流の変動による誤差をほとんど除去することが可能である。その結果、当該変動は、間隔Ψの測定にほとんど影響しない。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も達成される。
1.1つの走査要素(1)と1つの目盛要素(2)とを有する電磁誘導式エンコーダにおいて、
前記目盛要素(2)が、前記走査要素(1)に対して軸(A)を中心にして回転可能に配置されていて、
前記走査要素(1)が、
少なくとも1つの励磁配線(1.3,1.4)を有し、
第1方向(X)に沿って第1周期(P1.1)を成す第1周期パターンにしたがって延在する少なくとも1つの受信配線(1.11,1.12)を含む1つの第1受信トラック(1.1)を有し、
少なくとも1つの受信配線(1.21,1.22)を含む1つの第2受信トラック(1.2)を有し、
前記目盛要素(2)が、前記軸(A)に対して円周方向(U)に延在し、この円周方向(U)に沿って1つの目盛周期(P2.1)を成す1つの目盛トラック(2.1)を有し、
さらに、前記目盛トラック(2.1)を介して前記少なくとも1つの励磁配線(1.3,1.4)から生成された電磁場が変調可能である結果、前記走査要素(1)に対する前記目盛要素(2)の角度位置(φ)が、前記第1受信トラック(1.1)の前記受信配線(1.11,1.12)によって検出可能であるように、前記エンコーダが構成されていて、
前記走査要素(1)に対する前記目盛要素(2)の前記第1方向(X)の位置(ξ)が、前記第2受信トラック(1.2)の前記受信配線(1.21,1.22)によって検出可能である当該電磁誘導式エンコーダ。
2.前記第1受信トラック(1.1)及び/又は前記第2受信トラック(1.2)は、少なくとも2つの受信配線(1.11,1.12;1.21,1.22)を有する上記1に記載の電磁誘導式エンコーダ。
3.前記第1周期(P1.1)が、前記目盛周期(P2.1)にほぼ一致する結果、
1.5>[第1周期(P1.1)/目盛周期P(2.1)]>0.75
が成立する上記1又は2に記載の電磁誘導式エンコーダ。
4.前記第1受信トラック(1.1)は、少なくとも1つの受信配線(1.11,1.12)を有し、前記少なくとも1つの受信配線(1.11,1.12)は、前記第1方向(X)に沿って1つの長さ(L11)にわたって延在し、この長さ(L11)は、前記第1周期(P1.1)よりも少なくとも3倍大きい上記1~3のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
5.前記第2受信トラック(1.2)の前記受信配線(1.21,1.22)が、第2周期(P1.2)を成す第2周期パターンにしたがって配置されていて、前記第2周期(P1.2)は、前記目盛トラック(2.1)の目盛周期(P2.1)よりも大きい上記1~4のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
6.前記第2受信トラック(1.2)の前記受信配線(1.21,1.22)が、第2周期(P1.2)を成す第2周期パターンにしたがって配置されていて、前記第2周期(P1.2)は、前記第1周期(P1.1)よりも大きい上記1~5のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
7.前記第1受信トラック(1.1)は、前記第2受信トラック(1.2)から半径方向にずらして前記軸(A)に対して配置されている上記1~6のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
8.前記第1受信トラック(1.1)は、前記軸(A)に対して前記第2受信トラック(1.2)よりも小さい半径方向の間隔で配置されている上記5に記載の電磁誘導式エンコーダ。
9.前記目盛要素(2)は、前記目盛トラック(2.1)が配置されている湾曲した側面を有する上記1~8のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
10.前記第1受信トラック(1.1)及び/又は前記第2受信トラック(1.2)は、1つの平面上に配置されている上記1~9のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
11.前記第1受信トラック(1.1)及び/又は前記第2受信トラック(1.2)は、1つの湾曲面上に配置されていて、前記湾曲面の曲率半径は、前記目盛トラック(2.1)が配置されている前記湾曲した側面の曲率半径とは異なる上記9に記載の電磁誘導式エンコーダ。
12.前記目盛トラック(2.1)は、交互に配置された複数の突出片部(2.11)と複数の欠落部(2.12)とを有する上記1~11のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
13.前記目盛要素(2)は、1つの直径(D)を成す円形の外輪郭を有し、
前記第2受信トラック(1.2)は、前記第1方向(X)に沿って1つの長さ(L12)にわたって延在する少なくとも1つの受信配線(1.21;1.22)を有し、この長さ(L12)は、前記直径(D)の半分よりも大きい上記1~12のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
14.前記目盛要素(2)は、1つの直径(D)を成す円形の外輪郭を有し、
前記第1受信トラック(1.1)は、前記第1方向(X)に沿って1つの長さ(L11)にわたって延在する少なくとも1つの受信配線(1.11;1.12)を有し、この長さ(L11)は、前記直径(D)よりも大きい上記1~13のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
15.前記目盛要素(2)は、1つの直径(D)を成す円形の外輪郭を有し、
前記第2受信トラック(1.2)の前記受信配線(1.21,1.22)は、第2周期(P1.2)を成す第2周期パターンにしたがって配置されていて、前記第2周期(P1.2)は、前記直径(D)よりも大きい上記1~14のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
16.第1振幅値(M1)を有する第1信号が、前記第1受信トラック(1.1)の前記受信配線(1.11,1.12)によって生成可能であり、
第2振幅値(M2)を有する第2信号が、前記第2受信トラック(1.2)の前記受信配線(1.21,1.22)によって生成可能であり、
前記走査要素(1)と前記目盛要素(2)との間の第2方向(Y)の間隔(Ψ)が、前記第1振幅値(M1)と前記第2振幅値(M2)とに基づいて測定可能であるように、前記エンコーダは構成されている上記1~15のいずれか1項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【符号の説明】
【0051】
1 走査要素、走査配線基板
1.1 第1受信トラック
1.11 第1受信配線
1.12 第1受信配線
1.2 第2受信トラック
1.21 第2受信配線
1.22 第2受信配線
1.3 励磁配線
1.4 励磁配線
2 目盛要素
2.1 目盛トラック
2.11 突出片部
2.12 欠落部
10 ケーブル
11 ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7