(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】水中油型化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/67 20060101AFI20221004BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20221004BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20221004BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20221004BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20221004BHJP
A61K 8/40 20060101ALI20221004BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20221004BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20221004BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20221004BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/37
A61K8/81
A61K8/34
A61K8/49
A61K8/40
A61K8/31
A61K8/06
A61Q1/00
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2019059995
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 朋子
(72)【発明者】
【氏名】城内 美樹
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 祐子
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-504231(JP,A)
【文献】特開2009-143900(JP,A)
【文献】特開2014-201569(JP,A)
【文献】特開2016-069325(JP,A)
【文献】特開2017-088568(JP,A)
【文献】国際公開第2014/181473(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/185315(WO,A1)
【文献】特開2015-040195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型化粧料の全質量に対して
12質量%以上の含有率である有機紫外線吸収剤と、
水中油型化粧料の全質量に対して0.05~1質量%未満の含有率であり、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸単位、(メタ)アクリルアミド単位、(メタ)アクリル酸単位、及び、ビニルピロリドン単位からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位を含む重合体と、
水中油型化粧料の全質量に対して0.00001~1質量%の含有率であるカロテノイドを含有する、水中油型化粧料であって、
さらに、炭素数1~3のアルコールを含み、
前記有機紫外線吸収剤が、波長320nm~340nmのUV-A波に吸収を有する有機紫外線吸収剤を含み、
波長320nm~340nmのUV-A波に吸収を有する有機紫外線吸収剤の含有率が、水中油型化粧料の全質量に対して、
7質量%以上であり、
前記カロテノイドがアスタキサンチン及びリコピンから選択される少なくとも1種である、
水中油型化粧料。
【請求項2】
前記有機紫外線吸収剤が、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ホモサラート、エチルヘキシルトリアゾン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の水中油型化粧料。
【請求項3】
前記重合体が、ジメチルアクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩との共重合体、ビニルピロリドンと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩との共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチルと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩との共重合体、ビニルピロリドンと炭素数10~30のアルキル基がエステル結合したアクリル酸との共重合体、(メタ)アクリル酸又はその塩と炭素数10~30のアルキル基がエステル結合したアクリル酸との共重合体、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩と炭素数10~30のアルキル基で変性した(メタ)アクリル酸との共重合体、アクリル酸ナトリウムと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体、及びアクリルアミドと(メタ)アクリル酸又はその塩との共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載の水中油型化粧料。
【請求項4】
前記重合体が、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、(アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー、及びアクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の水中油型化粧料。
【請求項5】
さらに、トコフェロール及びジブチルヒドロキシトルエンから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の水中油型化粧料。
【請求項6】
前記トコフェロール及びジブチルヒドロキシトルエンの合計含有率が、水中油型化粧料の全質量に対して、0.01質量%以上である、請求項
5に記載の水中油型化粧料。
【請求項7】
さらに、無機粉体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の水中油型化粧料。
【請求項8】
前記無機粉体の合計含有率が、水中油型化粧料の全質量に対して、3質量%以下である、請求項
7に記載の水中油型化粧料。
【請求項9】
前記波長320nm~340nmのUV-A波に吸収を有する有機紫外線吸収剤の含有率が、水中油型化粧料の全質量に対して、20質量%以下である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の水中油型化粧料。
【請求項10】
前記有機紫外線吸収剤の含有率が、水中油型化粧料の全質量に対して、30質量%以下である、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の水中油型化粧料。
【請求項11】
日焼け止め化粧料である、請求項1~請求項
10のいずれか1項に記載の水中油型化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中油型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線は、UV-A波(波長320nm~400nm)、UV-B波(波長280nm~320nm)、及びUV-C波(波長190nm-280nm)に大別され、どの波長の紫外線も皮膚の劣化を招くことが知られている。
【0003】
紫外線から皮膚を守る手段としては、紫外線を散乱すること、紫外線を分光吸収すること、などの手段があり、必要に応じて単独で、又は、組合わせて適用されている。
紫外線を散乱する手段としては、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機粉体に代表される紫外線散乱剤の使用が挙げられる。紫外線を分光吸収する手段としては、有機紫外線吸収剤の使用が挙げられる。
これらの紫外線防御成分を配合した種々の組成物が提案されており、これを適用した各種の化粧料も上市されている。
【0004】
一方で、有機紫外線吸収剤などの油性成分、紫外線散乱剤として用いられる無機粉体といった成分の配合は、使用感の低下、組成物の安定性の低下などが問題となることがあり、このような問題に着目した種々の技術が提案されている。
【0005】
特許文献1には、カルボン酸/カルボキシレートコポリマー、アクリレートホモポリマー、アクリレートコポリマー及びこれらの混合物からなる親水性ゲル化剤、14~20のHLB値を有する所定の非イオン性界面活性剤、炭素数が1~6の一価アルコール、所定の紫外線保護剤、及び水を特定量で含むスキンケア組成物が開示されている。
特許文献2には、油溶性紫外線吸収剤、デキストリン脂肪酸エステル、アクリル酸系ポリマーを含有し、粉体の含有量、油溶性紫外線吸収剤とデキストリン脂肪酸エステルと質量比、油溶性紫外線吸収剤とアクリル酸系ポリマーとの質量比を、所定の範囲とした水中油型日焼け止め化粧料が開示されている。
【0006】
また、紫外線吸収性を向上させる目的で、有機紫外線吸収剤の含有量を多くすると、べたつきといった使用感の低下がより顕著になる場合がある。
特許文献3には、(A)金属キレート剤、(B)紫外線防御剤、(C)活性酸素除去剤及び抗酸化剤から選ばれる1種以上、を含有する皮膚外用剤が開示されている。
特許文献4には、紫外線散乱剤と、活性酸素除去剤及び抗酸化剤が、それぞれ異なる相に含まれる乳化組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4167285号公報
【文献】国際公開第2014/181473A1号
【文献】特開2000-136569号公報
【文献】特開2009-143900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
紫外線遮蔽効果を謳う化粧料においては、紫外線遮蔽効果のみならず、良好な使用感も要求される。しかし、紫外線遮蔽効果を得るために、油溶性の有機紫外線吸収剤を多く配合するとベタツキが生じる等の使用感が低下する傾向がある。また、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機粉体である紫外線散乱剤を多く配合すると、白浮き、きしみ感等の原因となってしまう傾向があり、化粧料における紫外線遮蔽効果と使用感の両立は困難であった。
有機紫外線吸収剤を多く含有することに起因する使用感の低下を改善する方策としては、例えば、特許文献1~2に記載の各組成物においても用いられるように、親水性アクリル酸系ポリマーを用いる方法がある。
【0009】
最近のトレンドとして、みずみずしい使用感が得られる化粧料が好まれる傾向にあるところ、特許文献1~特許文献2の如き、親水性アクリル酸系ポリマー等を使用するのみでは、みずみずしい使用感は得難い。
【0010】
特許文献3及び特許文献4に記載の皮膚外用剤及び乳化組成物では、紫外線防御成分と活性酸素除去剤とを共存させているが、紫外線吸収剤の使用量が少ないという観点からは、紫外線防御性において、なお改良の余地がある。また、特許文献3及び特許文献4に記載される具体的な処方においては、いずれも乳化に低分子の乳化剤を用いており、ある程度のみずみずしい感触を付与しうる。さらに、みずみずしさの観点から乳化力が高い低分子の乳化剤を用いない、若しくは乳化剤の量を少なくすることで、みずみずしさを向上させることが可能である。一方、このような手段を用いると、皮膚に塗布した場合、組成物のハジキが生じる場合がある。
【0011】
本開示に係る一実施態様が解決しようとする課題は、有機紫外線吸収剤を水中油型化粧料の全質量に対し10質量%以上含有する水中油型化粧料であって、みずみずしい使用感であり、且つ、in vivoでの良好なSPF(Sun Protection Facter)値を達成できる水中油型化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の水中油型化粧料は、以下の態様を含む。
<1> 水中油型化粧料の全質量に対して10質量%以上の含有率である有機紫外線吸収剤と、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸単位、(メタ)アクリルアミド単位、(メタ)アクリル酸単位、及び、ビニルピロリドン単位からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位を含む重合体と、カロテノイドと、を含有する、水中油型化粧料。
<2> 上記有機紫外線吸収剤が、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ホモサラート、エチルヘキシルトリアゾン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルからなる群より選択される少なくとも1種である、<1>に記載の水中油型化粧料。
<3> 上記カロテノイドが、アスタキサンチン及びリコピンから選ばれる少なくとも1種である、<1>又は<2>に記載の水中油型化粧料。
<4> 上記重合体が、ジメチルアクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸はその塩との共重合体、ビニルピロリドンと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩との共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチルと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩との共重合体、ビニルピロリドンと炭素数10~30のアルキル基がエステル結合したアクリル酸との共重合体、(メタ)アクリル酸又はその塩と炭素数10~30のアルキル基がエステル結合したアクリル酸との共重合体、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩と炭素数10~30のアルキル基で変性した(メタ)アクリル酸との共重合体、アクリル酸ナトリウムと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体、及びアクリルアミドと(メタ)アクリル酸又はその塩との共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の水中油型化粧料。
<5> 上記重合体の含有率が、水中油型化粧料の全質量に対して、0.05質量%以上1質量%未満である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の水中油型化粧料。
【0013】
<6> 波長320nm~400nmのUV-A波に吸収を有する上記有機紫外線吸収剤の含有率が、水中油型化粧料の全質量に対して、4質量%以上である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の水中油型化粧料。
<7> さらに、トコフェロール及びジブチルヒドロキシトルエンから選ばれる少なくとも1種を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の水中油型化粧料。
<8> 上記トコフェロール及びジブチルヒドロキシトルエンの合計含有率が、水中油型化粧料の全質量に対して、0.01質量%以下である、<7>に記載の水中油型化粧料。
【0014】
<9> さらに、無機粉体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の水中油型化粧料。
<10> 上記無機粉体の合計含有率が、水中油型化粧料の全質量に対して、3質量%以下である、<9>に記載の水中油型化粧料。
<11> さらに、炭素数1~3の低級アルコールを含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の水中油型化粧料。
<12>日焼け止め化粧料である、<1>~<11>のいずれか1つに記載の水中油型化粧料。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る一実施態様によれば、有機紫外線吸収剤を水中油型化粧料の全質量に対し10質量%以上含有する水中油型化粧料であって、みずみずしい使用感であり、且つ、in vivoでの良好なSPF値を達成できる水中油型化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の水中油型化粧料の実施形態の一例について説明する。但し、本開示の水中油型化粧料は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0017】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において化粧料中の各成分の量は、各成分に該当する物質が化粧料中に複数種存在する場合には、特に断らない限り、化粧料中に存在する複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において「油相」とは、水中油型の剤型における分散相を意味し、油相の液状媒体と、その液状媒体に分散又は溶解している成分とを含む。
本開示において「水相」とは、水中油型の剤型おける連続相を意味し、分散相の液状媒体と、その液状媒体に分散又は溶解している成分とを含む。
【0018】
本開示において、親水親油バランス値は、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値と略記されることがある。
本開示において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及びメタアクリルアミドの両方を包含する概念である。
【0019】
本開示において、「みずみずしい使用感」とは、化粧料を皮膚に塗布したときに、水が滲み出してくる変化を感じとれる使用感を意味する。
化粧料の紫外線防御能は、in vivo(生体)にて測定するSun Protection Facter(SPF)と、in vitro(試験管内、即ち、生体外)にて測定する紫外線吸収性で評価される。本開示の水中油型化粧料は、in vivoでのSPF値に着目している。
SPF値は、紫外線の中でも、波長280nm~320nmのUV-B波に対し、肌の炎症を防ぐ機能を示す指標である。in vivoでのSPF値は、後述の如く、国際標準化機構(ISO)の国際規格であるISO24444に準拠して2007年に制定された日本化粧品工業界SPF測定法基準<2007年改訂版>に基づき行なうことができる。
【0020】
<水中油型化粧料>
本開示に係る水中油型化粧料(以下、単に「化粧料」とも称する。)は、水中油型化粧料の全質量に対する含有率が10質量%以上である有機紫外線吸収剤(以下、「A成分」とも称する。)と、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸単位、(メタ)アクリルアミド単位、(メタ)アクリル酸単位、及び、ビニルピロリドン単位からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位を含む重合体(以下、「特定重合体」又は「B成分」とも称する。)と、カロテノイド(以下、「C成分」とも称する。)と、を含有する。
【0021】
本開示に係る化粧料は、水中油型化粧料の全質量に対する含有率が10質量%以上である有機紫外線吸収剤と、特定重合体と、カロテノイドと、を含有することにより、有機紫外線吸収剤を10質量%以上の高濃度で含有する化粧料において、みずみずしい使用感及び紫外線防御能、特に生体に関与するSPF値の両方に優れた化粧料とすることができる。
【0022】
本開示に係る化粧料が、上記の優れた効果を奏する理由は定かでないが、本発明者らは、以下のように推測している。
本開示に係る化粧料が、水中油型化粧料の全質量に対する含有率が10質量%以上である有機紫外線吸収剤(A成分)を含むことで良好な紫外線防御能を有し、さらに、乳化力を有する親水性のアクリル酸系重合体である特定重合体(B成分)と、抗酸化能に優れるカロテノイド(C成分)とを含有することにより、良好なSPF値が達成され、且つ、みずみずしい使用感が得られると推測される。
【0023】
以下、本開示に係る水中油型化粧料が含有する各成分について、詳細に説明する。
【0024】
〔A:有機紫外線吸収剤〕
本開示に係る化粧料は、水中油型化粧料の全質量に対する含有率が10質量%以上である有機紫外線吸収剤(A成分)を含有する。
有機紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収する作用を有する有機化合物である限りは制限されず、各種の有機紫外線吸収剤が使用できる。
有機紫外線吸収剤の室温(25℃)における形態についても、固形状、半固形状、又は液状を問わない。
【0025】
有機紫外線吸収剤のうち、UV-A波(波長320nm~400nm)の吸収能を有する化合物をUV-A剤と称し、UV-B波(波長280nm~320nm)の吸収能を有する化合物をUV-B剤と称することがある。
なお、有機紫外線吸収剤は、UV-A波及びUV-B波の双方に吸収を有するものもあり、これを用いてもよい。
良好なSPF値は、UVB吸収剤を配合することによって達成することができる。UVB吸収剤は液体状の成分が多いため、UVB吸収剤の配合は、化粧料にみずみずしさ付与する際に使用感の制約になることがない。一方、近年、UVA波は、真皮に届き、シワやたるみなどのエイジングの原因となることが解明されている。このため、UVA波を防ぐことが必要であるが、UVA吸収剤は、粉体成分、結晶性が高い成分が多く、化粧料にUVA吸収剤を配合すると、粉っぽさの原因になったり、溶解するために用いる油が大量に必要になったりして、化粧料のみずみずしさを阻害する要因になることがある。
好ましくは、UV-A剤は、UV-A波(波長320nm~400nm)に極大吸収を有する紫外線吸収剤であり、UV-A剤は、UV-B波(波長280nm~320nm)に極大吸収を有する紫外線吸収剤である。
【0026】
本開示に係る化粧料は、有機紫外線吸収剤を1種のみ含有してよいし、2種以上を含有してもよい。
【0027】
本開示に係る化粧料は、UV-A波(波長320nm~400nm)及びUV-B波(波長280nm~320nm)の吸収のため、2種以上の有機紫外線吸収剤を併用することが好ましい。
【0028】
有機紫外線吸収剤の好ましい組み合わせとしては、UV-A波の波長に吸収を有する有機紫外線吸収剤(以下、UV-A剤とも称する)を1種以上と、UV-B波の波長に吸収を有する有機紫外線吸収剤(以下、UV-B剤とも称する)を1種以上と、の組み合わせが挙げられる。
【0029】
有機紫外線吸収剤としては、公知の各種文献に記載される有機紫外線吸収剤を挙げることができる。例えば、特表2017-521463号公報の段落0015~0036に列挙される化合物群、特許第6359947号公報の段落0018及び0021に記載の化合物群は、本開示に係る化粧料が含有する有機紫外線吸収剤として用いることができる。
【0030】
有機紫外線吸収剤としては、トリアジン化合物、安息香酸化合物、アントラニル酸化合物、サリチル酸化合物、ケイ皮酸化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ジベンゾイルメタン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾイルピペラジン化合物、ジベンゾイルメタン化合物、ベンゾオキサゾール化合物、フェニルアクリレート化合物、イミダゾリン化合物、カンファー化合物、ベンザルマロネート化合物等の有機紫外線吸収剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
これらの中でも、トリアジン化合物、ケイ皮酸化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ジベンゾイルメタン化合物、ベンゾフェノン化合物、安息香酸化合物、フェニルアクリレート化合物、サリチル酸化合物及びベンザルマロネート化合物から選択される少なくとも1種の有機紫外線吸収剤が好ましい。
【0032】
有機紫外線吸収剤は、水中油型である本開示の化粧料において、少なくとも油相に含有させることが好ましいが、その種類に応じて、油相及び水相のいずれに含有させてもよい。紫外線遮蔽能向上の観点からは、油相及び水相の両方に含有させることも好ましい。
【0033】
有機紫外線吸収剤として、具体的には、本開示に係る効果をより良好に発揮でき、且つ、紫外線UV-A(波長320nm~400nm)と紫外線UV-B(波長280~300nm)の両方を効率良く吸収する組み合わせが可能である点から、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン(別名:(RS)-2-シアノ-3,3-ジフェニルプロパ-2-エン酸-2-エチルヘキシルエステル)、ジメチコジエチルベンザルマロネート(別名:ポリシリコーン-15)、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ホモサラート、エチルヘキシルトリアゾン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0034】
上記有機紫外線吸収剤において、UV-A剤としては、以下に示す化合物が挙げられる。
例えば、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等。
【0035】
また、UV-B剤としては、以下に示す化合物が挙げられる。
例えば、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン(別名:(RS)-2-シアノ-3,3-ジフェニルプロパ-2-エン酸-2-エチルヘキシルエステル)、ジメチコジエチルベンザルマロネート(別名:ポリシリコーン-15)、ホモサラート、エチルヘキシルトリアゾン等。
【0036】
これらの中でも、
メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの組み合わせ、
メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及び、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの組み合わせ、
メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、エチルヘキシルトリアゾン、及び、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンの組み合わせ、並びに、
メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、及び、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの組み合わせが、
有機紫外線吸収剤の好適な組み合わせ例として挙げられる。
但し、本開示における有機紫外線吸収剤の組み合わせは、上記の組み合わせに限定されないことは、言うまでもない。
【0037】
有機紫外線吸収剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。
市販品の例としては、チノソーブ(登録商標)M、チノソーブ(登録商標)S、ユビナール(登録商標)A Plus Glanular、ユビナール(登録商標)MC-80N、ユビナール(登録商標)T-150(以上、BASFジャパン株式会社)、Eusolex 9020、Eusolex OCR(以上、メルク株式会社)、パルソールSLX(DSMニュートリションジャパン株式会社)、HXMT-100ZA、HXLT-01(以上、テイカ株式会社)等が挙げられる。
【0038】
有機紫外線吸収剤のうち、波長320nm~400nmのUV-A波に吸収を有する有機紫外線吸収剤(以下、UV-A剤と称することがある)の含有率は、化粧料の全質量に対して、4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることがさらに好ましい。
化粧料の全質量に対するUV-A剤の含有率の上限には特に制限はないが、みずみずしい使用感をより得やすいという観点から、20質量%以下とすることができる。
【0039】
有機紫外線吸収剤の含有率は、使用する有機紫外線吸収剤の種類、化粧料に設定される紫外線吸収効果、等に応じて決定すればよい。例えば、有機紫外線吸収剤の含有率は、紫外線防御効果の発現の点から、化粧料の全質量に対し、10質量%以上であり、12質量%以上がより好ましく、15質量%以上がより好ましい。
有機紫外線吸収剤の含有率の上限は、各有機紫外線吸収剤に定められている化粧料への配合上限にて決定すればよいが、使用感の点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
本開示の化粧料では、有機紫外線吸収剤の含有率は化粧料の全質量に対して、10質量%以上という高含有率とする場合であっても、みずみずしい使用感が得られる。
【0040】
<その他の紫外線防御成分>
本開示に係る化粧料は、有機紫外線吸収剤(A成分)以外に、紫外線を防御しうる紫外線防御成分をさらに含んでいてもよい。
その他の紫外線防御成分としては、例えば、紫外線散乱剤として機能する無機粉体等が挙げられる。
本開示の化粧料は、さらに、無機粉体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
本開示の化粧料が無機粉体を含む場合、無機粉体からなる群より選択される少なくとも1種の含有率は、使用感の観点から、化粧料の全質量に対して、3質量%以下であることが好ましい。
【0041】
無機粉体としては、酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線吸収性無機粉体が挙げられる。
無機粉体の表面は、被覆処理されていてもよく、被覆処理されていなくてもよく、化粧料中に安定に分散することができればいずれであってもよい。
無機粉体を被覆処理する被覆剤は、無機物でも有機物でもよく、無機粉体を添加する化粧料の系によって適宜選択すればよい。
【0042】
〔B:特定重合体〕
本開示に係る化粧料は、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸単位、(メタ)アクリルアミド単位、(メタ)アクリル酸単位及びビニルピロリドン単位からなる群より選択された少なくとも1種の構成単位を含む重合体(B成分:特定重合体)を含有する。
なお、以下では、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸単位、(メタ)アクリルアミド単位、(メタ)アクリル酸単位及びビニルピロリドン単位を、「特定単位」と総称することがある。
特定重合体は、ゲル化剤として機能しうる親水性のアクリル酸系ポリマーの一態様である。
【0043】
特定重合体において特定単位に包含される各々の単位は、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸若しくはその塩、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸若しくはその塩、及びビニルピロリドンから選択されたモノマー、又は、これらのモノマーの誘導体を、原料モノマーの一つとして用いて形成された構成単位を意味する。
特定単位は、塩構造を有していてもよく、塩構造としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、等が挙げられる。
上記モノマーの誘導体とは、上記の各モノマーにおいて、その基本骨格は保持したまま構造の一部を改変したものを意味する。誘導体の例としては、アルキル変性体、エステル化体、等が挙げられる。
【0044】
特定重合体は、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。
【0045】
特定重合体は、特定単位以外の他の構成単位を1種又は2種以上含んでいてもよい。
他の構成単位の例としては、エイコセン等の炭素数10~30の1価の不飽和脂肪酸等が挙げられ、特定重合体に所望とされる性質に応じて、適宜選択することができる。
【0046】
特定重合体としては、みずみずしい使用感の観点から、ジメチルアクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸はその塩との共重合体、ビニルピロリドンと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩との共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチルと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩との共重合体、ビニルピロリドンと炭素数10~30のアルキル基がエステル結合したアクリル酸との共重合体、(メタ)アクリル酸又はその塩と炭素数10~30のアルキル基がエステル結合したアクリル酸との共重合体、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸又はその塩と炭素数10~30のアルキル基で変性した(メタ)アクリル酸との共重合体、アクリル酸ナトリウムと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体、及びアクリルアミドと(メタ)アクリル酸又はその塩との共重合体から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0047】
なお、ビニルピロリドンと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体のアンモニウム塩は、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーとも称される。
アクリル酸ヒドロキシエチルと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体のナトリウム塩は、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーとも称される。
【0048】
本開示に係る化粧料は、特定重合体を1種のみ含有してよいし、2種以上を含有してもよい。
【0049】
特定重合体は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。
特定重合体の市販品の例としては、シンタレンK、L(カルボキシビニルポリマー、富士フイルム和光純薬工業(株))、Aristoflex AVC((アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー クラリアントジャパン社)、Aristoflex HMB((アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベへネス-25)クロスポリマー クラリアントジャパン社)、PEMULEN TR-1、TR-2(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、ルーブリゾール社)、SIMULGEL FL、SIMULGEL NS、SEPIPLUS S、及びSEPINOV EMT 10(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、SEPPIC社)、SEPIPLUS 265(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、SEPPIC社)等が挙げられる。
【0050】
本開示に係る化粧料における特定重合体の含有率は、みずみずしい使用感の観点から、化粧料の全質量に対して、0.005質量%以上1質量%未満であることが好ましく、0.1質量%~0.8質量%がより好ましく、0.2質量%~0.5質量%がさらに好ましい。
【0051】
〔C:カロテノイド〕
本開示に係る化粧料は、カロテノイド(C成分)を含有する。
カロテノイドは、黄色から赤のテルペノイド色素であり、植物類、藻類、及びバクテリア由来の色素を含む。
カロテノイドは、天然由来に限定されず、常法に従って得られるカロテノイドであればよい。例えば、後述するカロテノイドのカロチンの多くは合成によっても製造されており、市販のβ-カロチンの多くは合成により製造されている。
カロテノイドは、油性の有効成分として機能する。
【0052】
カロテノイドとしては、炭化水素であるカロチン及びカロチンの酸化アルコール誘導体(例えば、キサントフィル)等が挙げられる。
カロテノイドとしては、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β-8’-アポ-カロテナール(アポカロテナール)、β-12’-アポ-カロテナール、α-カロチン、β-カロチン、γ-カロチン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオレリトリン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステルが挙げられる。なお、慣用名としてα-カロチンとβ-カロチンとの混合物を「カロチン」と称することがある。
【0053】
特に好ましく用いられるカロテノイドとしては、酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果などを有し、黄色から赤色の範囲の色を呈する着色料として知られるアスタキサンチン、及びリコピンから選ばれる1種以上が挙げられる。
なお、本開示において、「アスタキサンチン」は、アスタキサンキチンのエステル等の誘導体をも包含する意味で用いられる。
【0054】
カロテノイドは、市販品を用いてもよい。市販品としては、ASTOTS-S、ASTOTS-SS、ASTOTS-10OS、ASTOTS-5OS等のアスタッツ シリーズ((株)富士フイルムヘルスケアラボラトリー)、ライコマート(Lyc-o-Mato:商品名、LYCORED社製)などが挙げられる。
【0055】
本開示の化粧料は、カロテノイドを1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
本開示に係る化粧料におけるカロテノイドの含有率は、みずみずしい使用感及びSPF値がより良好となるという観点から、化粧料の全質量に対して、0.00001質量%~1質量%であることが好ましく、0.00005質量%~0.5質量%がより好ましく、0.0001質量%~0.1質量%がさらに好ましい。
【0056】
〔D:トコフェロール及びジブチルヒドロキシトルエンから選ばれる少なくとも1種〕
本開示の化粧料は、トコフェロール及びジブチルヒドロキシトルエン(以下、BHTとも称する)から選ばれる少なくとも1種(以下、「D成分」とも称する)を含んでもよい。
トコフェロール及びBHTは、いずれも、抗酸化成分であり、皮膚への抗酸化作用を向上させ、カロテノイドの安定化にも寄与するため、含有することが好ましい。トコフェロールは、ビタミンEとして知られる成分である。
本開示の化粧料が、トコフェロール及びBHTの少なくとも1種を含有する場合、化粧料の全質量に対するトコフェロール及びBHTの合計含有率は0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.080質量%以上であることがさらに好ましい。
トコフェロール及びBHTの少なくとも1種の化粧料の含有率の上限値には特に制限はないが、化粧料の全質量に対し、1.5質量%以下とすることができる。
【0057】
〔E:炭素数1~3の低級アルコール〕
本開示に係る化粧料は、さらに、炭素数1~3の低級アルコール(以下、「E成分」とも称する。)を含有することができる。本開示に係る化粧料は、さらに、E成分を含有することで、みずみずしさがより向上する。
【0058】
炭素数1~3の低級アルコールは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
炭素数1~3の低級アルコールとしては、炭素数1~3の一価のアルコールが好ましく、エタノール及びイソプロパノールから選択される少なくとも1種が好ましく、エタノールがより好ましい。
【0059】
本開示に係る化粧料が、炭素数1~3の低級アルコールを含有する場合、炭素数1~3の低級アルコールの含有率は、みずみずしさがより向上するという観点から、水中油型化粧料の全質量に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。
炭素数1~3の低級アルコールの含有率の上限には特に制限はないが、化粧料の安定性の観点から、10質量%以下とすることができる。
【0060】
〔油剤〕
本開示の水中油型乳化組成物は、油剤を含むことが好ましい。
なお、C成分及びD成分は、本開示における油剤に包含されない。
【0061】
油剤としては、例えば、シリコーン油(例えば、ジメチコン、シクロペンタシロキサンなど)、炭化水素油(例えば、流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワラン、ミツロウ、カルナウバロウなど)、オリーブ油、ラノリン、脂肪酸、高級脂肪酸、エステル油(例えば、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルなど)、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、キャンデリラロウ、ジグリセライド、トリグリセライド、ホホバ油、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール等の化粧料に汎用される油分が挙げられる。
【0062】
油剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
油剤の総含有率は、水中油型化粧料の全質量に対して、2質量%~40質量%が好ましく、3質量%~30質量%がより好ましく、5質量%~20質量%がさらに好ましい。
【0063】
〔水〕
本開示に係る化粧料は、水中油型化粧料であり水を含む。
水としては、特に制限はなく、天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水(Milli-Q水等)などを使用することができる。なお、Milli-Q水とは、メルク(株)メルクミリポアのMilli-Q水製造装置により得られる超純水である。
水としては、不純物が少ないという観点から、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、又は超純水が好ましい。
化粧料中における水の含有率は、特に制限されるものではないが、使用感等の観点から、化粧料の全質量に対して、30質量%~99質量%が好ましく、40質量%~90質量%がより好ましく、50質量%~80質量%が好ましい。
【0064】
〔その他の成分〕
本開示に係る化粧料は、上記したその他の成分以外に、本開示の効果を損なわない範囲で、更に必要に応じて、その他の成分を含有することができる。
その他の成分としては、例えば、化粧料に汎用される添加剤が挙げられる。
【0065】
その他の成分として、具体的には、化粧料に使用した際に有用な美容効果(例えば、保湿効果、美白効果、整肌効果等)を示す機能性成分が挙げられる。このような機能性成分としては、例えば、イソノナン酸トリイソデシル等のエモリエント剤;既述のトコフェロール以外の、トコトリエノール等のビタミンEをはじめとするビタミン;コエンザイムQ10等のユビキノン;ヒアルロン酸等の多糖類;セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド5、セラミド6等の活性セラミド;グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミド等のスフィンゴ糖脂質;加水分解コラーゲン、水溶性コラーゲン等のコラーゲン;アセチルヒドロキシプロリン等のアミノ酸、加水分解シロバナルピンタンパクなどが挙げられる。
上記の他、例えば、生薬、消炎剤、殺菌剤、制菌剤等の化粧料に汎用される薬剤、界面活性剤、乳化剤、乳化安定剤、フェノキシエタノール等の防腐剤、酸化防止剤、色剤、キサンタンガム、カルボマー等の親水性増粘剤、pH調整剤、緩衝剤、香料、無機塩又は有機酸塩、EDTA-2Na(エチレンジアミン四酢酸-2ナトリウム塩)等のキレート剤、E成分以外の有機溶剤などもその他の成分として挙げられる。
【0066】
〔化粧料の形態〕
本開示に係る化粧料の形態は、水中油型であり、A成分、B成分及びC成分を含み、A成分の含率量が本開示において規定された範囲であれば、特に限定されず、適用用途に応じて、適宜選択されればよい。
本開示の化粧料がとり得る形態としては、例えば、液状、ゲル状又はクリーム状の形態が挙げられる。
【0067】
本開示に係る発明の化粧料の用途としては、化粧水、美容液、乳液、クリーム等のスキンケア化粧料、日焼け止め化粧料、メークアップ化粧料、防臭化粧料、頭皮頭髪用化粧料等を挙げることができるが、これらに制限されない。
【0068】
〔収容容器〕
本開示に係る化粧料は、化粧料に適用できる各種の収容容器に収容することができる。収容容器に制限はなく、例えば、ガラス又は樹脂製の各種の収容容器を用いることができる。
【0069】
〔水中油型化粧料の製造方法〕
本開示に係る化粧料は、上述したA成分、B成分及びC成分の各成分、並びに、所望により含有される任意成分を用いて、油相組成物と水相組成物と調製し、得られた油相組成物と水相組成物を混合し、常法により乳化することを含む製造方法により、製造することができる。
【0070】
A成分(有機紫外線吸収剤)は、その種類に応じて、油相組成物及び水相組成物のいずれかに含有させればよいが、少なくとも油相組成物に含有されることが好ましい。
B成分(特定重合体)及び所望により用いられるE成分は、水相組成物に含有させることができる。
C成分(カロテノイド)及び所望により用いられるD成分は、油相組成物に含有させることができる。
また、少なくとも水相組成物は水を含む。
【0071】
油相組成物と水相組成物とを組み合わせて化粧料を調製する方法には、特に制限はなく、常法に従って行うことができる。
【0072】
水中油型の乳化物を調製する際の油相組成物と水相組成物との比率は、特に限定されず、油相/水相の質量比率として、例えば、0.1/99.9~50/50が好ましく、0.5/99.5~40/60より好ましく、1/99~30/70が更に好ましい。
【0073】
本開示の化粧料は、有機紫外線吸収剤を多く含みながらも、みずみずしい使用感が得られ、in vivoでのSPF値が良好であることから、日焼け止め化粧料として好適である。
【実施例】
【0074】
以下、本開示に係る化粧料を実施例により更に具体的に説明する。但し、本開示に係る化粧料は、その主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0075】
[実施例1~10、比較例1~3]
〔水中油型化粧料の調製〕
下記に示す方法により、実施例1~10及び比較例1~3の各水中油型化粧料を調製した。調製された水中油型化粧料は、いずれもクリームである。
なお、各表中の処方欄に示す各成分の数値は「質量%」を示す。
【0076】
表1~表3の油相欄に示される有機紫外線吸収剤(A成分)とカロテノイド(C成分)とD成分と油剤とを混合し、油相組成物を調製し、得られた油相組成物を80℃に加熱した。
表1~表3の水相欄に記載の各成分を混合して、水相組成物を調製し、得られた水相組成物を80℃に加熱した。
水相組成物に油相組成物を混合し、80℃に温度を維持しながら、ホモミキサーを用い、回転数:3500rpm(revolutions per minutes)の条件下、15分間、せん断力の付与及び撹拌を行い、乳化物を得た。得られた乳化物を30℃まで冷却し、水中油型化粧料(クリーム)を得た。
【0077】
[評価]
得られた実施例及び比較例の水中油型化粧料(クリーム)について、以下に示す各評価を行った。結果は、表1~表3に示す。
【0078】
(1.使用感(みずみずしさ評価))
実施例及び比較例の各化粧料について、みずみずしさを以下のとおり評価した。
化粧料評価の専門パネリスト10名に、得られた各クリームを、顔面に塗布してもらい、下記評価基準に基づいて、塗布後に感じるみずみずしさを評価してもらった。表には、10名の専門パネリストの評価の平均値を記載した。
評価ランクの平均値が4以上であれば実用上許容でき、4.5以上がより好ましい。
-評価基準-
5:塗布後にみずみずしさを非常に感じる。
4:塗布後にみずみずしさを感じる。
3:塗布後にみずみずしさをやや感じる。
2:塗布後にみずみずしさを殆ど感じない。
1:塗布後にみずみずしさを全く感じない。
【0079】
(2.in vivo SPF試験(SPF値))
in vivo SPF値の測定は、国際標準化機構(ISO)の国際規格であるISO24444に準拠して2007年に制定された日本化粧品工業界SPF測定法基準<2007年改訂版>に基づき行なった。
具体的には、予め定められた波長の紫外光を照射する装置であるキセノンアークソーラーシュミレータを光源として用いて、室内で測定した。
ヒトの背中になにも塗布しない部位と、化粧料(2mg/cm2)を塗布した部位とを設け、紫外線を照射し、照射16時間後の紅斑反応の程度を目視にて判定し、僅かな紅斑を生じる最小の紫外線量(Minimal Erythma Dose MED)を求めた。各被験者のないも塗布しない部位のMED(MEDu)と化粧料を塗布した部位のMED(MEDp)とを測定し、これらの比(MEDp/MEDu)をSPFiとし、全ての被検者のSPFiの平均値をSPF値とした。
SPF値は、50以上であることが好ましく、60以上であることがより好ましい。
【0080】
(3.紫外線遮蔽能評価)
実施例及び比較例の各化粧料について、紫外線(UV-A)及び(UV-B)に対する透過率を以下のとおり測定し、紫外線遮蔽能を評価した。
【0081】
ISO24443のin vitro測定方法に基づき、得られた各化粧料を試験試料として32.5mgを量り取り、PMMAプレート(HELIOPLATE HD6)に、塗布量2mg/cm2で均一に塗布し、測定用試料を作製した。測定用試料はそれぞれ2枚ずつ作製した。
【0082】
(3-1.UV-A遮断能評価)
測定試料について、SPFアナライザー(Labsphere社製、UV-2000S:商品名)を用いて、波長320nm~400nmを指定波長として紫外線透過率を測定し、上記範囲の波長の透過率の平均値を示し、UV-Aの遮蔽能の指標とした。
また、透過率の値は、2つのサンプルに対し、別の5箇所(n=5)において測定し、10箇所の測定値の算術平均値を透過率とし、以下の評価基準にて評価した。
透過率の値が小さいほど、測定波長における光の透過率が低く、UV-A紫外線の遮蔽能に優れる。
UV-A紫外線遮断能について、下記評価基準で評価した。UV-A紫外線に対してはランク「3」、「4」及び「5」であれば、実用上問題のないレベルであり、「4」及び「5」がより好ましい。
-評価基準-
5:指定波長における透過率が10%未満
4:指定波長における透過率が10%以上20%未満
3:指定波長における透過率が20%以上50%未満
2:指定波長における透過率が50%以上80%未満
1:指定波長における透過率が80%以上
【0083】
(3-2.UV-B遮断能評価)
測定試料について、SPFアナライザー(Labsphere社製、UV-2000S:商品名)を用いて、波長280nm~320nmを指定波長として紫外線透過率を測定し、上記範囲の波長の透過率の平均値を示し、UV-Bの遮蔽能の指標とした。
また、透過率の値は、2つのサンプルに対し、別の5箇所(n=5)において測定し、10箇所の測定値の算術平均値を透過率とし、以下の評価基準にて評価した。
透過率の値が小さいほど、測定波長における光の透過率が低く、UV-B紫外線の遮蔽能に優れる。
UV-B紫外線遮断能について、下記評価基準で評価した。UV-B紫外線に対しては、以下の評価基準でランク「3」、「4」及び「5」であれば、実用上問題のないレベルであり、「4」及び「5」がより好ましい。
-評価基準-
5:指定波長における透過率が1%未満
4:指定波長における透過率が1%以上3%未満
3:指定波長における透過率が3%以上10%未満
2:指定波長における透過率が10%以上30%未満
1:指定波長における透過率が30%以上
【0084】
(4.乳化安定性)
実施例及び比較例の各化粧料について、乳化安定性を以下のとおり評価した。
実施例及び比較例の各化粧料それぞれガラス製の容器に封入し、密封した。
40℃の恒温室に30日間保存し、保存中の化粧料の外観を観察し、以下の基準にて評価した。
評価ランクが、「A」であれば実用上許容できる。
-評価基準-
A:保存30日経過した後も、目視の観察によって外観上の変化は認められなかった。
B:保存7日~29日の間に、目視の観察によって解乳による分離が認められた。
C:保存6日以内に、目視の観察によって解乳による分離が認められた。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
表1~表3中、組成の欄の空白は、該当する成分を配合していないことを意味する。
【0089】
表1~表3中の各成分の詳細は、以下のとおりである。
<A成分>
・メトキシケイ皮酸エチルヘキシル(商品名:ユビナール(登録商標)MC-80N、BASF社)
・エチルヘキシルトリアゾン(商品名:ユビナール(登録商標)T-150 BASF社)
・ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(商品名:チノソーブS、BASF社)
・ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(商品名:ユビナール(登録商標)A Plus Glanular、BASF社)
・メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(商品名:チノソーブM、BASF社)
・ジメチコジエチルベンザルマロネート(ポリシリコーン-15、パルソールSLX DSMニュートリションジャパン(株))
<B成分>
・(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー(商品名:Aristoflex AVC)
・(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー(商品名:PEMULEN TR-2、ルーブリゾール社)
・(アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー
・(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー
・(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー(商品名:SEPINOV EMT 10)
・アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカン/ポリソルベート80
【0090】
<C成分>
・アスタキサンチン(商品名:アスタッツ-S(20%アスタキサンチン)、(株)富士フイルムヘルスケアラボラトリー)
・リコピン(商品名:ライコマート(6%リコピン)、LYCORED社製)
<D成分>
・トコフェロール
・BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)
<E成分>
・エタノール(試薬特級、富士フイルム和光純薬(株))
<油剤>
・イソノナン酸イソノニル(商品名:サラコス99、日清オイリオ(株))
・ジメチコン(商品名:KF-96A-5cs、信越シリコーン(株)製)
<乳化剤>
・ミリスチン酸ポリグリセリル-10(HLB=15.7、商品名:サンソフトQ-14S-C)NIKKOL Decaglyn 1-M、太陽化学(株))
・高級アルコール アルキルグルコシド(アルキル(C12-20)グルコシドとC14-22の高級アルコールとの混合物、モンタノブL:商品名、SEPPIC社)
<増粘剤>
・カルボマー(カーボポール981、ルーブリゾール社)
<添加成分>
・防腐剤(フェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセリン)
【0091】
表1~表3に示されるように、実施例1~実施例10の化粧料は、いずれも有機紫外線吸収剤の配合量が多く、SPF値は50以上であり、紫外線遮蔽効果に優れ、且つ、みずみずしい使用感を有することが分かる。
一方、B成分を含まず、公知の乳化剤であるカルボマーを含む比較例2の化粧料では、みずみずしい使用感は得られなかった。
実施例1と比較例1、並びに、実施例3と比較例3との対比より、C成分を含むことにより、化粧料のSPF値が良好になることがわかる。
実施例1と実施例9との対比より、D成分をさらに含むことで、SPF値はより良好になることがわかる。また、実施例1と比較例10との対比より、E成分をさらに含むことでみずみずしい使用感がより良好になることがわかる。
【0092】
なお、実施例、比較例のいずれの化粧料も、乳化安定性に問題がないことから、B成分を乳化剤として含むことで、乳化安定性のみならず、みずみずしい使用感が達成されることがわかる。このため、実施例の化粧料は、いずれも良好なSPF値が達成され、紫外線遮断能とみずみずしい使用感とを両立していることがわかる。