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特許7152375放射線画像処理装置、方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】放射線画像処理装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20221004BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A61B6/00 360Z
A61B6/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019173855
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021049111
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜渦 紳
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0334709(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0143284(US,A1)
【文献】特開2013-212219(JP,A)
【文献】特開2015-97791(JP,A)
【文献】特開2017-185007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の放射線画像から、前記患者の体内に存在すべきではない第1手術用具の領域を検出する第1検出部と、
前記放射線画像から前記患者の体内に存在すべきまたは存在してもよい第2手術用具の領域を検出する第2検出部と、
前記第1手術用具の領域および前記第2手術用具の領域の双方が検出された場合、前記第1手術用具の領域および前記第2手術用具の領域のいずれか一方を強調して、前記放射線画像を表示部に表示する表示制御部とを備えた放射線画像処理装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、記第1手術用具の領域を強調して前記放射線画像を前記表示部に表示する請求項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項3】
前記第1手術用具の領域および前記第2手術用具の領域が検出されなかった場合、前記表示制御部は、その旨の通知を行う請求項1または2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項4】
前記放射線画像は、可搬型の放射線検出器または前記患者に手術を行う手術室に設置された撮影装置により取得されたものである請求項1からのいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項5】
前記第1検出部は、入力された放射線画像における前記第1手術用具の領域を判別するように学習がなされた判別器を有する請求項1からのいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項6】
前記第2検出部は、入力された放射線画像における前記第2手術用具の領域を判別するように学習がなされた判別器を有する請求項1からのいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項7】
前記第1手術用具は、ガーゼ、メス、鋏、ドレイン、針、糸および鉗子の少なくとも1つを含む請求項1からのいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項8】
前記ガーゼは、放射線吸収糸を少なくとも一部に含む請求項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項9】
前記第2手術用具は、ステント、ペースメーカー、尿管カテーテル、ロッドおよびスクリューの少なくとも1つを含む請求項1からのいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項10】
患者の放射線画像から、前記患者の体内に存在すべきではない第1手術用具の領域を検出し、
前記放射線画像から前記患者の体内に存在すべきまたは存在してもよい第2手術用具の領域を検出し、
前記第1手術用具の領域および前記第2手術用具の領域の双方が検出された場合、前記第1手術用具の領域および前記第2手術用具の領域のいずれか一方を強調して、前記放射線画像を表示部に表示する放射線画像処理方法。
【請求項11】
患者の放射線画像から、前記患者の体内に存在すべきではない第1手術用具の領域を検出する手順と、
前記放射線画像から前記患者の体内に存在すべきまたは存在してもよい第2手術用具の領域を検出する手順と、
前記第1手術用具の領域および前記第2手術用具の領域の双方が検出された場合、前記第1手術用具の領域および前記第2手術用具の領域のいずれか一方を強調して、前記放射線画像を表示部に表示する手順とをコンピュータに実行させる放射線画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線画像処理装置、方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者の外科的手術を行う際には、出血を抑えるためのガーゼ、傷口を縫うための糸と針、切開のためのメスおよび鋏、血液を排出するためのドレイン、並びに切開部分を開くための鉗子等の様々な手術用具が使用される。このような手術用具は、手術後に患者の体内に残存していると、重篤な合併症を発生する恐れがある。このため、手術後は患者の体内に手術用具が残存していないことを確認する必要がある。しかしながら、手術後における疲弊した状態での目視による確認では、手術用具の残存を見逃してしまう可能性がある。
【0003】
このため、患者を撮影することにより取得した画像における異物を検出し、異物を強調表示する手法が提案されている。例えば、特許文献1には、患者のCT画像において金属等の異物が検出された場合、検出された異物を画像上に提示する手法が提案されている。また、特許文献2には、カメラにより手術部位のビデオ画像を取得し、ビデオ画像におけるガーゼ等の非組織領域を強調表示する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-202310号公報
【文献】特表2018-517950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、CT画像の撮影は手術室においてできるものではなく、手術後にCT撮影を行うための撮影室に移動して行う必要がある。このため、特許文献1に記載の手法によって、患者の体内に異物が発見されたとしても、異物を取り除くためには再手術が必要となることから、患者の負担が大きい。また、ガーゼは患者の体内に押し込まれるように使用され、さらにガーゼは血に染まる。このため、特許文献2に記載の手法のように、カメラにより取得されたビデオ画像を用いたのでは、ガーゼを発見することは困難である。また、術野は術者により遮られることが多いため、ビデオ画像を取得するために常に術野を確保しておくことは困難である。このため、特許文献2に記載の手法によっては、手術後に手術用具が患者の体内に残存してしまう可能性がある。また、手術用具が体内の残存することは非常に希であるため、手術用具が検出されなかった場合、検出処理が正しく動作しているのか否か、術者が判断することは困難である。
【0006】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであり、手術用具の検出処理が正しく動作していることを確認できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による放射線画像処理装置は、患者の放射線画像から、患者の体内に存在すべきではない第1手術用具の領域を検出する第1検出部と、
放射線画像から患者の体内に存在すべきまたは存在してもよい第2手術用具の領域を検出する第2検出部と、
第1手術用具の領域および第2手術用具の領域の少なくとも一方が検出された場合、検出された手術用具の領域を強調して、放射線画像を表示部に表示する表示制御部とを備える。
【0008】
本開示における「放射線画像」とは、被写体に放射線を照射することにより取得される、被写体の透過像である2次元画像を意味する。放射線画像は、静止画像であってもよく、動画像であってもよい。例えば、放射線画像は、可搬型の放射線検出器を用いて取得することができる。一方、Cアーム型の透過装置により、患者の放射線画像を観察しながら手術を行う場合がある。このような場合は、放射線画像は、Cアーム型の透過装置により取得されたものであってもよい。
【0009】
なお、本開示による放射線画像処理装置においては、表示制御部は、第1手術用具の領域および第2手術用具の領域の双方が検出された場合、第1手術用具の領域および第2手術用具の領域の少なくとも一方を強調して放射線画像を表示部に表示するものであってもよい。
【0010】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、表示制御部は、少なくとも第1手術用具の領域を強調して放射線画像を表示部に表示するものであってもよい。
【0011】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、第1手術用具の領域および第2手術用具の領域が検出されなかった場合、表示制御部は、その旨の通知を行うものであってもよい。
【0012】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、放射線画像は、可搬型の放射線検出器または患者に手術を行う手術室に設置された撮影装置により取得されたものであってもよい。
【0013】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、第1検出部は、入力された放射線画像における第1手術用具の領域を判別するように学習がなされた判別器を有するものであってもよい。
【0014】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、第2検出部は、入力された放射線画像における第2手術用具の領域を判別するように学習がなされた判別器を有するものであってもよい。
【0015】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、第1手術用具は、ガーゼ、メス、鋏、ドレイン、針、糸および鉗子の少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0016】
この場合、ガーゼは、放射線吸収糸を少なくとも一部に含むものであってもよい。
【0017】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、第2手術用具は、ステント、ペースメーカー、尿管カテーテル、ロッドおよびスクリューの少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0018】
本開示による放射線画像処理方法は、患者の放射線画像から、患者の体内に存在すべきではない第1手術用具の領域を検出し、
放射線画像から患者の体内に存在すべきまたは存在してもよい第2手術用具の領域を検出し、
第1手術用具の領域および第2手術用具の領域の少なくとも一方が検出された場合、検出された手術用具の領域を強調して、放射線画像を表示部に表示する。
【0019】
なお、本開示による放射線画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【0020】
本開示による他の放射線画像処理装置は、コンピュータに実行させるための命令を記憶するメモリ、および
記憶された命令を実行するよう構成されたプロセッサを備え、プロセッサは、
患者の放射線画像から、患者の体内に存在すべきではない第1手術用具の領域を検出し、
放射線画像から患者の体内に存在すべきまたは存在してもよい第2手術用具の領域を検出し、
第1手術用具の領域および第2手術用具の領域の少なくとも一方が検出された場合、検出された手術用具の領域を強調して、放射線画像を表示部に表示する処理を実行する。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、手術用具の検出処理が正しく動作していることを確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の実施形態による放射線画像処理装置を適用した放射線画像撮影システムの構成を示す概略ブロック図
図2】本実施形態による放射線画像処理装置の概略構成を示す図
図3】ガーゼを示す図
図4】第1手術用具を含む放射線画像を示す図
図5】第1手術用具が強調された放射線画像の表示画面を示す図
図6】第2手術用具が強調された放射線画像の表示画面を示す図
図7】第1手術用具および第2手術用具の双方が検出された場合に、第1手術用具が強調された放射線画像の表示画面を示す図
図8】第1手術用具が強調された放射線画像の表示画面を示す図
図9】手術用具が検出されなかった場合の通知画面を示す図
図10】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。図1は本開示の実施形態による放射線画像処理装置を適用した放射線画像撮影システムの構成を示す概略ブロック図である。図1に示すように、本実施形態による放射線画像撮影システムは、外科的手術を行った後の、患者である被写体の放射線画像を取得して、放射線画像に含まれる手術用具を検出するためのものである。本実施形態による放射線画像撮影システムは、撮影装置1と、本実施形態による放射線画像処理装置であるコンピュータ2とを備える。
【0024】
撮影装置1は、X線源等の放射線源4から発せられ、被写体Hを透過した放射線を放射線検出器5に照射することにより、手術台3に仰臥した被写体Hの放射線画像G0を取得するための撮影装置である。放射線画像G0は、放射線画像処理装置であるコンピュータ2に入力される。
【0025】
放射線検出器5は、放射線画像の記録と読み出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン/オフさせることによって放射線画像信号が読み出される、いわゆるTFT読出方式のもの、または読取り光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることが望ましいが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0026】
また、放射線検出器5は、可搬型の放射線検出器であり、手術台3に設けられた取付部3Aにより手術台3に取り付けられている。なお、放射線検出器5は、手術台3に固定されたものであってもよい。
【0027】
コンピュータ2には表示部6および入力部7が接続されている。表示部6は、CRT(Cathode Ray Tube)または液晶ディスプレイ等からなり、撮影により取得された放射線画像およびコンピュータ2において行われる処理に必要な各種入力の補助を行う。入力部7は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等からなる。
【0028】
コンピュータ2には、本実施形態の放射線画像処理プログラムがインストールされている。本実施形態においては、コンピュータ2は、操作者が直接操作するワークステーションまたはパーソナルコンピュータでもよいし、それらとネットワークを介して接続されたサーバコンピュータでもよい。放射線画像処理プログラムは、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、またはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じてコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。もしくは、DVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。
【0029】
図2は、本実施形態において、コンピュータ2に放射線画像処理プログラム等をインストールすることにより実現される放射線画像処理装置の概略構成を示す図である。図2に示すように、放射線画像処理装置は、標準的なコンピュータの構成として、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12およびストレージ13を備える。
【0030】
ストレージ13は、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)等のストレージデバイスからなり、撮影装置1の各部を駆動するための撮影プログラムおよび放射線画像処理プログラム等を含む各種情報が記憶されている。また、撮影により取得された放射線画像も記憶される。
【0031】
メモリ12には、各種処理をCPU11に実行させるために、ストレージ13に記憶された放射線画像処理プログラム等が一時的に記憶される。放射線画像処理プログラムは、CPU11に実行させる処理として、放射線源4から発せられて被写体Hを透過した放射線を、放射線検出器5に照射することにより放射線画像G0を取得する画像取得処理、放射線画像における第1手術用具の領域を検出する第1検出処理、放射線画像における第2手術用具の領域を検出する第2検出処理、並びに第1手術用具および第2手術用具の少なくとも一方が検出された場合、検出された手術用具の領域を強調して、放射線画像を表示部6に表示する表示制御処理を規定する。
【0032】
そして、CPU11が放射線画像処理プログラムに従い上記の処理を実行することで、コンピュータ2は、画像取得部20、第1検出部21、第2検出部22および表示制御部23として機能する。
【0033】
なお、第1手術用具とは、手術後に患者の体内に存在すべきではない手術用具である。例えば、第1手術用具としては、ガーゼ、メス、鋏、ドレイン、針、糸および鉗子等が挙げられる。第2手術用具とは、手術後に患者の体内に存在すべきまたは存在してもよい手術用具である。例えば、第2手術用具としては、ステント、ペースメーカー、尿管カテーテル、ロッドおよびスクリュー等が挙げられる。ロッドとは、骨折した骨同士をつなぎ合わせるための棒状の金属部品である。スクリューとは、ロッドを骨に取り付けるための金属部品である。
【0034】
画像取得部20は、放射線源4を駆動して手術後の被写体Hに放射線を照射し、被写体Hを透過した放射線を放射線検出器5により検出して、放射線画像G0を取得する。この際、画像取得部20は、放射線源4において使用するターゲットおよびフィルタの種類、撮影線量、管電圧およびSID等の撮影条件を設定する。
【0035】
第1検出部21は、放射線画像G0における第1手術用具の領域を検出する。このために、第1検出部21は、放射線画像G0が入力されると、放射線画像G0に含まれる第1手術用具の領域を判別する第1判別器31が適用されてなる。これにより、第1検出部21に対象の放射線画像G0が入力されると、第1検出部21は、第1判別器31に放射線画像G0に含まれる第1手術用具の領域を抽出させることにより、第1手術用具の領域を検出する。
【0036】
ここで、第1判別器31は、第1手術用具を含む放射線画像を教師データとして、機械学習モデルを学習することにより構築されてなる。なお、本実施形態においては、第1手術用具はガーゼであるものとする。
【0037】
図3はガーゼを示す図である。図3に示すように、ガーゼ40は綿糸が平織りされてなる生地であり、その一部に放射線吸収糸41が織り込まれている。綿糸は放射線を透過するが、放射線吸収糸41は放射線を吸収する。このため、ガーゼ40の放射線画像には、線状の放射線吸収糸41のみが含まれる。ここで、手術の際には、出血を吸収するために、ガーゼ40は丸められて人体内に挿入される。このため、人体内にガーゼ40が存在する場合、図4に示すように、放射線画像G0に含まれるガーゼ40の像であるガーゼ像42は、放射線吸収糸41が丸まった状態を表すものとなる。
【0038】
第2検出部22は、放射線画像G0における第2手術用具の領域を検出する。このために、第2検出部22は、放射線画像G0が入力されると、放射線画像G0に含まれる第2手術用具の領域を判別する第2判別器32が適用されてなる。これにより、第2検出部22に対象の放射線画像G0が入力されると、第2検出部22は、第2判別器32に放射線画像G0に含まれる第2手術用具の領域を抽出させることにより、第2手術用具の領域を検出する。
【0039】
ここで、第2判別器32は、第2手術用具を含む放射線画像を教師データとして、機械学習モデルを学習することにより構築されてなる。なお、本実施形態においては、第2手術用具は、心臓の冠動脈に挿入されるステントであるものとする。
【0040】
表示制御部23は、第1手術用具の領域および第2手術用具の領域の少なくとも一方が検出された場合、検出された手術用具の領域を強調して、放射線画像G0を表示部6に表示する。具体的には、第1手術用具のみが検出された場合、表示制御部23は、第1手術用具の領域を強調して放射線画像G0を表示部6に表示する。図5は第1手術用具の領域を強調した放射線画像の表示画面を示す図である。図5に示すように、表示画面50には放射線画像G0が表示されており、放射線画像G0においては、第1手術用具であるガーゼの領域51が検出されている。そして、ガーゼの領域51が枠52に囲まれることにより、領域51が強調されている。
【0041】
一方、第2手術用具のみが検出された場合、表示制御部23は、第2手術用具の領域を強調して放射線画像G0を表示部6に表示する。図6は第2手術用具の領域を強調した放射線画像の表示画面を示す図である。図6に示すように、表示画面60には放射線画像G0が表示されており、放射線画像G0においては、第2手術用具であるステントの領域61が検出されている。そして、ステントの領域61が枠62に囲まれることにより、領域1が強調されている。
【0042】
また、第1手術用具の領域および第2手術用具の領域の双方が検出された場合、表示制御部23は、第1手術用具の領域のみを強調して放射線画像G0を表示部6に表示する。図7は第1手術用具の領域のみを強調した放射線画像の表示画面を示す図である。図7に示すように、表示画面70には放射線画像G0が表示されており、放射線画像G0においては、第1手術用具であるガーゼの領域51および第2手術用具であるステントの領域61が検出されている。そして、ガーゼの領域51のみが枠52に囲まれることにより、領域51のみが強調されている。
【0043】
なお、手術用具の領域を強調する際には、枠の付与に代えて、検出された手術用具の領域に色を付与する等してもよい。また、図8に示すように、第1手術用具の領域51付近に矢印および星印等のマーク53を付与することにより検出された第1手術用具の領域を強調してもよい。
【0044】
なお、第1手術用具の領域および第2手術用具の双方の領域が検出されなかった場合、表示制御部23は、その旨の通知を行う。図9は、第1手術器具の領域および第2手術用具の領域が検出されなかった場合の通知画面を示す図である。図9に示すように、表示画面80には、放射線画像G0に重畳して、「手術用具は検出されませんでした。」のメッセージ81が表示される。
【0045】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。図10は本実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。画像取得部20が、検出対象となる放射線画像G0を取得し(ステップST1)、第1検出部21が、放射線画像G0から第1手術用具の領域を検出する第1検出処理を行う(ステップST2)。また、第2検出部22が、放射線画像G0から第2手術用具の領域を検出する第2検出処理を行う(ステップST3)。
【0046】
次いで、表示制御部23が、放射線画像G0から第1手術用具の領域が検出されたか否かを判定する(ステップST4)。ステップST4が肯定されると、表示制御部23は、放射線画像G0から第2手術用具の領域が検出されたか否かを判定する(ステップST5)。ステップST5が肯定されると、放射線画像G0からは第1手術用具の領域および第2手術用具の領域の双方が検出されていることから、表示制御部23は、第1手術用具の領域をのみ強調した放射線画像G0を表示部6に表示し(ステップST6)、処理を終了する。ステップST5が否定されると、放射線画像G0からは第1手術用具の領域のみが検出されていることから、表示制御部23は、第1手術用具の領域を強調した放射線画像G0を表示部6に表示し(ステップST7)、処理を終了する。
【0047】
一方、ステップST4が否定されると、表示制御部23は、放射線画像G0から第2手術用具の領域が検出されたか否かを判定する(ステップST8)。ステップST8が肯定されると、放射線画像G0からは第2手術用具の領域のみが検出されていることから、表示制御部23は、第2手術用具の領域を強調した放射線画像G0を表示部6に表示し(ステップST9)、処理を終了する。ステップST8が否定されると、放射線画像G0からは第1手術用具の領域および第2手術用具の領域の双方が検出されなかったことから、表示制御部23は、手術用具の領域が検出されなかった旨の通知を行い(ステップST10)、処理を終了する。
【0048】
このように、本実施形態においては、患者の放射線画像G0において、第1手術用具の領域および第2手術用具の領域の少なくとも一方が検出された場合、検出された手術用具の領域を強調して、放射線画像G0を表示するようにした。
【0049】
ここで、手術用具には、手術後に患者の体内に存在すべきでない第1手術用具と、患者の体内に存在すべきまたは存在してもよい第2手術用具とがある。第2手術用具を患者の体内に埋め込んだり、取り付けたりする手術を行った場合、第2手術用具の領域のみが検出されるべきである。本実施形態によれば、第2手術用具の領域を検出し、第2手術用具の領域のみが検出された場合には、第2手術用具の領域が強調されて表示されることとなる。
【0050】
これにより、検出処理が正しく動作して第2手術用具の領域が検出されていれば、第2手術用具の領域が強調された放射線画像G0が表示される。一方、検出処理が正しく動作していない場合には、第2手術用具の領域は検出されないため、第2手術用具の領域も強調表示されない。したがって、表示された放射線画像G0を見れば、術者は放射線画像G0における第2手術用具の領域の強調の有無により、検出処理が正しく動作しているか否かを容易に確認することができる。
【0051】
なお、検出処理が正しく動作していない場合には、より大画面の表示装置に放射線画像G0を表示する等して、第1手術用具の存在の有無をより詳細に確認するようにすればよい。
【0052】
また、本実施形態においては、放射線画像G0において手術用具の領域が検出されなかった場合には、その旨の通知を行うようにした。このため、術者は、放射線画像G0における第2手術用具の領域の検出の有無をより容易に確認することができる。
【0053】
なお、上記実施形態においては、第1検出部21および第2検出部22において、第1判別器31および第2判別器32をそれぞれを用いて第1および第2手術用具を検出しているが、これに限定されるものではない。放射線画像G0のヒストグラムを求め、ヒストグラムに第1および第2手術用具の信号値が含まれるか否かを判定することによって、放射線画像G0から第1および第2手術用具の領域を検出するようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、第1手術用具の領域および第2手術用具の領域の双方が検出された場合、表示制御部23は、第1手術用具の領域のみを強調して放射線画像G0を表示部6に表示しているが、第2手術用具のみを強調して放射線画像G0を表示部6に表示してもよい。また、第1手術用具の領域および第2手術用具の領域の双方を強調してもよい。
【0055】
また、上記実施形態においては、放射線画像G0を静止画像としているが、これに限定されるものではない。放射線画像G0は動画像であってもよい。この場合、動画像である放射線画像G0の各フレームに対して、第1手術用具および第2手術用具の領域を検出する処理が行われることとなる。
【0056】
また、上記実施形態においては、放射線源4と放射線検出器5とにより被写体Hの放射線画像G0を取得しているが、これに限定されるものではない。例えば、Cアーム型の透過装置により、患者の放射線画像G0を観察しながら手術を行う場合がある。このような場合は、放射線画像G0は、Cアーム型の透過装置により取得されたものであってもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、第1手術用具の領域および第2手術用具の領域の少なくとも一方が検出された放射線画像G0を、画像保管サーバ等の外部装置に送信する場合がある。この場合、手術用具の領域が検出されたことを表す情報を放射線画像G0に付与するようにしてもよい。例えば、画像データの格納形式および装置間の通信を規定する、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)等のプロトコルにおいては、放射線画像G0に情報を付与することができる。このため、DICOMのプロトコルを用いて、第1手術用具の領域および第2手術用具の領域の少なくとも一方が検出されたことを放射線画像G0に付与するようにすればよい。
【0058】
また、上記実施形態においては、第1手術用具としてガーゼ40を第1検出処理の対象としているが、これに限定されるものではない。メス、鋏、ドレイン、針、糸および鉗子等の手術の際に使用され、手術後には患者の体内に存在すべきではない、任意の手術用具を第1手術用具として第1検出処理の対象とすることができる。この場合、第1判別器31は対象となる第1手術用具を判別するように学習すればよい。なお、第1判別器31を複数チャンネルの検出を行うように学習することにより、1種類の第1手術用具のみならず、複数種類の第1手術用具を判別するように、第1判別器31を構築することも可能である。
【0059】
また、上記実施形態においては、第2手術用具としてステントを第2検出処理の対象としているが、これに限定されるものではない。ペースメーカー、尿管カテーテル、ロッドおよびスクリュー等の手術の際に使用され、手術後には患者の体内に存在すべきまたは存在してもよい任意の手術用具を、第2手術用具として第2検出処理の対象とすることができる。この場合、第2判別器32は対象となる第2手術用具を判別するように学習すればよい。なお、第2判別器32を複数チャンネルの検出を行うように学習することにより、1種類の第2手術用具のみならず、複数種類の第2手術用具を判別するように、第2判別器32を構築することも可能である。
【0060】
また、上記実施形態においては、放射線は、とくに限定されるものではなく、X線の他、α線またはγ線等を適用することができる。
【0061】
また、上記実施形態において、例えば、画像取得部20、第1検出部21,第2検出部22および表示制御部23といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0062】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせまたはCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0063】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアとの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0064】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 撮影装置
2 コンピュータ
3 手術台
3A 取付部
4 放射線源
5 放射線検出器
6 表示部
7 入力部
11 CPU
12 メモリ
13 ストレージ
20 画像取得部
21 第1検出部
22 第2検出部
23 表示制御部
31 第1判別器
32 第2判別器
40 ガーゼ
41 放射線吸収糸
42 ガーゼ像
50,60,70,80 表示画面
51 第1手術用具(ガーゼ)の領域
52,62 枠
53 マーク
61 第2手術用具(ステント)の領域
81 メッセージ
H 被写体
図1
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図10