(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】放射線画像処理装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20221004BHJP
A61B 6/12 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A61B6/00 360Z
A61B6/12
(21)【出願番号】P 2019177642
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜渦 紳
(72)【発明者】
【氏名】笹田 良治
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0143284(US,A1)
【文献】特開2013-212219(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0334709(US,A1)
【文献】特開2017-185007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の放射線画像における手術用具の領域を検出する検出部と、
前記手術用具が検出された場合、該検出された手術用具の領域を強調した前記放射線画像を表示部に表示する表示制御部と
、
前記放射線画像に対して前記手術用具の確認用の画像処理を行うことにより処理済み放射線画像を導出する画像処理部とを備え
た放射線画像処理装置であって、
前記表示制御部は、前記手術用具の確認用の画像処理前の前記放射線画像を前記表示部に表示し、
前記手術用具の領域の検出の指示により、前記画像処理部が前記処理済み放射線画像を導出し、前記検出部が前記手術用具の領域を検出する処理を開始し、
前記処理済み放射線画像が導出されると、前記表示制御部が、前記画像処理前の放射線画像に代えて、または前記画像処理前の放射線画像と併せて、前記処理済み放射線画像を前記表示部に表示し、前記手術用具の領域を検出する処理が終了した後に、前記手術用具の領域を強調した前記放射線画像を前記表示部に表示する放射線画像処理装置。
【請求項2】
前記表示制御部が前記表示部に表示する、前記検出された手術用具の領域を強調した放射線画像は、前記処理済み放射線画像である請求項
1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記表示部よりもサイズが大きいおよび/または前記表示部よりも高解像度の他の表示部に、前記検出された手術用具の領域を強調した前記放射線画像をさらに表示する請求項1
または2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記表示部よりもサイズが大きいおよび/または前記表示部よりも高解像度の他の表示部に、前記画像処理前の放射線画像、前記処理済み放射線画像および前記検出された手術用具の領域を強調した前記放射線画像をさらに表示する請求項1
から3のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項5】
前記手術用具が検出されなかった場合、前記表示制御部は、その旨の通知を行う請求項1から
4のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項6】
前記放射線画像は、可搬型の放射線検出器または前記患者に手術を行う手術室に設置された撮影装置により取得されたものである請求項1から
5のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項7】
前記検出部は、入力された放射線画像における前記手術用具の領域を判別するように学習がなされた判別器を有する請求項1から
6のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項8】
前記手術用具は、ガーゼ、メス、鋏、ドレイン、針、糸および鉗子の少なくとも1つを含む請求項1から
7のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項9】
前記ガーゼは、放射線吸収糸を少なくとも一部に含む請求項
8に記載の放射線画像処理装置。
【請求項10】
患者の放射線画像における手術用具の領域を検出し、
前記手術用具が検出された場合、該検出された手術用具の領域を強調して、前記放射線画像を表示部に表示
し、
前記放射線画像に対して前記手術用具の確認用の画像処理を行うことにより処理済み放射線画像を導出する放射線画像処理方法であって、
前記手術用具の確認用の画像処理前の前記放射線画像を前記表示部に表示し、
前記手術用具の領域の検出の指示により前記処理済み放射線画像を導出し、かつ前記手術用具の領域を検出する処理を開始し、
前記処理済み放射線画像が導出されると、前記画像処理前の放射線画像に代えて、または前記画像処理前の放射線画像と併せて、前記処理済み放射線画像を前記表示部に表示し、前記手術用具の領域を検出する処理が終了した後に、前記手術用具の領域を強調した前記放射線画像を前記表示部に表示する放射線画像処理方法。
【請求項11】
患者の放射線画像における手術用具の領域を検出する手順と、
前記手術用具が検出された場合、該検出された手術用具の領域を強調して、前記放射線画像を表示部に表示する手順と
、
前記放射線画像に対して前記手術用具の確認用の画像処理を行うことにより処理済み放射線画像を導出する手順とをコンピュータに実行させる放射線画像処理プログラムであって、
前記手術用具の確認用の画像処理前の前記放射線画像を前記表示部に表示する手順と、
前記手術用具の領域の検出の指示により前記処理済み放射線画像を導出し、かつ前記手術用具の領域を検出する処理を開始する手順と、
前記処理済み放射線画像が導出されると、前記画像処理前の放射線画像に代えて、または前記画像処理前の放射線画像と併せて、前記処理済み放射線画像を前記表示部に表示し、前記手術用具の領域を検出する処理が終了した後に、前記手術用具の領域を強調した前記放射線画像を前記表示部に表示する手順とをコンピュータに実行させる放射線画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線画像処理装置、方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者の外科的手術を行う際には、出血を抑えるためのガーゼ、傷口を縫うための糸と針、切開のためのメスおよび鋏、血液を排出するためのドレイン、並びに切開部分を開くための鉗子等の様々な手術用具が使用される。このような手術用具は、手術後に患者の体内に残存していると、重篤な合併症を発生する恐れがある。このため、手術後は患者の体内に手術用具が残存していないことを確認する必要がある。しかしながら、手術後における疲弊した状態での目視による確認では、手術用具の残存を見逃してしまう可能性がある。
【0003】
このため、患者を撮影することにより取得した画像における異物を検出し、異物を強調表示する手法が提案されている。例えば、特許文献1には、患者のCT画像において金属等の異物が検出された場合、検出された異物を画像上に提示する手法が提案されている。また、特許文献2には、カメラにより手術部位のビデオ画像を取得し、ビデオ画像におけるガーゼ等の非組織領域を強調表示する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-202310号公報
【文献】特表2018-517950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、CT画像の撮影は手術室においてできるものではなく、手術後にCT撮影を行うための撮影室に移動して行う必要がある。このため、特許文献1に記載の手法によって、患者の体内に異物が発見されたとしても、異物を取り除くためには再手術が必要となることから、患者の負担が大きい。また、ガーゼは患者の体内に押し込まれるように使用され、さらにガーゼは血に染まる。このため、特許文献2に記載の手法のように、カメラにより取得されたビデオ画像を用いたのでは、ガーゼを発見することは困難である。また、術野は術者により遮られることが多いため、ビデオ画像を取得するために常に術野を確保しておくことは困難である。このため、特許文献2に記載の手法によっては、手術後に手術用具が患者の体内に残存してしまう可能性がある。
【0006】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであり、患者に負担をかけることなく、手術後における手術用具の患者体内の残存を確実に防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による放射線画像処理装置は、患者の放射線画像における手術用具の領域を検出する検出部と、
手術用具が検出された場合、検出された手術用具の領域を強調して、放射線画像を表示部に表示する表示制御部とを備える。
【0008】
本開示における「放射線画像」とは、被写体に放射線を照射することにより取得される、被写体の透過像である2次元画像を意味する。放射線画像は、静止画像であってもよく、動画像であってもよい。例えば、放射線画像は、可搬型の放射線検出器を用いて取得することができる。一方、Cアーム型の透過装置により、患者の放射線画像を観察しながら手術を行う場合がある。このような場合は、放射線画像は、Cアーム型の透過装置により取得されたものであってもよい。
【0009】
なお、本開示による放射線画像処理装置においては、放射線画像に対して手術用具の確認用の画像処理を行うことにより処理済み放射線画像を導出する画像処理部をさらに備えるものであってもよい。
【0010】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、表示制御部が表示部に表示する、検出された手術用具の領域を強調した放射線画像は、処理済み放射線画像であってもよい。
【0011】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、表示制御部は、手術用具の確認用の画像処理前の放射線画像を表示部に表示し、
手術用具の領域の検出の指示により、画像処理部が処理済み放射線画像を導出し、検出部が手術用具の領域を検出する処理を開始し、
処理済み放射線画像が導出されると、表示制御部が、画像処理前の放射線画像に代えて、または画像処理前の放射線画像と併せて、処理済み放射線画像を表示部に表示し、手術用具の領域を検出する処理が終了した後に、手術用具の領域を強調した放射線画像を表示部に表示するものであってもよい。
【0012】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、表示制御部は、表示部よりもサイズが大きいおよび/または表示部よりも高解像度の他の表示部に、検出された手術用具の領域を強調した放射線画像をさらに表示するものであってもよい。
【0013】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、表示制御部は、表示部よりもサイズが大きいおよび/または表示部よりも高解像度の他の表示部に、画像処理前の放射線画像、処理済み放射線画像および検出された手術用具の領域を強調した放射線画像をさらに表示するものであってもよい。
【0014】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、手術用具が検出されなかった場合、表示制御部は、その旨の通知を行うようにしてもよい。
【0015】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、放射線画像は、可搬型の放射線検出器または患者に手術を行う手術室に設置された撮影装置により取得されたものであってもよい。
【0016】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、検出部は、入力された放射線画像における手術用具の領域を判別するように学習がなされた判別器を有するものであってもよい。
【0017】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、手術用具は、ガーゼ、メス、鋏、ドレイン、針、糸および鉗子の少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0018】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、ガーゼは、放射線吸収糸を少なくとも一部に含むものであってもよい。
【0019】
本開示による放射線画像処理方法は、患者の放射線画像における手術用具の領域を検出し、
手術用具が検出された場合、検出された手術用具の領域を強調して、放射線画像を表示部に表示する。
【0020】
なお、本開示による放射線画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【0021】
本開示による他の放射線画像処理装置は、コンピュータに実行させるための命令を記憶するメモリ、および
記憶された命令を実行するよう構成されたプロセッサを備え、プロセッサは、
患者の放射線画像における手術用具の領域を検出し、
手術用具が検出された場合、検出された手術用具の領域を強調して、放射線画像を表示部に表示する処理を実行する。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、患者に負担をかけることなく、手術後における手術用具の患者体内の残存を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の第1の実施形態による放射線画像処理装置を適用した放射線画像撮影システムの構成を示す概略ブロック図
【
図2】放射線画像管理システムの構成を示す概略ブロック図
【
図3】第1の実施形態による放射線画像処理装置の概略構成を示す図である。
【
図6】手術用具の領域を強調した放射線画像の表示画面を示す図
【
図7】手術用具の領域を強調した放射線画像の表示画面を示す図
【
図8】手術用具の領域を強調した放射線画像の表示画面を示す図
【
図9】手術器具の領域が検出されなかった場合の通知画面を示す図
【
図10】第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【
図11】第2の実施形態による放射線画像処理装置の概略構成を示す図である。
【
図12】第2の実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【
図15】手術用具の領域が
強調された処理済み放射線画像の表示画面を示す図
【
図16】放射線画像および処理済み放射線画像を併せて表示する表示画面を示す図
【
図17】第3の実施形態による放射線画像処理装置の概略構成を示す図である。
【
図18】第3の実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【
図19】第4の実施形態による放射線画像処理装置の概略構成を示す図である。
【
図20】第4の実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。
図1は、本開示の第1の実施形態による放射線画像処理装置を適用した放射線画像撮影システムの構成を示す概略ブロック図である。
図1に示すように、第1の実施形態による放射線画像撮影システム100は、外科的手術を行った後の、患者である被写体の放射線画像を取得して、放射線画像に含まれる手術用具を検出するためのものである。本実施形態による放射線画像撮影システム100は、撮影装置1と、本実施形態による放射線画像処理装置であるコンソール2とを備える。
【0025】
撮影装置1は、X線源等の放射線源4から発せられ、被写体Hを透過した放射線を放射線検出器5に照射することにより、手術台3に仰臥した被写体Hの放射線画像G0を取得するための撮影装置である。放射線画像G0は、放射線画像処理装置であるコンソール2に入力される。
【0026】
放射線検出器5は、放射線画像の記録と読み出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン/オフさせることによって放射線画像信号が読み出される、いわゆるTFT読出方式のもの、または読取り光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることが望ましいが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0027】
また、放射線検出器5は、可搬型の放射線検出器であり、手術台3に設けられた取付部3Aにより手術台3に取り付けられている。なお、放射線検出器5は、手術台3に固定されたものであってもよい。
【0028】
コンソール2には表示部6および入力部7が接続されている。表示部6は、CRT(Cathode Ray Tube)または液晶ディスプレイ等からなり、撮影により取得された放射線画像およびコンソール2において行われる処理に必要な各種入力の補助を行う。入力部7は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等からなる。
【0029】
コンソール2には、本実施形態の放射線画像処理プログラムがインストールされている。本実施形態においては、コンソール2は、操作者が直接操作するワークステーションまたはパーソナルコンピュータでもよいし、それらとネットワークを介して接続されたサーバコンピュータでもよい。放射線画像処理プログラムは、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、またはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じてコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。もしくは、DVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。
【0030】
なお、本実施形態による放射線画像撮影システムは、
図2に示す放射線画像管理システムの一部を構成する。
図2に示すように、本実施形態の放射線画像管理システムは、撮影装置1およびコンソール2を有する放射線画像撮影システム100、およびPACS(Picture Archiving and Communication System:画像保存通信システム)101が、ネットワーク102を介して通信可能に接続されている。
【0031】
図3は、コンソール2に第1の実施形態による放射線画像処理プログラム等をインストールすることにより実現される放射線画像処理装置の概略構成を示す図である。
図3に示すように、放射線画像処理装置は、標準的なコンピュータの構成として、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12およびストレージ13を備える。
【0032】
ストレージ13は、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)等のストレージデバイスからなり、撮影装置1の各部を駆動するための撮影プログラムおよび放射線画像処理プログラム等を含む各種情報が記憶されている。また、撮影により取得された放射線画像も記憶される。
【0033】
メモリ12には、各種処理をCPU11に実行させるために、ストレージ13に記憶された放射線画像処理プログラム等が一時的に記憶される。放射線画像処理プログラムは、CPU11に実行させる処理として、放射線源4から発せられて被写体Hを透過した放射線を、放射線検出器5に照射することにより放射線画像G0を取得する画像取得処理、放射線画像における手術用具の領域を検出する検出処理、および手術用具が検出された場合、検出された手術用具の領域を強調して、放射線画像を表示部6に表示する表示制御処理を規定する。
【0034】
そして、CPU11が放射線画像処理プログラムに従い上記の処理を実行することで、コンソール2は、画像取得部21、検出部22および表示制御部23として機能する。
【0035】
画像取得部21は、放射線源4を駆動して手術後の被写体Hに放射線を照射し、被写体Hを透過した放射線を放射線検出器5により検出して、放射線画像G0を取得する。この際、画像取得部21は、放射線源4において使用するターゲットおよびフィルタの種類、撮影線量、管電圧およびSID等の撮影条件を設定する。
【0036】
検出部22は、放射線画像G0における手術用具の領域を検出する。このために、検出部22は、放射線画像G0が入力されると、放射線画像G0に含まれる手術用具の領域を判別する判別器30が適用されてなる。これにより、検出部22に対象の放射線画像G0が入力されると、検出部22は、判別器30に放射線画像G0に含まれる手術用具の領域を判別させることにより、手術用具の領域を検出する。
【0037】
ここで、判別器30は、手術用具を含む放射線画像を教師データとして、機械学習モデルを学習することにより構築されてなる。なお、本実施形態においては、手術用具としてガーゼを用いるものとする。
【0038】
図4はガーゼを示す図である。
図4に示すように、ガーゼ40は綿糸が平織りされてなる生地であり、その一部に放射線吸収糸41が織り込まれている。綿糸は放射線を透過するが、放射線吸収糸41は放射線を吸収する。このため、ガーゼ40の放射線画像には、線状の放射線吸収糸41のみが含まれる。ここで、手術の際には、出血を吸収するために、ガーゼ40は丸められて人体内に挿入される。このため、人体内にガーゼ40が存在する場合、
図5に示すように、放射線画像G0に含まれるガーゼ40の像であるガーゼ像42は、放射線吸収糸41が丸まった状態を表すものとなる。
【0039】
表示制御部23は、検出部22が放射線画像G0から手術用具の領域を検出した場合に、手術用具の領域を強調して、放射線画像G0を表示部6に表示する。
図6は、手術用具の領域を強調した放射線画像の表示画面を示す図である。
図6に示すように、表示画面50には、放射線画像G0に含まれる手術用具の領域にマスク51が重畳されることにより、手術用具の領域を強調した放射線画像GH0が表示されている。なお、
図6においてはマスク51は白抜きにて示しているが、色を付与してもよい。また、マスク51の付与に代えて、
図7に示すように、手術用具の領域付近に矢印および星印等のマーク52を重畳したり、
図8に示すように、手術器具の領域を枠53で囲んだりすることにより、手術用具の領域を強調してもよい。ここで、手術用具の領域を強調した放射線画像GH0は、上述したマスク51、マーク52および枠53(以下、マスク等とする)を、放射線画像G0に重畳することにより表示部6に表示すればよいが、放射線画像G0に対してマスク等を付与する加工を施すことにより、手術用具の領域を強調した放射線画像GH0を別途生成して、表示部6に表示するようにしてもよい。
【0040】
なお、手術用具の領域を強調した放射線画像GH0を表示部6に表示する際には、表示された放射線画像GH0を観察しやすくするために、階調変換処理および濃度変換処理等の表示用の画像処理を放射線画像G0に対して施すようにしてもよい。表示用の画像処理は、表示制御部23が行ってもよく、表示用の画像処理を行うための画像処理部を別途設けるようにしてもよい。また、放射線画像G0に対して表示用の画像処理を行う場合、検出部22においては、表示用の画像処理が施された放射線画像G0から手術用具の領域を検出するようにしてもよい。
【0041】
なお、検出部22が放射線画像G0から手術用具の領域を検出しなかった場合、表示制御部23は、その旨の通知を行う。
図9は、手術器具が検出されなかった場合の通知画面を示す図である。図
9に示すように、通知画面60には、放射線画像G0に重畳して、「手術用具は検出されませんでした。」のメッセージ61が表示される。なお、メッセージ61に代えて、手術用具が検出されなかったことを表すアイコンおよびマーク等を表示してもよい。また、入力部7からの指示により、メッセージ61の表示のオンおよびオフを切り替え可能としてもよい。
【0042】
次いで、第1の実施形態における手術用具の領域の検出処理について説明する。
図10は第1の実施形態において行われる検出処理のフローチャートである。画像取得部21が、検出対象となる放射線画像G0を取得し(ステップST1)、検出部22が、放射線画像G0から手術用具の領域を検出する(ステップST2)。
【0043】
次いで、表示制御部23が、放射線画像G0から手術用具の領域が検出されたか否かを判定する(ステップST3)。ステップST3が肯定されると、表示制御部23は、手術用具の領域を強調した放射線画像G0を表示部6に表示し(手術用具を強調した放射線画像表示;ステップST4)、処理を終了する。一方、ステップST3が否定されると、表示制御部23は、手術用具の領域が検出されなかった旨の通知を行い(手術用具が検出されなかった旨の通知;ステップST5)、処理を終了する。
【0044】
このように、第1の実施形態においては、患者の放射線画像G0において手術用具の領域が検出された場合、検出された手術用具の領域を強調して、放射線画像G0を表示するようにした。ここで、放射線画像G0は、患者が手術室に居る状態で取得することができる。また、放射線画像G0は透過画像であるため、カメラより取得された画像と比較して、術野に埋もれた手術用具を検出することが容易である。このため、本実施形態によれば、患者に負担をかけることなく、手術後における手術用具の患者体内の残存を確実に防止できる。
【0045】
また、第1の実施形態においては、放射線画像G0において手術用具の領域が検出されなかった場合には、その旨の通知を行うようにした。このため、術者は、患者の体内に手術用具が残っていないことを認識することができる。
【0046】
次いで、本開示の第2の実施形態について説明する。
図11は、コンソール2に第2の実施形態による放射線画像処理プログラム等をインストールすることにより実現される第2の実施形態による放射線画像処理装置の概略構成を示す図である。なお、
図11において
図3と同一の構成については、同一の参照番号を付与し、詳細な説明は省略する。
図11に示すように、第2の実施形態による放射線画像処理装置は、放射線画像G0に対して手術用具確認用の画像処理を行うことにより、処理済み放射線画像G1を導出する画像処理部24を備えた点が第1の実施形態と異なる。
【0047】
画像処理部24は、放射線画像G0に対して、手術用具の確認用の画像処理を行う。手術用具の確認用の画像処理としては、放射線画像G0の鮮鋭度を強調する処理、並びに放射線画像G0における高濃度成分が飽和する黒つぶれ、および低濃度成分が飽和する白飛びを解消するために、放射線画像G0の階調を変換する階調変換処理等が挙げられる。
【0048】
なお、第2の実施形態においては、検出部22は、放射線画像G0から手術用具の領域を検出してもよいが、処理済み放射線画像G1から手術用具の領域を検出してもよい。ここでは、放射線画像G0から手術用具の領域を検出するものとする。
【0049】
また、第2の実施形態においては、放射線画像G0および処理済み放射線画像G1の表示を以下のようにして行う。
図12は第2の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、画像取得部21が、検出対象となる放射線画像G0を取得し(ステップST11)、表示制御部23が、放射線画像G0を表示部6に表示する(ステップST12)。
図13は放射線画像G0の表示画面を示す図である。
図13に示すように、表示画面70には、放射線画像G0が表示されている。また、表示画面70には、手術用具の領域の検出の指示を受け付けるための検出ボタン71も表示されている。なお、放射線画像G0に対して、表示用の画像処理を施すようにしてもよい。また、放射線画像G0に手術用具の領域が含まれていれば、表示された放射線画像G0において手術用具の領域が確認できる場合があるが、
図13においては、放射線画像G0には手術用具の領域は含まれていないものとしている。
【0050】
次いで、検出ボタン71が選択されることにより、手術用具の検出指示が入力部7から行われると(ステップST13)、画像処理部24が放射線画像G0に対して、手術用具確認用の画像処理を行う(ステップST14)。また、検出指示により、検出部22が、放射線画像G0から手術用具の領域を検出する(ステップST15)。また、手術用具の確認用の画像処理の後、表示制御部23が、処理済み放射線画像G1を表示部6に表示する(ステップST16)。なお、ステップST15の処理は、ステップST14,ST16の処理と並列に行われるが、ステップST14の後またはステップST16の後に、ステップST15の処理を行うようにしてもよい。なお、処理済み放射線画像G1から手術用具の領域を検出する場合には、ステップST15の処理は、ステップST14の後にステップST16の処理と並列に行うか、ステップST16の後に行えばよい。
【0051】
図14は処理済み放射線画像の表示画面を示す図である。
図14に示すように、処理済み放射線画像の表示画面75には、処理済み放射線画像G1が表示されている。ここで、手術用具の領域の検出処理は、演算量が多いため処理に時間を要する。このため、表示画面75には、バックグラウンドで手術用具の検出処理が行われていることを表すプログレッシブバー76が表示されている。操作者は、プログレッシブバー76により、バックグラウンドで検出処理が行われていること、および検出処理の進捗状況を知ることができる。なお、処理済み放射線画像G1に手術用具の領域が含まれていれば、表示された処理済み放射線画像G1において手術用具の領域が確認できる場合があるが、
図14においては、処理済み放射線画像G1には手術用具の領域は含まれていないものとしている。
【0052】
検出処理が終了すると、表示制御部23は、放射線画像G0から手術用具の領域が検出されたか否かを判定する(ステップST17)。ステップST17が肯定されると、表示制御部23は、手術用具の領域を強調した処理済み放射線画像G1を表示部6に表示し(ステップST18)、処理を終了する。一方、ステップST17が否定されると、表示制御部23は、手術用具の領域が検出されなかった旨の通知を行い(ステップST19)、処理を終了する。
【0053】
図15は、手術用具の領域を強調した処理済み放射線画像の表示画面を示す図である。
図15に示すように、表示画面77には、処理済み放射線画像G1において検出された手術用具の領域に枠78が付与されることにより、手術用具の領域を強調した処理済み放射線画像GH1が表示されている。なお、表示画面77においては、プログレッシブバー76は満了している。また、枠78の付与に代えて、手術用具の領域をマスクしたり、マークを付与したりしてもよいことはもちろんである。ここで、手術用具の領域を強調した処理済み放射線画像GH1は、枠78等を処理済み放射線画像G1に重畳することにより表示部6に表示すればよいが、処理済み放射線画像G1に対してマスク等を付与する加工を施すことにより、手術用具の領域を強調した処理済み放射線画像GH1を別途生成して、表示部6に表示するようにしてもよい。
【0054】
このように、第2の実施形態においては、放射線画像G0に対して手術用具確認用の画像処理を行って処理済み放射線画像G1を表示するようにした。このため、処理済み放射線画像G1により、手術用具の領域を確認しやすくすることができる。したがって、本実施形態によれば、手術用具の領域を強調することと相まって、手術後における手術用具の患者体内の残存を確実に防止できる。
【0055】
なお、上記第2の実施形態においては、手術用具の検出の指示があってから、放射線画像G0に対して手術用具確認用の画像処理を行うようにしているが、これに限定されるものではない。手術用具の検出の指示を待たずして、または画像処理のみの指示により、放射線画像G0に対して手術用具の確認用の画像処理を行うようにしてもよい。
【0056】
また、上記第2の実施形態においては、検出指示が行われると放射線画像G0に代えて、処理済み放射線画像G1および手術用具の領域を強調した処理済み放射線画像GH1を表示部6に表示しているが、放射線画像G0と併せて処理済み放射線画像G1および手術用具の領域を強調した処理済み放射線画像GH1を表示部6に表示してもよい。
図16は放射線画像G0と手術用具の領域を強調した処理済み放射線画像GH1とを併せて表示する表示画面を示す図である。なお、
図16においては、処理済み放射線画像G1から手術用具の領域が検出された場合の表示画面を示している。
図16に示すように、表示画面80には、放射線画像G0および手術用具の領域を強調した処理済み放射線画像GH1が表示されている。なお、
図16においては、検出された手術用具の領域に枠81が付与されることにより、手術用具の領域を強調した処理済み放射線画像GH1が表示されている。なお、
図16においては、放射線画像G0に手術用具の領域を強調するための枠等を図示していないが、放射線画像G0に対しても、手術用具の領域を強調するための枠等を付与してもよい。また、放射線画像G0に対してのみ、手術用具の領域を強調するための枠等を付与してもよい。また、放射線画像G0に対して、表示用の画像処理を施すようにしてもよい。
【0057】
次いで、本開示の第3の実施形態について説明する。
図17は、コンソール2に第3の実施形態による放射線画像処理プログラム等をインストールすることにより実現される第3の実施形態による放射線画像処理装置の概略構成を示す図である。なお、
図17において
図3と同一の構成については、同一の参照番号を付与し、詳細な説明は省略する。
図17に示すように、第3の実施形態による放射線画像処理装置は、コンソール2に、表示部6よりも大画面および/または高解像度の表示部8が接続されて、表示部6および表示部8の双方に放射線画像G0を表示するようにした点が第1の実施形態と異なる。
【0058】
表示部8は液晶モニタ等からなり、表示部6よりも画面サイズが大きい。例えば、表示部6の画面サイズが14から15インチであるのに対して、表示部8は40~50インチである。また、表示部8は手術室の壁などに取り付けられている。なお、表示部8としては、表示部6とサイズが同一であっても、解像度が表示部6より大きいものであってもよい。例えば、表示部6の解像度が1メガピクセルであった場合、表示部8の解像度を2メガピクセル、3メガピクセルあるいはそれ以上の解像度としてもよい。また、表示部8は表示部6よりもサイズが大きくかつ解像度が大きいものであってもよい。
【0059】
次いで、第3の実施形態において行われる処理について説明する。
図18は第3の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、画像取得部21が、検出対象となる放射線画像G0を取得し(ステップST21)、表示制御部23が、放射線画像G0を2つの表示部6,8にそれぞれ表示する(ステップST22)。なお、表示部6には、
図13に示す表示画面70が表示される。また、表示部8にも表示画面70を表示してもよいが、表示部8には放射線画像G0のみを表示してもよい。また、放射線画像G0に対して、表示用の画像処理を施すようにしてもよい。
【0060】
次いで、検出ボタン71が選択されることにより、手術用具の検出指示が入力部7から行われると(ステップST23)、検出部22が、放射線画像G0から手術用具の領域を検出する(ステップST24)。この際、表示画面70には、手術用具の検出処理の進捗状況を示すプログレッシブバーを表示してもよい。
【0061】
検出処理が終了すると、表示制御部23は、放射線画像G0から手術用具の領域が検出されたか否かを判定する(ステップST25)。ステップST25が肯定されると、表示制御部23は、手術用具の領域を強調した放射線画像G0を2つの表示部6,8に表示し(ステップST26)、処理を終了する。一方、ステップST25が否定されると、表示制御部23は、手術用具の領域が検出されなかった旨の通知を行い(ステップST27)、処理を終了する。なお、通知は表示部6にのみ表示してもよく、表示部8にのみ表示してもよく、2つの表示部6,8の双方に表示してもよい。
【0062】
このように、第3の実施形態においては、表示部6よりも大画面および/または高解像度の表示部8にも放射線画像G0を表示するようにした。このため、表示部8に表示された放射線画像により、手術用具の領域を確認しやすくすることができる。したがって、本実施形態によれば、手術用具の領域を強調することと相まって、手術後における手術用具の患者体内の残存を確実に防止できる。
【0063】
次いで、本開示の第4の実施形態について説明する。
図19は、コンソール2に第4の実施形態による放射線画像処理プログラム等をインストールすることにより実現される第4の実施形態による放射線画像処理装置の概略構成を示す図である。なお、
図19において
図11と同一の構成については、同一の参照番号を付与し、詳細な説明は省略する。
図19に示すように、第4の実施形態による放射線画像処理装置は、コンソール2に、表示部6よりも大画面および/または高解像度の表示部8が接続されて、表示部6および表示部8の双方に放射線画像G0および処理済み放射線画像G1を表示するようにした点が第2の実施形態と異なる。
【0064】
次いで、第4の実施形態において行われる処理について説明する。
図20は第4の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、画像取得部21が、検出対象となる放射線画像G0を取得し(ステップST31)、表示制御部23が、放射線画像G0を2つの表示部6,8に表示する(ステップST32)。これにより、表示部6には
図13に示す表示画面70が表示される。なお、表示部8にも表示画面70を表示してもよいが、表示部8には放射線画像G0のみを表示してもよい。また、放射線画像G0に対して、表示用の画像処理を施すようにしてもよい。
【0065】
次いで、検出ボタン71が選択されることにより、手術用具の検出指示が入力部7から行われると(ステップST33)、画像処理部24が放射線画像G0に対して、手術用具確認用の画像処理を行う(ステップST34)。一方、検出指示により、検出部22が、放射線画像G0から手術用具の領域を検出する(ステップST35)。また、手術用具の確認用の画像処理の後、表示制御部23が、処理済み放射線画像G1を2つの表示部6,8に表示する(ステップST36)。これにより、表示部6には
図14に示す表示画面75が表示される。なお、表示部8にも表示画面75を表示してもよいが、表示部8には処理済み放射線画像G1のみを表示してもよい。なお、ステップST35の処理は、ステップST34,ST36の処理と並列に行われるが、ステップST34の後またはステップST36の後に、ステップST35の処理を行うようにしてもよい。なお、処理済み放射線画像G1から手術用具の領域を検出する場合には、ステップST35の処理は、ステップST34の後にステップST36の処理と並列に行うか、ステップST36の後に行えばよい。
【0066】
検出処理が終了すると、表示制御部23は、放射線画像G0から手術用具の領域が検出されたか否かを判定する(ステップST37)。ステップST37が肯定されると、表示制御部23は、手術用具の領域を強調した処理済み放射線画像G1を2つの表示部6,8に表示し(ステップST38)、処理を終了する。一方、ステップST37が否定されると、表示制御部23は、手術用具の領域が検出されなかった旨の通知を行い(ステップST39)、処理を終了する。なお、通知は表示部6にのみ表示してもよく、表示部8にのみ表示してもよく、2つの表示部6,8の双方に表示してもよい。
【0067】
このように、第4の実施形態においては、放射線画像G0に対して手術用具の確認用の画像処理を行って処理済み放射線画像G1を導出し、大画面および/または高解像度の表示部8にも処理済み放射線画像G1を表示するようにした。このため、表示部8に表示された、手術用具の領域を強調した処理済み放射線画像GH1により、手術用具の領域を確認しやすくすることができる。したがって、本実施形態によれば、手術用具の領域を強調することと相まって、手術後における手術用具の患者体内の残存を確実に防止できる。
【0068】
なお、上記第4の実施形態においては、手術用具の検出の指示があってから、放射線画像G0に対して手術用具の確認用の画像処理を行うようにしているが、これに限定されるものではない。手術用具の検出の指示を待たずして、または画像処理のみの指示により、放射線画像G0に対して手術用具の確認用の画像処理を行うようにしてもよい。
【0069】
また、上記第4の実施形態においては、検出指示が行われると放射線画像G0に代えて処理済み放射線画像G1を表示部6,8に表示しているが、放射線画像G0と処理済み放射線画像G1とを併せて表示部6,8に表示してもよい。
【0070】
なお、上記各実施形態においては、放射線画像G0および/または処理済み放射線画像G1の強調表示のオンおよびオフを入力部7からの指示により切り替え可能としてもよい。
【0071】
また、上記実施形態においては、手術用具の領域が検出された放射線画像G0および/または処理済み放射線画像G1を、PACS101等の外部装置に送信する場合がある。この場合、手術用具の領域が検出されたことを表す情報を放射線画像G0および/または処理済み放射線画像G1に付与するようにしてもよい。例えば、画像データの格納形式および装置間の通信を規定する、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)等のプロトコルにおいては、放射線画像G0および/または処理済み放射線画像G1に各種情報を付帯情報として付与することができる。このため、DICOMのプロトコルを用いて、手術用具の領域が検出されたことを放射線画像G0および/または処理済み放射線画像G1の付帯情報に付与するようにすればよい。また、放射線画像G0および/または処理済み放射線画像G1に対して、手術用具の領域を強調するための枠等を付与する加工を施すことにより、手術用具の領域を強調した放射線画像GH0および/または処理済み放射線画像GH1を生成し、生成された放射線画像GH0および/または処理済み放射線画像GH1を外部装置に送信してもよい。
【0072】
また、上記各実施形態においては、コンソール2において、手術用具の検出処理および画像処理等を行っているが、これに限定されるものではない。例えば、
図2に示すPACS101に、本開示の各実施形態による放射線画像処理プログラムをインストールし、コンソール2において取得した放射線画像G0をPACS101に送信し、PACS101において、放射線画像G0から手術用具の領域を検出する処理を行ったり、手術用具確認用の画像処理を行ったりしてもよい。この場合、PACS101において、放射線画像G0および/または処理済み放射線画像G1に対して、手術用具の領域を強調するための枠等を付与する加工を施すことにより、手術用具の領域を強調した放射線画像GH0および/または処理済み放射線画像GH1を生成し、生成された放射線画像GH0および/または処理済み放射線画像GH1をコンソール2に送信すればよい。また、PACS101において、DICOMのプロトコルを用いて、手術用具の領域が検出されたことを放射線画像G0および/または処理済み放射線画像G1の付帯情報に付与して、コンソール2に送信するようにしてもよい。この場合、コンソール2において、付帯情報に基づいて放射線画像G0および/または処理済み放射線画像G1に含まれる手術用具の領域を強調する処理を行って、手術用具の領域を強調した放射線画像GH0および/または処理済み放射線画像GH1を表示部6,8に表示することとなる。なお、この場合、強調表示のオンおよびオフを切り替えることが可能となる。
【0073】
また、上記第2および第4の実施形態においては、表示された処理済み放射線画像G1の画像処理の程度を変更可能としてもよい。例えば、処理済み放射線画像G1の鮮鋭度の強調の程度および階調の変更の程度を変更可能としてもよい。これにより、所望とされる画質の処理済み放射線画像G1を表示部6および/または表示部8に表示することができる。
【0074】
また、上記各実施形態においては、検出部22において、判別器30を用いて手術用具の領域を検出しているが、これに限定されるものではない。放射線画像G0のヒストグラムを求め、ヒストグラムに手術用具の信号値が含まれるか否かを判定することによって、放射線画像G0または処理済み放射線画像G1から手術用具の領域を検出するようにしてもよい。
【0075】
また、上記各実施形態においては、放射線画像G0を静止画像としているが、これに限定されるものではない。放射線画像G0は動画像であってもよい。この場合、動画像である放射線画像G0の各フレームに対して、手術用具の領域を検出する処理が行われることとなる。
【0076】
また、上記各実施形態においては、放射線源4と放射線検出器5とにより被写体Hの放射線画像G0を取得しているが、これに限定されるものではない。例えば、Cアーム型の透過装置により、患者の放射線画像G0を観察しながら手術を行う場合がある。このような場合は、放射線画像G0は、Cアーム型の透過装置により取得されたものであってもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、ガーゼ40を手術用具として検出の対象としているが、これに限定されるものではない。メス、鋏、ドレイン、針、糸および鉗子等の手術の際に使用され、体内に残存すべきではない任意の手術用具を検出の対象とすることができる。この場合、判別器30は対象となる手術用具を判別するように学習すればよい。なお、判別器30を複数チャンネルの検出を行うように学習することにより、1種類の手術用具のみならず、複数種類の手術用具を判別するように、判別器30を構築することも可能である。
【0078】
また、上記実施形態においては、放射線は、とくに限定されるものではなく、X線の他、α線またはγ線等を適用することができる。
【0079】
また、上記実施形態において、例えば、画像取得部21、検出部22、表示制御部23および画像処理部24といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0080】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせまたはCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0081】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアとの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0082】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 撮影装置
2 コンソール
3 手術台
3A 取付部
4 放射線源
5 放射線検出器
6 表示部
7 入力部
8 表示部
11 CPU
12 メモリ
13 ストレージ
21 画像取得部
22 検出部
23 表示制御部
24 画像処理部
30 判別器
40 ガーゼ
41 放射線吸収糸
42 ガーゼ像
50 表示画面
51 マスク
52 マーク
53,78,81 枠
60 通知画面
61 メッセージ
70,75,77,80 表示画面
71 検出ボタン
76 プログレッシブバー
100 放射線画像撮影システム
101 PACS
102 ネットワーク
G0 放射線画像
G1 処理済み放射線画像
GH0 手術用具の領域を強調した放射線画像
GH1 手術用具の領域を強調した処理済み放射線画像
H 被写体