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特許7152445エクステンダーレンズ、光学系、および撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】エクステンダーレンズ、光学系、および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/02 20060101AFI20221004BHJP
   G02B 15/20 20060101ALI20221004BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20221004BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20221004BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20221004BHJP
   G02B 7/10 20210101ALI20221004BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G02B15/02
G02B15/20
G02B13/18
G03B17/14
G02B7/04 Z
G02B7/10 C
H04N5/225 400
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020097898
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021056491
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2019180387
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 大樹
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-027308(JP,A)
【文献】特開2018-194730(JP,A)
【文献】特開2020-042062(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108693634(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
G02B 7/00 - 7/24
G03B 17/04 - 17/17
H04N 5/222 - 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスターレンズの一部と置換されることにより置換後のレンズ全系の焦点距離を前記マスターレンズの焦点距離よりも長焦点距離側へ変化させるエクステンダーレンズであって、
前記エクステンダーレンズは、物体側から像側へ順に、第1レンズ群と、全体として負の屈折力を有する第2レンズ群とからなり、
1つのレンズ成分を1つの単レンズ又は1つの接合レンズとした場合、前記第1レンズ群は、1つのレンズ成分又は連続配置された複数のレンズ成分からなるレンズ群のうち、全体として正の屈折力を有し、かつ焦点距離が最小となるレンズ群であり、
前記第1レンズ群は物体側の面が凸面であるレンズを含み、
前記エクステンダーレンズの最も物体側の面から前記エクステンダーレンズの最も像側の面までの光軸上の距離をTLex、
前記第1レンズ群の焦点距離をf1
前記第1レンズ群の物体側の面が凸面である少なくとも1枚のレンズについて、物体側の面の曲率半径をRf、像側の面の曲率半径をRrとした場合、
0.1<TLex/f1<0.36 (1)
-0.08<(Rf-Rr)/(Rf+Rr)<0.05 (8)
で表される条件式(1)および(8)を満足するエクステンダーレンズ。
【請求項2】
前記第2レンズ群の焦点距離をf2、
前記エクステンダーレンズの焦点距離をfexとした場合、
0.23<f2/fex<0.5 (2)
で表される条件式(2)を満足する請求項1に記載のエクステンダーレンズ。
【請求項3】
前記エクステンダーレンズの焦点距離をfexとした場合、
-1<f1/fex<-0.25 (3)
で表される条件式(3)を満足する請求項1又は2に記載のエクステンダーレンズ。
【請求項4】
前記第2レンズ群の少なくとも1枚の負レンズについて、d線基準のアッベ数をνn、g線とF線間の部分分散比をθgFnとした場合、
60<νn (4)
0.64<θgFn+0.001625×νn<0.7 (5)
で表される条件式(4)および(5)を満足する請求項1から3のいずれか1項に記載のエクステンダーレンズ。
【請求項5】
前記第2レンズ群の焦点距離をf2、
前記条件式(4)および(5)を満足する前記第2レンズ群の少なくとも1枚の負レンズの焦点距離をf2nとした場合、
0.1<f2/f2n<1.5 (6)
で表される条件式(6)を満足する請求項4に記載のエクステンダーレンズ。
【請求項6】
前記条件式(4)、(5)、および(6)を満足する前記第2レンズ群の少なくとも1枚の負レンズの20℃から40℃までの範囲におけるd線に対する相対屈折率の温度係数をdN/dT、dN/dTの単位を℃-1とした場合、
-7×10-6<dN/dT<-2×10-6 (7)
で表される条件式(7)を満足する請求項5に記載のエクステンダーレンズ。
【請求項7】
前記第1レンズ群は、さらに、負レンズと正レンズとが接合された接合レンズを含む請求項に記載のエクステンダーレンズ。
【請求項8】
前記第1レンズ群は、最も物体側から像側へ順に連続して、物体側の面が凸面である負レンズと正レンズとが物体側から順に接合された接合レンズと、前記条件式(8)を満足する物体側の面が凸面である前記レンズとを含む請求項に記載のエクステンダーレンズ。
【請求項9】
0.15<TLex/f1<0.33 (1-1)
で表される条件式(1-1)を満足する請求項1に記載のエクステンダーレンズ。
【請求項10】
0.24<f2/fex<0.46 (2-1)
で表される条件式(2-1)を満足する請求項2に記載のエクステンダーレンズ。
【請求項11】
-1<f1/fex<-0.35 (3-1)
で表される条件式(3-1)を満足する請求項3に記載のエクステンダーレンズ。
【請求項12】
60<νn<86 (4-1)
で表される条件式(4-1)を満足する請求項4に記載のエクステンダーレンズ。
【請求項13】
0.64<θgFn+0.001625×νn<0.68 (5-1)
で表される条件式(5-1)を満足する請求項4に記載のエクステンダーレンズ。
【請求項14】
0.15<f2/f2n<1 (6-1)
で表される条件式(6-1)を満足する請求項5に記載のエクステンダーレンズ。
【請求項15】
-0.07<(Rf-Rr)/(Rf+Rr)<0.03 (8-1)
で表される条件式(8-1)を満足する請求項に記載のエクステンダーレンズ。
【請求項16】
ズームレンズである前記マスターレンズと、
請求項1から15のいずれか1項に記載のエクステンダーレンズとを備えた光学系。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか1項に記載のエクステンダーレンズを備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、エクステンダーレンズ、光学系、および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放送用カメラ等の分野において、撮像用のマスターレンズの内部に挿脱自在に配されて、挿入後のレンズ全系の焦点距離をマスターレンズの焦点距離よりも長焦点距離側へ変化させるエクステンダーレンズが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、物体側から像側へ順に、ズーミングのためには移動しない正の屈折力の第1レンズ群と、ズーミングに際して移動する負の屈折力を有する第2レンズ群と、開口絞りを含み、正の屈折力を有する前リレーレンズ群と、光路に挿抜可能なエクステンダーレンズ群と、ズーミングのためには移動しない後リレーレンズ群とから構成されるズームレンズが記載されている。
【0004】
下記特許文献2には、4つ以上のレンズ群からなるズームレンズ本体と、このズームレンズ本体のレンズ群の群中または前後の光軸上のスペースに出入可能に配置された焦点距離変換レンズ群とからなるズームレンズが記載されている。
【0005】
下記特許文献3には、物体側から像側へ順に、フォーカシングの際に移動するフォーカスレンズ群と、ズーミングに際して移動する2つ以上のレンズ群で構成される変倍レンズ群と、開口絞りと、光路中から着脱可能に装着するエクステンダーレンズ群を含み、ズーミングのためには移動しないリレーレンズ群とから構成されるズームレンズが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-045310号公報
【文献】特開2000-275521号公報
【文献】特開2017-181577号公報
【発明の概要】
【0007】
本開示の技術は、良好な光学性能を有するエクステンダーレンズ、このエクステンダーレンズを備えた光学系、およびこのエクステンダーレンズを備えた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の技術の一態様は、マスターレンズの一部と置換されることにより置換後のレンズ全系の焦点距離をマスターレンズの焦点距離よりも長焦点距離側へ変化させるエクステンダーレンズであって、エクステンダーレンズは、物体側から像側へ順に、第1レンズ群と、全体として負の屈折力を有する第2レンズ群とからなり、1つのレンズ成分を1つの単レンズ又は1つの接合レンズとした場合、第1レンズ群は、1つのレンズ成分又は連続配置された複数のレンズ成分からなるレンズ群のうち、全体として正の屈折力を有し、かつ焦点距離が最小となるレンズ群であり、エクステンダーレンズの最も物体側の面からエクステンダーレンズの最も像側の面までの光軸上の距離をTLex、第1レンズ群の焦点距離をf1とした場合、下記条件式(1)を満足する。
0.1<TLex/f1<0.36 (1)
【0009】
上記態様のエクステンダーレンズはさらに、下記条件式(1-1)を満足することが好ましい。
0.15<TLex/f1<0.33 (1-1)
【0010】
第2レンズ群の焦点距離をf2、エクステンダーレンズの焦点距離をfexとした場合、下記条件式(2)を満足することが好ましく、下記条件式(2-1)を満足することがより好ましい。
0.23<f2/fex<0.5 (2)
0.24<f2/fex<0.46 (2-1)
【0011】
第1レンズ群の焦点距離をf1、エクステンダーレンズの焦点距離をfexとした場合、下記条件式(3)を満足することが好ましく、下記条件式(3-1)を満足することがより好ましい。
-1<f1/fex<-0.25 (3)
-1<f1/fex<-0.35 (3-1)
【0012】
第2レンズ群の少なくとも1枚の負レンズについて、d線基準のアッベ数をνn、g線とF線間の部分分散比をθgFnとした場合、下記条件式(4)および(5)を満足することが好ましい。また、条件式(4)および(5)を満足した上で、下記条件式(4-1)および(5-1)の少なくとも一方を満足することがより好ましい。
60<νn (4)
0.64<θgFn+0.001625×νn<0.7 (5)
60<νn<86 (4-1)
0.64<θgFn+0.001625×νn<0.68 (5-1)
【0013】
第2レンズ群の焦点距離をf2、上記条件式(4)および(5)を満足する第2レンズ群の少なくとも1枚の負レンズの焦点距離をf2nとした場合、下記条件式(6)を満足することが好ましく、下記条件式(6-1)を満足することがより好ましい。
0.1<f2/f2n<1.5 (6)
0.15<f2/f2n<1 (6-1)
【0014】
上記条件式(4)、(5)、および(6)を満足する第2レンズ群の少なくとも1枚の負レンズの20℃から40℃までの範囲におけるd線に対する相対屈折率の温度係数をdN/dTとした場合、下記条件式(7)を満足することが好ましい。なお、dN/dTの単位は℃-1である。
-7×10-6<dN/dT<-2×10-6 (7)
【0015】
第1レンズ群は物体側の面が凸面であるレンズを含み、第1レンズ群の物体側の面が凸面である少なくとも1枚のレンズについて、物体側の面の曲率半径をRf、像側の面の曲率半径をRrとした場合、下記条件式(8)を満足することが好ましく、下記条件式(8-1)を満足することがより好ましい。
-0.08<(Rf-Rr)/(Rf+Rr)<0.05 (8)
-0.07<(Rf-Rr)/(Rf+Rr)<0.03 (8-1)
【0016】
第1レンズ群は、上記条件式(8)を満足する物体側の面が凸面であるレンズに加え、さらに、負レンズと正レンズとが接合された接合レンズを含むことが好ましい。
【0017】
第1レンズ群は、最も物体側から像側へ順に連続して、物体側の面が凸面である負レンズと正レンズとが物体側から順に接合された接合レンズと、上記条件式(8)を満足する物体側の面が凸面であるレンズとを含むことが好ましい。
【0018】
本開示の技術の別の態様は、ズームレンズであるマスターレンズと、上記態様のエクステンダーレンズを備えた光学系である。
【0019】
本開示の技術のさらに別の態様は、上記態様のエクステンダーレンズを備えた撮像装置である。
【0020】
なお、本明細書の「~からなり」、「~からなる」は、挙げられた構成要素以外に、実質的に屈折力を有さないレンズ、並びに、絞り、フィルタ、およびカバーガラス等のレンズ以外の光学要素、並びに、レンズフランジ、レンズバレル、撮像素子、および手振れ補正機構等の機構部分、等が含まれていてもよいことを意図する。
【0021】
なお、本明細書において「正の屈折力を有するレンズ」と「正レンズ」とは同義である。「負の屈折力を有するレンズ」と「負レンズ」とは同義である。「~レンズ群」は、複数のレンズからなる構成に限らず、1枚のみのレンズからなる構成としてもよい。
【0022】
「単レンズ」は、接合されていない1枚のレンズを意味する。ただし、複合非球面レンズ(球面レンズと、その球面レンズ上に形成された非球面形状の膜とが一体的に構成されて、全体として1つの非球面レンズとして機能するレンズ)は、接合レンズとは見なさず、1枚のレンズとして扱う。非球面を含むレンズに関する、屈折力の符号、面形状、および面の曲率半径は、特に断りが無い限り、近軸領域で考えることにする。曲率半径の符号については、物体側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を正、像側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を負とする。
【0023】
条件式で用いている「焦点距離」は、近軸焦点距離である。条件式で用いている値は、部分分散比以外、無限遠物体に合焦した状態において、d線を基準とした場合の値である。あるレンズのg線とF線間の部分分散比θgFとは、g線、F線、およびC線に対するそのレンズの屈折率をそれぞれNg、NF、およびNCとした場合に、θgF=(Ng-NF)/(NF-NC)で定義される。本明細書に記載の「d線」、「C線」、「F線」、および「g線」は輝線であり、d線の波長は587.56nm(ナノメートル)、C線の波長は656.27nm(ナノメートル)、F線の波長は486.13nm(ナノメートル)、g線の波長は435.83nm(ナノメートル)である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の実施例1のマスターレンズとエクステンダーレンズに対応し、本開示の一実施形態に係る光学系の構成を示す断面図と移動軌跡を示す図である。
図2】実施例1のエクステンダーレンズの構成断面図である。
図3】実施例1のエクステンダーレンズに置換後のレンズ全系の広角端および望遠端における構成と光束を示す図である。
図4】実施例1のマスターレンズの各収差図である。
図5】実施例1のエクステンダーレンズに置換後のレンズ全系の各収差図である。
図6】実施例2のエクステンダーレンズの構成断面図である。
図7】実施例2のエクステンダーレンズに置換後のレンズ全系の各収差図である。
図8】実施例3のマスターレンズとエクステンダーレンズの構成を示す断面図と移動軌跡を示す図である。
図9】実施例3のエクステンダーレンズの構成断面図である。
図10】実施例3のエクステンダーレンズに置換後のレンズ全系の広角端および望遠端における構成と光束を示す図である。
図11】実施例3のマスターレンズの各収差図である。
図12】実施例3のエクステンダーレンズに置換後のレンズ全系の各収差図である。
図13】実施例4のエクステンダーレンズの構成断面図である。
図14】実施例4のエクステンダーレンズに置換後のレンズ全系の各収差図である。
図15】本開示の一実施形態に係る撮像装置の概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の技術に係る実施形態の一例について図面を参照して説明する。本開示の技術に係る光学系は、マスターレンズMLと、このマスターレンズMLの一部と置換可能なエクステンダーレンズEXとを備える。マスターレンズMLは例えば、放送用カメラ等の撮像装置に適用可能な撮像用のレンズ系である。
【0026】
エクステンダーレンズEXは、光路中に挿脱可能であり、マスターレンズMLの一部と置換されることにより、結像位置を一定に保ったまま、置換後のレンズ全系の焦点距離をマスターレンズMLの焦点距離よりも長焦点距離側へ変化させる。ここでいう「置換後のレンズ全系」とは、マスターレンズMLの他部全て(マスターレンズMLのうちエクステンダーレンズEXと置換されない部分)とエクステンダーレンズEXとを合成したレンズ系である。また、上記の「結像位置を一定に保ったまま」は完全に一致する場合に限らず多少の誤差を許容する。許容誤差は例えば、許容錯乱円径をδとし、置換後のレンズ全系のFナンバーをAFNとした場合、±(δ×AFN)とすることができる。
【0027】
図1に本開示の一実施形態に係るマスターレンズMLおよびエクステンダーレンズEXの構成断面図を示す。一例として図1に示すマスターレンズMLは、物体側から像側へ順に、合焦部Fと、変倍部Vと、開口絞りStと、結像部RLとからなるズームレンズである。
【0028】
レンズ系を撮像装置に適用する際には、撮像装置の仕様に応じて、各種フィルタ、プリズム、および/又はカバーガラス等を備えることが好ましいため、図1では、これらを想定した光学部材PPを結像部RLと像面Simとの間に配置した例を示している。各種フィルタとは例えばローパスフィルタおよび赤外線カットフィルタ等である。光学部材PPは、入射面と出射面が平行な屈折力を有しない部材であり、光学部材PPを省略した構成も可能である。
【0029】
合焦部Fは合焦の際に光軸Zに沿って移動するレンズ群を含む。変倍部Vは変倍の際に光軸Zに沿って移動するレンズ群を含む。一例として図1の変倍部Vは、物体側から像側へ順に、V1レンズ群V1と、V2レンズ群V2と、V3レンズ群V3とからなり、これら3つのレンズ群は変倍の際に隣り合うレンズ群との間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。図1では、これら3つのレンズ群の下にそれぞれ、広角端から望遠端へ変倍する際の各レンズ群の移動軌跡を模式的に矢印で示している。図1の例では、変倍の際に合焦部Fおよび結像部RLは像面Simに対して固定されている。
【0030】
結像部RLは、物体側から像側へ順に、RL1レンズ群RL1と、RL2レンズ群RL2と、RL3レンズ群RL3とからなる。RL2レンズ群RL2は、光路中に挿脱可能であり、エクステンダーレンズEXと置換可能に構成されている。図1の例を参照した以下の説明では、合焦部Fと、変倍部Vと、開口絞りStと、RL1レンズ群RL1と、エクステンダーレンズEXと、RL3レンズ群RL3とからなるレンズ系を「置換後のレンズ全系」と称することにする。
【0031】
図2にエクステンダーレンズEXの一例の構成断面図を示す。図2に示す例は後述の実施例1に対応している。また、図3に置換後のレンズ全系の広角端および望遠端における構成と光束を示す。図3では、「WIDE」と付した上段に広角端状態を示し、「TELE」と付した下段に望遠端状態を示す。図3では、光束として、広角端状態における軸上光束waおよび最大画角の光束wb、望遠端状態における軸上光束taおよび最大画角の光束tbを示す。図1の断面図、図2、および図3では、左側が物体側、右側が像側である。
【0032】
エクステンダーレンズEXは、物体側から像側へ順に、全体として正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、第1レンズ群G1と空気間隔で隔てられ全体として負の屈折力を有する第2レンズ群G2とからなる。第1レンズ群G1は、1つのレンズ成分又は連続配置された複数のレンズ成分からなるレンズ群のうち、全体として正の屈折力を有し、かつ焦点距離が最小となるレンズ群である。ここで、「レンズ成分」は、光軸上での空気接触面が物体側の面と像側の面の2つのみのレンズであり、1つのレンズ成分とは1つの単レンズ又は1つの接合レンズである。エクステンダーレンズEXは、上記のようなテレフォトタイプの構成を採ることによって、長焦点距離化の作用を持つことが容易となる。
【0033】
上記の第1レンズ群G1の規定について図2を参照しながら詳細に説明する。図2の例のエクステンダーレンズEXは、物体側から像側へ順に、レンズL11とレンズL12とが接合された接合レンズ、単レンズであるレンズL13、レンズL14とレンズL15とが接合された接合レンズ、レンズL21とレンズL22とが接合された接合レンズ、および、単レンズであるレンズL23からなる。図2の例のエクステンダーレンズEXを空気間隔を境にして2つのレンズ群に分ける場合、エクステンダーレンズEXの最も物体側のレンズを含み、1つのレンズ成分又は連続配置された複数のレンズ成分からなるレンズ群としては、レンズL11、L12からなるレンズ群、レンズL11、L12、L13からなるレンズ群、レンズL11、L12、L13、L14、L15からなるレンズ群、および、レンズL11、L12、L13、L14、L15、L21、L22からなるレンズ群の4通りのレンズ群が考えられる。図2の例においてこれら4通りのレンズ群の各々の焦点距離を求めると、これら4通りのレンズ群のうち、全体として正の屈折力を有し、かつ最も焦点距離が短いレンズ群は、レンズL11~L15からなるレンズ群である。したがって、図2の例では、レンズL11~L15が第1レンズ群G1を構成し、残りのレンズであるレンズL21~L23が第2レンズ群G2を構成することになる。
【0034】
第1レンズ群G1の焦点距離をf1、エクステンダーレンズEXの最も物体側の面からエクステンダーレンズEXの最も像側の面までの光軸上の距離をTLexとした場合、エクステンダーレンズEXは下記条件式(1)を満足するように構成される。条件式(1)の下限以下とならないようにすることによって、第1レンズ群G1の屈折力が弱くなり過ぎないため、長焦点距離化が容易となる。あるいは、エクステンダーレンズEXの全長が短くなり過ぎないため、良好な収差補正が容易になる。条件式(1)の上限以上とならないようにすることによって、第1レンズ群G1の屈折力が強くなり過ぎないため、これに伴って第2レンズ群G2の屈折力も強くなり過ぎることが無く、良好な収差補正が容易になる。あるいは、エクステンダーレンズEXの全長が長くなり過ぎないため、マスターレンズ内の規定の範囲にエクステンダーレンズEXを収めることができる。さらに下記条件式(1-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
0.1<TLex/f1<0.36 (1)
0.15<TLex/f1<0.33 (1-1)
【0035】
次に、エクステンダーレンズEXの好ましい構成について述べる。第2レンズ群G2の焦点距離をf2、エクステンダーレンズEXの焦点距離をfexとした場合、下記条件式(2)を満足することが好ましい。条件式(2)の下限以下とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の焦点距離が短くなり過ぎないため、エクステンダーレンズEXの像側主点位置がより物体側になることを抑制できるので、置換後のレンズ全系の結像位置が置換前のマスターレンズMLの結像位置より物体側へいきやすくなるのを抑制できる。条件式(2)の上限以上とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の焦点距離が長くなり過ぎないため、エクステンダーレンズEXの像側主点位置がより像側に位置するのを抑制できるので、置換後のレンズ全系の結像位置が置換前のマスターレンズMLの結像位置より像側へいきやすくなるのを抑制できる。条件式(2)を満足することによって、置換後のレンズ全系の結像位置をマスターレンズMLの結像位置と一致させやすくなる。さらに下記条件式(2-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
0.23<f2/fex<0.5 (2)
0.24<f2/fex<0.46 (2-1)
【0036】
第1レンズ群G1の焦点距離をf1、エクステンダーレンズEXの焦点距離をfexとした場合、下記条件式(3)を満足することが好ましい。条件式(3)の下限以下とならないようにすることによって、第1レンズ群G1の屈折力が強くなり過ぎないため、球面収差、軸上色収差、および像面湾曲が補正過剰となるのを抑制できる。条件式(3)の上限以上とならないようにすることによって、第1レンズ群G1の屈折力が弱くなり過ぎないため、球面収差、軸上色収差、および像面湾曲が補正不足となるのを抑制できる。条件式(3)を満足することによって、球面収差、軸上色収差、および像面湾曲の補正に有利としつつ、置換後のレンズ全系の結像位置をマスターレンズMLの結像位置と一致させやすくなる。さらに下記条件式(3-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
-1<f1/fex<-0.25 (3)
-1<f1/fex<-0.35 (3-1)
【0037】
第1レンズ群G1は物体側の面が凸面であるレンズを含み、第1レンズ群G1の物体側の面が凸面である少なくとも1枚のレンズについて、物体側の面の曲率半径をRf、像側の面の曲率半径をRrとした場合、下記条件式(8)を満足することが好ましい。物体側の面が凸面であり、かつ-0.08<(Rf-Rr)/(Rf+Rr)<0を満足するレンズは正レンズとなる。物体側の面が凸面であり、かつ0<(Rf-Rr)/(Rf+Rr)<0.05を満足するレンズは負レンズとなる。条件式(8)の下限以下とならないようにすることによって、非点収差がアンダー傾向となるのを抑制でき、良好な光学性能の確保に有利となる。条件式(8)の上限以上とならないようにすることによって、負の屈折力が強くなり過ぎないため、球面収差が補正過剰となるのを抑制でき、特にマージナル光線に関する補正が容易になる。条件式(8)を満足することによって、タンジェンシャル像面の補正に有利となる。さらに下記条件式(8-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
-0.08<(Rf-Rr)/(Rf+Rr)<0.05 (8)
-0.07<(Rf-Rr)/(Rf+Rr)<0.03 (8-1)
【0038】
第1レンズ群G1は、条件式(8)を満足する物体側の面が凸面であるレンズに加え、さらに、負レンズと正レンズとが接合された接合レンズを含むことが好ましい。一般に、エクステンダーレンズEXは、上述したような合焦部Fと、変倍部Vと、結像部RLとを備えたマスターレンズMLの結像部RLに配置されることが多く、その場合、エクステンダーレンズEXの内部における光束の径は像側より物体側の方が大きい傾向にある。すなわち、第2レンズ群G2における光束径より第1レンズ群G1における光束径の方が大きい傾向にある。エクステンダーレンズEXの中でより光束径が大きい物体側に上記接合レンズと条件式(8)を満足する物体側の面が凸面であるレンズとを配置することによって、球面収差、軸上色収差、非点収差、および像面湾曲の補正に有利となる。
【0039】
より詳しくは、第1レンズ群G1は、最も物体側から像側へ順に連続して、物体側の面が凸面である負レンズと正レンズとが物体側から順に接合された接合レンズと、条件式(8)を満足する物体側の面が凸面であるレンズとを含むことが好ましい。第1レンズ群G1の最も物体側のレンズ面を凸面にすることによって、光線を下げる効果を得ることができるので、第1レンズ群G1の中で球面収差の補正が容易となる。また、第1レンズ群G1の最も物体側のレンズを物体側の面が凸面の負メニスカスレンズにすることによって、接合面で軸上色収差を補正することが可能となる。さらに、接合レンズの像側に連続した位置であり比較的光束径が大きい位置に条件式(8)を満足する物体側の面が凸面であるレンズを配置することによって、球面収差、非点収差、および像面湾曲の補正が容易となる。
【0040】
第2レンズ群G2は負レンズを含むように構成される。第2レンズ群G2の少なくとも1枚の負レンズについて、d線基準のアッベ数をνnとした場合、下記条件式(4)を満足することが好ましい。条件式(4)を満足することによって、一次の軸上色収差の補正に有利となる。第2レンズ群G2の少なくとも1枚の負レンズについて、さらに下記条件式(4-1)を満足することが好ましい。条件式(4-1)の上限以上とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の負レンズの屈折率が低くなり過ぎるのを抑制できるため収差補正に有利となる。
60<νn (4)
60<νn<86 (4-1)
【0041】
第2レンズ群G2の少なくとも1枚の負レンズについて、g線とF線間の部分分散比をθgFnとした場合、下記条件式(5)を満足することが好ましい。条件式(5)を満足することによって、二次の軸上色収差の補正に有利となる。さらに下記条件式(5-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
0.64<θgFn+0.001625×νn<0.7 (5)
0.64<θgFn+0.001625×νn<0.68 (5-1)
【0042】
第2レンズ群G2の少なくとも1枚の負レンズについて、条件式(4)および(5)を満足することが好ましく、条件式(4)および(5)を満足した上で条件式(4-1)および(5-1)の少なくとも一方を満足することがより好ましい。
【0043】
また、第2レンズ群G2の焦点距離をf2、条件式(4)および(5)を満足する第2レンズ群G2の負レンズの焦点距離をf2nとした場合、少なくとも1枚の負レンズが下記条件式(6)を満足することが好ましい。条件式(4)および(5)を満足する負レンズが条件式(6)を満足することによって、軸上色収差補正の補正により有利となる。さらに下記条件式(6-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができる。
0.1<f2/f2n<1.5 (6)
0.15<f2/f2n<1 (6-1)
【0044】
さらに、条件式(4)、(5)、および(6)を満足する第2レンズ群G2の負レンズの20℃から40℃までの範囲におけるd線に対する相対屈折率の温度係数をdN/dTとした場合、少なくとも1枚の負レンズが下記条件式(7)を満足することが好ましい。条件式(4)、(5)、および(6)を満足する負レンズが条件式(7)を満足することによって、温度が変化した際の置換後のレンズ全系の合焦位置の補正に有利となる。なお、dN/dTの単位は℃-1である。
-7×10-6<dN/dT<-2×10-6 (7)
【0045】
なお、図2の例では、第1レンズ群G1は5枚のレンズからなり、第2レンズ群G2は3枚のレンズからなるが、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2を構成するレンズの枚数は、図2に示す例と異なる枚数にすることも可能である。また、マスターレンズMLが備える変倍の際に移動するレンズ群の数は図1の例と異なる数にしてもよい。さらに、マスターレンズMLは図1の例と異なる構成のズームレンズでもよい。マスターレンズMLがズームレンズの場合は汎用性が高い構成となるが、マスターレンズMLは、バリフォーカルレンズ、又は固定焦点光学系でもよい。
【0046】
上述した好ましい構成および可能な構成は、任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。
【0047】
次に、本開示の技術に係るエクステンダーレンズEXおよびマスターレンズMLの数値実施例について説明する。以下に述べる実施例1および実施例2のマスターレンズMLは共通であり、実施例3および実施例4のマスターレンズMLは共通である。
【0048】
[実施例1]
[マスターレンズ]
実施例1のマスターレンズMLの構成図は図1にMLの符号を付して示しており、その図示方法と構成は上述したとおりであるので、ここでは重複説明を一部省略する。実施例1のマスターレンズMLは、ズームレンズであり、物体側から像側へ順に、合焦部Fと、変倍部Vと、開口絞りStと、結像部RLとからなる。合焦部Fは、物体側から像側へ順に、合焦の際に像面Simに対して固定されている2枚のレンズと、合焦の際に移動する2枚のレンズと、合焦の際に移動する1枚のレンズとからなり、フローティングフォーカス方式を採用している。変倍部Vは、物体側から像側へ順に、V1レンズ群V1と、V2レンズ群V2と、V3レンズ群V3とからなり、これら3つのレンズ群は変倍の際に隣り合うレンズ群との間隔を変化させて移動する。結像部RLは、物体側から像側へ順に、RL1レンズ群RL1と、RL2レンズ群RL2と、RL3レンズ群RL3とからなる。RL2レンズ群RL2は、エクステンダーレンズEXと置換可能に構成されている。以上が実施例1のマスターレンズMLの概要である。
【0049】
実施例1のマスターレンズMLについて、基本レンズデータを表1Aおよび表1Bに、諸元を表2に、可変面間隔を表3に、非球面係数を表4に示す。ここでは、1つの表の長大化を避けるため基本レンズデータを表1Aおよび表1Bの2つの表に分けて表示している。表1Aには合焦部Fおよび変倍部Vを示し、表1Bには開口絞りSt、結像部RL、および光学部材PPを示す。表1Bでは、RL2レンズ群RL2に対応する面番号の左側に「RL2」と記した欄を付している。
【0050】
表1Aおよび表1Bにおいて、Snの欄には最も物体側の面を第1面とし像側に向かうに従い1つずつ番号を増加させた場合の面番号を示し、Rの欄には各面の曲率半径を示し、Dの欄には各面とその像側に隣接する面との光軸上の面間隔を示す。Ndの欄には各構成要素のd線に対する屈折率を示し、νdの欄には各構成要素のd線基準のアッベ数を示し、θgFの欄には各構成要素のg線とF線間の部分分散比を示す。
【0051】
表1Aおよび表1Bでは、物体側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を正、像側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を負としている。表1Bでは開口絞りStに相当する面の面番号の欄に面番号と(St)という語句を記載している。表1Aおよび表1Bでは、変倍の際の可変面間隔についてはDD[ ]という記号を用い、[ ]の中にこの間隔の物体側の面番号を付してDの欄に記入している。
【0052】
表2に、ズームの倍率Zr、焦点距離f、FナンバーFNo.、最大全画角2ωをd線基準で示す。2ωの欄の(°)は単位が度であることを意味する。表3に、変倍の際の可変面間隔をd線基準で示す。表2および表3では、広角端状態、望遠端状態の各値をそれぞれWIDE、TELEと表記した欄に示している。
【0053】
基本レンズデータでは、非球面の面番号には*印を付しており、非球面の曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を記載している。表4において、Snの欄には非球面の面番号を示し、KAおよびAmの欄には各非球面についての非球面係数の数値を示す。表4の非球面係数の数値の「E±n」(n:整数)は「×10±n」を意味する。KAおよびAmは下式で表される非球面式における非球面係数である。mは3以上の整数であり、面により異なり、例えば表4の11面ではm=3、4、5、・・・、10である。
Zd=C×h/{1+(1-KA×C×h1/2}+ΣAm×h
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に
下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数
であり、非球面式のΣはmに関する総和を意味する。
【0054】
各表のデータにおいて、角度の単位としては度を用い、長さの単位としてはmm(ミリメートル)を用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることもできる。また、以下に示す各表では所定の桁でまるめた数値を記載している。
【0055】
【表1A】
【0056】
【表1B】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
図4に、実施例1のマスターレンズMLの無限遠物体に合焦した状態の各収差図を示す。図4では左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、および倍率色収差を示す。図4では「WIDE」と付した上段に広角端状態の収差を示し、「TELE」と付した下段に望遠端状態の収差を示す。球面収差図では、d線、C線、およびF線における収差をそれぞれ実線、長破線、および短破線で示す。非点収差図では、サジタル方向のd線における収差を実線で示し、タンジェンシャル方向のd線における収差を短破線で示す。歪曲収差図ではd線における収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、およびF線における収差をそれぞれ長破線、および短破線で示す。球面収差図のFNo.はFナンバーを意味し、その他の収差図のωは半画角を意味する。
【0061】
上記の各データの記号、意味、記載方法、および図示方法は、特に断りが無い限り以下の例においても同様であるので、以下では重複説明を省略する。
【0062】
[エクステンダーレンズに置換後のレンズ全系]
実施例1のエクステンダーレンズEXはマスターレンズMLのRL2レンズ群RL2と置換可能に構成されている。図2に実施例1のエクステンダーレンズEXの構成を示す。図3に、RL2レンズ群RL2をエクステンダーレンズEXに置換したレンズ全系の広角端および望遠端における構成と光束を示す。図2および図3の図示方法と構成は上述したとおりであるので、ここでは重複説明を一部省略する。実施例1のエクステンダーレンズEXは、物体側から像側へ順に、全体として正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、全体として負の屈折力を有する第2レンズ群G2とからなる。第1レンズ群G1はレンズL11~L15からなり、第2レンズ群G2はレンズL21~L23からなる。
【0063】
エクステンダーレンズEXに置換後のレンズ全系について、基本レンズデータを表5Aおよび表5Bに、諸元を表6に、各収差図を図5に示す。表5Aには合焦部Fおよび変倍部Vを示し、表5Bには開口絞りSt、RL1レンズ群RL1、エクステンダーレンズEX、RL3レンズ群RL3、および光学部材PPを示す。表5Bでは、エクステンダーレンズEXに対応する面番号の左側に「EX」と記した欄を付しており、この表記法は以下の実施例においても同様である。表5Aのデータは表1Aのデータと同一である。表5Aのデータに関する可変面間隔および非球面の非球面係数はそれぞれ表3および表4に示す値と同一であるのでここでは記載を省略する。
【0064】
【表5A】
【0065】
【表5B】
【0066】
【表6】
【0067】
[実施例2]
[マスターレンズ]
実施例2のマスターレンズMLは実施例1のマスターレンズMLと共通であるためデータの重複記載を省略する。
【0068】
[エクステンダーレンズに置換後のレンズ全系]
実施例2のエクステンダーレンズEXはマスターレンズMLのRL2レンズ群RL2と置換可能に構成されている。図6に実施例2のエクステンダーレンズEXの構成を示す。実施例2のエクステンダーレンズEXは、物体側から像側へ順に、全体として正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、全体として負の屈折力を有する第2レンズ群G2とからなる。第1レンズ群G1はレンズL11~L14からなり、第2レンズ群G2はレンズL21~L22からなる。
【0069】
エクステンダーレンズEXに置換後のレンズ全系について、基本レンズデータを表7Aおよび表7Bに、諸元を表8に、各収差図を図7に示す。表7Aには合焦部Fおよび変倍部Vを示し、表7Bには開口絞りSt、RL1レンズ群RL1、エクステンダーレンズEX、RL3レンズ群RL3、および光学部材PPを示す。表7Aのデータは表1Aのデータと同一である。表7Aのデータに関する可変面間隔および非球面の非球面係数はそれぞれ表3および表4に示す値と同一であるのでここでは記載を省略する。
【0070】
【表7A】
【0071】
【表7B】
【0072】
【表8】
【0073】
[実施例3]
[マスターレンズ]
図8に実施例3のマスターレンズMLの構成図をMLの符号を付して示す。実施例3のマスターレンズMLは、合焦部Fの合焦の際に固定されているレンズが3枚である点以外は実施例1のマスターレンズMLの概要と同様の構成を有する。
【0074】
実施例3のマスターレンズMLについて、基本レンズデータを表9Aおよび表9Bに、諸元を表10に、可変面間隔を表11に、非球面係数を表12に、各収差図を図11に示す。表9Aには合焦部Fおよび変倍部Vを示し、表9Bには開口絞りSt、結像部RL、および光学部材PPを示す。
【0075】
【表9A】
【0076】
【表9B】
【0077】
【表10】
【0078】
【表11】
【0079】
【表12】
【0080】
[エクステンダーレンズに置換後のレンズ全系]
実施例3のエクステンダーレンズEXはマスターレンズMLのRL2レンズ群RL2と置換可能に構成されている。図9に実施例3のエクステンダーレンズEXの構成を示す。図10にRL2レンズ群RL2をエクステンダーレンズEXに置換したレンズ全系の広角端および望遠端における構成と光束を示す。実施例3のエクステンダーレンズEXは、物体側から像側へ順に、全体として正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、全体として負の屈折力を有する第2レンズ群G2とからなる。第1レンズ群G1はレンズL11~L17からなり、第2レンズ群G2はレンズL21からなる。
【0081】
エクステンダーレンズEXに置換後のレンズ全系について、基本レンズデータを表13Aおよび表13Bに、諸元を表14に、各収差図を図12に示す。表13Aには合焦部Fおよび変倍部Vを示し、表13Bには開口絞りSt、RL1レンズ群RL1、エクステンダーレンズEX、RL3レンズ群RL3、および光学部材PPを示す。表13Aのデータは表9Aのデータと同一である。表13Aのデータに関する可変面間隔および非球面の非球面係数はそれぞれ表11および表12に示す値と同一であるのでここでは記載を省略する。
【0082】
【表13A】
【0083】
【表13B】
【0084】
【表14】
【0085】
[実施例4]
[マスターレンズ]
実施例4のマスターレンズMLは実施例3のマスターレンズMLと共通であるためデータの重複記載を省略する。
【0086】
[エクステンダーレンズに置換後のレンズ全系]
実施例4のエクステンダーレンズEXはマスターレンズMLのRL2レンズ群RL2と置換可能に構成されている。図13に実施例4のエクステンダーレンズEXの構成を示す。実施例4のエクステンダーレンズEXは、物体側から像側へ順に、全体として正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、全体として負の屈折力を有する第2レンズ群G2とからなる。第1レンズ群G1はレンズL11~L13からなり、第2レンズ群G2はレンズL21~L25からなる。
【0087】
エクステンダーレンズEXに置換後のレンズ全系について、基本レンズデータを表15Aおよび表15Bに、諸元を表16に、各収差図を図14に示す。表15Aには合焦部Fおよび変倍部Vを示し、表15Bには開口絞りSt、RL1レンズ群RL1、エクステンダーレンズEX、RL3レンズ群RL3、および光学部材PPを示す。表15Aのデータは表9Aのデータと同一である。表15Aのデータに関する可変面間隔および非球面の非球面係数はそれぞれ表11および表12に示す値と同一であるのでここでは記載を省略する。
【0088】
【表15A】
【0089】
【表15B】
【0090】
【表16】
【0091】
表17に、実施例1~4のエクステンダーレンズEXの条件式(1)~(8)の対応値を示す。条件式(7)の対応値の単位は℃-1である。条件式(4)、(5)、および(6)を満足する第2レンズ群G2のレンズは、実施例1ではレンズL23、実施例2ではレンズL22、実施例3ではレンズL21、実施例4ではレンズL25である。表17の条件式(7)に関する欄の下の欄には、実施例1のレンズL23、実施例2のレンズL22、実施例3のレンズL21、実施例4のレンズL25のそれぞれについて、材料名と概略的な製造会社名を示す。表17において、「光ガラス」は光ガラス株式会社を意味し、「オハラ」は株式会社オハラを意味し、「HOYA」はHOYA株式会社を意味する。条件式(8)を満足する第1レンズ群G1の物体側の面が凸面であるレンズは、実施例1~実施例4全てにおいてレンズL13である。
【0092】
【表17】
【0093】
以上説明したデータからわかるように、実施例1~4のエクステンダーレンズEXは、マスターレンズMLの一部と置換されることにより置換後のレンズ全系の焦点距離をマスターレンズMLの焦点距離の1.4倍程度、より詳しくは1.37倍以上かつ1.4倍以下に拡大している。また、実施例1~4のマスターレンズMLおよび置換後のレンズ全系の両方とも良好な光学性能を保持している。
【0094】
従来、放送用カメラ等に使用されるズームレンズに付属するエクステンダーレンズの倍率は2倍が主流であった。ズームレンズは高倍率化に伴い望遠側のFナンバーが大きくなる傾向にある。それに加え、2倍のエクステンダーレンズを使用した場合は、さらにFナンバーが2倍の大きさとなってしまう。望遠側のFナンバーを小さくするためにはレンズ系の最も物体側のレンズの大径化が必要になるが、そうすると重量が増加し使用者の負担が増してしまうため、安易に大径化を進めることはできない。これらの事情から、倍率が1.4倍程度のエクステンダーレンズに対する需要が増加しつつある。上記実施例1~4はこの需要に応えるレンズ系である。
【0095】
次に、本開示の実施形態に係る撮像装置について説明する。図15に、本開示の実施形態の撮像装置の一例として、本開示の実施形態に係る光学系1を用いた撮像装置10の概略構成図を示す。撮像装置10としては、例えば、放送用カメラ、映画撮影用カメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、および監視用カメラ等を挙げることができる。
【0096】
撮像装置10は、光学系1と、光学系1の像側に配置された光学部材2と、光学部材2の像側に配置された撮像素子3とを備えている。光学部材2はフィルタおよび/又はプリズムである。光学系1は、マスターレンズMLと、エクステンダーレンズEXとを備えている。なお、図15では、光学系1が備える合焦部F、変倍部V、開口絞りSt、結像部RL、RL1レンズ群RL1、RL2レンズ群RL2、RL3レンズ群RL3、およびエクステンダーレンズEXを概略的に図示している。
【0097】
撮像素子3は光学系1により形成される光学像を電気信号に変換するものであり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を用いることができる。撮像素子3は、その撮像面が光学系1の像面に一致するように配置される。なお、図15では1つの撮像素子3のみ図示しているが、撮像装置10は3つの撮像素子を有するいわゆる3板方式の撮像装置であってもよい。
【0098】
撮像装置10はまた、撮像素子3からの出力信号を演算処理する信号処理部4と、光学系1の変倍を制御する変倍制御部5と、光学系1の合焦を制御するフォーカス制御部6とを備えている。変倍制御部5によりRL2レンズ群RL2とエクステンダーレンズEXとの置換が行われる。
【0099】
以上、実施形態および実施例を挙げて本開示の技術を説明したが、本開示の技術は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、および非球面係数等は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【符号の説明】
【0100】
1 光学系
2 光学部材
3 撮像素子
4 信号処理部
5 変倍制御部
6 フォーカス制御部
10 撮像装置
EX エクステンダーレンズ
F 合焦部
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
L11~L17、L21~L25 レンズ
ML マスターレンズ
PP 光学部材
RL 結像部
RL1 RL1レンズ群
RL2 RL2レンズ群
RL3 RL3レンズ群
Sim 像面
St 開口絞り
ta、wa 軸上光束
tb、wb 最大画角の光束
V 変倍部
V1 V1レンズ群
V2 V2レンズ群
V3 V3レンズ群
Z 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15