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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物、塗料組成物、塗装物
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20221005BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20221005BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20221005BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221005BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20221005BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20221005BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20221005BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K5/3492
C08K9/06
C08K3/36
C09D175/04
C09D7/62
C09D7/48
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018563939
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2018043776
(87)【国際公開番号】W WO2019124011
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2017245933
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】神原 リイナ
(72)【発明者】
【氏名】浅井 学文
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 昌史
(72)【発明者】
【氏名】椋田 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】加門 良啓
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-45867(JP,A)
【文献】特開2013-79323(JP,A)
【文献】特開2006-16560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L75/
C09D175/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端が水酸基である分岐構造を有する化合物A、
ポリイソシアネートB
無機粒子C、及び
紫外線吸収剤D を含む樹脂組成物であって、
前記無機粒子Cが、表面にイソシアネート基と反応可能なメルカプト基を有するシリカ粒子であり、
前記化合物Aは、水酸基価が20mg・KOH/g~1000mg・KOH/gであり、末端に水酸基を有するハイパーブランチポリマーである、 樹脂組成物。
【請求項2】
前記化合物A、ポリイソシアネートB、及び前記無機粒子Cの合計質量(100質量%)中における前記化合物Aの含有量が、5質量%以上50質量%以下である、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ハイパーブランチポリマー の重量平均分子量が、550~30000である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートBが、3官能以上のイソシアネートである、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機粒子Cが、イソシアネート基と反応可能なメルカプト基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子である、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記化合物A、前記ポリイソシアネートB、及び前記無機粒子Cの合計質量(100質量%)中における前記無機粒子Cの含有量が、1質量%以上55質量%未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記紫外線吸収剤Dが、 トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤、及び安息香酸フェニル系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる、少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む塗料組成物。
【請求項9】
請求項に記載の塗料組成物の硬化物からなる塗膜を有する塗装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、塗料組成物、塗装物に関する。
本願は、2017年12月22日に、日本に出願された特願2017-245933号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、及びABS樹脂等の合成樹脂は、成形加工が容易であり、軽量且つ耐衝撃性に優れており、様々な分野で使用されている。しかし、これらの樹脂成形品の表面は、耐磨耗性や硬度が不十分であるため、傷や凹みが生じ易いという課題がある。
【0003】
これらの課題を解決するべく、ウレタン樹脂組成物を含む塗料で樹脂成形品の表面をコーティングすることが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、特定のポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、及びシリカ粒子を含むウレタン樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-01897号公報
【文献】特開平10-45867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載されているウレタン樹脂組成物は、塗膜の外観、耐磨耗性や硬度が不十分であった。
【0007】
本発明は、塗膜の外観、耐摩耗性、及び硬度に優れた塗料組成物、並びにこのような塗料組成物を製造するための樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の態様を有する。
[1]末端が水酸基である分岐構造を有する化合物A、
ポリイソシアネートB、及び
無機粒子Cを含む樹脂組成物であって、
前記無機粒子Cが、表面に水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有する樹脂組成物。
[2]前記化合物Aが、樹状の分岐構造を有するポリマーである、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記化合物Aが、末端に水酸基を有するハイパーブランチポリマーである、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記化合物A、ポリイソシアネートB、及び無機粒子Cの合計質量(100質量%)中における前記化合物Aの含有量が、5質量%以上50質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記樹状の分岐構造を有するポリマーの重量平均分子量が、550~30000である、[2]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前記化合物Aの水酸基価が、20mg・KOH/g~1000mg・KOH/gである、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]前記ポリイソシアネートBが、3官能以上のイソシアネートである、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]前記無機粒子Cの水酸基又はイソシアネート基と反応可能な前記官能基が、メルカプト基、イソシアネート基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]前記無機粒子Cが、水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子である、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]前記化合物A、ポリイソシアネートB、及び無機粒子Cの合計質量(100質量%)中における前記無機粒子Cの含有量が、1質量%以上55質量%未満である、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11]トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤、及び安息香酸フェニル系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる、少なくとも1つの紫外線吸収剤を含む、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12][1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む塗料組成物。
[13][12]に記載の塗料組成物の硬化物からなる塗膜を有する塗装物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物により、塗膜の外観、耐摩耗性、及び硬度に優れた塗料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、末端が水酸基である分岐構造を有する化合物A、ポリイソシアネートB、及び無機粒子Cを含む。
【0011】
<末端が水酸基である分岐構造を有する化合物A>
本発明における化合物Aは分岐構造を有し、分岐構造の末端に1つ又は複数の水酸基を有する。
分岐構造の末端に水酸基を有することにより、本発明の樹脂組成物により形成される塗膜の架橋密度が増加し、塗膜の耐摩耗性及び硬度が向上する。
【0012】
化合物Aとしては、分岐構造を有するアルコール類、末端に水酸基を持った樹状の分岐構造を有するポリマーが挙げられる。
無機粒子Cの含有量が少ない場合であっても、耐摩耗性及び硬度が向上する点で末端に水酸基を持った樹状の分岐構造を有するポリマーが好ましい。
【0013】
分岐構造を有するアルコール類としては、メチルプロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ポリカプロラクトントリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ポリカプロラクトンテトラオール等が挙げられる。
【0014】
樹状の分岐構造を有するポリマーとしては、デンドリマー、ハイパーブランチポリマーが挙げられ、合成が簡便であり、工業生産が容易である点からハイパーブランチポリマーが好ましい。
【0015】
デンドリマーとしては、Perstorp社製のBoltorn(登録商標。以下同じ。) H20(水酸基価490~520mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)2100(カタログ値))、Boltorn H311(水酸基価230~260mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)5700(カタログ値))、Boltorn H2004(水酸基価105~125mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)3200(カタログ値))、Boltorn P500(水酸基価560~630mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)1800(カタログ値))、Boltorn P1000(水酸基価430~490mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)1500(カタログ値))、Boltorn U3000(水酸基価15mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)6500(カタログ値))、Boltorn W3000(水酸基価15mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)9000(カタログ値))等が挙げられる。
【0016】
ハイパーブランチポリマーとしては、BASF社製のBasonol(登録商標。以下同じ。) HPE 1170B(水酸基価280mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)1800(カタログ値))、Basonol HPE 021(水酸基価190mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)1400(カタログ値))、Basonol HPE-026(水酸基価180mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)2600(カタログ値))、Basonol HPE-046(水酸基価250mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)4800(カタログ値))等が挙げられる。
【0017】
化合物Aは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
また、化合物Aの分子量(化合物Aがポリマーの場合には、重量平均分子量を意味する。)は550~30000が好ましく、600~10000がより好ましく、800~5000がさらに好ましい。
化合物Aの分子量が前記下限値以上であれば、塗膜の硬度が向上しやすい。化合物Aの重量平均分子量が前記上限値以下であれば、塗膜の外観が向上しやすい。
【0019】
なお、化合物Aがポリマーの場合の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)である。
【0020】
化合物Aは、1分子当たり3つ以上の水酸基を有することが好ましい。
1分子当たり3つ以上の水酸基を有することで、塗膜の架橋密度が増加し、耐摩耗性及び硬度が向上しやすい。
【0021】
化合物Aの水酸基価は、20mg・KOH/g~1000mg・KOH/gが好ましく、50mg・KOH/g~600mg・KOH/gがより好ましい。
化合物Aの水酸基価が前記下限値以上であれば、塗膜の硬度が向上しやすい。化合物Aの水酸基価が前記上限値以下であれば、化合物Aの樹脂組成物中の溶解性が良好となりやすい。
【0022】
本発明の樹脂組成物における化合物Aの含有量は、化合物A、ポリイソシアネートB、及び無機粒子Cの合計質量(100質量%)中、5質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、5質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。
化合物Aの含有量が前記上限値以下であれば、得られる塗膜の耐摩耗性及び硬度が向上しやすい。化合物Aの含有量が前記下限値以上であれば、得られる塗膜の外観及び塗膜を形成した後の乾燥性が向上しやすい。
【0023】
<ポリイソシアネートB>
本発明におけるポリイソシアネートBは、化合物Aの水酸基と反応することでウレタン結合を形成し、塗膜の架橋密度を増加させ、耐候性及び耐汚染性を向上させる。
【0024】
ポリイソシアネートBとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4-ジシクロヘキシルジイソシアネート等の2官能のイソシアネート、上記の2官能のイソシアネートを出発原料として合成されたビュレット体、トリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート体、アロファネート体等の3官能以上のイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
3官能以上のイソシアネートとしては、旭化成株式会社製のヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体(商品名:デュラネート(登録商標。以下同じ。)24A-100)、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(商品名:デュラネートP-301-75E)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デュラネートTPA-100)、ブロック型イソシアネート(商品名:デュラネートMF-K60X)、三井化学社製の1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトリメチロールプロパンアダクト体(商品名:タケネート(登録商標。以下同じ。)D-120N)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート体(商品名:タケネートD-127N)、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(商品名:タケネートD-140N)、住化コベストロウレタン社製のヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体(商品名:デスモジュール(登録商標。以下同じ。)XP2679)等が挙げられる。
【0026】
ポリイソシアネートBとしては、塗膜の架橋密度を増加させ、耐候性及び耐汚染性を向上させる観点から、3官能以上のイソシアネートが好ましい。
ポリイソシアネートBは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
ポリイソシアネートBが有するイソシアネート基の、化合物Aの水酸基に対する当量比(ポリイソシアネートBが有するイソシアネート基(モル)/化合物Aの水酸基(モル))は0.5~2.0が好ましく、0.7~1.8がより好ましい。
ポリイソシアネートBが有するイソシアネート基の当量比が前記下限値以上であれば、塗膜の架橋密度が高くなり、耐溶剤性、耐水性、及び耐候性が向上しやすい。ポリイソシアネートBが有するイソシアネート基の当量比が前記上限値以下であれば、塗膜を形成した後の乾燥性が向上しやすい。
【0028】
<無機粒子C>
本発明における無機粒子Cは、表面に水酸基と反応可能な官能基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有する。
無機粒子Cが表面に水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有することにより、塗膜の耐摩耗性が向上する。
【0029】
水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基としてはメルカプト基、イソシアネート基、エポキシ基、水酸基、アミノ基、及びカルバモイル基等が挙げられる。
水酸基又はイソシアネート基との反応性が高いことから、無機粒子Cの水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基としては、メルカプト基、イソシアネート基、及びエポキシ基が好ましい。
【0030】
無機粒子Cは、例えば、表面に水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有さないシリカ粒子を、水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤で表面処理することで得ることができる。
【0031】
無機粒子Cの分散液として、例えば、CIKナノテック社製のSIRMEK20WT%-M70、SIRMEK50WT%-E86、SIRMIBK15WT%-M96、SIRMIBK30WT%-S39、日産化学工業社製のMEK-EC-2130Y、MEK-EC-6150P、MEK-EC-7150P等が挙げられる。
【0032】
無機粒子Cは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明の樹脂組成物における無機粒子Cの含有量は、化合物A、ポリイソシアネートB、及び無機粒子Cの合計質量(100質量%)中、1質量%以上55質量%未満が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量以下%がさらに好ましい。
無機粒子Cの含有量が前記上限値以下であれば、長期間、高外観を維持しやすく、コストを下げやすい。無機粒子Cの含有量が前記下限値以上であれば、得られる塗膜の耐摩耗性及び硬度が向上しやすい。
【0034】
また、無機粒子Cの平均粒子径の上限値は、300nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、50nm以下がさらに好ましい。平均粒子径の下限値は、2nm以上が好ましく、4nm以上がより好ましい。
例えば、無機粒子Cの平均粒子径は、2nm以上300nm以下が好ましく、2nm以上100nm以下がより好ましく、4nm以上100nm以下がさらに好ましく、4nm以上50nm以下が特に好ましい。
無機粒子Cの平均粒子径が前記下限値以上であれば、擦傷性が向上しやすい。無機粒子Cの平均粒子径が前記上限値以下であれば、塗膜の透明性を維持しやすい。
【0035】
なお、無機粒子Cの平均粒子径は、BET吸着法による比表面積測定値(JIS Z8830に準ずる)から換算した値を用いる。
【0036】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は、化合物A、ポリイソシアネートB、無機粒子C以外に、本発明の趣旨を損なわない限り、その他の成分を含んでもよい。
【0037】
例えば、本発明の樹脂組成物は、末端が水酸基の直鎖状の化合物を含んでいてもよい。
末端が水酸基の直鎖状の化合物としては、グリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールなどが挙げられる。
その中でも、高い硬度と長期間にわたっての高外観を維持できる点から、ポリカーボネートジオールが好ましい。
【0038】
ポリカーボネートジオールの分子量としては、重量平均分子量(Mw)で、300以上10000以下が好ましく、400以上8000以下がより好ましく、500以上7500以下がさらに好ましい。
ポリカーボネートジオールの重量平均分子量(Mw)が前記下限値以上であれば、長期間、高外観を維持しやすい。ポリカーボネートジオールの重量平均分子量(Mw)が前記上限値以下であれば、耐擦傷性が向上しやすい。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、塗膜に耐候性を付与するため、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候性付与剤を含んでいてもよい。
耐候性付与剤として、紫外線吸収剤を使用することが好ましく、紫外線吸収剤及び光安定剤を併用することがより好ましい。
【0040】
紫外線吸収剤としてはトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤、及び安息香酸フェニル系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる、少なくとも1つの紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0041】
一つの態様として、本発明の樹脂組成物を含む塗料組成物に多量に含有させることが可能である点から、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい。別の態様として、ポリカーボネート等の基材の黄変を防止できる点から、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0042】
本発明において紫外線吸収剤としては、最大吸収波長が240~380nmの範囲にある紫外線吸収剤が好ましい。
【0043】
紫外線吸収剤としては、例えば、BASF社製の2-[4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシプロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン]及び2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシプロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン]の混合物(商品名:チヌビン(登録商標。以下同じ。)400)、2-[4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)]-1,3,5-トリアジン(商品名:チヌビン479)、トリス[2,4,6-[2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル}]-1,3,5-トリアジン](商品名:チヌビン777)、2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクチロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニルサリシレート、3-ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン-1,3-ジベンゾエート、2-(2-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾ-ル物等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明の樹脂組成物における紫外線吸収剤の含有量は、化合物A、ポリイソシアネートB、及び無機粒子Cの合計質量(100質量部)に対して、1質量部~40質量部が好ましく、5質量部~30質量部がより好ましい。
紫外線吸収剤の含有量が前記下限値以上であれば、塗膜の耐候性が向上しやすい。紫外線吸収剤の含有量が前記上限値以下であれば、塗料組成物の硬化性、塗膜の強靭性、耐熱性、及び耐摩耗性が向上しやすい。
【0045】
光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤を使用することができる。ヒンダードアミン系光安定剤は、紫外線吸収剤と併用することで、硬化膜の耐候性をより向上させることができる。
【0046】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ADEKA社製の1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β,β-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5])ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(商品名:アデカスタブ(登録商標。以下同じ。)LA-63P)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β,β-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5])ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA-68P)、BASF社製の1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの縮合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(例えば、チヌビン(商品名。以下同じ。)123)、2-ブチル-2-[3,5-ジ(tert-ブチル)-4-ヒドロキシベンジル]マロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(商品名:チヌビン144)、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン(商品名:チヌビン152)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)とセバシン酸メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)との混合物(商品名:チヌビン292)等が挙げられる。
【0047】
ヒンダードアミン系光安定剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明の樹脂組成物におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、化合物A、ポリイソシアネートB、及び無機粒子Cの合計質量(100質量部)に対して、0.1質量部~5質量部が好ましく、0.5質量部~2質量部がより好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が前記下限値以上であれば、塗膜の耐候性が向上しやすい。ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が前記上限値以下であれば、塗料組成物の硬化性、塗膜の強靭性、耐熱性、及び耐摩耗性が向上しやすい。
【0049】
<樹脂組成物の製造方法>
例えば、本発明の樹脂組成物は、化合物A、ポリイソシアネートB、及び無機粒子Cを均一に混合することによって製造できる。必要に応じて、前述したその他の成分を加えてもよい。
【0050】
混合方法は、各成分を均一に混合できる混合方法であれば限定されず、公知の混合方法を採用できる。
【0051】
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、本発明の樹脂組成物を含む。必要に応じて、硬化促進触媒、有機溶剤、耐候性付与剤、酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤、及び防曇剤等が本発明の樹脂組成物に配合される。
【0052】
<硬化促進触媒>
本発明の塗料組成物は、室温又は加熱して硬化させることができるが、必要に応じて硬化促進触媒を含んでいてもよい。
【0053】
硬化促進触媒としては、トリエチルアミン、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、ジラウリル酸ジ-n-ブチルスズ、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBNと称す。)の塩や、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBUと称す。)の塩等の3級アミン塩等が挙げられる。3級アミン塩に用いる酸としては、飽和脂肪族カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、メチルエチル酢酸、トリメチル酢酸、カプロン酸、イソカプロン酸、ジエチル酢酸、2,2-ジメチル酪酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2-エチルヘキサン酸、n-ウンデシレン酸、ラウリン酸、n-トリデシレン酸、ミリスチン酸、n-ペンタデシレン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、n-ノナデシレン酸、アラキジン酸、n-ヘンアイコ酸等)、不飽和脂肪族カルボン酸(アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、2-ペンテン酸、3-ペンテン酸、アリル酢酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、3-メチルクロトン酸、2-ヘキセン酸、3-ヘキセン酸、4-ヘキセン酸、5-ヘキセン酸、2-メチル-2-ペンテン酸、3-メチル-2-ペンテン酸、4-メチル-2-ペンテン酸、4-メチル-2-ペンテン酸、4-メチル-3-ペンテン酸、2-エチルクロトン酸、2-へプテン酸、2-オクテン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレステアリン酸、アラキドン酸等)、飽和脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、メチルコハク酸、アジピン酸、エチルコハク酸、ピメリン酸、プロピルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)、脂環式カルボン酸(シクロプロパンカルボン酸、シクロブタンカルボン酸、シクロブテンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロペンテンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキセンカルボン酸、シクロヘプタンカルボン酸、シクロヘプテンカルボン酸等)、芳香族カルボン酸(安息香酸、アルキル置換安息香酸(3-メチル安息香酸、4-メチル安息香酸、3-エチル安息香酸、4-エチル安息香酸等)、4-ヒドロキシ安息香酸、アルコキシ置換安息香酸(2-メトキシ安息香酸、3-メトキシ安息香酸、4-メトキシ安息香酸等)、メルカプト安息香酸、アミノ置換安息香酸、2-ナフトエ酸等)、ヒドロキシカルボン酸(アスコルビン酸等)、ケトカルボン酸(レブリン酸等)、モノアルキル炭酸(メチル炭酸及びエチル炭酸等);芳香族ヒロドキシ化合物(フェノール、アルキル置換フェノール(o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2-エチルフェノール、3-エチルフェノール、4-エチルフェノール、キシレノール、トリメチルフェノール、テトラメチルフェノール、ペンタメチルフェノール等)、アルコキシ置換フェノール(2-メトキシフェノール、3-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2-エトキシフェノール、3-エトキシフェノール、4-エトキシフェノール等)、ハロゲン置換フェノール(フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等)、ナフトール、アミノフェノール、ニトロフェノール、多価フェノール(カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、ビフェノール、ビスフェノール、ピロガロール、フロログルシノール、ヘキサヒドロキシベンゼン等))、チオフェノール、炭酸、ホウ酸等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
硬化促進触媒の含有量は、ポリイソシアネートBの質量(100質量部)に対して0.001質量部~10質量部が好ましく、0.01質量部~5質量部がより好ましく、0.1質量部~1質量部がさらに好ましい。
【0055】
<有機溶剤>
有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、ジアセトンアルコール、2-メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2-エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2-ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ターシャリーアミルアルコール等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、ギ酸ブチル等のカルボン酸エステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ペンタンキシレン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
[塗装物]
本発明の塗装物は、本発明の塗料組成物の硬化物からなる塗膜を有する。
本発明の塗装物は、本発明の塗料組成物を公知の塗装方法で基材に塗布し、基材に塗布された本発明の塗料組成物を硬化させることにより得られる。
【0057】
基材としては、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の金属、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0058】
特に、本発明の塗装物は、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂を基材として用いたときの基材の表面の耐摩耗性向上に有効である。
【0059】
本発明の塗料組成物の基材への塗布は、ハケ塗り、バーコート、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、カーテンコート等の公知の方法で行うことができる。
【0060】
基材に塗布された本発明の塗料組成物を硬化させる際の硬化温度は、基材の耐熱性や熱変形性等を考慮して適宜設定すればよいが、20℃以上200℃以下が好ましく、60℃以上150℃以下がより好ましい。
基材に塗布された本発明の塗料組成物を硬化させる際の硬化時間は、数分から数時間が好ましい。
【0061】
本発明の塗装物における、本発明の塗料組成物の硬化物からなる塗膜の厚さは、1~50μmが好ましい。
本発明の塗装物における塗膜の厚さが前記下限値以上であれば、塗膜の耐摩耗性及び硬度が良好となり、かつ長期間、高外観を維持しやすい。本発明の塗装物における塗膜の厚さが前記上限値以下であれば、クラックを抑制しやすい。
【実施例
【0062】
以下に実施例及び比較例を掲げ、本発明についてさらに詳しく説明する。
実施例において、特に記載がなければ、「部」は「質量部」を表す。
【0063】
各評価は以下の方法で行った。
【0064】
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により以下の条件で測定し、標準ポリスチレン換算により計算した。
装置:東ソー社製 高速GPC装置 HLC-8320GPC型
UV検出器:東ソー社製 UV-8320型
流速:0.35mL/min
注入口温度:40℃
オーブン温度:40℃
RI温度:40℃
UV波長:254nm
サンプル注入量:10μL
カラム:(1)~(3)の順に3本連結。
(1)東ソー社製 TSKgel(登録商標。以下同じ。) superHZM-M(4.6mmID×15cmL)
(2)東ソー社製 TSKgel superHZM-M(4.6mmID×15cmL)
(3)東ソー社製 TSKgel HZ2000(4.6mmID×15cmL)
ガードカラム:東ソー社製 TSKguardcolumn SuperHZ-L(4.6mmID×3.5cmL)
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)(安定剤としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含む。)
サンプル濃度:樹脂分0.2質量%に調整
【0065】
<評価サンプル>
実施例又は比較例で得られた各塗料組成物を、厚さ3mmのポリカーボネート樹脂板(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:「IUPILON(登録商標。以下同じ。) ML-300」)に、硬化後の被膜の厚さが10μmになるようにバーコート塗装した。その後、120℃で、30分間加熱処理することによりポリカーボネート樹脂板上に塗膜を形成し評価を行った。
【0066】
<塗膜の外観>
塗膜の外観は、JIS K7136:2000に準拠してヘイズメーター(HM-65W、株式会社村上色彩技術研究所製)にて拡散透過率(ヘイズ値)を測定することにより評価した。
【0067】
<塗膜の耐摩耗性>
塗膜の耐摩耗性は、平面摩耗試験機(KASAI社製スクラッチ試験機)を使用し、スチールウール#000を評価サンプル上に置き、250g/1.1cmの荷重にてラビングテスターで50往復摩耗した後、ヘイズメーター(HM-65W、株式会社村上色彩技術研究所製)にて拡散透過率(ヘイズ値)を測定した。
測定したヘイズ値から、初期へイズ値を引いた値(Δヘイズ値)により耐摩耗性の判定を行った。
【0068】
<塗膜の硬度>
塗膜の硬度は、ISO/DIS 15184に準拠し、鉛筆硬度で評価を行った。試験後、全く傷のつかない硬度のうち、最も高い硬度を塗膜の鉛筆硬度として採用した。
【0069】
(無機粒子の分散液C-1)
フラスコAに東京化成工業社製の3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン1.2g、蒸留水0.6g、テトラヒドロフラン2.1gを加え、30℃で3時間撹拌して、シラノール溶液を得た。
フラスコBに日産化学工業社製のメチルイソブチルケトン分散シリカゾル(商品名:「MIBK-ST」、溶媒:メチルイソブチルケトン、固形分濃度:30質量%、平均粒子径:15nm)100gを加え、70℃に昇温した。
フラスコBにフラスコAのシラノール溶液を滴下し、滴下終了後70℃で1時間攪拌し、メルカプト基を有する無機粒子の分散液C-1(固形分20%)を得た。
【0070】
(末端が水酸基の直鎖状の化合物の製造方法)
3つ口ナス型フラスコに、冷却管及び攪拌機を装着し、メチルイソブチルケトン(MIBK)158.1gを加え、窒素雰囲気下で攪拌しながら、65℃に昇温した。これに、MIBK46.0g、メタクリル酸ヒドロキシエチル5.0g(38mmol)、シクロヘキシルメタクリレート79.7g(474mmol)、及び重合開始剤(日油社製パーヘキシルPV、固形分70%)4.8gの混合物を2時間かけて滴下後、65℃で5時間攪拌した。さらに、85℃に昇温し、1時間30分攪拌した後、室温まで冷却し、末端が水酸基の直鎖状の化合物である合成アクリルポリオール1(固形分30%、質量平均分子量(Mw)20000、理論水酸基価25mg・KOH/g)を得た。
【0071】
(実施例1)
化合物Aとして、Boltorn P500(成分については後述する。以下同じ。)を30部、プラクセル(登録商標。以下同じ。)305を5部、ポリイソシアネートBとして、デュラネートTPA-100を63部、無機粒子Cとして、無機粒子の分散液C-1を15部、紫外線吸収剤として、チヌビン400を10部、チヌビン123を0.5部、表面調整剤として、BYK-333を0.2部使用し、これらを均一に混合し、さらに酢酸ブチルを用い、固形分が約40%となるように希釈した。
得られた塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0072】
(実施例2~14及び比較例1~3)
表1~3に示す組成で、実施例1と同様に塗料組成物を調製した。
得られた塗料組成物の評価結果を、表1~3に示す。
なお、表中の数値は質量部を示し、かっこ内の数値は固形分値(質量部)を示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
表中の成分は以下の通りである。
・Boltorn P500:
Perstorp社製の分岐状ポリオール、固形分99%、水酸基価:600mgKOH/g、重量平均分子量(Mw):1800、10.70mmol/g。
・Basonol HPE 1170B:
BASF社製の末端に水酸基を有するハイパーブランチポリマー、固形分70%、水酸基価:280mgKOH/g、重量平均分子量(Mw):1800、4.99mmol/g。
・プラクセル305:
ダイセル化学社製のポリカプロラクトントリオール、固形分100%、水酸基価305mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw):550、5.42mmol/g、分子内に分岐点を1個有する。
・合成アクリルポリオール1:
固形分53%、0.45mmol/g。
【0077】
・デュラネートTPA-100:
旭化成株式会社製のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、固形分100%、5.50mmol/g。
・デュラネート24A-100:
旭化成株式会社製のヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体、固形分100%、5.60mmol/g。
・無機粒子の分散液C-2:
CIKナノテック社製のイソシアネート基含有MEK分散シリカゾルSIRMEK20WT%-M70(固形分19%、シリカ粒子の平均粒子径:10~15nm)
・MEK-ST:
日産化学工業社製のMEK分散シリカゾル(固形分30%、シリカ粒子の平均粒子径:10~15nm、非反応性無機粒子)
【0078】
・チヌビン400:
BASF社製の2-[4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシプロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン]及び2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシプロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン]の混合物、固形分85%。
・チヌビン123:
BASF社製のデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物。
【0079】
・BYK-333:
ビックケミー・ジャパン株式会社製のシリコン系表面調整剤。
【0080】
表3に示すとおり、比較例1では、表面に水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を持たない無機粒子を用いたため、耐摩耗性が不十分となった。
比較例2では、末端が水酸基の分岐構造を有する化合物Aを含有しないため耐摩耗性が不十分となった。
比較例3は、表面に水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有する無機粒子を含有しないため、耐摩耗性が不十分となった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の樹脂組成物は、外観、耐摩耗性、及び硬度等に優れているため、自動車用の各種ランプレンズ、グレージング用ハードコート等の用途に好適に用いることができる。