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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】生体情報算出装置及び生体情報算出方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20221005BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A61B5/1455
A61B5/00 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021029206
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022130179
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2021-03-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、長寿・障害総合研究事業 長寿科学研究開発事業「WEBカメラを用いた脈拍・呼吸・酸素飽和度の非接触型遠隔リアルタイムモニタリングシステムの開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】510241915
【氏名又は名称】エバ・ジャパン 株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】野呂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高良 洋平
(72)【発明者】
【氏名】西舘 泉
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-503323(JP,A)
【文献】特表2002-524177(JP,A)
【文献】特開2016-030214(JP,A)
【文献】特開2000-350702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0166150(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108090410(CN,A)
【文献】特開2017-189536(JP,A)
【文献】特開2012-095940(JP,A)
【文献】川瀬達也,他7名,RGB画像に基づく静脈閉塞に対する皮膚血流応答の評価,2011年春季 <第58回>応用物理学関係連合講演会[講演予稿集],26p-BH-6,公益社団法人応用物理学会,2011年
【文献】KHATUN, F. et al.,Transcutaneous monitoring of hemoglobin derivatives during methemoglobinemia in rats using spectral diffuse reflectance,Journal of Biomedical Optics,2021年02月13日,Vol.26, No.3,033708,<DOI:https://doi.org/10.1117/1.JBO.26.3.033708>
【文献】NISHIDATE, I. et al.,Estimation of Melanin and Hemoglobin Using Spectral Reflectance Images Reconstructed from a Digital RGB Image by the Wiener Estimation Method,sensors,2013年06月19日,Vol.13, No.6,pp.7902-7915,<DOI:https://doi.org/10.3390/s130607902>
【文献】NISHIDATE, I. et al.,Noninvasive imaging of human skin hemodynamics using a digital red-green-blue camera,Journal of Biomedical Optics,2011年08月01日,Vol.16, No.8,086012,<DOI:https://doi.org/10.1117/1.3613929>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1455-5/1464
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体である被測定対象の画像情報から前記被測定対象の1又は複数の経皮的動脈血酸素飽和度を含む生体情報を算出する生体情報算出装置であって、
前記画像情報をRGB形式で取得する取得部と、
取得した前記画像情報の表色をRGB形式からXYZ形式又はLab形式へと変換式を用いて変換する表色系変換部と、
前記XYZ形式又は前記Lab形式の前記表色から酸素化血液色素濃度及び脱酸素化血液色素濃度を、推定式を用いて推定する色素濃度推定部と、
前記酸素化血液色素濃度及び前記脱酸素化血液色素濃度の少なくとも1つのパワースペクトル密度を算出する高速フーリエ変換部と、
前記パワースペクトル密度のピークから前記1又は複数の前記生体情報を抽出する生体情報抽出部と、
を備え
前記経皮的動脈血酸素飽和度は、前記酸素化血液色素濃度の前記パワースペクトル密度における心拍由来の振動成分のピークと、前記脱酸素化血液色素濃度の前記パワースペクトル密度における心拍由来の振動成分のピークと、の比を所定の関数に入力することで出力として得られる、
生体情報算出装置。
【請求項2】
前記生体情報は、さらに脈拍数を含み、
前記脈拍数は、前記酸素化血液色素濃度又は前記脱酸素化血液色素濃度の前記パワースペクトル密度における心拍由来の振動成分がピークとなった際の周波数から算出される、請求項に記載の生体情報算出装置。
【請求項3】
前記生体情報は、さらに組織酸素飽和度を含み、
前記組織酸素飽和度は、前記酸素化血液色素濃度を前記酸素化血液色素濃度及び前記脱酸素化血液色素濃度の和で除することで算出される、請求項に記載の生体情報算出装置。
【請求項4】
前記生体情報は、さらに呼吸数を含み、
前記呼吸数は、前記酸素化血液色素濃度又は前記脱酸素化血液色素濃度の前記パワースペクトル密度における呼吸由来の振動成分がピークとなった際の周波数から算出される、請求項に記載の生体情報算出装置。
【請求項5】
生体である被測定対象の画像情報から前記被測定対象の1又は複数の経皮的動脈血酸素飽和度を含む生体情報を算出する生体情報算出装置が行う生体情報算出方法であって、
前記画像情報をRGB形式で取得する第1のステップと、
取得した前記画像情報の表色をRGB形式からXYZ形式又はLab形式へと変換式を用いて変換する第2のステップと、
前記XYZ形式又は前記Lab形式の前記表色から酸素化血液色素濃度及び脱酸素化血液色素濃度を、推定式を用いて推定する第3のステップと、
前記酸素化血液色素濃度及び前記脱酸素化血液色素濃度の少なくとも1つのパワースペクトル密度を算出する第4のステップと、
前記パワースペクトル密度のピークから前記1又は複数の前記生体情報を抽出する第5のステップと、
を備え
前記経皮的動脈血酸素飽和度は、前記酸素化血液色素濃度の前記パワースペクトル密度における心拍由来の振動成分のピークと、前記脱酸素化血液色素濃度の前記パワースペクトル密度における心拍由来の振動成分のピークと、の比を所定の関数に入力することで出力として得られる、
生体情報算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報算出装置及び生体情報算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された装置では、カメラと、2つの列状LED照明装置(以下、これを照明システムと呼んでもよい)と、制御部と、処理部と、を備え、哺乳類の経皮的動脈血酸素飽和度SpOを対象となる哺乳類に装置を接触させずに測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】US2017/0127988A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に記載されたような従来の手法においては、生体情報の測定には撮影環境を整えるために専用の照明システムが必要であるという課題がある。
【0005】
本発明の実施の形態の一態様は、スマートフォンなどの一般的なカメラ機能に用いられる機器を流用し汎用的な構成で生体情報を算出する生体情報算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
生体である被測定対象の画像情報から被測定対象の1又は複数の生体情報を算出する生体情報算出装置であって、画像情報をRGB形式で取得する取得部と、取得した画像情報の表色をRGB形式からXYZ形式又はLab形式へと変換する表色系変換部と、XYZ形式又はLab形式の表色から酸素化血液色素濃度及び脱酸素化血液色素濃度を推定する色素濃度推定部と、酸素化血液色素濃度及び脱酸素化血液色素濃度の少なくとも1つのパワースペクトル密度を算出する高速フーリエ変換部と、パワースペクトル密度のピークから1又は複数の生体情報を抽出する生体情報抽出部と、を備える生体情報算出装置を提供することを目的とする。
【0007】
生体である被測定対象の画像情報から前記被測定対象の1又は複数の生体情報を算出する生体情報算出装置が行う生体情報算出方法であって、画像情報をRGB形式で取得する第1のステップと、取得した画像情報の表色をRGB形式からXYZ形式又はLab形式へと変換する第2のステップと、XYZ形式又はLab形式の表色から酸素化血液色素濃度及び脱酸素化血液色素濃度を推定する第3のステップと、酸素化血液色素濃度及び脱酸素化血液色素濃度の少なくとも1つのパワースペクトル密度を算出する第4のステップと、パワースペクトル密度のピークから1又は複数の生体情報を抽出する第5のステップと、を備える生体情報算出方法を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施の形態の一態様によれば、スマートフォンなどの一般的なカメラ機能に用いられる機器を流用し汎用的な構成で生体情報を算出する生体情報算出装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施の形態による生体情報算出装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施の形態による補助記憶装置に記憶されている情報を示す図である。
図3図3は、本実施の形態による一定時間における酸素化血液色素濃度を示すグラフである。
図4図4は、図3のグラフに対して高速フーリエ変換を行うことで得られるグラフである。
図5図5は、本実施の形態による一定時間における脱酸素化血液色素濃度を示すグラフである。
図6図6は、図5のグラフに対して高速フーリエ変換を行うことで得られるグラフである。
図7図7は、本実施の形態による生体情報算出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を用いて、本発明の実施の形態の一態様を詳述する。
【0011】
(本実施の形態)
まず図1を用いて利用段階における生体情報算出装置1について説明する。図1は、本実施の形態による生体情報算出装置1の構成を示すブロック図である。生体情報算出装置1は、生体である被測定対象の画像情報から測定対象の1又は複数の生体情報を算出する。
【0012】
生体情報算出装置1は、中央演算装置2、主記憶装置3及び補助記憶装置4を備える。例えばスマートフォンは、生体情報算出装置1及び撮像装置10を備える。中央演算装置2は、例えばCPU(Central Processing Unit)であって、主記憶装置3に記憶されたプログラムを呼び出すことで処理を実行する。主記憶装置3は、例えばRAM(Random Access Memory)であって、後述の取得部5、表色系変換部6、色素濃度推定部7、高速フーリエ変換部8及び生体情報抽出部9といったプログラムを記憶する。
【0013】
補助記憶装置4は、例えばSSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)であって、変換係数テーブルTB1や推定式係数テーブルTB2や関数係数テーブルTB3といったテーブルを記憶する。
【0014】
取得部5は、カメラなどの撮像装置10から例えば10秒間人の顔が撮像された複数の時系列的に連続する画像情報をRGB形式で取得する。表色系変換部6は、画像情報の表色をRGB形式からXYZ形式又はLab形式へと変換式を用いて変換する。
【0015】
色素濃度推定部7は、XYZ形式又はLab形式の表色から酸素化血液色素濃度CHbO及び脱酸素化血液色素濃度CHbRを、推定式を用いて推定する。高速フーリエ変換部8は、酸素化血液色素濃度CHbO及び脱酸素化血液色素濃度CHbRの少なくとも1つのパワースペクトル密度を高速フーリエ変換により算出する。
【0016】
生体情報抽出部9は、パワースペクトル密度のピークPSDHbO,PSDHbRから1又は複数の生体情報をする、又は/及び、酸素化血液色素濃度CHbOと酸素化血液色素濃度CHbO及び脱酸素化血液色素濃度CHbRの和との比から生体情報を抽出する。ここでピークとは、パワースペクトル密度が極大かつ最大となることを指す。
【0017】
例えば、生体情報は、経皮的動脈血酸素飽和度SpOを含み、経皮的動脈血酸素飽和度SpOは、酸素化血液色素濃度CHbOのパワースペクトル密度における心拍由来の振動成分のピークPSDHbOと、脱酸素化血液色素濃度CHbRのパワースペクトル密度における心拍由来の振動成分のピークPSDHbRと、の比を所定の関数に入力することで出力として得られる。
【0018】
また例えば、生体情報は、脈拍数HRを含み、脈拍数HRは、酸素化血液色素濃度CHbO又は脱酸素化血液色素濃度CHbRのパワースペクトル密度における心拍由来の振動成分がピークPSDHbO,PSDHbRとなった際の周波数fpHbO,fpHbRから算出される。
【0019】
また例えば、生体情報は、組織酸素飽和度StOを含み、組織酸素飽和度StOは、酸素化血液色素濃度CHbOを酸素化血液色素濃度CHbO及び脱酸素化血液色素濃度CHbRの和で除することで算出される。
【0020】
また例えば、生体情報は、呼吸数BRを含み、呼吸数BRは、酸素化血液色素濃度CHbO又は脱酸素化血液色素濃度CHbRのパワースペクトル密度における呼吸由来の振動成分がピークとなった際の周波数fbHbO,fbHbRから算出される。
【0021】
次に図2を用いて表色系変換部6が変換の際に使用する変換式、色素濃度推定部7が推定の際に使用する推定式及び生体情報抽出部9が経皮的動脈血酸素飽和度SpOを算出する際に使用する所定の関数の詳細について説明する。
【0022】
図2は、本実施の形態による補助記憶装置4に記憶されている情報を示す。補助記憶装置4には、変換式、推定式及び所定の関数の係数を保持する変換係数テーブルTB1、推定式係数テーブルTB2及び関数係数テーブルTB3が情報として記憶されている。
【0023】
表色系変換部6は、下記(1)式に示す変換式を用いてRGB形式からXYZ形式へと表色を変換する。なおRGB形式からLab形式への変換は国際照明委員会が定義するXYZ形式からLab形式への変換式を用いて行う。RGB形式からLab形式への変換に必要なパラメータは変換係数テーブルTB1に記憶されていてもよいものとする。
【数1】
………(1)
パラメータT11,T12,T13,T21,T22,T23,T31,T32,T33は、変換係数テーブルTB1に記憶されており、例えば国際照明委員会が定義する数値とする。
【0024】
色素濃度推定部7は、下記(2)式に示す推定式を用いて酸素化血液色素濃度CHbO及び脱酸素化血液色素濃度CHbRをXYZ形式の表色から推定する。
【数2】
………(2)
【0025】
なお色素濃度推定部7は、下記(3)式に示す推定式を用いて酸素化血液色素濃度CHbO及び脱酸素化血液色素濃度CHbRをLab形式の表色から推定してもよい。
【数3】
………(3)
なおメラニン色素濃度Cは、酸素化血液色素濃度CHbO及び脱酸素化血液色素濃度CHbRをXYZ形式又はLab形式の表色から推定する際に算出される。
【0026】
パラメータL11,L12,L13,L10,L21,L22,L23,L20,L31,L32,L33,L30,L41,L42,L40,L51,L52,L50,L61,L62,L60は、光伝搬モンテカルロシミュレーションを利用して求められる。
【0027】
具体的には例えば、説明変数(X,Y,Z)及び目的変数(C,CHbO,CHbR)の組み合わせを300組用意し、式(2)で示す重回帰式を用いて重回帰分析を行うことでパラメータL11,L12,L13,L10,L21,L22,L23,L20,L31,L32,L33,L30は、算出される。
【0028】
また具体的には例えば、説明変数(a,b)及び目的変数(C,CHbO,CHbR)の組み合わせを300組用意し、式(3)で示す重回帰式を用いて重回帰分析を行うことでパラメータL41,L42,L40,L51,L52,L50,L61,L62,L60は、算出される。
【0029】
生体情報抽出部9は、下記(4)式に示す所定の関数を用いて、経皮的動脈血酸素飽和度SpOを算出する。なお%はvol.%と同意義とする。
【数4】
………(4)
パラメータA,B,Cは、予め測定したSpOとPSDHbO/PSDHbRとの組み合わせから決定されるものとする。なお(4)式で示したように、所定の関数は、適切な曲線で2つの値を関係づけるようなフィッテイング関数であって、例えば指数関数とする。
【0030】
生体情報抽出部9は、下記(5)式を用いて組織酸素飽和度StOを算出する。
【数5】
………(5)
【0031】
次に図4図6を用いて、高速フーリエ変換部8が行う高速フーリエ変換、及び生体情報抽出部9が行う生体情報抽出の詳細について説明する。図3は、本実施の形態による一定時間における酸素化血液色素濃度を示すグラフ15である。図4は、図3のグラフ15に対して高速フーリエ変換を行うことで得られるグラフ20である。
【0032】
図5は、本実施の形態による一定時間における脱酸素化血液色素濃度を示すグラフ25である。図6は、図5のグラフ25に対して高速フーリエ変換を行うことで得られるグラフ30である。
【0033】
図3及び図5に示すように、酸素化血液色素濃度CHbO及び脱酸素化血液色素濃度CHbRは、時系列的に連続する画像における一定範囲内のXYZ形式又はLab形式の表色の例えば平均値から、(2)式又は(3)式を用いて推定される。
【0034】
画像における一定範囲とは、例えば人の顔における額部分とする。額部分を対象としているため、本実施の形態においては、色素濃度推定部7は、脳における酸素化血液色素濃度CHbO及び脱酸素化血液色素濃度CHbRを推定する。
【0035】
また図4及び図6に示すように、パワースペクトル密度の振動成分は、呼吸由来成分と心拍由来成分とに分けることができる。パワースペクトル密度において周波数が5Hz未満の帯域を呼吸由来帯域とし、呼吸由来帯域における振動成分を呼吸由来成分と呼ぶ。
【0036】
図4図6に示すようなパワースペクトル密度において周波数が0.7~4Hzの帯域を心拍由来帯域とし、心拍由来帯域における振動成分を心拍由来成分と呼ぶ。なお呼吸由来帯域は、雑音の影響を除いた帯域である1Hz以下の帯域が特に好ましい。
【0037】
脈拍数HRは、図4図6に図示した周波数fpHbO,fpHbRを用いると、以下(6)式又は(7)式のようにあらわすことができる。
【数6】
………(6)
【数7】
………(7)
【0038】
呼吸数BRは、図4図6に図示した周波数fbHbO,fbHbRを用いると、以下(8)式又は(9)式のようにあらわすことができる。
【数8】
………(8)
【数9】
………(9)
【0039】
次に図7を用いて、本実施の形態における生体情報算出方法について説明する。図7は、本実施の形態による生体情報算出処理の処理手順を示すフローチャートである。まず取得部5は、画像情報をRGB形式で取得する(S1)。
【0040】
次に表色系変換部6は、取得した画像情報の表色をRGB形式からXYZ形式又はLab形式へと変換式を用いて変換する(S2)。次に色素濃度推定部7は、XYZ形式又はLab形式の表色から酸素化血液色素濃度CHbO及び脱酸素化血液色素濃度CHbRを、推定式を用いて推定する(S3)。
【0041】
次に高速フーリエ変換部8は、酸素化血液色素濃度CHbO及び脱酸素化血液色素濃度CHbRの少なくとも1つのパワースペクトル密度を算出する(S4)。次に生体情報抽出部9は、パワースペクトル密度のピークPSDHbO,PSDHbRから1又は複数の生体情報を抽出する、又は/及び、酸素化血液色素濃度CHbOと酸素化血液色素濃度CHbO及び脱酸素化血液色素濃度CHbRの和との比から生体情報を抽出する(S5)。
【0042】
以上のように本実施の形態によれば、RGB形式からXYZ形式又はLab形式の表色系へと表色を変換し、XYZ形式又はLab形式の表色から色素濃度を推定し、色相濃度に対して高速フーリエ変換を行うことで、スマートフォンなどの一般的なカメラ機能に用いられる機器を流用し汎用的な構成で生体情報を算出することが可能となる。
【0043】
また本実施の形態では、例えば経皮的動脈血酸素飽和度SpOや組織酸素飽和度StOや呼吸数BRといった複数の生体情報を算出することができる。複数の生体情報を参照することで、生体情報算出装置1の使用者は、病態を鑑別することが可能となる。
【0044】
例えば具体的な病態として、脳などの臓器に低酸素状態がある場合には、呼吸数BRが増え、経皮的動脈血酸素飽和度SpOや組織酸素飽和度StOが低下する。またコロナウィルスに感染した場合、感染者が若年者の場合は経皮的動脈血酸素飽和度SpOが低下する前に呼吸数BRが増え、感染者が高齢者の場合は呼吸数が増える前に経皮的動脈血酸素飽和度SpOが上昇する。
【0045】
また低血圧性ショックの場合や交感神経活動が急激に上昇するような場合といった、末梢灌流が大きく低下するような場合には、経皮的動脈血酸素飽和度SpOは測定不能又は不正確となるが、組織酸素飽和度StOは正確である。このため、生体情報のいずれかの値が測定不能などになった場合においても生体情報算出装置1の使用者は、病態を鑑別することが可能となる。
【0046】
また本実施の形態においては、取得部5、表色系変換部6、色素濃度推定部7、高速フーリエ変換部8及び生体情報抽出部9は、プログラムとしたがこれに限らず論理回路でもよい。
【0047】
また取得部5、表色系変換部6、色素濃度推定部7、高速フーリエ変換部8、生体情報抽出部9、変換係数テーブルTB1、推定式係数テーブルTB2及び関数係数テーブルTB3は1つの装置に実装されておらず、ネットワークで接続された複数の装置に分散して実装されていてもよい。
【0048】
本実施の形態においては、人の顔が画像として取得されるものとしたが、これに限らず、露出している肌を画像として取得してもよい。人の顔のほかに人の手のひらの画像が取得されてもよいし、同一人物における顔部及び手のひらの2つの画像が取得されてもよい。なお露出している肌の顔や手のひら以外の例として、手の甲や足なども挙げられる。
【0049】
また対象は人に限らなくてもよいものとする。なお手のひらの画像が取得される場合は、生体情報算出装置1は、末梢組織の経皮的動脈血酸素飽和度SpO及び組織酸素飽和度StOを算出する。
【0050】
同一人物において複数個所の生体情報が算出される場合、例えば手のひらの画像情報を基に算出された経皮的動脈血酸素飽和度SpOは通常時と同じ正常値であって、額の画像情報を基に算出された組織酸素飽和度StOが通常時と違う異常値であるような場合を鑑別することが可能となる。
【0051】
同一人物においてある部分の経皮的動脈血酸素飽和度SpOが正常値で、別の部分の組織酸素飽和度StOが異常値であるような場合、別の部分への血液循環の低下を鑑別することが可能となる。血液循環の低下の原因は、血管狭窄や血管閉塞や出血や圧迫障害などが考えられる。
【0052】
本実施の形態においては、(2)式又は(3)式のように推定式の次数は1としたがこれに限らず、(10)式又は(11)式のように推定式は2次以上の多項式としてもよい。なお推定式の次数は3でもよいものとする。
【数10】
……(10)
【数11】
……(11)
【0053】
2次以上の多項式とした場合においてもパラメータN10,N11,N12,N13,N14,N15,N16,N17,N18,N19,N20,N21,N22,N23,N24,N25,N26,N27,N28,N29,N30,N31,N32,N33,N34,N35,N36,N37,N38,N39,N40,N41,N42,N43,N44,N45,N50,N51,N52,N53,N54,N55,N60,N61,N62,N63,N64,N65は、光伝搬モンテカルロシミュレーションを利用して求められる。推定式の次数を高くすることでXYZ形式又はLab形式の表色から酸素化血液色素濃度CHbO及び脱酸素化血液色素濃度CHbRをより正確に推定することが可能となる。
【0054】
本実施の形態においては、撮像装置10は、スマートフォンに含まれる場合を例に挙げたが、これに限らず、ウェブカメラなどとしてもよい。なおウェブカメラにはリングLEDなどが装着されていてもよいものとする。
【0055】
本実施の形態においては、経皮的動脈血酸素飽和度SpOを算出するフィッテイング関数は、例として(4)式のような指数関数を挙げたが、これに限らず、下記(12)式のような2次関数であってもよい。
【数12】
………(12)
パラメータD,E,F,Gは、予め測定したSpOとPSDHbO/PSDHbRとの組み合わせから決定されるものとする。
【符号の説明】
【0056】
1……生体情報算出装置、2……中央演算装置、3……主記憶装置、4……補助記憶装置、5……取得部、6……表色系変換部、7……色素濃度推定部、8……高速フーリエ変換部、9……生体情報抽出部、10……撮像装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7