(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】積層体、及び、包装体又は容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20221005BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20221005BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20221005BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20221005BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20221005BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221005BHJP
B65D 81/28 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B32B27/18 F
B32B27/30 A
B32B27/32 Z
B32B27/36
B32B27/40
B65D65/40 D
B65D81/28 C
(21)【出願番号】P 2022514667
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2021043433
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2020206146
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】内藤 昌信
(72)【発明者】
【氏名】大原 伸一
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 貴司
(72)【発明者】
【氏名】岩波 秀興
【審査官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-113411(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142793(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/076311(WO,A1)
【文献】特開2019-077954(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1366217(KR,B1)
【文献】特開2017-19238(JP,A)
【文献】特開2019-181897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B65D65/00-79/02
81/18-81/30
81/38
85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方に設けられたシール層と、前記基材の前記シール層とは反対側に設けられたコート層とを有する積層体であって、
前記コート層が、
複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状
アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基により置換されたタンニン酸誘導体と、
ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂及びオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、
を含有する積層体。
【請求項2】
前記コート層が、前記タンニン酸誘導体及び前記樹脂を含む有機物バインダーで構成される、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記コート層が、加飾層を構成している、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記加飾層は、印刷インキを含有する印刷層で形成されている、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記コート層が、シール性のコーティング剤が塗工された層である、請求項3に記載の積層体。
【請求項6】
前記シール層が、複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体を含有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記シール層が、前記タンニン酸誘導体及び樹脂を含む有機物バインダーで構成される、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
容器本体と、前記容器本体に取り付けられた請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体の一又は複数とを備える、包装体又は容器。
【請求項9】
前記積層体が、前記容器本体の蓋材を構成する、請求項8に記載の包装体又は容器。
【請求項10】
前記積層体が、前記容器本体の外面に取り付けられる、請求項8に記載の包装体又は容器。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体の一又は複数を貼り合わせて構成される外装部と、前記外装部の内側に形成された収容部と、を備える包装体又は容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、及び、該積層体を有する包装体又は容器に関する。
本願は、2020年12月11日に、日本に出願された特願2020-206146号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品包装、医薬品包装業界では、内容物の安全性を保持するために、大腸菌等の菌による感染をレトルト殺菌等の殺菌工程、無菌充填等のプロセスによる技術が検討され、実用化されてきた。一方、近年、感染症の拡大とともに、衛生性の意識が消費者に広がり、包装材の安全性が求められている。また、抗菌、抗ウィルスに効果のある物質は無機系の化合物、銀、銅等が知られているが、コスト面や、食品に直接接触する包装材用途としては食品の安全性の観点から未だ改善の余地がある。
【0003】
ポリフェノールの一種であるタンニンは、防錆剤として古くから使用されており、例えば、亜鉛表面上に安定な皮膜を形成することが知られている。但し、タンニンは有機溶媒にほとんど溶解せず、用途が限定される。そこで、該タンニン分子中に含まれる水酸基の少なくとも一部をアルキルエーテルまたはアルキルエステルで置換して水不溶性タンニン酸誘導体とすることにより、その用途を広げることが可能となっている(特許文献1)。
【0004】
しかし、上記の皮膜は、タンニン酸中の没食子酸等が亜鉛と反応して形成された膜上に、タンニン酸が凝集性重合あるいは会合性重合を起こして形成された膜が重なったものであるとされている(非特許文献1)。これらの反応に関与するのは、タンニン酸中に含まれる没食子酸等の水酸基である。従って、この水酸基をアルキルエーテル等に変えてしまうと、皮膜が形成され難くなり、防錆効果が低下することが懸念される。特許文献1においても、専ら溶液状態で評価されている。
【0005】
そこで、タンニン酸の少なくとも一部の水酸基における水素原子が、炭素数3~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン
酸誘導体を含む皮膜形成性組成物が提案されている(例えば、特許文献2)。この皮膜形成性組成物は膜形成性を有しており、種々の基材上に安定な膜を形成できるとされている。その理由としては、タンニン酸誘導体分子同士が、その鎖状炭化水素基同士を揃えるようにして並ぶことで、秩序立った配向をすると考えられる。この配向は、水酸基の減少を補って余りある膜の安定性をもたらし、その結果、タンニン酸の凝集膜よりも優れた防錆性、抗菌性、殺菌性等を発現するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-307362号公報
【文献】国際公開第2016/076311号
【非特許文献】
【0007】
【文献】金属表面技術、第29巻、第1号、第38~42頁及び
図10、1978年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のタンニン酸誘導体を含む皮膜形成性組成物では、コスト低減は可能であるものの、抗菌性の信頼性が十分とは言えず、食品、医療品等に直接接触する包装材用途としては未だ改善の余地がある。特に、包装材には容器への貼着或いは包装材同士の貼着のためのシール層が設けられるが、内容物とシール層とが直接接触する使用態様の場合、シール層に含まれる抗菌性物質の溶出などに因る内容物の汚染の発生を防止する必要がある。更に近年、ライフスタイルの多様化や、非常時等の保存食の必要性に伴い、食品包装材の用途が多岐に亘ることから、様々な使用用途において十分な防錆性、抗菌性、殺菌性を発現できる食品包装材が求められている。
【0009】
本発明の目的は、十分な抗菌性、滅菌性、殺菌性を発現して、高い信頼性を実現することができる積層体、及び、包装体又は容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、発明者らは鋭意研究を重ねた結果、基材の両側に設けられるコート層に、複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体と、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂及びオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂とを含有させることにより、コート層を構成する樹脂内部或いは樹脂表面に上記特定のタンニン酸誘導体を安定的に保持することができ、その結果十分な抗菌性、滅菌性、殺菌性を発現して、高い信頼性を実現できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は以下の構成を提供する。
[1]基材と、前記基材の一方に設けられたシール層と、前記基材の前記シール層とは反対側に設けられたコート層とを有する積層体であって、
前記コート層が、
複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体と、
ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂及びオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、
を含有する積層体。
【0012】
[2]前記コート層が、前記タンニン酸誘導体及び前記樹脂を含む有機物バインダーで構成される、上記[1]に記載の積層体。
【0013】
[3]前記コート層が、加飾層を構成している、上記[1]又は[2]に記載の積層体。
【0014】
[4]前記加飾層は、印刷インキを含有する印刷層で形成されている、上記[3]に記載の積層体。
【0015】
[5]前記コート層が、シール性のコーティング剤が塗工された層である、上記[1]に記載の積層体。
【0016】
[6]前記シール層が、複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体を含有する、上記[1]に記載の積層体。
【0017】
[7]前記シール層が、前記タンニン酸誘導体及び樹脂を含む有機物バインダーで構成される、上記[6]に記載の積層体。
【0018】
[8]容器本体と、前記容器本体に取り付けられた上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層体の一又は複数とを備える、包装体又は容器。
【0019】
[9]前記積層体が、前記容器本体の蓋材を構成する、上記[8]に記載の包装体又は容器。
【0020】
[10]前記積層体が、前記容器本体の外面に取り付けられる、上記[8]に記載の包装体又は容器。
【0021】
[11]上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層体の一又は複数を貼り合わせて構成される外装部と、前記外装部の内側に形成された収容部と、を備える包装体又は容器。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、十分な抗菌性、滅菌性、殺菌性を発現して、高い信頼性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、タンニン酸の誘導化の一例を示す化学反応工程図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施形態に係る積層体の具体的構成の一例を示す断面図である。
【
図2B】
図2Bは、本実施形態に係る積層体の他の具体的構成の一例を示す断面図である。
【
図3A】
図3Aは、本実施形態に係る積層体を用いた包装体の具体的構成の一例を示す断面図である。
【
図3B】
図3Bは、本実施形態に係る積層体を用いた容器の具体的構成の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る積層体を用いた包装体の具体的構成の他の一例を示す斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、本実施形態に係る積層体を用いた包装体の具体的構成の他の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る積層体を用いた容器の具体的構成の他の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
<積層体>
本実施形態の積層体は、基材と、前記基材の一方に設けられたシール層と、前記基材の前記シール層とは反対側に設けられたコート層とを有する積層体であって、前記コート層が、複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体と、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂及びオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂とを含有する。
【0025】
[コート層]
コート層は、例えば有機溶剤等を溶媒とするコーティング剤がコートされてなる層である。このコーティング剤は、複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体を含有している。
【0026】
(タンニン酸誘導体)
タンニンは、加水分解で多価フェノールを生じる植物成分の総称であり、没食子酸やエラグ酸がグルコースなどの糖にエステル結合し、酸や酵素で加水分解されやすい加水分解型タンニンと、フラバノール骨格を持つ化合物が重合した縮合型タンニンに大別される。いずれのタイプのタンニンであっても、また、それらの混合物であっても、本開示における誘導体化は可能であり、本開示の効果が奏されるものと考えられる。好ましくは加水分解型タンニンであり、例えば下記式(1)で表されるタンニン酸を主成分とするものが誘導体化される。
【0027】
【0028】
タンニン酸は複数の水酸基を有するが、本開示における誘導体は、該複数の水酸基のうちの少なくとも一部の水酸基における水素原子が炭素数1~18の鎖状炭化水素基により置換されている。原料タンニン酸の水酸基の総数は種類に応じて異なる。好ましくは、置換基数の10%以上が置換されており、より好ましくは20%以上、特に好ましくは40%以上が置換されている。例えば上記式(1)の場合、水酸基の総数は25個であり、そのうちの少なくとも1個、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上置換されている。
【0029】
置換基数の上限は、置換基の種類、適用する基材及び使用目的に応じて異なる。使用する基材に対して、所望の固着性が達成できるのであれば、全ての水酸基が置換されていてもよい。金属、ガラス等の極性基材へ適用する際には、置換基数の80%以下が置換されていることが好ましく、より好ましくは60%以下が置換されている。例えば上記式(1)の場合、置換される水酸基数は、好ましくは20個以下、より好ましくは15個以下である。
【0030】
炭素数1~18の鎖状炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられ、これが水酸基由来の酸素原子を含む結合を介して、タンニン酸骨格に結合される。鎖状炭化水素基の具体例には、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、プロピレン基、ヘキシレン基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が包含される。鎖状炭化水素基の炭素数は、好ましくは3~18、より好ましくは4~18であり、更に好ましくは6~16である。該酸素原子を含む結合としては、例えばエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合が挙げられる。
【0031】
(タンニン酸誘導体の製造方法)
タンニン酸誘導体は、アルキル化反応の一つであるウィリアムソンエーテル合成法によって得られる。具体的には、テトラヒドロフラン、ジメチルスホキサイド等の溶媒中で、塩基性触媒の存在下で、タンニン酸にハロゲン化アルキルを反応させて作ることができる。塩基性触媒としてはMH、M2CO3、M(M:アルカリ金属)の群から選択されるいずれか1又は2以上の触媒を使うことができる。例えば、K2CO3は、OH基をO-M+に変換し、ハロゲン化アルキル(X-R1:X:ハロゲン、R1:アルキル基)へのO-基の求核反応を促進することができる。ハロゲン化アルキルとしては、例えば、ヨウ化アルキルを用いることができる。また、ハロゲン化アルキルの代わりに、スルホニル基などを脱離基として有するものも使用できる。また、上記、ウィリアムソンエーテル合成法以外のアルキル化反応を用いることもできる。さらに、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の縮合剤を用いたカルボン酸類との脱水縮合反応や、イソシアネートとの縮合反応を用いることもできる。
【0032】
反応は70℃以上100℃以下で、約1時間程度加熱する。
図1は、式(1)のタンニン酸の誘導体化の一例を示す。塩基性触媒としてK
2CO
3を用い、DMF中で、85℃に加熱して、デシル基を9つ有する誘導体(TA(C
10)
9)を合成する例を示している。タンニン酸に対するハロゲン化アルキルのモル比を変えることにより、アルキル基のタンニン酸中への導入数であるnの値を所望の値に設定できる。
【0033】
(ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂及びオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂)
コート層に含有される上記樹脂は、紙又はフィルムに使用する有機溶剤等を媒体とするコーティング剤のバインダーとして好適に使用される。
【0034】
(A)ウレタン樹脂
ウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得たポリウレタン樹脂であれば特に限定されない。ポリオールとしては、例えば、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリオールを用いることができ、1種又は2種以上を併用してもよい。例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4―ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトールなどの飽和または不飽和の低分子ポリオール類(1)、これらの低分子ポリオール類(1)と、セバシン酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸あるいはこれらの無水物とを脱水縮合または重合させて得られるポリエステルポリオール類(2);環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類、を開環重合して得られるポリエステルポリオール類(3);前記低分子ポリオール類(1)などと、例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られるポリカーボネートポリオール類(4);ポリブタジエングリコール類(5);ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類(6);1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られるアクリルポリオール(7)などが挙げられる。
【0035】
ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3-3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
また鎖伸長剤を使用することもできる。鎖伸長剤としては例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
また、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L-アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
ウレタン樹脂の重量平均分子量は、10,000~100,000であることが好ましく、15,000~80,000であることがより好ましい。
【0038】
(B)アクリル樹脂
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合性モノマーが共重合したものであれば特段限定されない。重合性モノマーとしては例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、iso-ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。重合法も特に限定なく公知の塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合法等で得たものを使用することができる。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、5,000~200,000であることが好ましく、より好ましくは10,000~100,000である。
【0039】
(C)塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであれば、特段限定されない。分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、10,000~70,000が更に好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中、酢酸ビニルモノマー由来の構造は1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上、更に基材への密着性、被膜物性、耐擦傷性等が良好となる。
また有機溶剤への溶解性の観点からビニルアルコール構造由来の水酸基を含むものも好ましい。水酸基価としては20mgKOH/g~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
【0040】
(D)ポリエステル樹脂
ポリエステル樹脂としては、アルコールとカルボン酸とを公知のエステル化重合反応を用いて反応させてなるポリエステル樹脂であれば特段限定されない。
アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビド等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも多官能アルコールが好ましい。
カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸、リノール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも多官能カルボン酸が好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、500~6000であることが好ましく、1400~5500であることがより好ましい。
【0041】
(E)オレフィン樹脂
オレフィン樹脂としては、オレフィンモノマーの単独重合体や共重合体、オレフィンモノマーと他のモノマーとの共重合体、これら重合体の水素化物やハロゲン化物、酸や水酸基等の官能基を導入した変性体等、炭化水素骨格を主体とする重合体が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。酸基又は酸無水物基を有する結晶性オレフィン樹脂、水酸基を有する結晶性オレフィン樹脂を用いることが好ましい。
【0042】
酸基又は酸無水物基を有するオレフィン樹脂としては、オレフィン系モノマーと、エチレン性不飽和カルボン酸またはエチレン性不飽和カルボン酸無水物との共重合体である酸変性オレフィン樹脂(E-1)や、ポリオレフィンにエチレン性不飽和カルボン酸またはエチレン性不飽和カルボン酸無水物をグラフト変性した樹脂である酸変性オレフィン樹脂(E-2)が挙げられる。
【0043】
酸変性オレフィン樹脂(E-1)の調整に用いられるオレフィン系モノマーとしては、炭素原子数が2~8のオレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。これらのなかでも特に接着強度が良好なものとなることから炭素原子数3~8のオレフィンが好ましく、プロピレン、及び1-ブテンがより好ましく、とりわけプロピレンと1-ブテンとを併用することが溶剤に対する耐性に優れ、接着強度に優れる点から好ましい。
【0044】
オレフィン系モノマーとの共重合に用いられるエチレン性不飽和カルボン酸またはエチレン性不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、4-メチルシクロヘキセ-4-エン-1,2-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10-オクタヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物、2-オクタ-1,3-ジケトスピロ[4.4]ノン-7-エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、マレオピマル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル―ノルボルネン-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ノルボルン-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらのなかでも特にオレフィン系モノマーとの反応性、共重合した後の酸無水物の反応性に優れ、かつ、該化合物自体の分子量が小さく共重合体にした場合の官能基濃度が高くなる点から無水マレイン酸が好ましい。これらは単独で、あるいは2種以上併用して使用することができる。
【0045】
酸変性オレフィン樹脂(E-1)の調整には、オレフィン系モノマー、チレン性不飽和カルボン酸またはエチレン性不飽和カルボン酸無水物に加え、その他のエチレン性不飽和基を持つ化合物、例えばスチレン、ブタジエン、イソプレン等を併用してもよい。
【0046】
酸変性オレフィン樹脂(E-2)の調整に用いられるポリオレフィンとしては、炭素原子数2~8のオレフィンの単独重合体や共重合体、炭素原子数2~8のオレフィンと他のモノマーとの共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン樹脂などのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(1-ブテン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリビニルシクロヘキサン、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・へキセン共重合体などのα―オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・酢酸ビニル・メチルメタクリレート共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体などが挙げられる。これらの中で特に接着強度が良好なものとなる点から炭素原子数3~8のオレフィンの単独重合体、炭素原子数3~8のオレフィンの2種以上の共重合体が好ましく、プロピレンの単独重合体、又はプロピレン・1-ブテン共重合体がより好ましく、とりわけプロピレン・1-ブテン共重合体が溶剤に対する耐性に優れ、接着強度に優れる点から好ましい。
【0047】
ポリオレフィンとのグラフト変性に用いられるエチレン性不飽和カルボン酸またはエチレン性不飽和カルボン酸無水物としては、上述した、酸変性オレフィン樹脂(E-1)の調整においてオレフィン系モノマーとの共重合に用いられるものと同様のものを用いることができる。グラフト変性後の官能基の反応性が高く、また、グラフト変性したポリオレフィンの官能基濃度が高くなる点から無水マレイン酸が好ましい。これらは単独で、あるいは2種以上併用して使用することができる。
【0048】
グラフト変性によりポリオレフィンにエチレン性不飽和カルボン酸またはエチレン性不飽和カルボン酸無水物を反応させるには、具体的には、ポリオレフィンを溶融し、そこにエチレン性不飽和カルボン酸またはエチレン性不飽和カルボン酸無水物(グラフトモノマー)を添加してグラフト反応させる方法、ポリオレフィンを溶媒に溶解して溶液とし、そこにエチレン性不飽和カルボン酸またはエチレン性不飽和カルボン酸無水物を添加してグラフト反応させる方法、有機溶剤に溶解したポリオレフィンと、エチレン性不飽和カルボン酸またはエチレン性不飽和カルボン酸無水物とを混合し、ポリオレフィンの軟化温度または融点以上の温度で加熱し溶融状態にてラジカル重合と水素引き抜き反応を同時に行う方法等が挙げられる。
【0049】
いずれの場合にもグラフトモノマーを効率よくグラフト共重合させるためには、ラジカル開始剤の存在下にグラフト反応を実施することが好ましい。グラフト反応は、通常60~350℃の条件で行われる。ラジカル開始剤の使用割合は変性前のポリオレフィン100重量部に対して、通常0.001~1重量部の範囲である。
【0050】
ラジカル開始剤としては、有機ペルオキシドが好ましく、例えばベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン―3、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル―2.5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルフェニルアセテート、tert-ブチルペルイソブチレート、tert-ブチルペル―sec-オクトエート、tert-ブチルペルピバレート、クミルペルピバレートおよびtert-ブチルペルジエチルアセテートなどがあげられる。その他アゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどを用いることもできる。
【0051】
ラジカル開始剤は、グラフト反応のプロセスにより最適なものを選定すればよいが、通常ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルペルオキシドが好ましく用いられる。
【0052】
オレフィン樹脂(E)として酸変性オレフィン樹脂(E-1)や酸変性オレフィン樹脂(E-2)を用いる場合には、金属層の密着性がより向上し、耐電解質性に優れることから、1~200mgKOH/gの酸価を有するものを用いることが好ましい。
【0053】
水酸基を有するオレフィン樹脂(E-3)としては、ポリオレフィンと水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルや水酸基含有ビニルエーテルとの共重合体や、ポリオレフィンに水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルや水酸基含有ビニルエーテルをグラフト変性した樹脂が挙げられる。ポリオレフィンは、オレフィン樹脂(E-2)の調整に用いるものと同様のものを用いることができる。変性方法としては、酸変性オレフィン樹脂(E-1)、(E-2)の調整方法と同様の方法を用いることができる。
【0054】
変性に用いる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基含有ビニルエーテルとしては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0055】
オレフィン樹脂(E)として、水酸基を有するオレフィン樹脂(E-3)を用いる場合には、金属層の密着性がより向上し、耐電解質性に優れることから、1~200mgKOH/gの水酸基価を有するものを用いることが好ましい。
【0056】
オレフィン樹脂(E)として、上述した酸変性オレフィン樹脂(E-2)や水酸基を有するオレフィン樹脂(E-3)の調整に用いるポリオレフィンを、変性せずにそのまま用いてもよい。
【0057】
接着性を良好なものとするため、オレフィン樹脂(E)の重量平均分子量は40,000以上であることが好ましい。また、適度な流動性を確保するためオレフィン樹脂(E)の重量平均分子量は150,000以下であることが好ましい。
【0058】
(硬化剤)
本開示で使用する前記樹脂が水酸基やカルボキシル基等、アミノ基、エポキシ基等の反応性基を有する場合は、当該反応性基と反応しうる硬化剤を併用することもできる。例えば、イソシアネート系硬化剤やエポキシ系硬化剤やアミノ系硬化剤等を使用することができる。
【0059】
上記コート層は、上記タンニン酸誘導体及び上記樹脂を含む有機物バインダーで構成されるのが好ましい。この有機物バインダーは、好ましくは上記タンニン酸誘導体及び上記特定の樹脂からなる。尚、有機物バインダーとは、金属、無機系の化合物などの無機物を含まないか或いは実質的に含まないものを指す。
【0060】
コート層における上記タンニン酸誘導体の含有率は、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
【0061】
コート層における、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂及びオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂の含有率は、好ましくは50質量%以上99.9質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上99.5質量%以下である。
【0062】
また、コート層に含まれる上記タンニン酸誘導体と上記樹脂の質量比は、好ましくは0.1:99.9~50:50であり、より好ましくは0.5:99.5~20:80である。
【0063】
また、コート層は、有機溶剤や水等を媒体とするシール性のコーティング剤が塗工された層であってもよい。これにより、抗菌性に加えてシール性を有するコート層を提供することができる。また、コート層が内容物と接触し得る位置に配置された場合に、内容物の汚染の発生を防止することができる。
【0064】
[シール層]
シール層は、シール性を有する層であれば特に限定されず、例えば粘着フィルムや感圧接着フィルム、シーラントフィルム等の粘着性を有するフィルムやシートを利用してもよいし、例えば有機溶剤や水性媒体等を媒体とするシール性のコーティング剤の塗工層であってもよい。
【0065】
シーラントフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系フィルム、イオノマー樹脂、EAA樹脂、EMAA樹脂、EMA樹脂、EMMA樹脂、生分解樹脂のフィルムなどが好ましい。汎用名では、CPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム、VMCPP(アルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、VMLDPE(アルミ蒸着無低密度ポリエチレンフィルム)フィルム、これらの顔料を含むフィルム等が挙げられる。フィルムの表面には火炎処理、コロナ放電処理、またはプライマー等のケミカル処理などの各種表面処理が実施されていてもよい。
【0066】
中でもシール性のコーティング剤の塗工層が、後述の通り上記タンニン酸誘導体を容易に含有させることができ好ましい。シール層に含有される樹脂は、シール性を発現する公知の樹脂が用いられる。
【0067】
(樹脂)
上記樹脂としては、例えば、ヒートシール、コールドシールに使用される公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。具体的には、室温以下では粘着性を生じない、軟化温度が少なくとも40℃以上の熱可塑性樹脂が好ましい。またガラス転移温度は少なくとも-10℃以上の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0068】
このような熱可塑性樹脂としては例えば、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル酸エステル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、エチレン-アクリルエステル系樹脂、エチレン-アクリル酸樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン-イソプレン樹脂等が挙げられる。
【0069】
なかでも、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂及びエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂が好ましい。
【0070】
また、前記熱可塑性樹脂として水酸基やグリシジル基、カルボキシル基等の反応性基をグラフトまたはペンダントさせた熱可塑性樹脂からなる主剤と、前記反応性基と熱反応しうるイソシアネート硬化剤やポリアミン硬化剤等の硬化剤とを組み合わせた組成物も使用することができる。例えば反応性基をグラフトまたはペンダントさせたポリエステル系樹脂、反応性基をグラフトまたはペンダントさせたポリエーテル系樹脂、反応性基をグラフトまたはペンダントさせたポリウレタン系樹脂、反応性基をグラフトまたはペンダントさせたエポキシ樹脂、反応性基をグラフトまたはペンダントさせたポリオール系樹脂等の主剤と、イソシアネート硬化剤、ポリアミン硬化剤等の硬化剤との組み合わせを挙げることができる。
【0071】
具体的には、例えば、ポリエチレングリコール等のポリオール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリエーテルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヒマシ油の水素添加物であるヒマシ硬化油、ヒマシ油のアルキレンオキサイド5~50モル付加体等のヒマシ油系ポリオール等が挙げられる。
【0072】
また、硬化剤の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の分子構造内に芳香族構造を持つポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートのNCO基の一部をカルボジイミドで変性した化合物;これらのポリイソシアネートに由来するアルファネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の分子構造内に脂環式構造を持つポリイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の直鎖状脂肪族ポリイソシアネート、及びこのアルファネート化合物;これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体;これらのポリイソシアネートに由来するアロファネート体;これらのポリイソシアネートに由来するビゥレット体;トリメチロールプロパン変性したアダクト体;前記した各種のポリイソシアネートとポリオール成分との反応生成物であるポリイソシアネート等の多官能イソシアネートや、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、オクタエチレンノナミン、ノナエチレンデカミン、ピペラジンあるいは、炭素原子数が2~6のアルキル鎖を有するN-アミノアルキルピペラジン等のポリエチレンポリアミンや、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン、もしくはIPDA)等のアミン化合物が挙げられる。
【0073】
(タンニン酸誘導体)
シール層は、複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体を含有していてもよい。すなわち、基材の一方に設けられたコート層が、複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体を含有し、且つ、基材の他方に設けられたシール層が、複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体を含有していてもよい。
【0074】
また、シール層は、上記タンニン酸誘導体及び上記樹脂を含む有機物バインダーで構成されるのが好ましい。この有機物バインダーは、好ましくは上記タンニン酸誘導体及び上記樹脂からなる。
【0075】
シール層に含有される上記タンニン酸誘導体は、コート層に含有される上記タンニン酸誘導体と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
シール層におけるタンニン酸誘導体の含有率は、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
【0077】
また、シール層に含まれるタンニン酸誘導体と樹脂の質量比は、好ましくは0.1:99.9~50:50であり、より好ましくは0.5:99.5~20:80である。
【0078】
[基材]
基材は、特に制限されないが、例えば紙基材やプラスチック基材、金属箔等が挙げられる。
【0079】
(紙基材)
紙基材は、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。
また、市販の各種上質紙やコート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。
【0080】
(プラスチック基材)
プラスチック基材は、プラスチック材料、成形品、フィルム基材、包装材等の基材に使用される基材であればよいが、特に、グラビアロールコーティング(グラビアコーター)、フレキソロールコーティング(フレキソコーター)を使用する場合には、グラビア・フレキソ印刷分野で通常使用されているフィルム基材をそのまま使用できる。
【0081】
具体的には、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称する場合がある)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂などの生分解性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。これらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1μm~500μmの範囲であればよい。また基材フィルムにはコロナ放電処理がされていることが好ましく、アルミ、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。
【0082】
(金属箔)
金属箔は、特に限定されず、公知の種々の金属箔を使用できる。例えば、金属箔の金属材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、ステンレス、チタン、ニッケル等が挙げられる。これらの中でも製造工程の簡便さやコストの観点から、銅箔またはアルミニウム箔が好ましい。
【0083】
また、基材は、前記紙基材やフィルム基材をドライラミネート法や無溶剤ラミネート法、あるいは押出ラミネート法により積層させた積層構造を有する積層体(積層フィルムと称される場合もある)であっても構わない。また該積層体の構成に、金属箔、金属蒸着膜層、無機蒸着膜層、酸素吸収層、アンカーコート層、印刷層等の加飾層、ニス層等があっても構わない。このような積層体は用途に応じて多種存在するが、現在食品包装用や生活用品に最も多く使用される構成は、紙基材やフィルム基材を(F)と表現し、印刷やニス層を(P)と表現し、金属箔や蒸着膜層の金属あるいは無機層を(M)と表現し、接着剤層を(AD)、ホットメルト接着剤やヒートシール剤やコールドシール剤を(AD2)と表現すると、積層フィルムの具体的態様として以下の構成が考えられる。尚、本実施形態に係る積層フィルムは、もちろん以下の構成に限定されることはない。
【0084】
(F)/(P)/(F)
(F)/(P)/(AD)/(F)、
(F)/(P)/(AD)/(F)/(AD)/(F)、
(F)/(P)/(AD)/(M)/(AD)/(F)、
(F)/(P)/(AD)/(M)、
(F)/(P)/(AD)/(F)/(AD)/(M)/(AD)/(F)、
(F)/(P)/(AD)/(M)/(AD)/(F)/(AD)/(F)、
(M)/(P)/(AD)/(M)、
(M)/(P)/(AD)/(F)/(AD)/(M)、
(P)/(F)
(P)/(F)/(P)
(P)/(F)/(AD)/(F)、
(P)/(F)/(AD)/(F)/(AD)/(F)
(F)/(P)/(F)/(AD2)
(F)/(P)/(AD2)
(F)/(P)/(AD)/(M)/(AD2)
【0085】
前記単層の紙基材あるいはフィルム基材、又は複数層の積層構造を有する積層体は、業界や使用方法等により、機能性フィルム、軟包装フィルム、シュリンクフィルム、生活用品包装用フィルム、医薬品包装用フィルム、食品包装用フィルム、カートン、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等に用いられる上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙等様々な表現がなされているが、上記コーティング剤は特に限定なく使用することができる。この場合、コーティング剤は、これらを使用した容器や包装材とした際に最表層となる面にコーティングされることが好ましい。
【0086】
[加飾層]
本実施形態の積層体は、上記基材のシール層とは反対側に設けられた加飾層を有していてもよい。この場合、上記コート層が加飾層を構成していてもよいし、コート層とは別の加飾層が設けられてもよい。上記コート層が加飾層を構成する場合、加飾層が上記タンニン酸誘導体を含有する。コート層とは別の加飾層が設けられる場合、加飾層は、例えば上記基材と上記コート層の間に設けられる。
【0087】
加飾層は、印刷インキを含有する印刷層で形成されてもよい。上記印刷層に使用される印刷インキは、特に限定はなく、オフセット平版インキ、グラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキ、インクジェット印刷インキ等が挙げられる。
【0088】
[ニス層]
また、本実施形態の積層体は、上記基材のシール層とは反対側に設けられたニス層を更に有していてもよい。この場合、上記コート層がニス層を構成してもよいし、コート層とは別のニス層が設けられてもよい。上記コート層がニス層を構成する場合、ニス層が上記タンニン酸誘導体を含有する。コート層とは別のニス層が設けられる場合、ニス層は、例えば上記コート層の上記基材とは反対側に設けられる。また、上記コート層が加飾層を構成する場合、ニス層が加飾層上に設けられてもよい。
【0089】
ニス層に使用されるニスは、特に限定はなく、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、セルロース、硝化綿、アマイド系等が挙げられる。
【0090】
<積層体の製造方法>
本実施形態に係る積層体は、例えば(1)基材の一方の面側にコーティング剤を塗工する工程、(2)前記コーティング剤を乾燥させてコート層を形成する工程、(3)基材の他方の面側にシール剤を塗工する工程、及び(4)前記剤を乾燥させてシール層を形成する工程を経ることにより、製造することができる。
【0091】
上記(1)の工程において、コーティング剤の塗布量は、特に制限されないが、好ましくは0.5g/m2以上10g/m2以下、より好ましくは1.0g/m2以上5.0g/m2以下である。
【0092】
[コーティング剤]
コーティング剤は、複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体と、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂及びオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、媒体とを含有する。コーティング剤の媒体としては、有機溶剤等の溶剤が使用できる。
【0093】
(溶剤)
溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらを単独または2種以上を混合しても用いることができる。
【0094】
尚、印刷時の作業衛生性と包装材料の有害性の両面から、酢酸エチル、酢酸プロピル、イソプロパノール、ノルマルプロパノールなどを使用し、トルエン等の芳香族溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤を使用しない事がより好ましい。
【0095】
本実施形態のコーティング剤における上記タンニン酸誘導体の含有率は、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
【0096】
また、本実施形態のコーティング剤における上記樹脂の含有率は、好ましくは0.1質量%以上99.9質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上99.5質量%以下である。
(その他の添加剤)
コーティング剤は、その他、コーティング剤に所望される基本物性を付与することを目的として、硬化剤、ワックス、キレート架橋剤、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。
【0097】
(コーティング剤の製造方法)
本開示で使用する前記コーティング剤は、バインダーとしての前記樹脂と前記タンニン酸誘導体を有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
【0098】
上記(3)の工程において、シール剤の塗布量は、特に制限されないが、好ましくは1.0g/m2以上10g/m2以下、より好ましくは1.0g/m2以上5.0g/m2以下である。
【0099】
[シール剤]
シール剤は、特に制限されず、シール性を発現する上述の公知の樹脂と、媒体とを含有する。シール剤は、ヒートシール、コールドシールに使用される公知の熱可塑性樹脂を含有するのが好ましい。シール剤の媒体としては、有機溶剤等の溶剤、或いは水性媒体が使用できる。
【0100】
(溶剤)
有機溶剤は、シール剤を希釈し塗工しやすくするために添加される。具体的には溶解性の高いトルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、シクロヘキサン等を使用して希釈してもよい。近年の溶剤規制の観点からは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも溶解性の点から酢酸エチルやメチルエチルケトン(MEK)が好ましく用いられ、特に酢酸エチルが好ましい。規制を受けない溶剤だけを用いても、低温時の溶液が安定している。有機溶剤の使用量は所要される粘度によるが概ね20質量%以上80質量%以下の範囲で使用することが多い。
【0101】
シール剤は、複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体を含有してもよい。シール剤における上記タンニン酸誘導体の含有率は、特に制限されないが、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
【0102】
(シール剤の製造方法)
シール剤が上記タンニン酸誘導体を含有する場合、シール剤は、上記バインダー樹脂と上記タンニン酸誘導体を媒体中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
【0103】
積層体の製造方法は、上記(1)~(4)の工程及び上記の順に限られずない。積層体の製造方法は、例えば、先ず、基材の一方の面側にコーティング剤を塗工すると共に、基材の他方の面側にシール剤を塗工し(工程(1)及び工程(3))、その後、コーティング剤及びシール剤を乾燥してもよい(工程(2)及び工程(4))。
【0104】
また、積層体が加飾層を有する場合、上記工程(1)において基材上に加飾層としてのコーティング剤を塗工することができる。また、積層体がコート層とは別の加飾層を有する場合、上記工程(1)の前に、基材の一方の面に加飾層を形成する工程を設けてもよい。この場合、その後に加飾層上にコーティング剤を塗工し、該コーティング剤を乾燥することができる。
【0105】
また、積層体がニス層を有する場合、上記工程(1)において基材上にニス層としてのコーティング剤を塗工することができる。また、積層体がコート層とは別のニス層を有する場合、上記工程(1)の後に、コート層上にニス層を形成する工程を設けてもよい。
【0106】
[積層体、及び、包装体又は容器の具体的構成]
図2A及び
図2Bは、本実施形態に係る積層体の具体的構成の一例を示す断面図である。
図2Aに示すように、積層体10は、基材11と、基材11の一方に設けられたシール層12Aと、基材11のシール層12Aとは反対側に設けられたコート層13とを有する。コート層13は、(1)複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体と、(2)ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂及びオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂とを含有する。以下、上記(1)及び(2)の化合物を含有するコート層を、単に「抗菌性コート層」とも称する。
【0107】
本実施形態では、抗菌性コート層13は、基材11の表面の全体に設けられており、積層体10の最表面に位置している。シール層12Aは、基材11の表面の一部、例えば基材11の表面の外縁部に配置されており、後述する包装体を組み立てる際のシール部として使用することができる。
【0108】
また、
図2Bに示すように、積層体10は、基材11と、基材11の一方に設けられたシール層12Bと、基材11のシール層12Bとは反対側に設けられた抗菌性コート層13とを有していてもよい。シール層12Bは、基材11の表面の全体に設けられており、その一部(外縁部)を、後述する包装体を組み立てる際のシール部として使用することができる。
【0109】
図3Aは、本実施形態に係る積層体10を用いた包装体の具体的構成の一例を示す断面図である。
図3Aに示すように、包装体20は、積層体10の2枚を貼り合わせて構成される外装部21と、外装部21の内側に形成された収容部22とを備えている。ここで、外装部21は、2枚の積層体10を、それぞれの抗菌性コート層13が積層方向外側となる向きにした状態で貼り合わせて構成される。収容部22には内容物Cが収容可能であり、食品、医薬品などが収容される。収容部22は、空気などの気体を含んでいてもよいし、真空などの減圧状態であってもよい。
【0110】
積層体10は、基材11と、基材11の一方に設けられたシール層12Cと、基材11のシール層12Cとは反対側に設けられた抗菌性コート層13とを有する。
【0111】
シール層12Cは、例えば、2枚の積層体10に設けられた2つのシール層12A同士(
図2A)の接着によって形成されている。但し、2枚の積層体10のうちの一方のみにシール層12Aを設け、他方にシール層を設けなくてもよい。この場合、2枚の積層体10のうちの一方のシール層12Aによってシール層12Cが形成される。このシール層12Cの封止により、収容部22が外部と隔離され、収容部22の密閉状態或いは密封状態が維持される。
【0112】
本実施形態では、抗菌性コート層13は、包装体20の最外層を構成しており、上記特定のタンニン酸誘導体が抗菌性コート層13の樹脂内部或いは樹脂表面に保持されている。本構成によれば、例えばヒトなどの接触によって菌、ウィルス等の物質が抗菌性コート層13に付着した場合であっても、抗菌性コート層13によって菌、ウィルス等の増殖を抑制することができる。
【0113】
図3Bは、本実施形態に係る積層体10を用いた容器の具体的構成の一例を示す斜視図である。
図3Bに示すように、容器30は、容器本体31と、容器本体31に取り付けられた積層体10とを備える。
積層体10は、基材11と、基材11の一方に設けられたシール層12Dと、基材11のシール層12Dとは反対側に設けられた抗菌性コート層13とを有する。シール層12Dは、複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体を含有する。以下、上記特定のタンニン酸誘導体を含有するシール層を、単に「抗菌性シール層」とも称する。
【0114】
本実施形態では、積層体10は、容器本体31の蓋材を構成しており、容器本体31の開口部32を閉塞するように当該容器本体31に取り付けられる。このとき、この抗菌性シール層12Dの封止により、内部空間33が外部と隔離され、内部空間33の密閉状態或いは密封状態が維持される。
【0115】
また、この抗菌性シール層12Dは、蓋材の最内層を構成しており、上記特定のタンニン酸誘導体が抗菌性シール層12Dの樹脂内部或いは樹脂表面に保持されている。本構成によれば、容器本体31の内部空間33に収容された食品、医薬品などの内容物が抗菌性シール層12Dに接触した場合であっても、シール層に含まれる抗菌性物質の溶出などに因る内容物の汚染の発生を防止することができる。
【0116】
図4は、本実施形態に係る積層体10を用いた包装体の具体的構成の他の一例を示す斜視図である。
図4に示すように、包装体40は、積層体10の複数枚を貼り合わせて構成される外装部41と、外装部41の内側に形成された収容部42とを備えている。積層体10は、基材11と、基材11の一方に設けられたシール層12Bと、基材11のシール層12Bとは反対側に設けられた抗菌性コート層13とを有する。収容部42は、例えば底部に位置する積層体10と、外周部に位置する積層体とが貼り合わされて構成されている。
【0117】
シール層12Bは、基材11の表面の一部に設けられており、外装部41の開口部43に配置されている。包装体40の収容部42に内容物を収容した後、開口部43を閉塞してシール層12B同士を当接させた状態でヒートシールすることにより、収容部42が外部と隔離され、収容部42の密閉状態或いは密封状態が維持される。
【0118】
本実施形態では、抗菌性コート層13は、包装体40の最外層を構成しており、上記特定のタンニン酸誘導体が抗菌性コート層13の樹脂内部或いは樹脂表面に保持されている。本構成によれば、抗菌性コート層13によって菌、ウィルス等の増殖が抑制される。
【0119】
図5Aは、本実施形態に係る積層体10を用いた包装体の具体的構成の他の一例を示す斜視図であり、
図5Bは、
図5Aの線I-Iに沿う断面図である。
図5A及び
図5Bに示すように、包装体50は、積層体10の2枚を貼り合わせて構成される外装部51と、外装部21の内側に形成された収容部52とを備えている。収容部52には内容物Cが収容可能であり、食品、医薬品などが収容される。収容部52は、空気などの気体を含んでいてもよいし、真空などの減圧状態であってもよい。
【0120】
積層体10は、基材11と、基材11の一方に設けられた抗菌性シール層12Eと、基材11のシール層12Eとは反対側に設けられた抗菌性コート層13とを有する。
【0121】
抗菌性シール層12Eは、例えば、2枚の積層体10に設けられた2つのシール層12A同士(
図2B)の接着によって形成されている。但し、2枚の積層体10のうちの一方のみにシール層12Aを設け、他方にシール層を設けなくてもよい。この場合、2枚の積層体10のうちの一方のシール層12Aによって抗菌性シール層12Eが形成される。この抗菌性シール層12Eの封止により、収容部52が外部と隔離され、収容部52の密閉状態或いは密封状態が維持される。
【0122】
抗菌性コート層13は、包装体20の最外層を構成しており、上記特定のタンニン酸誘導体が抗菌性コート層13の樹脂内部或いは樹脂表面に保持されている。
【0123】
本構成によれば、抗菌性コート層13によって菌、ウィルス等の増殖が抑制され、また、抗菌性シール層12Eに含まれる抗菌性物質の溶出などに因る内容物Cの汚染の発生を防止することができる。
【0124】
抗菌性コート層13は、加飾層又はニス層を構成していてもよい。これにより、菌、ウィルス等の増殖の抑制や内容物Cの汚染の発生の防止に加え、層構成を簡略化することができ、包装体の軽量化やコスト低減を図ることができる。
【0125】
図6は、本実施形態に係る積層体10を用いた容器の具体的構成の他の一例を示す斜視図である。
図6に示すように、容器60は、容器本体61と、容器本体31に取り付けられた2つの積層体10-1,10-2とを備える。
【0126】
積層体10-1は、基材11と、基材11の一方に設けられた抗菌性シール層12Dと、基材11の抗菌性シール層12Dとは反対側に設けられた抗菌性コート層13とを有する。積層体10-1は、容器本体61の蓋材を構成しており、容器本体61の開口部62を閉塞するように当該容器本体31に取り付けられる。このとき、この抗菌性シール層12Dの封止により、内部空間63が外部と隔離され、内部空間63の密閉状態或いは密封状態が維持される。
【0127】
積層体10-1の抗菌性コート層13は、容器60の最外層を構成しており、上記特定のタンニン酸誘導体が抗菌性コート層13の樹脂内部或いは樹脂表面に保持されている。また、抗菌性シール層12Dは、容器60の最内層を構成しており、上記特定のタンニン酸誘導体が抗菌性シール層12Dの樹脂内部或いは樹脂表面に保持されている。
【0128】
積層体10-2は、基材11と、基材11の一方に設けられたシール層12Bと、基材11のシール層12Bとは反対側に設けられた抗菌性コート層13とを有する。積層体10-2は、容器本体61の外面、例えば外周面に取り付けられている。積層体10-1の抗菌性コート層13は、容器60の最外層を構成しており、上記特定のタンニン酸誘導体が抗菌性コート層13の樹脂内部或いは樹脂表面に保持されている。
【0129】
本構成によれば、積層体10-1,10-2の抗菌性コート層13,13によって菌、ウィルス等の増殖を抑制することができ、また、抗菌性シール層12Dに含まれる抗菌性物質の溶出などに因る内容物Cの汚染の発生を防止することができる。
【実施例】
【0130】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。実施例中、特段の記載がない限り、表中の数値の単位は質量%である。
【0131】
(タンニン酸誘導体の合成)
[合成例1]
タンニン酸(東京化成社製)を35部とし、ヨウ化n-メチル65部をN,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFと称す)に溶解し、63部の炭酸カリウムを加え、85℃ 10時間反応した。その後、DMFを減圧蒸留、水洗、乾燥工程を経た炭素原子数1のアルキル基が5当量(置換基数の20%)置換されたタンニン酸誘導体(TA1-5)を得た。尚、合成例1~6では、全ての材料に東京化成社製のものを使用し、合成を行った。
【0132】
[合成例2]
タンニン酸を62部とし、ヨウ化n-ヘキシル38部をDMFに溶解し、25部の炭酸カリウムを加え、85℃ 10時間反応した。その後、DMFを減圧蒸留、水洗、乾燥工程を経た炭素原子数6のアルキル基が5当量置換されたタンニン酸誘導体(TA6-5)を得た。
【0133】
[合成例3]
タンニン酸を35部とし、ヨウ化n-オクタデカン65部をDMFに溶解し、24部の炭酸カリウムを加え、85℃ 10時間反応した。その後、DMFを減圧蒸留、水洗、乾燥工程を経た炭素原子数18のアルキル基が5当量置換されたタンニン酸誘導体(TA18-5)を得た。
【0134】
[合成例4]
タンニン酸を37部とし、ヨウ化n-メチル63部をDMFに溶解し、61部の炭酸カリウムを加え、85℃ 10時間反応した。その後、DMFを減圧蒸留、水洗、乾燥工程を経た炭素原子数1のアルキル基が20当量(置換基数の75%)置換されたタンニン酸誘導体(TA1-20)を得た。
【0135】
[合成例5]
タンニン酸を29部とし、ヨウ化n-ヘキシル71部をDMFに溶解し、46部の炭酸カリウムを加え、85℃ 10時間反応した。その後、DMFを減圧蒸留、水洗、乾燥工程を経た炭素原子数6のアルキル基が20当量置換されたタンニン酸誘導体(TA6-20)を得た。
【0136】
[合成例6]
タンニン酸を28部とし、ヨウ化n-オクタデカン82部をDMFに溶解し、30部の炭酸カリウムを加え、85℃ 10時間反応した。その後、DMFを減圧蒸留、水洗、乾燥工程を経た炭素原子数18のアルキル基が20当量置換されたタンニン酸誘導体(TA18-20)を得た。
【0137】
(コーティング剤及びシール性コーティング剤の製造方法)
樹脂A、B、C、Eをメチルエチルケトン(以下MEKと称す)に溶解し、固形分40%の樹脂溶液を製造した。
樹脂A:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂「日信化学社製 ソルバインA」
樹脂B:ポリエステル樹脂「東洋紡社製 バイロンGK-880」
樹脂C:アクリル樹脂「EVONIK社製 DEGALAN(登録商標) P74」
樹脂E:ウレタン樹脂「三洋化成社製 サンプレンIB-465」
【0138】
またシール性コーティング剤は、シール剤Dをそのまま使用した。
シール剤D:アクリル樹脂「DICグラフィックス社製 ディックシール A-415」
【0139】
合成例1~6で製造したタンニン酸誘導体を、表1A及び表1Bに示す組成で混合し、コーティング剤1~8、15及びシール性コーティング剤1を製造した。表1A及び表1B中には、外観が透明な溶液に「クリアー」と示す。
【0140】
【0141】
【0142】
[実施例1~10]
(積層体の製造)
コーティング剤1~8、15あるいはシール性コーティング剤1を、基材である8μmのアルミ箔に、コーティング剤量5g/m2(固形分)になるように塗工し、80℃、2分間で有機溶剤を揮発させ、積層体を製造した。
【0143】
次に、実施例1~10で得られた積層体を、以下の方法にて評価した。コーティング剤1~8、15によるコート層を設けた積層体は、抗菌性試験に用い、シール性コーティング剤1によるコート層を設けた積層体は、抗菌性試験、シール試験及び包装体試験に用いた。
【0144】
<抗菌性試験>
抗菌試験として、大腸菌を用い、JIS Z2801(大腸菌のみ)に準拠して試験を実施した。評価は、抗菌加工製品と無加工製品とにおける細菌を接種培養後の生菌数の対数値の差を示す値である抗菌活性値で実施した。抗菌活性値が2以上である場合を「抗菌性有り」、抗菌活性値が2未満である場合を「抗菌性無し」とした。
【0145】
<シール試験>
熱傾斜式ヒートシールテスター(テスター産業社製)を用い、シール温度150℃で圧力1kg/cm2、1秒間で、シール性コーティング剤によるシール層同士をヒートシールした。サンプル幅を15mmとし、引張り速度200mm/minでシール強度を測定し、これをヒートシール強度とした。ヒートシール強度が2N/15mm以上である場合を「合格」とした。
【0146】
<包装体試験>
ディックドライLX-470EL及びSP-60(DICグラフィックス社製)を1:1に配合した2液型反応性接着剤を使用し、20μmのOPPフィルムと30μmのCPPフィルムとを、固形分塗布量2.0g/m2で塗布しラミネートした。このラミネートフィルムに対し、CPPフィルム側にシール性コーティング剤を全面に塗工し、有機溶剤を乾燥してシール層を作製した。該シール層を内側になるように折り曲げ、1atm、150℃、1秒間でシール層同士をヒートシールして、内容物の接触部分が200cm2となる包装体(パウチ)を製造した。
得られた包装体にナチュラルチーズを充填し、室温で10日間保存後の内容物の外観の変化の有無を確認し、経時で外観が変化していない場合を「合格」とした。
【0147】
上記の方法にて実施例1~10を評価した結果を、表2A~表2Bに示す。
【0148】
【0149】
【0150】
[比較例1]
アルキル変性していないタンニン酸を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング剤9を作製し、積層体を製造した。
【0151】
[比較例2]
アルキル変性していないタンニン酸を用い、且つタンニン酸の含有量を0.2質量%及び樹脂Bの含有量を99.5%に変更したこと以外は、実施例7と同様にしてコーティング剤10を作製し、積層体を製造した。
【0152】
[比較例3]
アルキル変性していないタンニン酸を用い、且つタンニン酸の含有量を0.2質量%及び樹脂Cの含有量を99.5%に変更したこと以外は、実施例8と同様にしてコーティング剤11を作製し、積層体を製造した。
【0153】
[比較例4]
アルキル変性していないタンニン酸を用い、且つタンニン酸の含有量を0.2質量%及びシール剤Dの含有量を99.5%に変更したこと以外は、実施例9と同様にしてシール性コーティング剤2を作製し、積層体を製造した。
【0154】
[比較例5]
タンニン酸を用いずに樹脂A溶液のみとしたこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング剤12を作製し、積層体を製造した。
【0155】
[比較例6]
タンニン酸を用いずに樹脂B溶液のみとしたこと以外は、実施例7と同様にしてコーティング剤13を作製し、積層体を製造した。
【0156】
[比較例7]
タンニン酸を用いずに樹脂C溶液のみとしたこと以外は、実施例8と同様にしてコーティング剤14を作製し、積層体を製造した。
【0157】
[比較例8]
タンニン酸を用いずにシール剤Dのみとしたこと以外は、実施例9と同様にしてシール性コーティング剤3を作製し、積層体を製造した。
【0158】
[比較例9]
アルキル変性していないタンニン酸を用い、且つタンニン酸の含有量を0.2質量%及び樹脂Eの含有量を99.5%に変更したこと以外は、実施例10と同様にしてコーティング剤15を作製し、積層体を製造した。
【0159】
[比較例10]
タンニン酸を用いずに樹脂E溶液のみとしたこと以外は、実施例10と同様にしてコーティング剤16を作製し、積層体を製造した。
【0160】
上記の方法にて比較例1~10を評価した結果を、表3A~表3Bに示す。
【0161】
【0162】
【0163】
表2A~表2Bの結果から、実施例1~8、10のいずれでも、炭素原子数1、6又は18のアルキル基が置換されたタンニン酸誘導体を、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、又はウレタン樹脂に含有させたコーティング剤1~8、10を用いてコート層を形成すると、抗菌活性値が2以上であった。よって、コート層表面において細菌の増殖が抑制され、十分な抗菌性を有していることが分かった。
【0164】
また、実施例9においても、炭素原子数18のアルキル基が置換されたタンニン酸誘導体をアクリル樹脂に含有させたシール性コーティング剤1を用いてコート層を形成すると、抗菌活性値が2以上であった。よってシール性コーティング剤を用いたコート層表面においても、細菌の増殖が抑制され、十分な抗菌性を有していることが分かった。
更に実施例9では、ヒートシール強度が2N/15mm以上であり、十分なシール性を有していることが分かった。また、室温で10日間保存後の内容物の外観が変化しておらず、内容物の安全性が確認された。
【0165】
一方、表3A~表3Bの結果から、比較例1~3、9では、アルキル変性していないタンニン酸を、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、又はウレタン樹脂に含有させたコーティング剤9~11、15を用いてコート層を形成すると、抗菌活性値が2未満であり、コート層表面において細菌の増殖が発生していた。
また、比較例4では、アルキル変性していないタンニン酸をアクリル樹脂に含有させたシール性コーティング剤2を用いてコート層を形成すると、抗菌活性値が2未満であり、コート層表面において細菌の増殖が発生していた。
【0166】
比較例5~7、10では、タンニン酸を含有せず、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、又はウレタン樹脂を含有するコーティング剤12~14、16を用いてコート層を形成すると、抗菌活性値が2未満であり、コート層表面において細菌の増殖が発生していた。
比較例8では、タンニン酸を含有しないシール性コーティング剤3を用いてコート層を形成すると、抗菌活性値が2未満であり、コート層表面において細菌の増殖が発生していた。
【符号の説明】
【0167】
10 積層体
10-1 積層体
10-2 積層体
11 基材
12A シール層
12B シール層
12C シール層
12D シール層(抗菌性シール層)
12E シール層(抗菌性シール層)
13 コート層(抗菌性コート層)
20 包装体
21 外装部
22 収容部
30 容器
31 容器本体
32 開口部
33 内部空間
40 包装体
41 外装部
42 収容部
43 開口部
50 包装体
51 外装部
52 収容部
60 容器
61 容器本体
62 開口部
63 内部空間
【要約】
積層体(10)は、基材(11)と、基材(11)の一方に設けられたシール層(12A)と、基材(11)のシール層(12A)とは反対側に設けられたコート層(13)とを有する。コート層(13)は、複数の水酸基のうちの少なくとも一部が炭素原子数1~18の鎖状炭化水素基により置換されたタンニン酸誘導体と、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂及びオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂とを含有する。