(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ケイ素含有樹脂組成物、ケイ素含有樹脂フィルム、シリカフィルム、発光表示素子パネル、及び発光表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20221005BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221005BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20221005BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20221005BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20221005BHJP
C08L 83/00 20060101ALI20221005BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20221005BHJP
C08K 3/10 20180101ALI20221005BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20221005BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G02B5/20
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/12 E
C08L83/04
C08L83/00
C08K5/101
C08K3/10
G09F9/30 349Z
G09F9/30 365
G02F1/13357
(21)【出願番号】P 2017247015
(22)【出願日】2017-12-22
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2016256836
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】千坂 博樹
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-109111(JP,A)
【文献】特開2011-123331(JP,A)
【文献】特開2010-186151(JP,A)
【文献】特開2009-025369(JP,A)
【文献】特開2015-217359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
H01L 51/50
H01L 27/32
H05B 33/12
C08L 83/04
C08L 83/00
C08K 5/101
C08K 3/10
G09F 9/30
G02F 1/13357
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素含有樹脂(A)と、量子ドット(B)と、溶剤(S)と、を含有し、
前記ケイ素含有樹脂(A)が、ポリシランであり、
前記溶剤(S)が下式(S1):
【化1】
(式(S1)中、R
s1は、炭素原子数1~3のアルキル基であり、pは1~6の整数であり、qは0~(p+1)の整数である。)
で表されるシクロアルキルアセテートを含有するケイ素含有樹脂組成物。
【請求項2】
前記量子ドット(B)がコア-シェル構造を有する、請求項1に記載のケイ素含有樹脂組成物。
【請求項3】
前記シェルの材質がZnS及びZnSeよりなる群から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載のケイ素含有樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、硬化剤(C)を含有する、請求項1に記載のケイ素含有樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のケイ素含有樹脂組成物からなる塗布膜を形成することと、
前記塗布膜から溶剤(S)を除去することと、
を含むケイ素含有樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記ケイ素含有樹脂フィルムの膜厚が2~300μmである、請求項5に記載のケイ素含有樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載のケイ素含有樹脂組成物によったケイ素含有樹脂フィルムであって、ポリシランであるケイ素含有樹脂(A)からなるマトリックス中に、量子ドット(B)が分散されており、膜厚が2~300μmであるケイ素含有樹脂フィルム。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載のケイ素含有樹脂組成物からなる塗布膜を形成することと、
前記塗布膜を焼成することと、
を含む、シリカフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記シリカフィルムの膜厚が2~300μmである、請求項8に記載のシリカフィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載のケイ素含有樹脂フィルムからなる、発光表示素子用の光学フィルム。
【請求項11】
請求項7に記載のケイ素含有樹脂フィルムを含む積層体。
【請求項12】
2つ以上の前記ケイ素含有樹脂フィルムが、それぞれが接するように積層されている、請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
請求項10に記載の発光表示素子用の光学フィルム、又は請求項11又は12に記載の積層体を含む、発光表示素子パネル。
【請求項14】
請求項13に記載の発光表示パネルを備える、発光表示装置。
【請求項15】
ケイ素含有樹脂フィルム、及びシリカフィルムから選択される1以上のフィルムを含む積層体の製造方法であって、
前記ケイ素含有樹脂フィルムを、請求項5又は6に記載の製造方法で製造すること、及び
前記シリカフィルムを、請求項8又は9に記載の製造方法で製造すること、
の少なくとも一方を含む積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素含有樹脂組成物、ケイ素含有樹脂フィルム、シリカフィルム、発光表示素子パネル、及び発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子を閉じ込めるために形成された極小さな粒(ドット)が、量子ドットと称され、各種分野での適用検討がなされてきた。ここで、1粒の量子ドットの大きさは、直径数ナノメートルから数10ナノメートルであり、約1万個の原子で構成されている。
【0003】
かかる量子ドットは、そのサイズを変える(バンドギャップを変える)ことで、発光する蛍光の色(発光波長)を変えること(波長変換)ができる。このため、近年、量子ドットについて、波長変換材料として表示素子に適用することの検討が鋭意なされてきている(特許文献1、及び2を参照)。
【0004】
また、種々の光学発光素子や、表示素子における量子ドットを含む光学フィルムの適用も検討されている。かかる光学フィルムとしては、例えば、ポリジメチルシロキサンのようなケイ素含有樹脂からなるマトリックス中に量子ドットが分散された光学フィルムが提案されている(特許文献3を参照)。
例えば、液晶表示素子や有機EL表示素子等の光源の発光を用いて画像を表示する素子において、光源が発する光線を量子ドットを含む光学フィルムを透過させると、波長変換によって色純度の高い緑色光と赤色光を取り出すことができるため、色相の再現範囲を拡大することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-216560号公報
【文献】特開2008-112154号公報
【文献】韓国公開特許第10-2016-0004524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シロキサン樹脂やシリカ等のケイ素含有材料は、耐光性、耐候性、耐溶剤性、耐化学薬品性、透明性、及び絶縁性等の種々の優れた特性を有するため、量子ドットを含む光学フィルムにおけるマトリックスの材料として好適である。
しかしながら、シロキサン樹脂やシリカ等のケイ素含有材料からなるマトリックスと、当該マトリックス中に分散された量子ドットとを含むフィルムを形成する場合、フィルムの膜厚が厚いと、形成されるフィルムにクラックが生じやすい問題がある。
【0007】
このため、ケイ素含有材料からなるマトリックス中に量子ドットを含む光学フィルムを使用する場合、光学フィルムの膜厚を薄くする必要があり、光学フィルムの設計や、光学フィルムを備える各種装置の設計が著しく制限される問題がある。
例えば、ある程度厚い光学フィルムを製造する際に、クラックのない光学フィルムを得るために、多数の薄い光学フィルムを積層する必要がある場合がある。かかる場合、積層の操作の煩雑さによって、光学フィルムの製造コストが高い。
【0008】
また、量子ドットを含む光学フィルムでは、フィルムに入射する輝度線の散乱を抑制するために、量子ドットを良好に分散させて、量子ドットの粒子間にある程度の距離を確保することが望まれる。
しかし、ケイ素含有材料からなるマトリックス中に量子ドットを含む光学フィルムを形成する場合、光学フィルムの形成に用いる組成物の組成によっては、量子ドットをフィルム中に良好分散させることが困難である場合がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みなされた。本発明は、クラックの発生を抑止しつつ、良好に分散された状態で量子ドットを含むケイ素含有樹脂フィルム又はシリカフィルムを形成できるケイ素含有樹脂組成物と、当該ケイ素含有樹脂組成物を用いるケイ素含有樹脂フィルム又はシリカフィルムの製造方法と、量子ドットを含むケイ素含有樹脂フィルム又はシリカフィルムと、当該ケイ素含有樹脂フィルム及び/又は当該シリカフィルムを含む発光表示素子用の光学フィルム、又は積層体と、当該光学フィルム、又は当該積層体を含む発光表示素子パネルと、当該発光表示素子パネルを備える発光表示装置と、前述の積層体の製造方法と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ケイ素含有樹脂(A)と、量子ドット(B)と、溶剤(S)とを含む、ケイ素含有樹脂組成物において、ケイ素含有樹脂(A)としてシロキサン樹脂、及びポリシランからなる群より選択される1種以上を用い、特定の構造のシクロアルキルアセテートを溶剤(S)に含有させることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
本発明の第1の態様は、ケイ素含有樹脂(A)と、量子ドット(B)と、溶剤(S)と、を含有し、
ケイ素含有樹脂(A)が、シロキサン樹脂、及びポリシランからなる群より選択される1種以上であり、
溶剤(S)が下式(S1):
【化1】
(式(S1)中、R
s1は、炭素原子数1~3のアルキル基であり、pは1~6の整数であり、qは0~(p+1)の整数である。)
で表されるシクロアルキルアセテートを含有するケイ素含有樹脂組成物である。
【0012】
本発明の第2の態様は、
第1の態様にかかるケイ素含有樹脂組成物からなる塗布膜を形成することと、
塗布膜から溶剤(S)を除去することと、
を含むケイ素含有樹脂フィルムの製造方法である。
【0013】
本発明の第3の態様は、ケイ素含有樹脂(A)からなるマトリックス中に、量子ドット(B)が分散されており、膜厚が2~300μmであるケイ素含有樹脂フィルムである。
【0014】
本発明の第4の態様は、
第1の態様にかかるケイ素含有樹脂組成物からなる塗布膜を形成することと、
塗布膜を焼成することと、
を含む、シリカフィルムの製造方法である。
【0015】
本発明の第5の態様は、シリカからなるマトリックス中に、量子ドット(B)が分散されているシリカフィルムである。
【0016】
本発明の第6の態様は、第3の態様にかかるケイ素含有樹脂フィルム、又は第5の態様にかかるシリカフィルムからなる、発光表示素子用の光学フィルムである。
【0017】
本発明の第7の態様は、第3の態様にかかるケイ素含有樹脂フィルム、及び第5の態様にかかるシリカフィルムとからなる群より選択される1以上のフィルムを含む積層体である。
【0018】
本発明の第8の態様は、第6の態様にかかる発光表示素子用の光学フィルム、又は第7の態様にかかる積層体を含む、発光表示素子パネルである。
【0019】
本発明の第9の態様は、第8の態様にかかる発光表示素子パネルを備える、発光表示装置である。
【0020】
本発明の第10の態様は、ケイ素含有樹脂フィルム、及びシリカフィルムから選択される1以上のフィルムを含む積層体の製造方法であって、
ケイ素含有樹脂フィルムを、第2の態様にかかる製造方法で製造すること、及び
シリカフィルムを、第4の態様にかかる製造方法で製造すること、
の少なくとも一方を含む積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、クラックの発生を抑止しつつ、良好に分散された状態で量子ドットを含むケイ素含有樹脂フィルム又はシリカフィルムを形成できるケイ素含有樹脂組成物と、当該ケイ素含有樹脂組成物を用いるケイ素含有樹脂フィルム又はシリカフィルムの製造方法と、量子ドットを含むケイ素含有樹脂フィルム又はシリカフィルムと、当該ケイ素含有樹脂フィルム及び/又は当該シリカフィルムを含む発光表示素子用の光学フィルム、又は積層体と、当該光学フィルム、又は当該積層体を含む発光表示素子パネルと、当該発光表示素子パネルを備える発光表示装置と、前述の積層体の製造方法と、を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<ケイ素含有樹脂組成物>
本発明にかかるケイ素含有樹脂組成物は、ケイ素含有樹脂(A)と、量子ドット(B)と、溶剤(S)と、を含有する。
ケイ素含有樹脂(A)としては、シロキサン樹脂、及びポリシランから選択される1種以上が使用される。
溶剤(S)は、下式(S1)で表される、シクロアルキルアセテートを含有する。
【化2】
(式(S1)中、R
s1は、炭素原子数1~3のアルキル基であり、pは1~6の整数であり、qは0~(p+1)の整数である。)
【0023】
ケイ素含有樹脂組成物が、所定の構造のシクロアルキルアセテートを含有する溶剤(S)を含むことにより、ケイ素含有樹脂組成物を用いて形成されるケイ素含有樹脂フィルムやシリカフィルムにおけるクラックの発生を抑制しつつ、ケイ素含有樹脂フィルムやシリカフィルムにおいて、量子ドット(B)を良好に分散させることができる。
【0024】
ケイ素含有樹脂組成物を用いて、膜厚2~300μm程度の厚めのケイ素含有樹脂フィルムやシリカフィルムを形成する場合、特にクラックが発生しやすい。
しかし、本発明にかかるケイ素含有樹脂組成物を用いると、膜厚2~300μm程度の厚めのケイ素含有樹脂フィルムやシリカフィルムを形成する場合でも、クラックの発生を抑制しやすい。
【0025】
以下、ケイ素含有樹脂組成物に含まれる、必須又は任意の成分について説明する。
【0026】
[ケイ素含有樹脂(A)]
ケイ素含有樹脂(A)としては、シロキサン樹脂、及びポリシランから選択される1種以上が使用される。これらのケイ素含有樹脂(A)を含むケイ素含有樹脂組成物を塗布することでケイ素含有樹脂フィルムが得られ、当該ケイ素含有樹脂フィルムが焼成されることでシリカ系の膜が得られる。以下、シロキサン樹脂、及びポリシランとについて説明する。
【0027】
(シロキサン樹脂)
シロキサン樹脂について、後述する構造のシクロアルキルアセテートを含有する溶剤(S)に可溶である樹脂であれば、特に制限はない。
シロキサン樹脂としては、例えば下式(A1)で表されるシラン化合物から選択される少なくとも1種を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂が好適に使用される。
R4-nSi(OR’)n・・・(A1)
【0028】
式(A1)において、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、R’はアルキル基又はフェニル基を表し、nは2~4の整数を表す。Siに複数のRが結合している場合、該複数のRは同じであっても異なっていてもよい。またSiに結合している複数の(OR’)基は同じであっても異なっていてもよい。
【0029】
また、Rとしてのアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~20の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1~4の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。
【0030】
Rがアリール基、又はアラルキル基である場合、これらの基に含まれるアリール基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。アリール基の好適な例としては、下記の基が挙げられる。
【0031】
【0032】
上記式の基の中では、下式の基が好ましい。
【化4】
【0033】
上記式中、Ra1は、水素原子;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基等の炭化水素基である。上記式中Ra2は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基である。
【0034】
Rがアリール基又はアラルキル基である場合の好適な具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、フルオレニル基、ピレニル基等が挙げられる。
【0035】
アリール基又はアラルキル基に含まれるベンゼン環の数は1~3個であることが好ましい。ベンゼン環の数が1~3個であると、シロキサン樹脂の製造性が良好であり、シロキサン樹脂の重合度の上昇により焼成時の揮発が抑制され、シリカフィルムの形成が容易である。アリール基又はアラルキル基は、置換基として水酸基を有していてもよい。
【0036】
また、R’としてのアルキル基は好ましくは炭素原子数1~5の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。R’としてのアルキル基の炭素原子数は、特に加水分解速度の点から1又は2が好ましい。
式(A1)におけるnが4の場合のシラン化合物(i)は下式(A2)で表される。
Si(OR1)a(OR2)b(OR3)c(OR4)d・・・(A2)
【0037】
式(A2)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に上記R’と同じアルキル基又はフェニル基を表す。
【0038】
a、b、c及びdは、0≦a≦4、0≦b≦4、0≦c≦4、0≦d≦4であって、且つa+b+c+d=4の条件を満たす整数である。
【0039】
式(A1)におけるnが3の場合のシラン化合物(ii)は下記式(A3)で表される。
R5Si(OR6)e(OR7)f(OR8)g・・・(A3)
【0040】
式(A3)中、R5は水素原子、上記Rと同じアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。R6、R7、及びR8は、それぞれ独立に上記R’と同じアルキル基又はフェニル基を表す。
【0041】
e、f、及びgは、0≦e≦3、0≦f≦3、0≦g≦3であって、且つe+f+g=3の条件を満たす整数である。
【0042】
式(A1)におけるnが2の場合のシラン化合物(iii)は下記式(A4)で表される。
R9R10Si(OR11)h(OR12)i・・・(A4)
【0043】
式(A4)中、R9及びR10は水素原子、上記Rと同じアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。R11、及びR12は、それぞれ独立に上記R’と同じアルキル基又はフェニル基を表す。
【0044】
h及びiは、0≦h≦2、0≦i≦2であって、且つh+i=2の条件を満たす整数である。
【0045】
シラン化合物(i)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラフェニルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリエトキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノメトキシトリペンチルオキシシラン、モノメトキシトリフェニルオキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、トリプロポキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノブトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、トリエトキシモノプロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、トリブトキシモノプロポキシシラン、ジメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジブトキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジブトキシモノエトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシモノエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン等のテトラアルコキシシランが挙げられ、中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0046】
シラン化合物(ii)の具体例としては、
トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリペンチルオキシシラン、トリフェニルオキシシラン、ジメトキシモノエトキシシラン、ジエトキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシルモノメトキシシラン、ジペンチルオキシモノエトキシシラン、ジペンチルオキシモノプロポキシシラン、ジフェニルオキシルモノメトキシシラン、ジフェニルオキシモノエトキシシラン、ジフェニルオキシモノプロポキシシラン、メトキシエトキシプロポキシシラン、モノプロポキシジメトキシシラン、モノプロポキシジエトキシシラン、モノブトキシジメトキシシラン、モノペンチルオキシジエトキシシラン、及びモノフェニルオキシジエトキシシラン等のヒドロシラン化合物;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリペンチルオキシシラン、メチルトリフェニルオキシシラン、メチルモノメトキシジエトキシシラン、メチルモノメトキシジプロポキシシラン、メチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、メチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、メチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びメチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のメチルシラン化合物;
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリフェニルオキシシラン、エチルモノメトキシジエトキシシラン、エチルモノメトキシジプロポキシシラン、エチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、エチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、エチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びエチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のエチルシラン化合物;
プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリペンチルオキシシラン、及びプロピルトリフェニルオキシシラン、プロピルモノメトキシジエトキシシラン、プロピルモノメトキシジプロポキシシラン、プロピルモノメトキシジペンチルオキシシラン、プロピルモノメトキシジフェニルオキシシラン、プロピルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びプロピルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、等のプロピルシラン化合物;
ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリペンチルオキシシラン、ブチルトリフェニルオキシシラン、ブチルモノメトキシジエトキシシラン、ブチルモノメトキシジブロポキシシラン、ブチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ブチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ブチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びブチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のブチルシラン化合物;
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリペンチルオキシシラン、フェニルトリフェニルオキシシラン、フェニルモノメトキシジエトキシシラン、フェニルモノメトキシジプロポキシシラン、フェニルモノメトキシジペンチルオキシシラン、フェニルモノメトキシジフェニルオキシシラン、フェニルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びフェニルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のフェニルシラン化合物;
ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、ヒドロキシフェニルトリエトキシシラン、ヒドロキシフェニルトリプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルトリペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルトリフェニルオキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジエトキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びヒドロキシフェニルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のヒドロキシフェニルシラン化合物;
ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、ナフチルトリプロポキシシラン、ナフチルトリペンチルオキシシラン、ナフチルトリフェニルオキシシラン、ナフチルモノメトキシジエトキシシラン、ナフチルモノメトキシジプロポキシシラン、ナフチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ナフチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ナフチルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びナフチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のナフチルシラン化合物;
ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリプロポキシシラン、ベンジルトリペンチルオキシシラン、ベンジルトリフェニルオキシシラン、ベンジルモノメトキシジエトキシシラン、ベンジルモノメトキシジプロポキシシラン、ベンジルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ベンジルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ベンジルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びベンジルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のベンジルシラン化合物;
ヒドロキシベンジルトリメトキシシラン、ヒドロキシベンジルトリエトキシシラン、ヒドロキシベンジルトリプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルトリペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルトリフェニルオキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジエトキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシエトキシプロポキシシラン、及びヒドロキシベンジルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン等のヒドロキシベンジルシラン化合物;
が挙げられる。
【0047】
シラン化合物(iii)の具体例としては、
ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジプロポキシシラン、ジペンチルオキシシラン、ジフェニルオキシシラン、メトキシエトキシシラン、メトキシプロポキシシラン、メトキシペンチルオキシシラン、メトキシフェニルオキシシラン、エトキシプロポキシシラン、エトキシペンチルオキシシラン、及びエトキシフェニルオキシシラン等のヒドロシラン化合物;
メチルジメトキシシラン、メチルメトキシエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルメトキシプロポキシシラン、メチルメトキシペンチルオキシシラン、メチルエトキシプロポキシシラン、メチルジプロポキシシラン、メチルジペンチルオキシシラン、メチルジフェニルオキシシラン、メチルメトキシフェニルオキシシラン等のメチルヒドロシラン化合物;
エチルジメトキシシラン、エチルメトキシエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、エチルメトキシプロポキシシラン、エチルメトキシペンチルオキシシラン、エチルエトキシプロポキシシラン、エチルジプロポキシシラン、エチルジペンチルオキシシラン、エチルジフェニルオキシシラン、エチルメトキシフェニルオキシシラン等のエチルヒドロシラン化合物;
プロピルジメトキシシラン、プロピルメトキシエトキシシラン、プロピルジエトキシシラン、プロピルメトキシプロポキシシラン、プロピルメトキシペンチルオキシシラン、プロピルエトキシプロポキシシラン、プロピルジプロポキシシラン、プロピルジペンチルオキシシラン、プロピルジフェニルオキシシラン、プロピルメトキシフェニルオキシシラン等のプロピルヒドロシラン化合物;
ブチルジメトキシシラン、ブチルメトキシエトキシシラン、ブチルジエトキシシラン、ブチルメトキシプロポキシシラン、ブチルメトキシペンチルオキシシラン、ブチルエトキシプロポキシシラン、ブチルジプロポキシシラン、ブチルジペンチルオキシシラン、ブチルジフェニルオキシシラン、ブチルメトキシフェニルオキシシラン等のブチルヒドロシラン化合物;
フェニルジメトキシシラン、フェニルメトキシエトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメトキシプロポキシシラン、フェニルメトキシペンチルオキシシラン、フェニルエトキシプロポキシシラン、フェニルジプロポキシシラン、フェニルジペンチルオキシシラン、フェニルジフェニルオキシシラン、フェニルメトキシフェニルオキシシラン等のフェニルヒドロシラン化合物;
ヒドロキシフェニルジメトキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシエトキシシラン、ヒドロキシフェニルジエトキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルエトキシプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルジプロポキシシラン、ヒドロキシフェニルジペンチルオキシシラン、ヒドロキシフェニルジフェニルオキシシラン、ヒドロキシフェニルメトキシフェニルオキシシラン等のヒドロキシフェニルヒドロシラン化合物;
ナフチルジメトキシシラン、ナフチルメトキシエトキシシラン、ナフチルジエトキシシラン、ナフチルメトキシプロポキシシラン、ナフチルメトキシペンチルオキシシラン、ナフチルエトキシプロポキシシラン、ナフチルジプロポキシシラン、ナフチルジペンチルオキシシラン、ナフチルジフェニルオキシシラン、ナフチルメトキシフェニルオキシシラン等のナフチルヒドロシラン化合物;
ベンジルジメトキシシラン、ベンジルメトキシエトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、ベンジルメトキシプロポキシシラン、ベンジルメトキシペンチルオキシシラン、ベンジルエトキシプロポキシシラン、ベンジルジプロポキシシラン、ベンジルジペンチルオキシシラン、ベンジルジフェニルオキシシラン、ベンジルメトキシフェニルオキシシラン等のベンジルヒドロシラン化合物;
ヒドロキシベンジルジメトキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシエトキシシラン、ヒドロキシベンジルジエトキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルエトキシプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルジプロポキシシラン、ヒドロキシベンジルジペンチルオキシシラン、ヒドロキシベンジルジフェニルオキシシラン、ヒドロキシベンジルメトキシフェニルオキシシラン等のヒドロキシベンジルヒドロシラン化合物;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシエトキシシラン、ジメチルメトキシプロポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジペンチルオキシシラン、ジメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルエトキシプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン等のジメチルシラン化合物;
ジエチルジメトキシシラン、ジエチルメトキシエトキシシラン、ジエチルメトキシプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジペンチルオキシシラン、ジエチルジフェニルオキシシラン、ジエチルエトキシプロポキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン等のジエチルシラン化合物;
ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルメトキシエトキシシラン、ジプロピルメトキシプロポキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジペンチルオキシシラン、ジプロピルジフェニルオキシシラン、ジプロピルエトキシプロポキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン等のジプロポキシシラン化合物;
ジブチルジメトキシシラン、ジブチルメトキシエトキシシラン、ジブチルメトキシプロポキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジブチルジペンチルオキシシラン、ジブチルジフェニルオキシシラン、ジブチルエトキシプロポキシシラン、ジブチルジプロポキシシラン等のジブチルシラン化合物;
ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルメトキシエトキシシラン、ジフェニルメトキシプロポキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジペンチルオキシシラン、ジフェニルジフェニルオキシシラン、ジフェニルエトキシプロポキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン等のジフェニルシラン化合物;
ジ(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のジ(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
ジナフチルジメトキシシラン、ジナフチルメトキシエトキシシラン、ジナフチルメトキシプロポキシシラン、ジナフチルジエトキシシラン、ジナフチルジペンチルオキシシラン、ジナフチルジフェニルオキシシラン、ジナフチルエトキシプロポキシシラン、ジナフチルジプロポキシシラン等のジナフチルシラン化合物;
ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルメトキシエトキシシラン、ジベンジルメトキシプロポキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、ジベンジルジペンチルオキシシラン、ジベンジルジフェニルオキシシラン、ジベンジルエトキシプロポキシシラン、ジベンジルジプロポキシシラン等のジベンジルシラン化合物;
ジ(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)メトキシエトキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)エトキシプロポキシシラン、ジ(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシラン等のジ(ヒドロキシベンジル)シラン化合物;
メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルメトキシエトキシシラン、メチルエチルメトキシプロポキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジペンチルオキシシラン、メチルエチルジフェニルオキシシラン、メチルエチルエトキシプロポキシシラン、メチルエチルジプロポキシシラン等のメチルエチルシラン化合物;
メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルメトキシエトキシシラン、メチルプロピルメトキシプロポキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルプロピルジペンチルオキシシラン、メチルプロピルジフェニルオキシシラン、メチルプロピルエトキシプロポキシシラン、メチルプロピルジプロポキシシラン等のメチルプロピルシラン化合物;
メチルブチルジメトキシシラン、メチルブチルメトキシエトキシシラン、メチルブチルメトキシプロポキシシラン、メチルブチルジエトキシシラン、メチルブチルジペンチルオキシシラン、メチルブチルジフェニルオキシシラン、メチルブチルエトキシプロポキシシラン、メチルブチルジプロポキシシラン等のメチルブチルシラン化合物;
メチル(フェニル)ジメトキシシラン、メチル(フェニル)メトキシエトキシシラン、メチル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、メチル(フェニル)ジエトキシシラン、メチル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、メチル(フェニル)ジフェニルオキシシラン、メチル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、メチル(フェニル)ジプロポキシシラン等のメチル(フェニル)シラン化合物;
メチル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のメチル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
メチル(ナフチル)ジメトキシシラン、メチル(ナフチル)メトキシエトキシシラン、メチル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ナフチル)ジエトキシシラン、メチル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ナフチル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ナフチル)ジプロポキシシラン等のメチル(ナフチル)シラン化合物;
メチル(ベンジル)ジメトキシシラン、メチル(ベンジル)メトキシエトキシシラン、メチル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ベンジル)ジエトキシシラン、メチル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ベンジル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ベンジル)ジプロポキシシラン等のメチル(ベンジル)シラン化合物;
メチル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)メトキシエトキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)エトキシプロポキシシラン、メチル(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシラン等のメチル(ヒドロキシベンジル)シラン化合物;
エチルプロピルジメトキシシラン、エチルプロピルメトキシエトキシシラン、エチルプロピルメトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジエトキシシラン、エチルプロピルジペンチルオキシシラン、エチルプロピルジフェニルオキシシラン、エチルプロピルエトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジプロポキシシラン等のエチルプロピルシラン化合物;
エチルブチルジメトキシシラン、エチルブチルメトキシエトキシシラン、エチルブチルメトキシプロポキシシラン、エチルブチルジエトキシシラン、エチルブチルジペンチルオキシシラン、エチルブチルジフェニルオキシシラン、エチルブチルエトキシプロポキシシラン、エチルブチルジプロポキシシラン等のエチルブチルシラン化合物;
エチル(フェニル)ジメトキシシラン、エチル(フェニル)メトキシエトキシシラン、エチル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、エチル(フェニル)ジエトキシシラン、エチル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、エチル(フェニル)ジフェニルオキシシラン、エチル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、エチル(フェニル)ジプロポキシシラン等のエチル(フェニル)シラン化合物;
エチル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のエチル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
エチル(ナフチル)ジメトキシシラン、エチル(ナフチル)メトキシエトキシシラン、エチル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ナフチル)ジエトキシシラン、エチル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ナフチル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ナフチル)ジプロポキシシラン等のエチル(ナフチル)シラン化合物;
エチル(ベンジル)ジメトキシシラン、エチル(ベンジル)メトキシエトキシシラン、エチル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ベンジル)ジエトキシシラン、エチル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ベンジル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ベンジル)ジプロポキシシラン等のエチル(ベンジル)シラン化合物;
エチル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)メトキシエトキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)エトキシプロポキシシラン、エチル(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシラン等のエチル(ヒドロキシベンジル)シラン化合物;
プロピルブチルジメトキシシラン、プロピルブチルメトキシエトキシシラン、プロピルブチルメトキシプロポキシシラン、プロピルブチルジエトキシシラン、プロピルブチルジペンチルオキシシラン、プロピルブチルジフェニルオキシシラン、プロピルブチルエトキシプロポキシシラン、プロピルブチルジプロポキシシラン等のプロピルブチルシラン化合物;
プロピル(フェニル)ジメトキシシラン、プロピル(フェニル)メトキシエトキシシラン、プロピル(フェニル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(フェニル)ジエトキシシラン、プロピル(フェニル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(フェニル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(フェニル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(フェニル)ジプロポキシシラン等のプロピル(フェニル)シラン化合物;
プロピル(ヒドロキシフェニル)ジメトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシフェニル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ヒドロキシフェニル)シラン化合物;
プロピル(ナフチル)ジメトキシシラン、プロピル(ナフチル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ナフチル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ナフチル)ジエトキシシラン、プロピル(ナフチル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ナフチル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ナフチル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ナフチル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ナフチル)シラン化合物;
プロピル(ベンジル)ジメトキシシラン、プロピル(ベンジル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ベンジル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ベンジル)ジエトキシシラン、プロピル(ベンジル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ベンジル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ベンジル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ベンジル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ベンジル)シラン化合物;
プロピル(ヒドロキシベンジル)ジメトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)メトキシエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)メトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジエトキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジペンチルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジフェニルオキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)エトキシプロポキシシラン、プロピル(ヒドロキシベンジル)ジプロポキシシラン等のプロピル(ヒドロキシベンジル)シラン化合物;
が挙げられる。
【0048】
以上説明したシラン化合物を、常法に従って加水分解縮合することによりシロキサン樹脂が得られる。
シロキサン樹脂の質量平均分子量は、300~30000が好ましく、500~10000がより好ましい。異なる質量平均分子量のシロキサン樹脂を2種以上混合してもよい。シロキサン樹脂の質量平均分子量がかかる範囲内である場合、製膜性に優れ、平坦なケイ素含有樹脂フィルム、又はシリカフィルムを形成できるケイ素含有樹脂組成物を得やすい。
【0049】
以上説明したシラン化合物を加水分解縮合させて得られるシロキサン樹脂の好適な例としては、下記式(a-1)で示される構造単位を有するシロキサン樹脂が挙げられる。当該シロキサン樹脂において、ケイ素原子1個に対する炭素原子の数は2個以上である。
【化5】
(式(a-1)中、R
1はアルキル基、アリール基、又はアラルキル基であり、R
2は水素又はアルキル基、アリール基、又はアラルキル基であり、mは0又は1である。)
【0050】
R1及びR2におけるアルキル基、アリール基、又はアラルキル基は、前述の式(I)におけるアルキル基、アリール基、又はアラルキル基と同様である。
上記のように、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を有するシロキサン樹脂を用いることにより、耐久性に優れるシリカフィルムを形成でき、微小な空間への充填が容易なケイ素含有樹脂組成物を得やすい。
【0051】
アルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。このように炭素原子数1~5のアルキル基を有することにより、耐熱性が良好なシリカフィルムを形成しやすい。
アリール基及びアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニル基、フルオレニル基、及びピレニル基等が挙げられる。
【0052】
アリール基及びアラルキル基としては、具体的には下記の構造を有するものが好ましく挙げられる。
【化6】
【0053】
上記式中、R3は、水素原子;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基等の炭化水素基であり、R4は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基である。なお、上記芳香族炭化水素基は、該芳香族炭化水素基における少なくとも1つの芳香環に、上記R3を有していればよく、複数有していてもよい。複数のR3を有する場合には、これらのR3は同一でもよく、異なっていてもよい。
【0054】
特に好ましいR
1としては、下記の構造(R
1-a)、又は構造(R
1-b)を有する基が好ましく、特に(R
1-b)が好ましい。
【化7】
【0055】
式(a-1)において、mは0であることが好ましく、その場合にはシロキサン樹脂は、シルセスキオキサン骨格を有する。さらに、シロキサン樹脂は、ラダー型のシルセスキオキサンであることがより好ましい。
【0056】
さらに、式(a-1)で示される構造単位(単位骨格)において、ケイ素原子1個に対して、炭素原子が2個以上15個以下となる原子数比を有していることが好ましい。
【0057】
シロキサン樹脂は、構造単位(a-1)を2種類以上有していてもよい。また、シロキサン樹脂は、異なる構造単位(a-1)からなるシロキサン樹脂を混合したものであってもよい。
構造単位(a-1)を2種類以上有するシロキサン樹脂としては、具体的には下記の構造式(A-1-1)~(A-1-3)で表されるシロキサン樹脂が挙げられる。
【化8】
【化9】
【化10】
【0058】
シロキサン樹脂としては、例えば、下式(A-1-4)で示される構成単位を含有するものであってもよい。
【化11】
式(A-1-4)中、R
13は、その構造中に(メタ)アクリル基、ビニル基及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する有機基である。(メタ)アクリル基、ビニル基及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基は、Si原子に直接結合していてもよく、連結基を介していてもよい。連結基は、例えば、炭素原子数1~10の直鎖でも分岐鎖であってもよいアルキレン基若しくはアリーレン基、又はこれらを組み合わせた2価の基である。連結基は、エーテル結合、アミノ結合、又はアミド結合を有していてもよい。
【0059】
(A-1-4)で表される構成単位は、例えば以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化12】
【0060】
また、R13がエポキシ基を有する場合、R13として2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基が好適な例として挙げられる。
【0061】
シロキサン樹脂としては、例えば、下式(A-1-5)で示される構成単位を含有するものであってもよい。
【化13】
【0062】
式(A-1-5)中、R
14は、その構造中にカルボキシ基を少なくとも1つ有する有機基である。カルボキシ基は連結基を介してSi原子に結合していることが好ましく、連結基は、例えば、炭素原子数1~10の直鎖でも分岐鎖であってもよいアルキレン基、シクロアルキレン基、若しくはアリーレン基、又はこれらを組み合わせた2価の基である。
連結基は、エーテル結合、アミノ結合、アミド結合、又はビニル結合を有していてもよく、アミド結合を有していることが好ましい。R
14は、例えば以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下式中*は、式(A-1-5)中のSiと結合する、R
14の結合手の末端を意味する。
【化14】
【0063】
ケイ素含有樹脂組成物は後述する硬化剤(C)を含み得る。硬化剤(C)を含むケイ素含有樹脂組成物において、(i)硬化剤(C)が光又は熱により塩基成分を発生する硬化剤を含む場合、(ii)ケイ素含有樹脂組成物が後述のその他の成分である光重合開始剤、酸発生剤、若しくは塩基発生剤からなる群の少なくとも1つを含む場合、又は(iii)後述するフィルムの製造方法において露光工程を有する場合、シロキサン樹脂は(A-1-4)で示される構成単位を含有することが好ましい。同様にまた、(iv)後述のその他の成分である光重合開始剤、酸発生剤、若しくは塩基発生剤からなる群の少なくとも1つ(硬化剤(C)に該当するものを除く)を含む場合、シロキサン樹脂は(A-1-4)で示される構成単位を含有することが好ましい。シロキサン樹脂中の(A-1-4)で示される構成単位の含有割合は、例えば、10~80モル%である。他の構成単位として、さらに式(a-1)で示される構造単位及び/又は(A-1-5)で示される構成単位を含んでいてもよい。また、各式に該当する構成単位を2種以上含んでいてもよい。
【0064】
後述するフィルムの製造方法において、現像工程を有する場合、シロキサン樹脂は(A-1-5)で示される構成単位、構造(R1-a)を有する構成単位、及び構造(R1-b)を有する構成単位からなる群より選択される1種以上の構成単位を含有することが好ましい。シロキサン樹脂中の(A-1-5)で示される構成単位、構造(R1-a)を有する構成単位、及び構造(R1-b)を有する構成単位からなる群より選択される構成単位の含有割合は、例えば、20~90モル%である。この場合、他の構成単位として、さらに式(a-1)で示される構造単位及び/又は(A-1-4)で示される構成単位を含んでいてもよく、(A-1-4)で示される構成単位及び(A-1-5)で示される構成単位を含むシロキサン樹脂であることが好ましい。また、各式に該当する構成単位を2種以上含んでいてもよい。
【0065】
(ポリシラン)
ポリシランの構造は特に限定されない。ポリシランは直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、網目状であっても、環状であってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状の鎖状構造が好ましい。
ポリシランは、シラノール基及び/又はアルコキシ基を含有していてもよい。
好適なポリシランとしては、例えば、下式(A5)及び(A6)で表される単位の少なくとも1つを必須に含み、下式(A7)、(A8)及び(A9)で表される単位から選択される少なくとも1つの単位を任意に含有するポリシランが挙げられる。かかるポリシランは、シラノール基、又はケイ素原子に結合するアルコキシ基を含有していてもよい。
【0066】
【化15】
(式(A5)、(A7)、及び(A8)中、R
a3及びR
a4は、水素原子、有機基又はシリル基を表す。R
a5は、水素原子又はアルキル基を表す。R
a5がアルキル基である場合、炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましい。)
【0067】
Ra3及びRa4について、有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基や、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、シクロアルコキシ基、シクロアルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基等が挙げられる。
これらの基の中では、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基が好ましい。アルキル基、アリール基、及びアラルキル基の好適な例は、前述の式(A1)中のRがアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である場合の例と同様である。
【0068】
R
a3及びR
a4がシリル基である場合、シリル基としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基等のSi
1-10シラニル基(Si
1-6シラニル基等)が挙げられる。
ポリシランは、下記(A10)から(A13)のユニットを含むのが好ましい。
【化16】
(A10)から(A13)中、R
a3及びR
a4は、式(A5)、(A7)、及び(A8)中におけるR
a3及びR
a4と同様である。a、b、及びcは、それぞれ、2~1000の整数である。
a、b、及びcは、それぞれ、10~500が好ましく、10~100がより好ましい。各ユニット中の構成単位は、ユニット中に、ランダムに含まれていても、ブロック化された状態で含まれていてもよい。
【0069】
以上説明したポリシランの中では、それぞれケイ素原子に結合している、アルキル基と、アリール基又はアラルキル基とを組み合わせて含むポリシラン又はアルキル基のみケイ素原子に結合しているポリシランが好ましい。より具体的には、それぞれケイ素原子に結合している、メチル基と、ベンジル基とを組み合わせて含むポリシランや、それぞれケイ素原子に結合している、メチル基と、フェニル基とを組み合わせて含むポリシラン、又はメチル基のみケイ素原子に結合しているポリシランが好ましく使用される。
【0070】
ポリシランの質量平均分子量は、300~100000が好ましく、500~70000がより好ましく、800~30000がさらに好ましい。異なる質量平均分子量のポリシランを2種以上混合してもよい。
【0071】
ケイ素含有樹脂組成物中の、ケイ素含有樹脂(A)の含有量は特に限定されず、所望の膜厚に応じて設定すればよい。製膜性の点からは、ケイ素含有樹脂組成物中のケイ素含有樹脂(A)の含有量は、1~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましく、10~35質量%が特に好ましい。
【0072】
[量子ドット(B)]
ケイ素含有樹脂組成物は、量子ドット(B)を含む。
量子ドット(B)が量子ドットとしての機能を奏する微粒子である限りにおいて、その構造やその構成成分は特に限定されない。量子ドット(B)は、量子力学に従う独特の光学特性(後述の量子閉じ込め効果)を有するナノスケールの材料であり、一般的に半導体ナノ粒子のことである。本明細書において、量子ドット(B)は、半導体ナノ粒子表面にさらに発光量子収率を向上させるために被覆されているもの(後述のシェル構造を有するもの)や、量子ドットを安定化させるために表面修飾されているものも含む。
【0073】
量子ドット(B)は、バンドギャップ(価電子帯及び伝導帯のエネルギー差)よりも大きなエネルギーの光子を吸収し、その粒子径に応じた波長の光を放出する半導体ナノ粒子とされているが、量子ドット(B)の材料に含まれる元素としては、例えば、II族元素(2A族、2B族)、III族元素(特に3A族)、IV族元素(特に4A族)、V族元素(特に5A族)、及びVI族元素(特に6A族)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。量子ドット(B)の材料として好ましい化合物又は元素としては、例えば、II-VI族化合物、III-V族化合物、IV-VI族化合物、IV族元素、IV族化合物及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
II-VI族化合物としては、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、MgS及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、MgZnSe、MgZnS及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;及びHgZnTeS、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。
【0075】
III-V族化合物としては、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;及びGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。
【0076】
IV-VI族化合物としては、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;及びSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。
【0077】
IV族元素としては、Si、Ge及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。IV族化合物としては、SiC、SiGe及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。
【0078】
量子ドット(B)の構造は、1種の化合物からなる均質構造であってもよく、2種以上の化合物からなる複合構造であってもよいが、上記化合物の発光量子収率を向上させるために、量子ドット(B)の構造は、コアが、1層以上のシェル層で被覆されたコア-シェル構造であることが好ましく、コアの材質となる化合物の粒子表面を半導体材料でエピタキシャルに被覆した構造であることがより好ましい。例えば、コアの材質としてII-VI族のCdSeを用いた場合、その被覆層(シェル)としてZnSが用いられる。シェルはコアの材質と同じ格子定数であることが好ましく、コア―シェルの格子定数の差の小さい材料の組み合わせが適宜選択される。
【0079】
安全性の点からは、量子ドット(B)が、CdやPbを構成成分として含まず、InやSi等を構成成分として含むのが好ましく、Inを含むのがより好ましい。
【0080】
シェル層を持たない均質構造型の量子ドット(B)の好適な具体例としては、AgInS2、及びZnがドープされたAgInS2が挙げられる。
コア-シェル型の量子ドット(B)としては、InP/ZnS、CuInS2/ZnS、及び(ZnS/AgInS2)固溶体/ZnSが挙げられる。
なお、上記において、コア-シェル型の量子ドット(B)の材質は、(コアの材質)/(シェル層の材質)として記載されている。
【0081】
また、安全性と発光量子収率を向上の点で、コア―シェル構造のシェルを多層構造にすることが好ましく、2層にすることがより好ましい。
コア―多層シェル構造の場合、コアの材質として、InP、ZnS、ZnSeからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、InPを含むことがより好ましい。含有割合としては、コアの総質量のうちInPが50~100質量%であり、60~99質量%が好ましく、82~95質量%がより好ましい。また、コアの総質量のうち、ZnS及び/又はZnSeが0~50質量%であり、1~40質量%であることが好ましく、5~18質量%がより好ましい。
【0082】
多層シェル構造における第1のシェルの材質は、ZnS及び/又はZnSeであることが好ましい。ZnS及び/又はZnSeの含有割合としては、第1のシェルの全質量を基準にして、例えば50~100質量%であり、75~98質量%が好ましく、80~97質量%がより好ましい。第1のシェルの材質がZnS及びZnSeの混合物である場合、混合比(質量比)は特に限定されず、1/99~99/1であり、好ましくは10/90~90/10である。
【0083】
多層シェル構造において、第2のシェルを、第1のシェルの表面上に成長させる。第2のシェルの材質は、第1のシェルの材質と同等であることが好ましい(ただし、各材質において、コアに対する格子定数の差が異なる。つまり、各材質において99%以上同質のものを除く)。ZnS及び/又はZnSeの含有割合としては、第2のシェルの全質量を基準にして、例えば50~100質量%であり、75~98質量%が好ましく、80~97質量%がより好ましい。第2のシェルの材質がZnS及びZnSeの混合物である場合、混合比(質量比)は特に限定されず、1/99~99/1であり、10/90~90/10である。
【0084】
多層シェル構造における第1のシェルと第2のシェルとは、格子定数に差を有する。
例えば、コアと第1のシェルとの間の格子定数差は2~8%であり、2~6%が好ましく、3~5%がより好ましい。
また、コアと第2のシェルとの間の格子定数差は5~13%であり、5~12%が好ましく、7~10%がより好ましく、8~10%がさらに好ましい。
【0085】
また。第1のシェルと第2のシェルの格子定数の差は、例えば、3~9%であり、3~7%が好ましく、4~6%がより好ましい。
【0086】
これらのコア―多層シェル構造による量子ドット(B)は、400~800nmの範囲(さらには470~650nmの範囲、特に540nm~580nmの範囲)の発光波長(emission wavelength)を有することができる。
【0087】
これらのコア―多層シェル構造による量子ドット(B)としては、例えば、InP/ZnS/ZnSe、及びInP/ZnSe/ZnSが挙げられる。
【0088】
また量子ドット(B)は表面修飾されていてもよい。例えば、ホスフィン、ホスフィン酸化物、トリアルキルホスフィン類等のリン化合物;ピリジン、アミノアルカン類、第3級アミン類等の有機窒素化合物;メルカプトアルコール、チオール、ジアルキルスルフィド類、ジアルキルスルホキシド類等の有機硫黄化合物;高級脂肪酸、アルコール類等の表面修飾剤(有機リガンド)が挙げられる。
【0089】
上記の量子ドット(B)は、2種以上を組み合わせて用いてもよく、コア-(多層)シェル型の量子ドット(B)と、均質構造型の量子ドット(B)とを組み合わせて用いてもよい。
【0090】
量子ドット(B)の平均粒子径は、量子ドットとして機能し得る範囲内であれば特に限定されず、0.5~20nmが好ましく、1.0~15nmがより好ましく、2~7nmがさらに好ましい。
コア-(多層)シェル型の量子ドット(B)の場合、コアのサイズは、例えば0.5~10nmであり、2~5nmが好ましい。シェルの平均厚さは、0.4~2nmが好ましく、0.4~1.4nmがより好ましい。シェルが、第1のシェルと第2のシェルとからなる場合、第1のシェルの平均厚さは、例えば0.2~1nmであり、0.2~0.7が好ましい。第2のシェルの平均厚さは、第1のシェルの平均厚さによらず、例えば0.2~1nmであり、0.2~0.7が好ましい。
【0091】
かかる範囲内の平均粒子径を有する量子ドット(B)は、量子閉じ込め効果を発揮し量子ドットとして良好に機能するとともに、調製が容易であり、安定な蛍光特性を有する。
なお、量子ドット(B)の平均粒子径は、例えば、量子ドット(B)の分散液を、基板上に塗布・乾燥させ、揮発成分を除いた後に、その表面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することによって定義することができる。典型的には、TEM画像の画像解析により得られる各粒子の円相当径の数平均径として、この平均粒子径を定義することができる。
【0092】
量子ドット(B)の形状は特に限定されない。量子ドット(B)の形状の例としては、球状、楕円球状、円柱状、多角柱状、円盤状、及び多面体状等が挙げられる。
これらの中でも、取扱いの容易さ、入手容易性の観点から球状であることが好ましい。
【0093】
光学フィルムとしての特性や波長変換特性が良好である点から、量子ドット(B)は、500~600nmの波長域に蛍光極大を有する化合物(B1)、及び600~700nmの波長域に蛍光極大を有する化合物(B2)からなる群より選択される1種以上を含むのが好ましく、化合物(B1)及び化合物(B2)からなる群より選択される1種以上からなるのがより好ましい。
【0094】
量子ドット(B)の製造方法は特に限定されない。周知の種々の方法で製造された量子ドットを、量子ドット(B)として用いることができる。量子ドット(B)の製造方法としては、例えば、配位性の有機溶媒中で有機金属化合物を熱分解する方法を採用ができる。
また、コア-シェル構造型の量子ドット(B)は、反応により均質なコアを形成した後に、分散されたコアの存在下にシェル層の前駆体を反応させてシェル層を形成する方法により製造できる。また例えば、上記コア―多層シェル構造を有する量子ドット(B)は、WO2013/127662号公報に記載の方法により製造することができる。
なお、市販されている種々の量子ドット(B)を用いることもできる。
【0095】
量子ドット(B)の含有量は、ケイ素含有樹脂組成物全体の質量に対して例えば、0.05~15質量%である。量子ドット(B)が、シェル層を有する場合、又は表面修飾されている場合、1~12質量%が好ましく、3~10質量%であることがより好ましい。量子ドット(B)が、半導体ナノ粒子のみの場合(シェル層及び/又は表面修飾剤を有さない場合)は、0.07~3質量%が好ましく、0.1~1質量%であることがより好ましい。量子ドット(B)の含有量を上記の範囲とすることにより、光学フィルムとしての特性や、波長変換特性が良好であるフィルムを形成できるケイ素含有樹脂組成物を得やすい。
【0096】
[硬化剤(C)]
ケイ素含有樹脂組成物は、硬化剤(C)を含んでいてもよい。ケイ素含有樹脂組成物が硬化剤(C)を含む場合、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤により、溶解、膨潤、変形したりしにくい、有機溶剤耐性に優れるシリカフィルムを形成しやすい。
【0097】
硬化剤(C)の好適な例としては、塩酸、硫酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、及びp-トルエンスルホ酸等のブレンステッド酸;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルメチルアミン、DBU(1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセン)、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素)等の有機アミン類;三塩化リン、三臭化リン、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリプロピル等のPX3(式中、Xはハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1~6のアルコキシ基である。)で表されるリン化合物;オキシ三塩化リン、オキシ三臭化リン、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル等のPOX3(式中、Xはハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1~6のアルコキシ基である。)で表されるリン化合物;五酸化二リン;ポリリン酸やポリリン酸エステル等の、H(HPO3)aOH(式中、aは1以上の整数である。)で表されるリン化合物;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、メトキシジクロロホスフィン等のRC0PX2(式中、RC0は水素原子又は炭素原子数1~30の有機基であり、該有機基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。Xはハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1~6のアルコキシ基である。)で表されるリン化合物;亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジクロリド、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸ジクロリド、ベンジルホスホン酸ジエチル等のRC0POX2(式中、RC0は水素原子又は炭素原子数1~30の有機基であり、該有機基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。Xはハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1~6のアルコキシ基である。)で表されるリン化合物;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(p-トリル)ホスフィン、トリス(m-トリル)ホスフィン、トリス(o-トリル)ホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、1,4-ビスジフェニルホスフィノブタン等の有機リン化合物;三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリアミル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリシクロペンチル、ホウ酸トリシクロヘキシル、ホウ酸トリアリル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸エチルジメチル等のBX3(式中、Xはハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1~6のアルコキシ基である。)で表されるホウ素化合物;酸化ホウ素(B2O3);フェニルボロン酸、ジイソプロポキシ(メチル)ボラン、メチルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸等のRC0BX2(式中、RC0は水素原子又は炭素原子数1~30の有機基であり、該有機基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。Xはハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1~6のアルコキシ基である。)で表されるホウ素化合物;トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、n-ブチルトリフェニルホスホニウムジシアナミド等の有機リン化合物の複合体;三フッ化ホウ素等のルイス酸の有機アミン錯体(有機アミンとしては例えばピペリジン);アザビシクロウンデセン、ジアザビシクロウンデセントルエンスルホン酸塩、又はジアザビシクロウンデセンオクチル酸塩等のアミジン類;が挙げられる。
【0098】
また、(A)成分として上記ポリシランを用いる場合、上記硬化剤に加えて又は単独で、光又は熱により塩基成分を発生する硬化剤を用いることが好ましい。
【0099】
(熱により塩基成分を発生する硬化剤)
熱により塩基成分を発生する硬化剤としては、従来から熱塩基発生剤として使用されている化合物を特に限定なく用いることができる。
例えば、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オンを、熱により塩基成分を発生する効果剤として用いることができる。なお、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オンは光の作用によっても塩基を発生させる。
【0100】
また、加熱により下式(C1)で表されるイミダゾール化合物を発生させる化合物(以下、熱イミダゾール発生剤とも記す)も、硬化剤として好ましく使用される。
【化17】
(式(C1)中、R
c1、R
c2、及びR
c3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、ホスフィノ基、スルホナト基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。)
【0101】
Rc1、Rc2、及びRc3における有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上の有機基となり得る。
【0102】
Rc1及びRc2は、それらが結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合をさらに含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。
【0103】
Rc1、Rc2、及びRc3の有機基に含まれる結合は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、有機基は、酸素原子、窒素原子、珪素原子等のヘテロ原子を含む結合を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(-N=C(-R)-、-C(=NR)-:Rは水素原子又は有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。
【0104】
Rc1、Rc2、及びRc3の有機基が有してもよいヘテロ原子を含む結合としては、イミダゾール化合物の耐熱性の観点から、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(-N=C(-R)-、-C(=NR)-:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
【0105】
Rc1、Rc2、及びRc3の有機基が炭化水素基以外の置換基である場合、Rc1、Rc2、及びRc3は本発明の効果が損なわれない限り特に限定されない。Rc1、Rc2、及びRc3の具体例としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0106】
Rc1、Rc2、及びRc3としては、水素原子、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアリール基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、及びハロゲン原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0107】
熱イミダゾール発生剤は、加熱により上記式(C1)で表されるイミダゾール化合物を発生させることができる化合物であれば特に限定されない。従来から種々の組成物に配合されている、熱の作用によりアミンを発生する化合物(熱塩基発生剤)について、加熱時に発生するアミンに由来する骨格を、上記式(C1)で表されるイミダゾール化合物に由来する骨格に置換することにより、熱イミダゾール発生剤として使用される化合物が得られる。
【0108】
好適な熱イミダゾール発生剤としては、下記式(C2):
【化18】
(式(C2)中、R
c1、R
c2、及びR
c3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R
c4及びR
c5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R
c6、R
c7、R
c8、R
c9、及びR
c10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。R
c6、R
c7、R
c8、R
c9、及びR
c10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
で表される化合物が挙げられる。
【0109】
式(C2)において、Rc1、Rc2、及びRc3は、式(C1)について説明したものと同様である。
【0110】
式(C2)において、Rc4及びRc5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。
【0111】
Rc4及びRc5における有機基としては、Rc1、Rc2、及びRc3について例示したものが挙げられる。この有機基は、Rc1、Rc2、及びRc3の場合と同様に、該有機基中にヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0112】
以上の中でも、Rc4及びRc5としては、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数4~13のシクロアルキル基、炭素原子数4~13のシクロアルケニル基、炭素原子数7~16のアリールオキシアルキル基、炭素原子数7~20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素原子数2~11のアルキル基、水酸基を有する炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~11のアミド基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数1~10のアシル基、炭素原子数2~11のエステル基(-COOR、-OCOR:Rは炭化水素基を示す)、炭素原子数6~20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素原子数6~20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基であることが好ましい。より好ましくは、Rc4及びRc5の両方が水素原子であるか、又はRc4がメチル基であり、Rc5が水素原子である。
【0113】
式(C2)において、Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。
【0114】
Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10における有機基としては、Rc1、Rc2、及びRc3において例示したものが挙げられる。この有機基は、Rc1及びRc2の場合と同様に、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0115】
Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。例えば、Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10は、それらの2つ以上が結合して、Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成してもよい。
【0116】
以上の中でも、Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10としては、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数4~13のシクロアルキル基、炭素原子数4~13のシクロアルケニル基、炭素原子数7~16のアリールオキシアルキル基、炭素原子数7~20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素原子数2~11のアルキル基、水酸基を有する炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~11のアミド基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数1~10のアシル基、炭素原子数2~11のエステル基、炭素原子数6~20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素原子数6~20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基、ニトロ基であることが好ましい。
【0117】
また、Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10としては、それらの2つ以上が結合して、Rc6、Rc7、Rc8、Rc9、及びRc10が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も好ましい。
【0118】
上記式(C2)で表される化合物の中では、下記式(C3):
【化19】
(式(C3)中、R
c1、R
c2、及びR
c3は、式(C1)及び(C2)と同義である。R
c4~R
c9は式(C2)と同義である。R
c11は、水素原子又は有機基を示す。R
c6及びR
c7が水酸基となることはない。R
c6、R
c7、R
c8、及びR
c9は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
で表される化合物が好ましい。
【0119】
式(C3)で表される化合物は、置換基-O-Rc11を有するため、有機溶媒に対する溶解性に優れる。
【0120】
式(C3)において、Rc11は、水素原子又は有機基である。Rc11が有機基である場合、有機基としては、Rc1、Rc2、及びRc3において例示したものが挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。Rc11としては、水素原子、炭素原子数1~12のアルキル基若しくはアルコキシアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基がより好ましい。
【0121】
熱イミダゾール発生剤として特に好適な化合物の具体例を以下に示す。
【化20】
【0122】
(オキシムエステル化合物)
オキシムエステル化合物は、光の作用により分解して塩基を発生する。好適なオキシムエステル化合物としては、下記式(C4)で表される化合物が挙げられる。
【化21】
【0123】
上記式(C4)中、Rc12は、炭素原子数1~10のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基を示す。m1は、0又は1である。Rc13は、置換基を有してもよい炭素原子数1~10のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基を示す。Rc14は、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。
【0124】
Rc12が炭素原子数1~10のアルキル基である場合、アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。この場合、アルキル基の炭素原子数は、1~8が好ましく、1~5がより好ましい。
【0125】
Rc12が、置換基を有してもよいフェニル基である場合、置換基の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。フェニル基が有していてもよい置換基の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、アミノ基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc12が、置換基を有してもよいフェニル基であり、フェニル基が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0126】
フェニル基が有する置換基がアルキル基である場合、その炭素原子数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましく、1~3が特に好ましく、1が最も好ましい。また、アルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。フェニル基が有する置換基がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。この場合、フェニル基が有する置換基としては、例えば、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルキル基が挙げられる。フェニル基が有する置換基がアルコキシアルキル基である場合、-Rc15-O-Rc16で表される基が好ましい。Rc15は、炭素原子数1~10の直鎖でも分岐鎖であってもよいアルキレン基である。Rc16は、炭素原子数1~10の直鎖でも分岐鎖であってもよいアルキル基である。Rc15の炭素原子数は、1~8が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が特に好ましい。Rc16の炭素原子数は、1~8が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が特に好ましく、1が最も好ましい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0127】
フェニル基が有する置換基がアルコキシ基である場合、その炭素原子数は、1~20が好ましく、1~6がより好ましい。また、アルコキシ基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。フェニル基が有する置換基がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、2-メトキシ-1-メチルエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0128】
フェニル基が有する置換基がシクロアルキル基、又はシクロアルコキシ基である場合、その炭素原子数は、3~10が好ましく、3~6がより好ましい。フェニル基が有する置換基がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。フェニル基が有する置換基がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0129】
フェニル基が有する置換基が飽和脂肪族アシル基、又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、その炭素原子数は、2~20が好ましく、2~7がより好ましい。フェニル基が有する置換基が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n-ブタノイル基、2-メチルプロパノイル基、n-ペンタノイル基、2,2-ジメチルプロパノイル基、n-ヘキサノイル基、n-ヘプタノイル基、n-オクタノイル基、n-ノナノイル基、n-デカノイル基、n-ウンデカノイル基、n-ドデカノイル基、n-トリデカノイル基、n-テトラデカノイル基、n-ペンタデカノイル基、及びn-ヘキサデカノイル基等が挙げられる。フェニル基が有する置換基が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n-ブタノイルオキシ基、2-メチルプロパノイルオキシ基、n-ペンタノイルオキシ基、2,2-ジメチルプロパノイルオキシ基、n-ヘキサノイルオキシ基、n-ヘプタノイルオキシ基、n-オクタノイルオキシ基、n-ノナノイルオキシ基、n-デカノイルオキシ基、n-ウンデカノイルオキシ基、n-ドデカノイルオキシ基、n-トリデカノイルオキシ基、n-テトラデカノイルオキシ基、n-ペンタデカノイルオキシ基、及びn-ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0130】
フェニル基が有する置換基がアルコキシカルボニル基である場合、その炭素原子数は、2~20が好ましく、2~7がより好ましい。フェニル基が有する置換基がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec-ペンチルオキシカルボニル基、tert-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec-オクチルオキシカルボニル基、tert-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n-デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0131】
フェニル基が有する置換基がフェニルアルキル基である場合、その炭素原子数は、7~20が好ましく、7~10がより好ましい。またフェニル基が有する置換基がナフチルアルキル基である場合、その炭素原子数は、11~20が好ましく、11~14がより好ましい。フェニル基が有する置換基がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、及び4-フェニルブチル基が挙げられる。フェニル基が有する置換基がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-(α-ナフチル)エチル基、及び2-(β-ナフチル)エチル基が挙げられる。フェニル基が有する置換基がフェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、置換基は、フェニル基又はナフチル基上にさらに置換基を有していてもよい。
【0132】
フェニル基が有する置換基がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。フェニル基が有する置換基がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0133】
フェニル基が有する置換基が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、炭素原子数2~20の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2~20の飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11~20のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例としては、フェニル基が有する置換基について上記したものと同様のものが挙げられる。1、又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、n-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、n-ノニルアミノ基、n-デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n-ブタノイルアミノ基、n-ペンタノイルアミノ基、n-ヘキサノイルアミノ基、n-ヘプタノイルアミノ基、n-オクタノイルアミノ基、n-デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α-ナフトイルアミノ基、β-ナフトイルアミノ基、及びN-アセチル-N-アセチルオキシアミノ基等が挙げられる。
【0134】
フェニル基が有する置換基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2~7のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1~6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1~6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。フェニル基が有する置換基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1~4が好ましい。フェニル基が有する置換基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0135】
以上、Rc12が置換基を有してもよいフェニル基である場合の置換基について説明したが、これらの置換基の中では、アルキル基又はアルコキシアルキル基が好ましい。
【0136】
Rc12が置換基を有してもよいフェニル基である場合、置換基の数と、置換基の結合位置とは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。Rc12が、置換基を有してもよいフェニル基である場合、塩基の発生効率に優れる点で、置換基を有してもよいフェニル基は、置換基を有していてもよいo-トリル基であるのが好ましい。
【0137】
Rc12が置換基を有してもよいカルバゾリル基である場合、置換基の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。カルバゾリル基が炭素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~20の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2~20のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2~20の飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニルチオ基、置換基を有してもよいフェニルカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフチルカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数11~20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、アミノ基、1又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0138】
Rc12が置換基を有してもよいカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基が窒素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、炭素原子数2~20の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2~20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数11~20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の中では、炭素原子数1~20のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0139】
カルバゾリル基が有してもよい置換基の具体例について、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び1又は2の有機基で置換されたアミノ基に関しては、Rc12が置換基を有してもよいフェニル基である場合の、フェニル基が有する置換基の例と同様である。
【0140】
Rc12において、カルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基の例としては、炭素原子数1~6のアルキル基;炭素原子数1~6のアルコキシ基;炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシル基;炭素原子数2~7のアルコキシカルボニル基;炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1~6のアルキル基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素原子数1~6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素原子数1~6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン-1-イル基;ピペラジン-1-イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。カルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1~4が好ましい。フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0141】
Rc13は、置換基を有してもよい炭素原子数1~10のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基である。
【0142】
Rc13が置換基を有してもよい炭素原子数1~10のアルキル基である場合、アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。この場合、アルキル基の炭素原子数は、1~8が好ましく、1~5がより好ましい。
【0143】
Rc13において、アルキル基、フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
アルキル基が炭素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、炭素原子数3~10のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~20の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2~20のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2~20の飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニルチオ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数11~20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、アミノ基、1又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
フェニル基、及びカルバゾリル基が炭素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、アルキル基が炭素原子上に有してもよい好適な置換基として上記で例示した基に加えて、炭素原子数1~20のアルキル基が挙げられる。
【0144】
アルキル基、フェニル基、又はカルバゾリル基が有してもよい置換基の具体例について、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び1又は2の有機基で置換されたアミノ基に関しては、Rc12が置換基を有してもよいフェニル基である場合の、フェニル基が有する置換基の例と同様である。
【0145】
Rc13において、アルキル基、フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基の例としては、炭素原子数1~6のアルキル基;炭素原子数1~6のアルコキシ基;炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシル基;炭素原子数2~7のアルコキシカルボニル基;炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1~6のアルキル基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素原子数1~6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素原子数1~6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン-1-イル基;ピペラジン-1-イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。アルキル基又はフェニル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1~4が好ましい。フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0146】
式(C4)で表される化合物の塩基発生効率の点から、R
c13としては、下記式(C5):
【化22】
で表される基、及び下記式(C6):
【化23】
で表される基が好ましい。
【0147】
式(C5)中、Rc17及びRc18は、それぞれ1価の有機基であり、m2は0又は1である。式(C6)中、Rc19は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、AはS又はOであり、m3は0~4の整数である。
【0148】
式(C5)におけるRc17は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。Rc17の好適な例としては、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、炭素原子数2~20の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2~20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数11~20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。
【0149】
Rc17の中では、炭素原子数1~20のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0150】
式(C5)におけるRc18は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。Rc18として好適な基の具体例としては、炭素原子数1~20のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。Rc18として、これらの基の中では置換基を有してもよいフェニル基、及び置換基を有してもよいナフチル基がより好ましく、2-メチルフェニル基及びナフチル基が特に好ましい。
【0151】
Rc17又はRc18に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2~7のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1~6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1~6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc17又はRc18に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1~4が好ましい。Rc17又はRc18に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0152】
式(C6)におけるRc19が有機基である場合、Rc19は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。式(C6)においてRc19が有機基である場合の好適な例としては、炭素原子数1~6のアルキル基;炭素原子数1~6のアルコキシ基;炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシル基;炭素原子数2~7のアルコキシカルボニル基;炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1~6のアルキル基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素原子数1~6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素原子数1~6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン-1-イル基;ピペラジン-1-イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基;2-メチルフェニルカルボニル基;4-(ピペラジン-1-イル)フェニルカルボニル基;4-(フェニル)フェニルカルボニル基が挙げられる。
【0153】
Rc19の中では、ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1~6のアルキル基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;ニトロ基が好ましく、ベンゾイル基;ナフトイル基;2-メチルフェニルカルボニル基;4-(ピペラジン-1-イル)フェニルカルボニル基;4-(フェニル)フェニルカルボニル基がより好ましい。
【0154】
また、式(C6)において、m3、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、0又は1であるのが特に好ましい。m3が1である場合、Rc19の結合する位置は、Rc19が結合するフェニル基が硫黄原子と結合する結合手に対して、パラ位であるのが好ましい。
【0155】
Rc14は、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。置換基を有していてもよいフェニル基である場合、フェニル基が有していてもよい置換基は、Rc12が置換基を有していてもよいフェニル基である場合と同様である。Rc14としては、メチル基、エチル基、又はフェニル基が好ましく、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
【0156】
上記式(C4)で表されるオキシムエステル化合物は、m1が0である場合、例えば、以下に説明する方法により合成できる。まず、Rc13-CO-Rc12で表されるケトン化合物を、ヒドロキシルアミンによりオキシム化して、Rc13-(C=N-OH)-Rc12で表されるオキシム化合物を得る。次いで、得られたオキシム化合物を、Rc14-CO-Hal(Halはハロゲンを示す)で表される酸ハロゲン化物や、(Rc14CO)2Oで表される酸無水物によりアシルして、m1が0である上記式(C4)で表されるオキシムエステル化合物が得られる。
【0157】
また、上記式(C4)で表されるオキシムエステル化合物は、m1が1である場合、例えば、以下に説明する方法により合成できる。まず、Rc13-CO-CH2-Rc12で表されるケトン化合物を、塩酸の存在下に亜硝酸エステルと反応させ、Rc13-CO-(C=N-OH)-Rc12で表されるオキシム化合物を得る。次いで、得られたオキシム化合物を、Rc14-CO-Hal(Halはハロゲンを示す)で表される酸ハロゲン化物や、(Rc14CO)2Oで表される酸無水物によりアシルして、m1が1である上記式(C4)で表されるオキシムエステル化合物が得られる。
【0158】
上記式(C4)で表される化合物としては、下記式(C7)で表される化合物が挙げられる。
【化24】
【0159】
上記式(C7)中、m1及びRc13は上記の通りである。Rc20は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、m4は0~4の整数であり、Rc21は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基である。
【0160】
上記式(C7)中、Rc20は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、有機基である場合、種々の有機基から適宜選択される。Rc20の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、アミノ基、1又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。m4が2~4の整数である場合、Rc20は同一であっても異なっていてもよい。また、置換基の炭素原子数には、置換基がさらに有する置換基の炭素原子数を含まない。
【0161】
Rc20がアルキル基である場合、炭素原子数1~20が好ましく、炭素原子数1~6がより好ましい。また、Rc20がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc20がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc20がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0162】
Rc20がアルコキシ基である場合、炭素原子数1~20が好ましく、炭素原子数1~6がより好ましい。また、Rc20がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc20がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、Rc20がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0163】
Rc20がシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基である場合、炭素原子数3~10が好ましく、炭素原子数3~6がより好ましい。Rc20がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。Rc20がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0164】
Rc20が飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、炭素原子数2~20が好ましく、炭素原子数2~7がより好ましい。Rc20が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n-ブタノイル基、2-メチルプロパノイル基、n-ペンタノイル基、2,2-ジメチルプロパノイル基、n-ヘキサノイル基、n-ヘプタノイル基、n-オクタノイル基、n-ノナノイル基、n-デカノイル基、n-ウンデカノイル基、n-ドデカノイル基、n-トリデカノイル基、n-テトラデカノイル基、n-ペンタデカノイル基、及びn-ヘキサデカノイル基等が挙げられる。Rc20が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n-ブタノイルオキシ基、2-メチルプロパノイルオキシ基、n-ペンタノイルオキシ基、2,2-ジメチルプロパノイルオキシ基、n-ヘキサノイルオキシ基、n-ヘプタノイルオキシ基、n-オクタノイルオキシ基、n-ノナノイルオキシ基、n-デカノイルオキシ基、n-ウンデカノイルオキシ基、n-ドデカノイルオキシ基、n-トリデカノイルオキシ基、n-テトラデカノイルオキシ基、n-ペンタデカノイルオキシ基、及びn-ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0165】
Rc20がアルコキシカルボニル基である場合、炭素原子数2~20が好ましく、炭素原子数2~7がより好ましい。Rc20がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec-ペンチルオキシカルボニル基、tert-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec-オクチルオキシカルボニル基、tert-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n-デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0166】
Rc20がフェニルアルキル基である場合、炭素原子数7~20が好ましく、炭素原子数7~10がより好ましい。またRc20がナフチルアルキル基である場合、炭素原子数11~20が好ましく、炭素原子数11~14がより好ましい。Rc20がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、及び4-フェニルブチル基が挙げられる。Rc20がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-(α-ナフチル)エチル基、及び2-(β-ナフチル)エチル基が挙げられる。Rc20が、フェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、Rc20は、フェニル基、又はナフチル基上にさらに置換基を有していてもよい。
【0167】
Rc20がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。Rc20がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0168】
Rc20が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、炭素原子数2~20の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11~20のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、Rc20と同様である。1又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、n-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、n-ノニルアミノ基、n-デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n-ブタノイルアミノ基、n-ペンタノイルアミノ基、n-ヘキサノイルアミノ基、n-ヘプタノイルアミノ基、n-オクタノイルアミノ基、n-デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α-ナフトイルアミノ基、及びβ-ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0169】
Rc20に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2~7のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1~6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1~6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc20に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1~4が好ましい。Rc20に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0170】
Rc20の中では、化学的に安定であることや、立体的な障害が少なく、オキシムエステル化合物の合成が容易であること等から、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、及び炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシル基からなる群より選択される基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキルがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0171】
Rc20がフェニル基に結合する位置は、Rc20が結合するフェニル基について、フェニル基とオキシムエステル化合物の主骨格との結合手の位置を1位とし、メチル基の位置を2位とする場合に、4位、又は5位が好ましく、5位がより好ましい。また、m4は、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、0又は1が特に好ましい。
【0172】
上記式(C7)におけるRc21は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基である。Rc21としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0173】
式(C4)で表されるオキシムエステル化合物として特に好適な化合物の具体例を以下に示す。
【化25】
【0174】
下式(C8)で表される化合物も、オキシムエステル化合物として好適に使用される。
【化26】
(R
c22は水素原子、ニトロ基又は1価の有機基であり、R
c23及びR
c24は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子であり、R
c23とR
c24とは相互に結合して環を形成してもよく、R
c25は1価の有機基であり、R
c26は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1~11のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、m6は0~4の整数であり、m5は0又は1である。)
【0175】
式(C8)中、Rc22は、水素原子、ニトロ基又は1価の有機基である。Rc22は、式(C8)中のフルオレン環上で、-(CO)m5-で表される基に結合する6員芳香環とは、異なる6員芳香環に結合する。式(C8)中、Rc22のフルオレン環に対する結合位置は特に限定されない。式(C8)で表される化合物が1以上のRc22を有する場合、式(C8)で表される化合物の合成が容易であること等から、1以上のRc22のうちの1つがフルオレン環中の2位に結合するのが好ましい。Rc22が複数である場合、複数のRc22は同一であっても異なっていてもよい。
【0176】
Rc22が有機基である場合、Rc22は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から適宜選択される。Rc22が有機基である場合の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基等が挙げられる。
【0177】
Rc22がアルキル基である場合、アルキル基の炭素原子数は、1~20が好ましく、1~6がより好ましい。また、Rc22がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc22がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc22がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0178】
Rc22がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素原子数は、1~20が好ましく、1~6がより好ましい。また、Rc22がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc22がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、Rc22がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0179】
Rc22がシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基である場合、シクロアルキル基又はシクロアルコキシ基の炭素原子数は、3~10が好ましく、3~6がより好ましい。Rc22がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。Rc22がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0180】
Rc22が飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、2~21が好ましく、2~7がより好ましい。Rc22が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n-ブタノイル基、2-メチルプロパノイル基、n-ペンタノイル基、2,2-ジメチルプロパノイル基、n-ヘキサノイル基、n-ヘプタノイル基、n-オクタノイル基、n-ノナノイル基、n-デカノイル基、n-ウンデカノイル基、n-ドデカノイル基、n-トリデカノイル基、n-テトラデカノイル基、n-ペンタデカノイル基、及びn-ヘキサデカノイル基等が挙げられる。Rc22が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n-ブタノイルオキシ基、2-メチルプロパノイルオキシ基、n-ペンタノイルオキシ基、2,2-ジメチルプロパノイルオキシ基、n-ヘキサノイルオキシ基、n-ヘプタノイルオキシ基、n-オクタノイルオキシ基、n-ノナノイルオキシ基、n-デカノイルオキシ基、n-ウンデカノイルオキシ基、n-ドデカノイルオキシ基、n-トリデカノイルオキシ基、n-テトラデカノイルオキシ基、n-ペンタデカノイルオキシ基、及びn-ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0181】
Rc22がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2~20が好ましく、2~7がより好ましい。Rc22がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec-ペンチルオキシカルボニル基、tert-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec-オクチルオキシカルボニル基、tert-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n-デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0182】
Rc22がフェニルアルキル基である場合、フェニルアルキル基の炭素原子数は、7~20が好ましく、7~10がより好ましい。また、Rc22がナフチルアルキル基である場合、ナフチルアルキル基の炭素原子数は、11~20が好ましく、11~14がより好ましい。Rc22がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、及び4-フェニルブチル基が挙げられる。Rc22がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-(α-ナフチル)エチル基、及び2-(β-ナフチル)エチル基が挙げられる。Rc22が、フェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、Rc22は、フェニル基、又はナフチル基上にさらに置換基を有していてもよい。
【0183】
Rc22がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。ヘテロシクリル基は、芳香族基(ヘテロアリール基)であっても、非芳香族基であってもよい。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、キノキサリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。Rc22がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0184】
Rc22がヘテロシクリルカルボニル基である場合、ヘテロシクリルカルボニル基に含まれるヘテロシクリル基は、Rc22がヘテロシクリル基である場合と同様である。
【0185】
Rc22が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、炭素原子数2~21の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11~20のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、Rc22と同様である。1、又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、n-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、n-ノニルアミノ基、n-デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n-ブタノイルアミノ基、n-ペンタノイルアミノ基、n-ヘキサノイルアミノ基、n-ヘプタノイルアミノ基、n-オクタノイルアミノ基、n-デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α-ナフトイルアミノ基、及びβ-ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0186】
Rc22に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2~7のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2~7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1~6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1~6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc22に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1~4が好ましい。Rc22に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0187】
以上説明した基の中でも、Rc22としては、ニトロ基、又はRc27-CO-で表される基であると、感度が向上する傾向があり好ましい。Rc27は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。Rc27として好適な基の例としては、炭素原子数1~20のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。Rc27として、これらの基の中では、2-メチルフェニル基、チオフェン-2-イル基、及びα-ナフチル基が特に好ましい。
また、Rc22が水素原子であるのも好ましい。Rc22が水素原子である場合、Rc25が後述の式(C10)で表される基であるのが好ましい。
【0188】
式(C8)中、Rc23及びRc24は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子である。Rc23とRc24とは相互に結合して環を形成してもよい。これらの基の中では、Rc23及びRc24として、置換基を有してもよい鎖状アルキル基が好ましい。Rc23及びRc24が置換基を有してもよい鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基は直鎖アルキル基でも分岐鎖アルキル基でもよい。
【0189】
Rc23及びRc24が置換基を持たない鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が特に好ましい。Rc23及びRc24が鎖状アルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc23及びRc24がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0190】
Rc23及びRc24が置換基を有する鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が特に好ましい。この場合、置換基の炭素原子数は、鎖状アルキル基の炭素原子数に含まれない。置換基を有する鎖状アルキル基は、直鎖状であるのが好ましい。
アルキル基が有してもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。置換基の好適な例としては、シアノ基、ハロゲン原子、環状有機基、及びアルコキシカルボニル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中では、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。環状有機基としては、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基、ヘテロシクリル基が挙げられる。シクロアルキル基の具体例としては、Rc22がシクロアルキル基である場合の好適な例と同様である。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。ヘテロシクリル基の具体例としては、Rc22がヘテロシクリル基である場合の好適な例と同様である。Rc22がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。アルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基の炭素原子数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
【0191】
鎖状アルキル基が置換基を有する場合、置換基の数は特に限定されない。好ましい置換基の数は鎖状アルキル基の炭素原子数に応じて変わる。置換基の数は、典型的には、1~20であり、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
【0192】
Rc23及びRc24が環状有機基である場合、環状有機基は、脂環式基であっても、芳香族基であってもよい。環状有機基としては、脂肪族環状炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロシクリル基が挙げられる。Rc23及びRc24が環状有機基である場合に、環状有機基が有してもよい置換基は、Rc23及びRc24が鎖状アルキル基である場合と同様である。
【0193】
Rc23及びRc24が芳香族炭化水素基である場合、芳香族炭化水素基は、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が炭素-炭素結合を介して結合して形成される基であるか、複数のベンゼン環が縮合して形成される基であるのが好ましい。芳香族炭化水素基が、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が結合又は縮合して形成される基である場合、芳香族炭化水素基に含まれるベンゼン環の環数は特に限定されず、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1が特に好ましい。芳香族炭化水素基の好ましい具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。
【0194】
Rc23及びRc24が脂肪族環状炭化水素基である場合、脂肪族環状炭化水素基は、単環式であっても多環式であってもよい。脂肪族環状炭化水素基の炭素原子数は特に限定されないが、3~20が好ましく、3~10がより好ましい。単環式の環状炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0195】
Rc23及びRc24がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。ヘテロシクリル基は、芳香族基(ヘテロアリール基)であっても、非芳香族基であってもよい。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、キノキサリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0196】
Rc23とRc24とは相互に結合して環を形成してもよい。Rc23とRc24とが形成する環からなる基は、シクロアルキリデン基であるのが好ましい。Rc23とRc24とが結合してシクロアルキリデン基を形成する場合、シクロアルキリデン基を構成する環は、5員環~6員環であるのが好ましく、5員環であるのがより好ましい。
【0197】
Rc23とRc24とが結合して形成する基がシクロアルキリデン基である場合、シクロアルキリデン基は、1以上の他の環と縮合していてもよい。シクロアルキリデン基と縮合していてもよい環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、及びピリミジン環等が挙げられる。
【0198】
以上説明したRc23及びRc24の中でも好適な基の例としては、式-Ac1-Ac2で表される基が挙げられる。式中、Ac1は直鎖アルキレン基であり、Ac2は、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、環状有機基、又はアルコキシカルボニル基である挙げられる。
【0199】
Ac1の直鎖アルキレン基の炭素原子数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。Ac2がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。アルコキシ基の炭素原子数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。Ac2がハロゲン原子である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましい。Ac2がハロゲン化アルキル基である場合、ハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましい。ハロゲン化アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。Ac2が環状有機基である場合、環状有機基の例は、Rc23及びRc24が置換基として有する環状有機基と同様である。Ac2がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の例は、Rc23及びRc24が置換基として有するアルコキシカルボニル基と同様である。
【0200】
Rc23及びRc24の好適な具体例としては、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、及びn-オクチル基等のアルキル基;2-メトキシエチル基、3-メトキシ-n-プロピル基、4-メトキシ-n-ブチル基、5-メトキシ-n-ペンチル基、6-メトキシ-n-ヘキシル基、7-メトキシ-n-ヘプチル基、8-メトキシ-n-オクチル基、2-エトキシエチル基、3-エトキシ-n-プロピル基、4-エトキシ-n-ブチル基、5-エトキシ-n-ペンチル基、6-エトキシ-n-ヘキシル基、7-エトキシ-n-ヘプチル基、及び8-エトキシ-n-オクチル基等のアルコキシアルキル基;2-シアノエチル基、3-シアノ-n-プロピル基、4-シアノ-n-ブチル基、5-シアノ-n-ペンチル基、6-シアノ-n-ヘキシル基、7-シアノ-n-ヘプチル基、及び8-シアノ-n-オクチル基等のシアノアルキル基;2-フェニルエチル基、3-フェニル-n-プロピル基、4-フェニル-n-ブチル基、5-フェニル-n-ペンチル基、6-フェニル-n-ヘキシル基、7-フェニル-n-ヘプチル基、及び8-フェニル-n-オクチル基等のフェニルアルキル基;2-シクロヘキシルエチル基、3-シクロヘキシル-n-プロピル基、4-シクロヘキシル-n-ブチル基、5-シクロヘキシル-n-ペンチル基、6-シクロヘキシル-n-ヘキシル基、7-シクロヘキシル-n-ヘプチル基、8-シクロヘキシル-n-オクチル基、2-シクロペンチルエチル基、3-シクロペンチル-n-プロピル基、4-シクロペンチル-n-ブチル基、5-シクロペンチル-n-ペンチル基、6-シクロペンチル-n-ヘキシル基、7-シクロペンチル-n-ヘプチル基、及び8-シクロペンチル-n-オクチル基等のシクロアルキルアルキル基;2-メトキシカルボニルエチル基、3-メトキシカルボニル-n-プロピル基、4-メトキシカルボニル-n-ブチル基、5-メトキシカルボニル-n-ペンチル基、6-メトキシカルボニル-n-ヘキシル基、7-メトキシカルボニル-n-ヘプチル基、8-メトキシカルボニル-n-オクチル基、2-エトキシカルボニルエチル基、3-エトキシカルボニル-n-プロピル基、4-エトキシカルボニル-n-ブチル基、5-エトキシカルボニル-n-ペンチル基、6-エトキシカルボニル-n-ヘキシル基、7-エトキシカルボニル-n-ヘプチル基、及び8-エトキシカルボニル-n-オクチル基等のアルコキシカルボニルアルキル基;2-クロルエチル基、3-クロル-n-プロピル基、4-クロル-n-ブチル基、5-クロル-n-ペンチル基、6-クロル-n-ヘキシル基、7-クロル-n-ヘプチル基、8-クロル-n-オクチル基、2-ブロモエチル基、3-ブロモ-n-プロピル基、4-ブロモ-n-ブチル基、5-ブロモ-n-ペンチル基、6-ブロモ-n-ヘキシル基、7-ブロモ-n-ヘプチル基、8-ブロモ-n-オクチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-n-ペンチル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0201】
Rc23及びRc24として、上記の中でも好適な基は、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、2-メトキシエチル基、2-シアノエチル基、2-フェニルエチル基、2-シクロヘキシルエチル基、2-メトキシカルボニルエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-n-ペンチル基である。
【0202】
Rc25の好適な有機基の例としては、Rc22と同様に、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基等が挙げられる。これらの基の具体例は、Rc22について説明したものと同様である。また、Rc25としてはシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェノキシアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基、も好ましい。フェノキシアルキル基、及びフェニルチオアルキル基が有していてもよい置換基は、Rc22に含まれるフェニル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0203】
有機基の中でも、Rc25としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1~20のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~8のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。置換基を有していてもよいフェニル基の中では、メチルフェニル基が好ましく、2-メチルフェニル基がより好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるシクロアルキル基の炭素原子数は、5~10が好ましく、5~8がより好ましく、5又は6が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1~8が好ましく、1~4がより好ましく、2が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基の中では、シクロペンチルエチル基が好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1~8が好ましく、1~4がより好ましく、2が特に好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基の中では、2-(4-クロロフェニルチオ)エチル基が好ましい。
【0204】
また、Rc25としては、-Ac3-CO-O-Ac4で表される基も好ましい。Ac3は、2価の有機基であり、2価の炭化水素基であるのが好ましく、アルキレン基であるのが好ましい。Ac4は、1価の有機基であり、1価の炭化水素基であるのが好ましい。
【0205】
Ac3がアルキレン基である場合、アルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。Ac3がアルキレン基である場合、アルキレン基の炭素原子数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が特に好ましい。
【0206】
Ac4の好適な例としては、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数7~20のアラルキル基、及び炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられる。Ac4の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、及びβ-ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0207】
-Ac3-CO-O-Ac4で表される基の好適な具体例としては、2-メトキシカルボニルエチル基、2-エトキシカルボニルエチル基、2-n-プロピルオキシカルボニルエチル基、2-n-ブチルオキシカルボニルエチル基、2-n-ペンチルオキシカルボニルエチル基、2-n-ヘキシルオキシカルボニルエチル基、2-ベンジルオキシカルボニルエチル基、2-フェノキシカルボニルエチル基、3-メトキシカルボニル-n-プロピル基、3-エトキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-プロピルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ブチルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ペンチルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ヘキシルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-ベンジルオキシカルボニル-n-プロピル基、及び3-フェノキシカルボニル-n-プロピル基等が挙げられる。
【0208】
以上、R
c25について説明したが、R
c25としては、下記式(C9)又は(C10)で表される基が好ましい。
【化27】
(式(C9)及び(C10)中、R
c28及びR
c29はそれぞれ有機基であり、m7は0~4の整数であり、R
c28及びR
c29がベンゼン環上の隣接する位置に存在する場合、R
c28とR
c29とが互いに結合して環を形成してもよく、m8は1~8の整数であり、m9は1~5の整数であり、m10は0~(m9+3)の整数であり、R
c30は有機基である。)
【0209】
式(C9)中のRc28及びRc29についての有機基の例は、Rc22と同様である。Rc28としては、アルキル基又はフェニル基が好ましい。Rc28がアルキル基である場合、その炭素原子数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が特に好ましく、1が最も好ましい。つまり、Rc28はメチル基であるのが最も好ましい。Rc28とRc29とが結合して環を形成する場合、当該環は、芳香族環でもよく、脂肪族環でもよい。式(C9)で表される基であって、Rc28とRc29とが環を形成している基の好適な例としては、ナフタレン-1-イル基や、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-5-イル基等が挙げられる。上記式(C9)中、m7は0~4の整数であり、0又は1であるのが好ましく、0であるのがより好ましい。
【0210】
上記式(C10)中、Rc30は有機基である。有機基としては、Rc22について説明した有機基と同様の基が挙げられる。有機基の中では、アルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルキル基の炭素原子数は1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が特に好ましい。Rc30としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基であることがより好ましい。
【0211】
上記式(C10)中、m9は1~5の整数であり、1~3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。上記式(C10)中、m10は0~(m9+3)であり、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、0が特に好ましい。上記式(C10)中、m8は1~8の整数であり、1~5の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0212】
式(C8)中、Rc26は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1~11のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基である。Rc26がアルキル基である場合に有してもよい置換基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましく例示される。また、Rc26がアリール基である場合に有してもよい置換基としては、炭素原子数1~5のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が好ましく例示される。
【0213】
式(C8)中、Rc26としては、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、ナフチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
【0214】
式(C8)で表される化合物の製造方法は特に限定されず、公知の方法で得ることができる。
【0215】
式(C8)で表される化合物の好適な具体例としては、以下の化合物1~化合物41が挙げられる。
【化28】
【0216】
【0217】
ケイ素含有樹脂組成物中の硬化剤(C)は、異なる分類又は種類の硬化剤を2種以上含んでいてもよい。
ケイ素含有樹脂組成物中の、硬化剤(C)の含有量は、典型的には、組成物全体の質量に対して、0.01~40質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましく、1~10質量%が特に好ましい。
【0218】
[ニトロキシ化合物(D)]
ケイ素含有樹脂組成物は、ニトロキシ化合物(D)を含んでいてもよい。ケイ素含有樹脂組成物がニトロキシ化合物(D)を含む場合、シリカフィルムを形成する際の焼成温度が、例えば250℃以下(例えば200℃以上250℃以下の範囲)の低い温度であっても、シリカフィルム中の残渣(シリカフィルム由来の不純物)を低減できるので好ましい。シリカフィルム中の残渣が少ないと、シリカフィルムが高温雰囲気や減圧雰囲気におかれる場合でも、シリカフィルムからの、フィルム中の残渣そのものやフィルム中の残渣の分解物に由来するガス発生が抑制される。
【0219】
ニトロキシ化合物(D)としては、ニトロキシドラジカルとして安定に存在し得る化合物であれば特に限定されない。ニトロキシ化合物(D)の好適な例としては、下式(d1)で表される構造を含む化合物が挙げられる。
【化30】
【0220】
式(d1)中、Rd1、Rd2、Rd3、及びRd4は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~10の有機基である。Rd1とRd2とは、互いに結合して環を形成してもよい。また、Rd3とRd4とは、互いに結合して環を形成してもよい。
ケイ素含有樹脂組成物が、ニトロキシ化合物(D)として上記式(d1)で表される構造を含む化合物を含有すると、シリカフィルムを形成する際の焼成温度が低い温度であっても、シリカフィルム中の残渣を低減しやすい。
式(c1)において、Rc1、Rc2、Rc3、及びRc4は、それぞれ独立に、アルキル基又はヘテロ原子で置換されたアルキル基であるのが好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基が好ましい。ヘテロ原子の好適な例としては、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等が挙げられる。
【0221】
(D)ニトロキシ化合物の好適な具体例としては、例えば、ジ-tert-ブチルニトロキシド、ジ-1,1-ジメチルプロピルニトロキシド、ジ-1,2-ジメチルプロピルニトロキシド、ジ-2,2-ジメチルプロピルニトロキシド、及び下記式(d2)、(d3)、又は(d4)で表される化合物が好ましい。
中でも、低い温度での焼成でもシリカフィルム中の残渣を低減しやすい点で、下記式(d2)、(d3)、又は(d4)で表される化合物がより好ましい。
【0222】
【0223】
式(d2)、(d3)、及び(d4)中、Rd5は、水素原子、炭素原子数1~12のアルキル基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、ヘテロ原子で置換されたアルキル基、又はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、若しくはウレタン結合を介して結合した1価の有機基を表す。
Rd6は、2価又は3価の有機基を表す。
n1及びn2は、1≦n1+n2≦2を満たす整数である。
n3及びn4は、1≦n3+n4≦2を満たす整数である。
n5及びn6は、1≦n5+n6≦2を満たす整数である。
n7は、2又は3である。
【0224】
式(d2)で表される化合物の好適な具体例としては、下記の化合物が挙げられる。下記式中、R
d7は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素原子数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい芳香族基、又は置換基を有してもよい脂環式基を表す。
【化32】
【0225】
式(d3)で表される化合物の好適な具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化33】
【0226】
式(d4)で表される化合物の好適な具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化34】
【0227】
さらに好ましいニトロキシ化合物(D)としては、低い温度での焼成でも特にシリカフィルム中の残渣を低減しやすいことから、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-メタクリル酸-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-アクリル酸-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、3-カルボキシ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン1-オキシル フリーラジカル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-(2-クロロアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルベンゾアート フリーラジカル、4-イソチオシアナト-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、4-(2-ヨードアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル、及び4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカルが挙げられる。
ニトロキシ化合物(D)は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0228】
ケイ素含有樹脂組成物のニトロキシ化合物(D)の含有量は微量であってよい。ケイ素含有樹脂組成物中のニトロキシ化合物(D)の含有量は、低い温度での焼成でもシリカフィルム中の残渣を低減しやすいことから、ケイ素含有樹脂組成物の溶剤(S)以外の成分の質量の合計に対して、0.005質量%以上が好ましく、0.009質量%以上がより好ましい。
また、ケイ素含有樹脂組成物中の(C)ニトロキシ化合物の含有量は、ケイ素含有樹脂組成物の溶剤(S)以外の成分の質量の合計に対して、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0229】
[酸化防止剤(E)]
また、ケイ素含有樹脂組成物は、酸化防止剤(E)を含んでいてもよい。酸化防止剤を含むことで、発光特性の低下を抑制することができる。
酸化防止剤は、リン系、硫黄系及びフェノール系酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0230】
リン系酸化防止剤の種類は、特別に限定されず、具体的には、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、オクタデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシルオキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスホナイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル及びホスホン酸等を挙げることができる。
【0231】
リン系酸化防止剤のうち、耐熱性及び耐熱変色防止の側面で、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、及び6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等が好ましい。
【0232】
リン系酸化防止剤の市販品としては、Irgafos 168(BASF社製)、Sumilizer GP(住友化学社製)等を挙げることができる。
【0233】
硫黄系酸化防止剤の種類は、特別に限定されず、具体的には、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル-ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、2-メルカプトベンズイミダゾール、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、2-メルカプトベンズイミダゾール等を挙げることができる。
【0234】
硫黄系酸化防止剤のうち、耐熱性及び耐熱変色防止の側面で、2,2-ビス({3-(ドデシルチオ)プロピオニル}オキシ)メチル)1,3-プロパンジイル-ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、2-メルカプトベンズイミダゾール等が好ましい。
【0235】
硫黄系酸化防止剤の市販品としては、Irganox 1035(BASF社製)等を挙げることができる。
【0236】
フェノール系酸化防止剤の種類は、特別に限定されず、具体的には、3,9-ビス[2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエトキシ]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-イソシアヌレート、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-O-クレゾール、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びテトラキス[メチレン-3-(3,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニルプロピオネート)]メタン等を挙げることができる。
【0237】
フェノール系酸化防止剤のうち、耐熱性及び耐熱変色防止の側面で、3,9-ビス[2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエトキシ]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-イソシアヌレート、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン及び2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-O-クレゾール等が好ましい。
【0238】
フェノール系酸化防止剤の市販品としては、Irganox 1010(BASF社製)、ADK STAB AO-80(ADEKA社製)等を挙げることができる。
【0239】
酸化防止剤の含有量は、ケイ素含有樹脂組成物の固形分総重量中、例えば0.01~30質量%であり、好ましくは、0.1~10質量%であり、より好ましくは、0.5~8質量%であり、さらに好ましくは1~5質量%である。上記範囲内とすることで発光特性の低下を抑制することができ、ベーク(ハードベーク)工程における消光現象を抑制できる。また、ケイ素含有樹脂組成物を用いて印刷法等によりパターニングする場合に、形成されたパターンの剥離を抑制できる。
【0240】
[溶剤(S)]
ケイ素含有樹脂組成物は、溶剤(S)を含有する。溶剤(S)は、下式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを含有する。ケイ素含有樹脂組成物が、ケイ素含有樹脂(A)とともに下式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを含有する溶剤(S)を含むことにより、ケイ素含有樹脂組成物を用いて形成されるケイ素含有樹脂フィルムやシリカフィルムにおけるクラックの発生を抑制しやすい。
【化35】
(式(S1)中、R
s1は、炭素原子数1~3のアルキル基であり、pは1~6の整数であり、qは0~(p+1)の整数である。)
【0241】
式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートの具体例としては、シクロプロピルアセテート、シクロブチルアセテート、シクロペンチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、シクロヘプチルアセテート、及びシクロオクチルアセテートが挙げられる。
これらの中では、入手が容易であり、ケイ素含有樹脂フィルムやシリカフィルムにおけるクラックの発生を抑制しやすいことから、シクロオクチルアセテートが好ましい。
溶剤(S)は、式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートを2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0242】
溶剤(S)中の式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートの含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。溶剤(S)中の式(S1)で表されるシクロアルキルアセテートの含有量は、典型的には、例えば、30質量%以上であり、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい。
【0243】
溶剤(S)が式(S1)で表されるシクロアルキルアセテート以外の溶剤を含む場合、式(S1)で表されるシクロアルキルアセテート以外の溶剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
【0244】
溶剤(S)が含み得る、式(S1)で表されるシクロアルキルアセテート以外の溶剤の例としては、
メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール等のアルコール類;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-アミルケトン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;
γ-ブチロラクトン等のラクトン環含有有機溶媒;
エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体;
ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;
アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤;
N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、N,N,2-トリメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等の窒素含有有機溶媒;
が挙げられる。これらの溶剤は、2種以上組み合わせて使用してもよい。
式(S1)で表されるシクロアルキルアセテート以外の溶剤の溶剤(S)全体における割合は、例えば、70質量%以下で適宜設定すればよく、0.01~55質量%が好ましく、1~50質量%がより好ましい。
【0245】
式(S1)で表されるシクロアルキルアセテート以外の溶剤中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、及びブタノールが好ましい。
【0246】
ケイ素含有樹脂組成物がケイ素含有樹脂(A)として、ポリシランを含む場合、クラックを抑制する点又は誘電率の低いシリカフィルムを形成しやすい点で、ケイ素含有樹脂組成物の水分量は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましく、0.3質量%未満であることが特に好ましい。なお、溶媒中の水分量はカールフィッシャー測定法により、測定することができる。
ケイ素含有樹脂組成物の水分は、溶剤(S)に由来する場合が多い。このため、ケイ素含有樹脂組成物の水分量が上記の量となるように、溶剤(S)が脱水されているのが好ましい。
【0247】
溶剤(S)の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。製膜性の点から、溶剤(S)は、ケイ素含有樹脂組成物の固形分濃度が、好ましくは1~50質量%、より好ましくは10~40質量%となるように用いられる。
【0248】
[その他の成分]
ケイ素含有樹脂組成物は、ケイ素含有樹脂(A)、及び溶剤(S)以外に、従来から種々の用途に使用されているケイ素含有樹脂組成物に添加されている、種々の成分を含んでいてもよい。
その他の成分の例としては、光重合開始剤、酸発生剤、塩基発生剤、触媒、シランカップリング剤、密着増強剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、粘度調整剤、及び着色剤等が挙げられる。
これらの成分は、それぞれ、通常使用される量に従って、ケイ素含有樹脂組成物に配合される。
【0249】
<ケイ素含有樹脂組成物の製造方法>
ケイ素含有樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。典型的には、それぞれ所定量の以上説明した成分を均一に混合し、固形分を溶剤(S)に溶解及び分散させることによりケイ素含有樹脂組成物が製造される。量子ドット(B)よりもサイズが大きな不溶物を除去するため、ケイ素含有樹脂組成物を所望の孔径のフィルターを用いてろ過してもよい。
【0250】
<ケイ素含有樹脂フィルム、及びシリカフィルムの製造方法>
以下、前述のケイ素含有樹脂組成物を用いる、ケイ素含有樹脂フィルムの製造方法と、シリカフィルムの製造方法とについて説明する。
【0251】
[ケイ素含有樹脂フィルムの製造方法]
ケイ素含有樹脂フィルムを製造する方法としては、
前述のケイ素含有樹脂組成物からなる塗布膜を形成することと、
塗布膜から溶剤(S)を除去することと、
を含む方法が挙げられる。
【0252】
塗布膜を形成する方法は特に限定されない。例えば、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、浸漬法、滴下法等の方法によりケイ素含有樹脂組成物を塗布して、基板上に塗布膜が形成される。
塗布膜の膜厚は特に限定されない。典型的には、塗布膜の膜厚は、例えば、膜厚2μm以上、好ましくは5μm以上のケイ素含有樹脂フィルムが形成されるように調整される。また、塗布膜の膜厚は、好ましくは膜厚2~300μm、より好ましくは30~200μm、さらに好ましくは75~150μmのケイ素含有樹脂フィルムが形成されるように調整される。ケイ素含有樹脂組成物の固形分濃度や任意成分である添加剤を調整することにより5μm以上さらには30μ以上の膜厚のフィルムを形成することができる。
【0253】
例えば、膜厚2~300μm程度の厚いケイ素含有樹脂フィルムを製造する場合、塗布膜から溶剤(S)を除去する際に、フィルムにクラックが生じやすい。しかし、ケイ素含有樹脂組成物が、前述の所定の溶剤(S)を含むことにより、溶剤(S)を除去する際のクラックの発生が抑制される。
【0254】
塗布膜から溶剤(S)を除去する方法は特に限定されない。典型的には、塗布膜を、溶剤(S)の沸点に応じた適切な温度で加熱したり、塗布膜を真空条件下に置く方法が挙げられる。
【0255】
ケイ素含有樹脂フィルムは、積層体や、発光表示素子パネル等において種々の機能層上に直接形成されてもよく、金属基板やガラス基板等の任意の材質の基板上に形成した後、基板から剥離させて使用されてもよい。
【0256】
[シリカフィルムの製造方法]
シリカフィルムを製造する方法としては、
前述のケイ素含有樹脂組成物を基板上に塗布して、塗布膜を形成する工程と、
形成された塗布膜を焼成する工程と、
を含む方法が挙げられる。
ケイ素含有樹脂組成物が光の作用により分解して塩基を発生する硬化剤を含む場合、露光する工程を含むことが好ましい。露光する工程は、焼成する工程の代わり又は焼成する工程ともに行ってもよい。また、露光する工程では、例えば、形成された塗布膜を選択的に露光してもよく、選択的露光工程を含む場合は、現像する工程を含んでいてもよい。また、例えば、形成された塗布膜に対し、インプリントリソグラフィーを行ってもよい。インプリントリソグラフィーを行う場合は、例えば;
ケイ素含有樹脂組成物を基板上に塗布して、塗布膜を形成する工程と、
所定のパターンの凹凸構造が形成されたモールドを塗布膜に対し押圧する工程と、
露光する工程と、を含む方法が挙げられる。
露光する工程は、モールドが塗布膜に押圧された状態で、ケイ素含有樹脂組成物からなる塗布膜に対して行われる。露光による硬化後、前記モールドを剥離することで、モールドの形状に応じてパターニングされたシリカフィルムを得ることができる。
また、パターニングされたシリカフィルムは、印刷法によって形成してもよい。印刷法としては、インクジェット法、スクリーン印刷法等が挙げられる。印刷法によってケイ素含有樹脂組成物をパターン状に配置した後、露光及び/又は加熱若しくは焼成することで、パターニングされたシリカフィルムを得ることができる。
【0257】
塗布膜は、ケイ素含有樹脂フィルムの製造方法と同様にして形成される。
塗布膜の膜厚は特に限定されない。典型的には、塗布膜の膜厚は、例えば、膜厚2μm以上、好ましくは5μm以上のケイ素含有樹脂フィルムが形成されるように調整される。また、塗布膜の膜厚は、好ましくは膜厚2~300μm、より好ましくは30~200μm、さらに好ましくは75~150μmのケイ素含有樹脂フィルムが形成されるように調整される。
【0258】
基板の材質は、焼成に耐えられる材質であれば特に限定されない。基板の材質の好適な例としては、金属、シリコン、ガラス等の無機材料や、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の耐熱性の材料が挙げられる。基板の厚さは特に限定されず、基板は、フィルムやシートであってもよい。
【0259】
塗布膜を備える基板は、次いで焼成される。焼成方法は特に限定されないが、典型的には電気炉等を用いて焼成が行われる。焼成温度は、典型的には300℃以上が好ましく、350℃以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、1000℃以下である。ケイ素含有樹脂組成物が硬化剤(C)及び/又はニトロキシ化合物(D)を含む場合、焼成温度の下限値を200℃に下げてもシリカフィルム中の残渣(シリカフィルム由来の不純物)を低減できる。焼成雰囲気は特に限定されず、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲下、真空下、又は減圧下であってもよい。大気下であってもよいし、酸素濃度を適宜コントロールしてもよい。
【0260】
このようにして形成されるシリカフィルムは、クラックを有さず、良好に分散された量子ドット(B)を含む。
【0261】
以上説明したケイ素含有樹脂フィルム、及びシリカフィルムは、良好に分散された量子ドット(B)を含むため、発光表示素子用の光学フィルムとして好適使用でき、また、発光表示素子において好適に用いられる積層体の製造に好適に使用できる。
【0262】
<積層体>
積層体は、前述のケイ素含有樹脂フィルム、及び前述のシリカフィルムとからなる群より選択される1以上のフィルムを含む積層体である。かかる積層体は、量子ドットを含有するフィルムのみからなる積層体であってもよく、量子ドットを含有するフィルムと、他の機能層とからなる積層体であってもよい。
【0263】
[量子ドットを含有するフィルムの積層体]
積層体としては、例えば、種々のマトリックス材中に分散された量子ドット(B)を含むフィルムが2層以上積層されており、前述のケイ素含有樹脂フィルム、及び前述のシリカフィルムとからなる群より選択される1以上のフィルムを含む積層体が挙げられる。
かかる積層体は、前述のケイ素含有樹脂フィルム、及び/又は前述のシリカフィルムだけが積層された積層体であってもよく、前述のケイ素含有樹脂フィルム、及び/又は前述のシリカフィルムと、ケイ素含有樹脂及びシリカ以外のマトリックス材に量子ドット(B)が分散されたフィルムとが積層された積層体であってもよい。
【0264】
ケイ素含有樹脂、及びシリカ以外のマトリックス材としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂(例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、及びポリブチル(メタ)アクリレート等)、ノルボルネン樹脂、ポリオレフィン(例えばポリエチレン)、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0265】
量子ドットを含有する複数のフィルムを積層して積層体を製造する場合、隣接するフィルムの屈折率が相違するのが好ましい。また、屈折率の高い高屈折率フィルムと、屈折率の低い低屈折率フィルムとが交互に積層されるのが好ましい。
この場合、隣接するフィルムの屈折率の差は0.4~2.0であるのが好ましい。
屈折率が異なる複数の層が繰り返し積層される場合、光源から入射する光線が積層体を通過する際に、光線の屈折による発散により、入射光の利用効率を高めやすい。
【0266】
量子ドットを含有するフィルムは、光源からの入射光を波長変換して赤色光を生ずる量子ドットと、光源からの入射光を波長変換して緑色光を生ずる量子ドットを含むのが好ましい。
また、赤色光を生ずる量子ドットを含むフィルムと、緑色光を生ずる量子ドットを含むフィルムとを交互に積層するのも好ましい。
このような構成の積層体を発光表示素子パネルに適用することにより、波長変換によって色純度の高い緑色光と赤色光を取り出すことができるため、発光表示素子パネルを備える発光表示装置の色相の再現範囲を拡大することができる。
なお、光源としては、典型的には、青色光や白色光を利用することができる。かかる光源と、上記の積層体とを組み合わせて用いることにより、色純度の高い、赤色光、緑色光、及び青色光を取り出すことができ、良好な色相の鮮明な画像を表示することができる。
【0267】
発光表示装置としては、光源の発光を用いて画像を表示する装置であれば特に限定されず、液晶表示装置や、有機EL表示装置等が挙げられる。
【0268】
以上説明した積層体では、前述のケイ素含有樹脂フィルム、及び前述のシリカフィルムとからなる群より選択される2以上のフィルムが、それぞれが接するように積層されているのが好ましい。
また、積層体が、前述のケイ素含有樹脂フィルム、及び前述のシリカフィルムとからなる群より選択される2以上のフィルムのみから構成されるのも好ましい。
ケイ素含樹脂やシリカが、耐光性、耐候性、耐溶剤性、耐化学薬品性、透明性、及び絶縁性等の種々の優れた特性を有するためである。
【0269】
[量子ドットを含有するフィルムと、他の機能層とを含む積層体]
量子ドットを含有するフィルムである前述のケイ素含有樹脂フィルム、及び前述のシリカフィルムは、他の機能層と積層されるのも好ましい。
以下、前述のケイ素含有樹脂フィルム、及び前述のシリカフィルムについて、単に「量子ドット含有フィルム」と記載する場合がある。
量子ドット含有フィルムは、光源からの入射光を波長変換して赤色光を生ずる量子ドットと、光源からの入射光を波長変換して緑色光を生ずる量子ドットを含むのが好ましい。
また、光源としては、典型的には、青色光や白色光を利用することができる。
【0270】
他の機能層としては、光線を拡散させる拡散層、ケイ素含有樹脂フィルム、又はシリカフィルムよりも低い屈折率を有する低屈折率層、光源から入射する光の一部を反射させる反射層、光源の発する光を積層体に入射させる導光板等が挙げられる。
また、必要に応じて、積層体内に空隙が設けられてもよい。空隙は、例えば、空気の層や、窒素等の不活性ガスの層であってよい。
【0271】
拡散層としては、従来、種々の表示装置や光学装置に用いられている種々の拡散層を、特に制限なく用いることができる。典型的な例としては、表面にプリズム等の微細構造が設けられたフィルム、表面にビーズが散布又は埋没されたフィルム、及び微粒子や、光線を散乱させるように構造化された界面又は空隙等を内部に含むフィルムが挙げられる。
【0272】
低屈折率層は、前述のケイ素含有樹脂フィルム、及び前述のシリカフィルムよりも低い屈折率を有するフィルムであれば特に限定されず、種々の材質からなるフィルムを用いることができる。
【0273】
反射層としては、反射性の偏光フィルム、入射光のうちの一部を反射できるように、表面にプリズム等の微細構造が設けられたフィルム、金属箔、多層光学フィルム等が挙げられる。反射層は、入射光の30%以上を反射させるのが好ましく、40%以上を反射させるのがより好ましく、50%以上を反射させるのが特に好ましい。
反射層は、量子ドット含有フィルムを通過した光を反射して、反射光を再度、量子ドット含有フィルムに入射させるように設けられるのが好ましい。反射層から量子ドット含有フィルムに入射した光を、拡散層等により、反射層の方向へ再度反射させることにより、反射層を用いない場合よりも、量子ドット含有フィルムから発せられる緑色光、及び赤色光の色純度を高めることができる。
【0274】
導光板としては、従来、種々の表示装置や光学装置に用いられている種々の導光板を、特に制限なく用いることができる。
【0275】
量子ドット含有フィルムと、他の機能層とを含む積層体の好ましい層構成の典型例としては、以下の1)~8)の層構成が挙げられる。なお1)~8)の構成の積層体では、最も左に記載された層に光源が発する光線を入射させ、最も右に記載された層から量子ドット含有フィルムにより波長変換された光線を取り出す。
通常、積層体から取り出された光線を入射させるようにディスプレイパネルが設けられ、色準との高い赤色光、緑色光、及び青色光を利用して画像の表示が行われる。
1)拡散層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層
2)導光板/拡散層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層
3)低屈折率層/量子ドット含有フィルム/空隙/反射層
4)導光板/低屈折率層/量子ドット含有フィルム/空隙/反射層
5)低屈折率層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層
6)導光板/低屈折率層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層
7)反射層/低屈折率層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層
8)導光板/反射層/低屈折率層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層
【0276】
なお、以上説明した積層体において、ケイ素含有樹脂フィルム、及びシリカフィルムは、前述の方法に従って製造されるのが好ましい。
【0277】
<発光表示素子パネル、及び発光表示装置>
前述のケイ素含有樹脂フィルム、又は前述のシリカフィルムからなる光学フィルムや、前述の積層体は、種々の発光表示素子パネルに組み込まれ、光源が発する光線から色純度の高い赤色光、緑色光、及び青色光を取り出す目的で好ましく使用される。
ここでは、前述のケイ素含有樹脂フィルム、又は前述のシリカフィルムからなる光学フィルムや、前述の積層体の総称について「量子ドットシート」と記載する。
【0278】
発光表示素子パネルは、典型的には、光源であるバックライトと、量子ドットシートと、ディスプレイパネルとを組み合わせて含む。
量子ドットシートが導光板を備える場合、典型的には、導光板の側面に光線を入射させるように光源が設けられる。導光板の側面から入射した光線は、量子ドットシート内を通過し、ディスプレイパネルに入射する。
量子ドットシートが導光板を備えない場合、面光源から量子ドットシートの主面に光線を入射させ、量子ドットシート内を通過した光線をディスプレイパネルに入射させる。
ディスプレイパネルの種類は、量子ドットシートを通過した光線を用いて画像形成可能であれば特に限定されないが、典型的には液晶ディスプレイパネルである。
【0279】
光源が発する光線から特に色純度の高い赤色光、緑色光、及び青色光を取り出しやすいことから、量子ドットシートは、前述の積層体であるのが好ましい。
量子ドットシートが積層体である場合の、発光表示素子パネルが備える構成の好ましい組み合わせとしては、以下a)~h)の組み合わせが挙げられる。
下記a)~h)に記載の組み合わせについて、最も左に記載の構成から、記載されている順に積み上げられ、発光表示素子パネルが形成される。
a)面光源/拡散層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
b)光源付導光板/拡散層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
c)面光源/低屈折率層/量子ドット含有フィルム/空隙/反射層/ディスプレイパネル
d)光源付導光板/低屈折率層/量子ドット含有フィルム/空隙/反射層/ディスプレイパネル
e)面光源/低屈折率層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
f)光源付導光板/低屈折率層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
g)面光源/反射層/低屈折率層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
h)光源付導光板/反射層/低屈折率層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
【0280】
以上説明した発光表示素子パネルを用いることで、色相の再現範囲が広く、良好な色相であり鮮明な画像を表示可能な発光表示装置を製造することができる。
【実施例】
【0281】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0282】
実施例、及び比較例において、以下のケイ素含有樹脂A-1~A-6を用いた。
A-1:ポリフェニルシロキサン樹脂(質量平均分子量:1000)
A-2:ポリジメチルシロキサン樹脂(質量平均分子量:1000)
A-3:-Si(CH3)(Ph)-で表される単位からなるポリシラン(質量平均分子量:1000、Phはフェニル基を表す)
A-4:-Si(CH3)(Ph)-で表される単位からなるポリシラン(質量平均分子量:13000、Phはフェニル基を表す)
A-5:A1を50質量%と、A3を50質量%と含む混合樹脂
A-6:A3を50質量%と、A4を50質量%と含む混合樹脂
【0283】
実施例、及び比較例において、以下の量子ドットB-1~B-5を用いた。
B-1及びB-2については、表1に記載の種類の溶剤中に濃度1質量%で量子ドットが分散した分散液として用いた。
B-3及びB-4については、表1に記載の種類の溶剤中に濃度3質量%で量子ドットが分散した分散液として用いた。
B-5については、トルエン中に濃度1質量%で量子ドットが分散した分散液として用いた。
B-1:CdSeからなるコアが、ZnSからなるシェル層で被覆された量子ドット(発光極大:520nm)
B-2:CdSeからなるコアが、ZnSからなるシェル層で被覆された量子ドット(発光極大:630nm)
B-3:InPからなるコアが、ZnSからなるシェル層で被覆された粒子に、オレイルアミンが配位した量子ドット(発光極大530nm)
B-4:InPからなるコアが、ZnSからなるシェル層で被覆された粒子に、オレイルアミンが配位した量子ドット(発光極大620nm)
B-5:CdSeからなるコアが、ZnSからなるシェル層で被覆された量子ドット(発光極大:520nm)
【0284】
実施例、及び比較例において、以下の溶剤S-1~S-6を用いた。
S-1:シクロヘキシルアセテート
S-2:プロピレングリコールモノメチエーテルアセテート
S-3:3-メトキシブチルアセテート
S-4:イソプロパノール
S-5:エチルジグリコールアセテート
【0285】
[実施例1~12、及び比較例1~4]
それぞれ表1に記載の種類及び量(質量部)のケイ素含有樹脂と、量子ドットと、溶剤とを均一に混合し、各実施例、及び比較例のケイ素含有樹脂組成物を得た。
得られたケイ素含有樹脂組成物を用いて、以下の方法に従って、クラック耐性と、分散安定との試験を行った。これらの試験結果を表1に記す。
【0286】
(クラック耐性評価)
サンプル基板上に、表1の各ケイ素含有樹脂組成物をスピンコーターを用いて塗布して、膜厚5.0μmのシリカフィルム系被膜を形成可能な膜厚の塗布膜を形成した。塗布膜を100℃で2分間プリベークした後、縦型ベーク炉(TS8000MB、東京応化工業株式会社製)を用いて、塗布膜を350℃で30分間焼成して、膜厚5.0μmのシリカフィルムを得た。形成されたシリカフィルムの表面を光学顕微鏡を用いて観察し、クラックの有無を確認した。クラックが確認されなかった場合を良好(○)と判定し、クラックが確認された場合を不良(×)と判定した。評価結果を、表1に記す。
【0287】
(分散安定性評価)
得られたケイ素含有樹脂組成物中の量子ドットの平均粒子径を、HORIBA社製動的光散乱式粒度分布測定装置LB-500を用いて測定した。測定された平均粒子径を分散粒子径とした。分散粒子径が小さいほど、量子ドットが凝集せず分散性が良好であることを意味する。分散性について、分散粒子径が8nm以下である場合を良好(○)と判定し、15nm超である場合を不良(×)と判定した。評価結果を、表1に記す。
【0288】
【0289】
表1によれば、ケイ素含有樹脂組成物が、量子ドットともに前述の式(S1)で表される構造の溶剤を含む場合、クラックの発生が抑制され、量子ドットが良好に分散したフィルムを製造できることが分かる。
他方、ケイ素含有樹脂組成物が、量子ドットを含むが式(S1)で表される構造の溶剤を含まない場合、製造されるフィルムにおいてクラックが発生しやすく、また良好に分散せれた量子ドットを含むフィルムを形成しにくいことが分かる。