(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】硬化性組成物、フィルム、光学フィルム、発光表示素子パネル、及び発光表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20221005BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20221005BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20221005BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221005BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20221005BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20221005BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20221005BHJP
C08G 59/18 20060101ALI20221005BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G02B5/20
G03F7/004 503Z
G03F7/038 503
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/12 E
C08L63/00 Z
C08G59/18
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2018221690
(22)【出願日】2018-11-27
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2017237261
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】千坂 博樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/189869(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107142075(CN,A)
【文献】特開2017-179330(JP,A)
【文献】特開2017-173765(JP,A)
【文献】特開2019-086745(JP,A)
【文献】特開2016-000803(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107446577(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G03F 7/004
G03F 7/038
H01L 51/50
H01L 27/32
H05B 33/12
C08L 63/00
C08G 59/18
G09F 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(A)と、量子ドット(B)と、酸発生剤(C)と、を含有し、
前記エポキシ化合物(A)が、2以上のエポキシ基を有し、且つ、オキシラン環以外の環式構造を含む、硬化性組成物
であって、
前記酸発生剤(C)が、下記式(c1)、又は(c1’-1)で表されるスルホニウム塩を含む、硬化性組成物。
【化1】
(式(c1)中、R
c1
及びR
c2
は独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は下記式(c2)で表される基を示し、R
c1
及びR
c2
は相互に結合して式中の硫黄原子とともに環を形成してもよく、R
c3
は下記式(c3)で表される基又は下記式(c4)で表される基を示し、A
c1
はS、O、又はSeを示し、X
-
は1価のアニオンを示し、但し、R
c1
及びR
c2
は、同時に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基ではない。)
【化2】
(式中、環Z
c1
は芳香族炭化水素環を示し、R
c4
はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、チエニル基、チエニルカルボニル基、フラニル基、フラニルカルボニル基、セレノフェニル基、セレノフェニルカルボニル基、複素環式脂肪族基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m1は0以上の整数を示す。)
【化3】
(式中、R
c5
はヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキレン基又は下記式(c5)で表される基を示し、R
c6
はヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は下記式(c6)で表される基を示し、A
c2
は単結合、S、O、スルフィニル基、又はカルボニル基を示し、n1は0又は1を示す。)
【化4】
(式中、R
c7
及びR
c8
は独立に、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキレン基又は下記式(c5)で表される基を示し、R
c9
及びR
c10
は独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は上記式(c2)で表される基を示し、R
c9
及びR
c10
は相互に結合して式中の硫黄原子とともに環を形成してもよく、A
c3
は単結合、S、O、スルフィニル基、又はカルボニル基を示し、X
-
は前記の通りであり、n2は0又は1を示し、但し、R
c9
及びR
c10
は、同時に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基ではない。)
【化5】
(式中、環Z
c2
は芳香族炭化水素環を示し、R
c11
はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m2は0以上の整数を示す。)
【化6】
(式中、環Z
c3
は芳香族炭化水素環を示し、R
c12
はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、チエニルカルボニル基、フラニルカルボニル基、セレノフェニルカルボニル基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m3は0以上の整数を示す。)
【化7】
(式(c1’-1)中、R
c1
、R
c2
、R
c3
、及びA
c1
は、式(c1)と同様であり、R
x1
は水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子又は電子求引基で置換されたフェニル基を示し、Yはハロゲン原子を示し、cは1~4の整数を示し、X’はB又はGaを示す。)
【請求項2】
前記エポキシ化合物(A)が、下記式(a1):
【化8】
(式(a1)中、R
a1、R
a2、及びR
a3は、それぞれ独立に、水素原子、又はエポキシ基を含んでいてもよい有機基であり、R
a1、R
a2、及びR
a3が有するエポキシ基の総数が2以上である。)、
で表される化合物を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記エポキシ化合物が(A)が、オキシラン環を含む脂環式骨格を有する脂環式エポキシ化合物である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記X
-で示される前記1価のアニオンが下記式で表されるホウ素含有アニオンである、請求項
1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
R
x1
cBY
4-c
-
(式中、R
x1は水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子又は電子求引基で置換されたフェニル基を示し、Yはハロゲン原子を示し、cは1~4の整数を示す。)
【請求項5】
前記量子ドット(B)が、Cd又はInを含む化合物を含有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物からなるフィルム。
【請求項7】
請求項
6に記載のフィルムからなる、発光表示素子用の光学フィルム。
【請求項8】
請求項
7に記載の発光表示素子用の光学フィルムを含む、発光表示素子パネル。
【請求項9】
請求項
8に記載の発光表示素子パネルを備える、発光表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドットを含む硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物からなるフィルムと、当該フィルムからなる発光表示素子用の光学フィルムと、当該光学フィルムを含む発光表示素子パネルと、当該発光表示素子パネルを備える発光表示装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子を閉じ込めるために形成された極小さな粒(ドット)が、量子ドットと称され、各種分野での適用検討がなされてきた。ここで、1粒の量子ドットの大きさは、直径数ナノメートルから数10ナノメートルであり、約1万個の原子で構成されている。
【0003】
かかる量子ドットは、そのサイズを変える(バンドギャップを変える)ことで、発光する蛍光の色(発光波長)を変えること(波長変換)ができる。このため、近年、量子ドットについて、波長変換材料として表示素子に適用することの検討が鋭意なされてきている(特許文献1、及び2を参照)。
【0004】
また、種々の光学発光素子や、表示素子における量子ドットを含む光学フィルムの適用も検討されている。例えば、種々の高分子材料からなるマトリックス中に分散された量子ドットを含む量子ドットシートを光学フィルムとして用いることが提案されている(特許文献3を参照)。
例えば、液晶表示素子や有機EL表示素子等の光源の発光を用いて画像を表示する素子において、光源が発する光線を量子ドットを含む光学フィルムを透過させると、波長変換によって色純度の高い緑色光と赤色光を取り出すことができる。このため、量子ドットを含む光学フィルムを種々の表示素子に適用することで、色相の再現範囲を拡大することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-216560号公報
【文献】特開2008-112154号公報
【文献】韓国公開特許第10-2016-0004524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際には、単純に樹脂材料中に量子ドットを配合しても、必ずしも蛍光効率が良好な光学フィルムを製造できるわけではない。理由は明らかではないが、量子ドットを、凝集を抑制しつつ安定に分散させた状態で光学フィルムを製造することが困難であるためと思われる。量子ドットは、比表面積が大きく、配位サイトとなりうる表面原子を持ち、反応性に富む場合が多い。このため、量子ドットの微粒子は、非常に凝集しやすい。
【0007】
本発明は、蛍光効率が良好な光学フィルムを容易に形成可能な、量子ドット(B)を含む硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物からなるフィルムと、当該フィルムからなる発光表示素子用の光学フィルムと、当該光学フィルムを含む発光表示素子パネルと、当該発光表示素子パネルを備える発光表示装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、2以上のエポキシ基を有し、且つ、オキシラン環以外の環式構造を含むエポキシ化合物(A)と、量子ドット(B)と、酸発生剤(C)と、を含有する硬化性組成物を硬化させてフィルムを製造することにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の第1の態様は、エポキシ化合物(A)と、量子ドット(B)と、酸発生剤(C)と、を含有し、
エポキシ化合物(A)が、2以上のエポキシ基を有し、且つ、オキシラン環以外の環式構造を含む、硬化性組成物である。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる硬化性組成物の硬化物からなるフィルムである。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様にかかるフィルムからなる、発光表示素子用の光学フィルムである。
【0012】
本発明の第4の態様は、第3の態様にかかる発光表示素子用の光学フィルムを含む、発光表示素子パネルである。
【0013】
本発明の第5の態様は、第4の態様にかかる発光表示素子パネルを備える発光表示装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蛍光効率が良好な光学フィルムを容易に形成可能な、量子ドット(B)を含む硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物からなるフィルムと、当該フィルムからなる発光表示素子用の光学フィルムと、当該光学フィルムを含む発光表示素子パネルと、当該発光表示素子パネルを備える発光表示装置とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪硬化性組成物≫
硬化性組成物は、エポキシ化合物(A)と、量子ドット(B)と、酸発生剤(C)と、を含有する。
エポキシ化合物(A)は、2以上のエポキシ基を有し、且つ、オキシラン環以外の環式構造を含む。
上記の硬化性組成物において、上記の要件を満たすエポキシ化合物(A)と、量子ドット(B)とを組み合わせて用いることにより、蛍光効率の良好な硬化膜を容易に形成できる。また、酸発生剤(C)を用いてエポキシ化合物(A)を硬化させることで、蛍光効率の低下を招来することなく、硬化膜形成できる。
以下、硬化性化合物が含む必須又は任意の成分について説明する。
【0016】
<エポキシ化合物(A)>
硬化性組成物は、硬化性成分としてエポキシ化合物(A)を含む。エポキシ化合物(A)は、2以上のエポキシ基を有し、且つ、オキシラン環以外の環式構造を含む。
このような構造のエポキシ化合物を用いることにより、良好に分散された状態で量子ドット(B)を含有し、蛍光効率が良好な硬化物を形成できる。
【0017】
硬化性組成物は、エポキシ化合物(A)の他に、例えば、オキシラン環以外の環式構造を含むエポキシ化合物に該当しないエポキシ化合物や、オキセタニル基を有する化合物等、他の硬化性成分を含んでいてもよい。蛍光効率が良好な硬化物を特に形成しやすい点からは、硬化性組成物は、硬化性成分としてエポキシ化合物(A)のみを含むのが好ましい。
【0018】
エポキシ化合物に含まれる環式構造は、特に限定されない。環式構造は、炭化水素環構造や複素環構造のような、環構成元素として炭素を含有する環式構造であってもよく、環状シロキサン構造のような、環構成元素として炭素を含有しない環式構造であってもよい。
複素環構造に含まれ得るヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、ケイ素原子等が挙げられる。
環式構造は、単環式構造であっても、多環式構造であってもよい。
環構成元素として炭素を含有する環式構造については、芳香族環構造であっても、脂肪族環構造であってもよく、芳香族環と脂肪族環とが縮合した多環構造であってもよい。
【0019】
芳香族環構造、又は芳香族環を含む環構造を与える環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラリン環、アセナフテン環、及びフルオレン環等が挙げられる。
脂肪族環構造を与える環としては、モノシクロアルカ環、ビシクロアルカン環、トリシクロアルカン環、テトラシクロアルカン環等が挙げられる。
具体的には、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン等のモノシクロアルカン環や、アダマンタン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環が挙げられる。
【0020】
エポキシ化合物(A)として使用できる汎用されるエポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-[2-(グリシジルオキシ)エトキシ]フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-[2-(グリシジルオキシ)エチル]フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)-3-メチルフェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)-3,5-ジメチルフェニル]-9H-フルオレン、及び9,9-ビス(6‐グリシジルオキシナフタレン-2-イル)-9H-フルオレン等のエポキシ基含有フルオレン化合物;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3-ビス[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]-2-プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物が挙げられる。2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物は、EHPE-3150(ダイセル社製)として市販される。
【0021】
また、オリゴマー又はポリマー型の多官能エポキシ化合物もエポキシ化合物(A)として、好ましく用いることができる。
典型的な例としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルソクレゾールノボラック型エポキシ化合物、キシレノールノボラック型エポキシ化合物、ナフトールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールADノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等が挙げられる。
【0022】
また、下記式(A1)で表される化合物も、オリゴマー又はポリマー型の多官能エポキシ化合物の好ましい例として挙げられる。
【化1】
(式(A1)中、OGlyは、グリシジルオキシ基であり、R
A1は、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上8以下の1価の基であり、naは0以上4以下の整数であり、nbは括弧内のユニットの繰り返し数であり、aが2以上の整数である場合、ベンゼン環上で隣接する2つのR
A1は、互いに結合して環を形成してもよく、R
A2は、2価の脂肪族環式基、又は下記式(A1-1):
【化2】
で表される基であり、式(A1-1)中、OGlyは、グリシジルオキシ基であり、R
A3は、芳香族炭化水素基であり、R
A4は、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基であり、ncは0又は1であり、ndは0以上8以下の整数であり、R
A5は、水素原子、又は下記式(A1-2):
【化3】
で表される基であり、式(A1-2)中、OGlyは、グリシジルオキシ基であり、R
A6は、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又はフェニル基であり、neは0以上4以下の整数である。)
【0023】
上記式(A1)で表されるエポキシ化合物は、平均分子量が800以上であるのが好ましい。式(A1)で表されるエポキシ化合物として、かかる平均分子量を有する化合物を用いることにより、耐水性や強度に優れる硬化物を形成しやすい。
式(A1)で表されるエポキシ化合物の平均分子量は、1000以上が好ましく、1200以上がより好ましく、1500以上が特に好ましい。また、式(A1)で表されるエポキシ化合物の平均分子量は、50000以下が好ましく、20000以下がより好ましい。
【0024】
式(A1)中、RA1は、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上8以下の1価の基である。炭素原子数1以上8以下の1価の基の具体例としては、アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、ベンゾイル基、ベンジル基、フェネチル基、及び不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
アルキル基、アルコキシ基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、及び不飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0025】
RA1としてのハロゲン原子の好適な例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。RA1としてのアルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が好ましく、メチル基、及びエチル基がより好ましい。
【0026】
RA1が炭素原子数1以上8以下の1価の基である場合、当該1価の基としてはアルキル基、及びアルコキシ基が好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、及び2-エチルヘキシル基が挙げられる。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、及び2-エチルヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0027】
また、naが2以上4以下の整数である場合に、複数のRA1のうちベンゼン環上で隣接する2のRA1は、互いに結合して環を形成してもよい。2のRA1が結合して形成される環は、芳香族環であっても脂肪族環であってもよく、炭化水素環であっても複素環であってもよい。
2のRA1が結合して形成される環が複素環である場合、当該環に含まれるヘテロ原子としては、N、O、S、及びSe等が挙げられる。
2のRA1が結合することにより、ベンゼン環とともに形成される基の好適な例としては、ナフタレン環、及びテトラリン環が挙げられる。
【0028】
式(A1)中、RA2としての2価の脂肪族環式基としては、特に限定されず、単環式基の2環以上の他環式基でもよい。なお、2価の脂肪族環式基は、通常その構造中にエポキシ基を含まず、エポキシ基を含まないのが好ましい。
2価の脂肪族環式基として、具体的には、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基等を例示できる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
2価の脂肪族環式基の炭素原子数は、3以上50以下が好ましく、3以上30以下がより好ましく、3以上20以下が特に好ましい。3以上15以下が最も好ましい。
【0029】
R
A2としての2価の脂肪族環式基の具体例としては、以下に示す基が挙げられる。
【化4】
【0030】
RA3は、芳香族炭化水素基である。RA3としての芳香族炭化水素基の価数は、2+nc+ndである。芳香族炭化水素基としては特に限定されない。芳香族炭化水素基を構成する芳香族炭化水素環は、典型的には、6員芳香族炭化水素環(ベンゼン環)か、2以上のベンゼン環が、互いに縮合するか単結合を介して結合した環である。
芳香族炭化水素基を構成する芳香族炭化水素環の好適な具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、及びターフェニルである。これらの芳香族炭化水素環から2+nc+nd個の水素原子を除いた基が、RA3としての芳香族炭化水素基として好適である。
【0031】
式(A1-1)で表される基において、ncは0又は1である。つまり、芳香族炭化水素基であるRA3には、グリシジルオキシ基が結合していなくてもよく、1つのグリシジルオキシ基が結合していてもよい。
【0032】
式(A1-1)で表される基において、RA4は、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基であり、dは0以上8以下の整数である。つまり、RA4は、芳香族炭化水素基であるRA3上の、グリシジルオキシ基以外の置換基であって、RA3上の置換基数0以上8以下である。ndは、0以上4以下の整数が好ましく、0以上2以下の整数がより好ましく、0又は1が特に好ましい。
RA4としてのハロゲン原子の好適な例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。RA4としてのアルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が好ましく、メチル基、及びエチル基がより好ましい。
【0033】
式(A1-1)で表される基において、RA5は、水素原子、又は前述の式(A1-2)で表される基である。
式(A1-2)中のRA6は、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又はフェニル基である。ハロゲン原子、及び炭素原子数1以上4以下のアルキル基の具体例については、RA4と同様である。
【0034】
以上説明した式(A1)で表されるエポキシ化合物について、RA2が、2価の脂肪族環式基であるか、又は前述の式(A1-1)で表される2価の基であって、ncが0であり、且つRA5が水素原子である基であるのが好ましい。
この場合、式(A1)で表されるエポキシ化合物に含まれる複数のエポキシ基の間に、適度な距離が存在することにより、より耐水性が良好な硬化物を形成しやすい。
【0035】
式(A1)で表されるエポキシ化合物は、市販品として入手可能である。市販品の具体例は、日本化薬株式会社製のNC-シリーズ、XD-シリーズ等が挙げられる。また、DIC株式会社、昭和電工株式会社からも特定の構造を有する同等品を入手することができる。
【0036】
式(A1)で表されるエポキシ化合物の好適な具体例の化学構造を以下に記す。下記式中、OGlyは、グリシジルオキシ基を表し、pは括弧内の単位の繰り返し数を表す。
【化5】
【0037】
好適なエポキシ化合物(A)の他の例として、脂環式エポキシ基を有する多官能の脂環式エポキシ化合物が挙げられる。かかる脂環式エポキシ化合物の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β-メチル-δ-バレロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、及びトリシクロデセンオキサイド基を有する多官能エポキシ化合物や、下記式(a1-1)~(a1-5)で表される化合物が挙げられる。
これらの脂環式エポキシ化合物は単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0038】
【化6】
(式(a1-1)中、Zは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。R
a1~R
a18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0039】
連結基Zとしては、例えば、2価の炭化水素基、-O-、-O-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-CBr2-、-C(CBr3)2-、-C(CF3)2-、及び-Ra19-O-CO-からなる群より選択される2価の基及びこれらが複数個結合した基等を挙げることができる。
【0040】
連結基Zである二価の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数が1以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等を挙げることができる。炭素原子数が1以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等を挙げることができる。
【0041】
Ra19は、炭素原子数1以上8以下のアルキレン基であり、メチレン基又はエチレン基であるのが好ましい。
【0042】
【化7】
(式(a1-2)中、R
a1~R
a18は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。R
a2及びR
a10は、互いに結合してもよい。R
a13及びR
a16は互いに結合して環を形成してもよい。m
a1は、0又は1である。)
【0043】
上記式(a1-2)で表される脂環式エポキシ化合物としては、上記式(a1-2)におけるm
a1が0である化合物に該当する、下記式(a1-2-1)で表される化合物が好ましい。
【化8】
(式(a1-2-1)中、R
c1~R
c12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。R
a2及びR
a10は互いに結合して環を形成してもよい。)
【0044】
【化9】
(式(a1-3)中、R
a1~R
a10は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。R
a2及びR
a8は、互いに結合してもよい。)
【0045】
【化10】
(式(a1-4)中、R
a1~R
a12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。R
a2及びR
a10は、互いに結合してもよい。)
【0046】
【化11】
(式(a1-5)中、R
a1~R
a12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0047】
式(a1-1)~(a1-5)中、Ra1~Ra18が有機基である場合、有機基は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子等が挙げられる。
【0048】
有機基としては、炭化水素基と、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と、炭素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。有機基の炭素原子数は1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上5以下が特に好ましい。
【0049】
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、及び3-n-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、α-ナフチルエチル基、及びβ-ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0050】
ハロゲン化炭化水素基の具体例は、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2-クロロシクロヘキシル基、3-クロロシクロヘキシル基、4-クロロシクロヘキシル基、2,4-ジクロロシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、3-ブロモシクロヘキシル基、及び4-ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,3-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2-ブロモフェニル基、3-ブロモフェニル基、4-ブロモフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;2-クロロフェニルメチル基、3-クロロフェニルメチル基、4-クロロフェニルメチル基、2-ブロモフェニルメチル基、3-ブロモフェニルメチル基、4-ブロモフェニルメチル基、2-フルオロフェニルメチル基、3-フルオロフェニルメチル基、4-フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基である。
【0051】
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例は、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシ-n-プロピル基、及び4-ヒドロキシ-n-ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2-ヒドロキシシクロヘキシル基、3-ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4-ヒドロキシシクロヘキシル基等のヒドロキシシクロアルキル基;2-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、2,3-ジヒドロキシフェニル基、2,4-ジヒドロキシフェニル基、2,5-ジヒドロキシフェニル基、2,6-ジヒドロキシフェニル基、3,4-ジヒドロキシフェニル基、及び3,5-ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2-ヒドロキシフェニルメチル基、3-ヒドロキシフェニルメチル基、及び4-ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-ノナデシルオキシ基、及びn-イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、2-n-プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1-n-ブテニルオキシ基、2-n-ブテニルオキシ基、及び3-n-ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、p-トリルオキシ基、α-ナフチルオキシ基、β-ナフチルオキシ基、ビフェニル-4-イルオキシ基、ビフェニル-3-イルオキシ基、ビフェニル-2-イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α-ナフチルメチルオキシ基、β-ナフチルメチルオキシ基、α-ナフチルエチルオキシ基、及びβ-ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-n-プロポキシエチル基、3-メトキシ-n-プロピル基、3-エトキシ-n-プロピル基、3-n-プロポキシ-n-プロピル基、4-メトキシ-n-ブチル基、4-エトキシ-n-ブチル基、及び4-n-プロポキシ-n-ブチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n-プロポキシメトキシ基、2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-n-プロポキシエトキシ基、3-メトキシ-n-プロポキシ基、3-エトキシ-n-プロポキシ基、3-n-プロポキシ-n-プロポキシ基、4-メトキシ-n-ブチルオキシ基、4-エトキシ-n-ブチルオキシ基、及び4-n-プロポキシ-n-ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、及び4-メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2-メトキシフェノキシ基、3-メトキシフェノキシ基、及び4-メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α-ナフトイル基、及びβ-ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、及びn-デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α-ナフトキシカルボニル基、及びβ-ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、α-ナフトイルオキシ基、及びβ-ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基である。
【0052】
Ra1~Ra18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上5以下のアルコキシ基からなる群より選択される基が好ましく、特に機械的特性に優れる硬化膜を形成しやすいことから、Ra1~Ra18が全て水素原子であるのがより好ましい。
【0053】
式(a1-2)~(a1-5)中、Ra1~Ra18は、式(a1-1)におけるRa1~Ra18と同様である。式(a1-2)及び式(a1-4)において、Ra2及びRa10が、互いに結合する場合、式(a1-2)において、Ra13及びRa16が、互いに結合する場合、及び式(a1-3)において、Ra2及びRa8が、互いに結合する場合に形成される2価の基としては、例えば、-CH2-、-C(CH3)2-が挙げられる。
【0054】
式(a1-1)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(a1-1a)、式(a1-1b)、及び式(a1-1c)で表される脂環式エポキシ化合物や、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン[=2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン]等を挙げることができる。
【化12】
【0055】
式(a1-2)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(a1-2a)及び下記式(a1-2b)で表される脂環式エポキシ化合物が挙げられる。
【化13】
【0056】
式(a1-3)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、Sスピロ[3-オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタン-6,2’-オキシラン]等が挙げられる。
【0057】
式(a1-4)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジペンテンジオキシド、リモネンジオキシド、1-メチル-4-(3-メチルオキシラン-2-イル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等が挙げられる。
【0058】
式(a1-5)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0059】
さらに、下記式(a1)で表される化合物をエポキシ化合物(A)として好適に使用し得る。
【化14】
(式(a1)中、X
a1、X
a2、及びX
a3は、それぞれ独立に、水素原子、又はエポキシ基を含んでいてもよい有機基であり、X
a1、X
a2、及びX
a3が有するエポキシ基の総数が2以上である。)
【0060】
上記式(a1)で表される化合物としては、下記式(a1-6)で表される化合物が好ましい。
【化15】
(式(a1-6)中、R
a20~R
a22は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、アリーレン基、-O-、-C(=O)-、-NH-及びこれらの組み合わせからなる基であり、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。E
1~E
3は、エポキシ基、オキセタニル基、エチレン性不飽和基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、チオール基、カルボキシ基、水酸基及びコハク酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基又は水素原子である。ただし、E
1~E
3のうち少なくとも2つは、エポキシ基及びオキセタニル基からなる群より選択される少なくとも1種である。)
【0061】
式(a1-6)中、Ra20とE1、Ra21とE2、及びRa22とE3で示される基は、例えば、少なくとも2つが、それぞれ、下記式(a1-6a)で表される基であることが好ましく、いずれもが、それぞれ、下記式(a1-6a)で表される基であることがより好ましい。1つの化合物に結合する複数の式(a1-6a)で表される基は、同じ基であることが好ましい。
-L-Ca (a1-6a)
(式(a1-6a)中、Lは直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、アリーレン基、-O-、-C(=O)-、-NH-及びこれらの組み合わせからなる基であり、Caはエポキシ基である。式(a1-6a)中、LとCaとが結合して環状構造を形成していてもよい。)
【0062】
式(a1-6a)中、Lとしての直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基としては、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基が好ましく、また、Lとしてのアリーレン基としては、炭素原子数5以上10以下のアリーレン基が好ましい。式(a1-6a)中、Lは、直鎖状の炭素原子数1以上3以下のアルキレン基、フェニレン基、-O-、-C(=O)-、-NH-及びこれらの組み合わせからなる基であることが好ましく、メチレン基等の直鎖状の炭素原子数1以上3以下のアルキレン基及びフェニレン基の少なくとも1種、又は、これらと、-O-、-C(=O)-及びNH-の少なくとも1種との組み合わせからなる基が好ましい。
【0063】
式(a1-6a)中、LとC
aとが結合して環状構造を形成している場合としては、例えば、分岐鎖状のアルキレン基とエポキシ基とが結合して環状構造(脂環構造のエポキシ基を有する構造)を形成している場合、下記式(a1-6b)又は(a1-6c)で表される有機基が挙げられる。
【化16】
(式(a1-6b)中、R
a23は、水素原子又はメチル基である。)
【0064】
以下、式(a1-6)で表される化合物の例としてオキシラニル基、又は脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物の例を示すが、これらに限定されない。
【化17】
【0065】
また、エポキシ化合物(A)として好適に使用し得る化合物としては、分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン化合物(以下、単に「シロキサン化合物」とも記す。)を挙げることができる。
【0066】
シロキサン化合物は、シロキサン結合(Si-O-Si)により構成されたシロキサン骨格と、2以上のエポキシ基とを分子内に有する化合物である。
シロキサン化合物におけるシロキサン骨格としては、例えば、環状シロキサン骨格やかご型やラダー型のポリシルセスキオキサン骨格を挙げることができる。
【0067】
シロキサン化合物としては、なかでも、下記式(a1-7)で表される環状シロキサン骨格を有する化合物(以下、「環状シロキサン」という場合がある)が好ましい。
【化18】
【0068】
式(a1-7)中、Ra24、及びRa25は、エポキシ基を含有する一価の基又はアルキル基を示す。ただし、式(a1-7)で表される化合物におけるx1個のRa24及びx1個のRa25のうち、少なくとも2個はエポキシ基を含有する一価の基である。また、式(a1-7)中のx1は3以上の整数を示す。なお、式(a1-7)で表される化合物におけるRa24、Ra25は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、複数のRa24は同一であってもよいし、異なっていてもよい。複数のRa25も同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0069】
上記エポキシ基を含有する一価の基としては、-D-O-Ra26で表されるグリシジルエーテル基[Dはアルキレン基を示し、Ra26はグリシジル基を示す]が好ましい。上記D(アルキレン基)としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基等の炭素原子数が1以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基等を挙げることができる。
また、-D-Ra27で表される脂環式エポキシ基含有基も好ましい。Ra27は、エポキシシクロアルキル基である。Dは前述の通り、アルキレン基である。Dとしてのアルキレン基の好ましい例も、前述の通りである。Ra27としてのエポキシシクロアルキル基としては、2,3-エポキシシクロペンチル基、3,4-エポキシシクロヘキシル基、及び2,3-エポキシシクロヘキシル基が好ましい。-D-Ra27で表される基としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基が好ましい。
【0070】
Ra24、及びRa25としてのアルキル基の好ましい例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数1以上18以下(好ましくは炭素原子数1以上6以下、特に好ましくは炭素原子数1以上3以下)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。
【0071】
式(a1-7)中のx1は3以上の整数を示し、なかでも、硬化膜を形成する際の架橋反応性に優れる点で3以上6以下の整数が好ましい。
【0072】
シロキサン化合物が分子内に有するエポキシ基の数は2個以上であり、硬化膜を形成する際の架橋反応性に優れる点から2個以上6個以下が好ましく、特に好ましくは2個以上4個以下である。
【0073】
硬化性組成物は、式(a1-7)で表されるシロキサン化合物以外にも、脂環式エポキシ基含有環状シロキサン、特開2008-248169号公報に記載の脂環式エポキシ基含有シリコーン樹脂、及び特開2008-19422号公報に記載の1分子中に少なくとも2個のエポキシ官能性基を有するオルガノポリシルセスキオキサン樹脂等のシロキサン骨格を有する化合物を含有していてもよい。
【0074】
シロキサン化合物としては、より具体的には、下記式で表される、分子内に2以上のエポキシ基を有する環状シロキサン等を挙げることができる。また、シロキサン化合物としては、例えば、商品名「X-40-2670」、「X-40-2701」、「X-40-2728」、「X-40-2738」、「X-40-2740」(以上、信越化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0075】
【0076】
【0077】
硬化性組成物中のエポキシ化合物(A)の含有量は、後述する溶剤(S)以外の硬化性組成物の成分の質量の合計に対して、例えば30質量%以上98質量%以下であり、40質量%以上94質量%以下が好ましく、45質量%以上92質量%以下がより好ましい。また、硬化性組成物の用途によっては、7質量%以上65質量%以下が好ましく、13質量%以上60質量%以下がより好ましく、17質量%以上55質量%以下が特に好ましい。
かかる範囲の量のエポキシ化合物(A)を用いることにより、蛍光効率に優れる硬化膜を形成しやすい。
【0078】
<量子ドット(B)>
硬化性組成物は、量子ドット(B)を含む。
量子ドット(B)が量子ドットとしての機能を奏する微粒子である限りにおいて、その構造やその構成成分は特に限定されない。量子ドット(B)は、量子力学に従う独特の光学特性(後述の量子閉じ込め効果)を有するナノスケールの材料であり、一般的に半導体ナノ粒子のことである。本明細書において、量子ドット(B)は、半導体ナノ粒子表面がさらに発光量子収率を向上させるために被覆されている量子ドット(後述のシェル構造を有する量子ドット)や、安定化のために表面修飾されている量子ドットも含む。
【0079】
量子ドット(B)は、バンドギャップ(価電子帯及び伝導帯のエネルギー差)よりも大きなエネルギーの光子を吸収し、その粒子径に応じた波長の光を放出する半導体ナノ粒子とされているが、量子ドット(B)の材料に含まれる元素としては、例えば、II族元素(2A族、2B族)、III族元素(特に3A族)、IV族元素(特に4A族)、V族元素(特に5A族)、及びVI族元素(特に6A族)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。量子ドット(B)の材料として好ましい化合物又は元素としては、例えば、II-VI族化合物、III-V族化合物、IV-VI族化合物、IV族元素、IV族化合物及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0080】
II-VI族化合物としては、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、MgS及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、MgZnSe、MgZnS及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;及びHgZnTeS、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。
【0081】
III-V族化合物としては、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;及びGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。
【0082】
IV-VI族化合物としては、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;及びSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。
【0083】
IV族元素としては、Si、Ge及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。IV族化合物としては、SiC、SiGe及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。
【0084】
量子ドット(B)の構造は、1種の化合物からなる均質構造であってもよく、2種以上の化合物からなる複合構造であってもよいが、上記化合物の発光量子収率を向上させるために、量子ドット(B)の構造は、コアが、1層以上のシェル層で被覆されたコア-シェル構造であることが好ましく、コアの材質となる化合物の粒子表面を半導体材料でエピタキシャルに被覆した構造であることがより好ましい。例えば、コアの材質としてII-VI族のCdSeを用いた場合、その被覆層(シェル)としてZnS、ZnSSe等が用いられる。シェルはコアの材質と同じ格子定数であることが好ましく、コア―シェルの格子定数の差の小さい材料の組み合わせが適宜選択される。
【0085】
蛍光効率の点からは、量子ドット(B)が、Cd又はInを含む化合物を構成成分として含むのが好ましく、安全性を加味するとInを含む化合物を構成成分として含むのがより好ましい。
【0086】
シェル層を持たない均質構造型の量子ドット(B)の好適な具体例としては、AgInS2、及びZnがドープされたAgInS2が挙げられる。
コア-シェル型の量子ドット(B)としては、InP/ZnS、InP/ZnSSe、CuInS2/ZnS、及び(ZnS/AgInS2)固溶体/ZnSが挙げられる。
なお、上記において、コア-シェル型の量子ドット(B)の材質は、(コアの材質)/(シェル層の材質)として記載されている。
【0087】
また、安全性と発光量子収率の向上の点で、コア―シェル構造のシェルを多層構造にすることが好ましく、2層にすることがより好ましい。
コア―多層シェル構造の場合、コアの材質として、InP、ZnS、ZnSeからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、InPを含むことがより好ましい。含有割合としては、コアの総質量のうちInPが50質量%以上100質量%以下であり、60質量%以上99質量%以下が好ましく、82質量%以上95質量%以下がより好ましい。また、コアの総質量のうち、ZnS及び/又はZnSeが0質量%以上50質量%以下であり、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%以上18質量%以下がより好ましい。
【0088】
多層シェル構造における第1のシェルの材質は、ZnS、ZnSe、及びZnSSeから選択される1種以上であることが好ましい。ZnS、ZnSe、及びZnSSeから選択される1種以上の含有割合としては、第1のシェルの全質量を基準にして、例えば50質量%以上100質量%以下であり、75質量%以上98質量%以下が好ましく、80質量%以上97質量%以下がより好ましい。第1のシェルの材質がZnS及びZnSeの混合物である場合、混合比(質量比)は特に限定されず、1/99以上99/1以下であり、好ましくは10/90以上90/10以下である。
【0089】
多層シェル構造において、第2のシェルを、第1のシェルの表面上に成長させる。第2のシェルの材質は、第1のシェルの材質と同等であることが好ましい(ただし、各材質において、コアに対する格子定数の差が異なる。つまり、各材質において99%以上同質のである場合を除く)。ZnS、ZnSe、及びZnSSeから選択される1種以上の含有割合としては、第2のシェルの全質量を基準にして、例えば50質量%以上100質量%以下であり、75質量%以上98質量%以下が好ましく、80質量%以上97質量%以下がより好ましい。第2のシェルの材質がZnS、ZnSe、及びZnSSeから選択される2種の混合物である場合、混合比(質量比)は特に限定されず、1/99以上99/1以下であり、10/90以上90/10以下である。
【0090】
多層シェル構造における第1のシェルと第2のシェルとは、格子定数に差を有する。
例えば、コアと第1のシェルとの間の格子定数差は2%以上8%以下であり、2%以上6%以下が好ましく、3%以上5%以下がより好ましい。
また、コアと第2のシェルとの間の格子定数差は5%以上13%以下であり、5%以上12%以下が好ましく、7%以上10%以下がより好ましく、8%以上10%以下がさらに好ましい。
【0091】
また。第1のシェルと第2のシェルの格子定数の差は、例えば、3%以上9%以下であり、3%以上7%以下が好ましく、4%以上6%以下がより好ましい。
【0092】
これらのコア―多層シェル構造による量子ドット(B)は、400nm以上800nm以下の範囲(さらには470nm以上650nm以下の範囲、特に540nm以上580nm以下の範囲)の発光波長(emission wavelength)を有することができる。
【0093】
これらのコア―多層シェル構造による量子ドット(B)としては、例えば、InP/ZnS/ZnSe、及びInP/ZnSe/ZnSが挙げられる。
【0094】
また量子ドット(B)は表面修飾されていてもよい。例えば、ホスフィン、ホスフィン酸化物、トリアルキルホスフィン類等のリン化合物;ピリジン、アミノアルカン類、第3級アミン類等の有機窒素化合物;メルカプトアルコール、チオール、ジアルキルスルフィド類、ジアルキルスルホキシド類等の有機硫黄化合物;高級脂肪酸、アルコール類等の表面修飾剤(有機リガンド)が挙げられる。
【0095】
上記の量子ドット(B)は、2種以上を組み合わせて用いてもよく、コア-(多層)シェル型の量子ドット(B)と、均質構造型の量子ドット(B)とを組み合わせて用いてもよい。
【0096】
量子ドット(B)の平均粒子径は、量子ドットとして機能し得る範囲内であれば特に限定されず、0.5nm以上20nm以下が好ましく、1.0nm以上15nm以下がより好ましく、2nm以上7nm以下がさらに好ましい。
コア-(多層)シェル型の量子ドット(B)の場合、コアのサイズは、例えば0.5nm以上10nm以下であり、2nm以上5nm以下が好ましい。シェルの平均厚さは、0.4nm以上2nm以下が好ましく、0.4nm以上1.4nm以下がより好ましい。シェルが、第1のシェルと第2のシェルとからなる場合、第1のシェルの平均厚さは、例えば0.2nm以上1nm以下であり、0.2nm以上0.7nm以下が好ましい。第2のシェルの平均厚さは、第1のシェルの平均厚さによらず、例えば0.2nm以上1nm以下であり、0.2nm以上0.7nm以下が好ましい。
【0097】
かかる範囲内の平均粒子径を有する量子ドット(B)は、量子閉じ込め効果を発揮し量子ドットとして良好に機能するとともに、調製が容易であり、安定な蛍光特性を有する。
なお、量子ドット(B)の平均粒子径は、例えば、量子ドット(B)の分散液を、基板上に塗布・乾燥させ、揮発成分を除いた後に、その表面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することによって定義することができる。典型的には、TEM画像の画像解析により得られる各粒子の円相当径の数平均径として、この平均粒子径を定義することができる。
【0098】
量子ドット(B)の形状は特に限定されない。量子ドット(B)の形状の例としては、球状、楕円球状、円柱状、多角柱状、円盤状、及び多面体状等が挙げられる。
これらの中でも、取扱いの容易さ、入手容易性の観点から球状であることが好ましい。
【0099】
光学フィルムとしての特性や波長変換特性が良好である点から、量子ドット(B)は、500nm以上600nm以下の波長域に蛍光極大を有する化合物(B1)、及び600nm以上700nm以下の波長域に蛍光極大を有する化合物(B2)からなる群より選択される1種以上を含むのが好ましく、化合物(B1)及び化合物(B2)からなる群より選択される1種以上からなるのがより好ましい。
【0100】
量子ドット(B)の製造方法は特に限定されない。周知の種々の方法で製造された量子ドットを、量子ドット(B)として用いることができる。量子ドット(B)の製造方法としては、例えば、配位性の有機溶媒中で有機金属化合物を熱分解する方法を採用ができる。
また、コア-シェル構造型の量子ドット(B)は、反応により均質なコアを形成した後に、分散されたコアの存在下にシェル層の前駆体を反応させてシェル層を形成する方法により製造できる。また例えば、上記コア―多層シェル構造を有する量子ドット(B)は、WO2013/127662号公報に記載の方法により製造することができる。
なお、市販されている種々の量子ドット(B)を用いることもできる。
【0101】
量子ドット(B)の含有量は、後述する溶剤(S)以外の硬化性組成物の成分の質量の合計に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましい。量子ドット(B)が、シェル層を有する場合、又は表面修飾されている場合、1質量%以上12質量%以下が好ましく、3質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。量子ドット(B)が、半導体ナノ粒子のみの場合(シェル層及び/又は表面修飾剤を有さない場合)は、0.07質量%以上3質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。量子ドット(B)の含有量を上記の範囲とすることにより、光学フィルムとしての特性や、波長変換特性が良好であるフィルムを形成できる硬化性組成物を得やすい。
【0102】
<酸発生剤(C)>
硬化性組成物は、エポキシ化合物(A)を重合させる成分として、酸発生剤(C)を含む。酸発生剤(C)としては、従来よりエポキシ化合物の硬化に用いられている酸発生剤を特に制限なく用いることができる。典型的には、酸発生剤(C)としては、スルホニウム塩やヨードニウム塩等のオニウム塩が好ましく使用される。
【0103】
硬化性組成物は、酸発生剤(C)として、下記式(c1)で表されるスルホニウム塩(以下、「スルホニウム塩(Q)」を含むのが好ましい。
または、硬化性組成物は、酸発生剤(C)として、ガレートアニオン及び/又はボレートアニオンを含むオニウム塩を含むことが好ましい。
硬化性組成物が酸発生剤(C)としてスルホニウム塩(Q)を含むことによって、エポキシ化合物(A)の硬化を良好に進行させやすい。
【0104】
【化21】
(式(c1)中、R
c1及びR
c2は独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は下記式(c2)で表される基を示し、R
c1及びR
c2は相互に結合して式中の硫黄原子とともに環を形成してもよく、R
c3は下記式(c3)で表される基又は下記式(c4)で表される基を示し、A
c1はS、O、又はSeを示し、X
-は1価のアニオンを示し、但し、R
c1及びR
c2は、同時に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基ではない。)
【0105】
【化22】
(式(c2)中、環Z
c1は芳香族炭化水素環を示し、R
c4はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、チエニル基、チエニルカルボニル基、フラニル基、フラニルカルボニル基、セレノフェニル基、セレノフェニルカルボニル基、複素環式脂肪族基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m1は0以上の整数を示す。)
【0106】
【化23】
(式(c3)中、R
c5はヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキレン基又は下記式(c5)で表される基を示し、R
c6はヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は下記式(c6)で表される基を示し、A
c2は単結合、S、O、スルフィニル基、又はカルボニル基を示し、n1は0又は1を示す。)
【0107】
【化24】
(式(c4)中、R
c7及びR
c8は独立に、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキレン基又は下記式(c5)で表される基を示し、R
c9及びR
c10は独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は上記式(c2)で表される基を示し、R
c9及びR
c10は相互に結合して式中の硫黄原子とともに環を形成してもよく、A
c3は単結合、S、O、スルフィニル基、又はカルボニル基を示し、X
-は前述の通りであり、n2は0又は1を示し、但し、R
c9及びR
c10は、同時に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基ではない。)
【0108】
【化25】
(式(c5)中、環Z
c2は芳香族炭化水素環を示し、R
c11はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m2は0以上の整数を示す。)
【化26】
(式(c6)中、環Z
c3は芳香族炭化水素環を示し、R
c12はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、チエニルカルボニル基、フラニルカルボニル基、セレノフェニルカルボニル基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m3は0以上の整数を示す。)
【0109】
(スルホニウム塩(Q))
以下、スルホニウム塩(Q)について説明する。スルホニウム塩(Q)は、上記式(c1)中のベンゼン環において、Ac1が結合する炭素原子に対してオルト位の炭素原子にメチル基が結合していることを特徴とする。スルホニウム塩(Q)は、上記の位置にメチル基を有するため、従来のスルホニウム塩と比較して、プロトンを発生しやすく、紫外線等の活性エネルギー線に対する感度が高い。
【0110】
上記式(c1)において、Rc1及びRc2のいずれもが上記式(c2)で表される基であることが好ましい。Rc1及びRc2は互いに同一でも異なっていてもよい。
上記式(c1)において、Rc1及びRc2が相互に結合して式中の硫黄原子とともに環を形成する場合、形成される環を構成する原子数は、硫黄原子を含めて3以上10以下が好ましく、5以上7以下がより好ましい。形成される環は多環でもよく、環構成原子数が5以上7以下である単環が縮合した多環が好ましい。
上記式(c1)において、Rc1及びRc2が、ともにフェニル基であるのが好ましい。
上記式(c1)において、Rc3は上記式(c3)で表される基であることが好ましい。
上記式(c1)において、Ac1は、S又はOであることが好ましく、Sであることがより好ましい。
【0111】
上記式(c2)において、Rc4は、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルキルカルボニル基、チエニルカルボニル基、フラニルカルボニル基、セレノフェニルカルボニル基、置換されていてよいアミノ基、又はニトロ基であることが好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、アルキルカルボニル基、又はチエニルカルボニル基であることがより好ましい。
上記式(c2)において、m1は、環Zc1の種類に応じて選択でき、例えば、0以上4以下の整数、好ましくは0以上3以下の整数、より好ましくは0以上2以下の整数であってもよい。
【0112】
上記式(c3)において、Rc5は、アルキレン基;ヒドロキシ基、置換されていてよいアミノ基、若しくはニトロ基で置換されたアルキレン基;又は上記式(c5)で表される基であることが好ましく、上記式(c5)で表される基であることがより好ましい。
上記式(c3)において、Rc6は、アルキル基;ヒドロキシ基、置換されていてよいアミノ基、若しくはニトロ基で置換されたアルキル基;又は上記式(c6)で表される基であることが好ましく、上記式(c6)で表される基であることがより好ましい。
上記式(c3)において、Ac2はS又はOであることが好ましく、Sであることがより好ましい。
上記式(c3)において、n1は0であることが好ましい。
【0113】
上記式(c4)において、Rc7及びRc8は独立に、アルキレン基;ヒドロキシ基、置換されていてよいアミノ基、若しくはニトロ基で置換されたアルキレン基;又は上記式(c5)で表される基であることが好ましく、上記式(c5)で表される基であることより好ましい。Rc7及びRc8は互いに同一でも異なっていてもよい。
上記式(c4)において、Rc9及びRc10のいずれもが上記式(c2)で表される基であることが好ましい。Rc9及びRc10は互いに同一でも異なっていてもよい。
上記式(c4)において、Rc9及びRc10が相互に結合して式中の硫黄原子とともに環を形成する場合、形成される環を構成する原子数は、硫黄原子を含めて3以上10以下が好ましく、5以上7以下がより好ましい。形成される環は多環でもよく、環構成原子数が5以上7以下である単環が縮合した多環が好ましい。
上記式(c4)において、Ac3は、S又はOであることが好ましく、Sであることがより好ましい。
上記式(c4)において、n2は0であることが好ましい。
【0114】
上記式(c5)において、Rc11は、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、置換されていてよいアミノ基、又はニトロ基であることが好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基であることがより好ましい。
上記式(c5)において、m2は、環Zc2の種類に応じて選択でき、例えば、0以上4以下の整数、好ましくは0以上3以下の整数、より好ましくは0以上2以下の整数であってもよい。
【0115】
上記式(c6)において、Rc12は、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルキルカルボニル基、チエニルカルボニル基、フラニルカルボニル基、セレノフェニルカルボニル基、置換されていてよいアミノ基、又はニトロ基であることが好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、アルキルカルボニル基、又はチエニルカルボニル基であることがより好ましい。
上記式(c6)において、m3は、環Zc3の種類に応じて選択でき、例えば、0以上4以下の整数、好ましくは0以上3以下の整数、より好ましくは0以上2以下の整数であってもよい。
【0116】
上記式(c1)において、X-は、スルホニウム塩(Q)に活性エネルギー(熱、可視光、紫外線、電子線、及びX線等)を照射することにより発生する酸(HX)に対応する1価のアニオンである。スルホニウム塩(Q)を酸発生剤として用いる場合、X-としては、1価の多原子アニオンが好適に挙げられ、MYa
-、(Rf)bPF6-b
-、Rx1
cBY4-c
-、Rx1
cGaY4-c
-、Rx2SO3
-、(Rx2SO2)3C-、又は(Rx2SO2)2N-で表されるアニオンがより好ましい。また、X-は、ハロゲンアニオンでもよく、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられる。
【0117】
Mは、リン原子、ホウ素原子、又はアンチモン原子を表す。
Yはハロゲン原子(フッ素原子が好ましい。)を表す。
【0118】
Rfは、水素原子の80モル%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基(炭素原子数1以上8以下のアルキル基が好ましい。)を表す。フッ素置換によりRfとするアルキル基としては、直鎖アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びオクチル等)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチル等)及びシクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等)等が挙げられる。Rfにおいてこれらのアルキル基の水素原子がフッ素原子に置換されている割合は、もとのアルキル基が有していた水素原子のモル数に基づいて、80モル%以上が好ましく、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは100%である。フッ素原子による置換割合がこれら好ましい範囲にあると、スルホニウム塩(Q)の光感応性がさらに良好となる。特に好ましいRfとしては、CF3-、CF3CF2
-、(CF3)2CF-、CF3CF2CF2
-、CF3CF2CF2CF2
-、(CF3)2CFCF2
-、CF3CF2(CF3)CF-及び(CF3)3C-が挙げられる。b個のRfは、相互に独立であり、従って、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0119】
Pはリン原子、Fはフッ素原子を表す。
【0120】
Rx1は、水素原子の一部が少なくとも1個の元素又は電子求引基で置換されたフェニル基を表す。そのような1個の元素の例としては、ハロゲン原子が含まれ、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等が挙げられる。電子求引基としては、トリフルオロメチル基、ニトロ基及びシアノ基等が挙げられる。これらのうち、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基が好ましい。c個のRx1は相互に独立であり、従って、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0121】
Bはホウ素原子、Gaはガリウム原子を表す。
【0122】
Rx2は、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のフルオロアルキル基又は炭素原子数6以上20以下のアリール基を表し、アルキル基及びフルオロアルキル基は直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよく、アルキル基、フルオロアルキル基、又はアリール基は無置換であっても、置換基を有していてもよい。上記置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、置換されていてよいアミノ基(例えば、上記式(c2)~(c6)に関する後述の説明中で例示する基が挙げられる。)、及びニトロ基等が挙げられる。
また、Rx2で表されるアルキル基、フルオロアルキル基又はアリール基における炭素鎖は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有していてもよい。特に、Rx2で表されるアルキル基又はフルオロアルキル基における炭素鎖は、2価の官能基(例えば、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミノ結合、アミド結合、イミド結合、スルホニル結合、スルホニルアミド結合、スルホニルイミド結合、ウレタン結合等)を有していてもよい。
Rx2で表されるアルキル基、フルオロアルキル基又はアリール基が上記置換基、ヘテロ原子、又は官能基を有する場合、上記置換基、ヘテロ原子、又は官能基の個数は、1個であっても2個以上であってもよい。
【0123】
Sは硫黄原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Nは窒素原子を表す。
aは4以上6以下の整数を表す。
bは、1以上5以下の整数が好ましく、さらに好ましくは2以上4以下の整数、特に好ましくは2又は3である。
cは、1以上4以下の整数が好ましく、さらに好ましくは4である。
【0124】
MYa
-で表されるアニオンとしては、SbF6
-、PF6
-又はBF4
-で表されるアニオン等が挙げられる。
【0125】
(Rf)bPF6-b
-で表されるアニオンとしては、(CF3CF2)2PF4
-、(CF3CF2)3PF3
-、((CF3)2CF)2PF4
-、((CF3)2CF)3PF3
-、(CF3CF2CF2)2PF4
-、(CF3CF2CF2)3PF3
-、((CF3)2CFCF2)2PF4
-、((CF3)2CFCF2)3PF3
-、(CF3CF2CF2CF2)2PF4
-又は(CF3CF2CF2CF2)3PF3
-で表されるアニオン等が挙げられる。これらのうち、(CF3CF2)3PF3
-、(CF3CF2CF2)3PF3
-、((CF3)2CF)3PF3
-、((CF3)2CF)2PF4
-、((CF3)2CFCF2)3PF3
-又は((CF3)2CFCF2)2PF4
-で表されるアニオンが好ましい。
【0126】
Rx1
cBY4-c
-で表されるアニオンとしては、好ましくは
Rx1
cBY4-c
-
(式中、Rx1は水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子又は電子求引基で置換されたフェニル基を示し、Yはハロゲン原子を示し、cは1以上4以下の整数を示す。)
であり、例えば、(C6F5)4B-、((CF3)2C6H3)4B-、(CF3C6H4)4B-、(C6F5)2BF2
-、C6F5BF3
-又は(C6H3F2)4B-で表されるアニオン等が挙げられる。これらのうち、(C6F5)4B-又は((CF3)2C6H3)4B-で表されるアニオンが好ましい。
【0127】
Rx1
cGaY4-c
-で表されるアニオンとしては、
テトラキス(ノナフルオロビフェニル-4-イル)ガレートアニオン、
テトラキス(ヘプタフルオロナフタレン-1-イル)ガレートアニオン、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(ノナフルオロビフェニル-2-イル)ガレートアニオン、
テトラキス(ヘプタフルオロナフタレン-2-イル)ガレートアニオン、
テトラキス(ノナフルオロアントラセン-7-イル)ガレートアニオン、
テトラキス(4’-(メトキシ)オクタフルオロビフェニル-4-イル)ガレートアニオン、
テトラキス(2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(2,3-ビス(ペンタフルオロエチル)ナフチル)ガレートアニオン、
テトラキス(2-イソプロポキシ-ヘキサフルオロナフチル)ガレートアニオン、
テトラキス(9,10-ビス(ヘプタフルオロプロピル)ヘプタフルオロアントリル)ガレートアニオン、
テトラキス(9-ノナフルオロフェナントリル)ガレートアニオン、
テトラキス(4-[トリ(イソプロピル)シリル]-テトラフルオロフェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(9,10-ビス(p-トリル)-ヘプタフルオロフェナントリル)ガレートアニオン、
テトラキス(4-[ジメチル(t-ブチル)シリル]-テトラフルオロフェニル)ガレートアニオン、
モノフェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ガレートアニオン、及び
モノパーフルオロブチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ガレートアニオン等が挙げられる。より好ましくは、(C6F5)4Ga-、((CF3)2C6H3)4Ga-、(CF3C6H4)4Ga-、(C6F5)2GaF2
-、C6F5GaF3
-又は(C6H3F2)4Ga-で表されるアニオン等が挙げられる。これらのうち、(C6F5)4Ga-又は((CF3)2C6H3)4Ga-で表されるアニオンがさらに好ましい。
【0128】
Rx2SO3
-で表されるアニオンとしては、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸アニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロフェニルスルホン酸アニオン、p-トルエンスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、エタンスルホン酸アニオン、プロパンスルホン酸アニオン及びブタンスルホン酸アニオン等が挙げられる。これらのうち、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、ブタンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン又はp-トルエンスルホン酸アニオンが好ましい。
【0129】
(Rx2SO2)3C-で表されるアニオンとしては、(CF3SO2)3C-、(C2F5SO2)3C-、(C3F7SO2)3C-又は(C4F9SO2)3C-で表されるアニオン等が挙げられる。
【0130】
(Rx2SO2)2N-で表されるアニオンとしては、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(C3F7SO2)2N-又は(C4F9SO2)2N-で表されるアニオン等が挙げられる。
【0131】
一価の多原子アニオンとしては、MYa
-、(Rf)bPF6-b
-、Rx1
cBY4-c
-、Rx1
cGaY4-c
-、Rx2SO3
-、(Rx2SO2)3C-又は(Rx2SO2)2N-で表されるアニオン以外に、過ハロゲン酸イオン(ClO4
-、BrO4
-等)、ハロゲン化スルホン酸イオン(FSO3
-、ClSO3
-等)、硫酸イオン(CH3SO4
-、CF3SO4
-、HSO4
-等)、炭酸イオン(HCO3
-、CH3CO3
-等)、アルミン酸イオン(AlCl4
-、AlF4
-等)、ヘキサフルオロビスマス酸イオン(BiF6
-)、カルボン酸イオン(CH3COO-、CF3COO-、C6H5COO-、CH3C6H4COO-、C6F5COO-、CF3C6H4COO-等)、アリールホウ酸イオン(B(C6H5)4
-、CH3CH2CH2CH2B(C6H5)3
-等)、チオシアン酸イオン(SCN-)及び硝酸イオン(NO3
-)等が使用できる。
【0132】
これらのX-のうち、カチオン重合性能の点では、MYa
-、(Rf)bPF6-b
-、Rx1
cBY4-c
-、Rx1
cGaY4-c
-及び(Rx2SO2)3C-で表されるアニオンが好ましく、SbF6
-、PF6
-、(CF3CF2)3PF3
-、(C6F5)4B-、((CF3)2C6H3)4B-、(C6F5)4Ga-、((CF3)2C6H3)4Ga-及び(CF3SO2)3C-がより好ましく、Rx1
cBY4-c
-がさらに好ましい。
【0133】
上記式(c2)、(c5)、及び(c6)において、芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、ナフタレン環等のC8-20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10-16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式芳香族炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環等)等の縮合2乃至4環式芳香族炭化水素環]等が挙げられる。芳香族炭化水素環は、ベンゼン環又はナフタレン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
【0134】
上記式(c1)~(c6)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0135】
上記式(c1)~(c6)において、アルキル基としては、炭素原子数1以上18以下の直鎖アルキル基(メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、及びn-オクタデシル等)、炭素原子数3以上18以下の分岐鎖アルキル基(イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシル、及びイソオクタデシル等)、並びに炭素原子数3以上18以下のシクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及び4-デシルシクロヘキシル等)等が挙げられる。特に、上記式(c1)、(c2)、及び(c4)~(c6)において、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基とは、アルキル基及びハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。ハロゲン原子で置換されたアルキル基としては、上記の直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、又はシクロアルキル基における少なくとも1個の水素原子をハロゲン原子で置換した基(モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル等)等が挙げられる。ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基のうち、Rc1、Rc2、Rc9、又はRc10については、トリフルオロメチル基が特に好ましく、Rc4、Rc6、Rc11、又はRc12については、メチル基が特に好ましい。
【0136】
上記式(c2)~(c6)において、アルコキシ基としては、炭素原子数1以上18以下の直鎖又は分岐鎖アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、及びオクタデシルオキシ等)等が挙げられる。
【0137】
上記式(c2)~(c6)において、アルキルカルボニル基におけるアルキル基としては、上述の炭素原子数1以上18以下の直鎖アルキル基、炭素原子数3以上18以下の分岐鎖アルキル基又は炭素原子数3以上18以下のシクロアルキル基が挙げられ、アルキルカルボニル基としては、炭素原子数2以上18以下の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルカルボニル基(アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2-メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2-メチルブタノイル、3-メチルブタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、シクロペンタノイル基、及びシクロヘキサノイル基等)等が挙げられる。
【0138】
上記式(c3)~(c6)において、アリールカルボニル基としては、炭素原子数7以上11以下のアリールカルボニル基(ベンゾイル及びナフトイル等)等が挙げられる。
【0139】
上記式(c2)~(c6)において、アルコキシカルボニル基としては、炭素原子数2以上19以下の直鎖又は分岐鎖アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、及びオクタデシルオキシカルボニル等)等が挙げられる。
【0140】
上記式(c3)~(c6)において、アリールオキシカルボニル基としては、炭素原子数7以上11以下のアリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル及びナフトキシカルボニル等)等が挙げられる。
【0141】
上記式(c3)~(c6)において、アリールチオカルボニル基としては、炭素原子数7以上11以下のアリールチオカルボニル基(フェニルチオカルボニル及びナフトキシチオカルボニル等)等が挙げられる。
【0142】
上記式(c2)~(c6)において、アシロキシ基としては、炭素原子数2以上19以下の直鎖又は分岐鎖アシロキシ基(アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec-ブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、テトラデシルカルボニルオキシ、及びオクタデシルカルボニルオキシ等)等が挙げられる。
【0143】
上記式(c3)~(c6)において、アリールチオ基としては、炭素原子数6以上20以下のアリールチオ基(フェニルチオ、2-メチルフェニルチオ、3-メチルフェニルチオ、4-メチルフェニルチオ、2-クロロフェニルチオ、3-クロロフェニルチオ、4-クロロフェニルチオ、2-ブロモフェニルチオ、3-ブロモフェニルチオ、4-ブロモフェニルチオ、2-フルオロフェニルチオ、3-フルオロフェニルチオ、4-フルオロフェニルチオ、2-ヒドロキシフェニルチオ、4-ヒドロキシフェニルチオ、2-メトキシフェニルチオ、4-メトキシフェニルチオ、1-ナフチルチオ、2-ナフチルチオ、4-[4-(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ、4-(フェニルチオ)フェニルチオ、4-ベンゾイルフェニルチオ、4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-3-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-3-メチルチオフェニルチオ、4-ベンゾイル-2-メチルチオフェニルチオ、4-(4-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4-(2-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-メチルベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-エチルベンゾイル)フェニルチオ4-(p-イソプロピルベンゾイル)フェニルチオ、及び4-(p-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ等)等が挙げられる。
【0144】
上記式(c2)~(c6)において、アルキルチオ基としては、炭素原子数1以上18以下の直鎖又は分岐鎖アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、tert-ペンチルチオ、オクチルチオ、デシルチオ、ドデシルチオ、及びイソオクタデシルチオ等)等が挙げられる。
【0145】
上記式(c3)~(c6)において、アリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基(フェニル、トリル、ジメチルフェニル、及びナフチル等)等が挙げられる。
【0146】
上記式(c2)において、複素環式脂肪族基としては、炭素原子数2以上20以下(好ましくは4以上20以下)の複素環基(ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、モルホリニル、等)等が挙げられる。
【0147】
上記式(c3)~(c6)において、複素環基としては、炭素原子数4以上20以下の複素環基(チエニル、フラニル、セレノフェニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、及びジベンゾフラニル等)等が挙げられる。
【0148】
上記式(c3)~(c6)において、アリールオキシ基としては、炭素原子数6以上10以下のアリールオキシ基(フェノキシ及びナフチルオキシ等)等が挙げられる。
【0149】
上記式(c2)~(c6)において、アルキルスルフィニル基としては、炭素原子数1以上18以下の直鎖又は分岐鎖スルフィニル基(メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル、イソブチルスルフィニル、sec-ブチルスルフィニル、tert-ブチルスルフィニル、ペンチルスルフィニル、イソペンチルスルフィニル、ネオペンチルスルフィニル、tert-ペンチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、及びイソオクタデシルスルフィニル等)等が挙げられる。
【0150】
上記式(c3)~(c6)において、アリールスルフィニル基としては、炭素原子数6以上10以下のアリールスルフィニル基(フェニルスルフィニル、トリルスルフィニル、及びナフチルスルフィニル等)等が挙げられる。
【0151】
上記式(c2)~(c6)において、アルキルスルホニル基としては、炭素原子数1以上18以下の直鎖又は分岐鎖アルキルスルホニル基(メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、tert-ペンチルスルホニル、オクチルスルホニル、及びオクタデシルスルホニル等)等が挙げられる。
【0152】
上記式(c3)~(c6)において、アリールスルホニル基としては、炭素原子数6以上10以下のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル、トリルスルホニル(トシル基)、及びナフチルスルホニル等)等が挙げられる。
【0153】
上記式(c2)~(c6)において、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基としては、HO(AO)q-(式中、AOは独立にエチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基を表し、qは1以上5以下の整数を表す。)で表されるヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基等が挙げられる。
【0154】
上記式(c2)~(c6)において、置換されていてよいアミノ基としては、アミノ基(-NH2)及び炭素原子数1以上15以下の置換アミノ基(メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、n-プロピルアミノ、メチル-n-プロピルアミノ、エチル-n-プロピルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、イソプロピルメチルアミノ、イソプロピルエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、メチルフェニルアミノ、エチルフェニルアミノ、n-プロピルフェニルアミノ、及びイソプロピルフェニルアミノ等)等が挙げられる。
【0155】
上記式(c3)及び(c4)において、アルキレン基としては、炭素原子数1以上18以下の直鎖又は分岐鎖アルキレン基(メチレン基、1,2-エチレン基、1,1-エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ブタン-2,2-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、2-エチルヘキサン-1,6-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、ペンタデカン-1,15-ジイル基、及びヘキサデカン-1,16-ジイル基等)等が挙げられる。
【0156】
スルホニウム塩(Q)は、例えば、下記スキームに従って合成することができる。具体的には、下記式(C1)で表される1-フルオロ-2-メチル-4-ニトロベンゼンに、水酸化カリウム等の塩基の存在下で、下記式(C2)で表される化合物を反応させて、下記式(C3)で表されるニトロ化合物を得、次いで、還元鉄の存在下で還元を行って、下記式(C4)で表されるアミン化合物を得る。このアミン化合物とMaNO2(式中、Maは金属原子、例えば、ナトリウム原子等のアルカリ金属原子を示す。)で表される亜硝酸塩(例えば、亜硝酸ナトリウム)とを反応させてジアゾ化合物を得、次いで、このジアゾ化合物とCuX’(式中、X’は臭素原子等のハロゲン原子を示す。以下、同じ)で表されるハロゲン化第一銅とHX’で表されるハロゲン化水素とを混合し、反応を進行させて、下記式(C5)で表されるハロゲン化物を得る。このハロゲン化物及びマグネシウムからグリニャール試薬を調製し、次いで、クロロトリメチルシランの存在下で、このグリニャール試薬と下記式(C6)で表されるスルホキシド化合物とを反応させて、下記式(C7)で表されるスルホニウム塩を得ることができる。さらに、このスルホニウム塩をMb+X”-(式中、Mb+は金属カチオン、例えば、カリウムイオン等のアルカリ金属カチオンを示し、X”-はX-で表される1価のアニオン(但し、ハロゲンアニオンを除く。)を示す。)で表される塩と反応させて塩交換を行うことにより、下記式(C8)で表されるスルホニウム塩を得ることができる。なお、下記式(C2)~(C8)において、Rc1~Rc3及びAc1は、上記式(c1)と同様である。
【0157】
【0158】
上記式(c1)で表されるスルホニウム塩(Q)のカチオン部の具体例としては、以下に例示される。上記式(c1)で表されるスルホニウム塩(Q)のアニオン部の具体例としては、上記X-の説明で挙げたアニオン等、従来公知のアニオンを挙げることができる。上記式(c1)で表されるスルホニウム塩(Q)は上記スキームに従って合成することができ、必要に応じさらに塩交換することにより、カチオン部を所望のアニオン部と組み合わせることができ、特に、Rx1
cBY4-c
-(式中、Rx1は水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子又は電子求引基で置換されたフェニル基を示し、Yはハロゲン原子を示し、cは1以上4以下の整数を示す。)で表されるアニオンとの組み合わせが好ましい。
【0159】
【0160】
上記の好ましいカチオン部の群の中では、下記式で表されるカチオン部がより好ましい。
【化29】
【0161】
酸発生剤(C)が上記のスルホニウム塩(Q)を含む場合、酸発生剤(C)は、上記のスルホニウム塩(Q)以外とともに、スルホニウム塩(Q)以外のその他の酸発生剤を含んでいてもよい。
この場合、酸発生剤(C)におけるスルホニウム塩(Q)の含有量は特に限定されないが、典型的には、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
なお、硬化性組成物が、酸発生剤(C)として、ガレートアニオン及び/又はボレートアニオンを含むオニウム塩を含む場合、当該オニウム塩のカチオン部は、上記式(c1)で表されるスルホニウム塩のカチオン部に限定されず、後述のその他の酸発生剤に挙げるカチオン部とのオニウム塩であってもよい。硬化性組成物が酸発生剤(C)としてガレートアニオン及び/又はボレートアニオンを含むオニウム塩を含むことにより、本発明の効果に優れる。
硬化性組成物が、酸発生剤(C)として、ガレートアニオン及び/又はボレートアニオンを含むオニウム塩を含む場合の、オニウム塩の含有量は特に限定されないが、典型的には、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0162】
(その他の酸発生剤)
スルホニウム塩(Q)以外のその他の酸発生剤としては、従来からエポキシ化合物の硬化用に使用されている種々の酸発生剤を特に制限なく使用することができる。
その他の酸発生剤としては、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩が好ましく、スルホニウム塩(Q)以外のその他のスルホニウム塩がより好ましい。
【0163】
以下、スルホニウム塩(Q)以外のその他のスルホニウム塩について「スルホニウム塩(Q’)」とも記す。
その他のスルホニウム塩(Q’)は、スルホニウム塩(Q)と同じく、1価アニオンX-として上述のRx1
cBY4-c
-で表されるアニオン又は上述のRx1
cGaY4-c
-で表されるアニオン含むのが好ましい。
【0164】
Rx1
cBY4-c
-で表される1価のアニオンを有するスルホニウム塩(Q’)としては、例えば下記式(c1’)で表されるスルホニウム塩が挙げられる。Rx1
cGaY4-c
-で表される1価のアニオンを有するスルホニウム塩(Q’)としては下記式(c1’)におけるBをGaに置き換えたスルホニウム塩である。
【0165】
【化30】
(式中、R
c1、R
c1、R
c3、A
c1、R
x1、Y及びcは上述の通り。)
【0166】
上記式(c1’)で表されるスルホニウム塩(Q’)のカチオン部の具体例としては、以下のカチオンが挙げられる。
【0167】
【0168】
スルホニウム塩(Q’)のカチオン部の典型的な例としては、また、以下のカチオンが挙げられる。
【化32】
【0169】
硬化性組成物における酸発生剤(C)の含有量は、硬化性組成物の硬化が良好に進行する限り特に限定されない。硬化性組成物を良好に硬化させやすい点から、典型的には、エポキシ化合物(A)100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上4質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上3質量部以下が特に好ましい。
【0170】
<増感剤(D)>
硬化性組成物は、増感剤(D)を含んでいてもよい。増感剤としては、従来より種々の酸発生剤と併用されている公知の増感剤を特に制限なく用いることができる。
増感剤の具体例としては、アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、及び9,10-ジプロポキシアントラセン等のアントラセン化合物;ピレン;1,2-ベンズアントラセン;ペリレン;テトラセン;コロネン;チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン及び2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン化合物;フェノチアジン、N-メチルフェノチアジン、N-エチルフェノチアジン、及びN-フェニルフェノチアジン等のフェノチアジン化合物;キサントン;1-ナフトール、2-ナフトール、1-メトキシナフタレン、2-メトキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、及び4-メトキシ-1-ナフトール等のナフタレン化合物;ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、4’-イソプロピル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、及び4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド等のケトン;N-フェニルカルバゾール、N-エチルカルバゾール、ポリ-N-ビニルカルバゾール、及びN-グリシジルカルバゾール等のカルバゾール化合物;1,4-ジメトキシクリセン及び1,4-ジ-α-メチルベンジルオキシクリセン等のクリセン化合物;9-ヒドロキシフェナントレン、9-メトキシフェナントレン、9-ヒドロキシ-10-メトキシフェナントレン、及び9-ヒドロキシ-10-エトキシフェナントレン等のフェナントレン化合物が挙げられる。
これらの増感剤は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0171】
増感剤(D)の使用量は特に限定されないが、酸発生剤(C)100質量部に対して、1質量部以上300質量部以下が好ましく、5質量部以上200質量部以下がより好ましい。かかる範囲の増感剤(D)を用いることにより、所望する増感作用を得やすい。
【0172】
<溶剤(S)>
硬化性組成物は、塗布性や成膜性を調整する目的で、必要に応じて溶剤(S)を含有してもよい。溶剤(S)としては、本発明の目的を阻害しない範囲で、従来より、種々の硬化性組成物に配合されている溶剤を特に制限なく使用することができる。溶剤(S)は、2種以上の溶剤を組み合わせて含んでいてもよい。
【0173】
溶剤(S)の好適な具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-アミルケトン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;γ-ブチロラクトン等のラクトン環含有有機溶媒;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体;ジオキサンのような環式エーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸シクロプロピル、酢酸シクロブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤;N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、N,N,2-トリメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等の窒素含有有機溶媒;が挙げられる。
【0174】
上記の溶剤の中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、及びブタノールが溶剤(S)として好ましい。
【0175】
溶剤(S)の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。製膜性の点から、溶剤(S)は、硬化性組成物における溶剤(S)以外の成分の濃度が、好ましくは1質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上40質量%以下であるように用いられる。
【0176】
<その他の成分>
その他の成分の例としては、塩基発生剤、触媒、シランカップリング剤、密着増強剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、粘度調整剤、樹脂、ゴム粒子、及び着色剤等が挙げられる。
なお、硬化性組成物が樹脂としてアルカリ可溶性樹脂を含む場合、硬化性組成物にアルカリ現像性が付与される。
また、硬化性組成物がゴム粒子を含む場合、硬化膜に弾性が付与され、硬化膜の脆さを解消しやすい。
【0177】
≪硬化性組成物の製造方法≫
以上説明した各成分を所定の比率で均一に混合することにより、硬化性組成物を製造することができる。硬化性組成物の製造に用いることができる混合装置としては、二本ロールや三本ロール等が挙げられる。硬化性組成物の粘度が十分に低い場合、必要に応じて、不溶性の異物を除去するために、所望のサイズの開口を有するフィルターを用いて硬化性組成物をろ過してもよい。
【0178】
≪硬化物の製造方法≫
硬化物の製造方法は、所望する形状に成形された硬化性組成物を硬化させることができる方法であれば特に限定されない。
硬化方法は、特に限定されず、加熱であっても、露光であってもよく、加熱と露光とを組み合わせて行ってもよい。
【0179】
成形体の形状は特に限定されないが、膜(フィルム)であるのが好ましい。膜状の成形体を硬化して得られる、硬化性組成物の硬化物からなるフィルムは、発光表示素子用の光学フィルムとして好適に使用される。
【0180】
硬化物をフィルムとして製造する方法の典型例を以下説明する。
フィルムは、積層体や、発光表示素子パネル等において種々の機能層上に直接形成されてもよく、金属基板やガラス基板等の任意の材質の基板上に形成した後、基板から剥離させて使用されてもよい。
【0181】
まず、任意の基板や機能層等の上に、硬化性組成物を塗布して塗布膜を形成する。塗布方法としては、ロールコータ、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置)、スリットコーター、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いる方法が挙げられる。
また、硬化性組成物の粘度を適切な範囲に調整したうえで、インクジェット法、スクリーン印刷法等の印刷法によって硬化性組成物の塗布を行って、所望の形状にパターニングされた塗布膜を形成してもよい。
【0182】
次いで、必要に応じて、溶剤(S)等の揮発成分を除去して塗布膜を乾燥させる。乾燥方法は特に限定されないが、例えば、真空乾燥装置(VCD)を用いて室温にて減圧乾燥し、その後、ホットプレートにて60℃以上120℃以下、好ましくは70℃以上100℃以下の温度にて60秒以上180秒以下の間乾燥する方法が挙げられる。
このようにして塗布膜を形成した後、塗布膜に対して露光及び/又は加熱を施す。
露光は、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して行う。照射するエネルギー線量は、硬化性組成物の組成によっても異なるが、例えば30mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下が好ましく、50mJ/cm2以上500mJ/cm2以下がより好ましい。
加熱を行う際の温度は特に限定されず、180℃以上280℃以下が好ましく、200℃以上260℃以下がより好ましく、220℃以上250℃以下が特に好ましい。加熱時間は、典型的には、1分以上60分以下が好ましく、10分以上50分以下がより好ましく、20分以上40分以下が特に好ましい。
【0183】
硬化膜の膜厚は特に限定されない。硬化膜の膜厚は、典型的には、0.1μm以上10μm以下であり、0.2μm以上5μm以下が好ましく、0.5μm以上3μm以下がより好ましい。
【0184】
以上説明した方法により形成される量子ドット(B)を含むフィルムは、蛍光効率に優れ発光表示素子用の光学フィルムとして好適に使用でき、また、発光表示素子において好適に用いられる積層体の製造に好適に使用できる。
【0185】
≪積層体≫
積層体は、硬化性組成物の硬化物からなる前述のフィルムを含む積層体である。かかる積層体は、量子ドット(B)を含有するフィルムのみからなる積層体であってもよく、量子ドット(B)を含有するフィルムと、他の機能層とからなる積層体であってもよい。
【0186】
<量子ドットを含有するフィルムの積層体>
積層体としては、例えば、種々のマトリックス材中に分散された量子ドット(B)を含むフィルムが2層以上積層されており、硬化性組成物の硬化物からなる1以上の前述のフィルムを含む積層体が挙げられる。
かかる積層体は、硬化性組成物の硬化物からなるフィルムだけが積層された積層体であってもよく、硬化性組成物の硬化物からなるフィルムと、硬化性組成物の硬化物からなるフィルム以外の量子ドット(B)を含む他のフィルムとが積層された積層体であってもよい。
【0187】
他のフィルムの例としては、前述のエポキシ化合物(A)に該当しないエポキシ化合物の硬化物、アクリル樹脂(例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、及びポリブチル(メタ)アクリレート等)、ノルボルネン樹脂、ポリオレフィン(例えばポリエチレン)、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、及びポリカーボネート樹脂等から選択される1種以上のマトリックス材に、量子ドット(B)が分散されているフィルムが挙げられる。
【0188】
量子ドット(B)を含有する複数のフィルムを積層して積層体を製造する場合、隣接するフィルムの屈折率が相違するのが好ましい。また、屈折率の高い高屈折率フィルムと、屈折率の低い低屈折率フィルムとが交互に積層されるのが好ましい。
この場合、隣接するフィルムの屈折率の差は0.4以上2.0以下であるのが好ましい。
屈折率が異なる複数の層が繰り返し積層される場合、光源から入射する光線が積層体を通過する際に、光線の屈折による発散により、入射光の利用効率を高めやすい。
【0189】
量子ドット(B)を含有するフィルムは、光源からの入射光を波長変換して赤色光を生ずる量子ドットと、光源からの入射光を波長変換して緑色光を生ずる量子ドットを含むのが好ましい。
また、赤色光を生ずる量子ドットを含むフィルムと、緑色光を生ずる量子ドットを含むフィルムとを交互に積層するのも好ましい。
このような構成の積層体を発光表示素子パネルに適用することにより、波長変換によって色純度の高い緑色光と赤色光を取り出すことができるため、発光表示素子パネルを備える発光表示装置の色相の再現範囲を拡大することができる。
なお、光源としては、典型的には、青色光や白色光を利用することができる。かかる光源と、上記の積層体とを組み合わせて用いることにより、色純度の高い、赤色光、緑色光、及び青色光を取り出すことができ、良好な色相の鮮明な画像を表示することができる。
【0190】
発光表示装置としては、光源の発光を用いて画像を表示する装置であれば特に限定されず、液晶表示装置や、有機EL表示装置等が挙げられる。
【0191】
<量子ドット(B)を含有するフィルムと、他の機能層とを含む積層体>
量子ドット(B)を含有するフィルムである硬化性組成物の硬化物からなる前述のフィルムは、他の機能層と積層されるのも好ましい。
以下、硬化性組成物の硬化物からなる前述のフィルムついて、単に「量子ドット含有フィルム」と記載する場合がある。
量子ドット含有フィルムは、光源からの入射光を波長変換して赤色光を生ずる量子ドットと、光源からの入射光を波長変換して緑色光を生ずる量子ドットを含むのが好ましい。
また、光源としては、典型的には、青色光や白色光を利用することができる。
【0192】
他の機能層としては、光線を拡散させる拡散層、ケイ素含有樹脂フィルム、又はシリカフィルムよりも低い屈折率を有する低屈折率層、光源から入射する光の一部を反射させる反射層、光源の発する光を積層体に入射させる導光板等が挙げられる。
また、必要に応じて、積層体内に空隙が設けられてもよい。空隙は、例えば、空気の層や、窒素等の不活性ガスの層であってよい。
【0193】
拡散層としては、従来、種々の表示装置や光学装置に用いられている種々の拡散層を、特に制限なく用いることができる。典型的な例としては、表面にプリズム等の微細構造が設けられたフィルム、表面にビーズが散布又は埋没されたフィルム、及び微粒子や、光線を散乱させるように構造化された界面又は空隙等を内部に含むフィルムが挙げられる。
【0194】
低屈折率層は、前述のケイ素含有樹脂フィルム、及び前述のシリカフィルムよりも低い屈折率を有するフィルムであれば特に限定されず、種々の材質からなるフィルムを用いることができる。
【0195】
反射層としては、反射性の偏光フィルム、入射光のうちの一部を反射できるように、表面にプリズム等の微細構造が設けられたフィルム、金属箔、多層光学フィルム等が挙げられる。反射層は、入射光の30%以上を反射させるのが好ましく、40%以上を反射させるのがより好ましく、50%以上を反射させるのが特に好ましい。
反射層は、量子ドット含有フィルムを通過した光を反射して、反射光を再度、量子ドット含有フィルムに入射させるように設けられるのが好ましい。反射層から量子ドット含有フィルムに入射した光を、拡散層等により、反射層の方向へ再度反射させることにより、反射層を用いない場合よりも、量子ドット含有フィルムから発せられる緑色光、及び赤色光の色純度を高めることができる。
【0196】
導光板としては、従来、種々の表示装置や光学装置に用いられている種々の導光板を、特に制限なく用いることができる。
【0197】
量子ドット含有フィルムと、他の機能層とを含む積層体の好ましい層構成の典型例としては、以下の1)~8)の層構成が挙げられる。なお1)~8)の構成の積層体では、最も左に記載された層に光源が発する光線を入射させ、最も右に記載された層から量子ドット含有フィルムにより波長変換された光線を取り出す。
通常、積層体から取り出された光線を入射させるようにディスプレイパネルが設けられ、色準との高い赤色光、緑色光、及び青色光を利用して画像の表示が行われる。
1)拡散層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層
2)導光板/拡散層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層
3)低屈折率層/量子ドット含有フィルム/空隙/反射層
4)導光板/低屈折率層/量子ドット含有フィルム/空隙/反射層
5)低屈折率層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層
6)導光板/低屈折率層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層
7)反射層/低屈折率層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層
8)導光板/反射層/低屈折率層/量子ドット含有フィルム/低屈折率層/反射層
【0198】
なお、以上説明した積層体において、硬化性組成物の硬化物からなる前述のフィルム(量子ドット含有フィルム)は、前述の方法に従って製造されるのが好ましい。
【0199】
≪発光表示素子パネル、及び発光表示装置≫
硬化性組成物の硬化物からなる前述のフィルムや、前述の積層体は、種々の発光表示素子パネルに組み込まれ、光源が発する光線から色純度の高い赤色光、緑色光、及び青色光を取り出す目的で好ましく使用される。
ここでは、硬化性組成物の硬化物からなる前述のフィルムや、前述の積層体の総称について「量子ドットシート」と記載する。
【0200】
発光表示素子パネルは、典型的には、光源であるバックライトと、量子ドットシートと、ディスプレイパネルとを組み合わせて含む。
量子ドットシートが導光板を備える場合、典型的には、導光板の側面に光線を入射させるように光源が設けられる。導光板の側面から入射した光線は、量子ドットシート内を通過し、ディスプレイパネルに入射する。
量子ドットシートが導光板を備えない場合、面光源から量子ドットシートの主面に光線を入射させ、量子ドットシート内を通過した光線をディスプレイパネルに入射させる。
ディスプレイパネルの種類は、量子ドットシートを通過した光線を用いて画像形成可能であれば特に限定されないが、典型的には液晶ディスプレイパネルである。
【0201】
光源が発する光線から特に色純度の高い赤色光、緑色光、及び青色光を取り出しやすいことから、量子ドットシートは、前述の積層体であるのが好ましい。
量子ドットシートが積層体である場合の、発光表示素子パネルが備える構成の好ましい組み合わせとしては、以下a)~h)の組み合わせが挙げられる。
下記a)~h)に記載の組み合わせについて、最も左に記載の構成から、記載されている順に積み上げられ、発光表示素子パネルが形成される。
a)面光源/拡散層/量子ドットシート/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
b)光源付導光板/拡散層/量子ドットシート/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
c)面光源/低屈折率層/量子ドットシート/空隙/反射層/ディスプレイパネル
d)光源付導光板/低屈折率層/量子ドットシート/空隙/反射層/ディスプレイパネル
e)面光源/低屈折率層/量子ドットシート/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
f)光源付導光板/低屈折率層/量子ドットシート/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
g)面光源/反射層/低屈折率層/量子ドットシート/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
h)光源付導光板/反射層/低屈折率層/量子ドットシート/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
【0202】
以上説明した発光表示素子パネルを用いることで、色相の再現範囲が広く、良好な色相であり鮮明な画像を表示可能な発光表示装置を製造することができる。
【実施例】
【0203】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0204】
〔実施例1~19、及び比較例1〕
実施例、及び比較例において、エポキシ化合物(A)((A)成分)として、以下のA-1~A-4を用いた。
A-1:1,3,5-トリスグリシジルイソシアヌル酸
A-2:4,4’-ビス(1,2-エポキシシクロヘキサン)
A-3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂
A-4:エチレングリコールジグリシジルエーテル
A-5:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
【0205】
実施例、及び比較例において、量子ドット(B)((B)成分)として、以下のB-1~B-4を用いた。
B-1及びB-2については、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)中に濃度3質量%で量子ドットが分散した分散液として用いた。
B-3及びB-4については、PGMEA中に濃度1質量%で量子ドットが分散した分散液として用いた。
B-1:InPからなるコアが、ZnSからなるシェル層で被覆された粒子に、オレイルアミンが配位した量子ドット(発光極大530nm)
B-2:InPからなるコアが、ZnSからなるシェル層で被覆された粒子に、オレイルアミンが配位した量子ドット(発光極大620nm)
B-3:CdSeからなるコアが、ZnSからなるシェル層で被覆された量子ドット(発光極大:520nm)
B-4:CdSeからなるコアが、ZnSからなるシェル層で被覆された量子ドット(発光極大:630nm)
【0206】
実施例、及び比較例において、酸発生剤(C)((C)成分)として、以下のC-1~C-3を用いた。
【化33】
【0207】
実施例、及び比較例において、シランカップリング剤
として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403、信越シリコーン社製)を用いた。
【0208】
表1に記載の種類及び量のエポキシ化合物(A)、及び酸発生剤(C)と、表1に記載の種類であり、表1に記載の種類及び量の量子ドット(B)を含む量子ドットの分散液とを均一に混合して、各実施例、及び比較例の硬化性組成物を得た。
【0209】
得られた硬化性組成物を用いて、以下の方法に従って蛍光効率の評価を行った。評価結果を表1に記す。
<蛍光効率評価>
硬化性組成物の調製に用いた量子ドット(B)の分散液について、波長450nmでの吸光度が0.4となるようになるようにトルエンを加えて、希釈分散液を作製した。
得られた希釈分散液と、下記条件で形成された硬化膜とについて、蛍光量子収率測定装置(C9920-02G;浜松ホトニクス株式会社製)により、励起波長450nmでの量子収率をそれぞれ測定した。希釈分散液の量子収率をQ1とし、硬化膜の量子収率をQ2とする。
下記式:
量子収率比(%)=(Q2/Q1)×100
により量子収率を算出した。
算出された量子収率比に基づいて、以下の基準に従って蛍光効率を評価した。
(硬化膜形成条件)
得られた組成物をスピンコートして、70℃2分の条件で乾燥させて、ブロードバンド光にて100mJの露光量にて露光硬化した。このようにして、厚み1μmの硬化膜を得た。
(蛍光効率判定基準)
A:量子収率比が70%以上である。
B:量子収率比が50%以上70%未満である。
C:量子収率比が0.1%以上50%未満である。
D:量子収率比が0.1%未満である。
【0210】
【0211】
表1によれば、量子ドット(B)を含む硬化性組成物について、2以上のエポキシ基を有し、且つ、オキシラン環以外の環式構造を含むエポキシ化合物(A)を、酸発生剤(C)を用いて硬化させる場合、蛍光効率に優れる硬化膜を形成できることが分かる。
他方、比較例1では、環式構造を含まないエチレングリコールジグリシジルエーテルをエポキシ化合物(A)として用いたため、蛍光効率に優れる硬化膜を形成できなかった。