(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】粉末状食品組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 29/212 20160101AFI20221005BHJP
A23L 29/219 20160101ALI20221005BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20221005BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20221005BHJP
A23L 23/10 20160101ALI20221005BHJP
【FI】
A23L29/212
A23L29/219
A23L29/231
A23L29/256
A23L23/10
(21)【出願番号】P 2018223681
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】森 利弥
(72)【発明者】
【氏名】東 英範
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐里子
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-079653(JP,A)
【文献】特開昭58-183038(JP,A)
【文献】特表2005-515268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23C
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムを含有する溶媒に溶解させられる粉末状食品用組成物であって、
α化澱粉と、
カルシウムイオンとの反応によりゲル化するゲル化剤とを含み、
前記α化澱粉の含有量が、前記溶媒100質量部に対して2.5~10.0質量部となるような量であ
り、
前記ゲル化剤の含有量が、前記溶媒100質量部に対して0.01~1.0質量部となるような量である、
粉末状食品用組成物。
【請求項2】
前記溶媒におけるカルシウム含有量が、50~300mg/100mLである、請求項1に記載の粉末状食品用組成物。
【請求項3】
前記溶媒が牛乳を含む、請求項1又は2に記載の粉末状食品用組成物。
【請求項4】
前記α化澱粉が顆粒状である、請求項1乃至
3のいずれかに記載の粉末状食品用組成物。
【請求項5】
前記α化澱粉がアセチル化アジピン酸架橋澱粉を含む、請求項1乃至
4のいずれかに記載の粉末状食品用組成物。
【請求項6】
前記α化澱粉が、馬鈴薯澱粉を由来とする成分を含む、請求項1乃至
5のいずれかに記載の粉末状食品用組成物。
【請求項7】
前記ゲル化剤が、イオタカラギーナン又はペクチンを含有する、請求項1乃至
6のいずれかに記載の粉末状食品用組成物。
【請求項8】
0~15℃の温度の前記溶媒に溶解させられる、請求項1乃至
7のいずれかに記載の粉末状食品用組成物。
【請求項9】
請求項1乃至
8のいずれかに記載された粉末状食品用組成物と、
具材と、を含む、具材含有食品用組成物。
【請求項10】
前記具材の含有量が、前記溶媒100質量部に対して0.5~20質量部である、請求項
9に記載の具材含有食品用組成物。
【請求項11】
請求項1乃至
8のいずれかに記載された粉末状食品用組成物、又は、請求項
9若しくは
10に記載された具材含有食品用組成物と、
前記溶媒と、
を含む、液状食品。
【請求項12】
請求項1乃至
8のいずれかに記載された粉末状食品組成物、又は、請求項
9若しくは
10に記載された具材含有食品用組成物と、前記溶媒とを混合する工程を含む、液状食品の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
即席食品として、液状食品(スープやシチュー等)を簡単に調製するための粉末状食品用組成物が知られている。消費者は、粉末状食品用組成物を、水や牛乳等の溶媒に溶解させる。これにより、スープやシチュー、カレー等を簡単に調製できる。
【0003】
上記に関連して、特許文献1(特許第5811851号)には、「顆粒状スープを溶解させる溶媒を100重量%とした場合、α化澱粉1.1~2.0重量%、ガム質0.05~0.18重量%、及び融点が0℃以下の食用油0.2~4.0重量%、を含有し、賦形剤としてデキストリンを含まず、マルトースを、油脂も含めた顆粒の全量に対して10~50重量%含有することを特徴とする冷水可溶性を有する顆粒状スープ」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、比較的高い粘度を有する液状食品を調製するための粉末状食品用組成物について、ある程度の需要があると考え、検討を行っている。このような粉末状食品用組成物は、溶媒と混合された後、所望の粘度が得られるまで放置され、その後、食される。
【0006】
溶媒との混合後、速やかに粘度が増加すれば、短時間で所望する粘度に到達する。速やかに液状食品を調製でき、好ましいと考えられる。しかしながら、本発明者の知見によれば、粘度の増加速度を大きくしようと澱粉系原料を増やして配合すると、最終的に到達する粘度が、必要以上に大きくなり、所望する最終粘度が得られにくい。
【0007】
そこで、本発明の課題は、最終的に得られる粘度を抑えたまま、短時間で所望の粘度を得ることができる、粉末状食品用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の事項を含む。
【0009】
[1]カルシウムを含有する溶媒に溶解させられる粉末状食品用組成物であって、α化澱粉と、カルシウムイオンとの反応によりゲル化するゲル化剤とを含み、前記α化澱粉の含有量が、前記溶媒100質量部に対して2.5~10.0質量部となるような量である、粉末状食品用組成物。
[2]前記溶媒におけるカルシウム含有量が、50~300mg/100mLである、[1]に記載の粉末状食品用組成物。
[3]前記溶媒が牛乳を含む、[1]又は[2]に記載の粉末状食品用組成物。
[4]前記ゲル化剤の含有量が、前記溶媒100質量部に対して0.01~1.0質量部となるような量である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の粉末状食品用組成物。
[5]前記α化澱粉が顆粒状である、[1]乃至[4]のいずれかに記載の粉末状食品用組成物。
[6]前記α化澱粉がアセチル化アジピン酸架橋澱粉を含む、[1]乃至[5]のいずれかに記載の粉末状食品用組成物。
[7]前記α化澱粉が、馬鈴薯澱粉を由来とする成分を含む、[1]乃至[6]のいずれかに記載の粉末状食品用組成物。
[8]前記ゲル化剤が、イオタカラギーナン又はペクチンを含有する、[1]乃至[7]のいずれかに記載の粉末状食品用組成物。
[9]0~15℃の温度の前記溶媒に溶解させられる、[1]乃至[8]のいずれかに記載の粉末状食品用組成物。
[10][1]乃至[9]のいずれかに記載された粉末状食品用組成物と、具材と、を含む、具材含有食品用組成物。
[11]前記具材の含有量が、前記溶媒100質量部に対して0.5~20質量部である、[10]に記載の具材含有食品用組成物。
[12][1]乃至[9]のいずれかに記載された粉末状食品用組成物、又は、[10]若しくは[11]に記載された具材含有食品用組成物と、前記溶媒と、を含む、液状食品。
[13][1]乃至[9]のいずれかに記載された粉末状食品組成物、又は、[10]若しくは[11]に記載された具材含有食品用組成物と、前記溶媒とを混合する工程を含む、液状食品の調製方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、最終的に得られる粘度を抑えたまま、短時間で所望の粘度を得ることができる、粉末状食品用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、対照1、実施例1及び比較例1の粘度の経時変化の測定結果を示す。
【
図1B】
図1Bは、対照1、実施例1及び比較例1の粘度の経時変化の測定結果を示す。
【
図2A】
図2Aは、対照1、実施例1及び比較例2の粘度の経時変化を示す。
【
図2B】
図2Bは、対照1、実施例1及び比較例2の粘度の経時変化を示す。
【
図3A】
図3Aは対照1、実施例1及び比較例3の粘度の経時変化を示す。
【
図3B】
図3Aは対照1、実施例1及び比較例3の粘度の経時変化を示す。
【
図4A】
図4Aは、対照1、実施例1、比較例1及び比較例4の粘度の経時変化を示すグラフである。
【
図4B】
図4Bは、対照1、実施例1、比較例1及び比較例4の粘度の経時変化を示す。
【
図5A】
図5Aは、対照2、比較例5及び比較例6の粘度の経時変化を示す。
【
図5B】
図5Bは、対照2、比較例5及び比較例6の粘度の経時変化を示す。
【
図6A】
図6Aは、対照1、比較例1、実施例1、対照2、比較例5及び比較例6の結果を示す。
【
図6B】
図6Bは、対照1、比較例1、実施例1、対照2、比較例5及び比較例6の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る粉末状食品用組成物について、以下に説明する。
本実施形態に係る粉末状食品用組成物は、シチューやソースなどの液状食品を調製するための材料として使用される。粉末状食品用組成物は、カルシウムを含有する溶媒に溶解させられ、液状食品として食される。粉末状食品用組成物は、α化澱粉と、カルシウムイオンとの反応によりゲル化するゲル化剤とを含む。α化澱粉の含有量は、溶媒100質量部に対して2.5~10.0質量部となるような量である。
このような構成を採用することにより、最終的に得られる粘度を抑えたまま、短時間で所望の粘度を得ることができる。
以下に、各成分について詳述する。
【0013】
1:溶媒
溶媒におけるカルシウム含有量は、例えば50~300mg/100mL、好ましくは100~180mg/100mlである。溶媒としては、例えばカルシウムが強化された加工乳でも良いが、一般的な牛乳が好適に用いられる。
溶媒と粉末状食品組成物との混合割合は、例えば、溶媒100質量部に対して、粉末状食品組成物3~20質量部、好ましくは5~15質量部である。
粉末状食品組成物と混合する際の溶媒の温度は、特に限定されず、常温の溶媒であっても常温よりも低温の溶媒であってもよい。好ましくは、溶媒の温度は、0~15℃である。本実施態様に係る粉末状食品組成物は、比較的低温の溶媒と混合された場合であっても、ダマを作らず、滑らかな舌触りを提供する。
【0014】
2:粉末状食品用組成物
本実施形態に係る粉末状食品用組成物は、既述のように、α化澱粉と、カルシウムイオンとの反応によりゲル化するゲル化剤とを含んでいる。本実施形態によれば、α化澱粉に加えてカルシウムイオンとの反応によりゲル化するゲル化剤が含まれていることにより、最終的に得られる粘度を抑えたまま、短時間で所望の粘度を得ることができる。
【0015】
(α化澱粉)
α化澱粉は、既述のように、溶媒100質量部に対して2.5~10.0質量部となるような量で、粉末状食品用組成物に含有されている。α化澱粉の含有量は、好ましくは、溶媒100質量部に対して2.8~9.0質量部、より好ましくは3.3~8.0質量部である。
α化澱粉は、増粘機能を有している。従って、α化澱粉の含有量が多ければ、最終的に得られる液状食品の粘度も増加する傾向にある。
本実施形態においては、α化澱粉の含有量が比較的大きい(溶媒100質量部に対して2.5質量部以上)ため、得られる液状食品の粘度が比較的高くなる。すなわち、とろみがある液状食品が得られることになる。例えば、粉末状食品用組成物を溶媒と混合し、30秒間攪拌した場合、溶媒投入から2分後の粘度が、60~330mPa・sの範囲にある液状食品を得ることができる。
【0016】
粉末状食品用組成物中におけるα化澱粉の含有量は、例えば、20~60質量%、好ましくは30~45質量%である。
α化澱粉としては、顆粒状のものが好ましい。顆粒状のα化澱粉を用いると溶解性が向上するという効果が得られる。
α化澱粉は、好ましくは、アセチル化アジピン酸架橋澱粉を含む。アセチル化アジピン酸架橋澱粉を用いることにより、滑らかな物性が得られるという効果が得られる。
α化澱粉は、馬鈴薯澱粉を由来とする成分を含むことが好ましい。馬鈴薯澱粉を由来とするα化澱粉を用いることにより、高粘度を発現できるという効果が得られる。
【0017】
(ゲル化剤)
ゲル化剤としては、カルシウムイオンとの反応によりゲル化する材料であれば、特に限定されない。好ましいゲル化剤としては、イオタカラギーナン及びペクチンが挙げられ、より好ましくはイオタカラギーナンである。
【0018】
ゲル化剤の含有量は、例えば、溶媒100質量部に対して0.01~1.0質量部、好ましくは0.08~0.4質量部である。
また、粉末状食品用組成物中におけるゲル化剤の含有量は、例えば、0.1~5.0質量%、好ましくは0.5~2.5質量%である。
【0019】
(その他成分)
本実施形態に係る粉末状食品用組成物には、液状食品に求められる風味等に応じて、調味料等のその他の成分が含まれていてもよい。
調味料としては、例えば、砂糖、食塩、香辛料、チーズ、バター、粉乳、生クリーム、クリーミングパウダー、乾燥野菜パウダー、野菜エキスパウダー、油脂、酵母エキス、醤油、野菜ブイヨン、肉エキス、カレー粉、及びアミノ酸等を例示することができる。
また、調味料の他にも、香料、酸味料、酸化防止剤(ビタミンC、ビタミンEなど)などの成分が含まれていてもよい。
更に、澱粉材料として、α化澱粉以外にも、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸架橋澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉及びそれらの分解物等が含まれていてもよい。
また、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム等の、カルシウムイオンとの反応によりゲル化するゲル化剤以外のゲル化剤が含まれていてもよい。
【0020】
特に、粉末状食品用組成物には、調味料として、砂糖及び乾燥野菜パウダーが含まれていることが好ましい。
粉末状食品用組成物中における砂糖の含有量は、例えば、10~40質量%、好ましくは15~30質量%である。
粉末状食品用組成物中における乾燥野菜パウダーの含有量は、例えば、5~30質量%、好ましくは10~20質量%である。
【0021】
3:具材含有食品用組成物
粉末状食品用組成物は、単独で提供されてもよいし、具材と混合されて具材含有食品用組成物として提供されてもよい。
尚、本発明において、「具材」とは、溶媒と混合しても溶解せずに液状食品中において目視できる大きさを有する食材を指し、溶媒に溶解する粉状物は含まない。
【0022】
具材としては、乾燥具材が好ましく用いられる。乾燥具材としては、例えば、乾燥野菜、小麦粉加工食品、及び乾燥肉加工品等が挙げられる。
乾燥野菜としては、例えば、コーン、タマネギ、ブロッコリー、人参、かぼちゃ、チンゲン菜、ほうれん草、キノコ(エリンギ、ヒラタケ、マッシュルーム等)、ジャガイモ、サツマイモ、茄子、ズッキーニ、豆類(そら豆等)、及びアスパラなどが挙げられる。
小麦粉加工食品としては、例えば、クルトン、細断クラッカーなどが挙げられる。
乾燥肉加工品としては、ミートボール及びソーセージなどが挙げられる。
【0023】
具材の含有量は、例えば、溶媒100質量部に対して0.5~20質量部であり、好ましくは1~10質量部である。
【0024】
4:その他
本実施形態に係る粉末状食品用組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、上述した原料を、ミキサーなどを用いて混合することにより、粉末状食品用組成物を製造することができる。あるいは、上述の原料を加熱混合し、加熱溶融状の原料を押出し造粒機にかけて押出し造粒し、押出し造粒機から排出された造粒物を冷却することにより、製造することもできる。あるいは、上述の原料のすべて又は一部を混合して、造粒室の下部から熱風を送り込み、原料粉粒体を空中に巻き上げることにより粒子が流動する状態になる層を形成してから、造粒液体を噴霧して、凝集または被覆により粒状物に成長させて製造することもできる。
【0025】
本実施形態に係る粉末状食品用組成物は、例えば、必要に応じて具材と共にアルミ製などの包装袋に封入され、提供される。具材と粉末状食品用組成物とが別々の包装袋に封入されていてもよい。
喫食時、消費者は、粉末状食品用組成物を溶媒と混合し、所定時間放置する。これにより、液状食品が得られる。本実施形態によれば、既述の通り、所定のゲル化剤が用いられているため、溶媒との混合後、速やかに所望する粘度にまで粘度が増加する。また、最終的な粘度が必要以上に大きくなりすぎない。従って、溶媒と混合した後、短時間で所望の粘度を有する液状食品が得られる。
具体的には、例えば、カップ等の容器に、粉末状食品用組成物を入れ、冷たい牛乳を加えてスプーン等でかき混ぜるだけで、加熱しなくても、短時間でとろみのある粘度を得ることができる。したがって、本発明の粉末状食品用組成物は、シチューやカレー等のようにとろみが必要な粘度の高い液状食品に有効である。
【0026】
(実施例)
以下、本発明についてより詳細に説明するため、本発明者らにより行われた実施例について説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されて解釈されるべきものでは無い。
【0027】
1:α化澱粉とイオタカラギーナンとの比較
(対照1)
表1に示される組成で、α化澱粉、砂糖、食塩、香辛料、チーズ、乾燥野菜パウダー、野菜エキスパウダー、粉末油脂、その他の調味料、及び粉末香料を混合し、対照1に係る粉末状食品用組成物を得た。
α化澱粉としては、顆粒状であり、馬鈴薯澱粉を由来とするアセチル化アジピン酸架橋澱粉を使用した。
【0028】
得られた粉末状食品用組成物を、表1に示される量の牛乳(温度10℃、カルシウム含有量110mg/100mL)と混合し、液状食品を得た。尚、表1には、牛乳100質量部に対する各材料の含有量、及び液状食品中における各材料の含有量も、併せて記載されている。
表1に示されるように、牛乳100質量部に対するα化澱粉の含有量は、3.5質量部であった。
【0029】
溶媒との混合後、液状食品の粘度の経時変化を、B型粘度計(リオン社製 ビスコテスターVT-04高粘度用、ローターNo.3を使用、62.5rpm、30秒間測定)により測定した。具体的には、溶媒と混合後、30秒撹拌し、混合開始1、2、3、5、10、15、20分後の粘度を測定した。牛乳温度は10℃~15℃であった。
【0030】
(実施例1)
表2に実施例1に係る組成物の組成を示す。牛乳100質量部に対して0.11質量部となるような量でイオタカラギーナンを追加した点を除き、対照1と同様の組成により、実施例1に係る粉末状食品用組成物を得た。得られた実施例1に係る組成物を、対照1と同様に、牛乳と混合し、粘度の経時変化を測定した。
【0031】
(比較例1)
表3に比較例1に係る組成物の組成を示す。対照1において、α化澱粉の含有量を、牛乳100質量部に対して0.11質量部分だけ、増加させた。すなわち、α化澱粉の総含有量を、牛乳100質量部に対して約3.6質量部とした。その他の点は対照1と同様の組成を用いて、比較例1に係る粉末状食品用組成物を得た。比較例1に係る組成物を、対照1と同様に、牛乳と混合し、粘度の経時変化を測定した。
【0032】
対照1、実施例1及び比較例1の粘度の経時変化の測定結果を、
図1A及び
図1Bに示す。尚、
図1Bにおける横軸は、混合後の経過時間であり、縦軸は粘度を示す。
図1A及び
図1B中、「PS」はα化澱粉を意味し、「ιC」とはイオタカラギーナンを意味する(以下の図においても同じ)。各例と図中の表記との対応関係は以下の通りである。
対照1:PS3.5%
実施例1:PS3.5%+ιC0.11%
比較例1:PS3.5%+PS0.11%
【0033】
図1A及び
図1Bに示されるように、実施例1及び比較例1は、いずれも、対照1よりも最終的な粘度の大きさが大きくなっていた。すなわち、α化澱粉を増量するか、または、α化澱粉を増量する代わりにイオタカラギーナンを添加することにより、最終的な粘度が高くなることが分かる。また、実施例1と比較例1とでは、最終的な粘度の大きさはさほど変わらなかった。
一方で、混合後の初期的な粘度の増加速度は、実施例1の方が比較例1よりも大きかった。すなわち、実施例1の方が比較例1よりも早く所望する粘度に到達することが判った。イオタカラギーナンを添加することにより、最終的な粘度を変えることなく、粘度の初期的な増加速度だけを増やすことができることが判った。
【0034】
2:イオタカラギーナンとラムダカラギーナンとの比較(その1)
(比較例2)
表3に比較例2に係る組成物の組成を示す。牛乳100質量部に対して0.011質量部となるような量で、ラムダカラギーナンを追加した点を除き、対照1と同様の組成を用いて、比較例2に係る粉末状食品用組成物を得た。得られた組成物を、対照1と同様に牛乳と混合し、粘度の経時変化を測定した。尚、ラムダカラギーナンは、ゲル化剤(増粘剤)として知られる成分ではあるが、イオタカラギーナンとは異なり、カルシウムイオンとの反応によりゲル化するゲル化剤ではない。
【0035】
図2A及び
図2Bは、対照1、実施例1及び比較例2の粘度の経時変化を示す。尚、各図において、「λC」との表記は、ラムダカラギーナンであることを示す(以下の図においても同じ)。
各例と図中の表記との対応関係は以下の通りである。
対照1:PS3.5%
実施例1:PS3.5%+ιC0.11%
比較例2:PS3.5%+λC0.011%
【0036】
図2A及び
図2Bに示されるように、実施例1と比較例2とでは、初期的(0~3分程度)な粘度の増加速度に大きな差はなかった。しかしながら、最終的な粘度の大きさは、比較例2の方が大きかった。すなわち、実施例1と同程度の初期的な粘度増加速度が得られるような量でラムダカラギーナンを添加すると、最終的な粘度が大きくなってしまうことが理解できる。
【0037】
3:イオタカラギーナンとラムダカラギーナンとの比較(その2)
(比較例3)
表3に比較例3に係る組成物の組成を示す。牛乳100質量部に対して0.006質量部となるような量で、ラムダカラギーナンを追加した点を除き、対照1と同様の組成を用いて、比較例3に係る粉末状食品用組成物を得た。得られた組成物を、対照1と同様に牛乳と混合し、粘度の経時変化を測定した。
【0038】
図3A及び
図3Bは、対照1、実施例1及び比較例3の粘度の経時変化を示す。
各例と図中の表記との対応関係は以下の通りである。
対照1:PS3.5%
実施例1:PS%3.5+ιC0.11%
比較例3:PS%3.5+λC0.006%
【0039】
図3Aに示されるように、実施例1と比較例3とでは、最終的な粘度の大きさにさほどの差はない。但し、初期的(0~3分程度)な粘度の増加速度は、実施例1の方が比較例3よりも大きかった。すなわち、ラムダカラギーナンの添加量を、最終的な粘度の大きさが実施例1程度の大きさになるような量に抑制すると、初期的な粘度の増加速度が実施例1におけるそれよりも小さくなってしまうことが判る。
【0040】
4:イオタカラギーナンとラムダカラギーナンとの比較(その3)
(比較例4)
表3に比較例4に係る組成物の組成を示す。牛乳100質量部に対して0.11質量部となるような量で、ラムダカラギーナンを追加した点を除き、対照1と同様の組成を用いて、比較例4に係る粉末状食品用組成物を得た。得られた組成物を、対照1と同様に牛乳と混合し、粘度の経時変化を測定した。
【0041】
図4A及び
図4Bは、対照1、実施例1、比較例1及び比較例4の粘度の経時変化を示す。
各例と
図4中の表記との対応関係は以下の通りである。
対照1:PS3.5%
実施例1:PS3.5%+ιC0.11%
比較例1:PS3.5%+PS0.11%
比較例4:PS3.5%+λC0.11%
【0042】
図4A及び
図4Bに示されるように、比較例4は、実施例1に比べて、初期的な粘度の増加速度が大きかったが、最終的な粘度の大きさも約3倍になっていた。
【0043】
以上より、同じ量で使用した場合、粘度の初期的な増加速度は、ラムダカラギーナンの方がイオタカラギーナンより大きくなるが、最終的な粘度も著しく増加してしまうことが判る。また、最終的な粘度が同じになるように添加量を調整した場合、粘度の初期的な増加速度は、イオタカラギーナンの方がラムダカラギーナンよりも大きくなることが判る。
【0044】
5:α化澱粉の濃度の検討
(対照2)
表3に対照2に係る組成物の組成を示す。α化澱粉の含有量を、牛乳100質量部に対して1.82質量部に変更した点を除いて、対照1と同様の組成を用いて、対照2に係る粉末状食品用組成物を得た。得られた組成物を、対照1と同様に牛乳と混合し、粘度の経時変化を測定した。
(比較例5)
表3に比較例5に係る組成物の組成を示す。牛乳100質量部に対して0.18質量部となるような量で、イオタカラギーナンを追加した点を除き、対照2と同様の組成を用いて、比較例5に係る粉末状食品用組成物を得た。得られた組成物を、対照1と同様に牛乳と混合し、粘度の経時変化を測定した。
(比較例6)
表3に比較例6に係る組成物の組成を示す。対照2において、α化澱粉の含有量を、牛乳100質量部に対して0.18質量部分だけ、増加させた。すなわち、α化澱粉の総含有量を、牛乳100質量部に対して2.00質量部とした。その他の点は対照2と同様にして、比較例6に係る粉末状食品用組成物を得た。比較例6に係る組成物を、対照1と同様に、牛乳と混合し、粘度の経時変化を測定した。
【0045】
図5A及び
図5Bは、対照2、比較例5及び比較例6の粘度の経時変化を示す。尚、
図6A及び
図6Bは、対照1、比較例1、実施例1、対照2、比較例5及び比較例6の結果を示す。
各例と図中の表記との対応関係は以下の通りである。
対照1:PS3.5%
実施例1:PS3.5%+ιC0.11%
比較例1:PS3.5%+PS0.11%
対照2:PS1.82%
比較例5:PS1.82%+ιC0.18%
比較例6:PS2%
【0046】
図5A、
図5B、
図6A及び
図6Bに示されるように、比較例5及び比較例6は、初期的な粘度の増加速度において、大きな差が無かった。すなわち、α化澱粉の含有量が多い場合(牛乳100質量部に対して2.5質量部以上)とは異なり、α化澱粉の含有量が牛乳100質量部に対して2.0質量部以下である場合には、イオタカラギーナンを添加したとしても、初期的な粘度の増加速度はさほど変わらないことが判った。
【0047】
6:イオタカラギーナンの量の検討
(実施例2)
牛乳100質量部に対して0.085質量部となるような量でイオタカラギーナンを追加した点を除き、対照1と同様の組成により、実施例2に係る粉末状食品用組成物を得た。得られた実施例2に係る組成物を、対照1と同様に、牛乳と混合し、粘度の経時変化を確認した。
その結果、粘度の立ち上がりはイオタカラギーナンを添加しない場合よりも早くなり、好ましい最終粘度の調製物が得られた。
【0048】
(実施例3)
牛乳100質量部に対して0.36質量部となるような量でイオタカラギーナンを追加した点を除き、対照1と同様の組成により、実施例3に係る粉末状食品用組成物を得た。得られた実施例3に係る組成物を、対照1と同様に、牛乳と混合し、粘度の経時変化を確認した。
その結果、粘度の立ち上がりはイオタカラギーナンを添加しない場合よりもずっと早くなり、最終粘度はやや高めではあったが、許容できる粘度の調製物が得られた。
【0049】