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特許7153064積層体の製造方法および熱硬化性有機膜形成用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】積層体の製造方法および熱硬化性有機膜形成用組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
H01L23/12 501Z
H01L23/12 E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020510871
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2019012741
(87)【国際公開番号】W WO2019189112
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018065763
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】松井 聡
(72)【発明者】
【氏名】沢野 充
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-056274(JP,A)
【文献】国際公開第2018/038002(WO,A1)
【文献】特開2003-101220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/60
H01L23/12-23/15
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、第一の有機膜、導電性層および第二の有機膜をこの順に有する積層体の製造方法であって、
第一の熱硬化性有機膜を加熱して第一の有機膜を形成する第一の熱硬化性有機膜加熱工程と、
第一の有機膜の上に導電性層を形成する導電性層形成工程と、
第二の熱硬化性有機膜形成用組成物を、少なくとも前記導電性層上に適用して第二の熱硬化性有機膜を形成する第二の熱硬化性有機膜形成工程と、
0.1MPaを超える圧力下で前記第二の熱硬化性有機膜を加熱する第二の熱硬化性有機膜加熱工程と
を含み、
前記第一の熱硬化性有機膜加熱工程における圧力が1気圧以下であり、前記第二の熱硬化性有機膜加熱工程における圧力が0.2MPa以上である、積層体の製造方法。
【請求項2】
支持体、第一の有機膜、導電性層および第二の有機膜をこの順に有する積層体の製造方法であって、
第一の熱硬化性有機膜を加熱して第一の有機膜を形成する第一の熱硬化性有機膜加熱工程と、
第一の有機膜の上に導電性層を形成する導電性層形成工程と、
第二の熱硬化性有機膜形成用組成物を、少なくとも前記導電性層上に適用して第二の熱硬化性有機膜を形成する第二の熱硬化性有機膜形成工程と、
0.1MPaを超える圧力下で前記第二の熱硬化性有機膜を加熱する第二の熱硬化性有機膜加熱工程と
を含み、
前記第二の熱硬化性有機膜を0.1MPa未満の圧力に曝露する第二の熱硬化性有機膜減圧工程を、前記第二の熱硬化性有機膜形成工程と前記第二の熱硬化性有機膜加熱工程との間に有する、積層体の製造方法。
【請求項3】
前記第二の熱硬化性有機膜形成工程と、前記第二の熱硬化性有機膜加熱工程との間に、形成された前記第二の熱硬化性有機膜を露光する露光工程と、前記露光された第二の熱硬化性有機膜に対して現像を行う現像工程とを更に含む、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
さらに、溶剤を含む第一の熱硬化性有機膜形成用組成物を前記支持体上に適用して前記第一の熱硬化性有機膜を形成する第一の熱硬化性有機膜形成工程を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第一の熱硬化性有機膜形成用組成物と前記第二の熱硬化性有機膜形成用組成物が同一の組成物である、請求項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第一の熱硬化性有機膜加熱工程における加熱温度が150℃以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第一の熱硬化性有機膜加熱工程における加熱温度が250℃以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記第二の熱硬化性有機膜加熱工程における加熱温度が250℃以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記導電性層が、直径100μmの円形を包含する以上の広さを有する、請求項1~のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
第三の熱硬化性有機膜形成用組成物を適用して第三の熱硬化性有機膜を形成する第三の熱硬化性有機膜形成工程および0.1MPaを超える圧力下で前記第三の熱硬化性有機膜を加熱する第三の熱硬化性有機膜加熱工程を前記第二の熱硬化性有機膜加熱工程の後に有する、請求項1~のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記積層体がウェハレベルのファンアウトパッケージングに含まれる、請求項1~10のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
前記積層体がウェハレベルのファンインパッケージングに含まれる、請求項1~11のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の積層体の製造方法に用いられる、第一の熱硬化性有機膜および第二の熱硬化性有機膜の少なくともいずれかを形成するための熱硬化性有機膜形成用組成物。
【請求項14】
熱塩基発生剤、光塩基発生剤および重合性化合物からなる群のうち少なくとも1種を含む、請求項13に記載の熱硬化性有機膜形成用組成物。
【請求項15】
ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる1種を含む、請求項13または14に記載の熱硬化性有機膜形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法および熱硬化性有機膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの大容量、高集積化が加速している。そこで、半導体デバイスの底面にはんだバンプを配列させて実装する、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Scale Package)等と呼ばれるエリアアレイ型の実装技術が開発されている(非特許文献1等参照)。
【0003】
ウェハレベルCSP(Wafer level Chip Scale Package)は、半導体部品のパッケージ形式の1つである。半導体のダイ(Die)のサイズとの関係で、ほぼ最小となる半導体パッケージであり、広義のフリップチップ(Flip Chip)である。ウェハレベルパッケージにおいては、一般に、外部端子や封止樹脂といった、通常ベアチップへ行なう加工処理が、ウェハからチップを切り出す前に済まされる。一例を挙げると次のような工程で行われる。シリコンウェハと同じ外形寸法のキャリアに、シリコンダイを配置していく。次に、キャリアの片面側全体をモールド樹脂で封止する。その後、モールド樹脂の表面を削ってシリコンダイの回路面を露出させる。そこに再配線層(Re-Distribution Layer:RDL)を形成し、ハンダボールを載せる。キャリアを外して、個々のパッケージに切断分離すれば、パッケージが完成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】半導体新技術研究会編「(図解)最先端半導体パッケージ技術のすべて」工業調査会、1-25頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、第一の有機膜、再配線層などの導電性層および第二の有機膜をこの順に有する積層体において、第一の有機膜および第二の有機膜を形成するにあたり、第一の熱硬化性有機膜を加熱して第一の有機膜を形成した後、第二の熱硬化性有機膜を加熱して第二の有機膜を形成する態様においては、第二の熱硬化性有機膜の加熱時に、第一の有機膜と導電性層が剥離してしまう場合があることが分かった。
そこで本発明は上記の課題を解決することを目的とし、2つの有機膜に導電性層が介在する積層体において、有機膜と導電性層との剥離を抑制することができる積層体の製造方法および熱硬化性有機膜形成用組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる状況のもと、本発明者が検討を行った結果、導電性層の上に配設される第二の熱硬化性有機膜の加熱時の圧力(P)を0.1MPaを超えるものとすることで上記の課題を解決できることを見出した。すなわち上記の課題は、下記手段<1>により、好ましくは<2>~<15>により、解決された。
【0007】
<1>支持体、第一の有機膜、導電性層および第二の有機膜をこの順に有する積層体の製造方法であって、
第一の熱硬化性有機膜を加熱して第一の有機膜を形成する第一の熱硬化性有機膜加熱工程と、
第一の有機膜の上に導電性層を形成する導電性層形成工程と、
第二の熱硬化性有機膜形成用組成物を、少なくとも上記導電性層上に適用して上記第二の熱硬化性有機膜を形成する第二の熱硬化性有機膜形成工程と、
0.1MPaを超える圧力下で上記第二の熱硬化性有機膜を加熱する第二の熱硬化性有機膜加熱工程と
を含む、積層体の製造方法。
<2>さらに、溶剤を含む第一の熱硬化性有機膜形成用組成物を上記支持体上に適用して上記第一の熱硬化性有機膜を形成する第一の熱硬化性有機膜形成工程を含む、<1>に記載の積層体の製造方法。
<3>上記第一の熱硬化性有機膜形成用組成物と上記第二の熱硬化性有機膜形成用組成物が同一の組成物である、<2>に記載の積層体の製造方法。
<4>上記第一の熱硬化性有機膜加熱工程における加熱温度が150℃以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<5>上記第一の熱硬化性有機膜加熱工程における加熱温度が250℃以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<6>上記第二の熱硬化性有機膜加熱工程における加熱温度が250℃以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<7>上記第一の熱硬化性有機膜加熱工程における圧力が1気圧(1気圧=0.101325MPa)以下であり、上記第二の熱硬化性有機膜加熱工程における圧力が0.2MPa以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<8>上記第二の熱硬化性有機膜を0.1MPa未満の圧力に曝露する第二の熱硬化性有機膜減圧工程を、上記第二の熱硬化性有機膜形成工程と上記第二の熱硬化性有機膜加熱工程との間に有する、<1>~<7>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<9>上記導電性層が、直径100μmの円形を包含する以上の広さを有する、<1>~<8>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<10>第三の熱硬化性有機膜形成用組成物を適用して上記第三の熱硬化性有機膜を形成する第三の熱硬化性有機膜形成工程および0.1MPaを超える圧力下で上記第三の熱硬化性有機膜を加熱する第三の熱硬化性有機膜加熱工程を上記第二の熱硬化性有機膜加熱工程の後に有する、<1>~<9>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<11>上記積層体がウェハレベルのファンアウトパッケージングに含まれる、<1>~<10>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<12>上記積層体がウェハレベルのファンインパッケージングに含まれる、<1>~<10>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<13><1>~<12>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法に用いられる、第一の熱硬化性有機膜および第二の熱硬化性有機膜の少なくともいずれかを形成するための熱硬化性有機膜形成用組成物。
<14>熱塩基発生剤、光塩基発生剤および重合性化合物からなる群のうち少なくとも1種を含む、<13>に記載の熱硬化性有機膜形成用組成物。
<15>ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる1種を含む、<13>または<14>に記載の熱硬化性有機膜形成用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層体の製造方法により、2つの有機膜に導電性層が介在する積層体において、有機膜と導電性層との剥離を抑制することが可能になった。また、その製造方法に適用しうる熱硬化性有機膜形成用組成物を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の好ましい実施形態に係る積層体の製造方法の一過程を断面により模式的に示した工程説明図(1)である。
図2】本発明の好ましい実施形態に係る積層体の製造方法の一過程を断面により模式的に示した工程説明図(2)である。
図3】本発明の好ましい実施形態に係る積層体の製造方法の一過程を断面により模式的に示した工程説明図(3)である。
図4】本発明の好ましい実施形態に係る積層体の製造方法の一過程を断面により模式的に示した工程説明図(4)である。
図5】本発明の好ましい実施形態に係る積層体の製造方法の一過程を断面により模式的に示した工程説明図(5)である。
図6】本発明の好ましい実施形態に係る積層体の製造方法の一過程を断面により模式的に示した工程説明図(6)である。
図7】積層体の製造において有機膜と導電性層との間に剥離が生じた状態を断面により模式的に示した工程説明図である。
図8】ウェハレベルパッケージにおける再配線層を介したバンプの部分を拡大した断面図である。
図9】本発明の好ましい実施形態に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0011】
以下に記載する本発明における構成要素の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
本明細書における基(原子団)の表記に於いて、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および「メタクリル」の双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」および「メタクリロイル」の双方、または、いずれかを表す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、固形分とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量百分率である。なお、本明細書において温度は、特に述べない限り23℃である。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)に従い、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000およびTSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いることによって求めることができる。溶離液は特に述べない限り、THF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したものとする。また、検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
【0012】
本発明の製造方法は、支持体、第一の有機膜、導電性層および第二の有機膜をこの順に有する積層体の製造方法であって、第一の熱硬化性有機膜を加熱して第一の有機膜を形成する第一の熱硬化性有機膜加熱工程と、第一の有機膜の上に導電性層を形成する導電性層形成工程と、第二の熱硬化性有機膜形成用組成物を、少なくとも上記導電性層上に適用して上記第二の熱硬化性有機膜を形成する第二の熱硬化性有機膜形成工程と、0.1MPaを超える圧力下で上記第二の熱硬化性有機膜を加熱する第二の熱硬化性有機膜加熱工程とを含むことを特徴とする。
このような構成とすることにより、2つの有機膜に導電性層が介在する積層体において、有機膜と導電性層との剥離を抑制することが可能になる。
すなわち、例えば、図8に示すように、2つの有機膜に導電性層が介在する積層体において、基板23の上に設けられた有機膜21は、通常、熱硬化性有機膜を熱硬化して形成される。そして、上記有機膜21の上(通常は表面)に導電性層24が形成され、さらに、導電性層の上に、熱硬化性有機膜が形成される。そして、上記導電性層24上の熱硬化性有機膜が、熱硬化して有機膜29が形成される。しかしながら、これらの熱硬化性有機膜を構成する樹脂は、通常、溶剤、添加剤等の低分子や熱分解性基を有する樹脂を含むため、硬化する際に、硬化反応に伴ってガス(アウトガス)が生成する場合がある。そして、本発明者が検討を行ったところ、このアウトガスが導電性層24とその下層である有機膜21の間に気泡となって残ることが分かった。具体的には、図7に示すように、この気泡が第一の有機膜1aと導電性層4の剥離99を引き起こしていることが分かった(図7、剥離部分99)。特に、第一の有機膜1aと導電性層の接する面積が大きい程、アウトガスが外へ放出しにくく、問題となりやすいことも分かった。
【0013】
かかる状況のもと、0.1MPaを超える圧力下で上記第二の熱硬化性有機膜を加熱することにより、アウトガスの発生を抑制し、第一の有機膜と導電性層の剥離の抑制に成功したものである。
以下、本発明の詳細を図面に従って説明する。但し、本発明が図面に示す形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0014】
<第一の有機膜形成工程>
<<第一の熱硬化性有機膜形成工程>>
第一の熱硬化性有機膜形成工程では、図1に示すように、第一の熱硬化性有機膜形成用組成物を支持体10上(通常は、支持体の表面上)に適用して第一の熱硬化性有機膜1を形成することを含む。ここで、「上に」とは、対象となる構造表面に当接して配置する態様のほか、本発明の効果を奏する範囲で、対象構造が任意の層を有し、その任意の層を介して配置することを含む。第一の熱硬化性有機膜を形成するに当たり、通常は、第一の熱硬化性有機膜形成用組成物が溶剤を含み、第一の熱硬化性有機膜形成用組成物を支持体10上に適用して第一の熱硬化性有機膜形成用組成物層を形成し、加熱して溶剤を除去して、第一の熱硬化性有機膜1を形成する。
第一の熱硬化性有機膜形成用組成物としては、後述する感光性樹脂組成物を好適に用いることができる。本実施形態においては、第一の熱硬化性有機膜形成用組成物の適用を、塗布を前提に説明するが、その他の態様によって適用してもよい。
【0015】
本実施形態においては、支持体10には、基板3の上に回路配線5が設けられており、回路配線の周囲にはパッシベーション2が形成されている。
基板の種類は、用途に応じて適宜定めることができるが、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基板、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG(Spin On Glass)、TFT(薄膜トランジスタ)アレイ基板、プラズマディスプレイパネル(PDP)の電極板など特に制約されない。本発明では、特に、半導体作製基板が好ましく、シリコン基板がより好ましい。
【0016】
第一の熱硬化性有機膜形成用組成物を基板に適用する手段としては、上述の通り、塗布が好ましい。
具体的には、適用する手段としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スプレーコート法、スピンコート法、スリットコート法、およびインクジェット法などが例示される。層の厚さの均一性の観点から、より好ましくはスピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、インクジェット法である。方法に応じて適切な固形分濃度や塗布条件を調整することで、所望の厚さの樹脂層を得ることができる。また、基板の形状によっても塗布方法を適宜選択でき、ウェハ等の円形基板であればスピンコート法やスプレーコート法、インクジェット法等が好ましく、矩形基板であればスリットコート法やスプレーコート法、インクジェット法等が好ましい。スピンコート法の場合は、例えば、500~2000rpmの回転数で、10秒~1分程度適用することができる。
【0017】
本発明では、上述のとおり、第一の熱硬化性有機膜形成用組成物層を形成後、溶剤を除去するために乾燥する工程を含んでいてもよい。好ましい乾燥温度は50~150℃で、70℃~130℃がより好ましく、90℃~110℃がさらに好ましい。乾燥時間としては、30秒~20分が例示され、1分~10分が好ましく、3分~7分がより好ましい。
【0018】
第一の熱硬化性有機膜の厚さは、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。上限としては、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
<<露光現像工程>>
本発明においては、上記の第一の熱硬化性有機膜形成用組成物を用いて、第一の熱硬化性有機膜を形成した後、膜の加熱工程の前に、上記第一の熱硬化性有機膜を露光する露光工程と、上記露光された膜に対して、現像を行う現像工程を行ってもよい。すなわち、第一の熱硬化性有機膜形成工程と第一の熱硬化性有機膜加熱工程との間に露光現像工程を行うことができる。露光現像を行うことにより、第一の熱硬化性有機膜に空間7、すなわち、パターンを形成できる(図2)。パターンを形成する場合、第一の熱硬化性有機膜形成用組成物として、後述する感光性樹脂組成物が好ましく用いられる。図9は、かかる露光現像工程を含む本発明の好ましい実施形態に係るフローチャートである。
【0020】
露光量は、例えば、波長365nmでの露光エネルギー換算で100~10000mJ/cm照射することが好ましく、200~8000mJ/cm照射することがより好ましい。
露光波長は、190~1000nmの範囲で適宜定めることができ、240~550nmが好ましい。
露光波長は、光源との関係でいうと、(1)半導体レーザー(波長 830nm、532nm、488nm、405nm など)、(2)メタルハライドランプ、(3)高圧水銀灯、g線(波長 436nm)、h線(波長 405nm)、i線(波長 365nm)、ブロード(g,h,i線の3波長)、(4)エキシマレーザー、KrFエキシマレーザー(波長 248nm)、ArFエキシマレーザー(波長 193nm)、F2エキシマレーザー(波長 157nm)、(5)極端紫外線;EUV(波長 13.6nm)、(6)電子線等が挙げられる。本発明については、特に高圧水銀灯による露光が好ましく、なかでも、i線による露光が好ましい。これにより、特に高い露光感度が得られうる。
【0021】
現像方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、例えば、パドル、スプレー、浸漬、超音波等の現像方法が採用可能である。
現像は現像液を用いて行う。現像液は、特に制限なく使用できる。本発明では、現像液は、ClogP値が-1~5の有機溶剤を含むことが好ましく、ClogP値が0~3の有機溶剤を含むことがより好ましい。ClogP値は、ChemBioDrawにて構造式を入力して計算値として求めることができる。
有機溶剤は、エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例:アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチルおよび2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等、ならびに、エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等、ならびに、ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、N-メチル-2-ピロリドン等、ならびに、芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール、リモネン等、スルホキシド類としてジメチルスルホキシドが好適に挙げられる。
本発明では、特にシクロペンタノン、γ-ブチロラクトンが好ましく、シクロペンタノンがより好ましい。
現像液は、50質量%以上が有機溶剤であることが好ましく、70質量%以上が有機溶剤であることがより好ましく、90質量%以上が有機溶剤であることがさらに好ましい。また、現像液は、100質量%が有機溶剤であってもよい。
【0022】
現像時間としては、10秒~5分が好ましい。現像時の現像液の温度は、特に定めるものではないが、通常、20~40℃で行うことができる。
現像液を用いた処理の後、さらに、リンスを行ってもよい。リンスは、現像液とは異なる溶剤で行うことが好ましい。例えば、組成物に含まれるものと同様の溶剤を用いてリンスすることができる。リンス時間は、5秒~1分が好ましい。
【0023】
<<第一の熱硬化性有機膜加熱工程>>
本実施形態においては、第一の熱硬化性有機膜1を加熱して第一の有機膜を形成する第一の熱硬化性有機膜加熱工程を含む(図3)。第一の熱硬化性有機膜加熱工程を行って、第一の熱硬化性有機膜が熱硬化して、第一の有機膜1aとなる。第一の熱硬化性有機膜がポリマー前駆体を含む場合、上記ポリマー前駆体の環化反応が進行し、第一の有機膜1aとなる。このとき、第一の有機膜1aにおける現像除去された空間7(パターン)は維持されている。
第一の熱硬化性有機膜の加熱温度は、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることがさらに好ましい。上限としては、250℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。
第一の熱硬化性有機膜の形成工程での周囲の圧力(P)は特に限定されないが、例えば、加圧せずに、1気圧以下(好ましくは、0.07MPa~1気圧)の圧力のもとで加熱を行う態様が挙げられる。
熱硬化後の第一の有機膜の厚さは、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。上限としては、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
<導電性層形成工程>
次いで、第一の有機膜1aの上に(好ましくは表面に接するように)導電性層(再配線層)4が形成される(図4)。
導電性層としては、特に限定はなく、既存の金属種を使用することができ、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロムおよび金が例示され、銅およびアルミニウムがより好ましく、銅がさらに好ましい。
【0025】
導電性層の形成方法は、特に限定なく、既存の方法を適用することができる。導電性層は、例えばPVD(Physical Vapor Deposition)などの手法を用いることができる。また、特開2007-157879号公報、特表2001-521288号公報、特開2004-214501号公報、特開2004-101850号公報に記載された方法を使用することができる。例えば、フォトリソグラフィ、リフトオフ、電解めっき、無電解めっき、エッチング、印刷、およびこれらを組み合わせた方法などが考えられる。より具体的には、スパッタリング、フォトリソグラフィおよびエッチングを組み合わせたパターニング方法、フォトリソグラフィと電解めっきを組み合わせたパターニング方法が挙げられる。
【0026】
<第二の有機膜形成工程>
<<第二の熱硬化性有機膜形成工程>>
本実施形態においては、第二の熱硬化性有機膜形成用組成物を、少なくとも上記導電性層上(通常は導電性層の表面)に適用して第二の熱硬化性有機膜を形成する第二の熱硬化性有機膜形成工程を含む。すなわち、導電性層(再配線層)4の上に第二の熱硬化性有機膜形成用組成物が適用され、第二の熱硬化性有機膜9が形成される(図5)。通常は、第二の熱硬化性有機膜形成用組成物が溶剤を含み、第二の熱硬化性有機膜形成用組成物を少なくとも導電性層4上に適用して第二の熱硬化性有機膜形成用組成物層を形成し、加熱して溶剤を除去して、第二の熱硬化性有機膜9を形成する。ここで、「少なくとも導電性層上に」とは、導電性層の上のみに第二の熱硬化性有機膜形成用組成物が形成されていてもよいし、導電性層と第一の有機膜の上の両方の上に第二の熱硬化性有機膜形成用組成物が形成されていてもよい。ただし、導電性層上の前面に適用される必要はなく、本発明の効果を奏する範囲で、少なくとも一部に適用されればよい意味である。通常は、導電性層と第一の有機膜の上の両方に第二の熱硬化性有機膜形成用組成物が形成される。第二の熱硬化性有機膜形成用組成物は、後述する感光性樹脂組成物を好適に用いることができ、第一の熱硬化性有機膜形成用組成物と同じであることが好ましい。第二の熱硬化性有機膜の製造方法の詳細は第一の熱硬化性有機膜の製造方法において述べた方法と同じである。
【0027】
<<第二の熱硬化性有機膜減圧工程>>
第二の熱硬化性有機膜を形成する際には、0.1MPa未満の圧力(P2-)に曝露する第二の熱硬化性有機膜減圧工程を、第二の熱硬化性有機膜形成工程と第二の熱硬化性有機膜加熱工程との間に有することが好ましい。ここで減圧することにより、塗布時などにかみ込んだ気泡(空気)を膨張させはじけさせることができ、硬化時のアウトガスの発生をより抑制できる。流動性のある硬化前の前駆体の状態ではじけさせることによって、面状をよりきれいにすることができる。減圧工程での周囲の圧力(P2-)は、10kPa以下であることが好ましく、5kPa以下であることがより好ましく、1kPa以下であることがさらに好ましい。下限としては、100Pa以上であることが実際的である。
【0028】
第二の熱硬化性有機膜の厚さは、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。上限としては、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0029】
<<第二の熱硬化性有機膜加熱工程>>
次いで、第二の熱硬化性有機膜を加熱する第二の熱硬化性有機膜加熱工程を含む。図6はこの加熱工程が完了し、導電性層4の上に第二の有機膜9aが形成された状態を示している。本実施形態においては、第二の有機膜9aの上方またはその領域内に、空間7b、7eが設けられている。このような空間(パターン)は上述した露光現像により形成することができる。さらに、電極配線位置71に、空間7eのような空間を設けることで、ここに電極を配置して、後述する図8に示すような再配線層24の構造を形成することができる。
本発明においては、0.1MPaを超える圧力(P)下で行う。これにより、後述する第一の有機膜1aと導電性層4との間の剥離を抑制ないし防止することができる。第二の熱硬化性有機膜の加熱工程における圧力(P)は、さらに0.12MPa以上であることが好ましく、0.13MPa以上であることがより好ましく、0.14MPa以上であることがさらに好ましく、0.15MPa以上であることが一層好ましく、0.17MPa以上であることがより一層好ましく、0.2MPa以上であることがさらに一層好ましく、0.25MPa以上であることがさらに好ましく、0.3MPa以上であることが特に好ましい。上限としては、1MPa以下であることが実際的である。
第二の熱硬化性有機膜の加熱温度は、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることがさらに好ましい。上限としては、250℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。本発明においては、この温度を低くできるため積層体(基板)の構造部材の損傷を効果的に防ぐことができる。また、製品の反りなどを防止できる観点からも好ましい。
【0030】
加熱工程における加熱開始時の温度は、10℃~150℃が好ましく、15℃~100℃がより好ましく、20℃~50℃がさらに好ましい。加熱開始時の温度は、最高加熱温度まで加熱する工程を開始する際の温度のことをいう。
加熱時間(最高加熱温度での加熱時間)は、10~240分であることが好ましく、20~180分であることがより好ましく、30~120分であることがさらに好ましい。
【0031】
加熱は段階的に行ってもよい。例として、50℃から100℃まで10℃/分で昇温し、100℃にて15分保持し、100℃から150℃まで5℃/分で昇温し、150℃にて30分保持する、といった前処理工程を行ってもよい。前処理工程としての加熱温度は100~150℃が好ましく、125~150℃であることがより好ましく、140~150℃であることがさらに好ましい。この前処理工程においては、米国特許9159547号公報に記載のように紫外線を照射しながら処理することも好ましい。このような前処理工程により膜の特性を向上させることが可能である。前処理工程は30秒間~1時間程度の短い時間で行うとよく、30秒~10分間がより好ましい。
さらに、加熱後冷却してもよく、この場合の冷却速度としては、5~10℃/分であることが好ましい。
【0032】
加熱工程は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを流す等により、低酸素濃度の雰囲気で行うことがポリマー前駆体の分解を防ぐ点で好ましい。酸素濃度は、200ppm(体積比)以下が好ましく、50ppm(体積比)以下がより好ましい。
【0033】
第二の有機膜の厚さは、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。上限としては、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0034】
<さらなる積層工程>
本実施形態の積層体の製造方法においては、第二の熱硬化性有機膜の上に、さらに、導電性層を形成する導電性層形成工程、および、少なくとも上記導電性層上に、第三の有機膜を形成する第三の有機膜形成工程を含んでいることが好ましい。さらに、導電性層形成工程と有機膜形成工程を繰り返し積層してもよい。有機膜の積層回数は2~10回が好ましく、2~7回がより好ましい。
上記導電性層形成工程および第三の有機膜形成工程の詳細は、上記導電性層形成工程および第二の有機膜形成工程と同様である。
【0035】
<剥離部分の抑制・防止>
図7は、この第二の熱硬化性有機膜を加熱する工程で、第一の熱硬化性有機膜1aと導電性層4との間に剥離部分99が生じた例を示している。これは、上記のように第二の熱硬化性有機膜を形成する際に加熱することで、先に形成された第一の有機膜1aからアウトガスが生じ、導電性層4により逃げ場がなくなることによって発生するものと考えられる。ただし、その要因によって本発明が限定して解釈されるものではない。
このような剥離は、上記の要因からも分かるとおり、導電性層が広範囲に広がっている方が生じやすい。逆に言うと、本発明の効果はこのような広面積の導電性層を適用する場合に、一層顕著に発揮される。かかる観点から、導電性層は相当程度の直径の円を含む面積を有することが好ましく、その円の直径として、20μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましく、150μm以上であることが一層好ましく、200μm以上であることがより一層好ましい。上限としては、1000μm以下であることが実際的である。
【0036】
<膜形成用組成物>
第一の熱硬化性有機膜形成用組成物、第二の熱硬化性有機膜形成用組成物、第三以降の熱硬化性有機膜形成用組成物の材料は特に限定されず、通常この種の膜の形成に用いられるものを好適に用いることができる。例えば、ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体の他に、エポキシ樹脂といった樹脂ないしその組成物が挙げられる。
【0037】
第一の熱硬化性有機膜形成用組成物は、分子量500以下の化合物(以下、低分子量化合物という)を含み、低分子量化合物の沸点が、第二の熱硬化性有機膜の加熱工程における最高温度を超えることが好ましい。ただし、このときの沸点は第二の熱硬化性有機膜の加熱工程における圧力における値である。低分子量化合物の分子量はさらに、450以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、350以下であることがさらに好ましい。下限値としては、100以上であることが実際的である。低分子量化合物の沸点は、0.1MPaでは、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。上限としては、300℃以下であることが実際的である。低分子量化合物は、詳細を後述する感光性樹脂組成物における架橋剤、開始剤、溶剤および環化反応時に脱離するポリマー側鎖に該当することが実際的である。この分子量が大きいと、揮発しにくいので、アウトガスのリスクが少なくなる。すなわち、低分子量の化合物が適用される形態ほど、本発明の効果がより顕著になる。
また、第二の熱硬化性有機膜形成用組成物および第三以降の熱硬化性有機膜形成用組成物も、分子量500以下の化合物を含んでいてもよい。
第一の熱硬化性有機膜形成用組成物と第二の熱硬化性有機膜形成用組成物は、同一の組成物であることが好ましい。ここで同一とみなす場合とは、組成物の成分組成において80質量%以上が一致していることが好ましく、90質量%以上が一致していることがより好ましく、95質量%以上が一致していることがさらに好ましい。第三以降の熱硬化性有機膜形成用組成物も第一の熱硬化性有機膜形成用組成物と同一の組成物であることが好ましい。
本発明で用いる、第一の熱硬化性有機膜形成用組成物、第二の熱硬化性有機膜形成用組成物および第三以降の熱硬化性有機膜形成用組成物は、パターニングすることができる感光性樹脂組成物であることが好ましい。以下では、熱硬化性有機膜形成用組成物を感光性樹脂組成物とする実施形態を中心に説明する。
【0038】
<感光性樹脂組成物>
<<ポリマー前駆体>>
本発明の製造方法に用いることができる感光性樹脂組成物は、ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体からなる群より選ばれる少なくとも1つのポリマー前駆体を含むことが好ましい。ポリマー前駆体としては、ポリイミド前駆体がより好ましく、下記式(1)で表される構成単位を含むポリイミド前駆体であることがさらに好ましい。
【0039】
<<<ポリイミド前駆体>>>
ポリイミド前駆体としては下記式(1)で表される構成単位を含むことが好ましい。このような構成とすることにより、より膜強度に優れた組成物が得られる。
【化1】
およびAは、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R111は、2価の有機基を表し、R115は、4価の有機基を表し、R113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
【0040】
およびAは、それぞれ独立に、酸素原子またはNHであり、酸素原子が好ましい。
【0041】
111は、2価の有機基を表す。2価の有機基としては、直鎖または分岐の脂肪族基、環状の脂肪族基、および芳香族基、芳香族複素環基、またはこれらの組み合わせからなる基が例示され、炭素数2~20の直鎖の脂肪族基、炭素数3~20の分岐の脂肪族基、炭素数3~20の環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、または、これらの組み合わせからなる基が好ましく、炭素数6~20の芳香族基がより好ましい。
111は、ジアミンから誘導されることが好ましい。ポリイミド前駆体の製造に用いられるジアミンとしては、直鎖または分岐の脂肪族、環状の脂肪族または芳香族ジアミンなどが挙げられる。ジアミンは、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
具体的には、ジアミンは、炭素数2~20の直鎖脂肪族基、炭素数3~20の分岐または環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、または、これらの組み合わせからなる基を含むものであることが好ましく、炭素数6~20の芳香族基を含むジアミンであることがより好ましい。芳香族基の例としては、下記が挙げられる。
【0042】
【化2】
【0043】
式中、Aは、単結合、または、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-NHCO-ならびに、これらの組み合わせから選択される基であることが好ましく、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-C(=O)-、-S-および-SO-から選択される基であることがより好ましく、-CH-、-O-、-S-、-SO-、-C(CF-、および、-C(CH-からなる群から選択される2価の基であることがさらに好ましい。
【0044】
ジアミンとしては、具体的には、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタンおよび1,6-ジアミノヘキサン;1,2-または1,3-ジアミノシクロペンタン、1,2-、1,3-または1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-、1,3-または1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス-(3-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルシクロヘキシルメタンおよびイソホロンジアミン;メタおよびパラフェニレンジアミン、ジアミノトルエン、4,4’-および3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-および3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-および3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-および3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-および3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル)、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’-ジアミノパラテルフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(2-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-10-ヒドロアントラセン、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルエーテル、1,4-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノアントラキノン、3,3-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-ジメチル-3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2-(3’,5’-ジアミノベンゾイルオキシ)エチルメタクリレート、2,4-および2,5-ジアミノクメン、2,5-ジメチル-パラフェニレンジアミン、アセトグアナミン、2,3,5,6-テトラメチル-パラフェニレンジアミン、2,4,6-トリメチル-メタフェニレンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、2,7-ジアミノフルオレン、2,5-ジアミノピリジン、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノ安息香酸のエステル、1,5-ジアミノナフタレン、ジアミノベンゾトリフルオライド、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)オクタフルオロブタン、1,5-ビス(4-アミノフェニル)デカフルオロペンタン、1,7-ビス(4-アミノフェニル)テトラデカフルオロヘプタン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(2-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、パラビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’-ビス(3-アミノ-5-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロトリジンおよび4,4’-ジアミノクアテルフェニルから選ばれる少なくとも1種のジアミンが挙げられる。
【0045】
また、下記に示すジアミン(DA-1)~(DA-18)も好ましい。
【0046】
【化3】
【0047】
また、少なくとも2つ以上のアルキレングリコール単位を主鎖にもつジアミンも好ましい例として挙げられる。好ましくは、エチレングリコール鎖、プロピレングリコール鎖のいずれか一方または両方を一分子中にあわせて2つ以上含むジアミン、より好ましくは芳香環を含まないジアミンである。具体例としては、ジェファーミン(登録商標)KH-511、ジェファーミン(登録商標)ED-600、ジェファーミン(登録商標)ED-900、ジェファーミン(登録商標)ED-2003、ジェファーミン(登録商標)EDR-148、ジェファーミン(登録商標)EDR-176、D-200、D-400、D-2000、D-4000(以上商品名、HUNTSMAN社製)、1-(2-(2-(2-アミノプロポキシ)エトキシ)プロポキシ)プロパン-2-アミン、1-(1-(1-(2-アミノプロポキシ)プロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-アミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
ジェファーミン(登録商標)KH-511、ジェファーミン(登録商標)ED-600、ジェファーミン(登録商標)ED-900、ジェファーミン(登録商標)ED-2003、ジェファーミン(登録商標)EDR-148、ジェファーミン(登録商標)EDR-176の構造を以下に示す。
【0048】
【化4】
【0049】
上記において、x、y、zは平均値である。
【0050】
111は、得られる硬化膜の柔軟性の観点から、-Ar-L-Ar-で表されることが好ましい。但し、Arは、それぞれ独立に、芳香族炭化水素基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が特に好ましい)であり、フェニレン基が好ましい。Lは、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-NHCO-ならびに、これらの組み合わせから選択される基を表す。好ましい範囲は、上述のAと同義である。
【0051】
111は、i線透過率の観点から下記式(51)または式(61)で表される2価の有機基であることが好ましい。特に、i線透過率、入手のし易さの観点から式(61)で表される2価の有機基であることがより好ましい。
【化5】
50~R57は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子または1価の有機基であり、R50~R57の少なくとも1つはフッ素原子、メチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、または、トリフルオロメチル基である。
50~R57の1価の有機基として、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)の無置換のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)のフッ化アルキル基等が挙げられる。
【化6】
58およびR59は、それぞれ独立にフッ素原子、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、または、トリフルオロメチル基である。
式(51)または(61)の構造を与えるジアミン化合物としては、ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(フルオロ)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル等が挙げられる。これらの1種を用いるか、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
式(1)におけるR115は、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、芳香環を含む基であることが好ましく、下記式(5)または式(6)で表される基がより好ましい。
【化7】
112は、上記式AR-9におけるAと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0053】
式(1)におけるR115が表す4価の有機基は、具体的には、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物基を除去した後に残存するテトラカルボン酸残基などが挙げられる。テトラカルボン酸二無水物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。テトラカルボン酸二無水物は、下記式(7)で表される化合物が好ましい。
【化8】
115は、4価の有機基を表す。R115は式(1)のR115と同義である。
【0054】
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ジフェニルヘキサフルオロプロパン-3,3,4,4-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,8,9,10-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ならびに、これらの炭素数1~6のアルキル誘導体および炭素数1~6のアルコキシ誘導体から選ばれる少なくとも1種が例示される。
【0055】
また、下記に示すテトラカルボン酸二無水物(DAA-1)~(DAA-5)も好ましい例として挙げられる。
【化9】
【0056】
式(1)におけるR113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。R113およびR114の少なくとも一方がラジカル重合性基を含むことが好ましく、両方がラジカル重合性基を含むことがより好ましい。ラジカル重合性基としては、ラジカルの作用により、架橋反応することが可能な基であって、好ましい例として、エチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、下記式(III)で表される基などが挙げられる。
【0057】
【化10】
【0058】
式(III)において、R200は、水素原子またはメチル基を表し、メチル基がより好ましい。
式(III)において、R201は、炭素数2~12のアルキレン基、-CHCH(OH)CH-または炭素数4~30の(ポリ)オキシアルキレン基(アルキレン基としては炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が特に好ましい;繰り返し数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が特に好ましい)を表す。なお、(ポリ)オキシアルキレン基とは、オキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基を意味する。
好適なR201の例は、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基、-CHCH(OH)CH-が挙げられ、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、-CHCH(OH)CH-がより好ましい。
特に好ましくは、R200がメチル基で、R201がエチレン基である。
【0059】
本発明におけるポリイミド前駆体の好ましい実施形態として、R113またはR114の1価の有機基として、1、2または3つの、好ましくは1つの酸基を有する、脂肪族基、芳香族基およびアリールアルキル基などが挙げられる。具体的には、酸基を有する炭素数6~20の芳香族基、酸基を有する炭素数7~25のアリールアルキル基が挙げられる。より具体的には、酸基を有するフェニル基および酸基を有するベンジル基が挙げられる。酸基は、ヒドロキシル基が好ましい。すなわち、R113またはR114はヒドロキシル基を有する基であることが好ましい。
113またはR114が表す1価の有機基としては、現像液の溶解度を向上させる置換基が好ましく用いられる。
113またはR114が、水素原子、2-ヒドロキシベンジル、3-ヒドロキシベンジルおよび4-ヒドロキシベンジルであることが、水性現像液に対する溶解性の点からは、より好ましい。
【0060】
有機溶剤への溶解度の観点からは、R113またはR114は、1価の有機基であることが好ましい。1価の有機基としては、直鎖または分岐のアルキル基、環状アルキル基、芳香族基を含むことが好ましく、芳香族基で置換されたアルキル基がより好ましい。
アルキル基の炭素数は1~30が好ましい(環状の場合は3以上)。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。直鎖または分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、1-エチルペンチル基、および2-エチルヘキシル基が挙げられる。環状のアルキル基は、単環の環状のアルキル基であってもよく、多環の環状のアルキル基であってもよい。単環の環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびシクロオクチル基が挙げられる。多環の環状のアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、カンフェニル基、デカヒドロナフチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、カンホロイル基、ジシクロヘキシル基およびピネニル基が挙げられる。中でも、高感度化との両立の観点から、シクロヘキシル基が最も好ましい。また、芳香族基で置換されたアルキル基としては、後述する芳香族基で置換された直鎖アルキル基が好ましい。
芳香族基としては、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、具体的には、置換または無置換のベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環等の芳香族炭化水素環を有する基が挙げられる。
芳香族複素環基としては、置換または無置換のピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環またはフェナジン環等の芳香族複素環を有する基が挙げられる。
【0061】
また、ポリイミド前駆体は、構成単位中にフッ素原子を有することも好ましい。ポリイミド前駆体中のフッ素原子含有量は10質量%以上が好ましく、20質量%以下がより好ましい。上限は特にないが50質量%以下が実際的である。
【0062】
また、基板との密着性を向上させる目的で、シロキサン構造を有する脂肪族基を式(1)で表される構成単位に共重合してもよい。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(パラアミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどが挙げられる。
【0063】
式(1)で表される構成単位は、式(1-A)で表される構成単位であることが好ましい。
【化11】
、A、R111、R113およびR114は、それぞれ、独立に、式(1)におけるA、A、R111、R113およびR114と同義であり、好ましい範囲も同様である。R112は、式(5)におけるR112と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0064】
ポリイミド前駆体において、式(1)で表される構成単位は1種であってもよいが、2種以上であってもよい。また、式(1)で表される構成単位の構造異性体を含んでいてもよい。また、ポリイミド前駆体は、上記の式(1)の構成単位のほかに、他の種類の構成単位も含んでもよい。
【0065】
本発明におけるポリイミド前駆体の一実施形態として、全構成単位の50モル%以上、さらには70モル%以上、特には90モル%以上が式(1)で表される構成単位であるポリイミド前駆体が例示される。上限としては100モル%以下が実際的である。
【0066】
ポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2000~500000であり、より好ましくは5000~100000であり、さらに好ましくは10000~50000である。また、数平均分子量(Mn)は、好ましくは800~250000であり、より好ましくは、2000~50000であり、さらに好ましくは、4000~25000である。
ポリイミド前駆体の分子量の分散度は、1.5~3.5が好ましく、2~3がより好ましい。
【0067】
ポリイミド前駆体は、ジカルボン酸またはジカルボン酸誘導体とジアミンを反応させて得られうる。好ましくは、ジカルボン酸またはジカルボン酸誘導体を、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化させた後、ジアミンと反応させて得られる。
ポリイミド前駆体の製造方法では、反応に際し、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
有機溶剤としては、原料に応じて適宜定めることができるが、ピリジン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、N-メチルピロリドンおよびN-エチルピロリドンが例示される。
【0068】
ポリイミド前駆体の製造に際し、固体を析出する工程を含んでいることが好ましい。具体的には、反応液中のポリイミド前駆体を、水中に沈殿させ、テトラヒドロフラン等のポリイミド前駆体が可溶な溶剤に溶解させることによって、固体析出することができる。
【0069】
<<<ポリベンゾオキサゾール前駆体>>>
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、下記式(2)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【化12】
121は、2価の有機基を表し、R122は、4価の有機基を表し、R123およびR124は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
【0070】
121は、2価の有機基を表す。2価の有機基としては、脂肪族基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6が特に好ましい)および芳香族基(炭素数6~22が好ましく、6~14がより好ましく、6~12が特に好ましい)の少なくとも一方を含む基が好ましい。R121を構成する芳香族基としては、上記式(1)のR111の例が挙げられる。上記脂肪族基としては、直鎖の脂肪族基が好ましい。R121は、4,4’-オキシジベンゾイルクロリドに由来することが好ましい。
式(2)において、R122は、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、上記式(1)におけるR115と同義であり、好ましい範囲も同様である。R122は、2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンに由来することが好ましい。
123およびR124は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、上記式(1)におけるR113およびR114と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0071】
ポリベンゾオキサゾール前駆体は上記の式(2)の構成単位のほかに、他の種類の構成単位も含んでよい。
閉環に伴う硬化膜の反りの発生を抑制できる点で、前駆体は、下記式(SL)で表されるジアミン残基を他の種類の構成単位として含むことが好ましい。
【0072】
【化13】
Zは、a構造とb構造を有し、R1sは水素原子または炭素数1~10の炭化水素基(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~3)であり、R2sは炭素数1~10の炭化水素基(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~3)であり、R3s、R4s、R5s、R6sのうち少なくとも1つは芳香族基(好ましくは炭素数6~22、より好ましくは炭素数6~18、特に好ましくは炭素数6~10)で、残りは水素原子または炭素数1~30(好ましくは炭素数1~18、より好ましくは炭素数1~12、特に好ましくは炭素数1~6)の有機基で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。a構造およびb構造の重合は、ブロック重合でもランダム重合でもよい。Z部分において、好ましくは、a構造は5~95モル%、b構造は95~5モル%であり、a+bは100モル%である。
【0073】
式(SL)において、好ましいZとしては、b構造中のR5sおよびR6sがフェニル基であるものが挙げられる。また、式(SL)で示される構造の分子量は、400~4,000であることが好ましく、500~3,000がより好ましい。分子量は、一般的に用いられるゲル浸透クロマトグラフィによって求めることができる。上記分子量を上記範囲とすることで、ポリベンゾオキサゾール前駆体の脱水閉環後の弾性率を下げ、反りを抑制できる効果と溶解性を向上させる効果を両立することができる。
【0074】
前駆体が、他の種類の構成単位として式(SL)で表されるジアミン残基を含む場合、アルカリ可溶性を向上させる点で、さらに、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物基の除去後に残存するテトラカルボン酸残基を構成単位として含むことが好ましい。このようなテトラカルボン酸残基の例としては、式(1)中のR115の例が挙げられる。
【0075】
ポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2000~500000であり、より好ましくは5000~100000であり、さらに好ましくは10000~50000である。また、数平均分子量(Mn)は、好ましくは800~250000であり、より好ましくは、2000~50000であり、さらに好ましくは、4000~25000である。
ポリベンゾオキサゾール前駆体の分子量の分散度は、1.5~3.5が好ましく、2~3がより好ましい。
【0076】
感光性樹脂組成物における、ポリマー前駆体の含有量は、組成物の全固形分に対し20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが一層好ましく、60質量%以上であることがより一層好ましく、70質量%以上であることがさらに一層好ましい。また、感光性樹脂組成物における、ポリマー前駆体の含有量は、組成物の全固形分に対し、99.5質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、98質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以下であることが一層好ましく、95質量%以下であることがより一層好ましい。
感光性樹脂組成物は、ポリマー前駆体を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0077】
<<溶剤>>
感光性樹脂組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤は、公知の溶剤を任意に使用できる。溶剤は有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、スルホキシド類、アミド類などの化合物が挙げられる。
エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチルおよび2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等が好適なものとして挙げられる。
エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が好適なものとして挙げられる。
ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等が好適なものとして挙げられる。
芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール、リモネン等が好適なものとして挙げられる。
スルホキシド類として、例えば、ジメチルスルホキシドが好適なものとして挙げられる。
アミド類として、N-メチル-2-ピロリドン、N -エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等が好適なものとして挙げられる。
【0078】
溶剤は、塗布面性状の改良などの観点から、2種以上を混合する形態も好ましい。
本発明では、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される1種の溶剤、または、2種以上で構成される混合溶剤が好ましい。ジメチルスルホキシドとγ-ブチロラクトンとの併用が特に好ましい。
【0079】
溶剤の含有量は、塗布性の観点から、感光性樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量とすることが好ましく、5~75質量%となる量にすることがより好ましく、10~70質量%となる量にすることがさらに好ましく、40~70質量%となるようにすることが一層好ましい。溶剤含有量は、所望の厚さと塗布方法によって調節すればよい。
溶剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。溶剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0080】
<<光活性化合物>>
本発明において、感光性樹脂組成物は光活性化合物を含むことが好ましい。光活性化合物の例としては光重合開始剤、光酸発生剤および光硬化促進剤が挙げられる。
【0081】
<<<光重合開始剤>>>
光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
本発明で用いることができる光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光ラジカル重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する光ラジカル重合開始剤が好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよい。
光ラジカル重合開始剤は、約300~800nm(好ましくは330~500nm)の範囲内で少なくとも約50のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶剤を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0082】
感光性樹脂組成物が光ラジカル重合開始剤を含むことにより、感光性樹脂組成物を半導体ウェハなどの基板に適用して感光性樹脂組成物層を形成した後、光を照射することで、ラジカルに起因する硬化が起こり、光照射部における溶解性を低下させることができる。このため、例えば、電極部のみをマスクするパターンを持つフォトマスクを介して感光性樹脂組成物層を露光することで、電極のパターンにしたがって、溶解性の異なる領域を簡便に作製できるという利点がある。
【0083】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を任意に使用できる。例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、トリハロメチル基を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体などが挙げられる。これらの詳細については、特開2016-027357号公報の段落0165~0182の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0084】
ケトン化合物としては、例えば、特開2015-087611号公報の段落0087に記載の化合物が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。市販品では、カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製)も好適に用いられる。
【0085】
光ラジカル重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、および、アシルホスフィン化合物も好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤も用いることができる。
ヒドロキシアセトフェノン系開始剤としては、IRGACURE 184(IRGACUREは登録商標)、DAROCUR 1173、IRGACURE 500、IRGACURE-2959、IRGACURE 127(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE907、IRGACURE 369、および、IRGACURE 379(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
アミノアセトフェノン系開始剤として、365nmまたは405nm等の波長光源に吸収極大波長がマッチングされた特開2009-191179号公報に記載の化合物も用いることができる。
アシルホスフィン系開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドなどが挙げられる。また、市販品であるIRGACURE-819やIRGACURE-TPO(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
メタロセン化合物としては、IRGACURE-784(BASF社製)などが例示される。
【0086】
光ラジカル重合開始剤として、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物を用いることにより、露光ラチチュードをより効果的に向上させることが可能になる。オキシム化合物は、露光ラチチュード(露光マージン)が広く、かつ、光硬化促進剤としても働くため、特に好ましい。
オキシム化合物の具体例としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物を用いることができる。
好ましいオキシム化合物としては、例えば、下記の構造の化合物や、3-ベンゾオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、および2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。感光性樹脂組成物においては、特に光ラジカル重合開始剤としてオキシム化合物(オキシム系の光重合開始剤)を用いることが好ましい。オキシム系の光重合開始剤は、分子内に >C=N-O-C(=O)-の連結基を有する。
【化14】
市販品ではIRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02、IRGACURE OXE 03、IRGACURE OXE 04(以上、BASF社製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-14052号公報に記載の光ラジカル重合開始剤2)も好適に用いられる。また、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI-831およびアデカアークルズNCI-930((株)ADEKA製)も用いることができる。また、DFI-091(ダイトーケミックス株式会社製)を用いることができる。
さらに、また、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることも可能である。そのようなオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載されている化合物、特表2014-500852号公報の段落0345に記載されている化合物24、36~40、特開2013-164471号公報の段落0101に記載されている化合物(C-3)などが挙げられる。
最も好ましいオキシム化合物としては、特開2007-269779号公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009-191061号公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物などが挙げられる。
【0087】
光ラジカル重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム塩化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物およびその誘導体、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体およびその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3-アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましい。
さらに好ましい光ラジカル重合開始剤は、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム塩化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物であり、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、ベンゾフェノン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が一層好ましく、メタロセン化合物またはオキシム化合物を用いるのがより一層好ましく、オキシム化合物がさらに一層好ましい。
また、光ラジカル重合開始剤は、ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)等のN,N’-テトラアルキル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等の芳香環と縮環したキノン類、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体などを用いることもできる。また、下記式(I)で表される化合物を用いることもできる。
【化15】
式(I)中、RI00は、炭素数1~20のアルキル基、1個以上の酸素原子によって中断された炭素数2~20のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシル基、フェニル基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシル基、ハロゲン原子、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素数2~12のアルケニル基、1個以上の酸素原子によって中断された炭素数2~18のアルキル基および炭素数1~4のアルキル基の少なくとも1つで置換されたフェニル基、またはビフェニルであり、RI01は、式(II)で表される基であるか、RI00と同じ基であり、RI02~RI04は各々独立に炭素数1~12のアルキル、炭素数1~12のアルコキシまたはハロゲンである。
【化16】
式中、RI05~RI07は、上記式(I)のRI02~RI04と同じである。
【0088】
また、光ラジカル重合開始剤は、国際公開第2015/125469号の段落0048~0055に記載の化合物を用いることもできる。
【0089】
光重合開始剤を含む場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量%であり、さらに好ましくは0.5~15質量%であり、一層好ましくは1.0~10質量%である。光重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。光重合開始剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0090】
<<<光酸発生剤>>>
感光性樹脂組成物は、光酸発生剤を含有していてもよい。光酸発生剤を含有することにより、露光部に酸が発生し、露光部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大するため、ポジ型感光性樹脂組成物として用いることができる。
光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。中でも優れた溶解抑止効果を発現し、高感度かつ低膜減りのポジ型組成物を得られるという点から、キノンジアジド化合物が好ましく用いられる。また、光酸発生剤を2種以上含有してもよい。これにより、露光部と未露光部の溶解速度の比をより大きくすることができ、高感度なポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
具体的には、国際公開第2017/110982号の段落0209~0215の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0091】
光酸発生剤の含有量は、ポリマー前駆体100質量部に対して、好ましくは3~40質量部である。光酸発生剤の含有量をこの範囲とすることにより、より高感度化を図ることができる。さらに増感剤などを必要に応じて含有してもよい。
光酸発生剤は、1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0092】
<<<光硬化促進剤>>>
感光性樹脂組成物は、光硬化促進剤を含んでいてもよい。本発明における光硬化促進剤とは、露光により塩基を発生するもの(光塩基発生剤)が好ましく、常温常圧の通常の条件下では活性を示さないが、外部刺激として電磁波の照射と加熱が行なわれると、塩基(塩基性物質)を発生するものが特に好ましい。露光により発生した塩基はポリマー前駆体を加熱により硬化させる際の触媒として働くため、好適に用いることができる。
本発明においては、光硬化促進剤として公知のものを用いることができる。例えば遷移金属化合物錯体や、アンモニウム塩などの構造を有するものや、アミジン部分がカルボン酸と塩を形成することで潜在化されたもののように、塩基成分が塩を形成することにより中和されたイオン性の化合物や、カルバメート誘導体、オキシムエステル誘導体、アシル化合物などのウレタン結合やオキシム結合などにより塩基成分が潜在化された非イオン性の化合物を挙げることができる。
【0093】
本発明に係る光硬化促進剤としては、例えば、特開2009-80452号公報および国際公開第2009/123122号で開示されたような桂皮酸アミド構造を有する光硬化促進剤、特開2006-189591号公報および特開2008-247747号公報で開示されたようなカルバメート構造を有する光硬化促進剤、特開2007-249013号公報および特開2008-003581号公報で開示されたようなオキシム構造、カルバモイルオキシム構造を有する光硬化促進剤等が挙げられるが、これらに限定されず、その他にも公知の光硬化促進剤の構造を用いることができる。
【0094】
その他、光硬化促進剤としては、特開2012-93746号公報の段落0185~0188、0199~0200および0202に記載の化合物、特開2013-194205号公報の段落0022~0069に記載の化合物、特開2013-204019号公報の段落0026~0074に記載の化合物、ならびに国際公開第2010/064631号の段落0052に記載の化合物が例として挙げられる。
【0095】
光硬化促進剤の市販品としては、WPBG-266、WPBG-300、WPGB-345、WPGB-140、WPBG-165、WPBG-027、PBG-018、WPGB-015、WPBG-041、WPGB-172、WPGB-174、WPBG-166、WPGB-158、WPGB-025、WPGB-168、WPGB-167およびWPBG-082(和光純薬工業社製)を用いることもできる。
【0096】
光硬化促進剤を用いる場合、組成物における光硬化促進剤の含有量は、組成物の全固形分に対し、0.1~50質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。上限は、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
光硬化促進剤は、1種または2種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0097】
<<熱ラジカル重合開始剤>>
感光性樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で熱ラジカル重合開始剤を含んでいてもよい。
熱ラジカル重合開始剤は、熱のエネルギーによってラジカルを発生し、重合性を有する化合物の重合反応を開始または促進させる化合物である。熱ラジカル重合開始剤を添加することによって、ポリマー前駆体の環化と共に、ポリマー前駆体の重合反応を進行させることもできるので、より高度な耐熱化が達成できることとなる。
熱ラジカル重合開始剤として、具体的には、特開2008-63554号公報の段落0074~0118に記載されている化合物が挙げられる。
【0098】
熱ラジカル重合開始剤を含む場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量%であり、さらに好ましくは5~15質量%である。熱ラジカル重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。熱ラジカル重合開始剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0099】
<<重合性化合物>>
<<<ラジカル重合性化合物>>>
感光性樹脂組成物はラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を有する化合物を用いることができる。ラジカル重合性基としては、ビニルフェニル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基およびアリル基などのエチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。ラジカル重合性基は、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0100】
ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基の数は、1個でもよく、2個以上でもよいが、ラジカル重合性化合物はラジカル重合性基を2個以上有することが好ましく、3個以上有することがより好ましい。上限は、15個以下が好ましく、10個以下がより好ましく、8個以下がさらに好ましい。
【0101】
ラジカル重合性化合物の分子量は、2000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、900以下がさらに好ましい。ラジカル重合性化合物の分子量の下限は、100以上が好ましい。
【0102】
感光性樹脂組成物は、現像性の観点から、重合性基を2個以上含む2官能以上のラジカル重合性化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、3官能以上のラジカル重合性化合物を少なくとも1種含むことがより好ましい。また、2官能のラジカル重合性化合物と3官能以上のラジカル重合性化合物との混合物であってもよい。なお、ラジカル重合性化合物の官能基数は、1分子中におけるラジカル重合性基の数を意味する。
【0103】
ラジカル重合性化合物の具体例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル、および不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類である。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等のビニルベンゼン誘導体、ビニルエーテル、アリルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0113~0122の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0104】
また、ラジカル重合性化合物は、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後、(メタ)アクリレート化した化合物、特公昭48-41708号公報、特公昭50-6034号公報、特開昭51-37193号各公報に記載されているようなウレタン(メタ)アクリレート類、特開昭48-64183号、特公昭49-43191号、特公昭52-30490号各公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートおよびこれらの混合物を挙げることができる。また、特開2008-292970号公報の段落0254~0257に記載の化合物も好適である。また、多官能カルボン酸にグリシジル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基とエチレン性不飽和結合を有する化合物を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレートなども挙げることができる。
また、上述以外の好ましいラジカル重合性化合物として、特開2010-160418号公報、特開2010-129825号公報、特許第4364216号公報等に記載される、フルオレン環を有し、エチレン性不飽和結合を有する基を2個以上有する化合物や、カルド樹脂も使用することが可能である。
さらに、その他の例としては、特公昭46-43946号公報、特公平1-40337号公報、特公平1-40336号公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2-25493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、特開昭61-22048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含む化合物を用いることもできる。さらに日本接着協会誌 vol.20、No.7、300~308ページ(1984年)に光重合性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0105】
上記のほか、特開2015-034964号公報の段落0048~0051に記載の化合物も好ましく用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0106】
また、特開平10-62986号公報において式(1)および式(2)としてその具体例と共に記載の、多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も、ラジカル重合性化合物として用いることができる。
【0107】
さらに、特開2015-187211号公報の段落0104~0131に記載の化合物も他のラジカル重合性化合物として用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0108】
ラジカル重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARADD-320;日本化薬(株)製、A-TMMT:新中村化学工業社製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A-DPH;新中村化学工業社製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール残基またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
【0109】
ラジカル重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR-494、エチレンオキシ鎖を4個有する2官能メタクリレートであるサートマー社製のSR-209、231、239、日本化薬(株)製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA-60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA-330、ウレタンオリゴマーUAS-10、UAB-140(日本製紙社製)、NKエステルM-40G、NKエステル4G、NKエステルM-9300、NKエステルA-9300、UA-7200(新中村化学工業社製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(共栄社化学社製)、ブレンマーPME400(日油(株)製)などが挙げられる。
【0110】
ラジカル重合性化合物としては、特公昭48-41708号公報、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。さらに、ラジカル重合性化合物として、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平1-105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する化合物を用いることもできる。
【0111】
ラジカル重合性化合物は、カルボキシル基、リン酸基等の酸基を有するラジカル重合性化合物であってもよい。酸基を有するラジカル重合性化合物は、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル重合性化合物がより好ましい。特に好ましくは、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル重合性化合物において、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールである化合物である。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、M-510、M-520などが挙げられる。
酸基を有するラジカル重合性化合物の好ましい酸価は、0.1~40mgKOH/gであり、特に好ましくは5~30mgKOH/gである。ラジカル重合性化合物の酸価が上記範囲であれば、製造や取扱性に優れ、さらには、現像性に優れる。また、重合性が良好である。
【0112】
感光性樹脂組成物は、硬化膜の弾性率制御に伴う反り抑制の観点から、ラジカル重合性化合物として、単官能ラジカル重合性化合物を好ましく用いることができる。単官能ラジカル重合性化合物としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物類等が好ましく用いられる。単官能ラジカル重合性化合物としては、露光前の揮発を抑制するため、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。
【0113】
<<<上述したラジカル重合性化合物以外の重合性化合物>>>
感光性樹脂組成物は、上述したラジカル重合性化合物以外の重合性化合物をさらに含むことができる。上述したラジカル重合性化合物以外の重合性化合物としては、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基またはアシルオキシメチル基を有する化合物;エポキシ化合物;オキセタン化合物;ベンゾオキサジン化合物が挙げられる。
【0114】
(ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基またはアシルオキシメチル基を有する化合物)
ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基またはアシルオキシメチル基を有する化合物としては、下記式(AM1)、(AM4)または(AM5)で示される化合物が好ましい。
【0115】
【化17】
(式中、tは、1~20の整数を示し、R104は炭素数1~200のt価の有機基を示し、R105は、-OR106または、-OCO-R107で示される基を示し、R106は、水素原子または炭素数1~10の有機基を示し、R107は、炭素数1~10の有機基を示す。)
【0116】
【化18】
(式中、R404は炭素数1~200の2価の有機基を示し、R405は、-OR406または、-OCO-R407で示される基を示し、R406は、水素原子または炭素数1~10の有機基を示し、R407は、炭素数1~10の有機基を示す。)
【0117】
【化19】
(式中uは3~8の整数を示し、R504は炭素数1~200のu価の有機基を示し、R505は、-OR506または、-OCO-R507で示される基を示し、R506は、水素原子または炭素数1~10の有機基を示し、R507は、炭素数1~10の有機基を示す。)
【0118】
式(AM4)で示される化合物の具体例としては、46DMOC、46DMOEP(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、DML-MBPC、DML-MBOC、DML-OCHP、DML-PCHP、DML-PC、DML-PTBP、DML-34X、DML-EP、DML-POP、dimethylolBisOC-P、DML-PFP、DML-PSBP、DML-MTrisPC(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、NIKALAC MX-290(商品名、(株)三和ケミカル製)、2,6-ジメトキシメチル-4-t-ブチルフェノール(2,6-dimethoxymethyl-4-t-butylphenol)、2,6-dimethoxymethyl-p-cresol、2,6-ジアセトキシメチル-p-クレソール(2,6-dimethoxymethyl-p-cresol、2,6-diacetoxymethyl-p-cresol)などが挙げられる。
【0119】
また、式(AM5)で示される化合物の具体例としては、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BP、TML-pp-BPF、TML-BPA、TMOM-BP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、TM-BIP-A(商品名、旭有機材工業(株)製)、NIKALAC MX-280、NIKALAC MX-270、NIKALAC MW-100LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられる。
【0120】
(エポキシ化合物(エポキシ基を有する化合物))
エポキシ化合物としては、一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物であることが好ましい。エポキシ基は、200℃以下で架橋反応し、かつ、架橋に由来する脱水反応が起こらないため膜収縮が起きにくい。このため、エポキシ化合物を含有することは、組成物の低温硬化および反りの抑制に効果的である。
【0121】
エポキシ化合物は、ポリエチレンオキサイド基を含有することが好ましい。これにより、より弾性率が低下し、また反りを抑制することができる。ポリエチレンオキサイド基は、エチレンオキサイドの構成単位数が2以上のものを意味し、構成単位数が2~15であることが好ましい。
【0122】
エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;プロピレングリコールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコール型エポキシ樹脂;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコール型エポキシ樹脂;ポリメチル(グリシジロキシプロピル)シロキサン等のエポキシ基含有シリコーンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。具体的には、エピクロン(登録商標)850-S、エピクロン(登録商標)HP-4032、エピクロン(登録商標)HP-7200、エピクロン(登録商標)HP-820、エピクロン(登録商標)HP-4700、エピクロン(登録商標)EXA-4710、エピクロン(登録商標)HP-4770、エピクロン(登録商標)EXA-859CRP、エピクロン(登録商標)EXA-1514、エピクロン(登録商標)EXA-4880、エピクロン(登録商標)EXA-4850-150、エピクロンEXA-4850-1000、エピクロン(登録商標)EXA-4816、エピクロン(登録商標)EXA-4822(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、リカレジン(登録商標)BEO-60E(商品名、新日本理化(株))、EP-4003S、EP-4000S(以上商品名、(株)ADEKA製)などが挙げられる。この中でも、ポリエチレンオキサイド基を含有するエポキシ樹脂が、反りの抑制および耐熱性に優れる点で好ましい。例えば、エピクロン(登録商標)EXA-4880、エピクロン(登録商標)EXA-4822、リカレジン(登録商標)BEO-60Eは、ポリエチレンオキサイド基を含有するので好ましい。
【0123】
(オキセタン化合物(オキセタニル基を有する化合物))
オキセタン化合物としては、一分子中にオキセタン環を2つ以上有する化合物、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルメチル)オキセタン、1,4-ベンゼンジカルボン酸-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル等を挙げることができる。具体的な例としては、東亞合成株式会社製のアロンオキセタンシリーズ(例えば、OXT-121、OXT-221、OXT-191、OXT-223)が好適に使用することができ、これらは単独で、あるいは2種以上混合してもよい。
【0124】
(ベンゾオキサジン化合物(ベンゾオキサゾリル基を有する化合物))
ベンゾオキサジン化合物は、開環付加反応に由来する架橋反応のため、硬化時に脱ガスが発生せず、さらに熱収縮を小さくして反りの発生が抑えられることから好ましい。
【0125】
ベンゾオキサジン化合物の好ましい例としては、B-a型ベンゾオキサジン、B-m型ベンゾオキサジン(以上、商品名、四国化成工業社製)、ポリヒドロキシスチレン樹脂のベンゾオキサジン付加物、フェノールノボラック型ジヒドロベンゾオキサジン化合物が挙げられる。これらは単独で用いるか、あるいは2種以上混合してもよい。
【0126】
重合性化合物を含有する場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0質量%超60質量%以下であることが好ましい。下限は5質量%以上がより好ましい。上限は、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
重合性化合物は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を併用する場合にはその合計量が上記の範囲となることが好ましい。
【0127】
<<マイグレーション抑制剤>>
感光性樹脂組成物は、さらにマイグレーション抑制剤を含むことが好ましい。マイグレーション抑制剤を含むことにより、導電性層(金属配線)由来の金属イオンが感光性樹脂組成物層内へ移動することを効果的に抑制可能となる。
マイグレーション抑制剤としては、特に制限はないが、複素環(ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、2H-ピラン環および6H-ピラン環、トリアジン環)を有する化合物、チオ尿素類およびメルカプト基を有する化合物、ヒンダードフェノール系化合物、サリチル酸誘導体系化合物、ヒドラジド誘導体系化合物が挙げられる。特に、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール等のトリアゾール系化合物、1H-テトラゾール、5-フェニルテトラゾール等のテトラゾール系化合物が好ましく使用できる。
【0128】
また、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉するイオントラップ剤を使用することもできる。
【0129】
その他のマイグレーション抑制剤としては、特開2013-15701号公報の段落0094に記載の防錆剤、特開2009-283711号公報の段落0073~0076に記載の化合物、特開2011-59656号公報の段落0052に記載の化合物、特開2012-194520号公報の段落0114、0116および0118に記載の化合物などを使用することができる。
【0130】
マイグレーション抑制剤の具体例としては、下記化合物を挙げることができる。
【化20】
【0131】
感光性樹脂組成物がマイグレーション抑制剤を有する場合、マイグレーション抑制剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.05~2.0質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることがさらに好ましい。
マイグレーション抑制剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。マイグレーション抑制剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0132】
<<重合禁止剤>>
感光性樹脂組成物は、重合禁止剤を含むことが好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、4-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、p-tert-ブチルカテコール、1,4-ベンゾキノン、ジフェニル-p-ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、フェノチアジン、N-ニトロソジフェニルアミン、N-フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、2-ニトロソ-5-(N-エチル-N-スルホプロピルアミノ)フェノール、N-ニトロソ-N-(1-ナフチル)ヒドロキシアミンアンモニウム塩、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-tert-ブチル)フェニルメタンなどが好適に用いられる。また、特開2015-127817号公報の段落0060に記載の重合禁止剤、および、国際公開第2015/125469号の段落0031~0046に記載の化合物を用いることもできる。
また、下記化合物を用いることができる(Meはメチル基である)。
【化21】
感光性樹脂組成物が重合禁止剤を有する場合、重合禁止剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~5質量%であることが好ましく、0.02~3質量%であることがより好ましく、0.05~2.5質量%であることがさらに好ましい。
重合禁止剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。重合禁止剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0133】
<<金属接着性改良剤>>
感光性樹脂組成物は、電極や配線などに用いられる金属材料との接着性を向上させるための金属接着性改良剤を含んでいることが好ましい。金属接着性改良剤としては、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0134】
シランカップリング剤の例としては、特開2014-191002号公報の段落0062~0073に記載の化合物、国際公開第2011/080992号の段落0063~0071に記載の化合物、特開2014-191252号公報の段落0060~0061に記載の化合物、特開2014-41264号公報の段落0045~0052に記載の化合物、国際公開第2014/097594号の段落0055に記載の化合物が挙げられる。また、特開2011-128358号公報の段落0050~0058に記載のように異なる2種以上のシランカップリング剤を用いることも好ましい。また、シランカップリング剤は、下記化合物を用いることも好ましい。以下の式中、Etはエチル基を表す。
【化22】
【0135】
また、金属接着性改良剤は、特開2014-186186号公報の段落0046~0049に記載の化合物、特開2013-072935号公報の段落0032~0043に記載のスルフィド系化合物を用いることもできる。
【0136】
金属接着性改良剤の含有量はポリマー前駆体100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部であり、より好ましくは0.5~15質量部の範囲であり、さらに好ましくは0.5~5質量部の範囲である。上記下限値以上とすることで硬化工程後の硬化膜と導電性層との接着性が良好となり、上記上限値以下とすることで硬化工程後の硬化膜の耐熱性、機械特性が良好となる。金属接着性改良剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上用いる場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0137】
<<熱硬化促進剤>>
感光性樹脂組成物は、熱硬化促進剤を含んでいてもよい。熱光硬化促進剤は、熱により塩基を発生するもの(熱塩基発生剤)であることが好ましい。
<<<熱硬化促進剤>>>
熱硬化促進剤は第四級アンモニウムカチオンとカルボン酸アニオンとの塩が好ましい。この第四級アンモニウムカチオンは、下記式(Y1-1)~式(Y1-4)のいずれかで表されることが好ましい。
【化23】
【0138】
Y1は、n価(nは、1~12の整数)の有機基を表し、n価の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基としては、アルカンを含むn価の基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アルケンを含むn価の基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、芳香族炭化水素を含むn価の基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。RY1は中でも芳香族炭化水素基であることが好ましい。RY1は本発明の効果を損ねない範囲で、別途記載する置換基Tを有していてもよい。
Y2~RY5は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基(炭素数1~36が好ましく、1~24がより好ましく、1~12がさらに好ましい)を表し、アルキル基(炭素数1~36が好ましく、1~24がより好ましく、1~23がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~36が好ましく、2~24がより好ましく、2~23がさらに好ましい)、アルキニル基(炭素数1~36が好ましく、1~24がより好ましく、1~23がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)が好ましい。このアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、環状でも鎖状でもよく、鎖状の場合は、直鎖状でも分岐状でもよく、別途記載の置換基Tを有していてもよい。
Y6はアルキル基(炭素数1~36が好ましく、2~24がより好ましく、4~18がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~36が好ましく、2~24がより好ましく、4~18がさらに好ましい)、アルキニル基(炭素数2~36が好ましく、2~24がより好ましく、4~18がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)である。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基は環状でも鎖状でもよく、鎖状の場合は、直鎖状でも分岐状でもよい。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基には、基の途中に、ヘテロ原子を含む連結基(例えば連結基Lのうちヘテロ原子を有するもの)が介在していてもよい。例えば、オリゴアルキレン基(構成単位中の炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。繰り返し数は2~100が好ましく、2~60がより好ましく、2~30がさらに好ましい)が挙げられる。
は、1~12の整数を表し、1~6の整数がより好ましく、1~3の整数がさらに好ましい。
は1~12の整数を表し、1~6の整数が好ましく、1~3の整数がさらに好ましい。
Y2~RY6はそれぞれその2つ以上が互いに結合して環を形成してもよい。
【0139】
Y7~RY16はRと同義である(Rは置換基Tを有していてもよい)。ただし、RY7~RY9がすべて水素原子であることはない。式(Y1-2)において、RY7およびRY8はカルボキシアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい;カルボキシル基の数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が好ましい。RY9は芳香族基が好ましく、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)が好ましい。あるいは、芳香族基が置換したアルコキシカルボニル基が好ましい(アルコキシル基は炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。芳香族基は炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~14がさらに好ましい)。式(Y1-3)において、RY11およびRY13は水素原子であることが好ましい。RY14およびRY15は2つが組み合わさって、=C(NR の形の置換基になっていてもよい( = は二重結合で窒素原子に結合することを意味する)。式(Y1-4)において、RY13は水素原子であることが好ましく、RY10、RY11、RY12、RY16はアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)であることが好ましい。このとき、RY11とRY16、RY10とRY12が結合して環を形成しビシクロ化合物となっていることが好ましい。具体的には、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセンが挙げられる。
【0140】
本実施形態において、上記式(Y1-1)、式(Y1-3)および式(Y1-4)の第四級アンモニウムカチオンと対になるカルボン酸アニオンは、下記式(X1)で表されることが好ましい。
【化24】
式(X1)において、EWGは、電子求引性基を表す。
【0141】
本実施形態において電子求引性基とは、ハメットの置換基定数σmが正の値を示すものを意味する。ここでσmは、都野雄甫総説、有機合成化学協会誌第23巻第8号(1965)p.631-642に詳しく説明されている。なお、本実施形態における電子求引性基は、上記文献に記載された置換基に限定されるものではない。
σmが正の値を示す置換基の例としては、CF基(σm=0.43)、CFCO基(σm=0.63)、HC≡C基(σm=0.21)、CH=CH基(σm=0.06)、Ac基(σm=0.38)、MeOCO基(σm=0.37)、MeCOCH=CH基(σm=0.21)、PhCO基(σm=0.34)、HNCOCH基(σm=0.06)などが挙げられる。なお、Meはメチル基を表し、Acはアセチル基を表し、Phはフェニル基を表す(以下、同じ)。
【0142】
EWGは、下記式(EWG-1)~(EWG-6)で表される基であることが好ましい。
【化25】
式(EWG-1)~(EWG-6)中、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基を表す。Arは芳香族基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)を表す。Rx1~Rx3がアルキル基、アルケニル基、アリール基のとき、環を形成してもよく、環を形成する際にはその途中に連結基Lを介在していてもよい。これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基、ならびに、Arは、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基Tを有していてもよい。なかでも、Arは特にカルボキシル基(好ましくは1~3個)を有することが好ましい。*は結合位置を表す。
Npは1~6の整数を表し、1~3の整数が好ましく、1または2がより好ましい。
【0143】
本発明における熱硬化促進剤の分子量は、好ましくは、100以上2000未満であり、より好ましくは200~1000である。
本発明における熱硬化促進剤の具体例としては、後述する実施例で用いる化合物の他、国際公開第2015/199219号に記載の40℃以上に加熱すると塩基を発生する酸性化合物およびpKa1が0~4のアニオンとアンモニウムカチオンを有するアンモニウム塩が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0144】
熱硬化促進剤を用いる場合、組成物における熱硬化促進剤の含有量は、組成物の全固形分に対し、0.01~50質量%であることが好ましい。下限は、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。上限は、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
熱硬化促進剤は、1種または2種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。また、感光性樹脂組成物は、熱硬化促進剤を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、組成物の全固形分に対し、0.01質量%未満であることをいい、0.005質量%未満であることがより好ましい。
【0145】
置換基Tとしては、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6が特に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~12がより好ましく、2~6が特に好ましい)、アルコキシル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、ヘテロアリール基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい;ヘテロ原子としては例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、ヒドロキシル基、アミノ基(炭素数0~24が好ましく、0~12がより好ましく、0~6が特に好ましい)、チオール基、カルボキシル基、アシル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3が特に好ましい)、アシルオキシ基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3が特に好ましい)、アリーロイル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11が特に好ましい)、アリーロイルオキシ基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11が特に好ましい)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、オキソ基(=O)、イミノ基(=NR)、アルキリデン基(=C(R)などが挙げられる。置換基Tのアルキレン鎖にはヘテロ原子が介在していてもよい。置換基Tが有するアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基には、さらにその他の置換基が置換していてもよい。
は水素原子または有機基である。有機基としては、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、またはアリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)が好ましい。
【0146】
連結基Lは、アルキレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アルケニレン基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましい)、アリーレン基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、ヘテロアリーレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい;ヘテロ原子としては例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる)、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、-NR-、またはその組合せにかかる基である。連結基Lを構成する原子の数は水素原子を除いて、1~24であることが好ましく、1~12がより好ましく、1~6が特に好ましい。連結基の連結する原子数は10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。下限としては、1以上である。
【0147】
<<その他の添加剤>>
感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、各種の添加物、例えば、増感色素、連鎖移動剤、界面活性剤、高級脂肪酸誘導体、無機粒子、硬化剤、硬化触媒、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加剤を配合する場合、その合計配合量は組成物の固形分の3質量%以下とすることが好ましい。
【0148】
<<<熱酸発生剤>>>
感光性樹脂組成物は、熱酸発生剤を含んでいてもよい。熱酸発生剤は、加熱により酸を発生し、ポリマー前駆体の環化を促進し硬化膜の機械特性をより向上させる。熱酸発生剤は、特開2013-167742号公報の段落0059に記載の化合物などが挙げられる。
【0149】
熱酸発生剤の含有量は、ポリマー前駆体100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。熱酸発生剤を0.01質量部以上含有することで、架橋反応およびポリマー前駆体の環化が促進されるため、硬化膜の機械特性および耐薬品性をより向上させることができる。また、熱酸発生剤の含有量は、硬化膜の電気絶縁性の観点から、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
熱酸発生剤は、1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0150】
<<<増感色素>>>
感光性樹脂組成物は、増感色素を含んでいてもよい。増感色素は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感色素は、熱硬化促進剤、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などと接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより、熱硬化促進剤、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤は化学変化を起こして分解し、ラジカル、酸あるいは塩基を生成する。増感色素の詳細については、特開2016-027357号公報の段落0161~0163の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0151】
感光性樹脂組成物が増感色素を含む場合、増感色素の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対し、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~15質量%であることがより好ましく、0.5~10質量%であることがさらに好ましい。増感色素は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0152】
<<<連鎖移動剤>>>
感光性樹脂組成物は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、例えば高分子辞典第三版(高分子学会編、2005年)683-684頁に定義されている。連鎖移動剤としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、およびGeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカルに水素を供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。特に、チオール化合物(例えば、2-メルカプトベンズイミダゾール類、2-メルカプトベンズチアゾール類、2-メルカプトベンズオキサゾール類、3-メルカプトトリアゾール類、5-メルカプトテトラゾール類等)を好ましく用いることができる。
【0153】
感光性樹脂組成物が連鎖移動剤を有する場合、連鎖移動剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対し、0.01~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、1~5質量%であることがさらに好ましい。連鎖移動剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。連鎖移動剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0154】
<<<界面活性剤>>>
感光性樹脂組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種類の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種類の界面活性剤を使用できる。また、下記界面活性剤も好ましい。
【化26】
【0155】
感光性樹脂組成物が界面活性剤を有する場合、界面活性剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.005~1.0質量%である。界面活性剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。界面活性剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0156】
<<<高級脂肪酸誘導体>>>
感光性樹脂組成物は、酸素に起因する重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体を添加して、塗布後の乾燥の過程で組成物の表面に偏在させてもよい。
感光性樹脂組成物が高級脂肪酸誘導体を有する場合、高級脂肪酸誘導体の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。高級脂肪酸誘導体は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。高級脂肪酸誘導体が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0157】
<<その他の含有物質についての制限>>
感光性樹脂組成物の水分含有量は、塗布面性状の観点から、5質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましく、0.6質量%未満がさらに好ましい。
【0158】
感光性樹脂組成物の金属含有量は、絶縁性の観点から、5質量ppm(parts per million)未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満がさらに好ましい。金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、クロム、ニッケルなどが挙げられる。金属を複数含む場合は、これらの金属の合計が上記範囲であることが好ましい。
また、感光性樹脂組成物に意図せずに含まれる金属不純物を低減する方法としては、感光性樹脂組成物を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、感光性樹脂組成物を構成する原料に対してフィルターろ過を行う、装置内をポリテトラフロロエチレン等でライニングしてコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。
【0159】
感光性樹脂組成物は、半導体材料としての用途を考慮すると、ハロゲン原子の含有量が、配線腐食性の観点から、500質量ppm未満が好ましく、300質量ppm未満がより好ましく、200質量ppm未満がさらに好ましい。中でも、ハロゲンイオンの状態で存在するものは、5質量ppm未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満がさらに好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子および臭素原子が挙げられる。塩素原子および臭素原子、あるいは塩素イオンおよび臭素イオンの合計がそれぞれ上記範囲であることが好ましい。
【0160】
感光性樹脂組成物の収納容器としては従来公知の収納容器を用いることができる。また、収納容器としては、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0161】
<組成物の調製>
感光性樹脂組成物は、上記各成分を混合して調製することができる。混合方法は特に限定はなく、従来公知の方法で行うことができる。
また、組成物中のゴミや微粒子等の異物を除去する目的で、フィルターを用いたろ過を行うことが好ましい。フィルター孔径は、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。フィルターの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルターろ過工程では、複数種のフィルターを直列または並列に接続して用いてもよい。複数種のフィルターを使用する場合は、孔径または材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回ろ過してもよい。複数回ろ過する場合は、循環ろ過であってもよい。また、加圧してろ過を行ってもよい。加圧してろ過を行う場合、加圧する圧力は0.05MPa以上0.3MPa以下が好ましい。
フィルターを用いたろ過の他、吸着材を用いた不純物の除去処理を行ってもよい。フィルターろ過と吸着材を用いた不純物除去処理とを組み合わせてもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができる。例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材が挙げられる。
【0162】
本発明の積層体の製造方法の利用例の一例について、図8を参酌して説明する。
図8は、2つの有機膜に導電性層が介在する積層体の一例であって、ウェハレベルパッケージにおける再配線層を介したバンプの部分を拡大した断面図である。同図に示したとおり、本パッケージング技術においては、基板23上の回路配線61の上に再配線層24を形成する。そのために、通常、パッシベーション22上に第一の有機膜21を設ける。さらに再配線層24の上には第二の有機膜29を配設し、そこに電極62を設ける。これにより、回路配線位置27aとは異なる位置27bにはんだバンプ20を配設することができる。この第一の有機膜21および第二の有機膜29には、絶縁性が高く、耐熱性を有し、かつ成形性に優れることが要求される。しばしば、これらの要求を満たすポリイミドやポリベンゾオキサゾールなどの熱硬化性樹脂が採用される。これらの熱硬化性樹脂は、通常、溶剤、添加剤等の低分子や熱分解性基を有する樹脂を含むため、硬化する際に、硬化反応に伴ってガス(アウトガス)が生成する場合があった。そして、このアウトガスが導電性層(導電配線)から形成される再配線層24と有機膜の間に気泡となって残り、第一の有機膜と導電性層の剥離を引き起こしていた(図7、剥離部分99)。本発明の製造方法では、このアウトガスの生成を抑制できるため、半導体デバイス、特に、再配線用半導体デバイスとして好ましく用いられる。
【0163】
本発明の製造方法を用いた半導体デバイスの具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0213~0218の記載および図2の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の製造方法で製造される積層体は、ウェハレベルのファンアウトパッケージングまたはファンインパッケージングであることが好ましい。ファンアウト(Fan-out)パッケージングは、仮支持体の上に、チップを形成し、樹脂でモールディングした後、仮支持体を剥がし、樹脂ウェハに搭載する。その後、再配線層等を形成するものであることが好ましい。モールディングには、エポキシ樹脂が用いられることが多いが、エポキシ樹脂は反りやすい。したがって、より低温でキュアできる本発明の製造方法はより高品質の製品を提供できる点で好ましい。ファンイン(Fan-In)パッケージングは、多層配線がシリコン基板中に形成されており、その上に、再配線する態様であることが好ましい。
【実施例
【0164】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。「部」、「%」は特に述べない限り、質量基準である。
【0165】
<ポリマー前駆体の合成(樹脂)>
<合成例1>
[4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよびジアミン(DA-7)からのポリイミド前駆体A-1の合成]
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物と、18.0gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、23.9gのピリジンと、250mlのジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)とを混合し、60℃の温度で4時間撹拌して、4,4’-オキシジフタル酸二無水物と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとのジエステルを製造した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±5℃に保ちながら17.0gのSOClを60分かけて加えた。50mlのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mlのN-メチルピロリドンに38.0gのヒドロキシル基含有ジアミン(DA-7)を溶解させた溶液を-10±5℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を2時間撹拌した。次いで、6リットルの水の中でポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。固体であるポリイミド前駆体を濾別してテトラヒドロフラン380gに溶解させた。得られた溶液を6リットルの水に加えてポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体を再び濾別して、減圧下で、45℃で2日間乾燥した。このポリイミド前駆体A-1は、重量平均分子量28,800、数平均分子量9,200であった。また、分子量1,000以下の成分の比率は0.3質量%であった。分子量1,000以下の成分のうち、4,4’-オキシジフタル酸は検出限界以下であり、ジアミン(DA-7)は0.04質量%であった。
ジアミン(DA-7)
【化27】
【0166】
<合成例2>
[ピロメリット酸二無水物、2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよび4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルからのポリイミド前駆体A-2の合成]
14.9gのピロメリット酸二無水物と、18.0gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、23.9gのピリジンと、250mlのジグリムとを混合し、60℃の温度で4時間撹拌して、ピロメリット酸二無水物と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとのジエステルを製造した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±5℃に保ちながら17.0gのSOClを60分かけて加えた。50mlのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mlのN-メチルピロリドンに20.1gの4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを溶解させた溶液を-10±5℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を2時間撹拌した。次いで、6リットルの水の中でポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。固体であるポリイミド前駆体を濾別してテトラヒドロフラン380gに溶解させた。得られた溶液を6リットルの水に加えてポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体を再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥した。このポリイミド前駆体A-2は、重量平均分子量25,400、数平均分子量8,100であった。また、分子量1,000以下の成分の比率は0.4質量%であり、ピロメリット酸は0.04質量%であった。分子量1,000以下の成分のうち、4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルは0.05質量%であった。
【0167】
<合成例3>
[ピロメリット酸二無水物、2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよび4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルからのポリイミド前駆体A-3の合成]
14.9gのピロメリット酸二無水物と、18.0gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、23.9gのピリジンと、250mlのジグリムとを混合し、60℃の温度で4時間撹拌して、ピロメリット酸二無水物と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとのジエステルを製造した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±5℃に保ちながら17.0gのSOClを60分かけて加えた。50mlのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mlのN-メチルピロリドンに20.1gの4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを溶解させた溶液を-10±5℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を2時間撹拌した。次いで、10リットルの水の中でポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。固体であるポリイミド前駆体を濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥した。このポリイミド前駆体A-3は、重量平均分子量25,200、数平均分子量800であった。また、分子量1,000以下の成分の比率は0.7質量%であった。分子量1,000以下の成分のうち、ピロメリット酸は0.05質量%であり、4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルは0.12質量%であった。
【0168】
<合成例4>
[4,4’-カルボニル二安息香酸、2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、メタクリル酸クロリドからのポリベンゾオキサゾール前駆体A-4の合成]
18.5gの4,4’-カルボニル二安息香酸と、250mlのN-メチルピロリドンとを混合した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±5℃に保ちながら17.0gのSOClを60分かけて加えた。次に、100mlのN-メチルピロリドンに21.0gの2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを溶解させた溶液を-10±5℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を2時間撹拌した。次いで、得られた反応液に氷冷下で9.3gのトリエチルアミンを加えて、12.0gのメタクリル酸クロリドを滴下し、さらに氷冷下で2時間撹拌してポリベンゾオキサゾール前駆体を含む溶液を得た。次いで、6リットルの水の中でポリベンゾオキサゾール前駆体を沈殿させ、水-ポリベンゾオキサゾール前駆体混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。固体であるポリベンゾオキサゾール前駆体を濾別してテトラヒドロフラン380gに溶解させた。得られた溶液を6リットルの水に加えてポリベンゾオキサゾール前駆体を沈殿させ、水-ポリベンゾオキサゾール前駆体混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリベンゾオキサゾール前駆体の固体を再び濾別して、減圧下で、45℃で3日間乾燥した。このポリベンゾオキサゾール前駆体A-4は、重量平均分子量28,900、数平均分子量8,800であった。また、分子量1,000以下の成分の比率は0.3質量%であった。分子量1,000以下の成分のうち、4,4’-カルボニル二安息香酸は0.01質量%であり、2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンは0.02質量%であった。
【0169】
<感光性樹脂組成物の調製>
表1に記載の成分を混合し、均一な溶液として、感光性樹脂組成物の塗布液を調製した。得られた感光性樹脂組成物の塗布液を、細孔の幅が0.8μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターを通して加圧濾過した。
【0170】
<積層体の製造>
シリコンウェハ上に表1、2に記載の各感光性樹脂組成物(熱硬化性有機膜形成用組成物)をスピンコート法により層状に適用して、第一の熱硬化性有機膜を形成した。得られた第一の熱硬化性有機膜を適用したシリコンウェハを窒素オーブン上で下記表に記載の条件で加熱し、10μmの厚さの第一の有機膜を得た。セミアディティブ法で銅めっき配線を形成することにより、第一の有機膜上に大小2通りの円盤状導電性層を形成した(導電性層の面積:Φ200μmのパッド)。導電性層の厚さは6μmであった。導電性層を表面に有する第一の有機膜上に表1、2に記載の各感光性樹脂組成物をスピンコート法により層状に適用して、第二の熱硬化性有機膜を形成した。減圧工程を行なう実施例については、下記表に記載の圧力条件で10分間減圧を行なった。得られた第二の熱硬化性有機膜を適用したシリコンウェハを窒素オーブン上で下記表に記載の条件で加熱し、10μmの厚さの第二の有機膜を得た。第三膜の形成を行なう実施例については、第二の有機膜の形成工程と同様の手法および組成物で第二の有機膜上に第三の有機膜を形成した。
【0171】
<評価>
<<剥がれ評価>>
第二の有機膜の硬化後に、積層体を断面方向に切断した。切断した断面における導電性層の剥離の有無を顕微鏡にて確認した。3つの断面を切断して、そのうち最も剥離の大きい断面で、導電性層の一部でもアウトガスにより剥離して膨らみが発生している場合は剥がれがあるものとした。
A:全数剥がれなし
B:大面積の導電性層に一部剥離発生
C:大面積の導電性層が全剥離したが小面積の導電性層は剥離なし
D:大面積の導電性層が全剥離し、小面積の導電性層が一部剥離
E:大面積の導電性層が全剥離し、小面積の導電性層も全剥離
【0172】
<<アウトガス評価>>
上記の各積層体の製造において、第二の熱硬化性有機膜の加熱時にウェハ直上のガスを回収し、島津製作所のガスクロマトグラフィでアウトガス成分の定量を行なった。
A:塗布面積1cm当たりのアウトガス量が0.1mg未満であった
B:塗布面積1cm当たりのアウトガス量が0.1mg以上であった0.2mg未満であった
C:塗布面積1cm当たりのアウトガス量が0.2mg以上であった
【0173】
【表1】
【表2】
<表の注釈>
配合量は質量部
第一の熱硬化性有機膜加熱条件:N雰囲気、加熱保持時間2時間、昇温速度は5℃/minで設定温度に達したら加熱保持時間その温度を保ち、5℃/minで降温する
第二の熱硬化性有機膜加熱条件:(第一の加熱条件と同じ)N雰囲気、加熱保持時間2時間、昇温速度は5℃/minで設定温度に達したら加熱保持時間その温度を保ち、5℃/minで降温する
第二の熱硬化性有機膜減圧工程:10kPa
第三の有機膜の形成
あり:第三の有機膜の形成を第二の有機膜と同一の条件で行ったことを示している。
なし:第三の有機膜を形成していないことを意味する。
【0174】
<材料>
(A)樹脂
A-1~A-4:合成例1~4で製造した樹脂
A-5:エポキシ樹脂(DIC社製、エピクロン HP-4710)
【0175】
(B)重合性化合物
【0176】
B-1:NKエステル M-40G (新中村化学工業(株)製 単官能メタクリレート 下記構造)、分子量 262
【化28】
【0177】
B-2:NKエステル 4G (新中村化学工業(株)製 2官能メタクリレート 下記構造)、分子量 330
【化29】
【0178】
(C)光重合開始剤
C-1:IRGACURE OXE-01(BASF製)、分子量 446
【化30】
【0179】
C-2:特表2014-500852号公報の段落番号0345に記載されている化合物40、分子量 765
【化31】
【0180】
(F)溶剤
F-1:γ-ブチロラクトン、分子量 86
F-2:n-メチルピロリドン(NMP)、分子量 99
【0181】
上記表の結果から明らかなとおり、本発明の製造方法により、0.1MPaを超える圧力の下で加熱したものでは(実施例1~18)、導電性層と第一の熱硬化性有機膜との間に剥離のない良好な積層体が得られた。一方、第二の熱硬化性有機膜を0.1MPaの圧力の下で加熱したものでは(比較例1)、導電性層と第一の熱硬化性有機膜との間に剥離が見られ劣る結果となった。また、併せて測定したアウトガス(脱ガス)の測定の結果でも、実施例と比較例との間には、上記と同様の優劣が確認された。
【0182】
実施例1~18で用いた感光性樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)および積層体の製造条件で、ファンアウトウェハレベルパーッケージと、ファンインウェハレベルパーッケージの作成を行なった。いずれも、品質に問題のないデバイスを製造することができた。
【符号の説明】
【0183】
1 第一の熱硬化性有機膜
1a 第一の有機膜
2 パッシベーション
3 基板
4 導電性層(再配線層)
5 回路配線
7、7a、7b、7e 空間(パターン)
9 第二の熱硬化性有機膜
9a 第二の有機膜
10 支持体
20 はんだバンプ
21、29 有機膜
22 パッシベーション
23 基板
24 導電性層(再配線層)
61 回路配線
99 剥離部分
100 積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9