(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】組成物および膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 1/00 20060101AFI20221005BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20221005BHJP
C01B 33/145 20060101ALI20221005BHJP
G02B 1/113 20150101ALI20221005BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C09D1/00
C09D7/20
C01B33/145
G02B1/113
G02B1/00
(21)【出願番号】P 2020559112
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2019046523
(87)【国際公開番号】W WO2020116300
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2018228070
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019041113
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】大河原 昂広
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/190374(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/062130(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/098812(WO,A1)
【文献】国際公開第99/063011(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D, C01B, G02B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルシリカ粒子と、溶剤とを含む組成物であって、
前記コロイダルシリカ粒子は、複数個の球状シリカ粒子が数珠状に連結されており、
前記溶剤は、沸点が190℃以上280℃以下の溶剤A1
と、
沸点が110℃以上190℃未満の溶剤A2と、
メタノール、エタノールおよび2-プロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種の溶剤A3と、
水と、を含み、
前記組成物は、前記溶剤A1を3~12質量%含有し、
前記溶剤A2の含有量は、前記溶剤A1の100質量部に対して750~5000質量部であり、
前記溶剤全量中における前記溶剤A1と前記溶剤A2との合計の含有量は82質量%以上であり、
前記溶剤全量中における前記溶剤A3の含有量は、0.1~10質量%であり、
前記溶剤全量中における水の含有量は、0.1~5質量%であり、
前記組成物の25℃での粘度が4mPa・s以下である、組成物。
【請求項2】
コロイダルシリカ粒子と、溶剤とを含む組成物であって、
前記コロイダルシリカ粒子は、複数個の球状シリカが平面的に連結されており、
前記溶剤は、沸点が190℃以上280℃以下の溶剤A1
と、
沸点が110℃以上190℃未満の溶剤A2と、
メタノール、エタノールおよび2-プロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種の溶剤A3と、
水と、を含み、
前記組成物は、前記溶剤A1を3~12質量%含有し、
前記溶剤A2の含有量は、前記溶剤A1の100質量部に対して750~5000質量部であり、
前記溶剤全量中における前記溶剤A1と前記溶剤A2との合計の含有量は82質量%以上であり、
前記溶剤全量中における前記溶剤A3の含有量は、0.1~10質量%であり、
前記溶剤全量中における水の含有量は、0.1~5質量%であり、
前記組成物の25℃での粘度が4mPa・s以下である、組成物。
【請求項3】
前記溶剤A1は、非プロトン性溶剤である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記溶剤A1は、アルキレンジオールジアセテートおよび環状カルボナートから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記溶剤A1は、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテートおよび炭酸プロピレンから選択される少なくとも1つである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶剤A2は、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤から選ばれる少なくとも1種である、請求項1
~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記溶剤は、分子量が300を超える化合物の含有量が10質量%以下である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記溶剤は、25℃での粘度が10mPa・sを超える化合物の含有量が10質量%以下である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の固形分濃度が5質量%以上である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、前記コロイダルシリカ粒子の含有量が5質量%以上である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物のゼータ電位の絶対値が25mV以上である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
更に、光重合開始剤および重合性化合物を含む、請求項1~
11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
フォトリソグラフィ法でのパターン形成用である、請求項1~
12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物をガラス基板上に塗布し、200℃で5分加熱して厚さ0.5μmの膜を形成した際に、前記膜の25℃の水に対する接触角が30°以上である、請求項1~
13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物の25℃での粘度が3.2mPa・s以下である、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれか1項に記載の組成物を用いる膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイダルシリカ粒子を含む組成物および、前述の組成物を用いた膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低屈折率膜等の光学機能層は、例えば、入射する光の反射を防止するために透明基材の表面に適用される。その応用分野は広く、光学機器や建築材料、観察器具や窓ガラスなど、さまざまな分野の製品に適用されている。その材料として、有機・無機を問わず様々な素材が利用され、開発の対象とされている。なかでも、近年、光学機器に適用される材料の開発が進められている。具体的には、ディスプレイパネル、光学レンズ、イメージセンサ等において、その製品に適合した物性や加工性を有する材料の探索が進められている。
【0003】
イメージセンサ等の精密光学機器に適用される光学機能層には、微細かつ正確な加工成形性が求められる。そのため、従来、微細加工に適した真空蒸着法やスパッタリング法等の気相法が採用されてきた。その材料としては、例えばMgF2や氷晶石等からなる単層膜が実用化されている。また、SiO2、TiO2、ZrO2等の金属酸化物の適用も試みられている。
【0004】
一方、真空蒸着法やスパッタリング法等の気相法では、装置等が高価であることから製造コストが高くなることがある。これに対応して、最近ではシリカ粒子を含む組成物を用いて低屈折率膜等の光学機能層を製造することが検討されている(特許文献1、2参照)。特許文献1、2に記載された発明によれば、屈折率の低い膜を製造できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/190374号
【文献】特開2016-135838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者がシリカ粒子を含む組成物について更に検討を進めたところ、組成物の塗布乾燥時にシリカ粒子が凝集して、得られる膜面に凹凸などの欠陥が生じやすいことが分かった。このように、シリカ粒子を含む組成物については、その使いこなしには未だ改善の余地があった。
【0007】
よって、本発明の目的は、欠陥の少ない膜を製造可能な組成物および膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者の検討によれば、後述する組成物を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。よって、本発明は以下を提供する。
<1> コロイダルシリカ粒子と、溶剤とを含む組成物であって、
コロイダルシリカ粒子は、複数個の球状シリカ粒子が数珠状に連結されており、
溶剤は、沸点が190℃以上280℃以下の溶剤A1を含み、
組成物の25℃での粘度が4mPa・s以下である、組成物。
<2> コロイダルシリカ粒子と、溶剤とを含む組成物であって、
コロイダルシリカ粒子は、複数個の球状シリカが平面的に連結されており、
溶剤は、沸点が190℃以上280℃以下の溶剤A1を含み、
組成物の25℃での粘度が4mPa・s以下である、組成物。
<3> 溶剤A1は、非プロトン性溶剤である、<1>または<2>に記載の組成物。
<4> 溶剤A1は、アルキレンジオールジアセテートおよび環状カルボナートから選ばれる少なくとも1種を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の組成物。
<5> 溶剤は、溶剤A1を3質量%以上含有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載の組成物。
<6> 溶剤は、更に、沸点が110℃以上190℃未満の溶剤A2を含有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の組成物。
<7> 溶剤A2は、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤から選ばれる少なくとも1種である、<6>に記載の組成物。
<8> 溶剤A1の100質量部に対して溶剤A2を500~5000質量部含有する、<6>または<7>に記載の組成物。
<9> 溶剤は、更にメタノール、エタノールおよび2-プロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種の溶剤A3を含有する、<1>~<8>のいずれか1つに記載の組成物。
<10> 溶剤は、分子量が300を超える化合物の含有量が10質量%以下である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の組成物。
<11> 溶剤は、25℃での粘度が10mPa・sを超える化合物の含有量が10質量%以下である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の組成物。
<12> 組成物の固形分濃度が5質量%以上である、<1>~<11>のいずれか1つに記載の組成物。
<13> 組成物は、コロイダルシリカ粒子の含有量が5質量%以上である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の組成物。
<14> 組成物のゼータ電位の絶対値が25mV以上である、<1>~<13>のいずれか1つに記載の組成物。
<15> 更に、光重合開始剤および重合性化合物を含む、<1>~<14>のいずれか1つに記載の組成物。
<16> フォトリソグラフィ法でのパターン形成用である、<1>~<15>のいずれか1つに記載の組成物。
<17> 組成物をガラス基板上に塗布し、200℃で5分加熱して厚さ0.5μmの膜を形成した際に、膜の25℃の水に対する接触角が30°以上である、<1>~<16>のいずれか1つに記載の組成物。
<18> <1>~<17>のいずれか1つに記載の組成物を用いる膜の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、欠陥の少ない膜を製造可能な組成物および膜の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】コロイダルシリカ粒子の形状を模式的に示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用する。測定装置および測定条件としては、下記条件1によることを基本とし、試料の溶解性等により条件2とすることを許容する。ただし、ポリマー種によっては、さらに適宜適切なキャリア(溶離液)およびそれに適合したカラムを選定して用いてもよい。その他の事項については、JISK7252-1~4:2008を参照することとする。
(条件1)
カラム:TOSOH TSKgel Super HZM-HとTOSOH TSKgel Super HZ4000とTOSOH TSKgel Super HZ2000とをつないだカラム
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0ml/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1ml
(条件2)
カラム:TOSOH TSKgel Super AWM-Hを2本つないだカラム
キャリア:10mM LiBr/N-メチルピロリドン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0ml/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1ml
【0012】
<組成物>
本発明の組成物は、コロイダルシリカ粒子と、溶剤とを含む組成物であって、
上記溶剤は、沸点が190℃以上280℃以下の溶剤A1を含み、
上記組成物の25℃での粘度が4mPa・s以下であることを特徴とする。
【0013】
そして、本発明の組成物の第1の態様においては、コロイダルシリカ粒子は、複数個の球状シリカ粒子が数珠状に連結されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の組成物の第2の態様においては、コロイダルシリカ粒子は、複数個の球状シリカ粒子が平面的に連結されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の組成物は、沸点が190℃以上280℃以下の溶剤A1を含有するので、組成物の乾燥速度が適度に調整され、製膜時におけるコロイダルシリカ粒子の凝集を抑制できると推測される。そして、組成物の粘度が4mPa・s以下であるので、上述したコロイダルシリカ粒子を構成する球状シリカ粒子同士の隙間に溶剤が入り込みやすくなると推測される。その結果、製膜時におけるコロイダルシリカ粒子の凝集をより効果的に抑制できると推測される。このため、本発明の組成物によれば、欠陥の少ない膜を形成することができる。また、本発明の組成物は、上述したコロイダルシリカ粒子を含むことにより、得られる膜の気孔率が高まり、屈折率の低い膜を製造できる。
【0016】
本発明の組成物の25℃での粘度は、3.6mPa・s以下であることが好ましく、3.4mPa・s以下であることがより好ましく、3.2mPa・s以下であることが更に好ましい。また、下限は、1.0mPa・s以上であることが好ましく、1.4mPa・s以上であることがより好ましく、1.8mPa・s以上であることが更に好ましい。組成物の粘度が上記範囲であれば、上述した本発明の効果がより顕著に得られやすく、欠陥の発生をより効果的に抑制できる。更には、組成物の塗布性を高めて面状の良い膜が得られやすい。以下、特に断りがない限り、粘度の値は25℃での値である。
【0017】
本発明の固形分濃度は、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることが更に好ましい。上限は、15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。本発明の固形分濃度が上記範囲であれば、上述した本発明の効果がより顕著に得られやすく、欠陥の発生をより効果的に抑制できる。
【0018】
以下、本発明の組成物の各成分について説明する。
【0019】
<<コロイダルシリカ粒子>>
本発明の組成物は、コロイダルシリカ粒子を含有する。本発明において用いられるコロイダルシリカ粒子としては、以下の1、2の態様が挙げられる。
第1の態様:複数個の球状シリカ粒子が数珠状に連結されている態様。
第2の態様:複数個の球状シリカ粒子が平面的に連結されている態様。
【0020】
第1の態様のコロイダルシリカ粒子は、更に第2の態様のコロイダルシリカ粒子の要件を満たしていてもよい。
【0021】
なお、本明細書において「球状」とは、実質的に球形であれば良く、本発明の効果を奏する範囲で、変形していてもよい意味である。例えば、表面に凹凸を有する形状や、所定の方向に長軸を有する扁平形状も含む意味である。
また、「複数個の球状シリカ粒子が数珠状に連結されている」とは、複数個の球状シリカ粒子同士が直鎖状および/または分岐した形で繋がった構造を意味する。例えば、
図1に示すように、複数個の球状シリカ粒子同士が、これよりも外径の小さい接合部で連結された構造が挙げられる。また、本発明において、「複数個の球状シリカ粒子が数珠状に連結されている」構造としては、リング状につながった形態をなしている構造のみならず、末端を有する鎖状の形態をなしている構造も含まれる。
また、「複数個の球状シリカ粒子が平面的に連結されている」とは、複数個の球状シリカ粒子同士が、略同一平面上において連結された構造を意味する。なお、「略同一平面」とは同一平面である場合のみならず、同一平面から上下にずれていてもよい意味である。例えば、シリカ粒子の粒子径の50%以下の範囲で上下にずれていてもよい。
【0022】
本発明で用いられるコロイダルシリカ粒子は、動的光散乱法により測定された平均粒子径D1と下記式(1)により得られる平均粒子径D2との比D1/D2が3以上であることが好ましい。D1/D2の上限は特にないが、1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることが更に好ましい。D1/D2をこのような範囲とすることにより、良好な光学特性を発現し、更には、乾燥時における凝集を効果的に抑制することができる。なお、コロイダルシリカ粒子におけるD1/D2の値は、球状シリカ粒子のつながり度合の指標でもある。
D2=2720/S ・・・(1)
式中、D2は平均粒子径であって、単位はnmであり、Sは、窒素吸着法により測定されたコロイダルシリカ粒子の比表面積であって、単位はm2/gである。
【0023】
コロイダルシリカ粒子の上記平均粒子径D2は、球状シリカの一次粒子に近似する平均粒子径とみなすことができる。平均粒子径D2は1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることが更に好ましく、7nm以上であることが特に好ましい。上限としては、100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、70nm以下であることが更に好ましく、60nm以下であることがより一層好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。
【0024】
平均粒子径D2は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定した球状部分の投影像における円相当直径(D0)で代用することができる。円相当直径による平均粒子径はとくに断らない限り、50個以上の粒子の数平均で評価する。
【0025】
コロイダルシリカ粒子の上記平均粒子径D1は、複数の球状シリカ粒子がまとまった二次粒子の数平均粒子径とみなすことができる。したがって、通常、D1>D2の関係が成り立つ。平均粒子径D1は、25nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、35nm以上であることが特に好ましい。上限としては、1000nm以下であることが好ましく、700nm以下であることがより好ましく、500nm以下であることがさらに好ましく、300nm以下であることが特に好ましい。
【0026】
コロイダルシリカ粒子の上記平均粒子径D1の測定は、特に断らない限り、動的光散乱式粒径分布測定装置(日機装製 ナノトラック Nanotrac Wave-EX150[商品名])を用いて行う。手順は以下のとおりである。コロイダルシリカ粒子の分散液を20mlサンプル瓶に分取し、トルエンにより固形分濃度が0.2質量%になるように希釈調整する。希釈後の試料溶液は、40kHzの超音波を1分間照射し、その直後に試験に使用する。温度25℃で2mlの測定用石英セルを使用してデータ取り込みを10回行い、得られた「数平均」を平均粒子径とする。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析-動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製しその平均値を採用する。
【0027】
本発明において、コロイダルシリカ粒子は、平均粒子径1~80nmの球状シリカ粒子が、連結材を介して複数個連結していることが好ましい。球状シリカ粒子の平均粒子径の上限としては、70nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。また、球状シリカ粒子の平均粒子径の下限としては、3nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、7nm以上であることが更に好ましい。なお、本発明において球状シリカ粒子の平均粒子径の値は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定した球状部分の投影像における円相当直径から求められる平均粒子径の値を用いる。
【0028】
球状シリカ粒子同士を連結する連結材としては、金属酸化物含有シリカが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、Ca、Mg、Sr、Ba、Zn、Sn、Pb、Ni、Co、Fe、Al、In、Y、Tiから選ばれる金属の酸化物などが挙げられる。金属酸化物含有シリカとしては、これらの金属酸化物とシリカ(SiO2)との反応物、混合物などが挙げられる。連結材については、国際公開第2000/015552号の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0029】
コロイダルシリカ粒子における球状シリカ粒子の連結数としては、3個以上が好ましく、5個以上がより好ましい。上限は、1000個以下が好ましく、800個以下がより好ましく、500個以下が更に好ましい。球状シリカ粒子の連結数は、TEMで測定できる。
【0030】
本発明の組成物において、コロイダルシリカ粒子は、粒子液(ゾル)の状態で用いてもよい。例えば特許第4328935号公報に記載されているシリカゾル等を使用することができる。コロイダルシリカ粒子を分散させる媒体としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、エチレングリコール、グリコールエーテル(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル)、グリコールエーテルアセテート(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)等が例示される。また、後述する溶剤A1、溶剤A2などを用いることもできる。粒子液(ゾル)において、SiO2濃度は5~40質量%であることが好ましい。
【0031】
粒子液(ゾル)は市販品を用いることもできる。例えば、日産化学工業社製の「スノーテックス OUP」、「スノーテックス UP」、「IPA-ST-UP」、「スノーテックス PS-M」、「スノーテックス PS-MO」、「スノーテックス PS-S」、「スノーテックス PS-SO」、触媒化成工業株式会社製の「ファインカタロイドF-120」、扶桑化学工業株式会社製の「クォートロンPL」などが挙げられる。
【0032】
本発明の組成物中におけるコロイダルシリカ粒子の含有量は5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、9質量%以上であることが更に好ましい。上限は15質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましく、11質量%以下であることが更に好ましい。
また、本発明の組成物の全固形分中におけるコロイダルシリカ粒子の含有量は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上がより一層好ましく、95質量%以上が更に一層好ましく、97質量%以上が特に好ましく、99質量%以上が最も好ましい。上限は、100質量%とすることもでき、99.99質量%以下とすることもでき、99.95質量%以下とすることもでき、99.9質量%以下とすることもできる。コロイダルシリカ粒子の含有量が上記範囲であれば、低屈折率で反射防止効果が高く、欠陥の抑制された膜が得られやすい。また、パターン形成を行わない場合や、エッチング法でパターン形成する場合においては、本発明の組成物の全固形分中におけるコロイダルシリカ粒子の含有量は高いことが好ましく、例えば95質量%以上が好ましく、97質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。上限は、100質量%とすることもでき、99.99質量%以下とすることもでき、99.95質量%以下とすることもでき、99.9質量%以下とすることもできる。
【0033】
<<アルコキシシラン加水分解物>>
本発明の組成物は、アルコキシシラン及びアルコキシシランの加水分解物からなる群より選ばれた少なくとも1種の成分(アルコキシシラン加水分解物と称する)を含むことが好ましい。本発明の組成物がアルコキシシラン加水分解物をさらに含むことで、製膜時にコロイダルシリカ粒子同士を強固に結合させ、成膜時に膜内の気孔率を向上させる効果を発現させることができる。また、このアルコキシシラン加水分解物を用いることにより、膜表面の濡れ性を向上させることができる。アルコキシシラン加水分解物は、アルコキシシラン化合物(A)の加水分解による縮合によって生成したものであることが好ましく、アルコキシシラン化合物とフルオロアルキル基含有のアルコキシシラン化合物(B)との加水分解による縮合によって生成したものであることがより好ましい。アルコキシシラン加水分解物としては、国際公開第2015/190374号の段落番号0022~0027に記載されたアルコキシシラン加水分解物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。本発明の組成物がアルコキシシラン加水分解物を含有する場合、コロイダルシリカ粒子とアルコキシシラン加水分解物との合計の含有量は、組成物中の全固形分に対して0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が特に好ましい。上限としては、99.99質量%以下が好ましく、99.95質量%以下がより好ましく、99.9質量%以下が特に好ましい。
【0034】
<<他のシリカ粒子>>
本発明の組成物は、上述した第1、2の態様で示したコロイダルシリカ粒子以外のシリカ粒子(以下、他のシリカ粒子)をさらに含有することができる。他のシリカ粒子としては、例えば、中空シリカ粒子、中実シリカ粒子、多孔質シリカ粒子、かご型シロキサンポリマーなどが挙げられる。中空シリカ粒子の市販品としては、例えば、スルーリア4110(日揮触媒化成(株)製)などが挙げられる。中実シリカ粒子の市販品としては、例えば、PL-2L-IPA(扶桑化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0035】
本発明の組成物が他のシリカ粒子を含有する場合、組成物の全固形分中における他のシリカ粒子の含有量は、0.1~30質量%であることが好ましい。上限は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。下限は、0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましい。
また、本発明の組成物は、他のシリカ粒子を実質的に含有しないことも好ましい。この態様によれば、欠陥の発生をより効果的に抑制できる。本発明の組成物が、他のシリカ粒子を実質的に含有しない場合とは、組成物の全固形分中における他のシリカ粒子の含有量が0.05質量%以下であることを意味し、0.01質量%以下であることが好ましく、含有しないことがより好ましい。
【0036】
<<溶剤>>
本発明の組成物は、溶剤を含有する。溶剤として、有機溶剤および水が挙げられ、有機溶剤を少なくとも含むことが好ましい。有機溶剤としては、脂肪族炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤、芳香族系溶剤などが挙げられる。
【0037】
脂肪族炭化水素系溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ペンタン、シクロペンタン、ヘプタン、オクタンなどが挙げられる。
【0038】
ハロゲン化炭化水素系溶剤としては、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロメタン、二塩化エタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、エピクロロヒドリン、モノクロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン、アリルクロライド、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸トリクロロ酢酸、臭化メチル、トリ(テトラ)クロロエチレンなどが挙げられる。
【0039】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メトキシ-1-ブタノール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールなどが挙げられる。
【0040】
エーテル系溶剤としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエ-テル、プロピレングリコールモノブチルエ-テル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコ-ルモノメチルエ-テル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエ-テル、ジプロピレングリコールモノブチルエ-テル、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエ-テル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0041】
エステル系溶剤としては、炭酸プロピレン、ジプロピレン、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、n-プロピルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチンなどが挙げられる。
【0042】
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンなどが挙げられる。
【0043】
ニトリル系溶剤としては、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0044】
アミド系溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、2-ピロリジノン、ε-カプロラクタム、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドなどが挙げられる。
【0045】
スルホキシド系溶剤としては、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0046】
芳香族系溶剤としては、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
【0047】
本発明の組成物中における溶剤の含有量は、70~99質量%であることが好ましい。上限は93質量%以下であることが好ましく、92質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。下限は75質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。
【0048】
本発明においては、溶剤として、沸点が190℃以上280℃以下の溶剤A1を含むものを用いる。なお、本明細書において溶剤の沸点は1気圧(0.1MPa)での値である。
【0049】
溶剤A1の沸点は、コロイダルシリカ粒子の凝集を効果的に抑制して欠陥の発生を抑制しやすいという理由から、200℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることがより好ましい。また、溶剤A1の沸点は、製膜後の残留溶剤をより低減したり、面状の良い膜を形成しやすいという理由から270℃以下であることが好ましく、265℃以下であることが更に好ましい。
【0050】
溶剤A1の粘度は、本発明の効果がより顕著に得られやすいという理由から10mPa・s以下であることが好ましく、7mPa・s以下であることがより好ましく、4mPa・s以下であることがより好ましい。溶剤A1の粘度の下限は、塗布性の観点から1.0mPa・s以上であることが好ましく、1.4mPa・s以上であることがより好ましく、1.8mPa・s以上であることが更に好ましい。
【0051】
溶剤A1の分子量は、本発明の効果がより顕著に得られやすいという理由から、100以上であることが好ましく、130以上であることがより好ましく、140以上であることが更に好ましく、150以上であることが特に好ましい。下限は、塗布性の観点から300以下であることが好ましく、290以下であることがより好ましく、280以下であることが更に好ましく、270以下であることが特に好ましい。
【0052】
溶剤A1の溶解度パラメータは、8.5~13.3(cal/cm3)0.5であることが好ましい。上限は、12.5(cal/cm3)0.5以下であることが好ましく、11.5(cal/cm3)0.5以下であることがより好ましく、10.5(cal/cm3)0.5以下であることが更に好ましい。下限は、8.7(cal/cm3)0.5以上であることが好ましく、8.9(cal/cm3)0.5以上であることがより好ましく、9.1(cal/cm3)0.5以上であることが更に好ましい。溶剤A1の溶解度パラメータが上記範囲であれば、コロイダルシリカ粒子との高い親和性が得られ、塗布時のコロイダルシリカ粒子の凝集をより効果的に抑制することができる。なお、1(cal/cm3)0.5は、2.0455MPa0.5である。また、溶剤の溶解度パラメータは、HSPiPで計算した値である。
【0053】
なお、本明細書において、溶剤の溶解度パラメータは、ハンセン溶解度パラメータを用いる。具体的には、ハンセン溶解度パラメータ・ソフトウエア「HSPiP 5.0.09」を用いて算出される値を用いる。
【0054】
溶剤A1は、非プロトン性溶剤であることが好ましい。溶剤A1として非プロトン性溶剤を用いることで、製膜時でのコロイダルシリカ粒子の凝集をより効果的に抑制できる。
【0055】
溶剤A1は、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤が好ましく、エステル系溶剤がより好ましい。また、溶剤A1として用いられるエステル系溶剤は、ヒドロキシル基や、末端アルコキシ基を含まない化合物であることが好ましい。このような官能基を有さないエステル系溶剤を用いることで、本発明の効果がより顕著に得られやすい。
【0056】
溶剤A1は、コロイダルシリカ粒子との高い親和性が得られ、塗布時のコロイダルシリカ粒子の凝集をより効果的に抑制しやすいという理由から、アルキレンジオールジアセテートおよび環状カルボナートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。アルキレンジオールジアセテートとしては、プロピレングリコールジアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテートなどが挙げられる。環状カルボナートとしては、炭酸プロピレン、炭酸エチレンなどが挙げられる。
【0057】
溶剤A1の具体例としては、炭酸プロピレン(沸点240℃)、炭酸エチレン(沸点260℃)、プロピレングリコールジアセテート(沸点190℃)、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(沸点203℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点213℃)、1,4-ブタンジオールジアセテート(沸点232℃)、1,3-ブチレングリコールジアセテート(沸点232℃)、1,6-ヘキサンジオールジアセテート(沸点260℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点217℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点247℃)、トリアセチン(沸点260℃)、ジプロピレングリコ-ルモノメチルエ-テル(沸点190℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃)、ジプロピレングリコールモノプロピルエ-テル(沸点212℃)、ジプロピレングリコールモノブチルエ-テル(沸点229℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点242℃)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点274℃)などが挙げられる。
【0058】
本発明の組成物に用いられる溶剤は、上記溶剤A1を3質量%以上含有するものであることが好ましく、4質量%以上含有するものであることがより好ましく、5質量%以上含有するものであることが更に好ましい。この態様によれば、上述した本発明の効果が顕著に得られやすい。上限は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることが更に好ましい。この態様によれば、面状の良い膜が得られやすい。溶剤A1は1種のみであってもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上含む場合は、それらの合計が上記範囲であることが好ましい。
【0059】
本発明の組成物に用いられる溶剤は、更に、沸点が110℃以上190℃未満の溶剤A2を含有することが好ましい。この態様によれば、組成物の乾燥性を適度に高めて塗布ムラの発生を効果的に抑制でき、面状の良好な膜を形成しやすい。
【0060】
溶剤A2の沸点は、115℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがより好ましい。また、溶剤A2の沸点は、170℃以下であることが好ましく、150℃以下であることが更に好ましい。溶剤A2の沸点が上記範囲であれば、上述した効果がより顕著に得られやすい。
【0061】
溶剤A2の分子量は、上述した効果がより顕著に得られやすいという理由から、100以上であることが好ましく、130以上であることがより好ましく、140以上であることが更に好ましく、150以上であることが特に好ましい。下限は、塗布性の観点から300以下であることが好ましく、290以下であることがより好ましく、280以下であることが更に好ましく、270以下であることが特に好ましい。
【0062】
溶剤A2の溶解度パラメータは、9.0~11.4(cal/cm3)0.5であることが好ましい。上限は、11.0(cal/cm3)0.5以下であることが好ましく、10.6(cal/cm3)0.5以下であることがより好ましく、10.2(cal/cm3)0.5以下であることが更に好ましい。下限は、9.2(cal/cm3)0.5以上であることが好ましく、9.4(cal/cm3)0.5以上であることがより好ましく、9.6(cal/cm3)0.5以上であることが更に好ましい。溶剤A2の溶解度パラメータが上記範囲であれば、コロイダルシリカ粒子との高い親和性が得られ、塗布時のコロイダルシリカ粒子の凝集をより効果的に抑制することができる。また、溶剤A1の溶解度パラメータと溶剤A2の溶解度パラメータとの差の絶対値は、0.01~1.1(cal/cm3)0.5であることが好ましい。上限は、0.9(cal/cm3)0.5以下であることが好ましく、0.7(cal/cm3)0.5以下であることがより好ましく、0.5(cal/cm3)0.5以下であることが更に好ましい。下限は、0.03(cal/cm3)0.5以上であることが好ましく、0.05(cal/cm3)0.5以上であることがより好ましく、0.08(cal/cm3)0.5以上であることが更に好ましい。
【0063】
溶剤A2は、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、エステル系溶剤を少なくとも含むことがより好ましく、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤を含むことが更に好ましい。溶剤A2の具体例としては、シクロヘキサノールアセテート(沸点173℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点175℃)、ブチルアセテート(沸点126℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点145℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、3-メトキシブチルアセテート(沸点171℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)、3-メトキシブタノール(沸点161℃)、プロピレングリコールモノプロピルエ-テル(沸点150℃)、プロピレングリコールモノブチルエ-テル(沸点170℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点188℃)などが挙げられ、コロイダルシリカ粒子との高い親和性が得られ、塗布時のコロイダルシリカ粒子の凝集をより効果的に抑制しやすいという理由からプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含むことが好ましい。
【0064】
本発明の組成物に用いられる溶剤が溶剤A2を含有する場合、溶剤A2の含有量は、溶剤A1の100質量部に対して500~5000質量部であることが好ましい。上限は4500質量部以下であることが好ましく、4000質量部以下であることがより好ましく、3500質量部以下であることが更に好ましい。下限は600質量部以上であることが好ましく、700質量部以上であることがより好ましく、750質量部以上であることが更に好ましい。また、溶剤全量中における溶剤A2の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。上限は95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。溶剤A2の含有量が上記範囲であれば、本発明の効果がより顕著に得られやすい。溶剤A2は1種のみであってもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上含む場合は、それらの合計が上記範囲であることが好ましい。
【0065】
また、本発明の組成物に用いられる溶剤は、溶剤A1と溶剤A2とを合計で62質量%以上含有するものであることが好ましく、72質量%以上であることがより好ましく、82質量%以上であることが更に好ましい。上限は、100質量%とすることもでき、96質量%以下とすることもでき、92質量%以下とすることもできる。
【0066】
本発明の組成物に用いられる溶剤は、更にメタノール、エタノールおよび2-プロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種の溶剤A3を含有することも好ましい。この態様によれば、コロイダルシリカ粒子との高い親和性が得られやすい。本発明の組成物に用いられる溶剤が更に溶剤A3を含有する場合、溶剤全量中における溶剤A3の含有量は、0.1~10質量%であることが好ましい。上限は8質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましく、4質量%以下であることが更に好ましい。下限は0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましい。溶剤A3の含有量が上記範囲であれば、上述した効果がより顕著に得られやすい。溶剤A3は1種のみであってもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上含む場合は、それらの合計が上記範囲であることが好ましい。
【0067】
本発明の組成物に用いられる溶剤は、更に水を含有することも好ましい。この態様によれば、コロイダルシリカ粒子との高い親和性が得られやすい。本発明の組成物に用いられる溶剤が更に水を含有する場合、溶剤全量中における水の含有量は、0.1~5質量%であることが好ましい。上限は4質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることが更に好ましい。下限は0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることが更に好ましい。水の含有量が上記範囲であれば、上述した効果がより顕著に得られやすい。
【0068】
本発明の組成物に用いられる溶剤は上述した溶剤A3と水とを含むことも好ましい。この態様によれば、コロイダルシリカ粒子との高い親和性が得られやすい。本発明の組成物に用いられる溶剤が溶剤A3と水とを含む場合、溶剤全量中における溶剤A3と水の合計の含有量は、0.2~15質量%であることが好ましい。上限は12質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることが更に好ましい。下限は0.4質量%以上であることが好ましく、0.7質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることが更に好ましい。溶剤A3と水との合計の含有量が上記範囲であれば、上述した効果がより顕著に得られやすい。
【0069】
本発明の組成物に用いられる溶剤は、更に、沸点が280℃を超える溶剤A4を含有することができる。この態様によれば、組成物の乾燥性を適度に高めて塗布ムラの発生を効果的に抑制でき、面状の良好な膜を形成しやすい。溶剤A4の沸点の上限は、400℃以下であることが好ましく、380℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましい。溶剤A4は、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。溶剤A4の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。本発明の組成物に用いられる溶剤が更に溶剤A4を含有する場合、溶剤全量中における溶剤A4の含有量は、0.5~15質量%であることが好ましい。上限は10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることが更に好ましい。下限は1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましい。また、本発明の組成物に用いられる溶剤は、溶剤A4を実質的に含有しないことも好ましい。なお、溶剤A4を実質的に含有しないとは、溶剤全量中における溶剤A4の含有量が0.1質量%以下であることを意味し、0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることが更に好ましく、含有しないことが更に好ましい。
【0070】
本発明の組成物に用いられる溶剤は、上述した溶剤A1、溶剤A2、溶剤A3、溶剤A4および水以外の溶剤(他の溶剤)を含有してもよいが、他の溶剤を実質的に含有しないことが好ましい。なお、他の溶剤を実質的に含有しないとは、溶剤全量中における他の溶剤の含有量が0.1質量%以下であることを意味し、0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることが更に好ましく、含有しないことが更に好ましい。
【0071】
本発明の組成物に用いられる溶剤は、分子量(高分子の場合は、重量平均分子量)が300を超える化合物の含有量が10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、3質量%以下であることがより一層好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。この態様によれば、より優れた塗布性が得られやすく、面状に優れた膜が得られやすい。
【0072】
本発明の組成物に用いられる溶剤は、25℃での粘度が10mPa・sを超える化合物の含有量が10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、3質量%以下であることがより一層好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。この態様によれば、より優れた塗布性が得られやすく、面状に優れた膜が得られやすい。
【0073】
<<界面活性剤>>
本発明の組成物は界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤のいずれを用いてもよい。ノニオン界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。特に、フッ素系界面活性剤、アニオン界面活性剤およびカチオン界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤がより好ましい。
【0074】
本発明においては、ポリオキシアルキレン構造を有する界面活性剤を含有することも好ましい。ポリオキシアルキレン構造とは、アルキレン基と二価の酸素原子が隣接して存在している構造のことをいい、具体的にはエチレンオキサイド(EO)構造、プロピレンオキサイド(PO)構造などが挙げられる。ポリオキシアルキレン構造は、アクリルポリマーのグラフト鎖を構成していてもよい。
【0075】
界面活性剤が高分子化合物であるとき、界面活性剤の重量平均分子量は1500以上であることが好ましく、2500以上であることがより好ましく、5000以上であることがさらに好ましく、10000以上であることが特に好ましい。上限としては、50000以下であることが好ましく、25000以下であることがより好ましく、17500以下であることが特に好ましい。
【0076】
フッ素系界面活性剤としては、ポリエチレン主鎖を有するポリマー(高分子)界面活性剤であることが好ましい。なかでも、ポリ(メタ)クリレート構造を有するポリマー(高分子)界面活性剤が好ましい。なかでも、本発明においては、上記ポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリレート構成単位と、フッ化アルキルアクリレート構成単位との共重合体が好ましい。
【0077】
また、フッ素系界面活性剤として、いずれかの部位にフルオロアルキル基又はフルオロアルキレン基(炭素数1~24が好ましく、2~12がより好ましい。)を有する化合物を好適に用いることができる。好ましくは、側鎖に上記フルオロアルキル基又はフルオロアルキレン基を有する高分子化合物を用いることができる。フッ素系界面活性剤としては、さらに上記ポリオキシアルキレン構造を有することが好ましく、側鎖にポリオキシアルキレン構造を有することがより好ましい。フルオロアルキル基又はフルオロアルキレン基を有する化合物については、国際公開第2015/190374号の段落0034~0040に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0078】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F479、F482、F554、F559、F780、F781F(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、S-141、S-145、SC-101、SC-103、同SC-104、SC-105、SC1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、旭硝子(株)製)、エフトップEF301、EF303、EF351、EF352(以上、ジェムコ(株)製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0079】
また、フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011-089090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化1】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000~50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0080】
フッ素系界面活性剤以外のノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤については、国際公開第2015/190374号の段落0042~0045に記載された界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0081】
本発明の組成物が界面活性剤を含有する場合、本発明の組成物中における界面活性剤の含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることが更に好ましい。上限は、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.03質量%以下が更に好ましい。また、本発明の組成物の全固形分中における界面活性剤の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが更に好ましい。上限は1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲であれば、組成物の塗布性をより向上させることができる。界面活性剤は、1種類のみであってもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計が上記範囲であることが好ましい。
【0082】
また、本発明の組成物は、界面活性剤を実質的に含まないことも好ましい。本発明の組成物が界面活性剤を実質的に含まない場合においては、本発明の組成物を用いて形成した膜上に親水的な膜を積層させやすい。なお、本発明の組成物が界面活性剤を実質的に含まない場合とは、本発明の組成物の全固形分中における界面活性剤の含有量が0.005質量%以下であることを意味し、0.001質量%以下であることが好ましく、界面活性剤を含有しないことがより好ましい。
【0083】
<<分散剤>>
本発明の組成物は分散剤を含有することができる。分散剤としては、高分子分散剤(例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物)、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン等が挙げられる。高分子分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。高分子分散剤は粒子の表面に吸着し、再凝集を防止するように作用する。そのため、粒子表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子が好ましい構造として挙げることができる。分散剤は市販品を用いることもできる。例えば、国際公開第2016/190374号の段落番号0050に記載された製品が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0084】
分散剤の含流量としては、コロイダルシリカ粒子を含むSiO2分100質量部に対して1~100質量部であることが好ましく、3~100質量部がより好ましく、5~80質量部がさらに好ましい。また、組成物の全固形分に対して1~30質量%であることが好ましい。分散剤は、1種類のみであってもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計が上記範囲であることが好ましい。
【0085】
<<重合性化合物>>
本発明の組成物は重合性化合物を含有することができる。重合性化合物としては、ラジカル、酸または熱により架橋可能な公知の化合物を用いることができる。本発明において、重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物であることが好ましい。
【0086】
重合性化合物は、モノマー、プレポリマー、オリゴマーなどの化学的形態のいずれであってもよいが、モノマーが好ましい。重合性化合物の分子量は、100~3000が好ましい。上限は、2000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましい。
【0087】
重合性化合物は、エチレン性不飽和結合基を2個以上有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を3個以上有する化合物がより好ましい。エチレン性不飽和結合基の個数の上限は、たとえば、15個以下が好ましく、6個以下がより好ましい。エチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、スチリル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。重合性化合物は、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。重合性化合物の具体例としては、国際公開第2016/190374号の段落番号0059~0079に記載された化合物などが挙げられる。
【0088】
重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルA-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)、RP-1040(日本化薬(株)製)、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)、NKオリゴUA-7200(新中村化学工業(株)製)、8UH-1006、8UH-1012(大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることができる。
【0089】
また、重合性化合物として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることも好ましい。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM-309、M-310、M-321、M-350、M-360、M-313、M-315、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO-303、TMPTA、THE-330、TPA-330、PET-30(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0090】
重合性化合物は、酸基を有する化合物を用いることもできる。酸基を有する重合性化合物を用いることで、現像時に未露光部の重合性化合物が除去されやすく、現像残渣の発生を抑制できる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する重合性化合物の市販品としては、アロニックスM-510、M-520、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。酸基を有する重合性化合物の好ましい酸価としては、0.1~40mgKOH/gであり、より好ましくは5~30mgKOH/gである。重合性化合物の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像液に対する溶解性が良好であり、40mgKOH/g以下であれば、製造や取扱い上、有利である。
【0091】
重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物であることも好ましい態様である。カプロラクトン構造を有する重合性化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0092】
重合性化合物は、アルキレンオキシ基を有する重合性化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物は、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基を有する重合性化合物が好ましく、エチレンオキシ基を有する重合性化合物がより好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物がさらに好ましい。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0093】
重合性化合物は、フルオレン骨格を有する重合性化合物を用いることもできる。フルオレン骨格を有する重合性化合物の市販品としては、オグソールEA-0200、EA-0300(大阪ガスケミカル(株)製、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー)などが挙げられる。
【0094】
重合性化合物としては、トルエンなどの環境規制物質を実質的に含まない化合物を用いることも好ましい。このような化合物の市販品としては、KAYARAD DPHA LT、KAYARAD DPEA-12 LT(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0095】
本発明の組成物が重合性化合物を含有する場合、本発明の組成物中における重合性化合物の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。上限としては、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がより好ましい。また、本発明の組成物の全固形分中における重合性化合物の含有量は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。上限としては、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がより好ましい。
また、本発明の組成物は、重合性化合物を実質的に含まないことも好ましい。本発明の組成物が重合性化合物を実質的に含まない場合においては、重合性化合物とシリカの相溶性不足によるヘイズ発生を回避できるという効果が期待できる。なお、本発明の組成物が重合性化合物を実質的に含まない場合とは、本発明の組成物の全固形分中における重合性化合物の含有量が、0.05質量%以下であることを意味し、0.01質量%以下であることが好ましく、重合性化合物を含有しないことがより好ましい。
【0096】
<<光重合開始剤>>
本発明の組成物が重合性化合物を含む場合、更に光重合開始剤を含むことが好ましい。本発明の組成物が重合性化合物と光重合開始剤とを含む場合においては、本発明の組成物は、フォトリソグラフィ法でのパターン形成用の組成物として好ましく用いることができる。
【0097】
光重合開始剤としては、重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。重合性化合物としてラジカル重合性化合物を用いた場合においては、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物、クマリン化合物などが挙げられ、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物が好ましく、オキシム化合物、α-アミノケトン化合物がより好ましく、オキシム化合物が更に好ましい。光重合開始剤は、特開2015-166449号公報の段落番号0099~0125に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0098】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0038に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。また、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0099】
本発明において、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0100】
本発明において、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0101】
本発明において、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0102】
本発明において、光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載されるOE-01~OE-75が挙げられる。
【0103】
オキシム化合物は、波長350~500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360~480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1,000~300,000であることがより好ましく、2,000~300,000であることが更に好ましく、5,000~200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0104】
光重合開始剤として、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して有機溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落番号0412~0417、国際公開第2017/033680号の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)などが挙げられる。
【0105】
本発明の組成物が光重合開始剤を含有する場合、本発明の組成物中における光重合開始剤の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。上限としては、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がより好ましい。また、本発明の組成物の全固形分中における光重合開始剤の含有量は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。上限としては、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がより好ましい。また、重合性化合物の100質量部に対して光重合開始剤を10~1000質量部含有することが好ましい。上限は、500質量部以下が好ましく、300質量部以下がより好ましく、100質量部以下が更に好ましい。下限は、20質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、60質量部以上が更に好ましい。
また、本発明の組成物は、光重合開始剤を実質的に含まないことも好ましい。なお、本発明の組成物が光重合開始剤を実質的に含まない場合とは、本発明の組成物の全固形分中における光重合開始剤の含有量が、0.005質量%以下であることを意味し、0.001質量%以下であることが好ましく、光重合開始剤を含有しないことがより好ましい。
【0106】
<<樹脂>>
本発明の組成物は、更に樹脂をさらに含有していてもよい。樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3000~2000000が好ましい。上限は、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。下限は、4000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。
【0107】
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、特開2017-206689号公報の段落番号0041~0060に記載の樹脂、特開2018-010856号公報の段落番号0022~0071に記載の樹脂、特開2017-057265号公報に記載の樹脂、特開2017-032685号公報に記載の樹脂、特開2017-075248号公報に記載の樹脂、特開2017-066240号公報に記載の樹脂、特開2018-145339号公報の段落番号0016に記載の樹脂を用いることもできる。
【0108】
本発明において、樹脂として酸基を有する樹脂を用いることも好ましい。この態様によれば、フォトリソグラフィ法でのパターン形成する際において、現像性をより向上させることができる。酸基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシル基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する樹脂は、例えば、アルカリ可溶性樹脂として用いることができる。
【0109】
酸基を有する樹脂は、酸基を側鎖に有する繰り返し単位を含むことが好ましく、酸基を側鎖に有する繰り返し単位を樹脂の全繰り返し単位中5~70モル%含むことがより好ましい。酸基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量の上限は、50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。酸基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量の下限は、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。
【0110】
酸基を有する樹脂の酸価は、30~500mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、400mgKOH/g以下が好ましく、300mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以下が更に好ましい。酸基を有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000~100000が好ましい。また、酸基を有する樹脂の数平均分子量(Mn)は、1000~20000が好ましい。
【0111】
本発明の組成物が樹脂を含有する場合、本発明の組成物中における樹脂の含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。上限としては、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。また、本発明の組成物の全固形分中における樹脂の含有量は、0.2質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましく、1.2質量%以上が更に好ましい。上限としては、18質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0112】
<<密着改良剤>>
本発明の組成物は、密着改良剤をさらに含有していてもよい。密着改良剤を含むことで支持体との密着性に優れた膜を形成することができる。密着改良剤としては、例えば、特開平05-011439号公報、特開平05-341532号公報、及び特開平06-043638号公報等に記載の密着改良剤が好適に挙げられる。具体的には、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズオキサゾール、2-メルカプトベンズチアゾール、3-モルホリノメチル-1-フェニル-トリアゾール-2-チオン、3-モルホリノメチル-5-フェニル-オキサジアゾール-2-チオン、5-アミノ-3-モルホリノメチル-チアジアゾール-2-チオン、及び2-メルカプト-5-メチルチオ-チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、アミノ基含有ベンゾトリアゾール、シランカップリング剤などが挙げられる。密着改良剤としては、シランカップリング剤が好ましい。
【0113】
シランカップリング剤は、無機材料と化学結合可能な加水分解性基としてアルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また樹脂との間で相互作用もしくは結合を形成して親和性を示す基を有する化合物が好ましく、そのような基としては、例えば、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が好ましい。
【0114】
シランカップリング剤は、一分子中に少なくとも2種の反応性の異なる官能基を有するシラン化合物も好ましく、特に、官能基としてアミノ基とアルコキシ基とを有する化合物が好ましい。このようなシランカップリング剤としては、例えば、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピル-メチルジメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-602)、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピル-トリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-603)、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピル-トリエトキシシラン(信越化学工業社製、KBE-602)、γ-アミノプロピル-トリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-903)、γ-アミノプロピル-トリエトキシシラン(信越化学工業社製、KBE-903)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-503)等が挙げられる。シランカップリング剤としては、以下の化合物を用いることもできる。以下の構造式中、Etはエチル基である。
【化2】
【0115】
本発明の組成物が密着改良剤を含有する場合、本発明の組成物の全固形分中における密着改良剤の含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が特に好ましい。上限としては、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が特に好ましい。また、本発明の組成物は、密着改良剤を実質的に含まないことも好ましい。なお、本発明の組成物が密着改良剤を実質的に含まない場合とは、本発明の組成物の全固形分中における密着改良剤の含有量が、0.0005質量%以下であることを意味し、0.0001質量%以下であることが好ましく、密着改良剤を含有しないことがより好ましい。
【0116】
本発明のゼータ電位の絶対値は、組成物中におけるコロイダルシリカ粒子の分散を安定化させ、凝集異物の発生を抑制しやすいという理由から25mV以上であることが好ましく、29mV以上であることがより好ましく、33mV以上であることが更に好ましく、37mV以上であることがより一層好ましい。ゼータ電位の絶対値の上限は、90mV以下であることが好ましく、16mV以上であることがより好ましく、70mV以下であることが更に好ましい。
また、本発明のゼータ電位は、組成物中におけるコロイダルシリカ粒子の分散を安定化させやすいという理由から-70~-25mVであることが好ましい。下限は-60mV以上であることが好ましく、-50mV以上であることがより好ましく、-45mV以上であることが更に好ましい。上限は、-34mV以下であることが好ましく、-31mV以下であることがより好ましく、-28mV以下であることが更に好ましい。
【0117】
なお、ゼータ電位とは、微粒子分散液において粒子から十分離れた電気的に中性な溶媒部分の電位をゼロとしたとき、粒子が持つ表面電荷と表面近傍に誘起された電気二重層がつくる電位のうち、粒子と共同運動する電気二重層内部の面(滑り面)における電位のことである。
【0118】
また、本明細書において、組成物のゼータ電位は電気泳動法により測定した値である。具体的には、ゼータ電位測定装置(Zetasizer Nano、Malvern Panalitical社製)を用いて微粒子の電気泳動移動度を測定し、ヒュッケルの式からゼータ電位を求めた。測定条件としては、ユニバーサルディップセルを使用し、40Vまたは60Vの電圧を印加して正しく電気泳動する電圧を選択し、減衰器と解析モデルは自動モードとして繰り返し20回の測定を行い、その平均値を試料のゼータ電位とした。試料は希釈等の前処理をせずそのまま使用した。
【0119】
本発明の組成物をガラス基板上に塗布し、200℃で5分加熱して厚さ0.5μmの膜を形成した際に、前述の膜の25℃の水に対する接触角は30°以上であることが好ましく、35°以上であることがより好ましく、40°以上であることが更に好ましく、45°以上であることが特に好ましい。上限は組成物の塗布性の観点から70°以下であることが好ましく、65°以下であることがより好ましく、60°以下であることが更に好ましい。上記接触角は協和界面科学株式会社製のDM-701の方法で測定した値である。
【0120】
本発明の組成物を用いて形成された膜の屈折率としては、1.5以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましく、1.24以下であることが特に好ましい。下限は、1.1以上であることが好ましい。なお、屈折率の値は、特に断らない限り、633nmの波長の光を用いて25℃で測定した値とする。
【0121】
膜は十分な硬さを有することが好ましい。また、膜のヤング率は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることが特に好ましい。上限値は、10以下であることが好ましい。
【0122】
膜の厚さは、用途により異なる。たとえば、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1.5μm以下であることが特に好ましい。下限値は特にないが、50nm以上であることが好ましい。
【0123】
本発明の組成物は、ディスプレイパネル、太陽電池、光学レンズ、カメラモジュール、光センサ等の光学機器における光学機能層の形成用の組成物として好ましく用いることができる。光学機能層としては、例えば、反射防止層、低屈折率層、導波路などが挙げられる。
【0124】
また、本発明の組成物は、隔壁形成用の組成物として好ましく用いることもできる。隔壁としては、例えば、固体撮像素子の撮像エリア上に画素を形成する際に、隣接する画素同士を区画するために用いられる隔壁などが挙げられる。画素としては、着色画素、透明画素、近赤外線透過フィルタ層の画素などが挙げられる。一例として、画素同士を区画するグリッド構造を形成するための隔壁が挙げられる。その例としては、特開2012-227478号公報、特開2010-232537号公報、特開2009-111225号公報、特開2017-028241号公報の
図1、特開2016-201524号公報の
図4Dなどに記載された構造が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、カラーフィルタや近赤外線透過フィルタなどの光学フィルタの周辺の額縁構造を形成するための隔壁などが挙げられる。その例としては、特開2014-048596号公報に記載された構造を挙げることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0125】
また、本発明の組成物は、光センサの製造などに用いることもできる。光センサとしては、例えば、固体撮像素子等のイメージセンサなどが挙げられる。光センサの一態様としては、本発明の組成物を用いて形成した膜をマイクロレンズ上の反射防止膜、中間膜、カラーフィルタや近赤外線透過フィルタの額縁、画素間に配置されるグリットなどの隔壁などに適用した構成が挙げられる。光センサの一実施形態として、例えば、受光素子(フォトダイオード)、下部平坦化膜、光学フィルタ、上部平坦化膜、マイクロレンズ等から構成される構造が挙げられる。光学フィルタとしては、赤(R)、緑(G)、青(B)等の着色画素や、近赤外線透過フィルタ層の画素などを有するフィルタが挙げられる。
【0126】
<組成物の製造方法>
本発明の組成物は上記の組成物を混合して製造することができる。組成物の製造にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、フィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材で構成されたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)及びナイロンが好ましい。
【0127】
フィルタの孔径は、0.1~7μmが好ましく、0.2~2.5μmがより好ましく、0.2~1.5μmが更に好ましく、0.3~0.7μmがより一層好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)および株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
【0128】
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。
【0129】
<収容容器>
本発明の組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0130】
また、収容容器の内壁をガラス製やステンレス製などにすることも好ましい。この態様によれば、容器内壁からの金属溶出を防止して、組成物の保存安定性を高めたり、組成物の成分変質を抑制することができる。
【0131】
<膜の形成方法>
次に、本発明の膜の製造方法について説明する。本発明の膜の製造方法は、上述した本発明の組成物を用いることを特徴とする。膜の製造方法は、上述した組成物を支持体に塗布して組成物層を形成する工程を含むことが好ましい。
【0132】
組成物の塗布方法としては、例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコート法);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載された方法が挙げられる。また、スピンコート法での塗布は、1000~2000rpmの回転数で行うことが好ましい。また、スピンコート法での塗布は、特開平10-142603号公報、特開平11-302413号公報、特開2000-157922号公報に記載されているように、回転速度を塗布中に高めても良い。また「最先端カラーフィルターのプロセス技術とケミカルス」2006年1月31日、シーエムシー出版記載のスピンコートプロセスも好適に使用することができる。
【0133】
スピンコート法での塗布は、組成物を支持体上に塗布する際に、支持体の回転を停止させることなく、支持体を回転させたままノズルから組成物を滴下する方式(ダイナミックディスペンス方式)で行ってもよい。スピンコート法での塗布は、回転数を段階的に変化させて行うことが好ましい。例えば、膜厚を決めるメイン回転工程と、乾燥を目的とするドライ回転工程とを含むことが好ましい。また、メイン回転工程時の時間が10秒以下等の短い場合には、その後の乾燥目的のドライ回転工程時の回転数は400rpm以上1200rpm以下が好ましく、600rpm以上1000rpm以下がより好ましい。また、メイン回転工程の時間はストリエーションの抑制と乾燥との両立の観点から、1秒以上20秒以下が好ましく、2秒以上15秒以下がより好ましく、2.5秒以上10秒以下が更に好ましい。メイン回転工程の時間が上記範囲内で短いほどストリエーションの発生をより効果的に抑制できる。また、ダイナミックディスペンス方式の場合、塗布ムラを抑制する目的で、組成物の滴下時の回転数と、メイン回転工程時との回転数の差を小さくすることも好ましい。
【0134】
組成物が塗布される支持体としては、用途に応じて適宜選択できる。例えば、シリコン、無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスなどの材質で構成された基板が挙げられる。また、InGaAs基板などを用いることも好ましい。InGaAs基板は、波長1000nmを超える光に対する感度が良好であるため、InGaAs基板上に各近赤外線透過フィルタ層を形成することで、波長1000nmを超える光に対する感度に優れた光センサが得られやすい。また、支持体上には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、支持体上には、タングステンなどの遮光材で構成されたブラックマトリックスが形成されている場合もある。また、支持体上には、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下地層が設けられていてもよい。また、支持体として、マイクロレンズを用いることもできる。マイクロレンズの表面に本発明の組成物を塗布することで、その表面が本発明の組成物からなる膜で被覆されたマイクロレンズユニットを形成することができる。このマイクロレンズユニットは、固体撮像素子などの光センサに組み込んで用いることができる。
【0135】
本発明において、支持体上に形成された組成物層に対して乾燥(プリベーク)を行ってもよい。乾燥は、ホットプレート、オーブン等を用いて50~140℃の温度で10秒~300秒で行うことが好ましい。
【0136】
また、組成物層を乾燥後、更に加熱処理(ポストベーク)を行ってもよい。ポストベーク温度は250℃以下が好ましく、240℃以下がより好ましく、230℃以下がさらに好ましい。下限は特にないが、50℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0137】
また、本発明においては、乾燥(ポストベークを行った場合はポストベーク後)の組成物層に対し、密着処理を施してもよい。密着処理としては、例えば、HMDS処理を挙げることができる。この処理には、HMDS(ヘキサメチレンジシラザン、Hexamethyldisilazane)が用いられる。HMDSを、本発明の組成物を用いて形成した組成物層に適用すると、その表面に存在するSi-OH結合と反応し、Si-O-Si(CH3)3を生成すると考えられる。これにより、組成物層の表面を疎水性にすることができる。このように組成物層の表面を疎水性にすることにより、組成物層上に後述するレジストパターンを形成する際において、レジストパターンの密着性を高めつつ、組成物層への現像液の侵入を防止することができる。
【0138】
本発明の膜の製造方法は、更にパターンを形成する工程を含んでいてもよい。パターンを形成する工程としては、フォトリソグラフィ法によるパターン形成方法、エッチング法によるパターン形成方法が挙げられる。
【0139】
(フォトリソグラフィ法によるパターン形成)
まず、本発明の組成物を用いてフォトリソグラフィ法によりパターンを形成する場合について説明する。フォトリソグラフィ法によるパターン形成は、本発明の組成物を用いて支持体上に組成物層を形成する工程と、組成物層をパターン状に露光する工程と、組成物層の未露光部を現像除去してパターンを形成する工程と、を含むことが好ましい。必要に応じて、組成物層をベークする工程(プリベーク工程)、および、現像されたパターンをベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。
【0140】
組成物層を形成する工程では、本発明の組成物を用いて、支持体上に組成物層を形成する。支持体としては、上述したものが挙げられる。組成物の塗布方法としては、上述した方法が挙げられる。支持体上に形成した組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。乾燥は、ホットプレート、オーブン等を用いて50~140℃の温度で10秒~300秒で行うことが好ましい。
【0141】
次に、組成物層をパターン状に露光する(露光工程)。例えば、組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン状に露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。
【0142】
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が挙げられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180~300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。また、300nm以上の長波な光源も利用できる。
【0143】
また、露光に際して、光を連続的に照射して露光してもよく、パルス的に照射して露光(パルス露光)してもよい。なお、パルス露光とは、短時間(例えば、ミリ秒レベル以下)のサイクルで光の照射と休止を繰り返して露光する方式の露光方法のことである。パルス露光の場合、パルス幅は、100ナノ秒(ns)以下であることが好ましく、50ナノ秒以下であることがより好ましく、30ナノ秒以下であることが更に好ましい。パルス幅の下限は、特に限定はないが、1フェムト秒(fs)以上とすることができ、10フェムト秒以上とすることもできる。周波数は、1kHz以上であることが好ましく、2kHz以上であることがより好ましく、4kHz以上であることが更に好ましい。周波数の上限は50kHz以下であることが好ましく、20kHz以下であることがより好ましく、10kHz以下であることが更に好ましい。最大瞬間照度は、50000000W/m2以上であることが好ましく、100000000W/m2以上であることがより好ましく、200000000W/m2以上であることが更に好ましい。また、最大瞬間照度の上限は、1000000000W/m2以下であることが好ましく、800000000W/m2以下であることがより好ましく、500000000W/m2以下であることが更に好ましい。なお、パルス幅とは、パルス周期における光が照射されている時間のことである。また、周波数とは、1秒あたりのパルス周期の回数のことである。また、最大瞬間照度とは、パルス周期における光が照射されている時間内での平均照度のことである。また、パルス周期とは、パルス露光における光の照射と休止を1サイクルとする周期のことである。
【0144】
照射量(露光量)は、例えば、0.03~2.5J/cm2が好ましく、0.05~1.0J/cm2がより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、または、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、または、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2~100000W/m2(例えば、5000W/m2、15000W/m2、または、35000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
【0145】
次に、組成物層の未露光部を現像除去してパターンを形成する。組成物層の未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液としては、アルカリ現像液や有機溶剤が挙げられ、アルカリ現像液が好ましい。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。
【0146】
アルカリ現像液は、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液(アルカリ現像液)であることが好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面および安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。また、現像後純水で洗浄(リンス)することも好ましい。また、リンスは、現像後の組成物層が形成された支持体を回転させつつ、現像後の組成物層へリンス液を供給して行うことが好ましい。また、リンス液を吐出させるノズルを支持体の中心部から支持体の周縁部に移動させて行うことも好ましい。この際、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させるにあたり、ノズルの移動速度を徐々に低下させながら移動させてもよい。このようにしてリンスを行うことで、リンスの面内ばらつきを抑制できる。また、ノズルを支持体中心部から周縁部へ移動させつつ、支持体の回転速度を徐々に低下させても同様の効果が得られる。
【0147】
現像後、乾燥を施した後に追加露光処理や加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。追加露光処理やポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の硬化処理である。ポストベークにおける加熱温度は、250℃以下が好ましく、240℃以下がより好ましく、230℃以下がさらに好ましい。下限は特にないが、50℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。追加露光処理を行う場合、露光に用いられる光は、波長400nm以下の光であることが好ましい。また、追加露光処理は、KR1020170122130Aに記載の方法で行ってもよい。
【0148】
(エッチング法によるパターン形成)
次に、本発明の組成物を用いてエッチング法によりパターンを形成する場合について説明する。エッチング法によるパターン形成は、本発明の組成物を用いて支持体上に組成物層を形成しこの組成物層の全体を硬化させて硬化物層を形成する工程と、この硬化物層上にフォトレジスト層を形成する工程と、フォトレジスト層をパターン状に露光したのち、現像してレジストパターンを形成する工程と、このレジストパターンをマスクとして硬化物層に対してエッチングを行う工程と、レジストパターンを硬化物層から剥離除去する工程とを含むことが好ましい。
【0149】
レジストパターンの形成に用いられるレジストとしては、特に限定されないが、例えば、書籍「高分子新素材One Point 3 微細加工とレジスト 著者:野々垣三郎、発行所:共立出版株式会社(1987年11月15日初版1刷発行)」の16ページから22ページに説明されている、アルカリ可溶性フェノール樹脂とナフトキノンジアジドを含むレジストを用いることができる。また、特許第2568883号公報、特許第2761786号公報、特許第2711590号公報、特許第2987526号公報、特許第3133881号公報、特許第3501427号公報、特許第3373072号公報、特許第3361636号公報、特開平06-054383号公報の実施例等に記載されたレジストを用いることもできる。また、レジストとしては、いわゆる化学増幅系レジストを用いることもできる。化学増幅系レジストについては、例えば、「光機能性高分子材料の新展開 1996年5月31日 第1刷発行 監修:市村國宏、発行所:株式会社シーエムシー」の129ページ以降に説明されているレジストを挙げることができる(特に、131ページ付近に説明されている、ポリヒドロキシスチレン樹脂の水酸基を酸分解性基で保護した樹脂を含むレジストや、同じく131ページ付近に説明されているESCAPレジスト(Environmentally Stable Chemical Amplification Positive Resist)などが好ましい)。また、特開2008-268875号公報、特開2008-249890号公報、特開2009-244829号公報、特開2011-013581号公報、特開2011-232657号公報、特開2012-003070号公報、特開2012-003071号公報、特許第3638068号公報、特許第4006492号公報、特許第4000407号公報、特許第4194249号公報の実施例等に記載されたレジストを用いることもできる。
【0150】
硬化物層に対して行うエッチング方式としては、ドライエッチングであってもよく、ウエットエッチングであってもよい。ドライエッチングであることが好ましい。
【0151】
硬化物層のドライエッチングは、フッ素系ガスとO2との混合ガスをエッチングガスとして用いて行うことが好ましい。フッ素系ガスとO2との混合比率(フッ素系ガス/O2)は、流量比で4/1~1/5であることが好ましく、1/2~1/4であることがより好ましい。フッ素系ガスとしては、CF4、C2F6、C3F8、C2F4、C4F8、C4F6、C5F8、CHF3などが挙げられ、C4F6、C5F8、C4F8、及びCHF3が好ましく、C4F6、C5F8がより好ましく、C4F6が更に好ましい。フッ素系ガスは、上記群の中から一種のガスを選択することができ、2種以上を混合ガスに含んでもよい。
【0152】
上記混合ガスは、エッチングプラズマの分圧コントロール安定性、及び比エッチング形状の垂直性を維持する観点から、上記フッ素系ガス及びO2に加え、さらに、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、及びキセノン(Xe)などの希ガスを更に混合してもよい。その他混合してもよいガスとして、上記群の中から1種または2種以上のガスを選択することができる。その他混合してもよいガスの混合比率は、流量比でO2を1としたとき、0より大きく25以下であることが好ましく、10以上20以下であることが好ましく、16であることが特に好ましい。
【0153】
ドライエッチング時におけるチャンバーの内部圧力は、0.5~6.0Paであることが好ましく、1~5Paであることがより好ましい。
【0154】
ドライエッチング条件については、国際公開第2015/190374号の段落番号0102~0108、特開2016-014856号公報に記載された条件が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0155】
本発明の膜の製造方法を適用して光センサなどを製造することもできる。
【実施例】
【0156】
次に、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、実施例で示した量や比率の規定は特に断らない限り質量基準である。
【0157】
<粘度の測定方法>
測定サンプルの粘度は、測定サンプルの温度を25℃に調整し、東機産業製 粘度計 RE85L(ローター:1°34’×R24測定範囲0.6~1200mPa・s)を使用して測定した。使用液量は1.5mLとし、測定開始から2分後の値を測定値とした。
【0158】
<組成物の調製>
以下の表の組成となるように各成分を混合し、日本ポール製DFA4201NIEY(0.45μmナイロンフィルター)を用いてろ過を行って組成物を得た。
【0159】
【0160】
上記表に記載の配合量の数値は質量部である。また、シリカ粒子液の配合量はシリカ粒子液のSiO2の固形分量の値である。溶剤の配合量の数値は、シリカ粒子液に含まれている溶剤量を合計した数値である。上記表に記載した原料は以下の通りである。
【0161】
(シリカ粒子液)
P1:平均粒子径15nmの球状シリカ粒子の複数個が、金属酸化物含有シリカ(連結材)によって数珠状に連結されたコロイダルシリカ粒子の溶液である。球状シリカ粒子の平均粒子径は15nmである。SiO2換算の固形分濃度14質量%)
PR1:スルーリア4110(日揮触媒化成(株)製、平均粒子径60nmのシリカ粒子液、SiO2換算の固形分濃度20質量%。このシリカ粒子液は、複数個の球状シリカ粒子が数珠状に連結されたコロイダルシリカ粒子および、複数個の球状シリカが平面的に連結されたコロイダルシリカ粒子のいずれも含まないものである)
なお、シリカ粒子液P1において、球状シリカ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定した50個の球状シリカ粒子の球状部分の投影像における円相当直径の数平均を算出して求めた。また、シリカ粒子液P1、PR1において、TEM観察の方法で、シリカ粒子液が複数個の球状シリカ粒子が数珠状に連結されたコロイダルシリカ粒子および、複数個の球状シリカが平面的に連結されたコロイダルシリカ粒子を含むものであるどうかを調べた。
【0162】
(溶剤A1)
A1-3:プロピレングリコールジアセテート(沸点190℃、粘度2.7mPa・s、分子量160)
A1-4:ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(沸点203℃、粘度1.4mPa・s、分子量190)
A1-5:ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点213℃、粘度1.7mPa・s、分子量190)
A1-6:1,4-ブタンジオールジアセテート(沸点232℃、粘度3.1mPa・s、分子量174)
A1-7:1,3-ブチレングリコールジアセテート(沸点232℃、粘度2.9mPa・s、分子量174)
A1-8:1,6-ヘキサンジオールジアセテート(沸点260℃、粘度3.9mPa・s、分子量202)
A1-11:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点217℃、粘度2.5mPa・s、分子量176)
A1-12:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点247℃、粘度3.1mPa・s、分子量204)
A1-13:トリアセチン(沸点260℃、粘度17.5mPa・s、分子量218)
A1-15:ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃、粘度3.9mPa・s、分子量134)
A1-17:炭酸プロピレン(沸点240℃、粘度2.8mPa・s、分子量102)
A1-18:エチレングリコール(沸点197℃、粘度16.1mPa・s、分子量62)
【0163】
(溶剤A2)
A2-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃、粘度1.1mPa・s、分子量132)
A2-2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃、分子量90、粘度1.8=mPa・s)
【0164】
(他の溶剤)
LC-OH:エタノール、メタノールまたはそれらの混合物
(メタノールの沸点=64℃、メタノールの粘度=0.6mPa・s、エタノールの沸点=78℃、エタノールの粘度=1.2mPa・s)
MPEG:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量220、沸点290~310℃、粘度12.8mPa・s)
W:水(沸点100℃、粘度0.9mPa・s)
【0165】
(界面活性剤)
F1:下記構造の化合物(Mw=14,000、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である)
【化3】
F2:KF6001(信越化学工業(株)製)
【0166】
(重合性化合物)
M1:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)
【0167】
(光重合開始剤)
I1:IRGACURE-OXE01(BASF社製)
【0168】
[評価]
上記で得られた組成物を、クラス1000のクリーンルーム内にて、塗布後の膜厚が0.6μmになるように、8インチ(=20.32cm)のシリコンウエハ上にスピンコート法で塗布した。その後、100℃で2分間加熱したのち、220℃で5分加熱して膜を製造した。得られた膜について、下記の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0169】
<面状(面内均一性)>
得られた膜の面状(面内均一性)をフィルメトリクス株式会社製 F50自動膜厚測定システムで測定した。シリコンウエハの直径方向に沿って等間隔で41点の膜厚を測定し、その膜厚の最大値と最小値の差分を求めた。結果を下記に区分して面状を評価した。
A:最大値と最小値の差分が10nm未満
B:最大値と最小値の差分が10nm以上15nm未満
C:最大値と最小値の差分が15nm以上20nm未満
D:最大値と最小値の差分が20nm以上
【0170】
<屈折率>
得られた膜の屈折率をエリプソメータ(J.Aウーラム製VUV-vase[商品名])で測定した(波長633nm、測定温度25℃)。
【0171】
<欠陥数>
得られた膜について、AMAT社製ウエハー欠陥評価装置ComPLUS3を用いて検査し0.5μm以上の大きさの欠陥をカウントして欠陥数を求めた。なお、8インチのシリコンウエハのうち、外周部から5mm以上内側の領域を検査範囲とした。
【0172】
【0173】
上記表に示す通り、実施例は、欠陥の少ない膜を製造することができた。
【0174】
また、実施例15の組成物を、クラス1000のクリーンルーム内にて、塗布後の膜厚が0.6μmになるように、8インチ(=20.32cm)のシリコンウエハ上にスピンコート法で塗布した。次いで、100℃で2分間加熱した。次いで、開口部のサイズが0.8μm四方であるレチクルを介して、1000mJ/cm2の露光量でi線を照射した。次いで、上記レクチルを1.0μmずらしたのち、再度1000mJ/cm2の露光量でi線を照射した。次いで、現像液(水酸化テトラメチルアンモニウム2.38質量%水溶液)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行い、次いで、純水でリンス処理し、次いで、スピン乾燥した。このようにして幅0.2μmのグリッド構造を形成することができた。
【0175】
実施例の組成物を用いて特開2017-028241号公報の
図1の隔壁40~43を作製して特開2017-028241号公報の
図1に示すイメージセンサを作製したところ、このイメージセンサは感度に優れていた。