(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-04
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】導光素子、画像表示装置およびセンシング装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20221005BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G02B5/18
G02F1/1337 515
G02F1/1337 500
G02F1/1337 520
(21)【出願番号】P 2020559291
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2019048512
(87)【国際公開番号】W WO2020122128
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2018231788
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 之人
(72)【発明者】
【氏名】篠田 克己
【審査官】小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0113309(US,A1)
【文献】特表2009-539129(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189852(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0143438(US,A1)
【文献】特表2017-522601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0164627(US,A1)
【文献】特表2012-505430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02F 1/1337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光板と、前記導光板に設けられる第1回折素子、第2回折素子および第3回折素子とを有し、
前記第1回折素子は、入射した光を異なる2以上の方向に回折して、前記導光板に入射させるものであり、前記第2回折素子は、前記第1回折素子によって回折され、前記導光板内を伝搬された光を、前記第3回折素子に向けて回折する、離間して設けられる複数の回折素子を有し、前記第3回折素子は、前記導光板から光を出射させるものであり、
前記第1回折素子および第3回折素子の少なくとも一方が、液晶化合物を含む組成物を用いて形成され、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する、液晶回折素子で
あり、
前記第1回折素子が、積層され、互いに異なる方向に光を回折する、第1A回折素子と第1B回折素子とを有し、さらに、
前記第1回折素子が液晶回折素子であり、前記第1A回折素子および前記第1B回折素子は、前記液晶化合物の光学軸の向きが厚さ方向に螺旋状に捩じれ回転している領域を有し、前記第1A回折素子と第1B回折素子とで、前記厚さ方向への螺旋の捩れ回転の方向が逆であり、かつ、前記液晶配向パターンにおいて、少なくとも一方向に沿って連続的に回転する前記液晶化合物由来の光学軸の向きの回転方向が同方向である、導光素子。
【請求項2】
導光板と、前記導光板に設けられる第1回折素子、第2回折素子および第3回折素子とを有し、
前記第1回折素子は、入射した光を異なる2以上の方向に回折して、前記導光板に入射させるものであり、前記第2回折素子は、前記第1回折素子によって回折され、前記導光板内を伝搬された光を、前記第3回折素子に向けて回折する、離間して設けられる複数の回折素子を有し、前記第3回折素子は、前記導光板から光を出射させるものであり、
前記第1回折素子および第3回折素子の少なくとも一方が、液晶化合物を含む組成物を用いて形成され、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する、液晶回折素子であり、
前記第1回折素子が、積層され、互いに異なる方向に光を回折する、第1A回折素子と第1B回折素子とを有し、さらに、
前記第1回折素子が液晶回折素子であり、前記第1A回折素子および前記第1B回折素子は、前記液晶化合物の光学軸の向きが厚さ方向に螺旋状に捩じれ回転している領域を有し、前記第1A回折素子と第1B回折素子とで、前記厚さ方向への螺旋の捩れ回転の方向が同じであり、かつ、前記液晶配向パターンにおいて、少なくとも一方向に沿って連続的に回転する前記液晶化合物由来の光学軸の向きの回転方向が異なる、導光素子。
【請求項3】
導光板と、前記導光板に設けられる第1回折素子、第2回折素子および第3回折素子とを有し、
前記第1回折素子は、入射した光を異なる2以上の方向に回折して、前記導光板に入射させるものであり、前記第2回折素子は、前記第1回折素子によって回折され、前記導光板内を伝搬された光を、前記第3回折素子に向けて回折する、離間して設けられる複数の回折素子を有し、前記第3回折素子は、前記導光板から光を出射させるものであり、
前記第1回折素子および第3回折素子の少なくとも一方が、液晶化合物を含む組成物を用いて形成され、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する、液晶回折素子であり、
前記第1回折素子が、前記導光板の面方向の異なる位置に配列され、互いに異なる方向に光を回折する、第1A回折素子と第1B回折素子とを有し、さらに、
前記第1回折素子が液晶回折素子であり、前記第1A回折素子および前記第1B回折素子は、前記液晶化合物の光学軸の向きが厚さ方向に螺旋状に捩じれ回転している領域を有し、前記第1A回折素子と第1B回折素子とで、前記厚さ方向への螺旋の捩れ回転の方向が逆であり、かつ、前記液晶配向パターンにおいて、少なくとも一方向に沿って連続的に回転する前記液晶化合物由来の光学軸の向きの回転方向が同方向である、導光素子。
【請求項4】
導光板と、前記導光板に設けられる第1回折素子、第2回折素子および第3回折素子とを有し、
前記第1回折素子は、入射した光を異なる2以上の方向に回折して、前記導光板に入射させるものであり、前記第2回折素子は、前記第1回折素子によって回折され、前記導光板内を伝搬された光を、前記第3回折素子に向けて回折する、離間して設けられる複数の回折素子を有し、前記第3回折素子は、前記導光板から光を出射させるものであり、
前記第1回折素子および第3回折素子の少なくとも一方が、液晶化合物を含む組成物を用いて形成され、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する、液晶回折素子であり、
前記第1回折素子が、前記導光板の面方向の異なる位置に配列され、互いに異なる方向に光を回折する、第1A回折素子と第1B回折素子とを有し、さらに、
前記第1回折素子が液晶回折素子であり、前記第1A回折素子および前記第1B回折素子は、前記液晶化合物の光学軸の向きが厚さ方向に螺旋状に捩じれ回転している領域を有し、前記第1A回折素子と第1B回折素子とで、前記厚さ方向への螺旋の捩れ回転の方向が同じであり、かつ、前記液晶配向パターンにおいて、少なくとも一方向に沿って連続的に回転する前記液晶化合物由来の光学軸の向きの回転方向が異なる、導光素子。
【請求項5】
導光板と、前記導光板に設けられる第1回折素子、第2回折素子および第3回折素子とを有し、
前記第1回折素子は、入射した光を異なる2以上の方向に回折して、前記導光板に入射させるものであり、前記第2回折素子は、前記第1回折素子によって回折され、前記導光板内を伝搬された光を、前記第3回折素子に向けて回折する、離間して設けられる複数の回折素子を有し、前記第3回折素子は、前記導光板から光を出射させるものであり、
前記第1回折素子、第2回折素子および第3回折素子が、液晶化合物を含む組成物を用いて形成され、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する、液晶回折素子であり、前記液晶配向パターンにおいて、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転する一方向が交差しており、
前記液晶配向パターンの、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向における、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが180°回転する長さを1周期とした際に、前記第2回折素子の前記1周期は、前記第1回折素子および前記第3回折素子の1周期よりも短い、導光素子。
【請求項6】
前記第3回折素子が、積層される、第3A回折素子と第3B回折素子とを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の導光素子。
【請求項7】
前記第3回折素子が液晶回折素子であり、かつ、第3A回折素子および第3B回折素子を有し、
前記第3A回折素子と前記第3B回折素子とは、前記液晶配向パターンにおいて、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転する一方向が、交差する、請求項1~6のいずれか1項に記載の導光素子。
【請求項8】
前記第3回折素子が液晶回折素子であり、前記液晶化合物の光学軸の向きが螺旋状に捩じれ回転している領域を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の導光素子。
【請求項9】
前記第3回折素子が液晶回折素子であり、
第1回折素子と第3回折素子とは、前記液晶配向パターンにおいて、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転する一方向が、交差する、請求項1~8のいずれか1項に記載の導光素子。
【請求項10】
前記液晶回折素子が、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を有する、請求項1~
9のいずれか1項に記載の導光素子。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の導光素子と、前記導光素子の前記第1回折素子に画像を照射する表示素子とを有する画像表示装置。
【請求項12】
前記表示素子が、前記第1回折素子に円偏光を照射する、請求項
11に記載の画像表示装置。
【請求項13】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の導光素子と、前記導光素子の前記第1回折素子に赤外光を照射する光源と、を有するセンシング装置。
【請求項14】
前記センシング装置の前記光源が、前記第1回折素子に円偏光を照射する、請求項
13に記載のセンシング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を伝搬する導光素子、および、この導光素子を用いる画像表示装置ならびにセンシング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非特許文献1に記載されるような、実際に見ている光景に、仮想の映像および各種の情報等を重ねて表示する、AR(Augmented Reality(拡張現実))グラスが実用化されている。ARグラスは、スマートグラス、ヘッドマウントディスプレイ(HMD(Head Mounted Display))、および、ARメガネ等とも呼ばれている。
【0003】
非特許文献1に示されるように、ARグラスは、一例として、ディスプレイ(光学エンジン)が表示した映像を、導光板の一端に入射して伝播し、他端から出射することにより、使用者が実際に見ている光景に、仮想の映像を重ねて表示する。
ARグラスでは、回折素子を用いて、ディスプレイからの光(投影光)を回折(屈折)させて導光板の一方の端部に入射する。これにより、角度を付けて導光板に光を導入して、導光板内で光を全反射して伝播させる。導光板を伝播した光は、導光板の他方の端部において同じく回折素子によって回折されて、導光板から、使用者による観察位置に出射される。
【0004】
ARグラスには、画像を表示する領域である視野角(FOV(Field of View))が広いことが要求される。
これに対応して、各種の提案がされている。例えば、特許文献1には、ARグラスのFOVを拡張できる光導波路として、導光板(光導波路のバルク基板)に、入力カプラ、導光板の面方向に離間して設けられる第1中間構成要素および第2中間構成要素、ならびに、出力カプラを設けた光導波路が開示されている。
【0005】
この光導波路では、ディスプレイが表示した画像は入力カプラに照射される。入力カプラは、画像(画像に対応する光)の一部を第1中間構成要素に向けて回折し、画像の一部を第2中間構成要素に向けて画像を回折する。第1中間構成要素および第2中間構成要素は、導波路を伝搬された画像を、共に、出力カプラに向けて回折する。出力カプラは、導波路を伝搬された画像を結合して回折することで、導光板から画像を出射する。
特許文献1に記載される光導波路は、このように、画像を離間して配置される第1中間構成要素および第2中間構成要素に向かって回折することで、FOVを拡張している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Bernard C. Kress et al., Towards the Ultimate Mixed Reality Experience: HoloLens Display Architecture Choices, SID 2017 DIGEST, pp.127-131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載される光導波路において、入力カプラ、第1中間構成要素および第2中間構成要素、ならびに、出力カプラは、いずれも、回折格子(回折素子)である。
特許文献1に記載される光導波路では、回折格子として、表面レリーフ格子を用いている。表面レリーフ格子とは、表面に周期構造(周期的な変化)を有するものであり、例えば、表面に周期的な溝(格子線)等を設けた回折格子である。
【0009】
特許文献1に記載される光導波路をARグラスに利用することで、FOVを拡張することができる。
しかしながら、特許文献1に記載される光導波路では、回折格子として表面レリーフ格子を用いているため、光の利用効率が低く、例えば、ARグラス等に利用した場合に、表示装置が表示した画像に比して、使用者に観察される画像が暗くなってしまう。
【0010】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、入射した光を高い光の利用効率で出射でき、しかも、ARグラス等に利用することでFOVを広げる事ができる導光素子、および、この導光素子を用いる画像表示装置ならびにセンシング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 導光板と、導光板に設けられる第1回折素子、第2回折素子および第3回折素子とを有し、
第1回折素子は、入射した光を異なる2以上の方向に回折して、導光板に入射させるものであり、第2回折素子は、第1回折素子によって回折され、導光板内を伝搬された光を、第3回折素子に向けて回折する、離間して設けられる複数の回折素子を有し、第3回折素子は、導光板から光を出射させるものであり、
第1回折素子および第3回折素子の少なくとも一方が、液晶化合物を含む組成物を用いて形成され、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する、液晶回折素子である、導光素子。
[2] 第1回折素子が、積層され、互いに異なる方向に光を回折する、第1A回折素子と第1B回折素子とを有する、[1]に記載の導光素子。
[3] 第1回折素子が、導光板の面方向の異なる位置に配列され、互いに異なる方向に光を回折する、第1A回折素子と第1B回折素子とを有する、[1]に記載の導光素子。
[4] 第1回折素子が液晶回折素子であり、第1A回折素子および第1B回折素子は、液晶化合物の光学軸の向きが厚さ方向に螺旋状に捩じれ回転している領域を有し、
第1A回折素子と第1B回折素子とで、厚さ方向への螺旋の捩れ回転の方向が逆であり、かつ、液晶配向パターンにおいて、少なくとも一方向に沿って連続的に回転する液晶化合物由来の光学軸の向きの回転方向が同方向である、[2]または[3]に記載の導光素子。
[5] 第1回折素子が液晶回折素子であり、第1A回折素子および第1B回折素子は、液晶化合物の光学軸の向きが厚さ方向に螺旋状に捩じれ回転している領域を有し、
第1A回折素子と第1B回折素子とで、厚さ方向への螺旋の捩れ回転の方向が同じであり、かつ、液晶配向パターンにおいて、少なくとも一方向に沿って連続的に回転する液晶化合物由来の光学軸の向きの回転方向が異なる、[2]または[3]に記載の導光素子。
[6] 第3回折素子が、積層される、第3A回折素子と第3B回折素子とを有する、[1]~[5]のいずれかに記載の導光素子。
[7] 第3回折素子が液晶回折素子であり、かつ、第3A回折素子および第3B回折素子を有し、
第3A回折素子と第3B回折素子とは、液晶配向パターンにおいて、液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転する一方向が、交差する、[1]~[6]のいずれかに記載の導光素子。
[8] 第3回折素子が液晶回折素子であり、液晶化合物の光学軸の向きが螺旋状に捩じれ回転している領域を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の導光素子。
[9] 第1回折素子および第3回折素子が液晶回折素子であり、
第1回折素子と第3回折素子とは、液晶配向パターンにおいて、液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転する一方向が、交差する、[1]~[8]のいずれかに記載の導光素子。
[10] 第1回折素子、第2回折素子および第3回折素子が液晶回折素子で、液晶配向パターンにおいて、液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転する一方向が交差しており、
液晶配向パターンの、液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向における、液晶化合物由来の光学軸の向きが180°回転する長さを1周期とした際に、第2回折素子の1周期は、第1回折素子および第3回折素子の1周期よりも短い、[1]~[9]のいずれかに記載の導光素子。
[11] 液晶回折素子が、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を有する、[1]~[10]のいずれかに記載の導光素子。
[12] 液晶回折素子は、液晶回折素子の主面の法線方向および法線に対して傾斜した方向から面内レタデーションを測定した際に、遅相軸面内および進相軸面内のいずれかにおいて、面内レタデーションが最小となる方向が前記法線方向から傾斜している[1]~[11]のいずれかに記載の導光素子。
[13] 走査型電子顕微鏡によって観察される液晶層の断面において、液晶相に由来する明部および暗部が、液晶層の主面に対して傾斜しており、明部から明部、または、暗部から暗部の、明部または暗部が成す線の法線方向における間隔を1/2傾斜面ピッチとした際に、液晶層の傾斜面ピッチが厚さ方向の位置によって異なる領域を有する、[1]~[12]のいずれかに記載の導光素子。
[14] 厚さ方向の一方向に向かって、傾斜面ピッチが連続的に増大または減少する領域を有する、[13]に記載の導光素子。
[15] 走査型電子顕微鏡によって観察される液晶層の断面において、液晶相に由来する明部および暗部が、液晶層の主面に対して傾斜しており、明部または暗部が成す線が液晶層の主面に対する傾斜角をθhpとした際に、傾斜角θhpが厚さ方向の位置によって異なる領域を有する、[1]~[14]のいずれかに記載の導光素子。
[16] 厚さ方向の一方向に向かって、傾斜角θhpが連続的に増大または減少する領域を有する、[15]に記載の導光素子。
[17] 液晶回折素子における液晶配向パターンの、液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向における、液晶化合物由来の光学軸の向きが180°回転する長さを1周期とした際に、1周期が1μm以下である、[1]~[16]のいずれかに記載の導光素子。
[18] 第1回折素子、第2回折素子および第3回折素子が、液晶回折素子であり、かつ、それぞれが、青色画像に対応する青色回折層、緑色画像に対応する緑色回折層および赤色画像に対応する赤色回折層を有し、
液晶配向パターンの、液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向における、液晶化合物由来の光学軸の向きが180°回転する長さを1周期とした際に、1周期が、赤色回折層が最も長く、青色回折層が最も短い、[1]~[17]のいずれかに記載の導光素子。
[19] 青色回折層、緑色回折層および赤色回折層が、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を有し、
青色回折層、緑色回折層および赤色回折層は、コレステリック液晶層における1周期の順列と、コレステリック液晶層の選択反射中心波長の順列とが、一致している、[18]に記載の導光素子。
[20] 青色回折層、緑色回折層および赤色回折層が、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を有し、
青色回折層、緑色回折層および赤色回折層の液晶配向パターンの1周期を、それぞれ、ΛB、ΛG、および、ΛRとし、
青色回折層、緑色回折層および赤色回折層の傾斜面ピッチを、それぞれ、PtB、PtG、および、PtRとした際に、
ΛB<ΛG<ΛR、および、PtB<PtG<PtR
を満たす[18]または[19]に記載の導光素子。
[21] 第1回折素子、第2回折素子および第3回折素子が、液晶回折素子であり、かつ、それぞれが、可視光の波長帯域を2つの波長帯域に分けたときに、2つの波長帯域の短波側の画像に対応する短波側回折層および長波側の画像に対応する長波側回折層を有し、
液晶配向パターンの、液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向における、液晶化合物由来の光学軸の向きが180°回転する長さを1周期とした際に、1周期が、長波側回折層が短波側回折層よりも長い、[1]~[17]のいずれかに記載の導光素子。
[22] 長波側回折層および短波側回折層が、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を有し、
長波側回折層および短波側回折層は、コレステリック液晶層における1周期の順列と、コレステリック液晶層の選択反射中心波長の順列とが、一致している、[21]に記載の導光素子。
[23] 長波側回折層および短波側回折層が、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を有し、
長波側回折層および短波側回折層の液晶配向パターンの1周期を、それぞれ、ΛS、および、ΛLとし、
長波側回折層および短波側回折層の傾斜面ピッチを、それぞれ、PtS、および、PtLとした際に、
ΛS<ΛL、および、PtS<PtL
を満たす[21]または[22]に記載の導光素子。
[24] [1]~[23]のいずれかに記載の導光素子と、導光素子の第1回折素子に画像を照射する表示素子とを有する画像表示装置。
[25] 表示素子が、第1回折素子に円偏光を照射する、[24]に記載の画像表示装置。
[26] [1]~[17]のいずれかに記載の導光素子と、導光素子の第1回折素子に赤外光を照射する光源と、を有するセンシング装置。
[27] センシング装置の光源が、第1回折素子に円偏光を照射する、[26]に記載のセンシング装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導光素子は、入射した光を高い光の利用効率で出射できる。また、この導光素子を用いる本発明の画像表示装置は、例えば、ARグラス等に利用することにより、広い視野角での画像の表示が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の導光素子を用いる本発明の画像表示装置の一例を概念的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す画像表示装置を概念的に示す正面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す画像表示装置を概念的に示す側面図である。
【
図4】
図4は、第1回折素子の一例を概念的に示す図である。
【
図5】
図5は、第1回折素子を説明するための概念図である。
【
図7】
図7は、第1A回折素子の作用を説明するための概念図である。
【
図8】
図8は、第1回折素子の作用を説明するための概念図である。
【
図9】
図9は、第1回折素子の別の例の作用を説明するための概念図である。
【
図10】
図10は、第1回折素子の別の例を概念的に示す図である。
【
図11】
図11は、第1A回折素子の別の例を概念的に示す図である。
【
図15】
図15は、
図3に示す回折素子の配向膜を露光する露光装置の別の例の概念図である。
【
図16】
図16は、実施例における回折効率の測定方法を説明するための概念図である。
【
図17】
図17は、
図6に示す第1A回折素子における液晶層の断面SEM(走査型電子顕微鏡)画像を概念的に示す図である。
【
図18】
図18は、第1A回折素子として用いられる液晶層の他の例を概念的に示す図である。
【
図19】
図19は、第1A回折素子として用いられる液晶層の他の例を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の導光素子、画像表示装置およびセンシング装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0015】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または双方」の意味で使用される。
【0016】
本明細書において、可視光は、電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の光であり、380~780nmの波長域の光を示す。非可視光は、380nm未満の波長域および780nmを超える波長域の光である。
またこれに限定されるものではないが、可視光のうち、420~490nmの波長域の光は青色光であり、495~570nmの波長域の光は緑色光であり、620~750nmの波長域の光は赤色光である。
【0017】
図1~3に、本発明の導光素子を用いる本発明の画像表示装置の一例を概念的に示す。なお、
図1は平面図であり、画像表示装置10を使用者Uによる観察側とは逆側の面から見た図である。
図2は正面図であり、画像表示装置10を
図1の紙面の下方向から見た図である。
図3は側面図であり、画像表示装置10を
図1の紙面右手側から見た図である。
【0018】
図1に示す画像表示装置10は、好適な一例として、ARグラスとして利用されるものである。なお、本発明の回折素子および導光素子は、ARグラス以外にも、透明スクリーン、HUD(Head-Up Display)、照明装置、および、センサー等の光学素子にも利用可能である。なお、照明装置には、液晶ディスプレイのバックライトなどを含む。また、本発明の画像表示装置は、これらの光学素子を用いる画像表示装置にも利用可能である。
【0019】
図1に示す画像表示装置10は、表示素子12と、導光板16と、導光板16に設けられる、第1回折素子18、導光板16の面方向に離間して配置される第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20b、ならびに、第3回折素子24とを有する。
後述するが、画像表示装置10は、表示素子12が表示した画像(画像に対応する光)を、第1回折素子18によって異なる2方向に回折して、導光板16に入射する。第1回折素子18による回折光は、導光板16内を全反射して伝搬し、一方の回折光は第2A回折素子20aに入射し、他方の回折光は第2B回折素子20bに入射する。第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20bに入射した光は、共に、第3回折素子24に向けて回折され、導光板16内を全反射して伝搬し、共に、第3回折素子24に入射して、第3回折素子24によって回折されて、導光板16から出射して、使用者Uによる観察に供される。
【0020】
[表示素子]
表示素子12は、使用者Uが観察する画像(映像)を表示して、画像を第1回折素子18に照射するものである。
本発明の画像表示装置10において、表示素子12には制限はなく、ARグラス等に用いられる公知の表示素子(表示装置、プロジェクター)が、各種、利用可能である。表示素子12としては、一例として、ディスプレイと投映レンズとを有する表示素子が例示される。
【0021】
本発明の画像表示装置10において、ディスプレイには、制限はなく、例えば、ARグラス等に用いられる公知のディスプレイが、各種、利用可能である。
ディスプレイとしては、一例として、液晶ディスプレイ(LCOS:Liquid Crystal On Siliconなどを含む)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、DLP(Digital Light Processing)、および、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを用いたスキャニング方式ディスプレイ等が例示される。
なお、ディスプレイは、モノクロ画像(単色画像)を表示するものでも、二色画像を表示するものでも、カラー画像を表示するものでもよい。図示例の画像表示装置10は、一例として、赤色のモノクロ画像を表示するものであり、ディスプレイは、赤色のモノクロ画像を表示する。
【0022】
本発明の画像表示装置10に用いられる表示素子12おいて、投映レンズも、ARグラス等に用いられる公知の投映レンズ(集光レンズ)である。
【0023】
ここで、本発明の画像表示装置10においては、表示素子12による表示画像すなわち表示素子12が照射する光には、制限はないが、無偏光(自然光)または円偏光が好ましい。
表示素子12が円偏光を照射する際に、ディスプレイが無偏光の画像を照射する場合には、表示素子12は、例えば直線偏光子とλ/4板とからなる円偏光板を有するのが好ましい。また、ディスプレイが直線偏光の画像を照射する場合には、表示素子12は、例えばλ/4板を有するのが好ましい。
なお、表示素子12が照射する光は、例えば直線偏光等、他の偏光であってもよい。
【0024】
[導光板]
画像表示装置10において、導光板16は、内部に入射した光を反射して導光(伝搬)する、公知の導光板である。この導光板16と、第1回折素子18、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20b、ならびに、第3回折素子24とで、本発明の導光素子が構成される。
導光板16には、制限はなく、ARグラスおよび液晶ディスプレイのバックライトユイット等で用いられている公知の導光板が、各種、利用可能である。
【0025】
[回折素子]
画像表示装置10は、導光板16の主面に、第1回折素子18、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20b、ならびに、第3回折素子24を有する。主面とは、シート状物(板状物、フィルム、層等)の最大面である。なお、図示例においては、第1回折素子18、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20b、ならびに、第3回折素子24は、導光板16の同一の主面に設けられているが、各回折素子は、導光板16の主面であれば、異なる主面に設けられてもよい。
第1回折素子18は、第1A回折素子18aと第1B回折素子18bとが積層されている。第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20bは、本発明における第2回折素子を構成する。また、第3回折素子24は、第3A回折素子24aと第3B回折素子24bとが積層されている。
【0026】
図示は省略するが、第1回折素子18、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20b、ならびに、第3回折素子24は、貼合層によって導光板に貼り合わされている。
本発明において、貼合層は、貼り合わせの対象となる物同士を貼り合わせられる層であれば、公知の各種の材料からなる層が利用可能である。貼合層としては、貼り合わせる際には流動性を有し、その後、固体になる、接着剤からなる層でも、貼り合わせる際にゲル状(ゴム状)の柔らかい固体で、その後もゲル状の状態が変化しない、粘着剤からなる層でも、接着剤と粘着剤との両方の特徴を持った材料からなる層でもよい。従って、貼合層は、光学透明接着剤(OCA(Optical Clear Adhesive))、光学透明両面テープ、および、紫外線硬化型樹脂等の、光学装置および光学素子等でシート状物の貼り合わせに用いられる公知の層を用いればよい。
あるいは、貼合層で貼り合わせるのではなく、第1回折素子18、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20b、ならびに、第3回折素子24と導光板16とを積層して、枠体または治具等で保持して、本発明の導光素子を構成してもよい。
さらに、導光板16上に直接、第1回折素子18、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20b、ならびに、第3回折素子24を形成してもよい。
【0027】
第1回折素子18の第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18b、ならびに、第3回折素子24の第3A回折素子24aと第3B回折素子24bは、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層である。
また、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20bも、同様のコレステリック液晶層を有する。
【0028】
図4に、第1回折素子18を概念的に示す。
図4に示すように、第1回折素子18は、支持体30と、配向膜32と、コレステリック液晶層である第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bと、を有する。
図示例の画像表示装置10(導光素子)においては、第3回折素子24も、基本的に、
図3に示す第1回折素子18と同様の層構成を有する。また、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20bは、コレステリック液晶層を1層のみ有する以外は、基本的に、
図3に示す第1回折素子18と同様の層構成を有する。
従って、以下の説明は、第1回折素子18を代表例として説明するが、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20b、ならびに、第3回折素子24も、構成および作用効果等は、基本的に、第1回折素子18と同様である。
なお、
図1~3においては、図面を簡略化するために、第1回折素子18、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20b、ならびに、第3回折素子24は、支持体30および配向膜32は省略している。
【0029】
なお、図示例の第1回折素子18は、支持体30と、配向膜32と、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bとを有するが、本発明は、これに制限はされない。
本発明の画像表示装置(導光素子)において、第1回折素子は、例えば、第1回折素子18を導光板16に貼り合わせた後に、支持体30を剥離した、配向膜32、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bのみを有するものでもよい。または、第1回折素子18は、例えば、第1回折素子18を導光板16に貼り合わせた後に、支持体30および配向膜32を剥離した、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bのみを有するものでもよい。
【0030】
<支持体>
第1回折素子18において、支持体30は、配向膜32、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bを支持するものである。
以下の説明では、第1A回折素子18aと第1B回折素子18bとを区別する必要がない場合には、第1A回折素子18aと第1B回折素子18bとをまとめて『コレステリック液晶層』とも言う。
【0031】
支持体30は、配向膜32およびコレステリック液晶層を支持できるものであれば、各種のシート状物(フィルム、板状物)が利用可能である。
なお、支持体30は、対応する光に対する透過率が50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、85%以上であるのがさらに好ましい。
【0032】
支持体30の厚さには、制限はなく、第1回折素子18の用途および支持体30の形成材料等に応じて、配向膜32、コレステリック液晶層を保持できる厚さを、適宜、設定すればよい。
支持体30の厚さは、1~1000μmが好ましく、3~250μmがより好ましく、5~150μmがさらに好ましい。
【0033】
支持体30は単層であっても、多層であってもよい。
単層である場合の支持体30としては、ガラス、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル、および、ポリオレフィン等からなる支持体30が例示される。多層である場合の支持体30の例としては、前述の単層の支持体のいずれかなどを基板として含み、この基板の表面に他の層を設けたもの等が例示される。
【0034】
<配向膜>
第1回折素子18において、支持体30の表面には配向膜32が形成される。
配向膜32は、第1回折素子18の第1A回折素子18aを形成する際に、液晶化合物40を所定の液晶配向パターンに配向するための配向膜である。
後述するが、本発明の第1回折素子18において、コレステリック液晶層である第1A回折素子18aは、液晶化合物40に由来する光学軸40A(
図6参照)の向きが、面内の一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する。従って、配向膜32は、第1A回折素子18aが、この液晶配向パターンを形成できるように、形成される。
以下の説明では、『光学軸40Aの向きが回転』を単に『光学軸40Aが回転』とも言う。
【0035】
配向膜32は、公知の各種のものが利用可能である。
例えば、ポリマーなどの有機化合物からなるラビング処理膜、無機化合物の斜方蒸着膜、マイクログルーブを有する膜、ならびに、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチルなどの有機化合物のラングミュア・ブロジェット法によるLB(Langmuir-Blodgett:ラングミュア・ブロジェット)膜を累積させた膜、等が例示される。
【0036】
ラビング処理による配向膜32は、ポリマー層の表面を紙または布で一定方向に数回こすることにより形成できる。
配向膜32に使用する材料としては、ポリイミド、ポリビニルアルコール、特開平9-152509号公報に記載された重合性基を有するポリマー、ならびに、特開2005-97377号公報、特開2005-99228号公報および特開2005-128503号公報に記載される配向膜などの形成に用いられる材料等が好ましい。
【0037】
第1回折素子18においては、配向膜32は、光配向性の素材に偏光または非偏光を照射して配向膜32とした、いわゆる光配向膜が好適に利用される。すなわち、本発明の第1回折素子18においては、配向膜32として、支持体30上に、光配向材料を塗布して形成した光配向膜が、好適に利用される。
偏光の照射は、光配向膜に対して、垂直方向または斜め方向から行うことができ、非偏光の照射は、光配向膜に対して、斜め方向から行うことができる。
【0038】
本発明に利用可能な配向膜に用いられる光配向材料としては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号公報および特許第4151746号公報に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報および特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号および特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報および特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミドおよび光架橋性ポリエステル、ならびに、特開平9-118717号公報、特表平10-506420号公報、特表2003-505561号公報、国際公開第2010/150748号、特開2013-177561号公報および特開2014-12823号公報に記載の光二量化可能な化合物、特にシンナメート化合物、カルコン化合物およびクマリン化合物等が、好ましい例として例示される。
中でも、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミド、光架橋性ポリエステル、シンナメート化合物、および、カルコン化合物は、好適に利用される。
【0039】
配向膜32の厚さには、制限はなく、配向膜32の形成材料に応じて、必要な配向機能を得られる厚さを、適宜、設定すればよい。
配向膜32の厚さは、0.01~5μmが好ましく、0.05~2μmがより好ましい。
【0040】
配向膜32の形成方法には、制限はなく、配向膜32の形成材料に応じた公知の方法が、各種、利用可能である。一例として、配向膜32を支持体30の表面に塗布して乾燥させた後、配向膜32をレーザ光によって露光して、配向パターンを形成する方法が例示される。
【0041】
図15に、配向膜32を露光して、配向パターンを形成する露光装置の一例を概念的に示す。
図15に示す露光装置60は、レーザ62を備えた光源64と、レーザ62が出射したレーザ光Mの偏光方向を変えるλ/2板65と、レーザ62が出射したレーザ光Mを光線MAおよびMBの2つに分離する偏光ビームスプリッター68と、分離された2つの光線MAおよびMBの光路上にそれぞれ配置されたミラー70Aおよび70Bと、λ/4板72Aおよび72Bと、を備える。
なお、光源64は直線偏光P
0を出射する。λ/4板72Aは、直線偏光P
0(光線MA)を右円偏光P
Rに、λ/4板72Bは直線偏光P
0(光線MB)を左円偏光P
Lに、それぞれ変換する。
【0042】
配向パターンを形成される前の配向膜32を有する支持体30が露光部に配置され、2つの光線MAと光線MBとを配向膜32上において交差させて干渉させ、その干渉光を配向膜32に照射して露光する。
この際の干渉により、配向膜32に照射される光の偏光状態が干渉縞状に周期的に変化するものとなる。これにより、配向膜32において、配向状態が周期的に変化する配向パターンが得られる。
露光装置60においては、2つの光線MAおよびMBの交差角αを変化させることにより、配向パターンの周期を調節できる。すなわち、露光装置60においては、交差角αを調節することにより、液晶化合物40に由来する光学軸40Aが一方向に沿って連続的に回転する配向パターンにおいて、光学軸40Aが回転する1方向における、光学軸40Aが180°回転する1周期の長さを調節できる。
このような配向状態が周期的に変化した配向パターンを有する配向膜32上に、コレステリック液晶層を形成することにより、後述するように、液晶化合物40に由来する光学軸40Aが一方向に沿って連続的に回転する液晶配向パターンを有する、コレステリック液晶層を形成できる。
また、λ/4板72Aおよび72Bの光学軸を、それぞれ、90°回転することにより、光学軸40Aの回転方向を逆にすることができる。
【0043】
なお、本発明の光学素子において、配向膜32は、好ましい態様として設けられるものであり、必須の構成要件ではない。
例えば、支持体30をラビング処理する方法、支持体30をレーザ光などで加工する方法等によって、支持体30に配向パターンを形成することにより、コレステリック液晶層が、液晶化合物40に由来する光学軸40Aの向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する構成とすることも、可能である。すなわち、本発明においては、支持体30を配向膜として作用させてもよい。
【0044】
<コレステリック液晶層>
第1回折素子18において、配向膜32の表面には、第1A回折素子18aが形成される。さらに、第1回折素子18において、第1A回折素子18aの表面には、第1B回折素子18bが形成される。
上述したように、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bは、共に、コレステリック液晶相を固定してなる、コレステリック液晶層である。
【0045】
なお、
図4においては、図面を簡略化して第1回折素子18の構成を明確に示すために、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bは、配向膜32の表面および第1A回折素子18aの表面の液晶化合物40(液晶化合物分子)のみを概念的に示している。しかしながら、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bは、
図5に第1A回折素子18aを例示して概念的に示すように、通常のコレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層と同様に、液晶化合物40が螺旋状に旋回して積み重ねられた螺旋構造を有し、液晶化合物40が螺旋状に1回転(360°回転)して積み重ねられた構成を螺旋1ピッチとして、螺旋状に旋回する液晶化合物40が、複数ピッチ、積層された構造を有する。
【0046】
周知のように、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層は、波長選択反射性を有する。
後に詳述するが、コレステリック液晶層の選択的な反射波長域は、上述した螺旋1ピッチの厚さ方向の長さに依存する。液晶化合物40がコレステリック液晶層の主面(X-Y面)に対して、その光学軸40Aが平行に配向している場合は、螺旋1ピッチの厚さ方向の長さは、
図5に示すピッチPである。第1回折素子18においては、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bはのピッチPは同じである。従って、図示例の第1回折素子18において、第1A回折素子18aと第1B回折素子18bとは、同じ選択反射中心波長を有する。
【0047】
前述のように、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bは、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層である。
すなわち、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bは、共に、コレステリック構造を有する液晶化合物40(液晶材料)からなる層である。
【0048】
<<コレステリック液晶相>>
コレステリック液晶相は、特定の波長において選択反射性を示すことが知られている。
一般的なコレステリック液晶相において、選択反射の中心波長(選択反射中心波長)λは、コレステリック液晶相における螺旋のピッチPに依存し、コレステリック液晶相の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。そのため、この螺旋ピッチを調節することによって、選択反射中心波長を調節することができる。
コレステリック液晶相の選択反射中心波長は、ピッチPが長いほど、長波長になる。
なお、螺旋のピッチPとは、上述したように、コレステリック液晶相の螺旋構造1ピッチ分(螺旋の周期)であり、言い換えれば、螺旋の巻き数1回分であり、すなわち、コレステリック液晶相を構成する液晶化合物のダイレクターが360°回転する螺旋軸方向の長さである。液晶化合物のダイレクターは、例えば棒状液晶であれば長軸方向に一致する。
【0049】
コレステリック液晶相の螺旋ピッチは、コレステリック液晶層を形成する際に、液晶化合物と共に用いるキラル剤の種類、および、キラル剤の添加濃度に依存する。従って、これらを調節することによって、所望の螺旋ピッチを得ることができる。
なお、ピッチの調節については富士フイルム研究報告No.50(2005年)p.60-63に詳細な記載がある。螺旋のセンスおよびピッチの測定法については「液晶化学実験入門」日本液晶学会編 シグマ出版2007年出版、46頁、および、「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 丸善 196頁に記載される方法を用いることができる。
【0050】
コレステリック液晶相は、特定の波長において左右いずれかの円偏光に対して選択反射性を示す。反射光が右円偏光であるか左円偏光であるかは、コレステリック液晶相の螺旋の捩れ方向(センス)による。コレステリック液晶相による円偏光の選択反射は、コレステリック液晶層の螺旋の捩れ方向が右の場合は右円偏光を反射し、螺旋の捩れ方向が左の場合は左円偏光を反射する。
なお、コレステリック液晶相の旋回の方向は、コレステリック液晶層を形成する液晶化合物の種類および/または添加されるキラル剤の種類によって調節できる。
図示例の画像表示装置10において、第1回折素子18の第1A回折素子18aと第1B回折素子18bとは、コレステリック液晶相の螺旋の捩れ方向が異なる。従って、第1A回折素子18aと第1B回折素子18bとは、反射する円偏光の旋回方向が異なる。一例として、第1A回折素子18aは赤色光の右円偏光を反射し、第1B回折素子18bは赤色光の左円偏光を反射する。
【0051】
この点に関しては、第3回折素子24の第3A回折素子24aおよび第3B回折素子24bも同様で、第3A回折素子24aは赤色光の右円偏光を反射し、第3B回折素子24bは赤色光の左円偏光を反射する。
また、第2A回折素子20aのコレステリック液晶層は右円偏光を反射し、第2B回折素子20bのコレステリック液晶層は左円偏光を反射する。
【0052】
また、選択反射を示す選択反射波長域(円偏光反射波長域)の半値幅Δλ(nm)は、コレステリック液晶相のΔnと螺旋のピッチPとに依存し、Δλ=Δn×Pの関係に従う。そのため、選択反射波長域(選択的な反射波長域)の幅の制御は、Δnを調節して行うことができる。Δnは、コレステリック液晶層を形成する液晶化合物の種類およびその混合比率、ならびに、配向固定時の温度により調節できる。
反射波長域の半値幅は、回折素子の用途に応じて調節され、例えば10~500nmであればよく、好ましくは20~300nmであり、より好ましくは30~100nmである。
【0053】
<<コレステリック液晶層の形成方法>>
コレステリック液晶層(第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18b)は、コレステリック液晶相を層状に固定して形成できる。
コレステリック液晶相を固定した構造は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持されている構造であればよい。コレステリック液晶相を固定した構造は、典型的には、重合性液晶化合物をコレステリック液晶相の配向状態としたうえで、紫外線照射、加熱等によって重合、硬化し、流動性が無い層を形成して、同時に、外場または外力によって配向形態に変化を生じさせることない状態に変化した構造が好ましい。
なお、コレステリック液晶相を固定した構造においては、コレステリック液晶相の光学的性質が保持されていれば十分であり、コレステリック液晶層において、液晶化合物40は液晶性を示さなくてもよい。例えば、重合性液晶化合物は、硬化反応により高分子量化して、液晶性を失っていてもよい。
【0054】
コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層の形成に用いる材料としては、一例として、液晶化合物を含む液晶組成物が挙げられる。液晶化合物は重合性液晶化合物であるのが好ましい。
また、コレステリック液晶層の形成に用いる液晶組成物は、さらに界面活性剤およびキラル剤を含んでいてもよい。
【0055】
--重合性液晶化合物--
重合性液晶化合物は、棒状液晶化合物であっても、円盤状液晶化合物であってもよい。
コレステリック液晶相を形成する棒状の重合性液晶化合物の例としては、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、および、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0056】
重合性液晶化合物は、重合性基を液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、およびアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基がより好ましい。重合性基は種々の方法で、液晶化合物の分子中に導入できる。重合性液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1~6個、より好ましくは1~3個である。
重合性液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、米国特許第5622648号明細書、米国特許第5770107号明細書、国際公開第95/22586号、国際公開第95/24455号、国際公開第97/00600号、国際公開第98/23580号、国際公開第98/52905号、特開平1-272551号公報、特開平6-16616号公報、特開平7-110469号公報、特開平11-80081号公報、および、特開2001-328973号公報等に記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0057】
また、上記以外の重合性液晶化合物としては、特開昭57-165480号公報に開示されているようなコレステリック相を有する環式オルガノポリシロキサン化合物等を用いることができる。さらに、前述の高分子液晶化合物としては、液晶を呈するメソゲン基を主鎖、側鎖、あるいは主鎖および側鎖の両方の位置に導入した高分子、コレステリル基を側鎖に導入した高分子コレステリック液晶、特開平9-133810号公報に開示されているような液晶性高分子、および、特開平11-293252号公報に開示されているような液晶性高分子等を用いることができる。
【0058】
--円盤状液晶化合物--
円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報や特開2010-244038号公報に記載のものを好ましく用いることができる。
【0059】
また、液晶組成物中の重合性液晶化合物の添加量は、液晶組成物の固形分質量(溶媒を除いた質量)に対して、75~99.9質量%であるのが好ましく、80~99質量%であるのがより好ましく、85~90質量%であるのがさらに好ましい。
【0060】
--界面活性剤--
コレステリック液晶層を形成する際に用いる液晶組成物は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤は、安定的に、または迅速に、コレステリック液晶相の配向に寄与する配向制御剤として機能できる化合物が好ましい。界面活性剤としては、例えば、シリコ-ン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤が挙げられ、フッ素系界面活性剤が好ましく例示される。
【0061】
界面活性剤の具体例としては、特開2014-119605号公報の段落[0082]~[0090]に記載の化合物、特開2012-203237号公報の段落[0031]~[0034]に記載の化合物、特開2005-99248号公報の段落[0092]および[0093]中に例示されている化合物、特開2002-129162号公報の段落[0076]~[0078]および段落[0082]~[0085]中に例示されている化合物、ならびに、特開2007-272185号公報の段落[0018]~[0043]等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、などが挙げられる。
なお、界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤として、特開2014-119605号公報の段落[0082]~[0090]に記載の化合物が好ましい。
【0062】
液晶組成物中における、界面活性剤の添加量は、液晶化合物の全質量に対して0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましく、0.02~1質量%がさらに好ましい。
【0063】
--キラル剤(光学活性化合物)--
キラル剤(キラル剤)はコレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル剤は、化合物によって誘起する螺旋の捩れ方向または螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。
キラル剤としては、特に制限はなく、公知の化合物(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4-3項、TN(twisted nematic)、STN(Super Twisted Nematic)用キラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)、イソソルビド、および、イソマンニド誘導体等を用いることができる。
キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物または面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン、および、これらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。キラル剤と液晶化合物とがいずれも重合性基を有する場合は、重合性キラル剤と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル剤が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であるのが好ましい。従って、キラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基であるのが好ましく、不飽和重合性基であるのがより好ましく、エチレン性不飽和重合性基であるのがさらに好ましい。
また、キラル剤は、液晶化合物であってもよい。
【0064】
キラル剤が光異性化基を有する場合には、塗布、配向後に活性光線などのフォトマスク照射によって、発光波長に対応した所望の反射波長のパターンを形成することができるので好ましい。光異性化基としては、フォトクロッミック性を示す化合物の異性化部位、アゾ基、アゾキシ基、または、シンナモイル基が好ましい。具体的な化合物として、特開2002-80478号公報、特開2002-80851号公報、特開2002-179668号公報、特開2002-179669号公報、特開2002-179670号公報、特開2002-179681号公報、特開2002-179682号公報、特開2002-338575号公報、特開2002-338668号公報、特開2003-313189号公報、および、特開2003-313292号公報等に記載の化合物を用いることができる。
【0065】
液晶組成物における、キラル剤の含有量は、液晶化合物の含有モル量に対して0.01~200モル%が好ましく、1~30モル%がより好ましい。
【0066】
--重合開始剤--
液晶組成物が重合性化合物を含む場合は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。
光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、米国特許第2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、米国特許第2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)、ならびに、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
液晶組成物中の光重合開始剤の含有量は、液晶化合物の含有量に対して0.1~20質量%であるのが好ましく、0.5~12質量%であるのがさらに好ましい。
【0067】
--架橋剤--
液晶組成物は、硬化後の膜強度向上、耐久性向上のため、任意に架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、紫外線、熱、および、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレートおよびエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]および4,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートおよびビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ならびに、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物などが挙げられる。また、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度および耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の含有量は、液晶組成物の固形分質量に対して、3~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、架橋密度向上の効果が得られやすく、コレステリック液晶相の安定性がより向上する。
【0068】
--その他の添加剤--
液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、および、金属酸化物微粒子等を、光学的性能等を低下させない範囲で添加することができる。
【0069】
液晶組成物は、コレステリック液晶層(第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18b)を形成する際には、液体として用いられるのが好ましい。
液晶組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒には、制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒が好ましい。
有機溶媒には、制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、および、エーテル類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が好ましい。
【0070】
コレステリック液晶層を形成する際には、コレステリック液晶層の形成面に液晶組成物を塗布して、液晶化合物をコレステリック液晶相の状態に配向した後、液晶化合物を硬化して、コレステリック液晶層とするのが好ましい。
すなわち、配向膜32上にコレステリック液晶層を形成する場合には、配向膜32に液晶組成物を塗布して、液晶化合物をコレステリック液晶相の状態に配向した後、液晶化合物を硬化して、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を形成するのが好ましい。
液晶組成物の塗布は、インクジェットおよびスクロール印刷等の印刷法、ならびに、スピンコート、バーコートおよびスプレー塗布等のシート状物に液体を一様に塗布できる公知の方法が全て利用可能である。
【0071】
塗布された液晶組成物は、必要に応じて乾燥および/または加熱され、その後、硬化され、コレステリック液晶層を形成する。この乾燥および/または加熱の工程で、液晶組成物中の液晶化合物がコレステリック液晶相に配向すればよい。加熱を行う場合、加熱温度は、200℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。
【0072】
配向させた液晶化合物は、必要に応じて、さらに重合される。重合は、熱重合、および、光照射による光重合のいずれでもよいが、光重合が好ましい。光照射は、紫外線を用いるのが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2~50J/cm2が好ましく、50~1500mJ/cm2がより好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下または窒素雰囲気下で光照射を実施してもよい。照射する紫外線の波長は250~430nmが好ましい。
【0073】
コレステリック液晶層の厚さには、制限はなく、第1回折素子18の用途、コレステリック液晶層に要求される光の反射率、および、コレステリック液晶層の形成材料等に応じて、必要な光の反射率が得られる厚さを、適宜、設定すればよい。
【0074】
<<コレステリック液晶層の液晶配向パターン>>
前述のように、第1回折素子18において、コレステリック液晶層(第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18b)は、コレステリック液晶相を形成する液晶化合物40に由来する光学軸40Aの向きが、コレステリック液晶層の面内において、一方向に連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンを有する。
なお、液晶化合物40に由来する光学軸40Aとは、液晶化合物40において屈折率が最も高くなる軸、いわゆる遅相軸である。例えば、液晶化合物40が棒状液晶化合物である場合には、光学軸40Aは、棒形状の長軸方向に沿っている。以下の説明では、液晶化合物40に由来する光学軸40Aを、『液晶化合物40の光学軸40A』または『光学軸40A』ともいう。
【0075】
図6に、第1A回折素子18aの平面図を概念的に示す。
なお、平面図とは、
図1と同方向に見た図であり、
図2~
図4において、第1回折素子18を上方から見た図であり、すなわち、第1回折素子18を厚さ方向から見た図である。第1回折素子18を厚さ方向とは、第1回折素子18の各層(膜)の積層方向である。
また、
図6では、本発明の第1回折素子18の構成を明確に示すために、
図4と同様、液晶化合物40は配向膜32の表面の液晶化合物40のみを示している。
【0076】
なお、
図6では、第1A回折素子18aを代表例として説明するが、コレステリック液晶層である第1B回折素子18b、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20bのコレステリック液晶層、ならびに、コレステリック液晶層である第3A回折素子24aおよび第3B回折素子24bも、基本的に、第1A回折素子18aと同様の構成を有し、同様の作用効果を発現する。
【0077】
図6に示すように、配向膜32の表面において、コレステリック液晶層である第1A回折素子18aを構成する液晶化合物40は、下層の配向膜32に形成された配向パターンに応じて、第1A回折素子18aの面内において、矢印X1で示す所定の一方向に沿って、光学軸40Aの向きが連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンを有する。図示例においては、液晶化合物40の光学軸40Aが、矢印X1方向に沿って、時計方向に連続的に回転しながら変化する、液晶配向パターンを有する。
第1A回折素子18aを構成する液晶化合物40は、矢印X1、および、この一方向(矢印X1方向)と直交する方向に、二次元的に配列された状態になっている。
以下の説明では、矢印X1方向と直交する方向を、便宜的にY方向とする。すなわち、矢印Y方向とは、液晶化合物40の光学軸40Aの向きが、コレステリック液晶層の面内において、連続的に回転しながら変化する一方向と直交する方向である。従って、
図4、
図5および後述する
図7では、Y方向は、紙面に直交する方向となる。
【0078】
コレステリック液晶層の上に、上述したような塗布法によってコレステリック液晶層を形成すると、上層のコレステリック液晶層の液晶配向パターンは、形成面となる下層のコレステリック液晶層の表面における液晶配向パターンに追従する(踏襲する)。
従って、第1A回折素子18aの上に形成されるコレステリック液晶層である第1B回折素子18bは、第1A回折素子18aと同じ液晶配向パターンを有する。
【0079】
液晶化合物40の光学軸40Aの向きが矢印X1方向(所定の一方向)に連続的に回転しながら変化しているとは、具体的には、矢印X1方向に沿って配列されている液晶化合物40の光学軸40Aと、矢印X1方向とが成す角度が、矢印X1方向の位置によって異なっており、矢印X1方向に沿って、光学軸40Aと矢印X1方向とが成す角度がθからθ+180°あるいはθ-180°まで、順次、変化していることを意味する。
なお、矢印X1方向に互いに隣接する液晶化合物40の光学軸40Aの角度の差は、45°以下であるのが好ましく、15°以下であるのがより好ましく、より小さい角度であるのがさらに好ましい。
【0080】
一方、第1A回折素子18aを形成する液晶化合物40は、矢印X1方向と直交するY方向、すなわち、光学軸40Aが連続的に回転する一方向と直交するY方向では、光学軸40Aの向きが等しい。
言い換えれば、第1A回折素子18aを形成する液晶化合物40は、Y方向では、液晶化合物40の光学軸40Aと矢印X1方向とが成す角度が等しい。
【0081】
第1A回折素子18aにおいては、このような液晶化合物40の液晶配向パターンにおいて、面内で光学軸40Aが連続的に回転して変化する矢印X1方向において、液晶化合物40の光学軸40Aが180°回転する長さ(距離)を、液晶配向パターンにおける1周期の長さΛとする。
すなわち、矢印X1方向に対する角度が等しい2つの液晶化合物40の、矢印X1方向の中心間の距離を、1周期の長さΛとする。具体的には、
図6(
図7)に示すように、矢印X1方向と光学軸40Aの方向とが一致する2つの液晶化合物40の、矢印X1方向の中心間の距離を、1周期の長さΛとする。以下の説明では、この1周期の長さΛを『1周期Λ』とも言う。
第1A回折素子18aにおいて、コレステリック液晶層の液晶配向パターンは、この1周期Λを、矢印X1方向すなわち光学軸40Aの向きが連続的に回転して変化する一方向に繰り返す。
【0082】
図5に示す第1A回折素子18aのように、液晶化合物40に由来する光学軸40Aの向きが連続的に回転して変化する液晶配向パターンを有するコレステリック液晶層34のX-Z面をSEM(Scanning Electron Microscope(走査型電子顕微鏡))で観察すると、
図17に概念的に示すような明部42と暗部44とが交互に配列された配列方向が、主面(X-Y面)に対して所定角度で傾斜している縞模様が観察される。
以下の説明では、コレステリック液晶層34を液晶層34ともいう。
このようなSEM断面において、隣接する明部42から明部42、または、暗部44から暗部44の、明部42または暗部44が成す線の法線方向における間隔が1/2傾斜面ピッチに相当する。液晶化合物40が液晶層34の主面(X-Y面)に対して、その光学軸40Aが平行に配向している場合、上述したように螺旋1ピッチ分は
図5に示すピッチPである。一方、液晶化合物40が液晶層34の主面に対して傾斜している場合、特に液晶層34の主面に対する液晶化合物40の傾斜角が明部42または暗部44が成す線が液晶層34の主面とのなす角に等しい場合は、
図17中にPで示すように、明部42が2つと暗部44が2つで螺旋1ピッチ分(螺旋の巻き数1回分)に相当する。
【0083】
ここで、
図5に示す例では、液晶層34のX-Z面において、液晶化合物40が、主面(X-Y面)に対して、その光学軸40Aが平行に配向している構成としたが、本発明は、これに制限はされない。例えば、
図18に示すように、液晶層34のX-Z面において、主面(X-Y面)に対して、液晶化合物40の光学軸40Aが傾斜して配向している構成であってもよい。
【0084】
また、
図18に示す例では、液晶層34のX-Z面において、液晶化合物40の主面(X-Y面)に対する傾斜角度(チルト角)は厚さ方向(Z方向)に一様としたが、本発明は、これに限定はされない。液晶層34において、液晶化合物40のチルト角が厚さ方向で異なっている領域を有していてもよい。
例えば、
図19に示す例は、液晶層34の、配向膜32側の界面において液晶化合物40の光学軸40Aが主面に平行であり(プレチルト角が0°であり)、配向膜32側の界面から厚さ方向に離間するにしたがって、液晶化合物40のチルト角が大きくなって、その後、他方の界面(空気界面)側まで一定のチルト角で液晶化合物が配向されている構成である。
【0085】
このように、液晶層34においては、上下界面の一方の界面において、液晶化合物40の光学軸40Aがプレチルト角を有している構成であってもよく、両方の界面でプレチルト角を有する構成であってもよい。また、両界面でプレチルト角が異なっていてもよい。
このように液晶化合物40がチルト角を有して(傾斜して)いることにより、光が回折する際に実効的な液晶化合物の複屈折率が高くなり、回折効率を高めることができる。
【0086】
液晶化合物40の光学軸40Aと主面(X-Y面)とのなす平均角度(平均チルト角)は、5~80°が好ましく、10~50°がより好ましい。なお、平均チルト角は、液晶層34のX-Z面を偏光顕微鏡観察することにより測定できる。なかでも、液晶層34のX-Z面において、液晶化合物40は、主面(X-Y面)に対して、その光学軸40Aが同一の方向に傾斜配向することが好ましい。
なお、上記チルト角は、コレステリック液晶層断面の偏光顕微鏡観察において、液晶化合物40の光学軸40Aと主面とのなす角度を任意の5か所以上で測定して、それらを算術平均した値である。
【0087】
回折素子(液晶層)に垂直に入射した光は、液晶層34内において斜め方向に、屈曲力が加わり斜めに進む。液晶層34内において光が進むと、本来、垂直入射に対して所望の回折角が得られるように設定されている回折周期等の条件とのずれが生じるために、回折ロスが生じる。
液晶化合物40をチルトさせた場合、チルトさせない場合と比較して、光が回折する方位に対してより高い複屈折率が生じる方位が存在する。この方向では実効的な異常光屈折率が大きくなるため、異常光屈折率と常光屈折率の差である複屈折率が高くなる。
狙った回折する方位に合わせて、チルト角の方位を設定することによって、その方位での本来の回折条件とのずれを抑制することができ、結果としてチルト角を持たせた液晶化合物を用いた場合の方が、より高い回折効率を得ることができると考えられる。
【0088】
また、チルト角は液晶層34の界面の処理によって制御されることが望ましい。支持体側の界面においては、配向膜にプレチルト処理をおこなうことにより液晶化合物40のチルト角を制御することが出来る。例えば、配向膜の形成の際に配向膜に紫外線を正面から露光した後に斜めから露光することにより、配向膜上に形成する液晶層34中の液晶化合物40にプレチルト角を生じさせることが出来る。この場合には、2回目の照射方向に対して液晶化合物40の単軸側が見える方向にプレチルトする。但し、2回目の照射方向に対して垂直方向の方位の液晶化合物40はプレチルトしないため、面内でプレチルトする領域とプレチルトしない領域が存在する。このことは、狙った方位に光を回折させるときにその方向に最も複屈折を高めることに寄与するので回折効率を高めるのに適している。
さらに、液晶層34中または配向膜中にプレチルト角を助長する添加剤を加えることも出来る。この場合、回折効率を更に高める因子として添加剤を利用できる。
この添加剤は空気側の界面のプレチルト角の制御にも利用できる。
【0089】
ここで、液晶層34は、SEMで観察した断面において、コレステリック液晶相に由来する明部42および暗部44が、主面に対して傾斜している。液晶層34は、法線方向および法線に対して傾斜した方向から面内レタデーションReを測定した際に、遅相軸面内および進相軸面内のいずれかにおいて、面内レタデーションReが最小となる方向が法線方向から傾斜しているのが好ましい。具体的には、面内レタデーションReが最小となる方向が法線と成す測定角の絶対値が5°以上であることが好ましい。言い換えると、液晶層34の液晶化合物40が主面に対して傾斜し、かつ、傾斜方向が液晶層34の明部42および暗部44に略一致していることが好ましい。なお、法線方向とは、主面に対して直交する方向である。
液晶層34がこのような構成を有することにより、液晶化合物40が主面に平行である液晶層に比して、高い回折効率で円偏光を回折できる。
【0090】
液晶層34の液晶化合物40が主面に対して傾斜し、かつ、傾斜方向が明部42および暗部44に略一致している構成では、反射面に相当する明部および暗部と、液晶化合物40の光学軸40Aとが一致している。そのため、光の反射(回折)に対する液晶化合物の作用が大きくなり、回折効率を向上できる。その結果、入射光に対する反射光の光量をより向上できる。
【0091】
液晶層34の進相軸面または遅相軸面において、液晶層34の光学軸傾斜角の絶対値は5°以上が好ましく、15°以上がより好ましく、20°以上がさらに好ましい。
光学軸傾斜角の絶対値を15°以上とすることにより、より好適に、液晶化合物40の方向を明部および暗部に一致させ、回折効率を向上できる点で好ましい。
【0092】
コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層は、通常、入射した光(円偏光)を鏡面反射する。
これに対して、第1A回折素子18aは、入射した光を、鏡面反射に対して矢印X1方向に傾けて反射する。第1A回折素子18aは、面内において、矢印X1方向(所定の一方向)に沿って光学軸40Aが連続的に回転しながら変化する、液晶配向パターンを有するものである。以下、
図7を参照して説明する。
【0093】
一例として、第1A回折素子18aは、赤色光の右円偏光RRを選択的に反射するコレステリック液晶層であるとする。従って、第1A回折素子18aに光が入射すると、第1A回折素子18aは、赤色光の右円偏光RRのみを反射し、それ以外の光を透過する。
【0094】
第1A回折素子18aでは、液晶化合物40の光学軸40Aが矢印X1方向(一方向)に沿って回転しながら変化している。
第1A回折素子18aに形成された液晶配向パターンは、矢印X1方向に周期的なパターンである。そのため、第1A回折素子18aに入射した赤色光の右円偏光R
Rは、
図7に概念的に示すように、液晶配向パターンの周期に応じた方向に反射(回折)され、反射された赤色光の右円偏光R
Rは、XY面に対して矢印X1方向に傾いた方向に反射(回折)される。XY面は、コレステリック液晶層の主面である。
【0095】
従って、光学軸40Aが回転する一方向である矢印X1方向を、適宜、設定することで、赤色光の右円偏光R
Rの反射(回折)方向を調節できる。
すなわち、矢印X1方向を逆方向にすれば、赤色光の右円偏光R
Rの反射方向も
図6および
図7とは逆方向になる。
【0096】
また、矢印X1方向に向かう液晶化合物40の光学軸40Aの回転方向を逆にすることで、赤色光の右円偏光R
Rの反射方向を逆にできる。
すなわち、
図4~
図7においては、矢印X1方向に向かう光学軸40Aの回転方向は時計回りで、赤色光の右円偏光R
Rは矢印X1方向に傾けて反射されるが、これを反時計回りとすることで、赤色光の右円偏光R
Rは矢印X1方向と逆方向に傾けて反射される。
【0097】
さらに、同じ液晶配向パターンを有するコレステリック液晶層では、液晶化合物40の螺旋の旋回方向すなわち反射する円偏光の旋回方向によって、反射方向が逆になる。
図7に示す第1A回折素子18aは、螺旋の旋回方向が右捩じれで、右円偏光を選択的に反射するものであり、矢印X1方向に沿って光学軸40Aが時計回りに回転する液晶配向パターンを有することにより、右円偏光を矢印X1方向に傾けて反射する。
従って、螺旋の旋回方向が左捩じれで、左円偏光を選択的に反射するものであり、矢印X1方向に沿って光学軸40Aが時計回りに回転する液晶配向パターンを有するコレステリック液晶層は、左円偏光を矢印X1方向と逆方向に傾けて反射する。
【0098】
本発明の第1回折素子18において、第1A回折素子18aの上には、第1B回折素子18bが設けられる。
上述したように、第1A回折素子18aと第1B回折素子18bとは、面方向には同じ液晶配向パターンを有する。すなわち、第1B回折素子18bは、第1A回折素子18aと同様に矢印X1方向に沿って光学軸40Aが時計回りに回転する液晶配向パターンを有する。また、第1B回折素子18bは、螺旋の旋回方向が第1A回折素子18aとは逆の左捩じれで、左円偏光を選択的に反射する。
従って、第1B回折素子18bは、入射した赤色光の左円偏光を、第1A回折素子18aとは逆に、矢印X1方向と逆方向に傾けて反射する。
【0099】
従って、
図8に概念的に示すように、表示素子12が照射した光のうち、赤色光の右円偏光(R
R)は、導光板16および第1B回折素子18bを透過して、第1A回折素子18aに入射する。第1A回折素子18aに入射した赤色の右円偏光は、上述したように、矢印X1方向に傾けて反射され、導光板16に再入射する。導光板16に再入射した赤色の右円偏光は、第1A回折素子18aによって矢印X1方向に傾けられているので、導光板16内を全反射して、
図8に破線で示すように、矢印X1方向に伝搬(導光)される。
他方、表示素子12が照射した光のうち、赤色光の左円偏光は、導光板16を透過して、第1B回折素子18bに入射する。
第1B回折素子18bに入射した赤色の左円偏光は、矢印X1方向とは逆方向に傾けて反射され、導光板16に再入射する。導光板16に再入射した赤色の左円偏光は、第1B回折素子18bによって矢印X1方向とは逆方向に傾けられているので、導光板16内を全反射して、
図8に一点鎖線で示すように、矢印X1方向と逆方向に伝搬される。
【0100】
図1~
図3に示すように、第1回折素子18の矢印X1方向側には第2A回折素子20aが設けられ、第1回折素子18の矢印X1方向とは逆方向側には第2B回折素子20bが設けられる。
上述したように、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20bは、共に、液晶化合物40の光学軸40Aが一方向に沿って連続的に回転する液晶配向パターンを有する、第1A回折素子18aと同様のコレステリック液晶層を有する。第2A回折素子20aは赤色の右円偏光を、第2B回折素子20bは赤色の左円偏光を、それぞれ選択的に反射する。
また、第1回折素子18の矢印X1方向と直交(または交差)する方向には、第3A回折素子24aと第3B回折素子24bとを積層した第3回折素子24が設けられる。第3A回折素子24aおよび第3B回折素子24bは、共に、液晶化合物40の光学軸40Aが一方向に沿って連続的に回転する液晶配向パターンを有する、第1A回折素子18aと同様のコレステリック液晶層である。第3A回折素子24aは赤色の右円偏光を、第3B回折素子24bは赤色の左円偏光を、それぞれ選択的に反射する。
【0101】
第2A回折素子20aのコレステリック液晶層は矢印X2A方向に沿って、液晶化合物40の光学軸40Aが時計回りに回転する液晶配向パターンを有する。第2A回折素子20aのコレステリック液晶層は、第1回折素子18aによって反射されて導光板16内を伝搬し、第2A回折素子20aのコレステリック液晶層へ矢印X2A方向と交差する方向から入射した赤色の右円偏光を第2A回折素子20aのコレステリック液晶層への入射方向と異なる、矢印X2A方向と交差する方向に傾けて反射し、第3回折素子24方向へ伝搬する。
第2B回折素子20bのコレステリック液晶層は矢印X2B方向に沿って、液晶化合物40の光学軸40Aが時計回りに回転する液晶配向パターンを有する。第2B回折素子20bのコレステリック液晶層は、第1回折素子18bによって反射されて導光板16内を伝搬し、第2B回折素子20bのコレステリック液晶層へ矢印X2B方向と交差する方向から入射した赤色の左円偏光を第2B回折素子20bのコレステリック液晶層への入射方向とは異なる、矢印X2B方向と交差する方向に傾けて反射し、第3回折素子24方向へ伝搬する。
第3A回折素子24aは矢印X3A方向に沿って、液晶化合物40の光学軸40Aが時計回りに回転する液晶配向パターンを有する。従って、第3A回折素子24aは、入射した赤色の右円偏光を矢印X3A方向に傾けて反射する。
さらに、第3B回折素子24bは矢印X3B方向に沿って、液晶化合物40の光学軸40Aが時計回りに回転する液晶配向パターンを有する。従って、第3B回折素子24bは、入射した赤色の左円偏光を矢印X3B方向とは逆方向に傾けて反射する。
【0102】
第2A回折素子20aは、第1回折素子18の矢印X1方向側に設けられ、第2B回折素子20bは、第1回折素子18の矢印X1方向とは逆方向側に設けられる。
また、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20bは、いずれも、入射した光を第3回折素子24に向けて回折する。
【0103】
従って、上述のように表示素子12が表示して第1回折素子18に入射した赤色光(画像に対応する赤色光)のうち、矢印X1方向に傾けて反射された右円偏光(白抜き矢印)は、導光板16内を伝搬されて第2A回折素子20aに入射し、第2A回折素子20aによって矢印X2A方向と交差した方向に反射(回折)される。第2A回折素子20aによって矢印X2A方向と交差した方向に反射された赤色の右円偏光は、導光板16内を伝搬されて第3A回折素子24aに入射して、第3A回折素子24aによって矢印X3A方向に傾けて反射(回折)されることで、導光板16の界面への入射角が臨界角以下となり、導光板16から出射され、
図2および
図3に示すように、使用者Uによる観察に供される。
他方、表示素子12が表示して第1回折素子18に入射した赤色光のうち、矢印X1方向と交差した方向に傾けて反射された左円偏光(白抜き矢印)は、導光板16内を伝搬されて第2B回折素子20bに入射し、第2B回折素子20bによって矢印X2B方向と交差した方向に傾けて反射される。第2B回折素子20bによって矢印X2B方向に傾けて反射された赤色の左円偏光は、導光板16内を伝搬されて第3B回折素子24bに入射して、第3B回折素子24bによって矢印X3B方向とは逆方向に傾けて反射されることで、導光板16の界面への入射角が臨界角以下となり、導光板16から出射され、
図2および
図3に示すように、使用者Uによる観察に供される。
【0104】
以上のように、本発明の導光素子を利用する本発明の画像表示装置によれば、第1回折素子18によって画像に対応する光を異なる2方向に回折させることで、導光板16に入射して伝搬させ、異なる経路を伝搬した光を、離間して配置される第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20bによって第3回折素子24に向けて回折させて、第3回折素子24による回折で導光板から出射させて、使用者Uによる観察に供する。そのため、
図2に示すように、表示素子12からの入射範囲に対して、使用者Uに向かう出射範囲を拡大することができ、ARグラス等に利用することで、FOVを拡大できる。
また、導光板16への入射部である第1回折素子18および導光板16からの出射部である第3回折素子24の少なくとも一方、好ましくは両方、より好ましくは第1回折素子18、第2回折素子および第3回折素子24の全てを、液晶回折素子を用いることにより、表面レリーフ格子等を用いた場合に比して、光の利用効率を向上することができ、表示素子12による表示画像に対する輝度低下を防止して、高輝度の画像を表示することが可能になる。
【0105】
なお、本発明において、第1回折素子18および第3回折素子24の一方、ならびに、第2回折格子として、液晶回折素子以外の回折素子を利用する場合には、回折素子としては、表面レリーフ格子およびホログラム回折素子等の公知の回折素子(回折格子)が、全て利用可能である。
【0106】
図示例の画像表示装置10においては、好ましい態様として、第3回折素子24の第3A回折素子24aと第3B回折素子24bとで、液晶化合物40の光学軸40Aが回転する一方向が交差している。すなわち、第3回折素子24の第3A回折素子24aと第3B回折素子24bとで、矢印X3A方向と矢印X3B方向とが交差している。
このような構成を有することにより、第3回折素子24による回折によって、異なる方向から伝搬された光を好適に臨界角以下にでき、導光板16からの光の出射を好適に行うことができる点で好ましい。
【0107】
また、図示例の画像表示装置10においては、好ましい態様として、第1回折素子18と、第3回折素子24とで、液晶化合物40の光学軸40Aが回転する一方向が交差している。すなわち、第1回折素子18の矢印X1方向と、第3A回折素子24aの矢印X3A方向および第3B回折素子24bの矢印X3B方向とが交差している。
このような構成を有することにより、好適に第1回折素子18から第3回折素子24まで光を伝搬でき、導光板16からの光の出射を好適に行うことができる点で好ましい。
【0108】
上述のように、第1回折素子18、第2回折素子および第3回折素子24で用いられているコレステリック液晶層は、面内において、液晶化合物40の光学軸40Aが一方向に沿って連像的に回転する液晶は配向パターンを有する。また、
図4、
図6および
図7に示すように、この液晶配向パターンにおいて、光学軸40Aが180°回転する長さを1周期Λとする。
この液晶配向パターンを有するコレステリック液晶層では、1周期Λが短いほど、上述した入射光に対する反射光の角度が大きくなる。すなわち、1周期Λが短いほど、入射光に対して、反射光を大きく傾けて反射できる。
例えば、第1回折素子18(第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18b)の1周期をΛ1、第2回折素子(第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20b)の1周期をΛ2、第3回折素子24(第3A回折素子24aおよび第3B回折素子24b)の1周期をΛ3とした際に。Λ1<Λ2<Λ3の場合には、第1回折素子18が反射光を最も大きく傾けて反射光を反射し、第3回折素子24による反射方向の傾きが最も小さい。
【0109】
また、
図1に示すように、画像表示装置10では、第1回折素子18と、第2回折素子と、第3回折素子24とで、液晶化合物40の光学軸40Aが回転する一方向が交差している。すなわち、第1回折素子18の矢印X1方向と、第2A回折素子の矢印X2A方向と、第3A回折素子24aの矢印X3A方向とが交差し、第1回折素子18の矢印X1方向と、第2B回折素子の矢印X2B方向と、矢印X3B方向とが交差している。
【0110】
本発明においては、第1回折素子18、第2回折素子および第3回折素子24を、全て、液晶回折素子で形成し、画像表示装置10では、第1回折素子18と、第2回折素子と、第3回折素子24とで、液晶化合物40の光学軸40Aが回転する一方向が交差し、かつ、第2回折素子の1周期Λ2が、第1回折素子18の1周期Λ1および第3回折素子24の1周期Λ3よりも小さいのが好ましい。すなわち、Λ2<Λ1およびΛ2<Λ3を満たし、第2回折素子による反射光の傾けかたが、第1回折素子18および第3回折素子24による反射光の傾けかたよりも大きいのが好ましい。
このような構成を有することにより、好適に第1回折素子18から第3回折素子24まで光を伝搬でき、光の利用効率の向上を図れる点で好ましい。
【0111】
なお、第1回折素子18の1周期Λ1、第2回折素子の1周期Λ2、および、第3回折素子24の1周期Λ3には、制限はなく、各回折素子の位置関係等に応じて、適宜、設定すればよい。
第1回折素子18の1周期Λ1、第2回折素子の1周期Λ2、および、第3回折素子24の1周期Λ3は、1μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましく、導光板16を全反射で伝播させる観点から、入射する光の波長λ以下がさらに好ましい。
【0112】
また、第1回折素子18、第2回折素子(第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20b)ならびに第3回折素子24の位置関係、各回折素子における液晶化合物40の光学軸40Aが回転する一方向、すなわち、矢印X1、矢印X2Aおよび矢印X2B、ならびに、矢印X3Aおよび矢印X3Bの方向にも、制限はない。
すなわち、各回折素子の位置関係、および、回折素子における液晶化合物40の光学軸40Aが回転する一方向は、第1回折素子18から、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20bを経て、第3回折素子24まで、各回折素子の回折によって光を適正に伝搬できるように、適宜、設定すればよい。
【0113】
画像表示装置10において、第1回折素子18の第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bは、螺旋の旋回方向すなわち反射する円偏光の旋回方向が逆で、液晶化合物40の光学軸40Aが回転する一方向が同方向(矢印X1方向)であるが、本発明は、これに制限はされない。
【0114】
例えば、第1回折素子18の第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bは、螺旋の旋回方向すなわち反射する円偏光の旋回方向を同じ方向とし、液晶化合物40の光学軸40Aが回転(時計回り)する一方向を逆方向としてもよい。すなわち、第1回折素子18の第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bは、反射する円偏光の旋回方向を同じ方向とし、液晶化合物40の光学軸40Aが回転する一方向を、矢印X1方向および矢印X1方向とは逆方向にしてもよい。言い換えれば、第1A回折素子18aと第1B回折素子18bとで、螺旋の旋回方向すなわち反射する円偏光の旋回方向を同じ方向とし、矢印X1方向に向かう液晶化合物40の光学軸40Aの回転方向を、時計回りと反時計回りとにしてもよい。
液晶化合物40の光学軸40Aが回転する一方向が逆になれば、コレステリック液晶層による円偏光の反射方向も逆になる。
一例として、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bが、共に右円偏光を反射するものであり、光学軸40Aが回転する一方向は、第1A回折素子18aが矢印X1方向、第1B回折素子18bが矢印X1方向とは逆方向であるとする。この場合には、表示素子12が表示して、導光板16を透過した赤色の右円偏光は、まず、第1B回折素子18bによって矢印X1方向とは逆方向に傾けて反射され、第1B回折素子18bで反射されずに透過した赤色の右円偏光が、第1A回折素子18aによって、矢印X1方向に傾けて反射される。
【0115】
なお、第1回折素子18の第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bが反射する円偏光の旋回方向が等しい場合には、第2回折素子のコレステリック液晶層、および、第3回折素子24の第3A回折素子24aおよび第3B回折素子24bの、螺旋の旋回方向すなわち反射する円偏光の旋回方向も、第1回折素子18と一致させるのが好ましい。
さらに、第1回折素子18の第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bが反射する円偏光の旋回方向が等しい場合には、表示素子12は、円偏光を照射するのが好ましい。
【0116】
また、第1A回折素子18aと第1B回折素子18bとで、光学軸40Aが回転する一方向が異なる場合には、第1A回折素子18aと第1B回折素子18bとの光学軸40Aが回転する一方向は、上述したような逆方向に制限はされない。すなわち、第1A回折素子18aと第1B回折素子18bとで、光学軸40Aが回転する一方向が異なる場合には、第1A回折素子18aと第1B回折素子18bとの光学軸40Aが回転する一方向が交差するようにしてもよい。
また、第1回折素子は、異なる3方向以上に入射した光を回折してもよい。この場合には、第1回折素子による光の回折方向の数に応じて、同数の第2回折素子を設けるのが好ましい。
【0117】
また、画像表示装置10において、第1A回折素子18aと第2A回折素子20aおよび第3A回折素子24aの螺旋の旋回方向すなわち反射する円偏光の旋回方向を一致させたが、本発明は、これに制限はされない。同様に、画像表示装置10において、第1B回折素子18bと第2B回折素子20bおよび第3B回折素子24bの螺旋の旋回方向すなわち反射する円偏光の旋回方向を一致させたが、本発明は、これに制限はされない。
導光板16内で光が伝搬(全反射)するときに、全反射の前後で偏光状態が変わりうるため、第1A回折素子18aと第2A回折素子20aおよび第3A回折素子24aの螺旋の旋回方向すなわち反射する円偏光の旋回方向は異なっていてもよく、同様に、第1B回折素子18bと第2B回折素子20bおよび第3B回折素子24bの螺旋の旋回方向すなわち反射する円偏光の旋回方向は異なっていてもよい。
【0118】
図1~
図3に示す例では、第1回折素子18の第1A回折素子18aと第1B回折素子18bとが積層されているが、本発明は、これに制限はされない。
すなわち、本発明の画像表示装置(導光素子)において、第1回折素子18の第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bは、
図9に概念的に示すように、導光板16の面方向の異なる位置に設けてもよい。この際においては、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bは、接触して設けても、離間して設けてもよい。
この点に関しては、第3A回折素子24aおよび第3B回折素子24bを有する第3回折素子24も同様である。
【0119】
また、第1回折素子18の第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bを、導光板16の面方向の異なる位置に設けた構成でも、上述のように、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bは、螺旋の旋回方向すなわち反射する円偏光の旋回方向が逆で、液晶化合物40の光学軸40Aが回転する一方向が同方向(矢印X1方向)である構成が例示される。
さらに、第1回折素子18の第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bを、導光板16の面方向の異なる位置に設けた構成における別の構成として、上述のように、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bは、螺旋の旋回方向すなわち反射する円偏光の旋回方向を同じ方向で、液晶化合物40の光学軸40Aが回転(時計回り)する一方向が逆方向である構成も利用可能である。すなわち、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bは、反射する円偏光の旋回方向を同じ方向で、液晶化合物40の光学軸40Aが回転する一方向が矢印X1方向および矢印X1方向とは逆方向である構成も利用可能である。
【0120】
第1回折素子18の第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bを、導光板16の面方向の異なる位置に設けた構成でも、
図9に概念的に示すように、上述した例と同様、第1回折素子18によって、例えば、表示素子12から照射された入射光を、矢印X1方向および矢印X1方向とは逆の方向に回折して導光板に入射して、異なる2方向に伝搬される赤色の円偏光を、第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20bから第3回折素子24に伝搬して、導光板16から出射させることで、ARグラス等のFOVを拡大できる。なお、
図9に示す例では、2台の表示装置を設け、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bには、異なる表示装置から照射した光を入射しても良い。
【0121】
画像表示装置10は、モノクロ画像(図示例では赤画像)の表示に対応するもので、第1回折素子18、第2回折素子(第2A回折素子20aおよび第2B回折素子20b)、ならびに、第3回折素子24を、1つずつ有するものであるが、本発明は、これに制限はされない。
すなわち、本発明の画像表示装置(導光素子)は、カラー画像に対応して、第1回折素子、第2回折素子および第3回折素子を、それぞれ、2以上、有してもよい。
【0122】
図10に、第1回折素子を例示して、その一例を示す。
なお、以下の説明に関しては、第2回折素子および第3回折素子も、同様である。
【0123】
図10に示す概念的に第1回折素子50は、R第1回折素子18R、G第1回折素子18G、および、B第1回折素子18Bの3つの回折素子を有する。
R第1回折素子18Rは、赤色光に対応するものであり、支持体30と、配向膜32Rと、赤色の右円偏光を反射する第1A回折素子18aRおよび赤色の左円偏光を反射する第1B回折素子18bRとを有する。
G第1回折素子18Gは、緑色光に対応するものであり、支持体30と、配向膜32Gと、緑色の右円偏光を反射する第1A回折素子18aGおよび緑色の左円偏光を反射する第1B回折素子18bGとを有する。
B第1回折素子18Bは、青色光に対応するものであり、支持体30と、配向膜32Bと、青色の右円偏光を反射する第1A回折素子18aBおよび青色の左円偏光を反射する第1B回折素子18bBとを有する。
R第1回折素子18R、G第1回折素子18GおよびB第1回折素子18Bにおいて、支持体、配向膜、回折素子(コレステリック液晶層)は、いずれも、上述した第1回折素子18における支持体30、配向膜32、第1A回折素子18aおよび第1B回折素子18bと同様のものである。ただし、各回折素子すなわちコレステリック液晶層は、選択的に反射する光の波長域に応じた螺旋のピッチPを有する。
【0124】
ここで、R第1回折素子18R、G第1回折素子18GおよびB第1回折素子18Bは、回折素子(コレステリック液晶層)の選択反射中心波長の長さの順列と、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおける1周期Λの長さの順列とが等しい。
すなわち、第1回折素子50においては、赤色光の反射に対応するR第1回折素子18Rの選択反射中心波長が最も長く、緑色光の反射に対応するG第1回折素子18Gの選択反射中心波長が次いで長く、青色光の反射に対応するB第1回折素子18Bの選択反射中心波長が最も短い。
これに応じて、R第1回折素子18R、G第1回折素子18G、および、B第1回折素子18Bは、R第1回折素子18Rのコレステリック液晶層の1周期ΛRが最も長く、G第1回折素子18Gのコレステリック液晶層の1周期ΛGが次いで長く、B第1回折素子18Bのコレステリック液晶層の1周期ΛBが最も短い。
【0125】
一方向(矢印X1方向)に沿って液晶化合物40の光学軸40Aが連続的に回転するコレステリック液晶層による光の反射角度は、反射する光の波長によって、角度が異なる。具体的には、長波長の光ほど、入射光に対する反射光の角度が大きくなる。従って、R第1回折素子18Rが反射する赤色光が最も入射光に対する反射光の角度が大きく、G第1回折素子18Gが反射する緑色光が次いで入射光に対する反射光の角度が大きく、B第1回折素子18Bが反射する青色光が最も入射光に対する反射光の角度が小さい。
一方で、上述のように、一方向に沿って液晶化合物40の光学軸40Aが回転する液晶配向パターンを有するコレステリック液晶層は、液晶配向パターンにおいて、光学軸40Aが180°回転する1周期Λが短いほど、入射光に対する反射光の角度が大きくなる。
【0126】
従って、R第1回折素子18R、G第1回折素子18G、および、B第1回折素子18Bにおいて、回折素子(コレステリック液晶層)における選択反射中心波長の長さの順列と、液晶配向パターンにおける1周期Λの長さ(Λ
R、Λ
GおよびΛ
B)の順列とを等しくすることにより、
図10に赤色の右円偏光R
R、緑色の右円偏光G
Rおよび青色の右円偏光B
Rを例示して示すように、第1回折素子50が反射する光の反射角度の波長依存性を大幅に少なくして、波長の異なる光を、ほぼ同じ方向に反射できる。
その結果、赤色光、緑色光および青色光によってフルカラー画像を表示する場合であっても、各波長における反射角度ズレを生じることなく導光板内を導光して、視野の広いフルカラー画像を表示できる。
【0127】
上述したように、
図17に示すコレステリック液晶層34のX-Z面をSEMで観察したとき、明部42と暗部44とが交互に配列された配列方向が、主面(X-Y面)に対して所定角度で傾斜している縞模様が観察される。このようなSEM断面において、隣接する明部42から明部42、または、暗部44から暗部44の、明部42または暗部44が成す線の法線方向における間隔が1/2傾斜面ピッチに相当する。
R第1回折素子18R、G第1回折素子18G、および、B第1回折素子18Bにおいて、回折素子(コレステリック液晶層)における傾斜面ピッチを、それぞれ、Pt
R、Pt
G、および、Pt
Bとした際に、上述の液晶配向パターンの1周期Λと共に、
Λ
B<Λ
G<Λ
R、および、Pt
B<Pt
G<Pt
R
を満たすことが好ましい。
上記関係を満たすことによって、
図10に赤色の右円偏光R
R、緑色の右円偏光G
Rおよび青色の右円偏光B
Rを例示して示すように、第1回折素子50が反射する光の反射角度の波長依存性を大幅に少なくして、波長の異なる光を、ほぼ同じ方向に反射でき、かつ、第1回折素子50が反射する、波長の異なる光を効率的に反射することができる。
【0128】
なお、このように選択的に反射する波長域が異なる回折素子を積層する際には、積層順には、制限はない。
選択的に反射する波長域が異なる回折素子を積層する際には、好ましくは、選択的に反射する波長域の波長が、順次、長くなるように、回折素子を積層する。これにより、選択反射中心波長が短い側を光入射側にして、ブルーシフトによる影響を低減できる。
【0129】
本発明において、第1回折素子18を、複数、有する場合には、
図8に示すR第1回折素子18R、G第1回折素子18G、および、B第1回折素子18Bを有する構成に制限はされない。
例えば、R第1回折素子18R、G第1回折素子18GおよびB第1回折素子18Bから、適宜、選択した2層を有するものでもよい。さらに、R第1回折素子18R、G第1回折素子18GおよびB第1回折素子18Bの1以上に変えて、あるいは、R第1回折素子18R、G第1回折素子18GおよびB第1回折素子18Bに加えて、紫外線を選択的に反射する反射積層体、および/または、赤外線を選択的に反射する反射積層体を有してもよい。
あるいは、可視光の波長帯域を2つの波長帯域に分けたときに、2つの波長帯域の短波側の光を選択的に反射するS第1回折素子18Sおよび長波側の光を選択的に反射するL第1L回折素子18Lを有するものでもよい。さらに、S第1回折素子18SおよびL第1L回折素子18Lに変えて、あるいはS第1回折素子18SおよびL第1L回折素子18Lに加えて、紫外線を選択的に反射する反射積層体、および/または、赤外線を選択的に反射する反射積層体を有してもよい。
【0130】
本発明において、複数の第1回折素子を有する場合には、
図10に示す例のように、第1回折素子を積層する構成に制限はされない。
例えば、導光板の面方向の異なる位置に、R第1回折素子18R、G第1回折素子18GおよびB第1回折素子18Bを設けた構成でもよい。または、R画像用の導光板、G画像用の導光板、および、B画像用の導光板を設け、それぞれの導光板に、対応する色の回折素子を設けて、導光板を積層した構成も、利用可能である。また、R画像用とB画像用の導光板、およびG画像用の導光板を設け、それぞれの導光板に、対応する色の回折素子を設けたような、2色用導光板と単色用導光板を積層した構成も、利用可能である。
後述するコレステリック液晶層以外の液晶回折素子を用いる場合も含めて、いずれの構成であっても、液晶配向パターンにおける1周期Λは、赤色光に対応する液晶素子が最も長く、青色光に対応する液晶回折素子が最も短いのが好ましい。
【0131】
また、本発明において、複数の第1回折素子を有する場合には、例えば、導光板の面方向の異なる位置に、S第1回折素子18SおよびL第1回折素子18Lを設けた構成でもよい。または、短波側画像用の導光板および、長波側画像用の導光板を設け、それぞれの導光板に、対応する色の回折素子を設けて、導光板を積層した構成も、利用可能である。
後述するコレステリック液晶層以外の液晶回折素子を用いる場合も含めて、いずれの構成であっても、液晶配向パターンにおける1周期Λは、長波側の光に対応する液晶素子が最も長く、短波側の光に対応する液晶回折素子が最も短いのが好ましい。
【0132】
従って、S第1回折素子18S、および、L第1回折素子18Lにおいて、回折素子(コレステリック液晶層(液晶層34))における選択反射中心波長の長さの順列と、液晶配向パターンにおける1周期Λの長さ(ΛSおよびΛL)の順列とを等しくすることにより、短波長側の右円偏光SRおよび長波長側の右円偏光LRを、第1回折素子50が反射する光の反射角度の波長依存性を大幅に少なくして、波長の異なる光を、ほぼ同じ方向に反射できる。
その結果、短波長側の光および長波長側の光によってフルカラー画像を表示する場合であっても、各波長における反射角度ズレを生じることなく導光板内を導光して、視野の広いフルカラー画像を表示できる。
【0133】
また、SEM断面において、S第1回折素子18S、および、L第1回折素子18Lにおいて、回折素子(コレステリック液晶層)における傾斜面ピッチを、それぞれ、PtS、PtLとした際に、
ΛS<ΛL、および、PtS<PtL
を満たすのが好ましい。
上記関係を満たすことによって、短波長側の右円偏光SR、および長波長側の右円偏光LRを、第1回折素子50が反射する光の反射角度の波長依存性を大幅に少なくして、波長の異なる光を、ほぼ同じ方向に反射でき、かつ、第1回折素子50が反射する、波長の異なる光を効率的に反射することができる。
【0134】
本発明において、コレステリック液晶層(液晶層34)のX-Z面をSEMにて観察したとき、隣接する明部42から明部42、または、暗部44から暗部44の、明部42または暗部44が成す線の法線方向における間隔を1/2傾斜面ピッチとした際に、コレステリック液晶層の傾斜面ピッチが厚さ方向の位置によって異なる領域を有するコレステリック液晶層を用いることが好ましい。
コレステリック液晶層の傾斜面ピッチが厚さ方向の位置によって異なる領域を有するコレステリック液晶層を用いることで、異なる角度で入射する光を効率的に反射することができる。
【0135】
例えば、R第1回折素子18Rに赤色光を、異なる角度で入射した場合、入射する角度によって選択的に反射する光の波長域が変化するため、光が入射する角度によって反射する光の回折効率が低下する場合がある。コレステリック液晶層の傾斜面ピッチが厚さ方向の位置によって異なる領域を有するコレステリック液晶層を用いることで、選択的に反射する光の波長域を広げることができ、すなわち、異なる角度で入射する光を効率的に反射することができ、視野の広い、明るい画像を表示できる。
【0136】
さらに、コレステリック液晶層の厚さ方向の一方向に向かって、傾斜面ピッチが連続的に増大または減少する領域を有するコレステリック液晶層を用いることで、様々な入射角度に対する光を効率的に反射することができる。
【0137】
また、コレステリック液晶層の断面をSEMで観察したときの明部または暗部が成す線が前記液晶層の主面に対する傾斜角をθhpとした際に、前記傾斜角θhpが厚さ方向の位置によって異なる領域を有するコレステリック液晶層を用いることで、異なる角度で入射する光を効率的に反射することができる。
【0138】
コレステリック液晶層の厚さ方向の一方向に向かって、傾斜角θhpが連続的に増大または減少する領域を有するコレステリック液晶層を用いることで、様々な入射角度に対する光を効率的に反射することができる。
【0139】
以上の例は、赤色光を選択的に反射するR第1回折素子18Rについて述べたが、緑色光を選択的に反射するG第1回折素子18Gおよび青色光を選択的に反射するB第1回折素子18Bについても同様であり、可視光の波長帯域を2つの波長帯域に分けたときに、2つの波長帯域の短波側の光を選択的に反射するS第1回折素子18Sおよび長波長側の光を選択的に反射するL第1回折素子18Lを設けた構成でも同様である。
【0140】
また、赤色光を選択的に反射するR第1回折素子18R、緑色光を選択的に反射するG第1回折素子18Gおよび青色光を選択的に反射するB第1回折素子18Bを有する構成において、コレステリック液晶層の傾斜面ピッチが厚さ方向の位置によって異なる領域を有するコレステリック液晶層を用いる場合は、R第1回折素子18R、G第1回折素子18GおよびB第1回折素子18Bの厚さ方向におけるコレステリック液晶層の傾斜面ピッチの平均値を、それぞれ、PtRa、PtGa、PtBaとした際に、上述の液晶配向パターンの1周期Λと共に、
ΛB<ΛG<ΛR、および、PtBa<PtGa<PtRa
を満たすことが好ましい。
上記関係を満たすことによって、赤色の右円偏光RR、緑色の右円偏光GRおよび青色の右円偏光BRを、第1回折素子18が反射する、波長の異なる光を効率的に反射することができる。
【0141】
同様に、可視光の波長帯域を2つの波長帯域に分けたときに、2つの波長帯域の短波側の光を選択的に反射するS第1回折素子18Sおよび長波長側の光を選択的に反射するL第1回折素子18Lをする構成において、コレステリック液晶層の傾斜面ピッチが厚さ方向の位置によって異なる領域を有するコレステリック液晶層を用いる場合は、S第1回折素子18SおよびL第1回折素子18Lの厚さ方向におけるコレステリック液晶層の傾斜面ピッチの平均値を、それぞれ、PtSa、PtLaとした際に、上述の液晶配向パターンの1周期Λと共に、ΛS<ΛL、および、PtSa<PtLa
を満たすことが好ましい。
上記関係を満たすことによって、短波長側の右円偏光SR、および長波長側の右円偏光LRを、第1回折素子18が反射する、波長の異なる光を効率的に反射することができる。
【0142】
また、本発明において、コレステリック液晶層(液晶層34)のX-Z面をSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察したとき、隣接する明部42から明部42、または、暗部44から暗部44の、明部42または暗部44が成す線の法線方向における間隔を1/2傾斜面ピッチとした際に、コレステリック液晶層の傾斜面ピッチが異なる層を積層する構成も好ましく用いることができる。
コレステリック液晶層の傾斜面ピッチが異なる層を積層する構成を用いることで、異なる角度で入射する光を効率的に反射することができる。
【0143】
例えば、R第1回折素子18Rに赤色光を、異なる角度で入射した場合、入射する角度によって選択的に反射する光の波長域が変化するため、光が入射する角度によって反射する光の回折効率が低下する場合がある。コレステリック液晶層の傾斜面ピッチが異なる層を積層する構成を用いることで、選択的に反射する光の波長域を広げることができ、すなわち、異なる角度で入射する光を効率的に反射することができ、視野の広い、明るい画像を表示できる。
【0144】
以上の例は、赤色光を選択的に反射するR第1回折素子18Rについて述べたが、緑色光を選択的に反射するG第1回折素子18Gおよび青色光を選択的に反射するB第1回折素子18Bについても同様であり、可視光の波長帯域を2つの波長帯域に分けたときに、2つの波長帯域の短波側の光を選択的に反射するS第1回折素子18Sおよび長波長側の光を選択的に反射するL第1回折素子18Lを設けた構成でも同様である。
【0145】
上述の本発明の導光素子では、導光素子を画像表示装置に用いた例を示したが、本発明の導光素子は、これに限らず、センサー等の光学素子として用いることができる。
本発明の導光素子を利用するセンサー(センシング装置)は、本発明の導光素子と、本発明の導光素子の第1回折素子に赤外光を照射する光源と、を有する。
【0146】
一例として、本発明の導光素子に赤外線を選択的に反射するコレステリック液晶層を設けて用いた場合、アイトラッキングセンサー用の光学素子として用いることができる。
赤外線を照射する光源から、第1回折素子18に入射した赤外線のうち、矢印X1方向に傾けて反射された光は、導光板16内を伝搬されて第2A回折素子20aに入射し、第2A回折素子20aによって反射(回折)され、導光板16内を伝搬されて第3A回折素子24aに入射して、第3A回折素子24aに反射(回折)されることで、導光板16の界面への入射角が臨界角以下となり、導光板16から出射され、使用者Uによる観察に供される。
使用者Uの瞳で反射した光は導光板16内へ再度入射し、第3A回折素子24aに反射(回折)されることで、上述した経路を逆に辿り、第1回折素子18から出射される。
第1回折素子18から出射した光を赤外センサーで検知することにより、アイトラッキングを行うことができる。第1回折素子18から出射した光は、ビームスプリッター等で光源から照射する赤外線と異なる方向に伝搬させて赤外センサーで検知してもよい。
この際において、赤外線を照射する光源は、直線偏光を照射する光源とλ/4板との組み合わせなど、第1回折素子に円偏光を照射するのが好ましい。
【0147】
以上の例は、第1回折素子、第2回折素子および第3回折素子は、液晶回折素子としてコレステリック液晶層を用いている。しかしながら、本発明は、これに制限はされず、本発明に用いる液晶回折素子は、液晶化合物40に由来する光学軸40Aが、面内の少ないとも1方向に沿って連続的に回転している液晶配向パターンを有するものであれば、各種の液晶回折素子が利用可能である。
また、本発明においては、面内の少なくとも1方向に沿って連続的に回転している液晶配向パターンを有し、かつ、厚さ方向には液晶化合物が螺旋状に捩じれ回転していない液晶回折素子も、利用可能である。
【0148】
図11に、第1回折素子18の第1A回折素子18a対応する回折素子である第1A回折素子18a-2を例示して、その一例を説明する。
図12に示すように、第1A回折素子18a-2も、第1A回折素子18aと同様、液晶化合物40の光学軸40Aが、矢印X1方向に沿って連続的に回転する液晶配向パターンを有する。なお、
図12も、上述した
図6と同様、配向膜32の表面の液晶化合物のみを示している。
第1A回折素子18a-2では、回折素子(液晶層)を形成する液晶化合物40が厚さ方向に螺旋状に捩じれ回転しておらず、光学軸40Aは、面方向の同じ場所に位置する。このような液晶層は、上述したコレステリック液晶層の形成において、液晶組成物にキラル剤を添加しないことで形成できる。
【0149】
上述したように、第1A回折素子18a-2は、面内において、液晶化合物40に由来する光学軸40Aの向きが、矢印X方向すなわち矢印Xで示す一方向に沿って連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンを有する。
一方、第1A回折素子18a-2を形成する液晶化合物40は、矢印X1方向と直交するY方向、すなわち光学軸40Aが連続的に回転する一方向と直交するY方向では、光学軸40Aの向きが等しい液晶化合物40が等間隔で配列されている。
言い換えれば、第1A回折素子18a-2を形成する液晶化合物40において、Y方向に配列される液晶化合物40同士では、光学軸40Aの向きと矢印X1方向とが成す角度が等しい。
【0150】
第1A回折素子18a-2において、Y方向に配列される液晶化合物は、光学軸40Aと矢印X方向(液晶化合物40の光学軸の向きが回転する1方向)とが成す角度が等しい。この光学軸40Aと矢印X方向とが成す角度が等しい液晶化合物40が、Y方向に配置された領域を、領域Rとする。
この場合に、それぞれの領域Rにおける面内レタデーション(Re)の値は、半波長すなわちλ/2であるのが好ましい。これらの面内レタデーションは、領域Rの屈折率異方性に伴う屈折率差Δnと光学異方性層の厚さとの積により算出される。ここで、光学異方性層における領域Rの屈折率異方性に伴う屈折率差とは、領域Rの面内における遅相軸の方向の屈折率と、遅相軸の方向に直交する方向の屈折率との差により定義される屈折率差である。すなわち、領域Rの屈折率異方性に伴う屈折率差Δnは、光学軸40Aの方向の液晶化合物40の屈折率と、領域Rの面内において光学軸40Aに垂直な方向の液晶化合物40の屈折率との差に等しい。つまり、屈折率差Δnは、液晶化合物40の屈折率差に等しい。
【0151】
このような第1A回折素子18a-2に円偏光が入射すると、光は、屈折され、かつ、円偏光の方向が変換される。
この作用を、
図13および
図14に概念的に示す。なお、第1A回折素子18a-2は、液晶化合物の屈折率差と光学異方性層の厚さとの積の値がλ/2であるとする。
図13に示すように、第1A回折素子18a-2の液晶化合物の屈折率差と光学異方性層の厚さとの積の値がλ/2の場合に、第1A回折素子18a-2に左円偏光である入射光L
1が入射すると、入射光L
1は、第1A回折素子18a-2を通過することにより180°の位相差が与えられて、透過光L
2は、右円偏光に変換される。
また、第1A回折素子18a-2に形成された液晶配向パターンは、矢印X方向に周期的なパターンであるため、透過光L
2は、入射光L
1の進行方向とは異なる方向に進行する。このように、左円偏光の入射光L
1は、入射方向に対して矢印X方向に一定の角度だけ傾いた、右円偏光の透過光L
2に変換される。
【0152】
一方、
図14に示すように、第1A回折素子18a-2の液晶化合物の屈折率差と光学異方性層の厚さとの積の値がλ/2のとき、第1A回折素子18a-2に右円偏光の入射光L
4が入射すると、入射光L
4は、第1A回折素子18a-2を通過することにより、180°の位相差が与えられて、左円偏光の透過光L
5に変換される。
また、第1A回折素子18a-2に形成された液晶配向パターンは、矢印X方向に周期的なパターンであり、入射光L
4は、右円偏光であるので、左円偏光である入射光L
1の場合とは逆方向であり、入射光L
4の進行方向とは異なる方向に進行する。このように、入射光L
4は、入射方向に対して矢印X方向とは逆の方向に一定の角度だけ傾いた左円偏光の透過光L
5に変換される。
【0153】
第1A回折素子18a等と同様、第1A回折素子18a-2も、形成された液晶配向パターンの1周期Λを変化させることにより、透過光L
2およびL
5の屈折の角度を調節できる。具体的には、第1A回折素子18a-2も、液晶配向パターンの1周期Λが短いほど、互いに隣接した液晶化合物40を通過した光同士が強く干渉するため、透過光L
2およびL
5を大きく屈折させることができる。
また、矢印X1方向に沿って回転する、液晶化合物40の光学軸40Aの回転方向を逆方向にすることにより、透過光の屈折の方向を、逆方向にできる。すなわち、
図11~
図14に示す例では、矢印X方向に向かう光学軸40Aの回転方向は時計回りであるが、この回転方向を反時計回りにすることで、透過光の屈折の方向を、逆方向にできる。
【0154】
従って、第1A回折素子18a-2のような回折素子を第1回折素子および/または第3回折素子に利用して、導光板16の表示素子12側に設けることで、上述した回折素子としてコレステリック液晶層を用いる画像表示装置10と同様の作用効果によって、ARグラス等においてFOVを広げることができ、また、光の利用効率も向上できる。
なお、第1A回折素子18a-2のように、液晶化合物40が螺旋状に回転しない液晶層を有する回折素子は、
図9に示されるような、回折素子を導光板16の面方向の異なる位置に設ける態様に、好適に利用される。
【0155】
なお、回折効率の観点から、このような、入射光を透過回折する液晶回折素子を用いる場合も、液晶化合物が捩れて回転(捩れ角が360°未満)している領域を有する液晶有する液晶回折素子を用いるのが好ましい。
【0156】
本発明の導光素子および画像表示装置は、視認の改善のため、射出瞳を拡大する回折光学方法を用いてもよい。
具体的には複数個の回折要素(回折素子)を使用する光学的方法、すなわち内結合、中間および外結合回折要素を備えた回折光学方法を用いることができる。本方法は特表2008-546020号公報に詳しく記載がある。
【0157】
以上、本発明の導光素子および画像表示装置について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【実施例】
【0158】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、使用量、物質量、割合、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0159】
[参考例1]
(配向膜の形成)
支持体としてガラス基板を用意した。支持体上に、下記の配向膜形成用塗布液をスピンコートで塗布した。この配向膜形成用塗布液の塗膜が形成された支持体を60℃のホットプレート上で60秒間乾燥し、配向膜を形成した。
【0160】
配向膜形成用塗布液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記光配向用素材 1.00質量部
水 16.00質量部
ブトキシエタノール 42.00質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0161】
【0162】
(配向膜の露光)
図15に示す露光装置を用いて配向膜を露光して、配向パターンを有する配向膜P-1を形成した。
露光装置において、レーザとして波長(325nm)のレーザ光を出射するものを用いた。干渉光による露光量を300mJ/cm
2とした。なお、2つのレーザ光およびの干渉により形成される配向パターンの1周期(光学軸が180°回転する長さ)は、2つの光の交差角(交差角α)を変化させることによって制御した。
【0163】
(第1A回折素子の形成)
第1A回折素子を形成する液晶組成物として、下記の組成物A-1を調製した。この組成物A-1は、右円偏光を反射するコレステリック液晶層(コレステリック液晶相)を形成する、液晶組成物である。
組成物A-1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
棒状液晶化合物L-1 100.00質量部
重合開始剤(BASF製、Irgacure(登録商標)907)
3.00質量部
光増感剤(日本化薬製、KAYACURE DETX-S)
1.00質量部
キラル剤Ch-1 5.68質量部
レベリング剤T-1 0.08質量部
メチルエチルケトン 2840.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
第1A回折素子は、組成物A-1を配向膜P-1上に多層塗布することにより形成した。多層塗布とは、先ず配向膜の上に1層目の組成物A-1を塗布、加熱、冷却後に紫外線硬化を行って液晶固定化層を作製した後、2層目以降はその液晶固定化層に重ね塗りして塗布を行い、同様に加熱、冷却後に紫外線硬化を行うことを繰り返すことを指す。多層塗布により形成することにより、液晶層の総厚が厚くなった時でも配向膜32の配向方向が液晶層の下面から上面にわたって反映される。
【0168】
先ず1層目は、配向膜P-1上に下記の組成物A-1を塗布して、塗膜をホットプレート上で95℃に加熱した。その後、25℃に冷却した後、窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて波長365nmの紫外線を300mJ/cm2の照射量で塗膜に照射することにより、液晶化合物の配向を固定化した。この時の1層目の液晶層の膜厚は0.2μmであった。
【0169】
2層目以降は、この液晶層に重ね塗りして、上と同じ条件で加熱、冷却後に紫外線硬化を行って液晶固定化層を作製した。このようにして、総厚が所望の膜厚になるまで重ね塗りを繰り返し、第1A回折素子を形成した。塗布層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope))で確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチは0.40μmであった。傾斜面ピッチは、明部から明部、または、暗部から暗部の傾斜面に対する法線方向の間隔を1/2面ピッチとした。ここで言う明部および暗部とは、コレステリック液晶層の断面をSEMで観察した際に見られる、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部である。
【0170】
第1A回折素子は、
図6に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、塗布層の断面をSEMで確認したところ、第1A回折素子の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.525μmであった。
【0171】
(第1B回折素子の形成)
第1A回折素子を形成する組成物A-1において、キラル剤として下記のキラル剤Ch-2を用い、キラル剤の量を9.50質量部に変更した以外は、同様に組成物A-2を調製した。この組成物A-2は、左円偏光を反射するコレステリック液晶層(コレステリック液晶相)を形成する、液晶組成物である。
【0172】
【0173】
調製した組成物A-2を用いて、第1A回折素子の上に、第1A回折素子と同様にして第1B回折素子を形成した。塗布層の断面をSEMで確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチは0.40μmであった。
第1B回折素子は、
図6に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、第1B回折素子の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.525μmであった。
これにより、液晶化合物の光学軸が回転する一方向が同じで、螺旋の捩じれ方向が右で右円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第1A回折素子と、螺旋の捩じれ方向が左で左円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第1B回折素子とを積層した、第1回折素子を作製した(
図8参照)。
【0174】
[参考例2]
参考例1における第1A回折素子上にメチルエチルケトンをスピンコートし、第1A回折素子の形成と同様にして第1A回折素子上に配向膜を形成した。配向膜の露光において、第1A回折素子の形成時に対し、
図15に示す露光装置のλ/4板72Aおよび72Bの光学軸を、それぞれ、90°回転して、配向膜を同様に露光して、配向パターンを形成した以外は同様にして配向膜の露光を行った。配向膜上に第1A回折素子と同様にしてコレステリック液晶層を形成し、第1B回折素子を形成した。
これにより、液晶化合物の光学軸が回転する一方向が逆で、螺旋の捩じれ方向が右で右円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第1A回折素子と、螺旋捩じれ方向が右で左円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第1B回折素子とを積層した、第1回折素子を作製した(
図8参照)。
【0175】
[参考例3]
参考例1と同様に第1A回折素子を作製した。
第1A回折素子のコレステリック液晶層の形成において、組成物A-1を参考例1の第1B回折素子の組成物に変更した以外は、第1A回折素子と同様にして第1B回折素子を形成した。形成した第1A回折素子と第1B回折素子を互いに隣接するように別のガラス基板上に接着剤(綜研化学社製、SKダイン2057)を用いて貼合した。このとき、液晶化合物の光学軸が回転する一方向が同じになるようにした。
これにより、液晶化合物の光学軸が回転する一方向が同じで、螺旋の捩じれ方向が右で右円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第1A回折素子と、螺旋の捩じれ方向が左で左円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第1B回折素子とを隣接して有する、第1回折素子を作製した(
図9参照)。
【0176】
[参考例4]
参考例1と同様に配向膜を形成した。
この配向膜の半分をマスキングして遮光して、
図15に示す露光装置を用いて配向膜を露光して、参考例1と同様に配向パターンを形成した。
次いで、配向パターンを形成した領域をマスキングして遮光して、
図15に示す露光装置のλ/4板72Aおよび72Bの光学軸を、それぞれ、90°回転して、残り半分の配向膜を同様に露光して、配向パターンを形成し、配向膜P-2を形成した。
この配向膜P-2の上に、参考例1の第1A回折素子と同様に回折素子(コレステリック液晶層)を形成した。
これにより液晶化合物の光学軸が回転する一方向が逆方向で、螺旋の捩じれ方向が右で右円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第1A回折素子と、螺旋の捩じれ方向が右で右円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第1B回折素子とを隣接して有する、第1回折素子を作製した(
図9参照)。
【0177】
[参考例5]
(配向膜の形成)
図15に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、参考例1と同様にして、支持体の上に配向膜P-3を形成した。
【0178】
(第1A回折素子の形成)
参考例1の第1A回折素子を形成する組成物A-1において、キラル剤の量を6.77質量部に変更した以外は、同様に組成物A-3を調製した。この組成物A-3は、右円偏光を反射するコレステリック液晶層(コレステリック液晶相)を形成する、液晶組成物である。
この組成物A-3を用いた以外は、参考例1の第1A回折素子と同様にして、配向膜P-3の表面に第1A回折素子を形成した。塗布層の断面をSEMで確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチは0.34μmであった。
第1A回折素子は、
図5に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、塗布層の断面をSEMで確認したところ、第1A回折素子の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.445μmであった。
【0179】
(第1B回折素子の形成)
第1B回折素子を形成する組成物A-2において、キラル剤の量を11.30質量部に変更した以外は、同様に組成物A-4を調製した。この組成物A-4は、左円偏光を反射するコレステリック液晶層を形成する、液晶組成物である。
この組成物A-4を用いた以外は、参考例1の第1B回折素子と同様にして、第1A回折素子の表面に第2B回折素子を形成した。塗布層の断面をSEMで確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチは0.34μmであった。
第1B回折素子は、
図5に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、第2コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.445μmであった。
これにより、液晶化合物の光学軸が回転する一方向が同じで、螺旋の捩じれ方向が右で右円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第1A回折素子と、螺旋の捩じれ方向が左で左円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第1B回折素子とを積層した、
図8に示すような第1回折素子を作製した(
図8参照)。
[参考例6]
(配向膜の形成)
図15に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、実施例1と同様にして、支持体の上に配向膜P-4を形成した。
【0180】
(第1A回折素子の形成)
参考例1の第1A回折素子を形成する組成物A-1において、キラル剤の量を4.69質量部に変更した以外は、同様に組成物A-5を調製した。この組成物A-3は、右円偏光を反射するコレステリック液晶層(コレステリック液晶相)を形成する、液晶組成物である。
この組成物A-5を用いた以外は、参考例1の第1A回折素子と同様にして、配向膜P-4の表面に第1A回折素子を形成した。塗布層の断面をSEMで確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチは0.48μmであった。
第1A回折素子は、
図6に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、塗布層の断面をSEMで確認したところ、第1A回折素子の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.63μmであった。
【0181】
(第1B回折素子の形成)
第1A回折素子を形成する組成物A-2において、キラル剤の量を7.87質量部に変更した以外は、同様に組成物A-6を調製した。この組成物A-6は、左円偏光を反射するコレステリック液晶層を形成する、液晶組成物である。
この組成物A-6を用いた以外は、参考例1の第1B回折素子と同様にして、第1A回折素子の表面に第1B回折素子を形成した。塗布層の断面をSEMで確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチは0.48μmであった。
第1B回折素子は、
図6に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、第2コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.63μmであった。
これにより、液晶化合物の光学軸が回転する一方向が同じで、螺旋の捩じれ方向が右で右円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第1A回折素子と、螺旋の捩じれ方向が左で左円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第1B回折素子とを積層した、第1回折素子を作製した(
図8参照)。
【0182】
[参考例7]
HoloLens(Microsoft社)を分解し、映像入射部に用いられている表面レリーフ回折素子を第1回折素子として用いた。
【0183】
[回折効率の評価]
作製した第1回折素子について、以下の方法で回折効率を測定した。
図16に示すように、両端面が傾斜(θ=45°)している導光板Gに、作製した第1回折素子Sを接着した。導光板Gは、屈折率1.52のガラスを用いた。
レーザーLを、直線偏光子102およびλ/4板104を透過させて、導光板Gに対し垂直入射させ、導光板Gの傾斜面から出射した回折光Lrを測定した。
回折光Lrの強度を測定器を用いて測定し、入射光であるレーザーLの強度Liとの比(Lr/Li×100[%])を回折効率として評価した。なお、フレネルの式を用い、入射時における導光板Gの表面での反射率Ri、導光板Gからの出射時における導光板Gの表面での反射率Roの影響を除き、第1回折素子の反射率RDとした。
反射率 RD=Lr/L/(1-Ri)/(1-Ro)
なお、フレネルの式での反射率はs波とp波の反射率の平均値を用いた。
参考例1~4および参考例7は、波長532nm、参考例5は波長450nm、参考例6は波長635nmのレーザーLを用いた。さらに参考例1、3、5、6および7は右円偏光と左円偏光とを各々入射し、参考例2および4は右円偏光を入射して評価を行った。
また、参考例1~6は2方向に入射光が導光するため、2方向の光を各々評価し、その平均値を回折効率として評価した。
また、参考例7で用いたHoloLensでは、導光板を3枚使用しているため、各導光板の回折素子における回折効率を各々測定し、積層時の回折効率を算出して、第1回折素子の回折効率として評価した。
回折効率が80%以上の場合をA、
回折効率が70%以上80%未満の場合をB、
回折効率が60%以上70%未満の場合をC、
回折効率が60%未満の場合をD、
と評価した。
【0184】
[導光方向]
上述した回折効率の評価において、導光方向を検出した。
結果を下記の表に示す。
【0185】
【0186】
表1に示すように、本発明の導光素子に用いる参考例1~6の第1回折素子は、異なる2方向に光を導光できると共に、入射した光の回折効率も高い。従って、本発明の導光板および画像表示装置は、ARグラス等に用いた際に、高い光の利用効率で、高輝度な画像を表示できる。
これに対して、表面レリーフ格子を用いる参考例7の第1回折素子は、導光方向が1方向で、入射光の回折効率も低く、ARグラス等に用いた際に、表示素子による画像に比して、表示画像の輝度が低下してしまう。
【0187】
[実施例1]
(第1回折素子)
参考例1と同様にして、第1回折素子を作製した。第1回折素子は、10×10mmの矩形とした。
上述のように、この第1回折素子は、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期が0.525μm、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチは0.40μmであり、液晶化合物の光学軸が回転する一方向が同じで、螺旋の捩じれ方向が右で右円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第1A回折素子と、螺旋の捩じれ方向が左で左円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第1B回折素子とを積層した、
図8に示すような第1回折素子である。
【0188】
(第2回折素子)
<配向膜の形成>
図15に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、参考例1と同様にして、支持体の表面に配向膜P-5を形成した。
<第2A回折素子>
配向膜P-5の表面に、組成物A-1を用いて、参考例1の第1A回折素子と同様にコレステリック液晶層を形成して、第2A回折素子を作製した。第2A回折素子は、10×20mmの矩形とした。
塗布層の断面をSEMで確認したところ、第1A回折素子の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は0.32μmであった。
第2A回折素子のコレステリック液晶層は、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチは0.40μmであり、螺旋の捩じれ方向が右で右円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である。なお、コレステリック液晶相は2ピッチとなるように膜厚を調整した。
【0189】
<第2B回折素子>
配向膜P-5の表面に、組成物A-2を用いて、参考例1の第1B回折素子と同様にコレステリック液晶層を形成して、第2B回折素子を作製した。第2B回折素子は、10×20mmの矩形とした。
塗布層の断面をSEMで確認したところ、第1A回折素子の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は0.32μmであった。
第2B回折素子のコレステリック液晶層は、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチは0.40μmであり、螺旋の捩じれ方向が左で左円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である。なお、コレステリック液晶相は2ピッチとなるように膜厚を調整した。
【0190】
(第3回折素子)
参考例1と同じ配向膜P-1の表面に、組成物A-1を用いて、参考例1の第1A回折素子と同様にコレステリック液晶層を形成して、第3A回折素子を形成した。従って、この第3A回折素子は、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期が0.525μm、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチは0.40μmであり、右円偏光を反射する回折素子である。なお、コレステリック液晶相は2ピッチとなるように膜厚を調整した。
他方、参考例1と同じ配向膜P-1の表面に、組成物A-2を用いて、参考例1の第1B回折素子と同様にコレステリック液晶層を形成して、第3B回折素子を形成した。従って、この第3B回折素子は、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期が0.525μm、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチは0.40μmであり、左円偏光を反射する回折素子である。なお、コレステリック液晶相は2ピッチとなるように膜厚を調整した。
【0191】
第3A回折素子と第3B回折素子とを対面して、感熱性接着剤によって貼着した。この際に、第3A回折素子における液晶化合物の光学軸が回転する一方向と、第3B回折素子における液晶化合物の光学軸が回転する一方向とが、40°の角度で交差するようにした。また、第3A回折素子と第3B回折素子とは、液晶化合物の光学軸が回転する一方向が、第1回折素子における液晶化合物の光学軸が回転する一方向が同方向に向かうように積層した。
次いで、第3B回折素子の支持体および配向膜を剥離した。これにより、螺旋の捩じれ方向が右で右円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第3A回折素子と、螺旋の捩じれ方向が左で左円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層である第3B回折素子とを積層した、第3回折素子を作製した(
図8参照)。なお、第3回折素子は、30×50mmの矩形とした。
【0192】
ガラス製で、80×80mmの矩形の導光板を用意した。
この導光板の中央上部(中心から20mm上の位置に、感熱性接着剤によって第1回折素子を貼着した。
【0193】
また、導光板の第1回折素子の左側(5mm離れた位置)の位置に、感熱性接着剤によって第2A回折素子を貼着し、導光板の第1回折素子の右側(5mm離れた位置)の位置に、感熱接着剤によって第2B回折素子を貼着した。
この際に、第1回折素子における液晶化合物の光学軸が回転する1方向に対して、第2A回折素子は、液晶化合物の光学軸が回転する1方向が145°、第2B回折素子は、液晶化合物の光学軸が回転する1方向が35°となるように配置した(
図1参照)。
なお、第2A回折素子および第2B回折素子は、液晶化合物の光学軸が時計回りに回転する1方向を下方(第3回折素子)に向けて配置した。
【0194】
さらに、中央下部(第1回折素子から10mm下)の位置に、感熱性接着剤によって第3回折素子を貼着した。この際に、第1回折素子における液晶化合物の光学軸が回転する1方向に対して、第3A回折素子は、液晶化合物の光学軸が回転する1方向が110°、第3B回折素子は、液晶化合物の光学軸が回転する1方向が70°となるように配置した。なお、第3A回折素子および第3B回折素子は、液晶化合物の光学軸が回転する1方向が右側(第2B回折素子側)に向かうように配置した(
図1参照)。
これにより、導光板に、第1回折素子、第2回折素子および第3回折素子を設けた、導光素子を作製した。
【0195】
第1A回折素子に対して右円偏光の画像を、第1B回折素子に対して左円偏光の画像を出射するディスプレイを用意した。このディスプレイは、反射型液晶表示素子に投射光源と凸レンズとを組み合わせた投射型液晶表示素子である。反射型液晶表示素子の出射光の直線偏光をλ/4板により右円偏光および左円偏光に変換している。
このディスプレイを、第1回折素子に向けて画像を照射するように配置して、画像表示装置を作製した。
【0196】
[比較例]
第1A回折素子、第2B回折素子、第3A回折素子を有さない以外は、同様の画像表示装置を作製した。なお、入射光は右円偏光とした。
【0197】
[評価]
作製した画像表示装置を用いて画像を表示して、視野角を評価した。なお、評価においては緑色の画像を用いた。
その結果、比較例の視野角に対し、実施例は視野角を拡大できることを確認した。
【0198】
[実施例2]
(第1回折素子)
<配向膜の形成>
図15に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、参考例1と同様にして、支持体の上に配向膜P-1ABを形成した。
【0199】
<第1A回折素子B>
第1A回折素子Bを形成する液晶組成物として、下記の組成物AB-1を調製した。この組成物AB-1は、右円偏光を反射するコレステリック液晶層(コレステリック液晶相)を形成する、液晶組成物である。
組成物AB-1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
棒状液晶化合物L-1 100.00質量部
重合開始剤(日本化薬製、KAYACURE DETX-S)
1.00質量部
キラル剤Ch-1 5.00質量部
キラル剤Ch-2 1.00質量部
メチルエチルケトン 203.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0200】
配向膜P-1AB上に、上記の液晶組成物AB-1を、スピンコータを用いて塗布した。
液晶組成物AB-1の塗膜をホットプレート上で80℃にて3分間(180sec)加熱した。その後、80℃にて、大気雰囲気下で第1露光工程として、高圧水銀灯を用いて、300nmのロングバスフィルタ、および、350nmのショートパスフィルタを介して露光を行った。第1露光工程は、波長315nmで測定される光の照射量が10mJ/cm2となるように行った。さらに、80℃にて、窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて波長365nmの紫外線を600mJ/cm2の照射量で塗膜に照射することにより(第2露光工程)、液晶組成物AB-1を硬化して液晶化合物の配向を固定化し、コレステリック液晶層を形成した。
これにより、支持体、配向膜およびコレステリック液晶層を有する液晶回折素子を作製した。
【0201】
コレステリック液晶層は、
図6に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光
顕微鏡で確認した。
コレステリック液晶層を光学軸の回転方向に沿う方向切削し、断面をSEMで観察した。その結果、配向膜側から配向膜と離間する側に向かって、厚さ方向に傾斜面ピッチPが連続的に増大し、かつ、傾斜角θ
hpも連続的に増大する形状が見られた。なお、傾斜角θ
hp(明部/暗部の傾斜角θ
hp)とは、上述のように、明部および暗部がコレステリック液晶層の主面に対して成す角度である。
【0202】
断面をSEMで観察した結果、コレステリック液晶相は8ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.32μmであった。また、コレステリック液晶層液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.29μmであった。
【0203】
Axometrics社製の「Axoscan」を用いて、測定光の入射角度を変更して、進相軸面内および遅相軸面内における面内レタデーションRe(面内Re)を測定した。測定波長は750nmとした。また、測定光の入射角度は70°~70°の範囲とした。
その結果、コレステリック液晶層の面内レタデーションが最小となる方向が法線に対し傾斜していた。この結果は、各液晶分子の長軸方向が、コレステリック液晶層の主面に対して傾斜した配向状態をとっていることを示唆している。
【0204】
<第1A回折素子G>
図15に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、第1A回折素子Bと同様にして、支持体の上に配向膜P-1AGを形成した。
また、第1A回折素子Bを形成する組成物AB-1において、キラル剤Ch-1の量を3.90質量部に変更した以外は、同様に組成物AG-1を調製した。
この組成物AG-1を用いた以外は、第1A回折素子Bと同様にして、第1A回折素子Gを形成した。塗布層の断面をSEMで確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.37μmであった。
第1A回折素子Gは、
図6に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.34μmであった。
【0205】
<第1A回折素子R>
図15に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、第1A回折素子Bと同様にして、支持体の上に配向膜P-1ARを形成した。
また、第1A回折素子Bを形成する組成物AB-1において、キラル剤Ch-1の量を3.10質量部に変更した以外は、同様に組成物AG-1を調製した。
この組成物AG-1を用いた以外は、第1A回折素子Bと同様にして、第1A回折素子Gを形成した。塗布層の断面をSEMで確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.45μmであった。
第1A回折素子Gは、
図6に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.40μmであった。
【0206】
(第2回折素子)
図15に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、第1A回折素子Bと同様にして、支持体の上に配向膜を形成した。
また、第1A回折素子Bを形成する組成物AB-1において、キラル剤Ch-1の量およびメチルエチルケトンの量を適宜変更した以外は、同様に液晶組成物を調製した。
この液晶組成物を用いた以外は、第1A回折素子Bと同様にして、第2回折素子を形成した。なお、第2回折素子の形成では、第1露光工程は行わずに、第2露光工程による液晶層の硬化を実施し、コレステリック液晶層を形成した。
<第2A回折素子B>
作製したコレステリック液晶相は2ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.34μmであった。また、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.21μmであった。
<第2A回折素子G>
作製したコレステリック液晶相は2ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.40μmであった。また、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.24μmであった。
<第2A回折素子R>
作製したコレステリック液晶相は2ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.48μmであった。また、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.28μmであった。
【0207】
(第3回折素子)
図15に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、第1A回折素子Bと同様にして、支持体の上に配向膜を形成した。
また、第1A回折素子Bを形成する組成物AB-1において、キラル剤Ch-1の量およびメチルエチルケトンの量を適宜変更した以外は、同様に液晶組成物を調製した。
この液晶組成物を用いた以外は、第1A回折素子Bと同様にして、第3回折素子を形成した。なお、第3回折素子の形成では、第1露光工程は行わずに、第2露光工程による液晶層の硬化を実施し、コレステリック液晶層を形成した。
<第3A回折素子B>
作製したコレステリック液晶相は2ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.32μmであった。また、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.29μmであった。
<第3A回折素子G>
作製したコレステリック液晶相は2ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.37μmであった。また、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.34μmであった。
<第3A回折素子R>
作製したコレステリック液晶相は2ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.45μmであった。また、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.40μmであった。
【0208】
なお、第1B回折素子、第2B回折素子および第3B回折素子は、上記で作製した第1A回折素子、第2A回折素子、第3A回折素子を用いた。
【0209】
(導光素子の作製)
導光板として、大きさ60mm×70mm、厚さ1mmの、ガラス製の導光板を用いた。第1Aおよび第1B入射回折素子として第1A回折素子B、第1A回折素子Gおよび第1A回折素子Rを用い、第2Aおよび第2B中間回折素子として第2A回折素子B、第2A回折素子Gおよび第2A回折素子Rを用い、第3Aおよび第3B出射回折素子として第3A回折素子B、第3A回折素子Gおよび第3A回折素子Rを用いた。
入射回折素子は、直径6mmの大きさに切り出して用いた。中間回折素子は、15mm(最大)×25mmの大きさに切り出して用いた。出射回折素子は、20mm×25mmの大きさに切り出して用いた。
なお、各回折素子を切り出す際には、各回折素子を導光板上に配置した際に回折構造の周期方向が所定の方向となるように、切り出す方向と回折構造の周期方向とを調整して切り出した。
【0210】
導光板の一方の主面に、作製した各回折素子を接着剤を用いて貼り合わせた。
各回折素子の配置は、第1A入射回折素子は、導光板の主面の上側中央左に配置し、第1B入射回折素子は、導光板の主面の上側中央右に配置し、また、第1A入射回折素子の左側に第2A中間回折素子を配置し、第1B入射回折素子の右側に第2B中間回折素子を配置した。
また、導光板の主面の中央位置に第3Aおよび第3B出射回折素子を積層して配置した。出射回折素子と入射回折素子とは上下方向に13mm離間して配置した。
第1A入射回折素子と第1B入射回折素子とは左右方向に1mm離間して配置した。第1A入射回折素子と第2A中間回折素子とは左右方向に1mm離間して配置した。第1B入射回折素子と第2B中間回折素子とは左右方向に1mm離間して配置した。
【0211】
また、第1A入射回折素子は、回折光が左向き(第2A中間回折素子側)に回折するように配置し、第1B入射回折素子は、回折光が右向き(第2B中間回折素子側)になるように配置した。
各中間回折素子は、入射した光を出射回折素子の方向に回折するように、回折素子の周期方向を調整して配置した。
また、第3A出射回折素子の液晶化合物の光学軸が一方向に沿って連続的に回転する液晶配向パターンの周期方向と第3B出射回折素子の液晶配向パターンの周期方向とのなす角度は90°となるように配置した。なお、第1A入射回折素子、第1B入射回折素子、第2A中間回折素子および第2B中間回折素子の液晶配向パターンの周期方向を第3Aおよび第3B出射回折素子に合うように調整して配置した。
【0212】
また、第1Aおよび第1B入射回折素子は、導光板側から、第1回折素子B、第1回折素子Gおよび第1回折素子Rの順で積層した。第2Aおよび第2B中間回折素子は導光板側から、第2回折素子B、第2回折素子Gおよび第2回折素子Rの順で積層した。第3Aおよび第3B出射回折素子は導光板側から、第3回折素子B、第3回折素子Gおよび第3回折素子Rの順で積層した。
以上により、導光素子を作製した。
【0213】
[比較例2]
実施例2において、第1A入射回折素子の形成で、第1露光工程は行わずに、第2露光工程による液晶層の硬化のみを実施した以外は同様にして、コレステリック液晶層を形成した。第1A入射回折素子の傾斜面ピッチは厚さ方向でほぼ同一であった。
また、第1B入射回折素子、第2B中間回折素子、および、第3B出射回折素子を有さない以外は、実施例2と同様にして導光素子を作製した。
【0214】
[実施例3]
実施例2と同様にして、第1回折素子、第2回折素子および第3回折素子を作製した。
【0215】
(導光素子の作製)
第1導光板に、第1Aおよび第1B回折素子G、第2Aおよび第2B回折素子G、第3Aおよび第3B回折素子Gを配置した。
第2導光板に、第1Aおよび第1B回折素子B、第2Aおよび第2B回折素子B、ならびに、第3Aおよび第3B回折素子Bと、第1Aおよび第1B回折素子R、第2Aおよび第2B回折素子R、ならびに、第3Aおよび第3B回折素子Rとを配置して導光素子を作製した以外は、実施例2と同様にして導光素子を作製した。
なお、第2導光板には、第1Aおよび第1B入射回折素子は、導光板側から、第1回折素子Bおよび第1回折素子Rの順で積層し、第2Aおよび第2B中間回折素子は、導光板側から、第2回折素子Bおよび第2回折素子Rの順で積層し、第3Aおよび第3B出射回折素子は、導光板側から、第3回折素子Bおよび第3回折素子Rの順で回折素子を積層した。
さらに、第1導光板側から光が入射するように第1導光板および第2導光板を重ねて配置した。
【0216】
[比較例3]
実施例3において、第1A入射回折素子の形成で、第1露光工程は行わずに、第2露光工程による液晶層の硬化のみを実施した以外は同様にして、コレステリック液晶層を形成した。第1A入射回折素子の傾斜面ピッチは厚さ方向でほぼ同一であった。
また、第1B入射回折素子、第2B中間回折素子、第3B出射回折素子を有さない以外は、実施例3と同様にして導光素子を作製した。
【0217】
[実施例4]
(第1回折素子)
<配向膜の形成>
図15に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、参考例1と同様にして、支持体の上に配向膜P-1ASを形成した。
【0218】
<第1A回折素子S>
第1A回折素子Sを形成する液晶組成物として、下記の組成物AS-1を調製した。この組成物AS-1は、右円偏光を反射するコレステリック液晶層(コレステリック液晶相)を形成する、液晶組成物である。
組成物AS-1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
棒状液晶化合物L-1 100.00質量部
重合開始剤(日本化薬製、KAYACURE DETX-S)
1.00質量部
キラル剤Ch-3 4.00質量部
メチルエチルケトン 142.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0219】
【0220】
配向膜P-1AS上に、上記の液晶組成物AS-1を、スピンコータを用いて塗布した。
液晶組成物AS-1の塗膜をホットプレート上で100℃にて3分間(180sec)加熱した。その後、100℃にて、窒素雰囲気下で第1露光工程として、高圧水銀灯を用いて、300nmのロングバスフィルタ、および350nmのショートパスフィルタを介して露光を行った。第1露光工程は、波長315nmで測定される光の照射量が9mJ/cm2となるように行った。さらに、100℃にて、窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて波長365nmの紫外線を1000mJ/cm2の照射量で塗膜に照射することにより(第2露光工程)、液晶組成物AS-1を硬化して液晶化合物の配向を固定化し、コレステリック液晶層を形成した。
これにより、支持体、配向膜およびコレステリック液晶層を有する液晶回折素子を作製した。
【0221】
コレステリック液晶層は、
図6に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。
コレステリック液晶層を光学軸の回転方向に沿う方向切削し、断面をSEMで観察した。その結果、配向膜側から配向膜と離間する側に向かって、厚さ方向に傾斜面ピッチPが連続的に増大し、かつ、傾斜角θ
hpも連続的に増大する形状が見られた。なお、傾斜角θ
hp(明部/暗部の傾斜角θ
hp)とは、上述のように、明部および暗部がコレステリック液晶層の主面に対して成す角度である。
【0222】
断面をSEMで観察した結果、コレステリック液晶相は8ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.35μmであった。また、コレステリック液晶層液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.29μmであった。
【0223】
Axometrics社製の「Axoscan」を用いて、測定光の入射角度を変更して、進相軸面内および遅相軸面内における面内レタデーションRe(面内Re)を測定した。測定波長は750nmとした。また、測定光の入射角度は70°~70°の範囲とした。
その結果、コレステリック液晶層の面内レタデーションが最小となる方向が法線に対し傾斜していた。この結果は、各液晶分子の長軸方向が、コレステリック液晶層の主面に対して傾斜した配向状態をとっていることを示唆している。
<第1A回折素子L>
図15に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、第1A回折素子Sと同様にして、支持体の上に配向膜P-1ALを形成した。
また、第1A回折素子Sを形成する組成物AS-1において、キラル剤Ch-3の量を3.40質量部に変更した以外は、同様に組成物AL-1を調製した。
この組成物AL-1を用いた以外は、第1A回折素子Sと同様にして、第1A回折素子Lを形成した。塗布層の断面をSEMで確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.40μmであった。
第1A回折素子Gは、
図6に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.42μmであった。
【0224】
<第2A回折素子S>
図15に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、第1A回折素子Sと同様にして、支持体の上に配向膜を形成した。
また、第1A回折素子Sを形成する組成物AS-1において、メチルエチルケトンの量を適宜変更した以外は、同様に液晶組成物を調製した。
この液晶組成物を用いた以外は、第1A回折素子Sと同様にして、第2A回折素子Sを形成した。
【0225】
作製したコレステリック液晶相は2ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.35μmであった。また、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.21μmであった。
【0226】
<第2A回折素子L>
図15に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、第1A回折素子Lと同様にして、支持体の上に配向膜を形成した。
また、第1A回折素子Lを形成する液晶組成物において、メチルエチルケトンの量を適宜変更した以外は、同様に液晶組成物を調製した。
この液晶組成物を用いた以外は、第1A回折素子Lと同様にして、第2A回折素子Lを形成した。
【0227】
作製したコレステリック液晶相は2ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.40μmであった。また、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.30μmであった。
【0228】
<第3A回折素子S>
図15に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、第1A回折素子Sと同様にして、支持体の上に配向膜を形成した。
また、第1A回折素子Sを形成する組成物AS-1において、メチルエチルケトンの量を適宜変更した以外は、同様に液晶組成物を調製した。
この液晶組成物を用いた以外は、第1A回折素子Sと同様にして、第3A回折素子Sを形成した。
【0229】
作製したコレステリック液晶相は2ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.35μmであった。また、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.29μmであった。
【0230】
<第3A回折素子L>
図15に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、第1A回折素子Lと同様にして、支持体の上に配向膜を形成した。
また、第1A回折素子Lを形成する液晶組成物において、メチルエチルケトンの量を適宜変更した以外は、同様に液晶組成物を調製した。
この液晶組成物を用いた以外は、第1A回折素子Lと同様にして、第3A回折素子Lを形成した。
【0231】
作製したコレステリック液晶相は2ピッチであった。また、主面に対する明部および暗部の傾いている面の傾斜面ピッチ(厚さ方向の平均値)は0.40μmであった。また、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.42μmであった。
【0232】
なお、第1B回折素子、第2B回折素子および第3B回折素子は、上記で作製した第1A回折素子、第2A回折素子、第3A回折素子を用いた。
【0233】
(導光素子の作製)
第1導光板に、第1Aおよび第1B回折素子S、第2Aおよび第2B回折素子S、ならびに、第3Aおよび第3B回折素子Sを配置した。
第2導光板に、第1Aおよび第1B回折素子L、第2Aおよび第2B回折素子L、ならびに、第3Aおよび第3B回折素子Lを配置して導光素子を作製した以外は、実施例3と同様にして導光素子を作製した。
さらに、第1導光板側から光が入射するように第1導光板および第2導光板を重ねて配置した。
【0234】
実施例2~実施例4において、第1Aおよび第1B入射回折素子に対して右円偏光の画像を出射するディスプレイを用意した。このディスプレイは、反射型液晶表示素子に投射光源と凸レンズとを組み合わせた投射型液晶表示素子である。反射型液晶表示素子の出射光の直線偏光をλ/4板により右円偏光に変換している。
このディスプレイを、第1回折素子に向けて画像を照射するように配置して、画像表示装置を作製した。
比較例2~比較例3は、第1A入射回折素子に対して右円偏光の画像を出射するディスプレイを用意した以外は同様にして、画像表示装置を作製した。
【0235】
[視野角の評価1]
作製した画像表示装置を用いて画像を表示して、視野角を評価した。なお、評価においては緑色の画像を用いた。
その結果、比較例の視野角に対し、実施例は視野角を拡大できることを確認した。
【0236】
[視野角の評価2]
さらに、各導光素子に光を照射して、視野角を評価した。
光源として、波長450nm、波長532nmおよび波長635nmの光を用いて評価した。
光源から出射した光を直線偏光子およびλ/4板を透過させて右円偏光の光とした。この光を実施例2~実施例4は導光素子の第1Aおよび第1B入射回折素子に入射させて出射回折素子から出射した光の光量をパワーメータで測定した。比較例2~比較例3は、導光素子の第1A入射回折素子に入射させて出射回折素子から出射した光の光量をパワーメータで測定した。なお、測定箇所は出射回折素子の中央からの出射光を測定した。
また、導光板主面に対する法線方向を0°としたときに、入射回折素子への光の入射角は-30°から30°まで2.5°刻みで変化させた(水平方向)。
パワーメータの有効口径が2mmΦとなるようにピンホールを配置し、出射光がピンホールの中心を透過するようにして光量を測定し評価を行った。出射光量が最も大きくなる出射角度の光量に対し、30%以上の出射光量となる角度範囲を視野角として評価した。各波長で評価を行い、評価に用いた全ての波長で前述の条件を満たす角度範囲を視野角とした。
【0237】
その結果、実施例2は比較例2に対し、視野角が1.5倍以上に拡大しており、かつ、広い角度範囲で明るい出射光量を得た。また、実施例3および実施例4は比較例3に対し、視野角が1.5倍以上に拡大しており、かつ、広い角度範囲で明るい出射光量を得た。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0238】
ARグラスなど、導光を利用する各種の光学装置に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0239】
10 画像表示装置
12 表示素子
16 導光板
18 第1回折素子
18a-2 第1A回折素子
18R R第1回折素子
18G G第1回折素子
18B B第1回折素子
18aR 第1A回折素子
18bR 第1B回折素子
18aG 第1A回折素子
18bG 第1B回折素子
18aB 第1A回折素子
18bB 第1B回折素子
20a 第2A回折素子
20b 第2B回折素子
24a 第3A回折素子
24b 第3B回折素子
30 支持体
32,32R,32G,32B 配向膜
34 (コレステリック)液晶層
40 液晶化合物
40A 光学軸
60 露光装置
62 レーザ
64 光源
68 偏光ビームスプリッター
70A,70B ミラー
72A,72B,84 λ/4板
82 直線偏光子
90 光検出器
102 直線偏光子
104 λ/4板
BR 青色の右円偏光
GR 緑色の右円偏光
RR 赤色の右円偏光
M レーザ光
MA,MB 光線
MP P偏光
MS S偏光
PO 直線偏光
PR 右円偏光
PL 左円偏光
Q,Q1,Q2 絶対位相
E,E1,E2 等位相面
L1,L4 入射光
L2,L5 透過光
U 使用者
G 導光板
S サンプル(第1回折素子)