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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】フライトコンベア
(51)【国際特許分類】
   B65G 19/14 20060101AFI20221006BHJP
   B65G 19/18 20060101ALI20221006BHJP
   B65G 19/22 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B65G19/14 A
B65G19/18 Z
B65G19/22 D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018178366
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020050456
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 伸充
【審査官】山▲崎▼ 歩美
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-020332(JP,U)
【文献】特開2013-014411(JP,A)
【文献】特開昭52-031474(JP,A)
【文献】特開2017-226540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 19/00-19/30
B65G 17/00-17/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、該ケーシング内に収められたチェーンと、該チェーンに取り付けられたフライトと、少なくとも前記チェーンと前記フライトとの連結部分に前記チェーンの少なくとも外側面を覆う耐摩耗性を有するカバーと、前記チェーンの浮き上がりを防止する浮き上がり防止ガイドを備え、前記カバーが、少なくとも前記チェーンと前記フライトとの連結部分において前記チェーンの少なくとも上面を覆うものであって、前記カバーが前記チェーンに対して着脱可能となしたフライトコンベアにおいて、前記カバーが、互いに嵌り合って結合される第一カバー部材と第二カバー部材とを備え、前記第一カバー部材と第二カバー部材との互いに重なり合う部分を貫通して前記チェーンに結合される固着具を備えることを特徴とするフライトコンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライトコンベアに関し、詳しくは、精鉱を搬送する際に用いて好適なフライトコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、銅精鉱には水分が10重量%程度含まれているため、銅精鉱を乾燥させて水分1重量%以下の乾燥精鉱とした後に、この乾燥精鉱を用いて熔錬が行われる。
【0003】
例えば、図6に示すように、水分10重量%程度の銅精鉱はロータリースチームドライヤーなどの乾燥設備1に装入され、水分1重量%以下まで乾燥されて乾燥精鉱となる。乾燥精鉱はシュート2を通ってフライトコンベア3に装入され、フライトコンベア3によって流送設備4まで搬送される。そして、乾燥精鉱は流送設備4によって精鉱ビン5に流送され蓄積された後に、熔錬炉6に供給される。
【0004】
ここで、流送設備4は乾燥精鉱を気流で搬送するため、流送設備4と接続されているフライトコンベア3は、後で述べるケーシング8(図7図8)で囲まれた気密構造となっている。また、フライトコンベア3には、乾燥精鉱とともに、乾燥設備1からの水蒸気も装入される。そのため、フライトコンベア3はバグフィルター7と接続されており、ケーシング中に浮遊している乾燥精鉱の粉塵とともに水蒸気がバグフィルター7に吸引されるようになっている。そして、バグフィルター7に吸引された水蒸気は系外に排出され、乾燥精鉱の粉塵は再びフライトコンベア3に戻されるようになっている。
【0005】
図7及び図8に示すように、フライトコンベア3は、前記ケーシング8と、そのケーシング8に収められた二条のチェーン9,9と、この二条のチェーン9,9に架け渡された多数のフライト(押し板又はスクレーパ)10から構成されている。ケーシング8は、上面8aと底面8bと左右の側壁8c,8cとからなる断面視四角形の筒状に構成されている。チェーン9は、図8の左右それぞれにおいて上下に位置するチェーンが一本の環状のチェーン9となっており、図7に示すように、一対のスプロケット11,11に巻き掛けられている。そして、一方のスプロケット11が回転駆動することによりチェーン9,9が進行し、それに伴ってフライト10が進行するようになっている。具体的には、図7のケーシング8内の下部に位置するフライト10が、シュート2から流送設備4の方向へと進行し、シュート2を通って装入された乾燥精鉱Cをフライト10で押して流送設備4まで搬送するようになっている。そして、流送設備4まで進行したフライト10はケーシング8内の上部を、流送設備4からシュート2の方向へと進行して循環される。
【0006】
図9及び図10に示すように、フライト10の両側縁には二条のチェーン9,9が配置されている。前記二条のチェーン9は、複数のチェーンコマ12が連結ピン13で回動自在に連結されて構成されている。チェーンコマ12の内側の側面には凹部14が形成されており、前記凹部14にフライト10の両側縁下端部が挿入されることにより、チェーン9,9にフライト10が固定されている。
【0007】
各チェーンコマ12は、図11に示すように、チェーン9の進行方向に延びるアーム部12aと、このアーム部12aの進行方向に対する後端部に形成される二股状のナックル部12b,12bと、を有し、ナックル部12b,12bには連結ピン13が挿通されるピン挿通孔12cが形成されている。アーム部12aの進行方向の前端部には、隣接するチェーンコマ12の二股状のナックル部12b,12b間に配置される軸受部12eが形成され、この軸受部12eには、連結ピン13が挿通される軸受孔12fが形成されている。アーム部12aの後端部の内側の側面から二股状のフライト支え部12d,12dが突出し、この二股状の支え部12d,12d間の隙間が、フライト固定用の前記凹部14となっている。この凹部14にフライト10の両側縁(下端部)が挿入され、ボルトやねじ等の固着具15で固定される。
【0008】
ところで、フライトコンベア3で乾燥精鉱を搬送する際には、フライト10が乾燥精鉱の抵抗により浮き上がり、それにつられてチェーン9も浮き上がる虞がある。そのため、図12に示すように、ケーシング8の底面8b上を進行するチェーン9の上方には浮上り防止ガイド16が設けられている。浮上り防止ガイド16はチェーン9の長手方向に延びる長尺の板部材であり、ケーシング8の側壁8cに取り付けられたライナ17にL字金具18を介して取り付けられている。浮上り防止ガイド16がチェーン9の上方に設けられることにより、浮き上がったチェーン9を下方へ押さえることができ、チェーン9およびフライト10が浮き上がることを防止できる。なお、ライナ17は、ケーシング8の側壁8cを肉厚にすることにより、チェーン9の外側面9aなどが側壁8cに接触してケーシング8に穴があくことを防止するために設けられている。
【0009】
フライトコンベア3に装入された乾燥精鉱Cの大部分は、フライト10に押されて流送設備4まで搬送されるが、乾燥精鉱Cの一部はチェーン9とケーシング8の側壁8cとの間の空間Sに漏れ出る。そして、ケーシング8は気密構造であるので、一度その空間Sに漏れ出た乾燥精鉱は、空間Sから排出され難く滞留してしまう。そうすると、空間Sに滞留した乾燥精鉱はケーシング8内の水蒸気を吸湿して底面8bやライナ17に付着する。さらに、チェーン9が蛇行して側壁8cに接近すると、その付着物がチェーン9の外側面9aにより押し固められ、非常に硬い固着物Xとなる。この固着物Xは居付きと称され、ケーシング8の底面8bとライナ17との交差部分の隅に断面視三角形に成長する。
【0010】
居付きXが発生した状態では、チェーン9が蛇行して側壁8cに接近すると、チェーン9の外側面9aが居付きXと接触するようになり、居付きXによりチェーン9が摩耗して強度が不足するという問題がある。そうすると、チェーン9の寿命が短くなり、チェーン9を交換するために頻繁に運転を停止する必要があるので、操業効率が悪くなり、また交換にかかる費用が高くなるという問題がある。以上述べた従来技術とその問題点は、特許文献1の背景技術の項にも詳述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2013-14411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、チェーンの寿命を長くできるフライトコンベアを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明に係るフライトコンベアは、ケーシングと、該ケーシング内に収められたチェーンと、該チェーンに取り付けられたフライトと、少なくとも前記チェーンと前記フライトとの連結部分に前記チェーンの少なくとも外側面を覆う耐摩耗性を有するカバーと、前記チェーンの浮き上がりを防止する浮き上がり防止ガイドを備え、前記カバーが、少なくとも前記チェーンと前記フライトとの連結部分において前記チェーンの少なくとも上面を覆うものであって、前記カバーが前記チェーンに対して着脱可能となしたフライトコンベアにおいて、前記カバーが、互いに嵌り合って結合される第一カバー部材と第二カバー部材とを備え、前記第一カバー部材と第二カバー部材との互いに重なり合う部分を貫通して前記チェーンに結合される固着具を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
発明の対象とするフライトコンベアは、少なくともチェーンとフライトとの連結部分において、チェーンの少なくとも外側面が耐摩耗性を有するカバーで覆われるので、チェーンが外側方の居付きと直接接触して摩耗することが抑止される。このため、チェーンの寿命を長くできる。なお、カバーで覆う部分を少なくともチェーンとフライトとの連結部分としたのは、チェーンの蛇行はフライトにかかる搬送物の抵抗により生ずるので、蛇行による外側への移動が最も大きい部位をカバーで保護するのが最も効果的だからである。
【0015】
発明によれば、チェーンの外側面に加えてチェーンの少なくとも上面も前記カバーで覆われるので、チェーンが居付きや浮上り防止ガイドと直接接触して摩耗することが抑止される。このため、チェーンの寿命を長くできる。なお、カバーで覆う部分を少なくともチェーンとフライトとの連結部分としたのは、チェーンの浮き上がりはフライトにかかる搬送物の抵抗により生ずるので、浮き上がりによる上方への移動が最も大きい部位をカバーで保護するのが最も効果的だからである。
【0016】
発明によれば、カバーが摩耗したら取り外して新たなカバーを使用できるので、チェーンの寿命をさらに長くすることができる。
【0017】
発明によれば、第一カバー部材と第二カバー部材とを互いに嵌め合わせて結合することでチェーンにカバーを取り付けることができるので、構成が簡易で取付作業性も良い。
【0018】
発明によれば、第一カバー部材と第二カバー部材との互いに重なり合う部分に固着具を通し、この固着具をチェーンに結合させることでカバーがチェーンに結合されるので、構成が簡易で取付作業性も良い。
【0019】
これにより、カバーを軽量にできるほか、カバーの製造も容易となる。また、エンジニアリングプラスチックは耐熱性が高いので、高温の環境で使用するフライトコンベアにも適する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の一形態に係るフライトコンベアの要部の平面図である。
図2図1の側面図である。
図3図1の要部の斜視図である。
図4図1のフライトコンベアを構成するチェーンとケーシングとの関係を示す断面図である。
図5図1のV-V矢視拡大端面図である。
図6】従来のフライトコンベアを含む設備の概略図である。
図7図6中のフライトコンベアの側面視断面図である。
図8図7のVIII-VIII矢視断面図である。
図9図8のフライトコンベアの一部平面図である。
図10図9の側面図である。
図11図9中のチェーンコマの拡大斜視図である。
図12図8のXII矢視部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1図5を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
図1図5に示す本発明の実施の一形態に係るフライトコンベア30は、図6図12を参照して説明した従来のフライトコンベア3を構成するチェーン9に対してカバー31を取り付けたものに相当する。それ以外の構成は、従来のフライトコンベア3と同じであるので、重複する説明を省略する。なお、図1図9に、図2図10に、図3図11に、図4図12に、それぞれ対応している。
【0023】
チェーン9に取り付けられるカバー31は耐摩耗性を有することが必要であり、図1図4に示すように、少なくともチェーン9とフライト10との連結部分において、チェーン9の少なくとも外側面9aを覆うものである。さらに、カバー31は、少なくともチェーン9とフライト10との連結部分において、チェーン9の少なくとも上面9bをも覆うものであることが好ましい。図4に示すように、カバー31の外側面31a(ケーシング8の側壁8c側の面)とケーシング8内のライナ17との間には、隙間C1がある。同様に、カバー31の上面31bと浮上り防止ガイド16との間には、隙間C2がある。
【0024】
ここで、チェーン9とフライト10との連結部分におけるチェーン9の外側面9aとは、図3に示すように、チェーンコマ12の二股状のナックル部12b,12bの基部12gの外側面12hをいう。この部位は、図1に示すように、チェーンコマ12の外側面の中で最も外方(ケーシング8の側壁8c近く)に位置する部位である。この部位は、図4に示すように、ケーシング8の底面8bとライナ17との交差部分の隅に堆積する居付きと呼ばれる固着物Xに対し、チェーン9の蛇行によって接触し易い部位である。よって、前記外側面12hをカバー31で覆うことで、チェーン9の最も摩耗し易い部位を保護することができる。
【0025】
また、チェーン9とフライト10との連結部分におけるチェーン9の上面9bとは、図3に示すように、チェーンコマ12の二股状のナックル部12b,12bの基部12gの上面に相当する。
【0026】
カバー31は、耐摩耗性に優れていれば、金属製、プラスチック製、ゴム製等、適宜の材料を用いて作製することができる。さらにカバー31には、耐熱性や耐蝕性等、フライトコンベア30の使用環境に応じて必要とされる特性を持たせると良い。
【0027】
本実施の形態によれば、少なくともチェーン9とフライト10との連結部分において、チェーン9の少なくとも外側面9a(12h)と、さらには少なくとも上面9bが耐摩耗性を有するカバー31で覆われるので、チェーン9が外側方の居付きX、さらには上方の居付きや浮上り防止ガイド16と直接接触して摩耗することが抑止される。このため、チェーン9の寿命を長くできる。なお、カバー31で覆う部分を少なくともチェーン9とフライト10との連結部分としたのは、チェーン9の蛇行や浮き上がりはフライト10にかかる搬送物の抵抗により生ずるので、蛇行や浮き上がりによる移動距離が最も大きい部位をカバー31で保護するのが最も効果的だからである。
【0028】
カバー31は、チェーン9に対して着脱可能であることが好ましい。カバー31が摩耗したら取り外して新たなカバーを装着できるので、チェーン9の寿命をさらに長くすることができるからである。
【0029】
本実施の形態のカバー31は、図3及び図5に示すように、互いに嵌り合って結合される第一カバー部材31cと第二カバー部材31dとを備える。具体的には、第一カバー部材としての下カバー部材31cと、第二カバー部材としての上カバー部材31dと、を備える。これらのカバー部材31c、31dは、チェーンコマ12とフライト10との連結部分を包囲するようにチェーンコマ12に上下から取り付けられる。そして、下カバー部材31cと上カバー部材31dの互いに重なり合う部分に固着具の一例としてのねじ32(図1参照)が貫通され、このねじ32がチェーンコマ12にねじ結合されることにより、チェーンコマ12に対してカバー31が固着される。よって、構成簡易にして取付作業性も良い。
【0030】
なお、カバー31をプラスチックで作製すると、軽量なカバーとなるほか、カバーの製造、取り外しも容易となり好適である。この場合、超高分子ポリエチレンなどのエンジニアリングプラスチック製とすると、耐熱性にも優れたものとなり、蒸気ドライヤーで乾燥された銅精鉱を搬送する等、高温の環境で使用するフライトコンベアとして好適である。
【符号の説明】
【0031】
8 ケーシング
8a 上面
8b 底面
8c 側壁
9 チェーン
9a (チェーンとフライトとの連結部分におけるチェーンの)外側面
9b (チェーンとフライトとの連結部分におけるチェーンの)上面
10 フライト
11 スプロケット
12 チェーンコマ
12a アーム部
12b ナックル部
12c ピン挿通孔
12d フライト支え部
12e 軸受部
12f 軸受孔
12g 基部
12h 外側面
13 連結ピン
14 凹部
15、32 固着具
16 浮上り防止ガイド
17 ライナ
30 フライトコンベア
31 カバー
31a 外側面
31b 上面
31c 第一カバー部材(下カバー部材)
31d 第二カバー部材(上カバー部材)
C1、C2 隙間
X 固着物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12