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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】電力管理システムおよび電力管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20221006BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20221006BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20221006BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20221006BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20221006BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20221006BHJP
   B60L 55/00 20190101ALI20221006BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20221006BHJP
   B60L 53/64 20190101ALI20221006BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20221006BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/14 160
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J7/35 K
G06Q50/06
B60L55/00
B60L53/14
B60L53/64
B60L53/66
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020106999
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022002449
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591030237
【氏名又は名称】BIPROGY株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】道坂 史明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 航大
(72)【発明者】
【氏名】脇森 浩志
(72)【発明者】
【氏名】小松 祐城
(72)【発明者】
【氏名】久米 洋輝
(72)【発明者】
【氏名】田中 謙司
(72)【発明者】
【氏名】佐川 大志
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-063561(JP,A)
【文献】特開2014-075861(JP,A)
【文献】特開2017-046498(JP,A)
【文献】特開2020-070742(JP,A)
【文献】特開2014-174735(JP,A)
【文献】特開2014-158404(JP,A)
【文献】特開2013-027214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/14
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 7/35
G06Q 50/06
B60L 55/00
B60L 53/14
B60L 53/64
B60L 53/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予測対象期間における発電装置による予測発電電力と、上記予測対象期間における電力負荷による予測消費電力と、上記予測対象期間における車両のモビリティとしての予測使用状態と、時間帯別の電気料金体系とに基づいて、上記車両に搭載された車載蓄電池の充放電を含む電力の管理を行う電力管理システムであって、
上記車両の時系列状の実際の使用状態を示す実績データを取得する使用実績データ取得部と、
上記使用実績データ取得部により取得された実績データを用いて、予測対象とする期間および当該期間の属性を表す予測期間情報が入力された際に車両のモビリティとしての予測使用状態を出力するように成された予測モデルを機械学習によって生成する予測モデル生成部と、
上記予測期間情報を上記予測モデルに入力することにより、上記予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両のモビリティとしての使用状態を、上記所定単位時間ごとの複数の予測結果の中から予測確率の低い一部を枝刈りしながら少なくとも1パターン予測する使用状態予測部と、
上記使用状態予測部により予測された少なくとも1パターンの予測使用状態、上記予測発電電力、上記予測消費電力および上記時間帯別の電気料金体系に基づいて、上記車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく電気料金が低減するように、計画対象期間における上記車載蓄電池の充放電計画を少なくとも1パターン作成する電力最適化計算部とを備えた
ことを特徴とする電力管理システム。
【請求項2】
上記使用状態予測部は、上記車両の使用状態を複数パターン予測し、複数パターンの使用状態どうしの類似度を算出し、類似度が所定レベル以上のパターンどうしを集約する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
上記使用状態予測部は、上記集約により残った複数パターンの使用状態どうしの上記所定単位時間ごとの重複度を算出し、重複度が低い方から所定数のパターンの使用状態を抽出することを特徴とする請求項2に記載の電力管理システム。
【請求項4】
上記使用状態予測部は、
上記所定単位時間ごとに、上記車両の使用状態の予測結果を表すラベルを付与し、
上記予測対象期間の中の一の所定単位時間についての上記車両の使用状態を予測する際に、上記一の所定単位時間に対応する予測期間情報と、上記一の所定単位時間よりも前の所定単位時間に対して付与されたラベルとを用いて上記車両の使用状態を予測する
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の電力管理システム。
【請求項5】
上記使用状態予測部による上記車両の使用状態の予測および上記電力最適化計算部による上記充放電計画の作成を所定周期ごとに実行するように構成し、
一の周期内で上記車両がモビリティとしての用途に使用された場合、
上記使用実績データ取得部は、上記一の周期における上記モビリティとしての使用の終了時までの上記車両の実際の使用状態を示す実績データを取得し、
上記電力最適化計算部は、上記使用実績データ取得部により取得された実績データにより示される実績使用状態、上記予測発電電力、上記予測消費電力および上記時間帯別の電気料金体系に基づいて、上記モビリティとしての使用の終了時から上記一の周期の終了時までの期間における上記車載蓄電池の充放電計画を再作成する
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の電力管理システム。
【請求項6】
上記予測モデル生成部による上記予測モデルの生成、上記使用状態予測部による上記車両の使用状態の予測および上記電力最適化計算部による上記充放電計画の作成を所定周期ごとに実行するように構成し、
一の周期内で上記車両がモビリティとしての用途に使用された場合、
上記使用実績データ取得部は、上記一の周期における上記モビリティとしての使用の終了時までの上記車両の実際の使用状態を示す実績データを取得し、
上記予測モデル生成部は、上記使用実績データ取得部により取得された実績データを用いて上記予測モデルを再生成し、
上記使用状態予測部は、上記モビリティとしての使用の終了時から上記一の周期の終了時までの期間の予測期間情報および次の予測対象期間の予測期間情報を上記予測モデル生成部により再生成された予測モデルに入力することにより、上記モビリティとしての使用の終了時から上記次の予測対象期間の終了時までの期間中における所定単位時間ごとの車両のモビリティとしての使用状態を予測し、
上記電力最適化計算部は、上記使用状態予測部により予測された予測使用状態、上記予測発電電力、上記予測消費電力および上記時間帯別の電気料金体系に基づいて、上記モビリティとしての使用の終了時から上記次の予測対象期間の終了時までの期間における上記車載蓄電池の充放電計画を再作成する
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の電力管理システム。
【請求項7】
コンピュータの使用実績データ取得部が、車載蓄電池を搭載した車両の時系列状の実際の使用状態を示す実績データを取得する第1のステップと、
上記コンピュータの予測モデル生成部が、上記使用実績データ取得部により取得された実績データを用いて、予測対象とする期間および当該期間の属性を表す予測期間情報が入力された際に車両のモビリティとしての予測使用状態を出力するように成された予測モデルを機械学習によって生成する第2のステップと、
上記コンピュータの使用状態予測部が、上記予測期間情報を上記予測モデルに入力することにより、予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両のモビリティとしての使用状態を、上記所定単位時間ごとの複数の予測結果の中から予測確率の低い一部を枝刈りしながら少なくとも1パターン予測する第3のステップと、
上記コンピュータの電力最適化計算部が、上記使用状態予測部により予測された少なくとも1パターンの予測使用状態、上記予測対象期間における発電装置による予測発電電力、上記予測対象期間における電力負荷による予測消費電力、および時間帯別の電気料金体系に基づいて、上記車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく電気料金が低減するように、計画対象期間における上記車載蓄電池の充放電計画を少なくとも1パターン作成する第4のステップとを有する
ことを特徴とする電力管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理システムおよび電力管理方法に関し、特に、予測対象期間における発電装置による予測発電電力と、予測対象期間における電力負荷による予測消費電力と、予測対象期間における車両のモビリティとしての予測使用状態と、時間帯別の電気料金体系とに基づいて、車両に搭載された車載蓄電池の充放電を含む電力の管理を行う電力管理システムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、脱炭素社会に向けた再生可能エネルギーの導入拡大、電力需給バランスの調整、災害時の電力安定供給などの観点から、エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)が注目されている。アグリゲート可能なエネルギーリソース(蓄電池、給湯器など)の中でも、将来的に普及する可能性のある電気自動車(EV)またはプラグインハイブリッド自動車(PHV)に搭載された蓄電池の利用が特に注目されている。
【0003】
これに関し、従来、発電装置による予測発電電力と、電力負荷による予測消費電力と、蓄電池を搭載したEVの使用計画または予測使用状態と、時間帯別の電気料金とに基づいて、EVのモビリティとしての利便性を損なわずに電気料金を最小化させるように電力管理を行うようにしたシステムが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。なお、以下の説明において、EVまたはPHVを車両といい、当該車両に搭載された蓄電池を車載蓄電池ということがある。
【0004】
特許文献1に記載の電力管理システムは、自然エネルギー発電装置と、電力負荷と、電力管理装置と、蓄電池(車載蓄電池)を搭載した車両とを備え、電力管理装置は、車載蓄電池の施設外での使用を開始する予定時刻、当該使用を終了する予定時刻、および当該使用に要する電力量の予測を含む施設外使用予定と、電力負荷の消費電力の予測と、自然エネルギー発電装置の発電電力の予測とに基づいて、時刻毎の車載蓄電池の蓄電量を算出する。そして、得られた時刻毎の蓄電量における最大値が所定の蓄電量最大値となるように、電力料金が比較的安価な時間帯における外部供給電力を用いて車載蓄電池の充電を計画するとともに、施設外使用終了予定時刻における車載蓄電池の蓄電量が所定の蓄電量最小値以上となるように車載蓄電池の充放電を計画する。
【0005】
特許文献2に記載の電力供給システムでは、消費量予測データと、発電量予測データと、車両の使用履歴に基づいて算出される車載蓄電池が配線に電気的に接続されている期間のデータとに基づいて、予測期間における車載蓄電池を含む蓄電手段の蓄電および放電の推移を示す充放電スケジュールを算出し、算出された充放電スケジュールに従って、予測期間における蓄電手段の充放電電力を制御する。充放電スケジュールは、蓄電手段の充放電電力を決定するために使用する評価指標(交流電力線からの供給電力量に応じた買電料金)が所定の値となるように、混合整数計画問題に定式化して算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許6053554号公報
【文献】特許5672186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車載蓄電池をエネルギーリソースとして活用するためには、EVやPHVが主にモビリティユースであることから、これらの車両をモビリティとしてどの時間帯に使用して(外出中)、どの時間帯に使用しないか(在宅中)の状態(以下、車両使用状態という)をより正確に把握することが不可欠となる。上記特許文献1に記載のシステムでは、車両の使用開始予定時刻と使用終了予定時刻とをユーザが入力するため、外出/在宅の車両使用状態をある程度正確に把握することが可能であるが、ユーザが予定を一々入力しなければならないという煩わしさがある。
【0008】
一方、上記特許文献2に記載のシステムでは、車両の使用履歴に基づいて、車載蓄電池が配線に電気的に接続されている期間(施設に滞在中の期間)を予測するため、ユーザが予定を一々入力する必要はない。しかしながら、特許文献2には、車両の使用履歴に基づいて、車両が滞在中の期間を具体的にどのように予測するかの方法が開示されておらず、正確に予測できるかどうかは不明である。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、外出/在宅の車両使用状態をより正確に予測して電気料金を最適化することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明では、車両の時系列状の実際の使用状態を示す実績データを用いて、予測対象とする期間および当該期間の属性を表す予測期間情報が入力された際に車両のモビリティとしての予測使用状態を出力するように成された予測モデルを機械学習によって生成し、当該生成した予測モデルに予測期間情報を入力することにより、予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両のモビリティとしての使用状態を、所定単位時間ごとの複数の予測結果の中から予測確率の低い一部を枝刈りしながら少なくとも1パターン予測する。そして、当該予測した少なくとも1パターンの予測使用状態、予測対象期間における発電装置による予測発電電力、予測対象期間における電力負荷による予測消費電力、および時間帯別の電気料金体系に基づいて、計画対象期間における車載蓄電池の充放電計画を少なくとも1パターン作成するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明によれば、ユーザが計画した車両の使用予定情報をユーザ自身がシステムに入力することは必要でなく、車両の実際の使用状態を示す実績データを用いて機械学習された予測モデルにより、予測対象期間中における車両のモビリティとしての使用状態、つまり外出/在宅の車両使用状態が予測される。この予測は、予測モデルによって所定単位時間ごとに予測される複数パターンの車両使用状態のうち、予測確率の低い予測結果が所定単位時間ごとに順次枝刈りされて行われるので、外出/在宅の車両使用状態を正確に、効率的に予測することが可能となる。そして、こうして予測した車両使用状態と、予測発電電力、予測消費電力および時間帯別の電気料金体系とに基づいて車載蓄電池の充放電計画を作成することができる。これにより、本発明によれば、外出/在宅の車両使用状態をより正確に予測して電気料金を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態による電力管理システムの全体構成例を示す図である。
図2】本実施形態による電力管理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図3】発電実績データ記憶部に記憶される発電実績データの例を示す図である。
図4】消費実績データ記憶部に記憶される消費実績データの例を示す図である。
図5】使用実績データ記憶部に記憶される使用実績データの例を示す図である。
図6】車両使用状態予測部のより具体的な機能構成例を示すブロック図である。
図7】予測モデル生成部により生成される予測モデルの概念を示す模式図である。
図8】ビームサーチによって所定単位時間ごとの車両使用状態を予測する処理の内容を説明するための模式図である。
図9】予測結果の通知画面の一例を示す図である。
図10】最適化計算結果の通知画面の一例を示す図である。
図11】本実施形態による電力管理装置の動作例を示すフローチャートである。
図12】変形例1に係るパターン集約に関する処理の内容を説明するための模式図である。
図13】変形例1に係るパターン集約に関する処理の内容を説明するためのフローチャートである。
図14】変形例2に係るパターン抽出に関する処理の内容を説明するための模式図である。
図15】変形例2に係るパターン抽出に関する処理の内容を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による電力管理システムの全体構成例を示す図である。本実施形態の電力管理システムは、例えばクラウド上にサーバ装置として設置される電力管理装置100と、再生可能エネルギーを効率的に利用するための管理を行うシステム(EMS:Energy Management System)101と、車載蓄電池113に蓄えた電力を家庭の電力として使うことを可能にするためのV2H(Vehicle to Home)システム102とを備えて構成される。EMS101およびV2Hシステム102は、例えば家庭内に設置される。
【0014】
EMS101には、V2Hシステム102と、再生可能エネルギーの発電装置の一例である太陽光発電装置111と、電力を消費する各種電力負荷112-1,112-2,・・・(以下、単に電力負荷112と記す)とが接続されている。電力負荷112は、例えば照明、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンといった各種電気製品である。なお、ここでは図示を省略しているが、小型の家庭用蓄電池をEMS101に接続することも可能である。
【0015】
EMS101を用いることで、電力負荷112での電力使用量をリアルタイムで計測し、建物全体から部屋ごと、電気製品ごと、時間ごとのエネルギー使用状況を可視化することができる。また、太陽光発電装置111で発電される電力や、蓄電池に蓄積される電力を最適に運用し、電力使用量の多い時間帯を回避して電力負荷112を使用することによってピークを他の時間帯にシフトして平準化する「ピークシフト」や、その時間帯の電力使用を回避する「ピークカット」を行うことも可能である。
【0016】
V2Hシステム102には、車両の車載蓄電池113が専用ケーブルによって着脱可能に接続される。V2Hシステム102と車載蓄電池113とを接続しているときは、太陽光発電装置111で発電された電力(以下、発電電力という)や、図示しない系統を通じて電力会社から購入した電力(以下、買電電力という)を車載蓄電池113に充電したり、車載蓄電池113に蓄積された電力(以下、蓄積電力という)を放電して電力負荷112で使用したりすることが可能である。
【0017】
一方、車両をモビリティ(移動手段)として使用するときは、V2Hシステム102と車載蓄電池113とを接続する専用ケーブルが外されて、車両が自由に移動できる状態となる。本実施形態において、V2Hシステム102は、車載蓄電池113が専用ケーブルによって接続されているときは車両が「在宅」であり、車載蓄電池113が専用ケーブルによって接続されていないときは車両が「外出」(モビリティとして使用中)であると判断する。
【0018】
電力管理装置100は、インターネット等の通信ネットワークを介してEMS101と接続され、当該EMS101を介して各種のデータを取得する。そして、取得したデータを用いて、後述する各種の予測および充放電計画の作成などの処理を実行し、その結果に基づいてEMS101を制御する。
【0019】
図2は、本実施形態による電力管理装置100の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態の電力管理装置100は、機能構成として、発電実績データ記録部1、消費実績データ記録部2、使用実績データ記録部3、発電電力予測部4、消費電力予測部5、車両使用状態予測部6、電力最適化計算部7および充放電制御部8を備えている。また、本実施形態の電力管理装置100は、記憶媒体として、発電実績データ記憶部11、消費実績データ記憶部12、使用実績データ記憶部13および料金テーブル記憶部14を備えている。
【0020】
上記各機能ブロック1~8は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック1~8は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0021】
発電実績データ記録部1は、太陽光発電装置111での発電電力量の計測データをEMS101からリアルタイムで取得し、発電実績データ記憶部11に記憶させる。本実施形態では、発電実績データ記録部1は、所定単位時間ごとに発電電力量の計測データを取得して発電実績データ記憶部11に記憶させる。なお、発電実績データ記録部1は、EMS101で録り溜めた所定単位時間ごとの計測データをバッチ的にまとめて取得するようにしてもよい。図3は、発電実績データ記憶部11に記憶される発電実績データの例を示す図である。図3に示すように、発電実績データ記憶部11には、所定単位時間ごと(例えば、30分ごと)の時間、天候、発電電力量が時系列に記憶される。天候は、例えば、気象情報を提供するウェブサイトからインターネット等の通信ネットワークを介して取得する。
【0022】
消費実績データ記録部2は、電力負荷112での消費電力量の計測データをEMS101からリアルタイムで取得し、消費実績データ記憶部12に記憶させる。本実施形態では、消費実績データ記録部2は、所定単位時間ごとに各電力負荷112-1,112-2,・・・での総消費電力量の計測データを取得して消費実績データ記憶部12に記憶させる。なお、消費実績データ記録部2は、EMS101で録り溜めた所定単位時間ごとの計測データをバッチ的にまとめて取得するようにしてもよい。図4は、消費実績データ記憶部12に記憶される消費実績データの例を示す図である。図4に示すように、消費実績データ記憶部12には、所定単位時間ごと(例えば、30分ごと)の時間、曜日、消費電力量が時系列に記憶される。曜日は、例えば、電力管理装置100にあらかじめ記憶されたカレンダデータから取得する。
【0023】
使用実績データ記録部3は、車両のモビリティとしての使用状態(在宅/外出の何れかの状態)の検出データをEMS101からリアルタイムで取得し、使用実績データ記憶部13に記憶させる。本実施形態では、使用実績データ記録部3は、所定単位時間ごとに車両使用状態の検出データを取得して使用実績データ記憶部13に記憶させる。なお、使用実績データ記録部3は、EMS101で録り溜めた所定単位時間ごとの検出データをバッチ的にまとめて取得するようにしてもよい。図5は、使用実績データ記憶部13に記憶される使用実績データの例を示す図である。図5に示すように、使用実績データ記憶部13には、所定単位時間ごと(例えば、30分ごと)の時間、曜日、車両使用状態が時系列に記憶される。図5において、車両使用状態の〇印は在宅、×印は外出を示している。
【0024】
発電電力予測部4は、発電実績データ記憶部11に記憶された発電実績データを用いて、予測対象期間中における所定単位時間ごとの太陽光発電装置111での発電電力量を予測する。ここで、発電電力予測部4は、太陽光発電装置111による発電電力量の予測をバッチ処理として所定周期ごとに繰り返し行う。例えば、発電電力予測部4は、毎日の決められた時刻(例えば、午前0時)に、翌日の24時間を予測対象期間として、発電電力量の予測を行う。なお、この予測を行う時刻および予測対象期間は一例であり、これに限定されるものではない。
【0025】
発電電力予測部4は、発電実績データ記憶部11に記憶された発電実績データを用いて、どの時間帯のどのような天候のときにどの程度の発電電力量が得られるかの傾向を分析し、その分析結果と予測対象期間中における所定単位時間ごとの予測天候情報とに基づいて、予測対象期間中における所定単位時間ごとの発電電力量を予測する。予測天候情報は、例えば、気象情報を提供するウェブサイトからインターネット等の通信ネットワークを介して取得する。
【0026】
一例として、発電電力予測部4は、発電実績データ記憶部11に記憶された発電実績データを用いて、時間帯と天候を説明変数とし、発電電力量を目的変数とする関数から成る予測モデルを生成する。そして、予測対象期間中における所定単位時間ごとの予測天候情報を予測モデルに入力することにより、予測対象期間中における所定単位時間ごとの発電電力量を予測する。予測モデルの生成は、例えば、公知の機械学習を利用して行うことが可能である。
【0027】
消費電力予測部5は、消費実績データ記憶部12に記憶された消費実績データを用いて、予測対象期間中における所定単位時間ごとの電力負荷112での消費電力量を予測する。ここで、消費電力予測部5は、電力負荷112による消費電力量の予測をバッチ処理として繰り返し行う。例えば、消費電力予測部5は、毎日の決められた時刻(例えば、午前0時)に、翌日の24時間を予測対象期間として、消費電力量の予測を行う。なお、この予測を行う時刻および予測対象期間は一例であり、これに限定されるものではない。
【0028】
消費電力予測部5は、消費実績データ記憶部12に記憶された消費実績データを用いて、どの曜日のどの時間帯にどの程度の消費電力量が発生するかの傾向を分析し、その分析結果と予測対象期間中における曜日情報とに基づいて、予測対象期間中における所定単位時間ごとの消費電力量を予測する。
【0029】
一例として、消費電力予測部5は、消費実績データ記憶部12に記憶された消費実績データを用いて、時間帯と曜日を説明変数とし、消費電力量を目的変数とする関数から成る予測モデルを生成する。そして、予測対象期間中における曜日情報を予測モデルに入力することにより、予測対象期間中における所定単位時間ごとの消費電力量を予測する。予測モデルの生成は、例えば、公知の機械学習を利用して行うことが可能である。なお、時間帯と曜日に加え、天候情報(天気、気温、湿度等)などの他の情報も説明変数として用いる予測モデルを生成するようにしてもよい。この場合、消費実績データ記憶部12に記憶する消費実績データには他の情報も含める。
【0030】
車両使用状態予測部6は、使用実績データ記憶部13に記憶された使用実績データを用いて、予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両使用状態を予測する。ここで、車両使用状態予測部6は、車両使用状態の予測をバッチ処理として繰り返し行う。例えば、車両使用状態予測部6は、毎日の決められた時刻(例えば、午前0時)に、翌日の24時間を予測対象期間として、車両使用状態の予測を行う。なお、この予測を行う時刻および予測対象期間は一例であり、これに限定されるものではない。
【0031】
車両使用状態予測部6は、使用実績データ記憶部13に記憶された使用実績データを用いて、どの曜日のどの時間帯に車両使用状態がどのようになるかの傾向を分析し、その分析結果と予測対象期間中における曜日情報とに基づいて、予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両使用状態を予測する。
【0032】
一例として、車両使用状態予測部6は、使用実績データ記憶部13に記憶された使用実績データを用いて、時間帯と曜日を説明変数とし、車両使用状態を目的変数とする関数から成る予測モデルを生成する。そして、予測対象期間中における曜日情報を予測モデルに入力することにより、予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両使用状態を予測する。この予測モデルについては詳細を後述する。なお、時間帯と曜日に加え、天候情報などの他の情報も説明変数として用いる予測モデルを生成するようにしてもよい。この場合、使用実績データ記憶部13に記憶する使用実績データには他の情報も含める。
【0033】
電力最適化計算部7は、予測対象期間における太陽光発電装置111による予測発電電力(発電電力予測部4により予測された発電電力量)と、予測対象期間における電力負荷112による予測消費電力(消費電力予測部5により予測された消費電力量)と、予測対象期間における車両のモビリティとしての予測使用状態(車両使用状態予測部6により予測された車両使用状態)と、料金テーブル記憶部14に記憶されている時間帯別の電気料金体系とに基づいて、車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく電気料金が低減するように、車両に搭載された車載蓄電池113に関する計画対象期間中における所定単位時間ごとの充放電計画を作成する。本実施形態において、計画対象期間は予測対象期間と同じであるものとする。
【0034】
充放電制御部8は、電力最適化計算部7により作成された充放電計画に従って、計画対象期間中(=予測対象期間中)における車載蓄電池113の実際の充放電を制御する。
【0035】
図6は、車両使用状態予測部6のより具体的な機能構成例を示すブロック図である。図6に示すように、本実施形態の車両使用状態予測部6は、より具体的な機能構成として、使用実績データ取得部61、予測モデル生成部62および使用状態予測部63を備えている。また、車両使用状態予測部6は、記憶媒体として、予測モデル記憶部60を備えている。
【0036】
使用実績データ取得部61は、車両の時系列状の実際の使用状態を示す実績データを使用実績データ記憶部13から取得する。使用実績データ記憶部13には、車両使用状態に関する使用実績データが日々追加して記憶されていく。使用実績データ取得部61は、例えば、使用実績データ記憶部13に記憶されている使用実績データの全てを取得する。なお、過去の車両使用状態の実績から未来の予測対象期間における車両使用状態を予測するに際して、直近のトレンドを利用することが特に有効であるとの観点から、使用実績データ取得部61は直近の所定期間の使用実績データのみを使用実績データ記憶部13から取得するようにしてもよい。
【0037】
予測モデル生成部62は、使用実績データ取得部61により取得された使用実績データを用いて、予測対象期間および当該期間の属性を表す予測期間情報が入力された際に車両のモビリティとしての予測使用状態を所定単位時間ごとに出力するように成された予測モデルを機械学習によって生成する。上述したように、予測対象期間は、例えば翌日の24時間である。予測対象期間の属性は、例えば予測対象期間(翌日)の曜日情報である。すなわち、予測モデル生成部62は、所定単位時間ごとの日時と曜日を予測モデルに入力データとして与えるとともに、所定単位時間ごとの車両使用状態を予測モデルに正解データとして与えることにより、予測モデルの教師あり学習を行う。
【0038】
予測モデル生成部62は、生成した予測モデルのデータを予測モデル記憶部60に記憶させる。上述したように、車両使用状態予測部6の処理は毎日1回、バッチ処理として繰り返し実行される。よって、予測モデル記憶部60に記憶される予測モデルも日々更新される。
【0039】
本実施形態において、予測モデル生成部62は、所定単位時間ごとの時系列的な車両使用状態の予測を系列ラベリング問題として扱うような予測モデルを生成する。すなわち、予測モデル生成部62は、所定単位時間ごとに、車両使用状態の予測結果を表すラベルを付与し、予測対象期間の中の一の所定単位時間についての車両使用状態を予測する際に、一の所定単位時間に対応する予測期間情報と、一の所定単位時間よりも前の所定単位時間に対して付与されたラベルとを用いて車両の使用状態を予測するような予測モデルを生成する。例えば、予測モデル生成部62は、LSTM(Long short-term memory)を適用したニューラルネットワークによる予測モデルを生成する。
【0040】
図7は、予測モデル生成部62により生成される予測モデルの概念を示す模式図である。図7に示すように、予測モデル生成部62は、所定単位時間ごとの日時情報および曜日情報をニューラルネットワークに入力し、所定単位時間ごとの車両使用状態をニューラルネットワークから出力するような予測モデルを生成する。ニューラルネットワークは、入力層と出力層との間にLSTM層と関数層とを含んでおり、一の所定単位時間tnに関する車両使用状態を、それより1つ前の所定単位時間tn-1について予測された車両使用状態(ラベル)を引き継いで予測する。
【0041】
このような予測モデルを生成することにより、使用状態予測部63による車両使用状態の予測結果が、車両が在宅と予測される時間帯と、車両が外出と予測される時間帯とが短い時間間隔で交互に入れ替わるような間違った予測となる可能性を低減することができる。すなわち、30分単位の短い時間間隔で在宅と外出とが交互に切り替わることは、車両のモビリティとしての使用状態としては一般的なものとは言えず、在宅の時間帯も外出の時間帯もそれぞれ比較的長い時間継続することが多い。LSTMを用いて系列ラベリングを適用した予測モデルを生成することにより、一般的な傾向に即した車両使用状態の予測を行うことができるようになる。
【0042】
使用状態予測部63は、予測モデル記憶部60に記憶された予測モデルに対して予測期間情報(予測対象期間の日時情報および曜日情報)を入力することにより、予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両のモビリティとしての使用状態を、所定単位時間ごとの複数の予測結果の中から予測確率の低い一部を枝刈りしながら少なくとも1パターン予測する。使用状態予測部63は、この予測の際に、例えばビームサーチと呼ばれる手法を用いる。
【0043】
ここで、使用状態予測部63により予測した車両使用状態をそのまま用いて電力最適化計算部7による最適化計算を行う実施形態とする場合、使用状態予測部63は、所定単位時間ごとの車両使用状態を1パターン予測すればよい。一方、所定単位時間ごとの車両使用状態を複数パターン予測し、それをディスプレイ等に表示して何れかをユーザに選択させるような実施形態とすることも可能である。以下では、複数パターンの車両使用状態を予測する例について説明する。
【0044】
図8は、ビームサーチによって所定単位時間ごとの車両使用状態を予測する処理の内容を説明するための模式図である。図8において、時刻t1は予測対象期間の最初の所定単位時間、時刻t2は予測対象期間の2番目の所定単位時間、時刻t3は予測対象期間の3番目の所定単位時間である。4番目以降の所定単位時間は図示を省略している。図8において、■印は車両が在宅中であると予測することを表し、付記されている数値は予測確率を示している。□印は車両が外出中であると予測することを表し、付記されている数値は予測確率を示している。
【0045】
図8の例では、使用状態予測部63は、時刻t1における車両使用状態を、在宅である確率が0.8、外出である確率が0.2と予測している。ここで、使用状態予測部63は、時刻t1における車両使用状態に関する2つの予測結果の中から、例えば予測確率が上位N個以外の予測結果を枝刈りする。枝刈りするとは、不採用にすることを意味する。ここでは、N=3とし、予測確率が上位3個以外の予測結果を枝刈りするものとして説明する。時刻t1では、予測されるのは2個のパターンのみであるから、枝刈りは行わない。
【0046】
次に、使用状態予測部63は、時刻t2における車両使用状態を、時刻t1の在宅状態から続けて在宅状態である確率が0.5、時刻t1の在宅状態から外出状態に変わる確率が0.3、時刻t1の外出状態から在宅状態に変わる確率が0.05、時刻t1の外出状態から続けて外出状態である確率が0.15と予測している。この場合、使用状態予測部63は、4パターンの予測結果のうち、予測確率が最も低い0.05であると予測した「時刻t1:外出→時刻t2:在宅」のパターンの予測結果を枝刈りする。
【0047】
次に、使用状態予測部63は、時刻t3における車両使用状態を予測する。ここで、使用状態予測部63は、時刻t2において枝刈りした車両使用状態については時刻t3以降の予測は行わず、時刻t2において生き残っている3パターンの予測結果を引き継いでそれぞれ在宅/外出の確率を予測する。このため、次のように6パターンの車両使用状態を予測することとなる。
(1)時刻t1:在宅→時刻t2:在宅→時刻t3:在宅・・・確率0.1
(2)時刻t1:在宅→時刻t2:在宅→時刻t3:外出・・・確率0.4
(3)時刻t1:在宅→時刻t2:外出→時刻t3:在宅・・・確率0.1
(4)時刻t1:在宅→時刻t2:外出→時刻t3:外出・・・確率0.2
(5)時刻t1:外出→時刻t2:外出→時刻t2:在宅・・・確率0.12
(6)時刻t1:外出→時刻t2:外出→時刻t2:外出・・・確率0.03
この場合、使用状態予測部63は、予測確率が上位3個以外のとなるパターン(1)、(3)、(6)を刈りする。
【0048】
以下、使用状態予測部63は、図示していない時刻t4から予測対象期間(翌日の24時間)の最後の所定単位時間である時刻t48(所定単位時間を30分とした場合の最終時刻)についても同様に、予測確率が上位3個以外のとなるパターンの予測結果を枝刈りしながらそれぞれ6パターンずつの車両使用状態を予測していく。そして、時刻t48における6パターンの予測結果の中から予測確率が上位3個以外となる3つパターンを枝刈りすることにより、最終的に3パターンの予測使用状態を得る。使用状態予測部63は、最終的に残った3パターンの予測使用状態をディスプレイに表示して、何れか1つをユーザに選択させる。
【0049】
なお、Nの値とユーザに提示するパターンの数とを必ずしも一致させる必要はない。例えば、上述の例で、時刻t48における6パターンの予測結果の中から予測確率が上位2個以外となる4つパターンを枝刈りすることにより、最終的に2パターンの予測使用状態をユーザに提示するようにしてもよい。また、使用状態予測部63により1パターンの車両使用状態を予測する実施形態の場合、例えば、時刻t1から時刻t48まで以上と同様に枝刈りをしながら6パターンずつの車両使用状態を予測し、時刻t48において得られた6パターンの予測結果の中から予測確率が最上位となるパターンを採用することにより、最終的に1パターンの予測使用状態を得るようにすることが可能である。
【0050】
なお、ここに示した枝刈りの方法は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、予測確率が所定値以下(例えば、0.1以下)の予測結果を枝刈りするようにしてもよい。
【0051】
図9は、予測結果の通知画面の一例を示す図である。図9の例では、3パターンのそれぞれについて、外出と予測された時間帯(外出時間)を示し、何れかのパターンを選択可能としている。ユーザは、予測対象期間となる翌日に車両をモビリティとして使用する予定がある場合、その使用予定に合致する内容となっているパターンの予測使用状態を選択することが可能である。ユーザが何れかのパターンの予測使用状態を選択した上で、「はい」のボタンB1を押下した場合、電力最適化計算部7は、選択された予測使用状態を用いて、車載蓄電池113に対する電力の充放電を含む電力最適化の計算を実行する。
【0052】
一方、翌日の車両の使用予定に合致するパターンの予測使用状態が存在しない場合、何れかのパターンを選択した上で、「修正」のボタンB3を押下することにより、ユーザのマニュアル操作によって車両使用状態を修正することが可能である。この場合、電力最適化計算部7は、修正された予測使用状態を用いて、車載蓄電池113に対する電力の充放電を含む電力最適化の計算を実行する。
【0053】
翌日の車両の使用予定に合致するパターンの予測使用状態が存在しない場合、ユーザは、何れのパターンも選択せず、車両使用状態の修正もせずに、「いいえ」のボタンB2を押下することもできる。この場合、電力最適化計算部7は、使用状態予測部63により予測された車両使用状態は使用せず、車載蓄電池113から電力の放電を行わないという条件下で電力最適化の計算を実行する。例えば、車載蓄電池113からの放電は行わずに、翌日の外出に備えて充電のみを行う(例えば、電気料金を考慮せず、満充電になるまですぐに充電する)といった態様で電力最適化の計算を実行する。
【0054】
電力最適化計算部7は、使用状態予測部63により予測された少なくとも1パターンの予測使用状態と、発電電力予測部4により予測された予測発電電力と、消費電力予測部5により予測された予測消費電力と、料金テーブル記憶部14に記憶されている時間帯別の電気料金体系とに基づいて、計画対象期間における車載蓄電池113の充放電計画を少なくとも1パターン作成する。以上の例では、使用状態予測部63により最終的に1パターンの予測使用状態が採用されるので、電力最適化計算部7は、当該1パターンの予測使用状態を用いて、計画対象期間における車載蓄電池113の充放電計画を1パターン作成する。
【0055】
ここで、車載蓄電池113の充放電計画を作成する際に、いくつかの条件を適用して最適化の計算を行う。条件の一例を以下に示す。
・系統からの買電電力よりも太陽光発電装置111での発電電力を電力負荷112に使用することを優先する。
・太陽光発電装置111での発電電力が電力負荷112での消費電力を上回り(つまり、余剰電力が発生する場合)、かつ、その時間帯に車両が在宅であることが予測されている場合は、余剰電力を車載蓄電池113に充電する。
・車載蓄電池113に対する充電は、買電電力による充電よりも余剰電力による充電を優先する。
【0056】
また、以下の条件を更に適用するようにしてもよい。
・車両のモビリティとしての緊急利用などを考慮し、帰宅時(専用ケーブルにより車載蓄電池113がV2Hシステム102に接続された時)における車載蓄電池113の蓄電残量が閾値以下の場合は、使用状態予測部63により予測された車両使用状態に関わらず、所定量までは充電を行う。
・車両をモビリティとして使用した帰宅直後でまだ車載蓄電池113が熱い状態で充放電をすると電池劣化が激しくなることから、帰宅後から所定時間を空けてから充放電をする。
【0057】
なお、以上の実施形態では、使用状態予測部63が最終的に1パターンの予測使用状態を決定し、電力最適化計算部7がその1パターンの予測使用状態を用いて1パターンの充放電計画を作成する例について説明したが、これに限定されない。例えば、電力最適化計算部7が、使用状態予測部63により予測された複数パターンの予測使用状態を用いて複数パターンの充放電計画を作成し、それをディスプレイに表示して、何れか1つをユーザに選択させるようにしてもよい。
【0058】
図10は、最適化計算結果の通知画面の一例を示す図である。図10の例では、使用状態予測部63により予測された3パターンの車両使用状態のそれぞれについて、外出と予測された時間帯(外出時間)と、電力最適化計算部7により作成された3パターンの充放電計画に従って車載蓄電池113の充放電を行った場合の料金削減効果とを示し、何れかのパターンを選択可能としている。料金削減効果とは、車載蓄電池113に対する充放電を行わない場合に比べて料金がどれくらい安くなるかを示したものである。
【0059】
ユーザは、予測対象期間となる翌日に車両をモビリティとして使用する予定がある場合、その使用予定に合致する内容となっているパターンのうち、料金削減効果の高いパターンを選択することが可能である。ユーザが何れかのパターンを選択した上で、「はい」のボタンB11を押下した場合、充放電制御部8は、選択されたパターンの充放電計画に従って、計画対象期間中における車載蓄電池113の充放電を実行する。
【0060】
一方、翌日の車両の使用予定に合致するパターンの予測使用状態が存在しない場合、何れかのパターンを選択した上で、「修正」のボタンB13を押下することにより、ユーザのマニュアル操作によって車両使用状態を修正することが可能である。この場合、電力最適化計算部7は、修正された予測使用状態を用いて、車載蓄電池113に対する電力の充放電を含む電力最適化の計算を再実行し、車載蓄電池113の充放電計画を再作成する。充放電制御部8は、再作成された充放電計画に従って、計画対象期間中における車載蓄電池113の充放電を実行する。
【0061】
翌日の車両の使用予定に合致するパターンの予測使用状態が存在しない場合、ユーザは、何れのパターンも選択せず、車両使用状態の修正もせずに、「いいえ」のボタンB12を押下することもできる。この場合、電力最適化計算部7は、使用状態予測部63により予測された車両使用状態は使用せず、車載蓄電池113から電力の放電を行わないという条件下で電力最適化の計算を再実行し、車載蓄電池113の充放電計画を再作成する。充放電制御部8は、再作成された充放電計画に従って、計画対象期間中における車載蓄電池113の充放電を実行する。
【0062】
図11は、以上のように構成した本実施形態による電力管理装置100の動作例を示すフローチャートである。図11に示すフローチャートは、毎日の決められた時刻にバッチ処理として所定周期ごとに繰り返し実行される。
【0063】
まず、使用実績データ取得部61は、車載蓄電池113を搭載した車両の時系列状の実際の使用状態を示す使用実績データを使用実績データ記憶部13から取得する(ステップS1)。次に、予測モデル生成部62は、使用実績データ取得部61により取得された使用実績データを用いて、予測期間情報から車両のモビリティとしての車両使用状態を予測するための予測モデルを機械学習によって生成する(ステップS2)。
【0064】
次いで、使用状態予測部63は、予測対象期間における予測期間情報を予測モデルに入力することにより、予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両のモビリティとしての使用状態を複数パターン予測する(ステップS3)。そして、使用状態予測部63は、複数パターンの中から何れか1つのパターンがユーザにより選択されたか否かを判定する(ステップS4)。すなわち、図9に示す予測結果の通知画面において、何れか1つのパターンの予測使用状態を選択した上で、「はい」のボタンB1が押下されたか否かを判定する。
【0065】
ここで、何れか1つのパターンの予測使用状態がユーザにより選択されたと判定された場合、電力最適化計算部7は、その選択されたパターンの予測使用状態、予測対象期間における太陽光発電装置111による予測発電電力、予測対象期間における電力負荷112による予測消費電力、および時間帯別の電気料金体系に基づいて、計画対象期間における車載蓄電池113の充放電計画を作成する(ステップS5)。
【0066】
上記ステップS4において、何れか1つのパターンの予測使用状態がユーザにより選択されていない場合、使用状態予測部63は、図9の通知画面において「修正」のボタンB3の押下によって何れかの予測使用状態が修正されたか否かを判定する(ステップS6)。予測使用状態の修正が行われたと使用状態予測部63により判定された場合、電力最適化計算部7は、その修正された予測使用状態、予測対象期間における太陽光発電装置111による予測発電電力、予測対象期間における電力負荷112による予測消費電力、および時間帯別の電気料金体系に基づいて、計画対象期間における車載蓄電池113の充放電計画を作成する(ステップS7)。
【0067】
上記ステップS6において、予測使用状態の修正も行われていないと判定され場合、すなわち、図9の通知画面において「いいえ」のボタンB2が押下されたと判定された場合、電力最適化計算部7は、使用状態予測部63により予測された車両使用状態は使用せず、車載蓄電池113から電力の放電を行わないという条件下で電力最適化の計算を実行する(ステップS8)。ステップS5、ステップS7またはステップS8の処理の実行により、図11に示すフローチャートによる1回のバッチ処理が終了する。
【0068】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、車両の時系列状の実際の使用状態を示す使用実績データを用いて、車両のモビリティとしての予測使用状態を予測するための予測モデルを機械学習によって生成し、当該生成した予測モデルに予測期間情報を入力することにより、予測対象期間中における所定単位時間ごとの車両のモビリティとしての使用状態を、ビームサーチを適用して予測する。そして、当該予測した予測対象期間における予測使用状態、予測対象期間における予測発電電力、予測対象期間における予測消費電力、および時間帯別の電気料金体系に基づいて、車両のモビリティとしての使用に必要な蓄電量の不足を生じることなく電気料金が低減するように、予測対象期間における車載蓄電池113の充放電計画を作成するようにしている。
【0069】
上記のように構成した本実施形態によれば、ユーザが計画した車両の使用予定情報をユーザ自身がシステムに入力することは必要でなく、車両の実際の使用状態を示す使用実績データを用いて機械学習された予測モデルにより、予測対象期間中における車両のモビリティとしての使用状態、つまり外出/在宅の車両使用状態が予測される。この予測は、予測モデルによって所定単位時間ごとに予測される複数パターンの車両使用状態のうち、予測確率の低い予測結果が所定単位時間ごとに順次枝刈りされて行われるので、外出/在宅の車両使用状態を正確に、効率的に予測することが可能となる。そして、こうして予測した車両使用状態と、予測発電電力、予測消費電力および時間帯別の電気料金体系とに基づいて車載蓄電池113の充放電計画を作成することができる。これにより、本実施形態によれば、外出/在宅の車両使用状態をより正確に予測して電気料金を最適化することができる。
【0070】
なお、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、本発明はこれに限定されない。例えば、以下のような各種の変形例を適用すること可能である。
【0071】
<変形例1>
使用状態予測部63は、車両の使用状態を複数パターン予測した後、複数パターンの使用状態どうしの類似度を算出し、類似度が所定レベル以上のパターンどうしを集約するようにしてもよい。図12および図13は、このパターン集約に関する処理の内容を説明するための図である。
【0072】
図12では、使用状態予測部63が予測モデルによって10パターンの車両使用状態を予測し、当該10パターンの車両使用状態を4パターンの車両使用状態に集約する例を模式的に示している。10パターンの車両使用状態は、例えば、予測確率が上位10個以外の予測結果を枝刈りすることによって予測することが可能である。図12において、■印は車両が在宅であると予測されたことを表し、□印は車両が外出であると予測されたことを表している。
【0073】
使用状態予測部63は、一例として、図13のフローチャートに示す方法により類似パターンの集約を行う。まず、使用状態予測部63は、10パターンの車両使用状態を正解率の降順でソートする(ステップS11)。正解率とは、過去の使用実績データと比較して所定単位時間ごとの在宅/外出が一致する数の多さをいう。ここで用いる使用実績データは、例えば予測対象期間と同じ日時および同じ曜日で、かつ直近の使用実績データとすることが可能である。
【0074】
次に、使用状態予測部63は、まだ選択も削除もされていないパターンのうち、正解率が最も高いものを選択する(ステップS12)。そして、選択したパターンに類似するパターンをすべて削除する(ステップS13)。ここでは一例として、以下の条件を満たすものを類似パターンと判定する。
・1日の外出回数が同じである。
・外出における出発・帰宅時刻の差がそれぞれ±1時間以内、かつ1回の外出時間の差が±1時間以内である。
・1日に複数回の外出がある場合は、それぞれの外出で上記の条件を満たす。
【0075】
図12(a)は、10パターンの車両使用状態を正解率の降順でソートした状態を示しているものとする。ステップS12において、最初は、図12(a)に示す第1パターンの車両使用状態を選択する。ステップS13において、第1パターンに対して上述の条件を満たすパターンを判定すると、第2パターン、第4パターン、第9パターンとなる。よって、これら3つのパターンを削除する。これは、第2パターン、第4パターンおよび第9パターンを第1パターンに集約することを意味している。
【0076】
次に、使用状態予測部63は、選択も削除もされていないパターンが無くなったか否かを判定する(ステップS14)。選択も削除もされていないパターンがまだ残っている場合、処理はステップS12に戻る。今の例では、第1パターンが選択され、それに類似するパターンとして第2パターンが削除されているので、まだ選択も削除もされていないパターンのうち、正解率が最も高い第3パターンが選択される(ステップS12)。そして、選択した第3パターンに類似するパターンとして、第6パターンを削除する(ステップS13)。
【0077】
以下、選択も削除もされていないパターンが無くなったとステップS14にて判定されるまで、同様の処理を繰り返す。これにより、図12(a)に示す10パターンの車両使用状態は、図12(b)に示す4パターンの車両使用状態に集約される。使用状態予測部63は、この4パターンの車両使用状態をディスプレイに表示して(図9参照)、何れか1つをユーザに選択させる。あるいは、電力最適化計算部7が4パターンの車両使用状態を用いて車載蓄電池113の充放電計画を作成し、料金削減効果を含めて車両使用状態をディスプレイに表示して(図10参照)、何れか1つをユーザに選択させるようにしてもよい。
【0078】
以上のように構成した変形例1によれば、予測モデルを用いて使用状態予測部63により予測された複数パターンの車両使用状態のうち、互いに類似するパターンどうしを集約してユーザに提示するので、ユーザに対してできるだけ少ないパターン数の車両使用状態を提示しつつ、提示する車両使用状態が比較的バリエーションに富んだものとなるようにすることができる。これにより、車両使用状態の選択を行いやすくすることができるとともに、実際の車両の使用予定に合致する車両使用状態を選択できる可能性を高めることができる。
【0079】
<変形例2>
ユーザに提示する車両使用状態のパターンが多彩かつ少数となるように、使用状態予測部63は、変形例1の集約により残った複数パターンの車両使用状態どうしの所定単位時間ごとの重複度を算出し、重複度が低い方から所定数のパターンの車両使用状態を抽出するようにしてもよい。図14および図15は、このパターン抽出に関する処理の内容を説明するための図である。
【0080】
図14(a)は、変形例1の集約処理を行った結果を示しており、図12(b)と同じ状態を示している。使用状態予測部63は、一例として、図15のフローチャートに示す方法により低重複度パターンの抽出を行う。
【0081】
まず、使用状態予測部63は、集約で残った4パターンの車両使用状態のうち、過去の使用実績データと比較して正解率が最も高いものを抽出してリストに加える(ステップS21)。図14の例では、第1パターンが最も正解率が高いものとして抽出される。
【0082】
次に、使用状態予測部63は、まだ抽出されていないパターンの中から、何れか1つのパターンを選択する(ステップS22)。そして、当該選択したパターンについて、既に抽出された各パターンとの重複度を計算する(ステップS23)。重複度とは、既に抽出された各パターンとの一致率(所定単位時間ごとの在宅/外出の一致度合い)のうち、最も高い値をいう。
【0083】
次に、使用状態予測部63は、選択されていないパターンが無くなったか否かを判定する(ステップS24)。選択されていないパターンがまだ残っている場合、処理はステップS22に戻る。一方、選択されていないパターンがなくなった場合、使用状態予測部63は、ステップS22~S24のループ処理によって選択された複数パターンの中から、重複度が最も低いパターンを抽出してリストに加える(ステップS25)。
【0084】
図14の例では、最初に抽出された第1パターン以外の第3パターン、第5パターン、第8パターンが順に選択され、第1パターンとの重複度がそれぞれ計算された結果、第1パターンとの重複度が最も低いパターンとして、第8パターンが抽出されている。その後、使用状態予測部63は、リストに加えられたパターンの数が所定数Mに達したか否かを判定する(ステップS26)。ここでは、一例としてM=3とする。
【0085】
リストに加えられたパターンの数が所定数Mに達していない場合、処理はステップS22に戻り、以上の同様の処理が実行される。ここでは、既に抽出された第1パターンと第8パターン以外の第3パターンと第5パターンとが順次選択され、第1パターンおよび第8パターンとの重複度がそれぞれ計算される。そして、第1パターンおよび第8パターンとの重複度が最も低いパターンとして、第5パターンが抽出される。これにより、リストに加えられたパターンの数が所定数Mに達し、図15に示すフローチャートの処理が終了する。
【0086】
これにより、図14(a)に示す4パターンの車両使用状態の中から、図14(b)に示す3パターンの車両使用状態が抽出される。使用状態予測部63は、この3パターンの車両使用状態をディスプレイに表示して(図9参照)、何れか1つをユーザに選択させる。あるいは、電力最適化計算部7が3パターンの車両使用状態を用いて車載蓄電池113の充放電計画を作成し、料金削減効果を含めて車両使用状態をディスプレイに表示して(図10参照)、何れか1つをユーザに選択させるようにしてもよい。
【0087】
<変形例3>
上記実施形態では、毎日の決められた時刻(例えば、午前0時)にバッチ処理として周期的に、翌日の24時間を予測対象期間として発電電力量、消費電力量および車両使用状態の予測を行い、予測対象期間とした翌日の24時間を計画対象期間として、電力最適化計算部7が車載蓄電池113の充放電計画を作成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0088】
例えば、一の周期内で車両がモビリティとしての用途に使用された場合、当該一の周期におけるモビリティとしての使用の終了時までの車両の実際の使用状態を示す実績データを使用して、モビリティとしての使用の終了時(車載蓄電池113が専用ケーブルによりV2Hシステム102に接続された時)から当該一の周期の終了時(午前0時)までの期間における車載蓄電池113の充放電計画を再作成するようにしてもよい。これは、例えば午後9時に帰宅して車載蓄電池113をV2Hシステム102に接続した場合、その日の午後9時までの実際の車両使用状態に関する使用実績データを使用して、午後9時から午前0時までの充放電計画を再作成するというものである。
【0089】
この場合、使用実績データ取得部61は、当該一の周期におけるモビリティとしての使用の終了時までの車両の実際の使用状態を示す使用実績データを取得する。また、電力最適化計算部7は、使用実績データ取得部61により取得された使用実績データにより示される実績使用状態と、発電電力予測部4により予測された予測発電電力と、消費電力予測部5により予測された予測消費電力と、料金テーブル記憶部14に記憶されている間帯別の電気料金体系とに基づいて、モビリティとしての使用の終了時から一の周期の終了時までの期間における車載蓄電池113の充放電計画を再作成する。
【0090】
このように構成した変形例3によれば、前日に予測された車両使用状態と、当日の実際の車両使用状態との間に齟齬が生じているような場合に、当日の帰宅後の充放電計画が実際の車両使用状態に基づいて再作成されるので、実態に合った適切な充放電計画に基づいて車載蓄電池113の充放電を行うことができる。
【0091】
<変形例4>
上記変形例3では、一の周期内で車両がモビリティとしての用途に使用された場合に、車両の実際の使用状態を示す使用実績データを使用して、帰宅後から当日の残りの期間における充放電計画を再作成するだけであったが、以下に述べる変形例4では、車両の実際の使用状態を示す使用実績データを使用して、予測モデルの生成、車両使用状態の予測および充放電計画の作成を再実行する。
【0092】
例えば、一の周期内で上記車両がモビリティとしての用途に使用された場合、使用実績データ取得部61は、当該一の周期におけるモビリティとしての使用の終了時までの車両の実際の使用状態を示す使用実績データを取得する。また、予測モデル生成部62は、使用実績データ取得部61により取得された使用実績データを用いて予測モデルを再生成する。
【0093】
また、使用状態予測部63は、モビリティとしての使用の終了時から一の周期の終了時までの期間の予測期間情報と、次の予測対象期間の予測期間情報とを予測モデルに入力することにより、モビリティとしての使用の終了時から次の予測対象期間の終了時までの期間中における所定単位時間ごとの車両の使用状態を予測する。
【0094】
さらに、電力最適化計算部7は、以上のように使用状態予測部63により予測された予測使用状態と、発電電力予測部4により予測された予測発電電力と、消費電力予測部5により予測された予測消費電力と、料金テーブル記憶部14に記憶されている間帯別の電気料金体系とに基づいて、モビリティとしての使用の終了時から次の予測対象期間の終了時までの期間における車載蓄電池113の充放電計画を再作成する。
【0095】
このように構成した変形例4では、例えば午後9時に帰宅して車載蓄電池113をV2Hシステム102に接続した場合、その日の午後9時までの実際の車両使用状態に関する使用実績データを使用して、午後9時から午前0時までおよび翌日の24時間を合わせた期間の充放電計画が作成される。ユーザは、その充放電計画が適切なものと判断すれば、その充放電計画を採用することができる。その後、午前0時になった時点で通常通りのバッチ処理に従って充放電計画が作成されるが、これにより作成された充放電計画を採用するか、帰宅後の午後9時に作成された充放電計画を採用するかをユーザが選択できるようにしてもよい。
【0096】
なお、上記実施形態では、予測対象期間と計画対象期間とを同じとする例について説明したが、異ならせるようにしてもよい。例えば、翌日および翌々日の2日間を予測対象期間として設定し、翌日を計画対象期間として設定するようにしてもよい。このようすれば、2日分の車両の予測使用状態をもとに、1日分の充放電計画を作成することができる。すなわち、翌日に加えて翌々日の予測使用状態を考慮した上で、翌日の充放電計画を作成することが可能となる。
【0097】
また、上記実施形態では、予測対象期間の開始時点においてバッチ処理を実行する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、予測対象期間の開始時点より所定時間前のタイミングでバッチ処理を実行するようにしてもよい。また、バッチ処理を行うタイミングをユーザが任意に指定できるようにしてもよい。このようにすれば、ユーザが指定したタイミングで、翌日の予測対象期間における車両使用状態を予測して図9または図10の画面をユーザに提示することができる。
【0098】
また、上記実施形態では、EMS101の一例としてHEMS(Home Energy Management System)を例にとり、車両が在宅中か外出中かを予測する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、BEMS(Building Energy Management System)、FEMS(Factory Energy Management System)などのxEMSに対しても同様に本発明を適用することが可能である。
【0099】
その他、上記実施形態および変形例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 発電実績データ記録部
2 消費実績データ記録部
3 使用実績データ記録部
4 発電電力予測部
5 消費電力予測部
6 車両使用状態予測部
7 電力最適化計算部
8 充放電制御部
11 発電実績データ記憶部
12 消費実績データ記憶部
13 使用実績データ記憶部
14 料金テーブル記憶部
100 電力管理装置
101 EMS
102 V2Hシステム
111 太陽光発電装置
112 電力負荷
113 車載蓄電池
図1
図2
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