(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】情報連携システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0481 20220101AFI20221006BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20221006BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20221006BHJP
G06F 3/14 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G06F3/0481
G09G5/36 520P
G09G5/00 555D
G09G5/00 510V
G06F3/14 350B
(21)【出願番号】P 2021035587
(22)【出願日】2021-03-05
(62)【分割の表示】P 2016214655の分割
【原出願日】2016-11-01
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514229661
【氏名又は名称】株式会社ソーシャル・キャピタル・デザイン
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中村 滋
(72)【発明者】
【氏名】新井 寿和
(72)【発明者】
【氏名】村田 利文
(72)【発明者】
【氏名】武藤 信義
(72)【発明者】
【氏名】長谷山 美紀
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴弘
【審査官】菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-162321(JP,A)
【文献】特開2004-021300(JP,A)
【文献】国際公開第2004/088564(WO,A1)
【文献】国際公開第01/065322(WO,A1)
【文献】特開平02-120980(JP,A)
【文献】特開平09-106337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/0481
G09G 5/36
G09G 5/00
G06F 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが操作する
ユーザ側システムの表示装置で表示する表示領域同士の情報の連携を行う情報連携システムであって,
前記情報連携システムは,
情報の連携を行う表示領域を対応付けて管理する連携情報記憶部と,
前記ユーザ側システムの表示装置で表示する
表示領域で所定の操作が行われると,少なくとも,その表示領域で
表示対象とするオブジェクト
のレベルの階層構造を有するデータを含むメッセージを受け付
ける配信処理部と,を備えており,
前記オブジェクトは,管理対象とする構造物であり,
前記ユーザ側システムには,表示領域の表示制御を行う端末側表示処理部を備え,
前記端末側表示処理部には,その端末側表示処理部が表示制御する表示領域で表示するオブジェクトの階層構造に応じたレベルと,受け付けたメッセージに対する処理とが設定されており,
前記配信処理部は,
前記ユーザ側システムから前記メッセージを受け付けると,前記連携情報記憶部を参照して,連携先となるほかの表示領域を特定し,
特定した表示領域に対応する端末側表示処理部に前記メッセージを送り,
前記端末側表示処理部において,前記配信処理部から受け付けたメッセージを自らの階層構造のレベルに置換させ,その階層構造のレベルにおける,前記メッセージに対する処理を実行させて,その端末側表示処理部が表示制御をする表示領域に表示させる,
ことを特徴とする情報連携システム。
【請求項2】
ユーザが操作する
ユーザ側システムの表示装置で表示する表示領域同士の情報の連携を行う情報連携システムであって,
前記情報連携システムは,
情報の連携を行う表示領域を対応付けて管理する連携情報記憶部と,
前記ユーザ側システムの表示装置で表示する
表示領域で所定の操作が行われると,少なくとも,その表示領域で
表示対象とするオブジェクトの
レベルの階層構造の一部を有するデータを含むメッセージを受け付ける配信処理部と,
オブジェクトの識別情報を記憶する階層構造情報記憶部と,
前記配信処理部で受け付けたメッセージにおけるオブジェクトの識別情報に基づいて,階層構造化したメッセージを生成して
前記配信処理部に渡すメッセージ処理部と,を備えており,
前記オブジェクトは,管理対象とする構造物であり,
前記ユーザ側システムには,表示領域の表示制御を行う端末側表示処理部を備え,
前記端末側表示処理部には,その端末側表示処理部が表示制御する表示領域で表示するオブジェクトの階層構造に応じたレベルと,受け付けたメッセージに対する処理とが設定されており,
前記配信処理部は,
前記受け付けたメッセージ
において前記オブジェクトのレベルの階層構造
のすべてを含まないデータの場合には,そのメッセージを前記メッセージ処理部に渡して
,前記オブジェクトのレベルの階層構造
のすべてを含むように階層構造化した
データを含むメッセージを生成させて前記メッセージ処理部から階層構造化されたメッセージを受け取り,前記連携情報記憶部を参照して,連携先となるほかの表示領域を特定し,
特定した表示領域に対応する端末側表示処理部に前記メッセージを送り,
前記端末側表示処理部において,前記配信処理部から受け付けたメッセージを自らの階層構造のレベルに置換させ,その階層構造のレベルにおける,前記メッセージに対する処理を実行させて,その端末側表示処理部が表示制御をする表示領域に表示させる,
ことを特徴とする情報連携システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,情報連携システムに関する。とくに,表示装置で表示する複数の表示領域(ウィンドウ)において,各表示領域で表示させる情報を連動させる情報連携システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路や鉄道などに関する構造物の維持管理のためには,多種多様な管理対象,たとえば橋梁,トンネル,軌道,ガードレール,標識,法面などを取り扱わなければならない。しかし,それぞれの管理対象は,さらに細分化した管理単位がある。たとえば管理対象が橋梁の場合,径間や床版など,橋梁を構成する構成要素(部材)ごとに管理単位がある。また,橋梁よりも上位の管理単位としては,その橋梁が存在する路線や,その路線を管理する事務所などがある。この管理対象を捉える単位を,本明細書では「レベル」と称する。
【0003】
そして,たとえば広い地域におよぶ路線に沿って並ぶ道路や橋梁,ガードレールや標識などの道路の附帯物を,一括して補修予算の観点で管理したり,個々の構造物の図面を,径間などの構造物の構成要素ごとに分解した図面で管理したり,あるいは構造物の特定の構成要素に関わる個々の変状(たとえば損傷箇所など,通常とは異なる状態にある箇所)をまとめて管理する必要がある。
【0004】
このように,互いに関連しあったさまざまなレベルの管理対象について,従来は,用途,目的が異なれば,用途,目的ごとに個別のデータベースに格納して管理しており,それらを互いに紐付けたり,一方から他方を参照するなどはほとんど行われていなかった。たとえば,構造物の補修予算を立案するときには,さまざまな管理対象の状態を把握し,最適な予算配分を行う必要があるが,これまでは経費に関わるデータベースが構築,利用され,そこに補修対象となる個別の変状の情報が紐付けられ,すぐに具体的な変状を確認することができなかった。
【0005】
また,現場の維持管理業務では,関連する複数の状況を速やかに把握し,総合的な見地に基づいた的確な判断が求められるが,必要な情報を取得するために,多くの時間を必要とすることが大きな課題となっていた。
【0006】
そこで,さまざまなレベルの管理対象について,一つあるいは複数の表示装置(モニター)で,さまざまな管理対象に関する情報を連動させながら表示を行うことで,管理対象の管理を容易にするシステムが求められている。
【0007】
一つの表示装置で複数の対象を表示させることが可能な従来のシステムとして,たとえばモニタリング対象をカメラなどの撮像装置で撮像し,各撮像装置で撮像した画像を,表示装置で複数の領域に区切った各領域で表示させる方法がある(特許文献1乃至特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-244896号公報
【文献】特開2015-060021号公報
【文献】特開平8-212044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1および特許文献2の発明の場合,各撮像装置で撮像した画像を,一つの表示装置で同時に表示させることは可能であるが,それらを連動させて表示させることはできない。また,特許文献3の発明は端末間の画面の同期方法であり,ある端末で表示している画面と,ほかの端末で表示している画面とを同一の状態に同期させるものである。そのため,「同一の状態にする」という点においては連動しているものの,同一ではないが関連した情報を表示させることはできない。
【0010】
構造物の維持管理の場合,さまざまなレベルの管理対象について,一つの表示装置(モニター)で,さまざまな管理対象に関する情報を連動させながら表示を行うことで,管理対象の管理を容易にするシステムが求められているが,特許文献3の発明を利用したとしても,それを実現することはできない。
【0011】
すなわち,たとえば一つの表示装置に3つの表示領域(ウィンドウ)を表示する場合,ウィンドウ1では道路の路線図を表示し,ウィンドウ2では橋梁の構造図を表示し,ウィンドウ3ではその橋梁の変状に関する情報を表示していたとする。ウィンドウ1で道路の路線図における特定の橋梁を選択した場合,ウィンドウ2では当該選択された橋梁の構造図の表示に切り替え,ウィンドウ3では当該選択された橋梁の変状に関する情報の表示に切り替えることが求められる。しかし,特許文献3の発明の場合ではかかる処理を実行することはできない。
【0012】
さらに,構造物の維持管理の場合,構造物が存在する現場と,情報整理や判断を行う事務所,場合によっては業務統括を行う本社,支社が存在し,これらの各拠点で情報共有を行うことも求められている。たとえば災害や事故が発生した場合には,現場にいる担当者がタブレット型コンピュータを携行し,事務所ではパーソナルコンピュータ,本社や支社では大型モニターといった異なる表示サイズ,解像度のデバイスを用いて,同一の情報を共有しながら同時に作業を進めることもある。この場合,どのデータをどのように見ているのかを共有することが好ましいが,当然,異なるサイズ,解像度のデバイスを用いているので,単に,すべての表示内容を同期したのでは対応することができない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで本発明者は上記課題に鑑み,本発明をした。
【0014】
第1の発明は,ユーザが操作するユーザ側システムの表示装置で表示する表示領域同士の情報の連携を行う情報連携システムであって,前記情報連携システムは,情報の連携を行う表示領域を対応付けて管理する連携情報記憶部と,前記ユーザ側システムの表示装置で表示する表示領域で所定の操作が行われると,少なくとも,その表示領域で表示対象とするオブジェクトのレベルの階層構造を有するデータを含むメッセージを受け付ける配信処理部と,を備えており,前記オブジェクトは,管理対象とする構造物であり,前記ユーザ側システムには,表示領域の表示制御を行う端末側表示処理部を備え,前記端末側表示処理部には,その端末側表示処理部が表示制御する表示領域で表示するオブジェクトの階層構造に応じたレベルと,受け付けたメッセージに対する処理とが設定されており,前記配信処理部は,前記ユーザ側システムから前記メッセージを受け付けると,前記連携情報記憶部を参照して,連携先となるほかの表示領域を特定し,特定した表示領域に対応する端末側表示処理部に前記メッセージを送り,前記端末側表示処理部において,前記配信処理部から受け付けたメッセージを自らの階層構造のレベルに置換させ,その階層構造のレベルにおける,前記メッセージに対する処理を実行させて,その端末側表示処理部が表示制御をする表示領域に表示させる,情報連携システムである。
【0015】
本発明のように構成することで,表示装置に表示する表示領域では,自らのレベルに対応する情報を表示することができる。すなわち,従来の情報の連携システムでは,同一の情報を同期システムなどを用いて,複数の表示装置で表示させることはできたが,同一ではないが,関連する情報を表示させることはできなかった。しかし,本発明のように,表示領域で所定の操作が行われた際には階層構造を有するメッセージが,配信処理部を介してほかの連携先の表示領域に送られ,メッセージを受け付けた表示領域では,設定されたレベルに基づいてその処理を実行することができる。そのため,たとえば,表示領域1乃至表示領域3があり,表示領域1では道路の路線図を表示し,表示領域2では橋梁の構造図を表示し,ウィンドウ3ではその橋梁の変状に関する情報を表示していたときに,表示領域1で道路の路線図における特定の橋梁を選択した場合,表示領域1から,その橋梁を示す階層構造を有するメッセージが,配信処理部を介して,連携先となるほかの表示領域にも送られる。そして,連携先が表示領域2,3であったとき,表示領域2では当該選択された橋梁の構造図の表示に切り替え,ウィンドウ3では当該選択された橋梁の変状に関する情報の表示を行うことが可能となる。
【0016】
このように,本発明の情報連携システムを用いることによって,単なる同期処理ではなく,管理対象の階層構造のレベルに応じた,情報の連携が可能となる。
【0017】
第2の発明は,ユーザが操作するユーザ側システムの表示装置で表示する表示領域同士の情報の連携を行う情報連携システムであって,前記情報連携システムは,情報の連携を行う表示領域を対応付けて管理する連携情報記憶部と,前記ユーザ側システムの表示装置で表示する表示領域で所定の操作が行われると,少なくとも,その表示領域で表示対象とするオブジェクトのレベルの階層構造の一部を有するデータを含むメッセージを受け付ける配信処理部と,オブジェクトの識別情報を記憶する階層構造情報記憶部と,前記配信処理部で受け付けたメッセージにおけるオブジェクトの識別情報に基づいて,階層構造化したメッセージを生成して前記配信処理部に渡すメッセージ処理部と,を備えており,前記オブジェクトは,管理対象とする構造物であり,前記ユーザ側システムには,表示領域の表示制御を行う端末側表示処理部を備え,前記端末側表示処理部には,その端末側表示処理部が表示制御する表示領域で表示するオブジェクトの階層構造に応じたレベルと,受け付けたメッセージに対する処理とが設定されており,前記配信処理部は,前記受け付けたメッセージにおいて前記オブジェクトのレベルの階層構造のすべてを含まないデータの場合には,そのメッセージを前記メッセージ処理部に渡して,前記オブジェクトのレベルの階層構造のすべてを含むように階層構造化したデータを含むメッセージを生成させて前記メッセージ処理部から階層構造化されたメッセージを受け取り,前記連携情報記憶部を参照して,連携先となるほかの表示領域を特定し,特定した表示領域に対応する端末側表示処理部に前記メッセージを送り,前記端末側表示処理部において,前記配信処理部から受け付けたメッセージを自らの階層構造のレベルに置換させ,その階層構造のレベルにおける,前記メッセージに対する処理を実行させて,その端末側表示処理部が表示制御をする表示領域に表示させる,情報連携システム。
【0018】
本発明のように構成することで,第1の発明と同様の技術的効果を得ることができる。すなわち,本発明の情報連携システムを用いることによって,単なる同期処理ではなく,管理対象の階層構造のレベルに応じた,情報の連携が可能となる。
【0019】
また,第1の発明とは異なり,表示領域から送るメッセージは階層構造化されず,メッセージの階層構造化は,別途,生成処理を実行している。そのため,表示領域の制御を行うプログラムの独立性を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の情報連携システムを用いることによって,一つの表示装置(モニター)で,さまざまな管理対象に関する情報を連動させながら表示を行うことが可能となり,管理対象の管理が容易となる。
【0021】
また,各拠点で異なるサイズ,解像度の表示装置を有するコンピュータを用いていたとしても,同一の情報を共有することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の情報連携システムの全体の概念の一例を模式的に示す概念図である。
【
図2】本発明の情報連携システムのシステム構成の概念の一例を模式的に示す概念図である。
【
図3】本発明の情報連携システムで利用するコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示す図である。
【
図4】本社や支社などのタッチパネル型の大型ディスプレイを表示装置として用いた場合に表示される画面の一例を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の情報連携システムの処理プロセスの一例を示すフローチャートの一例である。
【
図6】連携情報記憶部の一例を模式的に示す概念図である。
【
図8】
図7のメッセージの階層構造を模式的に示す図である。
【
図9】実施例2における本発明の情報連携システムの全体の概念の一例を模式的に示す概念図である。
【
図10】実施例2における階層構造化したメッセージの生成の概念の一例を模式的に示す図である。
【
図11】階層構造情報記憶部の概念の一例を模式的に示す図である。
【
図12】実施例3におけるタブ方式のペインの場合の一例を模式的に示す図である。
【
図13】実施例5における本発明の情報連携システムの全体の概念の一例を模式的に示す概念図である。
【
図14】実施例7における本発明の情報連携システムの全体の概念の一例を模式的に示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の情報連携システム1の全体の概念の一例を
図1に,さらに詳細にシステム構成の概念を示すのが
図2の模式図である。情報連携システム1はサーバ側システム2と,各ユーザが利用するユーザ側システム3とを備える。ここでユーザとはシステムを利用する者という意味であり,現場担当者,情報整理や判断を行う事務所の担当者,業務統括を行う本社や支社の担当者などが,操作するコンピュータを利用する者である。また担当者は複数であってもよく,同時に複数の者がコンピュータを操作してもよい。たとえば現場担当者はタブレット型コンピュータ(ユーザ端末)をユーザ側システム3として利用し,事務所の担当者らはパーソナルコンピュータ(ユーザ端末)をユーザ側システム3として利用し,本社や支社ではタッチパネル型の大型モニターを備えたコンピュータ(ユーザ端末)をユーザ側システム3として利用する。本発明における各ユーザ側システム3の基本的構成は同じである。なお,ユーザ端末とはユーザが操作するコンピュータであり,ユーザ側システム3とは,後述するユーザ端末で実行される機能を備えたコンピュータシステムをいう。
【0024】
ユーザ側システム3,サーバ側システム2はコンピュータによって実現される。
図3にコンピュータのハードウェア構成の一例を示す。コンピュータは,プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と,情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と,ディスプレイなどの表示装置72と,情報の入力を行う入力装置73と,演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報の通信をする通信装置74とを有している。なお,コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には入力装置73と表示装置72とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは,たとえば現場担当者が利用するタブレット型コンピュータなどの可搬型通信端末や,本社や支社などに設置される大型ディスプレイを備えたコンピュータなどがコンピュータの場合に利用されることが多いが,それらに限定されるものではない。
【0025】
なお,タッチパネルディスプレイは,そのディスプレイ上で,直接,所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力を行える点で,表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
【0026】
サーバ側システム2は一台のコンピュータによって実現されていてもよいが,その機能が複数のコンピュータによって実現されていてもよい。この場合のコンピュータとして,たとえばクラウドサーバであってもよい。
【0027】
さらに,本発明の情報連携システム1における各手段は,その機能が論理的に区別されているのみであって,物理上あるいは事実上は同一の領域を為していても良い。
【0028】
サーバ側システム2は,連携処理部21と端末表示制御処理部22とアプリケーション処理部23とを備える。
【0029】
連携処理部21は,ユーザ側システム3で表示する表示領域間での通信を仲介する。連携処理部21は,連携管理部211と連携情報記憶部212と配信処理部213とを備える。
【0030】
連携管理部211は,ユーザ側システム3から自らの登録要求を受け付けた場合に,そのユーザ側システム3を連携対象として管理する。
【0031】
連携情報記憶部212は,連携管理部211で受け付けた情報に基づいて,連携すべきユーザ側システム3などの情報を記憶する。具体的には,ユーザ側システム3で起動している後述のユーザを識別するユーザ識別情報(ユーザID),ペイン種別識別情報,ペインビューア識別情報とを対応付けて記憶する。また,連携先となっているユーザ識別情報,ペイン種別識別情報とをグループとして対応付けて記憶している。
【0032】
配信処理部213は,ユーザ側システム3から連携すべきメッセージを受け付けた場合,連携記憶部に記憶する情報に基づいて連携先を特定し,特定した連携先に対して,当該メッセージを配信する。この配信は好ましくは,同時にメッセージの配信を行うブロードキャスト配信が好ましいが,それに限定はされない。
【0033】
端末表示制御処理部22は,ユーザ側システム3の表示装置72で表示する各表示領域の組み合わせと配置とを定義する情報を記憶しており,ユーザ側システム3における表示領域の組み合わせと配置を制御する。好ましくは,あらかじめ,組織内のユーザを,所属する部署,職掌,利用するユーザ端末(ユーザ側システム3を実現するコンピュータ)の表示装置72のサイズや解像度に基づいてグループに分類しておく。そして,情報連携システム1のシステム管理者は,各グループについて,ユーザ側システム3で備える,後述する端末側表示処理部31の構成,すなわち端末側表示処理部31が表示する表示領域の種別の組み合わせと表示装置72における座標情報などの配置位置(「レイアウト情報」とする)とを,定義づけ,設定しておく。なお,この際には,1つのグループがその利用場面に応じて,異なる表示領域の種別の組み合わせと配置位置を用いる場合があるので,複数のレイアウト情報を定義づけ,設定しておいてもよい。レイアウト情報としては,いわゆるスタイルシート(CSS)などを用いることが好ましい。
【0034】
アプリケーション処理部23は,管理対象となる構造物などのオブジェクトをレベルごとに階層構造に対応させて記憶しており,ユーザ側システム3から問い合わせを受け付けた情報を当該ユーザ側システム3に返す。たとえば,変状については,「X事務所(事務所ID1)」の「Y路線(路線ID1)」の「α橋(橋梁ID1)」の「β径間(径間ID1)」の「γ床版(床版ID1)」の「変状1(変状ID1)」のように,各種の情報を,後述するメッセージの情報に対応するように,レベルに対応させて記憶している。ある特定の構造物に関する情報の問い合わせをユーザ側システム3から受け付けると,その問い合わせを行った,後述のユーザ側システム3の端末側表示処理部31に設定されたレベルに対応するレベルにおける,問い合わせに対する情報を抽出してユーザ側システム3に返す。なお,アプリケーション処理部23は,サーバ側システム2のサーバとして実現されていてもよいし,異なるシステムとして実現されていてもよい。また,本発明の情報連携システムとは分離した無関係のインターネットにおけるウェブサーバなどであってもよい。
【0035】
オブジェクトとは,情報連携システム1または各階層構造におけるデータ要素である。データ要素としては,たとえば,事務所,高速道路などの路線,橋梁,橋脚,床版,変状などの,本発明の情報連携システム1を用いて管理する管理対象となる要素である。オブジェクトとなるデータ要素が,後述する各ペインにおいて表示等の処理対象となる。
【0036】
オブジェクトに対しては,そのすべてに識別情報が割り当てられている。この識別情報は,情報連携システム1において一意の識別情報であってもよいし,その階層構造において一意の識別情報であってもよい。
【0037】
ユーザ側システム3は,端末側表示処理部31と端末側通信処理部32とを備える。
【0038】
端末側表示処理部31は,ユーザ側システム3の表示装置72において表示する情報の制御を行う。端末側表示処理部31では,管理対象であるオブジェクトについて,あらかじめ定められたレベルで表示対象として管理している。そのため,サーバ側システム2から配信を受けたメッセージを自らのレベルに置換して,自らのレベルに沿った情報の表示制御を行う。
【0039】
端末側通信処理部32は,ユーザ側システム3とサーバ側システム2との間の通信の制御を行う。端末側通信処理部32は,ユーザ側システム3が通信を行う相手となるサーバ側システム2の通信先の情報,たとえばIPアドレス,ポート番号などの情報を記憶している。
【0040】
本発明において端末側表示処理部31はペインビューアと称し,端末側通信処理部32は連携モジュールと称することもある。ユーザ側システム3においては,その表示装置72において,複数のペインビューアが,好ましくは重畳しないように(いわゆるタイル型ウィンドウとして)表示されている(
図2参照)。端末側表示処理部31であるペインビューアが表示制御を行う表示領域(ウィンドウ)をペインと称する。したがって,端末側表示処理部31であるペインビューアは,ペイン内の表示制御を司るプログラムとなる。そしてユーザ側システム3の表示装置72で表示するペインの配置は,サーバ側システム2における端末表示制御処理部22の表示制御にしたがって行う。
【0041】
各ユーザ側システム3においては,複数の端末側表示処理部31(ペインビューア)が実行されており,各ペインで表示するオブジェクトの階層構造におけるレベルが設定されている。そしてペインビューアは一つの表示対象を一つのレベルで表示する。たとえば,広域レベル,事務所管内レベル,路線レベル,構造物レベル,部材レベル,変状レベルなど,階層構造化されたメッセージに基づいて,どのレベルでペインに情報を表示させるかが設定されている。またそれぞれの端末側表示処理部31に対応づけて端末側通信処理部32(連携モジュール)が実行される。たとえば
図2に示すように,ユーザ端末1の表示装置72にはAペインからEペインが表示されるので,ユーザ端末1におけるユーザ側システム3では,AペインからEペインまで対応する端末側表示処理部31(ペインビューア)が起動しており,またそれらに対応するそれぞれの端末側通信処理部32(連携モジュール)が起動している。さらに,ユーザ端末2の表示装置72ではAペインとBペインとが表示されるので,ユーザ端末2におけるユーザ側システム3では,AペインとBペインに対応する端末側表示処理部31(ペインビューア)が起動しており,またそれらに対応するそれぞれの端末側通信処理部32(連携モジュール)が起動している。
【0042】
図4に,本社や支社などのタッチパネル型の大型ディスプレイを表示装置72として用いた場合に表示される各ペインを表示している画面の一例を示す。
図4では,タッチパネル型の大型ディスプレイに,22個のペインが設けられている場合である。この画面は大型ディスプレイ全体に亘って表示されており,各ペイン同士が重畳しないように,タイル型ウィンドウとして表示されている。
【0043】
端末側表示処理部31(ペインビューア)のうち,ほかの端末側表示処理部31(ペインビューア)と情報の連携を行う機能を有する端末側表示処理部31(ペインビューア)は,それが起動する際に,端末側通信処理部32(連携モジュール)をユーザ端末でロードし,実行可能状態とすることで,ユーザ側システム3を構成する。そして端末側表示処理部31(ペインビューア)で行われた操作は,そのオブジェクトが対応する階層構造化されたメッセージとして生成され,端末側通信処理部32(連携モジュール)を介してサーバ側システム2に送られる。一方,サーバ側システム2からメッセージが配信された場合には,端末側通信処理部32(連携モジュール)でそれを受け付け,端末側表示処理部31(ペインビューア)にメッセージを渡す。端末側表示処理部31(ペインビューア)は,自らのレベルにそのメッセージを置換し,対応する処理を実行する。
【0044】
なお,端末側表示処理部31(ペインビューア)のうち,ほかの端末側表示処理部31(ペインビューア)と情報の連携を行わない端末側表示処理部31(ペインビューア)については,端末側通信処理部32(連携モジュール)をユーザ端末でロードしない。たとえば
図4の場合,上1段の9つのペインビューア,「走行動画」を表示するペインビューア,「画像・図面参照履歴」を表示するペインビューアがこれらに該当する。したがって,
図4の場合,この表示装置72を備えるユーザ端末では,22個の端末側表示処理部31(ペインビューア)と11個の端末側通信処理部32(連携モジュール)が起動している。
【実施例1】
【0045】
つぎに本発明の情報連携システム1の処理プロセスの一例を
図5のフローチャートを用いて説明する。本発明の情報連携システム1では,イニシエート処理(S100),ノーティファイ処理(S110),ブロードキャスト処理(S120),レスポンス処理(S130)が順次,実行されることで,その処理プロセスが実現される。以下,各処理について説明をする。なお,端末側表示処理部31をペインビューア,端末側通信処理部32を連携モジュールとの用語を用いて以下で説明する。またサーバ側システム2における連携処理部21の機能を連携サーバ,アプリケーション処理部23の機能をウェブアプリケーションで実現をしている場合を説明する。
【0046】
まずイニシエート処理(S100)について説明する。イニシエート処理とは,ユーザ側システム3の表示装置72のペインで表示されるオブジェクトに関する情報について連携を行うために,ペイン同士の連携を行う処理である。
【0047】
本発明の情報連携システム1では,端末表示制御処理部22において,あらかじめ,組織内のユーザが,所属する部署,職掌,利用するユーザ端末(ユーザ側システム3を実現するコンピュータ)の表示装置72のサイズや解像度に基づいてグループに分類されている。そして,情報連携システム1のシステム管理者が,各グループについて,複数のペインビューアのレイアウト情報(ペインビューアが表示するペインの組み合わせと配置が定義された情報)をCSSなどによって設定している。
【0048】
あるユーザ端末において,ユーザ側システム3を起動させる操作が行われると,ユーザ識別情報(ユーザIDなど)やユーザ端末を識別する情報などに基づいて,サーバ側システム2から対応する,ペインビューアのレイアウト情報であるCSSの情報を取得する。すなわち,ユーザ側システム3では,ユーザ識別情報,ユーザ端末を識別する情報をサーバ側システム2に送り,サーバ側システム2の端末側表示処理部31では,ユーザ側システム3から受け取った情報に基づいて,ユーザの部署,職掌,ユーザ端末の表示装置72のサイズや解像度を特定し,それに対応するペインビューアの情報を特定し,ユーザ側システム3に送る。ユーザ側システム3ではCSSによるペインビューアの情報をサーバ側システム2から受け取ると,ユーザ側システム3の各ペインビューアが起動し,それらの情報に基づいてペインを配置する。なお,ユーザが選択可能なレイアウト情報が複数存在する場合には,ユーザが使用するレイアウト情報を選択し,それに基づいて,使用するCSSが切り替わり,対応するペインビューアの情報を取得して,それらをサーバ側システム2から受け取ると,ユーザ側システム3の各ペインビューアが起動し,それらの情報に基づいてペインを配置する。
【0049】
そしてペインビューアは自らに対応する連携モジュールを当該ユーザ端末でロードして,実行可能状態とする。通常,一つのユーザ側システム3においてペインビューアは複数あるので,ユーザ側システム3を起動した場合には,複数のペインビューアが各自起動され,各ペインビューアが自らに対応する連携モジュールをロードすることとなる。
【0050】
ペインビューアは連携サーバに自らを登録するため,登録要求を,対応する連携モジュールに渡す。連携モジュールは,当該ユーザ側システム3を操作するユーザのユーザ識別情報と,ペイン種別識別情報とを,上記登録要求とともに,あらかじめ定められたサーバ側システム2に送る。ペイン種別識別情報とは,ペインビューアがペインに表示させるオブジェクトの情報の種別を示す情報であって,たとえば点検情報を表示するペイン,地図情報を表示させるペイン,広域路線図の情報を表示させるペイン,変状リスト(損傷箇所のリスト)の情報を表示させるペイン,構造物の図面を表示させるペイン,など各種の情報があり,あらかじめペインビューアごとに設定されている。ペイン種別識別情報は,表示領域にどのような情報を設定させるかによって,適宜,設定可能である。
【0051】
ユーザ側システム3の連携モジュールから登録要求とユーザ識別情報とペイン種別識別情報とを受け取ったサーバ側システム2の連携サーバにおける連携管理部211は,当該ペインビューアを識別するためのユニークな識別情報を割り当てる。この識別情報をペインビューア識別情報とする。
【0052】
連携サーバにおける連携管理部211は,割り当てたペインビューア識別情報を,当該登録要求を行った連携モジュールに対して通知する。
【0053】
また,サーバ側システム2の連携サーバにおける連携管理部211は,ユーザ側システム3から受け付けたユーザ識別情報とペイン種別識別情報とペインビューア識別情報とを対応づけて連携情報記憶部212に記憶させる。
【0054】
さらに,情報連携システム1は,ペイン同士の連携を行う処理を実行する。この連携処理は大別して3種類ある。第1の連携処理は,ユーザが異なり,ペイン種別が同一(すなわちペイン種別識別情報が同一)であるペイン同士の連携を行う場合である。たとえばあるユーザ側システム3のペインP1と,ほかのユーザ側システム3のペインP2との連携を行う場合である。第2の連携処理は,あるユーザが操作するユーザ側システム3のすべてのペインと,ほかのユーザが操作するユーザ側システム3のすべてのペインとで連携を行う場合である。第3の連携処理は,同一のユーザの元で動作するペイン同士の連携を行う場合である。
【0055】
第1の連携処理は,たとえば現場担当者が操作するタブレット型コンピュータであるユーザ端末で実現されるユーザ側システム3の図面のペインと,事務所の担当者が操作するパーソナルコンピュータであるユーザ端末で実現されるユーザ側システム3の図面のペインとで,図面情報の共有を行う場合などに用いられる。
【0056】
この場合,連携を行いたい現場担当者(たとえばユーザ識別情報が「67890」であったとする)がそのユーザ側システム3において,連携先となる事務所担当者のユーザ識別情報(たとえば「12345」)とペイン種別識別情報(たとえば「点検情報」)とをそのユーザ側システム3のペインビューアで入力,選択等する。なお,この入力,選択は,プルダウンメニューやペインの選択等によってペインを特定することで,ペイン種別識別情報を自動的に特定してもよく,ユーザ識別情報も自動的に取得してもよい。
【0057】
連携モジュールは,連携先のユーザ識別情報「12345」とペイン種別識別情報「点検情報」と,自らのユーザ識別情報「67890」と,連携要求とをサーバ側システム2に送る。
【0058】
サーバ側システム2の連携サーバにおける連携管理部211は,ユーザ側システム3から連携要求と,ユーザ側システム3の連携先のユーザ識別情報「12345」とペイン種別識別情報「点検情報」と自らのユーザ識別情報「67890」とを受け付けると,連携先として受け付けたユーザ識別情報「12345」に基づいて,連携先のユーザ側システム3に対して,連携要求がなされ,連携を承諾するかの通知を送る。
【0059】
この通知を受け付けた,連携先のユーザ側システム3において承諾が選択されると,当該ユーザ側システム3からサーバ側システム2に対して連携処理に対する承諾がなされたことが通知され,それを受け付けたサーバ側システム2における連携サーバの連携管理部211が,ユーザ識別情報「67890」のペイン種別識別情報「点検情報」と,連携先となるユーザ識別情報「12345」のペイン種別識別情報「点検情報」と,を連携するグループとして対応づけて連携情報記憶部212に記憶させる。これによって,ユーザ識別情報「67890」の点検情報を表示するペインと,ユーザ識別情報「12345」の点検情報を表示するペインとを対応づけて管理することが可能となる。
【0060】
連携サーバにおける第2の連携処理は,たとえば本社や支社などの防災対策室に設置された大型ディスプレイ装置で表示する画面を,その所長室のコンピュータで確認するような場合などで用いられる。
【0061】
この場合,連携を行いたい所長室の担当者(たとえばユーザ識別情報が「67890」であったとする)がそのユーザ側システム3において,連携先となる防災対策室のユーザ識別情報(たとえば「12345」)をそのユーザ側システム3のペインビューアで入力,選択等する。なお,ユーザ識別情報は自動的に取得してもよい。
【0062】
連携モジュールは,連携先のユーザ識別情報「12345」と自らのユーザ識別情報「67890」と,連携要求とをサーバ側システム2に送る。
【0063】
サーバ側システム2の連携サーバにおける連携管理部211は,ユーザ側システム3から連携要求と,ユーザ側システム3の連携先のユーザ識別情報「12345」と自らのユーザ識別情報「67890」とを受け付けると,連携先として受け付けたユーザ識別情報「12345」に基づいて,連携先のユーザ側システム3に対して,連携要求がなされ,連携を承諾するかの通知を送る。
【0064】
この通知を受け付けた,連携先のユーザ側システム3において承諾が選択されると,当該ユーザ側システム3からサーバ側システム2に対して連携処理に対する承諾がなされたことが通知され,それを受け付けたサーバ側システム2における連携サーバの連携管理部211が,ユーザ識別情報「67890」に対応するすべてのペイン種別識別情報と,連携先となるユーザ識別情報「12345」に対応するすべてのペイン種別識別情報と,を連携するグループとして対応づけて連携情報記憶部212に記憶させる。これによって,ユーザ識別情報「67890」のすべてのペインと,ユーザ識別情報「12345」のすべてのペインとを対応づけて管理することが可能となる。
【0065】
第3の連携処理は,そのユーザが利用するペイン同士での連携をする場合である。この場合,当該ユーザが,そのユーザ側システム3において自らのユーザ識別情報を入力,選択等すると,連携モジュールは,自らのユーザ識別情報と連携要求とをサーバ側システム2に送る。サーバ側システム2の連携サーバにおける連携管理部211は,ユーザ側システム3からの連携要求とそのユーザ識別情報とを受け付けると,当該ユーザ識別情報に対応するすべてのペイン種別識別情報を,連携するグループとして対応付けて連携情報記憶部212に記憶させる。これによって,当該ユーザのすべてのペインを対応付けて管理することが可能となる。
【0066】
なお,第3の連携処理は,あるユーザが利用するユーザ側システム3で表示するペイン同士での連携処理なので,通常は,第3の連携処理は,第1の連携処理または第2の連携処理と並行して行われていることが好ましい。すなわち,あるユーザがユーザ側システム3を利用している場合,そこで表示するペイン同士で情報の連携が行われていれば,そのユーザにとって利便性が高まる。そのため,当該ユーザが利用するペインはそれぞれを連携するグループとして対応づけておくことがよい。
【0067】
図2ではユーザ端末1,ユーザ端末2で情報の連携を行う場合,それぞれでペインを表示する場合の一例を示しているが,そのペインの表示において,ペインの連携を行う場合の連携情報記憶部212の一例を
図6に示す。
図6では,ユーザ識別情報と,そのユーザが利用するユーザ端末のユーザ側システム3で表示されているペインの種別を示すペイン種別識別情報,ペインビューアを識別するペインビューア識別情報とが対応づけられており,さらに,連携グループ識別情報によって,連携するグループとして対応づけられたペインビューアが管理されることを示している。
【0068】
図6(a)は上述の第1の連携処理の場合であり,
図2におけるユーザ端末1,ユーザ端末2でAペイン同士のみを連携させた状態の連携情報記憶部212の一例を示している。
図6(b)は上述の第2の連携処理の場合であり,
図2におけるユーザ端末1,ユーザ端末2のすべてのペインを連携させた状態の連携情報記憶部212の一例を示している。
図6(c)は上述の第3の連携処理の場合であり,ユーザ端末1のみ,ユーザ端末2のみでペインの連携をさせた状態の連携情報記憶部212の一例である。
図6では,各ペインを連携するグループとして対応づけるため,連携グループ識別情報を用いて管理をしており,これが同一であれば,それは連携するペインであることを示している。
【0069】
以上のような処理を実行することで,イニシエート処理が実行できる。
【0070】
つぎにユーザ端末の表示装置72で表示するペインに対して何らかの操作が行われた場合に行われるノーティファイ処理(S110)と,サーバ側システム2における連携サーバが連携対象となるほかのペインビューアに対して,当該メッセージを配信するブロードキャスト処理(S120)と,配信されたメッセージを受け取ったペインビューアが行うレスポンス処理(S130)と,を説明する。
【0071】
あるユーザ端末で起動しているユーザ側システム3が,その表示装置72で表示するペインにおいて,当該ユーザが検索や対象の選択などによる,ペインで表示する表示対象となるオブジェクトの選択処理を行った場合には,ペインビューアは,表示対象となるオブジェクトが切り替わる操作が行われたことを検出し,連携モジュールに対してメッセージを渡す。
【0072】
ここで渡すメッセージは,ペインに表示する表示対象となるオブジェクトのレベルで階層構造化されたメッセージであって,表示対象となるオブジェクトのレベルの階層構造が複数,含まれていてもよい。
図7に,メッセージの一例を示す。
図7では,表示対象となるオブジェクトの階層構造化されたメッセージとして,構造物である橋梁やトンネルなどのインフラの種別を示すインフラ種別ID,そのインフラを管理するどこの事務所の管轄にあるかを示す事務所ID,その事務所で管理する路線を示す路線ID,その路線における橋梁を示す橋梁ID,その橋梁の径間を示す径間ID,その径間における床版ID,その床版における変状(損傷箇所など)を示す変状IDなど,各オブジェクトの識別情報が階層構造化されていることで,当該ペインで表示するオブジェクトのレベルの階層構造を示している。そして,
図7の1行目と2行目の各メッセージは,同一の橋梁の同一の径間にある別々の変状を特定しており,3行目のメッセージでは別の橋梁を特定している。なお3行目のvoidとは下位までレベルの深さを合わせるための情報である。
図7のメッセージの階層構造を模式化したのが
図8である。なお,メッセージの階層構造の表現方法は,
図7や
図8に限定されず,階層構造を表現できる方法であれば如何なる方法であってもよい。
【0073】
たとえば,ユーザが自らが操作するユーザ側システム3の点検情報ペインにおいて,「X事務所/Y路線」におけるすべての「レベルB以上の○○変状」を表示する,との検索要求を行った場合の動作を説明する。
【0074】
上記操作が行われた点検情報ペインのペインビューアは,サーバ側システム2における上記変状に関する情報を記憶するウェブアプリケーション(アプリケーション処理部23)に対して,上記の検索要求を渡す。当該ウェブアプリケーションでは,その検索要求に基づいて変状に関する情報の検索を実行する。そして,その検索結果を,点検情報ペインのペインビューアで取得する。点検情報ペインのペインビューアは,その点検情報ペインに,ウェブアプリケーションから取得した検索結果を表示する。なお,検索結果そのものがリスト化されていなくてもよい。なお,ここで取得した検索結果としては,たとえば検索要求に該当するオブジェクトに関する情報,その階層構造の情報がある。たとえばオブジェクトに関する情報としては,「変状1」,「変状2」,「変状3」に関する情報,各オブジェクトの階層構造としては,「X事務所(事務所ID1)」の「Y路線(路線ID1)」の「α橋(橋梁ID1)」の「β径間(径間ID1)」の「γ床版(床版ID1)」の「変状1(変状ID1)」と「変状2(変状ID2)」,「X事務所(事務所ID1)」の「Y路線(路線ID1)」の「β橋(橋梁ID2)」の「γ番目の橋脚(橋脚ID1)」の「変状3(変状ID3)」であったとする。
【0075】
検索結果を取得した点検情報ペインのペインビューアは,当該ペインにおいて,ウェブアプリケーションから取得した「変状1」,「変状2」,「変状3」に関する情報の表示を行う。なお,検索結果としてのオブジェクトが複数ある場合には,表示するオブジェクトを選択させ,選択されたオブジェクトの情報のみをペインで表示してもよい。
【0076】
また点検情報ペインのペインビューアは,当該ペインで表示するオブジェクトについて,「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1/床版ID1/変状ID1,インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1/床版ID1/変状ID2,インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID2/橋脚ID1/void/変状ID3」を階層構造化されたメッセージとして連携モジュールに渡す。連携モジュールでは上記メッセージと,当該ペインが対応するペインビューアのペインビューア識別情報とを,サーバ側システム2の連携サーバに渡す。
【0077】
以上のような処理でノーティファイ処理を行う。
【0078】
そしてノーティファイ処理の終了後,サーバ側システム2の連携サーバでは,ユーザ側システム3から受け取ったメッセージに基づいて,ブロードキャスト処理を実行する。
【0079】
まず,サーバ側システム2の連携サーバでは,連携サーバの配信処理部213で受け付けたメッセージに対応するペインビューア識別情報に基づいて,そのペインビューア識別情報が対応するユーザ識別情報とペイン種別識別情報とを連携情報記憶部212に基づいて特定する。そして特定したユーザ識別情報とペイン種別識別情報とを用いて,それがグループ化されている(対応付けられている)ユーザ識別情報とペイン種別識別情報とを特定する。そして,特定したユーザ識別情報とペイン種別識別情報を備えるペインビューア識別情報が連携情報記憶部212に基づいて特定できるので,そのペインビューア識別情報を有するペインビューアを,連携先となるペインビューアとして特定し,特定した連携先となるペインビューアに対して,上記配信を受け付けたメッセージをブロードキャスト配信する。たとえば連携サーバの配信処理部213で,ペインビューアAからメッセージを受け付け,その連携先として,ペインビューアB乃至Dを特定した場合,ペインビューアB乃至Dに上記受け付けたメッセージを配信する。
【0080】
サーバ側システム2の連携サーバでは,配信処理部213で上記メッセージなどを受け付けると,ペインビューアAのペインビューア識別情報に基づいて連携情報記憶部212を参照し,ペインビューアAのペインビューア識別情報に対応するユーザ識別情報とペイン種別識別情報とを特定する。そして特定したユーザ識別情報とペイン種別識別情報に,連携先としてグループ化されて対応付けられている,ほかのユーザ識別情報とペイン種別識別情報とを特定する。そしてここで特定したユーザ識別情報とペイン種別識別情報とが対応するペインビューア識別情報を,連携情報記憶部212に基づいて,実際にメッセージを配信する先のペインビューアとして特定する。そして,特定したペインビューア識別情報を有するペインビューアの連携モジュールに対して,上記メッセージをブロードキャスト配信をする。たとえば地図ペインビューア,路線図ペインビューア,橋梁諸元ペインビューア,図面ペインビューア,変状詳細ペインビューアを特定した場合,上記各ペインビューアが対応する連携モジュールに対して,連携サーバの配信処理部213は,「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1/変状ID1,インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1/変状ID2,インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID2/橋脚ID1/void/変状ID3」をメッセージとして配信する。
【0081】
以上のような処理を実行することでブロードキャスト処理を実行できる。
【0082】
ブロードキャスト処理の終了後,配信されたメッセージに基づいて各ペインビューアにおける対応する処理を行うレスポンス処理を説明する。
【0083】
連携サーバの配信処理部213からブロードキャスト配信されたメッセージを受け取った各ペインビューアに対応する連携モジュールは,それをペインビューアに渡し,ペインビューアでは,受け取ったメッセージを自らの階層構造のレベルに置換し,その階層構造のレベルにおける,当該ペインビューアであらかじめ定められている処理を実行する。
【0084】
たとえば,連携サーバから配信されたメッセージを連携モジュールを介して受け取った地図ペインビューアで表示対象となるオブジェクトのレベルが路線および橋のレベルの場合,受け取ったメッセージを,路線および橋の階層構造のレベルに置換する。すなわち,「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1,インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID2」に置換する。そして,当該地図ペインビューアは,地図ペインで表示する地図上の橋梁ID1(α橋),橋梁ID2(β橋)に対応する橋が表示できるフレームにズームやパンなどを行い,α橋,β橋にピンを立てるなどのマークを付する処理を実行する。
【0085】
連携サーバから配信されたメッセージを連携モジュールを介して受け取った路線図ペインビューアで表示対象となるオブジェクトのレベルが路線および橋のレベルの場合,上記地図ペインビューアと同様に受け取ったメッセージを置換し,路線図ペインで表示する路線図上の橋梁ID1(α橋),橋梁ID2(β橋)に対応する各橋が表示できるフレームにズームやパンなどを行い,α橋,β橋にピンを立てるなどのマークを付する処理を実行する。
【0086】
また橋梁諸元ペインビューアで表示対象となるオブジェクトのレベルが橋のレベルの場合,上記地図ペインビューアと同様に受け取ったメッセージを橋のレベルのレベルに置換し,橋梁ID1(α橋),橋梁ID2(β橋)の橋梁の諸元の情報をサーバ側システム2におけるウェブアプリケーションに問い合わせ,橋梁ID1(α橋),橋梁ID2(β橋)の各橋の諸元情報を取得し,それを橋梁諸元ペインで表示する。なお,橋梁諸元ペインでは一つの橋の諸元の情報のみを表示すると設定されていた場合,あらかじめ定められた優先順位に基づいて一つの橋を特定し,サーバ側システム2におけるウェブアプリケーションから諸元の情報を取得してもよい。たとえば複数の橋があった場合に,先頭の橋を優先すると定められていた場合には,橋梁諸元ペインビューアは,「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1」と置換し,橋梁ID1(α橋)の諸元情報をサーバ側システム2のウェブアプリケーションに問い合わせて取得し,橋梁諸元ペインで表示をする。
【0087】
さらに図面ペインビューアで表示対象となるオブジェクトのレベルが部材と変状のレベルの場合,「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1/床版ID1/変状ID1,インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1/床版ID1/変状ID2,インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID2/橋脚ID1/void/変状ID3」はそのまま置換せずに,図面ペインビューアは,図面を記憶するウェブアプリケーションから上記メッセージに基づいて,上記変状ID1乃至変状ID3の存在する部材(橋梁の径間,橋梁の橋脚)の図面情報を取得し,図面ペインで表示をする。なお,橋梁諸元ペインと同様に一つの図面の表示のみを行うことが設定されている場合,あらかじめ定められた優先順位に基づいて一つの部材を特定し,サーバ側システム2におけるウェブアプリケーションからその部材の図面の情報を取得し,図面ペインで表示をしてもよい。この場合,図面ペインビューアは,「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1」に置換し,当該図面ペインにおいて,同一の部材「径間ID1」の図面を表示して,変状ID1,変状ID2の変状の箇所をハイライト表示する。
【0088】
変状詳細ペインビューアで表示対象となるオブジェクトのレベルが変状のレベルの場合,メッセージはそのままとして,変状を記憶するウェブアプリケーションに問い合わせ,変状ID1乃至変状ID3の画像情報,詳細情報などを取得し,変状詳細ペインで表示を行う。なお,図面ペインと同様に一つの変状の表示のみを行うことが設定されている場合,あらかじめ定められた優先順位に基づいて一つの変状を特定し,サーバ側システム2におけるウェブアプリケーションから変状の画像情報,詳細情報を取得し,変状詳細ペインで表示をしてもよい。この場合,変状詳細ペインビューアは,「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1/床版ID1/変状ID1」に置換し,ウェブアプリケーションから変状ID1の変状の画像情報,詳細情報を取得して,当該変状詳細ペインにおいて,変状ID1の画像情報,詳細情報を表示する。
【0089】
以上のような処理でレスポンス処理を実行できる。
【0090】
このように,ある操作が行われたユーザ側システム3のペインビューアから,そのペインビューアで表示するオブジェクトの階層構造のレベルに応じた,階層化されたメッセージが連携モジュールを介してサーバ側システム2の連携サーバに送られ,連携サーバでは連携先となるペインビューアを特定する。そして特定したペインビューアが対応する連携モジュールに対して,連携サーバは当該メッセージをブロードキャスト配信する。連携モジュールを介して配信を受けた連携先のペインビューアは,自らが管理するレベルに応じてメッセージを置換し,ペインビューアごとに設定された処理内容に基づいて,そのメッセージに対応する処理を実行する。
【0091】
これによって,ペインビューアで表示するペイン同士の連携が可能となる。
【0092】
なお,上述のようにペインに対する操作は,検索要求などのほか,外部入力によって表示が更新される場合がある。たとえば,現場担当者からメッセージが届き,それをチャットのペインに表示する,定期的に構造物の状態をセンシングしているセンサーからのデータをペインに表示する場合などである。これについても,ペインビューアは,表示する内容を連携モジュールを介して連携サーバに送ることで,連携先となるペインでの表示を可能とせしめる。
【0093】
この場合にペインビューアが送るメッセージとしては,たとえば「Input device=●●,Sender=●●,Message=”●●”」などのような外部入力先の特定情報,ペイン識別情報,表示する情報の内容などを含むメッセージを生成し,送ることとなる。なお,上述の●には文字や数字,記号などのほか,文字列,数字列,記号列など適宜の情報が入る。
【実施例2】
【0094】
上述の実施態様においては,ペインビューアである端末側表示処理部31が連携モジュールである端末側通信処理部32を介してサーバ側システム2に階層構造化したメッセージを送る場合を説明したが,階層構造のすべてを送らずに,階層構造における一部の情報のみをノーティファイ処理において送り,サーバ側システム2の連携処理部21が,それに基づいて,メッセージを階層構造化して生成した上でブロードキャスト処理を実行するように構成をすることもできる。
【0095】
すなわち,実施例1のペインビューア(端末側表示処理部31)では,そのペインビューアが自らが処理対象とする階層構造のレベルを管理しているので,その階層構造のレベルに適したメッセージを連携モジュール(端末側通信処理部32)を介してサーバ側システム2に送っている。しかし,この場合,すべてのペインに階層構造を管理させるとプログラムモジュール間の依存性が高くなり,プログラムの独立性が低くなってしまう。そのため,ペインビューアから送るメッセージは階層構造のすべてを含むメッセージではなく,自らの階層構造のレベルのオブジェクトの識別情報を含むメッセージを送るように構成してもよい。
【0096】
たとえば,実施例1においては,「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1/床版ID1/変状ID1」と階層構造のすべてのレベルを含むメッセージを送っていた。しかし,「変状ID1」を送るように構成できれば,ペインビューアとなる端末側表示処理部31のプログラムモジュール間の依存性を低くし,プログラムの独立性を高め,実装する際には有利となる。
【0097】
そこで本実施態様では,階層構造のすべてのレベルを含むメッセージを送らずともよい場合を説明する。本実施態様における情報連携システム1の全体の概念の一例を
図9に示す。また,
図10に,本実施態様における,階層構造化したメッセージの生成の概念の一例を示す。
【0098】
本実施態様における情報連携システム1のサーバ側システム2では,さらに,メッセージ処理部214と階層構造情報記憶部25とを有する。
【0099】
メッセージ処理部214は,ユーザ側システム3から階層構造のすべてを含まないメッセージを受け取った場合,そのメッセージを,後述する階層構造情報記憶部25を参照し,階層構造化する。
【0100】
階層構造情報記憶部25は,本発明の情報連携システム1で処理対象とするオブジェクトについて,そのオブジェクトの識別情報を階層構造が特定できる形態で記憶している。
【0101】
図11に階層構造情報記憶部25の概念図の一例を模式的に示す。
図11では,階層構造が7レベルに分類されている場合であって,階層レベル1が「インフラ種別ID」,階層レベル2がそのインフラ種別IDを管理する「事務所」,階層レベル3がその事務所で管理する「路線」,階層レベル4がその路線における「構造物」,階層レベル5がその構造物における「構造物詳細1」(構造物における大きな管理対象),階層レベル6が構造物詳細1における「構造物詳細2」(階層レベル5の構造物詳細をさらに細分化した管理対象),階層レベル7が構造物詳細2における「構造物詳細3」(階層レベル6の構造物詳細をさらに細分化した管理対象)である場合を示している。階層構造は任意にレベルが設定可能であり,各階層をどのような管理対象の括りで特定するかも任意に設定可能である。
【0102】
そして階層構造情報記憶部25では,オブジェクトの識別情報として,階層レベル1には「インフラ種別ID」を,階層レベル2には「事務所ID」を,階層レベル3には「路線ID」を,階層レベル4には構造物を識別する「橋梁ID」,「トンネルID」,「ガードレールID」などを,階層レベル5のうち,構造物が「橋梁」の場合には「径間ID」,「橋脚ID」などを,階層レベル6のうち,構造物詳細1が「径間」の場合には「床版ID」,「鉄骨ID」などを,階層レベル7のうち,構造物詳細2が「床版」の場合には「変状ID」などを,割り当てている。
【0103】
上述の実施例1の場合と同様に,すべての階層構造を含むメッセージとして,「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1/床版ID1/変状ID1,インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1/床版ID1/変状ID2,インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID2/橋脚ID1/void/変状ID3」である場合を用いて説明する。なお,階層構造情報記憶部25には,上記階層構造にしたがったオブジェクトの識別情報が記憶されているとする。
【0104】
階層構造におけるオブジェクトの識別情報の一意性には,上述のように,情報連携システム1のすべてで一意の場合と,その階層構造において一意の場合の2通りの場合がある。
【0105】
まず前者の場合,ユーザ側システム3におけるペインビューア(端末側表示処理部31)は,「変状ID1」,「変状ID2」,「変状ID3」をオブジェクトの識別情報として含むメッセージを連携モジュール(端末側通信処理部32)を介して,サーバ側システム2に送る。
【0106】
サーバ側システム2の連携サーバ(連携処理部21)の配信処理部213で上記メッセージを受け付けると,すべての階層構造が含まれていないメッセージであるので,メッセージ処理部214に渡す。この際に,配信処理部213は,階層構造のレベルを判定する,あるいはメッセージにすべての階層構造を含んでいないことを示すフラグ(このフラグはペインビューアがメッセージを送る際に付する)を判定するなどによって,すべての階層構造を含むメッセージであるかを判定すればよい。
【0107】
配信処理部213から「変状ID1」,「変状ID2」,「変状ID3」のメッセージを受け取ったメッセージ処理部214は,階層構造情報記憶部25を参照し,当該「変状ID1」,「変状ID2」,「変状ID3」と合致する識別情報を特定し,その上位の階層構造を抽出し,階層構造化したメッセージを生成する。
【0108】
たとえば「変状ID1」であれば,「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1/床版ID1/変状ID1」として階層構造化したメッセージを生成する。同様に「変状ID2」であれば「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1/床版ID1/変状ID2」,「変状ID3」であれば「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID2/橋脚ID1/void/変状ID3」として階層構造化したメッセージを生成する。
【0109】
このように階層構造化して生成したメッセージを,メッセージ処理部214は配信処理部3に渡し,配信処理部213は実施例1と同様にブロードキャスト処理を実行する。
【0110】
また,階層構造におけるオブジェクトの識別情報の一意性が,その階層構造において一意の場合には,以下のような処理を実行する。
【0111】
この場合,ユーザ側システム3におけるペインビューア(端末側表示処理部31)は,「”変状ID”=変状ID1,”変状ID”=変状ID2,”変状ID”=変状ID3」のメッセージを連携モジュール(端末側通信処理部32)を介して,サーバ側システム2に送る。すなわち,オブジェクトの識別情報のほか,それがどの階層構造におけるオブジェクトの識別情報であるのか,階層レベルを特定する情報を含むメッセージを送ることとなる。
【0112】
サーバ側システム2の連携サーバ(連携処理部21)の配信処理部213で上記メッセージを受け付けると,すべての階層構造が含まれていないメッセージであるので,メッセージ処理部214に渡す。この際に,配信処理部213は,階層構造のレベルを判定する,あるいはメッセージにすべての階層構造を含んでいないことを示すフラグ(このフラグはペインビューアがメッセージを送る際に付する)を判定するなどによって,すべての階層構造を含むメッセージであるかを判定すればよい。
【0113】
配信処理部213から「”変状ID”=変状ID1,”変状ID”=変状ID2,”変状ID”=変状ID3」のメッセージを受け取ったメッセージ処理部214は,階層構造情報記憶部25を参照し,各識別情報が「変状ID」に関するものであること,すなわち,まず,階層レベル7の識別情報であることを特定する。そして,つぎに,特定した階層レベルにおける「変状ID1」,「変状ID2」,「変状ID3」と合致する識別情報を特定し,その上位の階層構造を抽出することで,階層構造化したメッセージを生成する。
【0114】
たとえば「”変状ID”=変状ID1」であれば,「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1/床版ID1/変状ID1」として階層構造化したメッセージを生成する。同様に「”変状ID”=変状ID2」であれば「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID1/径間ID1/床版ID1/変状ID2」,「,”変状ID”=変状ID3」であれば「インフラ種別ID1/事務所ID1/路線ID1/橋梁ID2/橋脚ID1/void/変状ID3」として階層構造化したメッセージを生成する。
【0115】
このように階層構造化して生成したメッセージを,メッセージ処理部214は配信処理部3に渡し,配信処理部213は実施例1と同様にブロードキャスト処理を実行する。
【0116】
以上のような処理を実行することで,ユーザ側システム3がサーバ側システム2にメッセージを送る際に,すべての階層構造を含むメッセージを送らなくてもするように構成することができる。
【実施例3】
【0117】
ユーザ側システム3を起動しているユーザ端末の表示装置72で表示するペインの配置は,たとえば
図4に示すように大型ディスプレイ装置であったり,現場担当者が利用するタブレット型コンピュータの場合など,さまざまな表示装置72のサイズや解像度がある。その場合,その表示装置72のサイズや解像度に合わせて,各ペインの配置は変更するが,たとえばタブレット型コンピュータの場合,
図12に示すように,タブ方式を用いる場合もある。なお,タブ方式とは,見出し部分の選択により,複数の画面を切り替えて使用する方式をいう。
【0118】
タブ方式を用いた場合,すべてのペインが表示されているわけではないが,タブが選択されておらず,現在は見えていないペインについても,ペインモジュールは対応する連携モジュールをロードしている。そして,対象選択変更などのメッセージをサーバ側システム2から受け取るが,ペインビューアはその表示するメッセージを記憶し,そのタイミングでは表示の更新は行わないように構成するとよい。ただし,表示更新のメッセージを受け取った際,ユーザが当該タブを選択するまで,タブ名部分を明滅させるなどで,変更して表示させることで,ユーザが表示内容の更新に気づかずにいることを避けることができる。タブ名部分の表示変更以外に,表示内容の更新などの通知を行うなど,さまざまな方法による通知を行うことができる。
【0119】
そして,当該ペインビューアの対応するペインのタブが選択されて表示が行われる場合に,当該ペインビューアは,前記記憶したメッセージを置換し,そのペインビューアで定められた処理,たとえばメッセージに基づいてウェブアプリケーションに問い合わせを行い,該当する情報のペインでの表示処理などを行う。
【0120】
これによって,処理能力の高くないタブレット型コンピュータでユーザ側システム3が実現される場合でも,負荷が少なくペインでの表示処理を実現することができる。
【実施例4】
【0121】
ユーザ側システム3で複数のペインが表示されている場合,サーバ側システム2からメッセージのブロードキャスト配信を受けると,複数のペインがレスポンス処理を実行することで,システムの反応速度が低下することがある。そのため,ユーザ側システム3で表示するほかのペインの再表示を抑制することで,その反応速度の低下を防止できる。そのため,本実施例においては,表示に時間がかかるペインの再表示を抑制する処理,全体の再表示を抑制し,操作中のペインのみがレスポンス処理を行うようにする処理を行う場合を説明する。
【0122】
まず前者の処理については,再表示を抑制したいペインをあらかじめ指定しておき,その指定を受けたペインビューアは,サーバ側システム2からメッセージを受け付けたとしても,レスポンス処理を保留する。そして,レスポンス処理の保留を解除する指示を受け付けることで,レスポンス処理を実行する。
【0123】
また後者の処理については,連携サーバがすべてのペインに対するブロードキャスト配信を行うブロードキャスト処理を保留する。そして,ブロードキャスト処理の保留を解除する指示を受け付けることで,ブロードキャスト処理を実行する。
【実施例5】
【0124】
本発明の別の実施態様として,複数のペインをまたいでAND検索の指定を行える場合を説明する。この場合の情報連携システム1の全体の概念の一例を
図13に示す。本実施態様では,たとえば,橋梁諸元ペインビューアで表示するオブジェクトとして橋梁を選択し直し,そのペインビューアでは選択した橋梁での再表示を行わずに,変状詳細ビューアで変状レベルを限定して(たとえば,現在表示中の「レベルB」という表示の選択操作でレベルを限定する),一度に,特定橋梁の特定変状レベルに関わる情報を複数のペインで表示させる場合がある。
【0125】
この場合,ユーザ側システム3においては,AND検索条件開始,終了を明示的あるいは黙示的に指定するユーザインターフェイスを実現する検索条件処理部33を備える。
【0126】
検索条件処理部33を起動する所定の操作を受け付けると,ペインのペインビューア(端末側表示処理部31)で検索条件の入力を受け付けたとしても,連携モジュール(端末側通信処理部32)がその検索条件に基づいてサーバ側システム2のウェブアプリケーション(アプリケーション処理部23)に対して問い合わせを行わず,一時的にその検索条件を検索条件処理部33が記憶する。そして,検索条件の入力の終了の操作を受け付けるまで,ほかのペインのペインビューア(端末側表示処理部31)で受け付けた検索条件も,AND条件による検索条件として検索条件処理部33が一時的に記憶をする。そして,検索条件処理部33で所定の検索条件の入力の終了操作を受け付けると,最後に検索条件を受け付けたペインのペインビューア(端末側表示処理部31)に,記憶した検索条件を検索条件処理部33が渡し,そのペインビューアは,対応する連携モジュールを介して,AND検索として,サーバ側システム2のウェブアプリケーション(アプリケーション処理部23)に問い合わせを実行し,検索結果を受け付ける。受け付けた検索結果については,実施例1と同様に,ノーティファイ処理を行うことで,ほかのペインの表示にも反映をさせる。なお,検索条件処理部33で記憶した検索条件を渡してウェブアプリケーションに問い合わせを実行するペインビューアは,最後に検索条件を受け付けたペインビューアに限定されず,検索条件を受け付けたペインビューア,または検索条件を受け付けていないペインビューアであってもよい。
【0127】
たとえば,ユーザが異なるペインに亘るAND検索を実行したい場合,所定の操作を行うことで,検索条件処理部33を起動させる。検索条件処理部33が起動後,ユーザが橋梁諸元ペインで橋梁名を指定する入力を行うと,橋梁諸元ペインビューアでその入力を受け付ける。そして入力された橋梁名を検索条件として検索条件処理部33で一時記憶する。この際に,橋梁諸元ペインビューアは,サーバ側システム2のウェブアプリケーションには問い合わせは行わない。
【0128】
そして,つぎに,ユーザが変状詳細ペインで変状のレベルを指定する入力を行うと,変状詳細ペインビューアでその入力を受け付ける。そして入力された変状のレベルを検索条件として検索条件処理部33で一時記憶する。この際にも,変状詳細ペインビューアは,サーバ側システム2のウェブアプリケーションには問い合わせを行わない。
【0129】
そして,ユーザが検索条件の入力終了操作として,ペインの虫眼鏡アイコン(検索条件の入力終了を意味するアイコン)を選択すると,その選択を検索条件処理部33で受け付けて,検索条件処理部33が変状詳細ペインビューアに,検索条件として「橋梁名」と「変状のレベル」とを渡し,変状詳細ペインビューアの連携モジュールが,その各検索条件をAND条件としてウェブアプリケーションに問い合わせを行う。
【0130】
ウェブアプリケーションからの問い合わせ結果を受け付けた変状詳細ペインビューアの連携モジュールは,その問い合わせ結果を変状詳細ペインビューアに渡し,変状詳細ペインビューアは,変状詳細ペインに問い合わせ結果を表示させる。また,変状詳細ペインビューアは,ノーティファイ処理を実行し,ほかのペインビューアにもその表示を反映させる。
【0131】
以上のような処理を検索条件処理部33で実行することで,それぞれ独立しているペインおよびペインビューアについて,AND条件で検索を実行することが可能となる。
【実施例6】
【0132】
本発明の情報連携システム1を用いることによって,ペイン同士が連携して情報を適宜,表示させることで,ユーザによる操作を減らすことができる。しかし,ほかのユーザによる操作などによって,予期していない表示が行われ,操作上の戸惑いや混乱が生じる可能性もある。そこで,本実施態様の情報連携システム1では,いまどのような処理を行っているかを表示するシステムメッセージペインを備え,それを表示装置72で表示させる場合である。
【0133】
システムメッセージペインとは,連携サーバから受け取ったメッセージに基づいて,「複数の変状が選択されました。」,「α橋の情報を表示します。」と表示したり,「路線/橋梁/部材/変状」などの階層構造のレベルのうち,今どのレベルについて特定されているのかを表示するペインである。したがって,システムメッセージペインのペインビューアは,同一のユーザ側システム3で起動しているほかのペインビューアでのメッセージや,そのペインビューアにおけるメッセージの置換,実行する処理などを監視する。そして監視した,ほかのペインビューアにおける表示情報を,自らのペイン(システムメッセージペイン)において表示する制御を行う。
【実施例7】
【0134】
さらに本発明の情報連携システム1において,サーバ側システム2の連携サーバで受け取ったメッセージをすべて所定のログサーバで記憶しておいてもよい。この場合,連携サーバの配信処理部213で受け付けたメッセージを所定のログ記憶部24をログサーバとしてメッセージの記憶に用いる。本実施態様の情報連携システム1の全体の概念の一例を
図14に示す。
【0135】
ログサーバにおけるメッセージの記憶によって,本発明の情報連携システム1におけるすべての履歴を一括して蓄積できる。そしてログサーバに記憶したメッセージを逐次再現することで,過去のユーザ側システム3のペインでの表示を再現することもできる。
【実施例8】
【0136】
本発明の情報連携システム1は,上述では道路や鉄道などの構造物の維持管理の場合に適用することを説明したが,管理対象を階層構造化して管理しているものであればほかの分野にも適用できる。たとえば電力インフラや通信インフラ,上下水道,プラント,航空宇宙インフラ,交通ネットワークインフラなどの維持管理にも適用可能である。
【0137】
なお,実施例1乃至実施例8における実施態様をそれぞれ組み合わせた情報連携システム1を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の情報連携システム1を用いることによって,一つの表示装置72(モニター)で,さまざまな管理対象に関する情報を連動させながら表示を行うことが可能となり,管理対象の管理が容易となる。
【0139】
また,各拠点で異なるサイズや解像度の表示装置を有するコンピュータを用いていたとしても,同一の情報を共有することが可能となる。
【符号の説明】
【0140】
1:情報連携システム
2:サーバ側システム
3:ユーザ側システム
21:連携処理部
22:端末表示制御処理部
23:アプリケーション処理部
24:ログ記憶部
25:階層構造情報記憶部
31:端末側表示処理部
32:端末側通信処理部
33:検索条件処理部
70:演算装置
71:記憶装置
72:表示装置
73:入力装置
74:通信装置
211:連携管理部
212:連携情報記憶部
213:配信処理部
214:メッセージ処理部