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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】研磨装置およびキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/013 20120101AFI20221006BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20221006BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20221006BHJP
   B24B 49/14 20060101ALI20221006BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221006BHJP
   G01B 7/06 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B24B37/013
B24B49/04 Z
B24B49/10
B24B49/14
H01L21/304 622S
G01B7/06 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018133604
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020011314
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】中村 顕
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009861(JP,A)
【文献】特表2017-506438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/013
B24B 49/04
B24B 49/10
B24B 49/14
H01L 21/304
G01B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨面を有し回転可能な研磨テーブルと、
研磨対象の基板を前記研磨面に押圧して前記基板上の導電膜を研磨可能なトップリングと、
前記研磨テーブルに設置された渦電流センサと、
前記渦電流センサの出力に基づいて前記導電膜の膜厚を監視可能なモニタリング装置とを備え、
前記渦電流センサの出力はインピーダンス成分を含み、
前記モニタリング装置は、前記インピーダンス成分から膜厚情報を求め、前記膜厚情報と前記膜厚との間の非線形な関係を表す対応情報を用いて、前記膜厚情報から前記膜厚を求めることが可能であり、
前記膜厚情報は、2つの直交座標軸を有する座標系の各軸に、前記インピーダンス成分の抵抗成分とリアクタンス成分をそれぞれ対応させたときに、前記インピーダンス成分に対応する前記座標系上の点と所定の基準点とを結ぶ直線と所定の直線とのなす角度であるインピーダンス角度の正接の逆数であることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記対応情報は、前記膜厚が前記逆数の2次関数であることを表す情報を含むことを特徴とする請求項1記載の研磨装置。
【請求項3】
前記対応情報は、前記膜厚が前記逆数の指数関数であることを表す情報を含むことを特徴とする請求項1記載の研磨装置。
【請求項4】
前記研磨装置は、研磨中の前記基板の温度を直接または間接に測定可能な温度センサと、
求められた前記膜厚を、測定された前記温度を用いて補正可能な温度補正部とを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項5】
研磨対象の基板を研磨テーブルの研磨面に押圧して前記基板上の導電膜を研磨するときに導電膜の膜厚を監視するために、前記研磨テーブルに設置される第1の渦電流センサのキャリブレーション方法において、
少なくとも3枚の基板を用意する工程であって、少なくとも3枚の前記基板は、第1の膜厚を有する第1の基板、第2の膜厚を有する第2の基板、第3の膜厚を有する第3の基板であり、前記第1の膜厚と、前記第2の膜厚と、前記第3の膜厚は互いに異なる工程と、
前記第1、第2、第3の基板のそれぞれについて、前記第1の渦電流センサによって前記第1、第2、第3の基板を計測して、前記第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第1、第2、第3の膜厚情報を求める工程と、
少なくとも前記第1、第2、第3の膜厚と、少なくとも前記第1、第2、第3の膜厚情報から、前記第1、第2、第3の膜厚と、対応する前記第1、第2、第3の膜厚情報との間の非線形な関係を表す対応情報を求める工程とを有することを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項6】
前記導電膜の膜厚を監視するために第2の渦電流センサを前記研磨テーブルに設置する工程と、
前記第1、第2、第3の基板のそれぞれについて、前記第2の渦電流センサによって前記第1、第2、第3の基板を計測 して、前記第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第4、第5、第6の膜厚情報を求める工程と、
前記第1、第2、第3の基板のそれぞれについて、前記第2の渦電流センサが計測する前記第1、第2、第3の基板の位置において前記第1の渦電流センサによって前記第1、
第2、第3の基板を計測して、第7、第8、第9の膜厚情報を求める工程と、
前記第1の渦電流センサについて求めた前記対応情報を用いて、前記第7、第8、第9の膜厚情報から、第4、第5、第6の膜厚を算出する工程と、
少なくとも前記第4、第5、第6の膜厚と、少なくとも前記第4、第5、第6の膜厚情報から、前記第4、第5、第6の膜厚と、対応する前記第4、第5、第6の膜厚情報との間の関係を表す前記第2の渦電流センサの膜厚情報と膜厚との間の非線形な関係を表す対応情報を求める工程とを有することを特徴とする請求項5記載のキャリブレーション方法。
【請求項7】
研磨対象の基板を研磨テーブルの研磨面に押圧して前記基板上の導電膜を研磨するときに導電膜の膜厚を監視するために、前記研磨テーブルに設置される第1の渦電流センサのキャリブレーション方法において、
少なくとも1枚の第1の膜厚を有する第1の基板と、少なくとも1枚の第2の膜厚を有する第2の基板とを用意する工程であって、前記第1の膜厚と、前記第2の膜厚は互いに異なる工程と、
前記第1、第2の基板のそれぞれについて、前記第1の渦電流センサによって前記第1、第2の基板を計測して、前記第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第1、第2の膜厚情報を求める工程と、
前記第2の基板を研磨して、第3の膜厚を有する前記第2の基板を得た後に、前記第1の渦電流センサによって前記第2の基板を計測して、前記第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第3の膜厚情報を求める工程と、
研磨後の前記第2の基板の膜厚を膜厚測定機によって測定して、前記第3の膜厚を求める工程と、
少なくとも前記第1、第2、第3の膜厚と、少なくとも前記第1、第2、第3の膜厚情報から、前記第1、第2、第3の膜厚と、対応する前記第1、第2、第3の膜厚情報との間の非線形な関係を表す対応情報を求める工程とを有することを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項8】
前記導電膜の膜厚を監視するために第2の渦電流センサを前記研磨テーブルに設置する工程と、
前記第1の基板、および研磨前の前記第2の基板のそれぞれについて、前記第2の渦電流センサによって前記第1、第2の基板を計測して、前記第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第4、第5の膜厚情報を求める工程と、
研磨後の前記第2の基板について、前記第2の渦電流センサによって前記第2の基板を計測して、前記第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第6の膜厚情報を求める工程と、
前記第1の基板と、第2、第3の膜厚を有する前記第2の基板のそれぞれについて、前記第2の渦電流センサが前記第1、第2の基板を計測する前記第1、第2の基板の位置において前記第1の渦電流センサによって前記第1、第2の基板を計測して、第7、第8、第9の膜厚情報を求める工程と、
前記第1の渦電流センサについて求めた前記対応情報を用いて、前記第7、第8、第9の膜厚情報から、第4、第5、第6の膜厚を算出する工程と、
少なくとも前記第4、第5、第6の膜厚と、少なくとも前記第4、第5、第6の膜厚情報から、前記第4、第5、第6の膜厚と、対応する前記第4、第5、第6の膜厚情報との間の関係を表す前記第2の渦電流センサの膜厚情報と膜厚との間の非線形な関係を表す対応情報を求める工程とを有することを特徴とする請求項7記載のキャリブレーション方法。
【請求項9】
研磨対象の基板を研磨テーブルの研磨面に押圧して前記基板上の導電膜を研磨するときに導電膜の膜厚を監視するために、前記研磨テーブルに設置される第1の渦電流センサの
キャリブレーション方法において、
少なくとも1枚の第1の膜厚を有する基板を用意する工程と、
前記基板について、前記第1の渦電流センサによって前記基板を計測して、前記第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第1の膜厚情報を求める工程と、
前記基板を研磨して、第2の膜厚を有する前記基板を得た後に、前記第1の渦電流センサによって前記基板を計測して、前記第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第2の膜厚情報を求める工程と、
前記第2の膜厚を有する前記基板の膜厚を膜厚測定機によって測定して、前記第2の膜厚を求める工程と、
前記第2の膜厚を有する前記基板を研磨して、第3の膜厚を有する前記基板を得た後に、前記第1の渦電流センサによって前記基板を計測して、前記第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第3の膜厚情報を求める工程と、
前記第3の膜厚を有する前記基板の膜厚を前記膜厚測定機によって測定して、前記第3の膜厚を求める工程と、
少なくとも前記第1、第2、第3の膜厚と、少なくとも前記第1、第2、第3の膜厚情報から、前記第1、第2、第3の膜厚と、対応する前記第1、第2、第3の膜厚情報との間の非線形な関係を表す対応情報を求める工程とを有することを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項10】
前記導電膜の膜厚を監視するために第2の渦電流センサを前記研磨テーブルに設置する工程と、
前記第1の膜厚を有する前記基板について、前記第2の渦電流センサによって前記基板を計測して、前記第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第4の膜厚情報を求める工程と、
前記第2の膜厚を有する前記基板について、前記第2の渦電流センサによって前記基板を計測して、前記第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第5の膜厚情報を求める工程と、
前記第3の膜厚を有する前記基板について、前記第2の渦電流センサによって前記基板を計測して、前記第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第6の膜厚情報を求める工程と、
前記第1、第2、第3の膜厚を有する前記基板のそれぞれについて、前記第2の渦電流センサが前記基板を計測する前記基板の位置において前記第1の渦電流センサによって前記基板を計測して、第7、第8、第9の膜厚情報を求める工程と、
前記第1の渦電流センサについて求めた前記対応情報を用いて、前記第7、第8、第9の膜厚情報から、第4、第5、第6の膜厚を算出する工程と、
少なくとも前記第4、第5、第6の膜厚と、少なくとも前記第4、第5、第6の膜厚情報から、前記第4、第5、第6の膜厚と、対応する前記第4、第5、第6の膜厚情報との間の関係を表す前記第2の渦電流センサの膜厚情報と膜厚との間の非線形な関係を表す対応情報を求める工程とを有することを特徴とする請求項9記載のキャリブレーション方法。
【請求項11】
前記第1の膜厚は実質的に0mmであることを特徴とする請求項5ないし10のいずれか1項に記載のキャリブレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置およびキャリブレーション方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化・高密度化に伴い、回路の配線がますます微細化し、多層配線の層数も増加している。回路の微細化を図りながら多層配線を実現するためには、半導体デバイス表面を精度よく平坦化処理する必要がある。
【0003】
半導体デバイス表面の平坦化技術として、化学的機械研磨(CMP(Chemical
Mechanical Polishing))が知られている。CMPを行うための研磨装置は、研磨パッドが貼り付けられた研磨テーブルと、研磨対象物(例えば半導体ウェハなどの基板、又は基板の表面に形成された各種の膜)を保持するためのトップリングとを備えている。研磨装置は、研磨テーブルを回転させながら、トップリングに保持された研磨対象物を研磨パッドに押圧することによって研磨対象物を研磨する。
【0004】
研磨装置は、研磨対象物の膜厚に基づいて研磨工程の終点検知を行うために、導電膜の膜厚を監視するモニタリング装置を備えている。モニタリング装置は、研磨対象物の膜厚を検出する膜厚センサを備えている。膜厚センサは代表的には、渦電流センサが挙げられる。
【0005】
渦電流センサは、研磨テーブルに形成された穴等に配置され、研磨テーブルの回転とともに回転しながら、研磨対象物と対向している時に膜厚を検出する。渦電流センサは、導電膜などの研磨対象物に渦電流を誘起させ、研磨対象物に誘起された渦電流によって発生する磁界の変化から研磨対象物の厚さの変化を検出する。
【0006】
特開2005-121616号公報は、渦電流センサに関する技術を開示する。この渦電流センサは、導電膜の近傍に配置されるセンサコイルと、センサコイルに交流信号を供給して導電膜に渦電流を形成する信号源と、導電膜に形成された渦電流をセンサコイルから見たインピーダンスとして検出する検出回路とを備える。そして、インピーダンスの抵抗成分とリアクタンス成分とを直交座標軸上に表示する。インピーダンスの座標と、指定された中心点の座標とを結ぶ直線の成す角度から導電膜の膜厚を検出する。
【0007】
角度から膜厚を求める方法は、公報の図13に示すような角度と膜厚の関係を事前に測定しておき、この関係を利用して、角度を膜厚に直接変換する。具体的には、導電膜の膜質に応じた中心点(基準点)P、およびその導電膜の多数の膜厚に関する多数の仰角θを求めて、メモリ内に記憶する。仰角θごとに1本の予備測定直線が得られる。多数の仰角θに応じて、多数の予備測定直線が得られる。この後に、基板研磨装置の稼動時には、その測定毎のインピーダンスの抵抗成分とリアクタンス成分の出力値とメモリ内の中心点Pとを結んだ本番測定直線rnの仰角θと、予備測定直線に基づいて導電膜の膜厚を演算する。
【0008】
特開2005-121616号公報では、仰角θに基づいて導電膜の膜厚を演算するために必要な基準点P及び多数の予備測定直線を事前に多数の測定により求めている。すなわち種々の膜厚、および複数種類の研磨対象物と渦電流センサとの間の距離についてインピーダンスを事前に測定している。事前の測定回数が多いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-121616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一形態は、このような問題点を解消すべくなされたもので、その目的は、事前に必要な膜厚の測定回数を従来よりも減らすことができる研磨装置、及び、キャリブレーション方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、形態1では、研磨面を有し回転可能な研磨テーブルと、研磨対象の基板を前記研磨面に押圧して前記基板上の導電膜を研磨可能なトップリングと、前記研磨テーブルに設置された渦電流センサと、前記渦電流センサの出力に基づいて前記導電膜の膜厚を監視可能なモニタリング装置とを備え、前記渦電流センサの出力はインピーダンス成分を含み、前記モニタリング装置は、前記インピーダンス成分から膜厚情報を求め、前記膜厚情報と前記膜厚との間の非線形な関係を表す対応情報を用いて、前記膜厚情報から前記膜厚を求めることが可能であり、前記膜厚情報は、2つの直交座標軸を有する座標系の各軸に、前記インピーダンス成分の抵抗成分とリアクタンス成分をそれぞれ対応させたときに、前記インピーダンス成分に対応する前記座標系上の点と所定の基準点とを結ぶ直線と所定の直線とのなす角度であるインピーダンス角度の正接の逆数であることを特徴とする研磨装置という構成を採っている。ここで、インピーダンス成分とは、インピーダンスの抵抗成分およびまたはリアクタンス成分を意味する。
【0012】
本実施形態では、膜厚情報と、膜厚との間の非線形な関係を表す対応情報を用いて、膜厚情報から膜厚を求めているため、事前に必要な膜厚の測定回数を従来よりも減らすことができる。特開2005-121616号公報では、仰角θに基づいて導電膜の膜厚を演算するために、多数の仰角θについて、事前測定(すなわちキャリブレーション)が必要である。一方、本実施形態では、非線形な関係(例えば、2次関数等の非線形関数)を用いているため、少なくとも3個の異なる膜厚でキャリブレーションを行えば、非線形関数を決定することができるため、キャリブレーションが従来よりも容易である。
【0013】
膜厚情報と膜厚との間の非線形な関係を表す対応情報とは、膜厚と膜厚情報との間の関係が1次関数以外の関数で表される対応情報、もしくは1次関数以外の関数に相当する対応情報(膜厚情報と膜厚との間の関係を表すテーブル等)を意味する。非線形な関係を表す対応情報の一例は、非線形関数である。
【0014】
なお、本実施形態では、非線形な関係(例えば、2次関数等の非線形関数)を用いているため、銅薄膜などの抵抗率が比較的小さい薄膜についても、線形関数を用いる場合よりも精度よく膜厚を算出できる。この点については後述する。インピーダンス角度の正接の逆数については、インピーダンス角度の正接の逆数と等価なものも含む。例えば、インピーダンス角度をαとしたときに、インピーダンス角度の正接の逆数は、1/tanαであり、以下の量も1/tanαと等価である。
cotα=cosα/sinα (余接関数(コタンジェント、cotangent))
また、インピーダンス角度αを他の量で表わすことができるとき、例えば、α=f(β)であるとき、1/tan(f(β))は、インピーダンス角度の正接の逆数1/tanαと等価である。ここでf(β)は、βの関数である。βの関数は、表またはテーブル等の形式でもよい。なお、角度αを求めずに、直接、角度αの正接又は正接の逆数を求めてもよい。
【0015】
形態2では、前記対応情報は、前記膜厚が前記逆数の2次関数であることを表す情報を
含むことを特徴とする請求項1記載の研磨装置という構成を採っている。
【0016】
形態3では、前記対応情報は、前記膜厚が前記逆数の指数関数であることを表す情報を含むことを特徴とする請求項1記載の研磨装置という構成を採っている。
【0017】
形態4では、前記研磨装置は、研磨中の前記基板の温度を直接または間接に測定可能な温度センサと、求められた前記膜厚を、測定された前記温度を用いて補正可能な温度補正部とを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の研磨装置という構成を採っている。
【0018】
本実施形態では、温度補正を行っている。金属膜では研磨により温度が上昇すると電気伝導率が低下する。対応情報は研磨前に、事前に求められている。対応情報を求める時の金属膜の温度は、その後に研磨を行い対応情報を利用して膜厚を求めるときの金属膜の温度とは異なる。そのため対応情報を利用した膜厚の測定時の温度は、対応情報を事前に求めたときの温度よりも高い場合や低い場合がある。温度が高い場合は、実際の膜厚よりも薄く測定されてしまう。膜厚の測定値を、基板の温度を直接または間接に測定可能な温度センサにより得られた温度を用いて補正することで、より正確な膜厚値を算出できる。
【0019】
形態5では、研磨対象の基板を研磨テーブルの研磨面に押圧して前記基板上の導電膜を研磨するときに導電膜の膜厚を監視するために、前記研磨テーブルに設置される第1の渦電流センサのキャリブレーション方法において、少なくとも3枚の基板を用意する工程であって、少なくとも3枚の前記基板は、第1の膜厚を有する第1の基板、第2の膜厚を有する第2の基板、第3の膜厚を有する第3の基板であり、前記第1の膜厚と、前記第2の膜厚と、前記第3の膜厚は互いに異なる工程と、前記第1、第2、第3の基板のそれぞれについて、前記第1の渦電流センサによって前記第1、第2、第3の基板を計測して、前記第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第1、第2、第3の膜厚情報を求める工程と、少なくとも前記第1、第2、第3の膜厚と、少なくとも前記第1、第2、第3の膜厚情報から、前記第1、第2、第3の膜厚と、対応する前記第1、第2、第3の膜厚情報との間の非線形な関係を表す対応情報を求める工程とを有することを特徴とするキャリブレーション方法という構成を採っている。本実施形態によれば、膜厚と膜厚情報との間の非線形な関係を表す対応情報を、3枚の基板による最少3点の膜厚測定点から求めることができる。なお本実施形態において、4枚以上の基板から4個以上の膜厚情報を得て、膜厚と膜厚情報との間の非線形な関係を表す対応情報を求めてもよい。第1、第2、第3の3個の膜厚情報から対応情報求める場合よりも、対応情報の精度を高めることができる。
【0020】
形態6では、前記導電膜の膜厚を監視するために第2の渦電流センサを前記研磨テーブルに設置する工程と、前記第1、第2、第3の基板のそれぞれについて、前記第2の渦電流センサによって前記第1、第2、第3の基板を計測して、前記第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第4、第5、第6の膜厚情報を求める工程と、前記第1、第2、第3の基板のそれぞれについて、前記第2の渦電流センサが計測する前記第1、第2、第3の基板の位置において前記第1の渦電流センサによって前記第1、第2、第3の基板を計測して、第7、第8、第9の膜厚情報を求める工程と、前記第1の渦電流センサについて求めた前記対応情報を用いて、前記第7、第8、第9の膜厚情報から、第4、第5、第6の膜厚を算出する工程と、少なくとも前記第4、第5、第6の膜厚と、少なくとも前記第4、第5、第6の膜厚情報から、前記第4、第5、第6の膜厚と、対応する前記第4、第5、第6の膜厚情報との間の関係を表す前記第2の渦電流センサの膜厚情報と膜厚との間の非線形な関係を表す対応情報を求める工程とを有することを特徴とする請求項5記載のキャリブレーション方法という構成を採っている。
【0021】
形態7では、研磨対象の基板を研磨テーブルの研磨面に押圧して前記基板上の導電膜を研磨するときに導電膜の膜厚を監視するために、前記研磨テーブルに設置される第1の渦電流センサのキャリブレーション方法において、少なくとも1枚の第1の膜厚を有する第1の基板と、少なくとも1枚の第2の膜厚を有する第2の基板とを用意する工程であって、前記第1の膜厚と、前記第2の膜厚は互いに異なる工程と、前記第1、第2の基板のそれぞれについて、前記第1の渦電流センサによって前記第1、第2の基板を計測して、前記第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第1、第2の膜厚情報を求める工程と、前記第2の基板を研磨して、第3の膜厚を有する前記第2の基板を得た後に、前記第1の渦電流センサによって前記第2の基板を計測して、前記第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第3の膜厚情報を求める工程と、研磨後の前記第2の基板の膜厚を膜厚測定機によって測定して、前記第3の膜厚を求める工程と、少なくとも前記第1、第2、第3の膜厚と、少なくとも前記第1、第2、第3の膜厚情報から、前記第1、第2、第3の膜厚と、対応する前記第1、第2、第3の膜厚情報との間の非線形な関係を表す対応情報を求める工程とを有することを特徴とするキャリブレーション方法という構成を採っている。
【0022】
本実施形態において、2枚以上の第1の膜厚を有する第1の基板、すなわちキャリブレーションにおいて2枚以上の研磨しない基板を用意して、第1の膜厚情報を複数求めてもよい。このときに、第1の膜厚は、複数の第1の基板間で異なることが好ましい。また、2枚以上の第2の膜厚を有する第2の基板、すなわちキャリブレーションにおいて2枚以上の研磨する基板を用意して、第2、第3の膜厚情報を複数求めてもよい。このときに、第2、第3の膜厚は、複数の第2の基板間で異なることが好ましい。第1、第2、第3の膜厚情報が各1個である3個の膜厚情報から対応情報求める場合よりも、第1、第2、第3の膜厚情報の各々が複数あることによって対応情報の精度を高めることができる。
【0023】
なお、第2の膜厚を有する第2の基板については、第3の膜厚を有する第2の基板を得た後に、さらに、少なくとも1回以上の研磨を行って、第4、第5、・・・の膜厚を有する第2の基板を得て、第4、第5、・・・の膜厚情報を得てもよい。非線形な関係を表す対応情報を求めるためには、最小で、第1、第2、第3の膜厚と、対応する第1、第2、第3の膜厚情報が必要であり、第4、第5、・・・の膜厚情報を得ることにより、対応情報の精度を高めることができる。第1の基板と第2の基板から合わせて、3個以上の膜厚と、対応する3個以上の膜厚情報が得られれば良く、第1の基板と第2の基板のどちらか、または両方を研磨するかしないか、また研磨する場合の研磨工程の回数等は、任意に組み合わせてよい。
【0024】
形態8では、前記導電膜の膜厚を監視するために第2の渦電流センサを前記研磨テーブルに設置する工程と、前記第1の基板、および研磨前の前記第2の基板のそれぞれについて、前記第2の渦電流センサによって前記第1、第2の基板を計測して、前記第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第4、第5の膜厚情報を求める工程と、研磨後の前記第2の基板について、前記第2の渦電流センサによって前記第2の基板を計測して、前記第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第6の膜厚情報を求める工程と、前記第1の基板と、第2、第3の膜厚を有する前記第2の基板のそれぞれについて、前記第2の渦電流センサが前記第1、第2の基板を計測する前記第1、第2の基板の位置において前記第1の渦電流センサによって前記第1、第2の基板を計測して、第7、第8、第9の膜厚情報を求める工程と、前記第1の渦電流センサについて求めた前記対応情報を用いて、前記第7、第8、第9の膜厚情報から、第4、第5、第6の膜厚を算出する工程と、少なくとも前記第4、第5、第6の膜厚と、少なくとも前記第4、第5、第6の膜厚情報から、前記第4、第5、第6の膜厚と、対応する前記第4、第5、第6の膜厚情報との間の関係を表す前記第2の渦電流センサの膜厚情報と膜厚との間の非線形な関係を表す対応情報を求める工程とを有することを特徴とする請求項7記載のキャリブレーション
方法という構成を採っている。
【0025】
形態9では、研磨対象の基板を研磨テーブルの研磨面に押圧して前記基板上の導電膜を研磨するときに導電膜の膜厚を監視するために、前記研磨テーブルに設置される第1の渦電流センサのキャリブレーション方法において、少なくとも1枚の第1の膜厚を有する基板を用意する工程と、前記基板について、前記第1の渦電流センサによって前記基板を計測して、前記第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第1の膜厚情報を求める工程と、前記基板を研磨して、第2の膜厚を有する前記基板を得た後に、前記第1の渦電流センサによって前記基板を計測して、前記第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第2の膜厚情報を求める工程と、前記第2の膜厚を有する前記基板の膜厚を膜厚測定機によって測定して、前記第2の膜厚を求める工程と、前記第2の膜厚を有する前記基板を研磨して、第3の膜厚を有する前記基板を得た後に、前記第1の渦電流センサによって前記基板を計測して、前記第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第3の膜厚情報を求める工程と、前記第3の膜厚を有する前記基板の膜厚を前記膜厚測定機によって測定して、前記第3の膜厚を求める工程と、少なくとも前記第1、第2、第3の膜厚と、少なくとも前記第1、第2、第3の膜厚情報から、前記第1、第2、第3の膜厚と、対応する前記第1、第2、第3の膜厚情報との間の非線形な関係を表す対応情報を求める工程とを有することを特徴とするキャリブレーション方法という構成を採っている。
【0026】
本実施形態において、2枚以上の第1の膜厚を有する第1の基板を用意して、第1、第2、第3の膜厚情報の各々を複数求めてもよい。第1、第2、第3の膜厚情報が各1個である3個の膜厚情報から対応情報を求める場合よりも、第1、第2、第3の膜厚情報の各々が複数あることによって対応情報の精度を高めることができる。また、第3の膜厚を有する前記基板を得た後に、さらに、少なくとも1回以上の研磨を行って、第4、第5、・・・の膜厚を有する基板を得て、第4、第5、・・・の膜厚情報を得てもよい。
【0027】
形態10では、前記導電膜の膜厚を監視するために第2の渦電流センサを前記研磨テーブルに設置する工程と、前記第1の膜厚を有する前記基板について、前記第2の渦電流センサによって前記基板を計測して、前記第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第4の膜厚情報を求める工程と、前記第2の膜厚を有する前記基板について、前記第2の渦電流センサによって前記基板を計測して、前記第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第5の膜厚情報を求める工程と、前記第3の膜厚を有する前記基板について、前記第2の渦電流センサによって前記基板を計測して、前記第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第6の膜厚情報を求める工程と、前記第1、第2、第3の膜厚を有する前記基板のそれぞれについて、前記第2の渦電流センサが前記基板を計測する前記基板の位置において前記第1の渦電流センサによって前記基板を計測して、第7、第8、第9の膜厚情報を求める工程と、前記第1の渦電流センサについて求めた前記対応情報を用いて、前記第7、第8、第9の膜厚情報から、第4、第5、第6の膜厚を算出する工程と、少なくとも前記第4、第5、第6の膜厚と、少なくとも前記第4、第5、第6の膜厚情報から、前記第4、第5、第6の膜厚と、対応する前記第4、第5、第6の膜厚情報との間の関係を表す前記第2の渦電流センサの膜厚情報と膜厚との間の非線形な関係を表す対応情報を求める工程とを有することを特徴とする請求項9記載のキャリブレーション方法という構成を採っている。
【0028】
形態11では、
前記第1の膜厚は実質的に0mmであることを特徴とする請求項5ないし10のいずれか1項に記載のキャリブレーション方法という構成を採っている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の全体構成を示す平面図である。
図2図1は、研磨装置の全体構成を模式的に示す図である。
図3A図3Aは、洗浄ユニットの平面図である。
図3B図3Bは、洗浄ユニットの側面図である。
図4図4は、インピーダンスを測定可能な渦電流センサの構成例を示すブロック図である。
図5図5は、図4のブロック図の等価回路図である。
図6】渦電流センサのセンサコイルの構成例を示す斜視図である。
図7図6のセンサコイルの接続例を示す回路図である。
図8】センサコイル出力の同期検波回路を示すブロック図である。
図9】導電膜の厚さ変化に伴う、インピーダンス座標面における抵抗成分(X)とリアクタンス成分(Y)の円軌跡を示すグラフである。
図10図9のグラフ図形を反時計回りに90度回転させ、さらに平行移動させたグラフである。
図11】使用する研磨パッドの厚さに相当する距離に応じて、座標X,Yの円弧軌跡が変化する様子を示したグラフである。
図12】研磨パッドの厚さの違いにかかわらず、角度αは同じであることを説明する図である。
図13図13は、1/tanα(=Ta)と膜厚tとの非線形関係を示す図である。
図14図14は、1/tanα(=Ta)と膜厚tとの非線形関係を示す図である。
図15図15は、基板を3枚使用するキャリブレーション方法のフローチャートを示す。
図16図16は、基板を2枚使用するキャリブレーション方法のフローチャートを示す。
図17図17は、基板を1枚使用するキャリブレーション方法のフローチャートを示す。
図18図18は、AIを用いた第1研磨ユニットの制御を示すブロック図である。
図19図19は、AIを用いた第1研磨ユニットの制御を示すブロック図である。
図20図20は、AIを用いた第1研磨ユニットの制御を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同一または相当する部材には同一符号を付して重複した説明を省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
<基板処理装置>
図1は、基板処理装置の平面図である。図1に示すように、基板処理装置1000は、ロード/アンロードユニット200と、研磨ユニット300と、洗浄ユニット400と、を備える。また、基板処理装置1000は、ロード/アンロードユニット200、研磨ユニット300、及び、洗浄ユニット400、の各種動作を制御するための制御ユニット500を備える。以下、ロード/アンロードユニット200、研磨ユニット300、及び、洗浄ユニット400、について説明する。
【0031】
<ロード/アンロードユニット>
ロード/アンロードユニット200は、研磨及び洗浄などの処理が行われる前の基板を研磨ユニット300へ渡すとともに、研磨及び洗浄などの処理が行われた後の基板を洗浄
ユニット400から受け取るためのユニットである。ロード/アンロードユニット200は、複数(本実施形態では4台)のフロントロード部220を備える。フロントロード部220にはそれぞれ、基板をストックするためのカセット222が搭載される。
【0032】
ロード/アンロードユニット200は、筐体100の内部に設置されたレール230と、レール230上に配置された複数(本実施形態では2台)の搬送ロボット240と、を備える。搬送ロボット240は、研磨及び洗浄などの処理が行われる前の基板をカセット222から取り出して研磨ユニット300へ渡す。また、搬送ロボット240は、研磨及び洗浄などの処理が行われた後の基板を洗浄ユニット400から受け取ってカセット222へ戻す。
【0033】
<研磨ユニット>
研磨ユニット300は、基板の研磨を行うためのユニットである。研磨ユニット300は、第1研磨ユニット300A、第2研磨ユニット300B、第3研磨ユニット300C、及び、第4研磨ユニット300D、を備える。第1研磨ユニット300A、第2研磨ユニット300B、第3研磨ユニット300C、及び、第4研磨ユニット300D、は、互いに同一の構成を有する。したがって、以下、第1研磨ユニット300Aについてのみ説明する。
【0034】
第1研磨ユニット300A(研磨装置)は、研磨テーブル320Aと、トップリング330Aと、を備える。研磨テーブル320Aは、図示していない駆動源によって回転駆動される。研磨テーブル320Aには、研磨パッド310Aが貼り付けられる。トップリング330Aは、基板を保持して研磨パッド310Aに押圧する。トップリング330Aは、図示していない駆動源によって回転駆動される。基板は、トップリング330Aに保持されて研磨パッド310Aに押圧されることによって研磨される。
【0035】
次に、基板を搬送するための搬送機構について説明する。搬送機構は、リフタ370と、第1リニアトランスポータ372と、スイングトランスポータ374と、第2リニアトランスポータ376と、仮置き台378と、を備える。
【0036】
リフタ370は、搬送ロボット240から基板を受け取る。第1リニアトランスポータ372は、リフタ370から受け取った基板を、第1搬送位置TP1、第2搬送位置TP2、第3搬送位置TP3、及び、第4搬送位置TP4、の間で搬送する。第1研磨ユニット300A及び第2研磨ユニット300Bは、第1リニアトランスポータ372から基板を受け取って研磨する。第1研磨ユニット300A及び第2研磨ユニット300Bは、研磨した基板を第1リニアトランスポータ372へ渡す。
【0037】
スイングトランスポータ374は、第1リニアトランスポータ372と第2リニアトランスポータ376との間で基板の受け渡しを行う。第2リニアトランスポータ376は、スイングトランスポータ374から受け取った基板を、第5搬送位置TP5、第6搬送位置TP6、及び、第7搬送位置TP7、の間で搬送する。第3研磨ユニット300C及び第4研磨ユニット300Dは、第2リニアトランスポータ372から基板を受け取って研磨する。第3研磨ユニット300C及び第4研磨ユニット300Dは、研磨した基板を第2リニアトランスポータ372へ渡す。研磨ユニット300によって研磨処理が行われた基板は、スイングトランスポータ374によって仮置き台378へ置かれる。
【0038】
<洗浄ユニット>
洗浄ユニット400は、研磨ユニット300によって研磨処理が行われた基板の洗浄処理及び乾燥処理を行うためのユニットである。洗浄ユニット400は、第1洗浄室410と、第1搬送室420と、第2洗浄室430と、第2搬送室440と、乾燥室450と、
を備える。
【0039】
仮置き台378へ置かれた基板は、第1搬送室420を介して第1洗浄室410又は第2洗浄室430へ搬送される。基板は、第1洗浄室410又は第2洗浄室430において洗浄処理される。第1洗浄室410又は第2洗浄室430において洗浄処理された基板は、第2搬送室440を介して乾燥室450へ搬送される。基板は、乾燥室450において乾燥処理される。乾燥処理された基板は、搬送ロボット240によって乾燥室450から取り出されてカセット222へ戻される。
【0040】
<第1研磨ユニットの詳細構成>
次に、第1研磨ユニット300Aの詳細について説明する。図2は、第1研磨ユニット300Aの斜視図である。第1研磨ユニット300Aは、研磨パッド310Aに研磨液又はドレッシング液を供給するための研磨液供給ノズル340Aを備える。研磨液は、例えば、スラリである。ドレッシング液は、例えば、純水である。また、第1研磨ユニット300Aは、研磨パッド310Aのコンディショニングを行うためのドレッサ350Aを備える。また、第1研磨ユニット300Aは、液体、又は、液体と気体との混合流体、を研磨パッド310Aに向けて噴射するためのアトマイザ360Aを備える。液体は、例えば、純水である。気体は、例えば、窒素ガスである。
【0041】
第1研磨ユニット300Aは、研磨対象物(例えば、半導体ウェハなどの基板、又は基板の表面に形成された各種の膜)102を研磨するための研磨部150を有する。研磨部150は、研磨対象物102を研磨するための研磨パッド310Aを上面に取付け可能な研磨テーブル320Aと、研磨テーブル320Aを回転駆動する第1の電動モータ112と、研磨対象物102を保持可能なトップリング330Aと、トップリング330Aを回転駆動する第2の電動モータ118とを備える。
【0042】
また、研磨部150は、研磨パッド310Aの上面に研磨材を含む研磨砥液を供給する研磨液供給ノズル340Aを備える。第1研磨ユニット300Aは、研磨部150に関する各種制御信号を出力する研磨装置制御部140を備える。
【0043】
第1研磨ユニット300Aは、研磨テーブル320Aに形成された穴に配置され、研磨テーブル320Aの回転に伴い研磨対象物102の膜厚を研磨面104に沿って検出する渦電流センサ210を備える。
【0044】
第1研磨ユニット300Aは、研磨対象物102を研磨するときは、研磨砥粒を含む研磨スラリを研磨液供給ノズル340Aから研磨パッド310Aの上面に供給し、第1の電動モータ112によって研磨テーブル320Aを回転駆動する。そして、第1研磨ユニット300Aは、トップリング330Aを、研磨テーブル320Aの回転軸とは偏心した回転軸回りで回転させた状態で、トップリング330Aに保持された研磨対象物102を研磨パッド310Aに押圧する。これにより、研磨対象物102は研磨スラリを保持した研磨パッド310Aによって研磨され、平坦化される。
【0045】
受信部232は、ロータリージョイント・コネクタ160,170を介して渦電流センサ210と接続されている。受信部232は、渦電流センサ210から出力された信号を受信して、インピーダンスとして出力する。後述する温度センサ56は、ロータリージョイント・コネクタ160,170を介して研磨装置制御部140と接続されている。
【0046】
図2に示すように、膜厚測定装置231は、受信部232から出力されたインピーダンスに所定の信号処理を行って終点検出器241へ出力する。
【0047】
終点検出器241は、膜厚測定装置231から出力される信号に基づいて研磨対象物102の膜厚の変化を監視する。膜厚測定装置231と終点検出器241はモニタリング装置を構成する。終点検出器241は、第1研磨ユニット300Aに関する各種制御を行う研磨装置制御部140と接続されている。終点検出器241は、研磨対象物102の研磨終点を検出すると、その旨を示す信号を研磨装置制御部140へ出力する。研磨装置制御部140は、終点検出器241から研磨終点を示す信号を受信すると、第1研磨ユニット300Aによる研磨を終了させる。研磨装置制御部140は、研磨中は、膜厚に基づいて、研磨対象物102の押圧力を制御する。
【0048】
本実施形態では、渦電流センサ210の出力はインピーダンス成分を含む。モニタリング装置は、インピーダンス成分から膜厚情報を求め、膜厚情報と、膜厚との間の非線形な関係を表す対応情報を用いて、膜厚情報から膜厚を求める。膜厚情報は、2つの直交座標軸を有する座標系の各軸に、インピーダンス成分の抵抗成分とリアクタンス成分をそれぞれ対応させたときに、インピーダンス成分に対応する座標系上の点と所定の基準点とを結ぶ直線と所定の直線とのなす角度αであるインピーダンス角度の正接の逆数である。
【0049】
ここで、本実施形態における対応情報を求めるためのキャリブレーションの概略を述べる。渦電流センサ210により膜厚を測定するときは、渦電流センサ210の出力から得られるデータと膜厚との対応関係を事前に求めておく必要がある。本実施形態では、渦電流センサ210の出力から角度αを求める。角度αの定義および求め方の詳細は、後述する。
【0050】
角度αから算出される1/tanαと、膜厚tは、後述するように、膜厚が厚い時は比例する。すなわち、1/tanα=Taとしたときに、膜厚t=A_th×Taという関係がある。ここで、A_thは、比例係数である。膜厚の実際の測定において、渦電流センサ210の測定値からTaを得ることができる。
【0051】
従って、膜厚が厚い時は、キャリブレーションにおいては、膜厚t=A_th×Taという渦電流センサ210の出力と膜厚との対応関係における比例係数A_thを求めればよい。比例係数A_thが求まれば、キャリブレーション後の本測定において、渦電流センサ210の出力から角度αを求めると、膜厚が算出できる。膜厚が薄い時は、渦電流センサ210の出力と膜厚との対応関係は非線形な関係である。なお、渦電流センサ210の出力から得られる渦電流センサ210の出力は、後述するインピーダンス(X,Y)、又は、上述の角度α、tanα、1/tanα、Ta等を含んでもよい。
【0052】
図4は、第1研磨ユニット300Aが備える渦電流センサ210を示す。渦電流センサは、そのセンサコイルから導電膜側を見たインピーダンスが変化し、このインピーダンス変化から膜厚を検出する。渦電流センサ210は、検出対象の研磨対象物102の近傍にセンサコイルを配置し、そのコイルに交流信号源124が接続されている。ここで、検出対象の研磨対象物102は、例えば半導体ウェハW上に形成された厚さが0~2μm程度の銅めっき膜(Au,Cr,Wなどのメタル材料の蒸着膜でもよい)である。センサコイルは、検出対象の導電膜に対して例えば0.5~5mm程度の近傍に配置される。同期検波回路126は、センサコイル側から見た検出対象の研磨対象物102を含むインピーダンスZ(その成分がX,Yである。)を検出する(詳細は後述する)。
【0053】
図5に示す等価回路において、交流信号源124の発振周波数は一定であり、研磨対象物102の膜厚が変化すると、交流信号源124からセンサコイル側を見たインピーダンスZが変化する。すなわち、図5に示す等価回路において、研磨対象物102に流れる渦電流Iは、研磨対象物102の等価的な抵抗Rおよび自己インダクタンスLによって決まる。膜厚が変化すると渦電流Iが変化し、センサコイル側との相互インダクタン
スMを介して、交流信号源124側からみたインピーダンスZの変化として捉えられる。ここで、Lはセンサコイルの自己インダクタンス分であり、Rはセンサコイルの抵抗分である。
【0054】
以下に、渦電流センサについて具体的に説明する。交流信号源124は、1~50MHz程度の固定周波数の発振器であり、例えば水晶発振器が用いられる。そして、交流信号源124により供給される交流電圧により、センサコイルに電流Iが流れる。研磨対象物102の近傍に配置されたコイルに電流が流れることで、この磁束が研磨対象物102と鎖交することで、その間に相互インダクタンスMが形成され、研磨対象物102中に渦電流Iが流れる。ここでRはセンサコイルを含む一次側の等価抵抗であり、Lは同様にセンサコイルを含む一次側の自己インダクタンスである。研磨対象物102側では、Rは渦電流損に相当する等価抵抗であり、Lはその自己インダクタンスである。交流信号源124の端子128,130からセンサコイル側を見たインピーダンスZは、研磨対象物102中に形成される渦電流損の大きさによって変化する。
【0055】
図6は、本実施形態の渦電流センサにおけるセンサコイルの構成例を示す。センサコイルは、導電膜に渦電流を形成するためのコイルと、導電膜の渦電流を検出するためのコイルとを分離したもので、ボビン311に巻回された3層のコイルにより構成されている。ここで中央の励磁コイル312は、交流信号源124に接続される励磁コイルである。この励磁コイル312は、交流信号源124より供給される電圧の形成する磁界により、近傍に配置される半導体ウェハW上の研磨対象物102に渦電流を形成する。ボビン311の上側(導電膜側)には、検出コイル313が配置され、導電膜に形成される渦電流により発生する磁界を検出する。そして、励磁コイル312の検出コイル313と反対側にはバランスコイル314が配置されている。
【0056】
図7は、各コイルの接続例を示す。検出コイル313とバランスコイル314とは、上述したように逆相の直列回路を構成し、その両端は可変抵抗316を含む抵抗ブリッジ回路317に接続されている。コイル312は交流信号源203に接続され、交番磁束を生成することで、近傍に配置される導電膜である研磨対象物102に渦電流を形成する。可変抵抗VR1,VR2の抵抗値を調整することで、コイル313,314からなる直列回路の出力電圧が、導電膜が存在しないときにはゼロとなるように調整可能としている。
【0057】
図8は、交流信号源203側からセンサコイル202側を見たインピーダンスZの計測回路例を示す。この図8に示すインピーダンスZの計測回路においては、膜厚の変化に伴うインピーダンス平面座標値(X,Y)、(すなわち、リアクタンス成分(X)、抵抗成分(Y))、インピーダンス(Z = X + iY)、および位相出力(θ = tan-1R/X)を取り出すことができる。従って、これらの信号出力を用いることで、例えばインピーダンスの各種成分の大きさにより膜厚を計測するなど、より多面的な処理の進行状況の検出が可能となる。
【0058】
上述したように、検出対象の研磨対象物102が成膜された半導体ウェハW近傍に配置されたセンサコイルに、交流信号を供給する信号源203は、水晶発振器からなる固定周波数の発振器である。交流信号源203は、例えば、1~50MHzの固定周波数の電圧を供給する。信号源203で形成される交流電圧は、バンドパスフィルタ302を介して励磁コイル312に供給される。センサコイルの端子128,130で検出された信号は、高周波アンプ303および位相シフト回路304を経て、cos同期検波回路305およびsin同期検波回路306からなる同期検波部に入力される。同期検波部により検出信号のcos成分(X成分)とsin成分(Y成分)とが取り出される。ここで、信号源203で形成される発振信号から、位相シフト回路304により、信号源203の同相成分(0゜)と直交成分(90゜)の2つの信号が形成される。これらの信号は、それぞれ
cos同期検波回路305とsin同期検波回路306とに導入され、上述の同期検波が行われる。
【0059】
同期検波された信号は、ローパスフィルタ307,308により、信号成分以上の不要な例えば5KHz以上の高周波成分が除去される。同期検波された信号は、cos同期検波出力であるX成分出力と、sin同期検波出力であるY成分出力である。また、ベクトル演算回路309により、X成分出力とY成分出力とから、インピーダンスZの大きさ、(X+ Y1/2、が得られる。また、ベクトル演算回路(θ処理回路)310により、同様にX成分出力とY成分出力とから、位相出力(θ = tan-1Y/X)、が得られる。ここで、これらフィルタは、センサ信号の雑音成分を除去するために設けられ、各種フィルタに応じたカットオフ周波数が設定されている。
【0060】
次に、図9により、研磨対象物102と渦電流センサ210との間の距離が異なるときに得られたインピーダンスに対応するインピーダンス平面座標系上の点(座標値(X,Y))は、異なる円を形成することを説明する。異なる円のそれぞれの中心は、同一の直線(第2の直線)上にある。異なる円に対して共通な1つの点がある。これを第1の点と呼ぶ。これらについて説明する。
【0061】
図5に示すセンサ側回路と導電膜側回路には、それぞれ次の式が成り立つ。
+ LdI/dt + MdI/dt = E (1)
+ LdI/dt + MdI/dt = 0 (2)
ここで、Mは相互インダクタンスであり、Rは、センサ側回路の等価抵抗であり、Lは、センサ側回路の自己インダクタンスである。Rは渦電流が誘起される導電膜の等価抵抗であり、Lは渦電流が流れる導電膜の自己インダクタンスである。
【0062】
ここで、I= Ajωt(正弦波)とおくと、上記式(1),(2)は次のように表される。
(R+ jωL)I + jωMI= E (3)
(R+ jωL)I + jωMI= 0 (4)
これら式(3),(4)から、次の式(5)が導かれる。
= E(R + jωL)/{(R+ jωL)(R + jωL) + ω
= E/{(R + jωL) + ω/(R+ jωL)} (5)
【0063】
したがって,センサ側回路のインピーダンスZは、次の式(6)で表される。
Z = E/I = {R + ω/(R + ω )}
+ jω{L - ω/(R + ω )} (6)
ここで、Zの実部(インピーダンス成分の抵抗成分)、虚部(インピーダンス成分の誘導リアクタンス成分)をそれぞれX,Yとおくと、上記式(6)は、次のようになる。
Z = X + jωY (7)
ここで、Rx = ω/(R + ω )とすると、(7)式は、
X + jωY = [R+ RRx] + Jω[L- LRx]となる。
従って、X = R + RRx Y = ω[L- LRx]となる。
これをR,Lについて解くと、
= ω(X - R)M/((ωL- Y) + (X - R) (8)
= ω(ωL - Y)M/((ωL- Y) + (X - R) (9)
図9に示す記号kは結合係数であり、次の関係式(10)が成り立つ。
M = k(L1/2 (10)
これを(9)に適用すると、
(X - R + (Y - ω(1 - (k/2))L= (ωL/2
(11)
これは、円の方程式であり、X、Yが円を形成すること、すなわち、インピーダンスZは円を形成することを示す。
【0064】
渦電流センサ210は、渦電流センサ210のコイルを含む電気回路のインピーダンスの抵抗成分Xおよび誘導リアクタンス成分Yを出力する。これらの抵抗成分Xおよび誘導リアクタンス成分Yは、膜厚を反映した膜厚信号であり、基板上の導電膜の厚さに従って変化する。
【0065】
図9は、導電膜の厚さとともに変化するX,Yを、XY座標系上にプロットすることで描かれるグラフを示す図である。点T∞の座標は、膜厚が無限大であるとき、すなわち、Rが0のときのX,Yである。点T0(第1の点:所定の基準点)の座標は、基板の導電率が無視できるものとすれば、膜厚が0であるとき、すなわち、Rが無限大のときのX,Yである。X,Yの値から位置決めされる点Tn(第2の点)は、導電膜の厚さが減少するに従って、円弧状の軌跡を描きながら点T0に向かって進む。
【0066】
図10は、図9のグラフ図形を反時計回りに90度回転させ、さらに平行移動させたグラフを示す図である。図10に示すように、膜厚が減少するに従って、X,Yの値から位置決めされる点Tnは円弧状の軌跡を描きながら点T0に向かって進む。 結合係数kは、片方のコイルにより発生した磁場が、もう片方のコイルに伝達する割合である。k = 1が最大であり、コイル間の距離が離れると、すなわち研磨パッド310Aが厚くなると、kは小さくなる。
【0067】
渦電流センサ210のコイルと基板Wとの間の距離Gは、これらの間に介在する研磨パッド310Aの厚さに応じて変化する。この結果、図11に示すように、使用する研磨パッド310Aの厚さに相当する距離G(G1~G3)に応じて、座標X,Yの円弧軌跡が変化する。図11から分かるように、コイルと研磨対象物102との間の距離Gにかかわらず、同じ膜厚である座標X,Yを直線(以下、等膜厚直線)という)で結ぶと、その等膜厚直線が交点Pで交差する。点Pが、第1の点T0である。この等膜厚直線rn(n:1,2,3…)は、図11において、第1の点を通る円の直径)Hに対して、導電膜(研磨対象物102)の厚さに応じた角度α(インピーダンス角度)で傾斜する。第1の点を通る円の直径は、距離Gによらず同一である。
【0068】
角度αは、膜厚がゼロであるときのインピーダンスに対応する第1の点(T0)と、膜厚がゼロでないときのインピーダンスに対応する第2の点(Tn)とを結ぶ第1の直線(インピーダンス成分に対応するインピーダンス座標系上の点と所定の基準点とを結ぶ直線)と、第1の点(T0)を通る円の直径(所定の直線)とのなす角の角度である。導電膜の厚さが同じであるとき、研磨パッド310Aの厚さの違いにかかわらず、角度αは同じである。この点について、図12により説明する。所定の直線とは、第1の点(T0)と点T∞とを結ぶ直線でもある。
点Tnの座標(X、Y)を図12に示す角度αを使って表す。図12より、
X = R + ω(k/2)Lsinα (12)
Y = ω(1 - (k/2)L - ω(k/2)Lcoaα (13)
既述の(8)、(9)から、
/L= ω(X - R)/(ωL- Y)
この式に(12)、(13)を代入すると、
/L= ωsin2α/(1 + cos2α) = ωtanα (14)
/Lは、膜厚のみに依存し、また、結合係数kに依存しないため、渦電流センサ210と研磨対象物102との間の距離、すなわち研磨パッド310Aの厚さに依存しない。R/Lは、膜厚のみに依存し、従って、角度αも膜厚のみに依存する。膜厚算出部は、角度αの正接を算出し、(14)の関係を利用して、正接から膜厚を求める。
【0069】
角度αの算出方法及び膜厚の算出方法について説明する。図2の膜厚測定装置231は、研磨対象物の膜厚を測定するために、渦電流センサ210により研磨対象物102に形成可能な渦電流をインピーダンスとして検出するときに、インピーダンスを受信部232から入力される。入力されたインピーダンスから膜厚を求める。膜厚測定装置231は、角算出部234、及び膜厚算出部238を備える。
【0070】
角算出部234は例えば最初に、測定された第1の点T0を含む円上の3個のインピーダンス成分の測定点(異なる膜厚に対応する3点)から、円の中心を求める。角算出部234は第1の点T0と円の中心から、円の中心を通る直径12を求める。角算出部234は、膜厚がゼロであるときのインピーダンスに対応する第1の点T0と、膜厚がゼロでないときのインピーダンスに対応する第2の点Tnとを結ぶ第1の直線10と、第1の点T0を通る円の直径12とのなす角の角度αを算出する。膜厚算出部238は、角度αの正接を算出し、正接から膜厚を求める。
【0071】
次に、正接から膜厚を求める膜厚算出部238について説明する。本実施形態では、正接の逆数と膜厚の関係を利用する。最初に、正接の逆数と膜厚の関係を説明する。
膜厚が厚い場合、正接と、金属膜の抵抗値との間には、既述の(14)の関係、すなわち、
/L= ωtanα (14)
がある。ここでRは、金属膜の抵抗値である。従って、Rとtanαは比例する。さらに、膜厚が厚い時は、Rは膜厚と以下の関係がある。
= ρL/tW (15)
ここで、ρ:抵抗率 L,W:金属膜の長さおよび幅 t:膜厚
(14)、(15)から、膜厚tと角度αは以下の関係にあることがわかる。
∝(1/t)∝ωtanα
すなわち、1/tanα∝t
これより、1/tanαと膜厚tは比例する。膜厚が薄い場合は、(15)が成立しないため、1/tanαと膜厚tとの関係は非線形な関係で表される。非線形な関係で表される場合の膜厚の算出方法を次に説明する。
【0072】
最初に、渦電流センサ210及び受信部232により、インピーダンス座標面における抵抗成分(X)とリアクタンス成分(X)を得る。次に、角算出部234において、既述の方法により、tanαを算出する。1/tanαと膜厚tとの関係は非線形な関係で表される。膜厚算出部238は、下記の非線形な関係を利用して、1/tanαから膜厚tを求める。
【0073】
1/tanα(=Ta)と膜厚tとの間には非線形関数、すなわち
膜厚t=A×Ta^2+B×Ta+C (正接の逆数Taの2次関数)
もしくは
膜厚t=A×(e^(B×Ta)-1)+C (正接の逆数Taの指数関数)
で表される関係がある。
【0074】
ここで、非線形関数とは、逆数Taの1次関数以外の関数を意味する。なお、非線形関数は、上記の逆数Taの2次関数や指数関数に限定されるものではなく、金属膜の厚さ、
種類、状態に応じて選択することができる。例えば、非線形関数は、3次以上の多項式で表される関数、多項式では表されない関数(例えば、無理関数、対数関数等)でもよい。対象とする金属膜のTaと膜厚tとの間に存在する非線形な関係を表す関数であれば、任意の関数を非線形関数として用いることができる。
【0075】
また、非線形関数は、1次以上の多項式で表される関数を複数個接続した折れ線グラフでもよい。さらに非線形関数は、1次以上の多項式で表される関数と、多項式では表されない関数の任意の組み合わせから合成される1次関数以外の関数(例えば、複数の関数を加算、減算、乗算、およびまたは除算した関数等)でもよい。
【0076】
なお、非線形関数の表現方法は上記のように、2次関数の各次数の係数や指数関数等の係数を、記憶手段に記憶しておく方法に限られるものではなく、逆数Taと膜厚tとの対応関係を表やテーブルの形式で記憶してもよい。すなわち、逆数Taと膜厚tとの対応関係は、上記のように関数形式で表現されなくてもよい。なお、非線形関数の情報(係数等)、表、テーブル等は、研磨対象物102の膜厚の本測定の前に行われる事前のキャリブレーションによって求めておく。キャリブレーションについては後述する。
【0077】
図13、14は、1/tanα(=Ta)と膜厚tとの非線形関係の実測した一例を示す図である。横軸は、渦電流センサ210の測定値1/tanα(単位無し)であり、縦軸は、膜厚t(単位は、例えばnm)である。図13においては、Taと膜厚tとの間には、膜厚t=A×Ta^2+B×Ta+Cの関係がある。図14においては、Taと膜厚tとの間には、膜厚t=A×(e^(B×Ta)-1)+Cの関係がある。図13,14においては、A,B,Cという同一の記号を用いているが、図13におけるA,B,Cの値と、図15におけるA,B,Cの値は、通常は異なる。研磨対象物102の膜厚の本測定では、2つの近似式のいずれか、もしくは両方を用いることができる。
【0078】
図13、14では、丸印50は実測値であり、実線52は、近似式A×Ta^2+B×Ta+C、t=A×(e^(B×Ta)-1)+Cでそれぞれ計算した計算値である。図13、14では、実測値は同一であり、同一の実測値を2つの近似式A×Ta^2+B×Ta+C、t=A×(e^(B×Ta)-1)+Cでそれぞれ表現したものである。いずれの近似式も実測値をよい精度で再現している。なお一般的には、2つの異なる近似式A×Ta^2+B×Ta+C、t=A×(e^(B×Ta)-1)+Cで同一の実測値をよい精度で再現できるとは限らない。
【0079】
また、図13、14より実測値は線形関係を満たさないことがわかる。なお、図13、14では、実測値は膜厚が「0」である場合を含むため、Ta=0,膜厚t=0であり、C=0である。一般的には、C=0ではない。
【0080】
2つの近似式A×Ta^2+B×Ta+C、t=A×(e^(B×Ta)-1)+Cにおける各係数は、複数の渦電流センサ210間の個体差が無視できる程度に小さい場合などは、1個の渦電流センサ210について決定した値を、他の渦電流センサ210で使用しても良い。より正確に各係数を決定する場合は、実際に個々の渦電流センサ210についてキャリブレーションを行ってもよい。
【0081】
基板W上の導電膜を研磨するときに導電膜の膜厚を監視するために、研磨テーブル320Aに設置される渦電流センサ210のキャリブレーション方法について、次に説明する。キャリブレーション方法としては、例えば、基板Wを3枚使用する方法、2枚使用する方法、1枚使用する方法がある。最初に、基板Wを3枚使用する方法について説明する。
【0082】
図15に、基板Wを3枚使用するキャリブレーション方法のフローチャートを示す。用意する3枚の基板Wは、膜厚tが3枚の中で最小である基板W、中間である基板W、最大
である基板Wである。渦電流センサ210の測定値を求める時は、金属膜が削れないようにスラリを用いずに、水を用いて、渦電流センサ210を研磨する。その時に渦電流センサ210の出力値から逆数Taを既述のように計算する。
【0083】
また3枚の基板Wの膜厚tを膜厚測定機54によって事前に測定しておく。渦電流センサ210から得られる逆数Taと、膜厚測定機54が測定した膜厚tの関係から、2つの近似式t=A×Ta^2+B×Ta+C、t=A×(e^(B×Ta)-1)+Cの各係数を、最小二乗法等により導き出す。図16のフローチャートにおいて使用する基板Wの膜厚は1例として、膜厚tが最小である基板Wの膜厚tは、0Å、膜厚tが中間である基板Wの膜厚tは、2k~3kÅ、膜厚tが最大である基板Wの膜厚tは、8k~10kÅである。
【0084】
膜厚測定機54は、図1に示すように研磨ユニット300の外部に設けることができる。膜厚測定機54は、内部に設けることもできる。膜厚測定機54としては、膜厚tを測ることができれば、公知の任意の方式の測定機をもちいることができる。例えば、電磁式膜厚計、渦電流式膜厚計、光学式膜厚計、電気抵抗式膜厚計、渦電流位相式膜厚計等である。断面を電子顕微鏡で観察することにより膜厚tを測ることも可能である。
【0085】
上記の手順を図15のフローチャートによって具体的に説明する。ステップ10では、既知の第1の膜厚(最小の膜厚)を有する第1の基板Wと、既知の第2の膜厚(中間の膜厚)を有する第2の基板Wと、既知の第3の膜厚(最大の膜厚)を有する第3の基板Wとを用意する。第1の膜厚と、第2の膜厚と、第3の膜厚は互いに異なる。第1の膜厚と、第2の膜厚と、第3の膜厚は、事前に膜厚測定機54によって測定しておく。第1の膜厚については、膜厚が0であることがわかっている場合は、事前に膜厚測定機54によって測定する必要はない。膜厚が0であることがわかっている場合とは、例えば、成膜工程を行っていないことがわかっている場合である。
【0086】
第1研磨ユニット300Aに、0Å基板(第1の基板W)を設置して、渦電流センサ210で測定を行う。測定結果を既述のように角算出部234と膜厚算出部238で処理して、測定した時のセンサ出力値である逆数Taを膜厚算出部238内に記憶する。膜厚算出部238は、このときの渦電流センサ210の出力から得られる逆数Taが「0」(第1の膜厚情報)となるように、渦電流センサ210の測定回路や膜厚測定装置231を調整する。調整する理由は、測定回路の特性等により、渦電流センサ210の出力から得られる逆数Taが「0」とならない場合があるからである。
【0087】
ステップS10及び以下のステップS14、S16では、事前に膜厚測定した基板Wを、水を用いて、研磨テーブル320Aを回転させて研磨する。これを以下では、「水ポリ」と呼ぶ。「水ポリ」では、水を用いているため、研磨は実際には生じない。「水ポリ」を行う理由は、膜厚が既知である研磨対象物102を用いて、この時の渦電流センサ210の出力を得ることが目的であるため、研磨が行われることは望ましくないからである。
【0088】
ステップS12では、第2の基板W(中間基板)の既知の膜厚(Thickness_mid)、第3の基板W(最大基板)の既知の膜厚(Thickness_Max)の膜厚を膜厚算出部238(システム)に教える。具体的には、例えば、図示しない入力部からユーザが既知の膜厚を入力する。第1研磨ユニット300Aの記憶部に既知の膜厚を事前に記憶しておいてもよい。
【0089】
ステップS14では、第1研磨ユニット300Aに中間基板(第1の基板W)を設置して、渦電流センサ210で測定を行う。測定結果を既述のように角算出部234と膜厚算出部238で処理して、測定した時の渦電流センサ210の出力から得られる逆数Ta(第2の膜厚情報:Ta_mid)を膜厚算出部238内に記憶する。
【0090】
ステップS16では、第1研磨ユニット300Aに最大基板(第1の基板W)を設置して、渦電流センサ210で測定を行う。測定結果を既述のように角算出部234と膜厚算出部238で処理して、測定した時の渦電流センサ210の出力から得られる逆数Ta(第3の膜厚情報:Ta_max)を膜厚算出部238内に記憶する。
【0091】
ステップS18では、膜厚算出部238は、第1、第2、第3の膜厚と、第1、第2、第3の膜厚情報から、第1、第2、第3の膜厚と、対応する第1、第2、第3の膜厚情報との間の非線形な関係を表す対応情報(既述の近似式)を求める。具体的には、図13、または図14において、座標点(0,0)、(Thickness_mid,Ta_mid)、 (Thickness_max,Ta_max)の3点を通る既述の2つの近似式のうちのいずれかまたは両方の係数A、Bを算出する。なお、本実施形態では係数Cは「0」である。
【0092】
なお、第1、第2、第3の膜厚情報は、第1、第2、第3の膜厚について、それぞれの基板W上の同一地点又は異なる地点を複数回測定して得られた複数の第1、第2、第3の膜厚情報を統計処理(平均処理等)して得ることとしてもよい。
【0093】
次に、1つの研磨テーブル320Aに複数の渦電流センサ210を搭載した場合のキャリブレーションについて説明する。この場合、第1の方法として、図15に示すキャリブレーションを複数の渦電流センサ210に対して同時に行う。すなわち同一の3枚の基板Wで各センサ毎にキャリブレーションを同時に実施する方法である。
【0094】
第2の方法として、1つの研磨テーブル320Aに複数の渦電流センサ210を搭載した場合に、同一の3枚の基板Wでキャリブレーションを実施するが、選択された1個以上の渦電流センサ210を基準とし、他の渦電流センサ210のキャリブレーション結果を基準とした渦電流センサ210に合わせる。この場合、センサ間の誤差を補正できる。
【0095】
第2の方法は、1つの研磨テーブル320Aに複数の渦電流センサ210を搭載した場合に、渦電流センサ210間のキャリブレーション誤差を減らすことを目的とする。この方法は、以下の課題を解決することを目的とする。
【0096】
基板Wの中心付近を測定する渦電流センサ210と、基板Wの中心付近ではない場所を測定する渦電流センサ210がある時には、各センサに対応する位置での膜厚を膜厚測定機54で測定する。測定値を膜厚算出部238に入力する必要があり、煩雑である。各センサに対応する位置での膜厚を測定する必要がある理由は以下のとおりである。
【0097】
基板Wの中心付近を測定する渦電流センサ210は、研磨テーブル320Aの1回転ごとに基板Wの中心付近を測定するため、常に同じ膜厚の部分を測定できる。一方、基板Wの中心付近ではない場所を測定する渦電流センサ210は通常、研磨テーブル320Aの1回転ごとに基板Wの異なる部分を測定する。基板Wの位置ごとに膜厚に若干のバラつきがあるため、基板Wの中心付近ではない場所を測定する渦電流センサ210は、キャリブレーションに誤差が生じやすい。すなわち、基板W全体が同じ膜厚であるという前提でキャリブレーションを行うと、実際には異なる膜厚に対して、同じ膜厚であるというキャリブレーション結果が得られる可能性がある。
【0098】
この課題は、異なる研磨テーブル320Aにそれぞれ1個以上の渦電流センサ210を搭載した場合にも生じる可能性がある。第2の方法は、この場合にも渦電流センサ210間のキャリブレーション誤差を減らすことができる。
【0099】
簡単化のために、2個の渦電流センサ210が同一の研磨テーブル320Aに設置され
ている場合について説明する。この場合、基板Wの中心付近を測定する第1の渦電流センサ210が測定する第1、第2、第3の基板の位置と、基板Wの中心付近ではない場所を測定する第2の渦電流センサ210が測定する第1、第2、第3の基板の位置は異なる。
【0100】
本課題を解決するために、基準となる第1の渦電流センサ210については、図15のキャリブレーションを実施する。すなわち第1の渦電流センサ210のキャリブレーション位置での膜厚を膜厚算出部238に入力し、図15のようにキャリブレーションを実施する。キャリブレーション実施中には第1の渦電流センサ210と第2の渦電流センサ210はそれぞれ測定を行い、膜厚算出部238は、各センサについて逆数Taを取得する。
【0101】
その後、基準となる第1の渦電流センサ210ではキャリブレーション計算を実施して、既述の近似式を算出する。第1の渦電流センサ210は、第2の渦電流センサ210の測定位置で測定を行い、膜厚算出部238は、その位置での逆数Taを得る。第2の渦電流センサ210の測定位置で第1の渦電流センサ210が測定することができる理由は、基板Wの中心付近を測定する第1の渦電流センサ210は通常、研磨テーブル320Aが何回転か回転する間に基板W上のほぼ全域を測定することができるからである。
【0102】
次に、膜厚算出部238は、基準となる第1の渦電流センサ210の近似式によって第2の渦電流センサ210の測定位置における膜厚を計算する。このために、膜厚算出部238は、第2の渦電流センサ210の測定位置に関する情報をユーザから得る、もしくは研磨テーブル320Aとトップリング330Aの回転情報から、第2の渦電流センサ210の測定位置を算出する。
【0103】
基準となる第1の渦電流センサ210を利用して計算された膜厚と、第2の渦電流センサ210自身が測定した逆数Taを用いて第2の渦電流センサ210に関する既述の近似式を算出する。
【0104】
なお、上記では、2個のセンサの位置が違うとしたが、2個のセンサの位置がほぼ同じ場合にも第2の方法は適用できる。この場合、2個のセンサの特性が違う場合に、測定される膜厚を精度よく一致させることができる。
【0105】
第2の方法は具体的には以下のように行われる。導電膜の膜厚を監視するために第2の渦電流センサ210を研磨テーブル320Aに設置する。既述の第1、第2、第3の基板のそれぞれについて、第2の渦電流センサ210によって第1、第2、第3の基板を計測して、角算出部234と膜厚算出部238によって、第2の渦電流センサ210の出力のインピーダンス成分から第4、第5、第6の逆数Taを求める。第1、第2、第3の基板のそれぞれについて、第2の渦電流センサ210が計測する第1、第2、第3の基板の位置において第1の渦電流センサ210によって第1、第2、第3の基板を計測して、角算出部234と膜厚算出部238によって、第7、第8、第9の逆数Taを求める。
【0106】
第1の渦電流センサ210について求めた対応情報(近似式)を用いて、膜厚算出部238は、第7、第8、第9の逆数Taから、第4、第5、第6の膜厚を算出する。膜厚算出部238は、第4、第5、第6の膜厚と、第4、第5、第6の逆数Taから、第4、第5、第6の膜厚と、対応する第4、第5、第6の逆数Taとの間の関係を表す第2の渦電流センサ210の逆数Taと膜厚との間の非線形な関係を表す対応情報を求める。
【0107】
次に、基板Wを2枚使用するキャリブレーション方法について説明する。図16に、基板Wを2枚使用する方法のフローチャートを示す。用意する2枚の基板Wは、膜厚tが2枚の中で最小(第1の膜厚、例えば0Å)である基板Wと、最大である膜厚(第2の膜厚
)を有する基板Wである。基板Wを2枚使用することにより、金属膜を有する基板Wを、3枚以上用意する場合よりも、金属膜を作成する手間を低減できる。
【0108】
本図の方法では、膜厚tが最小である基板Wと、最大膜厚の基板Wの膜厚tを膜厚測定機54にて事前に測定しておく。膜厚tが最小である基板Wの膜厚が0である場合は、膜厚測定機54による事前の測定を行わなくてもよい。以下では、膜厚tが最小である基板Wの膜厚は0とする。最大膜厚の基板Wの膜厚を膜厚測定機54にて測定したのちに、最大膜厚の基板Wを0Åまで削り切るのではなく、特定の膜厚(第3の膜厚)において研磨を終了して、図15における膜厚tが3枚の中で中間である基板Wに相当する基板Wを作成する。中間である基板Wを渦電流センサ210で測定して逆数Taを取得する。その後、膜厚測定機54にて膜厚tを測定する。得られたデータから既述の近似式を求めて、キャリブレーションが完了する。
【0109】
膜厚が0Åの基板Wについての渦電流センサ210による逆数Taの取得については、最大膜厚の基板Wについての渦電流センサ210による逆数Taの取得と、独立に実施してもよい。独立に実施とは、「最大膜厚の基板Wについての渦電流センサ210によるTaの取得」とは連続して実施しなくてもよいということである。
【0110】
また、膜厚が0Åの基板Wについての渦電流センサ210による逆数Taの取得は、最大膜厚の基板Wについての渦電流センサ210によるTaの取得の前でも後でもよい。図16では、最大膜厚の基板Wについての渦電流センサ210による逆数Taの取得の前に、ステップS20としておこなっている。
【0111】
なお、最大膜厚の基板Wを0Åまで削り切るのではなく、特定の膜厚において研磨を終了するための研磨の制御は、渦電流センサ210に関して前回のキャリブレーション結果を用いて行っても良い。前回のキャリブレーション結果のデータがない時は、類似の渦電流センサ210に関するデータを流用して研磨の制御を行ってもよい。また、膜厚が0Åの基板Wは、最大膜厚の基板Wとは違う基板Wとしてもよい。
【0112】
上記の手順を図16のフローチャートによって具体的に説明する。ステップ20では、既知の第1の膜厚を有する第1の基板と、既知の第2の膜厚を有する第2の基板とを用意する。第1の膜厚と、第2の膜厚は互いに異なる。
【0113】
ステップS20では、第1研磨ユニット300Aに、0Å基板(第1の基板W)を設置して、「水ポリ」により渦電流センサ210で測定を行う。渦電流センサ210の出力から得られる逆数Ta(第1の膜厚情報)は、膜厚算出部238に蓄積する(ステップS34)。
【0114】
ステップS22では、第2の膜厚を基板処理装置1000の外部に設置した膜厚測定機54によって測定する。得られた膜厚は膜厚算出部238に蓄積する(ステップS34)。具体的には、例えば、図示しない入力部からユーザが(もしくは通信回線を介して自動的に)膜厚算出部238に入力する。ユーザが(もしくは通信回線を介して自動的に)第1研磨ユニット300Aの記憶部に記憶させてもよい。
【0115】
ステップS24では、第1研磨ユニット300Aに、第2の膜厚を有する第2の基板Wを設置して、「水ポリ」により渦電流センサ210で測定を行う。測定結果を既述のように角算出部234と膜厚算出部238で処理して、測定した時のセンサの出力から得られる逆数Ta(第2の膜厚情報:Thickness_Max)を膜厚算出部238内に記憶する(ステップS34)。
【0116】
ステップS26では、スラリを用いて研磨を行う。研磨は例えば、膜厚が第3の膜厚になるまで行って研磨を停止する。研磨の制御は、所定時間研磨する方法、または既述のように、前回のキャリブレーション結果を用いて膜厚を検出する方法でもよい。研磨により、第3の膜厚を有する第3の基板Wを得る。
【0117】
ステップS28では、「水ポリ」により渦電流センサ210で測定を行う。測定結果を既述のように角算出部234と膜厚算出部238で処理して、測定した時のセンサの出力から得られる逆数Ta(第3の膜厚情報:Thickness_mid)を膜厚算出部238内に記憶する(ステップS34)。
【0118】
ステップS30では、第3の膜厚を基板処理装置1000の外部に設置した膜厚測定機54によって測定する。得られた膜厚は膜厚算出部238に蓄積する(ステップS34)。例えば、図示しない入力部からユーザが(もしくは通信回線を介して自動的に)膜厚算出部238に入力する。ユーザが(もしくは通信回線を介して自動的に)第1研磨ユニット300Aの記憶部に記憶させてもよい。
【0119】
ステップS32では、膜厚算出部238は、第1、第2、第3の膜厚と、第1、第2、第3の膜厚情報から、第1、第2、第3の膜厚と、対応する第1、第2、第3の膜厚情報との間の非線形な関係を表す対応情報を求める。具体的には、図14、または図15において、座標点(0,0)、(Thickness_mid,Ta_mid)、 (Thickness_max,Ta_max)の3点を通る既述の2つの近似式のうちのいずれかまたは両方の係数A、Bを算出する。なお、本実施形態では係数Cは「0」である。
【0120】
図16の方法は別の言い方をすると、第1、第2の基板のそれぞれについて、第1の渦電流センサ210によって第1、第2の基板を計測して、第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第1、第2の膜厚情報を求める工程(ステップS20、S24)と、
第2の基板を研磨して、第3の膜厚を有する第2の基板を得た後に(ステップS26)、第1の渦電流センサ210によって第2の基板を計測して、第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第3の膜厚情報を求める工程(ステップS28)と、
研磨後の第2の基板の膜厚を膜厚測定機54によって測定して、第3の膜厚を求める工程(ステップS30)と、
第1、第2、第3の膜厚と、第1、第2、第3の膜厚情報から、第1、第2、第3の膜厚と、対応する第1、第2、第3の膜厚情報との間の非線形な関係を表す対応情報を求める工程(ステップS32)とを有するキャリブレーション方法である。
【0121】
次に、基板Wを2枚使用するキャリブレーション方法において、1つの研磨テーブル320Aに複数の渦電流センサ210を搭載した場合のキャリブレーションについて説明する。この場合、第1の方法として、図16に示すキャリブレーションを複数の渦電流センサ210に対して同時に行う。すなわち同一の2枚の基板Wで各センサ毎にキャリブレーションを同時に実施する方法である。
【0122】
第2の方法として、1つの研磨テーブル320Aに複数の渦電流センサ210を搭載した場合に、同一の2枚の基板Wでキャリブレーションを実施するが、選択された1個以上の渦電流センサ210を基準とし、他の渦電流センサ210のキャリブレーション結果を基準とした渦電流センサ210に合わせる。この場合、センサ間の誤差を補正できる。
【0123】
第2の方法は、既述の課題を解決すること、すなわち、1つの研磨テーブル320Aに複数の渦電流センサ210を搭載した場合に、渦電流センサ210間のキャリブレーション誤差を減らすことを目的とする。
【0124】
2個の渦電流センサ210が同一の研磨テーブル320Aに設置されているとする。この場合、基板Wの中心付近を測定する第1の渦電流センサ210が測定する第1、第2の基板の位置と、基板Wの中心付近ではない場所を測定する第2の渦電流センサ210が測定する第1、第2の基板の位置は異なる。
【0125】
本課題を解決するために、基準となる第1の渦電流センサ210については、図16のキャリブレーションを実施する。すなわち第1の渦電流センサ210のキャリブレーション位置での膜厚を膜厚算出部238に入力し、図16のようにキャリブレーションを実施する。キャリブレーション実施中には第1の渦電流センサ210と第2の渦電流センサ210はそれぞれ測定を行い、膜厚算出部238は、各センサについて逆数Taを取得する。
【0126】
その後、基準となる第1の渦電流センサ210ではキャリブレーション計算を実施して、既述の近似式を算出する。膜厚算出部238は、基準となる第1の渦電流センサ210で第2の渦電流センサ210の測定位置に対応する膜厚を計算する。このために、膜厚算出部238は、第2の渦電流センサ210の測定位置に関する情報をユーザから得る、もしくは研磨テーブル320Aとトップリング330Aの回転情報から、第2の渦電流センサ210の測定位置を算出する。
【0127】
基準となる第1の渦電流センサ210を利用して計算された膜厚と、第2の渦電流センサ210が測定して得られた逆数Taを用いて第2の渦電流センサ210に関する既述の近似式を算出する。
【0128】
なお、上記では、2個のセンサの位置が違うとしたが、2個のセンサの位置がほぼ同じ場合にも第2の方法は適用できる。この場合、2個のセンサの特性が違う場合に、膜厚を精度よく一致させることができる。
【0129】
第2の方法は具体的には以下のように行われる。導電膜の膜厚を監視するために第2の渦電流センサ210を研磨テーブル320Aに設置する。既述の第1の基板、および研磨前の既述の第2の基板のそれぞれについて、第2の渦電流センサ210によって第1、第2の基板を計測して、角算出部234と膜厚算出部238によって、第2の渦電流センサ210の出力のインピーダンス成分から第4、第5の膜厚情報を求める。
【0130】
研磨後の第2の基板について、第2の渦電流センサ210によって第2の基板を計測して、角算出部234と膜厚算出部238によって、第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第6の膜厚情報を求める。第1の基板と、第2、第3の膜厚を有する第2の基板のそれぞれについて、第2の渦電流センサが第1、第2の基板を計測する第1、第2の基板の位置において第1の渦電流センサによって第1、第2の基板を計測して、角算出部234と膜厚算出部238によって、第7、第8、第9の膜厚情報を求める。
【0131】
第1の渦電流センサについて求めた対応情報(既述の近似式)を用いて、第7、第8、第9の膜厚情報から、第4、第5、第6の膜厚を算出する。第4、第5、第6の膜厚と、第4、第5、第6の膜厚情報から、第4、第5、第6の膜厚と、対応する第4、第5、第6の膜厚情報との間の関係を表す第2の渦電流センサ210の膜厚情報と膜厚との間の非線形な関係を表す対応情報(既述の近似式)を求める。
【0132】
次に、基板Wを1枚使用するキャリブレーション方法について説明する。図17に、基板Wを1枚使用する方法のフローチャートを示す。用意する1枚の基板Wは、膜厚tである基板Wである。基板Wを1枚使用することにより、金属膜を有する基板Wを、2枚以上
用意する場合よりも、金属膜を作成する手間を低減できる。
【0133】
本図の方法では、第1の膜厚である基板Wの膜厚tを膜厚測定機54にて事前に測定しておく。基板Wの膜厚を膜厚測定機54にて測定したのちに、基板Wを0Åまで削り切るのではなく、特定の膜厚において研磨を終了して、図15における膜厚tが3枚の中で中間(第2の膜厚)及び最小(第3の膜厚)である基板Wに相当する基板Wを作成する。中間及び最小である基板Wを渦電流センサ210で測定して逆数Taを取得する。その後、膜厚測定機54にて膜厚tを測定する。得られた膜厚と逆数Taから既述の近似式を求めて、キャリブレーションが完了する。
【0134】
なお、最大膜厚の基板Wを0Åまで削り切るのではなく、特定の膜厚において研磨を終了するための研磨の制御は、渦電流センサ210に関して前回のキャリブレーション結果を用いて行っても良い。前回のキャリブレーション結果のデータがない時は、類似の渦電流センサ210に関するデータを流用して研磨の制御を行ってもよい。
【0135】
上記の手順を図17のフローチャートによって具体的に説明する。ステップ40では、既知の第1の膜厚を有する第1の基板を用意する。ステップS40では、第1の膜厚を基板処理装置1000の外部に設置した膜厚測定機54によって測定する。得られた膜厚は膜厚算出部238に蓄積する(ステップS58)。具体的には、例えば、図示しない入力部からユーザが(もしくは通信回線を介して自動的に)膜厚算出部238に入力する。ユーザが(もしくは通信回線を介して自動的に)第1研磨ユニット300Aの記憶部に記憶させてもよい。
【0136】
ステップS42では、第1研磨ユニット300Aに、第1の膜厚を有する第1の基板Wを設置して、「水ポリ」により渦電流センサ210で測定を行う。測定結果を既述のように角算出部234と膜厚算出部238で処理して、測定した時のセンサの出力から得られる逆数Ta(第1の膜厚情報:Thickness_Max)を膜厚算出部238内に記憶する(ステップS58)。
【0137】
ステップS44では、スラリを用いて研磨を行う。研磨は例えば、膜厚が第2の膜厚になるまで行って研磨を停止する。研磨の制御は、所定時間研磨する方法、または既述のように、前回のキャリブレーション結果を用いて膜厚を検出する方法でもよい。研磨により、第2の膜厚を有する第2の基板Wを得る。
【0138】
ステップS46では、「水ポリ」により渦電流センサ210で測定を行う。測定結果を既述のように角算出部234と膜厚算出部238で処理して、測定した時のセンサの出力から得られる逆数Ta(第2の膜厚情報:Thickness_mid)を膜厚算出部238内に記憶する(ステップS58)。ステップS48では、第2の膜厚を基板処理装置1000の外部に設置した膜厚測定機54によって測定する。得られた膜厚は膜厚算出部238に蓄積する(ステップS58)。
【0139】
ステップS50では、スラリを用いて研磨を行う。研磨は例えば、膜厚が第3の膜厚になるまで行って研磨を停止する。研磨の制御は、所定時間研磨する方法、または既述のように、前回のキャリブレーション結果を用いて膜厚を検出する方法でもよい。研磨により、第3の膜厚を有する第3の基板Wを得る。
【0140】
ステップS52では、「水ポリ」により渦電流センサ210で測定を行う。測定結果を既述のように角算出部234と膜厚算出部238で処理して、測定した時のセンサの出力から得られる逆数Ta(第3の膜厚情報:Thickness_mid)を膜厚算出部238内に記憶する(ステップS58)。ステップS54では、第2の膜厚を基板処理装置1000の外
部に設置した膜厚測定機54によって測定する。得られた膜厚は膜厚算出部238に蓄積する(ステップS58)。
【0141】
ステップS56では、膜厚算出部238は、第1、第2、第3の膜厚と、第1、第2、第3の膜厚情報(逆数Ta)から、第1、第2、第3の膜厚と、対応する第1、第2、第3の膜厚情報との間の非線形な関係を表す対応情報を求める。具体的には、図14、または図15において、座標点(0,0)、(Thickness_mid,Ta_mid)、 (Thickness_max,Ta_max)の3点を通る既述の2つの近似式のうちのいずれかまたは両方の係数A、Bを算出する。なお、本実施形態では係数Cは「0」である。
【0142】
図17の方法は別の言い方をすると、第1の渦電流センサ210によって基板Wを計測して、第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第1の膜厚情報を求める工程(ステップS42)と、
基板Wを研磨して、第2の膜厚を有する基板Wを得た後に、第1の渦電流センサ210によって基板Wを計測して、第1の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第2の膜厚情報を求める工程(ステップS46)と、
第2の膜厚を有する基板の膜厚を膜厚測定機によって測定して、第2の膜厚を求める工程(ステップS48)と、
第2の膜厚を有する基板を研磨して、第3の膜厚を有する基板Wを得た後に、第1の渦電流センサ210によって基板Wを計測して、第1の渦電流センサ210の出力のインピーダンス成分から第3の膜厚情報を求める工程(ステップS52)と、
第3の膜厚を有する基板の膜厚を膜厚測定機によって測定して、第3の膜厚を求める工程(ステップS54)と、
第1、第2、第3の膜厚と、第1、第2、第3の膜厚情報から、第1、第2、第3の膜厚と、対応する第1、第2、第3の膜厚情報との間の非線形な関係を表す対応情報を求める工程(ステップS56)とを有することを特徴とするキャリブレーション方法である。
【0143】
次に、基板Wを1枚使用するキャリブレーション方法において、1つの研磨テーブル320Aに複数の渦電流センサ210を搭載した場合のキャリブレーションについて説明する。この場合、第1の方法として、図17に示すキャリブレーションを複数の渦電流センサ210に対して同時に行う。すなわち同一の1枚の基板Wでセンサ毎にキャリブレーションを同時に実施する方法である。
【0144】
第2の方法として、1つの研磨テーブル320Aに複数の渦電流センサ210を搭載した場合に、同一の基板Wでキャリブレーションを実施するが、選択された1個以上の渦電流センサ210を基準とし、他の渦電流センサ210のキャリブレーション結果を基準とした渦電流センサ210に合わせる。この場合、センサ間の誤差を補正できる。
【0145】
第2の方法は、既述の課題を解決すること、すなわち、1つの研磨テーブル320Aに複数の渦電流センサ210を搭載した場合に、渦電流センサ210間のキャリブレーション誤差を減らすことを目的とする。
【0146】
本課題を解決するために、基準となる第1の渦電流センサ210については、図17のキャリブレーションを実施する。すなわち第1の渦電流センサ210のキャリブレーション位置での膜厚を膜厚算出部238に入力し、図17のようにキャリブレーションを実施する。キャリブレーション実施中には第1の渦電流センサ210と第2の渦電流センサ210はそれぞれ測定を行い、膜厚算出部238は、各センサについて逆数Taを取得する。
【0147】
その後、基準となる第1の渦電流センサ210ではキャリブレーション計算を実施して
、既述の近似式を算出する。膜厚算出部238は、基準となる第1の渦電流センサ210で第2の渦電流センサ210の測定位置に対応する膜厚を計算する。このために、膜厚算出部238は、第2の渦電流センサ210の測定位置に関する情報をユーザから得る、もしくは研磨テーブル320Aとトップリング330Aの回転情報から、第2の渦電流センサ210の測定位置を算出する。基準となる第1の渦電流センサ210を利用して計算された膜厚と、第2の渦電流センサ210自身が測定したTaを用いて第2の渦電流センサ210に関する既述の近似式を算出する。
【0148】
第2の方法は具体的には以下のように行われる。導電膜の膜厚を監視するために第2の渦電流センサ210を研磨テーブル320Aに設置する。第1の膜厚を有する基板Wについて、第2の渦電流センサ210によって基板Wを計測して、角算出部234と膜厚算出部238によって、第2の渦電流センサ210の出力のインピーダンス成分から第4の膜厚情報を求める。
【0149】
第2の膜厚を有する基板について、第2の渦電流センサ210によって基板Wを計測して、角算出部234と膜厚算出部238によって、第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第5の膜厚情報を求める。第3の膜厚を有する基板Wについて、第2の渦電流センサ210によって基板Wを計測して、角算出部234と膜厚算出部238によって、第2の渦電流センサの出力のインピーダンス成分から第6の膜厚情報を求める。
【0150】
第1、第2、第3の膜厚を有する基板Wのそれぞれについて、第2の渦電流センサ210が基板Wを計測する基板Wの位置において第1の渦電流センサ210によって基板Wを計測して、第7、第8、第9の膜厚情報を求める。膜厚算出部238によって、第1の渦電流センサ210について求めた対応情報(既述の近似式)を用いて、第7、第8、第9の膜厚情報から、第4、第5、第6の膜厚を算出する。
【0151】
膜厚算出部238によって、第4、第5、第6の膜厚と、第4、第5、第6の膜厚情報から、第4、第5、第6の膜厚と、対応する第4、第5、第6の膜厚情報との間の関係を表す第2の渦電流センサ210の膜厚情報と膜厚との間の非線形な関係を表す対応情報(既述の近似式)を求める。
【0152】
次に、第1研磨ユニット300Aが、研磨中の基板Wの温度を直接または間接に測定可能な温度センサ56と、求められた膜厚を、測定された温度を用いて補正可能な終点検出器241(温度補正部)とを有する実施例について説明する。第1研磨ユニット300Aは、第1研磨ユニット300A内の温度をモニタするための温度センサ56を含む。図2では、研磨パッド310A又は研磨パッド310A上の基板Wの温度をモニタするように配置されている。温度センサ56は、基板Wの温度を測定するために、トップリング330Aの内部に配置してもよい。温度センサ56は、研磨パッド310A又は基板Wの表面の温度をモニタするために、研磨パッド310A又は基板Wの表面と直接接触してもよい。温度センサ56は、非接触センサ(例えば、赤外線センサ)でもよい。温度は、膜厚測定する際に用いられる。
【0153】
研磨パッド310Aの温度を利用して膜厚計算を補正する理由は以下のとおりである。基板W上の金属膜では、基板Wの温度が上昇すると、電気伝導率が低下する。そのため渦電流センサ210の本測定時には一般に、キャリブレーションした時の温度より基板Wの温度が上昇して、実際の膜厚よりも薄いと誤測定されてしまう。
【0154】
誤測定を、研磨パッド310Aの温度を用いて補正することで、正しい膜厚を算出できる。終点検出器241は、以下の式で補正を行う。
Thickness_adj=Thickness×(1+k×[(T-Tcal)×α+T])/(1+k×Tcal) (A1)
ここで、Thickness_adj:補正後の膜厚t
Thickness:補正前の膜厚t
T: 研磨中のテーブル温度
Tcal: 渦電流センサ210をキャリブレーションした時の研磨パッド310Aの温度
k: 抵抗率の温度係数(金属固有の値)
α: 第1研磨ユニット300Aに依存した係数

例えば、バルク状態(すなわち、ある程度の大きな体積を有する状態)のCuの場合 k=0.0044であり、キャリブレーションした時の温度が20℃である場合、金属膜が50℃の環境下で、膜厚を測定すると膜厚は1/1.121倍になる。すなわち、10℃上昇で約4%薄く測定される。
【0155】
上記の(A1)式による膜厚計算の補正の根拠は以下のとおりである。
金属の温度がTであるときの膜厚をThickness1とすると、Thickness1は以下の式であらわされる。
Thickness1 =ρ(T)/Rs
ここで、ρ(T)は、金属の温度がTであるときの金属の導電率であり、
ρ(T)= ρ0(1+kT) (A2)
ρ0は、キャリブレーションした時の温度における金属の導電率
Rsはシート抵抗
温度補正を行わない場合は、第1研磨ユニット300Aはキャリブレーション時の温度における近似式を有するため、膜厚計算はρ(Tcal)で行っていることになる。ここで、Tcalは、キャリブレーションした時の金属の温度である。
【0156】
しかし、研磨中に基板Wの温度がTとなった場合は、ρ(T)を使って膜厚を算出するべきである。よって、以下の式で補正できる。
Adjusted Thickness=Calculated Thickness×ρ(T)÷ρ(Tcal)
ここで、Adjusted Thickness:ρ(T)を使って補正した膜厚
Calculated Thickness:近似式で得られた補正前の膜厚
これを、(A2)式を用いて、Tを使って表すと、
Adjusted Thickness1=Calculated Thickness ×(1+k×T)/(1+k×Tcal)
さらに研磨パッド310Aの温度は、基板Wの温度よりも基本的には温度が低い。基板Wの温度に補正するために、Tcal時に、補正係数が1となるように、システムに依存する係数αを追加する。この結果、既述の(A1)式のようになる。
Thickness_adj=Thickness×(1+k×[(T-Tcal)×α+T])/(1+k×Tcal) (A1)
【0157】
次に、図18図20を用いて、上記した第1研磨ユニット300Aにおける情報を取り扱うための構成の一例を説明する。ただし、図18図20では第1研磨ユニット300Aは簡
易的に描かれており、具体的な構成(トップリング330A、研磨パッド310A等)は省略されている。
【0158】
図18は、データ処理部94を有する制御部140Aを備える第1研磨ユニット300Aの一例を示す図である。データ処理部94にはAI(Artificial Intelligence、人工知能)機能が搭載されてもよい。データ処理部94は何らかのハードウェアであってもよく、たとえば記憶媒体に記憶されたプログラムであってもよい。図18ではデータ処理部94は制御部140Aの他の要素と独立した要素であるように描かれているが、データ処理部94は、たとえば制御部140Aが備えるストレージデバイス(図示せず)に記憶されて制御部140Aのプロセッサ(図示せず)よって制御されてもよい。データ処理部9
4は、たとえば研磨プロファイルの生成及び取得、制御パラメータの更新、及び実主力信号を学習データとしたフィードバックなど、画像処理および大規模な計算が必要な処理を行うよう構成される。図18の構成は、第1研磨ユニット300Aを単独で(スタンドアロンで)動作させ得るという利点がある。
【0159】
図19は、ルータ96を介してクラウド(またはフォグ)97に接続された第1研磨ユニット300Aの一例を示す図である。ルータ96は、制御部140Bとクラウド97とを接続するための装置である。ルータ96は「ゲートウェイ機能を有する装置」と呼ぶこともできる。クラウド97はインターネットなどのコンピュータネットワークを通じて提供されるコンピュータ資源を指す。なお、ルータ96とクラウド97間の接続がローカルエリアネットワークである場合、クラウドはフォグ97と呼ばれる場合もある。たとえば地球上に点在する複数の工場を接続する際はクラウド97が用いられ、ある特定の工場内でネットワークを構築する場合はフォグ97が用いられるとよい。フォグ97はさらに外部のフォグまたはクラウドへ接続されてもよい。図19では制御部140とルータ96とが有線接続され、ルータ96とクラウド(またはフォグ)97とが有線接続されている。しかし、各接続は無線接続であってもよい。クラウド97には複数の第1研磨ユニット300Aが接続されている(図示せず)。複数の第1研磨ユニット300Aのそれぞれは、ルータ96を介してクラウド97と接続されている。各第1研磨ユニット300Aが得たデータ(渦電流センサ210からの膜厚データ、又はその他任意の情報)はクラウド96の中に集積される。また、図19のクラウド96はAI機能を有してもよく、データの処理はクラウド96において行われる。ただし、処理が部分的に制御部140Bで行われてもよい。図19の構成は、集積された大量のデータに基づいて第1研磨ユニット300Aを制御することができるという利点がある。
【0160】
図20は、エッジコンピューティング機能を有するルータ96Aを介してクラウド(またはフォグ)97に接続された第1研磨ユニット300Aの一例を示す図である。図20のクラウド97も複数の第1研磨ユニット300Aに接続されている(図示せず)。図20の複数の第1研磨ユニット300Aのそれぞれは、ルータ96Aを介してクラウド97に接続されている。ただし、ルータのうちのいくつかはエッジコンピューティング機能を有していなくともよい(ルータのうちいくつかは図19のルータ96であってもよい)。ルータ96Aには制御部96Bが設けられている。ただし、図20では代表してひとつのルータ96Aのみに制御部96Bが図示されている。さらに、ルータ96AにはAI機能が搭載されてもよい。制御部96Bおよびルータ96AのAI機能は、第1研磨ユニット300Aの制御部140Cから得たデータを第1研磨ユニット300Aの近くで処理することができる。なお、ここでいう近さとは、物理的な距離を意味する用語ではなく、ネットワーク上の距離を指す用語である。ただし、ネットワーク上の距離が近ければ物理的な距離も近いことが多い。したがって、ルータ96Aにおける演算速度とクラウド97における演算速度が同程度ならば、ルータ96Aにおける処理は、クラウド97における処理よりも高速となる。両者の演算速度に差がある場合であっても、制御部140Cから送信された情報がルータ96Aに到達する速度は、制御部140Cから送信された情報がクラウド97に到達する速度より早い。
【0161】
図20のルータ96A、より具体的にはルータ96Aの制御部96Bは、処理すべきデータのうち高速処理が必要なデータのみを処理する。ルータ96Aの制御部96Bは、高速処理が不要なデータをクラウド97に送信する。図20の構成は、第1研磨ユニット300Aの近くでの高速処理と、集積されたデータに基づく制御との両立が可能になるという利点がある。
【0162】
以上、本発明の実施形態の例について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、
その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0163】
54…膜厚測定機
56…温度センサ
102…研磨対象物
108…研磨パッド
140…制御部
150…研磨部
210…渦電流センサ
234…角算出部
238…膜厚算出部
241…終点検出器
300…研磨ユニット
1000…基板処理装置
300A…第1研磨ユニット
310A…研磨パッド
320A…研磨テーブル
330A…トップリング
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
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図8
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図20