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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】テープ状接点材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 1/06 20060101AFI20221006BHJP
   H01H 1/023 20060101ALI20221006BHJP
   H01H 11/04 20060101ALI20221006BHJP
   H01H 11/06 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01H1/06 G
H01H1/023 A
H01H11/04 B
H01H11/06 F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018557761
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2017045301
(87)【国際公開番号】W WO2018117021
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-16
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2016245084
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】オリジネイト弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松尾 寛
(72)【発明者】
【氏名】和田 良衛
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】平田 信勝
【審判官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-246832(JP,A)
【文献】特開昭64-7437(JP,A)
【文献】特開平10-163404(JP,A)
【文献】特開昭62-271311(JP,A)
【文献】特許第4279645(JP,B2)
【文献】米国特許第5531962(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/06
H01H 1/023
H01H 11/06
H01H 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の接点材料を備える開閉型電気接点用のテープ状接点材において、
前記テープ状の接点材料に、少なくとも一つのワイヤ状のろう材が接合されてなり、
前記接点材料は、Ag系接点材料であり、
前記ろう材は、融点が500℃以上のZn含有量が15質量%以下のAg-Cu合金からなるろう材であり、
断面形状において、前記ろう材からなり、前記接点材料の表面から突出するプロジェクションが少なくとも一つ形成されており、
更に、前記接点材料の内部に、前記ろう材を構成する金属成分を含有する拡散領域が前記ろう材との界面に沿って形成されており、
前記拡散領域の厚さが、2μm以上10μm以下であることを特徴とする開閉型電気接点用のテープ状接点材。
【請求項2】
テープ状の接点材料を備える開閉型電気接点用のテープ状接点材において、
前記テープ状の接点材料に、テープ状の中間金属層、及び、少なくとも一つのワイヤ状のろう材が接合されてなり、
前記接点材料は、Ag系接点材料であり、
前記中間金属層は、Ag、Ni、Cuの少なくともいずれかの金属を含む金属からなり、
前記ろう材は、融点が500℃以上のZn含有量が15質量%以下のAg-Cu合金からなるろう材であり、
断面形状において、前記ろう材によって前記中間金属層の表面から突出するプロジェクションが少なくとも一つ形成されており、
更に、前記中間金属層に、前記ろう材を構成する金属成分を含有する拡散領域が前記ろう材との界面に沿って形成されており、
前記拡散領域の厚さが、2μm以上10μm以下であることを特徴とする開閉型電気接点用のテープ状接点材。
【請求項3】
テープ状の接点材料とワイヤ状のろう材との接合幅Wが、前記ワイヤ状のろう材の径Dに対してW≧0.5Dとなっている請求項1又は請求項2記載の開閉型電気接点用のテープ状接点材。
【請求項4】
ろう材は、P、Sn、In、Ni、Si、Mnの少なくともいずれかを含むAg-Cu合金からなる請求項1~請求項3のいずれかに記載の開閉型電気接点用のテープ状接点材。
【請求項5】
接点材料は、Cu、Ni、Zn、Sn、Inの少なくともいずれかの金属を含むAg系接点材料である請求項1~請求項4のいずれかに記載の開閉型電気接点用のテープ状接点材。
【請求項6】
請求項1記載の開閉型電気接点用のテープ状接点材の製造方法であって、
Ag系接点材料からなるテープ状の接点材料に、少なくとも一つの融点が500℃以上のZn含有量が15質量%以下のAg-Cu合金からなるワイヤ状のろう材を圧接する工程と、
更に、500℃以上で前記ろう材の融点以下の温度で加熱して拡散領域を形成する工程と、を含む開閉型電気接点用のテープ状接点材の製造方法。
【請求項7】
請求項2記載の開閉型電気接点用のテープ状接点材の製造方法であって、
Ag系接点材料からなるテープ状の接点材料とテープ状の中間金属層とを接合した後、前記テープ状の中間金属層に、少なくとも一つの融点が500℃以上のAg-Cu合金からなるZn含有量が15質量%以下のワイヤ状のろう材を圧接する工程と、
更に、500℃以上で前記ろう材の融点以下の温度で加熱して拡散領域を形成する工程と、を含む開閉型電気接点用のテープ状接点材の製造方法。
【請求項8】
請求項2記載の開閉型電気接点用のテープ状接点材の製造方法であって、
Ag系接点材料からなるテープ状の接点材料に、テープ状の中間金属層及び少なくとも一つの融点が500℃以上のAg-Cu合金からなるZn含有量が15質量%以下のワイヤ状のろう材を圧接する工程と、
更に、500℃以上で前記ろう材の融点以下の温度で加熱して拡散領域を形成する工程と、を含む開閉型電気接点用のテープ状接点材の製造方法。
【請求項9】
ワイヤ状のろう材を、テープ状の接点材料に圧接するとき、前記ワイヤ状のろう材の接合幅Wが、ワイヤ状のろう材の径Dに対してW≧0.5Dとなるまで加圧して接合する請求項6記載の開閉型電気接点用のテープ状接点材の製造方法。
【請求項10】
ワイヤ状のろう材を、テープ状の中間金属層に圧接するとき、前記ワイヤ状のろう材の接合幅Wが、ワイヤ状のろう材の径D に対してW≧0.5D となるまで加圧して接合する請求項7又は請求項8記載のテープ状接点材の製造方法。
【請求項11】
請求項1~請求項5のいずれかに記載のテープ状接点材を切断してなる開閉型電気接点用のチップ状の接点部材。
【請求項12】
請求項11記載のチップ状の接点部材を用いた開閉型電気接点の製造方法であって、
前記チップ状の接点部材を前記電気接点の端子に接合する工程を含み、
前記接合工程で、前記チップ状の接点部材を前記端子に加圧しながら通電することで、前記接点部材のろう材を溶融させて接合する開閉型電気接点の製造方法。
【請求項13】
請求項11記載の開閉型電気接点用のチップ状の接点部材を備えるリレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレー、スイッチ等の開閉型電気接点の構成部品を形成するためのテープ状の接点材に関する。詳しくは、開閉型電気接点の端子に接合するチップ形状の接点部材を供給するためのテープ状の接点材であって、小型化・低背化に対応しつつも接触不良が生じ難い接点部材を供給できるテープ状の接点材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用電装品、家電製品、OA機器等の電気機器の各種リレー、スイッチの構成部品として開閉型電気接点が従来から使用されている。図8は、一般的なリレーの構造を説明する図である。また、図9は、リレーの一態様であるフレクシャータイプのリレーの構造を説明する図である。開閉型電気接点では、端子(導電板)に接点部材を接合し、この接点部材によって電気回路を電気的に開閉している。この接点部材として、端子に溶接して接合するチップ形状の接点部材が知られている。かかる接点部材は、図8、9の固定接点及び可動接点の双方において使用されている。
【0003】
チップ形状の接点部材は、例えば、図10のような、銀合金等の接点材料に、端子に接合するための溶接材料が接合された接点部材がある。この接点部材において、溶接材料は銅-ニッケル合金等の高抵抗の金属材料からなり、接合面上に凸状のプロジェクションが形成されている。この接点部材は、溶接材料のプロジェクションを利用した抵抗溶接によって端子に接合される。
【0004】
また、チップ形状の接点部材の他の形態として、図11のような接点材料と接合面に形成された薄いろう材層(バックろう)とからなる接点部材も知られている。このバックろうを備える接点部材は、ろう材の加熱・溶融によって端子に接合される。
【0005】
そして、上記のようなチップ状の接点部材の製造及び使用に際しては、テープ状の接点材を製造し、これを任意の長さに切断してチップ状の接点部材を製造し、この接点部材を端子に接合する。このようなテープ状の接点材は、上記した図10図11と同様の断面形状を有する長尺材であって、テープ状の接点材料に、予めプロジェクション加工されたテープ状の溶接材料、又は、予め圧延加工されたテープ状のろう材を接合したものである。このようなテープ状の接点材に関しては、例えば、本願出願人は、特許文献1記載のようなプロジェクションとろう材とを組み合わせたものも開発し開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4279645号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年の車載用リレー等の電気接点おいては、小型化、高容量化に対して強い要求が寄せられている。そのため、リレーに使用されるチップ状の接点部材の構成についても、これらの要求を考慮した改良が必要となっている。しかし、これらの要求に対して、上記の従来の接点部材は十分に対応できなくなっている。即ち、上記した接点部材のうち、前者の凸形状のプロジェクションが形成された溶接材料を備える接点部材は、溶接材料の厚みがあるため接点部材の低背化・小型化の障害となっている。また、この接点部材では、接点材料に比べて熱伝導率が低い溶接材料が接点材料の放熱を阻害することから、電気接点の高容量化の懸念のもとにもなっている。更に、溶接材料は電気抵抗が高く電気を流した際の発熱が多いため抵抗溶接には有利であるが、接点材料として使われる際の発熱が多くなる原因にもなり、この点でも電気接点の高容量化の懸念のもとになっている。
【0008】
一方、後者のバックろうを有する接点部材は、厚みの薄いろう材層によって端子に接合されるので低背化は期待できる。しかしながら、このタイプの接点部材においては、端子との接合時において、接点端部のみが溶接されて端子への溶接が不安定になる、或いは、溶融したろう材がはみ出して、接点材料表面や端子にろう材が付着して接触障害を引き起こすという問題がある。そのため、これらの不具合を十分に考慮して、ろう材層を設計し加工することが必要となる。
【0009】
また、バックろうを有する接点部材は、接点材料を接合面全体で端子に接合させることができるので、接合強度の点では有利である。しかし、欠陥のない確実な接合や、上記したろう材はみ出しの防止のためには、厳密な水平状態での接合作業が要求される。小型化が必要な接点部材に対して、上記のような厳密なろう材層の設計・加工や接合条件を達成させるのは困難である。本願出願人による、上記の特許文献1の接点部材は、ろう材のはみ出し等を考慮したものであるが、よりレベルの高い小型化の要求に対しては必ずしも十分なものではない。
【0010】
本発明は、以上のような背景のもとになされたものであり、開閉型の電気接点を製造するためのチップ形状の接点部材について、小型化・低背化に対応可能であり、端子等に対する接合不良を生じさせること無く接点性能が確保された接点部材の構成を明らかにし、かかる接点部材を製造するためのテープ状の接点材を提供する。尚、本発明においては、端子等に接合すべくチップ状に形成された部材を「接点部材」と称し、このチップ状の接点部材を製造するためのテープ状の材料を「接点材」と称する。そして、接点部材及び接点材において、ろう材が接合される素材としての接点材料を「接点材料」と称する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決するため、上記従来の溶接材料の適用を廃しつつ、ろう材の形状の改良についての検討を行った。その結果、本発明者等は、接点材料の接合面を被覆する層状(テープ状)のろう材に替えて、接点材料の接合面上で局所的に隆起する突起状(ワイヤ状)のろう材を適用することとした。つまり、接点材料の接合面上に、ろう材からなるプロジェクション(突起物)を形成することとした。そして、本発明者等は、この形状変更に加えて、ろう材からなるプロジェクションと接点材料との接合部の状態を最適化することで、上記した各種課題を解決できるとして本発明に想到した。
【0012】
即ち、本発明は、テープ状の接点材料を備えるテープ状接点材において、前記テープ状の接点材料に、少なくとも一つのワイヤ状のろう材が接合されてなり、断面形状において、前記ろう材からなり、前記接点材料の表面から突出するプロジェクションが少なくとも一つ形成されており、更に、前記接点材料の内部に、前記ろう材を構成する金属成分を含有する拡散領域が前記ろう材との界面に沿って形成されており、前記拡散領域の厚さが、2μm以上10μm以下であることを特徴とするテープ状接点材である。
【0013】
上記した本発明に係るテープ状の接点材を、所望の長さに切断することで、チップ状の接点部材を得ることができる。本発明に係るテープ状接点材の断面形状は図1に示す通りであり、接点材料の表面上にろう材からなるプロジェクションが形成されている(図1(a))。本発明に係るテープ状接点材から得られるチップ状の接点部材は、抵抗溶接によって電気接点の端子等に接合することができ、ろう材からなるプロジェクションが溶融することで端子との接合がなされる。
【0014】
本発明に係るテープ状接点材においては、従来の層状のろう材を備える接点材と比較すると、ろう材の量(体積)が限定的となっている。そのため、本発明においては、溶融したろう材のはみ出しを有効に抑制することができる。
【0015】
また、本発明による接点部材と、従来のプロジェクションが形成された溶接材料を備える接点部材とを対比すると、本発明による接点部材は、溶接材料を含まないことから、溶接材料の厚さの分の低背化に寄与することができる。更に、溶接材料がないので放熱性に優れ、接点材料の消耗の低減を図ることも可能となる。
【0016】
更に、本発明においては、接点材と端子との接合面積を適度な大きさにすることができる。本発明の接点材では、プロジェクションを形成するろう材と接点材料とが、所定の拡散領域を伴った状態で接合されている。これは、本発明では、ろう材と接点材料とが適度に一体化した状態にあることを意味する。このような状態で抵抗溶接を行うと、プロジェクション近傍で生じた抵抗熱によって、プロジェクション周囲の拡散領域と端子とを強固に接合することができる。また、本発明ではプロジェクション全体がろう材で構成されており、接合時にろう材の濡れ広がりが生じる。これらの拡散領域の影響とろう材の濡れ広がりによって、接合面積を広くすることができる。これに対して、従来のプロジェクションが形成された溶接材料が結合された接点部材では、接合時に溶融する範囲は限定的であるため接合面積は狭い。このような本願発明における接合力の向上作用及び接合面積の適正化によって、接点材料を端子に強固に接合することができる。また、接合面積を広くすることで放熱効果が向上し、動作時に高温になり易い接点材料の耐久性を良好にすることが可能となる。
【0017】
ここで、本発明に係る接点材の構成について説明する。上記の通り、本発明に係るテープ状接点材は、テープ状の接点材とワイヤ状のろう材とを基本的な構成とする。接点材料は、Ag系接点材料が好ましい。Ag系接点材料とは、Ag又はAg合金からなる接点材料である。Agは、純度99質量%以上の純Agが好ましい。Ag合金としては、AgにCu、Ni、Zn、Sn、Inの少なくともいずれかの金属を含む接点材料が好ましい。尚、Ag及びAg合金は、不可避不純物を含んでいても良い。
【0018】
Ag合金からなる接点材料として好ましいものとしては、Ag-Cu合金のような固溶合金、若しくは、粉末冶金法で形成されたAg-Ni合金、Ag-C合金等の合金の他、酸化物分散強化型の2相以上の相構成の接点材料も適用される。酸化物分散強化型の接点材料は、例えば、車載用リレーの接点材料として広く使用されており、Ag-SnO合金、Ag-SnO-In合金、Ag-ZnO合金、Ag-SnO-SnBi-In合金等が挙げられる。
【0019】
テープ状の接点材料の寸法は、特に限定されることはない。その幅(テープ材の長手方向に垂直方向)、及び、厚さについては、用途に応じて自由に設定することができる。例えば、車載用のリレーでは、幅2.0mm以上で厚さ0.4mm以上の接点材料が使用されている。
【0020】
ろう材は、融点及び接合力の観点から、Ag-Cu合金からなるろう材が好ましい。Ag-Cu合金からなるろう材としては、Ag含有量が72質量%以上85質量%以下のAg-Cu合金が挙げられる。また、Ag-Cu合金に、P、Sn、In、Ni、Si、Mnの少なくともいずれかを含むろう材も好ましい。具体的には、Ag-P-Cu合金ろう(リン銅ろう)、Ag-Cu-Sn合金(銀ろう)が挙げられる。これらのろう材は、接点材料の接合に際して、適度な融点を有するろう材である。尚、以上述べたろう材を構成するAgCu合金は、不可避不純物を含んでいても良い。
【0021】
尚、本発明で適用するろう材については、Zn含有量を規制することが好ましい。具体的には、Zn含有量が20質量%以下のろう材が好ましい。本発明者等の検討によれば、Ag系接点材料を適用する場合において、Znを比較的多く含むろう材を接合したとき、十分な接合力が得られず、ろう材が容易に剥離することがある。従って、融点が適切なろう材であって、Znを20質量%超含むろう材は好ましくない。また、ろう材のZn含有量は、より好ましくは、15質量%以下とする。Zn含有量が15質量%超20質量%以下の場合、接点材を強く捻った場合等で剥離することがあり、取扱いに注意を要することがある。
【0022】
本発明では、ワイヤ状のろう材をテープ状の接点材料に接合して接点材とする。このワイヤ状のろう材は、少なくとも1本必要となるが、複数本のワイヤ(プロジェクション)を接合しても良い。図2のように、接点材料の中心部に1本のワイヤ状ろう材を接合しても良いし、接点材料の両端部の付近に2本のワイヤ状ろう材を接合しても良い。
【0023】
接合するワイヤ状のろう材の線径は、接点材料の幅に対し、0.01倍以上0.1倍以下程度にすることが好ましい。複数のワイヤを接合する場合、その合計が前記条件を具備することが好ましい。
【0024】
ここで、本発明に係るテープ状接点においては、テープ状の接点材料にワイヤ状ろう材を直接接合した構造を基本とするが、接点材料とろう材との接合強度を高めるための中間金属層を形成し、中間金属層にワイヤ状ろう材を接合することが好ましい(図1(b))。中間金属層を適用することで、ワイヤ状ろう材を過度に溶融・変形させることなく、適切な拡散領域を形成しつつ、接点材料に接合することができる。そして、接合後のワイヤ状ろう材は強固に固定されることとなる。中間金属層は、ろう材からの金属原子(Cu、Ag)の拡散が進行し易い金属からなるものを適用することが好ましい。中間金属層の構成材料としては、Ag、Ni、Cuの少なくともいずれかの金属を含むものが好ましい。具体的には、Ag(純度99質量%以上の純Agが好ましい。)、AgNi合金(0.2質量%以下のNi及び不可避不純物を含むものが好ましい。)等のAg合金、Cu(純度99質量%以上の純Cuが好ましい。)のいずれかが好ましい。
【0025】
中間金属層は、その厚さを0.02mm以上0.2mm以下とすることが好ましい。接合強度を確保しつつ、接点材厚みの寸法自由度を確保できるからである。尚、この中間金属層を適用する場合においても、図2と同様にして、1本又は複数本のワイヤ状ろう材を中間金属層に接合することができる。
【0026】
そして、本発明においては、接点材料の内部、又は、中間金属層の内部に、ろう材との界面に沿って拡散領域が形成される。拡散領域は、ろう材の構成金属が接点材料又は中間金属層に拡散することで形成される。例えば、接点材料としてAg系接点材料が適用され、ろう材としてAg-Cu合金を含むろう材(Ag-P-Cu合金、Ag-Cu-Sn合金等)を適用した場合、ろう材の金属成分としてCuが拡散領域に拡散する。その結果、接点材料のAgとろう材のCuの双方を含む領域が拡散領域として認識される。また、拡散領域における組成は一定である必要は無く、ろう材界面からの距離に対して傾斜した組成を有することが多い。つまり、拡散領域は、接点材料内部において、接点材料の構成金属以外の金属であって、ろう材の構成金属に該当する金属が含まれているか否かによって判定される。
【0027】
上記のようにして形成される拡散領域は、その厚さが2μm以上10μm以下であることを要する。厚さ2μm未満の状態は、接点材料とろう材(プロジェクション)との一体化が不十分であり、電気接点を製造する際に接合不良を生じさせるおそれがある。一方、厚さ10μmを超えると、ろう材の組成変化が大きくなり、ろう材本来の性能が低下するおそれがある。また、拡散領域の厚さが過大となると、熱伝導性が低下するという問題も生じる。本発明においては、拡散領域の厚さを厳密に設定することで、チップ状の接点部材としたときの接合性や放熱性が良好となるようにしている。この拡散領域の厚さとは、図3で示すように、接点材料又は中間金属層と拡散領域との境界線と、ワイヤ状ろう材と拡散領域との境界線との間における厚さ(t)である。拡散領域の厚さの測定については、複数個所を測定してその平均値を適用するのが好ましい。また、図2のように、接点材料又は中間金属層に複数本のワイヤ状ろう材が接合されているときは、全てのワイヤ状ろう材における拡散領域の厚さが2μm以上10μm以下であることを要する。
【0028】
また、ワイヤ状のろう材と接点材料との接合界面の状態に関しては、ろう材の接合幅の一定以上とすることがより好ましい。接合幅については、図3で説明するように、接点材料と接触・接合されたろう材の両端部の直線距離である。本発明ではこのろう材の接合幅(W)について、ろう材の直径(D)に対して、W≧0.5Dとなっていることが好ましい。Wが0.5D未満となっている場合、拡散層形成のための熱処理を行っても、ろう材と接点材料との接合力が十分確保されない場合がある。本発明に係るテープ状接点材は、その用途に応じて適宜の長さで切断して接点部材の製造のために利用されるが、ろう材の接合力が不足すると切断時に剥離が生じることがある。このようなことから、ろう材を接点材料に接合するときには、ろう材を適度に加圧して接合し、接合幅を確保した後に拡散層を形成することが好ましい。
【0029】
尚、ろう材の直径(D)については、接点材料に接合されたときのろう材の断面が略円形であれば、その直径を測定することでDを得ることができる。また、ワイヤ状のろう材を接点材に圧接したとき、ろう材が変形してその断面が楕円形や不定形となることがある。そのような場合、ろう材断面の円周長さを基に円形を想定し、その直径をDとするのが好ましい。
【0030】
ろう材の接合幅Wの上限については、W≦1.7Dとするのが好ましい。Wは1.7D以下で十分な接合力が確保されている。そして、1.7Dを超えた状態は、ろう材(プロジェクション)が過度につぶれた状態であり、抵抗溶接の際に有効に機能しないおそれがあるからである。
【0031】
尚、接点材料又は中間金属層に複数本のワイヤ状ろう材が接合されているときは、全てのワイヤ状ろう材接合部において、ろう材の接合幅(W)とろう材の直径(D)との関係が上記関係を具備することが好ましい。
【0032】
次に、本発明に係るテープ状接点材の製造方法について説明する。本発明に係るテープ状接点材は、テープ状の接点材料にワイヤ状のろう材を接合し、その後にワイヤ状ろう材の接合界面付近に拡散領域を形成することで製造することができる。即ち、テープ状の接点材料に少なくとも一つのワイヤ状のろう材を圧接する工程と、500℃以上で前記ろう材の融点以下の温度で加熱して拡散領域を形成する工程を含む。
【0033】
また、本発明では接点材料とろう材との間に中間金属層が形成される場合がある。中間金属層を含む接点材の製造は、テープ状の接点材料とテープ状の中間金属層とを接合した後に、中間金属層にワイヤ状のろう材を圧接する。或いは、テープ状の接点材料に、テープ状の中間金属層及びワイヤ状のろう材を同時に圧接しても良い。尚、複数のワイヤ状のろう材を圧接するときには、順次接合しても良いが、同時に接合しても良い。
【0034】
本発明に係るテープ状接点材の製造方法において、ワイヤ状のろう材の接合は、具体的な接合方法としては、圧延ロール(溝付ロール含)による圧接が挙げられる。ここで、ワイヤ状のろう材を接点材料又は中間金属層に圧接するとき、ワイヤ状のろう材の接合幅Wが、ワイヤ状のろう材の径Dに対してW≧0.5Dとなるまで加圧して接合するのが好ましい。また、W≦1.7Dとするのが好ましい。この際の加圧の調整については、接点材料、中間金属層及びろう材の材質や寸法により適宜に調整できる。
【0035】
ろう材接合後の拡散領域を形成するための熱処理は、500℃以上でろう材の融点以下の温度で加熱する。500℃未満では所望の厚さの拡散領域が形成されないからであり、ろう材の融点を超えた温度で熱処理すると、ボイドの発生もしくはろう材のワイヤ形状を保てないという問題が生じる。熱処理時間は、0.25時間以上1.0時間とするのが好ましい。熱処理雰囲気は、大気雰囲気でも良いし、不活性ガス雰囲気や還元雰囲気でも良い。
【0036】
そして、以上説明した本発明に係るテープ状接点材を適宜に切断することで、電気接点を製造するためのチップ状の接点部材とすることができる。このチップ状の接点部材は、製造目的の電気接点、及び、接合する端子の寸法に応じた長さにすることができる。尚、本発明に係るテープ状接点材の長さに制限はない。また、テープ状接点材の寸法を予めチップ状の接点部材のサイズと同じにすることで、切断することなく接点部材とすることもできる。
【0037】
このチップ状の接点部材は、断面形状において端子への接合面に少なくとも一つのプロジェクションを有する。このプロジェクションを接具する端子に当接し、接点部材を通電及び加圧することで電気接点を製造することができる。本発明に係るチップ状の接点部材は、開閉型の電気接点に有用であり、具体的にはリレーやスイッチの構成材料として有用である。
【0038】
このチップ状の接点部材から電気接点を接合する工程においては、接点部材を端子に加圧しながら通電する。このときの条件としては、電流2kA~10kA、圧力2kgf~10kgfとすることが好ましい。電流値2kA未満及び圧力2kgf未満では、十分な範囲で接合することができない。一方、電流値10kA超及び圧力10kgf超となると、熱影響部が必要以上に広範となる或いは材料変形が生じ、好適な接点構造を形成することができない。
【発明の効果】
【0039】
以上説明したように本発明によれば、開閉型電気接点を製造するためにチップ形状の接点部材として好適なものを効率的に製造することができる。このチップ形状の接点部材は、低背化に対応可能でありながら、接合不良が生じ難く耐久性に優れた接点部材である。本発明は、スイッチ、リレー等の開閉型電気接点の効率的な製造に寄与することができる。特に、高容量の車載リレーに用いると有用であり、小型・高容量のリレーに用いると更に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明に係るテープ状接点の一例についての断面形状を説明する図。
図2】本発明に係るテープ状接点でのプロジェクションの形成位置を説明する図。
図3】本発明に係るテープ状接点における拡散領域の厚さ(t)及び接合幅(W)を説明する図。
図4】本実施形態におけるテープ状接点の製造工程を説明する図。
図5】本実施形態で製造したテープ状の接点材の断面写真。
図6】実施例1のテープ状接点のろう材(プロジェクション)近傍におけるEPMA分析の結果を示す図。
図7】実施例1、実施例4、従来例の耐久試験後の端子断面の写真である。
図8】開閉型接点の一種である一般的なリレーの構造を説明する図。
図9】フレクシャータイプのリレーの構造を説明する図。
図10】従来のプロジェクション付き溶接材料を適用する接点部材の構成を説明する図。
図11】従来のバックろうを備える接点部材の構成を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の好適な実施例を説明する。
第1実施形態:本実施形態では、接点材料としてテープ状の酸化物分散型Ag系合金、プロジェクションを形成するワイヤ状のろう材として銅系のリン銅ろうを適用してテープ状の接点材を製造した。
【0042】
本実施形態では、下記のように、ワイヤ状ろう材の数と線径において異なる複数の接点材を製造した。中間金属層としてはAgを適用した。
・テープ状接点材料に、テープ状中間金属層及び1本のワイヤ状ろう材(線径:0.16mm又は0.26mm)を接合し、プロジェクションが一つ形成された接点材(実施例1、実施例2、比較例1、比較例2)
・テープ状接点材料に、テープ状中間金属層及び2本のワイヤ状ろう材(線径:0.16mm又は0.26mm)を接合し、プロジェクションが二つ形成された接点材(実施例3、実施例4、実施例5)
【0043】
図4は、テープ状接点材料に、テープ状の中間金属層及び2本のワイヤ状ろう材を接合した接点材(実施例3、実施例4、実施例5)の製造工程である。この図を参照しつつ、本実施形態における各種のテープ状接点材の製造工程を説明する。
【0044】
接点材料として酸化物分散型Ag系合金(母相:Ag(85.5wt%)、分散相:SnO+In、商品名SIE-21DK(田中貴金属工業株式会社製))のテープ材を用意した。また、図4の中間金属層として、純Ag(純度99.9wt%)のテープ材を用意した。そして、これらのテープ材を重ねて加圧して接点材料/中間金属層の2層構造のテープ材を製造した(寸法:幅2.48mm、接点材料厚さ0.315mm、中間金属層厚さ0.05mm)。
【0045】
上記で準備した2層のテープ状の接点材料に、ろう材としてリン銅ろう(Ag15wt%-P5wt%-Cu残(BCuP-5))のワイヤ状ろう材を用意した。本実施形態では2種の線径のワイヤ状ろう材(0.16mm、0.26mm)を用意し、それぞれで接点材を製造した。これらのワイヤ状のろう材をテープ状の接点材料の表面に位置決めして圧接した。
【0046】
接合したテープ材とワイヤ状ろう材について、雰囲気炉で熱処理して拡散領域を形成し、テープ状の接点材を製造した。この熱処理の条件としては、600℃×0.5時間(実施例1~実施例4)、600℃×1時間(実施例5)、300℃×0.5時間(比較例1)、700℃×0.5時間(比較例2)とした。
【0047】
図5は、実施例1~実施例4のテープ状接点材の断面写真である。これらの実施例において、接点材料と中間金属層の幅と厚さは共通する。これらの実施例では、いずれも接点材料への圧接によってワイヤ状ろう材の断面形状が変形し、上側(接点材料との界面)が潰れた円形となっていた。
【0048】
本実施形態では、図5のような断面写真を各実施例で撮影し、断面写真に基づき、接合幅(W)とワイヤ状ろう材の径(D)を測定した。例えば、図5の接点材においては、接合幅(W)が0.2mm(径0.16mmのワイヤを使用した実施例1、実施例)、0.3mm(径0.26mmのワイヤを使用した実施例2、実施例4)であった。また、本実施形態では、ろう材の断面の外周長さと圧接前のワイヤ状ろう材の外周長さとが等しかったので、D=Dとなった。よって、実施例1と実施例3の接合幅Wは、1.25Dであった。実施例2と実施例4の接合幅Wは、1.15Dであった。同様にして、他の実施例及び比較例の接合幅(W)ろう材の径(D)を測定した。
【0049】
そして、各実施例、比較例に係るテープ状の接点材の拡散領域について検討した。図6は、実施例1の接点材のろう材の接合界面付近のEPMA(電子線マイクロプローブ)による分析結果である。本実施形態では、中間金属層(銀層)を適用しており、銀層内部にろう材の成分であるCuが拡散した拡散領域が形成されていた。拡散領域内におけるCuの含有量は傾斜的であった。この図6のEPMA分析のCu濃度のラインに基づいて拡散領域の厚さを測定した。この測定は、ろう材内部におけるCuのラインに対して中心線を引いた後、拡散領域内部における傾斜するCuのライン(ろう材内部のラインから右下方に下がるライン)に対する接線を引いた。そして、これらの線が交差する部分を拡散領域の一端(始点)とした。そして、中間金属層内部におけるCuが含まれていない領域(Cuの強度がゼロに近い値を示す領域)のCuのラインに対して中心線を引き、この線と、拡散領域内に向けて左上方に上がるCuのラインの接線とが交差する部分を拡散領域の他端(終点)とした。このようにして拡散領域の始点と終点を定めて厚さを測定した結果、5.0μmの拡散領域が形成されていることが確認された。本実施形態では、上記実施例1と同様にして、他の実施例及び比較例の拡散領域の厚さを測定した。
【0050】
各実施例及び比較例における接合幅(W)及びろう材の径(D)と、拡散領域の厚さの測定結果を表1に示す。尚、プロジェクションを二つ形成した接点材については、平均値を表1に記載した。
【0051】
【表1】
【0052】
次に、各実施例に係るテープ状の接点材を切断してチップ状の接点部材を製造し、端子に接合したときの耐久性を評価した。この試験では、長さ2.48mmに切断し、電気接点の端子を模擬したCu-Sn0.15%板にチップ状の接点部材を接合した。そしてこの接点部材をリレー(DC14V、30A)にセットして耐久試験を行った。
【0053】
耐久試験では、開閉頻度を0.3秒ON/4.5秒OFFとし、12万回の開閉を行った後に溶着の有無を確認した。また、試験後の端子の断面を観察し、接点部材の接合状態の確認、接点材料の消耗量の確認を行った。この断面観察において、接点材料の残存が確認でき、且つ、接点部材と端子との接合状態に変化がないときを合格「○」と判定した。一方、接点材料に顕著な摩耗が確認された場合、又は、接点部材と端子との接合界面に剥離が見られた場合は、不合格「×」と判定した。
【0054】
尚、本実施形態の耐久試験については、従来技術であるプロジェクションが形成された溶接材料を有する接点部材についても行った。この従来例は、図10のようプロジェクションが一体的に形成されたCu-30%Ni合金からなる溶接材料に、本実施形態と同じ接点材料を接合した接点材である。本実施形態で使用する従来例は、純Agの中間金属を介して溶接材料と接点材料とを接合している。以上、各実施例、比較例、従来例について行った耐久試験の結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
本実施形態の耐久試験では、12万回の開閉動作を行ったが、いずれの接点部材でも溶着はみられなかった。但し、試験後の接点材近傍の断面観察から、実施例と、比較例及び従来例との間において、試験結果に相違が確認された。
【0057】
図7は、実施例1、実施例4、従来例の耐久試験後の端子断面の写真である。図7から、従来例の接点部材では接点材料の大部分が消耗しており、下地(中間金属層であるAg)が露出していた。そのため、耐久試験の結果としては不合格であった。この結果から、従来例の接点材を適用する場合、長期の開閉負荷によって故障が発生すると考えられる。これに対し、実施例1及び実施例4では接点材料が十分残存している上に、接点材と端子との接合状態も良好であったので合格の判定となった。実施例2~実施例5の接点部材の耐久試験結果も同様であった。
【0058】
各実施例と従来例との対比から確認された接点材料の消耗量の相違は、接点材と端子との接合面積の差に起因するものと考えられる。上述したように、本発明は、プロジェクションを備える溶接部材を適用する従来例の接点材と比較すると、接合面積を大きくすることができる。この接合面積の増大によって、接点材料から端子への放熱量が増えることで、接点材料の負荷が軽減したと考えられる。そして、負荷軽減の結果、接点材料の消耗が抑制されたといえる。
【0059】
一方、比較例1及び比較例2の接点材の耐久試験結果が不合格となったのは、断面観察の際に接点材と端子との接合界面で剥離が観察されたことによる。これらの比較例は、拡散領域の厚さが2μm未満(比較例1)又は10μm超(比較例2)となっていた。拡散領域の厚さ不足は、接点材の接合不良による剥離の直接的な要因となると考えられる。また、拡散領域の厚さが過大となった場合には、ろう材の組成変動が大きくなってろう材の接合性が低下したと考えられる。このように、拡散領域の厚さの過不足は、接点材の剥離の要因となり得ると考えられる。今回の耐久試験では、試験中に接点材が剥離し飛散するようなことはなかったが、電気接点の負荷によっては使用中の剥離も生じ得ることから、拡散領域の厚さを適切にする必要が確認された。
【0060】
尚、実施例1、2の接点材について、耐久試験後の拡散領域の厚さを測定したところ、何れも耐久試験前(製造後の状態)と略同じであることが確認された。接点材は、電気接点製造時に端子に接合する際の熱処理や、電気接点駆動中の負荷による発熱等の熱影響が懸念される。本発明の接点部材は、それらの熱影響による構成変化は少ないと考えられる。よって、本発明は、電気接点の端子等に組み込まれ使用されても、構成変化は少なく、安定して作用すると予測される
【0061】
第2実施形態:本実施形態では、組成の異なる複数種のワイヤ状ろう材をテープ状接点材料に接合してテープ状接点材を製造し、その接合力を確認した。ここでは、Ag-Cu合金を基本とし、いくつかの添加金属を添加したAg-Cu合金ろう材をワイヤ(線径:0.16mm)にして、第1実施形態の実施例3と同じ接点材料のテープ材及びAg中間金属層のテープ材に接合・熱処理して接点材を製造した(実施例6~実施例8、参考例1、2、比較例3~比較例5)。プロジェクション等の本数、寸法は実施例3と同じとした。尚、本実施形態で製造した各実施例の接点材は、ろう材界面の拡散領域の厚さが、2μm以上10μm以下の範囲内あることが確認されている。
【0062】
そして、製造したテープ状接点材について、ろう材(プロジェクション)の接合力を確認するための捻回試験を行った。捻回試験では、300mmのテープ状接点材を用意し、捻回角度を360°(1回転)として右に24回転、左に24回転させる捻回を4秒間で行い、捻回後の外観を観察し、ろう材(プロジェクション)の剥離の有無を確認した。この試験結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
捻回試験において、Ag-Cu合金(実施例7、8)或いはAg-Cu合金にP、Snを添加した合金(実施例3、6)を接合した場合、良好な接合力が得られているといえる。これらのZnが含まれないテープ状接点材であれば、用途に応じて任意長さに切断するときでもろう材の剥離の心配はないといえる。一方、参考例1、2及び比較例3~比較例5は、Znを含むAg-Cu合金からなるろう材を適用する例である。比較例3~比較例5は、Znを20質量%以上含むAg-Cu合金であり、捻回試験によってろう材の剥離が生じるので、切断等の取り扱いに注意が必要となる。また、参考例1、2は、Znを15質量%超含むAg-Cu合金であり、部分的であるが剥離が生じた。Zn含有量が15%超20%以下のろう材については、剥離発生に注意をして取り扱うことで、接合不良を生じさせること無く接点性能が確保された接点部材が製造できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、開閉型電気接点の構成材料となるチップ状の接点部材を効率的に製造することができる。この接点部材は、従来技術であるプロジェクション付きの溶接材料が付加された接点部材とはことなり、溶接材料は不要である。そのため、接点材を低背化することができる。また、接合性・耐久性にも優れる。本発明によれば、リレー、スイッチ等の開閉型電気接点を好適に製造に寄与することができる。特に、車載用のリレーにおいては小型化が要求されていることから、本発明はこのような用途に好適である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11