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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-05
(45)【発行日】2022-10-14
(54)【発明の名称】非常用可変指向性アンテナシステム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/36 20060101AFI20221006BHJP
   H01Q 9/16 20060101ALI20221006BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01Q3/36
H01Q9/16
H01Q21/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021067808
(22)【出願日】2021-04-13
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000217653
【氏名又は名称】電気興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信之
(72)【発明者】
【氏名】川井 陽史
(72)【発明者】
【氏名】杉本 智彦
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 一仁
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-023139(JP,U)
【文献】特開平06-338717(JP,A)
【文献】特開平10-065433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/36
H01Q 9/16
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの放射素子が互いに平行に離間して配置された互いに平行な第1のダイポールアンテナを2つと、該第1のダイポールアンテナにそれぞれ接続された給電回路とを含む第1のアンテナ部と、
前記2つの放射素子と平行に配置されている別の2つの放射素子が互いに平行に離間して配置された互いに平行な第2のダイポールアンテナを2つと、該第2のダイポールアンテナにそれぞれ接続された給電回路とを含む第2のアンテナ部と、
前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とに接続され、駆動部と制御部とを含むチルト可変移相器であって、該駆動部は、前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とに対し、前記制御部からの制御信号に従う所定の給電位相で送信機からの出力をそれぞれ給電する、チルト可変移相器と
を含む、少なくとも1つのアンテナパネルと、
前記制御部に接続され、前記給電位相を前記制御部に与えるコントローラと
を含んでなる、非常用可変指向性アンテナシステム。
【請求項2】
前記コントローラは、有線または無線によって前記制御部に前記制御信号を送信している、請求項1に記載の非常用可変指向性アンテナシステム。
【請求項3】
前記第1のダイポールアンテナと前記第2のダイポールアンテナとの長さ方向が垂直または水平になるように配置されている、請求項1または2に記載の非常用可変指向性アンテナシステム。
【請求項4】
前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とのそれぞれに取り付けられた反射板をさらに含み、該反射板は、前記2つの放射素子と前記別の2つの放射素子との長手方向にそれぞれ延在して互いに離間して配置された、複数の金属部材を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の非常用可変指向性アンテナシステム。
【請求項5】
前記給電回路を覆う防水用のカバーをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の非常用可変指向性アンテナシステム。
【請求項6】
複数の前記アンテナパネルを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の非常用可変指向性アンテナシステム。
【請求項7】
複数の前記アンテナパネルが互いに異なる方向に向けて配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の非常用可変指向性アンテナシステム。
【請求項8】
複数の前記アンテナパネルを互いに90°異なる方向に向けて4面に配置して構成される請求項1または2に記載の非常用可変指向性アンテナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上波テレビ放送用の送信アンテナシステムに関し、特に、災害時に設置される非常用の送信アンテナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な地上波テレビ放送用の送信アンテナシステムは、所望数のアンテナパネルと、分岐ケーブルと、電力分配器と、主給電線とによって構成されている。そして、地上波テレビ放送用の送信アンテナシステムは、決められた指向性で送信するように送信鉄塔の上部に設置される。そして、運用上の問題がない限り、設置された後にアンテナシステムの指向性が変更されることはない。一方、設置された後にアンテナシステムの指向性を変更する必要が生じた場合には、例えば、分岐ケーブルや電力分配器などの部品交換が必要となる。
【0003】
上記の送信鉄塔に取り付けられた地上波テレビ放送用の送信アンテナシステムが災害等によって運用困難となった場合には、その代わりとして、非常用送信アンテナシステムが用いられる。この非常用アンテナシステムは、車載型の伸縮柱や簡易的な伸縮柱の先端に取り付けて運用されることを前提としている。この非常用アンテナシステムは、通常の地上波テレビ用の送信アンテナシステムと同様に、設置時に決められた指向性を有するように事前に地上で組み立てられて、車載型の伸縮柱や簡易的な伸縮柱に取り付けられる。そのように伸縮柱に取り付けられた非常用アンテナシステムは、伸縮柱を伸長して設置が完了した後に運用される。
【0004】
ここで、図7A及び図7Bを参照して、軽量であり小さい受風面積を有する、5つのリングアンテナ素子110を有するUHF帯5素子リングアンテナを用いた、従来の非常用アンテナシステム100について説明する。図7Aは、5つのリングアンテナ素子110が異なる4方向(4面)に配置され、1段あたり4面を有する非常用アンテナシステム100の上面図である。また、図7Bは、図7Aに示すX方向から見た場合を示す、非常用アンテナシステム100の側面図である。なお、図7A及び図7Bの非常用アンテナシステム100では4面のものを示しているが、必要に応じて1面~4面までの範囲で面数を変更した構成とすることもできる。
【0005】
一方、非常用アンテナシステム100が運用を開始した後に送信エリアの都合により指向性を変更する必要が生じた場合には、非常用アンテナシステム100の一部の部品を交換する必要がある。そして、部品を交換している間、非常用アンテナシステム100が停波するという運用上の問題が生じる。そのため、運用を開始した後に指向性を変更する必要が生じた場合であっても、停波することのない非常用アンテナシステムが必要となる。
【0006】
次に、図8A及び図8Bを参照して、非特許文献1に記載された、テレビ放送用の4ダイポールアンテナである従来のアンテナパネル1000について説明する。図8Bは、従来のアンテナパネル1000の正面図である。図8Aは、図8Bの従来のアンテナパネル1000の中央付近を長手方向に切断したときの断面図である。従来のアンテナパネル1000は、金属性の反射板1100と、送信機(図示せず)からの出力が入力されるアンテナ入力端に接続され、反射板1100上に設置された給電回路1200と、給電回路1200にそれぞれ接続された4つの放射素子1300と、反射板1100上に設置され、給電回路1200と4つの放射素子1300とを覆うカバー1400とを含んでいる。このような従来のアンテナパネル1000は、4つの放射素子1300のそれぞれに同じ給電位相を供給するために、4つの放射素子1300のそれぞれに電力を供給する給電回路1200の線路長はある決まった長さになっている。また、カバー1400は、雨水などによって給電回路1200及び4つの放射素子1300のいずれかが劣化するのを防止するために、反射板1100と一体化して防水性を有している。
【0007】
ここで、従来のアンテナパネル1000は、4つの放射素子1300のそれぞれに電力を供給する給電回路1200の線路長が一定となっているため、4つの放射素子1300への給電位相を変更するのは困難である。つまり、従来のアンテナパネルは、チルトを変更する装置が実装されていないため、固定チルト(チルト0度)となり、チルト角を変更することができない。
また、従来のアンテナパネル1000は、雨や雪が付着することによる部品の特性変動を防止するために、給電回路1200と放射素子1300との全体が、防水性を有するカバー1400によって覆われている。そのため、従来のアンテナパネル1000を屋外に設置した場合、表面積が比較的に大きい反射板1100またはカバー1400が風圧の影響を受けやすい。加えて、従来のアンテナパネル1000は、総重量も比較的大きいので、従来のアンテナパネル1000が取り付けられる伸縮柱への負荷も大きくなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】電気興業株式会社 形録E4611 「UHF-TV放送用4ダイポールアンテナ(型名U4Dアンテナ)」昭和59年6月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
車載用の伸縮ポール等に設置して運用中であっても指向性(チルト角)を変更することができる非常用可変指向性アンテナシステムを提供する。
また、取り付け方向を変更することにより水平偏波と垂直偏波とのいずれにも対応することができるアンテナパネルを含む非常用可変指向性アンテナシステムを提供する。
さらに、屋外に設置された場合に雨や風による影響を受けにくくするために、比較的に軽量で受風面積の小さいアンテナパネルを含む非常用可変指向性アンテナシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
具体的には、本発明によれば、以下の非常用可変指向性アンテナシステムが提供される。
2つの放射素子が互いに平行に配置された互いに平行な第1のダイポールアンテナを2つと、該第1のダイポールアンテナにそれぞれ接続された給電回路とを含む第1のアンテナ部(3a)と、
前記2つの放射素子と平行に配置されている別の2つの放射素子が互いに平行に配置された互いに平行な第2のダイポールアンテナを2つ、と、該第2のダイポールアンテナにそれぞれ接続された給電回路とを含む第2のアンテナ部(3b)と、
前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とに接続され、駆動部(41)と制御部(42)とを含むチルト可変移相器(4)であって、該駆動部は、前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とに対し、前記制御部からの制御信号に従う所定の給電位相で送信機からの出力をそれぞれ給電する、チルト可変移相器(4)と
を含む、少なくとも1つのアンテナパネル(3)と、
前記制御部に接続され、前記給電位相を前記制御部に与えるコントローラ(5)と
を含んでなる、非常用可変指向性アンテナシステム(1)を提供する。
ここで、前記コントローラは、有線または無線によって前記制御部に前記制御信号を送信している態様であることが好ましい。
また、前記第1のダイポールアンテナと前記第2のダイポールアンテナとの長さ方向が垂直または水平になるように配置されている態様であることがより好ましい。
さらに、前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とのそれぞれに取り付けられた反射板をさらに含み、該反射板は、前記2つの放射素子と前記別の2つの放射素子との長手方向にそれぞれ延在して互いに離間して配置された、複数の金属部材を含む態様であることが好ましい。ここで、前記放射素子を覆う防滴構造をさらに含む態様であることがより好ましい。
加えて、非常用可変指向性アンテナシステムは、複数のアンテナパネルを含む態様であることが好ましい。ここで、前記複数のアンテナパネルは互いに異なる方向に向けて配置されている態様であることや、複数の前記アンテナパネルを互いに90°異なる方向に向けて4面に配置して構成される態様であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
チルト可変移相器によって、水平偏波や垂直偏波における指向性(チルト角)を変更することができる。そのため、車載型の非常用可変指向性アンテナシステムにおいて、車載状態(給電中)である運用開始後に指向性を変更する必要が生じた場合であっても、アンテナを構成する部品等の交換作業が不要となる。そのため、停波することなくアンテナの指向性を変更することができる。
また、指向性など必要に応じて、アンテナパネルの面数をN面(Nは1以上の整数)とした非常用可変指向性アンテナシステムを提供することができる。例えば、運用開始時にはアンテナパネルを4面含む非常用可変指向性アンテナシステムとして運用し、その後の必要に応じて、指向性を変更しつつ、アンテナパネルの面数を1面として運用する等の変更を柔軟に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】Aは、本発明の一実施態様である非常用可変指向性アンテナシステム1の上面図である。Bは、本発明の一実施態様である非常用可変指向性アンテナシステム1の側面図である。
図2】Aは、本発明の別の一実施態様である非常用可変指向性アンテナシステム1’の上面図である。Bは、本発明の別の一実施態様である非常用可変指向性アンテナシステム1’の側面図である。
図3】Aは、図1の非常用可変指向性アンテナシステム1を構成するアンテナパネル3の側面図である。Bは、図1の非常用可変指向性アンテナシステム1を構成するアンテナパネル3の正面図である。
図4】Aは、図2の非常用可変指向性アンテナシステム1’を構成するアンテナパネル3’(垂直偏波)の側面図である。Bは、図2の非常用可変指向性アンテナシステム1’を構成するアンテナパネル3’(垂直偏波)の正面図である。
図5】Aは、給電回路33aがカバー34aで覆われたアンテナパネル3aの正面図である。Bは、Aのアンテナパネル3aの側面図である。
図6】本発明の一実施態様である、4つのアンテナパネルを含むアンテナシステムの給電系統図である。
図7】従来の非常用アンテナシステム100の一例を示す図である。
図8】従来のアンテナパネル1000の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1A及び図1Bを参照して、水平偏波用として利用することができる、本発明の一実施態様である非常用可変指向性アンテナシステム1について説明する。図1Aは、本発明の一実施態様である非常用可変指向性アンテナシステム1の上面図である。図1Bは、図1AのX方向から見た場合のアンテナシステム1の側面図である。ここで、図1A及び図1Bのアンテナシステム1は、例えば、端部21を介して伸縮柱(図示せず)に搭載可能な取付部材2を含む。伸縮柱(図示せず)は、例えば、移動可能な車両に設置されうる。そして、取付部材2と伸縮柱(図示せず)とは、接続金具を用いて取り付けられている。ここで、図1A及び図1Bのアンテナシステム1は、互いに異なる方向に外向きに取付部材2に取り付けられた4つのアンテナパネル3を含む。アンテナパネル3は、取付部材2に取り付けられる反射板31と、反射板31に取り付けられ、アンテナ入力端を有する給電回路33と、給電回路33に同軸給電線を用いて電気的に接続された放射素子32と、前記アンテナ入力端を介して送信機(図示せず)からの出力を所定の給電位相で放射素子32に給電するチルト可変移相器4とを含む。ここで、図1Bを参照すると、アンテナパネル3は、それぞれの長さ方向が水平になるように配置された2つの放射素子32を互いに離間して配置したダイポールアンテナを2組含む。ここで、アンテナパネル3は、共通する連結部材にそれぞれ取り付けられた、第1のアンテナ部3aと第2のアンテナ部3bとチルト移相器4とを含む。第1のアンテナ部3aと第2のアンテナ部3bとは互いに同じ構成を有している。第1のアンテナ部3aは、反射板31を介して、共通する連結部材に取り付けられている。同様に、第2のアンテナ部3bについても、反射板31を介して共通する連結部材に取り付けられている。そして、図1Bを参照すると、この2組のダイポールアンテナは、互いに垂直方向に離間して取付部材2に取り付けられている。なお、アンテナパネル3のより詳細な構成については、後述する図3A及び図3Bにおいて説明する。また、ここではアンテナパネル3が互いに直交する4方向に向けて配置されている例を用いて説明したが、アンテナパネルが1方向だけに向いていてもよいし、任意の数の方向に向けて配置することもできる。
【0014】
次に、図2A及び図2Bを参照して、垂直偏波用として利用することができる、本発明の一実施態様であるアンテナシステム1’について説明する。図2Aは、本発明の一実施態様であるアンテナシステム1’の上面図である。図2Bは、図2AのX方向から見た場合のアンテナシステム1’の側面図である。ここで、図2A及び図2Bのアンテナシステム1は、図1A及び図1Bのアンテナシステム1と同様に、車両に設置された伸縮柱(図示せず)に搭載可能な取付部材2の端部21に取り付けられている。ここで、図2A及び図2Bのアンテナシステム1’は、互いに異なる方向に外向きに取付部材2に取り付けられた4つのアンテナパネル3’を含む。アンテナパネル3’は、取付部材2に取り付けられる反射板31’と、反射板31’に取り付けられ、アンテナ入力端を有する給電回路33’と、給電回路33’に同軸給電線を用いて電気的に接続された放射素子32’と、前記アンテナ入力端を介して送信機(図示せず)からの出力を所定の給電位相で放射素子32’に給電するチルト可変移相器4とを含む。ここで、図2Bを参照すると、アンテナパネル3’は、それぞれの長さ方向が垂直になるように配置された2つの放射素子32’を互いに離間して配置したダイポールアンテナを2組含む。ここで、アンテナパネル3’は、共通する連結部材にそれぞれ取り付けられた、第1のアンテナ部3a’と第2のアンテナ部3b’とチルト移相器4とを含む。第1のアンテナ部3a’と第2のアンテナ部3b’とは互いに同じ構成を有している。第1のアンテナ部3a’は、反射板31’を介して、共通する連結部材に取り付けられている。同様に、第2のアンテナ部3b’についても、反射板31’を介して共通する連結部材に取り付けられている。そして、図2Bを参照すると、この2組のダイポールアンテナは、互いに垂直方向に離間して取付部材2に取り付けられている。なお、アンテナパネル3’のより詳細な構成については、後述する図4A及び図4Bにおいて説明する。
【0015】
図1A図2Bに示すように、水平偏波用のアンテナシステム1と垂直偏波用のアンテナシステム1’との相違は、アンテナパネル3とアンテナパネル3’との相違による。そして、かかる相違は、取付部材2に設置される2つのダイポールアンテナの方向が90°異なることによる。換言すると、水平偏波用のアンテナパネル3を設置する方向を取付部材2に対して90°変更することにより、垂直偏波用のアンテナパネル3’として利用することができる。同様に、垂直偏波用のアンテナパネル3’を設置する方向を取付部材2に対して90°変更することにより、水平偏波用のアンテナパネル3として利用することができる。
【0016】
次に、図3A及び図3Bを参照して、アンテナパネル3について詳細に説明する。図3Aは、アンテナパネル3の側面図である。図3Bは、図3AのX方向から見た場合のアンテナパネル3の正面図である。ここで、アンテナパネル3は、共通する連結部材にそれぞれ取り付けられた、第1のアンテナ部3aと第2のアンテナ部3bとチルト移相器4とを含む。ここで、第1のアンテナ部3aと第2のアンテナ部3bとは互いに同じ構成を有している。第1のアンテナ部3aは、反射板31-1a及び31-2aを介して、共通する連結部材に取り付けられている。同様にして、第2のアンテナ部3bも、共通する連結部材に取り付けられている。第1のアンテナ部3aは、反射板31-1a及び31-2aと、反射板31-1a及び31-2aの長手方向に対してそれぞれ平行に配置された2つのダイポールアンテナ32-1a及び32-2aと、2つのダイポールアンテナ32-1a及び32-2aに送信機(図示せず)からの出力をそれぞれ入力する給電回路33aとを含む。チルト移相器4は、給電回路33aのアンテナ入力端を介して、第1のアンテナ部3aに接続されている。同様にして、チルト移相器4は、第2のアンテナ部3bにも接続されている。そして、チルト移相器4は、送信機(図示せず)からの出力を所定の給電位相で第1のアンテナ部3aと第2のアンテナ部3bとにそれぞれ給電する。ここで、チルト移相器4は、チルト移相器4と第1のアンテナ部3aとの間の線路長と、チルト移相器4と第2のアンテナ部3bとの間の線路長とが異なるように制御することによって、上記の所定の給電位相で給電することができる。
【0017】
次に、図4A及び図4Bを参照して、アンテナシステム3’について詳細に説明する。図4Aは、アンテナパネル3’の側面図である。図4Bは、図4AのX方向から見た場合のアンテナパネル3’の正面図である。ここで、アンテナパネル3’は、共通する連結部材にそれぞれ取り付けられた、第3のアンテナ部3a’と第4のアンテナ部3b’とチルト移相器4とを含む。ここで、第3のアンテナ部3a’と第4のアンテナ部3b’とは互いに同じ構成を有している。第3のアンテナ部3a’は、反射板31’-1a及び31’-2aを介して、共通する連結部材に取り付けられている。同様にして、第4のアンテナ部3b’も、反射板31’-1b及び31’-2bを介して、共通する連結部材に取り付けられている。第3のアンテナ部3a’は、反射板31’-1a及び31’-2aと、反射板31’-1a及び31’-2aの長手方向に対してそれぞれ平行に配置された2つのダイポールアンテナ32’-1a及び32’-2aと、2つのダイポールアンテナ32’-1a及び32’-2aに送信機(図示せず)からの出力をそれぞれ入力する給電回路33’aとを含む。チルト移相器4は、給電回路33’aのアンテナ入力端を介して、第3のアンテナ部3a’に接続されている。同様にして、チルト移相器4は、第2のアンテナ部3b’にも接続されている。そして、チルト移相器4は、送信機(図示せず)からの出力を所定の給電位相で第3のアンテナ部3a’と第4のアンテナ部3b’とにそれぞれ給電する。ここで、チルト移相器4は、チルト移相器4と第3のアンテナ部3a’との間の線路長と、チルト移相器4と第2のアンテナ部3b’との間の線路長とが異なるように制御することによって、上記の所定の給電位相で給電することができる。
【0018】
次に、図5A及び図5Bを参照して、本発明の別の実施態様である、防水用のカバー34aを備えたアンテナパネル3aについて説明する。図5Aは、防水用のカバー34aを備えたアンテナパネル3aの正面図である。図5Bは、図5Aのアンテナパネル3aの側面図である。ここで、防水用のカバー34aは、図5A及び図5Bにおいて一点鎖線で示されるように、給電回路33aを覆うように形成されている。すなわち、図5A及び図5Bに示すアンテナパネル3aは、雨滴による影響が比較的大きい給電回路33aをカバー34aで覆っている。その一方、雨滴による影響が比較的少ない、給電回路33aと放射素子32-1aとの接続部分と、給電回路33aと放射素子32-2aとの接続部分と、放射素子32-1a及び32-2aとについては、カバー34aによって覆われていない。そのため、図5A及び図5Bに示すアンテナパネル3aは、反射板と一体化したカバーを有する従来のアンテナパネル1000と比較して、図5Aの正面方向及び図5Bの側面方向に対する表面積(またはフットプリント)を比較的に小さくすることができる。したがって、図5A及び図5Bに示すアンテナパネル3aは、従来のアンテナパネル1000と比較して、軽量化を実現することができ、受風面積が小さいため風圧による影響を少なくすることができる。
【0019】
次に図6を参照して、本発明の一実施態様であるアンテナシステム1の給電系統図を説明する。図6は、第1のアンテナ部3a及び第2のアンテナ部3bを含むアンテナパネル3と、第1のアンテナ部3a及び第2のアンテナ部3bにそれぞれ接続されたチルト移相器4とを含む組を4組含むアンテナシステム1を示している。ここで、チルト移相器4はアンテナパネル3に接続されている。同様に、チルト移相器4a、4b及び4cは、他のアンテナパネルの1つにそれぞれ接続されている。ここで、チルト移相器4は、電力分配器6を介して送信機(図示せず)からの出力を所定の給電位相で第1のアンテナ部3a及び第2のアンテナ部3bにそれぞれ給電する駆動部41と、コントローラ5から受信した信号に従って、所定の給電位相を駆動部41に出力する制御部42とを含む。駆動部41は、制御部42から受信した所定の給電位相に従って、第1のアンテナ部3aと第2のアンテナ部3bとの線路長を変更する。つまり、アンテナパネル3の指向性(チルト角)の変更は、第1のアンテナ部3aと第2のアンテナ部3bとにチルト可変移相器4が与える給電位相を変更することによって達成される。そして、制御部42はチルト移相器4aの制御部42aに接続され、制御部42aはチルト移相器4bの制御部4bに接続され、制御部4bはチルト移相器4cの制御部42cに接続されている。そのため、コントローラ5からの信号は、制御部42、42a、42b及び42cを介して、チルト移相器4、4a、4b及び4cの駆動部41、41a、41b及び41cにそれぞれ与えられる。そのため、コントローラ5からの所定の給電位相に従って各アンテナパネルを給電することができる。このことは、アンテナパネル3の設置場所とは離れた場所からユーザがコントローラ5を操作してアンテナパネル3の指向性(チルト角)を変更することができることを意味する。すなわち、ユーザがコントローラ5を操作することにより、アンテナパネル3のそれぞれのチルト角を遠隔で変更することができる。そのため、運用開始後に指向性(チルト角)を変更する必要が生じた場合であっても、アンテナパネルやアンテナシステムの一部の部品を交換する作業等が不要となる。そのため、かかる部品を交換する作業に伴って発生する停波という不具合を回避することができる。
【0020】
なお、図6では、コントローラ5と制御部42とがケーブルを用いて有線で接続されている場合を説明した。しかしながら、この場合に限らず、例えば、コントローラ5と制御部42とが無線で接続されていてもよい。
【0021】
ここで、図6は、第1のアンテナ部3aと第2のアンテナ部3bとを含むアンテナパネル3を4つ含むアンテナシステム1を一例として説明した。しかしながら、この場合に限らず、例えば、第3のアンテナ部3a’と第4のアンテナ部3b’とを含むアンテナパネル3’を4つ含むアンテナシステム1’についても、図6に示すアンテナシステム1と同様に、送信機(図示せず)からの出力をコントローラ5からの所定の給電位相に従って各アンテナパネルに給電することができる。
【0022】
図6では、取付部材2に対して外向きにそれぞれ異なる方向を向くように設置された4つのアンテナパネル3を1段で構成としたアンテナシステム1について説明した。しかしながらこの場合に限らず、例えば、アンテナシステムを設置する場所の状況などに応じて、N面(Nは1以上の整数)からなるアンテナパネル3を含むアンテナシステムを採用することもできる。特に、テレビ放送用の電波をある方向にのみ送信すればよい場合には、1面のアンテナパネル3とチルト移相器4とを含むアンテナシステムを採用することもできる。
【0023】
以上のように、本発明によれば、軽量化されて受風面積が小さく、水平偏波及び垂直偏波の両方に容易に対応することができるアンテナパネルを提供することができる。また、チルト可変移相器を備えることにより各アンテナパネルの指向性(チルト角)を容易に変更することができるアンテナシステムを提供することができる。
【0024】
本明細書において、特定の実施形態について本発明を具体的に説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途の単なる例示にすぎない。したがって、例示の実施形態に対して多数の修正を実行することができることや、特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の構成を採用することができることが当業者に理解されるであろう。
なお、本願の出願当初の開示事項を維持するために、本願の出願当初の請求項1~8の記載内容を以下に追加する。
(請求項1)
2つの放射素子が互いに平行に離間して配置された互いに平行な第1のダイポールアンテナを2つと、該第1のダイポールアンテナにそれぞれ接続された給電回路とを含む第1のアンテナ部と、
前記2つの放射素子と平行に配置されている別の2つの放射素子が互いに平行に離間して配置された互いに平行な第2のダイポールアンテナを2つと、該第2のダイポールアンテナにそれぞれ接続された給電回路とを含む第2のアンテナ部と、
前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とに接続され、駆動部と制御部とを含むチルト可変移相器であって、該駆動部は、前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とに対し、前記制御部からの制御信号に従う所定の給電位相で送信機からの出力をそれぞれ給電する、チルト可変移相器と
を含む、少なくとも1つのアンテナパネルと、
前記制御部に接続され、前記給電位相を前記制御部に与えるコントローラと
を含んでなる、非常用可変指向性アンテナシステム。
(請求項2)
前記コントローラは、有線または無線によって前記制御部に前記制御信号を送信している、請求項1に記載の非常用可変指向性アンテナシステム。
(請求項3)
前記第1のダイポールアンテナと前記第2のダイポールアンテナとの長さ方向が垂直または水平になるように配置されている、請求項1または2に記載の非常用可変指向性アンテナシステム。
(請求項4)
前記第1のアンテナ部と前記第2のアンテナ部とのそれぞれに取り付けられた反射板をさらに含み、該反射板は、前記2つの放射素子と前記別の2つの放射素子との長手方向にそれぞれ延在して互いに離間して配置された、複数の金属部材を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の非常用可変指向性アンテナシステム。
(請求項5)
前記放射素子を覆う防滴構造をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の非常用可変指向性アンテナシステム。
(請求項6)
複数の前記アンテナパネルを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の非常用可変指向性アンテナシステム。
(請求項7)
複数の前記アンテナパネルが互いに異なる方向に向けて配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の非常用可変指向性アンテナシステム。
(請求項8)
複数の前記アンテナパネルを互いに90°異なる方向に向けて4面に配置して構成される請求項1または2に記載の非常用可変指向性アンテナシステム。
【符号の説明】
【0025】
1、1’ 非常用可変指向性アンテナシステム
2 取付部材
3、3’ アンテナパネル
3a 第1のアンテナ部
3b 第2のアンテナ部
3a’ 第3のアンテナ部
3b’ 第4のアンテナ部
31、31-1a、31-2a 反射板
32、32-1a、32-2a 放射素子
33、33a、33’a、33’b 給電回路
34a カバー
4、4a、4b、4c チルト可変移相器
41、41a、41b、41c 駆動部
42、42a、42b、42c 制御部
5 コントローラ
6 電力分配器
【要約】      (修正有)
【課題】運用を開始した後に指向性を変更する必要が生じた場合であっても、停波することのない非常用アンテナシステムを提供する。
【解決手段】非常用可変指向性アンテナシステムにおいて、アンテナパネル3は、2つの放射素子が互いに平行に配置された互いに平行な第1のダイポールアンテナを2つ含む第1のアンテナ部3aと、別の2つの放射素子が互いに平行に配置された互いに平行な第2のダイポールアンテナを2つ含む第2のアンテナ部3bと、第1のアンテナ部3aと第2のアンテナ部3bとに接続される駆動部41と制御部42とを含むチルト可変移相器4を備える。第1のアンテナ部3a、第2のアンテナ部3bの給電位相を、制御部42に与えるコントローラ5により制御する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8