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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】流体制御弁及び流体制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/32 20060101AFI20221007BHJP
   F16K 1/00 20060101ALI20221007BHJP
   F16K 1/36 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
F16K1/32 C
F16K1/00 E
F16K1/32 B
F16K1/00 A
F16K1/36 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018037148
(22)【出願日】2018-03-02
(65)【公開番号】P2019152257
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-02-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】安田 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】ディック ジョン
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-051516(JP,U)
【文献】特開平08-277960(JP,A)
【文献】特開平04-191576(JP,A)
【文献】特開平11-280411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00-1/54
7/00-7/20
13/00-13/10
17/18-17/34
25/00-25/04
29/00-29/02
31/12-31/165
31/36-31/62
33/00
37/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室の一部を構成する弁座と、
前記弁室内に設置され、前記弁座に対して接離方向へ移動する弁体と、
前記弁体を移動させるアクチュエータと、
前記アクチュエータの動力を前記弁体に伝達するプランジャとを備え、
前記弁体及び前記プランジャが、前記弁体及び前記弁座の接触に伴う前記プランジャの傾斜を抑制する傾斜抑制突起を介して1点でのみ接触しており、
前記傾斜抑制突起が前記プランジャの軸上に位置しており、
前記アクチュエータの動力を前記プランジャを介して前記弁体に伝達した際に、前記弁体が、前記プランジャの軸と直交する方向から視て、前記傾斜抑制突起を介した前記プランジャとの接点を中心に回転して前記プランジャに対して傾斜できるように構成されていることを特徴とする流体制御弁。
【請求項2】
前記弁体及び前記プランジャのいずれか一方又は双方に前記傾斜抑制突起が設けられている請求項1記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記傾斜抑制突起が、曲面状になっている請求項1又は2のいずれかに記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記傾斜抑制突起の頂点が、前記弁体及び前記プランジャの軸上に位置する請求項1乃至3のいずれかに記載の流体制御弁。
【請求項5】
前記弁体を収容する弁室の少なくとも一部を構成し、前記プランジャの周面に接続されるダイアフラムをさらに備え、
前記ダイアフラムが、前記弁室側を向く第1平面と前記弁室と反対側を向く第2平面とを有し、
前記第2平面が、前記プランジャの径方向に対し、前記第1平面の外縁又は当該外縁よりも外側まで延伸している請求項1乃至4のいずれかに記載の流体制御弁。
【請求項6】
前記弁体を支持する弾性体をさらに備え、
前記弾性体が、前記プランジャによって前記弁体が押圧された状態で、前記弁体を前記プランジャ側へ押圧するように構成されている請求項1乃至5のいずれかに記載の流体制御弁。
【請求項7】
前記請求項1乃至6のいずれかに記載の流体制御弁を備えた流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御弁及び流体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から流体制御装置(所謂マスフローコントローラ)に用いられる流体制御弁として、特許文献1には、弁座と、弁座に対して接離方向へ移動する弁体と、弁体を移動させるアクチュエータと、アクチュエータの動力を弁体に伝達するプランジャと、弁体を収容する弁室の少なくとも一部を構成し、プランジャの周面に接続されるダイアフラムと、を備えたものが開示されている。
【0003】
ところで、前記従来の流体制御弁においては、弁体及びプランジャを面接触させる構造が採用されている。このような構成においては、弁体及び弁座の機械加工によって生じる公差の影響を受け易く、弁体及び弁座の接触に伴って生じる当該弁体の傾斜によってプランジャが傾斜してしまうため、各部材の製作工程や各部材の組立工程において高い精度が要求される。また、弁体及びプランジャが面接触された状態が維持されると、その隙間に流体が滞留し、この滞留した流体によって弁体及びプランジャが劣化してしまうことがあった。
【0004】
さらに、前記従来の流体制御弁においては、ダイアフラムの径が小さく、その撓み量も小さくなり、これに伴ってプランジャの可動範囲も小さくなることから、制御可能な流量レンジが比較的狭くなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-50158
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、弁体及び弁座を接触させた場合に、プランジャが傾斜し難く、また、弁体とプランジャとの間に流体が滞留し難い構造の流体制御弁を提供することを主な課題とするものである。また、本発明は、制御可能な流量レンジを比較的広く設定できる構造の流体制御弁を提供することも課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る流体制御弁は、弁座と、前記弁座に対して接離方向へ移動する弁体と、前記弁体を移動させるアクチュエータと、前記アクチュエータの動力を前記弁体に伝達するプランジャとを備え、前記弁体及び前記プランジャが、前記弁座及び前記弁体の接触に伴って生じる前記プランジャの傾斜を抑制する傾斜抑制突起を介して接触していることを特徴とするものである。
【0008】
このようなものであれば、弁体及びプランジャが傾斜抑制突起を介して接触しているため、弁体及び弁座の接触に伴って生じる当該弁体の傾斜の影響がプランジャに伝わり難くなる。これにより、プランジャの弁座に対する傾斜が一定に保持され易くなる。なお、弁体を支持する部材に伴って生じる当該弁体の傾斜もプランジャに伝わり難くなる。また、弁体及びプランジャの間の隙間に流体が滞留し難くなり、弁体及びプランジャが接触された状態が維持されたとしても、弁体及びプランジャが劣化し難くなる。
【0009】
また、具体的には、前記弁体及び前記プランジャのいずれか一方又は双方に傾斜抑制突起が設けられているものであって、この場合、前記傾斜抑制突起が、曲面状になっているものであってもよい。なお、傾斜抑制突起を曲面状にすれば、傾斜抑制突起の接触箇所の潰れを抑制できる。
【0010】
また、前記傾斜抑制突起の頂点が、前記弁体及び前記プランジャの軸上に位置するものであってもよい。なお、軸とは、弁体及びプランジャの径方向に対する中心を通過する軸である。また、弁体及びプランジャにおいて、その一部又は全部が回転対称な形状である場合には、その回転対称の中心となる軸ともいえる。
【0011】
また、前記弁体を収容する弁室の少なくとも一部を構成し、前記プランジャの周面に接続されるダイアフラムをさらに備え、前記ダイアフラムが、前記弁室側を向く第1平面と前記弁室と反対側を向く第2平面とを有し、前記第2平面が、前記プランジャの径方向に対し、前記第1平面の外縁又は当該外縁よりも外側まで延伸しているものであってもよい。
【0012】
このようなものであれば、従来のダイアフラムに比べて、同じ径の筐体に対して比較的大きな径のダイアフラムを設けることができるようになり、ダイアフラムの撓み量も増す。これにより、ダイアフラムに接続されたプランジャの可動範囲が大きくなり、その結果、流体制御弁で制御できる流量レンジを広く(大きく)設定できるようになる。
【0013】
また、前記弁体を支持する弾性体をさらに備え、前記弾性体が、前記プランジャによって前記弁体が押圧された状態で、前記弁体を前記プランジャ側へ押圧するように構成されているものであってもよい。
【0014】
このようなものであれば、弾性体の押圧力によって弁体の平行度が保たれる。
【0015】
また、本発明は、前記いずれかの流体体制御弁を備えた流体制御装置である。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した流体制御弁によれば、弁体及び弁座を接触させた場合に、プランジャが傾斜し難く、また、弁体とプランジャとの間に流体が滞留し難くなる。制御可能な流量レンジを比較的広く設定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1に係る流体制御装置の全体構成を示す模式図である。
図2】実施形態1に係る流体制御弁の構成を示す部分模式図である。
図3】実施形態1に係る流体制御弁を構成する一部の部品を分解した状態を示す断面斜視図である。
図4】実施形態1に係る流体制御弁を構成する一部の部品を組み立てた状態を示す断面斜視図である。
図5】実施形態1に係る流体制御弁を構成するプランジャの一部を示す拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る流体制御弁及びその流体制御弁を用いた流体制御装置を図面に基づいて説明する。
【0019】
本発明に係る流体制御装置は、半導体製造プロセスに使用される所謂マスフローコントローラである。なお、本発明に係る流体制御装置は、半導体制御プロセスだけでなく、その他のプロセスにおいても使用することができる。
【0020】
<実施形態1> 本実施形態に係る流体制御装置MFCは、図1に示すように、圧力式のものである。具体的には、流体制御装置MFCは、その内部に流路Lが設けられたブロック体Bと、ブロック体Bに設置される流体制御弁Vと、ブロック体Bの流体制御弁Vよりも下流側に設置される一対の圧力センサPS1,PS2と、一対の圧力センサPS1,PS2で測定される圧力値に基づき算出される流路Lの流量値が予め定められた目標値に近づくように流体制御弁Vをフィードバック制御する制御部Cと、を備えている。
【0021】
前記ブロック体Bは、矩形状のものであり、その所定面に流体制御弁V及び一対の圧力センサPS1,PS2が設置されている。また、ブロック体Bには、その所定面に流体制御弁Vを設置するための凹状の収容部B1が設けられており、その収容部B1によって流路Lが上流側流路L1と下流側流路L2とに分断されている。そして、収容部B1には、その底面に上流側流路L1の一端が開口していると共に、その側面に下流側流路L2の一端が開口している。
【0022】
一対の圧力センサPS1,PS2は、流路Lにおける層流素子S1の上流側と下流側にそれぞれ接続されており、いずれも一対の圧力センサPS1,PS2の出力に基づいて流量を算出する流量算出部S2に接続されている。一対の圧力センサPS1,PS2は、ブロック体Bの所定面に対して流体制御弁Vと共に一列に並べて取り付けてある。
【0023】
前記流体制御弁Vは、所謂ノーマルオープンタイプのものである。具体的には、流体制御弁Vは、ブロック体Bの収容部B1に嵌め込まれる弁座10と、弁座10に対して接離方向へ移動できるように設置された弁体20と、弁体20を移動させるアクチュエータ30と、弁体20とアクチュエータ30との間に介在し、アクチュエータ30の動力を弁体20に伝達するプランジャ40と、アクチュエータ30とプランジャ40との間に介在し、プランジャ40をアクチュエータ30に接続する接続機構50と、弁体20を収容する弁室VRの一部を構成し、プランジャ40と一体的に接続された薄膜状のダイアフラム60と、プランジャ40に設置され、弁座10に対する弁体20の位置を示す出力値を出力する位置センサ70と、を備えている。
【0024】
また、前記流体制御弁Vは、アクチュエータ30及びプランジャ40を内部空間に収容し、ブロック体Bの所定面に設置される略筒状の筐体80を備えている。筐体80は、組立を考慮して複数の部品に分割されており、各部品は、ネジ止め或いはカシメ等によって連結される。なお、筐体80には、その一端側に内部空間をダイアフラム60によって仕切って形成された凹部81が設けられている。そして、ブロック体Bの収容部B1に弁座10を嵌め込んだ状態で、その収容部B1を塞ぐように筐体80の一端を所定面に密着させることにより、その一端側に設けられた凹部81によって弁室VRが形成されるように構成されている。よって、弁室VRは、その内面の一部、具体的には、弁座10と対向する面がダイアフラム60で構成される。そして、流体制御弁Vは、このダイアフラム60の撓みを利用し、弁室VRの気密性を保持しながら、アクチュエータ30の動力をプランジャ40を介して弁体20に伝達するようになっている。
【0025】
次に、本実施形態に係る流体制御弁Vの構成する各部材を図2図5に基づき詳細に説明する。なお、図3及び図4は、流体制御弁Vを構成する部品、特に、プランジャ40や弁体10及びその周辺を構成する部品のみを図示している。
【0026】
前記弁座10は、ブロック体Bの収容部B1に嵌り込むブロック状のものである。そして、弁座10は、ブロック体Bの収容部B1に嵌め込んだ状態で、そのブロック体Bの所定面と同一方向を向く面が弁座面11となっており、その弁座面11が弁室VRの内面の一部を構成している。また、弁座10の内部には、上流側流路L1と連通する第1流路l1と下流側流路L2と連通する複数の第2流路l2とが設けられている。
【0027】
前記第1流路l1は、その一端が弁座面11の中央に開口していると共に、その他端が収容部B1の底面と対向する面に開口している。また、前記第2流路l2は、その一端が弁座面11の中央を中心とした同心円上に開口していると共に、その他端が収容部B1の内側面と対向する外側面に開口している。そして、弁座10の外側面は、段状になっており、弁座面11側が収容部B1の内側面と密着するようになっていると共に、弁座面11と反対面側が収容部B1の内側面と隙間12を空けて対向するようになっている。これにより、ブロック体Bの収容部B1に弁座10を嵌め込んだ状態で、第1流路L1が上流側流路l1と連通すると共に、第2流路L2が隙間12を介して下流側流路l2と連通するようになっている。
【0028】
前記弁座面11には、その中央を中心として同心円状に複数の導通溝13が形成されている。そして、各流通溝13には、第2流路l2へと連通する複数の導通孔14が等間隔に配置されている。これにより、弁室VR内に滞留する流体が偏りなく第2流路l2へ導出されるようになっている。
【0029】
前記弁体20は、弁座面11と対向する平坦な着座面21を有する薄板状のものである。そして、弁体20には、着座面21と反対側の面であるダイアフラム60と対向する面に曲面状(具体的には、球面状)の傾斜抑制突起22が設けられている。なお、傾斜抑制突起22は、ダイアフラム60に接続されるプランジャ40と対向するように設けられている。また、傾斜抑制突起22は、弁体20の軸(図2中、一点鎖線にて示す。)上にその頂点が位置するように設けられており、また、その頂点がプランジャ40の軸(図2中、一点鎖線にて示す。)上に位置するように配置されている。また、弁体20は、弁座面11に対し、その弁座面11に設置された支持リング23上に載置されるリング状の板バネ24(弾性体)を介して支持されている。これにより、弁体20は、弁座10側に対する押圧力に対して板バネ24によって反発するようになっている。
【0030】
前記アクチュエータ30は、ピエゾ素子を複数枚積層してなるピエゾスタック31と、ピエゾスタック31に対して電圧を印加するための端子32(図1参照)と、を備えている。そして、アクチュエータ30は、筐体80の他端側に保持されており、端子32を介して印加される電圧によってピエゾスタック31が筐体80の一端側に向かって伸長するように構成されている。
【0031】
前記プランジャ40は、その一端側がダイアフラム60と一体的に形成され、その他端側がアクチュエータ30側へ伸びる棒状のものである。そして、プランジャ40は、ダイアフラム60とアクチュエータ30との間で分割されており、ダイアフラム60と接続される第1分割体41と、第1分割体41よりもアクチュエータ30側に配置される第2分割体42と、を備えている。
【0032】
前記第1分割体41は、その弁体20側の周面にダイアフラム60が一体的に形成されている。そして、第1分割体41は、その弁体20側の先端面が当該弁体20の傾斜抑制突起22と接触するように構成されている。具体的には、第1分割体41(プランジャ40)は、その軸上に位置する点で傾斜抑制突起22の頂点と点接触している。ここで、点接触とは、弁体20及びプランジャ40が厳密に点で接触している状態の他、経年劣化によって弁体20及びプランジャ40の接触点が変形して厳密に点接触していないような状態や、弁体20及びプランジャ40の製造において生じる誤差等によって厳密に点接触していないような状態も含まれる。また、第1分割体41は、そのアクチュエータ30側に第2分割体42と連結される連結凸部41zが設けられている。
【0033】
前記第2分割体42は、そのアクチュエータ30側の周面にネジ溝42xが形成されている。そして、第2分割体42は、そのアクチュエータ30側が接続機構50を介してアクチュエータ30に接続されている。具体的には、接続機構50は、第2分割体42のネジ溝42xが嵌り込むネジ孔51xを備えた略ナット状のネジ部材51と、ネジ部材51と嵌り合ってアクチュエータ30と接触する接触部材52と、を備えており、これらの部材51,52を介して第2分割体42は、アクチュエータ30に接続されている。また、第2分割体42は、その弁体20側に第1分割体41と連結される連結凹部42zが設けられている。
【0034】
なお、前記ネジ部材51及び前記接触部材52は、プランジャ40の軸方向に対して交差する方向(直交する方向)へ互いに摺動できるように接続されている。これにより、前記各部材の製造や組立てによる誤差によって生じる前記軸方向と直交する方向への軸ズレを吸収できるようになっている。
【0035】
また、前記第2分割体42は、押圧機構90によってアクチュエータ30側に押圧される構造になっている。具体的には、押圧機構90は、筐体80内で位置ズレしないように保持された支持部材91と、第1分割体41が通され、支持部材91に一端が支持される弾性体92(例えば、コイルバネ)と、を備えている。そして、第2分割体42は、プランジャ40がアクチュエータ30に押圧されて弁体20側へ移動し、ダイアフラム60が弁室VR側へ撓んだ状態になると、弾性体92によってアクチュエータ30側に押圧されるようになっている。
【0036】
次に、前記第1分割体41及び前記第2分割体42の連結構造について図5に基づき詳述する。
【0037】
前記第1分割体41及び前記第2分割体42は、連結凸部41z及び連結凹部42zを介して互いに連結するように構成されている。前記連結凸部41zは、断面T字状に形成されている。連結凸部41zには、その外周面に嵌合片41aが設けられている。なお、嵌合片41aは、プランジャ40の軸方向に伸びる軸を中心として回転対称となる形状になっており、これにより、プランジャ40の周方向に周回する形状になっている。また、前記連結凹部42xは、断面T字状に形成されており、一側面から当該一側面と反対面へ貫通している。連結凹部42xには、その内周面に嵌合片41aが嵌り込む嵌合溝42aが設けられている。
【0038】
また、嵌合溝42aのプランジャ40の軸方向に対する幅は、嵌合片41aの当該軸方向に対する幅よりも所定距離αだけ長くなっている。さらに、嵌合溝42aのプランジャ40の軸方向と直交する方向に対する径は、嵌合片41aの当該直交する方向に対する径よりも所定距離βだけ長くなっている。
【0039】
前記第1分割体41及び前記第2分割体42は、連結凸部41aを連結凹部42aにスライドして嵌め込んで連結できるように構成されており、この時、嵌合片41aに嵌合溝42aが嵌り込んだ状態となる。そして、第2分割体42は、嵌合片41a及び嵌合溝42aの嵌め合わせにより、嵌合片41aに沿って嵌合溝42aを摺動させて、第2分割体42の周方向(図3中、矢印A方向)へフリー回転するように構成されている。言い換えれば、第2分割体42は、第1分割体41に対し、ネジ部材51の締め方向及び緩め方向へ回転自在になっている。また、第2分割体42は、嵌合片41a及び嵌合溝42aの嵌め合わせにより、嵌合片41aに沿って嵌合溝42aをプランジャ40の軸方向へ摺動させて所定距離αスライドするように構成されている。さらに、第2分割体42は、嵌合片41a及び嵌合溝42aの嵌め合わせにより、嵌合片41aに沿ってプランジャ40の軸方向と直交する方向へ摺動させて所定距離βスライドできるように構成されている。
【0040】
前記ダイアフラム60は、筐体80の内部空間を仕切るように形成されており、弁室VRの気密性を保持しながらプランジャ40の動きを弁体20に伝達する役割を果たすものである。そして、ダイアフラム60は、弁室VR側を向く第1平面61と、弁室VRと反対側(筐体80の内部空間側)を向く第2平面62と、を有している。そして、第2平面62が、ダイアフラム60に接続されたプランジャ40の径方向に対し、第1平面の外縁よりも外側まで延伸している。これにより、ダイアフラム60の直径を大きく設定できるようになり、ダイアフラム60を大きく撓ませることができるようになる。その結果、プランジャ40の軸方向に対する移動の自由度が上がり、これに伴って弁体20の移動距離も増す。これにより、流体制御弁Vによって制御できる流量レンジを広くすることができるようになる。
【0041】
前記位置センサ70は、弁座10の弁座面11に対する弁体20の着座面21の位置を示す出力値を出力するものである。そして、位置センサ70は、弁座10の弁座面11に対する相対位置が変化しないように筐体80に固定された第1センサ部71と、第2分割体42に固定される第2センサ部72と、を備えており、第1センサ部71とそのターゲットとなる第2センサ部72との相対位置(相対距離)に基づく値を前記出力値として出力するように構成されている。なお、第1センサ部71は、筐体80に支持された板バネ73によって弁座10側へ常時押圧されており、これにより、位置ズレを抑制している。また、第2センサ部72は、第2分割体42に対してネジ部材51を介して位置ズレしないように固定されている。これにより、位置センサ70を構成する各部材の位置が固定され、位置センサ70による検出精度が向上する。
【0042】
前記制御部Cは、CPU、メモリ、A/D・D/Aコンバータ等を備えた所謂コンピュータを有し、前記メモリに格納されているプログラムが実行され、各種機器が協働することによって前記各機能が実現されるようにしてある。具体的には、流量算出部S3で算出された流量値が予めメモリに記憶された目標値に近づくように流体制御弁Vを位置センサ70の出力値をフィードバック制御するものである。
【0043】
次に、本実施形態に係る流体制御弁Vの動作について説明する。
【0044】
前記流体制御弁Vは、アクチュエータ30に電圧が印加されていない状態において、弁開度(弁座10の弁座面11と弁体20の着座面21との間の距離)が所定値になるように設定されている。なお、この弁開度が所定値になった状態が流体制御弁Vの全開状態となる。
【0045】
次に、アクチュエータ30に電圧が印加された状態になると、アクチュエータ30が伸びる。そして、このアクチュエータ30の伸びに伴う動力が接続機構50、第2分割体42(プランジャ)、第1分割体41(プランジャ)の順番で弁体20へと伝達され、弁体20が板バネ24の押圧に抗するように弁座20に接触する方向(近づく方向)に向かって移動する。これにより、弁開度が所定値よりも小さい値となる。なお、アクチュエータ30は、印加される電圧値が大きくなるほどその伸びが大きくなるため、電圧値の大きさを調節することにより、弁開度を制御できるようになっている。
【0046】
なお、アクチュエータ30に印加される電圧が所定値以上になると、弁座10の弁座面11と弁体20の着座面21とが接触する。この時、弁座10及び弁体20の公差によって弁体20が傾斜することがあるが、弁体20及びプランジャ40は、傾斜抑制突起22を介して接触するため、その傾斜によるプランジャ40の傾斜が抑制される。
【0047】
続いて、アクチュエータ30に印加される電圧が小さくなると、アクチュエータ30が縮む。そして、このアクチュエータ30の縮みに伴って弁体20が板バネ24の押圧によって弁座10と離間する方向(遠ざかる方向)に向かって移動する。これにより、弁開度が大きい値になる。
【0048】
ここで、アクチュエータ30に印加された電圧が小さくなる場合には、アクチュエータ30の縮みに伴う動力が直接ダイアフラム60に伝達されないようになっている。詳述すると、アクチュエータ30が縮むと、第2分割体42は、弾性体92の押圧によってアクチュエータ30側へ移動する。しかし、第2分割体42は、第1分割体41に対して所定距離αスライドできるように構成されていることから、第2分割体42の動作がこのスライド動作によって吸収されて第1分割体41に対して直接伝達されないようになっている。そして、第1分割体41が、ダイアフラム60の復元力によってアクチュエータ30側へ移動すると共に、弁体20が、板バネ24の押圧によって弁座10から離間する方向へ移動し、弁開度が大きい値になる。これにより、アクチュエータ30の縮みに伴う力がダイアフラム60へ直接伝達され難くなり、ダイアフラム60の損傷を抑制できる。また、プランジャ40が一体に形成されたものに比べて、プランジャ40をアクチュエータ30側へ移動させるための動力(押圧機構90の押圧力、ダイアフラム60の復元力)が増える。これにより、アクチュエータ30の縮みによる動きに伴うプランジャ40の追従動作が速くなり、流体制御弁Vの応答性が向上する。
【0049】
<その他の実施形態> 前記実施形態1においては、弁体20の傾斜抑制突起22として、曲面状のものを採用しているが、例えば、円錐状、角錐状等のものあってもよい。但し、傾斜抑制突起22を曲面状とした方が、プランジャ40との接触によって潰れ難くなる。また、前記実施形態1においては、弁体20側に傾斜抑制突起22を設けたが、プランジャ40側に傾斜抑制突起22を設けてもよく、弁体20側及びプランジャ40側の両方に傾斜抑制突起22を設けてもよい。
【0050】
また、前記実施形態1においては、ダイアフラム60の第2平面62を、プランジャ40の径方向に対し、第1平面61の外縁よりも外側まで延伸しているが、第1平面61の外縁まで延伸しているものであってもよい。なお、言い換えれば、第2平面62の周縁が、第1平面61の周縁又はその周縁よりも外側まで延伸しているものであるともいえる。
【0051】
また、前記実施形態1においては、ノーマルオープンタイプの流体制御弁Vを例示して本発明を説明しているが、本発明は、ノーマルクローズタイプの流体制御弁にも適用することができる。
【0052】
また、前記実施形態1においては、流体制御弁Vのアクチュエータ30としてピエゾ素子(ピエゾスタック)を使用しているが、ソレノイド等を使用してもよい。
【0053】
また、前記実施形態1においては、流体制御装置MFCとして、位置センサ70の出力値に基づき流体制御弁Vをフィードバック制御する方式のマスフローコントローラを例示して説明しているが、本発明は、熱式流量センサ又は圧力式流量センサの測定値に基づき流体制御弁をフィードバック制御する方式のマスフローコントローラにも適用できる。
【0054】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
MFC 流体制御装置
B ブロック体
S 流量センサ
V 流体制御弁
10 弁座
20 弁体
21 着座面
22 傾斜抑制突起
30 アクチュエータ
40 プランジャ
60 ダイアフラム
61 第1平面
62 第2平面
70 位置センサ
80 筐体
90 押圧機構

図1
図2
図3
図4
図5