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特許7154325基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20221007BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20221007BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20221007BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/31 B
H01L21/302 101G
H01L21/316 X
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021006865
(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公開番号】P2022111443
(43)【公開日】2022-08-01
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】吉野 晃生
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直史
(72)【発明者】
【氏名】高崎 唯史
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-244202(JP,A)
【文献】特開2017-157705(JP,A)
【文献】特開2020-53476(JP,A)
【文献】特表2016-527732(JP,A)
【文献】特開2019-125801(JP,A)
【文献】特開2006-261518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/31
H01L 21/3065
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータを有する処理室と、
ロードロック室と、
前記処理室と前記ロードロック室との間に設けられ、前記処理室側の第一領域と、前記第一領域よりも前記ロードロック室側であって、前記第一領域よりも低い温度である第二領域とを有する搬送室と、
前記搬送室での水分量を検出する検出部と、
前記搬送室の内部にて、前記第二領域に向かって不活性ガスを供給可能な不活性ガス供給部と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記第二領域は、前記搬送室の天井を構成する領域であり、
前記不活性ガス供給部は、前記搬送室の第二領域に向けて供給可能な供給孔を有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記搬送室の天井には、窓と、天井を構成する壁と前記窓との間に配されたシール部材とが設けられ、
前記第二領域は、前記天井を構成する領域であり、
前記不活性ガス供給部は、前記天井を構成する壁に向かって不活性ガスを供給可能な供給孔を有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記搬送室の天井には、窓と、天井を構成する壁と前記窓との間に配されたシール部材とが設けられ、
前記第二領域は、前記シール部材が配される領域であり、
前記不活性ガス供給部は、前記シール部材に向かって不活性ガスを供給可能な供給孔を有する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記不活性ガス供給部には、前記不活性ガス供給部と連通し、天井に沿って延伸する延伸部が設けられ、
前記第二領域は、前記天井を構成する領域であり、
前記延伸部は不活性ガスを供給可能な供給孔を有する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記不活性ガス供給部には、前記不活性ガス供給部と連通し、天井に沿って延伸する延伸部が設けられ、
前記第二領域は、前記天井を構成する領域であり、
前記延伸部は前記天井方向に不活性ガスを供給可能な供給孔を有する
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記不活性ガス供給部には、前記不活性ガス供給部と連通し、天井に沿って延伸する延伸部が設けられ、
前記第二領域は、前記天井の中央部である
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第二領域は、前記搬送室を構成する壁のうち、前記ロードロック室に隣接する壁を構成する領域である請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第二領域は、前記ロードロック室と前記搬送室とを連通する連通孔を構成する領域である
前記不活性ガス供給部は、
前記連通孔に向けて供給可能な供給孔を有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記供給孔は、前記連通孔の幅よりも広い幅で構成される請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第二領域は、複数の前記処理室の間の壁、もしくは前記ロードロック室と前記処理室の間の壁で構成される領域である請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第二領域は、前記搬送室と前記処理室とを連通させる複数の連通孔の間の壁で構成される領域である
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記第二領域は、前記搬送室と前記処理室とを連通させる複数の連通孔の間の壁で構成される領域であり、
前記不活性ガス供給部は、前記連通孔の間の壁に不活性ガスを供給可能なよう、前記壁の上方に供給孔を設ける請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記第二領域は複数の前記処理室の間の壁、もしくは前記ロードロック室と前記処理室の間の壁で構成される領域であり、
前記不活性ガス供給部には、前記不活性ガス供給部と連通し、前記第二領域に向けて延伸する延伸部が設けられ、
前記延伸部は前記第二領域に不活性ガスを供給可能とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記不活性ガス供給部は、前記不活性ガスを加熱するヒータを有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記不活性ガス供給部は、前記不活性ガスの供給と停止とを交互に繰り返すよう制御される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記不活性ガス供給部は、前記不活性ガスを前記搬送室に基板が無い状態で供給する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記不活性ガス供給部は、前記搬送室に不活性ガスの供給を開始した後、前記検出部が検出した水分量が所定値以下になったら不活性ガスの供給を停止する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記搬送室の壁には、温度調整用の媒体が供給される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項20】
ロードロック室に隣接した搬送室内の水分量を水分検出部が検出する工程と、
前記搬送室に隣接した処理室にて基板を加熱する工程と、
前記水分量が所定値以上の場合に、前記搬送室内の、前記処理室側の第一領域よりも低い温度である第二領域に向かって不活性ガスを供給する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項21】
ロードロック室に隣接した搬送室内の水分量を水分検出部が検出する手順と、
前記搬送室に隣接した処理室にて基板を加熱する手順と、
前記水分量が所定値以上の場合に、前記搬送室内の、前記処理室側の第一領域よりも低い温度である第二領域に向かって不活性ガスを供給する手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを製造する装置として、基板を処理する処理室と、その処理室に基板を搬送するロボットが設けられる搬送室とを有する装置が存在する。搬送室中に、基板処理と関連しない物質、例えば水分が存在すると、それが歩留まりの低下につながる恐れがある。そのため搬送室中の異物を少なくすることが求められる。これに関しては、例えば特許文献1に記載されている。ここでは、搬送室全体を加熱し、水分を除去している。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001―338967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水分は、搬送室中の低温領域で多く発生することがある。そうすると、従来のように搬送室全体を処理しようとした場合、どうしても水分を除去しきれない場合がある。
【0006】
本技術は、搬送室を有する基板処理装置において、低温領域の水分量を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ヒータを有する処理室と、ロードロック室と、前記処理室と前記ロードロック室との間に設けられ、前記処理室側の第一領域と、前記第一領域よりも前記ロードロック室側であって、前記第一領域よりも低い温度である第二領域とを有する搬送室と、前記搬送室での水分量を検出する検出部と、前記搬送室の内部にて、前記第二領域に向かって不活性ガスを供給可能な不活性ガス供給部とを有する技術を提供する。
【発明の効果】
【0008】
搬送室を有する基板処理装置において、低温領域の水分量を低減させることを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一の実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図2】第一の実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図3】第一の実施形態に係る分散部を説明する説明図である。
図4】第一の実施形態に係るRCを説明する説明図である。
図5】第一の実施形態に係るガス供給部を説明する説明図である。
図6】第一の実施形態に係る基板処理装置のコントローラを説明する説明図である。
図7】第二の実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図8】第二の実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図9】第三の実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図10】第四の実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
図11】第四の実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
[第一の実施形態]
第一の実施形態を説明する。
(1)基板処理装置の構成
図1から図6を用いて、基板処理装置の構成を説明する。
なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面上の各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0012】
図1図2は基板処理装置の概略を説明する説明図であり、図3は搬送室に設けられる不活性ガス供給部の分散部を説明する説明図である。図4図5は基板処理装置が有するRC(リアクタ)を説明する説明図である。図6は基板処理装置のコントローラを説明する説明図である。以下に、各構成を具体的に説明する。
【0013】
基板処理装置の概要構成を、図1図2を用いて説明する。図1は基板処理装置の構成例を示す横断面図である。図2は、図1α-α’における縦断面図である。
【0014】
基板処理装置200は基板100を処理するもので、IOステージ110、大気搬送室120、ロードロック室130、真空搬送室140、プロセスモジュールPM(以下PMと呼ぶ)、コントローラ400で主に構成される。次に各構成について具体的に説明する。
【0015】
(大気搬送室・IOステージ)
基板処理装置200の手前には、IOステージ(ロードポート)110が設置されている。IOステージ110上には複数のポッド111が搭載されている。ポッド111はシリコン(Si)基板などの基板100を搬送するキャリアとして用いられる。
【0016】
ポッド111内には、ロット管理される複数の基板100が格納される。例えば、n枚の基板100が格納される。
【0017】
ポッド111にはキャップ112が設けられ、ポッドオープナ121によって開閉される。ポッドオープナ121は、IOステージ110に載置されたポッド111のキャップ112を開閉し、基板出し入れ口を開放・閉鎖することにより、ポッド111に対する基板100の出し入れを可能とする。ポッド111は図示しないAMHS(Automated Material Handling Systems、自動ウエハ搬送システム)によって、IOステージ110に対して、供給および排出される。
【0018】
IOステージ110は大気搬送室120に隣接する。大気搬送室120は、IOステージ110と異なる面に、後述するロードロック室130が連結される。大気搬送室120内には基板100を移載する大気ロボット122が設置されている。
【0019】
大気搬送室120の筐体127の前側には、基板100を大気搬送室120に対して搬入搬出するための連通孔128と、ポッドオープナ121とが設置されている。大気搬送室120の筐体127の後ろ側には、基板100をロードロック室130に搬入搬出するための連通孔129が設けられる。連通孔129は、ゲートバルブ133によって開放・閉鎖することにより、基板100の出し入れを可能とする。
【0020】
(ロードロック室)
ロードロック室130は大気搬送室120に隣接する。ロードロック室130を構成する筐体131が有する面のうち、大気搬送室120と異なる面には、後述する真空搬送室140が配置される。
【0021】
ロードロック室130内には基板100を載置する載置面135を、少なくとも二つ有する基板載置台136が設置されている。基板載置面135間の距離は、後述するロボット170のアームが有するエンドエフェクタ間の距離に応じて設定される。
【0022】
(真空搬送室)
基板処理装置200は、負圧下で基板100が搬送される搬送空間となる搬送室としての真空搬送室(トランスファモジュール)140を備えている。真空搬送室140は、単に搬送室と呼んでもよい。真空搬送室140を構成する筐体141は平面視が五角形に形成され、五角形の各辺には、ロードロック室130及び基板100を処理するモジュール(以下PMと呼ぶ。)であるPM1~PM4が連結されている。真空搬送室140の略中央部には、負圧下で基板100を移載(搬送)する搬送部としてのロボット170がフランジ144を基部として設置されている。
【0023】
ロードロック室130と真空搬送室140は、連通孔142を介して連通されている。連通孔142は、ゲートバルブ134により開閉される。
【0024】
真空搬送室140内に設置されるロボット170は、エレベータ145およびフランジ144によって真空搬送室140の気密性を維持しつつ昇降できるように構成されている。ロボット170が有する二つのアーム172は昇降可能なよう構成されている。尚、図2においては、説明の便宜上、アーム172のエンドエフェクタを表示し、エンドエフェクタとフランジ144の間のリンク構造等は省略している。
【0025】
真空搬送室142に隣接するPM1、PM2、PM3、PM4のそれぞれには、リアクタ(以下RCと呼ぶ。)が設けられている。具体的には、PM1にはRC1、RC2が設けられる。PM2にはRC3、RC4が設けられる。PM3にはRC5、RC6が設けられる。PM4にはRC7、RC8が設けられる。
【0026】
筐体141の側壁のうち、各RCと向かい合う壁には連通孔148が設けられる。例えば、図2に記載のように、RC5と向かい合う壁には、連通孔148(5)が設けられる。更には、ゲートバルブ149がRC毎に設けられる。例えば、RC5にはゲートバルブ149(5)が設けられる。なお、RC1からRC4、RC6からRC8もRC5と同様の構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0027】
エレベータ145内には、アーム172の昇降や回転を制御するアーム制御部171が内蔵される。アーム制御部171は、アーム172の軸を支持する支持軸171aと、支持軸171aを昇降させたり回転させたりする作動部171bを主に有する。
【0028】
作動部171bは、例えば昇降を実現するためのモータを含む昇降機構171cと、支持軸171aを回転させるための歯車等の回転機構171dを有する。尚、エレベータ145内には、アーム制御部171の一部として、作動部171bに昇降・回転支持するための指示部171eを設けても良い。指示部171eはコントローラ400に電気的に接続される。指示部171eはコントローラ400の指示に基づいて、作動部171bを制御する。
【0029】
アーム172は、軸を中心とした回転や延伸が可能である。前述のように、ロボット170の軸は筐体140のほぼ中心に配されるが、軸の中心から各RCの基板載置台212(後述)までは、構造上の制約から距離が異なることがある。例えば、図1において、ロボット170の軸中心からRC8(もしくはRC7)の基板載置台212までの距離L1は、ロボット170の軸中心からRC4(もしくはRC3)の基板載置台212までの距離L2よりも短く構成される。
【0030】
ロボット170が回転や延伸を行うことで、RCとロボット170の軸間の距離が異なるそれぞれのRCに対しても、基板100を搬送したり、RC内から基板100を搬出したりできる。ロボット170は、例えばコントローラ400の指示に応じて、RCにウエハを搬送可能とする。
【0031】
続いて、排気部160を説明する。筐体241の下方には、排気部160が設けられる。具体的には、例えば筐体241の底壁に排気管161が接続される。排気管161には、筐体241中の雰囲気を所定の圧力に制御する圧力制御器であるAPC(AutoPressure Controller)162が設けられる。APC162は開度調整可能な弁体(図示せず)を有し、コントローラ400からの指示に応じて排気管161のコンダクタンスを調整する。また、排気管161にはバルブ163が設けられる。排気管161、APC162、バルブ163をまとめて搬送室排気部と呼ぶ。
【0032】
さらに、排気管271の下流には、図示しないDP(Dry Pump。ドライポンプ)が設けられる。DPは、排気管271を介して、筐体241の雰囲気を排気する。
【0033】
真空搬送室140を構成する筐体141には、水分検出部146が設けられる。水分検出部146はコントローラ400に電気的に接続される。水分検出部146は、真空搬送室140内の水分量を検出し、検出した水分量をコントローラ400に送信する役割を有する。水分検出部146は単に検出部とも呼ぶ。
【0034】
水分検出部146は、後述する理由により、真空搬送室140の水分量を検出可能な場所に設けられる。水分量検知可能な場所とは、低温部、例えば筐体141の天井147やロードロック室130側の側壁141a(後述)の近傍をいう。
【0035】
天井147には、窓151が設けられる。窓151は、ロボット170の動作が正常かどうかを確認するために用いられる。窓151と天井147を構成する壁147aとの間には、シール部材としてのOリング152が配される。Oリング152は例えばゴム製である。これにより、真空搬送室140内の雰囲気を密閉する。窓151上には蓋体153が設けられる。
【0036】
筐体141には、筐体141の温度を調整するチラー(媒体)や冷却水を流すための流路154が設けられてもよい。このような構造とすることで、筐体141がRC内のヒータ213の影響を受けたとしても、過度な温度上昇を抑えることができる。
【0037】
筐体141には、後述する低温部に不活性ガスを供給可能な不活性ガス供給部180が設けられる。図2においては、例えば天井147に設けられる。不活性ガス供給部180は、不活性ガス供給管181を有し、不活性ガス供給管181には、上流方向から順に、不活性ガス源182、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)183、及び開閉弁であるバルブ184が設けられている。不活性ガス供給管181内に供給される不活性ガスを加熱する加熱部185を設けてもよい。
【0038】
不活性ガス供給管181の先端には、分散部186が設けられる。分散部186は、筐体141内に不活性ガスを分散供給する。
【0039】
主に、不活性ガス供給管181、MFC183、バルブ184、分散部186により、不活性ガス供給部180が構成される。ヒータ185を不活性ガス供給部180に含めてもよい。なお、不活性ガス供給部180は搬送室140に不活性ガスを供給する構成でもあるので、搬送室系ガス供給部とも呼ぶ。
【0040】
続いて、低温部と高温部について説明する。
高温部とは、例えばRCと隣接する壁141bである。基板100を処理する際、RC内のヒータ213によって基板100は加熱される。そのため、RCと隣接する壁141bはヒータ213の影響を受けて、他の壁に比べて高温になる。このように、ヒータ213等、RCが有する加熱部の影響によって高温になる部分を高温部と呼ぶ。高温部を有する領域は高温領域、あるいは第一領域とも呼ぶ。
【0041】
低温部は高温部に比べて低い温度の部分をいう。低温部を有する領域は低温領域、あるいは第二領域とも呼ぶ。低温部は、例えば天井147や連通孔142を構成する搬送室140の壁141aであり、それらを構成する領域である。また、Oリング152を配する領域も低温領域と呼ぶ。これらは、RCから遠い位置にあるので、RC中に設けられたヒータ213の影響を受けにくい。したがって、壁141bに比べて温度が低い。更には、天井147等の低温部は、外郭が大気に晒されているため、水分が付着しやすい室温に近くなる。すなわち水分が付着容易な構成である。
【0042】
高温部は、例えばヒータ213等、処理室内の加熱部と低温部との間に存在するともいえる。また、低温部は、高温部とロードロック室130の間にあるといえる。なお、本実施形態においては、低温とは搬送室140の中で、水分が付着容易な程度に低い温度(例えば100℃未満)を示す。
【0043】
また、天井147では、例えば水平方向における中央部は、各RCから離れているためヒータ213の熱影響を受けにくい。連通孔142の近傍も同様にヒータ213の熱影響を受けにくい。したがってそれらの構成は低温となる。
【0044】
更に、チラーを流している場合、筐体141は、例えばメンテナンス担当者が作業できる程度の温度(例えば室温)に維持される。したがって、安定して低温になるため、低温部にはより水分が付着しやすい。
【0045】
このような低温部では、付着した水分量が多くなるという問題がある。低温部に付着した水分は基板100、特に基板処理で加熱された処理済み基板100に付着し、基板100上では自然酸化膜の形成や、水分の成分(水素(H)や酸素(O))による意図しない改質をしてしまうことが考えられる。
【0046】
前述のように、RCとロボット170の軸までの距離は異なり、そうすると基板100の搬送距離も異なることから、自然酸化膜の形成や意図しない膜の改質などの状態は、基板が処理されたRCごとに異なる。そのため、歩留まりの低下につながる恐れがある。
【0047】
これに対して、従来技術のように筐体141を加熱して水分を除去することも考えられるが、そうすると例えば天井部分のOリング152やロボット170を構成する部品が加熱により劣化する恐れがある。したがって搬送室を加熱することは困難である。
【0048】
そこで、本実施形態ではそれぞれの低温部にて低温状態を維持しつつ、水分を除去する。それを実現するために、低温部に対して局所的に不活性ガスを供給する。具体的には、分散部186を用いて低温部に局所的に不活性ガスを供給する。
【0049】
次に、分散部186の詳細構造について図3を用いて説明する。図3において、(a)はロボット170から壁141bの方向に向かって見た分散部186の図であり、(b)は(a)のA-A’における断面図である。
【0050】
分散部186は、筒状の本体部186aで主に構成される。本体部186aには不活性ガス供給管181が接続される。本体部186aの側方であって、ロボット170方向には、不活性ガス供給孔としての孔186bが設けらる。本体部186aの下方には、不活性ガス供給孔としての孔186cが設けられてもよい。
【0051】
孔186bの高さ方向の位置は、孔186bから排出された不活性ガスが天井147に衝突できる程度の高さであり、例えばロボット170のうち、最も高い位置に配されたアーム172と天井147の間の高さ位置に設けられる。
【0052】
孔186bは、不活性ガスが天井147の内壁に衝突する方向に開放されてもよい。天井方向に不活性ガスを供給することで、天井147の内壁147aに付着した水分と不活性ガスとが衝突するため、水分を物理的にはがすことができる。したがって、内壁147aやロボット170の低温を維持した状態で内壁147aに付着した水分を除去できる。
【0053】
孔186bは、水平方向においては、例えばOリング152に不活性ガス供給できるような幅で構成される。具体的には、Oリング152の径と同等以上の幅とする。このようにすることで、Oリング152の周囲に付着した水分と不活性ガスとが衝突し、水分を物理的にはがすことができる。したがって、Oリング152を熱変形させることなく水分を除去できる。なお、ここでは孔186bを一つのスリット状として説明したが、それに限るものではなく、複数の孔で構成されていてもよい。複数の孔で構成された場合、最も外側に設けられた孔同士の距離がOリング152の径と同等以上の幅とする。
【0054】
孔186cは本体部186aの下方に設けられる。孔186cから供給された不活性ガスは、ロードロック室130に隣接する壁141aに向かって供給される。ここで、壁141aに不活性ガスを供給する理由を説明する。ポッドに保管された未処理の基板100は工場内の様々な場所を移動するため、基板処理装置200に到達する前に水分が付着されることがある。付着した水分は、ロードロック室130から真空搬送室140に移動した際、真空搬送室140内に拡散される。特に連通孔142の近傍に配される壁141aに付着する可能性が高い。
【0055】
これに対して、孔186cから供給された壁141aに向かって不活性ガスを供給することで、壁141aに付着した水分と不活性ガスとが衝突し、水分を物理的にはがすことができる。したがって、壁147aやロボット170の低温を維持した状態で、水分量の多い壁147aに付着した水分を効率よく除去できる。
【0056】
孔186cのうち、壁141と平行する側の幅は、連通孔142の幅と同等か、あるいはより大きくすることが望ましい。ロードロック室130を通過した未処理基板100に付着した水分は、連通孔142を中心に拡散されるためである。そこで、孔186cの幅を連通孔142の幅と同等とすることで、壁141aの内の連通孔142の周囲の壁に付着した水分に対して、不活性ガスを確実に供給できる。また、連通孔142の幅より大きくすることで、壁141aのうち連通孔141の側方部分の壁に付着した水分に対して、不活性ガスを確実に供給できる。
【0057】
なお孔186cのうち、壁141aと平行する方向の幅の最大は、壁141aに隣接する搬送室140の向かい合う壁間の距離とする。より良くは壁141aの幅とする。
【0058】
分散部186から供給される不活性ガスは、より良くはヒータ185で加熱されることが望ましい。不活性ガスを加熱することで、水分の除去効率を高めることができる。また、不活性ガスを供給する際には、不活性ガスの供給と停止を繰り返してもよい。繰り返し水分と不活性ガスとを衝突させることで、より効率よく物理的に除去することができる。
【0059】
(プロセスモジュール)
次に、PMについてRCを中心に説明する。なお、PM1~PM4はそれぞれ同様の構成であるため、ここではPMとして説明する。また、RC1~RC8もそれぞれ同様の構成であるため、ここではRCとして説明する。
【0060】
PMに設けられる二つのRCは、後述する処理空間205の雰囲気が混在しないよう、RCの間に隔壁を設け、各処理空間205が独立した雰囲気となるよう構成されている。
【0061】
図4図5を用いてRCの詳細を説明する。なお、隣接するRCも同様の構成であるため、ここでは一つのRCを説明する。図4に記載のように、RCは容器202を備えている。容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。容器202内には、シリコンウエハ等の基板100を処理する処理空間205を構成する処理室201と、基板100を処理空間205に搬送する際に基板100が通過する搬送空間を有する搬送室206とが形成されている。容器202は、上部容器202aと下部容器202bで構成される。上部容器202aと下部容器202bの間には仕切り板208が設けられる。
【0062】
下部容器202bの側面には、ゲートバルブ149に隣接した連通孔148が設けられており、基板100は連通孔148を介して真空搬送室140との間を移動する。下部容器202bの底部には、リフトピン207が複数設けられている。
【0063】
処理空間205には、基板100を支持する基板支持部210が配される。基板支持部210は、基板100を載置する基板載置面211と、基板載置面211を表面に持つ基板載置台212、基板載置台212内に設けられた加熱部としてのヒータ213を主に有する。基板載置台212には、リフトピン207が貫通する貫通孔214が、リフトピン207と対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0064】
ヒータ213には、電力を供給するための配線222が接続される。配線222はヒータ制御部223に接続される。ヒータ制御部223はコントローラ400に電気的に接続されている。コントローラ400は、ヒータ制御部223を制御してヒータ213を稼働させる。
【0065】
基板載置台212は、シャフト217によって支持される。シャフト217は、容器202の底部を貫通しており、さらに容器202の外部で昇降部218に接続されている。
【0066】
昇降部218を作動させてシャフト217および基板載置台212を昇降させることにより、基板載置台212は、載置面211上に載置される基板100を昇降させることが可能となっている。
【0067】
処理室201は、例えば後述するバッファ構造230と基板載置台212とで構成される。なお、処理室201は基板100を処理する処理空間205を確保できればよく、他の構造により構成されてもよい。
【0068】
基板載置台212は、基板100の搬送時には、基板載置面211が連通孔148に対向する搬送ポジションP0まで下降し、基板100の処理時には、図1で示されるように、基板100が処理空間205内の処理ポジションとなるまで上昇する。
【0069】
処理空間205の上部(上流側)には、ガスを拡散させるバッファ構造230が設けられている。バッファ構造230は、主に蓋231で構成される。蓋231に設けられたガス導入孔231aと連通するよう、蓋231には、後述する第一ガス供給部240、第二ガス供給部250が接続される。図4ではガス導入孔231aが一つしか示されていないが、ガス供給部ごとにガス導入孔を設けてもよい。
【0070】
(排気部)
続いて、排気部271を説明する。処理空間205には、排気管272が連通される。排気管272は、処理空間205に連通するよう、上部容器202aに接続される。排気管272には、処理空間205内を所定の圧力に制御する圧力制御器であるAPC273が設けられる。APC273は開度調整可能な弁体(図示せず)を有し、コントローラ400からの指示に応じて排気管272のコンダクタンスを調整する。また、排気管272においてAPC273の上流側にはバルブ274が設けられる。排気管272とバルブ274、APC273をまとめて排気部と呼ぶ。
【0071】
さらに、排気管272の下流には、DP(Dry Pump。ドライポンプ)275が設けられる。DP275は、排気管272を介して、処理空間205の雰囲気を排気する。
【0072】
次に図5を用いて、処理室201にガスを供給するガス供給部を説明する。なお、前述した搬送室系ガス供給部と区別するために、図5に説明するガス供給部は、処理室系ガス供給部とも呼ぶ。
【0073】
第一ガス供給部240を説明する。第一ガス供給管241には、上流方向から順に、第一ガス源242、流量制御器(流量制御部)であるMFC243、及び開閉弁であるバルブ244が設けられている。
【0074】
第一ガス源242は第一元素を含有する第一ガス(「第一元素含有ガス」とも呼ぶ。)源である。第一元素含有ガスは、原料ガス、すなわち、処理ガスの一つである。ここで、第一元素は、例えばシリコン(Si)である。すなわち、第一元素含有ガスは、例えばシリコン含有ガスである。具体的には、シリコン含有ガスとして、モノシラン(SiH)ガスが用いられる。
【0075】
主に、第一ガス供給管241、MFC243、バルブ244により、第一ガス供給部240が構成される。
【0076】
次に、第二ガス供給部250を説明する。第二ガス供給管251には、上流方向から順に、第二ガス源252、流量制御器(流量制御部)であるMFC253、及び開閉弁であるバルブ254が設けられている。
【0077】
第二ガス源252は第二元素を含有する第二ガス(以下、「第二元素含有ガス」とも呼ぶ。)源である。第二元素含有ガスは、処理ガスの一つである。なお、第二元素含有ガスは、反応ガスまたは改質ガスとして考えてもよい。
【0078】
ここで、第二元素含有ガスは、第一元素と異なる第二元素を含有する。第二元素としては、例えば、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のいずれか一つである。ここでは、第二元素含有ガスは、例えば酸素含有ガスとして説明する。具体的には、酸素含有ガスとして、酸素ガス(O)が用いられる。
【0079】
主に、第二ガス供給管251、MFC253、バルブ254により、第二ガス供給部250が構成される。
【0080】
なお、第一ガス単体で基板100上に膜を形成する場合は、第二ガス供給部250を設けなくてもよい。
【0081】
(コントローラ)
次に図6を用いてコントローラ400を説明する。
基板処理装置200は、各部の動作を制御するコントローラ400を有している。
【0082】
制御部(制御手段)であるコントローラ400は、CPU(Central Processing Unit)401、RAM(Random Access Memory)402、記憶装置としての記憶部403、I/Oポート404を備えたコンピュータとして構成されている。RAM402、記憶部403、I/Oポート404は、内部バス405を介して、CPU401とデータ交換可能なように構成されている。基板処理装置200内のデータの送受信は、CPU401の一つの機能でもある送受信指示部406の指示により行われる。
【0083】
CPU401は、さらに判断部407を有する。判断部407は、記憶部403に記憶されたテーブルと、水分検出部146で測定した水分量との関係を分析する役割を有する。
【0084】
上位装置270にネットワークを介して接続されるネットワーク送受信部283が設けられる。ネットワーク送受信部283は、ロット中の基板100の処理履歴や処理予定に関する情報等を受信することが可能である。
【0085】
記憶部403は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶部403内には、基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等で構成されるレシピ409や、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム410が読み出し可能に格納されている。更に、水分検出部146が検出したデータの記録や、その温度データの読み出しが可能な水分情報記憶部411を有する。
【0086】
なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ400に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM402は、CPU401によって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0087】
I/Oポート404は、ゲートバルブ149、昇降機構218、各圧力調整器、各ポンプ、ヒータ制御部223、等、PMの各構成に接続されている。
【0088】
CPU401は、記憶部403からの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置281からの操作コマンドの入力等に応じて記憶部403からプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU401は、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、ゲートバルブ149の開閉動作、昇降機構218の昇降動作、水分検出部146、ヒータ制御部223、各ポンプのオンオフ制御、MFCの流量調整動作、バルブ等を制御可能に構成されている。
【0089】
なお、コントローラ400は、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、DVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)282を用いてコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本技術に係るコントローラ400を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置282を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置282を介さずにプログラムを供給するようにしても良い。なお、記憶部403や外部記憶装置282は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部403単体のみを含む場合、外部記憶装置282単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0090】
(2)基板処理工程
次に基板処理装置の一工程として、上述した構成の基板処理装置200を用いて基板100に膜を形成する膜処理工程とメンテナンス工程とについて説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ400により制御される。
【0091】
ここでは、真空搬送室140と一つのRCにおける基板処理方法を例にして説明する。
【0092】
(膜処理工程)
膜処理工程の一つである基板搬送工程を説明する。大気ロボット122がポッド111から基板100を搬出する。その後、大気ロボット122はロードロック室130に基板100を移載する。このとき、ロードロック室130に処理済みの基板100があれば、大気ロボット122は処理済みの基板100をポッド111に搬送する。
【0093】
ロードロック室130にて雰囲気を負圧とし、真空搬送室140と同レベルの圧力となったら、ゲートバルブ134を開とする。ロボット170はロードロック室130中の未処理の基板100をピックアップし、各RCに搬送する。このとき、未処理の基板100に付着している水分が真空搬送室140中に拡散される。
【0094】
各RCでは、所定時間基板100を処理した後、ゲートバルブ149を開とする。ロボット170は、RC中の処理済み基板100と、ロボット170が支持している未処理基板100とを入れ替え、RCに未処理基板を搬入する。
【0095】
ロボット170は処理済み基板100をロードロック室130に搬入する。
【0096】
この間、水分検出部146は真空搬送室140の水分量を検出する。水分量が所定値以上となったら、次の基板処理の前、もしくは次のロット処理の前にメンテナンス工程を実施する。水分量が所定値未満の場合、継続して基板100を処理する。
【0097】
続いて、基板100を処理する場合のRC内の動作を説明する。
【0098】
基板載置台212を基板100の搬送位置(搬送ポジションP0)まで下降させ、基板載置台212の貫通孔214にリフトピン207を貫通させる。その結果、リフトピン207が、基板載置台212表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。これらの動作と並行して、搬送室206の雰囲気を排気し、隣接する真空搬送室140と同圧、あるいは隣接する真空搬送室140の圧力よりも低い圧力とする。
【0099】
続いて、ゲートバルブ149を開いて、搬送室206を隣接する真空搬送室140と連通させる。そして、ロボット170が、基板100を真空搬送室140から搬送室206に搬入し、リフトピン207上に載置する。
【0100】
リフトピン207上に基板100が載置されたら、基板載置台212を上昇させ、基板載置面211上に基板100を載置し、更に図1のように、基板処理ポジションまで上昇させる。
【0101】
基板100を基板載置面211に載置する際は、ヒータ213に電力を供給し、基板100の表面が所定の温度となるよう制御される。基板100の温度は、例えば室温以上800℃以下であり、好ましくは、室温以上であって500℃以下である。このとき、壁141bも加熱される。
【0102】
次に、膜処理工程の一つである処理ガス供給工程を説明する。基板100を加熱して所望とする温度に達したら第一ガス、第二ガスを処理室201に供給する。供給方法としては、例えば第一ガスと第二ガスとを同時に供給したり、あるいは交互に供給したりして、所望の膜を形成する。ここでいう所望の膜とは、例えばシリコン酸化膜である。
【0103】
基板100上に所望の膜が形成されたら、搬入時とは逆の順番で、処理室から基板100を搬出する。搬送室140では水分量が所定値未満であることから、歩留まりの低下を抑制できる。
【0104】
(メンテナンス工程)
続いてメンテナンス工程を説明する。
判断部407は、水分検出部146が検出した水分量が所定値以上であると判断したら、メンテナンス工程に移行する。メンテナンス工程は、基板100が搬送室140に無い状態で、基板100の処理に関する動作を停止した状態で行う。例えば、処理室201へのガス供給、基板100の搬送等を停止する。
【0105】
メンテナンス工程では、不活性ガス供給部180と排気部160とを稼働させる。筐体141内に不活性ガスを供給することで、筐体141の低温部に付着した水分を除去する。本実施形態においては、分散部186の孔186bから低温部である壁147aに向けて不活性ガスを供給することで、壁147aに付着した水分を除去する。具体的には、低温領域を構成する天井の壁147aに不活性ガスを供給する。所定時間経過後、不活性ガスの供給を停止する。
【0106】
また、分散部186に孔186cが設けられている場合は、壁141a方向に不活性ガスを供給し、壁141aに付着した水分を除去してもよい。
【0107】
本工程では、水分検出部146が検出した水分量の情報を元に、不活性ガスの供給量を制御してもよい。例えば、水分検出部146が検出した水分量が所定値よりも多いと判断部407が判断した場合には、低温部に付着した水分量が多いと判断し、不活性ガスの供給量を多くしてもよい。このようにすることで、確実に水分を除去できる。
【0108】
また、例えば、水分検出部146が検出した水分量が所定値よりも少ないと判断部407が判断した場合には、低温部に付着した水分量が少ないと判断し、不活性ガスの供給量を少なくしてもよい。この場合、不活性ガスの供給量を抑えることができるので、不活性ガス使用量に関するコストを低減できる。
【0109】
水分検出部146が検出した水分量の情報を元に、不活性ガスの供給量を制御する場合、例えば水分情報記憶部411に予め水分量と不活性ガス供給量とを関係づけたテーブルを持たせてもよい。その場合、判断部407は、検出した水分量データとテーブルとを比較し、不活性ガス供給量を決定する。
【0110】
なお、本実施形態では所定時間経過後に不活性ガスの供給を停止したが、それに限るものではなく、水分検出部146が検出した水分量が所定値以下と判断されたら不活性ガスの供給を停止するようにしてもよい。
【0111】
[第二の実施形態]
続いて、図7図8を用いて第二の実施形態を説明する。第二の実施形態は、第一の実施形態に比べて分散部186の構造が異なる。本実施形態では、分散部186に、更に延伸部としてのノズル187が設けられている。以下では、分散部186及びノズル187を中心に説明する。なお、他の構成は第一の実施形態と同様であるので、説明を省略する。また、本実施形態における低温領域(第二領域)は、後述する壁147aの中央領域である。
【0112】
本実施形態における分散部186は、図3に記載の孔186bを設ける替わりにノズル187を設けている。ノズル187は、分散部186を介して供給管181に連通する。ノズル187には不活性ガスが吐出される孔187aが設けられる。孔187aは、壁147aに向かって解放されている。ノズル187は前記天井に沿って延伸される。
【0113】
ノズル187は、壁147aのうち、少なくとも中央部(中央領域)に向かって不活性ガスを供給可能とする。前述したように、壁147aの中央部は、各RCから離れているため、温度が下がりやすく、水分が付着しやすい。これに対して、本構造とすることで確実に壁147aの中心に不活性ガスを供給できるので、壁147aの中央部に付着した水分を除去できる。
【0114】
[第三の実施形態]
続いて、図9を用いて第三の実施形態を説明する。第三の実施形態は、第一の実施形態に比べて分散部186の構造が異なる。本実施形態では、分散部186における孔の開放方向が異なる。以下では、分散部186を中心に説明する。なお、他の構成は第一の実施形態と同様であるので、説明を省略する。また、本実施形態における低温領域(第二領域)は、後述するように複数の処理室の間の壁、もしくはロードロック室と処理室の間の壁で構成される領域を示す。
【0115】
図9に記載のように、本実施形態における分散部186には孔186d、186e、186f、186g、186hが設けられている。続いて、孔186dから186hの開放方向について説明する。それぞれの孔186dから186hは、矢印で記載されているように、低温部である壁191、壁192、壁193、壁194、壁195に不活性ガスを供給可能なよう、解放されている。
【0116】
続いて壁191、壁192、壁193、壁194、壁195について説明する。前述したように、筐体141のうち、RCの近傍ではヒータ213の影響により高温になる。特に、RCと筐体を連通する連通孔148や連通孔148が構成される壁141bでは、温度が高くなる。しかしながら隣接するRCの間、もしくはRCとロードロックチャンバ130との間に構成される壁191、壁192、壁193、壁194、壁195は、ヒータ213の影響を受けにくくなるため、連通孔148近傍に比べて温度が低くなる。特に、筐体141にチラー或いは冷却水を流している場合、隣接するRCの間、もしくはRCとロードロックチャンバ130との間はより低温になる。そうすると、それらの壁には水分が付着しやすくなる。
【0117】
そこで本実施形態においては、隣接するRCの間、もしくはRCとロードロックチャンバ130との間の壁に付着した水分を除去可能なよう、その部分に対して不活性ガスを供給可能な構造とする。
【0118】
具体的には、ロードロック室130とRC1とが隣接する壁191に対しては、壁191に不活性ガスを供給可能なよう、孔186dが壁191に向かうよう構成される。RC2とRC3とが隣接する壁192に対しては、壁192に不活性ガスを供給可能なよう、孔186eが壁192に向かうよう構成される。RC4とRC5とが隣接する壁193に対しては、壁193に不活性ガスを供給可能なよう、孔186fが壁193に向かうよう構成される。RC6とRC7とが隣接する壁194に対しては、壁194に不活性ガスを供給可能なよう、孔186gが壁194に向かうよう構成される。ロードロック室130とRC8とが隣接する壁195に対しては、壁195に不活性ガスを供給可能なよう、孔186hが壁195に向かうよう構成される。
【0119】
分散部186では、各孔186dから186hを構成可能なよう、各壁191、壁192、壁193、壁194、壁195と対向する面を設けると共に、その面に各孔186dから186hを設けている。このような構成とすることで、隣接するRCの間、もしくはRCとロードロックチャンバ130との間の壁に付着した水分を確実に除去できる。なお、壁192、壁193、壁194、壁195は、各連通孔の間に配されることから、連通孔の間の壁ともいう。
【0120】
[第四の実施形態]
続いて、図10図11を用いて第四の実施形態を説明する。第四の実施形態は、第三の実施形態に比べて分散部186の構造が異なる。本実施形態では、分散部186に、更に延伸部としての複数のノズル188(1)から188(3)が設けられている。以下では、分散部186及びノズル188を中心に説明する。なお、他の構成は第三の実施形態と同様であるので、説明を省略する。また、本実施形態における低温領域(第二領域)は、後述するように複数の処理室の間の壁、もしくはロードロック室と処理室の間の壁で構成される領域を示す。
【0121】
本実施形態における分散部186は、第三の実施形態と同様に孔186d、孔186hを設けている。第三の実施形態と同様、孔186dは壁191に向けて不活性ガスを供給可能とし、孔186hは壁195に向けて不活性ガスを供給可能とする。
【0122】
更に、孔186eの替わりにノズル188(1)を設け、孔186fの替わりにノズル188(2)を設け、孔186gの替わりにノズル188(3)を設けている。図11に記載のように、各ノズル188の先端には孔188bが設けられる。孔188bは壁192、壁193、壁194の近傍に配され、壁192、壁193、壁194に不活性ガスを供給可能な構成とされる。
【0123】
このような構成とすることで、壁192、壁193、壁194に確実に不活性ガスを搬送可能とする。したがって、RC間の低温部に付着した不活性ガスをより確実に除去可能である。
【0124】
また、図11に記載のように、各ノズル188において、孔188bと分散部186との間に孔188aを設けてもよい。孔188aは図8に記載の孔187aと同様に、壁147aに向かって供給する。このような構成とすることで、壁147aに付着した水分を除去可能とする。
【0125】
本実施形態では、ノズル188を用いて不活性ガスを壁192から壁194に搬送したが、それに限るものではなく、例えば壁147aから各空間に直接不活性ガスを供給する構成であってもよい。例えば、天井147に各空間の上方部分不活性ガスを供給可能な不活性ガス供給孔を設け、それらの不活性ガス供給孔から各空間に不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0126】
[他の実施形態]
以上に、実施形態を具体的に説明したが、本技術は上述の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0127】
例えば、上述した各実施形態では、基板処理装置が行う成膜処理において、第一元素含有ガス(第一の処理ガス)としてモノシランガスを用い、第二元素含有ガス(第二の処理ガス)としてOガスを用いて、膜を形成する例を示したがそれに限るものでは無く、他の種類のガスを用いて他の種類の薄膜を形成してもよい。
【0128】
また、ここでは二種類のガスを供給する例を用いたが、それに限るものでは無く、一種類のガスや3種類以上のガスを供給して膜を形成してもよい。
【符号の説明】
【0129】
100…基板、130・・・ロードロック室、140・・・搬送室、146・・・水分検出部、180・・・不活性ガス供給部、PM・・・モジュール、RC・・・リアクタ、200…基板処理装置、201…処理室、213…ヒータ、RC…リアクタ、400…コントローラ



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11