(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-06
(45)【発行日】2022-10-17
(54)【発明の名称】投射レンズおよび投射装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/28 20060101AFI20221007BHJP
G02B 7/00 20210101ALI20221007BHJP
G02B 7/182 20210101ALI20221007BHJP
G02B 17/08 20060101ALI20221007BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20221007BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20221007BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20221007BHJP
【FI】
G03B21/28
G02B7/00 A
G02B7/00 F
G02B7/182
G02B17/08
G03B21/00 D
G03B21/14 D
G03B21/14 Z
H04N5/74 A
(21)【出願番号】P 2021520647
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2020016197
(87)【国際公開番号】W WO2020235251
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2019094096
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 賢
(72)【発明者】
【氏名】茅野 宏信
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-035873(JP,A)
【文献】特開2016-136196(JP,A)
【文献】特開2012-098506(JP,A)
【文献】特開2005-309251(JP,A)
【文献】特表2007-525700(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055963(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/169903(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101676793(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/28
G03B 21/00
G02B 17/08
G02B 7/00
G02B 7/182
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学素子を有する投射装置の筐体に取り付けられる投射レンズであって、
前記筐体からの光が通る第1光軸に沿って配置された第1光学系を保持する第1保持部と、
前記第1光軸の光を折り曲げて第2光軸の光とする第1反射部と、
前記第2光軸の光を折り曲げて第3光軸の光とする第2反射部と、
前記第1反射部と前記第2反射部を保持する第2保持部と、を備え、
前記第1光学系のうち最も縮小側の第1レンズと前記第1反射部との間の前記第1光軸の距離は、前記第1反射部と前記第2反射部との間の前記第2光軸の距離よりも長く、
前記第1光学系は、前記電気光学素子の光学像の中間像を結像するために、最も拡大側に配置された第2レンズを有
し、
前記中間像は、前記第1反射部よりも縮小側に結像される投射レンズ。
【請求項2】
前記第1レンズはガラスを用いたレンズであり、
前記第1光学系は、前記第2レンズよりも縮小側に、樹脂材料を用いた非球面の第3レンズを有する請求項1に記載の投射レンズ。
【請求項3】
前記第2レンズの焦点距離をf2とし、前記第3レンズの焦点距離をf3とした場合に、|1/f3|は|1/f2|よりも小さい請求項2に記載の投射レンズ。
【請求項4】
前記第3レンズの焦点距離をf3とした場合に、|1/f3|が0.03以下である請求項2または請求項3に記載の投射レンズ。
【請求項5】
前記第1光学系は、前記第1レンズと前記第3レンズとの間に絞り部を有し、
前記絞り部と前記第3レンズとの距離は、前記絞り部と前記第1レンズとの距離よりも長い請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の投射レンズ。
【請求項6】
前記第3レンズの光学面の径は、前記第1レンズの光学面の径よりも大きく、前記第2レンズの光学面の径よりも小さい請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の投射レンズ。
【請求項7】
前記第2保持部は、前記第1反射部と前記第2反射部とを一体的に保持する1つの保持フレームを有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の投射レンズ。
【請求項8】
前記第2保持部は、前記第2光軸の光が通る第2光学系を有し、
前記第2光学系を構成する全てのレンズの光学面の径は、前記第2レンズの光学面の径よりも小さい請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の投射レンズ。
【請求項9】
前記第1保持部に前記第2保持部を固定する第2保持部固定機構を備え、
前記第2保持部固定機構の固定力を弱めることで、前記第1保持部に対して前記第2保持部が相対的にシフト可能である請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の投射レンズ。
【請求項10】
前記第2保持部固定機構は、雄ネジと、前記雄ネジと係合する雌ネジと、前記雄ネジを挿通するネジ挿通穴とを有し、
前記雌ネジは前記第1保持部と前記第2保持部のうちの一方に形成され、前記ネジ挿通穴は他方に形成される請求項
9に記載の投射レンズ。
【請求項11】
請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載の投射レンズと、
前記電気光学素子と、
前記筐体と、
を備える投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、投射レンズおよび投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6378448号に記載の投射レンズは、第1光学系と、第1光軸折り曲げ部材と、第2光学系と、第2光軸折り曲げ部材と、第1保持部材と、第2保持部材と、第1接合面と、第2接合面と、接合部と、を備えている。
【0003】
特許第6378448号において、第1光軸折り曲げ部材は、第1光学系および第1光学系による結像面の間に配され、光軸を折り曲げる。第2光学系は、第1光学系で結像された像を投射面に投射する。第2光軸折り曲げ部材は、第2光学系に配され、光軸を折り曲げる。第1保持部材は、第1光学系および第1光軸折り曲げ部材を一体に保持する。第2保持部材は、第2光学系および第2光軸折り曲げ部材を一体に保持する。第1接合面は、第1光学系の出射側の光軸に交差して第1保持部材に形成される。第2接合面は、第2光学系の入射側の光軸に交差して第2保持部材に形成される。接合部は、第1接合面および第2接合面を合わせた状態で第1保持部材および第2保持部材の少なくとも一方が他方に対し第1接合面および第2接合面の面内方向にシフトおよび光軸回りに回転可能に構成され、第1光学系の出射側と第2光学系の入射側の光軸合わせによりU字状光路を形成する。
【発明の概要】
【0004】
本開示の技術に係る1つの実施形態は、小型化が可能な投射レンズおよび投射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の投射レンズは、電気光学素子を有する投射装置の筐体に取り付けられる投射レンズであって、筐体からの光が通る第1光軸に沿って配置された第1光学系を保持する第1保持部と、第1光軸の光を折り曲げて第2光軸の光とする第1反射部と、第2光軸の光を折り曲げて第3光軸の光とする第2反射部と、第1反射部と第2反射部を保持する第2保持部と、を備え、第1光学系のうち最も縮小側の第1レンズと第1反射部との間の第1光軸の距離は、第1反射部と第2反射部との間の第2光軸の距離よりも長く、第1光学系は、電気光学素子の光学像の中間像を結像するために、最も拡大側に配置された第2レンズを有する。
【0006】
第1レンズはガラスを用いたレンズであり、第1光学系は、第2レンズよりも縮小側に、樹脂材料を用いた非球面の第3レンズを有することが好ましい。
【0007】
第2レンズの焦点距離をf2とし、第3レンズの焦点距離をf3とした場合に、|1/f3|は|1/f2|よりも小さいことが好ましい。
【0008】
第3レンズの焦点距離をf3とした場合に、|1/f3|が0.03以下であることが好ましい。
【0009】
第1光学系は、第1レンズと第3レンズとの間に絞り部を有し、絞り部と第3レンズとの距離は、絞り部と第1レンズとの距離よりも長いことが好ましい。
【0010】
第3レンズの光学面の径は、第1レンズの光学面の径よりも大きく、第2レンズの光学面の径よりも小さいことが好ましい。
【0011】
第2保持部は、第1反射部と第2反射部とを一体的に保持する1つの保持フレームを有することが好ましい。
【0012】
第2保持部は、第2光軸の光が通る第2光学系を有し、第2光学系を構成する全てのレンズの光学面の径は、第2レンズの光学面の径よりも小さいことが好ましい。
【0013】
中間像は、第1反射部よりも縮小側に結像されることが好ましい。
【0014】
第1保持部に第2保持部を固定する第2保持部固定機構を備え、 第2保持部固定機構の固定力を弱めることで、第1保持部に対して第2保持部が相対的にシフト可能であることが好ましい。
【0015】
第2保持部固定機構は、雄ネジと、雄ネジと係合する雌ネジと、雄ネジを挿通するネジ挿通穴とを有し、雌ネジは第1保持部と第2保持部のうちの一方に形成され、ネジ挿通穴は他方に形成されることが好ましい。
【0016】
本開示の投射装置は、上記のいずれかの投射レンズと、電気光学素子と、筐体と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】投射レンズを備えるプロジェクタを示す図である。
【
図6】第2レンズ、第3レンズの焦点距離条件を示す図である。
【
図7】第1保持部と保持フレームの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、および「第3」等の用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、投射装置または投射レンズ内に存在する構成要素の数を限定するものではない。
【0019】
図1に示すように、プロジェクタ10は、本開示の技術に係る「投射装置」の一例であり、投射レンズ11と、本体部12とを備える。本体部12は、本開示の技術に係る「筐体」の一例である。投射レンズ11の一端部は本体部12に取り付けられている。本体部12は、画像形成ユニット13および制御基板等の主要部品を収容する。
【0020】
画像形成ユニット13は、投射レンズ11を介してスクリーン14に投射する画像を形成する。画像形成ユニット13は、画像形成パネル15、光源16、および導光部材(図示せず)等を備えている。光源16は、画像形成パネル15に光を照射する。導光部材は、光源16からの光を画像形成パネル15に導光する。
【0021】
画像形成ユニット13は、例えば、画像形成パネル15としてDMD(Digital Micromirror Device:登録商標)を使用した反射型である。DMDは、周知の通り、光源16から照射される光の反射方向を変化させることが可能な複数のマイクロミラーを有しており、各マイクロミラーを画素単位で二次元に配列した画像表示素子である。DMDは、画像に応じて各マイクロミラーの向きを変化させることで、光源16からの光の反射光のオンオフを切り替えることにより、画像に応じた光変調を行う。なお、画像形成パネル15は、本開示の技術に係る「電気光学素子」の一例である。
【0022】
光源16の一例としては、白色光源が挙げられる。白色光源は、白色光を発する。白色光源は、例えば、レーザ光源と蛍光体とを組み合わせることで実現される光源である。レーザ光源は、蛍光体に対して青色光を励起光として発する。蛍光体は、レーザ光源から発せられた青色光によって励起されることで黄色光を発する。白色光源は、レーザ光源から発せられる青色光と、蛍光体から発せられる黄色光とを組み合わせることで、白色光を発する。画像形成ユニット13には、さらに、光源16が発する白色光を、青色光B(Blue)、緑色光G(Green)、および赤色光R(Red)の各色光に時分割で選択的に変換する回転カラーフィルタが設けられている。B、G、およびRの各色光が画像形成パネル15に選択的に照射されることで、B、G、およびRの各色の画像情報が担持された画像光が得られる。こうして得た各色の画像光が、投射レンズ11に選択的に入射されることで、スクリーン14に向けて投射される。各色の画像光は、スクリーン14上で統合される。このため、スクリーン14には、フルカラーの画像Pが表示される。
【0023】
投射レンズ11には、画像形成ユニット13で形成された画像を表す光束が本体部12から入射する。投射レンズ11は、入射した光束に基づく画像光を、光学系により拡大して結像する。これにより、投射レンズ11は、画像形成ユニット13で形成された画像の拡大像である画像Pをスクリーン14に投射する。
【0024】
図2に示すように、投射レンズ11は、屈曲光学系を備えている。屈曲光学系は、第1光軸A1、第2光軸A2、および第3光軸A3を有する。第1光軸A1は、本体部12からの光が通る光軸である。第2光軸A2は、第1光軸A1に対して90°屈曲した光軸である。第3光軸A3は、第2光軸A2に対して90°屈曲した光軸である。なお、
図2は、外装カバーを取り外した状態の投射レンズ11を示している。
【0025】
投射レンズ11は、第1保持部20、第2保持部21、および第3保持部22を有する。各保持部20~22は、それぞれレンズを保持している。第1保持部20に保持されているレンズは第1光軸A1上に、第2保持部21に保持されているレンズは第2光軸A2上に、第3保持部22に保持されているレンズは第3光軸A3上に、それぞれ配置されている。第1保持部20の中心軸は第1光軸A1と、第2保持部21の中心軸は第2光軸A2と、第3保持部22の中心軸は第3光軸A3と、それぞれ略一致している。なお、本実施形態においては、説明を簡略化するため、各々のレンズの詳細な構成は省略して1枚のレンズのように表現している。しかし、各々のレンズは、複数枚のレンズであってもよい。
【0026】
第1保持部20は、最も入射側に位置し、第3保持部22は、最も出射側に位置する。第2保持部21は、第1保持部20と第3保持部22の間に位置する。なお、以下では、入射側を縮小側、出射側を拡大側と表現することがある。
【0027】
第1保持部20は、第1光学系L1を保持する。第1光学系L1は、例えば、レンズL11、レンズL12、レンズL13、レンズL14、レンズL15、レンズL16で構成され、第1光軸A1に沿って配置される。また、第1保持部20には、レンズL13とレンズL14との間に、固定絞り25が設けられている。固定絞り25は、本体部12から入射した光束を絞る。
【0028】
レンズL11は、第1光学系L1のうち最も縮小側に配置されている。すなわち、レンズL11は、本開示の技術に係る「第1レンズ」の一例である。
【0029】
第1光学系L1は、画像形成パネル15の光学像の中間像MIを結像する。このため、中間像MIの結像位置の縮小側の直前であって、第1光学系L1のうちの最も拡大側に配置されたレンズL16は、本開示の技術に係る「第2レンズ」の一例である。
【0030】
レンズL15とレンズL16とは互いに隣接している。レンズL15は、レンズL16よりも縮小側に配置された、樹脂材料を用いた非球面のレンズである。すなわち、レンズL15は、本開示の技術に係る「第3レンズ」の一例である。レンズL15は、像面湾曲等を補正するための補正レンズとして機能する。なお、このレンズL15以外は、後述する第2光学系L2および第3光学系L3のレンズも含めて、ガラスを用いたレンズである。
【0031】
第2保持部21は、保持フレーム28とカバー29とを有する。カバー29を取り外した状態を示す
図3にも示すように、保持フレーム28は、第1ミラー30と第2ミラー31とを一体的に保持する。カバー29は遮光性を有し、保持フレーム28の背面側を覆う。
【0032】
第1ミラー30および第2ミラー31は、それぞれ、屈曲光学系を構成する光学素子の1つであり、光軸を屈曲させる。第1ミラー30は、第1光軸A1の光を折り曲げて第2光軸A2の光とする。第2ミラー31は、第2光軸A2の光を折り曲げて第3光軸A3の光とする。すなわち、第1ミラー30は本開示の技術に係る「第1反射部」の一例であり、第2ミラー31は本開示の技術に係る「第2反射部」の一例である。
【0033】
第1ミラー30は、第1光軸A1および第2光軸A2のそれぞれに対して反射面が45°の角度をなす姿勢で保持される。同様に、第2ミラー31は、第2光軸A2および第3光軸A3のそれぞれに対して反射面が45°の角度をなす姿勢で保持される。第1ミラー30および第2ミラー31は、ガラス等の透明部材に反射膜をコーティングした鏡面反射型のミラーである。
【0034】
中間像MIは、第2光学系L2よりも縮小側、例えば、第1ミラー30よりも縮小側に結像される。言い換えれば、中間像MIは、レンズL16と第1ミラー30との間の位置に結像される。
【0035】
第2保持部21は、第2光学系L2を保持する。第2光学系L2は、例えば、レンズL21およびレンズL22で構成され、第2光軸A2に沿って配置される。本例において、第2光学系L2は、リレーレンズとして機能する。より具体的には、第2光学系L2は、第1光学系L1により結像された中間像MIを被写体として、中間像MIを表す光束を第3保持部22に中継する。
【0036】
第3保持部22は、第3光学系L3を保持する。第3光学系L3は出射光学系であり、例えば、レンズL31、レンズL32、およびレンズL33で構成され、第3光軸A3に沿って配置される。レンズL33は、第3光学系L3のうちで最も拡大側に配置されたレンズであり、いわゆる出射レンズである。
【0037】
レンズL11と第1ミラー30との間の第1光軸A1の距離D1は、第1ミラー30と第2ミラー31との間の第2光軸A2の距離D2よりも長い(D1>D2;吹き出し35参照)。なお、距離D1は、より正確には、レンズL11の入射面と第1ミラー30の反射面との、第1光軸A1上における間隔である。同様に、距離D2は、より正確には、第1ミラー30の反射面と第2ミラー31の反射面との、第2光軸A2上における間隔である。
【0038】
図4において、固定絞り25とレンズL15との距離D3は、固定絞り25とレンズL11との距離D4よりも長い(D4<D3;吹き出し40参照)。なお、距離D3は、より正確には、固定絞り25とレンズL15の入射面との、第1光軸A1上における間隔である。同様に、距離D4は、より正確には、固定絞り25とレンズL11の出射面との、第1光軸A1上における間隔である。
【0039】
レンズL15の光学面の径Φ15は、レンズL11の光学面の径Φ11よりも大きく、レンズL16の光学面の径Φ16よりも小さい(Φ11<Φ15<Φ16;吹き出し41参照)。また、レンズL15の光学面の径Φ15は、レンズL11の光学面の径Φ11の1.3倍から2倍である(Φ15=1.3×Φ11~2×Φ11;吹き出し41参照)。なお、光学面の径とは、各保持部に保持された状態で、各レンズにおいて光線が通過可能な円形領域の直径である。
【0040】
また、レンズL16の光学面の径Φ16は、第1光学系L1を構成する各レンズの光学面の径の中で最大である。
【0041】
第2光学系L2を構成するレンズL21の光学面の径Φ21、レンズL22の光学面の径Φ22は、レンズL16の光学面の径Φ16よりも小さい(Φ21<Φ16、Φ22<Φ16;吹き出し42参照)。
【0042】
図5に示すように、レンズL15の焦点距離をf3とした場合に、|1/f3|が0.03以下である(|1/f3|≦0.03)。より好ましくは、|1/f3|が0.025未満である(|1/f3|<0.025)。また、
図6に示すように、レンズL16の焦点距離をf2とした場合に、|1/f3|は|1/f2|よりも小さい(|1/f3|<|1/f2|)。
【0043】
さらに、これは図示していないが、|1/f2|は、0.025以上、0.1以下である(0.025≦|1/f2|≦0.1)。より好ましくは、|1/f2|は、0.03よりも大きく、0.1以下である(0.03<|1/f2|≦0.1)。
【0044】
図7において、第2保持部21を構成する保持フレーム28の下部は、第2保持部固定機構50により、第1保持部20に固定される。第2保持部固定機構50は、雄ネジ51と、雄ネジ51と係合する雌ネジ52と、雄ネジ51を挿通する円形のネジ挿通穴53とを有する。これら雄ネジ51、雌ネジ52、およびネジ挿通穴53は、略正方形の四隅の位置に1セットずつ、計4セット設けられている。雌ネジ52は第1保持部20に形成され、ネジ挿通穴53は保持フレーム28に形成されている。ネジ挿通穴53の内径は、雄ネジ51のネジ部の外径よりも大きい。
【0045】
第1保持部20には、互いに対称な位置に4個の突起54が形成されている。この突起54と対向する保持フレーム28の位置には、4個の円形の突起挿通穴55が形成されている。突起挿通穴55の内径は、突起54の外径よりも大きい。
【0046】
保持フレーム28を第1保持部20に固定する場合、まず、突起54が突起挿通穴55に挿通されるよう、保持フレーム28を第1保持部20に合体させる。その後、ネジ挿通穴53に雄ネジ51を挿通して、雄ネジ51を雌ネジ52に係合させ、雄ネジ51を締め付ける。
【0047】
雄ネジ51と雌ネジ52の締結を緩めた状態、すなわち第2保持部固定機構50の固定力を弱めた状態においては、ネジ挿通穴53の内径と雄ネジ51のネジ部の外径との寸法差、および突起挿通穴55の内径と突起54の外径との寸法差の分、第1保持部20に対して保持フレーム28が相対的にシフト可能である。なお、
図7では、カバー29、第1ミラー30、第2ミラー31を取り外した状態を示している。
【0048】
次に、上記構成による作用について説明する。画像形成ユニット13において形成された画像を表す光束は、まず、投射レンズ11の第1光学系L1のレンズL11に入射する。続いて光束はレンズL12、レンズL13を通過し、固定絞り25を通過することで光量が調整される。固定絞り25によって光量が調整された光束は、レンズL14を通過し、さらにレンズL15を通過することで像面湾曲等が補正される。
【0049】
レンズL15は、樹脂材料を用いた非球面のレンズである。このため、ガラスを用いた非球面のレンズと比べて非常に安価である。また、ガラスを用いた球面のレンズで像面湾曲等を補正しようとすると、正負のレンズの組み合わせ等、複数のレンズが必要になる。このため、第1光軸A1の距離D1が長くなること、すなわち第1保持部20が大型化することは避けられない。しかし、本例では、樹脂材料を用いた非球面のレンズL15で像面湾曲等を補正するため、第1保持部20の大型化が抑制される。
【0050】
図4で示したように、固定絞り25とレンズL15との距離D3を、固定絞り25とレンズL11との距離D4よりも長くしている。このように、レンズL15は、光が集光されて高温になる固定絞り25から比較的離れた位置に配置されるので、固定絞り25にこもる熱の影響を受けにくい。したがって、レンズL15の熱変形によって焦点が合わなくなるといった不都合を回避することができる。また、レンズL15が固定絞り25から比較的離れて配置されていることで、固定絞り25の比較的近くに配置されている場合と比べて、像高が高くなる。これにより、軸上光線と軸外光線がより分散するため、像面湾曲等を適切に補正しやすい。
【0051】
また、
図4で示したように、レンズL15の光学面の径Φ15を、レンズL11の光学面の径Φ11よりも大きく、レンズL16の光学面の径Φ16よりも小さくしている。また、レンズL15の光学面の径Φ15を、レンズL11の光学面の径Φ11の1.3倍から2倍としている。これにより、像面湾曲等を適切に補正しつつ、第1保持部20の不必要な大型化を避けることができる。
【0052】
図5で示したように、レンズL15の焦点距離をf3とした場合に、|1/f3|が0.03以下としている。また、
図6で示したように、レンズL16の焦点距離をf2とした場合に、|1/f3|を|1/f2|よりも小さくしている。このように、レンズL15の屈折力を非常に小さくすれば、たとえレンズL15が熱等で変形したとしても、焦点の狂いを最小限に止めることができる。
【0053】
レンズL15を通過した光束は、レンズL16に入射する。そして、第1ミラー30よりも縮小側、すなわちレンズL16と第1ミラー30との間の位置に、中間像MIが結像される。
【0054】
図2で示したように、レンズL11と第1ミラー30との間の第1光軸A1の距離D1を、第1ミラー30と第2ミラー31との間の第2光軸A2の距離D2よりも長くしている。このため、中間像MIを、第2光軸A2ではなく第1光軸A1において結像させることができる。したがって、第1光学系L1に比して第2光学系L2をコンパクトな構成とすることができ、第2光軸A2、すなわち第2保持部21の長さを短くすることができる。結果的に、投射レンズ11、ひいてはプロジェクタ10の小型化が可能となる。
【0055】
レンズL16を通過した光束は、第1ミラー30で90°折り曲げられて第2光軸A2の光とされ、第2光学系L2を通過する。
【0056】
図4で示したように、第2光学系L2を構成するレンズL21の光学面の径Φ21、レンズL22の光学面の径Φ22を、レンズL16の光学面の径Φ16よりも小さくしている。こうすることができるのは、レンズL16の光学面の径Φ16を、第1光学系L1を構成する各レンズの光学面の径の中で最大とし、第1光学系L1によって、中間像MIを第1光軸A1において結像させているためである。これにより、レンズL21の光学面の径Φ21、レンズL22の光学面の径Φ22を大きくせずとも、所望の大きさの拡大像が得られる。レンズL21の光学面の径Φ21、レンズL22の光学面の径Φ22を、レンズL16の光学面の径Φ16よりも小さくしているので、第2保持部21をさらに小型化することができる。
【0057】
第2光学系L2を通過した光束は、第2ミラー31で再び90°折り曲げられて第3光軸A3の光とされる。そして、第3光学系L3を通過して、スクリーン14に画像Pとして投射される。
【0058】
図2および
図3で示したように、第2保持部21は、第1ミラー30と第2ミラー31とを一体的に保持する1つの保持フレーム28を有している。このため、第1ミラー30と第2ミラー31とを別々に保持する2つの保持フレームを有する場合と比べて、部品コストおよび組み立て工数を削減することができる。
【0059】
図7で示したように、第1保持部20に保持フレーム28(第2保持部21)を固定する第2保持部固定機構50を備え、第2保持部固定機構50の固定力を弱めることで、第1保持部20に対して保持フレーム28(第2保持部21)を相対的にシフト可能としたので、第1光学系L1と第1ミラー30との相対的な位置関係を微調整した上で、第1保持部20に第2保持部21を固定することが可能となる。
【0060】
また、第2保持部固定機構50を、雄ネジ51と、雄ネジ51と係合する雌ネジ52と、雄ネジ51を挿通するネジ挿通穴53とで構成したので、第2保持部21を容易に第1保持部20に組み付けることができる。
【0061】
なお、上記実施形態では、雌ネジ52を第1保持部20に形成し、ネジ挿通穴53を保持フレーム28に形成したが、逆に、ネジ挿通穴53を第1保持部20に形成し、雌ネジ52を第2保持部21に形成してもよい。また、第1保持部20への第2保持部21の固定方法としては、上記実施形態のネジによる締結固定に限らず、リベット、接着剤等の周知の他の固定方法を採用してもよい。
【0062】
画像形成パネル15としては、DMDの代わりに液晶表示素子(LCD;Liquid Crystal Display)を使用した透過型画像形成パネルを用いてもよい。また、DMDの代わりに、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro Luminescence)のような自発光型素子を用いたパネルを用いてもよい。さらに、第1反射部、第2反射部としては、上記実施形態の鏡面反射型の第1ミラー30、第2ミラー31の代わりに、全反射型のミラーを用いてもよい。
【0063】
上記実施形態では、光源16としてレーザ光源を用いる例を説明したが、これに限らず、水銀ランプ、LED等を光源16として用いてもよい。また、上記実施形態では、青色レーザ光源と黄色蛍光体を用いたが、これに限らず、黄色蛍光体の代わりに緑色蛍光体と赤色蛍光体を用いてもよい。また、黄色蛍光体の代わりに緑色レーザ光源と赤色レーザ光源を用いてもよい。
【0064】
本開示の技術は、上述の種々の実施形態と種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記実施形態に限らず、要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。
【0065】
以上に示した記載内容および図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、および効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、および効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容および図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0066】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。