(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】イットリウム質保護膜およびその製造方法ならびに部材
(51)【国際特許分類】
C23C 14/06 20060101AFI20221011BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20221011BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
C23C14/06 K
C23C16/44 B
H01L21/316 X
(21)【出願番号】P 2022024103
(22)【出願日】2022-02-18
【審査請求日】2022-03-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】721002554
【氏名又は名称】つばさ真空理研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】石川 道夫
(72)【発明者】
【氏名】谷村 径夫
(72)【発明者】
【氏名】小川 修平
(72)【発明者】
【氏名】小川 朝敬
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-147995(JP,A)
【文献】特表2020-525640(JP,A)
【文献】特開2018-190983(JP,A)
【文献】特開2019-019413(JP,A)
【文献】国際公開第2018/083854(WO,A1)
【文献】特開2021-077899(JP,A)
【文献】登録実用新案第3224084(JP,U)
【文献】国際公開第2017/115662(WO,A1)
【文献】LEE Seungjun., et al,Effect of the Dispersion State in Y5O4F7 Suspension on YOF Coating Deposited by Suspension Plasma Spray,Coatings,2021年07月09日,11, 831
【文献】LEE Jaehoo., et al,Yttrium Oxyfluoride Coating Deposited by Suspension Plasma Spraying Using Coaxial Feeding,Coatings,10, 481,2020年05月16日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00 -14/58
C23C 16/00 -16/56
H01L 21/302
H01L 21/461
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
H05H 1/00 - 1/54
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折パターンにおけるY
5O
4F
7のピーク強度比が
80%以上であり、
気孔率が1.5体積%未満であり、
ビッカース硬さが500MPa以上である、イットリウム質保護膜。
【請求項2】
フッ素の含有量が35~60原子%である、請求項1に記載のイットリウム質保護膜。
【請求項3】
結晶子サイズが30nm以下である、請求項1または2に記載のイットリウム質保護膜。
【請求項4】
厚さが0.3μm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のイットリウム質保護膜。
【請求項5】
Y
5O
4F
7の(151)面のロッキングカーブの半値幅が40°以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のイットリウム質保護膜。
【請求項6】
基材と、
前記基材の表面である成膜面に配置された、請求項1~5のいずれか1項に記載のイットリウム質保護膜と、を有する部材。
【請求項7】
前記基材が、セラミックスおよび金属からなる群から選ばれる少なくとも1種で構成され、
前記セラミックスが、ガラス、石英、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムおよび酸窒化アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記金属が、アルミニウムおよびアルミニウムを含有する合金からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載のイットリウム質保護膜と、を有する部材。
【請求項8】
前記成膜面の表面粗さが、算術平均粗さRaで、0.6μm以下である、請求項6または7に記載の部材。
【請求項9】
前記成膜面の最大長さが30mm以上である、請求項6~8のいずれか1項に記載の部材。
【請求項10】
前記基材と前記イットリウム質保護膜との間に、1層以上の下地層を有し、
前記下地層は、Al
2O
3、SiO
2、Y
2O
3、MgO、ZrO
2、La
2O
3、Nd
2O
3、Yb
2O
3、Eu
2O
3およびGd
2O
3からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含有する、請求項6~9のいずれか1項に記載の部材。
【請求項11】
前記基材と前記イットリウム質保護膜との間に、2層以上の前記下地層を有し、
前記酸化物は、隣接する前記下地層どうしで互いに異なる、請求項10に記載の部材。
【請求項12】
前記基材が、前記成膜面として、最大長さを規定する第一成膜面と、前記第一成膜面とは異なる第二成膜面と、を有し、
前記第一成膜面と前記第二成膜面とのなす角が、20°~120°であり、
前記成膜面の全面積に対する前記第二成膜面の面積の割合が、60%以下である、請求項6~11のいずれか1項に記載の部材。
【請求項13】
プラズマエッチング装置またはプラズマCVD装置の内部で使用される、請求項6~12のいずれか1項に記載の部材。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか1項に記載のイットリウム質保護膜を製造する方法であって、
真空中において、酸素、アルゴン、ネオン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素のイオンを照射しながら、蒸発源を蒸発させて基材に付着させ、
前記蒸発源として、Y
2O
3およびYF
3を用いる、イットリウム質保護膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イットリウム質保護膜およびその製造方法ならびに部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを製造する際、例えば、チャンバ内において、ハロゲン系ガスのプラズマを用いたドライエッチングによって半導体基板(シリコンウェハ)の表面を微細加工したり、ドライエッチング後に半導体基板を取り出したチャンバ内を酸素ガスのプラズマを用いてクリーニングしたりする。
【0003】
このとき、チャンバ内においてプラズマガスに曝された部材は腐食し、腐食した部材から腐食部分が粒子状に脱落する場合がある。脱落した粒子(パーティクル)は、半導体基板に付着して、回路に欠陥をもたらす異物となり得る。
【0004】
そこで、従来、プラズマに曝される部材を保護する保護膜として、酸フッ化イットリウムを含有する保護膜(イットリウム質保護膜)が知られている。
特許文献1には、溶射によって形成される、酸フッ化イットリウム(イットリウムオキシフッ化物)を含有する溶射皮膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが検討したところ、従来のイットリウム質保護膜は、耐プラズマ性(プラズマに対する耐食性)が不十分な場合があることが分かった。
【0007】
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、耐プラズマ性に優れるイットリウム質保護膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[14]を提供する。
[1]X線回折パターンにおけるY5O4F7のピーク強度比が60%以上であり、気孔率が1.5体積%未満であり、ビッカース硬さが500MPa以上である、イットリウム質保護膜。
[2]フッ素の含有量が35~60原子%である、上記[1]に記載のイットリウム質保護膜。
[3]結晶子サイズが30nm以下である、上記[1]または[2]記載のイットリウム質保護膜。
[4]厚さが0.3μm以上である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のイットリウム質保護膜。
[5]Y5O4F7の(151)面のロッキングカーブの半値幅が40°以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のイットリウム質保護膜。
[6]基材と、上記基材の表面である成膜面に配置された、上記[1]~[5]のいずれかに記載のイットリウム質保護膜と、を有する部材。
[7]上記基材が、セラミックスおよび金属からなる群から選ばれる少なくとも1種で構成され、上記セラミックスが、ガラス、石英、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムおよび酸窒化アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、上記金属が、アルミニウムおよびアルミニウムを含有する合金からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[6]に記載のイットリウム質保護膜と、を有する部材。
[8]上記成膜面の表面粗さが、算術平均粗さRaで、0.6μm以下である、上記[6]または[7]に記載の部材。
[9]上記成膜面の最大長さが30mm以上である、上記[6]~[8]のいずれかに記載の部材。
[10]上記基材と上記イットリウム質保護膜との間に、1層以上の下地層を有し、上記下地層は、Al2O3、SiO2、Y2O3、MgO、ZrO2、La2O3、Nd2O3、Yb2O3、Eu2O3およびGd2O3からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含有する、上記[6]~[9]のいずれかに記載の部材。
[11]上記基材と上記イットリウム質保護膜との間に、2層以上の上記下地層を有し、上記酸化物は、隣接する上記下地層どうしで互いに異なる、上記[10]に記載の部材。
[12]上記基材が、上記成膜面として、最大長さを規定する第一成膜面と、上記第一成膜面とは異なる第二成膜面と、を有し、上記第一成膜面と上記第二成膜面とのなす角が、20°~120°であり、上記成膜面の全面積に対する上記第二成膜面の面積の割合が、60%以下である、上記[6]~[11]のいずれかに記載の部材。
[13]プラズマエッチング装置またはプラズマCVD装置の内部で使用される、上記[6]~[12]のいずれかに記載の部材。
[14]上記[1]~[5]のいずれかに記載のイットリウム質保護膜を製造する方法であって、真空中において、酸素、アルゴン、ネオン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素のイオンを照射しながら、蒸発源を蒸発させて基材に付着させ、上記蒸発源として、Y2O3およびYF3を用いる、イットリウム質保護膜の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐プラズマ性に優れるイットリウム質保護膜を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】リング状の基材の半分を切り欠いて示す模式図である。
【
図3】別のリング状の基材の断面の一部を示す模式図である。
【
図4】更に別のリング状の基材の断面の一部を示す模式図である。
【
図5】イットリウム質保護膜の製造に用いる装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における用語の意味は、以下のとおりである。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
[イットリウム質保護膜]
本実施形態のイットリウム質保護膜は、X線回折パターンにおけるY5O4F7のピーク強度比が60%以上であり、気孔率が1.5体積%未満であり、ビッカース硬さが500MPa以上である。
【0014】
以下、イットリウム質保護膜を単に「保護膜」ともいい、本実施形態のイットリウム質保護膜(保護膜)を「本保護膜」ともいう。
【0015】
イットリウム質保護膜は、酸フッ化イットリウムを含有する。
酸フッ化イットリウムを表す化学式としては、YOF、Y5O4F7などが挙げられる。YOFは硬度の低い斜方晶であるのに対して、Y5O4F7は菱面体という特殊な結晶構造であり、硬度が高い。
本保護膜は、菱面体結晶構造を有するY5O4F7の割合が多い。すなわち、X線回折パターンにおけるY5O4F7のピーク強度比が一定値以上である。これにより、本保護膜は、硬く、ビッカース硬さが一定値以上を示す。
更に、本保護膜は、後述する方法(本製造方法)により形成されることで、緻密であり、気孔率が小さい。
このような本保護膜は、耐プラズマ性に優れる。
以下、本保護膜について、より詳細に説明する。
【0016】
〈ピーク強度比〉
本保護膜のX線回折パターンにおけるY5O4F7のピーク強度比(以下、「Y5O4F7ピーク強度比」ともいう)は、60%以上であり、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましく、98%以上がより更に好ましく、99%以上が特に好ましく、100%が最も好ましい。
【0017】
Y5O4F7ピーク強度比を上記範囲にするためには、後述する方法(本製造方法)により保護膜を製造することが好ましい。
【0018】
Y5O4F7ピーク強度比は、保護膜のX線回折(XRD)パターンにおいて、以下に示す結晶相のメインピーク強度の合計を100とした場合における、Y5O4F7のメインピーク強度の割合(単位:%)である。
Y5O4F7のメインピーク位置には、Y6O5F8結晶のピークとY7O6F9結晶のピークとが重なって表れるため、微量のY6O5F8およびY7O6F9が生成している可能性も排除できないが、Y5O4F7のメインピーク位置にあるピークは、全てY5O4F7のピークとして扱う。
各結晶相のメインピークは、Y2O3は2θ=29.2°付近、YOFは2θ=28.1°付近、Y5O4F7は2θ=28.1°付近に表れる。
YF3は、メインピークがY5O4F7と重なることから、YF3結晶が存在する場合には、YF3結晶の第二メインピークである2θ=24.5°付近のピークの強度を1.3倍にしてメインピーク相当に換算し、これを、YF3のメインピーク強度とする。
【0019】
保護膜のXRDパターンは、X線回折装置(D8 DISCOVER Plus、Bruker社製)を用いて、下記条件にて、微小部2D(2次元)モードで、XRD測定することにより得られる。
・X線源:CuKα線(出力:45kV、電流:120mA)
・走査範囲:2θ=10°~80°
・ステップ時間:0.2s/step
・スキャンスピード:10°/min
・ステップ幅:0.02°
・検出器:マルチモード検出器EIGER(2Dモード)
・入射側光学系:多層膜ミラー+1.0mmφマイクロスリット+1.0mmφコリメータ
・受光側光学系:OPEN
【0020】
〈ビッカース硬さ〉
本保護膜の耐プラズマ性が優れるという理由から、本保護膜のビッカース硬さは、500MPa以上であり、800MPa以上が好ましく、1000MPa以上がより好ましく、1100MPa以上が更に好ましく、1200MPa以上がより更に好ましく、1250MPa以上が特に好ましく、1300MPa以上が最も好ましい。
本保護膜のビッカース硬さの上限は、特に限定されず、例えば、1500MPaであり、1400MPaが好ましい。
【0021】
ビッカース硬さを上記範囲にするためには、保護膜のY5O4F7ピーク強度比を上述した範囲にすることが好ましい。
【0022】
保護膜のビッカース硬さは、JIS R 1610:2003に準拠して、求める。
より詳細には、硬微小硬度測定器(HMV-1、島津製作所社製)を用いて、対面角136°のダイヤモンド圧子によって、試験力1.96Nを負荷したときに求められるビッカース硬さ(Hv0.2)である。
【0023】
〈気孔率〉
本保護膜の耐プラズマ性が優れるという理由から、本保護膜の気孔率は、1.5体積%未満であり、1.0体積%以下が好ましく、0.5体積%以下がより好ましく、0.3体積%以下が更に好ましく、0.2体積%以下が特に好ましく、0.10体積%以下が最も好ましい。
【0024】
気孔率を上記範囲にするためには、後述する方法(本製造方法)により保護膜を製造することが好ましい。
【0025】
保護膜の気孔率は、次のように求める。
まず、収束イオンビーム(FIB)を用いて、保護膜および後述する基材の一部に対して、保護膜の表面から基材に向けて、52°の角度で厚さ方向にスロープ加工を実施して、断面を露出させる。露出した断面を、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、20000倍の倍率で観察し、その断面画像を撮影する。
断面画像は、複数の箇所において撮影する。具体的には、例えば、保護膜および基材が円形状である場合は、保護膜の表面(または基材の表面)の中央の1点と、外周から10mm離れた位置にある4点との計5点において撮影し、断面画像の大きさは、6μm×5μmとする。保護膜の厚さが5μm以上である場合には、保護膜の断面を厚さ方向に全て観察できるように、複数の撮影箇所において、それぞれ、断面画像を撮影する。
続いて、得られた断面画像を、画像解析ソフトウェア(ImageJ、National Institute of Health社製)を用いて解析することにより、断面画像中の気孔部分の面積を特定する。保護膜の全断面の面積に対する気孔部分の面積の割合を算出し、これを、保護膜の気孔率(単位:体積%)とみなす。なお、画像解析ソフトによって検出できないほど微細な気孔(孔径が20nm以下である気孔)については、その面積を0とみなす。
【0026】
〈組成〉
本保護膜は、酸フッ化イットリウムを含有するから、イットリウム(Y)、酸素(O)およびフッ素(F)を含有する。
【0027】
《Y含有量》
本保護膜のY含有量は、10原子%以上が好ましく、20原子%以上がより好ましく、25原子%以上が更に好ましく、26原子%以上が特に好ましく、27原子%以上が最も好ましい。
一方、本保護膜のY含有量は、35原子%以下が好ましく、30原子%以下がより好ましく、29原子%以下が更に好ましく、28原子%以下が特に好ましい。
【0028】
《O含有量》
本保護膜のO含有量は、10原子%以上が好ましく、15原子%以上がより好ましく、20原子%以上が更に好ましく、21原子%以上が特に好ましく、22原子%以上が最も好ましくい。
一方、本保護膜のO含有量は、35原子%以下が好ましく、30原子%以下がより好ましく、25原子%以下が更に好ましく、24原子%以下が特に好ましく、23.5原子%以下が最も好ましい。
【0029】
《F含有量》
本保護膜のF含有量は、35原子%以上が好ましく、40原子%以上がより好ましく、44原子%以上が更に好ましく、47原子%以上が特に好ましく、49.5原子%以上が最も好ましい。
一方、本保護膜のF含有量は、65原子%以下が好ましく、60原子%以下がより好ましく、55原子%以下が更に好ましく、52原子%以下がより更に好ましく、51原子%以下が特に好ましく、50原子%以下が最も好ましい。
【0030】
各元素の含有量を上記範囲にするためには、例えば、後述する方法(本製造方法)において、蒸発源の量などの製造条件を適宜調整する。
【0031】
保護膜におけるY、OおよびFの含有量(単位:原子%)は、エネルギー分散型X線分析装置(EX-250SE、堀場製作所社製)を用いて測定する。
【0032】
〈配向度(ロッキングカーブの半値幅)〉
保護膜を大面積化する場合、保護膜中にクラックが発生することを抑制する観点から、保護膜のY5O4F7の(151)面の配向度(以下、単に「配向度」ともいう)は、高い方が好ましい。
配向度の指標として、Y5O4F7の(151)面のロッキングカーブの半値幅を用いる。具体的には、2次元モードの検出器を用いて得られるY5O4F7の(151)面のピークのロッキングカーブを2θ方向に積分し、その半値幅を用いて、配向性を評価する。この半値幅(単位:°)が小さいほど、配向度が高いと言える。
Y5O4F7の(151)面のロッキングカーブの半値幅は、40°以下が好ましく、30°以下がより好ましく、25°以下が更に好ましく、20°以下がより更に好ましく、15°以下が特に好ましく、10°以下が最も好ましい。
配向度を上記範囲にするためには、後述する方法(本製造方法)により保護膜を製造することが好ましい。
【0033】
〈結晶子サイズ〉
上述したように、例えば、プラズマガスに曝された部材から脱落した粒子(パーティクル)は、半導体基板に付着して、回路に欠陥をもたらす異物となり得る。
このとき、パーティクルのサイズが小さいほど、欠陥の発生を抑制できる。
したがって、本保護膜の結晶子サイズは、30nm以下が好ましく、25nm以下がより好ましく、20nm以下が更に好ましく、15nm以下が特に好ましく、10nm以下が最も好ましい。
一方、本保護膜の結晶子サイズの下限は、特に限定されず、例えば、2nmであり、5nmが好ましい。
【0034】
結晶子サイズを上記範囲にするためには、後述する方法(本製造方法)により保護膜を製造することが好ましい。
【0035】
保護膜における結晶子サイズは、鏡面研磨した保護膜のXRD測定により得られるXRDパターンのデータに基づいて、シェラーの式を用いて求める。
【0036】
〈厚さ〉
本保護膜の厚さは、0.3μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましく、10μm以上がより更に好ましく、15μm以上が特に好ましく、20μm以上が最も好ましい。
一方、本保護膜の厚さの上限は、特に限定されず、例えば、300μmであり、200μmが好ましく、100μmがより好ましく、50μmが更に好ましく、30μmが特に好ましい。
【0037】
保護膜の厚さは、次のように測定する。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、保護膜の断面を観察し、保護膜の厚さを任意の5点で測定し、測定した5点の平均値を、この保護膜の厚さ(単位:μm)とみなす。
【0038】
〈熱伝導率〉
本保護膜の熱伝導率は、5.0W/(m・K)以上が好ましく、7.0W/(m・K)以上がより好ましく、9.0W/(m・K)以上が更に好ましく、11.0W/(m・K)以上が特に好ましく、12.5W/(m・K)以上が最も好ましい。
保護膜の熱伝導率は、NETZSCH社製のLFA 447(Nanoflash)のキセノンランプ光を用いたフラッシュ法によって室温(23℃)で求める。
具体的には、基材および保護膜のかさ密度を質量および体積から求め、JIS R 1672に規定される示差走査熱量法によって、基材および保護膜の比熱容量を求める。更に、フラッシュ法によって得られる温度上昇曲線に、多層解析モデルを適用して、基材および保護膜の熱拡散率を求める。かさ密度、比熱容量および熱拡散率の積から、熱伝導率を求める。
【0039】
[部材]
図1は、部材6の一例を示す模式図である。
部材6は、基材5およびイットリウム質保護膜4を有する。
基材5とイットリウム質保護膜4との間には、
図1に示すように、下地層(下地層1、下地層2および下地層3)が配置されていてもよい。ただし、下地層は、3層に限定されない。
【0040】
本実施形態の部材(以下、「本部材」ともいう)は、イットリウム質保護膜として、上述した本保護膜を有する。
本部材は、その表面が本保護膜で覆われているため、本保護膜と同様に、耐プラズマ性に優れる。
【0041】
以下、本部材が備える各部について、詳細に説明する。
【0042】
〈基材〉
基材は、少なくとも、イットリウム質保護膜(または、後述する下地層)が形成される表面を有する。この表面を、以下、便宜的に「成膜面」と呼ぶ場合がある。
【0043】
《材質》
基材の材質は、部材の用途等に応じて、適宜選択される。
基材は、例えば、セラミックスおよび金属からなる群から選ばれる少なくとも1種で構成される。
ここで、セラミックスは、例えば、ガラス(ソーダライムガラスなど)、石英、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)および酸窒化アルミニウム(AlON)からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
金属は、例えば、アルミニウムおよびアルミニウムを含有する合金からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0044】
《形状》
基材の形状としては、特に限定されず、例えば、平板状、リング状、ドーム状、凹状または凸状が挙げられ、部材の用途等に応じて、適宜選択される。
【0045】
《成膜面の表面粗さ》
基材の成膜面の表面粗さは、後述する理由から、算術平均粗さRaとして、0.6μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましく、0.1μm以下が更に好ましく、0.05μm以下がより更に好ましく、0.01μm以下が特に好ましく、0.005μm以下が最も好ましい。
成膜面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、JIS B 0601:2001に準拠して測定する。
【0046】
《成膜面の最大長さ》
基材の成膜面の最大長さは、30mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、200mm以上が更に好ましく、300mm以上がより更に好ましく、500mm以上が特に好ましく、800mm以上が非常に好ましく、1000mm以上が最も好ましい。
なお、「最大長さ」とは、成膜面が有する最大の長さを意味する。具体的には、例えば、成膜面が平面視で円である場合はその直径であり、平面視でリングである場合はその外径であり、平面視で四角形である場合は最大の対角線の長さである。
成膜面の最大長さの上限は、特に限定されず、例えば、2000mmであり、1500mmが好ましい。
【0047】
図2は、リング状の基材5の半分を切り欠いて示す模式図である。
図2に示す基材5について、例えば、外径D
1が100mm、内径D
2が90mm、厚さtが5mmである場合、その最大長さは100mmである。
基材5は、成膜面7を有するが、
図2に示すように、最大長さ(外径D
1)を規定する第一成膜面7aと、第一成膜面7aとは異なる第二成膜面7bと、を有していてもよい。
成膜面7の全面積に対する、第二成膜面7bの面積の割合は、例えば、60%以下である。
【0048】
図3は、別のリング状の基材5の断面の一部を示す模式図である。
図3に示すように、基材5は、複数の第二成膜面7bを有していてもよい。
【0049】
図4は、更に別のリング状の基材5の断面の一部を示す模式図である。
第一成膜面7aと第二成膜面7bとのなす角は、例えば、20°~120°である。
図4に示す基材5において、第一成膜面7aと、第一成膜面7aに接続する第二成膜面7bとのなす角は、約30°である。
【0050】
〈下地層〉
上述したように、基材とイットリウム質保護膜との間には、1層以上の下地層が配置されていてもよい。
下地層を形成することにより、イットリウム質保護膜の応力が緩和されたり、イットリウム質保護膜の基材に対する密着性が増したりする。
【0051】
下地層の層数は、上限は特に限定されないが、5層以下が好ましく、4層以下がより好ましく、3層以下が更に好ましく、2層以下が特に好ましく、1層が最も好ましい。
【0052】
下地層は、アモルファス膜または微結晶膜であることが好ましい。
【0053】
下地層は、Al2O3、SiO2、Y2O3、MgO、ZrO2、La2O3、Nd2O3、Yb2O3、Eu2O3およびGd2O3からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含有することが好ましい。
【0054】
基材とイットリウム質保護膜との間に、2層以上の下地層が配置される場合、下地層の酸化物は、隣接する下地層どうしで、互いに異なることが好ましい。
隣接する下地層どうしで酸化物が互いに異なる場合とは、具体的には、例えば、下地層1の酸化物が「SiO2」、下地層2の酸化物が「Al2O3+SiO2」、下地層3の酸化物が「Al2O3」である場合が挙げられる。
【0055】
下地層の厚さは、それぞれ、0.1μm以上が好ましく、0.4μm以上がより好ましく、0.8μm以上が更に好ましい。
一方、下地層の厚さは、それぞれ、例えば15μm以下であり、10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。
下地層の厚さは、イットリウム質保護膜の厚さと同様に測定する。
【0056】
〈部材の用途〉
本部材は、例えば、半導体デバイス製造装置(プラズマエッチング装置、プラズマCVD装置など)の内部において、天板などの部材として使用される。
ただし、本部材の用途はこれに限定されない。
【0057】
[イットリウム質保護膜および部材の製造方法]
次に、本実施形態のイットリウム質保護膜を製造する方法(以下、「本製造方法」ともいう)を説明する。本製造方法は、上述した本部材を製造する方法でもある。
【0058】
本製造方法は、いわゆる、イオンアシスト蒸着(IAD)法である。
概略的には、真空中において、イオンを照射しながら、蒸発源(Y2O3およびYF3)を蒸発させて基材に付着させることにより、Y5O4F7の割合が多いイットリウム質保護膜を形成する。
【0059】
本製造方法によれば、イットリウム質保護膜を、非常に緻密に形成できる。すなわち、得られるイットリウム質保護膜は、気孔率が小さい。また、結晶子サイズも小さい。
【0060】
ところで、イットリウム質保護膜は、厚さが増すほど、クラックが入りやすい。
また、成膜面が大面積化することにより、その成膜面に形成されるイットリウム質保護膜も大面積化する。その場合も、イットリウム質保護膜にはクラックが入りやすい。
【0061】
しかし、本製造方法によれば、緻密で硬いイットリウム質保護膜が得られる。
更に、下地層を形成する場合は、イットリウム質保護膜の応力が緩和される。
このため、本製造方法により得られるイットリウム質保護膜は、厚さが増したり大面積化したりしても、クラックが入りにくい。
【0062】
また、基材の成膜面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、上述した範囲が好ましい。これにより、形成されるイットリウム質保護膜は、より緻密で硬くなり、かつ、クラックが入りにくい。
【0063】
なお、溶射法、エアロゾルデポジション(AD)法などの方法では、得られるイットリウム質保護膜に気孔が多く残存しやすい。
また、これらの方法では、得られるイットリウム質保護膜のフッ素含有量の制御が難しく、所望する組成を安定的に得ることが難しい場合がある。
【0064】
ほかにも、IAD法とは異なる方法として、スパッタ法がある。スパッタ法では、例えば、真空中で、YOxFyのスパッタターゲットに、アルゴンおよび酸素のプラズマを衝突させて、基材に成膜する。
しかし、この方法では、フッ素含有量が変化しやすく、やはり、菱面体結晶構造を有するY5O4F7の割合が多いイットリウム質保護膜を安定的に形成することは困難である。
【0065】
〈装置構成〉
本製造方法を、
図5に基づいて、より詳細に説明する。
図5は、イットリウム質保護膜の製造に用いる装置を示す模式図である。
図5に示す装置は、チャンバ11を有する。チャンバ11の内部は、真空ポンプ(図示せず)を駆動して排気することにより、真空にできる。
チャンバ11の内部には、るつぼ12および13と、イオンガン14とが配置され、これらの上方には、ホルダ17が配置されている。
ホルダ17は、支持軸16と一体化しており、支持軸16の回転に伴い回転する。ホルダ17の周囲には、ヒータ15が配置されている。
ホルダ17には、上述した基材5が、その成膜面を下方に向けた状態で保持されている。ホルダ17に保持された基材5は、ヒータ15によって加熱されながら、ホルダ17の回転に伴い、回転する。
更に、チャンバ11には、水晶式膜厚モニタ18および19が取り付けられている。
【0066】
〈イットリウム質保護膜の形成〉
図5に示す装置において、基材5にイットリウム質保護膜(
図5には図示せず)を形成する場合について説明する。
まず、一方のるつぼ12に蒸発源Y
2O
3を充填し、他方のるつぼ13に蒸発源YF
3を充填する。
ホルダ17に基材5を保持させてから、チャンバ11の内部を排気して真空にする。具体的には、チャンバ11の内部の圧力は、5×10
-4Pa以下が好ましい。
【0067】
次いで、ヒータ17を駆動させながら、ホルダ17を回転させる。これにより、基材5を加熱しながら回転させる。
【0068】
この状態において、イオンアシスト蒸着を実施して、基材5に成膜する。
すなわち、イオンガン14からイオン(イオンビーム)を照射しながら、るつぼ12の蒸発源Y2O3と、るつぼ13の蒸発源YF3とを並行して蒸発させる。
イオンガン14が照射するイオンは、酸素、アルゴン、ネオン、クリプトンおよびキセノンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素のイオンが好ましい。
蒸発源は、電子ビーム(図示せず)を照射することにより、溶融および蒸発させる。
こうして、基材5(の成膜面)に、蒸発した蒸発源が付着し、イットリウム質保護膜が形成される。
【0069】
《チャンバ内圧力》
成膜は真空中で実施するが、具体的には、チャンバ11の内部の圧力は、8×10-2Pa以下が好ましく、6×10-2Pa以下がより好ましく、5×10-2Pa以下が更に好ましく、3×10-2Pa以下が特に好ましい。
下限は、0.5×10-2Paが好ましく、0.5×10-2Paがより好ましい。
【0070】
《基材の温度》
成膜中、ヒータ17によって加熱される基材5の温度は、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましい。一方、この温度は、400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。
【0071】
《成膜速度》
あらかじめ、るつぼ12の蒸発源が蒸発して膜が形成される速度(成膜速度)を、水晶式膜厚モニタ18を用いてモニタリングする。
これとは別に、あらかじめ、るつぼ13の蒸発源が蒸発して膜が形成される速度(成膜速度)を、水晶式膜厚モニタ19を用いてモニタリングする。
成膜速度は、蒸発源に照射する電子ビームの条件や、イオンガン14のイオンビームの条件(電流値、電流密度など)を制御することによって、調整される。
イットリウム質保護膜の成膜中は、各蒸発源の成膜速度(単位:nm/min)を、所望の値に調整する。
【0072】
蒸発源Y2O3の成膜速度(単位:nm/min)と、蒸発源YF3の成膜速度(単位:nm/min)との成膜速度比(Y2O3/YF3)は、1/9.5以上が好ましく、1/8.0以上がより好ましく、1/6.0以上が更に好ましく、1/4.5以上が特に好ましい。
一方、この成膜速度比(Y2O3/YF3)は、1/1.1以下が好ましく、1/1.3以下がより好ましく、1/1.8以下が更に好ましく、1/2.5以下が特に好ましい。
【0073】
蒸発源Y2O3の成膜速度と、蒸発源YF3の成膜速度との合計速度は、5nm/min以上が好ましく、8nm/min以上がより好ましく、10nm/min以上が更に好ましい。一方、この合計速度は、50nm/min以下が好ましく、35nm/min以下がより好ましく、20nm/min以下が更に好ましい。
【0074】
《イオン照射の条件》
イオンガン14と基材5との距離は、700mm以上が好ましく、900mm以上がより好ましい。一方、この距離は、1500mm以下が好ましく、1300mm以下がより好ましい。
【0075】
イオンビームの電流値は、1000mA以上が好ましく、1500mA以上がより好ましい。
一方、イオンビーム電流値は、3000mA以下が好ましく、2500mA以下がより好ましい。
【0076】
イオンビーム電流密度は、40μA/cm2以上が好ましく、65μA/cm2以上がより好ましく、75μA/cm2以上が更に好ましく、85μA/cm2以上が特に好ましい。
一方、イオンビーム電流密度は、140μA/cm2以下が好ましく、120μA/cm2以下がより好ましい。
【0077】
〈下地層の形成〉
イットリウム質保護膜を形成する前に、基材5の成膜面に、上述した下地層(例えば、下地層1、下地層2および下地層3)を形成することが好ましい。
下地層は、イットリウム質保護膜と同様に、イオンアシスト蒸着を実施して形成する。
例えば、Al2O3からなる下地層を形成する場合は、るつぼ12および/またはるつぼ13に蒸発源としてAl2O3を充填し、イオンガン14からイオン(イオンビーム)を照射しながら、蒸発源を蒸発させて、基材5の成膜面に付着させる。
下地層を形成する際の条件は、イットリウム質保護膜を形成する際の条件に準ずる。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。
以下、例1~例20が実施例であり、例21~例27が比較例であり、例28~例30が参考例である。
【0079】
〈例1~例27〉
図5に基づいて説明した装置を用いて、イットリウム質保護膜(保護膜)を製造した。
より詳細には、下記表1に示す製造条件にて、基材の成膜面に、下記表1に示す下地層および保護膜を形成した。基材としては、直径(最大長さ)が200mmの成膜面を有する円形状の基材(厚さ:10mm)を用いた。保護膜の組成は、各元素(Y、O、Fなど)の含有量から求まる組成である。
下記表1に記載しない製造条件として、イオンガンから酸素(O)イオンを照射し、イオンガンと基材との距離は1100mm、イオンビームの電流値は2000mAとした。
【0080】
例12では、基材(ガラス)として、市販品のソーダライムガラスを使用した。
【0081】
例14では、アルミニウム製の基材の一面側を、アルマイト処理することにより、Al2O3からなる下地層とした。この下地層を、下記表1では「アルマイト」と記載した。
【0082】
〈例28~例30〉
例28では、サファイアを保護膜とした。
例29では、金属アルミニウムを保護膜とした。
例30では、石英を保護膜とした。
【0083】
〈エッチング量〉
各例の保護膜について、エッチング量を求めて、耐プラズマ性を評価した。
具体的には、保護膜における10mm×5mmの面を鏡面加工した。鏡面加工した面の一部にカプトンテープを貼ってマスキングして、プラズマガスでエッチングした。その後、触針式表面形状測定機(アルバック社製、Dectak150)を用いて、エッチング部と非エッチング部とに生じた段差を測定することにより、エッチング量を求めた。
プラズマエッチング装置としては、EXAM(神港精機社製、型式:POEM型)を用いた。RIEモード(リアクティブ・イオン・エッチングモード)にて、まず、10Paの圧力、350Wの出力のもと、CF4ガス(流量:100sccm)にO2ガス(流量:10sccm)を混合したガスを用いて、180分エッチングした。次いで、CF4ガス(流量:100sccm)を用いて、180分エッチングした。その後、CF4ガス(流量:100sccm)にO2ガス(流量:10sccm)を混合したガスを用いて、180分エッチングした、最後に、CF4ガス(流量:100sccm)を用いて、180分エッチングした。
エッチング量(単位:nm)が小さいほど、耐プラズマ性に優れると評価できる。
具体的には、エッチング量が200nm以下であれば、耐プラズマ性に優れると評価した。
【0084】
〈F含有量変化量〉
エッチング後、保護膜のF含有量を測定し、下記式に基づいて、F含有量変化量(単位:原子%)を求めた。
F含有量変化量={(エッチング前のF含有量)-(エッチング後のF含有量)}/(エッチング前のF含有量)
F含有量変化量の値が小さいほど、耐プラズマ性に優れる安定化した保護膜であると評価できる。具体的には、F含有量変化量は10原子%以下が好ましく、5原子%以下がより好ましく、3原子%以下が更に好ましい。
【0085】
〈クラックの有無〉
保護膜の形成後、保護膜に目視で視認できるクラックが入っているか否かを確認した。クラックが入っていなかった場合は「無し」を、クラックが入っていた場合は「有り」を下記表1に記載した。
【0086】
【0087】
〈評価結果まとめ〉
上記表1に示すように、例1~例20のイットリウム質保護膜は、耐プラズマ性に優れることが分かった。これに対して、例21~例27のイットリウム質保護膜は、耐プラズマ性が不十分であった。
【符号の説明】
【0088】
1、2、3:下地層
4:イットリウム質保護膜
5:基材
6:部材
7:成膜面
7a:第一成膜面
7b:第二成膜面
11:チャンバ
12、13:るつぼ
14:イオンガン
15:ヒータ
16:支持軸
17:ホルダ
18、19:水晶式膜厚モニタ
【要約】
【課題】耐プラズマ性に優れるイットリウム質保護膜を提供する。
【解決手段】X線回折パターンにおけるY5O4F7のピーク強度比が60%以上であり、気孔率が1.5体積%未満であり、ビッカース硬さが500MPa以上である、イットリウム質保護膜。フッ素の含有量は35~60原子%が好ましい。結晶子サイズは30nm以下が好ましい。厚さは0.3μm以上が好ましい。Y5O4F7の(151)面のロッキングカーブの半値幅は40°以下が好ましい。
【選択図】なし