(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20221011BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20221011BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20221011BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221011BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B24B41/06 L
B24B7/04 A
B24B27/06 M
H01L21/304 631
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2018177885
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木田 久志
(72)【発明者】
【氏名】神長 拓也
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-116432(JP,A)
【文献】特開2018-051723(JP,A)
【文献】特開昭60-062445(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0208850(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B24B 7/04
B24B 27/06
H01L 21/304
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に載置面を有するチャックテーブルベースと、該チャックテーブルベースの該載置面に下面が密着して着脱自在に固定され上面の保持面で被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、を備える加工装置であって、
該加工ユニットの作用によって該チャックテーブルに発生する弾性波を検出するAEセンサが該チャックテーブルベースに配設され、
該チャックテーブルは、該被加工物の大きさの変更に対応して交換される
とともに、
該チャックテーブルベースの平坦な載置面に該チャックテーブルの平坦な下面を載せられ、負圧を該チャックテーブルベースの載置面に作用されることにより、該載置面に該下面が密着して、該チャックテーブルベースに固定される加工装置。
【請求項2】
該チャックテーブルは、内部に該下面と該保持面とを連通させる保持面吸引路を備え、
該チャックテーブルベースの載置面には、該チャックテーブルの下面に負圧を作用させ該チャックテーブルベースに該チャックテーブルを着脱自在に固定するチャックテーブル吸引路と、該載置面に載置された該チャックテーブルの該保持面吸引路に連通し負圧を作用させる被加工物吸引路と、が開口していることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該加工ユニットは、外周縁に環状の切れ刃を備える切削ブレードが該保持面と平行な回転軸のスピンドルに装着された切削ユニットである請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項4】
該加工ユニットは、環状に配列された研削砥石を下面に有する研削ホイールが該保持面と直交する回転軸のスピンドルに装着された研削ユニットである請求項1又は2に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を保持するチャックテーブルを備えた加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種半導体基板や樹脂パッケージ基板、ガラス基板やセラミックス基板などの被加工物を切削ブレードで切削したり研削砥石で研削して薄化したりする加工技術が知られている。加工によって発生するトラブル、例えば、砥石の目詰まり・目潰れによる被加工物の欠けやクラックは、それぞれ被加工物の加工が完了した後、検査工程で発覚するため、最悪の場合、複数枚にわたって連続的にトラブルが発生してしまう事がある。そのため、加工中にトラブルの発生をいち早く検出したり、その予兆を検出してトラブルを未然に防いだりという目的の下、被加工物を保持するチャックテーブルや切削ブレードをスピンドルに固定するブレードマウントにAEセンサを搭載し、加工中に発生する弾性波を検出する装置が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭60-062445号公報
【文献】特許第6223239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被加工物に発生する弾性波を出来るだけ精度良くとらえるためには、特許文献1のように被加工物が直接固定されているチャックテーブルにAEセンサを固定することが好ましい。しかしながら、チャックテーブルは、被加工物のサイズや種類ごとに交換する必要があるため、特許文献1のようにチャックテーブルにAEセンサを固定した場合、AEセンサを内蔵したチャックテーブルとする必要が生じるので、チャックテーブルにかかるコストが増大してしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、チャックテーブルにAEセンサを内蔵する必要がなく、かつ、チャックテーブルに保持された被加工物に発生する弾性波を精度良くとらえることを可能にする加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る加工装置は、上面に載置面を有するチャックテーブルベースと、該チャックテーブルベースの該載置面に下面が密着して着脱自在に固定され上面の保持面で被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、を備える加工装置であって、該加工ユニットの作用によって該チャックテーブルに発生する弾性波を検出するAEセンサが該チャックテーブルベースに配設され、該チャックテーブルは、該被加工物の大きさの変更に対応して交換されるとともに、該チャックテーブルベースの平坦な載置面に該チャックテーブルの平坦な下面を載せられ、負圧を該チャックテーブルベースの載置面に作用されることにより、該載置面に該下面が密着して、該チャックテーブルベースに固定されるものである。
【0007】
この構成において、該チャックテーブルは、内部に該下面と該保持面とを連通させる保持面吸引路を備え、該チャックテーブルベースの載置面には、該チャックテーブルの下面に負圧を作用させ該チャックテーブルベースに該チャックテーブルを着脱自在に固定するチャックテーブル吸引路と、該載置面に載置された該チャックテーブルの該保持面吸引路に連通し負圧を作用させる被加工物吸引路と、が開口している構成としてもよい。
【0008】
また、該加工ユニットは、外周縁に環状の切れ刃を備える切削ブレードが該保持面と平行な回転軸のスピンドルに装着された切削ユニットであってもよい。もしくは、該加工ユニットは、環状に配列された研削砥石を下面に有する研削ホイールが該保持面と直交する回転軸のスピンドルに装着された研削ユニットであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る加工装置は、加工ユニットの作用によってチャックテーブルに発生する弾性波を検出するAEセンサがチャックテーブルベースに配設されており、チャックテーブルベースの上面の載置面に載置されるチャックテーブルが被加工物の大きさの変更に対応して交換されるため、チャックテーブルにAEセンサを内蔵する必要がなく、かつ、チャックテーブルに保持された被加工物に発生する弾性波を精度良くとらえることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る加工装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の加工装置の要部の構成を説明する部分側断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の加工装置のチャックテーブルに保持された被加工物を切削加工する動作を説明する部分側断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態2に係る加工装置の要部を示す部分側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る加工装置を示す斜視図である。
図2は、
図1の加工装置の要部の構成を説明する部分側断面図である。
図3は、
図1の加工装置の要部の部分側断面図である。
図4は、
図1の加工装置のチャックテーブルに保持された被加工物を切削加工する動作を説明する部分側断面図である。なお、以下の説明に用いられるX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、互いに垂直であるものとする。
【0013】
まず、実施形態1に係る加工装置2によって加工される被加工物100について説明する。被加工物100は、
図1に示すように、シリコン、サファイア、ガリウムなどを基板101とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。被加工物100は、基板101の表面102に形成された複数の分割予定ライン103によって格子状に区画された領域にデバイス104が形成されている。
【0014】
被加工物100は、表面102の裏側の裏面105に基板101より径の大きい粘着テープであるダイシングテープ106が貼着され、ダイシングテープ106の外周に環状のフレーム107が貼着される。すなわち、被加工物100は、環状のフレーム107の開口にダイシングテープ106を介して支持されている。本実施形態では、被加工物100とダイシングテープ106と環状のフレーム107とを備えてフレームユニット108が構成される。また、被加工物100と環状のフレーム107との間にはダイシングテープ106の環状領域106Aが形成される。
【0015】
なお、被加工物100の基板101の材質、形状、構造、大きさ等に制限はなく、例えば、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる任意の形状の基板を被加工物として用いることもできる。また、デバイス104の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。さらに、被加工物100の基板101の表面102に、機能層としてのLow-k層ともいう低誘電率絶縁体被膜を積層し、低誘電率絶縁体被膜がデバイス104を構成する回路を支持した構成としてもよい。
【0016】
次に、実施形態1に係る加工装置2について説明する。加工装置2は、
図1に示すように、各構成要素が搭載される基台4を備えている。基台4の上面には、加工送りユニットであるX軸移動機構6が設けられている。X軸移動機構6は、加工送り方向であるX軸方向に概ね平行な一対のX軸ガイドレール8を備えており、X軸ガイドレール8には、X軸移動テーブル10がスライド可能に取り付けられている。
【0017】
X軸移動テーブル10の下面側には、不図示のナット部が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール8に平行なX軸ボールねじ12が螺合されている。X軸ボールねじ12の一端部には、X軸パルスモータ14が連結されている。X軸パルスモータ14でX軸ボールねじ12を回転させることで、X軸移動テーブル10は、X軸ガイドレール8に沿ってX軸方向に移動する。このX軸移動機構6には、X軸移動テーブル10のX軸方向の位置を測定する不図示のX軸測定ユニットが設けられている。
【0018】
このX軸移動機構6でX軸移動テーブル10をX軸方向に移動させれば、X軸移動テーブル10の上方に配置されるθテーブル16及びチャックテーブルベース20を介して、チャックテーブル30は加工送りされる。なお、X軸移動テーブル10を含むX軸移動機構6の上方は、テーブルカバー18及び不図示の蛇腹状カバーによって覆われている。
【0019】
X軸移動テーブル10の表面側である上面側には、θテーブル16が設けられている。θテーブル16は、モータ等の不図示の回転駆動源を備え、上方に配置されるチャックテーブルベース20及びチャックテーブル30を切り込み送り方向であるZ軸方向に概ね平行な回転軸の周りに回転させる。
【0020】
加工装置2は、
図1に示すように、X軸移動テーブル10の上面側にθテーブル16を介して設けられたチャックテーブルベース20を備える。チャックテーブルベース20は、金属等の導体によって形成されており、
図2、
図3及び
図4に示すように、チャックテーブル30を載置して支持及び固定する本体部21と、この本体部21の外周部に配置されてフレームユニット108のフレーム107を保持して固定する4つのフレーム保持部であるクランプ22とを備える。チャックテーブルベース20は、その本体部21の上面に、チャックテーブル30を載置して支持する平坦な載置面23を有する。
【0021】
クランプ22は、本体部21に対して径方向に移動可能に設けられており、被加工物100及びフレームユニット108の径方向の大きさに応じて使い分けられるチャックテーブル30の径方向の大きさに基づいて、適宜移動して用いられる。
【0022】
チャックテーブルベース20は、
図2、
図3及び
図4に示すように、本体部21の内部に、チャックテーブルベース20の載置面23に載置されたチャックテーブル30の下面34に負圧を作用させ、チャックテーブルベース20にチャックテーブル30を着脱自在に固定するチャックテーブル吸引路24と、載置面23に載置されたチャックテーブル30の保持面吸引路36に連通し負圧を作用させる被加工物吸引路25と、が形成されている。チャックテーブルベース20の本体部21の載置面23には、これらのチャックテーブル吸引路24と、被加工物吸引路25と、が開口している。
【0023】
チャックテーブルベース20の本体部21の載置面23とは反対側には、
図2、
図3及び
図4に示すように、チャックテーブル吸引路24が第1開閉バルブ26を介して吸引源28に接続されている。また、チャックテーブルベース20の本体部21の載置面23とは反対側には、同様に、被加工物吸引路25が第2開閉バルブ27を介して吸引源28に接続されている。吸引源28は、チャックテーブル吸引路24を介して、チャックテーブルベース20の載置面23に負圧を供給する。また、吸引源28は、被加工物吸引路25及び保持面吸引路36を介して、チャックテーブル30においてダイシングテープ106を介して被加工物100を保持する保持面33に負圧を供給する。
【0024】
また、
図1及び
図5に示す加工ユニット60の作用に伴ってチャックテーブルベース20の載置面23に載置されたチャックテーブル30に発生する弾性波を検出するAE(Acoustic Emission)センサ29が、
図1、
図2、
図3及び
図4に示すように、チャックテーブルベース20に配設されている。AEセンサ29は、チャックテーブルベース20の本体部21の内部の載置面23に沿って配置されている。AEセンサ29は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zi,Ti)O
3)、リチウムナイオベート(LiNbO
3)、リチウムタンタレート(LiTaO
3)等の材料で形成されており、チャックテーブル30の振動を振動信号である電圧に変換する。
【0025】
加工装置2は、
図2、
図3及び
図4に示すように、チャックテーブルベース20の載置面23に下面34が密着して着脱自在に固定され、上面の保持面33で被加工物100を吸引保持するチャックテーブル30を備える。チャックテーブル30は、上面に平坦な保持面33を構成する吸着部31と、平坦な下面34を構成するテーブル本体32とを備える。
【0026】
吸着部31は、テーブル本体32の上面中央部の窪み部35に嵌め込まれている。吸着部31は、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミックス等から構成されて、保持面33全体で、フレームユニット108を吸引保持する。
【0027】
テーブル本体32は、金属等の導体により円板形状に形成されており、上面中央部に窪み部35が形成されている。また、テーブル本体32は、内部に、吸着部31を介して保持面33に載置されたフレームユニット108のダイシングテープ106側に負圧を作用させ、チャックテーブル30に被加工物100を着脱自在に保持する保持面吸引路36が、形成されている。テーブル本体32の下面34及び窪み部35には、この保持面吸引路36が開口している。
【0028】
チャックテーブルベース20の載置面23とチャックテーブル30の下面34との間には、被加工物吸引路25と保持面吸引路36とを密封状態で連通するシール部材38が設けられている。シール部材38は、チャックテーブルベース20側が被加工物吸引路25の載置面23側の開口部に設けられたシール部材嵌込部25aに嵌め込まれ、チャックテーブル30側が保持面吸引路36の下面34側の開口部に設けられたシール部材嵌込部36aに嵌め込まれている。
【0029】
チャックテーブル30は、被加工物100及びフレームユニット108のサイズや種類ごとに交換して用いられる。チャックテーブル30は、
図3に示すように、被加工物100及びフレームユニット108の径方向の大きさが比較的小さい場合に用いられるチャックテーブル30-1と、被加工物100及びフレームユニット108の径が比較的大きい場合に用いられる30-2とが例示される。チャックテーブル30-1及びチャックテーブル30-2は、径方向の大きさを除くその他の構成は、同じである。
【0030】
チャックテーブルベース20の載置面23にチャックテーブル30の下面34を載せて位置合わせし、吸引源28の負圧をチャックテーブルベース20の載置面23に作用させれば、
図3及び
図4に示すように、平坦な載置面23と平坦な下面34とが互いに負圧密着し、チャックテーブル30は、チャックテーブルベース20に固定される。さらに、チャックテーブル30の保持面33にフレームユニット108のダイシングテープ106側を載せて位置合わせし、吸引源28の負圧をチャックテーブル30の保持面33に作用させれば、
図4に示すように、平坦な保持面33とフレームユニット108のダイシングテープ106の下側の面とが互いに負圧密着し、フレームユニット108は、チャックテーブル30に固定される。
【0031】
本実施形態では、チャックテーブル30として多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミックス等から構成された吸着部31とテーブル本体32とを備える形態を例示したがこれに限るものではなく、例えば、吸引源28の負圧をチャックテーブル30の保持面33に作用させる吸引溝を形成した構成としてもよい。
【0032】
また、クランプ22は、
図4に示すように、チャックテーブル30にフレームユニット108を固定する場合、チャックテーブル30の保持面33よりもフレーム107を鉛直方向下側に引き落として保持する。これにより、ダイシングテープ106は保持面33に密着されるため、被加工物100は、ダイシングテープ106を介して保持面33に強固に支持される。
【0033】
また、
図1に示すように、X軸移動テーブル10の近傍には、切削加工の際に使用される純水等の切削液の廃液等を一時的に貯留するウォーターケース19が設けられている。ウォーターケース19内に貯留された廃液は、不図示のドレーン等を介して加工装置2の外部に排出される。チャックテーブル30に近接する位置には、被加工物100をチャックテーブル30へと搬送する不図示の搬送機構が設けられている。
【0034】
基台4の上面には、
図1に示すように、X軸移動機構6を跨ぐ門型の支持構造40が配置されている。支持構造40の前面上部には、それぞれ割り出し送りユニット及び切り込み送りユニットとして機能する2組の加工ユニット移動機構42が設けられている。各加工ユニット移動機構42は、支持構造40の前面に配置され、割り出し送り方向、すなわち
図1における左右方向であるY軸方向に概ね平行な一対のY軸ガイドレール44を共通に備えている。Y軸ガイドレール44には、各加工ユニット移動機構42を構成するY軸移動プレート46がスライド可能に取り付けられている。
【0035】
各Y軸移動プレート46の裏面側には、不図示のナット部が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール44に概ね平行なY軸ボールねじ48がそれぞれ螺合されている。各Y軸ボールねじ48の一端部には、Y軸パルスモータ50が連結されている。Y軸パルスモータ50でY軸ボールねじ48を回転させれば、Y軸移動プレート46は、Y軸ガイドレール44に沿ってY軸方向に移動する。
【0036】
各Y軸移動プレート46の表面である前面には、Z軸方向に概ね平行な一対のZ軸ガイドレール52が設けられている。Z軸ガイドレール52には、Z軸移動プレート54がスライド可能に取り付けられている。
【0037】
各Z軸移動プレート54の裏面側には、不図示のナット部が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール52に平行なZ軸ボールねじ56がそれぞれ螺合されている。各Z軸ボールねじ56の一端部には、Z軸パルスモータ58が連結されている。Z軸パルスモータ58でZ軸ボールねじ56を回転させれば、Z軸移動プレート54は、Z軸ガイドレール52に沿ってZ軸方向に移動する。
【0038】
各加工ユニット移動機構42には、Y軸移動プレート46のY軸方向の位置を測定する不図示のY軸測定ユニットが設けられている。また、各加工ユニット移動機構42には、Z軸移動プレート54のZ軸方向の位置を測定する不図示のZ軸測定ユニットが設けられている。
【0039】
各Z軸移動プレート54の下部には、チャックテーブル30に保持された被加工物100を切削加工するための加工ユニット60が固定されている。また、加工ユニット60に隣接する位置には、被加工物100を撮像するための撮像ユニットであるカメラ62が設けられている。各加工ユニット移動機構42で、Y軸移動プレート46をY軸方向に移動させれば、加工ユニット60及びカメラ62は割り出し送りされ、Z軸移動プレート54をZ軸方向に移動させれば、加工ユニット60及びカメラ62は切り込み送りされる。
【0040】
なお、加工ユニット60及びカメラ62に対するチャックテーブル30等のX軸方向の位置は、上述したX軸測定ユニットで測定される。また、チャックテーブル30等に対する加工ユニット60及びカメラ62のY軸方向の位置は、上述したY軸測定ユニットで測定される。さらに、チャックテーブル30等に対する加工ユニット60及びカメラ62のZ軸方向の位置は、上述したZ軸測定ユニットで測定される。
【0041】
加工ユニット60は、
図4に示すように、外周縁に環状の切れ刃を備える切削ブレード66が、チャックテーブル30の保持面33と概ね平行な回転軸のスピンドル64に装着された切削ユニットであり、チャックテーブル30に保持された被加工物100を切削加工する。スピンドル64の回転軸は、X軸方向及びZ軸方向に対して概ね垂直であり、Y軸方向に対して概ね平行である。スピンドル64の一端側には、切削ブレード66が装着されている。スピンドル64の他端側には、モータ等の不図示の回転駆動源が連結されており、切削ブレード66は、スピンドル64を介して伝達される回転駆動源のトルクによって回転する。切削ブレード66の回転動作により、被加工物100には、分割予定ライン103に沿って切削溝が形成されて、各デバイス104に個片化される。
【0042】
また、切削ブレード66の近傍には、
図1及び
図4に示すように、被加工物100や切削ブレード66等に純水等の切削液を供給する切削液供給ノズル68が設けられている。切削ブレード66の下方には、Z軸方向において切削ブレード66の下側の先端である下端の高さ、すなわち位置を検出するブレード位置検出ユニット69が配置されている。加工ユニット60の各構成要素は、被加工物100の切削加工の条件等に合わせて、上述した制御ユニット39により制御される。
【0043】
加工装置2は、
図1、
図2、
図3及び
図4に示すように、被加工物100の加工条件等に合わせて、加工装置2を構成する構成要素をそれぞれ制御する制御ユニット39を備える。制御ユニット39は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インタフェース装置とを有し、コンピュータプログラムを実行可能なコンピュータである。
【0044】
制御ユニット39の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムをRAM上で実行して、加工装置2を制御するための制御信号を生成し、生成した制御信号を入出力インタフェース装置を介して加工装置2の各構成要素に出力する。また、制御ユニット39は、切削加工の動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工装置2の動作指示及び加工内容情報などを入力する際に用いる図示しない入力ユニットとが接続されている。
【0045】
制御ユニット39には、オペレータから入力ユニットを介して入力されるチャックテーブル30のサイズや種類が登録される。例えば、制御ユニット39には、チャックテーブル30として径方向の大きさが比較的小さい
図2に示すチャックテーブル30-1を用いる場合、オペレータにより、チャックテーブル30-1のサイズや種類が登録される。オペレータは、制御ユニット39へのチャックテーブル30-1のサイズや種類の登録に併せて、クランプ22の本体部21に対する位置をチャックテーブル30-1のサイズや種類に応じた位置である中心軸側へ移動させる。また、制御ユニット39には、チャックテーブル30として径方向の大きさが比較的大きい
図2に示すチャックテーブル30-2を用いる場合、オペレータにより、チャックテーブル30-2のサイズや種類が登録される。オペレータは、制御ユニット39へのチャックテーブル30-2のサイズや種類の登録に併せて、クランプ22の本体部21に対する位置をチャックテーブル30-2のサイズや種類に応じた位置である外周側へ移動させる。
【0046】
制御ユニット39は、第1開閉バルブ26の開閉を制御することでチャックテーブル吸引路24を吸引するか否かを切り替えることにより、チャックテーブルベース20の載置面23におけるチャックテーブル30の固定か否かを切り替える。また、制御ユニット39は、第2開閉バルブ27の開閉を制御することで被加工物吸引路25を吸引するか否かを切り替えることにより、チャックテーブル30の保持面33において被加工物100を保持するか否かを切り替える。
【0047】
制御ユニット39は、AEセンサ29に接続して、AEセンサ29が検出した弾性波の電圧信号を取得する。制御ユニット39は、AEセンサ29が検出した弾性波に基づいて、加工ユニット60の作用によって発生するトラブル、例えば、砥石の目詰まり・目潰れによる被加工物100の欠けやクラック等を検知したか否かを判定し、これらのトラブルを検知したと判定した場合、加工ユニット60を構成する各構成要素の動作を停止させる。
【0048】
このように、実施形態1に係る加工装置2は、上面に載置面23を有するチャックテーブルベース20と、チャックテーブルベース20の載置面23に下面34が密着して着脱自在に固定され上面の保持面33で被加工物100を吸引保持するチャックテーブル30と、チャックテーブル30に保持された被加工物100を加工する加工ユニット60と、を備え、加工ユニット60の作用によってチャックテーブル30に発生する弾性波を検出するAEセンサ29がチャックテーブルベース20に配設され、チャックテーブル30は、被加工物100の大きさの変更に対応して交換されるものである。このため、実施形態1に係る加工装置2は、加工ユニット60の作用によってチャックテーブル30に発生する弾性波を検出するAEセンサ29がチャックテーブルベース20に配設されており、チャックテーブルベース20の上面の載置面23に載置されるチャックテーブル30が被加工物100の大きさの変更に対応して交換されるため、チャックテーブル30にAEセンサ29を内蔵する必要がなく、かつ、チャックテーブル30に保持された被加工物100に発生する弾性波を精度良くとらえることができるという効果を奏する。
【0049】
また、実施形態1に係る加工装置2は、チャックテーブル30が、内部に下面34と保持面33とを連通させる保持面吸引路36を備え、チャックテーブルベース20の載置面23には、チャックテーブル30の下面34に負圧を作用させチャックテーブルベース20にチャックテーブル30を着脱自在に固定するチャックテーブル吸引路24と、載置面23に載置されたチャックテーブル30の保持面吸引路36に連通し負圧を作用させる被加工物吸引路25と、が開口している。このため、実施形態1に係る加工装置2は、チャックテーブル吸引路24を介して負圧を作用させることで容易にチャックテーブルベース20にチャックテーブル30を着脱自在に固定することができるとともに、被加工物吸引路25及び保持面吸引路36を介して負圧を作用させることで容易にチャックテーブル30に被加工物100を着脱自在に固定することができる。
【0050】
また、実施形態1に係る加工装置2は、加工ユニット60が、外周縁に環状の切れ刃を備える切削ブレード66が保持面33と平行な回転軸のスピンドル64に装着された切削ユニットである。このため、実施形態1に係る加工装置2は、具体的に加工ユニット60の切削ブレード66を回転動作させることにより被加工物100を切削加工する場合において、チャックテーブル30にAEセンサ29を内蔵する必要がなく、かつ、チャックテーブル30に保持された被加工物100に発生する弾性波を精度良くとらえることができるという効果を奏する。
【0051】
また、実施形態1に係る加工装置2は、被加工物吸引路25がチャックテーブルベース20の回転軸に沿って設けられており、なおかつ、保持面吸引路36がチャックテーブル30の回転軸に沿って設けられているので、チャックテーブル30の径方向の大きさに依らず、被加工物吸引路25と保持面吸引路36とを容易に連通させることができる。また、実施形態1に係る加工装置2は、被加工物吸引路25の載置面23側の開口部にシール部材38を嵌め込むシール部材嵌込部25aが設けられており、なおかつ、保持面吸引路36の下面34側の開口部にシール部材38を嵌め込むシール部材嵌込部36aが設けられているので、チャックテーブル30の径方向の大きさに依らず、シール部材38を介して、被加工物吸引路25と保持面吸引路36とをより好適に連通させることができる。
【0052】
また、実施形態1に係る加工装置2は、チャックテーブル吸引路24がチャックテーブルベース20の回転軸に平行に、チャックテーブルベース20の外周から径方向に離れた位置に設けられているので、チャックテーブル30の径方向の大きさに依らず、好適にチャックテーブル30の下面34を密着させて着脱自在に固定することができる。
【0053】
〔実施形態2〕
図5は、実施形態2に係る加工装置の要部を示す部分側断面図である。本発明の実施形態2に係る加工装置2-2を図面に基づいて説明する。なお、
図5は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
実施形態2に係る加工装置2-2は、
図5に示すように、実施形態1に係る加工装置2と同様の構成のチャックテーブルベース20においてクランプ22を除いて構成されたチャックテーブルベース20-2と、実施形態1に係る加工装置2と同様の構成のチャックテーブル30と、実施形態1に係る加工装置2において被加工物100を切削加工する加工ユニット60に変更して設けられた、被加工物100を研削加工する加工ユニット70と、を備える。
【0055】
実施形態2に係る加工装置2-2が加工する被加工物100は、
図5に示すように、表面102に保護テープ109が貼着されて、裏面105側を上側に向けて、保護テープ109を介して表面102側をチャックテーブル30の保持面33で保持されて、加工ユニット70によって研削加工される。
【0056】
実施形態2に係る加工装置2-2が備える加工ユニット70は、環状に配列された研削砥石72を下面に有する研削ホイール71が、チャックテーブル30の保持面33と概ね直交する回転軸のスピンドル81に装着された研削ユニットであり、チャックテーブル30の保持面33に保持された被加工物100の裏面105側を研削加工する。
【0057】
研削ホイール71は、複数の研削砥石72と、複数の研削砥石72を下面76で固定するホイール基台74と、を備える。研削ホイール71は、ホイール基台74の上面75で、複数のボルト84により、ホイールマウント83を介してスピンドル81の下側の先端である下端82に装着されている。
【0058】
加工ユニット70におけるスピンドル81の上側には、不図示の切り込み送りユニットが備えられている。切り込み送りユニットは、加工ユニット70を保持面33と直交する切り込み送り方向である鉛直方向、すなわち
図5に示すZ軸方向に移動させるものである。切り込み送りユニットは、加工ユニット70を下降させて加工ユニット70の研削ホイール71をチャックテーブル30の保持面33に保持された被加工物100に近付け、加工ユニット70を上昇させて研削ホイール71をチャックテーブル30の保持面33に保持された被加工物100から遠ざける。研削ホイール71を被加工物100に近づけて押し付けて回転動作させることにより、被加工物100の裏面105側が研削加工されて平坦化され、被加工物100が薄肉化される。加工ユニット70の各構成要素は、被加工物100の研削加工の条件等に合わせて、上述した制御ユニット39により制御される。
【0059】
このように、実施形態2に係る加工装置2-2は、実施形態1に係る加工装置2と概ね同様の構成のチャックテーブルベース20と、チャックテーブル30とを備え、実施形態1に係る加工装置2の加工ユニット60に代えて、チャックテーブル30に保持された被加工物100を加工する加工ユニット70を備えるので、実施形態1に係る加工装置2におけるチャックテーブルベース20及びチャックテーブル30がもたらす作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0060】
また、実施形態2に係る加工装置2-2は、加工ユニット70が、環状に配列された研削砥石72を下面に有する研削ホイール71が保持面33と直交する回転軸のスピンドル81に装着された研削ユニットである。このため、実施形態2に係る加工装置2-2は、具体的に加工ユニット70の研削ホイール71を被加工物100に近づけて押し付けて回転動作させることにより被加工物100を研削加工する場合において、チャックテーブル30にAEセンサ29を内蔵する必要がなく、かつ、チャックテーブル30に保持された被加工物100に発生する弾性波を精度良くとらえることができるという効果を奏する。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態等の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、実施形態1に係る加工装置2において、加工ユニット60を、切削ブレード66の形状や素材等が異なるものに変更してもよいし、実施形態2に係る加工装置2-2において、加工ユニット70を、研削ホイール71の形状や素材等が異なるものに変更してもよいし、加工ユニット60や加工ユニット70に代えて、その他の加工を被加工物100に施す別種の加工ユニットに変更してもよい。
【0062】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0063】
2,2-2 加工装置
20 チャックテーブルベース
23 載置面
24 チャックテーブル吸引路
25 被加工物吸引路
25a,36a シール部材嵌込部
29 AEセンサ
30,30-1,30-2 チャックテーブル
33 保持面
34 下面
36 保持面吸引路
38 シール部材
39 制御ユニット
60,70 加工ユニット
64,81 スピンドル
66 切削ブレード
71 研削ホイール
100 被加工物