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特許7154979液状又はペースト状食品組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】液状又はペースト状食品組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/10 20160101AFI20221011BHJP
【FI】
A23L23/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018225542
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020080825
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大熊 弘子
(72)【発明者】
【氏名】里見 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】黒部 史明
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 杲
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 守紘
(72)【発明者】
【氏名】上山 正恵
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大暢
(72)【発明者】
【氏名】濱洲 紘介
(72)【発明者】
【氏名】山本 晴菜
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-215972(JP,A)
【文献】特開2002-125634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0218180(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉、油脂、水、実質的に水分を含まない第1の食品材料、及び、第2の食品材料を含有し、水分含量が40重量%未満である、水を連続相とする、液状又はペースト状食品組成物の製造方法であって、
(i)油脂と、(ii) 少なくとも糖質と旨味調味料を含む第1の食品材料とを含み、実質的に水分を含まない混合物を加熱して、油系調理組成物を調製する工程と、
水中で第2の食品材料を加熱して、水系調理組成物を調製する工程と、
前記油系調理組成物、前記水系調理組成物及び澱粉を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と、
を含む、液状又はペースト状食品組成物の製造方法。
【請求項2】
澱粉、油脂、水、実質的に水分を含まない第1の食品材料、及び、第2の食品材料を含有し、水分含量が40重量%未満である、水を連続相とする、液状又はペースト状食品組成物の製造方法であって、
油脂と第1の食品材料と澱粉とを含み、実質的に水分を含まない混合物を加熱して、油系調理組成物を調製する工程と、
水中で第2の食品材料を加熱して、水系調理組成物を調製する工程と、
前記油系調理組成物、前記水系調理組成物及び澱粉を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と、
を含む、液状又はペースト状食品組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水及び必要に応じて他の食品材料ともに加熱調理され、最終食品に粘性を付与する用途で用いられる、液状又はペースト状食品組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カレー、ハヤシ、シチュー等を作るために用いられるルウとしては、多量の食用油脂を用いて小麦粉や調味料などを固めた油系固形ルウが従来から知られている。油系固形ルウは、食用油脂、小麦粉、調味料等を加熱混合して液状の流動性のある加熱溶融ルウを調製し、この加熱溶融ルウを容器に流し込んで充填し、冷却固化することにより製造される(例えば特許文献1参照)。油系固形ルウは、水を実質的に含まない条件で製造されるため、小麦粉等の澱粉は固形ルウ中では糊化していない。油系固形ルウは所定量の水を加えて煮込み調理され、適宜所望の食品材料と組み合わされて、最終食品となる。水中で加熱して煮込み調理する段階で、澱粉が糊化することにより最終製品に粘性(とろみ)が付与される。
【0003】
一方、澱粉を含む濃縮タイプの容器入りペースト状ルウ製品等の、容器入り液状又はペースト状食品組成物が市販されている。この液状又はペースト状食品組成物もまた、製品中では澱粉は糊化しておらず、容器から取り出され、所定量の水を加えて煮込み調理される段階で、澱粉が糊化することにより最終製品に粘性が付与される。
【0004】
特許文献2では、微生物安全性が高く、速やかに且つ均一に湯や水に分散することができる、加熱により所望の粘性を発現する容器入り液状又はペースト状食品組成物が開示されている。特許文献2に記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物は、澱粉、糖質及び水を含有し、水分含量が30重量%未満である容器入り液状又はペースト状食品組成物であって、前記液状又はペースト状食品組成物中の水分に対する糖質の割合が80重量%以上であり、B型粘度計により測定される60℃における粘度が20000mPa・s以下であることを特徴とする。
【0005】
特許文献2では更に、前記容器入り液状又はペースト状食品組成物の製造方法として、
前記液状又はペースト状食品組成物の水分に対する割合が80重量%以上となる量の糖質、水、及び食品材料(油脂等)を含有する原料を加熱して、加熱調理組成物を調製する工程と、
前記加熱調理組成物及び澱粉を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と、
前記液状又はペースト状食品組成物に対し、該液状又はペースト状食品組成物の中心温度が70~90℃に達するように加熱殺菌処理を施す工程と
を有する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-332526号公報
【文献】特開2012-213355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているような既存の油系固形ルウは、油脂、澱粉(小麦粉等)、調味料等を加熱混合して液状の流動性のある加熱溶融ルウを調製し、この加熱溶融ルウを冷却固化して製造される。このような既存の油系固形ルウは、油脂とともに調味料等を含む、水分含量の低い油系原料を加熱する工程、すなわち油中加熱工程、を経て製造されるため、固形ルウには、油中加熱工程で生じる特有の好ましい風味が付与される。
【0008】
特許文献2に記載の方法により製造された、液状又はペースト状食品組成物は、微生物安全性が高く、速やかに且つ均一に湯や水に分散することができるものである。しかし、特許文献2に記載の液状又はペースト状食品組成物は、油系原料を加熱する工程を経ることなく、糖質、水、及び食品材料(油脂等)を含有する水系原料を加熱する工程を経て製造されるため、油系固形ルウに特徴的な、油中加熱工程で生じる特有の風味を有していない。このため、油系固形ルウの味に慣れ親しんだ消費者は、特許文献2に記載の方法により製造された液状又はペースト状食品組成物の味に違和感を抱く傾向があった。
【0009】
そこで本発明は、油脂中での食品材料の加熱により生じる特有の好ましい風味を有する液状又はペースト状食品組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)澱粉、油脂、水、実質的に水分を含まない第1の食品材料、及び、第2の食品材料を含有し、水分含量が40重量%未満である、水を連続相とする、液状又はペースト状食品組成物の製造方法であって、
油脂と第1の食品材料とを含み、実質的に水分を含まない混合物を加熱して、油系調理組成物を調製する工程と、
水中で第2の食品材料を加熱して、水系調理組成物を調製する工程と、
前記油系調理組成物、前記水系調理組成物及び澱粉を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と、
を含む、液状又はペースト状食品組成物の製造方法。
(2)澱粉、油脂、水、実質的に水分を含まない第1の食品材料、及び、第2の食品材料を含有し、水分含量が40重量%未満である、水を連続相とする、液状又はペースト状食品組成物の製造方法であって、
油脂と第1の食品材料と澱粉とを含み、実質的に水分を含まない混合物を加熱して、油系調理組成物を調製する工程と、
水中で第2の食品材料を加熱して、水系調理組成物を調製する工程と、
前記油系調理組成物及び前記水系調理組成物を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と、
を含む、液状又はペースト状食品組成物の製造方法。
(3)澱粉、油脂、水、実質的に水分を含まない第1の食品材料、及び、第2の食品材料を含有し、水分含量が40重量%未満である、水を連続相とする、液状又はペースト状食品組成物の製造方法であって、
油脂と第1の食品材料と澱粉とを含み、実質的に水分を含まない混合物を加熱して、油系調理組成物を調製する工程と、
水中で第2の食品材料を加熱して、水系調理組成物を調製する工程と、
前記油系調理組成物、前記水系調理組成物及び澱粉を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と、
を含む、液状又はペースト状食品組成物の製造方法。
(4)澱粉、油脂、水、及び、食品材料を含有し、水を連続相とする、液状又はペースト状食品組成物であって、
液状又はペースト状食品組成物に50ppbの割合で2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジンを内部標準物質として添加した試料をガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)で分析し得られるクロマトグラムにおいて、2-メチルブタナールに由来するピーク面積が、2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジンに由来するピーク面積の2.0倍以上であることを特徴とする液状又はペースト状食品組成物。
(5)澱粉、油脂、水、及び、食品材料を含有し、水を連続相とする、液状又はペースト状食品組成物であって、
液状又はペースト状食品組成物に50ppbの割合で2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジンを内部標準物質として添加した試料をガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)で分析し得られるクロマトグラムにおいて、3-メチルブタナールに由来するピーク面積が、2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジンに由来するピーク面積の2.0倍以上であることを特徴とする液状又はペースト状食品組成物。
(6)澱粉、油脂、水、及び、食品材料を含有し、水を連続相とする、液状又はペースト状食品組成物であって、
液状又はペースト状食品組成物に50ppbの割合で2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジンを内部標準物質として添加した試料をガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)で分析し得られるクロマトグラムにおいて、3-エチル-2,5-ジメチルピラジンに由来するピーク面積が、2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジンに由来するピーク面積の0.09倍以上であることを特徴とする液状又はペースト状食品組成物。
(7)澱粉、油脂、水、及び、食品材料を含有し、水を連続相とする、液状又はペースト状食品組成物であって、
液状又はペースト状食品組成物に50ppbの割合で2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジンを内部標準物質として添加した試料をガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)で分析し得られるクロマトグラムにおいて、δ-カジネンに由来するピーク面積が、2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジンに由来するピーク面積の2.0倍以上であることを特徴とする液状又はペースト状食品組成物。
(8)(4)~(7)のいずれかに記載の液状又はペースト状食品組成物を水中で加熱し、澱粉を糊化して形成される液状食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法により製造された液状又はペースト状食品組成物は、油中加熱工程で生じる特有の好ましい風味を有する。
【0012】
本発明の液状又はペースト状食品組成物及びそれを水中で加熱して形成される液状食品は、油中加熱工程で生じる特有の好ましい風味を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.原料
1.1.水
本発明の製造方法により製造される液状又はペースト状食品組成物(以下「本発明の食品組成物」という場合がある)は、該組成物の全重量あたりの水分含量が40重量%未満、好ましくは30重量%未満、より好ましくは29.5重量%以下であることを特徴とする。水分含量がこの範囲にある場合には、微生物の増殖リスクが低減される。本発明の食品組成物の水分活性(Aw)が0.87以下であることが好ましい。水分活性の測定はノバシーナ社製の水分活性測定装置を用いて測定することができる。
【0014】
水分含量の下限値は特に限定されないが、通常は、本発明の食品組成物の全重量あたり10重量%以上、好ましくは15重量%以上である。
【0015】
1.2.澱粉
澱粉としては、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の澱粉が挙げられる。澱粉は、小麦粉、米粉、もち米粉等の澱粉を含有する穀物粉の形態で添加されてもよい。穀物粉を単独で又は油脂を混合して加熱し、風味付けや分散性を向上させたものを使用してもよい。上記澱粉に対し、湿熱処理を行った湿熱処理澱粉や、架橋や官能基付与等の化学修飾した加工澱粉を使用してもよい。澱粉は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明の食品組成物中の澱粉の含量は特に限定されないが、該組成物の全重量を基準として、5~50重量%が好ましく、5~45重量%がより好ましく、10~40重量%が特に好ましい。
【0017】
本発明の食品組成物中の澱粉の量の測定は、α化していない澱粉が水に不溶であることを利用して水溶性画分と分離し、不溶性画分に含まれる澱粉を加熱糊化させたのち、グルコアミラーゼで分解し、グルコース量を定量することにより測定することができる。なお、ここで、本発明の食品組成物が油脂を含有するものである場合には、あらかじめ脱脂処理を行うことが好ましい。
【0018】
1.3.油脂
本発明の食品組成物は、牛脂、豚脂、魚油、バター、ギー等の動物油脂、大豆油、コーン油、パーム油、菜種油、オリーブオイル等の植物油脂、ジアシルグリセロール、マーガリン等の加工油脂を適宜含有することができる。
【0019】
本発明の食品組成物中の油脂の含量は特に限定されないが、例えば、該組成物の全重量を基準として5重量%以上であることがきる。健康上の観点、風味上の観点、本発明の食品組成物の保管時の分離安定性の観点から、油脂含量は30重量%以下であることが望ましい。
本発明の食品組成物は、油脂の分離安定性のために、乳化剤を更に含有しても良い。
【0020】
1.4.実質的に水を含まない第1の食品材料
実質的に水を含まない第1の食品材料とは、後述する油系調理組成物を調製する工程において、油脂と混合して混合物を形成したときに、加熱前の混合物が実質的に水を含まない、具体的には、加熱前の混合物が水分含量5重量%以下、3重量%以下又は1重量%以下となるような、水分含量の低い食品材料であればよい。実質的に水を含まない第1の食品材料は、例えば、油脂と混合し第1の混合物を形成する前の段階で、水分含量が10重量%以下、5重量%以下、3重量%以下又は1重量%以下となる食品材料であり、典型的には、粉末状の食品材料である。
【0021】
実質的に水を含まない第1の食品材料は1種又は複数種の食品材料を含む。
実質的に水を含まない第1の食品材料は、本発明の食品組成物に所望の風味、味を付与する目的で配合される水分含量の低い任意の食品材料であってよく、例えば、香辛料、カレーパウダー、オニオンパウダー、ガーリックパウダー、大豆パウダー、糖質、酸味料、グルタミン酸ナトリウムや酵母エキスパウダー等の旨味調味料、食塩等の塩類等が例示でき、香辛料、カレーパウダー、オニオンパウダー、ガーリックパウダー、大豆パウダー、糖質、グルタミン酸ナトリウムや酵母エキスパウダー等の旨味調味料が好ましい。
【0022】
糖質としては、ブドウ糖等の単糖、ショ糖、麦芽糖、トレハロース等の二糖、オリゴ糖、マルトシルトレハロース、デキストリン、糖アルコール(キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、オリゴ糖アルコール等)等が挙げられる。糖質は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明の食品組成物中の実質的に水を含まない第1の食品材料の含量は特に限定されないが、該組成物の全重量を基準として、5~30重量%が好ましく、5~20重量%がより好ましく、10~20重量%が特に好ましい。
【0024】
1.5.第2の食品材料
第2の食品材料は、本発明の食品組成物に所望の風味、味を付与する目的で配合される任意の食品材料であってよく、1種又は複数種の食品材料を含む。
【0025】
第2の食品材料としては、実質的に水を含まない第1の食品材料と同様の範囲から選択された食品材料であってもよいし、実質的に水を含む食品材料であってもよい。第2の食品材料としては、例えば、実質的に水を含まない食品材料として例示したもののほか、肉エキス、野菜エキス、果物エキス、酵母エキス、野菜ペースト、果物ペースト、ダシ、味噌、醤油、乳製品、ワイン、水あめ、はちみつ等であってよい。
【0026】
本発明の食品組成物中の第2の食品材料の含量は特に限定されないが、該組成物の全重量を基準として、70重量%以下が好ましく、20~60重量%がより好ましく、30~50重量%がより好ましい。
【0027】
2.製造方法の第1の実施形態
本発明の液状又はペースト状食品組成物の製造方法の第1の実施形態は、
油脂と第1の食品材料とを含み、実質的に水分を含まない混合物を加熱して、油系調理組成物を調製する工程と、
水中で第2の食品材料を加熱して、水系調理組成物を調製する工程と、
前記油系調理組成物、前記水系調理組成物及び澱粉を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と
を少なくとも含む。
【0028】
油系調理組成物を調製する工程では、油脂と実質的に水分を含まない第1の食品材料とを含み、実質的に水分を含まない混合物(以下「第1の混合物」という)を加熱する、すなわち油中加熱する、ことで、油脂中での加熱により生じる特有の好ましい風味を有する油系調理組成物が形成される。この結果、前記油系調理組成物を用いて製造される液状又はペースト状食品組成物及びそれを水中で加熱して得られる食品に、従来の油系固形ルウ及びそれを水中で加熱して得られる食品と同様の、油脂中での加熱により生じる特有の好ましい風味が付与される。
【0029】
第1の混合物の全量に対する油脂の含有量は30重量%以上又は40重量%以上であることができ、70重量%以下又は60重量%以下であることができる。
【0030】
第1の混合物の全量に対する実質的に水分を含まない第1の食品材料の含有量は30重量%以上、40重量%以上又は50重量%以上であることができ、80重量%以下又は70重量%以下であることができる。
【0031】
第1の混合物は実質的に水分を含まず、具体的には、第1の混合物の全量に対する水分含量は5重量%以下、3重量%以下又は1重量%以下である。
【0032】
油系調理組成物を調製する工程での加熱条件としては、具体的には、100℃を超える温度に達するまで加熱することができ、170℃以下の温度に達するまで加熱することができる。また、所定の温度に達した後、その温度付近でさらに加熱することもできる。
【0033】
水系調理組成物を調製する工程では、水中で第2の食品材料を加熱する。
【0034】
水と第2の食品材料とを含む混合物(以下「第2の混合物」という)の全量に対する水分含量は、特に限定されないが、例えば20重量%以上、30重量%以上又は40重量%以上であることができ、80重量%以下又は70重量%以下であることができる。
【0035】
第2の混合物の全量に対する第2の食品材料(湿重量として)の含有量は特に限定されないが、例えば15重量%以上、45重量%以上又は60重量%以上であることができ、90重量%以下であることができる。
【0036】
水系調理組成物を調整する工程での加熱条件としては、具体的には、80℃~100℃の温度に達するまで加熱することができる。また、所定の温度に達した後、その温度付近でさらに加熱することもできる。
【0037】
液状又はペースト状食品組成物を調製する工程では、前記油系調理組成物、前記水系調理組成物及び澱粉を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する。このとき、前記油系調理組成物及び前記水系調理組成物は、ともに冷却(好ましくは75℃以下に冷却)した状態で澱粉と混合することが好ましい。前記油系調理組成物及び前記水系調理組成物を調製後に澱粉を配合することにより、液状又はペースト状食品組成物は、澱粉を糊化していない状態で含むことができ、流動性が高く、水中での分散が容易である。
【0038】
製造された液状又はペースト状食品組成物は、更に加熱殺菌処理を施すことが好ましい。加熱殺菌は、例えば蒸気、熱水等により行うことができる。その条件は殺菌を十分なものとし、得られる食品組成物の保存性を十分なものとするように設定することが好ましい。例えば、食品組成物の温度(中心温度)が70℃~90℃となるように加熱殺菌処理を行うことが好ましい。加熱殺菌処理では、例えば加熱殺菌処理が後述する後殺菌の場合には上記温度を5分間~60分間保持するのが好ましく、また、加熱殺菌処理が後述するホットパック殺菌の場合には上記温度を5秒間~5分間保持することが好ましい。
【0039】
食品組成物の容器への充填密閉と加熱殺菌処理との順序は特に限定されず、加熱殺菌処理は食品組成物の容器への充填前に行ってもよいし、容器への充填後に行ってもよいし、あるいは容器への充填の前後に行うこともできる。典型的には、食品組成物を容器に充填密封した後に加熱殺菌処理を施す様式(後殺菌)と、食品組成物を予め加熱殺菌処理(好ましくは70℃~90℃の温度で加熱殺菌処理)し、加熱殺菌処理の温度(好ましくは70℃以上)を保持した状態で食品組成物を容器に充填密封し、容器を殺菌する様式(ホットパック殺菌)とが挙げられる。
【0040】
3.製造方法の第2の実施形態
本発明の液状又はペースト状食品組成物の製造方法の第2の実施形態は、
油脂と第1の食品材料と澱粉とを含み、実質的に水分を含まない混合物を加熱して、油系調理組成物を調製する工程と、
水中で第2の食品材料を加熱して、水系調理組成物を調製する工程と、
前記油系調理組成物及び前記水系調理組成物を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と、
を少なくとも含む。
【0041】
第2の実施形態の方法は、油系調味組成物を調製する工程において澱粉も、油脂及び第1の食品材料とともに加熱することと、液状又はペースト状食品組成物を調製する工程において油系調味組成物と水系調味組成物とを混合することが、第1の実施形態の方法と異なる。第2の実施形態の方法でも、油脂中での加熱により生じる特有の好ましい風味を有する油系調理組成物が形成され、前記油系調理組成物を用いて製造される液状又はペースト状食品組成物及びそれを水中で加熱して得られる食品に、従来の油系固形ルウ及びそれを水中で加熱して得られる食品と同様の、油脂中での加熱により生じる特有の好ましい風味が付与される。
その他の点については第1の実施形態に記載の通りである。
【0042】
4.製造方法の第3の実施形態
本発明の液状又はペースト状食品組成物の製造方法の第3の実施形態は、
油脂と第1の食品材料と澱粉とを含み、実質的に水分を含まない混合物を加熱して、油系調理組成物を調製する工程と、
水中で第2の食品材料を加熱して、水系調理組成物を調製する工程と、
前記油系調理組成物、前記水系調理組成物及び澱粉を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と、
を少なくとも含む。
【0043】
第3の実施形態の方法は、油系調味組成物を調製する工程において澱粉も、油脂及び第1の食品材料とともに加熱することが、第1の実施形態の方法と異なる。第3の実施形態の方法でも、油脂中での加熱により生じる特有の好ましい風味を有する油系調理組成物が形成され、前記油系調理組成物を用いて製造される液状又はペースト状食品組成物及びそれを水中で加熱して得られる食品に、従来の油系固形ルウ及びそれを水中で加熱して得られる食品と同様の、油脂中での加熱により生じる特有の好ましい風味が付与される。
その他の点については第1の実施形態に記載の通りである。
【0044】
5.液状又はペースト状食品組成物の第1の実施形態
本発明の食品組成物は、水を連続相とし、油を分散相とする液状又はペースト状食品組成物である。
【0045】
本発明の食品組成物は実質的にα化されていない澱粉を含んでおり、偏光板を用いた顕微鏡観察により、偏光十字が観察される。
【0046】
本発明の食品組成物は、通常は、容器に充填された、容器入り液状又はペースト状食品組成物として提供される。容器としては内容物を取り出し可能なものであれば限定されないが、例えばパウチ状容器、口栓付きパウチ、チューブ状容器、ボトル状容器、缶、瓶容器などを利用することができる。
【0047】
本発明の食品組成物を水中で、必要に応じて具材とともに、加熱調理して得られる最終食品としては、粘性のあるソース(ホワイトソース、デミグラスソース、カレーソース、スープカレー、トマトソース、あんかけ、カスタードソース等)を使用するカレー、シチュー、チャウダー、ハヤシ、グラタン、パスタ、中華あんかけ料理、カスタードクリームなどを例示することができる。
【0048】
6.液状又はペースト状食品組成物の第2の実施形態
本発明の液状又はペースト状食品組成物の第2の実施形態は、澱粉、油脂、水、及び、食品材料を含有し、水を連続相とする、液状又はペースト状食品組成物であって、
液状又はペースト状食品組成物に50ppbの割合で2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジンを内部標準物質として添加した試料をガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)で分析し得られるクロマトグラムにおいて、以下の(A)~(D)から選択される1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、最も好ましくは全ての特徴を示す:
(A)2-メチルブタナールに由来するピーク面積が、2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジンに由来するピーク面積の2.0倍以上(好ましくは3.0倍以上、好ましくは4.0倍以上、好ましくは5.0倍以上、上限は特に限定されないが例えば20倍以下)である;
(B)3-メチルブタナールに由来するピーク面積が、2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジンに由来するピーク面積の2.0倍以上(好ましくは3.0倍以上、好ましくは4.0倍以上、好ましくは5.0倍以上、好ましくは6.0倍以上、上限は特に限定されないが例えば20倍以下)である;
(C)3-エチル-2,5-ジメチルピラジンに由来するピーク面積が、2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジンに由来するピーク面積の0.09倍以上(上限は特に限定されないが例えば0.50倍以下)である;
(D)δ-カジネンに由来するピーク面積が、2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジンに由来するピーク面積の2.0倍以上(好ましくは2.3倍以上、好ましくは3.0倍以上、好ましくは4.0倍以上、上限は特に限定されないが例えば20倍以下)である。
【0049】
本発明の液状又はペースト状食品組成物の第2の実施形態において「食品材料」とは、好ましくは、上記の第1の食品材料及び第2の食品材料と同様の範囲から選択される。より好ましくは、第2の実施形態に係る本発明の液状又はペースト状食品組成物は、本発明の製造方法により製造された液状又はペースト状食品組成物であり、特に好ましくは本発明の製造方法の第2の実施形態により製造された液状又はペースト状食品組成物である。
【0050】
2-メチルブタナール(CAS登録番号96-17-3)は、後述する3-メチルブタナールのメチル基の位置が異なる構造異性体であり香気成分として知られている。
【0051】
3-メチルブタナール(CAS登録番号590-86-3)は、果実、野菜な果実、野菜等の様々な食品に香気成分として天然に存在するほか、酒類、茶葉、乳製品等の加工食品にも成分として含まれており、発酵、加熱などにより生成することも知られている。欧米では、焼き菓子、アイスクリーム、キャンディー、清涼飲料、肉製品等の様々な加工食品において風味を向上させるために添加されている。
【0052】
3-エチル-2,5-ジメチルピラジン(CAS登録番号13360-65-1)は、アーモンド様の加熱香気を有し、食品中に天然に存在、または加熱により生成する。欧米では、焼き菓子、アイスクリーム、キャンディー、清涼飲料、肉製品等、様々な加工食品に香りを再現するため添加されている。
【0053】
δ-カジネン(CAS登録番号483-76-1)は、木材の精油成分として知られており、ウッディー,ドライな香りを有する。スパイスに豊富に含まれるビサボラン骨格のセスキテルペンが加熱されることで生成すると考えられる。また、焼き芋中に含まれる(生サツマイモには含まれていない)ことも報告されている。
【0054】
本発明者らは、驚くべきことに、油脂と食品材料とを含み実質的に水分を含まない混合物を加熱して調製された油系調理組成物を用いて製造された、澱粉、油脂、水、及び、食品材料を含有し、水を連続相とする、液状又はペースト状食品組成物では、香気成分である2-メチルブタナール、3-メチルブタナール、3-エチル-2,5-ジメチルピラジン、及び、δ-カジネンのうち1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、より好ましくは全ての含有量が、上記の油系調理組成物を経ずに調製された液状又はペースト状食品組成物でのそれぞれの含有量と比較して高いことを見出した。これらの香気成分の含有量の上昇は、油中加熱工程を経た食品に特有の好ましい風味の向上の原因であると考えられる。
【0055】
ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)の条件は特に限定されないが、好ましくは、実施例の「GC/MS分析」の欄に示す条件である。イオン化法はEIイオン化法、スキャンモードはフルスキャンで行うことができる。
【0056】
ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS分析法)で分析し得られるクロマトグラムでの各成分のピーク面積としては、各成分に特徴的な所定の質量電荷比(m/z)のイオンについて抽出したマスクロマトグラム(横軸:GC溶出時間、縦軸:各溶出時間における特定のm/zシグナル強度)におけるピーク面積を用いることができる。
【実施例
【0057】
<実施例>
表1の<油系調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が120℃に達するまで加熱調理して油系調味加熱配合(油系加熱調理組成物)を調製し75℃にまで冷却した。なお、前記油系調味加熱配合中の油脂の含有量は40重量%であった。表1の<水系調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して水系調味加熱配合(水系加熱調理組成物)を調製し75℃にまで冷却し、次いで、表1に示す<仕上げ配合>により、前記油系調味加熱配合と前記水系調味加熱配合と小麦粉を撹拌混合してペースト状のカレールウを調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、容器入りカレールウを得た。なお、水系調味加熱配合中の水分量は30重量%であり、容器入りカレールウ中の水分量は20重量%であった。
【0058】
【表1】
【0059】
<比較例>
表2の<調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して調味加熱配合(加熱調理組成物)を調製して75℃にまで冷却し、次いで、表2に示す<仕上げ配合>により、前記調味加熱配合と小麦粉を撹拌混合してペースト状のカレールウを調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、容器入りカレールウを得た。なお、容器入りカレールウ中の水分量は26重量%であった。
【0060】
【表2】
【0061】
<評価>
実施例及び比較例のカレールウ50gを60℃の温水150mlに撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱し、その後約95℃で10分間煮込んでカレーソースを作った。
【0062】
実施例のカレールウで調理したカレーソースは、比較例で調理したものに比べて加熱感が強く、油系固形ルウで作ったカレーソースにより近い味が感じられた。
【0063】
<GC/MS分析>
(1)測定試料の調製
実施例及び比較例のルウ2gを、GCMS用のガラスバイアルに移した。ここへ蒸留水1mLと内部標準物質(2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジン)0.1μgを加えて均一になるまで混合して密栓し、測定試料とした。
「実施例」のルウとして、表1に示す実施例の配合でカレールウを調製した。
「比較例」のルウとして、表2に示す比較例の配合でカレールウを調製した。
【0064】
(2)固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法(SPME-GCMS分析)
測定試料をSPME-GCMSにて分析することにより、3-メチルブタナール、2-メチルブタナール、3-エチル-2,5-ジメチルピラジン、及びδ-カジネンを定量した。分析には、Agilent Technologies社製のGCMS(7890A GC System、5975C inert XL MSD)とGestel社製のオートサンプラーを使用した。SPMEファイバーとしては、SUPELCO社製のDivinylbenzene/Carboxen/Polydimethylsiloxane(2cm)を使用した。ファイバーを、密閉したバイアル内で60℃、15分間暴露して、揮発成分を吸着させた後に、GCMSへインジェクションした。
【0065】
GCMS分析は以下の条件で行った。
使用カラム:Agilent DB-WAX(60m×0.25mm、0.25μm)
カラムオーブン昇温条件:(i)40℃から昇温開始→(ii)10℃/分の条件で7分間加熱し110℃まで昇温→(iii)2℃/分の条件で35分間加熱し180℃まで昇温→(iv)15℃/分の条件で8分間加熱し250℃まで昇温させて終了(昇温開始から50分経過)。
イオン化法:EIイオン化
スキャンモード:フルスキャン
【0066】
各成分の定量は、各成分に特徴的な以下の質量電荷比(m/z)のイオンについて抽出したマスクロマトグラム(横軸:GC溶出時間、縦軸:各溶出時間における特定のm/zシグナル強度)においてピーク面積を算出する方法により実施した。
2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジン:135(m/z)
2-メチルブタナール:57(m/z)
3-メチルブタナール:44(m/z)
3-エチル-2,5-ジメチルピラジン:135(m/z)
δ-カジネン:161(m/z)
【0067】
(3)結果
実施例のサンプル及び比較例のサンプルについて、上記で求めた内部標準物質(2,3-ジメチル-5-イソプロピルピラジン)に由来するピーク面積値を1としたときの、2-メチルブタナール、3-メチルブタナール、3-エチル-2,5-ジメチルピラジン、δ-カジネンのそれぞれに由来するピーク面積値を下記の表に示す。
【0068】
【表3】