(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】液状又はペースト状食品組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 23/10 20160101AFI20221011BHJP
【FI】
A23L23/10
(21)【出願番号】P 2018225585
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増子 瞳
(72)【発明者】
【氏名】濱洲 紘介
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 守紘
(72)【発明者】
【氏名】上山 正恵
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大暢
(72)【発明者】
【氏名】浅野 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】清水 由起
(72)【発明者】
【氏名】山本 晴菜
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-215972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉、油脂、水、及び、実質的に水分を含まない食品材料を含有し、水分含量が40重量%未満である、水を連続相とする、液状又はペースト状食品組成物の製造方法であって、
(i)油脂と
、(ii)少なくとも糖質と旨味調味料を含む実質的に水分を含まない食品材料とを含み、実質的に水分を含まない第1の混合物を加熱して、油系調理組成物を調製する工程と、
前記油系調理組成物と水とを含み、油脂含量よりも水分含量が高い第2の混合物を加熱して、水系調理組成物を調製する工程と、
前記水系調理組成物及び澱粉を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と、
を含む、液状又はペースト状食品組成物の製造方法。
【請求項2】
前記液状又はペースト状食品組成物が、他の食品材料を更に含み、
前記第2の混合物が、前記他の食品材料を更に含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水及び必要に応じて他の食品材料ともに加熱調理され、最終食品に粘性を付与する用途で用いられる、液状又はペースト状食品組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カレー、ハヤシ、シチュー等を作るために用いられるルウとしては、多量の食用油脂を用いて小麦粉や調味料などを固めた油系固形ルウが従来から知られている。油系固形ルウは、食用油脂、小麦粉、調味料等を加熱混合して液状の流動性のある加熱溶融ルウを調製し、この加熱溶融ルウを容器に流し込んで充填し、冷却固化することにより製造される(例えば特許文献1参照)。油系固形ルウは、水を実質的に含まない条件で製造されるため、小麦粉等の澱粉は固形ルウ中では糊化していない。油系固形ルウは所定量の水を加えて煮込み調理され、適宜所望の食品材料と組み合わされて、最終食品となる。水中で加熱して煮込み調理する段階で、澱粉が糊化することにより最終製品に粘性(とろみ)が付与される。
【0003】
一方、澱粉を含む濃縮タイプの容器入りペースト状ルウ製品等の、容器入り液状又はペースト状食品組成物が市販されている。この液状又はペースト状食品組成物もまた、製品中では澱粉は糊化しておらず、容器から取り出され、所定量の水を加えて煮込み調理される段階で、澱粉が糊化することにより最終製品に粘性が付与される。
【0004】
特許文献2では、微生物安全性が高く、速やかに且つ均一に湯や水に分散することができる、加熱により所望の粘性を発現する容器入り液状又はペースト状食品組成物が開示されている。特許文献2に記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物は、澱粉、糖質及び水を含有し、水分含量が30重量%未満である容器入り液状又はペースト状食品組成物であって、前記液状又はペースト状食品組成物中の水分に対する糖質の割合が80重量%以上であり、B型粘度計により測定される60℃における粘度が20000mPa・s以下であることを特徴とする。
【0005】
特許文献2では更に、前記容器入り液状又はペースト状食品組成物の製造方法として、
前記液状又はペースト状食品組成物の水分に対する割合が80重量%以上となる量の糖質、水、及び食品材料(油脂等)を含有する原料を加熱して、加熱調理組成物を調製する工程と、
前記加熱調理組成物及び澱粉を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と、
前記液状又はペースト状食品組成物に対し、該液状又はペースト状食品組成物の中心温度が70~90℃に達するように加熱殺菌処理を施す工程と
を有する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-332526号公報
【文献】特開2012-213355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているような既存の油系固形ルウは、油脂、澱粉(小麦粉等)、調味料等を加熱混合して液状の流動性のある加熱溶融ルウを調製し、この加熱溶融ルウを冷却固化して製造される。このような既存の油系固形ルウは、油脂とともに調味料等を含む、水分含量の低い油系原料を加熱する工程、すなわち油中加熱工程、を経て製造されるため、固形ルウには、油中加熱工程で生じる特有の好ましい風味が付与される。
【0008】
特許文献2に記載の方法により製造された、水を連続相とする液状又はペースト状食品組成物は、微生物安全性が高く、速やかに且つ均一に湯や水に分散することができるものである。しかし、特許文献2に記載の液状又はペースト状食品組成物は、油系原料を加熱する工程を経ることなく、糖質、水、及び食品材料(油脂等)を含有する水系原料を加熱する工程を経て製造されるため、油系固形ルウに特徴的な、油中加熱工程で生じる特有の風味を有していない。このため、油系固形ルウの味に慣れ親しんだ消費者は、特許文献2に記載の方法により製造された液状又はペースト状食品組成物の味に違和感を抱く傾向があった。
【0009】
また、消費者が、既存の油系固形ルウを水中で具材とともに煮込んで液状食品を製造する際、10分間を超えるような長時間の煮込みが必要であった。
【0010】
そこで本発明は、油脂中での食品材料の加熱により生じる特有の好ましい風味を有する液状又はペースト状食品組成物の製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、水中での短時間の加熱で十分な煮込み感を発現することができる液状又はペースト状食品組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)澱粉、油脂、水、及び、実質的に水分を含まない食品材料を含有し、水分含量が40重量%未満である、水を連続相とする、液状又はペースト状食品組成物の製造方法であって、
油脂と実質的に水分を含まない食品材料とを含み、実質的に水分を含まない第1の混合物を加熱して、油系調理組成物を調製する工程と、
前記油系調理組成物と水とを含み、油脂含量よりも水分含量が高い第2の混合物を加熱して、水系調理組成物を調製する工程と、
前記水系調理組成物及び澱粉を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と、
を含む、液状又はペースト状食品組成物の製造方法。
(2)前記液状又はペースト状食品組成物が、他の食品材料を更に含み、
前記第2の混合物が、前記他の食品材料を更に含む、(1)に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法により製造された液状又はペースト状食品組成物は、油中加熱工程で生じる特有の好ましい風味を有する。
【0013】
更に、本発明の方法により製造された液状又はペースト状食品組成物は、水中での短時間の加熱で十分な煮込み感を発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.原料
1.1.水
本発明の製造方法により製造される液状又はペースト状食品組成物(以下「本発明の食品組成物」という場合がある)は、該組成物の全重量あたりの水分含量が40重量%未満、好ましくは30重量%未満、より好ましくは29.5重量%以下であることを特徴とする。水分含量がこの範囲にある場合には、微生物の増殖リスクが低減される。本発明の食品組成物の水分活性(Aw)が0.87以下であることが好ましい。水分活性の測定はノバシーナ社製の水分活性測定装置を用いて測定することができる。
【0015】
水分含量の下限値は特に限定されないが、通常は、本発明の食品組成物の全重量あたり10重量%以上、好ましくは15重量%以上である。
【0016】
1.2.澱粉
澱粉としては、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の澱粉が挙げられる。澱粉は、小麦粉、米粉、もち米粉等の澱粉を含有する穀物粉の形態で添加されてもよい。穀物粉を単独で又は油脂を混合して加熱し、風味付けや分散性を向上させたものを使用してもよい。上記澱粉に対し、湿熱処理を行った湿熱処理澱粉や、架橋や官能基付与等の化学修飾した加工澱粉を使用してもよい。澱粉は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明の食品組成物中の澱粉の含量は特に限定されないが、該組成物の全重量を基準として、5~50重量%が好ましく、5~45重量%がより好ましく、10~40重量%が特に好ましい。
【0018】
本発明の食品組成物中の澱粉の量の測定は、α化していない澱粉が水に不溶であることを利用して水溶性画分と分離し、不溶性画分に含まれる澱粉を加熱糊化させたのち、グルコアミラーゼで分解し、グルコース量を定量することにより測定することができる。なお、ここで、本発明の食品組成物が油脂を含有するものである場合には、あらかじめ脱脂処理を行うことが好ましい。
【0019】
1.3.油脂
本発明の食品組成物は、牛脂、豚脂、魚油、バター、ギー等の動物油脂、大豆油、コーン油、パーム油、菜種油、オリーブオイル等の植物油脂、ジアシルグリセロール、マーガリン等の加工油脂を適宜含有することができる。
【0020】
本発明の食品組成物中の油脂の含量は特に限定されないが、例えば、該組成物の全重量を基準として5重量%以上であることがきる。健康上の観点、風味上の観点、本発明の食品組成物の保管時の分離安定性の観点から、油脂含量は30重量%以下であることが望ましい。
【0021】
本発明の食品組成物は、油脂の分離安定性のために、乳化剤を更に含有しても良い。
【0022】
1.4.実質的に水を含まない食品材料
実質的に水を含まない食品材料とは、後述する油系調理組成物を調製する工程において、油脂と混合して第1の混合物を形成したときに、加熱前の第1の混合物が実質的に水を含まない、具体的には、加熱前の第1の混合物が水分含量5重量%以下、3重量%以下又は1重量%以下となるような、水分含量の低い食品材料であればよい。実質的に水を含まない食品材料は、例えば、油脂と混合し第1の混合物を形成する前の段階で、水分含量が10重量%以下、5重量%以下、3重量%以下又は1重量%以下となる食品材料であり、典型的には、粉末状の食品材料である。
【0023】
実質的に水を含まない食品材料は1種又は複数種の食品材料を含む。
実質的に水を含まない食品材料は、本発明の食品組成物に所望の風味、味を付与する目的で配合される水分含量の低い任意の食品材料であってよく、例えば、香辛料、カレーパウダー、オニオンパウダー、ガーリックパウダー、大豆パウダー、糖質、酸味料、グルタミン酸ナトリウムや酵母エキスパウダー等の旨味調味料、食塩等の塩類等が例示でき、香辛料、カレーパウダー、オニオンパウダー、ガーリックパウダー、大豆パウダー、糖質、グルタミン酸ナトリウムや酵母エキスパウダー等の旨味調味料が好ましい。
【0024】
糖質としては、ブドウ糖等の単糖、ショ糖、麦芽糖、トレハロース等の二糖、オリゴ糖、マルトシルトレハロース、デキストリン、糖アルコール(キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、オリゴ糖アルコール等)等が挙げられる。糖質は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明の食品組成物中の実質的に水を含まない食品材料の含量は特に限定されないが、該組成物の全重量を基準として、5~30重量%が好ましく、5~20重量%がより好ましく、10~20重量%が特に好ましい。
【0026】
1.5.他の食品材料
本発明において水系調理組成物を調製する工程は、油系調理組成物と水とを含み、油脂含量よりも水分含量が高い第2の混合物を加熱する工程である。該工程に用いる第2の混合物は、油系調理組成物と水とを含むものであればよいが、他の食品材料を更に含むことが好ましい。
【0027】
他の食品材料は、本発明の食品組成物に所望の風味、味を付与する目的で配合される任意の食品材料であってよく、1種又は複数種の食品材料を含む。
【0028】
他の食品材料としては、実質的に水を含まない食品材料と同様の範囲から選択された食品材料であってもよいし、実質的に水を含む食品材料であってもよい。他の食品材料としては、例えば、実質的に水を含まない食品材料として例示したもののほか、肉エキス、野菜エキス、果物エキス、酵母エキス、野菜ペースト、果物ペースト、ダシ、味噌、醤油、乳製品、ワイン、水あめ、はちみつ等であってよい。
【0029】
本発明の食品組成物中の他の食品材料の含量は特に限定されないが、該組成物の全重量を基準として、70重量%以下が好ましく、20~60重量%がより好ましく、30~50重量%がより好ましい。
【0030】
2.製造方法
本発明の液状又はペースト状食品組成物の製造方法は、
油脂と実質的に水分を含まない食品材料とを含み、実質的に水分を含まない第1の混合物を加熱して、油系調理組成物を調製する工程と、
前記油系調理組成物と水とを含み、油脂含量よりも水分含量が高い第2の混合物を加熱して、水系調理組成物を調製する工程と、
前記水系調理組成物及び澱粉を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する工程と
を少なくとも含む。
【0031】
第1の工程では、油脂と実質的に水分を含まない食品材料とを含み、実質的に水分を含まない第1の混合物を加熱する、すなわち油中加熱する、ことで、油脂中での加熱により生じる特有の好ましい風味を有する油系調理組成物が形成される。この結果、前記油系調理組成物を用いて製造される液状又はペースト状食品組成物及びそれを水中で加熱して得られる食品に、従来の油系固形ルウ及びそれを水中で加熱して得られる食品と同様の、油脂中での加熱により生じる特有の好ましい風味が付与される。
【0032】
第1の混合物の全量に対する油脂の含有量は30重量%以上又は40重量%以上であることができ、70重量%以下又は60重量%以下であることができる。
【0033】
第1の混合物の全量に対する実質的に水分を含まない食品材料の含有量は30重量%以上、40重量%以上又は50重量%以上であることができ、80重量%以下又は70重量%以下であることができる。
【0034】
第1の混合物は実質的に水分を含まず、具体的には、第1の混合物の全量に対する水分含量は5重量%以下、3重量%以下又は1重量%以下である。
【0035】
第1の混合物は澱粉を含まないことが好ましいが、澱粉の一部を含んでいてもよく、例えば、第1の混合物の全量に対し澱粉の含有量は10重量%以下、好ましくは5重量%以下であってもよい。澱粉の全部又は大部分を、水系調理組成物を調製した後に加えることで、液状又はペースト状食品組成物の製造時での澱粉の糊化が抑制される。
【0036】
第1の工程での加熱条件としては、具体的には、100℃を超える温度に達するまで加熱することができ、170℃以下の温度に達するまで加熱することができる。 また、所定の温度に達した後、その温度付近でさらに加熱することもできる。
【0037】
第2の工程は、前記油系調理組成物と水とを含み、油脂含量よりも水分含量が高い第2の混合物を加熱することで、第1の工程で油中加熱された前記油系調理組成物を更に水中で煮込む工程である。こうして得られた水系調理組成物を配合した液状又はペースト状食品組成物を水中で加熱調理して得た液状食品は、加熱調理の時間が短時間(例えば1~5分間程度の短時間)であっても、煮込みの工程を経ずに調整された水系調理組成物を配合した液状又はペースト状食品組成物、又は、既存の油系固形ルウを水中で10分間以上の長時間加熱調理して得た液状食品と同等の煮込み感を実現することができる。
【0038】
第2の混合物の全量に対する水分含量は、油脂含量よりも高い含量であれば特に限定されないが、具体的には10重量%以上又は15重量%以上であることができ、50重量%以下又は40重量%以下であることができる。
【0039】
第2の混合物の全量に対する油脂含量は、水分含量よりも低い含量であれば特に限定されないが、具体的には35重量%以下又は25重量%以下であることができ、5重量%以上であることができる。
【0040】
第2の混合物は、少なくとも前記油系調理組成物と水とを含めばよいが、より好ましくは他の食品材料を更に含む。第2の混合物の全量に対する他の食品材料(湿重量として)の含有量は特に限定されないが、例えば10重量%以上、30重量%以上又は50重量%以上であることができ、80重量%以下又は70重量%以下であることができる。
【0041】
第2の混合物は澱粉を含まないことが好ましいが、澱粉の一部を含んでいてもよく、例えば、第2の混合物の全量に対し澱粉の含有量は10重量%以下、好ましくは5重量%以下であってもよい。
【0042】
第2の工程での加熱条件としては、具体的には、80℃~100℃の温度に達温するまで加熱することができる。また、所定の温度に達した後、その温度付近でさらに加熱することもできる。
【0043】
第3の工程では、前記水系調理組成物及び澱粉を混合して液状又はペースト状食品組成物を調製する。このとき第2の工程での加熱後に冷却(好ましくは75℃以下に冷却)した前記水系調理組成物と澱粉とを混合することが好ましい。前記水系調理組成物を調製後に澱粉を配合することにより、液状又はペースト状食品組成物は、澱粉を糊化していない状態で含むことができ、流動性が高く、水中での分散が容易である。
【0044】
第3の工程で調製された液状又はペースト状食品組成物は、更に加熱殺菌処理を施すことが好ましい。加熱殺菌は、例えば蒸気、熱水等により行うことができる。その条件は殺菌を十分なものとし、得られる食品組成物の保存性を十分なものとするように設定することが好ましい。例えば、食品組成物の温度(中心温度)が70℃~90℃となるように加熱殺菌処理を行うことが好ましい。加熱殺菌処理では、例えば加熱殺菌処理が後述する後殺菌の場合には上記温度を5分間~60分間保持するのが好ましく、また、加熱殺菌処理が後述するホットパック殺菌の場合には上記温度を5秒間~5分間保持することが好ましい。
【0045】
食品組成物の容器への充填密閉と加熱殺菌処理との順序は特に限定されず、加熱殺菌処理は食品組成物の容器への充填前に行ってもよいし、容器への充填後に行ってもよいし、あるいは容器への充填の前後に行うこともできる。典型的には、食品組成物を容器に充填密封した後に加熱殺菌処理を施す様式(後殺菌)と、食品組成物を予め加熱殺菌処理(好ましくは70℃~90℃の温度で加熱殺菌処理)し、加熱殺菌処理の温度(好ましくは70℃以上)を保持した状態で食品組成物を容器に充填密封し、容器を殺菌する様式(ホットパック殺菌)とが挙げられる。
【0046】
3.液状又はペースト状食品組成物
本発明の食品組成物は、水を連続相とし、油を分散相とする液状又はペースト状食品組成物である。
【0047】
本発明の食品組成物は実質的にα化されていない澱粉を含んでおり、偏光板を用いた顕微鏡観察により、偏光十字が観察される。
【0048】
本発明の食品組成物は、通常は、容器に充填された、容器入り液状又はペースト状食品組成物として提供される。容器としては内容物を取り出し可能なものであれば限定されないが、例えばパウチ状容器、口栓付きパウチ、チューブ状容器、ボトル状容器、缶、瓶容器などを利用することができる。
【0049】
本発明の食品組成物を水中で、必要に応じて具材とともに、加熱調理して得られる最終食品としては、粘性のあるソース(ホワイトソース、デミグラスソース、カレーソース、スープカレー、トマトソース、あんかけ、カスタードソース等)を使用するカレー、シチュー、チャウダー、ハヤシ、グラタン、パスタ、中華あんかけ料理、カスタードクリームなどを例示することができる。
【実施例】
【0050】
<実施例>
表1の<油系調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が120℃に達するまで加熱調理して油系調味加熱配合(油系加熱調理組成物)を調製した。なお、前記油系調味加熱配合中の油脂の含有量は40重量%であった。表1に示す<水系調味加熱配合>により、前記油系加熱調理配合と各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して水系調味加熱配合(水系加熱調理組成物)を調製し75℃にまで冷却し、次いで、表1に示す<仕上げ配合>により、前記水系調味加熱配合と小麦粉を撹拌混合してペースト状のカレールウを調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、容器入りカレールウを得た。なお、水系調味配合中の水分含量は25重量%、油脂含量は12重量%であった。また、容器入りカレールウ中の水分量は20重量%であった。
【0051】
【0052】
<比較例>
表2の<油系調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が120℃に達するまで加熱調理して油系調味加熱配合(油系加熱調理組成物)を調製し75℃にまで冷却した。なお、前記油系調味加熱配合中の油脂の含有量は40重量%であった。表2の<水系調味加熱配合>に示す各食品材料を撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理して水系調味加熱配合(水系加熱調理組成物)を調製し75℃にまで冷却し、次いで、表2に示す<仕上げ配合>により、前記油系調味加熱配合と前記水系調味加熱配合と小麦粉を撹拌混合してペースト状のカレールウを調製し、柔軟性のパウチ状容器に充填密封した後、雰囲気70℃で30分間加熱殺菌処理を行い、容器入りカレールウを得た。なお、容器入りカレールウ中の水分量は20重量%であった。
【0053】
【0054】
<評価>
実施例及び比較例のカレールウ50gを60℃の温水150mlに撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱し、その後約95℃で3分間煮込んでカレーソースを作った。
【0055】
比較例のカレールウで調理したカレーソースは煮込み感が弱かったが、実施例で調理したものは十分な煮込み感が感じられ美味しいカレーソースであった。