(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】フィルター要素の製造における中空繊維を埋め込むための貯蔵安定性ポリウレタン注入用化合物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/22 20060101AFI20221011BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20221011BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20221011BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20221011BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20221011BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20221011BHJP
A61M 1/18 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
C08G18/22
C08G18/38 019
C08G18/32 071
C08G18/42 088
C08G18/66
C08G18/76 057
A61M1/18
(21)【出願番号】P 2019560710
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2018060832
(87)【国際公開番号】W WO2018202566
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-03-30
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ボルツェ,パトリク
(72)【発明者】
【氏名】カム,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】マテュー,トマス
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ルカト,グンター
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-006874(JP,A)
【文献】特開2015-142908(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114876(WO,A1)
【文献】特開平09-176570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
A61M 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルター要素の中空繊維を埋め込むためのポリウレタン注入用化合物(Polyurethanvergussmasse)であって、
ポリオール成分(A)、及び少なくとも1種の芳香族イソシアネートを含むイソシアネート成分(B)を混合して反応混合物を得、この混合物をポリウレタン注入用化合物へと反応させて得ることができ、
前記ポリオール成分(A)が、
(a1)50mg KOH/g超から500mg KOH/g未満までのヒドロキシル価及び2~6の官能価を有する、少なくとも1種の脂肪酸をベースとするポリオール、及び
(a2)ビスマスカルボキシレート(a2-I)を少なくとも1個の第3級窒素原子及び少なくとも1個のイソシアネート反応性水素原子を有するアミン化合物(a2-II)と混合することにより得ることができる、少なくとも1種のビスマス触媒
を含み、
ビスマスと前記アミン化合物(a2-II)とのモル比が1:0.5~1:50である、ポリウレタン注入用化合物。
【請求項2】
前記アミン化合物(a2-II)が、少なくとも3個のイソシアネート反応性水素原子を有する、請求項1に記載のポリウレタン注入用化合物。
【請求項3】
前記アミン化合物(a2-II)が、500~1200mg KOH/gのヒドロキシル価を有し、かつ、3~6個のイソシアネート基に対して反応性である水素原子を有するアルコキシル化アミンである、請求項1又は2に記載のポリウレタン注入用化合物。
【請求項4】
前記アミン化合物(a2-II)が、3~6の公称官能価、及び500~900mg KOH/gのヒドロキシル価を有するジアミン開始のプロピレンオキシドである、請求項3に記載のポリウレタン注入用化合物。
【請求項5】
前記脂肪
酸をベースとするポリオール(a1)が、ヒマシ油又はヒマシ油のアルコキシル化生成物を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリウレタン注入用化合物。
【請求項6】
前記ポリオール成分(A)が、2~8の官能価及び600~1350mg KOH/gのヒドロキシル価を有し、かつ、第3級窒素原子を持たない、少なくとも1種の、少なくとも二官能のポリオール(a3)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリウレタン注入用化合物。
【請求項7】
いずれの場合にも成分(a1)~(a3)の総質量に基づいて、前記脂肪酸をベースとするポリオール(a1)の割合が60~98質量%であり、前記ビスマス触媒(a2)の割合が0.001~0.1質量%であり、前記ポリオール(a3)の割合が0~25質量%である、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリウレタン注入用化合物。
【請求項8】
前記イソシアネート成分(B)が、ジフェニルメタンジイソシアネートの異性体及び/又は同族体のプレポリマーを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリウレタン注入用化合物。
【請求項9】
フィルター要素の製造方法であって、前記フィルター要素の端部で、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリウレタン注入用化合物中に中空繊維の束を埋め込んで、硬化させる、方法。
【請求項10】
前記フィルター要素が医療で使用するためのフィルター要素である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記フィルター要素が透析フィルター要素である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記フィルター要素が水フィルター要素である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか一項に記載のポリウレタン注入用化合物を、中空繊維の部分的な埋め込みに使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール成分(A)、及び少なくとも1種の芳香族イソシアネートを含むイソシアネート成分(B)を混合して反応混合物を得、該混合物を完全に反応させてポリウレタンカプセル化化合物(ポリウレタン注入用化合物)を得ることにより得ることができる、フィルター要素の中空繊維を埋め込むためのポリウレタンカプセル化化合物に関し、ここで、ポリオール成分(A)が、50mg KOH/g超から500mg KOH/g未満までのヒドロキシル価及び2~6の官能価を有する、少なくとも1種の脂肪酸をベースとするポリオール(a1)、及びビスマスカルボキシレート(a2-I)を少なくとも1個の第3級窒素原子及び少なくとも1個のイソシアネート反応性水素原子を有するアミン化合物(a2-II)と混合することにより得ることができる、少なくとも1種のビスマス触媒(a2)を含み、ビスマスとアミン化合物(a2-II)とのモル比が1:0.5~1:50である。さらに、本発明は、ポリウレタンカプセル化化合物を使用してフィルター要素を製造する方法に、及び中空繊維を埋め込むことにポリウレタンカプセル化化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルター要素、特に医療分野で使用されるフィルターの中空繊維を埋め込むことにポリウレタンカプセル化化合物を使用する方法、例えば透析装置における中空繊維のための埋め込み材料として使用する方法は知られており、これは例えば、EP844015 B1に記載されている。ポリウレタンから構成されるポリウレタンカプセル化化合物の利点とは、中空繊維の体積による割合を透析装置中に組み込み、中空繊維の最適な含浸を達成することが可能であることである。さらに、フィルターの製造において記載されているポリウレタンは、加水分解に対して安定であり、過熱蒸気滅菌のプロセスを損傷を与えないように存続し、特に有毒の可能性がない。しかしながら、良好で迅速な硬化及び高い生産性を達成するために、触媒の使用が必要である。
【0003】
ポリウレタンカプセル化化合物を製造するための原料は、一般にイソシアネート成分及びポリオール成分として典型的に予混合される。この場合、フィルター要素の製造業者は、ポリウレタンカプセル化化合物を得るために、2つの成分を適切な比で混合するだけでよい。イソシアネート成分及びポリオール成分は一般に、ドラム又はタンカーで加工業者に輸送される。しばしば、成分の製造とそれらの処理の間には、数日又は数か月かかる。しかしながら、粘度の連続的な増加を確保し、したがって中空繊維の連続的な含浸、及びまた硬化及び生産性をも確保するために、ポリオール成分とイソシアネート成分との反応性はこの期間中に変化してはならない。
【0004】
US 3962094には、ポリウレタンカプセル化化合物の製造に無触媒ポリウレタン系を使用する方法が記載されている。これらは不変な反応性を有するが、反応性が低いことは、長いサイクル時間及び低い生産性を受け入れなければならないことを意味する。
【0005】
アミン系触媒、例えば1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンをポリウレタンカプセル化化合物の製造に使用する方法は同様に知られている。しかしながら、これらの触媒は、高い移動特性を示し、得られたポリウレタンから逃げ出すことができるため、医療用途には使用できない。この欠点を避けるために、US 4224164はN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの使用方法を開示している。この触媒は、イソシアネート反応性基を有し、したがってポリウレタンネットワーク中に組み込まれているので、移動することができない。この組み込み可能な触媒の触媒特性は、反応性を大幅に高めることができるが、工業的に重要なサイクル時間は、ポリオール成分が40質量%を超える濃度でのみ得ることができる。N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンのこの高い割合はポリウレタンカプセル化化合物を製造するための反応混合物の粘度を大幅に高めるので、中空繊維の最適な含浸はもはや保証されない。
【0006】
DD-A-155777は、透析装置のためのポリウレタンカプセル化化合物の製造に、スズ化合物を触媒として使用する方法を開示している。DD-A-155777に記載されている触媒は、高い一定の反応性を提供し、他の有機スズ化合物と一緒に、産業におけるPUポリウレタンカプセル化化合物の標準として確立されている。上記の例として、EP 2 081 973、EP 538 673、EP 413 265及びEP 329473が挙げられる。有機スズ化合物の有毒の可能性及び対応するREACH分類のため、業界では新規な触媒を探している。しかしながら、全ての通常の金属触媒は、ヒマシ油などの必要な疎水性に必要な脂肪酸ポリオールを含むポリオール成分において、不十分な貯蔵安定性を示している。これにより、保存期間に応じて、ポリウレタンカプセル化化合物の硬化中の反応時間が変化する。これは、フィルター要素の製造業者が受け入れられないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】EP844015 B1
【文献】US 3962094
【文献】US 4224164
【文献】DD-A-155777
【文献】EP 2 081 973
【文献】EP 538 673
【文献】EP 413 265
【文献】EP 329473
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、フィルター要素の中空繊維を埋め込むためのポリウレタンカプセル化化合物を製造するための貯蔵安定性成分を提供することを目的とし、ここで、有毒材料を使用せず、滅菌条件下でもポリウレタンカプセル化化合物から有毒材料を放出せず、均一に速い反応時間を維持することができる。ここでは、硬化性能は理想的に、標準のスズ触媒の硬化性能に対応すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、ポリオール成分(A)、及び少なくとも1種の芳香族イソシアネートを含むイソシアネート成分(B)を混合して反応混合物を得、該混合物を完全に反応させてポリウレタンカプセル化化合物を得ることにより得ることができる、フィルター要素の中空繊維を埋め込むためのポリウレタンカプセル化化合物により達成され、ここで、ポリオール成分(A)が、50mg KOH/g超から500mg KOH/g未満までのヒドロキシル価及び2~6の官能価を有する、少なくとも1種の脂肪酸をベースとするポリオール(a1)、及びビスマスカルボキシレート(a2-I)を少なくとも1個の第3級窒素原子及び少なくとも1個のイソシアネート反応性水素原子を有するアミン化合物(a2-II)と混合することにより得ることができる、少なくとも1種のビスマス触媒(a2)を含み、ビスマスとアミン化合物(a2-II)とのモル比が1:0.5~1:50である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によるポリウレタンカプセル化化合物(ポリウレタン注入用化合物: Polyurethanvergussmassen)は、好ましくはコンパクトなものであり、好ましくはフィルター要素の中空繊維を埋め込むことに使用され、すなわち、フィルター要素の中空繊維のための埋め込み化合物として適する。コンパクトなポリウレタンカプセル化化合物は、一般に0.8g/l~1.3g/l、好ましくは0.9g/l~1.1g/lの密度を有するポリウレタンカプセル化化合物であると理解される。本発明によるポリウレタンカプセル化化合物は一般に、硬化を行った後、40~80のショアD硬度を示す。しかしながら、本発明によるポリウレタンカプセル化化合物は好ましくは、55~75のショアD硬度を有する。例えば透析フィルターにおけるカプセル化化合物としての利用において、58~70のショアD硬度が特に好ましい。ショアD硬度は、23℃の温度で、DIN 53505に関する。当業者は、カプセル化化合物の組成、したがって、例えば、高官能価ポリオール、例えばポリオール(a3)の性質及び量を選択する。
【0011】
フィルター要素の製造中において、好ましくは、ポリオール成分(A)及びイソシアネート成分(B)を混合して、中空繊維を含む鋳型中に入れる。ここで特に好ましくは、カプセル化化合物を、遠心機中で回転させ、かつ、中空繊維を含む中空の成形体中に導入する。遠心力の結果として、液体反応混合物は、それぞれの中空繊維を取り囲んでいるフィルター要素の両端に輸送され、硬化して、コンパクトで、実質的に透明なカプセルを形成する。
【0012】
任意に高温で、反応性水素原子とNCO基との反応、特にOH基の反応により、さらなる補助なしで、硬化工程を行う。カプセル化化合物がその最終特性、特にその硬度及びその安定性にだいだい達するとすぐに、硬化工程が完了する。
【0013】
次の切断プロセスにより、通常、中空繊維の開口部が露出される。フィルター要素は一般に、洗浄及び滅菌プロセスの後、すぐに使用することができる。
【0014】
本発明による方法によって、過熱蒸気で滅菌することができ、細胞毒性がなく、かつ、例えば、飲料水の処理又は浄化において水フィルターとして、又は例えば医療技術分野において透析フィルターとして使用することができるカプセル化化合物の製造が可能である。同時に、本発明によるポリウレタンカプセル化化合物を使用することにより、複雑な構造を形成することができ、例として、透析フィルターに要求されるように、1つのフィルター当たり12000本を超える繊維の高い繊維数を完全に囲むことができる。さらに、本発明によるポリウレタンカプセル化化合物は、熱滅菌、又は例えば過酢酸の使用による湿式滅菌が可能であり、細胞毒性化合物、例えばアミン化合物の移動を示さない。
【0015】
硬化したポリウレタンカプセル化化合物は消毒剤に対して耐性がある。特に、本発明によるカプセル化化合物は、水蒸気又は熱湯の低い吸収を示す。本発明によるポリウレタンカプセル化化合物は、微細な粉塵を形成せずに2週間にわたって切断することができ、この微細な粉塵はそうでなければ実際の濾過に使用される中空繊維の孔を塞ぐ可能性がある。本発明による硬化したポリウレタンカプセル化化合物は、好ましくは透明で非細胞毒性であり、好ましくは、高温で比較的長期間にわたって、典型的にはフィルターハウジングとして機能する他の材料、例えばポリカーボネートに対して良好な接着性を有する。ポリウレタンカプセル化化合物は、過カルボン酸に対して安定であるので、そのようなポリウレタンカプセル化化合物から作られた成形体は、例えば過酢酸で滅菌することができる。本発明によるポリウレタンカプセル化化合物は、高い疎水性及び十分な架橋密度を示す。
【0016】
依然として自由流動性のポリウレタンカプセル化化合物は、フォームを形成せずに注型(vergiessen)することもできる。同時に、本発明によるポリウレタンカプセル化化合物は、反応性成分を混合した直後に、低い混合粘度を示す。ポリウレタンカプセル化化合物は、2時間後にはすでに切断可能であるが、それ以上の大幅な硬化は行われないので、24時間を超えた後でも切断することができる。また、本発明による、ポリウレタンをベースとするカプセル化化合物は、キュプロファン、ポリスルホン、ポリカーボネート又はセルロース繊維などのすべての通常のタイプの中空繊維で処理可能であることが有利であり、フィルターハウジングの材料として最も頻繁に使用されるポリカーボネートは、接着強度を改善するための処理の前に、コロナ放電による任意の前処理が必要とされない。
【0017】
さらに、本発明は、本発明によるポリウレタンカプセル化化合物の製造方法にも関する。この目的を達成するために、ポリオール成分(A)及びイソシアネート成分(B)を混合して反応混合物を得、完全に反応するまで放置してポリウレタンカプセル化化合物を形成する。混合は、攪拌機又は攪拌スクリューを使用して、又は向流注入法(Gegenstrominjektionsverfahren)として知られている高圧下で、機械的に行われてもよい。ここでは、本発明において、成分(A)及び(B)の混合物は、イソシアネート基に対して90%未満の反応転換率の反応混合物と称される。
【0018】
ここでは、ポリオール成分(A)は、好ましくは、50mg KOH/g超から500mg KOH/g未満までのヒドロキシル価及び少なくとも2の官能価を有する、少なくとも1種の脂肪酸をベースとするポリオール(a1)、及びビスマスカルボキシレート(a2-I)を少なくとも1個の第3級窒素原子及び少なくとも1個のイソシアネート反応性水素原子を有するアミン化合物(a2-II)と混合することにより得ることができる、少なくとも1種のビスマス触媒(a2)を含み、ここで、ビスマスとアミン化合物(a2-II)とのモル比が1:0.5~1:50である。
【0019】
ここでは、OH官能価は、本発明において、1分子当たりのアルコール性でアシル化可能なOH基の数であると理解されるべきである。特定の成分が定義された分子構造を有する化合物から構成される場合、官能価は1分子当たりのOH基の数により与えられる。化合物が出発分子のエトキシル化又はプロポキシル化により製造される場合、OH官能価は、1出発分子当たりの反応性官能基、例えばOH基の数により与えられる。
【0020】
好適な脂肪酸をベースとするポリオールは、好ましくは50mg KOH/g超から500mg KOH/g未満まで、特に好ましくは100~300mg KOH/g、特に100~200mg KOH/gのヒドロキシル価、及び少なくとも2の官能価を有するものである。好ましくは、脂肪酸をベースとするポリオールのOH官能価は2~3の範囲にある。脂肪酸をベースとするポリオールのOH官能価は、特に好ましくは2.3~3、非常に特に好ましくは2.6~3である。
【0021】
脂肪酸をベースとするポリオールは、脂肪、オイル、脂肪酸又は脂肪酸誘導体であり得るか、又は物理的又は化学的修飾により上記の化合物から得ることができる。上記の定義による脂肪酸をベースとするポリオールは、それ自体が当業者に知られているか、又はそれ自体が知られている方法により得ることができる。
【0022】
脂肪酸をベースとするポリオールの例には、植物油及びそれらの誘導体が含まれる。植物油は、それらの組成が異なることができ、様々なグレードの純度で存在することができる。本発明において、ドイツ薬局方(Deutsches Arzneibuch、DAB)の規定を満たす植物油が好ましい。非常に特に好ましくは、成分a1)は、植物油であり、かつ、DAB-10を満たす、少なくとも1種の脂肪酸をベースとするポリオールを含む。
【0023】
使用することができる脂肪酸をベースとするポリオールは、分子量及びOH官能価に関するさらなる特性が満たされている限り、一般に知られている脂肪酸、好ましくは天然脂肪酸、特に好ましくは植物性脂肪酸、特に不飽和植物性脂肪酸、及びまたそれらの誘導体、例えばモノ-、ジ-及び/又はトリアルコールでのエステルである。
【0024】
しかしながら、使用することができる脂肪酸をベースとするポリオールの例には、開環のエポキシ化又は酸化の脂肪酸化合物、及び/又は脂肪酸化合物とアルキレンオキシドとの付加物も含まれる。上記の方法により得ることができるヒドロキシル化脂肪酸及び/又はヒドロキシル化脂肪酸誘導体が好ましい。
【0025】
OH官能性の脂肪酸をベースとする化合物、例えばヒマシ油又はヒドロキシル化植物油と、アルキレンオキシドとの付加物は、80~130℃の温度及び0.1~1MPaの圧力で、任意に通常の触媒、例えばアルカリ金属ヒドロキシド又はアルカリ金属アルコキシドの存在下で、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドを用いて、化合物の一般に知られているアルコキシル化により製造することができる。
【0026】
さらに、使用することができる脂肪酸をベースとするポリオールはまた、ナタネ油(Rapsoel)、大豆油、セイヨウアブラナ油(Rueboel)、オリーブ油及び/又はひまわり油をベースとするヒドロキシル化脂肪酸化合物、及び/又はオレイン酸及び/又はリノール酸をベースとするものである。好適な脂肪酸をベースとするポリオールは特に、ヒドロキシル化大豆油をベースとするポリオールである。
【0027】
さらに、2~3のOH官能価を有する脂肪酸のトリグリセリドが好ましい。任意にさらなる脂肪酸、例えばリノール酸及び/又はパルミチン酸を含むトリグリセリドとの混合物での、リシノール酸のトリグリセリドが特に好ましい。
【0028】
特に好ましくは、使用される脂肪酸をベースとするポリオールは、化学修飾のない植物油である。ヒマシ油又はヒマシ油のアルコキシル化生成物、特にヒマシ油が特に好ましい。特に好ましくは、脂肪酸をベースとするポリオールは、DAB 10によるドイツ薬局方の規定を満たすヒマシ油である。1つの特に好ましい実施態様において、使用される成分(a1)はヒマシ油のみである。
【0029】
好ましくは、成分(a1)は、例えば0.2質量%未満の低い水分含有量を有する。0.1質量%未満の成分(a1)の水分含有量が好ましい。天然油、例えばヒマシ油を成分(a1)として使用する場合、典型的には、それを使用する前に、特に懸濁物質の除去及び脱水を含む精製が行われる。懸濁物質を含まず、かつ、上記の水分含有量を有する天然油は、成分(a1)として特に適している。
【0030】
ビスマス触媒(a2)は、ビスマスカルボキシレート(a2-I)を少なくとも1個の第3級窒素原子及び少なくとも1個の対応するイソシアネート反応性水素原子を有するアミン化合物(a2-II)と混合することにより得ることができる。ここでは、ビスマスとアミン化合物(a2-II)とのモル比は、1:0.5~1:50、好ましくは1:1~1:20、特に好ましくは1:1~1:10、特に1:2~1:5である。
【0031】
ビスマスカルボキシレート(a2-I)において、ビスマスは、好ましくは2又は3、特に3の酸化状態である。塩の形態では、使用されるカルボン酸は、好ましくは6~18個の炭素原子、特に好ましくは8~12個の炭素原子を有するカルボン酸である。特に好適なビスマス塩の例は、ビスマス(III)ネオデカノエート、ビスマス2-エチルヘキサノエート及びビスマスオクタノエートである;特に好ましくは、ビスマス(III)ネオデカノエートを使用する。
【0032】
本発明によるビスマス触媒を製造するために、ビスマスカルボキシレート(a2-I)は、好ましくは10~120℃、特に好ましくは20~100℃、特に50~80℃の温度で、アミン化合物(a2-II)と混合される。ここでは、該温度は好ましくは、アミン化合物(a2-II)が液体であるように選択される。好ましくは、混合は攪拌で行われる。1つの好ましい実施態様において、混合物は、混合温度で、少なくとも5分を超え、特に好ましくは10~120分、特に10~60分攪拌され、次に冷却される。必要に応じて、さらなる溶媒、例えば、グリコール、例えばジエチレングリコール又はモノエチレングリコールを添加してもよい。好ましくは、化合物(a2-I)及び(a2-II)以外に、化合物(a2-I)及び(a2-II)の総質量に基づいて、100質量%未満、好ましくは50質量%未満のさらなる化合物は、ビスマス触媒(a2)の製造の間に、ビスマスカルボキシレート(a2-I)とアミン化合物(a2-II)との混合物に添加される;特に、ビスマス触媒(a2)は、ポリオール成分(A)を製造する前に、したがって脂肪酸をベースとするポリオール(a1)を添加する前に製造される。
【0033】
使用されるアミン化合物(a2-II)は、少なくとも1個の第3級窒素原子及び少なくとも1個のイソシアネート反応性水素原子を有する少なくとも1種のアミン化合物であり得る。少なくとも1個の第3級窒素原子を有するアミン化合物は、好ましくは500~1200mg KOH/gのヒドロキシル価、及び少なくとも3、好ましくは3~8、特に好ましくは3~6のイソシアネート官能価を有する。すなわち、化合物(a2)は、少なくとも3個、好ましくは3~8個、特に好ましくは3~6個のイソシアネート基に対して反応性である水素原子を有する。好ましくは、化合物(a2-II)は、アミン又は高官能価のアミン、例えばジアミン又はトリアミンのアルコキシル化、好ましくはエトキシル化又はプロポキシル化により得られる。使用される出発化合物は、例えば、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、アニリン、トルイジン、トルエンジアミン、ナフチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4’-メチレンジアニリン、プロパン-1,3-ジアミン、ヘキサン-1,6-ジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニア又はエチレンジアミン、又はそれらの混合物であり得る。ここでは、出発分子は、平均公称官能価が得られるような量で選択され、使用される。本発明における公称官能価は、出発分子の官能価及び割合によってのみ与えられる官能価と見なされる。例えば副反応による官能価のあらゆる低下は考慮されない。
【0034】
アミン化合物(a2-II)は、好ましくは600~1100mg KOH/g、特に好ましくは650~950mg KOG/gのヒドロキシル価を有する。特に好ましくは、使用される少なくとも1個の第3級窒素原子を有するアミン化合物は、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン又はトリイソプロパノールアミンである。1つの特に好ましい実施態様において、成分(a2)は、少なくとも1個の第3級窒素原子を有する1種のアミン化合物、特にN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン又はトリイソプロパノールアミンのみを含む。
【0035】
1つの好ましい実施態様において、本発明によるポリウレタンカプセル化化合物の製造において、ポリウレタン反応の触媒として知られている有機スズ化合物を使用しない。より好ましくは、有機ビスマス触媒のみを金属触媒として使用する。1つの非常に特に好ましい実施態様において、使用されるポリウレタン触媒は、ビスマス触媒(a2)のみである。
【0036】
この種のビスマス触媒は、例えばWO2016/114876で、水発泡ポリウレタンフォームの触媒として開示されており、Bicat(登録商標)8840及びBicat(登録商標)8842としてShepherdから市販されている。
【0037】
成分(a1)及び(a2)以外に、さらなる化合物、例えばさらなるポリオール(a3)はポリオール成分(A)中に存在してもよい。ここでは、ポリウレタン化学において知られており、かつ、成分(a1)の定義に該当しない全てのポリオールを使用することができる。1つの好ましい実施態様において、これらは、任意の第3級窒素原子を有しない。特に好ましくは、ポリオール成分(A)は、2~8の官能価及び600~1350mg KOH/gのヒドロキシル価を有する、少なくとも1種の、少なくとも二官能のポリオール(a3)を含む。これらのポリオール(a3)は、二官能又はより高い官能価の出発分子、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、糖類誘導体、例えばスクロース、ヘキシトール誘導体、例えばソルビトール、及びまた他の二価又は多価アルコール、又はそれらの混合物のアルコキシル化、好ましくはエトキシル化又はプロポキシル化により得ることができる。ここでは、出発分子は、平均公称官能価が得られるような量で選択され、使用される。本発明における公称官能価は、出発分子の官能価及び割合によってのみ与えられる官能価と見なされる。例えば副反応による官能価のあらゆる低下は考慮されない。
【0038】
本発明の1つのさらなる実施態様において、化合物a2-IIは、さらなる成分として系に添加することもできる。しかしながら、好ましくは、化合物a2-IIは、さらなるポリオールとしてポリオール成分(A)に添加されない。
【0039】
好ましくは、成分(a1)~(a3)は、いずれの場合にも成分(a1)~(a3)の総質量に基づいて、脂肪酸をベースとするポリオール(a1)の割合が60~99質量%、好ましくは75~98質量%、特に好ましくは90~96質量%であり、ビスマス触媒(a2)の割合が0.001~2.0質量%、好ましくは0.001~1.5質量%、より好ましくは0.01~0.8質量%、特に好ましくは0.02~0.4質量%であり、ポリオール(a3)の割合が0~25質量%、好ましくは0.5~10質量%、特に好ましくは1.0~5質量%であるような量で使用される。特に好ましくは、ポリオール成分(A)は、成分(a1)~(a3)以外に、いずれの場合にも成分(a1)~(a3)の総質量に基づいて、20質量%未満、特に好ましくは10質量%未満、特に5質量%未満のさらなる化合物を含む。非常に特に好ましい実施態様において、ポリオール成分(A)は、成分(a1)~(a3)以外のさらなる化合物を含まない。
【0040】
使用されるイソシアネート成分(B)は、ポリウレタン化学において知られている任意の芳香族ジイソシアネート及びより高い官能価のイソシアネートであってもよく、好ましくは、本発明によるポリウレタンカプセル化化合物を製造するためのイソシアネートプレポリマーを含む。このようなイソシアネートプレポリマーは、ジイソシアネート及びより高い官能価のイソシアネート(b1)を、イソシアネート反応性基を有する化合物(b2)、好ましくはジオールと反応させることにより得られ、ここで、過剰のイソシアネートを使用する。
【0041】
使用されるイソシアネート成分b1)は、通常の芳香族ジ-及び/又はポリイソシアネート、又はそれらの混合物である。ここでは、本発明における芳香族イソシアネートは、イソシアネート基が芳香族系の炭素原子に直接結合しているイソシアネートである。ジイソシアネート、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)は、特に適する。ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIとも称される)が好ましい。MDIを使用する場合、全ての二環式異性体(2,2’;2,4’及び4,4’)は、任意にジフェニルメタンジイソシアネートのより高い多環同族体との混合物で使用することができる。
【0042】
さらに、イソシアネート成分b1)は、例えば、ウレトジオン、カルバメート、イソシアヌレート、カルボジイミド、アロファネート基の組み込みにより、修飾の形態で存在してもよい。好ましくは、成分b1)は、2~10質量%のカルボジイミド修飾イソシアネートを含む。ここでは、カルボジイミド修飾4,4’-MDIが特に好ましい。非常に特に好ましくは、イソシアネート成分b1)は、3~7質量%のカルボジイミド修飾4,4’-MDIを含む。カルボジイミド修飾イソシアネートの質量%で特定された数値は、10質量%のカルボジイミドを含むカルボジイミド修飾イソシアネートに関する。異なるカルボジイミド含有量の場合には、当業者はそれに応じて特定の値を変換すべきである。
【0043】
使用されるジオール成分b2)は、1.5~2.5のOH官能価を有する有機ポリヒドロキシ化合物である。好ましくは、OH官能価は1.8~2.2の範囲にある;特に好ましくは、2のOH官能価を有するジオール化合物を使用する。特に、アルコキシル化ジオール化合物は、ジオール成分b2)として好ましい。プロピレングリコールは、ジオール成分b2)として特に好ましい。
【0044】
好適なプロピレングリコールには、(モノ)プロピレングリコール及びジプロピレングリコール、及びまたオリゴ-及びポリプロピレングリコールが含まれ、後者がジオール化合物から出発するプロポキシル化により製造されてもよい。
【0045】
修飾イソシアネート(B)は、好ましくは12~30質量%、特に好ましくは18~27質量%、特に20~25質量%のNCO含有量を有する。さらに、本発明によるポリウレタンカプセル化化合物の製造において、助剤及び/又は添加剤、例えば、セル調整剤、分離剤、顔料、難燃剤、強化剤、例えばガラス繊維、界面活性化合物、及び/又は酸化、熱、加水分解又は微生物による分解又は老化に対する安定剤を使用してもよい。好ましくは、これらはポリオール成分(A)に添加される。
【0046】
本発明によるポリウレタンカプセル化化合物への変換は好ましくは、発泡剤を添加せずに行われる。このようにして、本発明によるポリウレタンはコンパクトなポリウレタンである。しかしながら、この場合、使用されるポリオール(a)は、少量の残留水を含むことができる。該残留水の含有量は、使用される成分(A)の総質量に基づいて、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.3質量%未満、特に好ましくは0.05質量%未満である。本発明の1つのさらなる実施態様において、通常の水捕捉剤もポリオール成分(A)に添加される。これらを添加する場合、これらの割合は、成分(A)の総質量に基づいて、20質量%未満、好ましくは10質量%未満、非常に特に好ましくは5質量%未満である。しかしながら、特に好ましくは、水捕捉剤を使用しない。
【0047】
また、供給原料は好ましくは、得られるポリウレタンカプセル化化合物が過熱蒸気によって滅菌することができ、かつ、細胞毒性がないように選択される。これは本質的に、原料がポリウレタンポリマー格子(lattice)に組み込まれるか、又はポリマーから移動できなくなるように構造化されていること、及び/又は固体ポリマーが加水分解に対して非常に安定しているため、細胞毒性のある低分子量の分解生成物を形成することができないことをもたらす。
【0048】
本発明によるポリウレタンの製造において、一般的には、成分(a)及び(b)は、NCO基と反応性水素原子の合計との当量比が、1:0.8~1:1.25、好ましくは1:0.9~1:1.15であるような量で反応される。ここでは、1:1の比は100のNCO指数に対応する。
【0049】
典型的には、出発成分は、混合され、0℃~100℃、好ましくは15℃~70℃の温度で反応される。従来のPUR加工機を用いて、混合を行うことができる。1つの好ましい実施態様において、混合は、低圧機器又は高圧機器によって行われる。次に、カプセル化化合物は、例えば20~150℃、好ましくは40~100℃の温度で、注型されて、硬化に付される。
【0050】
注型は、最初に自由流動性のカプセル化化合物に、硬化後にそれが有する形態を与える任意の手段と理解されるべきである。注型は特に、成形体中に導入するか、又は成形体上に適用することと理解されるべきである。このような成形体は、例えば、面(surface)、フレーム、少なくとも1つの開口を有する容器、又は少なくとも1つのくぼみを有する鋳型であってもよい。カプセル化化合物は、原則として、成形体と接触しているままであるか、又は成形体から分離することができる。好ましくは、カプセル化化合物は、硬化が行われた後に鋳型から分離されないが、それと一緒にユニットを形成する。
【0051】
本発明によるポリウレタンカプセル化化合物は、カプセル化フィルター要素の製造に使用される。この目的を達成するために、中空繊維の束は、本発明によるポリウレタンカプセル化化合物中にその端部で埋め込まれている。このようなフィルター要素は、例えば飲料水の処理又は浄化において水フィルターとして、又は医療技術分野において透析フィルター要素として使用することができる。
【0052】
本発明によるカプセル化化合物は、良好な生体適合性、及び物質、特に有毒物質の低い放出、迅速で均一な硬化、及び良好な滅菌性を特徴とする。
【0053】
以下、実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例】
【0054】
使用した原料
ポリ1:Alberdingk BoleyからのDABヒマシ油
ポリ2:トリメチロールプロパン及びプロピレンオキシドをベースとし、935mg KOH/gのOH価を有するポリエーテルオール
ポリ3:トリメチロールプロパン及びプロピレンオキシドをベースとし、160mg KOH/gのOH価を有するポリエーテルオール
ポリ4:240mg KOH/gのOH価を有するオレオケミカル(油脂化学の)ポリエステル(Sovermol 819)
ポリ5:グリセロール及びプロピレンオキシドをベースとし、805mg KOH/gのOH価を有するポリエーテルオール
ポリ6:トリイソプロパノールアミン
ポリ7:N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン
CE1:オキシジプロパノール
CE2:2-メチル-1,3-プロパンジオール
CE3:モノエチレングリコール
ISO1:MDI、ジプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールをベースとし、23質量%のNCO含有量を有するイソシアネートプレポリマー
ISO2:MDI、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール及びヒマシ油をベースとし、20.6質量%のNCO含有量を有するイソシアネートプレポリマー
触媒1:AkcrosからのTinstab OTS 16スズ触媒
触媒2:Coscat 83ビスマス触媒
触媒3:ShepherdからのBicat 8118Mビスマス触媒
触媒4:UmicoreからのBi 2010Lビスマス触媒
触媒5:ビスマスネオデカノエート及びN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンから製造される、ShepherdからのBicat 8840ビスマス触媒
触媒6:ビスマスネオデカノエート及びN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミンから製造される、ShepherdからのBicat 8842ビスマス触媒。
【0055】
ポリオール混合物の貯蔵安定性の決定において、ポリオール及び触媒を表1~3に示されているように混合し、ポリオール成分を得た;特に明記しない限り、表における全ての数値は質量部に対応する。得られたポリオール成分を、示されているように、室温で、密閉容器中に空気を排除して貯蔵した。試験前に、混合物を均質化し、その後に脱気した。系が安定できるように、ポリオール混合物を調製してから24時間後に、開始の反応性を決定するための最初の測定を行った。その後、様々な間隔でゲル化時間を決定した。
【0056】
ここでは、以下のようにゲル化時間を決定した。105のイソシアネート指数での所要の量のイソシアネートを、対応する量のポリオール混合物に添加した。ここでは、100gの反応混合物を得るように、イソシアネート成分及びポリオール成分の量を選択した。Haunschild製のSpeedmixerTMによって、SpeedmixerTM PP130コップ中で、25℃で、1800rpmで反応混合物を30秒混合し、同時にSHYODU Gel Timerで測定を開始した。30秒の混合時間の後、PP130コップをGel Timerの下に置き、ゲル化時間を決定した。ここでは、反応混合物の粘度が、一定の温度で、所要の攪拌力がShyodu Gel Timerによって提供される攪拌力を超える程度まで増加する時間として、ゲル化時間を決定する。
【0057】
以下の実施例は、本発明による組成物の効果を説明することを目的とする。
【0058】
【0059】
比較例C1~C4から明らかであるように、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの使用は、オープンタイムの短縮、したがって反応性の増大をもたらす。しかしながら、迅速なサイクルタイムは、高濃度のN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンでのみ達成することができる。しかしながら、これは、系が硬度の明らかな増大を示し、したがって系の切断性が低下するという欠点を有する。
【0060】
【0061】
比較例C5&C11から分かるように、コンパクトなポリウレタン系にスズ触媒を使用することは、系にオレオケミカルポリオールを使用するか否かにかかわらず、安定な反応性を有する貯蔵安定性の混合物をもたらす。実施例C7及びC9は、ビスマス触媒が、任意のオレオケミカルポリオールを含まないコンパクトポリウレタン系において、スズ触媒の適切な代替物として使用することができることを明確に示している。ここでは、系の反応性も実質的に一定のままである。比較例C6、C8&C10は、脂肪酸ポリオールを含む系の反応性が時間と共に大きく低下することができること、及びビスマスカルボキシレートがこのような系においてスズ触媒の適切な代替物として使用することができないことを示す。
【0062】
【0063】
実施例E1~E4は、ビスマスカルボキシレート及びアルカノールアミンをベースとする触媒の使用により、オレオケミカルポリオールを有する貯蔵安定性の混合物を得ることができることを示す。
【0064】
N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン及びN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン以外に、他のアルカノールアミンも安定なビスマス触媒の製造に使用することができる。これは、以下の実施例により説明することができる。
【0065】
実施例E5:
最初に、温度計、攪拌器、コンデンサー及び窒素供給を備える250mlの四ツ口フラスコ中に、75.00gの触媒3を入れ、60℃に加熱した。その後、攪拌しながら、44.23gの溶融したポリ6を該触媒にゆっくり添加した。添加が終わった後、混合物をさらに15分攪拌し、30gのCE3を添加した。その後、混合物をデカントして、さらなる実験に使用した。追加した実施例6が示しているように、これらの反応生成物は同様に、良好な貯蔵安定性及び一定の反応性を示した。
【0066】