(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】オルガノシリコーンエマルジョン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20221011BHJP
C08L 83/12 20060101ALI20221011BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20221011BHJP
C08G 65/336 20060101ALI20221011BHJP
C08J 3/03 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
C08L83/06
C08L83/12
C08K5/00
C08G65/336
C08J3/03 CFH
(21)【出願番号】P 2021093566
(22)【出願日】2021-06-03
(62)【分割の表示】P 2017111487の分割
【原出願日】2017-06-06
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】安藤 裕司
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-134846(JP,A)
【文献】特開2004-217816(JP,A)
【文献】特開2003-024707(JP,A)
【文献】特開2000-256127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08K 5/00
C08G 65/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃での粘度500Pa・s以上を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケート:1~50質量部、
(C)両末端ポリオキシアルキレン変性
直鎖状オルガノポリシロキサン:1~50質量部
(D)ノニオン系界面活性剤:1~50質量部、及び
(E)水:10~1,000質量部
を含有してなるオルガノシリコーンエマルジョン組成物。
【請求項2】
(C)成分が下記一般式(VI)で示される、請求項1記載のオルガノシリコーンエマルジョン組成物
【化1】
〔式中、R
1は互いに独立に、炭素数1~20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は水酸基であり、mは0~2000の整数であり、Pは下記一般式(VII)で表される基であり、
-X’-(OC
2H
4)
a’(OC
3H
6)
b’(OC
4H
8)
c’-O-Y’
(VII)
(式中、X’は単結合又は炭素数1~10のアルキレン基であり、a’は1~100の整数であり、b’は0~50の整数であり、c’は0~30の整数であり、Y’は水素原子、炭素数1~20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、又は-COR’’であり、R’’は、炭素数1~10のアルキル基であり、式(VII)における各括弧内にあるオキシアルキレンの配列はランダムでもブロック単位を構成していても良い)〕。
【請求項3】
(A)成分が、下記一般式(I)で示されるオルガノポリシロキサンである、請求項1又は2記載のオルガノシリコーンエマルジョン組成物
【化2】
(式中、Rは互いに独立に、炭素数1~20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は水酸基であり、nは500~10,000の整数である)。
【請求項4】
(B)成分におけるオルガノシロキシシリケートが、[SiO
4/2]単位及び[R’
3SiO
1/2]単位を有し、全シロキサン単位の合計個数に対する[SiO
4/2]単位の個数割合が25~75%であり、[R’
3SiO
1/2]単位の個数割合が23~75%であり、前記[SiO
4/2]単位に結合する[O
1/2R
2]で示される構造を少なくとも1つ有する請求項1~3のいずれか1項記載のオルガノシリコーンエマルジョン組成物、
〔前記において、[O
1/2R
2]は、下記一般式(II)で示されXが単結合であるポリエーテル含有基、水酸基、又は炭素数1~6のアルコキシ基であり、R’は互いに独立に、炭素数1~12の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は下記一般式(II)で表されるポリエーテル含有基であり、
-X-(OC
2H
4)
a(OC
3H
6)
b(OC
4H
8)
c-O-Y (II)
式(II)中、Xは単結合又は炭素数2~12の非置換もしくは置換の2価炭化水素基であり、Yは水素原子、炭素数1~20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、又は-COR’’であり、R’’は、炭素数1~10のアルキル基であり、aは1~50の整数であり、bは0~30の整数であり、cは0~30の整数であり、式(II)における各括弧内にあるオキシアルキレンの配列はランダムでもブロック単位を構成していてもよい)、但し、前記ポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケートは式(II)で表されるポリエーテル含有基を少なくとも1つ有する〕。
【請求項5】
(B)ポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケートが、ケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有するオルガノシロキシシリケートとヒドロキシ基含有ポリアルキレングリコールとの縮合反応生成物である、請求項1~4のいずれか1項記載のオルガノシリコーンエマルジョン組成物。
【請求項6】
前記ヒドロキシ基含有ポリアルキレングリコールが下記一般式(III)で表される、請求項5記載のオルガノシリコーンエマルジョン組成物
H-(OC
2H
4)
a(OC
3H
6)
b(OC
4H
8)
c-O-Y (III)
(式中、Y、a、b、及びcは上記の通りであり、式(III)における各括弧内にあるオキシアルキレンの配列はランダムでもブロック単位を構成していても良い)。
【請求項7】
前記ヒドロキシ基含有ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールモノアルキルエーテルである、請求項6記載のオルガノシリコーンエマルジョン組成物。
【請求項8】
(B)ポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケートが、Si-H基含有オルガノシロキシシリケートと不飽和基含有ポリアルキレングリコールとの付加反応生成物である、請求項1~4のいずれか1項記載のオルガノシリコーンエマルジョン組成物。
【請求項9】
前記不飽和基含有ポリアルキレングリコールが下記一般式(IV)で表される、請求項8記載のオルガノシリコーンエマルジョン組成物
CH
2=CH-Z-(OC
2H
4)
a(OC
3H
6)
b(OC
4H
8)
c-O-Y
(IV)
(式中、Y、a、b、及びcは上記の通りであり、Zは単結合又は炭素数1~10の非置換もしくは置換の2価炭化水素基であり、式(IV)における各括弧内にあるオキシアルキレンの配列は、ランダムでも、ブロック単位を構成していても良い)。
【請求項10】
前記式(VII)において、X’は単結合、プロピレン基、又はブチレン基であり、Y’は、メチル基、ブチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンダデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、-COMe、-COEt、-COnPr、-COiPr、及び-COnBuから選ばれる、請求項2記載のオルガノシリコーンエマルジョン組成物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項記載のオルガノシリコーンエマルジョン組成物と
アルコールとの混合物。
【請求項12】
前記(A)成分、(B)成分、(D)成分及び(E)成分を含むエマルジョン組成物に前記(C)成分を配合することにより、請求項1~10のいずれか1項記載のオルガノシリコーンエマルジョン組成物のアルコールに対する安定性を向上する方法。
【請求項13】
前記アルコールがメタノール、エタノール、1-プロパノール、IPA、及びn-ブタノールから選ばれる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項記載のオルガノシリコーンエマルジョン組成物の製造方法であり、前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(D)成分を混合する工程(i)及び前記工程(i)の後に前記(E)水を添加し混合する工程(ii)を含み、さらに前記工程(ii)の前又は後に前記(C)成分を添加し混合する工程(iii)を含み、該工程(iii)によりアルコールに安定な前記オルガノシリコーンエマルジョン組成物を提供する、前記オルガノシリコーンエマルジョン組成物の製造方法。
【請求項15】
前記アルコールがメタノール、エタノール、1-プロパノール、IPA、及びn-ブタノールから選ばれる、請求項14記載の、オルガノシリコーンエマルジョン組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノシリコーンエマルジョン組成物、特には水溶性溶剤に対する安定性良好な高粘度オルガノポリシロキサンのエマルジョン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサンは、基材に処理することで平滑性や撥水性を付与できることから繊維処理剤、離型剤、撥水剤、化粧料等に使用されている。中でも高粘度のオルガノシロキサンは平滑性の付与効果に優れている。近年の環境意識の高まりから、水系の処理剤を使用する傾向が増えており、安定性良好な高粘度オルガノポリシロキサンのエマルジョンの要求も高くなっている。さらに、水系の処理剤の組成中に水溶性溶剤が含まれる場合があり、そのような組成中においても、安定性良好な高粘度オルガノポリシロキサンのエマルジョンが求められている。安定性良好な高粘度のポリシロキサンエマルジョンを得る方法として、特許文献1~3に記載の製造方法が知られている。しかし特許文献1~3に記載の方法で得られるエマルジョンは水溶性溶剤に対する安定性が良好でない。また、いずれの製造方法も特殊な乳化方法や特殊な乳化装置を必要とし、一般的でない。特許文献4には、高粘度オルガノポリシロキサンとポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケートとを含むオルガノシリコーンエマルジョン組成物がエマルジョンの安定性を向上すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-32788号公報
【文献】特開平7-70327号公報
【文献】特開昭63-125530号公報
【文献】特開2015-134846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献4に記載のエマルジョンは水溶性溶剤、特にはアルコールに対する安定性が十分でない。本発明は当該事情に鑑みなされたもので、水溶性溶剤中で、特にはアルコール中で安定性良好なオルガノシリコーンエマルジョン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行なった結果、高粘度オルガノポリシロキサンとポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケートとを含むオルガノシリコーンエマルジョン組成物に、更に両末端ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンを含有させることで、得られるエマルジョンは水溶性溶剤中で、特にはアルコール中での安定性が向上することを知見し、本発明をなすに至った。
【0006】
すなわち本発明は、下記(A)~(E)成分を含むオルガノシリコーンエマルジョン組成物を提供する。
(A)25℃での粘度500Pa・s以上を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケート:1~50質量部、
(C)両末端ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン:1~50質量部
(D)ノニオン系界面活性剤:1~50質量部、及び
(E)水:10~1,000質量部
を含有してなるオルガノシリコーンエマルジョン組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のオルガノシリコーンエマルジョン組成物は、水溶性溶剤中で安定性良好なエマルジョンを与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のオルガノシリコーンエマルジョン組成物について詳述する。
【0009】
(A)高粘度オルガノポリシロキサン
(A)成分は25℃での粘度500Pa・s以上を有するオルガノポリシロキサンである。該オルガノポリシロキサンの粘度は、好ましくは1,000Pa・s以上である。25℃での粘度が上記上限値未満では、オルガノシリコーンエマルジョン組成物を表面コーティング剤、及び離型剤として使用する場合に、十分な特性を与えられない。またオルガノポリシロキサンの粘度の上限値は、30質量%トルエン溶液としての25℃での粘度が200Pa・s以下、特に100Pa・s以下であることが好ましい。なお、本発明において粘度は回転粘度計により測定することができる(以下同じ)。該オルガノポリシロキサンは上記粘度を有するものであればよく、直鎖状、分岐状、環状、又は三次元網目状のいずれの構造を有するものであってもよい。好ましくは直鎖状オルガノポリシロキサンである。
【0010】
該オルガノポリシロキサンは、好ましくは下記一般式(I)で表される。
【化1】
式(I)中、Rは互いに独立に、炭素数1~20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は水酸基であり、nは500~10,000の整数である。但し、nは該オルガノポリシロキサンが25℃での粘度500Pa・s以上を有する値である。
【0011】
Rは炭素数1~20、好ましくは1~6の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、炭素数1~6、好ましくは1~4のアルコキシ基、又は水酸基である。非置換もしくは置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などのアルケニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアラルキル基等、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基などで置換されたもの、例えば、-CF3、-CH2CF3、-C2H4CF3-、-C3H6CF3、-C4H8CF3、-C2F5、-C3F7、-C4F9、-C5F11、-C6F13、-C7F15、-C8F17、-C9F19などのフッ素置換アルキル基、-C3H6NH2、-C3H6NHC2H4NH2などのアミノ置換アルキル基、-C3H6OCH2HCH(O)CH2などのエポキシ置換アルキル基、-C3H6SHなどのメルカプト置換アルキル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基が挙げられる。中でも、Rの合計個数に対する90%以上がメチル基であることが好ましい。なお、水酸基やアルコキシ基であるRは、分子鎖の末端、好ましくは両末端に存在することが好ましい。
【0012】
(B)ポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケート
(B)成分はポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケートである。該成分はエマルジョンの安定性を向上させるための添加剤である。オルガノシロキシシリケートとは、[SiO2]で表されるシリケート(Q単位シロキサン)と他のオルガノシロキサン単位([R’3SiO1/2]で表されるM単位、[R’SiO3/2]で表されるT単位、及び[R’2SiO2/2]で表されるD単位から選ばれる1以上)で構成されるポリシロキサンであり、特にはQ単位とM単位とを主成分として構成されるポリシロキサンである。本発明においてポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケートとは、該オルガノシロキシシリケートにある少なくとも1のケイ素原子にポリエーテル基が結合している構造を有する。
【0013】
本発明におけるオルガノシロキシシリケートは[SiO4/2]単位及び[R’3SiO1/2]単位を主成分として構成されるものが好ましい。主成分とは、オルガノシロキシシリケートに含まれる全シロキサン単位(即ち、Q単位、M単位、T単位、及びD単位)の合計個数に対する[SiO4/2]単位の個数割合が25~75%であり、より好ましくは30~60%であり、[R’3SiO1/2]単位の個数割合が23~75%であり、より好ましくは25~60%である化合物である。また[SiO4/2]単位に対する[R’3SiO1/2]単位のモル比([R’3SiO1/2]/[SiO4/2])は0.3~3であり、特に0.4~2であることが好ましい。この比が小さすぎると乳化安定性が低下する場合があり、大きすぎても乳化安定性が低下する場合がある。
【0014】
また[R’2SiO2/2]で表されるD単位や[R’SiO3/2]で表されるT単位を更に有していても良い。但し、D単位及びT単位の含有量は、ポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケートの合計質量に対するD単位及びT単位の合計質量が0~20質量%、好ましくは0~10質量%の範囲であるのがよい。
【0015】
本発明のポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケートは前記[SiO4/2]単位に結合する[O1/2R2]で示される構造を少なくとも1つ有する。[O1/2R2]は、下記一般式(II)で示されXが単結合であるポリエーテル含有基、水酸基、又は炭素数1~6のアルコキシ基である。また、上記M、T、及びD単位において、R’は、互いに独立に、炭素数1~12、好ましくは1~10、更に好ましくは1~6である、非置換もしくは置換の1価炭化水素基、又は炭素数1~6、好ましくは1~4のアルコキシ基、又は下記一般式(II)で表されるポリエーテル含有基である。本願ポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケートは下記式(II)で表されるポリエーテル含有基を少なくとも1つ有する。
-X-(OC2H4)a(OC3H6)b(OC4H8)c-O-Y (II)
(式(II)中、Xは単結合又は炭素数2~12の非置換もしくは置換の2価炭化水素基であり、Yは水素原子、炭素数1~20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、又は-COR’’で示される基であり、R’’は、炭素数1~10、好ましくは1~6のアルキル基である。aは1~50の整数であり、bは0~30の整数であり、cは0~30の整数であり、式(II)における各括弧内にあるオキシアルキレンの配列はランダムでもブロック単位を構成していても良い)
【0016】
上記式(II)中、Xは単結合又は炭素数2~12の非置換もしくは置換の2価炭化水素基である。2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、及びヘキサメチレン基等のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも単結合、プロピレン基、又はブチレン基が好ましい。
【0017】
上記式(II)中、Yは水素原子、炭素数1~20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、又は-COR’’であり、R’’は、炭素数1~10、好ましくは1~6のアルキル基である。炭素数1~20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などのアルケニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアラルキル基等や、これらの基の水素原子の一部が酸素原子で置換された、例えばアセチル基、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられる。中でもYは、水素原子、メチル基、ブチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンダデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、及びアセチル基が好ましい。
【0018】
aは1~50、好ましくは3~30の整数であり、bは0~30、好ましくは0~20の整数であり、cは0~30、好ましくは0~20の整数である。
【0019】
R’は、互いに独立に、炭素数1~12、好ましくは1~10、更に好ましくは1~6である、非置換もしくは置換の1価炭化水素基、又は炭素数1~6、好ましくは1~4のアルコキシ基、又は上記一般式(II)で表されるポリエーテル含有基である。非置換もしくは置換の1価炭化水素基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などのアルケニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアラルキル基等や、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などの1価炭化水素基が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基などが挙げられる。中でもメチル基が好ましい。
【0020】
上記式(II)で表される基としては、-(OC2H4)a-O-C10H21、-(OC2H4)a-O-C11H23、-(OC2H4)a-O-C12H25、-(OC2H4)a-O-C14H29、-(OC2H4)a-O-C16H33、-(OC2H4)a-O-C18H37、-(OC2H4)a(OC3H6)b-O-C10H21、-(OC2H4)a(OC3H6)b-O-C11H23、-(OC2H4)a(OC3H6)b-O-C12H25、-(OC2H4)a(OC3H6)b-O-C14H29、-(OC2H4)a(OC3H6)b-O-C16H33、-(OC2H4)a(OC3H6)b-O-C18H37、-(OC2H4)a-OC6H4-C8H17、-(OC2H4)a-OC6H4-C9H19、-C2H4-(OC2H4)a-O-H、-C2H4-(OC2H4)a-O-CH3、-C2H4-(OC2H4)a-O-C4H9、-C2H4-(OC2H4)a-O-COCH3、-C3H6-(OC2H4)a-O-H、-C3H6-(OC2H4)a-O-CH3、-C3H6-(OC2H4)a-O-C4H9、-C3H6-(OC2H4)a-O-COCH3、-C4H8-(OC2H4)a-O-H、-C4H8-(OC2H4)a-O-CH3、-C4H8-(OC2H4)a-O-C4H9、及び-C4H8-(OC2H4)a-O-COCH3(a及びbは上記の通り)などが挙げられる。中でも、-(OC2H4)a-O-C10H21、-(OC2H4)a-O-C11H23、-(OC2H4)a-O-C12H25、-(OC2H4)a-O-C14H29、-(OC2H4)a-O-C16H33、及び-(OC2H4)a-O-C18H37などが好ましい。
【0021】
(B)成分は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0022】
(B)成分中のポリエーテル基の含有率は、ポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケートの全質量に対して、好ましくは10~80質量%であり、より好ましくは15~60質量%である。ポリエーテル基の含有率がこの範囲内にあると、エマルジョンの安定性がより向上するため好ましい。
【0023】
(B)成分は25℃における粘度0.1~1,000Pa・sを有することが好ましく、0.2~500Pa・sを有することがより好ましい。
【0024】
本発明の組成物における(B)成分の量は(A)成分100質量部に対して1~50質量部であり、好ましくは3~40質量部であり、更に好ましくは5~30質量部である。(B)成分の量が上記範囲内にあることにより安定性が良好なエマルジョンが得られる。
【0025】
(B)ポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケートは公知の方法に従い製造することができる。例えば、ケイ素原子に結合するヒドロキシル基(以下、シラノール基という)を少なくとも1つ有するオルガノシロキシシリケートと、ヒドロキシ基含有ポリアルキレングリコールとを縮合反応させる方法、又は、Si-H基含有オルガノシロキシシリケートと不飽和基含有ポリアルキレングリコールとを付加反応させる方法が挙げられる。中でも、シラノール基含有(トリ又はジ)メチルシロキシシリケートとヒドロキシ基含有ポリアルキレングリコールとを縮合反応させる方法、又はSi-H基含有メチルシロキシシリケートと不飽和基含有ポリアルキレングリコールとを付加反応させる方法により製造するのがより好ましい。また、シラノール基含有トリメチルシロキシシリケートとポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとを縮合反応させたものが更に好ましい。
【0026】
オルガノシロキシシリケートとは、例えば、トリメチルシロキシシリケート、トリエチルシロキシシリケート、トリメチルシロキシジメチルジシロキシシリケート等が挙げられる。中でもトリメチルシロキシシリケート、トリメチルシロキシジメチルジシロキシシリケートが好ましい。シラノール基を有するオルガノシロキシシリケートとは、例えば、これらオルガノシロキシシリケートのうちQ単位[SiO4/2]の酸素原子の少なくとも1がヒドロキシル基になっている化合物であり、M単位[R3SiO1/2]のケイ素原子に結合する置換基(R)の少なくとも1つがヒドロキシル基に置換わっている構造を有してもよい化合物である。また、これらオルガノシロキシシリケートのうちM単位[R3SiO1/2]のケイ素原子に結合する置換基(R)の少なくとも1つがヒドロキシル基に置換わっている化合物であり、Q単位[SiO4/2]の酸素原子の少なくとも1がヒドロキシル基になっている構造を有してもよい化合物を使用することもできる。
【0027】
ヒドロキシ基含有ポリアルキレングリコールは、例えば、下記一般式(III)で表される。
H-(OC2H4)a(OC3H6)b(OC4H8)c-O-Y (III)
(式中、Y、a、b、及びcは上記の通りであり、式(III)における各括弧内にあるオキシアルキレンの配列はランダムでもブロック単位を構成していても良い)。
中でも、H-(OC2H4)a-O-C10H21、H-(OC2H4)a-O-C12H25、H-(OC2H4)a-O-C13H27、H-(OC2H4)a-O-C14H29が好ましい。これらのうち2種以上のポリアルキレングリコールをシラノール基含有オルガノシロキシシリケートと縮合反応させてもよい。
【0028】
シラノール基含有オルガノシロキシシリケートとヒドロキシ基含有ポリアルキレングリコールとの縮合反応割合は、オルガノシリケート中のシラノール基の個数に対してポリアルキレングリコール中のヒドロキシ基の個数が0.5~3倍となる量比であることが好ましい。より好ましくは0.6~2倍である。上記下限値よりも少ないと乳化安定性の向上効果が少なく、上限値より多くても反応率の面では変化ない。
【0029】
縮合反応は触媒存在下で行うのがよく、加熱することにより反応が進行する。触媒としては、スズ、亜鉛、ジルコニウム、ビスマス、鉄系化合物などがあり、詳細には、オクチル酸スズ、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジブチルスズジラウレート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸ビスマス、オクチル酸鉄、及びアセチルアセトン鉄などが挙げられる。縮合触媒の量は、シラノール基含有オルガノシリケートとヒドロキシ基含有ポリアルキレングリコールの合計質量に対して0.05~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%である。
【0030】
縮合反応条件は特に制限されるものでないが、常圧~100Pa程度の減圧下で、30~150℃にて1~300時間、特に80~120℃にて5~50時間とすることが好ましい。
【0031】
Si-H基含有オルガノシロキシシリケートは、例えば、ジメチルシロキシシリケート、ジメチルシロキシトリメチルシロキシシリケート、ジメチルシロキシジメチルジシロキシシリケート、及びジメチルシロキシトリメチルシロキシジメチルジシロキシシリケート等が挙げられ、中でもジメチルシロキシシリケートが好ましい。
【0032】
不飽和基含有ポリアルキレングリコールは、例えば、下記一般式(IV)で表される。
CH2=CH-Z-(OC2H4)a(OC3H6)b(OC4H8)c-O-Y
(IV)
(式中、Y、a、b、及びcは上記の通りであり、Zは単結合又は炭素数1~10の非置換もしくは置換の2価炭化水素基であり、式(IV)における各括弧内にあるオキシアルキレンの配列は、ランダムでも、ブロック単位を構成していても良い)。
【0033】
上記式(IV)中、Zは単結合又は炭素数1~10の非置換の2価炭化水素基である。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、及びヘキサメチレン基等のアルキレン基が挙げられる。好ましくは、単結合又は炭素数1又は9の非置換の2価炭化水素基である。
【0034】
不飽和基含有ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、及びポリエチレングリコールアルキルアリルエーテルが好ましい。
【0035】
Si-H基含有オルガノシロキシシリケートと不飽和基含有ポリアルキレングリコールとの付加反応割合は、オルガノシロキシシリケート中のSi-H基の個数に対するポリアルキレングリコール中の不飽和基の個数比が1~2となる量が好ましい。
【0036】
付加反応は触媒存在下で行うのが良い。触媒としては、塩化白金酸等の白金族金属系触媒などが挙げられる。付加反応触媒の量は、Si-H基含有オルガノシロキシシリケートと不飽和基含有ポリアルキレングリコールの合計質量に対して0.0001~0.01質量%、より好ましくは0.0003~0.003質量%である。
【0037】
付加反応条件は、特に制限されるものでなく、常圧下で、30~130℃にて1~24時間、特に60~120℃にて1~8時間とすることが好ましい。
【0038】
(C)両末端ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン
本発明の組成物は該(C)成分を上記(A)及び(B)と併せて特定範囲の量で含有することを特徴とし、これにより水溶性溶剤中でのエマルジョンの安定性を向上する。両末端ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンとは、オルガノポリシロキサンの両末端にあるケイ素原子にポリオキシアルキレン基が結合している化合物である。オルガノポリシロキサンは、直鎖状であっても、分岐を有していてもよいが、好ましくは直鎖状のオルガノポリシロキサンである。
【0039】
両末端ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは、好ましくは、下記一般式(VI)で示される。
【化2】
式中、R
1は互いに独立に、炭素数1~20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は水酸基であり、mは0~2000の整数であり、Pは下記一般式(VII)で表される基である。
-X’-(OC
2H
4)
a’(OC
3H
6)
b’(OC
4H
8)
c’-O-Y’
(VII)
上記式(VII)中、X’は単結合又は炭素数1~10、好ましくは1~6のアルキレン基であり、a’は1~100の整数であり、b’は0~50の整数であり、c’は0~30の整数であり、Y’は水素原子、又は炭素数1~20、好ましくは1~18の非置換もしくは置換の1価炭化水素基又は-COR’’であり、R’’は、炭素数1~10、好ましくは1~6のアルキル基であり、式(VII)における各括弧内にあるオキシアルキレンの配列はランダムでもブロック単位を構成していても良い。
R
1における非置換もしくは置換の1価炭化水素基及びアルコキシ基の例は、上記(A)成分の式(I)の説明にて例示した基が挙げられる。中でも、R
1の合計個数に対する90%以上がメチル基であることが好ましい。
【0040】
上記式(VII)中、X’は単結合又は炭素数1~10、好ましくは1~6のアルキレン基である。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基等が挙げられる。中でもX’は、単結合、プロピレン基、又はブチレン基が好ましい。
【0041】
Y’は水素原子、又は炭素数1~20、好ましくは1~18の非置換もしくは置換の1価炭化水素基又は-COR’’である。非置換もしくは置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などのアルケニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアラルキル基等や、これらの基の水素原子の一部が酸素原子で置換された、例えばアセチル基、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などの非置換又は置換の1価炭化水素基が挙げられる。-COR’’で示される基としては、例えば、-COMe、-COEt、-COnPr、-COiPr、及び-COnBuなどが挙げられる。中でもY’は、水素原子、メチル基、ブチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンダデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、-COMe、-COEt、-COnPr、-COiPr、又は-COnBuであるのが好ましい。
【0042】
a’は1~100、好ましくは10~60の整数、特に好ましくは15~40の整数であり、b’は0~50、好ましくは1~30の整数であり、c’は0~30、好ましくは0~20の整数である。
【0043】
上記式(VII)で表される基としては、上記(B)成分の説明で記載した式(II)で表される基の例示が挙げられる。好ましくは、-C3H6-(OC2H4)a’(OC3H6)b’-OBu、-C3H6-(OC2H4)a’-OBu、-C3H6-(OC2H4)a’(OC3H6)b’-OMe、-C3H6-(OC2H4)a’-OMe、-C3H6-(OC2H4)a’(OC3H6)b’-OH、-C3H6-(OC2H4)a’-OH、-C3H6-(OC2H4)a’(OC3H6)b’-OAc、-C3H6-(OC2H4)a’-OAcである(a’及びb’は上記の通りである)。
【0044】
mは0~2000、好ましくは20~1000、特に好ましくは40~700の整数である。
【0045】
(C)成分の量は(A)成分100質量部に対して1~50質量部であり、好ましくは3~40質量部であり、特に好ましくは6~35質量部である。(C)成分の添加量が上記下限値未満では、エマルジョンの水溶性溶剤に対する安定性が低下する。また上記上限値超えでは、組成物に与えるシリコーン特性が低下する。
【0046】
(D)ノニオン系界面活性剤
(D)成分はノニオン系界面活性剤であり、オルガノポリシロキサンとポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケートを水中へ乳化分散させるために機能する。ノニオン系界面活性剤は従来公知のものであってよく、特に制限はない。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等を挙げることができる。中でも安定性の面から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが好ましい。これらの具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルなどが挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を併用することができる。
【0047】
(D)成分の量は、(A)成分100質量部に対して1~50質量部であり、好ましくは2~40質量部、より好ましくは3~30質量部である。上記下限値未満ではエマルジョン化が困難であり、上記上限値超では組成物に与えるシリコーン特性が低下する。
【0048】
本発明のオルガノシリコーンエマルジョン組成物は(E)成分として水を含む。水の量は(A)成分100質量部に対して10~1,000質量部であり、より好ましくは30~300質量部である。
【0049】
本発明のオルガノシリコーンエマルジョン組成物の調製方法は特に制限されるものでない。(A)成分、(B)成分、及び(D)成分をプラネタリーミキサーや品川式攪拌機のような高粘度物を混合攪拌する装置を用いて均一状態に攪拌し、その後、(E)水を徐々に添加、均一攪拌することで均一なエマルジョンを得る。その後で(C)両末端ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンを添加し、均一に混合することで、本発明のオルガノシリコーンエマルジョン組成物となる。また(C)成分は(E)水を添加する前に(A)、(B)、及び(D)成分と一緒に混合しても良い。
【0050】
本発明のオルガノシリコーンエマルジョン組成物は25℃での粘度25~1,000Pa・sを有するのが好ましく、より好ましくは30~500Pa・sを有するのがよい。粘度が上記下限値未満ではエマルジョンの安定性が低下する恐れがある。上記上限値超ではエマルジョンの作業性が低下する。
【0051】
本発明のオルガノシリコーンエマルジョン組成物が有する乳化粒子は粒径0.3~3.0μmを有するのが好ましく、より好ましくは0.4~2.5μmを有するのがよい。上記下限値未満ではエマルジョンの粘度が高くなりすぎ、上記上限値超ではエマルジョンの安定性が低下する恐れがある。なお、本発明においてエマルジョンの粒径は、ホリバ製作所製粒度分布測定装置LA-920により測定した値である。
【0052】
本発明のオルガノシリコーンエマルジョン組成物は水溶性溶剤中での安定性に優れる。本発明のオルガノシリコーンエマルジョン組成物と水溶性溶剤とを混合して安定なエマルジョン混合液を与えることができる。水溶性溶剤とは水と1:1(質量比)で溶解する溶剤である。例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、IPA、及びn-ブタノール等のアルコール、アセトン及びメチルエチルケトン(MEK)等のケトン類やN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類が挙げられる。水溶性溶剤との混合割合は使用用途に応じて適宜調整されればよい。
【0053】
本発明のオルガノシリコーンエマルジョン組成物は、上述した通り、水溶性溶剤中での安定性に優れる。従って、各種基材の表面コーティング剤、離型剤、潤滑剤、つや出し剤等へ有用である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記実施例及び比較例において、粘度はBM型回転粘度計により測定した25℃における値であり、粒径はホリバ製作所製粒度分布測定装置LA-920により測定した値である。
【0055】
[合成例1]
ポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケートの合成
下記において原料であるシラノール基含有オルガノシロキシシリケートは、[(CH3)3SiO1/2]n[SiO4/2]m[O1/2H]rで表され、比率(n:m)は0.43:0.57であり、OH基量は0.08mol/100gであり、OH基はQ単位に結合している。
上記シラノール基含有オルガノシロキシシリケートの71質量%トルエン溶液5610g、HO-(C2H4O)12-C12H25とHO-(C2H4O)12-C14H29の混合物であるサンノニックSS120(三洋化成工業製)2770g、オクチル酸スズであるネオスタンU28(日東化成製)34gを攪拌機、温度計つき減圧ストリップ装置に仕込み、100℃,10mmHgでトルエンを溜去し、トルエン溜去後5時間縮合反応を行ない、淡黄色不透明のポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケート1を得た。得られた化合物は25℃での粘度40Pa・sを有し、105℃,3時間後の揮発分が0.5質量%であった。ポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケート1中のポリエーテル基の合計含有量は37%である。
【0056】
[実施例1]
(A)成分として粘度が1,000Pa・s以上の生ゴム状であり、30質量%トルエン溶液粘度が5,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン100質量部、(B)成分として上記ポリエーテル基含有オルガノシロキシシリケート1を14質量部、(D)成分としてHO-(C2H4O)12-C12H25とHO-(C2H4O)12-C14H29の混合物であるサンノニックSS120(三洋化成工業製)24質量部を2Lプラネタリーミキサーに仕込み、均一に混合した。その後、(E)水62質量部を添加し、撹拌して、乳化して、乳化粒子の粒径が1.6μmであるエマルジョンAを得た。該エマルジョンAは、粘度38Pa・sを有し均一な白色ペースト状であった。
前記混合液A200質量部に、(C)PMe2SiO-(SiMe2O)60-SiMe2Pで表される両末端ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン[式中、Pは-C3H6-(OC2H4)23(OC3H6)23-OBuである]を8.5質量部加えて、ホモディスパーで2000rpm/30min混合して、乳化粒子の粒径が1.6μmであるオルガノシリコーンエマルジョン組成物を得た。該オルガノシリコーンエマルジョン組成物は、粘度40Pa・sを有し、均一な白色ペースト状であった。該オルガノシリコーンエマルジョン組成物200質量部に対してIPAを150質量部添加して、ホモディスパーで1500rpm/1min混合して、エマルジョン混合液を得た。エマルジョン混合液は、室温保管1か月後も分離が見られず安定であった。
【0057】
[実施例2]
上記実施例1において(C)成分の量を17質量部に変更した以外、実施例1の方法を繰り返して、粒径1.6μmを有する乳化粒子を有するオルガノシリコーンエマルジョン組成物を得た。該オルガノシリコーンエマルジョン組成物は、粘度43Pa・sを有し、均一な白色ペースト状であった。実施例1と同じく該オルガノシリコーンエマルジョン組成物にIPAを加えてエマルジョン混合液を調製して安定性を評価した。該エマルジョン混合液は、室温保管1か月後も分離が見られず安定であった。
【0058】
[実施例3]
上記実施例1において(C)成分の量を35質量部に変更した以外、実施例1の方法を繰り返して、粒径が1.6μmを有する乳化粒子を有するオルガノシリコーンエマルジョン組成物を得た。該オルガノシリコーンエマルジョン組成物は、粘度46Pa・sを有し、均一な白色ペースト状であった。実施例1と同じく該オルガノシリコーンエマルジョン組成物にIPAを加えてエマルジョン混合液を調製して安定性を評価した。該エマルジョン混合液は、室温保管1か月後も分離が見られず安定であった。
【0059】
[比較例1]
上記実施例1において(C)成分を添加しないでエマルジョンを調製した。エマルジョンに実施例1と同じく該エマルジョンにIPAを加えてエマルジョン混合液を調製して安定性を評価した。該エマルジョン混合液は、室温保管1日で分離が確認された。
【0060】
[比較例2]
上記実施例1における(C)成分の代わりに上記した界面活性剤であるサンノニックSS120を8.5質量部加えて、ホモディスパーで2000rpm/30min混合して、エマルジョンを得た。得られたエマルジョンに実施例1と同じ濃度となるようIPAを150質量部添加して、エマルジョン混合液を調製し、安定性を評価した。該エマルジョン混合液は、室温3日後に分離が確認された。
【0061】
[比較例3]
上記比較例2においてサンノニックSS120の量を17質量部に変更した以外は比較例2を繰り返してエマルジョンを得た。得られたエマルジョンに実施例1と同じ濃度となるようIPAを150質量部添加して、エマルジョン混合液を調製し、安定性を評価した。該エマルジョン混合液は、室温3日後に分離が確認された。
【0062】
[比較例4]
上記比較例2においてサンノニックSS120の量を35質量部に変更した以外は比較例2を繰り返してエマルジョンを得た。得られたエマルジョンに実施例1と同じ濃度となるようIPAを150質量部添加して、エマルジョンを調製し、安定性を評価した。該エマルジョン混合液は、室温5日後に分離が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のオルガノシリコーンエマルジョン組成物は、水溶性溶剤中でも良好な保管安定性を有するため、各種基材の表面コーティング剤、離型剤、潤滑剤、つや出し剤等へ有用である。