(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】両面粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/20 20180101AFI20221012BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20221012BHJP
C09J 11/02 20060101ALI20221012BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20221012BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C09J7/20
C09J133/00
C09J11/02
C09J201/00
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2017567275
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2017046226
(87)【国際公開番号】W WO2018117262
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2016249965
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川添 雄太
(72)【発明者】
【氏名】酒井 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】下司 誠
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-213123(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098983(WO,A1)
【文献】特開2016-199619(JP,A)
【文献】特開2012-214623(JP,A)
【文献】特開2018-002772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B64C 1/00
B64D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層(I
A)、基材、粘着剤層(II
A)の層構成をこの順に有する両面粘着テープであって、
少なくとも前記粘着剤層(II
A
)に難燃剤(C)を含有し、
前記難燃剤(C)の含有量が、前記粘着剤層(I
A)及び前記粘着剤層(II
A)中の樹脂成分の合計量100質量部に対して10質量部以下であり、
前記難燃剤(C)の全質量の90%以上が、前記粘着剤層(II
A
)に含有され、
前記粘着剤層(I
A)の厚み(X
A)と前記粘着剤層(II
A)の厚み(Y
A)の比(Y
A/X
A)が2.00以上であ
り、
前記基材が単位面積当たりの重量が200g/m
2
以下であるフラットヤーンクロスを含有する基材である
両面粘着テープ。
【請求項2】
前記難燃剤(C)が、前記粘着剤層(II
A)のみに含有される、請求項
1に記載の両面粘着テープ。
【請求項3】
前記難燃剤(C)が、ハロゲンを含有しない難燃剤である、請求項1
又は2のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
【請求項4】
前記難燃剤(C)が、リン系難燃剤である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層(I
A)及び前記粘着剤層(II
A)が、アクリル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物からなる、請求項1~
4のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤組成物が、さらに架橋剤(B)を含有する、請求項
5に記載の両面粘着テープ。
【請求項7】
航空機部材固定用に用いられる、請求項1~
6のいずれか1項に記載の両面粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着テープに関し、さらに詳しくは、航空機部材を固定する用途に好適な両面粘着テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気、電子、OA機器、家電、航空機、船舶、車両などの各分野で、部材の固定用として両面粘着テープが用いられている。
【0003】
そして、近年、電子工学、半導体及び磁気体技術の研究と応用の飛躍的な進歩により、電気、電子、OA機器などの高集積化、小型化、高性能化が進み、機器内部の高温化や畜熱による発火の危険性が高くなってきており、そのような危険を防止する必要性から、機器内の各種部品及びそれらの接着用部材にも高度の難燃性が要求されるようになってきている。
【0004】
また、航空機や家電などの各分野でも、プラスチック材料の難燃化について様々な研究が盛んに行われており、それらの固定に用いられる接着材料にも、当然ながら高い難燃性が要求されるようになってきている。
【0005】
難燃性能を有する両面粘着テープとして、例えば、特許文献1では、坪量15~80g/m2のポリエステル不織布の基材シートに、粘着剤と窒素含有有機系難燃剤を含み、ハロゲン、アンチモン及びリンのいずれをも含まない難燃剤とを含有する含浸用組成物を含浸させた基材シートの両面に、さらにアクリル系粘着剤100質量部に対して、窒素含有有機系難燃剤を含み、ハロゲン、アンチモン及びリンのいずれをも含まない難燃剤20~200質量部を添加した難燃性粘着剤組成物からなる粘着剤層を設けてなる難燃性両面粘着テープが提案されている。
【0006】
また、特許文献2では、手切れ性を有する基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープにおいて、両方の粘着力に差異を設けた粘着テープが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開2004-217833号公報
【文献】日本国特開2015-143353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、本発明者らの検討によると、特許文献1に開示の両面粘着テープでは、難燃性は得られているものの、粘着性においては充分なものではなく、さらなる改良が求められる。
【0009】
また、特許文献2に開示の両面粘着テープでは、難燃剤を多量に含有しているため、難燃性が得られるものの、粘着性、特には高温高湿条件下での粘着性の点で更なる改良が求められる。即ち、難燃剤の含有量を少量にしても難燃性と粘着性のいずれにもバランスよく優れた両面粘着テープが求められている。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、難燃剤の含有量が少量若しくは難燃剤を含有しなくとも、難燃性と粘着性のいずれにもバランスよく優れた両面粘着テープを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、両面粘着テープにおいて、難燃剤の含有量が少量若しくは難燃剤を含有しなくとも、粘着剤層の厚みに差をつけ、両粘着剤層の厚みの比を一定以上に設定することにより、難燃性と粘着性のいずれにもバランスよく優れた両面粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は下記<1>~<9>に関するものである。
<1>粘着剤層(IA)、基材、粘着剤層(IIA)の層構成をこの順に有する両面粘着テープであって、前記粘着剤層(IA)及び前記粘着剤層(IIA)の少なくとも一方に難燃剤(C)を含有し、前記難燃剤(C)の含有量が、前記粘着剤層(IA)及び前記粘着剤層(IIA)中の樹脂成分の合計量100質量部に対して10質量部以下であり、前記粘着剤層(IA)の厚み(XA)と前記粘着剤層(IIA)の厚み(YA)の比(YA/XA)が2.00以上である、両面粘着テープ。
<2>粘着剤層(IB)、基材、粘着剤層(IIB)の層構成をこの順に有する両面粘着テープであって、前記粘着剤層(IB)及び前記粘着剤層(IIB)に難燃剤(C)を含有せず、前記粘着剤層(IB)の厚み(XB)と前記粘着剤層(IIB)の厚み(YB)の比(YB/XB)が2.50以上である、両面粘着テープ。
<3>前記難燃剤(C)の全質量の90%以上が、前記粘着剤層(IIA)に含有されることを特徴とする<1>に記載の両面粘着テープ。
<4>前記難燃剤(C)が、前記粘着剤層(IIA)のみに含有される、<1>又は<3>に記載の両面粘着テープ。
<5>前記難燃剤(C)が、ハロゲンを含有しない難燃剤である、<1>、<3>及び<4>のいずれか1つに記載の両面粘着テープ。
<6>前記粘着剤層(IA)及び前記粘着剤層(IIA)、又は前記粘着剤層(IB)及び前記粘着剤層(IIB)が、アクリル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物からなる、<1>~<5>のいずれか1つに記載の両面粘着テープ。
<7>前記粘着剤組成物が、さらに架橋剤(B)を含有する、<6>に記載の両面粘着テープ。
<8>前記基材が、フラットヤーンクロスを含有する基材である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の両面粘着テープ。
<9>航空機部材固定用に用いられる、<1>~<8>のいずれか1つに記載の両面粘着テープ。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、難燃剤の含有量が少量若しくは難燃剤を含有しなくとも、難燃性と粘着性のいずれにもバランスよく優れた両面粘着テープを提供することができ、該両面粘着テープは、航空機部材を固定する用途、例えば、カーペットの貼り合せ等において好適に使用できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳述するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
なお、本明細書において、「質量」は「重量」と同義である。
【0015】
本発明の第一実施形態は、粘着剤層(IA)、基材、粘着剤層(IIA)の層構成をこの順に有する両面粘着テープであって、前記粘着剤層(IA)及び前記粘着剤層(IIA)の少なくとも一方に難燃剤(C)を含有し、該難燃剤(C)の含有量が、前記粘着剤層(IA)及び前記粘着剤層(IIA)中の樹脂成分の合計量100質量部に対して10質量部以下であり、前記粘着剤層(IA)の厚み(XA)と前記粘着剤層(IIA)の厚み(YA)の比(YA/XA)が2.00以上であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第二実施形態は、粘着剤層(IB)、基材、粘着剤層(IIB)の層構成をこの順に有する両面粘着テープであって、前記粘着剤層(IB)及び前記粘着剤層(IIB)に難燃剤(C)を含有せず、前記粘着剤層(IB)の厚み(XB)と前記粘着剤層(IIB)の厚み(YB)の比(YB/XB)が2.50以上であることを特徴とする。
【0017】
[第一実施形態]
(基材)
本発明の基材としては、例えば、レーヨン布、綿布、ポリエステル布、レーヨンとポリエステルの混紡糸からなる布、不織布、フラットヤーンクロス、フラットヤーンクロスにプラスチックフィルムがラミネートされた積層フィルム等が挙げられ、これらの中でも長手方向の引張強度が高い点から、フラットヤーンクロスを含有するものが好ましい。
【0018】
フラットヤーンクロスとは、フラットヤーンと呼ばれるポリエチレンやポリプロピレンのフィルムを、短冊状にカットし延伸することにより強度を持たせた平らな糸を織って織布としたもので、この織布の縦と横に交差するフラットヤーンの交差部を熱融着により固定して目ずれしないようにしたものが用いられる。
【0019】
フラットヤーンクロスの様に織り込まれたものでない繊維で強化された基材では、織り込まれたクロスと比べて引張強度が非常に低く、それを補う為に二軸延伸ポリエステルフィルムや二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、接着剤を用いてラミネートすることにより引張強度は向上するが、幅方向へ引き裂き難くなる。また、縦糸と横糸を接着するために接着剤が必要で基材の重量が大きくなる傾向がある。
【0020】
また、本発明の両面粘着テープを、航空機部材固定用両面粘着テープとして用いる場合には、両面粘着テープの単位面積当たりの重量が、300g/m2以下であることが好ましく、基材も軽量であることが好ましい。具体的には、基材の単位面積当たりの重量が、200g/m2以下であることが好ましく、100g/m2以下であることがより好ましい。基材の単位面積当たりの重量が200g/m2以下であることで難燃性が良好となる傾向がある。
なお、基材の単位面積当たりの重量の下限値は、通常10g/m2である。
【0021】
また、フラットヤーンクロスを含有する基材の中でも、フラットヤーンクロスとプラスチックフィルムがラミネートされた基材を使用することが、安定した粘着力、剥離性が得られる点で好ましい。
【0022】
これは、プラスチックフィルムの一方の面の粘着剤が基材を抜けて他方の面の粘着剤と混合することを防いだり、一方の面の粘着剤層の添加剤、例えば架橋剤や難燃剤、可塑剤などが他方の面の粘着剤層に移行することを抑制したりする為と考えられる。また、フラットヤーンクロスとプラスチックフィルムをラミネートすることで、破断点がスムーズに伝播される為か、手切れ性も向上し、破断面の直線性が向上する。
【0023】
フラットヤーンクロスとプラスチックフィルムがラミネートされた基材は軽量であることが好ましく、プラスチックフィルムは薄膜であることが好ましく、プラスチックフィルムの厚みが10~80μmであることが好ましい。
【0024】
プラスチックフィルムはフラットヤーンクロスの片面のみラミネートされても構わないし、両面にラミネートされても構わない。フラットヤーンクロスへのフィルムのラミネート方法については、接着剤を使わず、軽量化できる点で押出ラミネートが好ましい。
【0025】
フラットヤーンクロスを含有する基材の厚みとしては、好ましくは10~200μm、より好ましくは50~170μm、さらに好ましくは60~150μmである。
かかる厚みが薄すぎると両面粘着テープの手切れ性は向上するものの、両面粘着テープ製造時にシワが混入する等の不良が増加する傾向があり、厚すぎると両面粘着テープ製造時の不良は低減するものの、切断により大きな力が必要となり手切れ性が低下する傾向がある。
【0026】
(粘着剤層)
本発明の両面粘着テープは、基材の両面に粘着剤層を配して構成される。本発明の粘着剤層は、種々の樹脂からなる粘着剤組成物を硬化させることにより得られる層である。
【0027】
かかる粘着剤組成物のベースとなる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム、イソブチレン-イソプレンゴム、アクリルゴム、アクリルニトリル-ブタジエン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン・ブロック共重合体ゴム(SIS)、スチレン-ブタジエン・ブロック共重合体ゴム(SBS)、クロロプレンゴム、ブチルゴム等の合成ゴム、再生ゴム等が挙げられる。
粘着剤組成物は、耐候性、再剥離性、耐熱性に優れ、更に粘着特性を比較的容易に調整しやすい点でアクリル系樹脂(A)を含有することが好ましい。
【0028】
なお、本明細書において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートを、アクリル系樹脂とは(メタ)アクリル系モノマーを少なくとも1種含有するモノマー成分を重合して得られる樹脂を、それぞれ意味するものとする。
【0029】
アクリル系樹脂(A)は、重合成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)を含み重合してなるものであるが、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)を主な共重合成分とし、官能基含有モノマー(a2)、必要に応じてその他の共重合性モノマー(a3)を共重合成分として共重合してなるものである。
【0030】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)としては、アルキル基の炭素数が、通常1~20、好ましくは1~12、より好ましくは1~8、さらに好ましくは4~8であり、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチルアクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、iso-ステアリルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0031】
これらの中でも、共重合性、粘着物性、取り扱いやすさ及び原料入手のしやすさの点で、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0032】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の共重合成分中における含有量としては、好ましくは10~100質量%、より好ましくは50~95質量%、さらに好ましくは70~95質量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の含有量が少なすぎると、粘着剤として使用した場合の粘着力が低下する傾向にある。
【0033】
官能基含有モノマー(a2)としては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等が挙げられ、これらの中でも、効率的に架橋反応ができる点で水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましい。
【0034】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー;ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー;その他、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸等の1級水酸基含有モノマー;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーを挙げることができる。
【0035】
これらの中でも、架橋剤との反応性に優れる点で2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0036】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN-グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられ、これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0037】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0039】
イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0040】
グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
これら官能基含有モノマー(a2)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0041】
官能基含有モノマー(a2)の共重合成分中における含有量としては、好ましくは0.01~30質量%、より好ましくは0.05~10質量%、さらに好ましくは0.1~10質量%、特に好ましくは2~5質量%であり、官能基含有モノマー(a2)の含有量が少なすぎると、凝集力が低下することにより、耐久性能が低下する傾向があり、多すぎると粘度が高くなったり、樹脂の安定性が低下したりする傾向がある。
【0042】
その他の共重合性モノマー(a3)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環構造含有(メタ)アクリレート系化合物;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、α―メチルスチレン等の1つの芳香環を含有するモノマー;ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドN-メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基またはオキシアルキレン基を含有するモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。
【0043】
これらの中でも、低極性被着体に対する粘着力が優れる点で脂環構造含有(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。
【0044】
その他の共重合性モノマー(a3)の共重合成分中における含有量としては、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下であり、その他共重合性モノマー(a3)が多すぎると所望の粘着特性が得られにくい傾向がある。
【0045】
このようにして、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)、必要に応じて官能基含有モノマー(a2)、その他の共重合性モノマー(a3)を共重合成分として共重合することによりアクリル系樹脂(A)を製造するのであるが、かかる共重合にあたっては、溶液重合で製造することが、安全に、安定的に、任意のモノマー組成でアクリル系樹脂(A)を製造できる点で好ましい。
【0046】
溶液重合では、例えば、有機溶媒中に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)、官能基含有モノマー(a2)、その他の共重合性モノマー(a3)等のモノマー成分、重合開始剤を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは50~98℃で0.1~20時間重合すればよい。
【0047】
重合開始剤としては、例えば、通常のラジカル重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
【0048】
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、通常10万~500万、好ましくは30万~150万、より好ましくは50万~90万である。重量平均分子量が小さすぎると、耐久性能が低下する傾向があり、大きすぎると製造が難しくなる傾向となる。
【0049】
アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、20以下であることが好ましく、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは7以下である。分散度が高すぎると粘着剤層の耐久性能が低下し、発泡等が発生しやすくなる傾向にある。なお、分散度の下限は、製造の限界の点から、通常1.1である。
【0050】
アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、通常-80~10℃、好ましくは-70~-10℃、より好ましくは-65~-20℃であり、ガラス転移温度が高すぎるとタックが不足する傾向があり、低すぎると耐熱性が低下する傾向がある。
【0051】
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法を用いることにより測定できる。分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。ガラス転移温度は下記のFoxの式より算出されるものである。
なお、アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものである。
【0052】
【0053】
Tg:共重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
【0054】
また、上記粘着剤組成物は、さらに架橋剤(B)を含有することが好ましく、架橋剤(B)により架橋され硬化することで粘着剤層となることが好ましい。
【0055】
架橋剤(B)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属塩系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、非アミノ樹脂系アミノ系架橋剤、尿素系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤等が挙げられ、これらの中でも好ましくは、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤である。
【0056】
架橋剤(B)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01~5質量部である。かかる含有量が少なすぎると、凝集力が低下して剪断に対して弱くなる傾向があり、多すぎると架橋反応が過剰となり、粘着力が低下する傾向がある。
【0057】
特に、架橋剤(B)がイソシアネート系架橋剤である場合には、その含有量はアクリル系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~5質量部である。
【0058】
また、架橋剤(B)がエポキシ系架橋剤である場合には、その含有量はアクリル系樹脂(A)100質量部に対して、0.01~1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01~0.5質量部である。
【0059】
かかる粘着剤層には、アクリル系樹脂(A)等のベース樹脂、架橋剤(B)に加えて、タッキファイヤー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、顔料、安定化剤、充填剤等を含有させてもよい。
【0060】
タッキファイヤーとしては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、クマロン系樹脂、石油樹脂系等が挙げられる。
ベース樹脂がアクリル系樹脂(A)である場合には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、キシレン系樹脂が好ましく、ベース樹脂がゴム系樹脂の場合には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂が好ましい。
【0061】
(難燃剤(C))
本発明の第一実施形態において、粘着剤層(IA)及び粘着剤層(IIA)の少なくとも一方に難燃剤(C)を含有する。
【0062】
本発明で用いられる難燃剤(C)は、公知一般に粘着剤の難燃剤として用いられる難燃剤を用いればよく、例えば、リン系難燃剤、金属水酸基系難燃剤、ホスフィン酸金属塩系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモンの併用、メラミンシアヌレートやトリアジン化合物等の含窒素化合物、ポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0063】
リン系難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2-ナフチルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート等の非ハロゲン系リン酸エステル;大八化学工業社製商品名「CR-733S」、「CR-741」、「PX-200」等の芳香族縮合リン酸エステル;大八化学工業社製商品名「DAIGUARD-580」、「DAIGUARD-610」「DAIGUARD-880」等の非ハロゲン縮合リン酸エステル;ポリリン酸メラミン等のリン酸アミン塩;樹脂で被覆されていないあるいはメラミン等で被覆されたポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0064】
これらの中でも、ハロゲンを含まないがリン濃度が高いため難燃性が高く、少量添加で粘着物性を低下させずに難燃性を付与できる点でポリリン酸アンモニウムが好ましく、更には加水分解を抑制し耐湿熱性に優れる点で、メラミン等で被覆されたポリリン酸アンモニウムが特に好ましい。
【0065】
金属水酸基系難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0066】
ホスフィン酸金属塩系難燃剤としては、例えば、クラリアント社製商品名「ExolitOP1230」、「ExolitOP930」等が挙げられる。
【0067】
ハロゲン系難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロデカン、ジブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、臭素化ポリスチレン、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の臭素系難燃剤;塩素化パラフィン、パークロロシクロペンタデカン等の塩素系難燃剤;トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステル;大八化学工業社製商品名「CR-504L」、「CR-570」、「DAIGUARD-540」等の含ハロゲン縮合リン酸エステル等が挙げられる。
【0068】
これらの中でも、ハロゲンを含有する難燃剤は、焼却時に有毒なハロゲンガスを発生させたり、金属を腐食させたりすることがあるので、難燃剤(C)は、ハロゲンを含有しない難燃剤であることが好ましい。
【0069】
また、難燃剤(C)は、例えばコンパウンド品(複合物、複合材料)については、単独で使用するよりも、作用機構が異なる難燃剤を併用することにより相乗効果が得られるとされているが、本発明においては、粘着力や粘着剤との相溶性を低下させない観点から、単独で使用するほうが好ましい。
特には、上記に例示したリン系難燃剤が好ましく、粘着物性の低下が少なく優れた難燃性が得られることから、また加水分解を抑制し耐湿熱性に優れることから、メラミン等で被覆されたポリリン酸アンモニウムが特に好ましい。
【0070】
難燃剤(C)の含有量は、前記粘着剤層(IA)及び前記粘着剤層(IIA)中の樹脂成分の合計量100質量部に対して、10質量部以下であり、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~8質量部、さらに好ましくは1~5質量部である。
難燃剤(C)の含有量が10質量部を超えると、両面粘着テープの粘着物性が低下したり、テープ重量が増加したりする傾向がある。
【0071】
難燃剤(C)の含有量は、粘着剤層(IA)中の樹脂成分100質量部に対して難燃剤(C)を(CI)質量部含有し、粘着剤層(IIA)中の樹脂成分の100質量部に対して該難燃剤(C)を(CII)質量部含有している場合、下記の計算式(I)で算出されるものである。
難燃剤(C)の含有量(質量部)=CI(質量部)×{XA/(XA+YA)}+CII(質量部)×{YA/(XA+YA)}・・・計算式(I)
ここで、XAは粘着剤層(IA)の厚み、YAは粘着剤層(IIA)の厚みを示す。
【0072】
また、難燃剤(C)は、難燃性能を発現しやすい点、安定した粘着力が発現される点から、難燃剤(C)の全質量の90%以上が粘着剤層(IIA)に含有されることが好ましく、95%以上が含有されることがより好ましく、難燃剤(C)が粘着剤層(IIA)のみに含有されることが特に好ましい。
【0073】
難燃剤(C)の全質量に対する、粘着剤層(IIA)に含有される難燃剤(C)の質量の割合(%)は下記の計算式(II)で算出されるものである。
粘着剤層(IIA)に含有される難燃剤(C)の質量の割合(%)=CII(質量部)×{YA/(XA+YA)/(上記計算式(I)で算出された難燃剤(C)の含有量(質量部))}×100・・・計算式(II)
【0074】
(粘着剤層(IA)の厚み(XA)と粘着剤層(IIA)の厚み(YA))
本発明の第一実施形態において、粘着剤層(IA)の厚み(XA)と粘着剤層(IIA)の厚み(YA)の比(YA/XA)は2.00以上とする。粘着剤層の厚み比(YA/XA)を2.00以上とすることにより、本発明の両面粘着テープは、難燃剤の含有量が少量でありながらも難燃性、粘着性及び再剥離性のいずれにもバランスよく優れた両面粘着テープとなる。
【0075】
また、粘着剤層の厚み比(YA/XA)を2.00以上とすることにより、接炎時にテープが特定の方向に巻き上がりやすくなり、テープに炎が着火する前にテープが火源(火元)から遠ざかることでテープへの着炎が抑制されると考えられる。
【0076】
粘着剤層の厚み比(YA/XA)は、好ましくは3.00以上、より好ましくは3.80以上である。粘着剤層の厚み比(YA/XA)が3.80以上であると、両面粘着テープの再剥離性がさらに良好となる。
また、粘着剤層の厚み比(YA/XA)の上限としては好ましくは6.00以下、より好ましくは5.50以下である。
【0077】
粘着剤層(IA)の厚み(XA)は、被着体に対しある程度の粘着力を有するとともに再剥離性を付与する(中長期間貼付け後に糊残りなく剥せるようにする)観点から、好ましくは10~100μm、より好ましくは15~50μm、さらに好ましくは20~30μmである。
【0078】
粘着剤層(IIA)の厚み(YA)は、被着体に対し十分な粘着力を有するとともに粘着剤層(IA)に対し2以上の厚み比をもたせる観点から、好ましくは50~200μm、より好ましくは60~150μm、さらに好ましくは70~130μmである。
【0079】
粘着剤層(IA)の粘着力は、被着体に対しある程度の粘着力を有するとともに再剥離性を付与する(中長期間貼付け後に糊残りなく剥せるようにする)観点から、例えば、被着体として175℃で1時間の熱乾燥処理を施したSUS-BA板(光輝焼鈍処理ステンレス鋼板)の試験板を使用した場合は、1~70N/25mmであることが好ましく、より好ましくは2~50N/25mm、さらに好ましくは3~30N/25mmである。
【0080】
また、例えば、被着体としてCarpet(Lantal社製、AIRCRAFT向け、材質:Wool/Polyamide)を使用した場合は、0.1~30N/25mmであることが好ましく、より好ましくは0.2~20N/25mm、さらに好ましくは0.3~10N/25mmである。
なお、粘着力は被着体の組成(材質)や表面状態(表面粗さ)、処理(洗浄)条件等で変わるため、上記の粘着力範囲に限定されるものではない。
【0081】
粘着剤層(IIA)の粘着力は、被着体に対し十分な粘着力をもたせる観点から、例えば、被着体として175℃で1時間の熱乾燥処理を施したSUS-BA板(光輝焼鈍処理ステンレス鋼板)の試験板を使用した場合は、10~200N/25mmであることが好ましく、より好ましくは15~150N/25mm、さらに好ましくは20~120N/25mmである。
【0082】
また、例えば、被着体としてCarpet(Lantal社製、AIRCRAFT向け、材質:Wool/Polyamide)を使用した場合は、3~100N/25mmであることが好ましく、より好ましくは4~75N/25mm、さらに好ましくは5~50N/25mmである。
なお、粘着力は被着体の組成(材質)や表面状態(表面粗さ)、処理(洗浄)条件等で変わるため、上記の粘着力範囲に限定されるものではない。
【0083】
粘着力を上記範囲より高くすると、粘着剤層の厚みを厚くすることとなりテープ重量が重くなる傾向があり、低くすると十分な接着力が得られず固定している部材が脱落しやすくなる傾向がある。
【0084】
なお、本明細書において、粘着力の測定は、JIS Z0237に準じて測定する値である。具体的には、後記実施例に記載の方法で測定することができる。
また、本試験片は両面テープであることから、後記実施例と同様に、試験しない粘着面はJIS C 2318に規定される呼び厚さ25番のポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラー S10」(東レ株式会社製)で覆って測定することができる。
【0085】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る両面粘着テープについて説明する。本発明の第二実施形態に係る両面粘着テープは、粘着剤層に難燃剤を含有せず、粘着剤層(IB)の厚み(XB)と粘着剤層(IIB)の厚み(YB)の比(YB/XB)を2.50以上であることを特徴とする。
なお、本発明の第二実施形態に係る両面粘着テープで用いる基材と粘着剤組成物の成分は、上記した第一実施形態と同様である。
【0086】
(粘着剤層(IB)の厚み(XB)と粘着剤層(IIB)の厚み(YB))
本発明の第二実施形態において、粘着剤層(IB)の厚み(XB)と粘着剤層(IIB)の厚み(YB)の比(YB/XB)は2.50以上とする。粘着剤層の厚み比(YB/XB)を2.50以上とすることにより、本発明の両面粘着テープは、難燃剤を含有しないにも関わらず、難燃性、粘着性及び再剥離性のいずれにもバランスよく優れた両面粘着テープとなる。
【0087】
粘着剤層の厚み比(YB/XB)を2.50以上とすることにより、難燃剤を含有しない構成であっても、接炎時にテープが特定の方向に巻き上がりやすくなり、テープに炎が着火する前にテープが火源(火元)から遠ざかることでテープへの着炎が抑制されると考えられる。
【0088】
粘着剤層の厚み比(YB/XB)は、好ましくは3.00以上、より好ましくは3.50以上であり、また上限については、好ましくは10.00以下、より好ましくは8.00以下である。
【0089】
粘着剤層(IB)の厚み(XB)は、被着体に対しある程度の粘着力を有するとともに再剥離性を付与する(中長期間貼付け後に糊残りなく剥せるようにする)観点から、好ましくは10~100μm、より好ましくは15~50μm、さらに好ましくは20~30μmである。
【0090】
粘着剤層(IIB)の厚み(YB)は、被着体に対し十分な粘着力を有するとともに粘着剤層(IA)に対し2.5以上の厚み比をもたせる観点から、好ましくは50~200μm、より好ましくは60~150μm、さらに好ましくは70~130μmである。
【0091】
粘着剤層(IB)の粘着力は、被着体に対しある程度の粘着力を有するとともに再剥離性を付与する(中長期間貼付け後に糊残りなく剥せるようにする)観点から、例えば、被着体として175℃で1時間の熱乾燥処理を施したSUS-BA板(光輝焼鈍処理ステンレス鋼板)の試験板を使用した場合は、1~70N/25mmであることが好ましく、より好ましくは2~50N/25mm、さらに好ましくは3~30N/25mmである。
【0092】
また、例えば、被着体としてCarpet(Lantal社製、AIRCRAFT向け、材質:Wool/Polyamide)を使用した場合は、0.1~30N/25mmであることが好ましく、より好ましくは0.2~20N/25mm、さらに好ましくは0.3~10N/25mmである。
なお、粘着力は被着体の組成(材質)や表面状態(表面粗さ)、処理(洗浄)条件等で変わるため、上記の粘着力範囲に限定されるものではない。
【0093】
粘着剤層(IIB)の粘着力は、被着体に対し十分な粘着力をもたせる観点から、例えば被着体として175℃で1時間の熱乾燥処理を施したSUS-BA板(光輝焼鈍処理ステンレス鋼板)の試験板を使用した場合は、10~200N/25mmであることが好ましく、より好ましくは15~150N/25mm、さらに好ましくは20~120N/25mmである。
【0094】
また、例えば被着体としてCarpet(Lantal社製、AIRCRAFT向け、材質:Wool/Polyamide)を使用した場合は、3~100N/25mmであることが好ましく、より好ましくは4~75N/25mm、さらに好ましくは5~50N/25mmである。
なお、粘着力は被着体の組成(材質)や表面状態(表面粗さ)、処理(洗浄)条件等で変わるため、上記の粘着力範囲に限定されるものではない。
【0095】
粘着力を上記範囲より高くすると粘着剤層の厚みを厚くすることとなりテープ重量が重くなる傾向があり、低すぎると十分な接着力が得られず固定している部材が脱落しやすくなる傾向がある。
【0096】
[両面粘着テープ]
本発明の両面粘着テープは、難燃性と再剥離性(中長期間貼付け後に糊残りなく剥離できる性能)が求められる部材(カーペット類等)の固定等の種々の用途に用いられるが、とりわけ航空機部材固定用に用いられることが好ましい。
【0097】
また、本発明の両面粘着テープは、基材と粘着剤層との合計の単位面積当たりの質量が、300g/m2以下であることが好ましく、より好ましくは250g/m2以下、さらに好ましくは225g/m2以下、特に好ましくは200g/m2以下である。
なお、上記質量の下限としては通常50g/m2である。
【0098】
本発明の両面粘着テープの厚みとしては、15~320μmであることが好ましく、より好ましくは30~300μm、さらに好ましくは40~280μmである。
かかる厚みが厚すぎると航空機での使用に適した重量粋を超過してしまう傾向があり、薄すぎると十分な難燃性や粘着性や接着力が得られなくなる傾向がある。
【0099】
本発明の両面粘着テープの2つの粘着剤層厚みの合計と、基材の厚みとの比率(粘着剤層/基材)は、0.1~50が好ましく、より好ましくは0.2~25、さらに好ましくは0.5~15である。
かかる比率が小さすぎると基材に対して粘着剤層が薄すぎるため、十分な粘着力を得ることができない傾向があり、大きすぎると基材に対して粘着剤層が厚すぎるため、粘着剤層に発泡が生じる等製造が困難になったり、コストが高くなったりする傾向がある。
【0100】
[両面粘着テープの製造方法]
本発明の両面粘着テープの製造方法については、公知一般の両面粘着テープの製造方法を用いればよく、例えば、基材の一方の面に粘着剤を塗布・乾燥し、形成された粘着剤層の表面にリリースライナーを重ねる方法、あるいはリリースライナーの一方の面に粘着剤を塗布・乾燥し、形成された粘着剤層の表面に基材を重ねる方法によって製造することができる。
【0101】
基材の上に粘着剤層を設けるにあたり、基材の表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの公知慣用の表面処理を適宜施してもよい。
【0102】
リリースライナーとしては、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、セロハンなどのプラスチックからなるプラスチックフィルム;クラフト紙、和紙等の紙;天然ゴム、ブチルゴム等からなるゴムシート;ポリウレタン、ポリクロロプレンゴム等を発泡させてなる発泡体シート;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;これらの複合体などが挙げられる。また、これらはその片面または両面にコロナ処理などの表面処理が施されていてもよい。
【0103】
また、リリースライナーとして、例えば、上質紙、グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙にポリエチレン等のフィルムをラミネートした紙、ポリビニルアルコールやアクリル酸エステル共重合体等の樹脂を塗布した紙、ポリエステルやポリプロピレン等の合成樹脂フィルム等に、剥離剤であるフッソ樹脂やシリコーン樹脂等を塗布してなるものも挙げられる。
【0104】
これらの中でも、容易に手で引き裂きやすいという点で紙製のリリースライナーが好ましく、原紙の坪量が40~120g/m2(好ましくは50~80g/m2)である紙製リリースライナーが特に好ましい。さらに、かかるリリースライナーの厚みとしては、40~180μmであることが好ましく、特には60~140μm、さらには80~120μmであることが好ましい。かかる厚みが薄すぎると巻き取り時にシワが入る等、製造が困難になる傾向があり、厚すぎると手切れ性が低下する傾向がある。
【0105】
なお、両面粘着テープの粘着剤層上にリリースライナーを積層する場合においては、作業性の向上のために、両面に積層されるリリースライナーの剥離力が異なるようにそれぞれのリリースライナーを選択することが好ましい。例えば、両面粘着テープの初めに貼着する面側のリリースライナーの剥離力は、次に貼着する面側のリリースライナーの剥離力より軽剥離であるリリースライナーを選択すると作業性が向上する。
【0106】
粘着剤を形成する粘着剤組成物を種々のシート状基材に塗布する際に用いる塗布装置は、通常使用されている塗布装置を用いればよく、例えば、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディッピング、ブレードコーターなどが挙げられる。
【0107】
乾燥条件は、乾燥時に粘着剤中の溶剤や残留モノマーが乾燥し除去され、かつ、架橋剤(B)を使用する場合にはベース樹脂が有する官能基と架橋剤(B)とが反応し、架橋構造が形成され得る条件であればよい。乾燥条件として、例えば、60~120℃、1~5分が好ましい。乾燥後、シート状基材で粘着剤層を挟んだ状態で熟成し、さらに架橋反応を進行させることができる。
【0108】
本発明の両面粘着テープは、ロール状態であってもよいし、枚葉状態であってもよいし、あるいはさらに種々の形状に加工されたものであってもよい。
そして、該両面粘着テープがロール状態の場合には、2つの粘着剤層の一方の表面のみにリリースライナーが設けられることが好ましく、枚葉状態の場合には、2つの粘着剤層の両方の表面にリリースライナーが設けられることが好ましい。
【0109】
また、本発明の両面粘着テープは引張強度の大きいものが好ましく、床や壁に貼り付ける際、歪まない様に引っ張ったり、貼り直すために剥がしたり、使用後に、両面粘着テープを剥がそうと、引っ張った時に両面粘着テープが千切れない程度の強度が求められる。
【0110】
両面粘着テープの引張強度としては、好ましくは20N/25mm以上、より好ましくは30N/25mm以上、さらに好ましくは50N/25mm以上である。なお、引張強度の上限としては、通常250N/25mmである。
【0111】
前述のとおり、本発明の両面粘着テープは、航空機部材固定用として好ましく用いられるが、航空機部材としては、例えば、カーペット、塩化ビニルシート、床材、壁材等が挙げられる。
特に好適には、カーペット、塩化ビニルシート、または床材である。
【0112】
カーペットとしては、航空機内で使用される公知一般のカーペットが挙げられ、具体的には、ナイロン繊維やオレフィン繊維を用いたカーペットが挙げられる。
塩化ビニルシートとしては、可塑剤(軟化剤)量が比較的少ない硬質塩化ビニルシートや、可塑剤(軟化剤)量が比較的多い軟質塩化ビニルシート等が挙げられる。
【0113】
床材としては、アルミニウム合金やチタン合金等の金属合金や、ガラス強化繊維とエポキシ樹脂の複合材や、ガラス強化繊維とフェノール樹脂の複合材等が挙げられる。
【0114】
また、本発明の両面粘着テープを用いて貼り合わされる航空機部材の組み合わせとしては、床材とカーペット等の貼り合せに好適に用いられる。
【実施例】
【0115】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、質量基準を意味する。
【0116】
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂を調製した。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量、分散度、ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。また、粘度の測定に関しては、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて測定した。
【0117】
[製造例1]
<アクリル系樹脂(A-1)の調製>
温度計、攪拌機及び還流冷却機を備えた反応器内に、2-エチルヘキシルアクリレート51部、ブチルアクリレート40部、酢酸ビニル5部、アクリル酸3.9部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート0.1部、酢酸エチル40部及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.18部を仕込み、攪拌しながら昇温し、酢酸エチル還流温度にて7時間重合させた後、酢酸エチルで希釈してアクリル系樹脂(A-1)の50%溶液を得た。
得られたアクリル系樹脂(A-1)は、重量平均分子量60万、分散度5.0、粘度10,000mPa・s/25℃、ガラス転移温度-59℃であった。
【0118】
[製造例2]
<アクリル系樹脂(A-2)の調製>
温度計、攪拌機及び還流冷却機を備えた反応器内に、2-エチルヘキシルアクリレート63.1部、ブチルアクリレート23部、メチルアクリレート6部、β-カルボキシエチルアクリレート7.8部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート0.1部、酢酸エチル40部及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.18部を仕込み、攪拌しながら昇温し、酢酸エチル還流温度にて7時間重合させた後、酢酸エチルで希釈してアクリル系樹脂(A-2)の50%溶液を得た。
得られたアクリル系樹脂(A-2)は、重量平均分子量60万、分散度5.0、粘度8,000mPa・s/25℃、ガラス転移温度-56℃であった。
【0119】
[製造例3]
<アクリル系樹脂(A-3)の調製>
温度計、攪拌機及び還流冷却機を備えた反応器内に、2-エチルヘキシルアクリレート32.6部、ブチルアクリレート54.4部、メチルアクリレート7.0部、アクリル酸6.0部、酢酸エチル70部及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.05部を仕込み、攪拌しながら昇温し、酢酸エチル還流温度にて5.5時間重合させた後、酢酸エチルで希釈してアクリル系樹脂(A-3)の38%溶液を得た。
得られたアクリル系樹脂(A-3)は、重量平均分子量60万、分散度4.9、粘度2,800mPa・s/25℃、ガラス転移温度-52℃であった。
【0120】
[製造例4]
<アクリル系樹脂(A-4)の調製>
温度計、攪拌機及び還流冷却機を備えた反応器内に、2-エチルヘキシルアクリレート93.8部、酢酸ビニル3部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート0.2部、アクリル酸3部、酢酸エチル37部、アセトン14.6部及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.15部を仕込み、攪拌しながら昇温し、酢酸エチル還流温度にて7時間重合させた後、トルエンで希釈してアクリル系樹脂(A-4)の40%溶液を得た。
得られたアクリル系樹脂(A-4)は、重量平均分子量60万、分散度4.7、粘度6,000mPa・s/25℃、ガラス転移温度-65℃であった。
【0121】
〔実施例1〕
製造例2で調製したアクリル系樹脂(A-2)の固形分100部に対して、エポキシ系架橋剤1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学株式会社製、商品名「テトラッドC」)を0.020部及び適量の酢酸エチル、メチルエチルケトンを添加して均一になるまで混合し、紙製リリースライナー(住化加工紙株式会社製、商品名「SLB-50KWD」;原紙坪量53g/m2)の軽剥離面に、塗工後の厚みが60μmになるようにアプリケーターを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、粘着剤層(I)付き紙製リリースライナー(1-1)を製造した。
【0122】
次に、製造例1で調製したアクリル系樹脂(A-1)の固形分100部に対して、メラミン樹脂コーティング型ポリリン酸アンモニウム(II型)系難燃剤(BUDENHEIM,INC.製、商品名「TERRAJU C-80」)を5部、エポキシ系架橋剤1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学株式会社製、商品名「テトラッドC」)を0.012部及び適量の酢酸エチル、メチルエチルケトンを添加して均一になるまで混合し、紙製リリースライナー(住化加工紙株式会社製、商品名「SLB-50KWD」;原紙坪量53g/m2)の軽剥離面に、塗工後の厚みが125μmになるようにアプリケーターを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、粘着剤層(II)付き紙製リリースライナー(1-2)を製造した。
【0123】
そして、上記粘着剤層(I)付き紙製リリースライナー(1-1)の粘着剤面を、フラットヤーンクロスを含む基材として、ポリエチレンフラットヤーンクロスの両面にポリエチレンフィルムをラミネートした基材(ダイヤテックス株式会社製:重量47g/m2、厚み62μm)の片面(コロナ処理済)に貼り合わせた後、基材の反対の面(コロナ処理済)に粘着剤層(II)付き紙製リリースライナー(1-2)の粘着剤面を貼り合せた。
その後、40℃乾燥機中で7日間加熱エージング処理を行い、両面粘着テープを得た。
【0124】
〔実施例2〕
実施例1において、アクリル系樹脂(A-2)に代えて、製造例3で調製したアクリル系樹脂(A-3)に変更した以外は同様にして、両面粘着テープを得た。
【0125】
〔実施例3〕
実施例1において、粘着剤層(I)の塗工後の厚みが40μmになるようにアプリケーターを用いて塗工した以外は同様にして、両面粘着テープを得た。
【0126】
〔実施例4〕
製造例4で調製したアクリル系樹脂(A-4)の固形分100部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL-55E」)を2.0部及び適量の酢酸エチルを添加して均一になるまで混合し、紙製リリースライナー(住化加工紙株式会社製、商品名「SLB-50KWD」;原紙坪量53g/m2)の軽剥離面に、塗工後の厚みが25μmになるようにアプリケーターを用いて塗工し、80℃で2分間乾燥し、粘着剤層(I)付き紙製リリースライナー(2-1)を製造した。
【0127】
次に、製造例1で調製したアクリル系樹脂(A-1)の固形分100部に対して、メラミン樹脂コーティング型ポリリン酸アンモニウム(II型)系難燃剤(BUDENHEIM,INC.製、商品名「TERRAJU C-80」)を5部、エポキシ系架橋剤1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学株式会社製、商品名「テトラッドC」)を0.012部及び適量の酢酸エチル、メチルエチルケトンを添加して均一になるまで混合し、紙製リリースライナー(住化加工紙株式会社製、商品名「SLB-50KWD」;原紙坪量53g/m2)の軽剥離面に、塗工後の厚みが100μmになるようにアプリケーターを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、粘着剤層(II)付き紙製リリースライナー(2-2)を製造した。
【0128】
そして、上記粘着剤層(I)付き紙製リリースライナー(2-1)の粘着剤面を、フラットヤーンクロスを含む基材として、ポリエチレンフラットヤーンクロスの両面にポリエチレンフィルムをラミネートした基材(ダイヤテックス株式会社製:重量47g/m2、厚み62μm)の片面(コロナ処理済)に貼り合わせた後、基材の反対の面(コロナ処理済)に粘着剤層(II)付き紙製リリースライナー(2-2)の粘着剤面を貼り合せた。その後、40℃乾燥機中で7日間加熱エージング処理を行い、両面粘着テープを得た。
【0129】
〔実施例5〕
実施例4において、粘着剤層(II)の塗工後の厚みが125μmになるようにアプリケーターを用いて塗工した以外は同様にして、両面粘着テープを得た。
【0130】
〔実施例6〕
実施例4において、粘着剤層(II)にメラミン樹脂コーティング型ポリリン酸アンモニウム(II型)系難燃剤(BUDENHEIM,INC.製、商品名「TERRAJU C-80」)を添加しなかった以外は同様にして、両面粘着テープを得た。
【0131】
〔実施例7〕
実施例6において、粘着剤層(II)の塗工後の厚みが125μmになるようにアプリケーターを用いて塗工した以外は同様にして、両面粘着テープを得た。
【0132】
〔実施例8〕
実施例3において、粘着剤層(II)にメラミン樹脂コーティング型ポリリン酸アンモニウム(II型)系難燃剤(BUDENHEIM,INC.製、商品名「TERRAJU C-80」)を添加しなかった以外は同様にして、両面粘着テープを得た。
【0133】
〔比較例1〕
実施例1において、粘着剤層(II)のメラミン樹脂コーティング型ポリリン酸アンモニウム(II型)系難燃剤(BUDENHEIM,INC.製、商品名「TERRAJU C-80」)添加量を20部とした以外は同様にして、両面粘着テープを得た。
【0134】
〔比較例2〕
実施例1において、粘着剤層(II)のメラミン樹脂コーティング型ポリリン酸アンモニウム(II型)系難燃剤(BUDENHEIM,INC.製、商品名「TERRAJU C-80」)を水酸化アルミニウム(昭和電工社製、商品名「ハイジライトH32」)30部に変更した以外は同様にして、両面粘着テープを得た。
【0135】
〔比較例3〕
製造例1で調製したアクリル系樹脂(A-1)の固形分100部に対して、メラミン樹脂コーティング型ポリリン酸アンモニウム(II型)系難燃剤(BUDENHEIM,INC.製、商品名「TERRAJU C-80」)を5部、エポキシ系架橋剤1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学株式会社製、商品名「テトラッドC」)を0.012部及び適量の酢酸エチル、メチルエチルケトンを添加して均一になるまで混合し、紙製リリースライナー(住化加工紙株式会社製、商品名「SLB-50KWD」;原紙坪量53g/m2)の軽剥離面に、塗工後の厚みが125μmになるようにアプリケーターを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、粘着剤層(I)付き紙製リリースライナー(3-1)を製造した。
【0136】
次に、製造例1で調製したアクリル系樹脂(A-1)の固形分100部に対して、メラミン樹脂コーティング型ポリリン酸アンモニウム(II型)系難燃剤(BUDENHEIM,INC.製、商品名「TERRAJU C-80」)を5部、エポキシ系架橋剤1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学株式会社製、商品名「テトラッドC」)を0.012部及び適量の酢酸エチル、メチルエチルケトンを添加して均一になるまで混合し、紙製リリースライナー(住化加工紙株式会社製、商品名「SLB-50KWD」;原紙坪量53g/m2)の軽剥離面に、塗工後の厚みが125μmになるようにアプリケーターを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥し、粘着剤層(II)付き紙製リリースライナー(3-2)を製造した。
【0137】
そして、上記粘着剤層(I)付き紙製リリースライナー(3-1)の粘着剤面を、フラットヤーンクロスを含む基材として、ポリエチレンフラットヤーンクロスの両面にポリエチレンフィルムをラミネートした基材(ダイヤテックス株式会社製:重量47g/m2、厚み62μm)の片面(コロナ処理済)に貼り合わせた後、基材の反対の面(コロナ処理済)に粘着剤層(II)付き紙製リリースライナー(3-2)の粘着剤面を貼り合せた。その後、40℃乾燥機中で7日間加熱エージング処理を行い、両面粘着テープを得た。
【0138】
〔比較例4〕
比較例3において、粘着剤層(I)及び粘着剤層(II)にメラミン樹脂コーティング型ポリリン酸アンモニウム(II型)系難燃剤(BUDENHEIM,INC.製、商品名「TERRAJU C-80」)を添加しなかった以外は同様にして、両面粘着テープを得た。
【0139】
〔比較例5〕
比較例4において、粘着剤層(I)及び粘着剤層(II)の塗工後の厚みが100μmになるようにアプリケーターを用いて塗工した以外は同様にして、両面粘着テープを得た。
【0140】
〔比較例6〕
比較例3において、粘着剤層(I)及び粘着剤層(II)の塗工後の厚みが100μmになるようにアプリケーターを用いて塗工した以外は同様にして、両面粘着テープを得た。
【0141】
〔比較例7〕
比較例6において、粘着剤層(I)及び粘着剤層(II)のメラミン樹脂コーティング型ポリリン酸アンモニウム(II型)系難燃剤(BUDENHEIM,INC.製、商品名「TERRAJU C-80」)添加量を10部とした以外は同様にして、両面粘着テープを得た。
【0142】
〔比較例8〕
比較例6において、粘着剤層(I)及び粘着剤層(II)のメラミン樹脂コーティング型ポリリン酸アンモニウム(II型)系難燃剤(BUDENHEIM,INC.製、商品名「TERRAJU C-80」)添加量を20部とした以外は同様にして、両面粘着テープを得た。
【0143】
〔比較例9〕
比較例6において、粘着剤層(I)及び粘着剤層(II)のメラミン樹脂コーティング型ポリリン酸アンモニウム(II型)系難燃剤(BUDENHEIM,INC.製、商品名「TERRAJU C-80」)添加量を40部とした以外は同様にして、両面粘着テープを得た。
【0144】
このようにして得られた両面粘着テープについて、以下に記載する方法で、対SUS-BA板粘着力(I)及び(II)、対Carpet粘着力(I)及び(II)、難燃性(FAR25)を測定し、評価した。結果を下記表に示す。
【0145】
[対SUS-BA板粘着力(I)]
上記得られた両面粘着テープの粘着力を測定する粘着剤層(I)の裏面(粘着剤層(II))を、粘着剤層(II)に接したリリースライナーを剥して厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」)で裏打ちを行い、幅25mm、長さ150mmにカットして試験片を作製した。
【0146】
次に、幅25mm、長さ180mmにカットしたポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」;厚み38μm)のコロナ処理面を上記試験片の片端の粘着剤層に3cm程度重なるように貼り付け、重なり面をステープラーで固定した。
【0147】
続いて、被着体として175℃で1時間の熱乾燥処理を施したSUS-BA板(光輝焼鈍処理ステンレス鋼板)の試験板を使用し、23±2℃及び50±5%RHに調整した恒温恒湿機内で、この試験板に上記試験片のリリースライナーを剥した粘着剤層(I)を重さ2kgのローラーを圧着速さ10mm/sで二往復させて圧着させた。
【0148】
圧着後、23±2℃及び50±5%RHに調整した恒温恒湿機内で(1)5分間放置または(2)3日間放置し、試験片の遊び部分を90°折り返し、10mm剥がした後、引張試験機(株式会社島津製作所製、AG-X+)の底部に試験板を、上部のチャックに試験片の端をそれぞれ固定し、100mm/minの速度で90°方向に被着体から両面粘着テープを引き剥がし、粘着力を測定した。
【0149】
また、上記と同様に圧着後、(3)70±2℃及び90±5%RHに調整した恒温恒湿機内に14日間(336時間)放置した試験片を取り出して23±2℃及び50±5%RHに調整した恒温恒湿機内で2時間以上放置し、上記と同様に被着体から両面粘着テープを引き剥がし、湿熱試験後の粘着力を測定した。
【0150】
[対SUS-BA板粘着力(II)]
上記得られた両面粘着テープの粘着力を測定する粘着剤層(II)の裏面(粘着剤層(I))を、粘着剤層(I)に接したリリースライナーを剥して厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」)で裏打ちを行い、幅25mm、長さ150mmにカットして試験片を作製した。
【0151】
被着体として175℃で1時間の熱乾燥処理を施したSUS-BA板(光輝焼鈍処理ステンレス鋼板)の試験板を使用し、[対SUS-BA板粘着力(I)]と同様に圧着し、上記(1)~(3)の粘着力測定を行い、下記基準に基づき粘着性を評価した。
【0152】
(評価基準)
○:貼合5分後の粘着力が20N/25mm以上かつ湿熱試験後の粘着力が30N/25mm以上であった。
×:貼合5分後の粘着力が20N/25mm未満または湿熱試験後の粘着力が30N/25mm未満であった。
【0153】
[対Carpet板粘着力(I)]
上記得られた両面粘着テープの粘着力を測定する粘着剤層(I)の裏面(粘着剤層(II))を、粘着剤層(II)に接したリリースライナーを剥して厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」)で裏打ちを行い、幅25mm、長さ150mmにカットして試験片を作製した。
【0154】
次に、幅25mm、長さ180mmにカットしたポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」;厚み38μm)のコロナ処理面を上記試験片の片端の粘着剤層に3cm程度重なるように貼り付け、重なり面をステープラーで固定した。
【0155】
続いて、被着体としてCarpet(Lantal社製、AIRCRAFT向け、材質:Wool/Polyamide)を使用し、23±2℃、50±5%RHに調整した恒温恒湿機内でこのCarpetの裏面(黒色面)に上記試験片のリリースライナーを剥した粘着剤層(I)を重さ2kgのローラーを圧着速さ10mm/sで二往復させて圧着させた。
【0156】
圧着後、23±2℃及び50±5%RHに調整した恒温恒湿機内で(1)3日間放置し、試験片の遊び部分を90°折り返し、10mm剥がした後、引張試験機(株式会社島津製作所製、AG-X+)の底部にCarpetを、上部のチャックに試験片の端をそれぞれ固定し、100mm/minの速度で90°方向に被着体から両面粘着テープを引き剥がし、粘着力を測定した。
【0157】
また、上記と同様に圧着後、(2)70±2℃及び90±5%RHに調整した恒温恒湿機内に14日間(336時間)放置した試験片を取り出して23±2℃及び50±5%RHに調整した恒温恒湿機内で2時間以上放置し、上記と同様に被着体から両面粘着テープを引き剥がし、湿熱試験後の粘着力を測定した。
【0158】
[対Carpet板粘着力(II)]
上記得られた両面粘着テープの粘着力を測定する粘着剤層(II)の裏面(粘着剤層(I))を、粘着剤層(I)に接したリリースライナーを剥して厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、商品名「ルミラー S10」)で裏打ちを行い、幅25mm、長さ150mmにカットして試験片を作製した。被着体としてCarpet(Lantal社製、AIRCRAFT向け、材質:Wool/Polyamide)を使用し、[対Carpet板粘着力(I)]と同様に圧着し、上記(1)及び(2)の粘着力測定を行い、下記基準に基づき粘着性を評価した。
【0159】
(評価基準)
○:貼合3日後の粘着力が5N/25mm以上かつ湿熱試験後の粘着力が20N/25mm以上であった。
×:貼合3日後の粘着力が5N/25mm未満または湿熱試験後の粘着力が20N/25mm未満であった。
【0160】
[難燃性(FAR25)]
上記得られた両面粘着テープを用いて、14CFR Part 25 Appendix F Part I Section (a)(1)(ii)に記載された燃焼性試験を実施して合格/不合格の判定を行った。
下記表中では、合格の場合を「○」、不合格の場合を「×」として表す。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
[難燃性(FAR25) 総合評価]
上記得られた両面粘着テープを用いて、垂直法試験機(株式会社大栄科学精器製作所製 VFT-200)を用いて試験を行い、下記基準に基づき評価した。結果を下記表に示す。
試験片の大きさは、長さ30cm(12inch)、幅7.5cm(3inch)とし、炎の大きさは約38mm(1.5inch)、試験片とバーナーの距離は約20mm(3/4inch)、炎の接触時間は12秒とした。
【0166】
(評価基準)
○:試験を2回実施し、平均値が以下の条件を全て満たした。
×:試験を2回実施し、平均値が以下の条件を1つ以上満たさなかった。
(燃焼時間)試験片の炎が、離炎後15秒以内に消火した。
(燃焼長)試験片の消失長さが200mm(8inch)以下であり、かつ試験片が2回実施した試験全てにおいて全焼しなかった。
(滴下物有無)ドリップ(試験片より落下した燃えカス)は5秒以内に消火した。
【0167】
【0168】
上記評価結果より、難燃剤を少量含有し若しくは含有せず、粘着剤層の厚みに差をつけ、両粘着剤層の厚みの比を一定以上に設定した実施例の両面粘着テープは、14CFR Part 25 Appendix F Part I Section (a)(1)(ii)に記載された燃焼性試験に合格し、かつ対SUS-BA板粘着力(II)、対Carpet粘着力(II)ともに、粘着性は良好であった。
【0169】
一方、粘着剤層への難燃剤配合量を、粘着剤層(I)及び(II)の樹脂成分に対して10部超とした比較例1~2は、14CFR Part 25 Appendix F Part I Section (a)(1)(ii)に記載された燃焼性試験に合格するものの、貼合5分後の対SUS-BA板粘着力(II)が20N/25mm未満である等、貼合初期の粘着性が低くなった。
【0170】
また、粘着剤層(I)の厚みに対する粘着剤層(II)の厚みの比を2.00未満とした比較例3~9は、アクリル樹脂の組成、粘着剤層の厚み、難燃剤の有無や難燃剤量に関係なく、14CFR Part 25 Appendix F Part I Section (a)(1)(ii)に記載された燃焼性試験に不合格となった。
【0171】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2016年12月22日出願の日本特許出願(特願2016-249965)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明の両面粘着テープは、難燃性、粘着力に優れるため、航空機部材を固定する用途、例えば、カーペットの貼り合せ等において好適に使用できるものである。