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特許7155590食品包装用インフレーションフィルム、食品用ストレッチフィルム、食品用小巻ラップフィルム及び食品包装用フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】食品包装用インフレーションフィルム、食品用ストレッチフィルム、食品用小巻ラップフィルム及び食品包装用フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20221012BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221012BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20221012BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B27/18 C
B32B27/32 Z
B65D85/50 100
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018079294
(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公開番号】P2019099785
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2017228393
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 顕
(72)【発明者】
【氏名】中村 甫
(72)【発明者】
【氏名】今中 智
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094729(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/135375(WO,A1)
【文献】特開2015-007198(JP,A)
【文献】特開2002-179738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;
5/12-5/22
B32B 1/00-43/00
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物からなる厚さ5μm以上30μm以下の食品包装用インフレーションフィルムであって、
前記樹脂組成物は、いずれも、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計で測定した昇温速度10℃/minで昇温時の結晶融解ピーク温度を180℃以上に有さず、
表面層と中間層の少なくとも2層を有し、前記表面層が、エチレン-酢酸ビニル共重合体を主成分として含み、
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.2g/10分以上10g/10分以下であり、
380nm以上750nm以下における最大吸収波長を600nm以上750nm以下に有し、下記(1)~下記(3)を満たすことを特徴とする、食品包装用インフレーションフィルム。
(1)全光線透過率が70%以上
(2)最大吸収波長における吸光度が、470nmにおける吸光度の3倍以上
(3)200mm/minのスピードにて、100%伸長した後の最大吸収波長における吸光度が、470nmにおける吸光度の2.5倍以上
【請求項2】
前記表面層は、エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位含有量が5質量%以上25質量%以下である、請求項1に記載の食品包装用インフレーションフィルム。
【請求項3】
JIS K7121に準拠し、幅方向に対する引張速度200mm/minでの引張試験の結果が下記(4)~下記(6)を満たす、請求項1又は請求項2に記載の食品包装用インフレーションフィルム。
(4)降伏点を示さない
(5)破断伸び350%以上
(6)50%伸び時荷重が1N以下
【請求項4】
前記表面層は、間に前記中間層が配置された一対の表面層であり、
前記中間層は、着色剤を含み、
前記一対の表面層と、前記中間層の少なくとも3層を備えた、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の食品包装用インフレーションフィルム。
【請求項5】
前記表面層が防曇剤を含有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の食品包装用インフレーションフィルム。
【請求項6】
前記中間層が、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群から選択された少なくとも1種を主成分とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の食品包装用インフレーションフィルム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の食品包装用インフレーションフィルムを含むことを特徴とする、食品用ストレッチフィルム。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の食品包装用インフレーションフィルムを含むことを特徴とする、食品用小巻ラップフィルム。
【請求項9】
樹脂組成物からなり、380nm以上750nm以下における最大吸収波長を600nm以上750nm以下に有し、下記(1)~下記(3)を満たす食品包装用フィルムの製造方法であって、
前記樹脂組成物は、いずれも、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計で測定した昇温速度10℃/minで昇温時の結晶融解ピーク温度を180℃以上に有さず、
表面層を形成するエチレン-酢酸ビニル共重合体を主成分として含む第1樹脂組成物と、中間層を形成する着色剤を含む第2樹脂組成物とを共押出しにより積層し、一対の表面層間に中間層が設けられた厚さ5μm以上30μm以下の食品包装用フィルムをインフレーション成形で製造する工程を含み、
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.2g/10分以上10g/10分以下であることを特徴とする、食品包装用フィルムの製造方法。
(1)全光線透過率が70%以上
(2)最大吸収波長における吸光度が、470nmにおける吸光度の3倍以上
(3)200mm/minのスピードにて、100%伸長した後の最大吸収波長における吸光度が、470nmにおける吸光度の2.5倍以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用フィルム、食品用ストレッチフィルム、食品用小巻ラップフィルム及び食品包装用フィルムの製造方法に関し、例えば、食品へのフィルムちぎれカスの混入の防止に好適な食品包装用フィルム、食品用ストレッチフィルム、食品用小巻ラップフィルム及び食品包装用フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装用フィルムは、調理した食品を陶器及びプラスチック容器などに載せて包装するためなどに用いられている。食品包装用フィルムとしては、ラップフィルム(以下、「小巻ラップフィルム」ともいう)が使用されている。従来、小巻ラップフィルムでは、容器への密着性、箱から引き出したフィルムをカットする際のカット適性などの諸特性と共に、特に透明性が重要とされていた。
【0003】
また、食品包装用フィルムとしては、青果物、精肉、鮮魚、惣菜などを軽量トレーに載せてオーバーラップするプリパッケージ用のストレッチ包装用フィルムとして無色透明のストレッチフィルムも使用されている。ストレッチフィルムでは、被包装物をクリアに見せることで、商品価値を低下させないという点から無色透明であることが重要視されてきた。
【0004】
ところで、近年、食品に対する安全衛生意識の高まりによって、無色透明の食品包装用フィルムでは、フィルムちぎれカスが食品に混入した際に、目視では見分けることができないことが問題視されてきている。そこで、フィルムちぎれカスの食品への混入を防止するために、フィルム自体を青色に着色することによりフィルムちぎれカスを目視にて容易に検出できるようにした食品用ラップフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-7198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の食品包装用フィルムでは、高融点の原料を使用しているために、食品包装用フィルムをカットする際に熱線を使用することができなかった。このため、鋸刃などによって機械的に切断せざるをえず、フィルムちぎれカスの発生自体を抑制することが困難な場合があった。
【0007】
また、従来の着色した食品包装用フィルムでは、ストレッチ包装の際にフィルムロールの幅方向(TD方向)にフィルムを伸長して包装するので、フィルムの伸長に伴い着色が部分的に薄くなる色ムラが発生する。このため、着色が薄くなった部分に由来するフィルムちぎれカスの検出が必ずしも十分にできない場合がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、フィルムのカットに伴うフィルムちぎれカスの発生を低減でき、しかも、食品に混入したフィルムちぎれカスの検出が容易な食品包装用フィルム、食品用ストレッチフィルム、食品用小巻ラップフィルム及び食品包装用フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の食品包装用フィルムは、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計で測定した昇温速度10℃/minで昇温時の結晶融解ピーク温度を180℃以上に有さない樹脂組成物を含有する厚さ5μm以上30μm以下の食品包装用フィルムであって、380nm以上750nm以下における最大吸収波長を600nm以上750nm以下に有し、下記(1)~下記(3)を満たすことを特徴とする。
(1)全光線透過率が70%以上
(2)最大吸収波長における吸光度が、470nmにおける吸光度の3倍以上
(3)200mm/minのスピードにて、100%伸長した後の最大吸収波長における吸光度が、470nmにおける吸光度の2.5倍以上
【0011】
上記食品包装用フィルムにおいては、JIS K7121に準拠し、幅方向に対する引張速度200mm/minでの引張試験の結果が下記(4)~下記(6)を満たすことが好ましい。
(4)降伏点を示さない
(5)破断伸び350%以上
(6)50%伸び時荷重が1N以下
【0012】
上記食品包装用フィルムにおいては、一対の表面層と、前記一対の表面層の間に設けられ、着色剤を含む中間層との少なくとも3層を備えたことが好ましい。
【0013】
上記食品包装用フィルムにおいては、前記表面層が防曇剤を含有することが好ましい。
【0014】
上記食品包装用フィルムにおいては、前記表面層及び前記中間層の少なくとも一方が、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群から選択された少なくとも1種を主成分とすることが好ましい。
【0015】
本発明の食品用ストレッチフィルムは、上記食品包装用フィルムを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の食品用小巻ラップフィルムは、上記食品包装用フィルムを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の食品包装用フィルムの製造方法は、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計で測定した昇温速度10℃/minで昇温時の結晶融解ピーク温度を180℃以上に有さない樹脂組成物を含有し、380nm以上750nm以下における最大吸収波長を600nm以上750nm以下に有し、下記(1)~下記(3)を満たす食品包装用フィルムの製造方法であって、表面層を形成する第1樹脂組成物と、中間層を形成する着色剤を含む第2樹脂組成物とを共押出しにより積層し、一対の表面層間に中間層が設けられた厚さ5μm以上30μm以下の食品包装用フィルムを製造する工程を含むことを特徴とする。
(1)全光線透過率が70%以上
(2)最大吸収波長における吸光度が、470nmにおける吸光度の3倍以上
(3)200mm/minのスピードにて、100%伸長した後の最大吸収波長における吸光度が、470nmにおける吸光度の2.5倍以上
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フィルムのカットに伴うフィルムちぎれカスの発生を低減でき、しかも、食品に混入したフィルムちぎれカスの検出が容易な食品包装用フィルム、食品用ストレッチフィルム、食品用小巻ラップフィルム及び食品包装用フィルムの製造方法を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態によって何ら限定されるものではない。
【0020】
<用語の説明>
本実施の形態においては、「主成分」とは、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意味を包含する。なお、「主成分」とは、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分の含有量が組成物中の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上(100%含む)であることがより好ましい。また、2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量を上記「主成分」とする。
【0021】
本実施の形態においては、「ストレッチフィルム」とは、伸び性及び自己粘着性を有する包装フィルムを広く包含する意味である。ストレッチフィルムとしては、例えば、青果物、精肉及び惣菜などを軽量トレーに載せてオーバーラップするプリパッケージ用の包装用フィルムなどが挙げられる。
【0022】
本実施の形態においては、「小巻ラップフィルム」とは、容器への密着性と箱から引き出したフィルムをカットする際のカット適性を有する包装フィルムを包含する意味である。小巻ラップフィルムとしては、例えば、一般家庭及びレストランなどで、調理した食品を陶器及びプラスチック容器などに載せて包装する、いわゆるラップフィルムを挙げることができる。
【0023】
本実施の形態においては、「食品包装用フィルム」とは、「ストレッチフィルム」と「小巻ラップフィルム」両者を包含する意味である。
【0024】
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。また、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JIS K6900)。例えば、厚さに関しては、狭義では100μm以上のものをシートと称し、100μm未満のものをフィルムと称すことがある。しかし、シートとフィルムとの境界は定かでなく、本実施の形態において文言上両者を区別する必要がない。本実施の形態においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0025】
また、本実施の形態においては、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【0026】
<食品包装用フィルム>
次に、本実施の形態に係る食品包装用フィルム(以下、単に「フィルム」ともいう)について説明する。この食品包装用フィルムは、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計で測定した昇温速度10℃/minで昇温時の結晶融解ピーク温度を180℃以上に有さない樹脂組成物を含む厚さ5μm以上30μm以下の食品包装用フィルムである。食品包装用フィルムは、380nm以上750nm以下における最大吸収波長を600nm以上750nm以下に有し、下記(1)~下記(3)を満たす。
(1)全光線透過率が70%以上
(2)最大吸収波長における吸光度が、470nmにおける吸光度の3倍以上
(3)200mm/minのスピードにて、100%伸長した後の最大吸収波長における吸光度が、470nmにおける吸光度の2.5倍以上
【0027】
食品包装用フィルムは、示差走査熱量計で測定した昇温速度10℃/minで昇温時の結晶融解ピーク温度を180℃以上に有さない樹脂組成物、つまり昇温時に結晶融解ピーク温度が生じる場合、結晶融解ピーク温度が180℃未満となる樹脂組成物を含むので、被包装物の包装時に食品包装用フィルムを熱線によってカットすることができ、食品包装用フィルムのカットに伴うフィルムちぎれカスの発生自体を低減することができる。また、食品包装用フィルムは、380nm以上750nm以下における最大吸収波長を600nm以上750nm以下に有し、最大吸収波長における吸光度が、470nmにおける吸光度の3倍以上であるので、フィルムが青色に着色して食品に混入したフィルムちぎれカスの視認性が向上する。さらに、食品包装用フィルムは、全光線透過率が70%以上であるので、被包装物の視認性が十分に得られる。さらに、食品包装用フィルムは、厚さ5μm以上30μm以下であって、200mm/minのスピードにて、100%伸長した後の最大吸収波長における吸光度が、470nmにおける吸光度の2.5倍以上であるので、被包装体の包装時に伸長した際においても、フィルム自体の色ムラを低減することができ、ストレッチフィルムとして用いた場合であっても、食品に混入したフィルムちぎれカスを容易に視認することができる。
【0028】
上記(1)全光線透過率の上限に特に制限はなく、例えば、90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましく、80%以下であることが更に好ましい。
【0029】
上記(2)最大吸収波長における吸光度は、フィルム自体を効率良く着色してフィルムちぎれカスの視認性を向上する観点から、470nmにおける吸光度の3.2倍以上であることが好ましく、3.35倍以上であることがより好ましく、3.5倍以上であることが更に好ましく、また20倍以下であることが好ましい。
【0030】
上記(3)200mm/minのスピードにて、100%伸長した後の最大吸収波長における吸光度は、フィルム自体の色ムラを防いでフィルムちぎれカスの視認性を向上する観点から、470nmにおける吸光度の2.8倍以上であることが好ましく、3.2倍以上であることがより好ましく、3.5倍以上であることが更に好ましく、また20倍以下であることが好ましい。
【0031】
また、食品包装用フィルムにおいては、JIS K7121に準拠し、幅方向に対する引張速度200mm/minで引張試験を行った際に、下記(4)~下記(6)を満たすことが好ましい。
(4)降伏点を示さない
(5)破断伸び350%以上
(6)50%伸び時荷重が1N以下
【0032】
食品包装用フィルムにおいては、上記(4)~上記(6)を満たすことにより、被包装体をストレッチ包装する場合においても、好適な伸び特性が得られるので、被包装物の包装時の作業性が向上する。
【0033】
食品包装用フィルムにおいては、特に伸長時の色ムラ発生防止の観点から、引張試験により得られる応力ひずみ曲線において、降伏点を有さないことが好ましい。一般的に、フィルムは伸長されて厚みが薄くなると色は薄くなる。通常、色の濃さはLambert-Beerの法則に基づき、厚みに反比例する。吸光度は、例えば、100%伸び時、すなわち2倍に伸長した場合、元の吸光度の半分となる。ここで、フィルムが降伏点を有する場合、降伏点以上の伸度では、局所的な伸びを示すので、特定領域が極端に薄く伸ばされる結果、局所的に色が薄くなる色ムラ部を生じることになる。例えば、フィルム全体としては2倍に伸長されていても、局所部だけに着目すると2倍以上に伸長されるので、局所部の吸光度は半分よりも小さい値をとり、色が極端に薄い「色ムラ部」となる。
【0034】
また、降伏点以上の伸度での変形は、塑性変形となるので、伸長させる力を取り除いても、変形後は元の厚みに戻ることはない。これに対して、降伏点を有さない場合は、弾性変形となるため、伸長させる力を取り除けば、一定程度は厚みが復元することができる。すなわち、フィルムがちぎれカスとなった場合、破片となったフィルムは、その前に伸長する力を受けていても、伸長前の色目に近い色の濃さに戻るので、破片となったフィルムを目視で容易に認識することができる。
【0035】
食品包装用フィルムは、ストレッチ包装用フィルムとして用いる場合には、作業性の観点から、破断伸び500%以上であって、50%伸び時荷重が1N以下であることが好ましい。また、食品包装用フィルムは、破断伸びは、破断伸びが350%以上であれば、包装時のフィルムの破れによるちぎれカスの発生の誘発を防ぐことができる。また、食品包装用フィルムは、50%伸び時荷重が1N以下であれば、包装時に必要な力が少なくなり、作業性の観点から好ましい。すなわち、食品包装用フィルムは、例えば、厚さが5μmであれば、50%モジュラスが15MPa以下、厚さが30μmの厚みであれば、50%モジュラスが2.5MPa以下であればよく、この範囲内であれば、任意の弾性率であって構わない。
【0036】
上記(5)破断伸びは、被包装物の包装の作業性を向上する観点から、400%以上であることが好ましく、450%以上であることがより好ましく、470%以上であることが更に好ましい。
【0037】
上記(6)50%伸び時荷重は、被包装物の包装の作業性を向上する観点から、0.9N以下であることがより好ましく、0.85N以下であることがより好ましく、0.8N以下であることが更に好ましく、また0.3N以上であることが好ましい。
【0038】
以下、本実施の形態に係る食品包装用フィルムの構成例について詳細に説明する。食品包装用フィルムは、着色剤を含む熱可塑性樹脂組成物を含有する。着色剤は、食品包装用フィルムの全体に含有していてもよく、着色層として食品包装用フィルムの一部に含有していてもよい。また、食品包装用フィルムは、着色剤を含まない一対の表面層と、一対の表面層の間に中間層としての着色剤を含有する着色層とを積層した積層フィルムにしてもよい。なお、食品包装用フィルムは、力学特性や層間接着性の改良など必要に応じて他の層を適宜導入してもかまわない。
【0039】
食品包装用フィルムは、各層の樹脂組成や積層比に関しては同一であってもよく、異なっていてもよい。食品包装用フィルムは、着色剤のブリードアウト防止の観点から、表面層は着色層ではないことが好ましい。また、食品包装用フィルムは、中間層に添加した着色剤が表層を透過して表面へブリードアウトを防止する観点から、着色層からフィルムの最表面までの厚みは1.0μm以上あることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましい。
【0040】
着色剤としては、380nm以上750nm以下における最大吸収波長を600nm以上750nm以下に有する染料及び顔料などが用いられる。このような着色剤としては、例えば、ヘキサシアノ鉄(II)、酸鉄(III)、銅フタロシアニン、酸化第一コバルト・酸化アルミニウム混合物、インジゴ、ウルトラマリンなどが挙げられる。
【0041】
着色剤としては、着色剤のブリードアウト防止の観点から、非水溶性であり、且つ、顔料であることが好ましい。非水溶性の着色剤を用いることにより、包装時にフィルムに付着する水分による着色剤の溶出を防止でき、被包装物への色移りを防ぐことができる。また、顔料を着色剤として用いることにより、分子量の高い顔料はブリードアウトしにくいので、被包装物への色移りを防ぐことができる。このような観点から、着色剤としては有機顔料が好ましく、銅フタロシアニン系着色剤がより好ましい。着色剤の配合量は、食品包装用フィルムを効率良く着色する観点から、食品包装用フィルムの全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.15質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上が更に好ましく、また0.91質量%以下が好ましく、0.82質量%以下がより好ましく、0.73質量%以下が更に好ましい。
【0042】
熱可塑性樹脂としては、特に制限はない。熱可塑性樹脂としては、伸長時の色ムラ発生防止及び熱線でのカット性という観点から、180℃以上に融解熱量を有さない樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂としては、着色剤のブリードアウトを防いで被包装物への色移りを防止する観点から、結晶化度が高い結晶性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂がより好ましい。
【0043】
食品包装用フィルムの厚さは、一般的に、食品包装用フィルムに柔軟性を持たせるには薄い方が好ましく、フィルムカスの視認性を高めるためには厚い方が好ましい。食品包装用フィルムの厚さは、通常のストレッチ包装用フィルム、小巻ラップフィルムとして用いられる範囲、すなわち5μm以上30μm以下である。食品包装用フィルムの厚さは、フィルムのちぎれカスの発生自体を抑止する観点及び後述するフィルム柔軟性の観点から、8μm以上20μm以下であることが好ましく、8μm以上15μm以下であることがより好ましい。
【0044】
<表面層>
表面層は、熱可塑性樹脂組成物を含有する。表面層に用いられる熱可塑性樹脂組成物としては、エチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群から選択された少なくとも1種を主成分とする樹脂組成物が好ましい。なお、表面層を食品包装用フィルムの表裏面にそれぞれ設ける場合には、2つの表面層は、同一の樹脂組成物を含有してもよく、異なる樹脂組成物を含有してもよい。
【0045】
表面層に用いられるエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体及びエチレン-メタクリルエステル共重合体の中から選ばれる少なくとも一種のエチレン系重合体が好ましい。これらのエチレン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
エチレン系樹脂としては、これらの中でも、酢酸ビニル単位含有量が5質量%以上25質量%以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体がより好ましい。また、エチレン系樹脂としては、メルトフローレート(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.2g/10分以上10g/10分以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体が更に好ましく、0.5g/10分以上8g/10分以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体がより更に好ましく、1g/10分以上6g/10分以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体がより更に好ましい。
【0047】
表面層に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムプロピレン、ブロックポリプロピレン、ポリプロピレン系エラストマーなどが挙げられる。これらのポリプロピレン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
表面層は、防曇剤を含有することにより食品包装用フィルムの防曇性を高めることができる。防曇剤としては、例えば、ジグリセリンオレートなどのポリグリセリンオレート、ポリグリセリンラウレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレートが挙げられる。また、表面層は、粘着剤を配合することにより食品包装用フィルムの密着性をさらに高めることができる。
【0049】
食品包装用フィルムは、防曇性、帯電防止性、滑り性、粘着性などの性能をさらに向上するために、次のような各種添加剤を適宜配合することができる。添加剤としては、例えば、炭素数が1以上12以下、好ましくは1以上6以下の脂肪族アルコールと、炭素数が10以上22以下、好ましくは12以上18以下の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪族アルコール系脂肪酸エステルとしては、例えば、モノグリセリンオレート、ポリグリセリンオレート、ポリグリセリンポリリシノレート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンラウレート、グリセリンアセチルラウレート、メチルアセチルリシレート、エチルアセチルリシレート、ブチルアセチルリシレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリプロピレングリコールオレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンエーテルポリオール、パラフィン系オイルなどが挙げられる。これらの添加剤は、1種で単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
上記添加剤としては、表面にブリードアウトすることで効果を発現するため、常温で液状のものがより好ましい。また、上記添加剤の配合量としては、ポリエチレン系樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上12質量部以下が好ましく、1質量部以上8質量部以下がより好ましい。
【0051】
表面層には、本発明の効果を奏する範囲で、熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、アンチブロッキング剤及び光安定剤などの添加剤を適宜配合することができる。また、表面層としては、被包装物への色移り防止の観点から、着色剤を添加しないものが望ましい。
【0052】
表面層の厚さは、食品包装用フィルムの伸び性の観点から、1μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましく、2μm以上がより好ましく、また10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、6μm以下が更に好ましい。
【0053】
また、表面層の厚さは、食品包装用フィルムの伸び性の観点から、食品包装用フィルム全体の厚さに対して、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、45%以上であることが更に好ましく、また70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、55%以下であることが更に好ましい。
【0054】
<着色層>
着色層は、着色剤と熱可塑性樹脂組成物とを含有する。着色剤としては、上述した着色剤と同様のものが用いられる。着色層における着色剤の配合量は、食品包装用フィルムを効率良く着色する観点から、着色層の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましく、また1.0質量%以下が好ましく、0.9質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下が更に好ましい。また、着色層は、被包装物への色移り防止の観点から、表面層以外の中間層に用いることが好ましい。
【0055】
着色層に用いられる熱可塑性樹脂組成物としては、エチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群から選択された少なくとも1種を主成分とする樹脂組成物が好ましい。ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とする共重合体が挙げられる。エチレンを主成分とする共重合体としては、例えば、エチレンと、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、ヘプテン-1、オクテン-1などの炭素数3~10のα-オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル及びそのアイオノマー、共役ジエン及び非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる1種又は2種以上のコモノマーとの共重合体、多元共重合体、並びに、それらの混合組成物などを挙げることができる。エチレン系重合体中のエチレン単位の含有量としては、50質量%以上が好ましい。
【0056】
これらのエチレン系樹脂の中でも、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体及びエチレン-メタクリルエステル共重合体及びアイオノマー樹脂の中から選ばれる少なくとも一種のエチレン系重合体が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。
【0057】
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどが挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどが挙げられる。これらの中でも、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1から選ばれるα-オレフィンをコモノマーとした線状低密度ポリエチレンが好ましく、より好ましくは1-ヘキセンをコモノマーとした線状低密度ポリエチレンである。
【0058】
エチレン系樹脂としては、着色剤のブリードアウト防止の観点から、結晶化度の高い樹脂、すなわち高融点のエチレン系樹脂が好ましい。また、エチレン系樹脂としては、伸長時の色ムラ発生防止、及び熱線でのカット性の観点から、180℃以上に融解熱量を有さないエチレン系樹脂が望ましい。
【0059】
エチレン系樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒及びメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法及び気相重合法などが挙げられる。また、エチレン系重合体の製造方法としては、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法を用いてもよい。着色層に用いるエチレン系重合体としては、シングルサイト触媒を用いて製造されたものが望ましい。
【0060】
着色層に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムプロピレン、ブロックポリプロピレン、ポリプロピレン系エラストマーなどが挙げられる。これらのポリプロピレン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
なお、着色層は、本発明の効果を奏する範囲で、相溶化剤及び再生原料を含有してもよい。また、着色層は、防曇剤、熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、アンチブロッキング剤、光安定剤などの着色剤以外の添加剤も適宜含有してもよい。着色層の添加剤としては、常温では液体ではないものが望ましい。
【0062】
着色層の厚さは、食品包装用フィルムを効率良く着色する観点から、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.3μm以上が更に好ましく、また10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、6μm以下が更に好ましい。
【0063】
また、着色層の厚さは、食品包装用フィルムを効率良く着色する観点から、食品包装用フィルム全体の厚さに対して、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、25%以上であることが更に好ましく、また70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、55%以下であることがより好ましい。
【0064】
さらに着色層の厚さは、食品包装用フィルムを効率良く着色する観点から、表面層の厚さに対して、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、45%以上であることが更に好ましく、また80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、65%以下であることが更に好ましい。
【0065】
<再生原料>
さらに、食品包装用フィルムは、本発明の効果を奏する範囲で、再生原料をいずれかの層に添加してもよい。再生原料は、食品包装用フィルムの両表面層以外の中間層、又は着色層に添加することが好ましい。再生原料としては、例えば、製膜した食品包装用フィルムの両端をカットしてトリミングした際に発生するトリミングロス、及び成形不良品などを用いることができる。また、再生原料としては、本発明の効果を奏する範囲で、表面層及び他の層の材料を含んでいてもよい。このような再生原料を用いることにより、食品包装用フィルムの製造時の材料の無駄を無くし、材料コストの軽減を図ることができる。
【0066】
<その他の層>
食品包装用フィルムは、本発明の効果を奏する範囲で、力学特性及び層間接着性の改良など必要に応じてその他の層を中間層として適宜備えていてもよい。その他の層としては、例えば、表面層と着色層との間に設ける接着層、再生層、耐衝撃層及びバリア層などが挙げられる。また、接着層、再生層、耐衝撃層及びバリア層は、着色剤を含有することで、着色層として機能させることもできる。
【0067】
<層構成>
食品包装用フィルムでは、表面層と同様の組成からなる層が、両表面層以外に介在してもかまわないし、また、着色層と同様の組成からなる層が、両表面層の間に2層以上介在してもかまわない。食品包装用フィルムは、例えば、表面層/着色層/表面層の2種3層の構成としてもよく、表面層/接着層/着色層/接着層/表面層及び表面層/着色層/再生層/着色層/表面層などからなる5層構成としてもよく、表面層/接着層/着色層/着色層/接着層/表面層、表面層/着色層/再生層/再生層/着色層/表面層、表面層/再生層/接着層/着色層/接着層/表面層及び表面層/着色層/接着層/耐衝撃層/接着層/表面層などからなる6層構成、表面層/接着層/着色層/表面層/着色層/接着層/表面層、表面層/接着層/着色層/接着層/着色層/接着層/表面層、表面層/再生層/接着層/着色層/接着層/再生層/表面層、表面層/着色層/接着層/耐衝撃層/接着層/着色層/表面層、表面層/再生層/着色層/耐衝撃層/着色層/再生層/表面層及び表面層/着色層/着色層/耐衝撃層/着色層/着色層/表面層などからなる7層構成としてもよい。これらの中でも、食品包装用フィルムは、少なくとも表面層/着色層/表面層をこの順に有する少なくとも3層からなる積層フィルムが好ましく、表面層/着色層/表面層の2種3層の構成とすることがより好ましい。
【0068】
<製造方法>
次に、食品包装用フィルムの製造方法について説明する。なお、食品包装用フィルムの製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
【0069】
まず、各層の原料が混合組成物である場合には、予め各層の原料を混合しておき、必要に応じてペレット化することが好ましい。原料の混合方法としては、例えば、予めニーダー、バンバリーミキサー及びロールなどの混練機、単軸又は二軸押出機などを用いてプレコンパウンドするようにしてもよく、各原料をドライブレンドして直接フィルム押出機に投入してもよい。また、着色剤及び酸化防止剤などの添加剤は、マスターバッチの状態としても市販されているので、これらを用いることでより好適に混合することができる。いずれの混合方法においても、原料の酸化・分解による劣化を考慮する必要があるが、均一に混合させるためにはプレコンパウンドすることが好ましい。
【0070】
次に、各層の原料を、それぞれ別々の押出機に投入して溶融押出し、Tダイ成形又はインフレーション成形により表面層を形成する第1樹脂組成物と、中間層を形成する着色剤を含む第2樹脂組成物とを共押出して積層し、一対の表面層間に中間層が設けられた食品包装用フィルムとする。ここでは、実用的には環状ダイから材料樹脂を溶融押出してインフレーション成形することが好ましい。また、色ムラ発生防止のために、TD方向に対し降伏点を有さないようなフィルムを製膜する観点から、ブローアップ比(チューブ径/ダイ径)は3以上であることが好ましく、特に4以上10以下の範囲とすることがより好ましい。冷却方法としては、チューブの外面から冷却してもよく、チューブの内/外両面から冷却してもよい。
【0071】
また、防曇性、帯電防止性及び粘着性などの付与、促進の観点から、コロナ処理及び熟成などの処理をしてもよく、またコーティングなどの表面処理及び表面加工を行ってもよい。
【0072】
得られた食品包装用フィルムは、両端をトリミングした後、所望の幅にスリットして製品化する。食品包装用フィルムは、生産性、経済性、及び使用時の利便性から巻長さが500m以上のフィルムロールとすることが好ましく、750m以上のフィルムロールとすることがより好ましい。
【0073】
以上説明したように、上記実施の形態によれば、被包装物の包装時に食品包装用フィルムを熱線によってカットすることができるので、フィルムのカットに伴って発生するフィルムちぎれカスを大幅に低減することができる。また、食品包装用フィルムが適切な青色・濃度に着色して視認性が向上すると共に、被包装物の視認性が十分に得られる。さらに、被包装体の包装時に伸長した際においても、フィルム自体の色ムラを低減することができるので、ストレッチフィルムとして用いた場合であっても、フィルムちぎれカスを容易に視認することができる。したがって、ちぎれカス自体の発生を抑止し、食品へのフィルムちぎれカス混入を防止するのに好適に用いることができる食品包装用フィルムを実現できる。
【0074】
また、上記実施の形態によれば、着色剤を多めに添加してフィルムの色目を濃くする必要もなく、着色剤のブリードアウトによる被包装物への色移りを防ぐことができるので、被包装物の商品価値を著しく損なってしまうことがない。また、ポリオレフィンなどの結晶性樹脂を用いた場合であっても、着色剤のブリードアウトをより防ぐことができるので、フィルムが降伏挙動を示すことを防いで、色ムラを生じさせやすくなってしまうことがない。したがって、本実施の形態に係る食品包装用フィルムは、小巻ラップフィルム及びストレッチフィルムなどとして好適に用いることができる。
【実施例
【0075】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例及び比較例に基づいてより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例及び比較例によって何ら制限されない。
【0076】
本実施例に係る食品包装用フィルムについての種々の測定値及び評価の条件は以下の通りである。なお、食品包装用フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向(以下「MD」ともいう)とし、縦方向に直交する方向を横方向(以下「TD」ともいう)とする。また、上記実施の形態に係る食品包装用フィルムについての種々の測定値及び評価は、本実施例と同様の条件で行うことができる。
【0077】
(1)全光線透過率
ヘーズメーター(型式:NDH5000、日本電色工業社製)にて、JIS K7361-1に準拠して全透過光量を測定し、下記式(A)に基づいて算出した。
全光線透過率=(全透過光量)/(入射光量)×100 ・・・式(A)
【0078】
(2)非伸長時の最大吸収波長及び吸光度比
分光光度計(型式:U-4000、日立ハイテクノロジーズ社製)にて、食品包装用フィルム1枚での380nm~750nmの吸光度を測定した。得られた吸光度スペクトルから最大吸収波長(λmax)、最大吸収波長における吸光度Abs(λmax)、及び470nmにおける吸光度Abs(470nm)を求めた。吸光度比は、下記式(B)に基づいて算出した。
吸光度比=Abs(λmax)/Abs(470nm) ・・・式(B)
【0079】
(3)伸長時の最大吸収波長及び吸光度比
食品包装用フィルムを幅10cm、長さ10cmの正方形短冊のサンプルとし、万能引張試験機(型式:オートグラフAGS-H、島津製作所製)に装着した。温度23℃、標線間距離40mm、引張速度200mm/minの条件にて、横方向(TD方向)に標線間距離が80mm(100%伸び)となるまで伸長して5秒間保持した。その後、引張試験機より取り外して得られた試験片の標線間部分に対し、上記(2)非伸長時の最大吸収波長及び吸光度比と同様にして吸光度を測定して吸光度比を算出した。
【0080】
(4)伸び特性(TD方向)
JIS K7127に準拠して食品包装用フィルムの横方向(TD方向)に対し、下記条件にて引張試験を行い、降伏点の有無、破断伸度、50%伸び時荷重を求めた。
・引張速度:200mm/min
・温度:23℃
・標線間距離/チャック間距離:40mm
・試験片形状:幅(MD方向)1cm、長さ(TD方向)10cm、短冊状
測定は5回行い(N5)、降伏点の有無については、得られた応力ひずみ曲線の0%以上50%以下伸びの範囲において、10%刻みで算出した傾きが-0.5[N/%-伸び]以下の値を含むとき「降伏点あり」と判定した。
また、破断伸びについては、5回の測定値の最小値とし、50%伸び時荷重については、5回の測定値の最大値とした。
なお、モジュラスについても同条件で測定が可能であり、50%モジュラスとは50%まで伸ばした時の応力である。
【0081】
(5)融解ピーク温度(Tm)
示差走査熱量計(形式:DSC8500、パーキンエルマー社製)を用いて、JIS K7121、JIS K7122に準拠して測定した。融解ピーク温度(Tm)は、測定サンプルを10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、得られた結融解曲線に基づき求めた。
【0082】
(6)伸長時の色ムラ発生の有無
食品包装用フィルムを幅10cm、長さ10cmの正方形短冊のサンプルとし、万能引張試験機(島津製作所製オートグラフAGS-H)に装着した。温度23℃、標線間距離40mm、引張速度200mm/minにて、横方向(TD方向)に標線間距離が80mm(100%伸び)となるまで伸長したものを目視で確認した。評価基準を以下に示す。
○:色ムラの発生なし
△:色ムラ部が薄い青色に見える程度の色ムラが発生
×:色ムラ部が無色透明に見える程度の色ムラが発生
【0083】
(7)見分け性
(7-1)非伸長時の食品混入時の見分け性
非伸長時の食品包装用フィルムから幅5mm、長さ5mmの正方形のフィルム片を作製して食品へ混入させた後、フィルム片を発見できるか否かを目視で確認した。評価基準を以下に示す。
○:フィルム片を容易に発見可能
△:フィルム片をしっかり観察しないと発見できない
×:フィルム片を発見できない
(7-2)伸長時の食品混入時の見分け性
非伸長時の食品包装用フィルムを幅10cm長さ10cmの正方形の試験片とし、万能引張試験機(形式:オートグラフAGS-H、島津製作所製)に装着して温度23℃、標線間距離40mm、引張速度200mm/minにて、幅方向(TD方向)に標線間距離が80mm(100%伸び)となるまで伸長し、5秒間保持した。その後、引張試験機より取り外して得られた試験片の標線間部分から5mm×5mmの正方形のフィルム片を作製し、食品へ混入させてフィルム片を発見できるか否かを目視で確認した。評価基準は、上記(7-1)非伸長時の食品混入時の見分け性と同様である。
【0084】
(8)包装性
幅300mmの食品包装用フィルムを用い、手包装機(形式:ダイアラッパー A-420、三菱ケミカル社製)により、温度調整ボリューム:5.5の条件にて、発泡ポリスチレントレー(奥行150mm、幅200mm、高さ30mm)を包装し、熱線カット性、横伸ばし性及びシワの各項目について評価した。なお、熱線の温度は接触式温度計で確認したところ、155℃であった。評価基準を以下に示す。
(8-1)熱線カット性
○:容易にカット可能
△:食品包装用フィルムをしっかり熱線に触れさせればカット可能
×:カット不能
(8-2)横伸ばし性(TD方向)
○:容易に伸ばすことが可能
△:やや力を要するが伸ばすことが可能
×:伸ばすのに力が必要ですぐに破れる
(8-3)シワ
○:僅かなシワの発生
△:天面の面積の30%以上にシワが発生
×:ほぼ全面にわたりシワが発生
【0085】
(実施例1)
表面層形成用樹脂組成物は、エチレン系重合体としてのEVA(酢酸ビニル含有量:15質量%、メルトフローレート(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N):2.0g/10分)(以下、「EVA」と略する)97質量部と、防曇剤としてのジグリセリンオレート3質量部とを混合した後、温度175℃~190℃に設定した単軸押出機に投入して溶融混練して作製した。
【0086】
着色層形成用樹脂組成物は、銅フタロシアニンを主成分とする着色剤を含んだカラーMB(顔料濃度:12.5質量%、基材:ポリエチレン)(以下、「カラーMB」と略する)5質量部と、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.913g/cm、MFR:2.0g/10分)(以下、「LLD-1」と略する)95質量部とを混合した後、温度180℃~190℃に設定した単軸押出機に投入して溶融混練して作製した。
【0087】
溶融混練した表面層形成用樹脂組成物及び着色層形成用樹脂組成物を合流させ、温度200℃に設定した2種3層の環状多層ダイを使用し、ブローアップ比10.0で表面層/着色層/表面層の順に共押出インフレーション成形し、総厚み10μm(表面層/着色層/表面層=2.5μm/5.0μm/2.5μm)の食品包装用フィルムのフィルムロールを製膜した。本実施例の食品包装用フィルムは、表面層/着色層/表面層の3層構造となる。得られた食品包装用フィルムの評価結果を下記表1に示す。
【0088】
(実施例2)
低密度ポリエチレン(密度:0.925g/cm3、MFR:2.8g/10分)70質量部と、直鎖状低密度ポリエチレン「LLD-2」30質量部の混合樹脂100質量部に対して、ジグリセリンオレートを主成分とする防曇剤1.5質量部を添加した混合樹脂組成物を表面層形成用樹脂組成物とした以外は、実施例1と同様にして、総厚み10μm(表面層/着色層/表面層=2.5μm/5.0μm/2.5μm)の食品包装用フィルムのフィルムロールを製膜した。本実施例の食品包装用フィルムは、表面層/着色層/表面層の3層構造となる。得られた食品包装用フィルムの評価結果を下記表1に示す。
【0089】
(実施例3)
表面層形成用樹脂組成物は、実施例1と同様に作成した。着色層形成樹脂組成物を、カラーMB5質量部と、ポリプロピレン系樹脂(プロピレンーエチレンランダム共重合体、エチレン含有率:3質量%、MFR(JIS K7210、温度:230℃、荷重:21.18N):3.0g/10分)(以下、「PP-1」と略する)31質量部と、ポリプロピレン系樹脂(プロピレンーエチレンランダム共重合体、エチレン含有率:15質量%、MFR:2.0g/10分)(以下、「PP-2」と略する)27質量部と、水素添加石油樹脂(軟化温度:125℃)16質量部と、「EVA」21質量部の混合樹脂組成物とし、実施例1と同様にして総厚み10μm(表面層/着色層/表面層=2.5μm/5.0μm/2.5μm)の食品包装用フィルムのフィルムロールを製膜した。本実施例の食品包装用フィルムは、表面層/着色層/表面層の3層構造となる。得られた食品包装用フィルムの評価結果を下記表1に示す。
【0090】
(実施例4)
表面層形成用樹脂組成物は、実施例1と同様に作製した。着色層形成用樹脂組成物は、質量比でカラーMB/LLD-1=8/92の割合で混合した後、押出温度180℃~190℃に設定した単軸押出機に投入して溶融混練して作製した。中間層形成用樹脂組成物は、LLD-1を温度180℃~190℃に設定した単軸押出機に投入して作製した。
【0091】
溶融混練した表面層形成用樹脂組成物、着色層形成用樹脂組成物及び中間層形成用樹脂組成物を合流させ、温度190℃に設定した7層Tダイを使用して、ダイギャップ1mmで表面層/着色層/中間層/中間層/中間層/着色層/表面層の順に共押出した。その後、温度30℃ に設定したキャストロールにて急冷し、Tダイ法にて総厚み10μm(表面層/着色層/中間層/中間層/中間層/着色層/表面層=2.5μm/1.5μm/0.5μm/1.0μm/0.5μm/1.5μm/2.5μm)の食品包装用フィルムのフィルムロールを製膜した。本実施例の食品包装用フィルムは、表面層/着色層/中間層/中間層/中間層/着色層/表面層の7層構造となる。得られた食品包装用フィルムの評価結果を下記表1に示す。
【0092】
(比較例1)
表面層形成用樹脂組成物としては、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.919g/cm、MFR:2.0g/10分)(以下、「LLD-2」と略する)80質量部と、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.937g/cm、MFR:2.3g/10分)(以下、「LLD-3」と略する)20質量部とを混合して混合樹脂とした後、混合樹脂100質量部に対して、ジグリセリンオレートを主成分とする防曇剤3.1質量部を添加し、温度200℃~245℃に設定した単軸押出機に投入し溶融混練して作製した。
【0093】
着色層形成用組成物については、カラーMB、LLD-2、及び再生原料を、質量比でカラーMB/LLD-2/再生原料=8/37/55の割合で混合して混合樹脂とした後、混合樹脂100質量部に対して、防曇剤としてジグリセリンオレート3.8質量部を添加し、温度200℃~240℃に設定した同方向2軸押出機に投入し溶融混練して作製した。
【0094】
耐熱層形成用樹脂組成物としては、ポリアミド6(密度:1.13g/cm、融点:225℃)を用いた。接着層形成用組成物としては、ポリアミド及びポリエチレン樹脂に対して接着性のある、酸変性ポリエチレン(以下、「ADR」と略する)25質量部と、LLD-2を75質量部とを混合し、単軸押出機に投入し溶融混練して作製した。
【0095】
溶融混練した表面層、着色層、耐熱層及び接着層を合流させ、240℃に設定した7層Tダイを使用し 、ダイギャップ1mmで表面層/着色層/接着層/耐熱層/接着層/着色層/表面層の順に共押出した。その後、温度30℃に設定したキャストロールにて急冷し、Tダイ法にて総厚み7μm(表面層/着色層/接着層/耐熱層/接着層/着色層/表面層=0.9μm/1.6μm/0.4μm/1.2μm/0.4μm/1.6μm/0.9μm)の食品包装用フィルムのフィルムロールを製膜した。本比較例の食品包装用フィルムは、表面層/着色層/接着層/耐熱層/接着層/着色層/表面層の7層構造となる。得られた食品包装用フィルムの評価結果を下記表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
表1から分かるように、本実施例に係る食品包装用フィルムは、伸長時においても色ムラが発生せず、ちぎれカスの食品混入時の見分け性に優れていると共に、熱線によるカットが可能であり、横伸ばし性にも優れていた(実施例1から実施例4)。さらに、実施例1及び実施例3については包装性のシワの評価で実施例2及び実施例4よりさらに優れていた。これに対して、比較例1に係る食品包装用フィルムは、伸長時に色ムラが発生し、伸長時の食品混入時の見分け性に劣り、熱線によるカットができなかった。これらの結果から、本発明によれば、フィルムちぎれカスの見分けを容易にするとともに、食品へのちぎれカス混入を防止するのに好適に用いることができることが分かる。また、実施例1及び実施例3と実施例2との結果から、表面層形成用樹脂組成物は、エチレン系重合体としてのEVA(酢酸ビニル含有量:15質量%、メルトフローレート(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N):2.0g/10分)(以下、「EVA」と略する)97質量部と、防曇剤としてのジグリセリンオレート3質量部とで形成することが好ましいことが分かる。さらに、実施例1及び実施例4の表面層形成用樹脂組成物が同一であるが、シワの評価結果から、製造方法としてはインフレーション成形が好ましいことが分かる。