(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂フィルム、金属張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20221012BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20221012BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20221012BHJP
B32B 15/088 20060101ALI20221012BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C08L79/08
C08K5/14
B32B15/08 J
B32B15/088
H05K1/03 610H
(21)【出願番号】P 2018088300
(22)【出願日】2018-05-01
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100193976
【氏名又は名称】澤山 要介
(72)【発明者】
【氏名】島田 麻未
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 稔
(72)【発明者】
【氏名】森田 高示
(72)【発明者】
【氏名】谷川 隆雄
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-012248(JP,A)
【文献】特開2016-204639(JP,A)
【文献】特開2016-131244(JP,A)
【文献】特開2018-012772(JP,A)
【文献】特開2016-169337(JP,A)
【文献】特表2012-516914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/08
C08K 5/14
B32B 15/08
B32B 15/088
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基、及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、
(B)有機過酸化物と、
(C)(B)成分とは異なる有機過酸化物と、を含有し、
前記(B)有機過酸化物の1分間半減期温度が、160℃超え230℃以下であり、
前記(C)(B)成分とは異なる有機過酸化物の1分間半減期温度が、100~160℃であ
り、
前記(A)成分が、下記一般式(A-6)で表される化合物である、樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは前記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基を示し、Qは前記飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を示す。nは1~10の整数を示す。)
【請求項2】
(D)前記(A)成分とは異なる熱硬化性樹脂をさらに含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(E)無機充填材をさらに含有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)成分が有する飽和又は不飽和の2価の炭化水素基が、炭素数8~100の2価の脂肪族炭化水素基である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
硬化物の10GHzでの比誘電率が3.0以下である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有する樹脂フィルム。
【請求項7】
請求項
6に記載の樹脂フィルムを1枚以上重ね、その両面に金属箔を配置し、加熱プレス成形して得られる金属張積層板。
【請求項8】
請求項
6に記載の樹脂フィルム又は請求項
7に記載の金属張積層板を用いて形成されるプリント配線板。
【請求項9】
請求項
8に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂フィルム、金属張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器及びその基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワークインフラ機器、あるいは大型コンピュータなどでは使用する信号の高速化及び大容量化が年々進んでいる。これに伴い、これらの電子機器に搭載されるプリント配線板には高周波化対応が必要となり、伝送損失の低減を可能とする高周波数帯での誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)(以下、「高周波特性」ともいう)に優れる基板材料が求められている。近年、このような高周波信号を扱うアプリケーションとして、上述した電子機器のほかに、ITS(Intelligent Transport Systems)分野(自動車、交通システム関連)及び室内の近距離通信分野でも、高周波無線信号を扱う新規システムの実用化が進んでおり、今後、これらの機器に搭載するプリント配線板に対しても低伝送損失の基板材料が要求されると予想される。
【0003】
従来、低伝送損失が要求される基板材料には、比誘電率及び誘電正接が低いフッ素樹脂が使用されてきた。しかしながら、フッ素樹脂は溶融温度及び溶融粘度が高く流動性が低いため、プレス成形を高温条件下で行う必要があった。また、優れた高周波特性を示す熱可塑性ポリマーとしてポリフェニレンエーテル(PPO、PPE)系樹脂が知られているが、ポリフェニレンエーテルも溶融粘度が高い高分子量体であるため、フッ素樹脂と同じく成形性の課題を抱えている。
【0004】
一方、熱硬化性樹脂組成物を用いて得られるプリプレグ(特許文献1参照)は、低温溶融性に優れ、比較的低温でのプレス成形が可能である。しかしながら、プリプレグの補強材として用いられるガラスクロスは、縦糸と横糸を織った構造であるため、織目が存在し、バスケットホールと呼ばれるガラスクロスのない隙間が存在する。そのため、面内でガラスクロスの存在比率が高い部分と、樹脂の存在比率が高い部分が混在し、面内で誘電特性が不均一となる。また、一般的なガラスクロスであるEガラスクロスは、高周波特性が不十分である。以上のことからミリ波帯に必要な高周波特性を考慮した場合は、ガラスクロス等の基材を含まない樹脂フィルムが適している。
【0005】
また、近年、小径で且つ必要な層間のみを非貫通穴で接続するインナービアホール(IVH)構造のビルドアップ積層方式のプリント配線板が開発され、急速に普及が進んでいる。ビルドアップ層の絶縁層には、薄型化のためにガラスクロスを含まない樹脂フィルムが用いられる場合が多い。また、ハイスペックの高周波特性が要求されるミリ波帯のアンテナ用途では、絶縁層の厚み精度及び比誘電率のバラつき精度の要求が厳しいため、ガラスクロスを含まない樹脂フィルムの方が有利である。
【0006】
上記のような背景から、ガラスクロスを含まない樹脂フィルムについて検討が行われている。樹脂フィルムには、反り量低減の需要から、低熱膨張係数化が求められており、優れた信頼性を得るために、導体との高接着性も要求される。また、生産性の観点からは、ベタつき、粉落ち等が生じない良好な取り扱い性も必要とされる。
【0007】
特許文献2には、ラミネートにおいて加圧及び加熱しながら回路基板に圧着させる接着補助層付き層間絶縁用樹脂フィルムが開示されている。
また、特許文献3には、ポリイミド系樹脂をベースとした、誘電特性及び耐熱性を向上できる樹脂フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-135859号公報
【文献】特開2014-101398号公報
【文献】特開2016-131244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2及び3に開示されている樹脂フィルムは、比較的低圧で熱圧着させるラミネートによって回路基板に圧着させる方法によって、効率よく多層配線板を製造することができる。しかし、ラミネートによる方法は、回路埋め込み性等の向上を目的として真空ラミネーターを使用するため、製造装置の制約が生じ、基板作製のプロセスが制限される。
一方、熱圧着させながら硬化させる加熱プレス成形によって樹脂フィルムを回路基板に圧着させる場合、形成される多層配線板の板厚の面内バラつきが生じる問題が発生する。板厚の面内バラつきが発生すると、特に多層配線板にした際に特性インピーダンスが変動し、高周波信号に歪みが生じる一要因となる。
したがって、配線板の製造プロセスの選択可能範囲を広げるためには、加熱プレス成形によって回路基板に圧着させる場合においても、均一な板厚が得られる樹脂組成物が求められている。
【0010】
本発明は、このような現状に鑑み、高周波特性(低誘電率、低誘電正接)に優れ、加熱プレス成形によって回路基板に圧着させる場合においても均一な板厚が得られる樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた樹脂フィルム、金属張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定の樹脂と特定の硬化促進剤とを組み合わせた樹脂組成物によって、当該課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は以下の[1]~[14]に関する。
[1](A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基、及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物と、
(B)有機過酸化物と、
(C)(B)成分とは異なる有機過酸化物、有機金属触媒及びアミン化合物からなる群から選択される1種以上の硬化促進剤と、を含有する樹脂組成物。
[2](B)有機過酸化物の1分間半減期温度が、160℃超え230℃以下である、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記(C)成分が(B)成分とは異なる有機過酸化物であり、該有機過酸化物の1分間半減期温度が100~160℃である、上記[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記(C)成分が有機金属触媒であり、該有機金属触媒がカルボン酸金属塩である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[5]前記(C)成分がアミン化合物であり、該アミン化合物がアミノシランカップリング剤である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[6](D)前記(A)成分とは異なる熱硬化性樹脂をさらに含有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7](E)無機充填材をさらに含有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]前記(A)成分が、下記一般式(A-6)で表される化合物である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは前記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基を示し、Qは前記飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を示す。nは1~10の整数を示す。)
[9]前記(A)成分が有する飽和又は不飽和の2価の炭化水素基が、炭素数8~100の2価の脂肪族炭化水素基である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]硬化物の10GHzでの比誘電率が3.0以下である、上記[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11]上記[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物を含有する樹脂フィルム。
[12]上記[11]に記載の樹脂フィルムを1枚以上重ね、その両面に金属箔を配置し、加熱プレス成形して得られる金属張積層板。
[13]上記[11]に記載の樹脂フィルム又は上記[12]に記載の金属張積層板を用いて形成されるプリント配線板。
[14]上記[13]に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高周波特性(低誘電率、低誘電正接)に優れ、加熱プレス成形によって回路基板に圧着させる場合においても均一な板厚が得られる樹脂組成物、樹脂フィルム、金属張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】板厚面内バラつきの測定に用いた試験片の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、本明細書において、高周波領域とは、300MHz~300GHzの領域を指し、特に高多層、ミリ波レーダーに用いられるアンテナの周波数領域は3GHz~300GHzを指すものとする。
【0015】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、
(A)マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基、及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物(以下、「(A)成分」ともいう)と、
(B)有機過酸化物(以下、「(B)成分」ともいう)と、
(C)(B)成分とは異なる有機過酸化物、有機金属触媒及びアミン化合物からなる群から選択される1種以上の硬化促進剤(以下、「(C)成分」ともいう)と、を含有するものである。
【0016】
本実施形態の樹脂組成物は、上記特定の組成を有することにより、高周波領域における比誘電率及び誘電正接が共に低いという優れた高周波特性を有する。また、本実施形態の樹脂組成物は、フッ素樹脂系に匹敵し、ポリフェニレンエーテル樹脂系を超える高周波特性を有するため、ミリ波信号を含むより高周波領域(70GHz以上)のアプリケーションへの適用が可能である。
また、本実施形態の樹脂組成物は、上記特定の組成を有することにより、加熱プレス成形によって回路基板に圧着させる場合においても均一な板厚が得られため、真空ラミネーター等の製造装置の制約が生じず、基板作製のプロセスの選択幅を広げることができる。
また、従来は、樹脂フィルムにおいてガラスクロス等を樹脂組成物中に配さない場合、樹脂フィルムの取り扱い性が悪くなり、強度も十分に保持できなくなる傾向にあったが、本実施形態の樹脂組成物を含有する樹脂フィルムは、特に、柔軟な脂肪族骨格を有する(A)成分を含有するため、ガラスクロス等を有さなくても、薄く且つ取り扱い性(タック性、割れ、粉落ち等)にも優れ、外観にも優れるものとなる。
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、導体との接着性に優れるものであるため、表面の粗さが小さいロープロファイル箔を問題なく使用することもできる。
【0017】
<(A)成分>
(A)成分は、マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基(以下、「結合基(a1)」ともいう)、及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基(以下、「結合基(a2)」ともいう)を有する化合物である。
なお、マレイミド基は、結合基(a1)に含まれるイミド結合には含めないものとする。
(A)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
(A)成分は、そのマレイミド基が芳香環に結合しているN-芳香族置換マレイミド基含有化合物であってもよく、そのマレイミド基が脂肪族鎖に結合しているN-脂肪族置換マレイミド基含有化合物であってもよいが、N-脂肪族置換マレイミド基含有化合物であることが好ましい。
【0019】
(結合基(a1))
結合基(a1)は、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基であり、下記一般式(A-1)で表される基が好ましい。
【0020】
【0021】
RA1が示す4価の有機基の炭素数は、樹脂フィルムとした際の取り扱い性の観点から、1~20が好ましく、4~15がより好ましく、6~10がさらに好ましい。
RA1が示す4価の有機基としては、4価の脂肪族炭化水素基、4価の脂環式炭化水素基、4価の芳香族炭化水素基、4価のシロキサン骨格を有する炭化水素基等が挙げられる。なお、これらの基は、酸素、窒素、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよく、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基等の置換基を有していてもよい。置換基を有する場合、上記RA1の炭素数は、これらの置換基の炭素数も含めた炭素数を意味する。
これらの中でも、機械強度の観点から、4価の芳香族炭化水素基が好ましい。4価の芳香族炭化水素基としては、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基、ビフェニルテトライル基、ジフェニルエーテルテトライル基、2,2-ビス(4-フェノキシフェニル)プロパンテトライル基等が挙げられる。これらの中でも、ベンゼンテトライル基が好ましい。
また、RA1は、1分子中に2個以上の無水物環を有する酸無水物の4価の残基、すなわち、該酸無水物から酸無水物基(-C(=O)OC(=O)-)を2個除いた4価の基であることが好ましい。酸無水物としては、後述する(A)成分の製造に用いられる酸無水物が挙げられる。
【0022】
結合基(a1)は、機械強度の観点から、下記式(A-2)で表される基が好ましく、誘電特性の観点からは、下記式(A-3)又は下記式(A-4)で表される基が好ましい。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
(A)成分は、結合基(a1)を1個のみ有するものであってもよく、2個以上有するものであってもよいが、流動性及び回路埋め込み性の観点から、2個以上有するものが好ましい。複数の結合基(a1)は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
(A)成分が含有する結合基(a1)の数は、1分子中、1~40が好ましく、2~20がより好ましく、3~10がさらに好ましい。結合基(a1)の数が上記下限値以上であると、適度な粘性が得られると共に、低熱膨張性に優れ、上記上限値以下であると、優れた誘電特性が得られる。
【0027】
(結合基(a2))
結合基(a2)は、飽和又は不飽和の2価の炭化水素基である。該炭化水素基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。
結合基(a2)の炭素数は、8~100が好ましく、10~70がより好ましく、15~50がさらに好ましい。
結合基(a2)としては、2価の脂肪族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、これらを組み合わせた2価の基等が挙げられ、これらの中でも、高周波特性及び樹脂フィルムとした際の取り扱い性の観点から、2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0028】
2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、分子構造を三次元化しやすく、ポリマーの自由体積を増大させて低密度化、すなわち低誘電率化する観点から、8~100が好ましく、10~70がより好ましく、15~50がさらに好ましい。
2価の脂肪族炭化水素基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルケニレン基、これらを組み合わせた2価の基等が挙げられる。これらの中でも、アルキレン基、シクロアルキレン基、これらを組み合わせた2価の基が好ましい。
アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基等が挙げられる。なお、ここでいうアルキレン基は、アルキリデン基も含むものであり、直鎖状、及びその構造異性体である分岐鎖状のものを含む。
シクロアルキレン基としては、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基等が挙げられる。
なお、これらの基は、酸素、窒素、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよく、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基等の置換基を有していてもよい。置換基を有する場合、上記2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、これらの置換基の炭素数も含めた炭素数を意味する。
2価の芳香族炭化水素基としては、ベンジレン基、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0029】
結合基(a2)としては、高周波特性及び樹脂フィルムとした際の取り扱い性の観点から、下記一般式(A-5)で表される基が好ましい。
【0030】
【化6】
(式中、R
A2及びR
A3は、各々独立に、炭素数4~50のアルキレン基を示し、R
A4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R
A5は炭素数2~50のアルキル基を示す。)
【0031】
RA2、RA3が示すアルキレン基の炭素数は、5~25が好ましく、6~15がより好ましく、7~10がさらに好ましい。
RA2、RA3が示すアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
【0032】
RA4が示すアルキル基の炭素数は、5~25が好ましく、6~15がより好ましく、7~10がさらに好ましい。
RA4が示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-デシル基等が挙げられる。これらの中でも、n-ヘキシル基が好ましい。
【0033】
RA5が示すアルキル基の炭素数は、5~25が好ましく、6~15がより好ましく、7~10がさらに好ましい。
RA5が示すアルキル基としては、上記RA4と同じものが挙げられる。これらの中でも、n-オクチル基が好ましい。
【0034】
(A)成分は、結合基(a2)を1個のみ有するものであってもよく、2個以上有するものであってもよいが、流動性及び回路埋め込み性の観点から、2個以上有するものが好ましい。複数の結合基(a2)は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
(A)成分が含有する結合基(a2)の数は、1分子中、1~40が好ましく、2~20がより好ましく、3~10がさらに好ましい。結合基(a2)の数が上記下限値以上であると、優れた誘電特性が得られ、上記上限値以下であると、低熱膨張性に優れたものとなる。
【0035】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、高周波特性、樹脂フィルムとした際の取り扱い性、流動性及び回路埋め込み性の観点から、500~10,000が好ましく、1,000~9,000がより好ましく、1,500~7,000がさらに好ましく、1,700~5,000が特に好ましい。
(A)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。GPCの測定条件は下記のとおりである。
ポンプ:L-6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
検出器:L-3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラムオーブン:L-655A-52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラム:TSK Guardcolumn HHR-L、TSKgel G4000HHR、TSKgel G2000HHR[すべて東ソー株式会社製、商品名]
カラムサイズ:6.0×40mm(ガードカラム)、7.8×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:30mg/5mL
注入量:20μL
流量:1.00mL/分
測定温度:40℃
【0036】
(A)成分を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、酸無水物とジアミンとを反応させて、2個以上のイミド結合を有するアミン末端化合物を合成した後、該アミン末端化合物を過剰の無水マレイン酸と反応させることで、末端にマレイミド基を導入する方法が挙げられる。
【0037】
酸無水物としては、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中でも、誘電特性の観点から、無水ピロメリット酸が好ましい。
【0038】
ジアミンとしては、ダイマージアミン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ポリオキシアルキレンジアミン、[3,4-ビス(1-アミノヘプチル)-6-ヘキシル-5-(1-オクテニル)]シクロヘキセン、[1,2-ビス(1-アミノオクチル)-3-オクチル-4-ヘキシル]シクロヘキサン等が挙げられる。
【0039】
(A)成分としては、下記一般式(A-6)で表される化合物が好ましい。
【0040】
【化7】
(式中、Rは結合基(a2)を示し、Qは結合基(a1)を示す。nは1~10の整数を示す。)
【0041】
(A)成分は、市販品を使用してもよい。(A)成分の市販品としては、例えば、デジグナーモレキュールズインコーポレイテッド社製のイミド延長ビスマレイミド化合物が挙げられ、具体的には下記一般式(A-7)で示されるBMI-1500、下記一般式(A-8)で示されるBMI-1700、下記一般式(A-9)で示されるBMI-3000、BMI-5000、BMI-9000等が挙げられる。
【0042】
【化8】
(式中、n
1は、1~10の整数を示す。)
【0043】
【化9】
(式中、n
2は、1~10の整数を示す。)
【0044】
【化10】
(式中、n
3は、1~10の整数を示す。)
【0045】
本実施形態の樹脂組成物中における(A)成分の含有量は、得られる板厚の均一性、高周波特性、低熱膨張性及び導体との接着性の観点から、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総量100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上がさらに好ましい。また、(A)成分の含有量は、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総量100質量部に対して、100質量部以下であってもよく、90質量部以下であってもよい。
【0046】
<(B)有機過酸化物>
(B)有機過酸化物は、(A)成分の重合開始剤として作用するものであり、光、熱等のエネルギーに暴露されたときに、不対電子を有するものに分解するものである。
(B)有機過酸化物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
(B)有機過酸化物の1分間半減期温度は、樹脂組成物の流動性を適切な範囲としつつ、加熱プレス成形温度条件下(一般的に230℃以下)で、良好な硬化性を得る観点から、160℃超え230℃以下が好ましく、165~200℃がより好ましく、170~180℃がさらに好ましい。
なお、(B)有機過酸化物の1分間半減期温度とは、(B)有機過酸化物が分解して、その残存量が1分間で1/2となる温度を意味する。1分間半減期温度は、以下の方法により測定することができる。
[1分間半減期温度の測定方法]
ベンゼンを使用し0.1mol/Lの有機過酸化物溶液を調製し、窒素置換を行ったガラスアンプル中に封入する。これを所定の温度(10時間半減期温度付近を3点測定)にセットしたオイルバスに浸し、前記溶液中の有機過酸化物を熱分解させる。一般的に希釈溶液中の有機過酸化物の分解は近似的に一次反応として取り扱うことができるので、分解有機過酸化物量(x)、分解速度定数(k)、時間(t)、有機過酸化物初期濃度(a)とすると、下記の(1)、(2)の式が成り立つ。
dx/dt=k(a-x)・・・・・(1)
ln a/(a-x)=kt・・・・・(2)
また、半減期は、分解により有機過酸化物濃度が初期の半分に減少するまでの時間なので、半減期を(t1/2)で示し(2)式の(x)に(a/2)を代入して、下記(3)の式で表すことができる。
kt1/2=ln(2)・・・・・(3)
したがって、ある一定温度で有機過酸化物を熱分解させ、時間(t)とln〔(a)/(a-x)〕の関係をプロットし、得られた直線の傾きから分解速度定数(k)を求めれば、(3)式からその温度における半減期(t1/2)を得ることができる。
そして、数点の温度で前記の熱分解を実施し、それぞれの温度での半減期(t1/2)を測定し、ln(t1/2)と(1/T)との関係をプロットし、得られた直線から一分間半減期となる温度を求めることができる。
【0048】
(B)有機過酸化物としては、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ジ(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類;クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;t-ブチルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類;t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、1,3-ビス(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類;t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類;t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類;ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類などが挙げられる。これらの中でも、得られる板厚の均一性の観点から、1,3-ビス(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンが好ましい。
【0049】
本実施形態の樹脂組成物中における(B)有機過酸化物の含有量は、得られる板厚の均一性の観点から、(A)成分100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.4~3質量部がより好ましく、0.7~2質量部がさらに好ましい。
【0050】
<(C)成分>
(C)成分は、(B)成分とは異なる有機過酸化物(以下、「(c1)有機過酸化物」又は「(c1)成分」ともいう)、有機金属触媒(以下、「(c2)有機金属触媒」又は「(c2)成分」ともいう)及びアミン化合物(以下、「(c3)アミン化合物」又は「(c3)成分」ともいう)からなる群から選択される1種以上の硬化促進剤である。
本実施形態の樹脂組成物は、上記した(B)成分と(C)成分とを併用することによって、加熱プレス成形時における樹脂組成物の流動性と硬化性とを適切な範囲に調整することができ、これによって、本実施形態の樹脂組成物を回路基板に圧着させる場合においても均一な板厚を得ることができる。以下、(c1)~(c3)成分について説明する。
【0051】
((c1)有機過酸化物)
(c1)有機過酸化物は、(B)成分とは異なる有機過酸化物であればよく、(B)成分として例示したものと同じものが挙げられる。
(c1)有機過酸化物の1分間半減期温度は、樹脂組成物の流動性を適切な範囲としつつ、樹脂組成物を塗工及び乾燥する際に硬化が過剰に進行しすぎないようにする観点から、100~160℃が好ましく、130~160℃がより好ましく、150~160℃がさらに好ましい。
(c1)成分の1分間半減期温度は、得られる板厚の均一性の観点から、(B)成分の1分間半減期温度よりも低いことが好ましい。(c1)成分の1分間半減期温度を(B)成分の1分間半減期温度よりも低くすることで、比較的低温でラジカルが発生するため、塗工時のBステージフィルムにおける反応率が高くなり、加熱プレス時に樹脂流れが過多になる前に硬化反応を開始させることが可能になる。(B)成分と(c1)成分の1分間半減期温度の差〔(B)成分の1分間半減期温度-(c1)成分の1分間半減期温度〕は、5~30℃が好ましく、10~25℃がより好ましく、12~20℃がさらに好ましい。
これらの中でも、(c1)成分としては、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートが好ましい。
(c1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
本実施形態の樹脂組成物が(c1)成分を含有する場合、その含有量は、得られる板厚の均一性の観点から、(A)成分100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.4~3質量部がより好ましく、0.7~2質量部がさらに好ましい。
【0053】
((c2)有機金属触媒)
(c2)有機金属触媒は、酸化還元反応によって(B)有機過酸化物の反応開始温度を低くし、樹脂流れが過多になる前に硬化反応を開始させる効果を有するものである。
(c2)有機金属触媒としては、有機金属塩、有機金属錯体等が挙げられる。
有機金属塩又は有機金属錯体を構成する金属としては、鉄、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、マンガン、スズ等が挙げられる。
有機金属塩としては、カルボン酸金属塩が好ましく、ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸スズ等のナフテン酸金属塩;オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ、オクチル酸マンガン等のオクチル酸金属塩;2-エチルヘキサン酸亜鉛等の2-エチルヘキサン酸金属塩などが挙げられる。
有機金属錯体としては、ジブチルスズマレエート、鉛アセチルアセトナート等が挙げられる。
(c2)有機金属触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
本実施形態の樹脂組成物が(c2)有機金属触媒を含有する場合、その含有量は、得られる板厚の均一性の観点から、(A)成分100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.4~3質量部がより好ましく、0.7~2質量部がさらに好ましい。
【0055】
((c3)アミン化合物)
(c3)アミン化合物は、材料に含まれる酸と水素結合することで、樹脂組成物の粘度を上昇させ、樹脂流れが過多になることを抑制する効果を有するものである。
(c3)アミン化合物としては、アミノシランカップリング剤、ジシアンジアミド、ベンゾグアナミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。これらの中でも、アミノシランカップリング剤が好ましい。
アミノシランカップリング剤としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
(c3)アミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
本実施形態の樹脂組成物が(c3)アミン化合物を含有する場合、その含有量は、得られる板厚の均一性の観点から、(A)成分100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.4~3質量部がより好ましく、0.7~2質量部がさらに好ましい。
【0057】
本実施形態の樹脂組成物は、(c1)~(c3)成分をすべて含有していてもよく、(c1)~(c3)成分のうち、いずれか2つのみを含有していてもよく、(c1)~(c3)成分のうち、いずれか1つのみを含有していてもよい。
本実施形態の樹脂組成物中における(C)成分の含有量は、得られる板厚の均一性の観点から、(A)成分100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.4~3質量部がより好ましく、0.7~2質量部がさらに好ましい。
【0058】
<(D)成分:前記(A)成分とは異なる熱硬化性樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、(D)成分として、(A)成分とは異なる熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。
(D)成分としては、(A)成分以外のマレイミド化合物(以下、「(d1)マレイミド化合物」ともいう)、(d2)シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
本実施形態の樹脂組成物が(D)成分を含有する場合、その含有量は、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総量100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましく、15~25質量部がさらに好ましい。
【0060】
((d1)マレイミド化合物)
本実施形態の樹脂組成物は、(A)成分に加えて、(d1)マレイミド化合物を含有することによって、良好な誘電特性を維持しつつ、導体との高接着性、耐熱性、低熱膨張性、難燃性、加工性(ドリル加工、切削)等を向上させることができる。
(d1)マレイミド化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
(d1)マレイミド化合物は、マレイミド基を2個以上含有するポリマレイミド化合物であることが好ましく、マレイミド基を2個含有するビスマレイミド化合物であることがより好ましい。(d1)マレイミド化合物は、下記一般式(d-1)で表される化合物が好ましい。
【0062】
【0063】
一般式(d-1)中、Ad1は下記一般式(d-2)、(d-3)、(d-4)又は(d-5)で表される2価の基を示す。
【0064】
【0065】
一般式(d-2)中、Rd1は、各々独立に、水素原子、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示す。
【0066】
【0067】
一般式(d-3)中、Rd2及びRd3は、各々独立に、水素原子、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、Ad2は炭素数1~5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基、単結合又は下記一般式(d-3’)で表される基を示す。
【0068】
【0069】
一般式(d-3’)中、Rd4及びRd5は、各々独立に、水素原子、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、Ad3は炭素数1~5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基又は単結合を示す。
【0070】
【0071】
一般式(d-4)中、iは1~10の整数である。
【0072】
【0073】
一般式(d-5)中、Rd6及びRd7は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基を示し、jは1~8の整数である。
【0074】
一般式(d-2)中のRd1、一般式(d-3)中のRd2及びRd3、一般式(d-3’)中のRd4及びRd5、一般式(d-5)中のRd6及びRd7が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基であってもよく、メチル基であってもよい。
一般式(d-3)中のAd2及び一般式(d-3’)中のAd3が示す炭素数1~5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。
一般式(d-3)中のAd2及び一般式(d-3’)中のAd3が示す炭素数1~5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基等が挙げられる。
【0075】
(d1)マレイミド化合物としては、1,2-ジマレイミドエタン、1,3-ジマレイミドプロパン、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,7-ジマレイミドフルオレン、N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-〔1,3-(4-メチルフェニレン)〕ビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)エ-テル、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス[3-(3-マレイミドフェノキシ)フェノキシ]ベンゼン、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス[2-(3-マレイミドフェニル)プロピル]ベンゼン、1,3-ビス〔1-[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1-プロピル〕ベンゼン、ビス(マレイミドシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス(マレイミドフェニル)チオフェン等が挙げられる。これらの中でも、熱膨張係数、導体との接着性の観点から、ビス(4-マレイミドフェニル)メタンが好ましい。
【0076】
本実施形態の樹脂組成物が(d1)マレイミド化合物を含有する場合、その含有量は、導体との高接着性、耐熱性、低熱膨張性、難燃性及び加工性の観点から、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総量100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましく、15~25質量部がさらに好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物中における、(A)成分と(d1)成分との含有量比((A)成分:(d1)成分)は、質量比で、60:40~40:60が好ましく、70:30~30:70がより好ましく、75:25~85:15がさらに好ましい。
【0077】
((d2)シアネートエステル樹脂)
(d2)シアネートエステル樹脂としては、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、α,α’-ビス(4-シアナトフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物、フェノールノボラック型シアネートエステル化合物、クレゾールノボラック型シアネートエステル化合物等が挙げられる。これらの中でも、安価である点、高周波特性及びその他特性の総合バランスを考慮すると、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパンが好ましい。
(d2)シアネートエステル樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
本実施形態の樹脂組成物が(d2)シアネートエステル樹脂を含有する場合、その含有量は、誘電特性、導体との接着性、耐熱性、低熱膨張性、難燃性及び加工性の観点から、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総量100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましく、15~25質量部がさらに好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物中における、(A)成分と(d2)成分との含有量比((A)成分:(d2)成分)は、質量比で、60:40~40:60が好ましく、70:30~30:70がより好ましく、75:25~85:15がさらに好ましい。
【0079】
<(E)無機充填材>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに(E)無機充填材を含有していてもよい。
(E)無機充填材としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素などが挙げられる。
(E)無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
(E)無機充填材の平均粒子径は、0.01~20μmが好ましく、0.1~10μmがより好ましく、0.2~1μmがさらに好ましい。本明細書において平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
(E)無機充填材の形状は、特に制限はなく、例えば、球状、破砕状、針状又は板状のいずれであってもよいが、球状であることが好ましい。
【0081】
本実施形態の樹脂組成物が(E)無機充填材を含有する場合、その含有量は、低熱膨張性、得られる板厚の均一性、樹脂フィルムの取り扱い性の観点から、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の総量100質量部に対して、50~400質量部が好ましく、100~350質量部がより好ましく、200~300質量部がさらに好ましい。
また、(E)無機充填材の含有量は、体積比率で、樹脂組成物中3~65体積%が好ましく、5~60体積%がより好ましい。
(E)無機充填材の含有量が上記範囲であると、良好な低熱膨張性、成形性、及び耐薬品性が得られる。
【0082】
(E)無機充填材を用いる場合、(E)無機充填材の分散性、及び樹脂組成物中の有機成分との密着性を向上させる目的で、カップリング剤を使用してもよい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カップリング剤の使用量は特に限定されないが、(E)無機充填材100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。この範囲であれば、諸特性の低下が少なく、(E)無機充填材の使用による特長を効果的に発揮できる。
なお、カップリング剤を用いる場合、樹脂組成物中に(E)無機充填材を配合した後、カップリング剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式であってもよいが、予め(E)無機充填材にカップリング剤を乾式又は湿式で表面処理した(E)無機充填材を使用する方式が好ましい。この方法を用いることで、より効果的に(E)無機充填材の特長を発現できる。
(E)無機充填材は、分散性を向上させる目的で、必要に応じ、(E)無機充填材を予め有機溶媒中に分散させたスラリーとして配合してもよい。
【0083】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、上記各成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、上記各成分以外の、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等のその他の樹脂成分;酸化防止剤、流動調整剤、上記(B)成分及び(C)成分以外の硬化促進剤等の添加剤;難燃剤;有機溶媒などを含有していてもよい。
その他の成分は、各々について、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記その他の樹脂成分としては、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体等の飽和型熱可塑性エラストマーが挙げられる。また、難燃剤としては、臭素系、リン系、金属水酸化物等の難燃剤などが挙げられる。
【0084】
(有機溶媒)
本実施形態の樹脂組成物は、後述する樹脂フィルムの製造を容易にするため、各成分が有機溶媒中に溶解及び/又は分散されたワニスの状態(以下、「樹脂ワニス」ともいう)としてもよい。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素類などが挙げられる。これらの中でも、(A)成分の良溶媒であるトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、及びこれらの芳香族炭化水素類とアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類との混合溶媒が、フィルムとしたときの外観が良好となるため好ましい。
有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物をワニスとする際には、ワニス中の固形分(不揮発分)濃度が、5~80質量%となるように溶媒の使用量を調節することが好ましい。なお、後述の樹脂フィルムを製造する工程において、樹脂組成物を塗布した後に溶媒を蒸発等させることによって溶媒量を調節することもできる。この場合には、樹脂ワニスを、良好な外観及び所望の膜厚が得られるような固形分(不揮発分)濃度及びワニス粘度に調製することができる。
【0085】
本実施形態の樹脂組成物の硬化物の10GHzでの比誘電率は、高周波帯で好適に用いる観点から、3.5以下が好ましく、3.3以下がより好ましく、3.1以下がさらに好ましく、3.0以下が特に好ましい。比誘電率の下限値は特に限定されないが、例えば、1.0以上であってもよい。
また、高周波帯で好適に用いる観点から、本実施形態の樹脂組成物の硬化物の誘電正接は、0.004以下が好ましく、0.003以下がより好ましい。誘電正接の下限値は特に限定されないが、例えば、0.0001以上であってもよい。
比誘電率及び誘電正接は実施例に記載の方法により測定される。
【0086】
本実施形態の樹脂組成物の樹脂フロー量(%)は、得られる板厚の均一性の観点から、5~25%が好ましく、6~20%がより好ましく、8~18%がさらに好ましい。樹脂フロー量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0087】
本実施形態の樹脂組成物は、層間絶縁層を形成するために用いられる樹脂組成物として好適であり、本実施形態の樹脂組成物から形成される層間絶縁層は、高周波特性、板厚の均一性、低熱膨張性、導体層との接着性に優れるため、プリント配線板用の層間絶縁層、特にビルドアップ層用の層間絶縁層として好適である。
【0088】
[樹脂フィルム]
本実施形態の樹脂フィルムは、本実施形態の樹脂組成物を含有する樹脂フィルムである。
本実施形態の樹脂フィルムは、上述した本実施形態の樹脂組成物の半硬化物又は硬化物からなる樹脂層を備えるものが好ましく、該樹脂層と他の層とを組み合わせたものであってもよい。
上記樹脂層と他の層とを組み合わせた態様としては、例えば、支持基材と、該支持基材上に形成された上記樹脂層とを備える構成が挙げられる。この支持基材は、樹脂フィルムの製造時に下地として使用される基材でもよく、製造後に取り付けたものであってもよい。
支持基材としては、金属箔、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が挙げられる。
【0089】
本実施形態の樹脂フィルムの製造方法は、特に制限されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、本実施形態の樹脂組成物に含める各成分を混合して樹脂組成物を得る。この際、これらの成分に有機溶媒を加えて公知の方法で撹拌して樹脂ワニスとして得ることが好ましい。
【0090】
次に、上記で得た樹脂ワニスを、支持基材上に、キスコーター、ロールコーター、コンマコーター、ダイコーター等を用いて塗布した後、加熱乾燥炉中等で、例えば、70~250℃(溶媒を使用した場合は溶媒の揮発可能な温度以上)、好ましくは100~200℃の温度で、1~30分間、好ましくは3~15分間乾燥する。これにより、樹脂組成物が半硬化(Bステージ化)した状態の樹脂層を備える樹脂フィルムを得ることができる。
また、この半硬化した状態の樹脂層を備える樹脂フィルムを、加熱炉で更に170~250℃、好ましくは185~230℃の温度で、60~150分間加熱させることによって樹脂組成物が硬化した状態の樹脂層を備える樹脂フィルムが得られる。なお、ワニスの形態にしていない樹脂組成物からであっても、樹脂組成物をフィルム状に形成した後、同様の加熱方法で樹脂フィルムを作製することができる。
【0091】
本実施形態の樹脂フィルム(支持基材を有する場合においては樹脂層)の厚さは、求める性能に応じて適宜決定すればよいが、回路基板の導体層を埋め込む観点から、1~200μmが好ましく、10~100μmがより好ましく、15~80μmがさらに好ましく、20~60μmが特に好ましい。
【0092】
[金属張積層板の製造]
本実施形態の金属張積層板は、本実施形態の樹脂フィルムを1枚以上重ね、その両面に金属箔を配置し、加熱プレス成形して得られるものである。
本実施形態の金属張積層板の製造方法は、例えば、本実施形態の樹脂フィルムを、1枚又は2枚以上重ね、その片面又は両面に金属箔を配置し、加熱温度が、例えば170~250℃、好ましくは185~230℃、圧着圧力が、例えば0.5~5.0MPa、加熱時間が、例えば60~150分間の条件で加熱プレス成形することにより、硬化樹脂層の両面又は片面に金属箔を備える金属張積層板が得られる。加熱及び加圧は、減圧下で行うことが好ましく、例えば、真空度は10kPa以下、好ましくは5kPa以下である。また、加熱及び加圧は、開始から30分間~成形終了時間まで実施することが好ましい。
【0093】
[プリント配線板の製造]
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の樹脂フィルム又は本実施形態の金属張積層板を用いて形成されるものである。
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、特に制限されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、回路形成加工されたコア基板の片面又は両面に、本実施形態の樹脂フィルムを配置するか、あるいは複数枚のコア基板の間に本実施形態の樹脂フィルムを配置し、加熱プレス成形を行って各層を接着する。次いで、公知の方法によって、レーザー穴開け加工、ドリル穴開け加工、金属めっき加工、金属エッチング等による回路形成加工を行うことで、本実施形態のプリント配線板を製造することができる。コア基板上又はコア基板間に樹脂フィルムを配置する際、樹脂フィルムが支持基材を有している場合、支持基材は、事前に剥離しておくか、或いは、樹脂層をコア基板に張り付けた後に剥離することができる。
本実施形態のプリント配線板の一形態として、上記のようにして配線パターンを形成した積層板を複数積層して、多層プリント配線板としてもよい。
【0094】
[半導体パッケージ]
本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態のプリント配線板に半導体素子を搭載してなるものである。本実施形態の半導体パッケージは、前記プリント配線板の所定の位置に半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載し、封止樹脂等によって半導体素子を封止することによって製造できる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、得られた樹脂組成物は以下の方法によって評価した。
【0096】
[樹脂フィルムの外観]
各例で得た樹脂フィルムの表面を目視にて観察し、下記基準に基づいて評価した。
○:表面にムラ、スジ等がなく、表面が均一なもの。
×:表面にムラ、スジ等があり、表面平滑性に欠けるもの。
【0097】
[樹脂フィルムの取り扱い性]
各例で得た樹脂フィルムの取り扱い性は、樹脂フィルムの表面を25℃にて指触すると共に、樹脂フィルムをカッターナイフで切断して、下記基準に基づいて評価した。
○:表面にベタつきがなく、切断の際に樹脂割れ及び粉落ちがないもの。
×:表面にベタつきがあるもの、又は切断の際に樹脂割れ若しくは粉落ちがあるもの。
【0098】
[樹脂フローの測定]
長さ102mm×幅102mmにカットした支持体付きの樹脂フィルム4枚の重量(初期重量Wo)を測定後、これらの樹脂フィルム4枚を重ね、これを2枚の離型フィルムにはさみ、さらに、室温状態の鋼板の間にはさんだ。試料をはさんだ鋼板を120℃に加熱した熱盤上にセットし、5秒以内に1.12±0.05Paに減圧した後、その状態を10分間維持した。その後、熱盤上から試料(樹脂フィルムの硬化物)を取り出し、打ち抜きプレスを用いて試料の中央より直径81.1mmの円を打ち抜き、円盤試料の重量(W)を測定した。なお、樹脂フローは次式にて算出した。
【0099】
【0100】
[板厚面内バラつきの測定]
板圧面内バラつきの測定は、PETフィルムを剥離した樹脂フィルムを「MCL-HS100」(商品名、日立化成株式会社製)に2枚重ね、その両面に、厚さ18μmのロープロファイル銅箔(F3-WS、M面Rz:3μm、古河電気工業株式会社製)をその粗化(M)面が樹脂層に接するように配置し、その上に鏡板を乗せ、加熱温度200℃、圧着圧力3.0MPa、圧着時間70分間のプレス条件で加熱加圧成形して、板厚評価用積層板を作製した。該板厚評価用積層板(500mm角)の外層銅箔をエッチングしたものを100分割し、各試験片(50mm角)の中央位置の厚みを測定し、
図1に示す中心部(B)の試験片の厚み平均値と、外周部(A)の試験片の厚み平均値との差を評価した。板厚面内バラつきの測定に用いた試験片の概略図を
図1に示す。
【0101】
[誘電特性(比誘電率、誘電正接)の測定]
誘電特性は、各例で得た両面銅張積層板の外層銅箔をエッチングしたものを空洞共振器摂動法を用いて測定した。条件は、周波数:10GHz、測定温度:25℃とした。
【0102】
[熱膨張係数の測定]
熱膨張係数(板厚方向、温度範囲:30~150℃)は、各例で得た両面銅張積層板の両面の銅箔をエッチングしたものを、5mm角に切り出した試験片を用いて、TMA(TAインスツルメント社製、Q400)により、IPC法に準拠して測定した。
【0103】
[銅箔引きはがし強さの測定]
銅箔引きはがし強さは、各例で得た両面銅張積層板について、銅張積層板試験規格JIS C 6481に準拠して測定した。
【0104】
実施例1~10、比較例1~5
(樹脂ワニスの調製)
温度計、還流冷却管及び攪拌装置を備えた300ミリリットル容の4つ口フラスコに、表1に示す配合組成(表中の配合量は質量部であり、溶液(有機溶媒を除く)又は分散液の場合は固形分換算量である。)となるように、各成分を投入し、25℃で1時間撹拌した。次いで#200ナイロンメッシュ(開口75μm)によりろ過し、樹脂ワニスを調製した。
【0105】
(樹脂フィルムの作製)
上記で得た樹脂ワニスを、コンマコーターを用いて、支持基材として厚さ38μmのPETフィルム(帝人株式会社製、商品名:G2-38)上に塗工した後、130℃で乾燥し、樹脂層の厚さが65μmであるPETフィルム付き樹脂フィルムを作製した。
【0106】
(両面銅張積層板の作製)
得られたPETフィルム付き樹脂フィルムからPETフィルムを剥離し、これを2枚重ね、その両面に、厚さ18μmのロープロファイル銅箔(F3-WS、M面Rz:3μm、古河電気工業株式会社製)を、その粗化(M)面が樹脂層に接するように配置し、さらにその上に鏡板を乗せ、加熱温度210℃、圧着圧力3.0MPa、圧着時間80分間のプレス条件で加熱加圧成形して、両面銅張積層板(厚さ:0.1mm)を作製した。
【0107】
なお、表1における各材料の略号等は、以下の通りである。
[(A)成分]
・BMI-3000:イミド延長ビスマレイミド(一般式(A-9)で表される化合物)、重量平均分子量:約3,000(デジグナーモレキュールズインコーポレイテッド社製)
[(B)成分]
・パーブチルP:1,3-ビス(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油株式会社製、1分間半減期温度:実施例:174.5℃)
[(C)成分]
・パーブチルI:t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(日油株式会社製、1分間半減期温度:158.8℃)
・ナフテン酸銅(関東化学株式会社製)
・KBM-903:3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
[(D)成分]
・BMI-1000:ビス(4-マレイミドフェニル)メタン(大和化成工業株式会社製)
・BADCY:2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン(Lonza製)
[(E)成分]
・シリカ:球状溶融シリカ、平均粒子径:0.5μm、表面処理:フェニルアミノシランカップリング剤(1質量%/固形分)、分散媒:メチルイソブチルケトン(MIBK)、固形分濃度70質量%、密度2.2g/cm3、商品名:SC-2050KNK、株式会社アドマテックス製)
[有機溶媒]
・トルエン(関東化学株式会社製)
【0108】
【表1】
※1:シリカ及びメチルイソブチルケトンは、シリカスラリーとして配合されたものである。
【0109】
表1の結果から、実施例1~10の樹脂組成物を用いた樹脂フィルムは、外観、取り扱い性、樹脂フローが良好であり、板厚面内バラつきが小さいことが分かる。加えて、実施例1~10の樹脂組成物から得られた硬化物は、比誘電率、誘電正接が共に小さく、熱膨張特性、銅箔引きはがし強さにも優れていた。一方、比較例1~5の樹脂組成物は、樹脂フロー量及び板厚面内バラつきが劣っていた。これらのことから、本実施形態の樹脂組成物が、熱プレス成形によって回路基板に圧着させる場合においても均一な板厚が得られ、かつ高周波特性、低熱膨張性、導体との高接着性を高い水準で有する樹脂組成物であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の樹脂組成物は、樹脂流れが制御されたことで加圧及び加熱プレス成形に対応可能な樹脂フィルムを提供することができる。また、比誘電率及び誘電正接も低いことから、ミリ波帯を超えるような高周波帯域でも伝送損特性を発現し、且つ良好な熱膨張特性、銅箔引きはがし強さを兼ね備えている。したがって、1GHz以上の高周波信号を扱う移動体通信機器及びその基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワーク関連電子機器及び大型コンピュータ等の各種電子機器などに使用されるプリント配線板用、より高周波での使用が求められるミリ波レーダーに用いられるアンテナ用の絶縁層材料として有用である。