(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】自動駐車システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/14 20060101AFI20221012BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20221012BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20221012BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20221012BHJP
B60W 30/06 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G08G1/14 A
G01C21/28
G08G1/00 X
G08G1/09 V
G08G1/09 P
B60W30/06
(21)【出願番号】P 2018088753
(22)【出願日】2018-05-02
【審査請求日】2021-01-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-087582(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187879(WO,A1)
【文献】特開昭58-125200(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043272(WO,A1)
【文献】特開平04-290199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場まで車両を移動させ、駐車場に設けられた駐車枠内に収まるように車両を制御する自動駐車システムであって、
車両に設けられた磁気検出部を用いて検出できるように磁気発生源をなす磁気マーカが敷設された経路と、
前記磁気マーカの敷設位置を特定可能な位置特定情報を提供する位置情報提供部と、
該磁気マーカの敷設位置に基づいて車両が所在する車両位置、及び車両の姿勢を特定する位置特定部と、
前記磁気マーカを検出すると共に、検出した磁気マーカに対する車幅方向の相対位置を表す横ずれ量を特定可能な磁気検出部が、車両の前後方向において所定の間隔を空けて離隔する2箇所に配置された車両と、を含み、
駐車場に回送する車両の停車枠および駐車枠のうちの少なくともいずれか一方の枠内には、前記所定の間隔と同じ間隔を空けて2つの磁気マーカが配置されており、
前記位置特定部は、前記枠内に配置された2つの磁気マーカを、車両の前後方向の2箇所の磁気検出部が同時に検出した際、各磁気検出部により特定された横ずれ量によって、当該2つの磁気マーカを結ぶ方位を基準とした車両の姿勢を特定する自動駐車システム。
【請求項2】
請求項
1において、前記枠内に停車された車両の制御を開始する際、車両の前後方向の2箇所の磁気検出部が、前記枠内に配置された2つの磁気マーカを同時に検出し、これにより前記位置特定部による車両の姿勢の特定が可能となるまで、前記枠内において車両を前進あるいは後退させるように構成された制御ユニットを含む自動駐車システム。
【請求項3】
駐車場まで車両を移動させ、駐車場に設けられた駐車枠内に収まるように車両を制御する自動駐車システムであって、
標準的な車庫入れ軌跡が前記駐車枠毎に誘導ラインとして特定されており、
車両に設けられた磁気検出部を用いて検出できるように磁気発生源をなす磁気マーカが敷設された経路と、
前記磁気マーカの敷設位置を特定可能な位置特定情報を提供する位置情報提供部と、
該磁気マーカの敷設位置に基づいて車両が所在する車両位置を特定する位置特定部と、
車両の仕様情報を含む車両スペック情報を記憶する記憶媒体と、
前記車両スペック情報に含まれる車両の仕様情報を利用して制御目標の車庫入れ軌跡を演算し、前記誘導ラインに対する当該制御目標の車庫入れ軌跡の偏差を演算する構成と、を含む自動駐車システム。
【請求項4】
請求項
3において、前記誘導ラインに沿って他の磁気マーカである誘導マーカが敷設され、前記車庫入れ軌跡の偏差を演算する構成は、該誘導マーカの位置毎に前記車庫入れ軌跡の偏差を演算する自動駐車システム。
【請求項5】
請求項
4において、車両側で前記誘導マーカであるか否かを区別が可能なように、前記誘導マーカと、経路に敷設された磁気マーカとで、磁極性が異なる自動駐車システム。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項において、前記位置情報提供部は、無線通信によって前記位置特定情報を前記車両側に提供するように前記磁気マーカに対応して設けられる無線タグである自動駐車システム。
【請求項7】
請求項
6において、前記無線タグと前記磁気マーカとが一体的に構成されている自動駐車システム。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項において、前記磁気検出部は、前記磁気マーカに相対する車両の幅方向の相対位置を計測可能であり、該磁気検出部及び前記磁気マーカのうちの少なくともいずれか一方は、前記磁気マーカの検出に応じて前記車両の姿勢の特定が可能になるように設けられている自動駐車システム。
【請求項9】
請求
項8において、前記経路に沿って前記磁気マーカの敷設箇所が離散的に設けられていると共に、少なくともいずれかの敷設箇所では、2個以上の前記磁気マーカが前記経路の方向に沿って配置されている自動駐車システム。
【請求項10】
請求項
8または
9において、前記車両では、前後方向の2箇所以上の位置に、前記磁気検出部が設けられている自動駐車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を自動で駐車枠に駐車させるための自動駐車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一流のホテルなどでは、自動車でエントランスに乗り付けた利用者から鍵を預かってホテルのスタッフが駐車場に自動車を回送したり、利用者の出発時刻に合わせてエントランスに自動車を回送するバレーパーキングサービスが提供されている。そして、近年では、自動車の自動走行によりバレーパーキングサービスを実現するための自動駐車システムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
自動駐車システムが実現すれば、例えば、利用者がホテルやショッピングセンター等の施設に自動車で到着したとき、駐車スペースを探す労力や、車庫入れのための運転負担や、駐車スペースから施設の入口まで徒歩で戻る負担など、利用者側の労力や負担を軽減できる。さらに、ホテルやショッピングセンターなどの施設の運営側にとっては、施設等から離れて駐車スペースを設けることが可能となる。ホテルやショッピングセンター等は繁華な場所や交通の便が良い場所の立地が適しており、比較的地価の高い場所に立地されることが多い一方、近隣に駐車スペースを設ける必要性を低減できれば、駐車スペースを確保するためのコストを軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動車を駐車場に回送して自動で車庫入れする自動駐車システムでは、回送する車両の位置を精度高く特定する必要がある一方、車両位置の精度が十分でない場合には信頼性の高いシステム運用が難しくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、回送する対象の車両の位置を精度高く特定でき、信頼性高く運用できる自動駐車システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、駐車場まで車両を移動させ、駐車場に設けられた駐車枠内に収まるように車両を制御する自動駐車システムであって、
車両に設けられた磁気検出部を用いて検出できるように磁気発生源をなす磁気マーカが敷設された経路と、
前記磁気マーカの敷設位置を特定可能な位置特定情報を提供する位置情報提供部と、
該磁気マーカの敷設位置に基づいて車両が所在する車両位置を特定する位置特定部と、を含む自動駐車システムにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動駐車システムは、車両が検出可能な磁気マーカが敷設された経路を含めて構成されている。また、この自動駐車システムは、磁気マーカの敷設位置を特定可能な位置特定情報を提供する位置情報提供部と、磁気マーカの敷設位置に基づいて車両位置を特定する位置特定部と、を備えている。
【0009】
経路に敷設された磁気マーカの敷設位置に基づいて車両位置を特定する場合には、車両位置の精度の確保が比較的容易である。そして、車両位置を精度高く特定可能な本発明の自動駐車システムは、信頼性高く運用可能であり、利用者の利便性を向上できるという優れた特性を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図6】制御サーバ装置の電気的構成を示すブロック図。
【
図7】自動駐車システムにおける車両の走行環境を示す図。
【
図9】磁気マーカを通過する際の進行方向の磁気計測値の変化を例示する説明図。
【
図10】車幅方向に配列された磁気センサCnによる車幅方向の磁気計測値の分布を例示する説明図。
【
図12】運転アシストメニュー画面を例示する正面図。
【
図14】誘導ラインと車庫入れ軌跡とを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、車両(自動車)5を駐車場110まで回送する、いわゆるバレーパーキングサービスを、車両5の自動走行により実現する自動駐車システム1に関する例である。この内容について、
図1~
図15を用いて説明する。
【0012】
図1の自動駐車システム1は、車両5の走行を遠隔制御する制御サーバ装置18と、例えばインターネット等の公衆通信回線17を介して制御サーバ装置18と通信可能な車両5と、を含めて構成されている。車両5を自動走行させる経路には、経路方向に沿って例えば2m間隔で磁気マーカ10が配設されている。この自動駐車システム1では、磁気発生源の一例である磁気マーカ10を活用して駐車場への車両5の回送等が実現されている。
【0013】
自動駐車システム1における車両5は、磁気マーカ10の検出情報や操舵角などの車両ステータス情報を随時、制御サーバ装置18に送信する。車両ステータス情報を受信した制御サーバ装置18は、車両ステータス情報の送信元の車両5に対して、遠隔制御による自動走行を実現するための制御情報を返信する。自動駐車システム1では、このような車両5と制御サーバ装置18との間の通信により車両5の遠隔制御が実現されている。
【0014】
以下、自動駐車システム1を構成する(1)磁気マーカ10、(2)車両5、(2)制御サーバ装置18について説明し、続いて(4)車両5の走行環境の構成を説明する。
(1)磁気マーカ
磁気マーカ10(
図2)は、直径20mm、高さ28mmの柱状をなし、車両5が移動する路面100S(
図1)に設けた孔に収容された状態で敷設される。磁気マーカ10をなす磁石は、磁性材料である酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料中に分散させたフェライトプラスチックマグネットであり、最大エネルギー積(BHmax)=6.4kJ/立方mという特性を備えている。この磁気マーカ10は、車両5の磁気センサアレイ21A・B(
図1参照。)の取付け高さとして想定する範囲100~250mmの上限の250mm高さにおいて、8μT(マイクロテスラ)の磁束密度の磁気を作用する。
【0015】
磁気マーカ10では、
図2のごとく、無線によりタグ情報を出力するRFIDタグ(Radio Frequency IDentification Tag、無線タグ)15が、路面100S側の表面に積層配置されている。RFIDタグ15は、無線による外部給電により動作し、識別情報であるタグIDなどのタグ情報を外部出力する。本例の構成におけるRFIDタグ15は、磁気マーカ10の敷設位置を特定可能な位置特定情報の一例であるタグID(タグ情報)を、車両5側に提供する位置情報提供部の一例をなしている。
【0016】
RFIDタグ15は、
図3のごとく、例えばPET(Polyethylene terephthalate)フィルムから切り出したタグシート150の表面にICチップ157を実装した電子部品である。タグシート150の表面には、アンテナ153の印刷パターンが設けられている。アンテナ153は、外部からの電磁誘導によって励磁電流が発生する給電用のアンテナ機能と、位置データ等の情報を無線送信する通信用のアンテナ機能と、を併せ持っている。
【0017】
なお、本例では、駐車枠111への自動車庫入れを実現するための他の磁気マーカとして、後述する誘導マーカ(
図8中の符号101)が採用されている。この誘導マーカ101は、
図2の磁気マーカ10からRFIDタグ15を除いたものである。誘導マーカ101の配置構成等については、後出の(4)車両5の走行環境において詳しく説明する。
【0018】
(2)車両
自動駐車システム1が対象とする車両5は、
図4及び
図5のごとく、磁気マーカ10を検出等する磁気センサアレイ21A・B、RFIDタグ15のタグID(タグ情報)を取得するタグリーダユニット34、及び制御ユニット32などを備える車両5である。さらに車両5は、図示しないステアリング操舵ユニットやエンジンスロットルやブレーキアクチュエータなどを制御する車両ECU(Electronic Control Unit)61を備えている。
【0019】
車両ECU61は、制御サーバ装置18から取得する制御情報(制御値)に基づいて車両5を自動走行させる制御を実行可能である。なお、磁気センサアレイ21A及びタグリーダユニット34について、容易な理解のため別体で図示しているが、これらが一体化されたユニットを採用しても良い。
【0020】
(2.1)磁気センサアレイ
車両5では、
図4及び
図5のごとく、車両5の前後方向において2m離隔する2箇所に磁気センサアレイ21A・Bが配設されている。磁気検出部の一例である磁気センサアレイ21A・Bは、車幅方向に長い棒状のユニットであり、路面100Sと対面する状態で車両5の底面に取り付けられる。前側の磁気センサアレイ21Aと、後ろ側の磁気センサアレイ21Bと、の組合せによれば、経路に沿って2m間隔で隣り合って配置された2つの磁気マーカ10を同時に検出可能である。
【0021】
磁気センサアレイ21A・Bは、
図5のごとく、車幅方向に沿って一直線上に配列された15個の磁気センサCn(nは1~15の整数)と、図示しないCPU等を内蔵した検出処理回路212と、を備えている。なお、磁気センサアレイ21A・Bでは、15個の磁気センサCnが10cmの等間隔で配置されている。
【0022】
磁気センサCnは、アモルファスワイヤなどの感磁体のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するという公知のMI効果(Magneto Impedance Effect)を利用して磁気を検出するセンサである。磁気センサCnでは、直交する2軸方向に沿って感磁体が配置され、これにより直交する2軸方向に作用する磁気の検出が可能となっている。なお、本例では、進行方向及び車幅方向の磁気成分を検出できるように磁気センサCnが磁気センサアレイ21A・Bに組み込まれている。
【0023】
磁気センサCnは、磁束密度の測定レンジが±0.6mTであって、測定レンジ内の磁束分解能が0.02μTという高感度のセンサである。ここで、磁気マーカ10は、上記のように、磁気センサCnの取付け高さとして想定する範囲100~250mmにおいて8μT以上の磁束密度の磁気を作用できる。磁束密度8μT以上の磁気を作用する磁気マーカ10であれば、磁束分解能が0.02μTの磁気センサCnを用いて確実性高く検出可能である。
【0024】
磁気センサアレイ21A・Bの検出処理回路212(
図5)は、磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出処理などを実行する演算回路である。この検出処理回路212は、図示しない各種の演算を実行するCPUのほか、ROMやRAMなどのメモリ素子等を利用して構成されている。
【0025】
検出処理回路212は、各磁気センサCnが出力するセンサ信号を3kHz周期で取得してマーカ検出処理を実行する。そして、マーカ検出処理の検出結果を制御ユニット32に入力する。詳しくは後述するが、このマーカ検出処理では、磁気マーカ10の検出に加えて、磁気マーカ10に対する横ずれ量(幅方向の相対位置の一例。)の計測が行われる。横ずれ量としては、例えば、磁気マーカ10に対する磁気センサアレイ21の中央の位置(センター位置)のずれ量等を採用できる。磁気センサアレイ21のセンター位置は、車両5の車幅方向のほぼ中心に当たるため、磁気マーカ10に対する車両5の横ずれ量として取り扱うことができる。なお、後述する誘導マーカ101に対しても同様に横ずれ量を計測可能である。
【0026】
前側の磁気センサアレイ21Aが検出した磁気マーカ10に対する横ずれ量と、後ろ側のセンサアレイ21Bが検出した磁気マーカ10に対する横ずれ量と、によれば、経路の方向に対する車両5の姿勢を特定可能である。なお、このような車両5の姿勢の特定は、後述する通り、横ずれ量を含む車両ステータス情報を取得する制御サーバ装置18によって実行される。
【0027】
(2.2)タグリーダユニット
図4及び
図5のタグリーダユニット34は、磁気マーカ10(
図2)に保持されたRFIDタグ15と無線で通信する通信ユニットである。タグリーダユニット34は、RFIDタグ15の動作に必要な電力を無線で送電してRFIDタグ15を動作させ、RFIDタグ15の識別情報であるタグID(タグ情報)を読み取る。
【0028】
(2.3)制御ユニット
図4及び
図5の制御ユニット32は、磁気センサアレイ21A・Bやタグリーダユニット34を制御すると共に、制御サーバ装置18(
図1参照。)との間で各種の情報やデータを送受信するユニットである。制御ユニット32は、磁気マーカ10を検出する毎に、車両ステータス情報を制御サーバ装置18に送信する。この車両ステータス情報には、制御サーバ装置18側で送信元の車両5を特定可能なように車両IDが紐付けされている。制御ユニット32は、車両ステータス情報の送信と引き換えに、自動走行のための制御情報を制御サーバ装置18から取得できる。制御ユニット32が取得した制御情報(制御値)は車両ECU61に入力されて車両5の制御に適用され、これにより制御サーバ装置18による車両5の遠隔制御が実現される。
【0029】
車両ステータス情報には、磁気マーカ10を利用して取得あるいは生成した情報と、車両5の走行状態を表す情報と、がある。前者の情報としては、磁気マーカ10に保持されたRFIDタグ15から取得したタグID(タグ情報)、磁気マーカ10に対する横ずれ量などがある。後者の情報としては、実測された車速や操舵角などがある。なお、車速には、正負の値があり、正の車速は前進時の速度を意味し、負の車速は後退時の速度を意味している。
【0030】
(3)制御サーバ装置
制御サーバ装置18は、
図6のごとく、CPU(Central Processing Unit)181やROM(Read Only Memory)182やRAM(Random Access Memory)183などの電子部品が実装された電子基板180を中心にして構成されたコンピュータ装置である。電子基板180には、I/O(Input/Output)184を介して、ハードディスクドライブ等の記憶装置(記憶媒体)185や無線通信ユニット189等が接続されている。
【0031】
制御サーバ装置18では、記憶装置185の記憶領域を利用して、各磁気マーカ10に関するマーカ情報を記憶するマーカデータベース(マーカDB)185M、制御対象の車両5に関する車両スペック情報を記憶する車両データベース(車両DB)185V、車両5が走行可能な経路や駐車場に関する地図データを記憶する地図データベース(地
図DB)185Tが設けられている。
【0032】
マーカDB185Mに格納された各磁気マーカ10のマーカ情報には、付設されたRFIDタグ15の識別情報であるタグID(タグ情報)が紐付け(対応付け)られている。本例の構成では、タグIDを利用してマーカDB185Mを参照することで、対応する磁気マーカ10の特定が可能である。マーカ情報には、敷設位置を表す情報や、その敷設位置の属性を表す情報や、制限速度などの規制情報などが含まれている。
【0033】
車両DB185Vに格納される車両スペック情報は、遠隔制御によるバレーパーキングサービスの利用登録済みの車両5の車体寸法や、ホイールベースや、前後のオーバーハングや、最小旋回半径や、操舵角ゲイン(ハンドル操作角に対する操舵角の比率)などの情報である。車両DB185Vでは、識別情報である車両IDを紐付けて各車両5の車両スペック情報が管理されている。
【0034】
地
図DB185Tに格納される地図データは、遠隔制御により車両5を自動走行させる経路の構造や駐車場の駐車枠の配置構造などを表すベクターデータによって構成されている。この地図データにおいて、経路上には磁気マーカ10の敷設位置等がマッピングされている。例えば、車両5がいずれかの磁気マーカ10を検出した場合、この地図データを参照すれば、車両5の前方の経路の形状を取得できる。
【0035】
地
図DB185Tでは、上記の地図データに加えて、駐車場内の経路や駐車枠の配置構造などのベクターデータを利用して駐車場の仮想モデルである仮想駐車場モデルが構築されている。この仮想駐車場モデルは、車両5を回送する実際の駐車場をコンピュータ上で再現したモデルである。この仮想駐車場モデルは、回送した車両5を駐車する駐車枠の選定や、駐車枠までの経路の選定等に利用される。なお、仮想駐車場モデルの内容については、実際の駐車場の構成を説明した後で詳しく説明する。
【0036】
なお、本例の仮想駐車場モデルは、遠隔制御による自動走行が可能な車両5専用の駐車場110を対象とするモデルである。一方、一般の車両との相互乗り入れにより運用される一般の駐車場については、各駐車枠の天井に設けられた例えば超音波式の在車センサ等を利用し、各駐車枠の満空を制御サーバ装置18側で管理すると良い。
【0037】
図6の制御サーバ装置18は、ROM182から読み出されたプログラムをCPU181が実行することで、以下の各構成としての機能を実現する。
(3.1)データ通信部:データ通信部は、車両5との間でデータ通信を実行する。
(3.2)マーカ情報取得部:マーカ情報取得部は、車両5側からタグ情報(タグID)を受信したとき、タグIDを利用してマーカDB185Mを参照し、対応する磁気マーカ10に関するマーカ情報を取得する。
(3.3)車両スペック情報取得部:車両スペック情報取得部は、車両ステータス情報に紐付けられた車両IDを利用して車両DB185Vを参照し、車両スペック情報を取得する。
(3.4)車両位置特定部(位置特定部):車両位置特定部は、車両5が所在する車両位置及び車両5の姿勢(方位)を特定する。
(3.5)遠隔制御部:遠隔制御部は、所定の経路に沿って移動できるように車両5を遠隔制御する。遠隔制御部は、車両5の車速や操舵角やタグID等を含む車両ステータス情報を入力値とした演算処理により、目標操舵角、目標車速等の制御値を算出し、制御情報として返信する。なお、目標速度は、速度ゼロ、すなわち停止制御を含む制御値となっている。
(3.6)駐車枠選定部:駐車枠選定部は、仮想駐車場モデルを参照して駐車枠を選定する。
(3.7)回送経路選定部:回送経路選定部は、駐車枠選定部が選定した駐車枠まで車両5を移動させるための回送経路を選定する。
【0038】
(4)車両の走行環境
自動駐車システム1では、
図7のごとく、車両5が停車する枠や車両5を走行させる経路など、車両5が移動可能な位置が管理されている。
車両5が停車する枠としては、バレーパーキングサービスを利用する際に利用者が車両5を停車させる預入停車枠113、車両5を持ち主に返却するための引渡停車枠115、車両5を駐車する駐車枠111などがある。預入停車枠113、及び引渡停車枠115は、バレーパーキングサービスを提供するホテルなどの施設19の車回し190等に設けられる。また、駐車枠111は、施設19の地下の駐車場や、施設19の隣接地の駐車場や、施設19から離れた遠隔地の駐車場等に設けられる。
【0039】
預入停車枠113及び引渡停車枠115は、車両5を収容する長方形状の枠が路面100Sにプリントされて形成されている。駐車枠111は、1辺に開口部を設けた不完全な長方形状の枠が路面100Sにプリントされて形成されている。各枠の路面100Sには、停車した車両5が検出可能なように磁気マーカ10が配設されている。磁気マーカ10は、長方形状の枠の長手方向の中心線に沿って2m離隔して配置されている。
【0040】
車両5が移動する経路としては、バレーパーキングサービスを提供するホテルなどの施設19から駐車場110に至る経路(移動経路)131、駐車場110内で車両5が移動するための経路(場内経路)135、駐車場110から施設19に戻るための経路(移動経路)133などがある。これらの経路131、133、135では、走行領域をなす走行レーンの中心に沿って磁気マーカ10が敷設されている。磁気マーカ10は、経路に沿って2m毎の間隔で配置されている。なお、本例では、施設19と駐車場110との間の移動経路131、133が、対面通行の片側1車線の2車線の道路を利用して構成されている。
【0041】
(4.1)駐車場の構成
図7に例示の駐車場110では、駐車枠111が横並びで配置された島11が複数、並列して配置されていると共に、車両5が場内を移動するための場内経路135が設けられている。場内経路135としては、島11に面する島内経路135Aと、島11から島11へ移動するための横断経路135Bと、がある。場内経路135は、島内経路135Aと横断経路135Bとの組合せにより、全体として略梯子状を呈している。
【0042】
場内では、横断経路135Bを利用して目的の島11まで移動でき、島内経路135Aを利用して目的の駐車枠111まで移動できる。駐車場110では、入口と出口が共用されており、入口から入場した車両5が一方通行で場内を移動して駐車予定の駐車枠111に移動でき、その後、一方通行で出口に移動できる。
【0043】
さらに、島11の各駐車枠111が開口する島内経路135Aには、
図8のごとく、経路方向に沿う2m間隔の磁気マーカ10のほか、駐車枠111への車両5の車庫入れを誘導するための誘導マーカ101が敷設されている。誘導マーカ101は、駐車枠111毎に規定された略円弧状の誘導ライン137に沿って50cm間隔で配置されている。この誘導ライン137は、中型クラスの乗用車(車両5)を車庫入れする際、後ろ側の磁気センサアレイ21Bの中央の位置(センター位置)が通過する標準的な車庫入れ軌跡に一致するラインである。この誘導ライン137は、対応する駐車枠111の正面を通過した箇所に敷設された磁気マーカ10を起点とし、駐車枠111内の開口部に最も近い磁気マーカ10に到達する略円弧状をなしている。
(4.2)仮想駐車場モデル
上記の通り、自動駐車システム1では、地
図DB185Tの記憶領域を利用して、駐車場110の仮想モデルである仮想駐車場モデルが構築されている。この仮想駐車場モデルは、駐車場110の場内経路135の経路構造や、駐車枠111の配置等を表すベクターデータを利用する地図データに基づく仮想モデルである。この仮想駐車場モデルでは、各駐車枠111に対して、車両5が駐車されているか否か(車両の在否)を表す在車フラグ(在車情報)が付設されている。仮想駐車場モデルの場内経路135には、場内経路135を移動中の車両5や、車庫入れ中の車両5等をマッピング可能である。他の車両5の車両位置がマッピングされた仮想駐車場モデルは、例えば、他の車両5と干渉することなく効率良く車両5を回送可能な回送経路を選定するために利用可能である。
【0044】
次に、以上のような構成の自動駐車システム1における(A)マーカ検出処理、(B)車両回送処理、(C)車庫入れ処理、について順番に説明する。
(A)マーカ検出処理
マーカ検出処理は、車両5が備える磁気センサアレイ21A・Bが実行する処理である(
図5参照。)。磁気センサアレイ21A・Bは、磁気センサCnを用いて3kHzの周期でマーカ検出処理を実行する。
【0045】
上記のごとく、磁気センサCnは、車両5の進行方向及び車幅方向の磁気成分を計測するように構成されている。例えばこの磁気センサCnが、進行方向に移動して磁気マーカ10の真上を通過するとき、進行方向の磁気計測値は、
図9のごとく磁気マーカ10の前後で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。したがって、車両5の走行中では、いずれかの磁気センサCnが検出する進行方向の磁気について、その正負が反転するゼロクロスZcが生じたとき、磁気センサアレイ21A・Bが磁気マーカ10の真上に位置すると判断できる。検出処理回路212は、このように磁気センサアレイ21A・Bが磁気マーカ10の真上に位置し進行方向の磁気計測値のゼロクロスZcが生じたときに磁気マーカ10を検出したと判断する。
【0046】
また、例えば、磁気センサCnと同じ仕様の磁気センサについて、磁気マーカ10の真上を通過する車幅方向の仮想線に沿う移動を想定すると、車幅方向の磁気計測値は、磁気マーカ10を挟んだ両側で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。15個の磁気センサCnを車幅方向に配列した磁気センサアレイ21A・Bの場合には、磁気マーカ10を介してどちらの側にあるかによって磁気センサCnが検出する車幅方向の磁気の正負が異なってくる(
図10)。
【0047】
磁気センサアレイ21A・Bに属する各磁気センサCnの車幅方向の磁気計測値を例示する
図10の分布に基づけば、車幅方向の磁気の正負が反転するゼロクロスZcを挟んで隣り合う2つの磁気センサCnの中間の位置、あるいは検出する車幅方向の磁気がゼロであって両外側の磁気センサCnの正負が反転している磁気センサCnの直下の位置が、磁気マーカ10の車幅方向の位置となる。検出処理回路212は、磁気センサアレイ21A・Bのセンター位置(例えば磁気センサC8の位置)について、磁気マーカ10に対する車幅方向の位置の偏差を上記の横ずれ量として計測する。例えば、
図10の場合であれば、ゼロクロスZcの位置がC9とC10との中間辺りのC9.5に相当する位置となっている。上記のように磁気センサC9とC10の間隔は10cmであるから、磁気マーカ10に対する横ずれ量は、車幅方向において磁気センサアレイ21A・Bの中央に位置するC8を基準として(9.5-8)×10cmとなる。
【0048】
(B)車両回送処理
施設19と駐車場110との間で車両5を回送する車両回送処理の内容について、
図11のフロー図を参照して説明する。なお、同図では、制御サーバ装置18側の処理と、車両5側の処理と、を並列して示してある。ホテル等の施設19に車両5で乗り付けた利用者がバレーパーキングサービスを利用するためには、まず、施設19の車回し190に用意された上記の預入停車枠113内に車両5を停車させる必要がある。例えば車載ディスプレイ(図示略)に表示される運転アシストメニュー画面55(
図12)の中の「バレーパーキングサービス」の欄550を選択してサービスの利用請求を行うと、車両回送処理がスタートする。
【0049】
車両5の運転者である利用者が「バレーパーキングサービス」の欄550を選択すると自動駐車システム1側への利用請求が実行されると共に、車両5側では、運転者が自分で運転するマニュアルモードから、車両5が自動走行により駐車場110に回送される回送モードへの切替が実行される(S201)。
【0050】
車両5側でバレーパーキングサービスの利用請求が実行されて回送モードへの切替が実行されたとき(S201)、制御サーバ装置18は、まず、上記の仮想駐車場モデルを参照する。制御サーバ装置18は、仮想駐車場モデルの各駐車枠111に対応する在車フラグを照会(参照)し、いずれか空きの駐車枠111を選定する(S101)。
【0051】
さらに制御サーバ装置18は、選定した駐車枠111まで車両5を移動させるための回送経路を選定する(S101)。回送経路は、預入停車枠113から選定された駐車枠111の駐車場110の入口までの経路(移動経路)131と、駐車場110の入口から駐車枠111までの経路(場内経路)135と、の組合せによる経路である。回送経路は、上記の地
図DB185Tに格納された地図データ上で規定される。駐車場110への回送経路では、預入停車枠113内の最も前側の磁気マーカ10の敷設位置が起点となる。また、上記で選定された駐車枠111に対して、上記の通り想定される誘導ライン137の起点に当たる磁気マーカ10の敷設位置が、回送経路の終点となる。
【0052】
地図データ上で規定された回送経路を参照すれば、回送経路の形状を把握でき、前方のカーブや合流地点などを把握できる。地図データには、経路に敷設された磁気マーカ10の敷設位置が対応付けされている。したがって、車両5側でいずれかの磁気マーカ10が検出されたとき、その磁気マーカ10の特定により回送経路における車両位置を特定できる。
【0053】
車両5側では、制御ユニット32による制御により磁気マーカ10の検出が実行される。上記のように、預入停車枠113の路面100Sには、車両5に取り付けられた前後の磁気センサアレイ21A・Bに対応して2m間隔で磁気マーカ10が配置されている(
図7参照。)。
【0054】
回送モードへの切替に応じて、車両5の制御ユニット32は、前後の磁気センサアレイ21A・Bを制御して磁気マーカ10を検出すると共に(S202)、磁気マーカ10に対する磁気センサアレイ21のセンター位置の横ずれ量を計測する(S203)。この横ずれ量は、磁気マーカ10に対する車両5の横ずれ量として取扱い可能である。前後に離隔する2つの磁気マーカ10に対する横ずれ量は、この2つの磁気マーカ10を結ぶ方位を基準として車両5の姿勢(方位)を特定するために有用である。
【0055】
なお、上記のステップS202、S203を実行するに当たって、磁気マーカ10を検出できるように、預入停車枠113内で車両5を移動させることも良い。例えば、預入停車枠113に停車した際、前側の磁気センサアレイ21Aが預入停車枠113の前側の磁気マーカ10を通過する前であれば、検出が可能になる位置まで車両5を前進させると良い。あるいは、預入停車枠113に停車した際、前側の磁気センサアレイ21Aが預入停車枠113の前側の磁気マーカ10を通過してしまっている場合であれば、検出が可能になる位置まで車両5を後退させると良い。
【0056】
続けて車両5の制御ユニット32は、タグリーダユニット34を制御して前側の磁気マーカ10に付設されたRFIDタグ15のタグID(タグ情報)の読取を実行する(S204)。そして、タグIDや磁気マーカ10に対する車両5の横ずれ量などを含む車両ステータス情報を、制御サーバ装置18に送信する(S205)。なお、車両ステータス情報には、上記の通り、車両IDが紐付けされているため、制御サーバ装置18側で、送信元の車両5を特定可能である。
【0057】
なお、以下の説明においては、例えば、上記のように「磁気センサアレイ21A・Bを制御して磁気マーカ10を検出する」等の制御ユニット32の動作説明について、「制御ユニット32が磁気マーカ10を検出する」等、制御ユニット32を主体として説明する。タグリーダユニット34の制御についても同様である。
【0058】
制御サーバ装置18は、車両ステータス情報を受信したとき、まず、上記のマーカDB185M、車両DB185Vを参照する。制御サーバ装置18は、車両ステータス情報に含まれるタグIDを利用してマーカDB185Mを参照し、対応する前側の磁気マーカ10のマーカ情報を取得し敷設位置を特定する。そして、前側の磁気マーカ10に対する横ずれ量の分だけ、敷設位置からオフセットした位置を演算し、車両位置として特定する(S102)。さらに、制御サーバ装置18は、前後2つの磁気マーカ10に対する2つの横ずれ量に基づき、2つの磁気マーカ10を結ぶ線に対する車両5の姿勢(方位)を演算し特定する(S102)。
【0059】
さらに、制御サーバ装置18は、車両ステータス情報に紐付けられた車両IDを利用して車両DB185Vを参照し、車両スペック情報を取得する。上記の通り、この車両スペック情報には、車体寸法や、ホイールベースや、前後のオーバーハングや、最小旋回半径や、操舵角ゲインなど、遠隔制御に必要な車両5の仕様情報が含まれている。特に、車体寸法や、前後のオーバーハングや、操舵角ゲインなどは、後述する車庫入れ処理のために重要な制御パラメータである。
【0060】
このように制御サーバ装置18は、制御対象の車両5の位置(車両位置)及び姿勢を特定すると共に、制御に役立つ車両5側の制御パラメータを取得した後、車両5の自動走行を実現するための遠隔制御を開始させる(S103)。制御サーバ装置18は、まず、制御対象の車両5の位置や姿勢等に基づいて、上記のステップS101で選定された回送経路に沿って車両5を自動走行させるための目標速度や目標操舵角などの制御値を演算する(S104)。そして、その制御値を含む制御情報を車両5に対して送信する(S105)。
【0061】
車両5の制御ユニット32は、制御サーバ装置18から受信した制御情報に含まれる制御値を車両ECU61に入力する。制御値を入力された車両ECU61は、車両5が備える図示しないステアリング操舵ユニットやエンジンスロットルやブレーキアクチュエータ等を制御することで、車両5の自動走行を開始させる(S206)。
【0062】
車両5の制御ユニット32は、遠隔制御による車両5の自動走行中において、磁気マーカ10の検出を繰り返し試みる(S207:NO)。磁気マーカ10を検出できたときには(S207:YES)、磁気マーカ10に対する車両5の横ずれ量を計測すると共に(S208)、磁気マーカ10に付設されたRFIDタグ15のタグIDの読取を実行する(S209)。
【0063】
ここで、車両5を自動走行させる経路では、2mの間隔をあけて磁気マーカ10が配置されている。この2mの間隔は、車両5における磁気センサアレイ21A・Bの間隔と一致している。したがって、車両5の前後に配置された2つの磁気センサアレイ21A・Bは、隣り合う2つの磁気マーカ10を同時に検出可能である。
【0064】
車両5の制御ユニット32は、磁気マーカ10の検出に応じて、2つの磁気マーカ10について計測された2つの横ずれ量やタグID等のほか、車速や操舵角などを含む車両ステータス情報を制御サーバ装置18に送信する(S210)。車両5の制御ユニット32は、車庫入れモードへの切替地点である回送経路の終点への移動が完了するまで、車両制御(S206)から車両ステータス情報の送信(S210)までの処理を繰返し実行する。
【0065】
制御サーバ装置18は、車両ステータス情報を受信すると(S106:YES)、上記のステップS102と同様、現在の車両位置、姿勢を演算により求める(S107)。そして、回送経路に沿って走行できるよう、次の磁気マーカ10を検出するまでの目標速度や目標操舵角などの制御値を演算し(S108)、車両5に向けて制御情報を送信する(S109)。このように制御情報の送信を受けた車両5では、この制御情報に基づく車両制御が実行され、自動走行が継続される(S206)。
【0066】
その後、磁気マーカ10を検出する毎に、上記のステップS208~S210の処理が繰り返し実行される。一方、制御サーバ装置18側では、磁気マーカ10の検出毎に車両5が送信する車両ステータス情報を受信する毎に、上記のステップS107の車両位置・姿勢の演算、ステップS108の制御値の演算、及びステップS109の制御情報の送信が実行される。
【0067】
上記のように車両5が磁気マーカ10の検出に応じて車両ステータス情報の送信を行い、これに対して制御サーバ装置18が制御情報の送信を行う一連の処理は、上記のステップS101で選定された回送経路の終点に車両5が到達するまで繰り返し実行される(S110:NO)。なお、上記の通り、回送経路の終点には、上記のステップS101で選定された駐車枠111に対応する誘導ライン137(
図8参照。)の起点に当たる磁気マーカ10の敷設位置が設定されている。
【0068】
車両ステータス情報に含まれるタグIDが、回送経路の終点に位置する磁気マーカ10に付設されたRFIDタグ15の識別情報であれば、制御サーバ装置18は、回送経路の終点に車両5が到達したと判断し(S110:YES)、移動完了信号を車両5に向けて送信すると共に(S111)、後退により車両5を駐車枠111に収める後述する車庫入れ処理P1に移行する。その後、制御サーバ装置18の処理は、駐車完了をもって終了する(S112)。一方、車両5側では、制御サーバ装置18が送信元の移動完了信号の受信に応じて、移動完了と判断され(S211:YES)、後退による車庫入れ処理P1に移行する。その後、駐車完了をもって、車両5側の処理も終了する(S212:YES)。
【0069】
(C)車庫入れ処理
車庫入れ処理P1は、
図13のフロー図のごとく、車両5側の制御モードが上記の回送モードから車庫入れモードに切り替えられて開始される(S231)。車両5側の制御モードが車庫入れモードに切り替えられると、制御サーバ装置18は、回送経路の終点に位置する磁気マーカ10に対応する車両ステータス情報に含まれる横ずれ量やタグIDに基づいて、車両位置及び姿勢を演算する(S131)。上記のごとく、車両位置は、タグIDに対応する磁気マーカ10の敷設位置を基準として、横ずれ量の分だけずらした位置である。同様に上記のごとく、姿勢は、2つの磁気マーカ10に対する横ずれ量により特定可能である。
【0070】
続いて制御サーバ装置18は、後退による車庫入れのための制御値を演算する。このとき、制御サーバ装置18は、車両IDを利用して車両DB185Vを参照し、制御対象の車両5の車体寸法や前後オーバーハング等の仕様を把握する。そして、
図14のごとく、その車両5を駐車枠111に車庫入れするために車両5が通過する車庫入れ軌跡139を演算する(S132)。車庫入れ軌跡139としては、前側の磁気センサアレイ21Aのセンター位置が通過する軌跡である車庫入れ軌跡139Fと、後ろ側の磁気センサアレイ21Bのセンター位置が通過する軌跡である車庫入れ軌跡139Rと、が演算により求められる。
【0071】
なお、ステップS132で演算される制御目標の車庫入れ軌跡139は、標準的な車庫入れ軌跡に相当する誘導マーカ101の誘導ライン137とは必ずしも一致しない。制御対象の車両5の車体寸法やオーバーハング等、車種毎の車両5の仕様の違いに応じて、制御目標の車庫入れ軌跡139が異なってくる。また、前側の磁気センサアレイ21Aのセンター位置の車庫入れ軌跡139Fと、後ろ側の磁気センサアレイ21Bのセンター位置の車庫入れ軌跡139Rとは、車両5が円弧状の経路に沿って移動する際に生じ得る内輪差に起因して同一の軌跡になることはない。
【0072】
制御サーバ装置18では、上記のごとく、仮想駐車場モデルが記憶されており、この仮想駐車場モデルは、駐車場110内の場内経路135や駐車枠111の地図データを含めて構成されている。上記のステップS132で演算された制御目標の車庫入れ軌跡139は、仮想駐車場モデルの地図データ上にマッピングされて管理される。この仮想駐車場モデルでは、各駐車枠111に対する標準的な車庫入れ軌跡が、対応する誘導マーカ101の誘導ライン137として特定されている。そこで、制御サーバ装置18は、制御目標の車庫入れ軌跡139を演算した後、標準的な車庫入れ軌跡である誘導ライン137に対する制御目標の車庫入れ軌跡139の偏差であるライン偏差(
図15参照。)を、誘導マーカ101の位置毎に演算する(S133)。
【0073】
制御サーバ装置18は、上記のステップS132で演算した制御目標の車庫入れ軌跡139に沿って車両5を後退させるための制御値(目標操舵角や目標速度)を演算し(S134)、その制御値を含む制御情報を車両5側に送信する(S135)。車両5側では、制御サーバ装置18からの制御情報の受信に応じて車両制御(後退)が開始される(S232)。
【0074】
車両5の制御ユニット32は、遠隔制御による車庫入れ(後退)の際、誘導マーカ101の検出を繰り返し試行する(S233:NO)。誘導マーカ101を検出すると(S233:YES)、誘導マーカ101に対する車両5の横ずれ量を計測する(S234)。なお、誘導マーカ101は、上記のごとく50cm間隔で配置されている。したがって、2m間隔で配設された2つの磁気センサアレイ21A・Bが同時に2つの誘導マーカ101を検出でき、2つの誘導マーカ101に対する横ずれ量をそれぞれ計測可能である。なお、誘導マーカ101の磁極性は、経路や枠に敷設された他の磁気マーカ10の磁極性とは相違している。したがって、車両5側では、誘導マーカ101であるか、他の磁気マーカ10であるかの区別が可能であり、誘導マーカ101の検出時にはタグ情報の読出処理を実行しない。
【0075】
車両5の制御ユニット32は、誘導マーカ101を検出したとき、誘導マーカ101に対する横ずれ量や、操舵角や、後退速度等の情報を含む車両ステータス情報を制御サーバ装置18に送信する(S235)。この車両ステータス情報を受信した制御サーバ装置18は(S136:YES)、車庫入れモードへの切替後の誘導マーカ101の通過数などをカウントすることで、検出された2つの誘導マーカ101を特定する。
【0076】
制御サーバ装置18は、上記のステップS133で演算した誘導マーカ101毎のライン偏差(
図15参照。)と、誘導マーカ101に対する磁気センサアレイ21A・Bのセンター位置の横ずれ量(
図15参照。)と、の差分値を演算する(S137)。そして、制御サーバ装置18は、上記のステップS137で演算した差分値(ライン偏差と横ずれ量との差分値)をゼロに近づけるための制御値(目標操舵角や目標速度)を演算し(S138)、制御値を含む制御情報を車両5側に送信する(S139)。
【0077】
この制御情報を受信した車両5の制御ユニット32は、制御値を車両ECU61に入力し車両制御を実行させる(S232)。その後、車庫入れの後退中に誘導マーカ101を検出する毎に、横ずれ量の計測(S234)、車両ステータス情報の送信(S235)を繰り返し実行する。制御サーバ装置18においても、車両ステータス情報を受信する毎に、ライン偏差と横ずれ量との差分値の演算(S137)や、制御値の演算(S138)などの処理を繰り返す。このような処理の繰り返しは、車両5側で駐車枠111内の磁気マーカ10が検出されるまで継続される(S236:NO)。
【0078】
車両5側で駐車枠111内に配置された磁気マーカ10が検出されると(S236:YES)、タグIDや横ずれ量などの情報を含む車両ステータス情報が制御サーバ装置18に送信される(S237)。一方、制御サーバ装置18は、この車両ステータス情報を受信すると、駐車枠111の磁気マーカ10が車両5によって検出されたと判断する(S140:YES)。そして、車庫入れ完了信号を車両5側に送信し(S141)、車庫入れ処理を終了させる。一方、車両5側では、制御サーバ装置18からの車庫入れ完了信号の受信を待機し(S238:NO)、受信に応じて車庫入れ処理を終了する(S238:YES)。
【0079】
(B)車両回送処理、及び(C)車庫入れ処理により、施設19から車両5を駐車場110に回送し、自動で車庫入れする際の自動駐車システム1の動作について説明した。駐車場110から施設19に車両5を回送する際の自動駐車システム1の動作については、駐車場110への回送時と似通っているので詳細な説明を省略する。駐車枠111から誘導ライン137に沿って車両5を出庫させた後、回送経路を移動して施設19に向けて自動走行により移動させ、車回し190の引渡停車枠115で停車させるという動作の流れとなる。車回し190では、引渡停車枠115の最も前側の磁気センサ10の検出に応じて車両5を停車させると良い。
【0080】
以上のように、本例の自動駐車システム1は、経路や枠に敷設された磁気マーカ10を利用して車両位置、及び車両5の姿勢(方位)を精度高く特定し、信頼性高く車両5を回送できるシステムである。この自動駐車システム1は、GPS(Global Positioning System)とは相違し、屋内環境やビルの谷間などの環境であっても安定的に運用可能である。また、環境認識カメラによる撮像画像を取得し、認識処理を施すことで駐車場内の車両位置や姿勢を特定するシステムとは相違し、雨天や夜や霧などの外部環境に影響を受けることもない。敷設位置が既知である磁気マーカ10を利用すれば、極めて精度高く車両位置を特定可能である。
【0081】
自動駐車システム1によれば、ホテルやショッピングセンター等の施設を運営する側、及び施設の利用者側、双方の負担を低減できる。例えば、ホテルやショッピングセンター等の施設に自動車(車両)で到着した利用者にとっては、駐車場を探す労力や、車庫入れのための運転負担や、駐車場から施設の入口まで徒歩で戻る負担、などが軽減される。施設の運営側にとっては、施設等から離れて駐車場を設けることが可能となる。例えばホテルやショッピングセンター等は繁華な場所や交通の便が良い場所の立地が適しており、比較的地価の高い場所に立地されることが多い一方、近隣に駐車場を設ける必要性を低減できれば、駐車場を確保するためのコストを軽減できる。また、自動駐車システム1に対応する専用の駐車場であれば、運転者等の乗降が必要でなくドアの開閉が不要になるので、間隔を詰めて車両を駐車できる。駐車車両の間隔を詰めれば、単位面積当たりの駐車台数を多くでき、スペース的な効率の向上により駐車場のコストを低減できる。さらに、ドアを開閉不可能な状態で車両を駐車すれば、不審者による車内への侵入を防止でき、車両の盗難や車上荒らし等の犯罪が起きるおそれを抑制できる。
【0082】
本例の構成では、磁気マーカ10に付設されたRFIDタグ15のタグIDを利用し、車両5が検出した磁気マーカ10の特定を容易にしている。駐車場内の経路を含めて経路の構造を表す地図データ上に磁気マーカ10の敷設位置がマッピングされた構成に対して、車両がスタート地点を出発した後の磁気マーカ10の通過数等を計数する構成を組み合わせても良い。車両が磁気マーカ10を検出したとき、磁気マーカ10の通過数がわかっていれば、地図データにマッピングされた磁気マーカ10のうちのいずれの磁気マーカが検出されたかを一意に特定できる。
【0083】
本例では、柱状の磁気マーカ10の端面にRFIDタグ15を取り付けることで、両者を一体的に構成している。磁気マーカ10とRFIDタグ15とが一体的に構成されていれば、両者間の位置ずれを未然に抑制できる。これにより、車両5が磁気マーカ10を検出したとき、RFIDタグ15と確実性高く通信できるようになる。さらに、磁気マーカ10に対して車両5が接近する際、その進入方向によらず同様のタイミングでRFIDタグ15と通信可能な状態となる。
【0084】
本例のRFIDタグ15付きの磁気マーカ10については、施工する際、RFIDタグ15と磁気マーカ10とを一体的に取扱いできるので施工作業を効率的に実施できる。さらに、敷設の際、柱状の磁気マーカ10の長手方向の軸を中心とした回転位置を考慮する必要がないので、施工が容易かつ効率的である。なお、RFIDタグ15と磁気マーカ10との一体的な構成は、必須の構成ではなく、別体としても良い。
【0085】
本例では、位置情報提供部の一例として、RFIDタグ15を例示している。位置情報提供部としては、バーコードやコードパターンの印刷、磁気マーカの磁極性の組合せ、など他の構成を採用しても良い。
【0086】
本例で例示した車両5(
図4)に代えて、慣性航法ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)を備える車両を前提としても良い。電子コンパスや加速度センサやジャイロセンサなどを備えるIMUによれば、車両の相対位置の推定に必要な計測値を取得可能である。磁気マーカを通過した後の相対位置を推定できれば、この磁気マーカの敷設位置に基づいて特定された車両位置に相対位置を足し込むことで、次の磁気マーカを検出するまでの中間的な位置における車両位置の推定が可能になる。この場合には、磁気マーカの配置間隔を広げることが可能になる。
【0087】
本例の構成では、経路上にRFIDタグ付きの磁気マーカを配置しているが、回送の起点や、経路の合流・分岐箇所などの特定の箇所にRFIDタグ付きの磁気マーカを配置し、中間的な箇所には、RFIDタグなしの磁気マーカを配置することも良い。RFIDタグが付設された磁気マーカを検出したときには、タグIDを利用してその磁気マーカの敷設位置を取得できる。RFIDタグ付きの磁気マーカ10を通過した後は、この磁気マーカ10の敷設位置を基準位置として、例えば上記のIMUによる計測値に基づく相対位置を加算して車両位置を推定的に特定すると良い。RFIDタグなしの磁気マーカを新たに検出したときには、マーカDB185Mを参照し、推定した車両位置に最も近い敷設位置を探索することで、検出した磁気マーカを特定すると良い。検出した磁気マーカを特定できれば、タグIDを取得できた場合と同様に、磁気マーカの敷設位置に基づいて車両位置を高精度に特定できる。
【0088】
さらに、車両が備える4輪の車輪毎の回転速度あるいは回転量や、ステアリングあるいは操舵輪の操舵角などを利用して車両の姿勢を検知するユニットを、上記のIMUに代えて、あるいは加えて採用することも良い。各車輪の回転速度や回転量等は、各車輪に回転センサ等を取り付けるという比較的簡素な構成により計測可能である。このように操舵角や車輪毎の回転速度等を利用して車両の姿勢を検知するユニットを採用すれば、車両側のコスト上昇を抑制しながら、車両の相対位置を推定できるようになる。
【0089】
また、本例では、車両5の前後2箇所に配置された磁気センサアレイ21A・Bが異なる磁気マーカ10を同時に検出できるという構成を利用して、車両の姿勢(方位)を特定している。この構成を採用すれば、車両5側の操舵角の変化等の影響を受けることなく、車両の姿勢を確実性高く特定できる。これに代えて、車両の前後方向の異なる位置の2つ以上の磁気センサアレイが、車両の移動に応じて同じ磁気マーカ10を検出したときの横ずれ量の変化によって車両の姿勢を特定しても良い。この構成の場合、磁気マーカ10の敷設態様に制約が生じないため、磁気マーカ10の敷設コストの点で有利である。あるいは、車両側の磁気センサアレイを一つとする一方、狭い間隔で2つ以上の磁気マーカ10が配置された敷設箇所を経路中に設けることも良い。この狭い間隔としては、例えば車両の全長以下の1~4m程度の間隔を設定できる。この場合には、敷設箇所に配置された2つ以上の磁気マーカを通過する際の各磁気マーカに対する横ずれ量の変化によって車両の姿勢を特定できる。この構成の場合、車両の磁気センサアレイが1つで済むので、車両側のコストを抑制できる。敷設箇所の2つ以上の磁気マーカについては、経路に沿って配置すると良い。経路の方向に沿って配置した場合、敷設箇所の2つ以上の磁気マーカを結ぶ線に対する車両の姿勢が、そのまま経路の方向に対する車両の姿勢となる。あるいは、敷設箇所において、経路の方向に対して斜行する方向や交差する方向などの所定の方向に沿って2つ以上の磁気マーカを配置しても良い。このような配置であっても、車両の姿勢特定に利用可能である。さらに、敷設箇所に3つ以上の磁気マーカを配置する場合、各磁気マーカを直線的に配置しても良いが、直線的に配置することは必須ではない。例えば3つの磁気マーカの場合であれば、三角形をなす各頂点に当たる位置に磁気マーカを1つずつ配置しても良い。
【0090】
測距レーダやカメラや超音波式の障害物センサなどの車載センサを利用し、車両が移動する際の安全性を確保することが有効である。
本例では、車両が駐車枠まで移動する自走式の駐車場を例示しているが、立体駐車場であっても良い。タワー式の立体駐車場の場合であれば、車庫入れの際、例えば可動パレットなどの所定の停車位置に車両を停車すれば良い。車両を載せた可動パレットが移動して、車両の駐車動作(車庫入れ)が完了する。
【0091】
なお、駐車枠111を選定する際(
図11中のステップS101)、遠隔制御により回送中の他の車両5があれば、空きの駐車枠111のうち、他の車両5の車庫入れ動作に干渉するおそれを抑制できる駐車枠111を選定すると良い。さらに、干渉するおそれを干渉度として指標化することも良い。干渉度Ivは、例えば下記の演算式により駐車枠毎に演算できる。駐車枠の選定に当たっては、干渉度Ivが最も低くなる駐車枠を選択すると良い。
【0092】
【数1】
変数は以下の通りである。
Ta:制御対象の車両が演算対象の駐車枠に到達すると予想される時刻。
Tp:現在時刻(制御対象の車両についての車両回送処理の開始時刻)。
t:施設を出発してから演算対象の駐車枠に到達するまでの所要時間。
Tn:遠隔制御中の他の車両nが駐車枠に到達すると予想される時刻。
αn:他の車両nが駐車を予定する駐車枠と、演算対象の駐車枠と、の位置関係に応じた干渉係数。
m:遠隔制御中の他の車両の台数。
n:自然数。
【0093】
なお、式中の干渉係数αnについては、演算対象の駐車枠と、他の車両nが予定する駐車枠と、の位置関係に応じた値となる。演算対象の駐車枠が、他の車両nが予定する駐車枠と同じ島内経路135Aに面しているかどうか、同じ島内経路135Aに面している場合であれば、手前側に位置するか奥側に位置するかに応じて、干渉係数αnの値が異なる。例えば、演算対象の駐車枠が、他の車両nが予定する駐車枠と同じ島内経路135Aに面している場合では、他の車両が予定する駐車枠に対して、演算対象の駐車枠が奥側に位置していればαn=1、手前側に位置していればαn=0.5とすると良い。また、例えば、演算対象の駐車枠が、他の車両nが予定する駐車枠と異なる島内経路135Aに面している場合、αn=0.1とすると良い。
【0094】
本例では、RFIDタグ15のタグIDを紐付けて磁気マーカ10の敷設位置が管理されるマーカDB185Mを制御サーバ装置18側に設けた構成を例示したが、各車両5がマーカDBを備えている構成であっても良い。各車両5がマーカDBを備える構成であれば、制御サーバ装置18からの情報に依存することなく各車両5が車両位置を特定できるようになる。加えて自動走行のための機能を各車両5が備えていれば、制御サーバ装置18からの制御に依存することなく自律走行できるようになる。このように各車両5が自律走行が可能な構成の場合についても、各車両5が車両位置を制御サーバ装置18に送信するように構成すると良い。この場合には、制御サーバ装置18側で各車両5の車両位置の管理が可能となる。なお、車両が自律走行する場合であっても、駐車枠及び回送経路の選定については制御サーバ装置に問い合わせすると良い。
【0095】
例えば施設19の建物などの壁面に、預入停車枠113を俯瞰する撮像カメラを設置することも良い。位置と俯瞰角度が固定された撮像カメラの撮像画像に基づけば、預入停車枠113に停車した車両については、車両位置や姿勢を精度高く特定できる。
【0096】
本例では、磁気マーカ10の上面に、シート状のRFIDタグ15を取り付けた構成を例示しているが、磁気マーカ10とRFIDタグ15とが一体をなしている構成は必須ではない。磁気マーカ10とRFIDタグ15とが同じ位置に配置されていれば良く、磁気マーカ10の鉛直方向上方、あるいは下方にRFIDタグ15が配置されていても良い。
【0097】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0098】
1 自動駐車システム
10 磁気マーカ
101 誘導マーカ
110 駐車場
111 駐車枠
113 預入停車枠
115 引渡停車枠
131、133 移動経路
135 場内経路
135A 島内経路
135B 横断経路
137 誘導ライン
139 車庫入れ軌跡
15 RFIDタグ(無線タグ、位置情報提供部)
18 制御サーバ装置(位置特定部、駐車枠選定部)
185 記憶装置(記憶媒体)
185M マーカデータベース(マーカDB)
185V 車両データベース(車両DB)
185T 地図データベース(地
図DB)
21 磁気センサアレイ(磁気検出部)
212 検出処理回路
32 制御ユニット
34 タグリーダユニット
5 車両
61 車両ECU