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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】ニッケル酸化鉱石原料の前処理方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 23/00 20060101AFI20221012BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20221012BHJP
   C22B 3/08 20060101ALI20221012BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C22B23/00 102
C22B1/00 101
C22B3/08
C22B3/44 101B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018113279
(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2019214778
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】宮本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝輝
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206064(JP,A)
【文献】特開2012-153922(JP,A)
【文献】特開2010-095788(JP,A)
【文献】特開2017-052991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧酸浸出法により処理されるニッケル酸化鉱石原料の前処理方法であって、該ニッケル酸化鉱石原料を第1の供給水と共に篩別部を備えたドラムウォッシャーに導入して洗浄を行うと共に数十mmオーダーの大きさを有する鉱石を除去する第1湿式分級工程と、該第1湿式分級工程で回収した第1鉱石スラリーを第2の供給水と共にバイブレーティングスクリーンに導入して数mmオーダーの大きさを有する鉱石を除去する第2湿式分級工程と、該第2湿式分級工程で回収した第2鉱石スラリーをシックナーに導入し、サンプリングしたスラリーの乾燥後の固形分質量を該サンプリングしたスラリーの質量で除することにより求まる固形分濃度が42.0~44.0%になるまで濃縮した鉱石スラリーを得る沈降分離工程とからなり、前記鉱石原料1トン当たりの前記第1の供給水のトン数が1.0~1.4の範囲内であり、且つ前記鉱石原料1トン当たりの前記第2の供給水のトン数が0.6~0.8の範囲内であって、前記鉱石原料1トン当たりのこれら第1の供給水及び第2の供給水の合計トン数を1.6~2.2の範囲内で調整することで、サンプリングしたスラリーの乾燥後の固形分質量を該サンプリングしたスラリーの体積で除することにより求まる前記第2鉱石スラリーのスラリー濃度を1125kg/m~1150kg/mの範囲内にすることを特徴とするニッケル酸化鉱石原料の前処理方法。
【請求項2】
前記シックナーに導入する前記第2鉱石スラリー中の鉱石1トン当たり100~120gの凝集剤を該シックナーに添加することを特徴とする、請求項に記載のニッケル酸化鉱石原料の前処理方法。
【請求項3】
前記高圧酸浸出法が、前記濃縮した鉱石スラリーに硫酸を添加して高温高圧下で酸浸出処理する浸出工程と、該浸出工程で得た浸出スラリーを多段洗浄しながら固液分離することで、ニッケル及びコバルトを含む浸出液を得る固液分離工程と、該浸出液のpHを調整すると共に前記固液分離工程で除去された浸出残渣スラリーの一部と凝結剤とを添加することで該浸出液に含まれる不純物元素を中和澱物として分離してニッケル及びコバルトを含む中和終液を得る中和工程と、前記中和終液に硫化剤を添加することにより生成した亜鉛及び銅を含む混合硫化物を分離して脱亜鉛終液を得る脱亜鉛工程と、前記脱亜鉛終液に硫化剤を添加することによりニッケル及びコバルトを含む混合硫化物を生成するニッケル回収工程とからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のニッケル酸化鉱石原料の前処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル酸化鉱石原料の前処理方法に関し、特に高温高圧下において鉱石スラリーの形態で酸浸出処理を施す前に行うニッケル酸化鉱石原料の前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬法として、硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理を施すHPAL法とも称される高圧酸浸出法が知られている。この高圧酸浸出法は、従来の一般的なニッケル酸化鉱石の製錬方法である乾式製錬法と異なり還元工程や乾燥工程を含んでおらず、一貫した湿式工程で処理を行うのでエネルギー的及びコスト的に有利な処理法である。また、比較的低品位のニッケル酸化鉱石原料からニッケル品位が50~60質量%程度まで高められたニッケル及びコバルトを含む混合硫化物(ニッケルコバルト混合硫化物とも称する)を得ることができるという利点も有している。
【0003】
上記の高圧酸浸出法は、原料としてのニッケル酸化鉱石に水を加えて調製した鉱石スラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理する浸出工程と、該浸出工程で得た浸出液を浸出残渣から分離する固液分離工程と、中和剤の添加により該浸出液に含まれる不純物を中和澱物として除去する中和工程と、該中和澱物を除して得た中和終液に硫化剤を添加してニッケルコバルト混合硫化物を生成するニッケル回収工程とから一般的に構成される。
【0004】
上記の原料として用いるニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーの調製は、通常は採掘後の原鉱石に混入している夾雑物を除去したり粗大な鉱石を除去したりする前処理工程において行われる。すなわち、該前処理工程では、例えばニッケル品位1.0~2.0%程度の低品位のニッケル酸化鉱石を所定の粒度まで段階的に分級すると共に解砕することが行われる。その際、後段では湿式による分級が行われるため、該前処理後、ニッケル酸化鉱石はスラリーの形態で回収されることになる。このようにして湿式で分級された後に回収される鉱石スラリーはスラリー濃度が低く、そのまま後工程の浸出工程で処理すると、効率よく浸出するのが困難になる。そこで、特許文献1及び2に示すように、鉱石スラリーを浸出工程に移送する前にシックナーに導入してスラリー濃度を高めることが行われている。
【0005】
上記シックナーは、一般に中央部が最も深くなるように傾斜した底面を有する円形沈降槽と、該底面に沿って低速で回転しながら沈降した固形分をかき集めるレーキとから主に構成され、重力沈降により濃縮したスラリーは該円形沈降槽の底部中央から抜き出され、他方、固形分が除去された清澄液はオーバーフローにより排出される。かかる構造のシックナーでは、重力沈降時の固形分の沈降性を向上させるため、鉱石スラリーに凝集剤を添加してフロックを形成させたり、鉱石スラリーに中和剤を添加して中和処理することで沈殿物の生成を促進したりすること等が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-037632号公報
【文献】特開2013-159790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような高温加圧下での酸浸出により低品位ニッケル酸化鉱石からニッケルを回収する場合は、前述したように、浸出工程で処理する鉱石スラリーは、固形分濃度が高ければ高いほど該浸出工程への単位時間当たりのニッケル供給量を増加させることができるので、生産性の観点から好ましい。但し、鉱石スラリーの固形分濃度が高すぎると配管が閉塞したりスラリーの粘度が過度に高くなってシックナーの底部から抜き出すポンプの能力が律速になって送液が困難になったりする問題が生じることがあった。従って、前処理工程におけるシックナーの底部から抜き出される鉱石スラリーは、適度な固形分濃度が安定的に維持されていることが好ましい。
【0008】
しかしながら、シックナーの底部から抜き出される濃縮鉱石スラリーの固形分濃度は、該シックナーに導入される鉱石スラリーのスラリー濃度に依存するため、該シックナーの前工程である湿式の分級工程における水の供給量等の運転条件が変動すると、該シックナー底部から抜き出される濃縮鉱石スラリーの固形分濃度が大きく変動し、上記したように浸出工程での生産性が低下したり配管が閉塞したりする問題が生じることがあった。
【0009】
本発明は、上記した従来のニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出法が抱える問題点に鑑みてなされたものであり、浸出工程で処理される鉱石スラリーの固形分濃度を適度な範囲内で安定的に維持することが可能な前処理方法を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るニッケル酸化鉱石の前処理方法は、高圧酸浸出法により処理されるニッケル酸化鉱石原料の前処理方法であって、該ニッケル酸化鉱石原料を第1の供給水と共に篩別部を備えたドラムウォッシャーに導入して洗浄を行うと共に数十mmオーダーの大きさを有する鉱石を除去する第1湿式分級工程と、該第1湿式分級工程で回収した第1鉱石スラリーを第2の供給水と共にバイブレーティングスクリーンに導入して数mmオーダーの大きさを有する鉱石を除去する第2湿式分級工程と、該第2湿式分級工程で回収した第2鉱石スラリーをシックナーに導入し、サンプリングしたスラリーの乾燥後の固形分質量を該サンプリングしたスラリーの質量で除することにより求まる固形分濃度が42.0~44.0%になるまで濃縮した鉱石スラリーを得る沈降分離工程とからなり、前記鉱石原料1トン当たりの前記第1の供給水のトン数が1.0~1.4の範囲内であり、且つ前記鉱石原料1トン当たりの前記第2の供給水のトン数が0.6~0.8の範囲内であって、前記鉱石原料1トン当たりのこれら第1の供給水及び第2の供給水の合計トン数を1.6~2.2の範囲内で調整することで、サンプリングしたスラリーの乾燥後の固形分質量を該サンプリングしたスラリーの体積で除することにより求まる前記第2鉱石スラリーのスラリー濃度を1125kg/m~1150kg/mの範囲内にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、浸出工程で処理される鉱石スラリーの固形分濃度を適度な範囲内で安定化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態のニッケル酸化鉱石原料の前処理方法を有する高圧酸浸出法によるニッケルコバルト混合硫化物の製造方法のプロセスフロー図である。
図2】本発明の実施形態のニッケル酸化鉱石原料の前処理方法のプロセスフロー図である。
図3】本発明の実施例において、ドラムウォッシャーに装入した鉱石1トン当たりのドラムウォッシャー及びバイブレーティングスクリーンへの供給水の合計トン数と、これにより得た鉱石スラリーのスラリー濃度との関係をプロットしたグラフである。
図4】本発明の実施例において、前処理工程のシックナーに供給した鉱石スラリーのスラリー濃度と該シックナー底部から抜き出した濃縮鉱石スラリーの固形分濃度との関係をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るニッケル酸化鉱石原料の前処理方法を有する高圧酸浸出法によるニッケルコバルト混合硫化物の製造方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。この本発明の実施形態のニッケルコバルト混合硫化物の製造方法は、図1に示すように、ニッケル酸化鉱石原料をスタティックグリズリ、シェイクアウトマシン、ドラムウォッシャー、及びバイブレーティングスクリーンの4段の解砕・分級設備に順次装入して解砕及び篩別(スクリーニング)を行った後、得られた鉱石スラリーをシックナーに導入してスラリー濃度を濃縮する前処理工程S1と、該前処理工程S1で得た鉱石スラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理する浸出工程S2と、該浸出工程S2で得た浸出スラリーを直列に接続されたシックナー群に導入して多段洗浄しながら浸出残渣を分離することでニッケル及びコバルトを含む浸出液を得る固液分離工程S3と、該固液分離工程S3で得た浸出液のpHを調整すると共に、不純物元素を含む中和澱物の沈降速度促進のため、該固液分離工程S3のシックナー底部から抜き出された浸出残渣スラリーの一部と凝結剤とを添加することで該浸出液に含まれる不純物元素を中和澱物として分離してニッケル及びコバルトを含む中和終液を得る中和工程S4と、該中和終液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加することにより亜鉛や銅を含む硫化物を生成し、該硫化物を分離して脱亜鉛終液を得る脱亜鉛工程S5と、該脱亜鉛終液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加することによりニッケル及びコバルトを含む混合硫化物を生成し、該混合硫化物を固液分離により回収するニッケル回収工程S6とからなる。以下、これら工程の各々について説明する。
【0014】
[前処理工程S1]
ニッケル酸化鉱石原料の前処理工程S1は、必要に応じて夾雑物や数百mmオーダーの粗大な鉱石を除去した後、供給量が調整された供給水と共にドラムウォッシャー及びバイブレーティングスクリーンに順次導入して湿式で段階的に粗大な鉱石を篩別により除去し、得られた鉱石スラリーをシックナーに導入して固形分濃度42.0%~44.0%まで濃縮した鉱石スラリーを得る工程である。
【0015】
図2を参照しながら具体的に説明すると、湿式製錬の対象となる鉱山で採掘された低品位のニッケル酸化鉱石原料は、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱である。ラテライト鉱のニッケル含有量は、通常0.8~2.5質量%であり、水酸化物又はケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含まれている。また、鉄の含有量は10~50質量%であり、主として3価の水酸化物(ゲーサイト)の形態であるが、一部2価の鉄がケイ苦土鉱物に含まれている。なお、ニッケルの湿式精錬では、このようなラテライト鉱の他に、ニッケル、コバルト、マンガン、銅等の有価金属を含有する酸化鉱石、例えば深海底に賦存するマンガン瘤等が用いられることがある。
【0016】
このように、ニッケル酸化鉱石原料はリモナイト鉱とサプロライト鉱が共存しており、針鉄鉱、蛇紋石、石英等を主要鉱物とする風化生成による脆い赤土の粘土状の形態を有している。そのため、この鉱石原料は本来は脆く、容易に解砕することができるが、鉱山から採掘された後にそのままストックヤード等で野積み状態で保管される場合が多く、ニッケル酸化鉱石は部分的に団子状の塊を形成していることがある。従って、採掘後の鉱石原料は、浸出工程で処理する前に解砕したり篩別等により分級したりすることが必要になる。
【0017】
また、採掘された鉱石原料には、ニッケル等の有価物を経済的に回収できる程度含有していない橄欖岩等の脈石や、ニッケル酸化鉱石以外の採掘の際に混入する樹木の根などの夾雑物が含まれていることが多いので、上記のニッケル酸化鉱石原料の分級や解砕の際、これらの混入物を除去することが好ましい。そこで、この前処理工程S1では、採掘されたニッケル酸化鉱石の鉱石原料に対して4段階の工程で順次分級を行い、ニッケル酸化鉱石原料を解砕すると共に、該鉱石原料中に含まれる粗大な塊鉱石や夾雑物をサイズの大きいものから段階的に分離除去(リジェクトとも称する)する。なお、「解砕」とは、上記のような団子状に固まったニッケル酸化鉱石の大きな塊を小さな塊にほぐす操作であり、これは脈石などの混入物を小さな塊に砕く操作である「破砕」に比べて物理的に弱い力で処理することができる。
【0018】
すなわち、第1段目の粗分級工程S11では、例えばスタティックグリズリと称する格子部材又は互いに平行に架け渡された複数の棒状部材で構成される篩別装置が用いられ、これにより例えば目開き250mmで篩別することで最も粗大な塊鉱石や夾雑物が+250mm(250mmオーバー)としてリジェクトされる。この粗分級工程S11において格子部材等を通過した-250mm(250mmアンダー)のニッケル酸化鉱石は、次に第2段目の振動分級工程S12に送られる。この振動分級工程S12では、例えばシェイクアウトマシンと称する格子部材とこれを水平に支持する枠体とで主に構成され、枠体ごと格子部材を振動させて篩別を行う装置が用いられ、これにより例えば目開き150mmで篩別することで2番目に粗大な塊鉱石や夾雑物が+150mm(150mmオーバー)としてリジェクトされる。
【0019】
これら第1段目のスタティックグリズリ及び第2段目のシェイクアウトマシンの主たる役割は、3段目以降の処理で水を加えてスラリーにしたとき、脈石、夾雑物、粗大な塊鉱石などにより設備が損傷するのを避けることにある。すなわち、第1段目のスタティックグリズリ及び第2段目のシェイクアウトマシンでは鉱石原料はほとんど解砕されずに、+250mm及び+150mmがそれぞれ第1段目のスタティックグリズリ及び第2段目のシェイクアウトマシンで除去される。
【0020】
上記の振動分級工程S12において格子部材を通過した-150mm(150mmアンダー)のニッケル酸化鉱石は、次に第3段目の第1湿式分級工程S13に送られる。この第1湿式分級工程S13では、篩別部を備えたドラムウォッシャーによって処理される。このドラムウォッシャーは、両端が開口した円筒形のドラム部と、トロンメルと称する金網又は多数の貫通孔が穿孔された金属板からなる両端が開口した円筒状又は切頭円錐形状のスクリーン部とからなり、これらドラム部とスクリーン部はそれぞれの中心軸が一致するように端部同士結合して一体化しており、該一致する中心軸をほぼ水平を傾けた状態で回転自在に支持されている。
【0021】
かかる構造により、ドラム部においてスクリーン部が接続する端部とは反対側の開口端に供給水と共に装入された-150mmのニッケル酸化鉱石は、ドラムウォッシャーの回転に伴って該ドラム部内において撹拌されることで洗浄及び解砕が行われ、その後、例えば目開き25mmのスクリーン部で篩別されることで3番目に粗大な塊鉱石や夾雑物が+25mm(25mmオーバー)としてリジェクトされる。
【0022】
このドラムウォッシャーのスクリーン部においてオーバーサイズとしてリジェクトされるものには夾雑物が特に多く含まれているうえ、一般的なポンプなどの送液装置で流送するのは非常にコストがかかるので通常は廃棄されている。一方、このスクリーン部を水と共に通過した-25mm(25mmアンダー)のニッケル酸化鉱石は、第1鉱石スラリーとして第4段目の第2湿式分級工程S14に送られる。
【0023】
第2湿式分級工程S14では、バイブレーティングスクリーンと称する装置によって処理される。このバイブレーティングスクリーンは、金網又は多数の貫通孔が穿孔された金属板を振動させるものであり、例えば目開き2.0mm、より好適には1.4mmで上記の第1鉱石スラリーを湿式で篩別することにより4番目に粗大な塊鉱石や夾雑物が+2mm(2mmオーバー)、より好適には+1.4mm(1.4mmオーバー)としてリジェクトされる。このバイブレーティングスクリーンを水と共に通過した-2mm(2mmアンダー)、より好適には-1.4mm(1.4mmアンダー)のニッケル酸化鉱石は、第2鉱石スラリーとして好適には中継工程S15において例えばスラリータンクで一旦貯留された後、沈降分離工程S16においてシックナーに導入されて沈降分離により濃縮される。このようにして前処理が施された後、浸出工程S2に移送される。
【0024】
上記の第3段目のドラムウォッシャー及び第4段目のバイブレーティングスクリーンの主たる役割は、鉱石原料に水を添加してスラリー化すると共に、湿式により効率的に解砕することにある。また、湿式で分級を行うことにより、粗大な鉱石が洗浄されるため、その表面に付着している微細粒子をより多く回収して浸出工程S2に供給することが可能になる。更に、適度な粒度にすることで、前処理工程S1で得た鉱石スラリーを浸出工程S2の設備に供給するための配管系の鉱石スラリーポンプやスラリー配管の磨耗を防止することも可能になる。
【0025】
上記したように4段階で分級することで最終的に得られる第2鉱石スラリーは、通常は-1.4~+0.1mmが10質量%以下、及び-0.1mmが90質量%以上の粒度を有するニッケル酸化鉱石を含んでいる。この第2鉱石スラリーの濃縮を行う次工程のシックナーでは、浸出工程S2で処理される鉱石スラリーが適度な流動性を有する範囲内でできるだけ濃縮することで浸出工程S2での反応性を高めることができるため、シックナーの底部から抜き出される濃縮後の鉱石スラリーの固形分濃度を42.0~44.0質量%に調整する。
【0026】
シックナーの底部から抜き出される濃縮後の鉱石スラリーの固形分濃度を上記の範囲内にするため、第3段目のドラムウォッシャー及び第4段目のバイブレーティングスクリーンに供給する水の合計トン数を、該ドラムウォッシャーに導入する鉱石原料1トン当たり1.6~2.2になるように調整すると共に、該シックナーに供給する第2鉱石スラリーのスラリー濃度を1125~1150kg/mの範囲内に調整する。
【0027】
上記の合計トン数が1.6より少ない場合は、上記第3段目及び第4段目での分級時の洗浄効率が低下し、微細鉱石の回収が不十分になって鉱石原料のロスが過剰になるおそれがある。逆に、上記合計トン数が2.2より多い場合は、これら分級によって得られる第2鉱石スラリーのスラリー濃度が過度に低下し、シックナーの底部から十分に濃縮されない状態の鉱石スラリーが排出されるおそれがある。
【0028】
また、上記のスラリー濃度が1125kg/mより低い場合は、シックナー内の向流等により沈降性が阻害されてしまい、シックナーでの濃縮沈澱効率が悪化し、シックナーの底部から抜き出される鉱石スラリーの固形分濃度が低下するおそれがある。逆に上記のスラリー濃度が1150kg/mより高い場合は、シックナーの底部から抜き出される鉱石スラリーの固形分濃度が高くなり過ぎてポンプで送液する際に配管が詰まってしまうおそれがある。
【0029】
上記の第3段目及び第4段目で加える水の合計トン数の要件を満たすため、第3段目のドラムウォッシャーに供給する水のトン数は、該ドラムウォッシャーに導入する鉱石原料1トン当たり1.0~1.4の範囲内であるのが好ましい。このトン数が1.0より少ない場合は、ドラムウォッシャーでの洗浄効率が低下するうえ、ドラムウォッシャー内部が閉塞する恐れがある。逆にこのトン数が1.4より多い場合は、上記第3段目及び第4段目での分級で得た第2鉱石スラリーのスラリー濃度が過度に低下してシックナーの底部から十分に濃縮されない状態の鉱石スラリーが排出されるおそれがある。
【0030】
上記のドラムウォッシャーに供給する水のトン数の要件に代えて、あるいは該要件に加えて、第4段目のバイブレーティングスクリーンに供給する水のトン数は、上記ドラムウォッシャーに導入する鉱石原料1トン当たり0.6~0.8の範囲内であるのが好ましい。このトン数が0.6より少ない場合は、バイブレーティングスクリーンでの洗浄効率が低下するおそれがある。逆にこのトン数が0.8より多い場合は、この第4段目の分級で得た第2鉱石スラリーのスラリー濃度が過度に低下してシックナーの底部から十分に濃縮されない状態の鉱石スラリーが排出されるおそれがある。なお、上記のようにドラムウォッシャー及びバイブレーティングスクリーンに供給する水の量を調整することで、これら第3段目及び第4段目の分級により得られる第2鉱石スラリーのスラリー濃度を1125~1150kg/mの範囲内に調整することができる。
【0031】
上記シックナーにおいて第2鉱石スラリーに含まれる微細鉱石を重力沈降により分離するに際して、該微細粒子を粗大化させて効率よく分離することを目的としてシックナーに凝集剤を添加することが好ましい。添加する凝集剤の種類については特に制約はないが、コスト面からカチオン系凝集剤が好ましい。この凝集剤の添加量は、該シックナーに導入する鉱石1トン(乾物基準)当たり100~120gの範囲内で調整することが好ましい。この添加量が100gより少ない場合は、微細粒子を十分に粗大化させることができず、沈降速度を速める効果がほとんど得られなくなる。逆にこの添加量が120gより多い場合は、凝集後の粒子が粗大になり過ぎることで粒子間に水分がトラップされ、濃縮沈降効率が悪化するおそれがある。
【0032】
上記したようにスラリー濃度が調整された第2鉱石スラリーを連続的にシックナーに供給することにより、スラリー濃度が所定の範囲内に調整された濃縮鉱石スラリーを該シックナーの底部から連続的に抜き出すことができるので、これを次工程の浸出工程S2に送液することで、配管やポンプの詰り等の問題を生ずることなく、且つ硫酸使用量を必要以上に増加させることなく効率的に浸出処理を行うことが可能になる。
【0033】
[浸出工程S2]
浸出工程S2では、上記の前処理工程S1で処理されたニッケル酸化鉱石のスラリーを硫酸と共に例えば攪拌機を有するオートクレーブ等の高温加圧容器に装入し、更に高圧蒸気を吹き込むことで220~280℃程度の高温加圧条件下で撹拌状態の鉱石スラリーに対して浸出処理を施す。これにより、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーが得られる。
【0034】
この浸出工程S2における浸出処理では、例えば下記式1~3で表される浸出反応と下記式4~5で表される高温熱加水分解反応とが生じ、ニッケル、コバルト等の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行われる。但し、鉄イオンの固定化は完全には進行しないため、通常、得られる浸出スラリーの液相部には、ニッケル、コバルト等の他に2価と3価の鉄イオンが含まれる。
【0035】
[式1]
MO+HSO→MSO+H
(式中、Mは、Ni、Co、Fe、Zn、Cu、Mg、Cr、Mn等を表す)
[式2]
2Fe(OH)+3HSO→Fe(SO)+6H
[式3]
FeO+HSO→FeSO+H
[式4]
2FeSO+HSO+1/2O→Fe(SO)+H
[式5]
Fe(SO)+3HO→Fe+3HSO
【0036】
浸出工程S2における硫酸の添加量には特に限定はなく、ニッケル酸化鉱石中の鉄が浸出されるような過剰量が用いられる。例えば、鉱石1トン当り300~400kgの硫酸が好適に添加される。この硫酸添加量が400kgを超えると、硫酸コストが大きくなり好ましくない。なお、浸出工程S2では、次工程の固液分離工程S3で除去されるヘマタイトを含む浸出残渣のろ過性の観点から、得られる浸出液のpHが0.1~1.0にとなるように調整することが好ましい。
【0037】
[固液分離工程S3]
固液分離工程S3では、上記浸出工程S2で得た浸出スラリーをシックナー等の固液分離手段に導入して回収目的元素であるニッケル及びコバルトのほか、不純物元素として亜鉛を含む浸出液を浸出残渣から分離する。この固液分離手段には特に限定はないが、直列に接続された複数のシックナーを用いた連続向流洗浄法(CCD法:Counter Current Decantation)を採用するのが好ましい。これにより、系内に新たに導入する洗浄液の量を削減できると共に、ニッケル及びコバルトの回収率を95%以上にすることができる。
【0038】
このCCD法では直列に接続したシックナー群のうち最も上流側のシックナーに浸出スラリーを導入し、最も下流側のシックナーに洗浄液を導入する。そしてシックナー底部から抜き出される濃縮したスラリーを順次下流側のシックナーに供給しながらこの濃縮したスラリーの流れとは向流になるようにシックナーからオーバーフローする上澄み液を順次上流側に供給する。これにより、浸出残渣に付着しているニッケル分を段階的に且つ洗浄液の供給量に応じて減少させることができる。
【0039】
上記の洗浄液にはできるだけニッケルを含んでおらず、工程に悪影響を及ぼさないものが好ましい。例えば洗浄液にはpH1~3の水溶液を用いることが好ましい。この洗浄液のpHが3よりも高いと、浸出液中にアルミニウムが含まれる場合には嵩の高いアルミニウム水酸化物が生成され、シックナー内での浸出残渣の沈降不良の原因となるからである。このようなpH1~3程度の水溶液としては、例えば後工程のニッケル回収工程S6で得られる低pH(pH1~3程度)の貧液を繰り返して利用するのが好ましい。
【0040】
[中和工程S4]
中和工程S4では、上記固液分離工程S3にて分離された浸出液のpHを調整することで不純物元素のうち主として鉄を中和澱物として分離して、ニッケル及びコバルトと共に亜鉛を含む中和終液を得る。具体的には、該浸出液の酸化を抑制しながら、中和終液のpHが4以下、好ましくは3.0~3.5、より好ましくは3.1~3.2になるように該浸出液に炭酸カルシウム等の中和剤を添加することで、高圧酸浸出法による浸出処理で用いた過剰の酸が中和され、不純物元素としての3価の鉄イオンやアルミニウムイオンから中和澱物が生成される。この中和澱物を除去することでニッケル回収用の母液の元となる中和終液が得られる。
【0041】
この中和工程S4においては、後工程の脱亜鉛工程S5の脱亜鉛反応槽に移送する中和終液(硫化処理始液)の濁度が100~400NTUとなるように、その中和終液中に中和澱物や浸出工程S2で得た浸出残渣からなる懸濁物を残留させることが好ましい。このようにして、懸濁物を残留させて中和終液の濁度を調整することで、脱亜鉛工程S5にて形成される脱亜鉛硫化物のろ過性を向上させることができる。
【0042】
この中和工程S4は、例えば、中和反応により浸出液から中和澱物を生成する中和反応槽と、得られた中和澱物をスラリーの形態で分離して中和終液を得る分離処理槽と、該分離された中和終液を貯留する中和終液貯留槽とからなる設備で行うことができる。上記の中和反応槽では、固液分離工程S3にて分離された浸出液が装入されると共に、中和反応を生じさせるためその浸出液に中和剤が添加される。
【0043】
中和澱物を中和終液から固液分離する分離処理槽としては、例えばシックナーを挙げることができる。このシックナーには、上記中和反応槽から抜き出される中和反応後のスラリーが装入され、沈降分離により中和澱物が底部に濃縮する。この中和澱物は濃縮したスラリーの形態でシックナーの底部から抜き出される。一方、ニッケル回収用の母液の元となる中和終液はオーバーフローにより排出された後、中和終液貯留槽に移送される。なお、シックナーの底部から抜き出した中和澱物スラリーは、必要に応じて固液分離工程S3に繰り返してもよい。
【0044】
シックナーからオーバーフローした中和終液が装入される中和終液貯留槽は、後工程の脱亜鉛工程S5に中和終液を送る前に一時的に貯留するバッファータンクの役割を担っており、これにより脱亜鉛工程S5の処理設備における処理の進行状況に応じて中和終液の移送流量を調整することができる。この中和終液貯留槽の容積は中和終液の流量に対して例えば3時間以上の滞留時間を有することが好ましい。これにより、脱亜鉛工程S5において安定的に脱亜鉛処理を行うことができる。
【0045】
[脱亜鉛工程S5]
脱亜鉛工程S5では、上記中和工程S4で得た中和終液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加して硫化処理を施すことにより亜鉛硫化物を生成させ、その亜鉛硫化物を分離除去してニッケル及びコバルトを含むニッケル回収用母液(脱亜鉛終液)を得る。具体的には、例えば、加圧された容器内にニッケル及びコバルトと共に亜鉛を含む中和終液を導入し、気相中へ硫化水素ガスを吹き込むことによって、亜鉛をニッケル及びコバルトに対して選択的に硫化して亜鉛硫化物を生成する。この亜鉛硫化物を固液分離により除去することでニッケル回収用母液が得られる。
【0046】
このニッケル回収用母液は、ニッケル酸化鉱石の浸出液から中和工程S4や脱亜鉛工程S5を経て不純物成分が低減された例えばpH3.2~4.0程度の硫酸溶液であり、ニッケルを濃度2~5g/L程度、コバルトを濃度0.1~1.0g/L程度含んでいる。また、不純物成分として鉄、マグネシウム、マンガン等が数g/L程度含まれている可能性があるが、これら不純物成分は、回収対象となるニッケル及びコバルトに対して硫化物としての安定性が低く、よって次工程のニッケル回収工程S6において生成されるニッケルコバルト混合硫化物にはほとんど含有されない。
【0047】
[ニッケル回収工程S6」
ニッケル回収工程S6では、上記の脱亜鉛工程S5で得たニッケル回収用母液に硫化水素ガス等の硫化剤を吹き込んで硫化反応を生じさせることで、ニッケル及びコバルトを含み不純物成分の少ない硫化物(ニッケルコバルト混合硫化物)が生成される。このニッケルコバルト混合硫化物を含むスラリーをシックナー等の沈降分離装置に導入ことによって、ニッケルコバルト混合硫化物を沈殿物としてシックナーの底部から回収することができる。一方、ニッケル濃度を低い水準で安定させた貧液はオーバーフローにより排出される。この貧液は、上記したように鉄、マグネシウム、マンガン等の不純物元素を含んでいるので図1に示すように固液分離工程S3に繰り返してもよい。
【0048】
以上、本発明の実施形態のニッケル酸化鉱石の前処理方法について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更例や代替例を含みうるものである。すなわち、本発明の権利範囲は特許請求の範囲及びその均等の範囲に及ぶものである。次に、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例
【0049】
ニッケル酸化鉱石原料を図2に示すようなプロセスフローに沿って処理した。具体的には、粗分級工程S11では株式会社栗本鐵工所製のスタティックグリズリを用いて+250mmを除去した。振動分級工程S12では上記粗分級工程S11で得た-250mmを古河産機システムズ株式会社製のシェイクアウトマシンに装入して+150mmを除去した。第1湿式分級工程S13では上記振動分級工程S12で得た-150mmをCITIC Heavy Industries Co., LTD.製のドラムウォッシャーに第1の供給水と共に装入して+25mmを除去した。第2湿式分級工程S14では、上記第1湿式分級工程S13で得た-25mmを含む第1鉱石スラリーを古河産機システムズ株式会社製のバイブレーティングスクリーン(型番:JES-30108)に第2の供給水と共に装入して+1.4mmを除去した。
【0050】
その際、該ドラムウォッシャーではそこに装入する-150mmの鉱石1トン当たり該第1の供給水のトン数が1.01~1.48の間で様々な値となるように変動させると共に、該バイブレーティングスクリーンでは該ドラムウォッシャーに装入する-150mmの鉱石1トン当たり該第2の供給水のトン数が0.60~0.82の間で様々な値となるように変動させた。上記第2湿式分級工程S14で得た-1.4mmを含む第2鉱石スラリーは、バッファータンクとしてのスラリータンクを介してシックナーに連続的に供給して沈降分離させた。
【0051】
このシックナーの運転条件はシックナーへの第2鉱石スラリー供給流量が1040~1150m/h、シックナー底部からの濃縮鉱石スラリーの抜き出し流量が400~470m/h、シックナー内の液温が37~43℃の範囲内で変動した。また、第2鉱石スラリーは、ニッケル品位が1.09~1.16質量%、マグネシウム品位が1.0~1.7質量%、鉄品位が48~52質量%、シリコン品位が1.7~2.6質量%、クロム品位が2.0~2.5質量%、アルミニウム品位が1.7~2.6質量%の範囲で変動し、その他のメタル品位はいずれも1.0質量%未満であった。
【0052】
なお、上記シックナーには、導入する第2鉱石スラリーに含まれる鉱石1トン当たり栗田工業株式会社製の凝集剤(型番:PA904)を93~120gの間で様々に変化させて添加した。このようにして、シックナー底部から試料1~33の濃縮鉱石スラリーを連続的に抜き出した。そして各試料の濃縮鉱石スラリーの固形分濃度を、サンプリングしたスラリーの乾燥後の固形分質量を該スラリーの質量で除することにより算出した。また、各試料の濃縮鉱石スラリーに対応する第2鉱石スラリーのスラリー濃度を、サンプリングしたスラリーの乾燥後の固形分質量を該スラリーの体積で除することにより算出した。これら試料1~33の濃縮鉱石スラリーの固形分濃度、それらの各々に対応する第2鉱石スラリーのスラリー濃度及び凝集剤添加量(鉱石1トン当たり)、並びに該第2鉱石スラリーの調製に用いた第1供給水と第2供給水の鉱石(ドラムウォッシャー装入時)1トン当たりの各トン数、及びそれらの合計トン数下記表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
また、これら試料1~33の各々に対して、ドラムウォッシャーに装入した鉱石1トン当たりの第1及び第2供給水の合計トン数を横軸にとり、第2鉱石スラリーのスラリー濃度を縦軸にとってプロットしたグラフを図3に示す。更にこれら試料1~33の各々に対して、第2鉱石スラリーのスラリー濃度を横軸にとり、シックナー底部から抜き出した濃縮鉱石スラリーの固形分濃度を縦軸にとってプロットしたグラフを図4に示す。
【0055】
上記表1の結果から、シックナーに供給する第2鉱石スラリーのスラリー濃度が1125kg/m以下の試料30~32の場合は、シックナー底部から抜き出した濃縮鉱石スラリーの固形分濃度が42.0%未満になった。逆に、1150kg/m以上の試料33の場合は、濃縮鉱石スラリーの固形分濃度が44%を超え、シックナー底部の濃縮鉱石スラリー抜き出し配管において閉塞するトラブルが発生した。これに対して、シックナーに供給する第2鉱石スラリーのスラリー濃度が1125~1150kg/mの試料1~29においては、シックナー底部から抜き出した濃縮鉱石スラリーの固形分濃度は42.0~44.0%の範囲内となり、後工程の浸出工程において安定的に且つ効率よく浸出処理を行うことができた。
【符号の説明】
【0056】
S1 前処理工程
S2 浸出工程
S3 固液分離工程
S4 中和工程
S5 脱亜鉛工程
S6 ニッケル回収工程
S11 粗分級工程
S12 振動分級工程
S13 第1湿式分級工程
S14 第2湿式分級工程
S15 中継工程
S16 沈降分離工程
図1
図2
図3
図4