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  • 特許-ボイラー排ガスのSOx濃度制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】ボイラー排ガスのSOx濃度制御方法
(51)【国際特許分類】
   F23C 99/00 20060101AFI20221012BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
F23C99/00 307
F23N5/00 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018130849
(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公開番号】P2020008231
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】仲村 仁
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-026606(JP,A)
【文献】特開平04-369301(JP,A)
【文献】特開昭56-049815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 99/00
F23J 15/00
F23N 1/00-5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の石炭と共に石灰石粉を投入することで炉内脱硫を行う石炭燃焼ボイラーからの排ガスのSO濃度の制御方法であって、所定の管理時間ごとにその開始時から現時点まで一定の時間間隔で測定したSO 濃度の積算値を該開始時から現時点までの経過時間で除算して平均値を算出すると共に、現時点でのSO 濃度が前記管理時間経過時まで維持されると仮定したときの該開始時から該管理時間経過時までのSO 濃度の予測積算値(燃料中の硫黄量の変動量に基づいて予測するものを除く)を該管理時間で除算して予測平均値を算出し、これら平均値及び予測平均値がそれぞれ所定の閾値以上の場合に警報発報又は警告の画面表示を行ない、該排ガスのSO 濃度が該管理時間ごとの規制値で該管理時間の全体に亘って維持されると仮定したときの該開始時から該管理時間経過時までの目標積算値を求め、該積算値を該目標積算値から減算した値を該現時点から該管理時間が経過するまでの残り時間で除算して管理目標値を算出し、該管理目標値に基づいて前記石灰石粉の投入量を制御することを特徴とするSO濃度の制御方法。
【請求項2】
前記所定の管理時間が24時間のとき、その開始時から現時点までの経過時間をt、該現時点で測定したSO 濃度の測定値をx 、前記SO 濃度の積算値をA としたとき、前記SO 濃度の予測積算値は「A +x ・(1440-t)」であることを特徴とする、請求項1記載のSO 濃度の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラー排ガスのSO濃度の制御方法に関し、特に石灰石粉を石炭原料と共に投入して脱硫を行う炉内脱硫法を用いた流動層石炭燃料ボイラーから排出される燃焼排ガスのSO濃度を経済的に抑制することが可能なSO濃度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭中には数%程度の硫黄が含まれているため、酸化雰囲気で石炭を燃焼することで排出される燃焼排ガスには大気汚染の主たる原因物質であるSOなどの硫黄酸化物(以下、SOとも称する)が含まれている。そのため、石炭燃焼ボイラーから排出される燃焼排ガスは、大気に放出する前にSO濃度を測定することが義務付けられている。測定したSO濃度値は、一般に分散型制御システム(以下、DCSと称する)に取り込まれて記録されると共に、燃焼排ガスのSO濃度の24時間での平均値が規定値以下であるか否か監視することが行われている。上記のDCSでは、取り込んだSO濃度値があらかじめ設定した閾値を超えた時に警報を発したり警告を画面に表示したりすることなどによってオペレータに異常を知らせるシステムになっていることが多く、また、測定値はトレンド記録としてDCSの記憶媒体に保管することで、過去の測定値を確認できるようになっている。
【0003】
上記の燃焼排ガス中のSO濃度値を規定値以下に調整するため、種々の脱硫法が提案されている。例えば、粒径数mm程度の石炭をけい砂等の流動媒体の存在下で流動させて燃焼温度800~1000℃で燃焼させる流動層燃焼ボイラーでは、特許文献1に記載のようにSO濃度を所定の規定値以下に保つために燃料の石炭投入部に脱硫剤として石灰石粉を投入する炉内脱硫法を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-267221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の炉内脱硫法では、SO濃度値に基づいて石灰石粉の投入量を調整することで、SO濃度の1日(24時間)の平均値を例えば社内管理値の200ppm以下に抑えることが可能になる。その際、石灰石粉の投入量を多めに調整することでSO濃度が規定値を超えるのをより確実に防ぐことができるが、この場合は、石灰石粉を必要より多く消費することになるので経済的ではなく、また、石灰石粉を保管するスペースを確保するのが困難になることがあった。本発明は上記した従来の炉内脱硫法の問題点に鑑みてなされたものであり、石灰石粉を過剰に投入することなく、ボイラーから排出される燃焼排ガスのSO濃度を安定的かつ確実に規定値以下に抑制する方法を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るSO濃度の制御方法は、燃料の石炭と共に石灰石粉を投入することで炉内脱硫を行う石炭燃焼ボイラーからの排ガスのSO濃度の制御方法であって、所定の管理時間ごとにその開始時から現時点まで一定の時間間隔で測定したSO 濃度の積算値を該開始時から現時点までの経過時間で除算して平均値を算出すると共に、現時点でのSO 濃度が前記管理時間経過時まで維持されると仮定したときの該開始時から該管理時間経過時までのSO 濃度の予測積算値(燃料中の硫黄量の変動量に基づいて予測するものを除く)を該管理時間で除算して予測平均値を算出し、これら平均値及び予測平均値がそれぞれ所定の閾値以上の場合に警報発報又は警告の画面表示を行ない、該排ガスのSO 濃度が該管理時間ごとの規制値で該管理時間の全体に亘って維持されると仮定したときの該開始時から該管理時間経過時までの目標積算値を求め、該積算値を該目標積算値から減算した値を該現時点から該管理時間が経過するまでの残り時間で除算して管理目標値を算出し、該管理目標値に基づいて前記石灰石粉の投入量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、石灰石粉を過剰に投入することなくボイラーから排出される燃焼排ガスのSO濃度を安定的かつ確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のSO濃度の制御方法を好適に適用可能な石炭燃料ボイラー設備の模式的なフロー図である。
図2】本発明の実施形態に係るSO濃度の制御方法のフローチャートである。
図3】本発明の実施例の制御方法において、硫黄分含有量の高い石炭原料が投入されたときのその投入量及び燃焼排ガス中のSO濃度のトレンドを、DCSで演算したSO濃度の平均値、予測平均値及び管理目標値のトレンドと共に示したグラフである。
図4】本発明の比較例の制御方法において、硫黄分含有量の高い石炭原料が投入されたときのその投入量及び燃焼排ガス中のSO濃度のトレンドを、DCSで演算したSO濃度の平均値、予測平均値及び管理目標値のトレンドと共に示したグラフである。
図5】本発明の実施例の制御方法において、硫黄分含有量の低い石炭原料が投入されたときのその投入量及び燃焼排ガス中のSO濃度のトレンドを、DCSで演算したSO濃度の平均値、予測平均値及び管理目標値のトレンドと共に示したグラフである。
図6】本発明の比較例の制御方法において、硫黄分含有量の低い石炭原料が投入されたときのその投入量及び燃焼排ガス中のSO濃度のトレンドを、DCSで演算したSO濃度の平均値、予測平均値及び管理目標値のトレンドと共に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態のSO濃度制御方法について図面を参照しながら詳細に説明する。先ず、本発明の実施形態のSO濃度の制御方法が好適に適用される石炭燃焼ボイラー設備について説明する。図1に示すように、流動層式の石炭燃焼ボイラー(以下、ボイラーとも称する)1は、底部がテーパ―構造の縦型筒形状を有しており、その下部に投入された燃料の石炭は、硫黄酸化物を除去するための脱硫剤として同様に投入された石灰石粉と共に、ボイラー1の下方から導入される空気によって流動されながら燃焼が行われる。これにより生じた燃焼ガスの輻射伝熱によってボイラー水が温められ、ボイラー1の上部に設けられているボイラードラム1aから蒸気が発生する。
【0010】
上記の輻射伝熱で熱回収された燃焼ガスは、ボイラー1を出てサイクロン2で固形分が除去された後、スーパーヒータ及びエコノマイザを備えた熱回収部3に導入され、ここで対流伝熱により更に熱回収が行われる。すなわち、この熱回収部3では、ボイラー水タンク4から脱気装置5を介して供給されるボイラー水を燃焼ガスと熱交換することで予熱すると共に、上記のボイラードラム1aから発生した飽和蒸気を加熱して自家発電用の過熱蒸気にしている。
【0011】
上記の過熱蒸気はタービンジェネレータ6に導入されてタービンの回転に使用された後、凝縮されて上記ボイラー水タンク4に回収される。一方、熱回収部3で熱回収された燃焼ガスは、燃焼排ガスとして電気集塵機7に導入されて除塵された後、煙突8から大気に放出される。この煙突8にはSO濃度計9が設けられており、煙突内を流れる燃焼排ガスのSO濃度を測定できるようになっている。このSO濃度計9で測定されたSO濃度値は、DCS10に向けて出力される。DCS10では、所定のアルゴリズムに従って該SO濃度値をパラメータとする演算を行い、その演算結果に基づいて例えば石灰石粉の供給フィーダー11のモータ回転数を増減させることで石灰石粉の投入量の制御が行われる。
【0012】
石炭などの化石燃料の燃焼により生ずる燃焼ガスに含まれるSOガスの除去法は、湿式法と乾式法に大きく分類されるが、上記のような流動層式のボイラーを採用することで、脱硫作用を有する石灰石粉を流動媒体に使用することができるので、乾式法の炉内脱硫法を採用することができる。また、流動式のボイラーは、流動床内の伝熱が効率よく行われるため、860℃程度の低温燃焼が可能になり、よってNOの発生量を抑えることができる。すなわち、石灰石(CaCO)粉は炉内温度約860℃で石炭と混合されると下記式1及び式2の反応によりSOの除去を行うことができる。
【0013】
[式1]
CaCO→CaO+CO
[式2]
CaO+SO→CaSO
【0014】
ところで、上記の燃焼ガス中のSOガスの発生量は、燃料として使用する石炭の種類や投入量、ボイラーの負荷等の外乱によって変動するが、その変動割合が大きすぎる場合は石灰石粉の投入量によるSOガスの大気への排出の抑制が追いつかない状況になる場合があるため、オペレータによるボイラー運転の監視が好ましい。しかし、オペレータによる監視ではデータの見落としや異常時の対応の遅れ等を避けることができず、高SO濃度の排ガスが大気に排出し続ける問題が生じるおそれがある。その結果、前述した24時間の平均値が既定値を超えるおそれがあった。
【0015】
そこで、本発明の実施形態のSO濃度の制御方法は、例えば24時間等の所定の管理時間ごとに平均したSO濃度が所定の目標値を超えない範囲でできるだけ目標値に近い値となるように石灰石粉の投入量を制御している。例えば所定の管理時間として24時間ごとに管理する場合は、その開始時間である0時から一定の時間間隔として例えば1分ごとの定周期でSO濃度を測定して積算していくと共に、得られた積算値を上記0時から現時点までの経過時間で除算して現時点までの平均値を演算し、その演算結果を例えばトレンドグラフとしてモニター上に表示させることで、排ガス中のSO濃度が規定範囲内に収まった状態で推移しているか否かを確認することができる。更にこの平均値に対して所定の閾値を設けることで、操業管理用として警報や例えばディスプレイ画面上の警告表示によってSO濃度が規定値を超えるおそれがあることをオペレータに知らせることができ、よってより確実に管理することが可能になる。
【0016】
更に、本発明の実施形態のSO濃度の制御方法は、例えば各工場の自主管理値等の所定の規制値で24時間に亘ってSO濃度が維持されると仮定した場合の24時間の積算値から上記した現時点までの積算値を減算し、その値を現時点から24時間が経過するまでの残り時間(すなわち、上記0時から現時点までの時間を24時間から減算した時間)で除算することで、現時点から24時間が経過するまでの残り時間でのSO管理目標値を新たに設定することができる。
【0017】
このSO管理目標値を制御目標値として石灰石粉の投入量に反映させることによって、石灰石粉の消費量を抑えることができる。すなわち、SOxガスを除去するための石灰石粉の投入量は、一般的にはPID制御に代表されるフィードバック制御によってSO濃度の測定値の目的値からの偏差に応じて調整されるため、上記のように現時点までの過去のSO濃度の積算値に基づいて演算したSO管理目標値を該フィードバック制御の目標値として利用することで石灰石粉の投入量を適正化できる。
【0018】
なお、本発明の実施形態のSO濃度の制御方法では、現時点でのSO濃度測定値が残り時間も維持されると仮定した場合の0時から24時までの予測平均値を演算してもよく、この演算結果と規定値との差が所定の値以下になった場合に上記とは別の警報やモニター上の警告表示等を発することで、SOガスが規制値を超えて排出されるのをより確実に防ぐことが可能になる。
【0019】
本発明の実施形態のSO濃度の制御方法においては、上記の一連の工程をDCSで演算処理するのが好ましい。例えば図2には上記の各工程をDCSで処理する場合のフローチャートが示されている。具体的に説明すると、先ず工程Aにおいて前述した開始時間0時からt分経過した現時点まで1分ごとに測定したSO濃度分析計の測定値x、x、・・・xの積算値Aを演算し、工程Bにおいて、上記工程Aで演算した積算値Aを開始時間0時から現時点t分までの経過時間tで除算して平均値A/t[単位ppm]を演算する。なお、工程Aの「A=A+x」は、BASICやC言語等のプログラミング言語に準拠した表記法であり、記号「=」の右側の演算結果を該記号「=」の左側の「At」に代入することを意味している。工程H1においても同様である。
【0020】
次に工程Cにおいて、上記工程Bで演算した平均値A/tを所定の閾値αと比較し、該平均値A/tが閾値αを超えていれば工程C1において警報や警告を発令する。なお、この工程C1において警報を発令する閾値と、警告を発令する閾値とは互いに異なる値に設定してもよい。
【0021】
次に工程Dにおいて、排ガスのSO濃度が、その自主管理値などの規制値βで上記の開始時間0時から管理時間が経過する24時まで維持されると仮定した場合の目標積算値1440・βを求め、この目標積算値から上記工程Aで演算した開始時間0時から現時点までの積算値Aを減算した値(1440・β-A)を管理時間が経過するまでの残り時間(1440-t)で除算してSO濃度の管理目標値(1440・β-A)/(1440-t)を得る。この管理目標値[単位ppm]に基づいて工程Eにおいて前述したようにボイラーの石灰石投入量を制御する。
【0022】
次に、工程Fにおいて現時点で測定したSO濃度測定値xが管理時間が経過するまでの残り時間1440-tの間も維持されると仮定して予測積算値{A+x・(1440-t)}を求め、この予測積算値を管理時間24時間で除算して予測平均値{A+x・(1440-t)}/1440を得る。そして、工程Gにおいて、上記工程Fで演算した予測平均値[単位ppm]を所定の閾値γと比較し、該予測平均値が閾値γを超えていれば工程G1において警報や警告を発令する。なお、この場合も上記C1と同様に警報を発令する閾値と警告を発令する閾値とを互いに異なる値に設定してもよい。その後は工程H1~H3を経ることにより24時間が経過するまで上記の工程A~Gを繰り返す。これにより燃料の石炭と共に石灰石粉を投入することで炉内脱硫を行う流動層式の石炭燃料ボイラーにおいて、脱硫剤としての石灰石粉を過剰に投入することなく該ボイラーから排出される燃焼排ガスのSO濃度を安定的かつ確実に抑制することができる。
【0023】
上記のDCSによる一連の処理では、例えばボイラー監視画面に演算結果を表示させるのが好ましい。すなわち、上記のSO濃度の測定値に加えて上記の24時間の管理時間に基づいて演算される現時点での平均値、管理目標値、及び予測平均値のトレンドを表示させ、現時点での平均値及び予測平均値については閾値を超えた場合に警告を表示することが好ましい。これによりSOガスが規定値を超えて排出することがないように操業を支援することができる。なお、SO濃度の規制値は200ppm程度が一般的であるが、より安全サイドの例えば150ppm程度の規制値を定めてその規制値でSOガスの排出を管理してもよい。
【実施例
【0024】
図1に示すような流動層式の石炭燃焼ボイラー設備に対して、図2に示すフローチャートに沿って燃焼排ガス中のSO濃度を制御した。その際、SO濃度の規制値としては、管理時間24時間で平均した平均値200ppmに対して余裕値として50ppmを差し引いた150ppmで安全サイドに制御した。その結果、図3のDCSのトレンドのグラフに示すように、硫黄分含有量の高い石炭原料を投入したことでSO濃度が高くなった場合、工程Aで算出した平均値が横軸の時間で1:00頃に一時的に上昇したが、工程Dで算出した管理目標値に基づいて石灰石粉のボイラーへの投入量を制御したため、横軸の時間で1:50頃に減少に転じ、最終的にほぼ元通りになった。
【0025】
一方、硫黄分含有量の低い石炭原料を投入したことでSO濃度が低くなった場合のDCSのトレンドのグラフを図5に示す。この場合は、管理目標値の変動に応じて石灰石粉の投入量が制御されることでSO濃度を低い状態のまま維持しつつ石灰石粉の消費量が抑制されていることが分かる。
【0026】
これに対して、比較のため石灰石粉のボイラーへの投入量を管理目標値に基づいて制御せずにほぼ定量で供給した以外は上記と同じ条件でボイラーを運転したところ、硫黄分含有量の高い石炭原料を投入した場合は、図4に示すようにSO濃度の抑制に遅れが生じ、右肩上がりに平均値が上昇した。また、硫黄分含有量の低い石炭原料を投入した場合は、図6に示すように石灰石粉投入量の抑制に遅れが生じ、必要以上に過剰に石灰石粉を投入することになり経済的な運転にはならなかった。なお、図3図4に示す期間でのSO濃度の平均値と標準偏差を表1に示す。また、図5図6に示す期間での石灰石粉の平均投入量と標準偏差、及びSO濃度の平均値を表2に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
このように、図2のフローチャートに沿ってSO濃度を制御することにより、SO濃度の標準偏差が小さくなって制御安定性が増すと共に、石灰石粉消費量を低減できることが分かる。
【符号の説明】
【0030】
1 石炭燃焼ボイラー
1a ボイラードラム
2 サイクロン
3 熱回収部
4 ボイラー水タンク
5 脱気装置
6 タービンジェネレータ
7 電気集塵機
8 煙突
9 SO濃度計
10 DCS
11 石灰石粉供給フィーダー
図1
図2
図3
図4
図5
図6