(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】部材接続方法及び接続体
(51)【国際特許分類】
B05D 3/00 20060101AFI20221012BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221012BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20221012BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20221012BHJP
H05K 3/32 20060101ALN20221012BHJP
【FI】
B05D3/00 D
B05D7/24 301E
B05D7/24 303C
B32B15/20
H01L21/52 G
H05K3/32 B
(21)【出願番号】P 2018173471
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】根岸 征央
(72)【発明者】
【氏名】中子 偉夫
(72)【発明者】
【氏名】川名 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】石川 大
(72)【発明者】
【氏名】須鎌 千絵
(72)【発明者】
【氏名】江尻 芳則
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-022313(JP,A)
【文献】特開平07-111275(JP,A)
【文献】特開2009-295703(JP,A)
【文献】特開平08-293508(JP,A)
【文献】特開2009-164208(JP,A)
【文献】特開2019-079883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
B32B1/00-43/00
H01L21/52
21/58
H05K3/32-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の部材と第二の部材とを銅焼結体により接続する部材接続方法であって、
前記第一の部材と前記第二の部材との接続領域に、印刷によって接続用の銅ペーストの塗膜を所定の印刷パターンで形成する印刷工程と、
前記第一の部材と前記第二の部材とを前記塗膜を介して積層する積層工程と、
前記塗膜の焼結によって前記第一の部材と前記第二の部材とを接続する前記銅焼結体を形成する焼結工程と、を含み、
前記印刷工程で形成される前記印刷パターンは、前記塗膜が形成される塗膜形成領域と、前記塗膜が形成されない塗膜非形成領域と、からなり、
前記塗膜非形成領域は、前記接続領域の縁部において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられて、その両端部が前記接続領域外に接続されており、
前記印刷工程では、前記積層工程後に、前記塗膜非形成領域の全体もしくはその一部が空隙として残存する
とともに前記塗膜形成領域が前記塗膜非形成領域によって複数の領域に分割されているように、前記印刷パターンを形成する、
部材接続方法。
【請求項2】
第一の部材と第二の部材とを銅焼結体により接続する部材接続方法であって、
前記第一の部材と前記第二の部材との接続領域に、印刷によって接続用の銅ペーストの塗膜を所定の印刷パターンで形成する印刷工程と、
前記第一の部材と前記第二の部材とを前記塗膜を介して積層する積層工程と、
前記塗膜の焼結によって前記第一の部材と前記第二の部材とを接続する前記銅焼結体を形成する焼結工程と、を含み、
前記印刷工程で形成される前記印刷パターンは、前記塗膜が形成される塗膜形成領域と、前記塗膜が形成されない塗膜非形成領域と、からなり、
前記塗膜非形成領域は、前記接続領域の縁部において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられて、その両端部が前記接続領域外に接続されており、
前記積層工程では、前記塗膜非形成領域の全体もしくはその一部が空隙として残存する
とともに前記塗膜形成領域が前記塗膜非形成領域によって複数の領域に分割されているように、前記第一の部材と前記第二の部材とを前記塗膜を介して積層する、
部材接続方法。
【請求項3】
前記塗膜非形成領域は、互いに直交する縦方向及び横方向の少なくとも一方に、直線状又は曲線状に延びる、一又は複数のスリット状領域を含む、
請求項1
又は2に記載の部材接続方法。
【請求項4】
前記接続領域は、矩形状の領域であり、
前記塗膜非形成領域は、前記接続領域の一辺に対して垂直な縦方向及び前記一辺に対して平行な横方向少なくとも一方に、直線状又は曲線状に延びる、一又は複数のスリット状領域を含む、
請求項1
又は2に記載の部材接続方法。
【請求項5】
前記塗膜非形成領域は、前記接続領域の中央側から前記接続領域の縁部に向かって放射状に延びるスリット状領域を含む、
請求項1~
4の何れか一項に記載の部材接続方法。
【請求項6】
前記塗膜形成領域は、前記塗膜非形成領域により複数の領域に分割されているとともに、前記複数の領域が格子状に配列されている、
請求項1~
5の何れか一項に記載の部材接続方法。
【請求項7】
前記接続領域は、矩形状の領域であり、
前記塗膜形成領域は、前記接続領域の角部に対応して配置された領域を含む、
請求項1~
6の何れか一項に記載の部材接続方法。
【請求項8】
前記塗膜形成領域は、前記塗膜非形成領域により複数の領域に分割されており、
前記塗膜形成領域における前記複数の領域は、矩形状に形成されている、
請求項1~
7の何れか一項に記載の部材接続方法。
【請求項9】
前記第一の部材及び前記第二の部材のうちの少なくとも一方が半導体素子である、請求項1~
8の何れか一項に記載の部材接続方法。
【請求項10】
第一の部材と第二の部材とが銅焼結体により接続された接続体であって、
前記銅焼結体は、前記銅焼結体の縁部において互いに離間する第一の点と第二の点とを連通する空隙を有する、
接続体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材接続方法及び接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第一の部材と第二の部材とを銅焼結体により接続する部材接続方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この部材接続方法としては、スクリーン印刷又はディスペンス印刷などによって接続用の銅ペーストの塗膜を印刷する方法がある。具体的には、この方法では、まず、印刷工程において、第一の部材と第二の部材との接続領域に、印刷によって接続用の銅ペーストの塗膜を形成する。続いて、積層工程において、第一の部材と第二の部材とを塗膜を介して積層する。そして、焼結工程において、塗膜の焼結によって各部材を互いに接続する銅焼結体を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の部材接続方法では、印刷工程において、接続領域の全体に塗膜が形成され、その後の積層工程において、各部材が塗膜を介して積層される。このため、焼結工程において塗膜が焼結されると、塗膜に含まれる溶媒から揮発したアウトガス等のガスが発生する。そして、塗膜焼結時に発生したガスに起因して、焼結によって形成された銅焼結体の内部、又は銅焼結体と各部材との間に、空気のボイド(空隙)が不規則な位置に発生してしまう。不規則な位置に形成されたボイドは、各部材が互いに接続されてなる接続体の構造欠陥となり、各部材の接続性を低下させる要因となり得る。
【0005】
そこで本発明は、銅焼結体の内部、又は銅焼結体と各部材との間に、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を抑制することができる部材接続方法及び接続体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る部材接続方法は、第一の部材と第二の部材とを銅焼結体により接続する部材接続方法であって、第一の部材と第二の部材との接続領域に、印刷によって接続用の銅ペーストの塗膜を所定の印刷パターンで形成する印刷工程と、第一の部材と第二の部材とを塗膜を介して積層する積層工程と、塗膜の焼結によって第一の部材と第二の部材とを接続する銅焼結体を形成する焼結工程と、を含み、印刷工程で形成される印刷パターンは、塗膜が形成される塗膜形成領域と、塗膜が形成されない塗膜非形成領域と、からなり、塗膜形成領域は、接続領域の縁部において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられた一又は複数の塗膜非形成領域によって複数の領域に分割されており、印刷工程では、積層工程後に、塗膜非形成領域の全体もしくはその一部が空隙として残存するように、印刷パターンを形成する。
【0007】
この部材接続方法では、印刷工程において形成される印刷パターンが、塗膜が形成される塗膜形成領域と、塗膜が形成されない塗膜非形成領域とによって構成されている。また、塗膜形成領域の少なくとも一方の端部が、接続領域外に接続されている。これにより、積層工程において各部材が塗膜を介して積層される際に、塗膜非形成領域が接続領域外に空気を逃がす逃がし部として機能する。ここで、塗膜非形成領域は、積層工程における各部材の自重或いは押圧力の付与などによって塗膜形成領域の複数の領域が拡張することによって縮小し、焼成工程において塗膜が焼成される際に、塗膜に含まれる溶媒から揮発したアウトガス等のガスが発生する。しかしながら、印刷工程では、積層工程後に、塗膜非形成領域の全体もしくはその一部が空隙として残存するように印刷パターンを形成し、この残存した塗膜非形成領域が、焼成工程において発生したガスを接続領域外に逃がす逃がし部として機能する。これにより、銅焼結体の内部、又は銅焼結体と各部材との間に、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を抑制することができる。
【0008】
この部材接続方法において、前記塗膜非形成領域は、前記接続領域の縁部において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられて、その両端部が前記接続領域外に接続されており、印刷工程では、積層工程後に、塗膜形成領域が塗膜非形成領域によって複数の領域に分割されているように、印刷パターンを形成してもよい。この場合、塗膜焼結時に発生したガスをより接続領域外に逃がしやすくすることができるため、銅焼結体の内部、又は銅焼結体と各部材との間に、塗膜焼結時に発生したガスに起因して発生するボイドを更に抑制することができる。
【0009】
本発明に係る部材接続方法は、第一の部材と第二の部材とを銅焼結体により接続する部材接続方法であって、第一の部材と第二の部材との接続領域に、印刷によって接続用の銅ペーストの塗膜を所定の印刷パターンで形成する印刷工程と、第一の部材と第二の部材とを塗膜を介して積層する積層工程と、塗膜の焼結によって第一の部材と第二の部材とを接続する銅焼結体を形成する焼結工程と、を含み、印刷工程で形成される印刷パターンは、塗膜が形成される塗膜形成領域と、塗膜が形成されない塗膜非形成領域と、からなり、塗膜形成領域は、接続領域の縁部において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられた一又は複数の塗膜非形成領域によって複数の領域に分割されており、積層工程では、塗膜非形成領域の全体もしくはその一部が空隙として残存するように、第一の部材と第二の部材とを塗膜を介して積層する。
【0010】
この部材接続方法では、印刷工程において形成される印刷パターンが、塗膜が形成される塗膜形成領域と、塗膜が形成されない塗膜非形成領域とによって構成されている。また、塗膜形成領域の少なくとも一方の端部が、接続領域外に接続されている。これにより、積層工程において各部材が塗膜を介して積層される際に、塗膜非形成領域が接続領域外に空気を逃がす逃がし部として機能する。ここで、塗膜非形成領域は、積層工程における各部材の自重或いは押圧力の付与などによって塗膜形成領域の複数の領域が拡張することによって縮小し、焼成工程において塗膜が焼成される際に、塗膜に含まれる溶媒から揮発したアウトガス等のガスが発生する。しかしながら、積層工程では、塗膜非形成領域の全体もしくはその一部が空隙として残存するように、第一の部材と第二の部材とを塗膜を介して積層し、この残存した塗膜非形成領域が、焼成工程において発生したガスを接続領域外に逃がす逃がし部として機能する。これにより、銅焼結体の内部、又は銅焼結体と各部材との間に、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を抑制することができる。
【0011】
この部材接続方法において、前記塗膜非形成領域は、前記接続領域の縁部において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられて、その両端部が前記接続領域外に接続されており、積層工程では、塗膜形成領域が塗膜非形成領域によって複数の領域に分割されているように、第一の部材と第二の部材とを塗膜を介して積層してもよい。この場合、塗膜焼結時に発生したガスをより接続領域外に逃がしやすくすることができるため、銅焼結体の内部、又は銅焼結体と各部材との間に、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を更に抑制することができる。
【0012】
この部材接続方法において、塗膜非形成領域は、互いに直交する縦方向及び横方向の少なくとも一方に、直線状又は曲線状に延びる、一又は複数のスリット状領域を含んでもよい。この場合、塗膜形成領域におけるアウトガスの抜け道を短くすることができるとともに、塗膜非形成領域によって接続領域外に効率的にガスを逃がすことが可能となる。これにより、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を更に抑制することができる。
【0013】
この部材接続方法において、接続領域は、矩形状の領域であり、塗膜非形成領域は、接続領域の一辺に対して垂直な縦方向及び一辺に対して平行な横方向少なくとも一方に、直線状又は曲線状に延びる、一又は複数のスリット状領域を含んでもよい。この場合、塗膜形成領域におけるアウトガスの抜け道を短くすることができるとともに、塗膜非形成領域によって接続領域外に効率的にガスを逃がすことが可能となる。これにより、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を更に抑制することができる。
【0014】
この部材接続方法において、塗膜非形成領域は、接続領域の中央側から接続領域の縁部に向かって放射状に延びるスリット状領域を含んでもよい。この場合、塗膜非形成領域によって接続領域外に効率的にガスを逃がすことが可能となる。これにより、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を更に抑制することができる。
【0015】
この部材接続方法において、塗膜形成領域は、塗膜非形成領域により複数の領域に分割されているとともに、複数の領域が格子状に配列された領域を含んでもよい。この場合、塗膜非形成領域によって接続領域外に効率的にガスを逃がすことが可能となる。これにより、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を更に抑制することができる。
【0016】
この部材接続方法において、接続領域は、矩形状の領域であり、塗膜形成領域は、接続領域の角部に対応して配置された領域を含んでもよい。この場合、接続領域の角部における塗膜の不足を防止できる。したがって、接続領域に略均一に銅ペーストの塗膜が塗布された状態をより確実に形成できる。
【0017】
この部材接続方法において、塗膜形成領域は、塗膜非形成領域により複数の領域に分割されており、塗膜形成領域における複数の領域は、矩形状に形成されていてもよい。この場合、塗膜非形成領域によって接続領域外に効率的にガスを逃がすことが可能となる。これにより、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を更に抑制することができる。
【0018】
この部材接続方法において、第一の部材及び第二の部材のうちの少なくとも一方が半導体素子であってもよい。上記部材接続方法を半導体素子の接続に適用することで、信頼性の高い半導体装置の製造を実現できる。
【0019】
本発明に係る接続体は、第一の部材と第二の部材とが銅焼結体により接続された接続体であって、銅焼結体は、銅焼結体の縁部において互いに離間する第一の点と第二の点とを連通する空隙を有する。
【0020】
この接続体では、銅焼結体に、銅焼結体の縁部において互いに離間する第一の点と第二の点とを連通する空隙が形成されているため、接続体を製造する際に、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、銅焼結体の内部、又は銅焼結体と各部材との間に、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を抑制することが可能な部材接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る部材接続方法により接続されてなる接続体の模式断面図である。
【
図2】第1実施形態の印刷工程で形成される印刷パターンを示す平面図である。
【
図3】印刷パターンを従来と本実施形態とで比較して示す図である。
【
図4】従来及び本実施形態のそれぞれについて、超音波観察装置を用いて焼結後の銅焼結体と第一の部材との界面を観察した結果を示す写真である。
【
図5】第2実施形態の印刷パターンを示す平面図である。
【
図6】第3実施形態の印刷パターンを示す平面図である。
【
図7】第4実施形態の印刷パターンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本明細書において、例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。接続用金属ペースト中の各成分の含有量は、接続用金属ペースト中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、接続用金属ペースト中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
【0024】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る部材接続方法により接続されてなる接続体の一例について説明する。
図1は、第1実施形態に係る部材接続方法により接続されてなる接続体1の模式断面図である。
【0025】
図1に示されるように、接続体1は、部材2(第一の部材)と、部材3(第二の部材)と、部材2と部材3とを接続する銅焼結体4と、を有している。本実施形態において「接続」とは、「接合」、すなわち接続して繋ぎ合わせることを含む。各部材2,3としては、たとえば、IGBT、ダイオード、ショットキーバリヤダイオード、MOS-FET、サイリスタ、ロジック回路、センサー、アナログ集積回路、LED、半導体レーザー、発信器などの半導体素子、リードフレーム、金属板貼付セラミックス基板(たとえば、DBC)、LEDパッケージなどの半導体素子搭載用基材、銅リボン、金属ブロック、端子などの給電用部材、放熱板、水冷板などが挙げられる。
【0026】
銅焼結体4は、銅粒子を分散させた銅ペーストを焼結することによって形成される。銅焼結体4は、銅以外の成分(たとえば、銅以外の金属、合金、金属間化合物、無機化合物、樹脂)を含んでいてもよい。焼結方法としては、無加圧焼結、加圧焼結(単軸加圧焼結、HIP焼結)、通電焼結などを用いることができる。本実施形態の銅焼結体4が半導体装置の接続用である場合、銅焼結体4は無加圧焼結で作製されたものが好ましい。無加圧焼結は、加圧焼結に較べてスループットを向上させることができ、半導体素子が損傷しにくい点で好ましい。
【0027】
銅焼結体4は、銅の緻密度が40体積%以上95体積%以下であることが好ましく、50体積%以上95体積%以下であることがより好ましく、60体積%以上95体積%以下であることがさらに好ましい。銅の緻密度が上記範囲にあると、焼結体自体の機械特性、熱伝導性及び電気伝導性を充分確保することができるとともに、部材を接続したときに応力緩和の効果が得られ易く、高い接続信頼性を有することができる。
【0028】
銅焼結体4における銅の緻密度は、たとえば、以下の手順で求めることができる。まず、銅焼結体4を直方体に切り出し、銅焼結体4の縦、横の長さをノギス又は外形形状測定装置で測定し、厚みを膜厚計で測定することにより銅焼結体4の体積を計算する。切り出した銅焼結体4の体積と、精密天秤で測定した銅焼結体の質量とから見かけの密度M1(g/cm3)を求める。求めたM1と、銅の理論密度8.96g/cm3とを用いて、下記式(A)から銅焼結体における銅の緻密度(体積%)が求められる。
【0029】
銅焼結体における銅の緻密度(体積%)=[(M1)/8.96]×100・・・(A)
銅焼結体4には、空隙7が形成されている。空隙7は、銅焼結体4の縁部において互いに離間する第一の点と第二の点とを連通していることが好ましいが、銅焼結体4の縁部において互いに離間する第一の点と第二の点とを連通していなくてもよい。
【0030】
次に、本実施形態の部材接続方法について説明する。
【0031】
本実施形態の部材接続方法は、部材2と部材3とを接続する部材接続方法であって、次の印刷工程、積層工程、及び焼結工程を含んでいる。まず、印刷工程では、部材2と部材3との接続領域5に、印刷によって接続用の銅ペーストを塗布して、当該銅ペーストの塗膜を所定の印刷パターンで形成する。接続領域5は、部材2と部材3とを平面視したときに各部材2,3が互いに接続されている領域である。印刷方法としては、たとえば、スクリーン印刷、転写印刷、オフセット印刷、ジェットプリンティング法、ディスペンサー、ジェットディスペンサ、ニードルディスペンサ、スクリューディスペンサー、カンマコータ、スリットコータ、ダイコータ、グラビアコータ、スリットコート、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、ステンシル印刷、ソフトリソグラフ、バーコート、アプリケータ、粒子堆積法、スプレーコータ、スピンコータ、ディップコータ、又は電着塗装などを用いることができる。
【0032】
続いて、積層工程では、部材2と部材3とを塗膜を介して積層する。積層工程では、各部材2,3による自重のみが塗膜にかかる無加圧としてもよいし、各部材2,3の自重に加え、0.01MPa以下、好ましくは0.005MPa以下の押圧力を塗膜に対して付与してもよい。塗膜に付与される押圧力が上記範囲内であれば、特別な加圧装置が不要なため、歩留まりを損なうこと無く、ボイドの低減、ダイシェア強度及び接続性信頼を向上させることができる。塗膜が0.01MPa以下の押圧力を受ける方法としては、部材2,3上に重りを載せる方法などが挙げられる。
【0033】
その後の焼結工程では、塗膜をたとえば加熱処理することにより、塗膜を焼結して銅焼結体4を形成する。加熱処理には、たとえば、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉などを用いることができる。焼結工程では、塗膜に各部材2,3による自重、又は上記の範囲内の押圧力を付与した状態で、塗膜を焼結する。
【0034】
次に、
図2を参照して、本実施形態の印刷工程で形成される印刷パターン9について詳細に説明する。
図2は、本実施形態の印刷工程で形成される印刷パターン9を示す平面図である。
図2に示されるように、部材2と部材3との接続領域5は、印刷パターン9が印刷される印刷領域でもある。接続領域5は、互いに対向する一対の辺と、当該一対の辺の対向方向に直交する方向で対向する一対の辺と、を有する矩形状の領域である。
【0035】
接続領域5は、積層工程において互いに対向する部材2の接続面と部材3の接続面との間に形成される。なお、
図2では、接続領域5の縁部6が部材2の接続面2aよりも内側に位置するとして示しているが、接続領域5の縁部6は接続面2aの縁部と一致していてもよい。印刷パターン9は、接続領域5に形成されている。印刷パターン9は、塗膜8が形成される塗膜形成領域10と、塗膜8が形成されない塗膜非形成領域20と、で構成されている。
【0036】
塗膜非形成領域20は、スリット状に延びる一又は複数のスリット状領域21を含む。スリット状領域21は、積層工程において、接続領域5外へ空気を逃がす逃がし部として機能する。ここで、焼成工程において塗膜が焼成される際に、塗膜に含まれる溶媒から揮発したアウトガス等のガスが発生する。スリット状領域21は、焼成工程において発生したガスを接続領域外に逃がす逃がし部(ガス抜きのパス)としても機能する。
【0037】
スリット状領域21の少なくとも一方は、接続領域5の外部に接続するよう形成されている。本実施形態では、スリット状領域21の両端が、接続領域5の外部に接続するよう形成されている。具体的には、スリット状領域21は、接続領域5の縁部6において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられており、塗膜形成領域10を複数の領域15に分割する。そして、矩形状に形成された接続領域5の角部にも、スリット状領域21により分割された塗膜形成領域10の領域15が配置されている。
【0038】
スリット状領域21は、互いに直交する縦方向及び横方向の少なくとも一方に、直線状又は曲線状に延びる。上述したように、本実施形態では、接続領域5が矩形状であるため、縦方向は、接続領域5の一辺に対して垂直な方向となり、横方向は、接続領域5の一辺に対して平行な方向となる。なお、接続領域5の一辺は、接続領域5の4辺のうち任意の一辺である。
図2の例では、塗膜非形成領域20として、縦方向に直線状に延びる4本のスリット状領域21と、横方向に直線状に延びる4本のスリット状領域21と、が形成されている。
【0039】
縦方向に直線状に延びるスリット状領域21と、横方向に直線状に延びるスリット状領域21とが、それぞれ複数ある場合、塗膜形成領域10は、複数の領域15が格子状に配列された領域を含む。格子状に配列されたとは、たとえば、接続領域5内における網目状の等間隔の仮想縦線及び仮想横線の交点に配置されたことを意味する。仮想縦線は、接続領域5の一辺に対して垂直な線であって、縦方向に直線状に延びるスリット状領域21の延在方向に延びる線である。仮想横線は、接続領域5の一辺に対して平行な線であって、横方向に直線状に延びるスリット状領域21の延在方向に延びる線である。
図2に示す例では、接続領域5内に、6行×6列の計36個の矩形状の領域15が格子状に配列されている。
【0040】
一又は複数のスリット状領域21により分割される領域15の数は、接続領域5の一辺に対して、2か所以上、50か所以下であることが好ましく、4か所以上、30か所以下であることがより好ましく、5か所以上、15か所以下であることが更に好ましい。一つの塗膜形成領域10の寸法は、スリット状領域21の幅及びピッチに依存するが、いずれか一辺の長さが接続領域5の一辺に対して1/50以上、1/2以下であることが好ましく、1/30以上、1/4以下であることがより好ましく、1/15以上、1/5以下であることが更に好ましい。
【0041】
塗膜形成領域10の総面積は、接続領域5の総面積に対して50%以上、99.9%以内であることが好ましく、65%以上、95%以下であることがより好ましく、80%以上、95%以下であることが更に好ましい。塗膜形成領域10の厚さは、10μm以上、1000μm以下であることが好ましく、50μm以上、500μm以下であることがより好ましく、100μm以上、200μm以下であることが更に好ましい。
【0042】
スリット状領域21のスリット幅は、接続領域5の一辺に対して1/500以上、1/4以下であることが好ましく、1/100以上、1/5以下であることがより好ましく、1/20以上、1/10以下であることが更に好ましい。スリットの数については接続領域5の一辺に対して、1か所以上、50か所以下であることが好ましく、1か所以上、20か所以下であることがより好ましく、4か所以上、10か所以下であることが更に好ましい。
【0043】
スリット状領域21のスリット幅は、積層時の安定性、又は焼結時のガス抜けの安定性等から、均一であることが好ましいが、不均一であっても構わない。また、スリット状領域21のピッチも、等間隔であることが好ましいが、不均一であっても構わない。
【0044】
スリット状領域21の形状は、直線状が好ましいが、曲線状であっても波状であっても構わない。また、スリット状領域21は、直線状に延びて接続領域5の一辺に対して水平方向及び/又は垂直方向に配置され、それぞれの両端が接続領域5の外部に接続するよう形成されているのが好ましいが、放射状又は螺旋状に形成しても構わない。放射状としては、例えば、接続領域5の中央側から接続領域5の縁部に向かって延びる形状することができる。さらにスリット状領域21の両端部のうち、一方の端部のみを接続領域5の外部に接続するよう形成しても構わない。
【0045】
そして、印刷工程では、積層工程後に、スリット状領域21の全体もしくはその一部が空隙として残存するように、上述した印刷パターン9を形成する。この場合、印刷工程では、積層工程後に、塗膜形成領域10が、接続領域5の縁部6において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられた一又は複数のスリット状領域21によって複数の領域15に分割されているように、印刷パターンを形成することが好ましい。印刷工程では、例えば、スリット状領域21のスリット幅、塗膜(塗膜形成領域10)の厚さ、又は塗膜の粘度等を調整することで、上述したような、積層工程後にスリット状領域21を残存させる印刷パターンを形成することができる。具体的には、例えば、スリット状領域21のスリット幅を広くし、塗膜(塗膜形成領域10)の厚さを薄くし、又は塗膜の粘度を高くすることで、積層工程後にスリット状領域21を残存させやすくすることができる。
【0046】
また、積層工程では、スリット状領域21の全体もしくはその一部が空隙として残存するように、部材2と部材3とを塗膜を介して積層する。この場合、積層工程では、塗膜形成領域10が、接続領域5の縁部6において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられた一又は複数のスリット状領域21によって複数の領域15に分割されているように、部材2と部材3とを塗膜を介して積層することが好ましい。積層工程では、例えば、部材2と部材3の加圧力、部材2と部材3の加圧時間等を調整することにより、上述したようにスリット状領域21を残存させることができる。具体的には、例えば、部材2と部材3の加圧力を小さくすることで、又は部材2と部材3の加圧時間を短くすることで、積層工程後にスリット状領域21を残存させやすくすることができる。
【0047】
なお、積層工程後にスリット状領域21を残存させる方法として、印刷工程における方法と積層工程における方法とを分けて記載したが、これらは互いに関連するものであるため、何れか一方を行うことで、何れか他方を行うことにもなる。
【0048】
そして、このようにして製造された接続体1では、銅焼結体4に、スリット状領域21と対応する位置に空隙7が形成されている。この場合、銅焼結体4に形成される空隙7は、銅焼結体4の縁部において互いに離間する第一の点と第二の点とを連通していることが好ましい。なお、積層工程後に、塗膜形成領域10が、接続領域5の縁部6において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられた一又は複数のスリット状領域21によって複数の領域15に分割されていれば、銅焼結体4に形成される空隙7は、銅焼結体4の縁部において互いに離間する第一の点と第二の点とに連通されるものとなる。
【0049】
次に、本実施形態の印刷工程で用いられる接続用の銅ペーストの詳細について説明する。
【0050】
(接続用銅ペースト)
本実施形態の接続用銅ペーストは、金属粒子と、分散媒と、を含むことができる。
【0051】
本実施形態に係る金属粒子としては、サブマイクロ銅粒子、マイクロ銅粒子、これら以外の銅粒子、その他の金属粒子などが挙げられる。本明細書においてサブマイクロ銅粒子とは、粒径又は最大径が0.1μm以上1.0μm未満の粒子を意味し、マイクロ銅粒子とは、粒径又は最大径が1.0μm以上50μm以下の粒子を意味する。
【0052】
(サブマイクロ銅粒子)
サブマイクロ銅粒子としては、粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子を含むものが挙げられ、たとえば、体積平均粒径が0.12μm以上0.8μm以下のサブマイクロ銅粒子を用いることができる。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.12μm以上であれば、サブマイクロ銅粒子の合成コストの抑制、良好な分散性、表面処理剤の使用量の抑制といった効果が得られ易くなる。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.8μm以下であれば、サブマイクロ銅粒子の焼結性が優れるという効果が得られ易くなる。よりいっそう上記効果を奏するという観点から、サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径は、0.15μm以上0.8μm以下であってもよく、0.15μm以上0.6μm以下であってもよく、0.2μm以上0.5μm以下であってもよく、0.3μm以上0.45μm以下であってもよい。
【0053】
なお、本願明細書において体積平均粒径とは、50%体積平均粒径を意味する。銅粒子の体積平均粒径を求める場合、原料となる銅粒子、又は接続用銅ペーストから揮発成分を除去した乾燥銅粒子を、分散剤を用いて分散媒に分散させたものを光散乱法粒度分布測定装置(たとえば、島津ナノ粒子径分布測定装置(SALD-7500nano,株式会社島津製作所製))で測定する方法などにより求めることができる。光散乱法粒度分布測定装置を用いる場合、分散媒としては、ヘキサン、トルエン、α-テルピネオールなどを用いることができる。
【0054】
サブマイクロ銅粒子は、粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子を10質量%以上含むことができる。接続用銅ペーストの焼結性の観点から、サブマイクロ銅粒子は、粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子を20質量%以上含むことができ、30質量%以上含むことができ、100質量%含むことができる。サブマイクロ銅粒子における粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子の含有割合が20質量%以上であると、銅粒子の分散性がより向上し、粘度の上昇、ペースト濃度の低下をより抑制することができる。
【0055】
銅粒子の粒径は、下記方法により求めることができる。銅粒子の粒径は、たとえば、SEM像から算出することができる。銅粒子の粉末を、SEM用のカーボンテープ上にスパチュラで載せ、SEM用サンプルとする。このSEM用サンプルをSEM装置により5000倍で観察する。このSEM像の銅粒子に外接する四角形を画像処理ソフトにより作図し、その一辺をその粒子の粒径とする。
【0056】
サブマイクロ銅粒子の含有量は、金属粒子の全質量を基準として、20質量%以上90質量%以下であってもよく、30質量%以上90質量%以下であってもよく、35質量%以上85質量%以下であってもよく、40質量%以上80質量%以下であってもよい。サブマイクロ銅粒子の含有量が上記範囲内であれば、上述した本実施形態に係る銅焼結体を形成することが容易となる。
【0057】
サブマイクロ銅粒子の含有量は、サブマイクロ銅粒子の質量及びフレーク状マイクロ銅粒子の質量の合計を基準として、20質量%以上90質量%以下であってもよい。サブマイクロ銅粒子の上記含有量が20質量%以上であれば、フレーク状マイクロ銅粒子の間を充分に充填することができ、上述した本実施形態に係る銅焼結体を形成することが容易となる。サブマイクロ銅粒子の上記含有量が90質量%以下であれば、接続用銅ペーストを焼結した時の体積収縮を充分に抑制できるため、上述した本実施形態に係る銅焼結体を形成することが容易となる。よりいっそう上記効果を奏するという観点から、サブマイクロ銅粒子の含有量は、サブマイクロ銅粒子の質量及びフレーク状マイクロ銅粒子の質量の合計を基準として、30質量%以上85質量%以下であってもよく、35質量%以上85質量%以下であってもよく、40質量%以上80質量%以下であってもよい。
【0058】
サブマイクロ銅粒子の形状は、特に限定されるものではない。サブマイクロ銅粒子の形状としては、たとえば、球状、塊状、針状、フレーク状、略球状及びこれらの凝集体が挙げられる。分散性及び充填性の観点から、サブマイクロ銅粒子の形状は、球状、略球状、フレーク状であってもよく、燃焼性、分散性、フレーク状マイクロ銅粒子との混合性などの観点から、球状又は略球状であってもよい。本明細書において、「フレーク状」とは、板状、鱗片状などの平板状の形状を包含する。
【0059】
サブマイクロ銅粒子は、分散性、充填性、及びフレーク状マイクロ銅粒子との混合性の観点から、アスペクト比が5以下であってもよく、3以下であってもよい。本明細書において、「アスペクト比」とは、粒子の長辺/厚みを示す。粒子の長辺及び厚みの測定は、たとえば、粒子のSEM像から求めることができる。
【0060】
サブマイクロ銅粒子は、特定の表面処理剤で処理されていてもよい。特定の表面処理剤としては、たとえば、炭素数8~16の有機酸が挙げられる。炭素数8~16の有機酸としては、たとえば、カプリル酸、メチルヘプタン酸、エチルヘキサン酸、プロピルペンタン酸、ペラルゴン酸、メチルオクタン酸、エチルヘプタン酸、プロピルヘキサン酸、カプリン酸、メチルノナン酸、エチルオクタン酸、プロピルヘプタン酸、ブチルヘキサン酸、ウンデカン酸、メチルデカン酸、エチルノナン酸、プロピルオクタン酸、ブチルヘプタン酸、ラウリン酸、メチルウンデカン酸、エチルデカン酸、プロピルノナン酸、ブチルオクタン酸、ペンチルヘプタン酸、トリデカン酸、メチルドデカン酸、エチルウンデカン酸、プロピルデカン酸、ブチルノナン酸、ペンチルオクタン酸、ミリスチン酸、メチルトリデカン酸、エチルドデカン酸、プロピルウンデカン酸、ブチルデカン酸、ペンチルノナン酸、ヘキシルオクタン酸、ペンタデカン酸、メチルテトラデカン酸、エチルトリデカン酸、プロピルドデカン酸、ブチルウンデカン酸、ペンチルデカン酸、ヘキシルノナン酸、パルミチン酸、メチルペンタデカン酸、エチルテトラデカン酸、プロピルトリデカン酸、ブチルドデカン酸、ペンチルウンデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプチルノナン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸、エチルシクロヘキサンカルボン酸、プロピルシクロヘキサンカルボン酸、ブチルシクロヘキサンカルボン酸、ペンチルシクロヘキサンカルボン酸、ヘキシルシクロヘキサンカルボン酸、ヘプチルシクロヘキサンカルボン酸、オクチルシクロヘキサンカルボン酸、ノニルシクロヘキサンカルボン酸などの飽和脂肪酸;オクテン酸、ノネン酸、メチルノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、サビエン酸などの不飽和脂肪酸;テレフタル酸、ピロメリット酸、o-フェノキシ安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、ブチル安息香酸、ペンチル安息香酸、ヘキシル安息香酸、ヘプチル安息香酸、オクチル安息香酸、ノニル安息香酸などの芳香族カルボン酸が挙げられる。有機酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。このような有機酸と上記サブマイクロ銅粒子とを組み合わせることで、サブマイクロ銅粒子の分散性と焼結時における有機酸の脱離性を両立できる傾向にある。
【0061】
表面処理剤の処理量は、0.07質量%以上2.1質量%以下であってもよく、0.10質量%以上1.6質量%以下であってもよく、0.2質量%以上1.1質量%以下であってもよい。
【0062】
サブマイクロ銅粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているサブマイクロ銅粒子としては、たとえば、Cu-C-40(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径0.6μm)、EFC-20LML(福田金属箔粉工業株式会社製、数平均粒径0.2μm)、CH-0200(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.36μm)、HT-14(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.41μm)、CT-500(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.72μm)、Tn-Cu100(太陽日酸株式会社製、体積平均粒径0.12μm)が挙げられる。
【0063】
(マイクロ銅粒子)
マイクロ銅粒子としては、粒径が2μm以上50μm以下の銅粒子を含むものが挙げられ、たとえば、体積平均粒径が2μm以上50μm以下の銅粒子を用いることができる。
【0064】
マイクロ銅粒子の体積平均粒径が上記範囲内であれば、接続用銅ペーストを焼結した際の体積収縮を充分に低減でき、接続用銅ペーストを焼結させて製造される接続体の接続強度を確保することが容易となる。接続用銅ペーストを半導体素子の接続に用いる場合、マイクロ銅粒子の体積平均粒径が上記範囲内であれば、半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。より一層上記効果を奏するという観点から、マイクロ銅粒子の体積平均粒径は、3μm以上20μm以下であってもよく、3μm以上10μm以下であってもよい。
【0065】
マイクロ銅粒子は、粒径が2μm以上50μm以下の銅粒子を50質量%以上含むことができる。接続体内での配向、補強効果、接続ペーストの充填性の観点から、マイクロ銅粒子は、粒径が2μm以上50μm以下の銅粒子を70質量%以上含むことができ、80質量%以上含むことができ、100質量%含むことができる。接続不良を抑制する観点から、マイクロ銅粒子は、たとえば、最大径が20μmを超える粒子などの接続厚みを超えるサイズの粒子を含まないことが好ましい。
【0066】
マイクロ銅粒子の含有量は、金属粒子の全質量を基準として、10質量%以上90質量%以下であってもよく、15質量%以上65質量%以下であってもよく、20質量%以上60質量%以下であってもよい。マイクロ銅粒子の含有量が、上記範囲内であれば、接続用銅ペーストを焼結させて製造される接続体の接続強度を確保することが容易となる。接続用銅ペーストを半導体素子の接続に用いる場合、マイクロ銅粒子の含有量が上記範囲内であれば、半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。
【0067】
サブマイクロ銅粒子の含有量及びマイクロ銅粒子の含有量の合計は、金属粒子の全質量を基準として、80質量%以上とすることができる。サブマイクロ銅粒子の含有量及びマイクロ銅粒子の含有量の合計が上記範囲内であれば、接続用銅ペーストを焼結した際の体積収縮を充分に低減でき、接続用銅ペーストを焼結させて製造される接続体の接続強度を確保することが容易となる。接続用銅ペーストを半導体素子の接続に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。より一層上記効果を奏するという観点から、サブマイクロ銅粒子の含有量及びマイクロ銅粒子の含有量の合計は、金属粒子の全質量を基準として、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0068】
マイクロ銅粒子の形状は、特に限定されるものではない。マイクロ銅粒子の形状としては、たとえば、球状、塊状、針状、フレーク状、略球状、及びこれらの凝集体が挙げられる。マイクロ銅粒子の形状は、中でも、フレーク状が好ましい。フレーク状のマイクロ銅粒子を用いることで、接続用銅ペースト内のマイクロ銅粒子が、接続面に対して略平行に配向することにより、接続用銅ペーストを焼結させたときの体積収縮を抑制でき、接続用銅ペーストを焼結させて製造される接続体の接続強度を確保することが容易となる。接続用銅ペーストを半導体素子の接続に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。より一層上記効果を奏するという観点から、フレーク状のマイクロ銅粒子としては、中でも、アスペクト比が4以上であってもよく、6以上であってもよい。
【0069】
マイクロ銅粒子において、表面処理剤の処理の有無は特に限定されるものではない。分散安定性及び耐酸化性の観点から、マイクロ銅粒子は表面処理剤で処理されていてもよい。表面処理剤は、接続時に除去されるものであってもよい。このような表面処理剤としては、たとえば、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸などの脂肪族カルボン酸;テレフタル酸、ピロメリット酸、o-フェノキシ安息香酸などの芳香族カルボン酸;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソボルニルシクロヘキサノール、テトラエチレングリコールなどの脂肪族アルコール;p-フェニルフェノールなどの芳香族アルコール;オクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミンなどのアルキルアミン;ステアロニトリル、デカンニトリルなどの脂肪族ニトリル;アルキルアルコキシシランなどのシランカップリング剤;ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シリコーンオリゴマーなどの高分子処理剤などが挙げられる。表面処理剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。表面処理剤の処理量は、通常0.001質量%以上である。
【0070】
上記サブマイクロ銅粒子のみから接続用銅ペーストを調製する場合、分散媒の乾燥に伴う体積収縮及び焼結収縮が大きいため、接続用銅ペーストの焼結時に被着面より剥離し易くなり、半導体素子などの接続においては充分なダイシェア強度及び接続信頼性が得られにくい。サブマイクロ銅粒子とマイクロ銅粒子とを併用することで、接続用銅ペーストを焼結させたときの体積収縮が抑制され、接続体は充分な接続強度を有することができる。
【0071】
接続用銅ペーストを半導体素子の接続に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示すという効果が得られる。
【0072】
本実施形態に係るマイクロ銅粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているマイクロ銅粒子としては、たとえば、MA-C025(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径7.5μm)、MA-C025KFD(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径5μm)、MA-C08JF(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径13.2μm)、3L3(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径6.0μm)、2L3(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径10.0μm)、4L3(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径3.0μm)、C3(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径37.0μm)、E3(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径37.0μm)、1110F(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径3.8μm)、1400YP(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径5.2μm)、1400YF(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径6.8μm)、1050YP(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.94μm)、1050YF(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径1.7μm)、Cu-HWQ3.0μm(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径3.0μm)が挙げられる。
【0073】
(銅粒子以外のその他の金属粒子)
金属粒子としては、サブマイクロ銅粒子及びマイクロ銅粒子以外のその他の金属粒子を含んでいてもよく、たとえば、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金などの粒子を含んでいてもよい。その他の金属粒子は、体積平均粒径が0.01μm以上10μm以下であってもよく、0.01μm以上5μm以下であってもよく、0.05μm以上3μm以下であってもよい。その他の金属粒子を含んでいる場合、その含有量は、充分な接続性を得るという観点から、金属粒子の全質量を基準として、20質量%未満であってもよく、10質量%以下であってもよい。その他の金属粒子は、含まれなくてもよい。その他の金属粒子の形状は、特に限定されるものではない。
【0074】
銅粒子以外の金属粒子を含むことで、複数種の金属が固溶又は分散した焼結体を得ることができるため、焼結体の降伏応力、疲労強度などの機械的な特性が改善され、接続信頼性が向上し易い。また、複数種の金属粒子を添加することで、接続用銅ペーストの焼結体は、特定の被着体に対して充分な接続強度を有することができる。接続用銅ペーストを半導体素子の接続に用いる場合は半導体装置のダイシェア強度及び接続信頼性が向上し易い。
【0075】
(分散媒)
分散媒は特に限定されるものではなく、揮発性のものであってもよい。揮発性の分散媒としては、たとえば、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、α-テルピネオール、イソボルニルシクロヘキサノール(MTPH)などの一価及び多価アルコール類;エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、乳酸エチル、乳酸ブチル、トリブチリン、ステアリン酸ブチル、スクアラン、セバシン酸ジプチル、アジピン酸ビス(2―エチルヘキシル)、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレンなどのエステル類;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドなどの酸アミド;シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;炭素数1~18のアルキル基を有するメルカプタン類;炭素数5~7のシクロアルキル基を有するメルカプタン類が挙げられる。炭素数1~18のアルキル基を有するメルカプタン類としては、たとえば、エチルメルカプタン、n-プロピルメルカプタン、i-プロピルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、i-ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン及びドデシルメルカプタンが挙げられる。炭素数5~7のシクロアルキル基を有するメルカプタン類としては、たとえば、シクロペンチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン及びシクロヘプチルメルカプタンが挙げられる。
【0076】
分散媒の含有量は、金属粒子の全質量を100質量部として、5~50質量部であってもよい。分散媒の含有量が上記範囲内であれば、接続用銅ペーストをより適切な粘度に調整でき、また、銅粒子の焼結を阻害しにくい。
【0077】
(添加剤)
接続用銅ペーストには、必要に応じて、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの濡れ向上剤;シリコーン油などの消泡剤;無機イオン交換体などのイオントラップ剤などを適宜添加してもよい。
【0078】
次に、従来の部材接続方法と比較して、本実施形態の部材接続方法の作用及び効果について説明する。従来の部材接続方法は、本実施形態の部材接続方法と比して、印刷工程における印刷パターンが異なる点で相違する。
図3は、印刷パターンを従来と本実施形態とで比較して示す図である。
図3の(a)は、従来の印刷パターン100を示し、
図3の(b)は、本実施形態の印刷パターン9を示している。
図4は、従来及び本実施形態のそれぞれについて、超音波観察装置を用いて焼結後の銅焼結体4と部材2との界面を観察した結果を示す写真である。
図4の(a)は、
図3の(a)の従来の印刷パターン100の場合の結果を示し、
図4の(b)は、
図3の(b)の本実施形態の印刷パターン9の場合の結果を示している。
図4においては、接続領域5を点線で示している。
【0079】
図3の(a)に示されるように、従来の部材接続方法の印刷工程では、形成される印刷パターン100が接続領域5の縁部6に沿った矩形状となっている。すなわち、接続領域5の全体に塗膜8が形成されている。このため、その後の積層工程において各部材2,3が塗膜8を介して積層されると、各部材2,3の接続面の全体を覆う塗膜8の面積が大きく、塗膜8の内部に空気が入り込み易い。また、各部材2,3の接続面が凹凸を有していると、当該凹凸に起因して、塗膜8と各部材2,3との間においても空気が入り込み易い。このように空気が入り込んだ状態で焼結工程において塗膜8が焼結されると、焼結によって形成された銅焼結体4の内部、又は、銅焼結体4と各部材2,3との間に、空気がボイド(空隙)として残存してしまう。たとえば、
図4の(a)に示されるように、銅焼結体4と部材2との間には、白色で示されるボイドが不規則な位置に残存している。ボイドは、各部材2,3が互いに接続されてなる接続体1の構造欠陥となり、各部材2,3の接続性を低下させる要因となり得る。
【0080】
これに対し、
図3の(b)に示されるように、本実施形態の部材接続方法では、印刷工程において形成される印刷パターン9が、塗膜8が形成される塗膜形成領域10と、塗膜8が形成されない塗膜非形成領域20とによって構成されている。また、塗膜形成領域10の少なくとも一方の端部が、接続領域5外に接続されている。これにより、積層工程におい各部材2及び部材3が塗膜8を介して積層される際に、塗膜非形成領域20が接続領域5外に空気を逃がす逃がし部として機能する。ここで、塗膜非形成領域20は、積層工程における部材2及び部材3の自重或いは押圧力の付与などによって塗膜形成領域10の複数の領域15が拡張することによって縮小し、焼成工程において塗膜が焼成される際に、塗膜に含まれる溶媒から揮発したアウトガス等のガスが発生する。しかしながら、印刷工程では、積層工程後に、塗膜非形成領域20の全体もしくはその一部が空隙7として残存するように印刷パターン9を形成する。また、積層工程では、塗膜非形成領域20の全体もしくはその一部が空隙7として残存するように、部材2と部材3とを塗膜8を介して積層する。そして、この残存した塗膜非形成領域20が、焼成工程において発生したガスを接続領域5外に逃がす逃がし部として機能する。これにより、銅焼結体4の内部、又は銅焼結体4と各部材2,3との間に、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を抑制することができる。また、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドも、規則的な位置(塗膜非形成領域20の位置)に発生させることができる。
【0081】
また、積層工程後に、塗膜形成領域10が、接続領域5の縁部6において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられた一又は複数の塗膜非形成領域20によって複数の領域に分割されることで、塗膜焼結時に発生したガスをより接続領域5外に逃がしやすくすることができる。このため、銅焼結体4の内部、又は銅焼結体4と各部材2,3との間に、塗膜焼結時に発生したガスに起因して発生するボイドを更に抑制することができる。
【0082】
また、塗膜非形成領域20が、互いに直交する縦方向及び横方向の少なくとも一方に、直線状又は曲線状に延びる、一又は複数のスリット状領域21を含むことで、塗膜形成領域10におけるアウトガスの抜け道を短くすることができるとともに、塗膜非形成領域20によって接続領域5外に効率的にガスを逃がすことが可能となる。これにより、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を更に抑制することができる。
【0083】
また、接続領域5が矩形状の領域であり、塗膜非形成領域20が、接続領域5の一辺に対して垂直な縦方向及び一辺に対して平行な横方向少なくとも一方に、直線状又は曲線状に延びる、一又は複数のスリット状領域21を含むことで、塗膜形成領域10におけるアウトガスの抜け道を短くすることができるとともに、塗膜非形成領域20によって接続領域5外に効率的にガスを逃がすことが可能となる。これにより、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を更に抑制することができる。
【0084】
また、塗膜形成領域10が複数の領域15が格子状に配列された領域を含むことで、塗膜非形成領域20によって接続領域5外に効率的にガスを逃がすことが可能となる。これにより、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を更に抑制することができる。
【0085】
また、接続領域5が矩形状の領域であり、塗膜形成領域10が接続領域5の角部に対応して配置された領域15を含むことで、接続領域5の角部における塗膜8の不足を防止できる。したがって、接続領域5に略均一に銅ペーストの塗膜8が塗布された状態をより確実に形成できる。
【0086】
また、塗膜形成領域10における複数の領域15が矩形状に形成されていていれば、塗膜非形成領域20によって接続領域5外に効率的にガスを逃がすことが可能となる。これにより、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を更に抑制することができる。
【0087】
本実施形態の部材接続方法を半導体素子の接続に適用することにより、信頼性の高い半導体装置の製造を実現できる。
【0088】
(第2実施形態)
次に、
図5を参照して、第2実施形態に係る部材接続方法の印刷工程で形成される印刷パターン9Aについて説明する。
図5は、第2実施形態の印刷パターン9Aを示す平面図である。第2実施形態では、
図5に示されるように、接続領域5において、塗膜形成領域10が、スリット状領域21により、4個の三角状領域16に分割されている。各三角状領域16は、一つの頂点を接続領域5の中心Pに向けて、中心Pから接続領域5の縁部6に向かって広がっている。
【0089】
そして、印刷工程では、積層工程後に、スリット状領域21の全体もしくはその一部が空隙として残存するように、上述した印刷パターン9Aを形成する。この場合、印刷工程では、積層工程後に、塗膜形成領域10が、接続領域5の縁部6において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられた一又は複数のスリット状領域21によって複数の三角状領域16に分割されているように、印刷パターン9Aを形成することが好ましい。
【0090】
また、積層工程では、スリット状領域21の全体もしくはその一部が空隙として残存するように、部材2と部材3とを塗膜を介して積層する。この場合、積層工程では、塗膜形成領域10が、接続領域5の縁部6において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられた一又は複数のスリット状領域21によって複数の三角状領域16に分割されているように、部材2と部材3とを塗膜を介して積層することが好ましい。
【0091】
本実施形態においても、塗膜非形成領域20は、接続領域5の縁部6において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられており、かつ塗膜形成領域10を複数の領域(本実施形態では、各三角状領域16)に分割する複数のスリット状領域21を含んでいる。よって、積層工程において各部材2,3が塗膜8を介して積層される際に、スリット状領域21が接続領域5外に空気を逃がす逃がし部として機能する。また、積層工程後にも、塗膜非形成領域20の全体もしくはその一部が空隙7として残存するため、この残存した塗膜非形成領域20が、焼成工程において発生したガスを接続領域5外に逃がす逃がし部として機能する。これにより、銅焼結体4の内部、又は銅焼結体4と各部材2,3との間に、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を抑制することができる。
【0092】
(第3実施形態)
次に、
図6を参照して、第3実施形態に係る部材接続方法の印刷工程で形成される印刷パターン9Bについて説明する。
図6は、第3実施形態の印刷パターン9Bを示す平面図である。第3実施形態では、
図6に示されるように、塗膜形成領域10が、波状の塗膜非形成領域20によって複数の領域17に分割されている。塗膜非形成領域20の波形状は、
図6ではのこぎり刃のような形状としているが、サインカーブのような曲線状の波型としても構わない。
【0093】
なお、積層工程後に、スリット状領域21の全体もしくはその一部が空隙として残存するように、印刷工程及び積層工程を行うことは、上記実施形態と同様である。
【0094】
本実施形態においても、塗膜非形成領域20は、接続領域5の縁部6において互いに離間する第一の点と第二の点とを結ぶように設けられており、かつ塗膜形成領域10を複数の領域に分割する複数のスリット状領域を含んでいる。よって、積層工程において各部材2,3が塗膜8を介して積層される際に、スリット状領域21が接続領域5外に空気を逃がす逃がし部として機能する。また、積層工程後にも、塗膜非形成領域20の全体もしくはその一部が空隙7として残存するため、この残存した塗膜非形成領域20が、焼成工程において発生したガスを接続領域5外に逃がす逃がし部として機能する。これにより、銅焼結体4の内部、又は銅焼結体4と各部材2,3との間に、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を抑制することができる。
【0095】
(第4実施形態)
次に、
図7を参照して、第4実施形態に係る部材接続方法の印刷工程で形成される印刷パターン9Cについて説明する。
図7は、第4実施形態の印刷パターン9Cを示す平面図である。第4実施形態では、
図7に示されるように、塗膜形成領域10の中に、塗膜非形成領域20として、螺旋状のスリット状領域21が形成されている。スリット状領域21の両端部のうち、一方の端部のみを接続領域5の外部に接続されている。
【0096】
なお、積層工程後に、スリット状領域21の全体もしくはその一部が空隙として残存するように、印刷工程及び積層工程を行うことは、上記実施形態と同様である。
【0097】
本実施形態においても、塗膜非形成領域20は、接続領域5の一辺に接続している。よって、積層工程において各部材2,3が塗膜8を介して積層される際に、スリット状領域21が接続領域5外に空気を逃がす逃がし部として機能する。また、積層工程後にも、塗膜非形成領域20の全体もしくはその一部が空隙7として残存するため、この残存した塗膜非形成領域20が、焼成工程において発生したガスを接続領域5外に逃がす逃がし部として機能する。これにより、銅焼結体4の内部、又は銅焼結体4と各部材2,3との間に、塗膜焼結時に発生したガスに起因するボイドの発生を抑制することができる。
【0098】
以上、本発明な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0099】
1…接続体、2…部材、2a…接続面、3…部材、4…銅焼結体、5…接続領域、6…縁部、7…空隙、8…塗膜、9,9A,9B,9C…印刷パターン、10…塗膜形成領域、15…領域、16…三角状領域、17…領域、20…塗膜非形成領域、21…スリット状領域、100…印刷パターン。