(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】液晶表示素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20221012BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20221012BHJP
C09K 19/54 20060101ALI20221012BHJP
C09K 19/38 20060101ALI20221012BHJP
C09K 19/42 20060101ALI20221012BHJP
C09K 19/12 20060101ALI20221012BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20221012BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G02F1/1337 520
G02F1/13 500
C09K19/54 Z
C09K19/38
C09K19/42
C09K19/12
C09K19/30
C09K19/34
(21)【出願番号】P 2019060559
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 剛
(72)【発明者】
【氏名】後藤 麻里奈
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-007041(JP,A)
【文献】特表2018-509507(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180852(WO,A1)
【文献】特開2001-166307(JP,A)
【文献】特開2003-177408(JP,A)
【文献】特開2011-053399(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0088364(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101968589(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または2種以上の重合性化合物の重合体および液晶組成物を含む液晶層と、
第1基板および前記第1基板の前記液晶層側の面に設けられた第1電極層を有する第1電極基板と、
前記液晶層を介して前記第1電極基板と対向し、第2基板および前記第2基板の前記液晶層側の面に設けられた第2電極層を有する第2電極基板と、
前記第1電極基板および前記液晶層の間に配置された第1配向膜と、
を有し、
前記液晶組成物は、1種または2種以上のアルケニル系液晶化合物を含み、
前記第1配向膜は、波長365nmの光の吸収率が2.0%以上
であって、波長313nmの光の吸収率が15%以上である、液晶表示素子。
【請求項2】
前記アルケニル系液晶化合物が、下記一般式(i)で表される化合物である、請求項
1に記載の液晶表示素子。
【化1】
(前記一般式(i)中、R
i1は、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい炭素原子数2~8のアルケニル基又は1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表し、
R
i2は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の-CH
2-はそれぞれ独立して-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていてもよく、
Z
i1は単結合又は連結基を表し、
A
i1およびA
i2はそれぞれ独立して
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-は-O-に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、前記の基(a)及び基(b)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基で置換されていても良く、
m
i1は1~3を表す。)
【請求項3】
前記第2電極基板および前記液晶層の間に配置された第2配向膜を有する、請求項1
又は2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
第1基板および前記第1基板の一方の面に設けられた第1電極層を有する第1電極基板と、第2基板および前記第2基板の一方の面に設けられた第2電極層を有する第2電極基板と、を準備し、前記第1電極基板の前記第1電極層側の面に、波長365nmの光の吸収率が2.0%以上
であって、波長313nmの光の吸収率が15%以上である第1配向膜を設ける第1配向膜配置工程と、
前記第1電極基板の前記第1配向膜を有する面と前記第2電極基板の前記第2電極層が設けられた面とを対向させ、対向する前記第1電極基板および前記第2電極基板の間に、1種または2種以上の重合性化合物と1種又は2種以上のアルケニル系液晶化合物を含む液晶組成物とを含む重合性液晶組成物を配置して、液晶セルを形成する液晶セル形成工程と、
前記液晶セルの前記第1電極基板側から前記重合性液晶組成物に光を照射して、前記重合性化合物の重合体および前記液晶組成物を含む液晶層を形成する光照射工程と、
を含む、液晶表示素子の製造方法。
【請求項5】
前記光照射工程は、前記第1電極基板および前記第2電極基板の間に電圧を印加した状態で、前記液晶セルの前記第1電極基板側から前記重合性液晶組成物に光を照射する第1光照射処理と、
前記第1光照射処理の後で、前記第1電極基板および前記第2電極基板の間に電圧を印加しない状態で、前記液晶セルの前記第1電極基板側から前記重合性液晶組成物に光を照射する第2光照射処理と、を有する、請求項
4に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項6】
前記第2光照射処理は、第1光照射処理で照射した光よりも、波長313nmの光を多く含む光を照射する、請求項
5に記載の液晶表示素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PSAモードの液晶表示素子及びその製造方法に関し、詳しくはPSA処理時の光照射による表示品位の劣化を少なくするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子としては、電極構造や使用する液晶分子の物性等が異なる種々の駆動方式が開発されている。例えば、垂直配向モードとして従来知られているMVA(Multi-Domain Vertical Alignment)型パネルは、液晶パネル中に形成した突起物によって液晶分子の倒れ込み方向を規制することにより視野角の拡大を図っている。しかしながら、この方式によると、突起物に由来する透過率及びコントラストの低下が不可避であり、また液晶分子の応答速度が遅い傾向にある。
【0003】
これらMVA型パネルの問題点を解決すべく、液晶分子の配向を制御するための新たな駆動モードとしてPSA(Polymer Sustained Alignment)モードが実用化されている。PSAモードは、光重合性モノマー(重合性化合物)を液晶材料中に混入しておき、液晶セルを組み立てた後、液晶層を挟む一対の電極間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射することにより、光重合性モノマーを重合して液晶分子の分子配向を制御する技術である。この技術によれば、視野角の拡大や高速応答化を図ることができるといった利点がある。また近年では、PSA型液晶パネルの更なる高速応答化が検討されており、かかる技術として、アルケニル基やアルケニルオキシ基を有する液晶性化合物(以下、「アルケニル系液晶化合物」ともいう。)を液晶層に導入する試みがなされている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-285499号公報
【文献】特開平9-104644号公報
【文献】特開平6-108053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PSAモードの液晶表示素子は、視野角の拡大や高速応答化を図ることができる反面、製造の際に重合性化合物の重合反応に多量の紫外線照射が必要であり、紫外線照射に起因してパネルの表示品位が低下するといった問題がある。中でも上記問題は、アルケニル系液晶化合物を含む液晶層を用いたPSA液晶表示素子において顕著に現れる。詳述すると、アルケニル系液晶化合物は、PSAモードの液晶表示素子の応答速度の高速化を図ることができるが、液晶表示素子の製造過程において照射される光により、アルケニル系液晶化合物が有するアルケニル基やアルケニルオキシ基等が反応して分解劣化が生じやすい。そのため、アルケニル系液晶化合物を含有することによる応答速度の高速化の効果が損なわれ、また、電圧保持率が低下して画像の焼き付き(残像)が起こりやすいという問題がある。一方、アルケニル系液晶化合物の分解劣化を抑制するために光照射量を低減すると、重合性化合物の重合反応が十分に進行せず、未反応の重合性化合物が液晶層中に多く残存してしまう。この場合も、未反応の重合性化合物に起因して画像の焼き付き(残像)が生じやすくなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、アルケニル系液晶化合物を含む液晶層を有するPSAモードの液晶表示素子であって、画像の焼き付きが抑制され良好な表示品位を維持することが可能な、応答速度が速いPSAモードの液晶表示素子およびその製造方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、液晶分子を配向させるために用いられる配向膜に光吸収特性があること、特に紫外光を含む365nm以下波長域の光(極短波長域の光)に対する配向膜の光吸収特性が顕著であることを見出した。そこで、極短波長域の光の吸収能が高い配向膜を用いることにより、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により、以下のPSAモードの液晶表示素子及びその製造方法が提供される。
【0008】
すなわち、本発明の一実施形態は、1種または2種以上の重合性化合物の重合体および液晶組成物を含む液晶層と、第1基板および上記第1基板の上記液晶層側の面に設けられた第1電極層を有する第1電極基板と、上記液晶層を介して上記第1電極基板と対向し、第2基板および上記第2基板の上記液晶層側の面に設けられた第2電極層を有する第2電極基板と、上記第1電極基板および上記液晶層の間に配置された第1配向膜と、を有し、上記液晶組成物は、1種または2種以上のアルケニル系液晶化合物を含み、上記第1配向膜は、波長365nmの光の吸収率が所定値以上である、液晶表示素子を提供する。
【0009】
また、本発明の一実施形態は、第1基板および上記第1基板の一方の面に設けられた第1電極層を有する第1電極基板と、第2基板および上記第2基板の一方の面に設けられた第2電極層を有する第2電極基板と、を準備し、上記第1電極基板の上記第1電極層側の面に、波長365nmの光の吸収率が所定値以上である第1配向膜を設ける第1配向膜配置工程と、上記第1電極基板の上記第1配向膜を有する面と上記第2電極基板の上記第2電極層が設けられた面とを対向させ、対向する上記第1電極基板および上記第2電極基板の間に、1種または2種以上の重合性化合物と1種又は2種以上のアルケニル系液晶化合物を含む液晶組成物とを含む重合性液晶組成物を配置して、液晶セルを形成する液晶セル形成工程と、上記液晶セルの上記第1電極基板側から上記重合性液晶組成物に光を照射して、上記重合性化合物の重合体および上記液晶組成物を含む液晶層を形成する光照射工程と、を含む、液晶表示素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、画像の焼き付きが抑制され、良好な表示品位を維持可能な、応答速度が速いPSAモードの液晶表示素子を提供することができる。
【0011】
また、本発明の一実施形態によれば、極短波長域の光の吸収能が高い配向膜を介して重合性液晶組成物に光照射を行うことで、重合性化合物の重合反応を十分に進行させるとともに、アルケニル系液晶化合物の分解劣化を防ぐことができるため、画像の焼き付きが抑制され、良好な表示品位を維持可能な、応答速度が速いPSAモードの液晶表示素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態である液晶表示素子の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態である液晶表示素子が有する電極層の電極パターンの一例を示す模式図である。
【
図3】実施例および比較例で用いた配向膜PI-1~PI-6の単体での光吸収スペクトルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
I.液晶表示素子
図1は、本発明の一実施形態である液晶表示素子(以下、本実施形態の液晶表示素子とする。)の一例を示す概略断面図であり、PSAモードの液晶表示素子である。
図1で示すように、本実施形態の液晶表示素子10は、1種または2種以上の重合性化合物の重合体および液晶組成物を含む液晶層13と、第1基板12および第1基板12の液晶層13側の面に設けられた第1電極層15を有する第1電極基板2と、液晶層13を介して第1電極基板2と対向し、第2基板11および第2基板11の液晶層13側の面に設けられた第2電極層14を有する第2電極基板1と、第1電極基板2および液晶層13の間に配置された第1配向膜17と、を有する。液晶組成物は、1種または2種以上のアルケニル系液晶化合物を含む。また、第1配向膜17は、波長365nmの光の吸収率が所定値以上である。
【0014】
図1に例示する液晶表示素子は、第1電極基板2が有する第1電極15は、画素電極層として機能する。一方、第2電極基板1は、第2基板11と第2電極層14との間にカラーフィルタ18を有しており、第2電極層14は共通電極層として機能する。なお、
図1に例示する液晶表示素子は、第2電極基板1および液晶層13の間に配置された第2配向膜16をさらに有している。
【0015】
液晶層13は、液晶組成物および重合性化合物の重合体を含んでいる。上記液晶組成物は、複数種類の液晶化合物(液晶分子)19を含むが、本実施形態における液晶組成物は、1種または2種以上のアルケニル系液晶化合物を必須に含む。PSAモードの液晶表示素子は、液晶層に形成される電界等を制御することによって、液晶組成物を構成する液晶分子(液晶化合物)のプレチルト方位およびプレチルト角の調整が可能である。また、液晶層13と第1配向膜17および第2配向膜16との界面には、それぞれ重合性化合物の重合体の領域21および20が形成されている。
【0016】
また、第2電極基板2には、カラーフィルタ18が設けられている。本実施形態の液晶表示素子においては、カラーフィルタは第2電極基板側に配置されることが好ましい。
【0017】
本実施形態の液晶表示素子によれば、極短波長域の光の吸収率が所定値以上の第1配向膜が配置されていることで、液晶表示素子の製造過程における光照射によるアルケニル系液晶化合物の劣化が抑制され、且つ、重合性化合物の残存量が低減された液晶層を有することができる。これにより、本実施形態の液晶表示素子は、画像の焼き付きが抑制された良好な表示品位を維持することが可能であり、高い応答速度性を有することができる。
【0018】
本明細書において「極短波長域」とは、365nm以下の波長域の光をいい、より具体的には300nm以上365nm以下の波長域の光をいう。上記365nm以下の波長域の光には紫外光も含まれる。また、極短波長域の光は、313nm付近にピークを持つ光を含むことが好ましい。
【0019】
以下、本実施形態の液晶表示素子の各構成について説明する。
【0020】
A.第1配向膜
本実施形態における第1配向膜は、上記第1基板および上記液晶層の間に配置され、波長365nmの光の吸収率が所定値以上である部材である。第1配向膜は、液晶層に含まれる液晶化合物を配向させる機能を有する。液晶化合物は液晶組成物を構成する化合物であり、液晶材料と称する場合がある。
【0021】
波長365nmの光の吸収率が所定値以上であるとは、波長365nmの光の吸収率が2.0%以上であり、好ましくは2.1%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.2%以上、4.0%以上、5.0%以上、5.5%以上、5.8%以上である。また、波長365nmの光の吸収率は高いほどよいが、好ましくは50%以下であり、30%以下、20%以下、10%以下、6%以下である。波長365nmの光の吸収率が高すぎると、液晶層において未反応の重合性化合物が多く残存する場合がある。
【0022】
本実施形態における第1配向膜は、さらに波長313nmの光の吸収率が所定値以上であることが好ましい。波長365nmの光の吸収率および波長313nmの光の吸収率がそれぞれ所定値以上であることで、光照射によるアルケニル系液晶化合物の分解劣化および焼き付きの発生をさらに効果的に抑制することができるからである。波長313nmの光の吸収率が所定値以上であるとは、波長313nmの光の吸収率が15%以上であることが好ましく、より好ましくは16%以上、17%以上、20%以上、23%以上、25%以上、27%以上である。波長313nmの光の吸収率は高いほどよいが、好ましくは80%以下であり、60%以下、40%以下、30%以下である。波長313nmの光の吸収率が高すぎると、液晶層において未反応の重合性化合物が多く残存する場合がある。
【0023】
第1配向膜の光の吸収率は、以下の測定方法により求めることができる。まず、配向膜が形成された電極基板(配向膜付電極基板とする)の透過率を分光光度計を用いて測定する。用いられる分光光度計としては、例えば日本分光株式会社のV-670を用いることができる。透過率の測定条件は以下の条件とする。測光モードは、%T(透過率測定モード)を選択し、レスポンスFast、バンド幅2.0nm、走査速度400nm/min、開始波長500nm、終了波長300nm、データ取り込み間隔は1.0nmとし、透過率測定ホルダーに配向膜付電極基板を配置し、透過率を測定する。次に同じ配向膜付電極基板の絶対反射率を測定する。測定機は透過率測定と同じ分光光度計として、例えば日本分光株式会社のV-670を用いることが可能である。反射率の測定条件は以下の条件とする。測光モードは、%R(反射率測定モード)を選択し、レスポンスFast、バンド幅2.0nm、走査速度400nm/min、開始波長500nm、終了波長300nm、データ取り込み間隔は1.0nmとし、絶対反射率測定ホルダーに配向膜付電極基板を配置し、絶対反射率を測定する。これらの配向膜付電極基板の透過率および絶対反射率の測定結果から、以下の式(A)により配向膜と基板を合わせた配向膜付電極基板の光吸収率を求めることができる。
【0024】
吸収率(配向膜+電極基板)%=100%-[透過率(配向膜+電極基板)%]-[絶対反射率(配向膜+電極基板)%] …(A)
【0025】
次に配向膜付電極基板から配向膜を除去する。除去の方法としては、化学的なエッチングを用いる方法や、物理的に配向膜をスパッタして昇華する方法を用いることができる。分光光度計の測定エリア(例えば10mm×10mm)程度の大きさを、下地の電極基板に影響を与えずに配向膜を除去するためには、例えばアルゴンガスを用いたスパッタ法などが好適である。配向膜を除去した電極基板単体の透過率および絶対反射率を、配向膜付電極基板の透過率および絶対反射率の測定方法と同様の方法で測定し、得られた電極基板単体の透過率および絶対反射率を元に、以下の式(B)により電極基板単体の吸収率を求めることが可能である。
【0026】
吸収率(電極基板)%=100%-[透過率(電極基板)%]-[絶対反射率(電極基板)%] …(B)
【0027】
従って、配向膜単体の吸収率は以下の式(C)で求めることができる。
【0028】
吸収率(配向膜)%=[吸収率(配向膜+電極基板)%]-[吸収率(電極基板)%]…(C)
【0029】
勿論、配向膜形成前の電極基板単体の光吸収率を測定し、その後、該電極基板に配向膜を形成後の配向膜付電極基板の光吸収率を測定することで、配向膜単体の光吸収率を求めてもよい。
【0030】
配向膜の波長365nmの光の吸収率とは、すなわち上述した方法で測定した、配向膜付電極基板の波長365nmの光の吸収率と電極基板単体の波長365nmの光の吸収率との差の値である。また、配向膜の波長313nmの光の吸収率とは、上述した方法で測定した、配向膜付電極基板の波長313nmの光の吸収率と電極基板単体の波長313nmの光の吸収率との差の値である。
【0031】
配向膜の光の吸収率は、例えば配向膜の膜厚、配向膜の組成等によって調整することができる。
【0032】
配向膜の光の吸収率は、同じ配向膜材料であっても膜厚が大きくなるに従って大きくなることが推量される。しかし、配向膜の膜厚を大きくして光の吸収率を増加させようとすると、液晶表示素子の製造において、予備加熱における溶剤分揮発に時間がかかってしまうという課題がある。また、配向膜の膜厚が小さいと、所望の光の吸収率が得られにくくなるのに加えて、十分な配向規制力が得られないという課題がある。したがって第1配向膜は、極短波長域における特定波長光の吸収率が所定値以上となる最適な膜厚を規定する必要がある。具体的には、第1配向膜の膜厚は、0.001μm以上、0.005μm以上が好ましく、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上が好ましい。また、上記膜厚は、1μm以下が好ましく、0.5μm以下が好ましく、0.3μm以下が好ましく、0.15μm以下が好ましい。詳述すれば、第1配向膜の膜厚は、好ましくは0.01μm~0.3μmであり、より好ましくは0.05μm~0.15μmである。
【0033】
第1配向膜を構成する材料は、公知の配向膜の材料と同様とすることができ、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリシロキサン、これらの混合物等が挙げられる。中でもポリイミドが好ましい。ポリイミドは、光架橋型ポリイミドであってもよく、分解型ポリイミドであってもよい。
【0034】
第1配向膜は、ラビング処理等がされていてもよい。
【0035】
第1配向膜の形成方法については、後述する「II.液晶表示素子の製造方法」の項で説明するため、ここでの説明は省略する。
【0036】
B.液晶層
本実施形態における液晶層は、第1電極基板および第2電極基板の間に配置された層である。詳述すれば、液晶層は、第1電極基板の第1電極層側の面に形成された第1配向膜および第2電極基板の第2電極層側の面に挟持されており、上記液晶層の一方の面は、上記第1配向膜と直接接している。第2電極基板の第2電極層側の面に第2配向層が形成されている場合は、上記液晶層の他方の面は、上記第2配向層と直接接する。
【0037】
本実施形態における液晶層は、1種または2種以上の重合性化合物の重合体および液晶組成物を含む。PSAモードの液晶表示素子においては、重合性化合物の重合体が、液晶層と配向膜との界面において例えば層状になって存在することができる。このような液晶層は、1種または2種以上の重合性化合物と1種または2種以上の液晶化合物を含む液晶組成物とを含む重合性液晶組成物に、光を照射して上記重合性化合物を重合させることで形成可能である。以下に、液晶層および上記液晶層を形成するための重合性液晶組成物に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
【0038】
1.液晶組成物
液晶組成物は、誘電率異方性が負の値を示すことが好ましい。ここで、液晶組成物の誘電率異方性とは、20℃における液晶組成物の誘電率異方性(Δε)をいう。中でも上記液晶組成物は、誘電率異方性が負の値を示すネマチック液晶組成物が好ましい。
【0039】
液晶組成物は、負の誘電率異方性を有する化合物を1種または2種以上含むことができる。負の誘電率異方性を有する化合物とは、20℃においてΔεの符号が負で、その絶対値が2より大きい値を示す化合物をいう。負の誘電率異方性を有する化合物は、特に限定されないが、例えば一般式(N-01)、(N-02)、(N-03)、(N-04)及び(N-05)で表される化合物群から選ばれる化合物が挙げられる。
【0040】
【0041】
(上記一般式(N-01)から(N-05)中、R21及びR22は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表し、Z1は、それぞれ独立して、単結合、-CH2CH2-、-OCH2-又は-CH2O-を表し、mは、それぞれ独立して、1又は2を表す。)
【0042】
上記式(N-01)から(N-05)中、Z1は、それぞれ独立して、単結合、-CH2CH2-又は-CH2O-であることが好ましい。中でもmが1のとき、Z1は単結合であることが好ましく、mが2のとき、Z1は-CH2CH2-又は-CH2O-であることが好ましい。
【0043】
液晶組成物は、一般式(N-01)で表される化合物として、一般式(N-01-1)、一般式(N-01-2)、一般式(N-01-3)及び一般式(N-01-4)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。
【0044】
【0045】
(上記一般式(N-01-1)から(N-01-4)中、R21及びR23は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す。)
【0046】
液晶組成物は、一般式(N-01-1)で表される化合物を含有することが特に好ましい。
【0047】
液晶組成物は、一般式(N-01-4)で表される化合物を含有することが特に好ましい。
【0048】
液晶組成物は、一般式(N-02)で表される化合物として、一般式(N-02-1)、一般式(N-02-2)、及び一般式(N-02-3)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。
【0049】
【0050】
(上記一般式(N-02-1)から(N-02-3)中、R21及びR23は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す。)
【0051】
液晶組成物は、一般式(N-02-1)で表される化合物を含有することが特に好ましい。
【0052】
液晶組成物は、一般式(N-03)で表される化合物として、一般式(N-03-1)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。
【0053】
【0054】
(上記一般式(N-03-1)中、R21及びR23は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す。)
【0055】
液晶組成物は、一般式(N-03-1)で表される化合物及び一般式(N-02-1)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0056】
液晶組成物は、一般式(N-03-1)で表される化合物及び一般式(N-01-4)で表される化合物及び一般式(N-02-1)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0057】
液晶組成物は、一般式(N-04)で表される化合物として、一般式(N-04-1)で表される化合物を1種類又は2種類以上含有することが好ましい。
【0058】
【0059】
(上記一般式(N-04-1)中、R21及びR23は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す。)
【0060】
液晶組成物の総量に対して、一般式(N-01)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、0質量%であり、1質量%であり、5質量%であり、10質量%であり、20質量%であり、30質量%であり、40質量%であり、50質量%であり、55質量%であり、60質量%であり、65質量%であり、70質量%であり、75質量%であり、80質量%である。また、好ましい含有量の上限値は、95質量%であり、85質量%であり、75質量%であり、65質量%であり、55質量%であり、45質量%であり、35質量%であり、25質量%であり、20質量%であり、15質量%であり、10質量%である。
【0061】
液晶組成物の総量に対して、一般式(N-02)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、0質量%であり、1質量%であり、5質量%であり、10質量%であり、20質量%であり、30質量%であり、40質量%であり、50質量%であり、55質量%であり、60質量%であり、65質量%であり、70質量%であり、75質量%であり、80質量%である。また、好ましい含有量の上限値は、95質量%であり、85質量%であり、75質量%であり、65質量%であり、55質量%であり、45質量%であり、35質量%であり、25質量%であり、20質量%であり、15質量%であり、10%である。
【0062】
液晶組成物の総量に対して、一般式(N-03)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、0質量%であり、1質量%であり、5質量%であり、10質量%であり、20質量%であり、30質量%であり、40質量%であり、50質量%であり、55質量%であり、60質量%であり、65質量%であり、70質量%であり、75質量%であり、80質量%である。また、好ましい含有量の上限値は、95質量%であり、85質量%であり、75質量%であり、65質量%であり、55質量%であり、45質量%であり、35質量%であり、25質量%であり、20質量%であり、15質量%であり、10質量%である。
【0063】
液晶組成物の総量に対して、一般式(N-04)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、0質量%であり、1質量%であり、5質量%であり、10質量%であり、20質量%であり、30質量%であり、40質量%であり、50質量%であり、55質量%であり、60質量%であり、65質量%であり、70質量%であり、75質量%であり、80質量%である。また、好ましい含有量の上限値は、95質量%であり、85質量%であり、75質量%であり、65質量%であり、55質量%であり、45質量%であり、35質量%であり、25質量%であり、20質量%であり、15質量%であり、10質量%である。
【0064】
液晶組成物の総量に対して、一般式(N-05)で表される化合物の好ましい含有量の下限値は、0質量%であり、2質量%であり、5質量%であり、8質量%であり、10質量%であり、13質量%であり、15質量%であり、17質量%であり、20質量%である。また、好ましい含有量の上限値は、30質量%であり、28質量%であり、25質量%であり、23質量%であり、20質量%であり、18質量%であり、15質量%であり、13質量%である。
【0065】
液晶組成物は、誘電的に中性の化合物を1種類又は2種類以上、更に含有することができる。「誘電的に中性の化合物」とは、20℃においてΔεが-2以上かつ+2以下の化合物をいう。誘電的に中性の化合物としては、例えば一般式(NU-01)から一般式(NU-08)で表される化合物群から選ばれる化合物が挙げられる。
【0066】
【0067】
(上記一般式(NU-01)から(NU-08)中、RNU11、RNU12、RNU21、RNU22、RNU31、RNU32、RNU41、RNU42、RNU51、RNU52、RNU61、RNU62、RNU71、RNU72、RNU81及びRNU82は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す。)
【0068】
液晶組成物が一般式(NU-01)で表される化合物を含む場合、液晶組成物の総量に対する一般式(NU-01)で表される化合物の含有量は、1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上40質量%以下であることが更に好ましい。
【0069】
液晶組成物が一般式(NU-02)で表される化合物を含む場合、液晶組成物の総量に対する一般式(NU-02)で表される化合物の含有量は、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0070】
液晶組成物が一般式(NU-03)で表される化合物を含む場合、液晶組成物の総量に対する一般式(NU-03)で表される化合物の含有量は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0071】
液晶組成物が一般式(NU-04)で表される化合物を含む場合、液晶組成物の総量に対する一般式(NU-04)で表される化合物の含有量は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0072】
液晶組成物が一般式(NU-05)で表される化合物を含む場合、液晶組成物の総量に対する一般式(NU-05)で表される化合物の含有量は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0073】
液晶組成物が一般式(NU-06)で表される化合物を含む場合、液晶組成物の総量に対する一般式(NU-06)で表される化合物の含有量は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0074】
液晶組成物が一般式(NU-07)で表される化合物を含む場合、液晶組成物の総量に対する一般式(NU-07)で表される化合物の含有量は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0075】
液晶組成物が一般式(NU-08)で表される化合物を含む場合、液晶組成物の総量に対する一般式(NU-08)で表される化合物の含有量は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0076】
本実施形態において液晶組成物は、1種または2種以上のアルケニル系液晶化合物を含む。ここで、本実施形態におけるアルケニル系液晶化合物とは、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいアルケニル基、および1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいアルケニルオキシ基からなる群から選択される基を少なくとも1つ以上有する液晶化合物をいう。中でも、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいアルケニル基および1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいアルケニルオキシ基は、液晶組成物の応答速度の改善を重視する場合、その末端分にCH2=CH-基を持つ構造が好ましい。しかし該構造は、極短波長域の光に対して反応性が高いため、当該化合物を含有する液晶組成物は信頼性が低下する問題を有する。
【0077】
ここで、「1個以上のハロゲン原子により置換され」るとは、アルケニル基、アルケニルオキシ基が有する1個以上の水素原子がハロゲン原子により置換可能であることをいう。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、中でもフッ素原子が好ましい。
【0078】
アルケニル系液晶化合物としては、下記一般式(i)で表される化合物が挙げられる。
【0079】
【0080】
(上記一般式(i)中、Ri1は、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい炭素原子数2~8のアルケニル基又は1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表し、
Ri2は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の-CH2-はそれぞれ独立して-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていてもよく、
Zi1は単結合又は連結基を表し、
Ai1およびAi2はそれぞれ独立して
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)及び基(b)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基で置換されていても良く、
mi1は1~3を表す。)
【0081】
Zi1が表す連結基としては、例えば、-CH2CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-OCO-、-OCF2-、-CF2O-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-が挙げられる。Zi1は、中でも単結合、-CH2CH2-、-OCH2-、または-CH2O-であることが好ましい。
【0082】
一般式(i)で表される化合物においては、中でも、アルケニル基およびアルケニルオキシ基が、炭素原子数2~5の直鎖状の基であることが好ましく、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基であることが好ましく、中でも式(R1)又は式(R2)で表される基であることが更に好ましく、応答速度改善を重視する場合には、式(R1)が好ましい。
【0083】
【0084】
(各式中の黒点は一般式(i)の環構造中の炭素原子を表す。)
【0085】
アルケニル系液晶化合物は、負の誘電率異方性(-2より小さい)を有する化合物であってもよく、誘電的に中性(-2≦Δε≦2)の化合物であってもよい。液晶組成物がアルケニル系液晶化合物を2種以上含む場合は、負の誘電率異方性を有するアルケニル系液晶化合物および誘電的に中性のアルケニル系液晶化合物の一方のみを含んでいてもよく、両方を含んでいてもよい。
【0086】
一般式(i)で表される負の誘電率異方性を有するアルケニル系液晶化合物としては、例えば上述の一般式(N-01)、(N-02)、(N-03)、(N-04)及び(N-05)で表される化合物群から選ばれる化合物であって、上記一般式(N-01)から(N-05)中のR21及びR22の少なくとも一方が、炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す化合物が挙げられる。
【0087】
中でも、一般式(i)で表される負の誘電率異方性を有するアルケニル系液晶化合物においては、アルケニル基が、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基であることが好ましく、中でも式(R1)又は式(R2)で表される基であることが更に好ましい。
【0088】
【0089】
(各式中の黒点は、一般式(N-01)から(N-05)の環構造中の炭素原子を表す。)
【0090】
また、一般式(i)で表される誘電的に中性のアルケニル系液晶化合物としては、例えば上述の一般式(NU-01)から一般式(NU-08)で表される化合物群から選ばれる化合物であって、上記一般式(NU-01)中のRNU11及びRNU12の少なくとも一方が炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す化合物、上記一般式(NU-02)中のRNU21及びRNU22の少なくとも一方が炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す化合物、上記一般式(NU-03)中のRNU31及びRNU32の少なくとも一方が炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す化合物、上記一般式(NU-04)中のRNU41及びRNU42の少なくとも一方が炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す化合物、上記一般式(NU-05)中のRNU51及びRNU52の少なくとも一方が炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す化合物、上記一般式(NU-06)中のRNU61及びRNU62の少なくとも一方が炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す化合物、上記一般式(NU-07)中のRNU71及びRNU72の少なくとも一方が炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す化合物、上記一般式(NU-08)中のRNU81及びRNU82の少なくとも一方が炭素原子数2~8のアルケニル基又は炭素原子数2~8のアルケニルオキシ基を表す化合物が挙げられる。
【0091】
一般式(i)で表される誘電的に中性のアルケニル系液晶化合物においては、中でも、アルケニル基およびアルケニルオキシ基が、炭素原子数2~5の直鎖状の基であることが好ましく、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基であることが好ましく、中でも式(R1)又は式(R2)で表される基であることが更に好ましく、応答速度改善を重視する場合には、式(R1)がより好ましい。
【0092】
【0093】
(各式中の黒点は、一般式(NU-01)から(NU-08)の環構造中の炭素原子を表す。)
【0094】
一般式(i)で表される誘電的に中性のアルケニル系液晶化合物の具体例としては、例えば、下記式(L-1-1.1)から式(L-1-1.3)で表される化合物群から選ばれる化合物、式(L-1-2.1)から式(L-1-2.4)で表される化合物群から選ばれる化合物、式(L-1-4.1)から式(L-1-5.3)で表される化合物群から選ばれる化合物、式(L-1-6.1)から式(L-1-6.3)で表される化合物群から選ばれる化合物等が挙げられる。中でも高速応答性を発揮する観点から、式(L-1-1.1)から式(L-1-1.3)で表される化合物群から選ばれる化合物が好ましい。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
液晶組成物中のアルケニル系液晶化合物の好ましい含有量は、1質量%以上であり、5質量%以上であり、15質量%以上であり、25質量%以上であり、35質量%以上である。また、上記含有量は、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは70質量%以下であり、60質量%以下であり、50質量%以下である。アルケニル系液晶化合物を2種以上含む場合は、その総量が上述の含有量の範囲内であることが好ましい。
【0100】
液晶組成物は、1種以上の酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤の種類は特に限定されないが、中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、一般式(H-1)から一般式(H-4)で表される化合物からなる群から選択される化合物を好適に用いることができる。
【0101】
【0102】
(上記一般式(H-1)から(H-4)中、RH1は、それぞれ独立して、炭素原子数3~7のアルキル基を表し、MH1は炭素原子数4~10のアルキレン基(該アルキレン基中の1つ又は2つ以上の-CH2-は、酸素原子が直接隣接しないように、-COO-又は-OCO-に置換されていても良い。)、単結合、1,4-フェニレン基(1,4-フェニレン基中の任意の水素原子はフッ素原子により置換されていても良い。)又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表す。)
【0103】
更に具体的には、一般式(H-1)のRH1は、炭素原子数7のアルキル基を表すことが好ましい。一般式(H-2)のRH1は、炭素原子数3のアルキル基を表すことが好ましい。一般式(H-3)のRH1は、炭素原子数3のアルキル基を表すことが好ましい。また、一般式(H-4)中、MH1は、MH1は炭素原子数4~8のアルキレン基が好ましい。
【0104】
液晶組成物に含まれる酸化防止剤の含有量の下限は、10質量ppmが好ましく、20質量ppmが好ましく、50質量ppmが好ましい。また、上記含有量の上限は10000質量ppmが好ましく、1000質量ppmが好ましく、500質量ppmが好ましく、100質量ppmが好ましい。
【0105】
液晶組成物は、上述の化合物以外に、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等の任意の材料を含有しても良い。
【0106】
液晶組成物は、一般式(N-01)から(N-05)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上と、一般式(NU-01)から(NU-08)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を1種類又は2種類以上と、を少なくとも含んでいてもよい。上記液晶組成物の総量に対する一般式(N-01)から(N-05)で表される化合物および一般式(NU-01)から(NU-08)で表される化合物の総含有量の好ましい下限値は、80質量%であり、85質量%であり、88質量%であり、90質量%であり、92質量%であり、93質量%であり、94質量%であり、95質量%であり、96質量%であり、97質量%であり、98質量%であり、99質量%であり、100質量%である。好ましい総含有量の上限値は、100質量%であり、99質量%であり、98質量%であり、95質量%である。
【0107】
液晶組成物は、ネマチック相-等方性液体相転移温度(TNI)が60℃以上120℃以下であることが好ましく、70℃以上100℃以下がより好ましく、70℃以上85℃以下が特に好ましい。なお、本明細書においては、60℃以上をTNIが高いと表現している。液晶テレビ用途の場合、TNIは70℃以上80℃以下が好ましく、モバイル用途の場合、TNIは80℃以上90℃以下が好ましく、PID(Public Information Display)等の屋外表示用途の場合、TNIは90℃以上110℃以下が好ましい。
【0108】
液晶組成物は、20℃における屈折率異方性(Δn)が0.08以上0.14以下であることが好ましく、0.09以上0.13以下がさらに好ましく、0.09以上0.12以下がより好ましく、0.098以上0.118以下が特に好ましい。更に詳述すると、薄いセルギャップに対応する場合は、20℃における屈折率異方性(Δn)が0.10以上0.13であることが好ましく、一方、厚いセルギャップに対応する場合は、20℃における屈折率異方性(Δn)が0.08以上0.10以下であることが好ましい。
【0109】
液晶組成物は、20℃における回転粘性(γ1)が50Pa・s以上160mPa・s以下であることが好ましく、55Pa・s以上160mPa・s以下であることが好ましく、60Pa・s以上160mPa・s以下であることが好ましく、80Pa・s以上150mPa・s以下であることが好ましく、90Pa・s以上140mPa・s以下であることが好ましく、90Pa・s以上130mPa・s以下であることが好ましく、90Pa・s以上115mPa・s以下であることが好ましい。
【0110】
液晶組成物は、20℃における誘電率異方性(Δε)が-1.7以上-4.0以下であることが好ましく、-2.5以上-3.8以下がさらに好ましく、-2.6以上-3.7以下がより好ましく、-2.7以上-3.6以下が特に好ましい。
【0111】
2.重合性化合物
液晶層において重合体として存在する重合性化合物としては、例えば下記一般式(RM)または一般式(RM-13)で表される化合物からなる群から選択される化合物が挙げられる。
【0112】
【0113】
(上記一般式(RM)中、R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107及びR108は、それぞれ独立して、P13-S13-、フッ素原子に置換されてもよい炭素原子数1~18のアルキル基、フッ素原子に置換されてもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基、フッ素原子又は水素原子のいずれかを表し、P11、P12及びP13は、それぞれ独立して、式(Re-1)から式(Re-9)
【0114】
【0115】
(式(Re-1)から式(Re-9)中、R11、R12、R13、R14及びR15は、それぞれ独立して、炭素原子数1~5のアルキル基、フッ素原子又は水素原子のいずれかを表し、mr5、mr7、nr5及びnr7は、それぞれ独立して、0、1、又は2を表すが、mr5、mr7、nr5及び/又はnr7が0を表す場合には単結合を表す。)
で表される重合性基を表し、S11、S12及びS13は、それぞれ独立して、単結合又は炭素原子数1~15のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は、-O-、-OCO-又は-COO-で置換されても良く、P13及びS13が複数存在する場合は、それぞれ、同一であっても異なっていても良い。)
【0116】
【0117】
(上記一般式(RM-13)中、P3及びP4は、それぞれ独立して、式(PG-1)から式(PG-5)
【0118】
【0119】
で表される重合性基を表し、S3は、単結合又は炭素原子数1~5のアルキレン基を表し、Y1からY12はそれぞれ独立してフッ素又は水素原子を表すが、少なくとも一つはフッ素原子を表す。)
【0120】
重合性液晶組成物中の重合性化合物の含有量は、0.1質量%以上0.6質量%以下の範囲で調整することが好ましい。
【0121】
C.第1電極基板および第2電極基板
本実施形態における第1電極基板は、第1基板および上記第1基板の上記液晶層側の面に設けられた第1電極層を有する。また、第2電極基板は、第2基板および上記第2基板の上記液晶層側の面に設けられた第2電極層を有する。第1電極基板および第2電極基板は、液晶層を介して対向する。
【0122】
1.第1基板および第2基板
第1基板および第2基板(以下、総じて基板と称する場合がある。)は、フレキシブル基板であってもよく、リジット基板であってもよい。このような基板としては、例えばガラス板、プラスチック板等の透明基板を用いることができる。ガラス板を構成するガラスは、ソーダガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。また、プラスチック基板を構成する樹脂は、例えばアクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。また、本実施形態においては、第1基板側に極短波長域の光の吸収能が高い配向膜が配置されることから、第1基板および第2基板は、少なくとも第1基板が透光性を有していればよく、第2基板は透光性を有していてもよく有さなくてもよい。透光性を有さない基板は、例えば金属材料、シリコン材料等の不透明な材料で構成することができる。
【0123】
2.第1電極層および第2電極層
第1電極層および第2電極層は、一方が共通電極層として機能し、他方が画素電極層として機能する。通常、第1電極基板および第2電極基板のうち、カラーフィルタを備える電極基板が有する電極層が、共通電極層として機能する。本実施形態においては、カラーフィルタが第2電極基板に設けられ、第1電極基板が有する第1電極層が画素電極層であり、第2電極基板が有する第2電極層が共通電極層であることが好ましい。
【0124】
共通電極層は、例えば、インジウム添加酸化スズ(ITO)等の透明性を有する材料から構成される。ITO以外に、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、InGaZnO、SiGe、GaAs、IZO(Indium Zinc Oxide)、TiO、AZTO(AlZnSnO)等の酸化物半導体で構成されていてもよい。共通電極層は液晶表示素子の駆動方式に応じた形状を選択することができる。
【0125】
画素電極層は、通常、インジウム添加酸化スズ(ITO)等の透明性を有する材料から構成される。ITO以外に、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、InGaZnO、SiGe、GaAs、IZO(Indium Zinc Oxide)、TiO、AZTO(AlZnSnO)等の酸化物半導体で構成されていてもよい。画素電極層は、基板にマトリクス状に配設されている。画素電極層は、TFTスイッチング素子に代表されるアクティブ素子のドレイン電極により制御され、そのTFTスイッチング素子は、アドレス信号線であるゲート線及びデータ線であるソース線をマトリクス状に有している。
【0126】
視野角特性を向上させるために画素内の液晶分子の倒れる方向をいくつかの領域に分割する画素分割を行う場合、各画素内において、ストライプ状やV字状のパターンを有するスリット(電極の形成されない部分)を有する画素電極層を設けていてもよい。
【0127】
中でも電極層は、複数の領域に区画されたパターン状であることが好ましい。
図2は、画素内を4つの領域に分割する場合のスリット電極(櫛形電極)の典型的な形態を示す概略平面図である。このスリット電極は、画素の中央から4方向に櫛歯状にスリットを有することにより、電圧無印加時に基板に対して略垂直配向している各画素内の液晶分子は、電圧の印加に伴って4つの異なった方向に液晶分子のダイレクターを向けて、水平配向に近づいていく。すなわち、4つの各領域で異なる電圧を印加することによって、領域ごとに液晶分子のプレチルト角の方向を変えることができる。その結果、画素内の液晶の配向方位を複数に分割できるので極めて広い視野角特性を有することができる。
【0128】
画素分割するための方法としては、画素電極にスリットを設ける方法の他に、画素内に線状突起等の構造物を設ける方法、画素電極や共通電極以外の電極を設ける方法等が用いられる。これらの方法により、液晶分子の配向方向を分割することもできるが、透過率、製造の容易さから、スリット電極を用いる構成が好ましい。スリットを設けた画素電極は、電圧無印加時には液晶分子に対して駆動力を有さないことから、液晶分子にプレチルト角を付与することはできない。しかし、本実施形態の液晶表示素子は配向膜を有するため、プレチルト角を付与することができるとともに、画素分割したスリット電極と組み合わせることにより、画素分割による広視野角を達成することができる。
【0129】
なお、プレチルト角を有するとは、電圧無印加状態において、基板面(第1電極基板および第2電極基板における液晶層と隣接する面)に対して垂直方向と液晶分子のダイレクターが僅かに異なっている状態を言う。
【0130】
D.第2配向膜
本実施形態の液晶表示素子は、第1電極基板および液晶層の間に配置された第1配向膜を有していればよいが、第2電極基板および液晶層の間に配置された第2配向膜をさらに有していてもよい。すなわち、液晶層は、第1配向膜および第2配向膜に挟持されていてもよい。
【0131】
第2配向膜は、第1配向膜と同一であってもよく、膜厚や材料、極短波長域の光吸収率が第1配向膜と異なってもよい。
【0132】
中でも第2電極基板は第2配向膜を有していることが好ましい。また、上記第2配向膜は、波長365nmの光の吸収率が第1配向膜と同じであることが好ましく、波長365nmの光の吸収率および波長313nmの光の吸収率がともに第1配向膜と同じであることがさらに好ましい。液晶表示素子の製造において、第2電極基板側から光を照射しても、第2配向膜により極短波長域の光を吸収することができるため、本実施形態による効果をより顕著に奏することができるからである。
【0133】
E.その他の構成部位
本実施形態の液晶表示素子は、上述した構成部位の他に、PSAモードの液晶表示素子おいて公知の構成部位を有することができる。その他の構成部位としては、例えば、カラーフィルタ、偏光板等が挙げられる。カラーフィルタは、液晶表示素子の製造過程における第1配向膜による光機能が十分に発揮可能となる観点から、第2電極基板側に設けられることが好ましい。偏光板としては、例えば、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、H膜そのものからなる偏光板等を挙げることができる。
【0134】
F.その他
本実施形態の液晶表示素子は、PSAモードである。PSAモード液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置に用いることができる。
【0135】
本実施形態の液晶表示素子は、「II.液晶表示素子の製造方法」の項で説明する方法により製造することができる。
【0136】
II.液晶表示素子の製造方法
本発明の一実施形態である液晶表示素子の製造方法(以下、本実施形態の製造方法とする。)は、第1基板および上記第1基板の一方の面に設けられた第1電極層を有する第1電極基板と、第2基板および上記第2基板の一方の面に設けられた第2電極層を有する第2電極基板と、を準備し、上記第1電極基板の上記第1電極層側の面に、波長365nmの光の吸収率が所定値以上である第1配向膜を設ける第1配向膜成配置工程と、上記第1電極基板の上記第1配向膜を有する面と上記第2電極基板の上記第2電極層が設けられた面とを対向させ、対向する上記第1電極基板および上記第2電極基板の間に、1種または2種以上の重合性化合物と1種又は2種以上のアルケニル系液晶化合物を含む液晶組成物とを含む重合性液晶組成物を配置して、液晶セルを形成する液晶セル形成工程と、上記液晶セルの上記第1電極基板側から上記重合性液晶組成物に光を照射して、上記重合性化合物の重合体および上記液晶組成物を含む液晶層を形成する光照射工程と、を含む。
【0137】
本実施形態の液晶表示素子の製造方法によれば、波長365nmの光の吸収率が所定値以上である配向膜を介して、重合性液晶組成物に光を照射して液晶層を形成することで、焼き付きによる表示品位の劣化が抑制された、応答速度が速いPSAモードの液晶表示素子を得ることができる。詳述すれば、重合性液晶組成物に照射される光のうち、重合性化合物の重合反応に必要な波長域の光は配向膜を透過して重合性液晶組成物に到達する。これにより、重合性液晶組成物中に含まれる重合性化合物を十分に重合させることができ、未反応の重合性化合物の含有量が少ない液晶層を形成することができる。また、アルケニル系液晶化合物の劣化の原因となる極短波長域の光は、配向膜に吸収されて重合性液晶組成物には到達されないため、アルケニル系液晶化合物の劣化を抑制することができる。これらの効果により、焼き付きによる表示品位の劣化が抑制された、応答速度が速い液晶表示素子が得られる。
【0138】
ここで、液晶表示素子の製造時において、重合性液晶組成物に極短波長域の光が照射されるのを防ぐ方法として、例えば、光源と液晶セルとの間に極短波長域の光をカットするフィルタ(UVカットフィルタ)を介して光を照射する方法も想定される。しかし、通常、フィルタは光源付近に配置され、該フィルタを透過した光が液晶セルに到達するまでに距離がある。このため上記の方法の場合、フィルタを透過して極短波長域がカットされた光の一部が液晶セルに入射せず、液晶セル内の重合性液晶組成物に対し、重合性化合物の重合に必要な量の光が十分に照射されないことで、未反応の重合性化合物の残存量が増加してしまうおそれがある。これに対し、本実施形態の製造方法によれば、液晶セル内の第1配向膜において極短波長域の光が吸収され、第1配向膜を透過した光が直接重合性液晶組成物に照射されるため、重合性化合物への光照射量の減少を抑制することができ、未反応の重合性化合物の残存量を低減できると推量される。
【0139】
以下、本実施形態の液晶表示素子の製造方法について、工程ごとに説明する。
【0140】
A.第1配向膜配置工程
第1配向膜工配置程は、第1基板および上記第1基板の一方の面に設けられた第1電極層を有する第1電極基板と、第2基板および上記第2基板の一方の面に設けられた第2電極層を有する第2電極基板と、を準備し、上記第1電極基板の上記第1電極層側の面に、波長365nmの光の吸収率が所定値以上である第1配向膜を設ける工程である。
【0141】
第1電極基板および第2電極基板は、液晶表示素子における公知の方法により形成することができる。電極基板における基板および電極層ならびに電極基板を構成する他の部材については、「I.液晶表示素子」の項で説明したものと同様とすることができる。
【0142】
また、液晶表示素子を構成する一対の電極基板のうち、一方の電極基板には通常、カラーフィルタが設けられるが、本実施形態においては、第2電極基板にカラーフィルタが設けられることが好ましい。第1電極基板にカラーフィルタを設けると、後述する光照射工程において、第1配向膜が設けられた第1電極基板側から光照射をする際に、カラーフィルタが光の透過を阻害して、十分な量の光を重合性液晶組成物に照射できないおそれがあるからである。カラーフィルタを設ける方法については、公知の方法と同様とすることができる。
【0143】
本工程において第1電極基板に配置される第1配向膜は、波長365nmの光の吸収率が所定値以上である。波長365nmの光の吸収率が所定値以上であるとは、波長365nmの光の吸収率が2.0%以上であり、好ましくは2.1%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.2%以上、4.0%以上、5.0%以上、5.5%以上、5.8%以上である。また、波長365nmの光の吸収率は高いほどよいが、好ましくは50%以下であり、30%以下、20%以下、10%以下、6%以下である。波長365nmの光の吸収率が高すぎると、光照射工程において未反応の重合性化合物が多く残存してしまう場合がある。
【0144】
また、第1配向膜は、さらに波長313nmの光の吸収率が所定値以上であることが好ましい。波長313nmの光の吸収率が所定値以上であるとは、波長313nmの光の吸収率が15%以上であることが好ましく、より好ましくは16%以上、17%以上、20%以上、23%以上、25%以上、27%以上である。波長313nmの光の吸収率は高いほどよいが、好ましくは80%以下であり、60%以下、40%以下、30%以下である。波長313nmの光の吸収率が高すぎると、光照射工程において未反応の重合性化合物が多く残存してしまう場合がある。
【0145】
本工程においては、少なくとも波長365nmの光の吸収率が所定値以上の第1配向膜を用いることで、光照射工程において照射される光のうち、アルケニル系液晶化合物の分解劣化の要因となる極短波長域の光を高効率で吸収することができる。また、波長365nmの光の吸収率に加えて波長313nmの光の吸収率が所定値以上である第1配向膜を用いることで、極短波長域の光をより広範囲にわたって高い吸収率で吸収することができ、アルケニル系液晶化合物の分解劣化をさらに抑制することができる。
【0146】
本工程において用いる第1配向膜の光吸収率は、上記「I.液晶表示素子」の項で説明した方法により測定することができる。
【0147】
第1配向膜は、別途製膜された配向膜を上記第1電極基板の上記第1電極層側の面に貼付してもよく、液晶配向剤を第1電極基板の第1電極層上に塗布し、塗膜を加熱して形成してもよい。液晶配向剤は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、イミド環構造とアミック酸構造とを有するイミド化重合体等を含み、目的とする配向膜の材質に応じて適宜調製される。例えば、ポリイミド配向膜を形成する場合であれば、液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物およびジイソシアネートの混合物、ポリアミック酸、ポリイミドを溶剤に溶解又は分散させたポリイミド溶液等を用いることができる。一方、ポリシロキサン系配向膜を形成する場合であれば、液晶配向剤は、アルコキシ基を有するケイ素化合物、アルコール誘導体及びシュウ酸誘導体を所定の配合量比で混合して加熱することにより製造したポリシロキサンを溶解させた、ポリシロキサン溶液を用いることができる。
【0148】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1~10重量%の範囲である。液晶配向剤を第1電極基板の第1電極層側の表面に塗布し、好ましくは加熱して液晶配向膜を形成する際に、固形分濃度が1重量%未満である場合には、膜厚が過小となって良好な配向膜を得にくい。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、膜厚が過大となって良好な配向膜を得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる。
【0149】
第1電極基板の第1電極層上に液晶配向剤を塗布する方法としては、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法により行うことができる。液晶配向剤の塗布に際しては、第1基板表面および第1電極層と配向膜との接着性をさらに良好にするために、第1電極基板の第1電極層側の面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
【0150】
液晶配向剤を基板に塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30℃~200℃であり、より好ましくは40℃~150℃であり、特に好ましくは40℃~100℃である。プレベーク時間は、好ましくは0.25分~10分であり、より好ましくは0.5分~5分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。ポストベーク温度は、好ましくは80℃~300℃であり、より好ましくは120℃~250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5分~200分であり、より好ましくは10分~100分である。
【0151】
液晶配向剤の塗膜の膜厚は、少なくとも波長365nmの光の吸収率が所定値以上となる大きさであればよく、得られる配向膜の膜厚が好ましくは0.01μm~0.3μmの範囲内、より好ましくは0.05μm~0.15μmの範囲内となるように、塗膜の膜厚を設計することができる。
【0152】
液晶配向剤を塗布した後、加熱によって有機溶媒を除去することにより、配向膜が形成される。このとき、液晶配向剤に含有される重合体が、ポリアミック酸であるか、ポリアミック酸エステルであるか、又はイミド環構造とアミック酸構造とを有するイミド化重合体である場合には、塗膜形成後に更に加熱することによって脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化してもよい。
【0153】
液晶配向剤の塗膜(配向膜)は、これをそのまま以下の液晶セル形成工程に供してもよく、必要に応じて表面をラビング処理を行った後に液晶セル形成工程に供してもよい。ラビング処理は、液晶配向剤の塗膜面に対して、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることにより行うことができる。
【0154】
B.液晶セル形成工程
液晶セル形成工程は、上記第1電極基板の上記第1配向膜を有する面と上記第2電極基板の上記第2電極層が設けられた面とを対向させ、対向する上記第1電極基板および上記第2電極基板の間に、1種または2種以上の重合性化合物と1種又は2種以上のアルケニル系液晶化合物を含む液晶組成物とを含む重合性液晶組成物を配置して、液晶セルを形成する工程である。
【0155】
本工程において用いる重合性液晶組成物は、1種または2種以上の重合性化合物と、1種又は2種以上のアルケニル系液晶化合物を含む液晶組成物と、を含む。重合性化合物および液晶組成物については、上記「I.液晶表示素子」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
【0156】
液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。第一の方法は、従来から知られている方法(真空注入方式)である。先ず、第1電極基板の第1配向膜を有する面と、第2電極基板の第2電極層が設けられた面とが対向するように、間隙(セルギャップ)を介して第1電極基板および第2電極基板(以下、2枚の電極基板とする場合がある。)を対向配置し、2枚の電極基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、2枚の電極基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に重合性液晶組成物を注入して充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造する方法である。一方で、第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。この方法は、第1電極基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに配向膜面上の所定の数箇所に、重合性液晶組成物を滴下した後、第1電極基板の第1配向膜を有する面と、第2電極基板の第2電極層が設けられた面とが対向するように第2電極基板を貼り合わせるとともに、重合性液晶組成物を2枚の電極基板の全面に押し広げ、次いで2枚の電極基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造する方法である。なお、第2電極基板が第2配向膜を有する場合は、第2電極基板にシール剤を塗布し、重合性液晶組成物を滴下した後に、第1電極基板を貼り合わせてもよい。
【0157】
いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた重合性液晶組成物に含まれる液晶化合物が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去してもよい。
【0158】
対向する第1電極基板および第2電極基板の間を封止するシール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとして、直径が制御されたグラスファイバーを含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0159】
C.光照射工程
光照射工程は、上記液晶セルの上記第1電極基板側から上記重合性液晶組成物に光を照射して、上記重合性化合物の重合体および上記液晶組成物を含む液晶層を形成する工程である。
【0160】
本工程において光を照射する回数は、液晶分子に所望のプレチルト角を付与することができ、かつ重合性液晶組成物中の重合性化合物を完全に重合させることが可能であれば、1回でもよく、2回以上であってもよい。中でも上記第1電極基板および上記第2電極基板の間に電圧を印加した状態で、上記液晶セルの上記第1電極基板側から上記重合性液晶組成物に光を照射する第1光照射処理と、上記第1光照射処理の後で、上記第1電極基板および上記第2電極基板の間に電圧を印加しない状態で、上記液晶セルの上記第1電極基板側から上記重合性液晶組成物に光を照射する第2光照射処理と、を有することが好ましい。第1光照射処理により液晶分子にプレチルト角を付与し、第2光照射処理により重合性化合物の重合を行うことができるからである。
【0161】
第1光照射処理において印加する電圧は、例えば5V~50Vの直流又は交流とすることができる。
【0162】
第1光照射処理において照射する光としては、例えば150nm~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、中でも300nm~400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザー、LEDなどを使用することができる。
【0163】
第1光照射処理において照射する光の強度は、例えば365nmの強度で、1mW/cm2~1000mW/cm2の範囲の光を用いることができるが、50mW/cm2~150mW/cm2の範囲の強度の光を用いることが好ましい。照射時間は1秒~1000秒の範囲であるが、光強度と照射時間の積である積算光量換算で、5J/cm2~15J/cm2の範囲であることが好ましい。従って、照射時間は30秒~300秒の範囲であることが好ましい。
【0164】
次いで第1光照射処理の後に第2光照射処理を行う。第2光照射処理では、第1光照射処理とは異なり、2つの電極基板間に電圧を印加せずに液晶セルの第1電極基板側から光照射を行う。
【0165】
第1光照射処理及び第2光照射処理において、重合性液晶組成物中の重合性化合物を完全に重合させることが重要である。未重合の重合性化合物が少しでも残留していると、電圧保持率が低下し、その結果、液晶表示素子の焼き付きが生じるからである。そのため、第2光照射処理において照射する光の強度は、第1光照射処理における光の強度よりも小さいことが好ましい。より詳しくは、第2光照射処理において照射する波長365nmの光の強度は、第1光照射処理において照射する波長365nmの光の強度よりも小さいことが好ましい。第1光照射処理よりも、比較的強度の小さな光である程度長時間照射することで、重合性液晶組成物中に含まれる重合性化合物を効率良く重合させることが可能であるからである。
【0166】
第2光照射処理においては、例えば365nmで0.1mW/cm2~100mW/cm2の強度の光を用いることができるが、中でも1mW/cm2~10mW/cm2の強度の光を用いることが好ましい。照射時間は100秒~10000秒の範囲であることが好ましいが、光の強度と照射時間の積である積算光量換算で、5J/cm2~15J/cm2の範囲であることが好ましい。従って、照射時間は500秒~15000秒であることが好ましい。
【0167】
第2光照射処理では、第1光照射処理で照射した光よりも短波長の紫外線を多く含む光を照射することが好ましい。具体的には、第1光照射処理で照射した光よりも、波長313nmの光を多く含む光を照射することが好ましい。波長313nmの光を多く含むとは、波長365nmの光に対する波長313nmの光の相対強度が大きいことを意味する。よって、第1光照射処理で照射した光よりも、波長313nmの光を多く含む光とは、第1光照射処理で照射した光の、波長365nmの光に対する波長313nmの光の相対強度よりも、第2光照射処理で照射した光の、波長365nmの光に対する波長313nmの光の相対強度のほうが大きいことをいう。また、換言すれば、第2光照射処理では、第1光照射処理で照射した光よりも、短波長側にピークを有する光を照射することが好ましい。第2光照射処理において、第1光照射処理で照射した光よりも短波長域の光を多く含む光を照射することで、重合性化合物を十分に重合させることが可能となるからである。
【0168】
第2光照射処理において用いる光源は、第1光照射処理と同じであってもよく、異なってもよい。上述した光源以外の光源としては、例えば蛍光ランプが挙げられる。中でも、第2光照射処理において用いる光源が、蛍光ランプであることが好ましい。蛍光ランプに含まれる極短波長域の光(紫外光)が液晶組成物に含まれるアルケニル系液晶化合物の分解を促進させてしまい、その結果、電圧保持率が低下して液晶表示素子の焼き付きを起こしてしまうと推量される。これに対し、本実施形態の液晶表示素子の製造方法によれば、液晶セルの第1電極基板側から蛍光ランプを照射しても、蛍光ランプからの光は、極短波長域の光である紫外光が第1配向膜で十分に吸収されてから重合性液晶組成物に到達することになるため、光照射によるアルケニル系液晶化合物の分解劣化を十分に抑制することができる。このように、光源に蛍光ランプを用いることで、本実施形態の製造方法による効果をより顕著に発揮することができる。
【0169】
本工程により、重合性液晶組成物中の重合性化合物が重合し、上記重合性化合物の重合体および液晶組成物を含む液晶層が形成される。液晶層については「I.液晶表示素子」の項で説明したため、説明は省略する。
【0170】
D.その他の工程
本実施形態の製造方法は、第1配向膜配置工程と液晶セル形成工程との間に、第2電極基板の第2電極層側の面に第2配向膜を設ける第2配向膜配置工程を含んでいてもよい。第2配向膜を設ける方法については、上述した第1配向膜を設ける方法と同様とすることができる。
【0171】
また、本実施形態の製造方法は、光照射工程後に上記液晶セルの上記第1電極基板の上記第1電極層側とは反対側の面、および上記第2電極基板の上記第2電極層側とは反対側の面に偏光板を設ける偏向板配置工程を有することができる。
【実施例】
【0172】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0173】
<配向膜PI-1の吸収率測定>
ITO膜からなる透明電極が設けられたガラス基板(以下、電極基板とする。)の光透過率及び絶対反射率を、分光光度計(日本分光株式会社製V-670)を用いて測定し、電極基板の光吸収率を求めた。測定方法の手順および測定条件は、上記「I.液晶表示素子」の項で説明した詳細に則して行った。透明電極は、
図2で示すパターン状とした。
【0174】
次に、上記電極基板の透明電極が形成された面に、市販の配向膜PI-1を配置して、配向膜PI-1付き電極基板を得た。配向膜PI-1は、ポリイミド膜(平均膜厚100nm)であった。配向膜PI-1付き電極基板の光吸収率を、電極基板の光吸収率の測定方法と同様の方法によって求め、配向膜PI-1付き電極基板の光吸収率および電極基板の光吸収率の値から配向膜PI-1単体の光吸収率を求めたところ、波長365nmの吸収率が2.12%、波長313nmの吸収率が14.00%であった。
【0175】
<配向膜PI-2~PI-6吸収率測定>
電極基板の透明電極が形成された面に、配向膜PI-1と組成等の異なる市販の配向膜PI-2~PI-6(平均膜厚:100nm)の1つを配置し、配向膜付電極基板をそれぞれ得た。配向膜PI-1の吸収率の測定と同様の方法で、各配向膜付電極基板の光吸収率および電極基板の光吸収率の値から、配向膜PI-2~PI-6それぞれの単体の光吸収率を求めた。
【0176】
配向膜PI-1~PI-6の単体での、波長400nm、波長365nm、および波長313nmの各波長の光吸収率を表1に示す。また、配向膜PI-1~PI-6の単体の光吸収スペクトルのグラフを
図3に示す。
【0177】
【0178】
[実施例1-1]
<重合性液晶組成物Aの調整>
誘電率異方性(Δε)が-3.38である、以下に示す組成の液晶組成物Aを調製した。なお、「wt%」は「質量%」を意味する。液晶組成物Aは、ネマチック液晶相の上限温度(Tni)が67.5℃、ネマチック液晶相の下限温度(T→n)が-5℃、屈折率異方性(Δn)が0.079であった。
【0179】
【0180】
得られた液晶組成物Aを99.7質量%に下記重合性化合物RM-1を0.3質量%混合して、重合性液晶組成物Aを調製した。
【0181】
【0182】
<液晶セルの作製>
ODF(One Drop Fill)方式を用いて、以下のとおり液晶セルの作製を行った。上記「配向膜PI-1の吸収率測定」で作成した配向膜PI-1付き電極基板を2つ準備し、一方の配向膜PI-1付き電極基板上の所定の場所に、紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに配向膜PI-1の面上の所定の数箇所に、重合性液晶組成物Aを滴下した後、2つの電極基板の配向膜PI-1がそれぞれ対向するように他方の配向膜PI-1付き電極基板を貼り合わせるとともに、重合性液晶性組成物Aを2つの配向膜PI-1付き電極基板の全面に押し広げた。次いで、一方の配向膜PI-1付き電極基板側から、全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造した。
【0183】
液晶セルに電圧を印加した状態で、液晶セルの一方の配向膜PI-1付き電極基板側から波長領域325nm~600nmの光を照射した(第1光照射処理)。印加する電圧は10Vで30Hzの交流とし、照射する光源としては高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製)を用い、365nmの強度で100mW/cm2の光を100秒間照射することで、積算光量が10J/cm2となるように照射した。
【0184】
次いで、液晶セルに電圧を印加しない状態で液晶セルの一方の配向膜PI-1付き電極基板側から波長領域300nm~600nmの光を照射した(第2光照射処理)。照射する光源としては蛍光ランプ(東芝ライテック株式会社製)を用い、365nmの強度で3mW/cm2の光を3600秒間照射することで、積算光量が10.8J/cm2となるように照射した。そして、光照射後の液晶セルに対し、2つの配向膜PI-1付き電極基板の外側表面にそれぞれ偏光板を貼り合わせることにより、液晶表示素子A1を得た。
【0185】
[実施例2-1]
2つの配向膜PI-1付き電極基板に代えて、2つの配向膜PI-2付き電極基板を用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして液晶表示素子B1を得た。
【0186】
[実施例3-1]
2つの配向膜PI-1付き電極基板に代えて、2つの配向膜PI-3付き電極基板を用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして液晶表示素子C1を得た。
【0187】
[実施例4-1]
2つの配向膜PI-1付き電極基板に代えて、2つの配向膜PI-4付き電極基板を用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして液晶表示素子D1を得た。
【0188】
[実施例5-1]
2つの配向膜PI-1付き電極基板に代えて、2つの配向膜PI-5付き電極基板を用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして液晶表示素子E1を得た。
【0189】
[比較例1-1]
2つの配向膜PI-1付き電極基板に代えて、2つの配向膜PI-6付き電極基板を用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして液晶表示素子F1を得た。
【0190】
[実施例1-2]
<重合性液晶組成物Bの調整>
誘電率異方性(Δε)が-2.59である、以下に示す組成の液晶組成物Bを調製した。なお「wt%」は「質量%」を意味する。液晶組成物Bは、ネマチック液晶相の上限温度(Tni)が85.4℃、ネマチック液晶相の下限温度(T→n)が-58℃、屈折率異方性(Δn)が0.090であった。
【0191】
【0192】
得られた液晶組成物B99.7質量%に上記重合性化合物RM-1を0.3質量%混合して、重合性液晶組成物Bを調製した。
【0193】
重合性液晶組成物Aに代えて重合性液晶組成物Bを用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして液晶表示素子A2を得た。
【0194】
[実施例2-2]
2つの配向膜PI-1付き電極基板に代えて、2つの配向膜PI-2付き電極基板を用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして液晶表示素子B2を得た。
【0195】
[実施例3-2]
2つの配向膜PI-1付き電極基板に代えて、2つの配向膜PI-3付き電極基板を用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして液晶表示素子C2を得た。
【0196】
[実施例4-2]
2つの配向膜PI-1付き電極基板に代えて、2つの配向膜PI-4付き電極基板を用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして液晶表示素子D2を得た。
【0197】
[実施例5-2]
2つの配向膜PI-1付き電極基板に代えて、2つの配向膜PI-5付き電極基板を用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして液晶表示素子E2を得た。
【0198】
[比較例1-2]
2つの配向膜PI-1付き電極基板に代えて、2つの配向膜PI-6付き電極基板を用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして液晶表示素子F2を得た。
【0199】
<焼き付きの評価>
作製した液晶表示素子A1~F1、および液晶表示素子A2~F2にそれぞれ電圧を印加し、白(255階調)と黒(0階調)とのハッチパターンを書き込んだ状態で3時間放置し、その後、全面をグレー(32階調)にした場合のハッチパターンの残像を目視評価した。目視評価の結果を表2および3に示す。評価は、残像の残り具合が、目視では視認できない良好なレベルを○と表現し、目視ではっきりと視認できる悪いレベルを×と表現した。また、僅かに目視で確認できるレベル(良品となる下限のレベル)を△と表現した。
【0200】
【0201】
【0202】
上記表2および3に示すように、波長365nmの光吸収率が所定値以上の配向膜PI-1~PI-5を用いた実施例1-1~実施例5-1ならびに実施例1-2~実施例5-2の液晶表示素子は、光(紫外光)照射後においても良好な焼き付き特性を示していることが分かった。これに対し、波長365nmの光吸収率が所定値よりも小さい配向膜PI-6を用いた比較例1-1、比較例1-2の液晶表示素子では、残像が認識され、良好な焼き付き特性を示さなかった。また、実施例2-1~実施例5-1ならびに実施例2-2~実施例5-2の液晶表示素子は、実施例1-1および実施例1-2の液晶表示素子よりも焼き付き評価結果が更に良好であった。これは、実施例2-1~実施例5-1ならびに実施例2-2~実施例5-2では、波長365nmの光吸収率が所定値以上であり、且つ、波長313nmの光吸収率が所定値以上である配向膜PI-2~PI-5を用いたのに対し、実施例1-1および実施例1-2では波長313nmの光吸収率が所定値よりも低い配向膜PI-1を用いたことによるものと推量される。
【符号の説明】
【0203】
1…第2電極基板、2…第1電極基板、10…液晶表示素子、11…第2基板、12…第1基板、13…液晶層、14…第2電極層、15…第1電極層、16…第2配向膜、17…第1配向膜