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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】硬化膜、その製造方法及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20221012BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221012BHJP
   C09D 157/00 20060101ALI20221012BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20221012BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20221012BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20221012BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20221012BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20221012BHJP
【FI】
C08J5/18 CEY
B32B7/023
C09D157/00
C09D4/00
C08F265/06
C08F2/50
C08F2/44 C
C08J7/04 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019142957
(22)【出願日】2019-08-02
(65)【公開番号】P2021024926
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉秀
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/118820(WO,A1)
【文献】特開2007-187746(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131449(WO,A1)
【文献】特表2013-503761(JP,A)
【文献】特開2011-072983(JP,A)
【文献】特開2017-134094(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221593(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;
C08J 5/12-5/22
B32B 1/00-43/00
B29C 59/00-59/18
H01L 21/30
C09D 157/00
C09D 4/00
C08F 265/06
C08F 2/50
C08F 2/44
C08J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、凸条が環状に形成された構造を有し、
前記構造の大きさが、無作為に選んだ前記構造の内側の領域の最大直径の10点平均値として1~300μmであり、
前記凸条がしわ状の凹凸で構成され、
平面視かつ前記凸条の幅方向において、前記凹凸中の凸部と前記凸部に隣接する凹部の中心間距離が0.5~20μmであり、
前記表面の算術平均高さSaが0.01~5μmである、硬化膜。
【請求項2】
前記構造が2つ以上、隣接して配置されている、請求項1に記載の硬化膜。
【請求項3】
平面視において、前記表面の総面積に対する前記凸部の面積の割合が1~40%である、請求項1又は2に記載の硬化膜。
【請求項4】
前記表面の60°鏡面光沢度が60以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化膜。
【請求項5】
防眩膜である、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化膜。
【請求項6】
活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する活性基を有するモノマー(x)に基づく単位と、炭素数4以上のアルキル基を有するモノマー(y)に基づく単位と、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生しないビフェニル構造を有するモノマー(z)に基づく単位とを有する共重合体(A)と、1分子に2つ以上のラジカル重合性基を有する多官能化合物(B)とを含む硬化性組成物の硬化物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化膜。
【請求項7】
活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する活性基を有するモノマー(x)に基づく単位と、炭素数4以上のアルキル基を有するモノマー(y)に基づく単位と、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生しないビフェニル構造を有するモノマー(z)に基づく単位とを有する共重合体(A)と、1分子に2つ以上のラジカル重合性基を有する多官能化合物(B)とを含む硬化性組成物の塗膜を形成し、前記塗膜に活性エネルギー線を照射する、硬化膜の製造方法。
【請求項8】
基材層と、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化膜からなる層とを有する積層体。
【請求項9】
前記基材層に対して前記硬化膜からなる層が存在する側の最表面の60°鏡面光沢度が60以下である、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
ヘイズが20%以上である、請求項8又は9に記載の積層体。
【請求項11】
防眩性フィルムである、請求項8~10のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項12】
さらに、前記基材層と前記硬化膜からなる層との間に設けられたプライマー層、前記硬化膜からなる層の前記基材層側とは反対側の面上に設けられた表面機能層、及び前記基材層の前記硬化膜からなる層側とは反対側の面上に設けられた裏面機能層からなる群から選ばれる1つ以上の層を有する、請求項8~11のいずれか一項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化膜、その製造方法及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
壁紙等の建築建材、ディスプレイ用部材、加飾フィルム等の部材に、艶消し性、光拡散性、凹凸感等を付与し、視認性、意匠性等を向上するために、基材の表面に微細な凹凸を付与することがある。
特許文献1には、建材用化粧シート、冷蔵庫、洗濯機等の家電製品の各種部品、パソコン等のOA製品の各種部品、包装容器等を成型により製造する際の転写箔用フィルムに、ヘアーライン加工、サンドブラスト加工、梨地加工等により微細な凹凸形状を設ける方法が開示されている。
特許文献2には、液晶ディスプレイのバックライトユニットに用いられる光拡散フィルムの表面凹凸の形成方法として、樹脂バインダーにアクリル系粒子を分散させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-231727号公報
【文献】特開平7-218705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の凹凸形成方法では、十分な艶消し性が得られない。また、サンドブラスト加工では、フィルム中に残った砂が品質上の問題となることがある。まだ表面を研磨するため防汚性の付与が困難である。
特許文献2に記載の方法では、アクリル系粒子が使用中に脱落することで、ディスプレイの視認性に支障をきたすことがある。
また、これら従来の方法では、艶消し性と耐擦傷性とを両立することが難しい。例えば艶消し性を高めるために表面の凹凸を大きくすると、耐擦傷性が低下する傾向がある。
【0005】
本発明は、艶消し性及び耐擦傷性に優れる硬化膜及び積層体、並びに艶消し性及び耐擦傷性に優れる硬化膜が得られる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]表面に、凸条が環状に形成された構造を有し、前記凸条がしわ状の凹凸で構成され、
平面視かつ前記凸条の幅方向において、前記凹凸中の凸部と前記凸部に隣接する凹部の中心間距離が0.5~20μmであり、
前記表面の算術平均高さSaが0.01~5μmである、硬化膜。
[2]前記構造が2つ以上、隣接して配置されている、前記[1]の硬化膜。
[3]平面視において、前記表面の総面積に対する前記凸部の面積の割合が1~40%である、前記[1]又は[2]の硬化膜。
[4]前記表面の60°鏡面光沢度が60以下である、前記[1]~[3]のいずれかの硬化膜。
[5]防眩膜である、前記[1]~[4]のいずれかの硬化膜。
[6]活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する活性基を有するモノマー(x)に基づく単位と、炭素数4以上のアルキル基、フッ素原子及びケイ素原子からなる群から選ばれる1種以上を有するモノマー(y)に基づく単位と、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生しない2つ以上の芳香環を含む構造を有するモノマー(z)に基づく単位とを有する共重合体(A)と、1分子に2つ以上のラジカル重合性基を有する多官能化合物(B)とを含む硬化性組成物の硬化物である、前記[1]~[5]のいずれかの硬化膜。
[7]活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する活性基を有するモノマー(x)に基づく単位と、炭素数4以上のアルキル基、フッ素原子及びケイ素原子からなる群から選ばれる1種以上を有するモノマー(y)に基づく単位と、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生しない2つ以上の芳香環を含む構造を有するモノマー(z)に基づく単位とを有する共重合体(A)と、1分子に2つ以上のラジカル重合性基を有する多官能化合物(B)とを含む硬化性組成物の塗膜を形成し、前記塗膜に活性エネルギー線を照射する、硬化膜の製造方法。
[8]基材層と、前記[1]~[6]のいずれかの硬化膜からなる層とを有する積層体。
[9]前記基材層に対して前記硬化膜からなる層が存在する側の最表面の60°鏡面光沢度が60以下である、前記[8]の積層体。
[10]ヘイズが20%以上である、前記[8]又は[9]の積層体。
[11]防眩性フィルムである、前記[8]~[10]のいずれかの積層体。
[12]さらに、前記基材層と前記硬化膜からなる層との間に設けられたプライマー層、前記硬化膜からなる層の前記基材層側とは反対側の面上に設けられた表面機能層、及び前記基材層の前記硬化膜からなる層側とは反対側の面上に設けられた裏面機能層からなる群から選ばれる1つ以上の層を有する、前記[8]~[11]のいずれかに記載の積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の硬化膜は、艶消し性及び耐擦傷性に優れる。
本発明の硬化膜の製造方法によれば、艶消し性及び耐擦傷性に優れる硬化膜が得られる。
本発明の積層体は、艶消し性及び耐擦傷性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1で得た硬化膜の表面形状をVertScan(登録商標)で検出し、2値化により凸部を暗色、凹部を明色で表示した図(スケール:236.87μm×177.60μm)である。
図2】比較例1で得た硬化膜の表面形状をVertScan(登録商標)で検出し、2値化により凸部を暗色、凹部を明色で表示した図(スケール:236.87μm×177.60μm)である。
図3】凹凸中の凸部と凸部に隣接する凹部の中心間距離の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートの総称である。「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの総称である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
〔硬化膜〕
本発明の硬化膜は、表面に、凸条が環状に形成された構造(以下、「環状構造」とも記す。)を有する。図1に示す例では、2つ以上の環状構造が隣接して配置されている。
【0011】
凸条は、しわ状の凹凸で構成されている。しわ状の凹凸は、例えば、図1に示すように、複数の凸部を有する。複数の凸部の少なくとも一部は、環状構造の周方向に沿って形成されており、例えば環状又は環の一部を欠いた形状に形成されている。また、凸条の幅方向(環状構造の径方向)に沿って複数の凸部が配列している。隣り合う凸部同士は、各凸部の間に位置する凹部により連絡されている。
【0012】
平面視かつ凸条の幅方向において、凹凸中の凸部と凸部に隣接する凹部の中心間距離は、0.5~20μm、好ましくは1~15μm、より好ましくは2~10μmである。中心間距離が上記下限値以上であれば、艶消し性がより優れる。中心間距離が上記下限値以下であれば、艶消し性及び耐擦傷性がより優れる。
【0013】
中心間距離の測定方法を、図1図3を参照して説明する。図3は、硬化膜表面の凸条部分を2値化したものを模式的に示す平面図である。図3中、符号1は凸条を示し、符号3は凸部を示し、符号5は凹部を示す。
中心間距離の測定においては、まず、硬化膜の表面から無作為に選択した236.87μm×177.60μmの領域の表面形状を、表面形状計測システム(株式会社日立ハイテクサイエンス製「VertScan(登録商標)」を用いて計測し、凸部と凹部の2つの領域に2値化する。詳しい計測条件及び2値化手順は後述する実施例に記載の通りである。2値化により、図1図3に示すように、凸部3が暗色で表示され、凹部5が明色で表示された画像が得られる。
次いで、図3に示すように、2値化により得た画像において、無作為に選択した凸部3の任意の位置で、凸部3及び凹部5の配列方向(凸条1の幅方向)における凸部3の中心を通る線Lと該凸部3に隣接する凹部5の中心を通る線Lとの間の距離Dを測定する。合計3か所で同様の測定を行い、その平均値を中心間距離とする。
【0014】
凸条を構成する凸部の高さは、環状構造の内側の領域の最大高さよりも高くなっている。
凸条を構成する凸部の高さは、凸部に隣接する凹部の谷底点の高さを基準としたときに、好ましくは0.05~10μm、より好ましくは0.08~5μmである。凸条を構成する凸部の高さが上記下限値以上であれば、艶消し性、耐擦り傷性がより優れる。凸条を構成する凸部の高さが上記上限値以下であれば、耐擦傷性がより優れる。
凸条の高さは、前記した表面形状計測システムにより測定される。
【0015】
環状構造は、平面視において略円形状でもよく略多角形状でもよい。略円形状は、円形状、楕円形状及びそれらの派生形状を含む。略多角形状は、多角形状及びその派生形状を含む。多角形状は、例えば、三角形状~八角形状である。
【0016】
環状構造の大きさは、無作為に選んだ環状構造の内側の領域の最大直径の10点平均値として、好ましくは1~300μm、より好ましくは10~200μmである。環状構造の大きさが上記下限値以上であれば、耐擦傷性がより優れる。環状構造の大きさが上記下限値以下であれば、艶消し性がより優れる。
最大直径は、前記した表面形状計測システムにより測定される。
【0017】
硬化膜の表面の環状構造の数は、1つでもよく2つ以上でもよい。艶消し性及び耐擦傷性の観点では、2つ以上が好ましい。
硬化膜の表面の環状構造の数が2つ以上である場合、2つ以上の環状構造は、離間して配置されていてもよく隣接して配置されていてもよい。艶消し性の観点では、隣接して配置されていることが好ましい。
2つ以上の環状構造の形状及び配置は、規則的でもよく、図1に示すように不規則でもよい。下側に配置される表示素子や柄層の視認性の観点では、不規則であることが好ましい。ここで、形状及び配置が「不規則」であるとは、2つ以上の環状構造の形状及び配置(配列方向、ピッチ等)に一定の規則性及び周期性を有さないことを意味する。
【0018】
平面視において、硬化膜の表面の単位面積当たりの環状構造の数は、好ましくは50~2000個/mm、より好ましくは200~1000個/mmである。環状構造の数が上記下限値以上であれば、艶消し性及び耐擦傷性がより優れる。環状構造の数が上記下限値以下であれば、耐擦傷性がより優れる。
【0019】
平面視において、硬化膜の表面の総面積に対する凸部の面積の割合は、好ましくは1~40%、より好ましくは5~35%、さらに好ましくは10~30%である。凸部の面積の割合が上記下限値以上であれば、艶消し性及び耐擦傷性がより優れる。凸部の面積の割合が上記上限値以下であれば、耐擦傷性がより優れる。
【0020】
凸部の面積の割合の測定方法を、図1を参照して説明する。
凸部の面積の割合の測定においては、まず、硬化膜の表面から無作為に選択した236.87μm×177.60μmの領域の表面形状を、表面形状計測システム(株式会社日立ハイテクサイエンス製「VertScan(登録商標)」を用いて計測し、凸部と凹部の2つの領域に2値化する。詳しい計測条件及び2値化手順は後述する実施例に記載の通りである。2値化により、図1に示すように、凸部が暗色で表示され、凹部が明色で表示された画像が得られる。
次いで、2値化により得た画像において、当該画像の総面積に対する凸部(暗色部分)の合計面積の割合を算出する。
【0021】
硬化膜の表面の算術平均高さSaは、0.01~5μm、好ましくは0.05~4μm、より好ましくは0.l~3μmである。Saが上記範囲の下限値以上であれば、艶消し性及び耐擦傷性に優れる。Saが上記上限値以下であれば、耐擦傷性に優れる。
Saは、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0022】
硬化物の表面の60°鏡面光沢度(60°グロス)は、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは40以下である。60°鏡面光沢度が上記下限値以上であれば、艶消し性がより優れる。
60°鏡面光沢度は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0023】
硬化膜の表面の水接触角は、好ましくは65~130°、より好ましくは80~120°、さらに好ましくは85~115°である。上記範囲の下限値以上であれば、防汚性がより優れ、上限値以下であれば、防汚性の耐久性がより優れる。
硬化膜の表面の水接触角は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0024】
硬化膜は、後述する実施例に記載の方法により測定される鉛筆硬度が、Fより硬いことが好ましく、2Hより硬いことがより好ましい。
【0025】
硬化膜の厚みは、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.2~10μm、さらに好ましくは0.3~7μmの範囲である。硬化膜の厚みが上記範囲内であれば、所望の艶消し性を実現しやすい。
硬化膜の厚みは、硬化膜の最大厚みを示し、電子顕微鏡による断面観察により求められる。
【0026】
本発明の硬化膜の一例として、以下の硬化性組成物の硬化物からなるものが挙げられる。
活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する活性基を有するモノマー(x)に基づく単位と、炭素数4以上のアルキル基、フッ素原子及びケイ素原子からなる群から選ばれる1種以上を有するモノマー(y)に基づく単位と、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生しない2つ以上の芳香環を含む構造を有するモノマー(z)に基づく単位とを有する共重合体(A)と、1分子に2つ以上のラジカル重合性基を有する多官能化合物(B)とを含む硬化性組成物。
硬化性組成物及びこれを用いた硬化膜の製造方法については後で詳しく説明する。
【0027】
本発明の硬化膜は、艶消し性に優れることから、防眩膜として好適である。
【0028】
〔硬化膜の製造方法〕
本発明の硬化膜の製造方法は、以下の硬化性組成物の塗膜を形成し、前記塗膜に活性エネルギー線を照射する方法である。
【0029】
(硬化性組成物)
硬化性組成物は、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する活性基(以下、単に「活性基」とも記す。)を有するモノマー(x)に基づく単位と、炭素数4以上のアルキル基、フッ素原子及びケイ素原子からなる群から選ばれる1種以上を有するモノマー(y)に基づく単位と、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生しない2つ以上の芳香環を含む構造を有するモノマー(z)に基づく単位とを有する共重合体(A)と、1分子に2つ以上のラジカル重合性基を有する多官能化合物(B)とを含む。
【0030】
硬化性組成物に活性エネルギー線を照射すると、共重合体(A)の活性基からラジカルが発生し、発生したラジカルを起点として、多官能化合物(B)のラジカル重合性基同士の反応が進行し、硬化性組成物全体が硬化する。
硬化性組成物の塗膜を形成し、この塗膜に活性エネルギー線を照射すると、塗膜の表面側が先に硬化して硬化被膜が形成される。その後、塗膜の内部を硬化すると、表面側の硬化塗膜が座屈することで、表面にしわ状の凹凸を有する硬化膜が形成される。
硬化性組成物は、必要に応じて、単官能化合物をさらに含むことができる。
硬化性組成物は、必要に応じて、有機溶剤をさらに含むことができる。
硬化性組成物は、必要に応じて、光重合開始剤をさらに含むことができる。
硬化性組成物は、必要に応じて、上記以外の他の成分をさらに含むことができる。
【0031】
<共重合体(A)>
[モノマー(x)]
モノマー(x)としては、活性基とラジカル重合性基とを有する化合物が挙げられる。
活性基としては、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する構造(光重合開始性を有する構造)を持つものであればよい。光重合開始性を有する構造としては、公知の種々の構造を採用でき、例えば水素引き抜き型、電子移動型、分子内開裂型が挙げられる。
活性基の具体例としては、ベンゾフェノン基、アセトフェノン基、ベンゾイン基、α-ヒドロキシケトン基(例えば、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノンの「2-ヒドロキシエトキシ中の水酸基」から水素原子を1つ除いた基)、α-アミノケトン基、α-ジケトン基、α-ジケトンジアルキルアセタール基、アントラキノン基、チオキサントン基、ホスフィンオキシド基等が挙げられる。これらの中でも、硬化時に酸素阻害を受けにくく、凹凸層を形成する際の表面硬化性が良好となる点で、ベンゾフェノン基、アセトフェノン基、α-ヒドロキシケトン基が好ましい。
【0032】
モノマー(x)のラジカル重合性基としては、ラジカル重合性不飽和結合(炭素-炭素二重結合等)を含む官能基が挙げられ、具体例としては(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
活性基を有するモノマーとしては、共重合体(A)の合成のしやすさ、活性基の導入量の調整のしやすさの観点から、活性基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
活性基を有するモノマーとしては、例えば、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)フェノキシ]エチルメタクリレートが挙げられる。
【0033】
[モノマー(y)]
モノマー(y)としては、炭素数4以上のアルキル基、フッ素原子及びケイ素原子からなる群から選ばれる1種以上とラジカル重合性基とを有する化合物が挙げられる。ラジカル重合性基は上記と同様である。
【0034】
共重合体(A)がモノマー(y)に基づく単位を有していれば、硬化性組成物の塗膜を形成したときに、共重合体(A)が塗膜の表面側に偏析しやすくなる。
共重合体(A)が塗膜の表面側に偏析することで、塗膜表面側の活性基の濃度が高くなり、活性エネルギー線を照射したときに、塗膜の表面側が先に硬化して硬化被膜が形成され、その後、塗膜の内部が硬化する。塗膜の内部が硬化することによって、表面の硬化被膜が座屈することでしわ状の凹凸が発現する。
このとき、塗膜の内部の硬化時間が短いほど、凹凸層表面の凹凸の周期が小さくなり、硬化時間が長いほど、凹凸層表面の凹凸の周期が大きくなる傾向がある。この硬化時間は、硬化性組成物中のラジカル重合性基の量、活性基の量(共重合体(A)及び光重合開始剤の量)、活性エネルギー線の照射量等により調整できる。
また、共重合体(A)が塗膜の表面側に偏析すれば、塗膜の内部(基材層側)での硬化反応が酸素阻害を受けにくくなり、低露光量で硬化することができ、酸素阻害を受けやすい傾向のある薄膜でも良好に硬化することができる。
さらに、モノマー(y)がフッ素原子又はケイ素原子を有していれば、硬化物に撥水性及び撥油性の少なくとも一方を付与でき、硬化物の防汚性に寄与する。
【0035】
モノマー(y)は、炭素数4以上のアルキル基とラジカル重合性基とを有する化合物、フルオロアルキル基とラジカル重合性基とを有する化合物、及びポリジメチルシロキサン鎖とラジカル重合性基とを有する化合物からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
モノマー(y)は、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及びポリジメチルシロキサン鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。これらの(メタ)アクリル酸エステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
炭素数4以上のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。環状のアルキル基は、単環式でも多環式でもよい。共重合体(A)をより効果的に塗膜の表面に偏析させる観点から、アルキル基は直鎖状であることが好ましい。
炭素数4以上のアルキル基の炭素数は、共重合体(A)をより効果的に塗膜の表面に偏析させる観点から、好ましくは4~30の範囲、より好ましくは6~20の範囲、さらに好ましくは12~18の範囲である。
【0037】
炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、直鎖状の炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。直鎖状の炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が上述の好ましい範囲にあるものが好ましく、製造のしやすさ等も考慮すると、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートがより好ましく、ステアリル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0038】
フルオロアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルは、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。パーフルオロアルキル基の炭素数は4以上が好ましい。
【0039】
ポリジメチルシロキサン鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、分子量が500~50000の片末端(メタ)アクリロイル基置換ポリジメチルシロキサンが挙げられる。前記分子量は1000~30000が好ましく、1500~20000がより好ましい。
【0040】
[モノマー(z)]
モノマー(z)としては、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生しない2つ以上の芳香環を含む構造(以下、「芳香族多環構造」とも記す。)とラジカル重合性基とを有する化合物が挙げられる。芳香族多環構造としては、活性基に該当せず、2つ以上の芳香環を含むものであればよく、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]フェナントレン、ピレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ペリレン、フルオレン等の縮合環構造、ビフェニル構造、ビスフェノール構造等が挙げられる。ラジカル重合性基は上記と同様である。
【0041】
共重合体(A)がモノマー(z)に基づく単位を有していれば、硬化性組成物の塗膜に活性エネルギー線を照射して硬化させたときに、前記した環状構造が形成されやすい。
前記したように共重合体(A)が塗膜表面に偏析することで、芳香族多環構造が塗膜表面側に存在する。塗膜の表面側を硬化させた後に塗膜の内側を硬化する際に、芳香族多環構造同士のΠ-Πスタッキング相互作用により、表面側(硬化被膜)の座屈が部分的に抑制される。結果、座屈が抑制されなかった部分が環状構造となり、座屈が抑制された部分が環状構造の内側の領域になると推定される。
【0042】
モノマー(z)としては、共重合体(A)の合成のしやすさ、芳香族多環構造の導入量の調整のしやすさの観点から、芳香族多環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
芳香族多環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレンオキサイド(EO)変性-о-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ビフェニルメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-о-フェニルフェノールプロピル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレートが挙げられる。EO変性-о-フェニルフェノール(メタ)アクリレートにおけるEO付加モル数は、例えば1~5である。
【0043】
[モノマー(h)]
共重合体(A)は、必要に応じて、水素供与性官能基を有するモノマー(h)に基づく単位をさらに有していてもよい。
特に、モノマー(x)が水素引き抜き型の活性基を有する場合には、モノマー(h)に基づく単位を含むことが好ましい。共重合体(A)がこの単位を有していれば、硬化性組成物の塗膜の表面からの硬化を効果的に行い、凹凸を形成しやすくすることができる。
水素供与性官能基としては、水酸基、アミノ基、メルカプト基、アミド基等が挙げられる。これらの中でも、特に効率的に硬化反応を進められ、凹凸を形成しやすくなるという観点から、水酸基、アミノ基又はアミド基が好ましい。
【0044】
水素供与性官能基を有するモノマーとしては、水素供与性官能基とラジカル重合性基とを有する化合物が挙げられ、化合物の合成のしやすさと水素供与性官能基の導入量の調整のしやすさの観点から、水素供与性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリルアミド類が好ましい。
水素供与性官能基を有するモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネート等の水酸基含有モノマー;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-[(ブチルアミノ)カルボニル]オキシ]エチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルアセトアミド等のアミノ基又はアミド基含有モノマー等が挙げられる。これらの中でも、活性基との併用において硬化促進効果に優れる点で、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましく、凹凸を大きくしやすいという点で、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。これらの化合物は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0045】
共重合体(A)は、必要に応じて、上記以外の他のモノマーに基づく単位をさらに有していてもよい。他のモノマーとしては、例えば、ラジカル重合性基を有し、活性基、炭素数4以上のアルキル基、フッ素原子、ケイ素原子、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生しない2つ以上の芳香環を含む構造及び水素供与性官能基を有さない化合物が挙げられる。
他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等のカルボキシル基含有モノマー及びそれらの塩;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル等の窒素含有モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等のスチレン系化合物、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル;燐含有ビニル系モノマー;塩化ビニル、塩化ビリデン等のハロゲン化ビニル;ブタジエン等の共役ジエンが挙げられる。
【0046】
活性基は、共重合体(A)の主鎖の末端に存在してもよく、共重合体(A)を構成する単量体に基づく単位中に存在してもよい。
共重合体(A)は、分子中に複数個の活性基を有することが好ましい。これにより、塗膜表面付近の活性基の濃度を高くすることができ、硬化後の表面にしわ状構造等の凹凸を発現しやすくできる。
共重合体(A)の1g当たりの活性基の含有量は、好ましくは0.1~3.5mmol/g、より好ましくは0.5~2.5mmol/g、さらに好ましくは0.8~2.0mmol/gの範囲である。活性基の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、より効果的に環状構造を形成できる。上限値以下であれば、硬化性組成物の硬化性がより優れる。
【0047】
共重合体(A)を構成する全単位の合計質量に対する、モノマー(x)に基づく単位の割合は、好ましくは1~90質量%、より好ましくは10~80質量%、さらに好ましくは20~70質量%、特に好ましくは30~60質量%の範囲である。モノマー(x)に基づく単位の割合が上記範囲の下限値以上であれば、硬化性がより優れ、より効果的に凹凸を形成できる。上限値以下であれば、硬化性組成物の貯蔵安定性がより優れる。
【0048】
共重合体(A)を構成する全単位の合計質量に対する、モノマー(y)に基づく単位の割合は、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~60質量%、さらに好ましくは15~50質量%の範囲である。モノマー(y)に基づく単位の割合が上記範囲の下限値以上であるとより効果的に凹凸を形成できる。上限値以下であれば、共重合体(A)と多官能化合物(B)との相溶性により優れる。
【0049】
共重合体(A)を構成する全単位の合計質量に対する、モノマー(z)に基づく単位の割合は、好ましくは10~80質量%、より好ましくは15~70質量%、さらに好ましくは20~60質量%、特に好ましくは25~50質量%の範囲である。モノマー(z)に基づく単位の割合が上記範囲の下限値以上であれば、より効果的に環状構造を形成できる。モノマー(z)に基づく単位の割合が上記範囲の上限値以下であれば、硬化性組成物の硬化性がより優れる。
【0050】
共重合体(A)を構成する全単位の合計質量に対する、モノマー(h)に基づく単位の割合は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは1~60質量%、さらに好ましくは3~50質量%、特に好ましくは5~40質量%の範囲である。モノマー(h)に基づく単位の割合が上記範囲内であれば、より効果的に凹凸を形成できる。
【0051】
共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000、より好ましくは2,000~100,000、さらに好ましくは3,000~60,000の範囲である。Mwが上記範囲の下限値以上であれば、より効果的に環状構造を形成できる。上限値以下であれば、硬化膜製造時の作業性が良好である。
共重合体(A)のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。詳しい測定条件は後述する実施例に記載のとおりである。
【0052】
共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-30~180℃、より好ましくは0~150℃、さらに好ましくは25~100℃の範囲である。Tgが上記範囲の下限値以上であれば、硬化性組成物の硬化性がより優れる。上限値以下であれば、共重合体(A)と多官能化合物(B)との相溶性により優れる。
共重合体(A)のTgは、以下の式(Foxの式による共重合体のTg(℃)の関係式)で算出される。
1/(273+Tg)=Σ{W/(273+Tg)}
:モノマーiの質量分率
Tg:モノマーiの単独重合体のTg(℃)
尚、単独重合体のTgは、「ポリマーハンドブック 第4版 John Wiley & Sons著」に記載の数値を用いた値である。
【0053】
共重合体(A)は、例えば、モノマー(x)とモノマー(y)とモノマー(z)とを含むモノマー成分を重合することで得られる。モノマー成分は、必要に応じて、モノマー(h)及び他のモノマーのいずれか1以上をさらに含んでいてもよい。
重合は、典型的には、重合開始剤の存在下で行う。重合の際、必要に応じて、連鎖移動剤を併用してもよい。
重合方法としては、溶液重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の公知の方法が挙げられ、その中でも操作が簡便で生産性が高い点で、溶液重合が好ましい。
【0054】
<多官能化合物(B)>
多官能化合物(B)としては、1分子に2つ以上のラジカル重合性基を有するものであればよく、公知の各種の化合物を用いることができる。多官能(メタ)アクリレートが好ましい。多官能化合物(B)は1種を単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0055】
二官能の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタンアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0057】
<単官能化合物>
硬化性組成物は、粘度の調整や活性エネルギー線による硬化速度の調整のため、1分子中に1つのラジカル重合性基を有する単官能化合物を含有することができる。
単官能化合物としては、単官能(メタ)アクリレートが好ましい。
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、クレゾール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリウレタンモノ(メタ)アクリレート、ポリエポキシモノ(メタ)アクリレート、ポリエステルモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
<有機溶剤>
有機溶剤は、硬化性組成物を基材等の面上に塗布する際の作業性を向上する目的で、必要に応じて用いられる。
有機溶剤としてはトルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらの有機溶剤のうち、塗布における作業性を向上させやすい点で、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤及びケトン系溶剤が好ましい。
【0059】
<光重合開始剤>
硬化性組成物は、さらに光重合開始剤(共重合体(A)を除く)(以下、「光重合開始剤(C)」とも記す。)の1種以上を含んでもよい。
例えば、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する活性基を有する非重合体である光重合開始剤(C)が挙げられる。光重合開始剤(C)の分子量は1000以下が好ましい。具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジフェニルジスルフィド、ジベンジル、ジアセチル、アントラキノン、ナフトキノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、p,p’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ピバロインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1-ジクロロアセトフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、フェニルグリオキシレート、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、ジベンゾスパロン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、トリブロモフェニルスルホン、トリブロモメチルフェニルスルホン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0060】
<その他の成分>
硬化性組成物は、硬化物外観を向上させるため、レベリング剤をさらに含有することができる。
レベリング剤としては、アクリル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤等が挙げられる。これらのレベリング剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0061】
硬化性組成物は、凹凸層による艶消し性をさらに向上させるため、平均一次粒子径が0.01μm以上10μm以下の粒子(D)をさらに含有することができる。
粒子(D)は、有機粒子でも無機粒子でもよく、2種以上を併用してもよい。無機粒子は(メタ)アクリロイル基等の反応性基を有するシランカップリング剤で表面修飾された粒子であってもよい。
表面修飾された粒子は、例えば、シランカップリング剤と無機粒子とを、酸や塩基、アセチルアセトンアルミニウム等のシランカップリング反応触媒の存在下に25℃~120℃で1時間~24時間程度反応させる方法で得られる。
【0062】
硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、チオール基を含有する化合物等の重合促進剤、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含有していてもよい。
【0063】
硬化性組成物中の共重合体(A)の含有量は、硬化性組成物の不揮発分100g当たりの共重合体(A)由来の活性基の含有量が、0.1~20mmol/100g、より好ましくは0.5~15mmol/100g、さらに好ましくは1~12mmol/100g、特に好ましくは1.5~10mmol/100gの範囲となる量である。活性基の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、硬化性がより優れ、より効果的に凹凸を形成でき、艶消し性がより優れる。上限値以下であれば、環状の凹凸構造を形成しやすくなる。
【0064】
硬化性組成物の不揮発分に対する共重合体(A)の割合は、好ましくは0.5~50質量%、より好ましくは1~20質量%、さらに好ましくは1.5~5質量%の範囲である。上記範囲の下限値以上であれば、硬化性がより優れる。また防汚性がより優れる。上限値以下であれば、より効果的に凹凸を形成できる。
硬化性組成物の不揮発分とは、有機溶剤以外の成分の合計質量である。硬化性組成物の不揮発分は、従来公知の方法で測定することができ、例えば、1gの組成物を広げて、100℃で1時間加熱することで有機溶剤を揮発させたときの重さの変化により測定される。
【0065】
硬化性組成物の不揮発分に対する多官能化合物(B)の割合は、好ましくは50~99.5質量%、より好ましくは70~99質量%、さらに好ましくは80~98.5質量%の範囲である。上記範囲の下限値以上であれば、硬化性がより優れる。上限値以下であれば、より効果的に凹凸を形成できる。
【0066】
硬化性組成物の不揮発分100質量部に対する有機溶剤の含有量は、塗布操作における操作性の向上の観点から、10~1900質量部が好ましく、40~400質量部がより好ましい。
【0067】
硬化性組成物の不揮発分に対する光重合開始剤(C)の割合は、15質量%未満が好ましく、10質量%未満がより好ましく、5質量%未満がさらに好ましく、0質量%であってもよい。上記範囲の下限値以上であれば、硬化性がより優れる。上限値以下であれば、艶消し性に優れる凹凸が形成されやすい。
【0068】
硬化性組成物に粒子(D)を含有させる場合、硬化性組成物の不揮発分に対する粒子(D)の割合は、0.01~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~10質量%未満がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であれば、耐擦傷性がより優れる。上限値以下であれば、透明性がより優れる。
【0069】
(塗膜の形成)
硬化性組成物の塗膜は、例えば、硬化性組成物を基材又は物品の面上に塗布し、必要に応じて乾燥する方法により形成できる。
【0070】
硬化性組成物の塗布方法は特に限定されない。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スピンコート法、ローラーコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート等の公知の方法により塗布することができる。
【0071】
硬化性組成物が有機溶剤を含む場合、活性エネルギー線を照射する前に予め加熱乾燥することが好ましい。予め加熱乾燥することにより、塗膜中の有機溶剤を効果的に除去することができる。共重合体(A)が塗膜の表面側に偏析する場合には、有機溶剤を除去することで、塗膜表面側の共重合体(A)の濃度が高くなり、硬化物の表面にしわ状の凹凸が発現しやすくなる。
加熱乾燥の乾燥温度は、30℃以上200℃以下が好ましく、40℃以上150℃以下がより好ましい。乾燥時間は、0.01分以上30分以下が好ましく、0.1分以上10分以下がより好ましい。
【0072】
(活性エネルギー線の照射)
活性エネルギー線としては、紫外線、α線、β線、γ線等が挙げられる。その中でも紫外線が好ましい。
活性エネルギー線の照射量は、照射する活性エネルギー線に応じて適宜選定できる。
紫外線を用いる場合、照射の積算光量が100mJ/cm以上3000mJ/cm以下となるよう照射することが好ましく、200mJ/cm以上2000mJ/cm以下がより好ましい。また、照度としては、50mW/cm以上600mW/cm以下が好ましく、75mW/cm以上450mW/cm以下がより好ましく、100mW/cm以上300mW/cm以下がさらに好ましい。光源としては、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、又は走査型、カーテン型電子線加速路による電子線等高圧水銀灯、超高圧水銀灯等、低圧水銀灯等を用いることができる。
【0073】
〔積層体〕
本発明の積層体(以下、「本積層体」とも記す。)は、基材層と、本発明の硬化膜からなる層(以下、「凹凸層」とも記す。)を有する。
本積層体はさらに、前記基材層と前記凹凸層との間に設けられたプライマー層、前記凹凸層の前記基材層側とは反対側の面上に設けられた表面機能層、及び前記基材層の前記凹凸層側とは反対側の面上に設けられた裏面機能層からなる群から選ばれる1つ以上の層を有してもよい。
【0074】
本積層体のヘイズ(haze)は、通常0.5%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、特に好ましくは20%以上、最も好ましくは30%以上の範囲であり、上限としては、例えば99%である。ヘイズが上記下限値以上であれば、艶消し性を良好なものとしやすい。
ヘイズは後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0075】
本積層体は透明性を有することが好ましい。本積層体の全光線透過率は、好ましくは40~100%、より好ましくは60~99%、さらに好ましくは80~98%の範囲である。上記範囲の下限値以上であれば、透明性に優れ、上限値以下であれば、艶消し性に優れる。
全光線透過率は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0076】
本積層体の、基材層に対して凹凸層が存在する側の最表面の60°鏡面光沢度(60°グロス)は、好ましくは60以下、より好ましくは50未満、さらに好ましくは20未満である。上記上限値以下であると艶消し性に優れる。
60°グロスは後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0077】
(基材層)
基材層としては、公知のものを使用でき、例えば樹脂基材、金属基材、紙基材が挙げられる。これらの中では、加工性の観点から、樹脂基材が好ましい。
樹脂基材は、単層構成であっても2層以上の多層構成であってもよく、特に限定されるものではない。樹脂基材を2層以上の多層構成とし、それぞれの層に特徴を持たせ、多機能化を図ることが好ましい。
【0078】
樹脂基材としては、各種の樹脂フィルム(シート)を使用でき、例えばポリエステルフィルム、ポリ(メタ)アクリレートフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ナイロンフィルム等が挙げられる。
本積層体をディスプレイ用途へ展開する場合には、ポリエステルフィルム、ポリ(メタ)アクリレートフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロースフィルムが好ましい。これらの中でも、アンチグレア用途においては、ポリエステルフィルム、ポリ(メタ)アクリレートフィルム、ポリオレフィンフィルムが好ましく、さらに透明性や成形性、汎用性を考慮すると、ポリエステルフィルムがより好ましい。
ポリエステルフィルムは、無延伸フィルムであっても延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムが好ましい。中でも、一軸方向に延伸された一軸延伸フィルム、又は二軸方向に延伸された二軸延伸フィルムが好ましく、力学特性のバランスや平面性に優れる観点から、二軸延伸フィルムがより好ましい。
【0079】
基材層として用いられうるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。
ホモポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られたものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコールはそれぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸等が挙げられる。グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。ジカルボン酸成分、グリコール成分はそれぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが例示される。
【0080】
ポリエステルフィルムとしては、機械的強度や耐熱性を考慮すると、前記の中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートから形成されたフィルムがより好ましく、製造のしやすさ、表面保護フィルム等の用途としての取扱い性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートから形成されたフィルムがより好ましい。
【0081】
基材層として用いられうるポリ(メタ)アクリレートフィルムを構成するポリ(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリレートに基づく単位を有するものであればよく、各種のアクリル樹脂を使用することができる。(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数が1~4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、より炭素数が多いアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ポリ(メタ)アクリレートは、透明性、加工性、耐薬品性を考慮すると、炭素数が1~4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに基づく単位を主成分とすることが好ましく、メチル(メタ)アクリレートに基づく単位及びエチル(メタ)アクリレートに基づく単位からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とすることがより好ましく、メチル(メタ)アクリレートに基づく単位を主成分とすることが特に好ましい。
ポリ(メタ)アクリレートに、アルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートに基づく単位や、その他の単量体に基づく単位を含有させて柔軟性等の特性を付与することも可能である。
ポリ(メタ)アクリレートの総質量に対する炭素数が1~4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに基づく単位の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
【0082】
基材層は、易滑性の付与、各工程での傷発生防止、耐ブロッキング特性の向上を目的として、粒子を含むことができる。
粒子の種類は、目的に応じて適宜選定でき、特に限定されない。具体例としては、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、基材層がポリエステルフィルムを含む場合、ポリエステル製造工程で触媒等の金属化合物の一部を析出させた析出粒子を用いることもできる。これらの中でも特に少量で効果が出やすいという点で、シリカ粒子や炭酸カルシウム粒子が好ましい。
粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。
これらの粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0083】
粒子の平均粒径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは0.01~5μm、さらに好ましくは0.01~3μmの範囲である。平均粒径が10μm以下であれば、基材層の透明性の低下が生じにくい。
粒子の平均粒径は、動的光散乱式粒度分布測定装置により測定される等価球形分布における積算(個数基準)50%の値である。
【0084】
基材層が粒子を含む場合、基材層中の粒子の含有量は、粒子の平均粒径との兼ね合いもあるので一概にはいえないが、基材層中の粒子を含有する層の総質量に対し、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.0003~3質量%の範囲、さらに好ましくは0.0005~1質量%の範囲である。粒子の含有量が5質量%以下であれば、粒子の脱落や基材層の透明性の低下等が生じにくい。
【0085】
基材層は、必要に応じて、上述の粒子以外の添加剤を含むことができる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等の公知の添加剤を用いることができる。
【0086】
基材層の厚みは、製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは2~350μm、より好ましくは5~250μm、さらに好ましくは10~100μmの範囲である。
【0087】
(プライマー層)
プライマー層は、基材層と凹凸層との間に各種の機能を付与するために設けられる。
プライマー層としては、密着向上層、帯電防止層等が挙げられる。
プライマー層は、複数の機能を有していてもよい。例えば密着向上層が帯電防止層を兼ねていてもよい。
【0088】
好ましい一態様において、プライマー層は密着向上層である。基材層と凹凸層との密着性が不十分であると、用途によっては積層体を使用できない場合がある。密着向上層を有することで、基材層と凹凸層との密着性が向上し、積層体を種々の用途に使用できる。
プライマー層が密着向上層である場合、プライマー層は、基材層と凹凸層との密着性向上等の観点から、樹脂及び架橋剤由来の化合物のいずれか一方又は両方を含有することが好ましい。
【0089】
好ましい他の一態様において、プライマー層は帯電防止層である。プライマー層が帯電防止層であれば、積層体の最表面、特に基材層に対して凹凸層が存在する側の最表面に対する、剥離帯電や摩擦帯電による塵埃等の付着を軽減できる。
プライマー層を帯電防止層とするには、例えば、プライマー層に帯電防止剤を含有させればよい。
【0090】
樹脂としては、従来公知の樹脂を使用することができる。樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル樹脂(ポリビニルアルコール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等)等が挙げられる。その中でも、密着性能やコーティング性を考慮すると、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。
基材層が樹脂フィルムである場合、基材層の樹脂としては、プライマー層と基材層との親和性の観点から、樹脂フィルムの樹脂と同種の樹脂が好ましい。例えば基材層がポリエステルフィルムの場合には、プライマー層はポリエステル樹脂を含有することが好ましい。基材層がポリ(メタ)アクリレートフィルムの場合には、プライマー層はアクリル樹脂を含有することが好ましい。
【0091】
ポリエステル樹脂としては、主な構成成分が多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。
多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸及び、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、トリメリット酸モノカリウム塩及びそれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、p-キシリレングリコール、ビスフェノールA-エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウム等が挙げられる。
これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
【0092】
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル系モノマーを含む重合性モノマーの重合体である。
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系モノマーの単独重合体及び共重合体、(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル系モノマー以外の重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。
アクリル樹脂は、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体であってもよい。このような共重合体は、例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。又は、ポリエステルの溶液又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様に、ポリウレタンの溶液又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様に、他のポリマーの溶液又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
【0093】
上記重合性モノマーとしては、特に限定されないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等のカルボキシル基含有モノマー及びそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネート等の水酸基含有モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等の窒素含有モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等のスチレン系化合物、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の珪素含有モノマー;燐含有ビニル系モノマー;塩化ビニル、塩化ビリデン等のハロゲン化ビニル;ブタジエン等の共役ジエンが挙げられる。
【0094】
ウレタン樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物のことであり、典型的には、ポリオールとポリイソシアネートとの反応により合成される。ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよい。
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0095】
ポリカーボネートポリオールは、多価アルコールとカーボネート化合物との反応(脱アルコール反応)により得られる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
【0096】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0097】
ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸又はその酸無水物と、多価アルコールとの反応により得られるもの、ポリカプロラクトン等のラクトン化合物の誘導体ユニットを有するもの等が挙げられる。
多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等が挙げられる。
【0098】
ポリオールとしては、密着性能を考慮すると、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールが特に好ましい。
【0099】
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0100】
鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基又はアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコール等のグリコール化合物が挙げられる。
アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル-4,4’-ジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0101】
ウレタン樹脂は、典型的には、分散液又は溶液の形態で使用される。分散液又は溶液の媒体としては、溶剤であってもよいが、水が好ましい。
ウレタン樹脂の水分散液又は水溶液としては、乳化剤を用いた強制乳化型、ウレタン樹脂の構造中に親水性基を導入した自己乳化型又は水溶型等がある。特に、ウレタン樹脂の構造中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化型が、液の貯蔵安定性や、得られるプライマー層の耐水性、透明性に優れており好ましい。
【0102】
ウレタン樹脂の構造中に導入されるイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、第4級アンモニウム塩基等、種々のものが挙げられるが、カルボキシル基が好ましい。
カルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等の中和剤で中和した塩の形にするのが好ましい。特に好ましい中和剤は、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。中和剤で中和されたカルボキシル基を有するウレタン樹脂は、塗布後の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を、架橋剤による架橋反応点として用いることが出来る。これにより、コーティング前の液の状態での安定性に優れる上、得られるプライマー層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等をさらに改善することが可能となる。
【0103】
ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤等の一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法がある。特に、カルボキシル基含有ジオールを用い、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。例えば、ウレタン樹脂の合成に用いるポリオールに対してカルボキシル基含有ジオールを共重合させることができる。
カルボキシル基含有ジオールとしては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)ブタン酸、それらのカルボキシル基が中和剤で中和された塩等が挙げられる。
【0104】
プライマー層は、プライマー層をより強固にして密着性等の性能を向上させるため、架橋剤由来の化合物を含有することが好ましい。
架橋剤としては、公知の材料を使用することができ、例えば、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物、ヒドラジド化合物、アジリジン化合物等が挙げられる。それらの中でも、メラミン化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物が好ましく、密着性及び耐久性をさらに向上させる観点からは、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物やエポキシ化合物がより好ましく、オキサゾリン化合物やイソシアネート系化合物が特に好ましい。これらの架橋剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上を併用することでさらに密着性や耐久性が向上して良好となる場合もある。
【0105】
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的又は完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。メラミン化合物としては、単量体、又は2量体以上の多量体のいずれであってもよく、又はこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
メラミン化合物としては、各種化合物との反応性を考慮すると、水酸基を有するものが好ましい。
【0106】
イソシアネート系化合物とは、イソシアネート、又はブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。
イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等が挙げられる。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避ける観点から、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネート又は脂環族イソシアネートがより好ましい。
【0107】
ブロックイソシアネートとしては、上記イソシアネート系化合物のイソシアネート基がブロック剤でブロックされたものが挙げられる。ブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノール等のフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、イソブタノイル酢酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン系化合物、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム等のラクタム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミン等のアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミド等の酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系化合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ブロックイソシアネートとしては、プライマー層が破壊されにくいという観点から、活性メチレン系化合物によりブロックされたイソシアネートが好ましい。
【0108】
イソシアネート系化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート系化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂との混合物や結合物を用いることが好ましい。
【0109】
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物である。
オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を含有する重合体が好ましい。オキサゾリン基を含有する重合体は、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独又は他のモノマーとの重合によって得られる。
付加重合性オキサゾリン基含有モノマーとしては、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが、工業的にも入手しやすく好適である。
他のモノマーとしては、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はなく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β-不飽和モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、等のα,β-不飽和芳香族モノマー等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0110】
オキサゾリン化合物1g当たりのオキサゾリン基量は、好ましくは0.5~10mmol/g、より好ましくは1~9mmol/g、さらに好ましくは3~8mmol/g、特に好ましくは4~6mmol/gの範囲である。オキサゾリン基量が上記範囲内であれば、塗膜の耐久性が向上し、密着性の調整がしやすくなる。
【0111】
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物である。
エポキシ化合物としては、例えば、エピクロロヒドリンと水酸基又はアミノ基を有する化合物(エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等)との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルが挙げられる。ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルが挙げられる。グリシジルアミン化合物としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサンが挙げられる。
【0112】
カルボジイミド系化合物とは、分子内にカルボジイミド構造又はカルボジイミド誘導体構造を1つ以上有する化合物である。
カルボジイミド系化合物としては、より良好なプライマー層の強度等のために、分子内にカルボジイミド構造又はカルボジイミド誘導体構造を2つ以上有するポリカルボジイミド系化合物がより好ましい。
【0113】
カルボジイミド系化合物は、公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネートの縮合反応が用いられる。ジイソシアネートとしては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0114】
ポリカルボジイミド系化合物の水溶性や水分散性を向上させるために、本発明の効果を消失させない範囲において、界面活性剤を添加してもよいし、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩等の親水性モノマーを添加してもよい。
【0115】
シランカップリング化合物とは、1つの分子中に有機官能基とアルコキシ基等の加水分解基を有する有機ケイ素化合物である。
シランカップリング化合物としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有化合物、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有化合物、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン等のスチリル基含有化合物、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有化合物、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート基含有化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有化合物等が挙げられる。
【0116】
シランカップリング化合物としては、上記化合物の中でも、プライマー層の強度の観点から、エポキシ基含有シランカップリング化合物、ビニル基や(メタ)アクリル基等の二重結合含有シランカップリング化合物、アミノ基含有シランカップリング化合物がより好ましい。
【0117】
なお、これら架橋剤は、乾燥過程や製膜過程において反応し、プライマー層の性能を向上させる。形成されるプライマー層中には、架橋剤由来の化合物として、架橋剤の未反応物、反応後の化合物、又はそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
【0118】
プライマー層に含有させる帯電防止剤としては、特に制限はなく、公知の帯電防止剤を使用することが可能であり、例えば、アンモニウム基を有する化合物、ポリエーテル化合物、スルホン酸基を有する化合物、ベタイン化合物、導電性有機高分子等が挙げられる。
帯電防止剤としては、耐熱性、耐湿熱性が良好であることから、高分子タイプの帯電防止剤が好ましい。
【0119】
アンモニウム基を有する化合物とは、分子内にアンモニウム基を有する化合物であり、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミンのアンモニウム化物等が挙げられる。
アンモニウム基を有する化合物は、高分子タイプのアンモニウム基を有する化合物であることが好ましい。
高分子タイプのアンモニウム基を有する化合物において、アンモニウム基は、カウンターイオンとしてではなく、高分子の主鎖や側鎖中に組み込まれていることが好ましい。このような化合物としては、例えば、アンモニウム基又はアミン等のアンモニウム基の前駆体基を有する付加重合性のモノマーを重合し、必要に応じて、アンモニウム基の前駆体基をアンモニウム基に変換し、アンモニウム基を有する高分子化合物としたものが挙げられる。アンモニウム基又はアンモニウム基の前駆体基を含有する付加重合性のモノマーは、1種を単独で重合してもよいし、2種以上を共重合してもよいし、他のモノマーと共重合してもよい。
【0120】
アンモニウム基を有する化合物として、帯電防止性、耐熱安定性が優れているという点で、ピロリジニウム環を有する化合物も好ましい。
ピロリジニウム環を有する化合物の窒素原子に結合している2つの置換基は、それぞれ独立してアルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシル基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、チオアルコキシ、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、シアノ基、ハロゲンである。また、窒素原子に結合している2つの置換基は化学的に結合していてもよく、2つの置換基が化学的に結合した基としては、例えば、-(CH-(m=2~5の整数)、-CH(CH)CH(CH)-、-CH=CH-CH=CH-、-CH=CH-CH=N-、-CH=CH-N=C-、-CHOCH-、-(CHO(CH-等が挙げられる。
【0121】
ピロリジニウム環を有する化合物は、ピロリジニウム環を有するポリマーであることが好ましい。
ピロリジニウム環を有するポリマーは、例えば、ジアリルアミン誘導体を、ラジカル重合触媒を用いて環化重合させることにより得られる。ジアリルアミン誘導体と重合性のある炭素-炭素不飽和結合を有する化合物を共重合成分としてもよい。重合は、極性溶媒(水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、アセトニトリル等)中で過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、第3級ブチルパーオキサイド等の重合開始剤を用い、公知の方法で実施できるが、これに限定するものではない。
【0122】
上述したアンモニウム基を有する化合物のアンモニウム基の対イオン(カウンターイオン)となるアニオンとしては例えば、ハロゲンイオン、スルホナート、ホスファート、ニトラート、アルキルスルホナート、カルボキシラート等のイオンが挙げられる。
【0123】
アンモニウム基を有する化合物の数平均分子量は、好ましくは1000~500000、より好ましくは2000~350000、さらに好ましくは5000~200000である。数平均分子量が1000以上であれば、塗膜の強度、耐熱安定性がより優れる。数平均分子量が500000以下であれば、プライマー層を形成するための塗布液の粘度が低く、取扱い性や塗布性が良好である。
【0124】
ポリエーテル化合物としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエチレングリコールを側鎖に有するアクリル樹脂等が挙げられる。
【0125】
スルホン酸基を有する化合物において、スルホン酸基は、中和剤で中和されて塩の形態となっていてもよい。スルホン酸基を有する化合物としては、ポリスチレンスルホン酸及びその塩等、分子内に複数のスルホン酸基を有する化合物が好ましい。
【0126】
導電性有機高分子としては、公知の材料を使用することができるが、例えば、ポリチオフェン系、ポリアニリン系、ポリピロール系、ポリアセチレン系、ポリフェニレンサルファイド系等が挙げられる。これらの中でもポリチオフェン系(ポリチオフェン又はポリチオフェン誘導体)が、高い透明性と高い導電性の両立や、着色し難さ、コーティングによる性能の発現が出しやすいため好ましい。ポリチオフェン系の中でもポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)をポリスチレンスルホン酸と複合させた化合物が、導電性能の観点から特に好ましい。
導電性有機高分子は、高い導電性を示し、湿度依存性が少なく、かつ様々な用途展開が期待できるという点において好ましい。
【0127】
プライマー層は、ブロッキングや滑り性改良のために粒子を含有していてもよい。
プライマー層は、本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じて、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。
【0128】
プライマー層100質量%中の樹脂の割合は、例えば5質量%以上、好ましくは10~99質量%、より好ましくは20~95質量%、さらに好ましくは30~90質量%の範囲である。樹脂の割合が上記範囲内であれば、密着性能、プライマー層の外観がより優れる。
【0129】
プライマー層100質量%中の架橋剤由来の化合物の割合は、例えば80質量%以下、好ましくは0.5~65質量%、より好ましくは3~50質量%、さらに好ましくは5~40質量%の範囲である。架橋剤由来の化合物の割合が上記範囲内であれば、密着性能、プライマー層の強度がより優れる。
【0130】
プライマー層が帯電防止剤を含有する帯電防止層である場合、プライマー層100質量%中の帯電防止剤の割合は、帯電防止剤の種類にも依存するので一概ではないが、例えば80質量%以下、好ましくは0.5~70質量%、より好ましくは1~50質量%の範囲である。帯電防止剤の割合が上記範囲内であれば、プライマー層に十分な帯電防止機能を付与しやすく、プライマー層上に凹凸層を形成した後でも帯電防止性能を発現しやすくなる。
【0131】
プライマー層の厚みは、プライマー層に使用する材料や発現させる性能にも依存するため一概にはいえないが、好ましくは0.001~10μm、より好ましくは0.01~4μm、さらに好ましくは0.02~1μmの範囲である。
プライマー層は、公知の方法で形成できる。
【0132】
(裏面機能層)
裏面機能層は、基材層の凹凸層側とは反対側の面に各種の機能を付与するために設けられる。
裏面機能層としては、粘着層、帯電防止層、屈折率調整層、アンチブロッキング層等が挙げられる。
粘着層は、積層体を各種の被着体に接合するために設けられる。帯電防止層は、積層体の最表面、特に基材層の凹凸層側とは反対側の最表面に対する、剥離帯電や摩擦帯電による周囲のゴミ等の付着、それによる欠陥等を防止するために設けられる。屈折率調整層は、例えば、積層体の全光線透過率を向上させるために設けられる。アンチブロッキング層は、積層体のブロッキングを軽減するために設けられる。
【0133】
粘着層を形成する粘着剤としては、公知のものを使用でき、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系等が挙げられる。それらの中でも汎用性を考慮すると、アクリル系が好ましい。
帯電防止層、屈折率調整層はそれぞれ、表面機能層としての帯電防止層、屈折率調整層と同様である。
【0134】
裏面機能層の厚みは、裏面機能層に使用する材料や発現させる性能にも依存するため一概にはいえないが、例えば0.001~30μmである。裏面機能層が粘着層である場合は、好ましくは0.01~30μm、より好ましくは0.1~20μmである。裏面機能層が帯電防止層である場合は、好ましくは0.001~10μm、より好ましくは0.01~5μmである。
裏面機能層は、公知の方法で形成できる。
【0135】
本積層体は、艶消し性に優れることから、防眩性フィルムとして好適である。
【実施例
【0136】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明で用いた測定方法及び評価方法は次のとおりである。
【0137】
(1)重量平均分子量(Mw)
下記条件のGPCで共重合体の重量平均分子量を測定した。
機器:Waters社製「e2695」、
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel Super H3000+H4000+H6000」、
検出器:示差屈折率検出器(RI検出器/内蔵)、
溶媒:テトラヒドロフラン、
温度:40℃、
流速:0.5mL/分、
注入量:10μL、
濃度:0.2質量%、
校正試料:単分散ポリスチレン、
校正法:ポリスチレン換算。
【0138】
(2)全光線透過率・ヘイズ
PETフィルム上に凹凸層を形成した積層体を測定対象とした。全光線透過率及びヘイズは、JIS Z8722Z(透過物体の照射及び受光の幾何条件)及びJIS K7361-1(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)JIS K7136(プラスチック-透明材料のヘ-ズの求め方)に準拠し、日本電色工業製ヘーズメーター「SH7000」を用いて波長550nmにおける値を測定した。
なお、積層体のヘイズは、基材層に対して凹凸層が存在する側の最表面から入射して積層体を通過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から0.044rad(2.5°)以上それた透過光の百分率(全光線透過率に対する拡散透過率の比)である。
【0139】
(3)レベリング性
凹凸層の表面(10cm×10cm)を目視で観察し、ハジキやブツ欠陥の数を調べた。下記の基準で評価した。
A:ハジキ、ブツ欠陥の数の合計が10個未満。
B:ハジキ、ブツ欠陥の数の合計が10個以上。
【0140】
(4)硬化性
各例において紫外線を照射する際の照射条件(硬化条件)を、1回あたりの照射量が100mJ/cm(照度が100mW/J/cm)となるように調整し、指触でタックが無くなるまでの照射量(積算光量)を測定した。
A:200mJ/cmより多く400mJ/cm以下の照射量で硬化する。
B:400mJ/cmより多く600mJ/cm以下の照射量で硬化する。
C:600mJ/cmより多い照射量で硬化する。
【0141】
(5)60°グロス
PETフィルム上に凹凸層を形成した積層体を測定対象とした。60°グロス(60°鏡面光沢度)を、JIS Z 8741に準拠し、日本電色工業社製グロスメーター「VG2000」を用いて測定した。60°グロスの値が低いほど艶消し性に優れる。
なお、鏡面光沢度の測定の原理は、規定された入射角θ(60°鏡面光沢度の場合は60°)に対して、試料面からの鏡面反射光束φsを測定するというものである。
【0142】
(6)鉛筆硬度
JIS K5600-5-4 塗料一般試験法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に従って、凹凸層の鉛筆硬度を測定した。
【0143】
(7)耐擦傷性
23℃、55%RHの雰囲気下、スチールウール#0000に200gf(面積4cmあたり)の錘を載せ、凹凸層の表面を学振磨耗試験機(東洋精機製)で15往復擦り、目視にて傷を観察した。下記の基準で評価した。
A:1本以上50本未満の傷が入る。
B:50本以上100本未満の傷が入る。
C:100本以上の傷が入る。
【0144】
(8)水接触角(撥水性・防汚性)
凹凸層の水接触角(液量2μL)を接触角計(協和界面科学株式会社製、「Drop Master500」)を用いて測定した。水接触角の値が大きいほど撥水性(防汚性)に優れる評価となる。
【0145】
(9)凹凸層の表面形状(算術平均高さSa、凸部の面積割合、環状構造の有無、環状構造を構成する凸条における凸部と凸部に隣接する凹部の中心間距離、凸条を構成する凸部の高さ、環状構造の大きさ(環状構造の内側の領域の最大直径の10点平均値)、平面視での単位面積当たりの環状構造の数)
表面形状計測システム(株式会社日立ハイテクサイエンスの「VertScan」(登録商標)VS1330)を用いて、凹凸層表面において、236.87μm×177.60μmの領域における表面の凹凸形状を光干渉法にて測定し、補完およびベースライン補正を行い、算術平均高さSa、凸部の面積割合、環状構造の凸条における凸部と凸部に隣接する凹部の中心間距離、凸条を構成する凸部の高さ、環状構造の大きさ(環状構造の内側の領域の最大直径の10点平均値)、平面視での単位面積当たりの環状構造の数を算出した。測定時における対物レンズの倍率は20倍に設定した。
凸部の面積割合は、前記領域を画像分析によって凹部と凸部の2つの領域に2値化することで分析した。分析に際しては、表面形状計測システムのベアリング機能を使用し、凹凸層表面の粗さ曲線から得られる負荷曲線において、山側高さ閾値および谷側高さ閾値をともに0.1μmに設定して2値化を行い、突出山部(図1~2中の暗色部分)の面積を算出することにより求めた。負荷曲線の解析条件は以下のとおりである。
<負荷曲線解析>
・ヒストグラム分割数:100
・負荷曲線の種類:ベアリングカーブ
・高さ閾値指定:100nm
・谷側閾値指定:100nm
【0146】
表1に示す組成で共重合体を製造した。表中のモノマーは以下の通りである。
<モノマー(x)>
x-1:4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン。
<モノマー(y)>
y-1:ステアリルメタクリレート。
y-2:2-エチルヘキシルメタクリレート。
<モノマー(z)>
z-1:EO変性-о-フェニルフェノールアクリレート(新中村化学工業株式会社製、A-LEN-10T)。
<モノマー(h)>
h-1:2-ヒドロキシエチルメタクリレート。
h-2:ジエチルアミノエチルメタクリレート。
<重合開始剤(k)>
k-1:アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)。
【0147】
(製造例1:共重合体(A-1)の製造)
撹拌機、冷却管及び温度計を備えたフラスコ中に、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKという)73部を入れ、次いで、フラスコ内を窒素置換し65℃に昇温してモノマー(x-1)40質量部、モノマー(y-1)10質量部、モノマー(y-2)30質量部、モノマー(h-1)10質量部、モノマー(h-2)10質量部、重合開始剤(k-1)0.8質量部、MIBK78質量部の混合溶液を2時間かけて滴下した。さらに2時間後、重合率を上げるため、重合開始剤(k-1)0.5質量部、MIBK0.6質量部の混合液を投入し、5時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却することで、共重合体のMIBK溶液(A-1)を得た。以下、溶液(A-1)中の固形分を共重合体(A-1)という。
溶液(A-1)の固形分(不揮発分)は40%であった。共重合体(A-1)の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度、共重合体(H-1)の1g当たりの活性基の含有量を表1に示す。
【0148】
(製造例2:共重合体(A-2)の製造)
撹拌機、冷却管及び温度計を備えたフラスコ中に、MIBK73部を入れ、次いで、フラスコ内を窒素置換し65℃に昇温してモノマー(x-1)40質量部、モノマー(y-1)10質量部、モノマー(z-1)30質量部、モノマー(h-1)10質量部、モノマー(h-2)10質量部、重合開始剤(k-1)0.8質量部、MIBK78質量部の混合溶液を2時間かけて滴下した。さらに2時間後、重合率を上げるため、重合開始剤(k-1)0.5質量部、MIBK0.6質量部の混合液を投入し、5時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却することで、共重合体のMIBK溶液(A-2)を得た。以下、溶液(A-2)中の固形分を共重合体(A-2)という。
溶液(A-2)の固形分(不揮発分)は40%であった。共重合体(A-2)の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度、共重合体(H-1)の1g当たりの活性基の含有量を表1に示す。
【0149】
【表1】
【0150】
(実施例1、比較例1~2)
表2に示す各材料を、不揮発分換算で表2に示す割合(質量部)となるように混合した。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGM)とメチルエチルケトン(以下、MEK)の混合溶剤(PGM:MEK(質量比)が7:3)を固形分濃度が40質量%になるように添加し、均一になるまで撹拌して塗布液(硬化性組成物)を得た。
表2中の材料は以下の通りである。
A-1:製造例1で得た共重合体(A-1)のMIBK溶液。
A-2:製造例2で得た共重合体(A-2)のMIBK溶液。
B-1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(日本化薬社製「KAYARAD DPHA」)。
B-2:ペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製「ビスコートV#300」)。
C-1:ベンゾフェノン。
塗布液中の硬化性重合体組成物の固形分100gに対する活性基の含有量を表2に示す。
【0151】
得られた塗布液を、厚み50μmのPETフィルム(三菱ケミカル社製「T602E50」)に、バーコーターNo.8で塗布し、70℃に加熱した熱風乾燥機で60秒間乾燥して溶剤を揮発させ、空気雰囲気中にて高圧水銀灯で積算光量250mJ/cm、照度100mW/cmにて紫外線を照射して、厚みが2.5μmの凹凸層(硬化膜)を形成した。これにより、PETフィルムからなる基材層上に凹凸層が積層した積層体を得た。
紫外線の照射は、アイグラフィックス高出力UV装置(型式:US5-X1802-X1202)のUVコンベアを用いた。積算光量は、岩崎電気株式会社製の照度計(アイ紫外線積算照度計「UVPF―A1」、「PD-365」)で波長300~390nmの積算光量を測定した際の値である。
得られた積層体について、上記の方法で表2に示す項目を測定又は評価した。結果を表2に示す。また、実施例1、比較例1それぞれにおいて凹凸層の表面形状を2値化した画像を図1、2に示す。
【0152】
【表2】
【0153】
図1に示すとおり、実施例1の凹凸層は、環状構造を有していた。この凹凸層は、表2に示すとおり、艶消し性、耐擦傷性に優れており、防汚性も良好であった。また、塗布液のレベリング性、硬化性にも優れていた。
一方、重合体(A-2)に代えて重合体(A-1)を用いた比較例1の凹凸層は、図2に示すとおり、しわ状の凹凸が表面全体にむらなく形成されており、環状構造を有していなかった。この凹凸層は、表2に示すとおり、耐擦傷性に劣っていた。また、塗布液の硬化性も劣っていた。
重合体(A-2)に代えて一般的な光重合開始剤(活性基を有する非重合体)(C-1)を用いた比較例1の凹凸層は、表2に示すとおり、透明性は実施例1とほぼ同等であったが、表面がほぼ平滑であり、艶消し性は得られず、耐擦傷性、防汚性にも劣っていた。また、塗布液のレベリング性、硬化性、防汚性にも劣っていた。
【符号の説明】
【0154】
1…凸条
3…凸部
5…凹部
図1
図2
図3