(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物、半導体デバイス用基板の洗浄方法、半導体デバイス用基板の製造方法及び半導体デバイス用基板
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221012BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20221012BHJP
C11D 3/30 20060101ALI20221012BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
C11D1/62
C11D3/30
C11D7/32
(21)【出願番号】P 2019506272
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2018010323
(87)【国際公開番号】W WO2018169016
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2017052098
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草野 智博
(72)【発明者】
【氏名】原田 憲
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 康弘
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-543060(JP,A)
【文献】特開2011-074189(JP,A)
【文献】国際公開第2016/011331(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C11D 3/30
C11D 7/32
C11D 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線及び電極のうちの少なくとも一つを有する半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物であって、
前記配線及び前記電極が、コバルト又はコバルト合金を含有し、
前記洗浄剤組成物が、以下の成分(A)及び成分(B)を含有する、
半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
成分(A):下記
一般式(1)で表され
る少なくとも1種の化合物
【化1】
(上記一般式(1)において、R
1は、炭素数1~4のアルキル基を示す。R
2~R
7は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシル基、カルボニル基、又はエステル結合を有する官能基を示す。)
成分(B):水
【請求項2】
pH値が9~14である、請求項1に記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)において、R
1がメチル基であり、R
2がメチル基又は水素原子であり、R
3~R
7が水素原子である、請求項1又は2に記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記成分(A)の含有率が、前記洗浄剤組成物全量100質量%中、0.001質量%~0.5質量%である、請求項
1~3のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
【請求項5】
コバルト溶出量が200ppb以下である、請求項
1~4のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
【請求項6】
さらに、成分(C)としてpH調整剤を含有する、請求項
1~5のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
【請求項7】
前記成分(C)が、下記一般式(p1)で表される化合物を含有する、請求項
6に記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
【化2】
(上記一般式(p1)において、R
a1は、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲンにて置換されていてもよいアルキル基を示し、4つのR
a1は、互いに同一でもよく異なっていてもよい。)
【請求項8】
さらに、成分(D)として還元剤を含有する、請求項
1~7のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
【請求項9】
さらに、成分(E)として界面活性剤を含有する、請求項
1~8のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
【請求項10】
前記半導体デバイス用基板が、化学的機械的研磨を行った後の半導体デバイス用基板である、請求項
1~9のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
【請求項11】
請求項
1~10のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物を用いて、半導体デバイス用基板を洗浄する、半導体デバイス用基板の洗浄方法。
【請求項12】
請求項
1~10のいずれか1項に記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物を用いて半導体デバイス用基板を洗浄する工程を含有する、半導体デバイス用基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物、半導体デバイス用基板の洗浄方法、半導体デバイス用基板の製造方法及び半導体デバイス用基板に係り、詳しくは、表面にコバルト又はコバルト合金を含有する配線及び電極のうちの少なくとも一つを有する半導体デバイス用基板表面を効果的に洗浄するための洗浄剤組成物、この洗浄剤組成物を用いた洗浄方法、半導体デバイス用基板の製造方法及び半導体デバイス用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス用基板は、シリコンウェハ基板の上に、配線となる金属膜や層間絶縁膜の堆積層を形成した後に、研磨微粒子を含有する水系スラリーからなる研磨剤を使用する化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing、以下、「CMP」と称す。)工程によって表面の平坦化処理を行い、平坦となった面の上に新たな層を積み重ねて行くことで製造される。半導体デバイス用基板の微細加工においては、各層における精度の高い平坦性が必要であり、CMPによる平坦化処理の重要性はますます高まっている。
【0003】
上記層としては、銅又は銅合金を有する配線とバリアメタルからなる配線を有する配線層、及び、トランジスタとその配線層とを電気的に接続するコンタクトプラグ(電極)を有するコンタクトプラグ層があり、配線層及びコンタクトプラグ層のそれぞれが、同様の工程で基板上に形成され、同様にCMP工程によって平坦化処理される。
【0004】
CMP工程後の半導体デバイス用基板表面には、CMP工程で使用されたコロイダルシリカ等の砥粒や、スラリー中に含まれる防食剤由来の有機残渣等が多量に存在することから、これらを除去するために、CMP工程後の半導体デバイス用基板は洗浄工程に供される。
【0005】
CMP工程後の洗浄工程においては、酸性洗浄剤組成物とアルカリ性洗浄剤組成物が用いられている。酸性水溶液中では、コロイダルシリカが正に帯電し、基板表面は負に帯電し、電気的な引力が働き、コロイダルシリカの除去は困難となる。これに対し、アルカリ性水溶液中ではOH-が豊富に存在するため、コロイダルシリカと基板表面は共に負に帯電し、電気的な斥力が働き、コロイダルシリカの除去が行いやすくなる。
【0006】
また、CMP工程後の基板表面には金属から溶出した誘導体等の微量金属分も残渣として存在しており、これらの残渣については、キレート剤等でイオン化や溶解して除去することができる。しかしながら、このキレート剤によって、基板の表面の金属を腐食させたり、酸化劣化させたりすることがあった。この残渣成分や、腐食や酸化劣化のメカニズムは、配線層の様に通常は銅金属を含有する層と、コンタクトプラグ層の様に通常は銅金属を含有しない層とでは、異なっていた。
【0007】
従来のコンタクトプラグ(電極)の役割を担う層には、使用される金属はタングステン(W)又はタングステン合金が一般的に用いられており、その層のCMP工程後の洗浄剤組成物についても、様々な洗浄剤組成物が提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、炭酸、ホウ酸及び飽和の脂肪族基を有するカルボン酸類からなる群より選ばれる1種以上の酸を含みpHが4以上の洗浄剤組成物が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、(A)ホスホン酸系キレート剤、(B)分子内に少なくとも1つのアルキル基もしくはヒドロキシルアルキル基を有する1級又は2級のモノアミン、及び(C)水を含有し、pHが6を超え7未満であることを特徴とする半導体基板用洗浄剤が開示されている。
【0010】
特許文献3には、(a)n価の塩基酸の第n段目の酸解離指数pKan(25℃)が3以上11以下である酸及び/又はその塩と、(b)水と、(c)分子中に窒素原子を含むキレート剤とを含有してなり、pHが6以上11以下である洗浄剤組成物が開示されている。
【0011】
一方、半導体デバイス用基板は、デバイスの高速化及び高集積化のために配線、及び、トランジスタと配線層とを接続する電極(コンタクトプラグ)の微細化が急激に進んでいる。しかし、微細な配線及び電極に従来用いられていた銅、タングステン又はタングステン合金を配線及び電極の材料として用いると、微細化に伴う抵抗値の増加が問題となる。そのため、近年では、抵抗値の低いコバルト又はコバルト合金からなる配線及び電極が導入され始めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】日本国特開2003-017458号公報
【文献】国際公開2013/162020号
【文献】日本国特開2003-257922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、基板の配線や電極にコバルト又はコバルト合金が使用されると、これまでタングステンの配線や電極に使用していた特許文献1~3の洗浄剤組成物では、洗浄性能も十分でなく、特に特許文献2に記載のような酸~中性領域で腐食を起こしやすく、コバルト又はコバルト合金からなる配線の酸化や腐食が問題となることがわかった。
【0014】
また、特許文献3にはアルカリ性の洗浄剤組成物が開示されており、種々キレート剤を含み得るものが開示されているが、コバルト(Co)の腐食の抑制(=Co溶出量の抑制)及び基板表面の残渣低減の両立という点で十分な機能を有する洗浄剤組成物とは考えられていなかった。
【0015】
前述のように、これまで、銅(Cu)を含有する配線層を有する基板の洗浄や、タングステンを含有するコンタクトプラグ層を有する基板の洗浄については、様々な洗浄剤組成物が検討されている。しかしながら、近年、導入がされ始めた、コバルト又はコバルト合金が使用された配線や電極を有する半導体デバイス用基板の洗浄については、十分に検討されていないのが現状である。
【0016】
かかる状況下、本発明の目的は、半導体デバイス用基板、特にコバルト又はコバルト合金を含有する配線及び電極のうちの少なくとも一つを有する半導体デバイス用基板における洗浄工程に用いられ、前記配線及び電極に対する腐食性が低く、さらに洗浄工程での残渣の発生及び基板表面への残渣の付着を抑制することができる洗浄剤組成物、半導体デバイス用基板の洗浄方法、半導体デバイス用基板の製造方法及び半導体デバイス用基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0018】
本発明者らは、これまでCu配線用洗浄剤組成物の成分としての例示こそあるものの十分な活用がされていたとは言えなかったキレート剤の利用に着目した。
Cu配線用の洗浄剤組成物においては、Cuと防食剤が強い不溶性の錯体を形成し残渣となるため、この残渣を除去するには作用の強いキレートを用いる必要がある。
【0019】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、作用の比較的弱いキレート剤であっても、コバルトの場合、十分に残渣を除去することができることを見出した。この知見に基づき、さらに鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するキレート剤を用いることで、コバルトの腐食を抑えながら、十分な洗浄効果を発揮することができることを見出した。
【0020】
すなわち、本発明の要旨は以下の発明に係るものである。
<1>配線及び電極のうちの少なくとも一つを有する半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物であって、前記配線及び前記電極が、コバルト又はコバルト合金を含有し、前記洗浄剤組成物が、以下の成分(A)及び成分(B)を含有する、半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
成分(A):下記一般式(1)~(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物
【0021】
【0022】
(上記一般式(1)において、R1は、炭素数1~4のアルキル基を示す。R2~R7は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシル基、カルボニル基、又はエステル結合を有する官能基を示す。)
【0023】
【0024】
(上記一般式(2)において、R2~R9は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシル基、カルボニル基、又はエステル結合を有する官能基を示す。)
【0025】
【0026】
(上記一般式(3)において、X1~X4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシル基、カルボニル基、又はエステル結合を有する官能基を示す。)
【0027】
【0028】
(上記一般式(4)において、X1~X5は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシル基、カルボニル基、又はエステル結合を有する官能基を示す。)
成分(B):水
<2>pH値が9~14である、<1>に記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
<3>前記一般式(1)において、R1がメチル基であり、R2がメチル基又は水素原子であり、R3~R7が水素原子である、<1>又は<2>に記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
<4>前記一般式(2)において、R2~R9が水素原子である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
<5>前記一般式(3)において、X1~X4がそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
<6>前記一般式(3)において、X1~X3が水素原子であり、X4がメチル基である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
<7>前記一般式(4)において、X1~X5が水素原子である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
<8>前記成分(A)の含有率が、前記洗浄剤組成物全量100質量%中、0.001質量%~0.5質量%である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
<9>コバルト溶出量が200ppb以下である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
<10>さらに、成分(C)としてpH調整剤を含有する、<1>~<9>のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
<11>前記成分(C)が、下記一般式(p1)で表される化合物を含有する、<10>に記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
【0029】
【0030】
(上記一般式(p1)において、Ra1は、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲンにて置換されていてもよいアルキル基を示し、4つのRa1は、互いに同一でもよく異なっていてもよい。)
<12>さらに、成分(D)として還元剤を含有する、<1>~<11>のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
<13>さらに、成分(E)として界面活性剤を含有する、<1>~<12>のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
<14>前記半導体デバイス用基板が、化学的機械的研磨を行った後の半導体デバイス用基板である、<1>~<13>のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物。
<15><1>~<14>のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物を用いて、半導体デバイス用基板を洗浄する、半導体デバイス用基板の洗浄方法。
<16><1>~<14>のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物を用いて半導体デバイス用基板を洗浄する工程を含有する、半導体デバイス用基板の製造方法。
<17><1>~<14>のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物を用いて半導体デバイス用基板を洗浄して得られた、半導体デバイス用基板。
【発明の効果】
【0031】
本発明の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物を用いることにより、半導体デバイス用基板の洗浄工程において、コバルト又はコバルト合金を含有する配線及び電極の腐食を防止し、さらに洗浄工程での残渣の発生及び基板表面への残渣の付着を抑制して、効率的な洗浄を行える。
【0032】
また、本発明の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物は、好ましくは、CMP工程後の半導体デバイス用基板の洗浄工程に用いられ、その場合、CMP工程にて発生した残渣を除去し効率的なCMP工程後の洗浄を行える。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
なお、本明細書において、コバルト又はコバルト合金をあわせて「Co系材料」と称する場合がある。また、コバルト又はコバルト合金を含有する配線を「Co系配線」、コバルト又はコバルト合金を含有する電極を「Co系電極」と称す場合がある。
【0034】
[半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物]
本発明の半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物(以下、「本発明の洗浄剤組成物」と称す場合がある。)は、コバルト又はコバルト合金を含有する配線及び電極のうちの少なくとも一つを有する半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物である。これは、半導体デバイス用基板の洗浄、好ましくは、半導体デバイス製造における化学的機械的研磨(CMP)工程の後に行われる、半導体デバイス用基板の洗浄工程の洗浄剤組成物であって、前記半導体デバイス用基板の配線部分及び電極部分のうちの少なくとも一つがコバルト又はコバルト合金を含有するものに用いられる。この洗浄剤組成物は、以下の成分(A)及び(B)を含有する。
【0035】
成分(A):下記一般式(1)~(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物
【0036】
【0037】
上記一般式(1)において、R1は、炭素数1~4のアルキル基を示す。R2~R7は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシル基、カルボニル基、又はエステル結合を有する官能基を示す。
【0038】
【0039】
上記一般式(2)において、R2~R9は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシル基、カルボニル基、又はエステル結合を有する官能基を示す。
【0040】
【0041】
上記一般式(3)において、X1~X4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシル基、カルボニル基、又はエステル結合を有する官能基を示す。
【0042】
【0043】
上記一般式(4)において、X1~X5は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシル基、カルボニル基、又はエステル結合を有する官能基を示す。
【0044】
成分(B):水
【0045】
本発明の洗浄剤組成物の特徴の一つは、成分(A)として、上記一般式(1)~(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することである。
このような特定の構造を有する窒素含有化合物を含有することにより、Co系材料の腐食を抑制しつつ、基板上の残渣を低減することができる。すなわち、Co系材料の腐食の抑制及び基板表面の残渣低減の両立が可能である。
【0046】
半導体デバイス用基板の洗浄における成分(A)の詳細なメカニズムについては不明であるが、次のように推測される。Co系配線及びCo系電極のうちの少なくとも一つを有する半導体デバイス用基板上では、Coと防食剤とにより形成された不溶性錯体が残渣となっていると考えられる。そして、Coの場合、Cuと比較して、防食剤との錯体形成能が低いため、成分(A)のようにキレート作用が比較的弱いキレートでも、Coと防食剤との不溶性錯体を除去することができており、Co系材料の腐食を抑えながら、十分な洗浄効果が発揮できていると考えられる。
【0047】
また、本発明の洗浄剤組成物は、アルカリ性であり、pHの値が9~14であることが好ましい。
前述のように、アルカリ性水溶液中では、OH-が豊富に存在するため、コロイダルシリカ等のパーティクル表面が負に帯電し、洗浄対象となる基板表面も同様に負に帯電する。液中のゼータ電位が同符号に制御されることにより、電気的な反発力が発生する。その結果、基板表面からの前記パーティクルの除去を容易にすることができ、また、一度除去したパーティクルが基板表面に再付着することを防ぐこともできる。
【0048】
本発明の洗浄剤組成物のpH値は、Coの腐食を抑制することができることから、9以上であることが好ましいが、より好ましくはpH値が10以上である。また、水溶液であることから、pH値の上限は通常14以下であるが、pH調整剤の配合量を低減することができ、コストを低減することができることから、より好ましくはpH値が13以下である。なお、本発明の洗浄剤組成物の使用時のpH値は、洗浄剤組成物に含まれる各成分の添加量により調整することができる。
なお、本発明において、pH値は、pH計にて測定した値である。具体的には実施例にて後述する。
【0049】
また、本発明の洗浄剤組成物においては、コバルト溶出量が200ppb以下であることが好ましく、150ppb以下であることがより好ましく、100ppb以下であることがさらに好ましい。
ここで、本発明におけるコバルト溶出量とは、以下の操作により求められる。すなわち、コバルト又はコバルト合金を含有する配線及び電極のうちの少なくとも一つを有する半導体デバイス用基板を20mm角にカットし(該カット後の基板にはコバルトが360μg以上含有されている。)、それを本発明の洗浄剤組成物20mL中に25℃の条件下で30間分浸漬させる。その後、該カット後の基板を取り出し、浸漬後の洗浄剤組成物中のコバルト濃度をICP発光分析装置により測定し、コバルト溶出量(ppb)を求めることができる。
【0050】
以下、成分(A)及び成分(B)について、より詳細に説明する。
【0051】
<成分(A):上記一般式(1)~(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物>
本発明の洗浄剤組成物に含まれる成分(A)は、上記一般式(1)~(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0052】
この成分(A)は、基板表面のCo系配線及びCo系電極に含まれる、不純物金属をキレート作用により溶解、除去する作用を有するものである。
また、本発明の洗浄剤組成物を、CMP工程後の洗浄工程に用いた場合は、成分(A)は、CMP工程で使用されるスラリー中に存在する防食剤とCoとの不溶性金属錯体をキレート作用により溶解、除去する作用を有する。
【0053】
前述のように、上記一般式(1)~(4)で表される化合物は、キレート作用が比較的弱いため、Coの腐食を抑制しながら、十分な洗浄効果を発揮することができる。
【0054】
本発明の洗浄剤組成物は、成分(A)として上記一般式(1)~(4)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有すればよい。中でも、基板表面の残渣低減効果に優れることから、成分(A)として上記一般式(1)及び/又は上記一般式(3)で表される化合物を含有することが好ましく、成分(A)として上記一般式(1)で表される化合物を含有することがさらに好ましい。
また、同じ一般式で表される化合物を2種以上含有してもよい。
【0055】
上記一般式(1)において、R1は炭素数1~4のアルキル基を表す。R1の炭素数1~4のアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、無置換であっても、ハロゲン等の置換基を有してもよい。Coの腐食及び基板表面の残渣低減の両立の効果をより高めるためには、上記一般式(1)中のR1は、メチル基であることが好ましい。
【0056】
上記一般式(1)中のR2~R7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシル基、カルボニル基、又はエステル結合を有する官能基を示す。上記一般式(1)中のR2~R7が表す炭素数1~4のアルキル基は、R1と同様に直鎖であっても分岐鎖であってもよく、無置換であっても、ハロゲン等の置換基を有してもよい。
【0057】
また、Coの腐食及び基板表面の残渣低減の両立の効果をより高めるためには、上記一般式(1)中のR2~R7は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましい。
【0058】
より詳しく説明すると、Coの腐食及び基板表面の残渣低減の両立の効果をより高めるためには、上記一般式(1)において、好ましいR2は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましいR2は、水素原子又はメチル基であり、特に好ましいR2は、メチル基である。
【0059】
上記一般式(1)において、R3~R7は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。Coの腐食及び基板表面の残渣低減の両立の効果をより高めるためには、上記一般式(1)中のR3~R7は、共に水素原子であることが特に好ましい。
【0060】
上記一般式(1)で表される化合物の中でも、上記一般式(1)において、R1がメチル基であり、R2が水素原子又はメチル基であり、R3~R7が水素原子である化合物であることが特に好ましい。
【0061】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N-エチル-1,3-ジアミノプロパン、N-エチル-N-メチル-1,3-ジアミノプロパン等が挙げられる。これらの上記一般式(1)で表される化合物の中でも、Coの腐食及び基板表面の残渣低減の両立の効果をより高めることができることから、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N-エチル-1,3-ジアミノプロパンが好ましく、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N-メチル-1,3-ジアミノプロパンがより好ましく、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンがより好ましい。
【0062】
上記一般式(2)中のR2~R9は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシル基、カルボニル基、又はエステル結合を有する官能基を示す。上記一般式(2)中のR2~R9が表す炭素数1~4のアルキル基は、R1と同様に直鎖であっても分岐鎖であってもよく、無置換であっても、ハロゲン等の置換基を有してもよい。
【0063】
また、Coの腐食及び基板表面の残渣低減の両立の効果をより高めるためには、上記一般式(2)中のR2~R9は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、R2~R9が共に水素原子であることが特に好ましい。
【0064】
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、1,4-ジアミノブタン、N-メチル-1,4-ジアミノブタン、N,N’-ジメチル-1,4-ジアミノブタン、N-エチル-1,4-ジアミノブタン等が挙げられる。これらの上記一般式(2)で表される化合物の中でも、Coの腐食及び基板表面の残渣低減の両立の効果をより高めることができることから、1,4-ジアミノブタン、N-メチル-1,4-ジアミノブタン、N,N’-ジメチル-1,4-ジアミノブタンが好ましく、1,4-ジアミノブタンがより好ましい。
【0065】
上記一般式(3)中のX1~X4又は上記一般式(4)中のX1~X5は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、カルボキシル基、カルボニル基、又はエステル結合を有する官能基を示し、炭素数1~4のアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、無置換であっても、ハロゲン等の置換基を有してもよい。
【0066】
また、Coの腐食及び基板表面の残渣低減の両立の効果をより高めるためには、上記一般式(3)中のX1~X4又は上記一般式(4)中のX1~X5は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
【0067】
より詳しく説明すると、Coの腐食及び基板表面の残渣低減の両立の効果をより高めるためには、上記一般式(3)において、X1~X3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、X1~X3の全てが水素原子であることが特に好ましい。
【0068】
また、Coの腐食及び基板表面の残渣低減の両立の効果をより高めるためには、上記一般式(3)において、好ましいX4は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0069】
また、Coの腐食及び基板表面の残渣低減の両立の効果をより高めるためには、上記一般式(4)において、好ましいX1~X5は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0070】
上記一般式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、DL-1-アミノ-2-プロパノール、DL-1-アミノ-2-ブタノール、2-アミノ-3-ブタノール、3-アミノ-4-ペンタノール等が挙げられる。これらの上記一般式(3)で表される化合物の中でも、Coの腐食及び基板表面の残渣低減の両立の効果をより高めることができることから、DL-1-アミノ-2-プロパノール、DL-1-アミノ-2-ブタノール、2-アミノ-3-ブタノールが好ましく、DL-1-アミノ-2-プロパノールがより好ましい。
【0071】
上記一般式(4)で表される化合物の具体例としては、例えば、3-アミノ-1-プロパノール、3-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、3-アミノ-1-ブタノール、4-アミノ-2-ブタノール等が挙げられる。これらの上記一般式(4)で表される化合物の中でも、Coの腐食及び基板表面の残渣低減の両立の効果をより高めることができることから、3-アミノ-1-プロパノール、3-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、3-アミノ-1-ブタノールが好ましく、3-アミノ-1-プロパノールがより好ましい。
【0072】
<成分(B):水>
本発明の洗浄剤組成物において使用される成分(B)の水は、主に溶媒としての役割を果たし、不純物を極力低減させた脱イオン水や超純水を用いることが好ましい。
【0073】
また、本発明の洗浄剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、pH調整剤や還元剤、界面活性剤等の別の添加剤を含んでもよい。
【0074】
<成分(C):pH調整剤>
本発明の洗浄剤組成物は、上記成分(A)及び(B)に加えて、さらに、成分(C)としてpH調整剤を含有してもよい。
本発明の洗浄剤組成物において、成分(C)のpH調整剤は目的とするpHに調整できる成分であれば、特に限定されず、酸化合物又はアルカリ化合物を使用することができる。
【0075】
酸化合物としては、硫酸や硝酸等の無機酸及びその塩、又は、酢酸、乳酸等の有機酸及びその塩が好適な例として挙げられる。
また、アルカリ化合物については、有機アルカリ化合物と無機アルカリ化合物を用いることができる。有機アルカリ化合物としては、以下に示す有機第4級アンモニウム水酸化物等の四級アンモニウム及びその誘導体の塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン及びその誘導体の塩、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン及びその誘導体の塩が好適な例として挙げられる。
【0076】
本発明の洗浄剤組成物において、使用されるpH調整剤として、好ましくは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む無機アルカリ化合物、下記一般式(p1)で示される有機第4級アンモニウム水酸化物を含有するもの、下記一般式(p2)で示されるアルカノールアミンを含有するもの、又は下記一般式(p3)で示される有機酸を含有するものである。
【0077】
【0078】
ただし、上記一般式(p1)において、Ra1は、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲンにて置換されていてもよいアルキル基を示し、4つのRa1は、互いに同一でもよく異なっていてもよい。
【0079】
【0080】
ただし、上記一般式(p2)において、n1は2~6の整数である。
【0081】
【0082】
ただし、上記一般式(p3)において、Ra2は、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲンにて置換されていてもよいアルキル基を示す。
【0083】
上記一般式(p1)において、Ra1が、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はハロゲンにて置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖の炭素数1~4のアルキル基が好ましく、特に直鎖の炭素数1~4のアルキル基及び/又は直鎖の炭素数1~4のヒドロキシアルキル基であるものが好ましい。Ra1のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1~4の低級アルキル基が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としてはヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等の炭素数1~4の低級ヒドロキシアルキル基が挙げられる。
【0084】
この有機第4級アンモニウム水酸化物としては具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(“TMAH”と略記することがある。)、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(“TEAH”と略記することがある。)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド(通称:コリン)、トリエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0085】
上述の有機第4級アンモニウム水酸化物の中でも、洗浄効果、金属の残留が少ないこと、経済性、洗浄剤組成物の安定性等の理由から、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドが特に好ましい。
これらの有機第4級アンモニウム水酸化物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0086】
上記一般式(p2)において、n1が2~4のものが水溶性の観点から好ましい。
【0087】
上記一般式(p3)において、Ra2がメチル基のものが水溶性の観点から好ましい。
【0088】
これらのpH調整剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよいが、pH調整剤は、pH調整力、残留金属イオン、Coに対する腐食性の観点から、少なくとも上記式(p1)で示される有機第4級アンモニウム水酸化物を含有することが好ましい。
【0089】
<成分(D):還元剤>
本発明の洗浄剤組成物において、上記成分(A)及び(B)に加えて、さらに、成分(D)として還元剤を含有してもよい。還元剤はCo系材料の酸化を抑制し、Co系材料の腐食速度を下げる効果が期待される。
【0090】
還元剤としては特に制限はなく、好適に用いることが出来る還元剤として、アスコルビン酸(ビタミンC)、没食子酸、シュウ酸等が挙げられる。
これらの還元剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよいが、還元力、安全性の観点から、アスコルビン酸、没食子酸が好ましく、アスコルビン酸がより好ましい。
【0091】
<成分(E):界面活性剤>
本発明の洗浄剤組成物において、上記成分(A)及び(B)に加えて、さらに、成分(E)として界面活性剤を含有してもよい。層間絶縁膜表面は疎水性であるため、水をベース組成とする洗浄剤組成物では洗浄が困難な場合がある。界面活性剤は、疎水性基板表面の親水性を向上させる作用を有するものである。界面活性剤を配合して基板表面との親和性を向上させることで、基板上に存在するパーティクル等との間にも洗浄剤組成物の作用を及ぼすことができ、残渣の除去に貢献することができる。
【0092】
界面活性剤としては特に制限はなく、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができる。
【0093】
本発明の洗浄剤組成物において好適に用いることができる界面活性剤として、アニオン性界面活性剤がある。アニオン性界面活性剤の例として、アルキルスルホン酸及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸及びその塩、アルキルメチルタウリン酸及びその塩、並びにスルホコハク酸ジエステル及びその塩が挙げられ、特に好ましいスルホン酸型アニオン性界面活性剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸(“DBS”と略記することがある。)、ドデカンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0094】
この中でも、品質の安定性や入手のしやすさから、ドデシルベンゼンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩が好適に用いられる。
この成分(E)としてDBSやそのアルカリ金属塩等を用いる場合、洗浄剤組成物中のDBSやそのアルカリ金属塩の濃度は、2.5×10-2質量%未満が好ましく、さらに1.25×10-2質量%未満であることが好ましい。DBSやそのアルカリ金属塩の濃度がこの範囲内であると、洗浄性の低下を抑制し、泡立ち及び白濁が生じにくくなる。
【0095】
別のアニオン性界面活性剤の例として、カルボン酸型アニオン性界面活性剤が挙げられる。カルボン酸型アニオン性界面活性剤は、分子内にカルボキシル基を含むアニオン性界面活性剤であり、その中でも下記一般式(s1)で表される化合物が好適である。
【0096】
【0097】
上記一般式(s1)において、Rbは直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、その炭素数は8~15、好ましくは10~13である。また、AOはオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基であり、m1は3~30、好ましくは4~20、より好ましくは4~10である。また、m2は1~6、好ましくは1~3である。
【0098】
上記一般式(s1)で表されるカルボン酸型アニオン性界面活性剤として、具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸等を挙げることができる。これらのアニオン性界面活性剤等の界面活性剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0099】
なお、界面活性剤は、通常市販されている形態において1~数千質量ppm程度のNa、K、Fe等の金属不純物を含有している場合があり、この場合には、界面活性剤が金属汚染源となりうる。そのため、成分(E)に金属不純物が含まれる場合には、各々の金属不純物の含有量が、通常10ppm以下、好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは0.3ppm以下となるように、成分(E)を精製して使用することが好ましい。この精製方法としては、例えば、成分(E)を水に溶解した後、イオン交換樹脂に通液し、樹脂に金属不純物を捕捉させる方法が好適である。このようにして精製された界面活性剤を使用することで、金属不純物含有量が極めて低減された洗浄剤組成物を得ることができる。
【0100】
<その他の成分>
本発明の洗浄剤組成物には、その性能を損なわない範囲において、前述の成分(A)及び成分(B)、並びに適宜成分(C)~(E)以外の成分を任意の割合で含有していてもよい。
【0101】
その他の成分としては、次のようなものが挙げられる。
ウレア、チオウレア等の含窒素有機化合物;ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマー;RcOH(Rcは炭素数1~4のアルキル基)等のアルキルアルコール系化合物;等の防食剤:
水素、アルゴン、窒素、二酸化炭素、アンモニア等の溶存ガス:
フッ酸、フッ化アンモニウム、BHF(バッファードフッ酸)等のドライエッチング後に強固に付着したポリマー等の除去効果が期待できるエッチング促進剤:
過酸化水素、オゾン、酸素等の酸化剤:
また、溶媒として、エタノール等水以外の成分を含んでいてもよい。
【0102】
<洗浄剤組成物の製造方法>
本発明の洗浄剤組成物の製造方法は、特に限定されず従来公知の方法によればよく、例えば、洗浄剤組成物の構成成分を混合することで製造することができる。通常、溶媒である成分(B)の水に、成分(A)、必要に応じて用いられるその他の成分(C)、(D)、(E)等を混合することにより製造される。
【0103】
その際の混合順序も、反応や沈殿物が発生する等特段の問題がない限り任意であり、洗浄剤組成物の構成成分のうち、何れか2成分又は3成分以上を予め配合し、その後に残りの成分を混合してもよいし、一度に成分を混合してもよい。
【0104】
本発明の洗浄剤組成物における各成分の濃度は、洗浄対象となる半導体デバイス用基板に応じて適宜決定される。
【0105】
本発明の洗浄剤組成物の成分(A)の濃度は、洗浄剤組成物全量100質量%中、通常、0.001~20質量%であり、好ましくは0.001~0.5質量%であり、さらに好ましくは0.005~0.3質量%であり、特に好ましくは0.01~0.2質量%である。
【0106】
成分(A)の濃度が0.001質量%以上であると、半導体デバイス用基板の汚染が充分に除去される。成分(A)の濃度が20質量%以下であると、Co系配線又はCo系電極の腐食といった不具合が起こりにくい。
【0107】
本発明の洗浄剤組成物の成分(B)は、通常、成分(B)以外の成分の残部の量が必要となる。
【0108】
本発明の洗浄剤組成物の成分(C)の濃度は、所望のpHとなるよう量が調整されればよく、洗浄剤組成物全量100質量%中、好ましくは0~40質量%であり、より好ましくは0.001~1質量%であり、特に好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0109】
本発明の洗浄剤組成物の成分(D)の濃度は、洗浄性と腐食抑制の観点から、洗浄剤組成物全量100質量%中、好ましくは0~10質量%であり、より好ましくは0.0001~0.15質量%であり、特に好ましくは0.001~0.075質量%である。
【0110】
本発明の洗浄剤組成物の成分(E)の濃度は、洗浄性と泡立ちの観点から、洗浄剤組成物全量100質量%中、好ましくは0~2質量%であり、より好ましくは0.0001~0.05質量%であり、特に好ましくは0.001~0.015質量%である。
【0111】
成分(A)と成分(C)の質量比(成分(C)の質量/成分(A)の質量)は、半導体デバイス用基板の汚染の除去性とCo系配線又はCo系電極の腐食の抑制との観点から、好ましくは0~10であり、より好ましくは0.01~5であり、特に好ましくは0.1~3である。
【0112】
成分(A)と成分(D)の質量比(成分(D)の質量/成分(A)の質量)は、半導体デバイス用基板の汚染の除去性とCo系配線又はCo系電極の腐食の抑制との観点から、好ましくは0~8であり、より好ましくは0.001~4であり、特に好ましくは0.01~2である。
【0113】
成分(A)と成分(E)の質量比(成分(E)の質量/成分(A)の質量)は、半導体デバイス用基板の汚染の除去性とCo系配線又はCo系電極の腐食の抑制との観点から、好ましくは0~8であり、より好ましくは0.001~4であり、特に好ましくは0.01~2である。
【0114】
本発明の洗浄剤組成物は、洗浄に適した濃度になるように、各成分の濃度を調整して製造することもできるが、輸送、保管時のコストを抑制する観点から、それぞれの成分を高濃度で含有する洗浄剤組成物(以下、「洗浄原液」と称す。)を製造した後に水で希釈して使用されることも多い。
【0115】
この洗浄原液における各成分の濃度は、特に制限はないが、成分(A)、(B)及び必要に応じて添加される他の成分並びにこれらの反応物が、洗浄原液中で分離したり、析出したりしない濃度範囲であることが好ましい。具体的には、洗浄原液の好適な濃度範囲は、成分(A)が、洗浄原液全量100質量%中、0.1~15質量%の濃度である。このような濃度範囲であると、輸送、保管時において、含有成分の分離を抑制でき、また、成分(B)の水を添加することにより容易に洗浄に適した濃度の洗浄剤組成物として好適に使用することができる。
【0116】
なお、上述のように、洗浄に供する洗浄剤組成物は、洗浄対象となる半導体デバイス用基板に対して各成分の濃度が適切なものとなるように洗浄原液を希釈して製造してもよいし、その濃度になるように直接各成分を調整して製造してもよい。
【0117】
[半導体デバイス用基板の洗浄方法]
次いで、本発明の半導体デバイス用基板の洗浄方法(以下、「本発明の洗浄方法」と称す場合がある。)について説明する。
本発明の洗浄方法は、上述の本発明の洗浄剤組成物を半導体デバイス用基板に直接接触させる方法で行なわれる。洗浄対象となる半導体デバイス用基板としては、半導体、ガラス、金属、セラミックス、樹脂、磁性体、超伝導体等の各種半導体デバイス用基板が挙げられる。
【0118】
本発明の洗浄剤組成物は、Co系配線及びCo系電極に腐食を引き起こすことなく効果的な洗浄を行うことができる。そのため、上記各種半導体デバイス用基板の中でも、特に表面にCo系配線及びCo系電極のうちの少なくとも一つを有する(すなわち、表面にコバルト(Co)金属が露出した)半導体デバイス用基板の洗浄剤組成物として好適である。
【0119】
すなわち、本発明の洗浄剤組成物による洗浄は、Co系配線及びCo系電極のうちの少なくとも一つを有する半導体デバイス用基板の洗浄に好適に用いられる。
【0120】
より好適な洗浄対象は、基板表面に、トランジスタと配線層を電気的に接続する役割を担うCo系電極を有する半導体デバイス用基板である。すなわち、基板表面に、Co系電極を有するコンタクトプラグ層を有する半導体デバイス用基板である。
【0121】
また、Co系配線及びCo系電極は、コバルト又はコバルト合金を含有すればよいが、好ましくは、コバルト又はコバルト合金からなる。
なお、コバルト又はコバルト合金からなる配線及び電極は、半導体デバイスの性能に影響を与えない範囲で、不純物を含んでいてもよい。
【0122】
また、本発明の洗浄方法は、疎水性の強い低誘電率絶縁材料に対しても洗浄効果が高いため、低誘電率絶縁材料を有する半導体デバイス用基板に対しても好適である。
【0123】
このような低誘電率絶縁材料としては、Polyimide、BCB(Benzocyclobutene)、Flare(Honeywell社製)、SiLK(Dow Chemical社製)等の有機ポリマー材料やFSG(Fluorinated silicate glass)等の無機ポリマー材料、BLACK DIAMOND(Applied Materials社製)、Aurora(日本ASM社製)等のSiOC系材料が挙げられる。
【0124】
ここで、本発明の洗浄方法は、半導体デバイス用基板が、基板表面にCo系配線及びCo系電極のうちの少なくとも一つを有し、かつ、CMP処理後の基板を洗浄する場合に特に好適に適用される。
【0125】
CMP工程では、研磨剤を用いて基板をパッドに擦り付けて研磨が行われる。研磨剤には、コロイダルシリカ(SiO2)、フュームドシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、セリア(CeO2)等の研磨粒子が含まれる。このような研磨粒子は、半導体デバイス用基板の微粒子汚染の主因となるが、本発明の洗浄剤組成物は、基板に付着した微粒子を除去して洗浄剤組成物中に分散させると共に再付着を防止する作用を有しているため、微粒子汚染の除去に対して高い効果を示す。
【0126】
また、研磨剤には、酸化剤、分散剤等の研磨粒子以外の添加剤が含まれることがある。特に、その表面にCo系配線及びCo系電極のうちの少なくとも一つを有する半導体デバイス用基板におけるCMP研磨では、Co系配線及びCo系電極が腐食しやすいため、防食剤が添加されることが多い。
【0127】
防食剤としては、防食効果の高いアゾール系防食剤が好ましく用いられる。より具体的には、へテロ原子が窒素原子のみの複素環を含むものとして、ジアゾール系やトリアゾール系、テトラゾール系が挙げられ、窒素原子と酸素原子の複素環を含むものとして、オキサゾール系やイソオキサゾール系、オキサジアゾール系が挙げられ、窒素原子と硫黄原子の複素環を含むものとして、チアゾール系やイソチアゾール系、チアジアゾール系が挙げられる。その中でも特に、防食効果に優れるベンゾトリアゾール(BTA)系の防食剤が好ましく用いられている。
【0128】
本発明の洗浄剤組成物は、このような防食剤を含んだ研磨剤で研磨した後の基板表面に適用すると、これら防食剤に由来した汚染を極めて効果的に除去できる点において優れている。即ち、研磨剤中にこれらの防食剤が存在すると、Co膜表面の腐食を抑える反面、研磨時に溶出したCoイオンと反応し、多量の不溶性析出物を生じる。本発明の洗浄剤組成物は、このような不溶性析出物を効率的に溶解除去することができ、スループットの向上が可能である。
【0129】
そのため、本発明の洗浄方法は、Co系配線及びCo系電極のうちの少なくとも一つが存在する表面をCMP処理した後の半導体デバイス用基板の洗浄に好適であり、特にアゾール系防食剤が入った研磨剤でCMP処理した上記基板の洗浄に好適である。
【0130】
上述のように本発明の洗浄方法は、本発明の洗浄剤組成物を半導体デバイス用基板に直接接触させる方法で行われる。なお、洗浄対象となる半導体デバイス用基板の種類に合わせて、好適な成分濃度の洗浄剤組成物が選択される。
【0131】
本発明の洗浄方法における洗浄剤組成物の基板への接触方法には、洗浄槽に洗浄剤組成物を満たして基板を浸漬させるディップ式、ノズルから基板上に洗浄剤組成物を流しながら基板を高速回転させるスピン式、基板に液を噴霧して洗浄するスプレー式等が挙げられる。この様な洗浄を行うための装置としては、カセットに収容された複数枚の基板を同時に洗浄するバッチ式洗浄装置、1枚の基板をホルダーに装着して洗浄する枚葉式洗浄装置等がある。
【0132】
本発明の洗浄方法は、上記の何れの接触方法も適用できるが、短時間でより効率的な汚染除去ができる点から、スピン式やスプレー式の洗浄に好ましく使用される。この場合において、洗浄時間の短縮、洗浄剤組成物使用量の削減が望まれている枚葉式洗浄装置に適用するならば、これらの問題が解決されるので好ましい。
【0133】
また、本発明の洗浄方法は、物理力による洗浄方法、特に、洗浄ブラシを使用したスクラブ洗浄や周波数0.5メガヘルツ以上の超音波洗浄を併用すると、基板に付着した微粒子による汚染の除去性がさらに向上し、洗浄時間の短縮にも繋がるので好ましい。特に、CMP後の洗浄においては、樹脂製ブラシを使用してスクラブ洗浄を行うのが好ましい。樹脂製ブラシの材質は、任意に選択し得るが、例えばPVA(ポリビニルアルコール)やその変性物であるPVF(ポリビニルホルマール)を使用するのが好ましい。
【0134】
さらに、本発明の洗浄方法による洗浄の前及び/又は後に、水による洗浄を行ってもよい。本発明の洗浄方法において、洗浄剤組成物の温度は、通常は室温でよいが、性能を損なわない範囲で30~70℃程度に加温してもよい。
【実施例】
【0135】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0136】
実施例及び比較例の洗浄剤組成物の製造に使用した試薬は次のとおりである。
[成分(A)]
・N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン(東京化成工業株式会社製)
・DL-1-アミノ-2-プロパノール(東京化成工業株式会社製)
・N-メチル-1,3-ジアミノプロパン(東京化成工業株式会社製)
・1,4-ジアミノブタン(東京化成工業株式会社製)
・3-アミノ-1-プロパノール(東京化成工業株式会社製)
【0137】
[成分(B)]
・水
【0138】
[成分(C):pH調整剤]
・テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH、東京化成工業株式会社製)
・酢酸(東京化成工業株式会社製)
【0139】
[成分(D):還元剤]
・アスコルビン酸(東京化成工業株式会社製)
【0140】
[その他の成分]
・1,3-ジアミノプロパン(東京化成工業株式会社製)
・ヒスチジン(東京化成工業株式会社製)
・クエン酸(東京化成工業株式会社製)
・1,2,4-トリアゾール(東京化成工業株式会社製)
・3,5-ジメチルピラゾール(東京化成工業株式会社製)
【0141】
[実施例1~9、比較例1~6]
<洗浄剤組成物の調製>
各成分を表1に示す組成となるように、水(成分(B))と混合して、実施例1~9及び比較例1~6の洗浄剤組成物を調製した。成分(B)の濃度は、成分(A)、成分(C)、成分(D)及びその他の成分を除いた残余濃度とした。
調製した洗浄剤組成物を以下の評価に使用した。
【0142】
なお、比較例1は、水(成分(B))のみを洗浄剤組成物として使用した比較例である。比較例2~6では、成分(A)の代わりに、キレート作用を有する化合物として、それぞれ、1,3-ジアミノプロパン、ヒスチジン及びクエン酸、クエン酸、1,2,4-トリアゾール、3,5-ジメチルピラゾールを使用した比較例である。
【0143】
<pH測定>
実施例1の洗浄剤組成物を、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら、pH計((株)堀場製作所製 商品名「D-24」)でpHの測定を行なった。測定サンプルは恒温槽中で25℃に液温を保った。
実施例2~9及び比較例1~6の各洗浄剤組成物についても同様の方法でpH測定をした。
測定結果を表1に示した。
【0144】
<Co溶出量の測定(Co腐食の評価)>
Co膜を成膜したシリコン基板を20mm角にカットした。なお、カット後のシリコン基板にはコバルトが360μg以上含有されていた。続いて、実施例1の洗浄剤組成物20mL中に該基板を25℃の条件下で30間分浸漬させた。その後、基板を取り出し、浸漬後の洗浄剤組成物中のCo濃度をICP発光分析装置(Seiko Instruments社製 型式「SPS1700HVR」)により測定した。求められたCo濃度から、30分間で溶出した、Co溶出量(ppb)を求めた。
【0145】
Co溶出量の評価結果をもとに、腐食の程度を評価した。Co溶出量が、200(ppb)以下のとき、Co腐食をAとした。また、Co溶出量が、200(ppb)を超えるとき、Co腐食をBとした。
【0146】
実施例2~9及び比較例1~6の洗浄剤組成物についても同様の方法でCo溶出量を測定し、Co腐食を評価した。結果を表1に示した。
【0147】
<洗浄特性評価>
Co膜を製膜したシリコン基板及びCu膜を製膜したシリコン基板をCMP用スラリーで研磨した。その後、実施例1の洗浄剤組成物とPVAブラシを用いて洗浄を行った。洗浄後、欠陥検査装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 型式「LS6600」)により基板上の残留異物の検査を行い、Co膜を製膜したシリコン基板上及びCu膜を製膜したシリコン基板上の1cm2あたりの欠陥数を求めた。
【0148】
実施例2~9及び比較例1~6の洗浄剤組成物についても同様に洗浄を行い、洗浄後の基板上の残留異物の検査を行い、Co膜を製膜したシリコン基板上及びCu膜を製膜したシリコン基板上の1cm2あたりの欠陥数を求めた。
【0149】
洗浄特性は、比較例1の洗浄剤組成物とPVAブラシを用いて洗浄した後のシリコン基板上の1cm2あたりの欠陥数を基準として、相対値から評価した。
Co膜を製膜したシリコン基板表面の1cm2あたりの欠陥数が、比較例1の70%以下のとき、Co洗浄をAとし、70%を超えたとき、Co洗浄をBとした。結果を表1に示した。
Cu膜を製膜したシリコン基板表面の1cm2あたりの欠陥数が、比較例1の70%以下のとき、Cu洗浄をAとし、70%を超えたとき、Cu洗浄をBとした。結果を表1に示した。
なお、下記表1中、「%」とあるのは、「質量%」を意味し、「DAP」とあるのは、「ジアミノプロパン」を意味する。
【0150】
【0151】
実施例1~9の洗浄剤組成物では、Co腐食性、Co洗浄性ともにAであった。
一方、比較例1は、水のみであるため、Coを腐食しないものの、Co洗浄はBであった。
【0152】
アルカリ性の洗浄剤組成物である比較例2及び3で使用したキレート作用を有する化合物の濃度は、実施例1~9の洗浄剤組成物に含有される成分(A)の同等以下の濃度であるにもかかわらず、比較例2及び3ではCu洗浄がAとなっており、比較例2及び3で使用した化合物(1,3-ジアミノプロパン、ヒスチジン及びクエン酸)は成分(A)と比べてキレート作用が強いことがわかる。
比較例4でも、Cu洗浄がAとなっており、比較例4で使用したクエン酸は成分(A)と比べてキレート作用が強いことがわかる。
そのため、比較例2~4では、キレート作用を有する化合物の作用が強く、Co洗浄がAとなる程度の濃度ではあるが、Co腐食がBであった。
【0153】
また、比較例5及び6で使用した化合物(1,2,4-トリアゾール及び3,5-ジメチルピラゾール)は、キレート作用が弱く、Co腐食は起こしにくいが、芳香環を有することから、Co表面に残留しやすい。そのため、比較例5及び6では、Co腐食はAであるが、Co洗浄及びCu洗浄はBであった。
【0154】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2017年3月17日出願の日本特許出願(特願2017-052098)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の洗浄剤組成物は、半導体デバイス用基板表面に腐食を起こすことなく、効率的に洗浄を行うことが可能であり、本発明は、半導体デバイスやディスプレイデバイス等の製造工程における汚染半導体デバイス用基板の洗浄処理技術として、工業的に非常に有用である。