(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】加工装置、及び、移動体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/142 20140101AFI20221012BHJP
B23K 26/352 20140101ALI20221012BHJP
B23K 26/16 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B23K26/142
B23K26/352
B23K26/16
(21)【出願番号】P 2019550281
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2018039688
(87)【国際公開番号】W WO2019082972
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/038559
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】白石 雅之
(72)【発明者】
【氏名】立崎 陽介
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-210582(JP,A)
【文献】特開2004-268080(JP,A)
【文献】特開昭63-295092(JP,A)
【文献】実開平03-051986(JP,U)
【文献】特開2009-045625(JP,A)
【文献】特開平09-327787(JP,A)
【文献】特開昭56-065986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の表面上の照射領域に加工光を照射する光照射装置と、
前記表面上に照射される前記加工光を、
前記光照射装置に対して前記表面に沿った第1方向及び前記第1方向と交差し且つ前記表面に沿った第2方向に沿って変更する位置変更装置と、
前記第2方向に関して前記加工光が照射される照射位置から離れた位置に配置される回収口を介して、前記加工光の照射に伴って前記物体から生じる物質を回収する回収装置と
を備え、
前記位置変更装置は、前記第1方向に沿った第1移動軌跡に沿って前記加工光の照射位置を移動させる第1動作と、前記第1移動軌跡の前記第2方向側で前記第1方向に沿った第2移動軌跡に沿って前記加工光の照射位置を移動させる第2動作とを行い、
前記回収口は、
前記第1方向に関して前記第1及び第2移動軌跡よりも長い寸法を有しており、且つ、前記第2移動軌跡の前記第1移動軌跡側に配置される加工装置。
【請求項2】
前記回収装置は、前記第2方向に関して前記光照射装置が前記加工光を照射可能な領域である照射可能領域から離れた位置に配置される
請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記回収装置は、前記加工光の光路を含む空間の少なくとも一部から前記物質を回収する
請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記回収装置は、前記光照射装置が前記加工光を照射可能な領域である照射可能領域の少なくとも一部から前記物質を回収する
請求項1から3のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項5】
前記回収装置は、前記表面の少なくとも一部から前記物質を回収する
請求項1から4のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項6】
前記回収装置は、前記照射位置から前記物質を回収する
請求項1から5のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項7】
前記第2方向は、前記第1方向に直交する
請求項1から6のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項8】
前記回収装置は、複数の前記回収口の少なくとも一つを介して前記物質を回収し、
前記複数の回収口のうちの第1の回収口は、前記第2方向に関して前記照射位置から離れた位置に配置され、
前記複数の回収口のうちの前記第1の回収口とは異なる第2の回収口は、前記第2方向に交差し且つ前記表面に沿った第3方向に関して前記照射位置から離れた位置に配置される
請求項1から7のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項9】
前記光照射装置は、前記照射位置と前記表面との相対位置が前記第1方向に沿って変更される期間の少なくとも一部、及び、前記照射位置と前記表面との相対位置が前記第2方向に沿って変更される期間の少なくとも一部のそれぞれにおいて、前記表面に前記加工光を照射し、
前記回収装置は、前記照射位置と前記表面との相対位置が前記第1方向に沿って変更される期間の少なくとも一部において、前記第1の回収口を介して前記物質を回収し、
前記回収装置は、前記照射位置と前記表面との相対位置が前記第2方向に沿って変更される期間の少なくとも一部において、前記第2の回収口を介して前記物質を回収する
請求項8に記載の加工装置。
【請求項10】
前記光照射装置と前記表面との間における前記加工光の光路を含む空間を囲う隔壁部材を更に備え、
前記回収口は、前記空間内に配置される
請求項1から9のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項11】
前記回収口は、前記表面に対して相対的に移動可能である
請求項1から10のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項12】
前記回収口は、前記照射位置と前記表面との相対位置の変更に合わせて移動可能である
請求項11に記載の加工装置。
【請求項13】
前記物質を検出する検出装置を更に備える
請求項1から12のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項14】
前記回収装置は、前記物質の検出結果に基づいて、前記物質の回収態様を変更する
請求項13に記載の加工装置。
【請求項15】
前記物質が生じている期間の少なくとも一部において、前記回収装置は、前記物質を回収し、
前記物質が生じていない期間の少なくとも一部において、前記回収装置は、前記物質を回収しない
請求項14に記載の加工装置。
【請求項16】
前記物質の濃度が第1所定値以上である場合には、前記回収装置は、前記物質を回収し、
前記物質の濃度が前記第1所定値以下の第2所定値以下である場合には、前記回収装置は、前記物質を回収しない
請求項14に記載の加工装置。
【請求項17】
前記回収装置は、前記物質の濃度が高くなるほど、前記物質の回収速度を高くする
請求項14から16のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項18】
前記回収口は、前記表面に向けられている
請求項1から17のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項19】
前記第1方向に交差し且つ前記表面に沿った第4方向に関して前記加工光が照射される照射位置から離れた位置に配置される放出口を介して気体を放出する気体放出装置を更に備える
請求項1から18のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項20】
前記放出口と前記回収口との間に、前記照射位置に照射される前記加工光の光路の少なくとも一部が配置される
請求項19に記載の加工装置。
【請求項21】
前記放出口と前記回収口との間に、前記光照射装置が前記加工光を照射可能な領域である照射可能領域の少なくとも一部が配置される
請求項19又は20に記載の加工装置。
【請求項22】
前記第4方向に沿った前記放出口から前記照射位置までの距離は、前記第2方向に沿った前記回収口から前記照射位置までの距離と異なる
請求項19から21のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項23】
前記第4方向に沿った前記放出口から前記照射位置までの距離は、前記第2方向に沿った前記回収口から前記照射位置までの距離よりも短い
請求項19から22のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項24】
前記気体放出装置は、前記加工光の照射に伴って前記物体から生じる物質に向けて前記気体を放出する
請求項19から23のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項25】
前記気体放出装置は、前記加工光の光路を含む空間の少なくとも一部に向けて前記気体を放出する
請求項19から24のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項26】
前記気体放出装置は、前記光照射装置が前記加工光を照射可能な領域である照射可能領域の少なくとも一部に向けて前記気体を放出する
請求項19から25のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項27】
前記気体放出装置は、前記表面の少なくとも一部に向けて前記気体を放出する
請求項19から26のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項28】
前記第4方向は、前記第1方向に直交する
請求項19から27のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項29】
前記照射位置と前記表面との相対位置が前記第1方向に沿って変更される期間の少なくとも一部において前記光照射装置が前記表面に前記加工光を照射する第3動作と、前記照射位置と前記表面との相対位置を前記第2方向に沿って変更する第4動作とを交互に繰り返し、
前記放出口は、前記第4方向に関して、前記照射位置から、前記第4動作によって前記表面に対して前記照射位置が移動する方向に向かって離れた位置に配置される
請求項19から28のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項30】
前記光照射装置と前記表面との間における前記加工光の光路を含む空間を囲う隔壁部材を更に備え、
前記放出口は、前記空間内に配置される
請求項19から29のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項31】
前記放出口は、前記表面に対して相対的に移動可能である
請求項19から30のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項32】
前記放出口は、前記照射位置と前記表面との相対位置の変更に合わせて移動可能である
請求項31に記載の加工装置。
【請求項33】
前記放出口は、前記加工光と前記表面との相対位置の変更に合わせて、前記表面に沿った方向において前記光照射装置が前記加工光を照射可能な領域である照射可能領域に追従するように移動可能である
請求項31又は32に記載の加工装置。
【請求項34】
前記物質を検出する検出装置を更に備える
請求項19から33のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項35】
前記気体放出装置は、前記物質の検出結果に基づいて、前記気体の放出態様を変更する
請求項34に記載の加工装置。
【請求項36】
前記物質が生じている期間の少なくとも一部において、前記気体放出装置は、前記気体を放出し、
前記物質が生じていない期間の少なくとも一部において、前記気体放出装置は、前記気体を放出しない
請求項35に記載の加工装置。
【請求項37】
前記物質の濃度が第1所定値以上である場合には、前記気体放出装置は、前記気体を放出し、
前記物質の濃度が前記第1所定値以下の第2所定値以下である場合には、前記気体放出装置は、前記気体を放出しない
請求項35に記載の加工装置。
【請求項38】
前記気体放出装置は、前記物質の濃度が高くなるほど、前記気体の放出速度を高くする
請求項35から37のいずれか一項に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工光を照射して物体を加工可能な加工装置、及び、移動体を製造する製造方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
物体を加工可能な加工装置として、特許文献1には、物体の表面にレーザ光線を照射して構造を形成し、表面に関連する抵抗を減少させる加工装置が記載されている。この種の加工装置では、物体に構造を適切に形成することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、物体の表面に加工光を照射する光照射装置と、前記加工光を通過させる前記光照射装置の光学系のうち最も前記物体側に位置する光学部材と前記物体の表面との間の光路を含む空間を囲う隔壁部材とを備える加工装置が提供される。
【0005】
第2の態様によれば、物体の表面に加工光を照射する光照射装置と、前記加工光の照射に伴って生じる物質を吸引する吸引装置とを備える加工装置が提供される。
【0006】
第3の態様によれば、光照射装置の光学系を介して物体の表面に加工光を照射することと、前記光学系のうち最も前記物体側に位置する光学部材と前記物体の表面との間の光路を含む空間を隔壁部材で囲うこととを含み、前記加工光の照射によって前記物体の一部の厚みを変更して、前記物体の表面に構造を形成する、流体中を移動する移動体の製造方法が提供される。
【0007】
第4の態様によれば、光照射装置の光学系を介して物体の表面に加工光を照射することと、前記光学系のうち最も前記物体側に位置する光学部材と前記物体の表面との間の光路を含む空間を隔壁部材で囲うこととを含み、前記加工光の照射によって前記物体の一部を除去して、前記物体の表面に構造を形成する、流体中を移動する移動体の製造方法が提供される。
【0008】
第5の態様によれば、物体の表面に加工光を照射することと、前記加工光の照射に伴って生じる物質を吸引することとを含み、前記加工光の照射によって前記物体の一部の厚みを変更して、前記物体の表面に構造を形成する、流体中を移動する移動体の製造方法が提供される。
【0009】
第6の態様によれば、物体の表面に加工光を照射することと、前記加工光の照射に伴って生じる物質を吸引することとを含み、前記加工光の照射によって前記物体の一部を除去して、前記物体の表面に構造を形成する、流体中を移動する移動体の製造方法が提供される。
【0010】
第7の態様によれば、物体の表面に加工光を照射する光照射装置と、前記表面における前記加工光の目標照射位置と前記表面との相対位置を、前記表面に沿った所定方向に沿って変更する位置変更装置と、前記所定方向に交差し且つ前記表面に沿った方向である回収方向に関して前記目標照射位置から離れた位置に配置される回収口を介して、前記加工光の照射に伴って前記物体から生じる物質を回収する回収装置とを備える加工装置が提供される。
【0011】
第8の態様によれば、物体の表面に加工光を照射する光照射装置と、前記表面における前記加工光の目標照射位置と前記表面との相対位置を、前記表面に沿った所定方向に沿って変更する位置変更装置と、前記所定方向に交差し且つ前記表面に沿った方向である放出方向に関して前記目標照射位置から離れた位置に配置される放出口を介して気体を放出する気体放出装置とを備える加工装置が提供される。
【0012】
第9の態様によれば、物体の表面に加工光を照射する光照射装置と、前記光照射装置の少なくとも一部が配置される内部空間が形成された筐体とを備え、前記内部空間の気圧は、前記筐体の外部空間の気圧よりも高い加工装置が提供される。
【0013】
第10の態様によれば、光照射装置を用いて物体の表面に加工光を照射することと、前記表面における前記加工光の目標照射位置と前記表面との相対位置を、前記表面に沿った所定方向に沿って変更することと、前記所定方向に交差し且つ前記表面に沿った方向である回収方向に関して前記目標照射位置から離れた位置に配置される回収口を介して、前記加工光の照射に伴って前記物体から生じる物質を回収することとを含み、前記加工光の照射によって前記物体の一部の厚みを変更して及び/又は前記物体の一部を除去して、前記物体の表面に構造を形成する、流体中を移動する移動体の製造方法が提供される。
【0014】
第11の態様によれば、流体中を移動する移動体の製造方法が提供される。光照射装置を用いて物体の表面に加工光を照射することと、前記表面における前記加工光の目標照射位置と前記表面との相対位置を、前記表面に沿った所定方向に沿って変更することと、前記所定方向に交差し且つ前記表面に沿った方向である放出方向に関して前記目標照射から離れた位置に配置される放出口を介して気体を放出することとを含み、前記加工光の照射によって前記物体の一部の厚みを変更して及び/又は前記物体の一部を除去して、前記物体の表面に構造を形成する、流体中を移動する移動体の製造方法が提供される。
【0015】
第12の態様によれば、筐体の内部空間に少なくとも一部が配置された光照射装置を用いて、物体の表面に加工光を照射することと、前記筐体の内部空間の気圧を、前記筐体の外部空間の気圧よりも高くすることとを含み、前記加工光の照射によって前記物体の一部の厚みを変更して及び/又は前記物体の一部を除去して、前記物体の表面に構造を形成する、流体中を移動する移動体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態の加工装置の全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)の夫々は、加工対象物の表面に形成された塗装膜の加工の様子を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3(a)は、本実施形態の加工装置が備える光照射装置を模式的に示す断面図であり、
図3(b)及び
図3(c)の夫々は、光照射装置が備える光源系の構成を示す断面図であり、
図3(d)は、光照射装置の光学系の他の例を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、本実施形態の加工装置が形成するリブレット構造の断面を示す断面図であり、
図5(b)は、本実施形態の加工装置が形成するリブレット構造を示す斜視図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)の夫々は、リブレット構造が形成される加工対象物の一例である航空機を示す正面図であり、
図6(c)は、リブレット構造が形成される加工対象物の一例である航空機を示す側面図である。
【
図7】
図7は、塗装膜SFの表面に設定される複数の単位加工領域を示す平面図である。
【
図8】
図8は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図9】
図9(a)は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示す加工動作の一工程が行われている塗装膜の表面を示す平面図である。
【
図10】
図10は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図11】
図11(a)は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図であり、
図11(b)は、
図11(a)に示す加工動作の一工程が行われている塗装膜の表面を示す平面図である。
【
図12】
図12は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図13】
図13は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図14】
図14は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図15】
図15は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図16】
図16は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図17】
図17は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図18】
図18は、光照射装置の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図19】
図19は、光照射装置の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図20】
図20は、光照射装置の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図21】
図21は、光照射装置の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図22】
図22は、光照射装置の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図23】
図23は、光照射装置の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図24】
図24は、光照射装置の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図25】
図25は、第2変形例の加工装置の全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図26】
図26(a)は、塗装膜の表面が平面となる場合において、光学系の焦点深度の範囲内に塗装膜の表面が位置する様子を示す断面図であり、
図26(b)は、塗装膜の表面が曲面となる場合において、光学系の焦点深度の範囲内に塗装膜の表面が位置する様子を示す断面図であり、
図26(c)は、塗装膜の表面に凹凸が存在する場合において、光学系の焦点深度の範囲内に塗装膜の表面が位置する様子を示す断面図であり、
図26(d)は、塗装膜の表面が光学系の光軸に対して傾斜している場合において、光学系の焦点深度の範囲内に塗装膜の表面が位置する様子を示す断面図である。
【
図27】
図27は、複数の加工光の集光位置を個別に調整可能な光照射装置を模式的に示す断面図である。
【
図28】
図28は、光学系が塗装膜側に非テレセントリックな光学系である場合において、複数の加工光の照射の様子を示す断面図である。
【
図29】
図29(a)は、塗装膜の表面が平面となる場合において、複数の加工光の集光位置が塗装膜の表面が位置する様子を示す断面図であり、
図29(b)は、塗装膜の表面が曲面となる場合において、複数の加工光の集光位置が塗装膜の表面に位置する様子を示す断面図であり、
図29(c)は、塗装膜の表面に凹凸が存在する場合において、複数の加工光の集光位置が塗装膜の表面に位置する様子を示す断面図であり、
図29(d)は、塗装膜の表面が光学系の光軸に対して傾斜している場合において、複数の加工光の集光位置が塗装膜の表面に位置する様子を示す断面図である。
【
図30】
図30(a)は、塗装膜の表面が平面となる場合において、塗装膜の表面を含むように設定された光学系の焦点深度の範囲を示す断面図であり
図30(b)は、塗装膜の表面が曲面となる場合において、塗装膜の表面を含むように設定された光学系の焦点深度の範囲を示す断面図であり、
図30(c)は、塗装膜の表面に凹凸が存在する場合において、塗装膜の表面を含むように設定された光学系の焦点深度の範囲を示す断面図であり、
図30(d)は、塗装膜の表面が光学系の光軸に対して傾斜している場合において、塗装膜の表面を含むように設定された光学系の焦点深度の範囲を示す断面図である。
【
図31】
図31(a)は、塗装膜の表面が平面となる場合において、塗装膜SFの表面に一致するように設定された像面を示す断面図であり、
図31(b)は、塗装膜SFの表面が曲面となる場合において、塗装膜SFの表面に一致するように設定された像面を示す断面図であり、
図31(c)は、塗装膜の表面に凹凸が存在する場合において、塗装膜SFの表面に一致するように設定された像面を示す断面図であり、
図31(d)は、塗装膜の表面が光学系の光軸に対して傾斜している場合において、塗装膜SFの表面に一致するように設定された像面を示す断面図である。
【
図32】
図32(a)は、非加工領域を示す断面図であり、
図32(b)は、非加工領域を示す平面図である。
【
図33】
図33(a)から
図33(c)の夫々は、加工光に対する塗装膜の反射率と、制御装置が設定する加工光の強度との間の関係を示すグラフである。
【
図34】
図34(a)から
図33(c)の夫々は、加工光に対する塗装膜の反射率と、制御装置が設定する加工光の照射時間との間の関係を示すグラフである。
【
図35】
図35は、波長が異なる複数の計測光に対する塗装膜の反射率を示すグラフである。
【
図36】
図36は、複数の光源系を備える光照射装置を模式的に示す断面図である。
【
図37】
図37は、塗装膜SFに対して光照射装置が移動する場合において、表面特性計測装置が塗装膜の表面の形状を計測する範囲を示す断面図である。
【
図38】
図38は、第3変形例の加工装置の全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図39】
図39は、構造計測装置が備える投光装置と検出装置との位置関係を示す平面図である。
【
図40】
図40は、構造計測装置がリブレット構造の特性を計測するサンプル領域を示す平面図である。
【
図41】
図41(a)は、加工装置が形成するべき理想的なリブレット構造を示す断面図であり、
図41(b)は、理想的なリブレット構造のサイズと同じサイズのリブレット構造を示す断面図であり、
図41(c)は、理想的なリブレット構造のサイズよりも小さいサイズのリブレット構造を示す断面図であり、
図41(d)は、理想的なリブレット構造のサイズよりも大きいサイズのリブレット構造を示す断面図である。
【
図42】
図42(a)は、理想的なリブレット構造の形状と同じ形状のリブレット構造を示す断面図であり、
図42(b)は、理想的なリブレット構造の形状と異なる形状のリブレット構造を示す断面図である。
【
図43】
図43(a)は、理想的なリブレット構造を構成する凹状構造の位置と同じ位置に凹状構造を含むリブレット構造を示す断面図であり、
図43(b)は、理想的なリブレット構造を構成する凹状構造の位置と異なる位置に凹状構造を含むリブレット構造を示す断面図である。
【
図44】
図44(a)は、リブレット構造が形成されているサンプル領域を示す断面図であり、
図44(b)は、リブレット構造が形成されていないサンプル領域を示す断面図である。
【
図45】
図45(a)は、理想的なサイズよりも小さいリブレット構造に対して、当該リブレット構造の修正のために加工光を照射する様子を示す断面図であり、
図45(b)は、修正されたリブレット構造を示す断面図である。
【
図46】
図46は、第4変形例の加工装置が備える光照射装置の構造を模式的に示す断面図である。
【
図47】
図47(a)及び
図47(b)は、配列ピッチが異なる複数の照射領域を示す平面図であり、
図47(c)及び
図47(d)は、夫々、
図47(a)及び
図47(b)に示す複数の照射領域に複数の加工光が照射されることで形成されるリブレット構造を示す断面図である。
【
図48】
図48(a)及び
図48(b)は、相対角度が異なる複数の加工光を示す平面図であり、
図48(c)及び
図48(d)は、夫々、
図48(a)及び
図48(b)に示す複数の加工光が照射される複数の照射領域を示す平面図である。
【
図49】
図49(a)及び
図49(b)は、塗装膜SFからの距離が異なる光照射装置から照射される複数の加工光を示す平面図であり、
図49(c)及び
図49(d)は、夫々、
図49(a)及び
図49(b)に示す複数の加工光が照射される複数の照射領域を示す平面図である。
【
図50】
図50(a)及び
図50(c)は、加工光を照射する光源の数が異なる光照射装置から照射される複数の加工光を示す平面図であり、
図50(b)及び
図50(d)は、夫々、
図50(a)及び
図50(c)に示す複数の加工光が照射される複数の照射領域を示す平面図である。
【
図51】
図51(a)及び
図51(c)は、交差する角度が異なる第1及び第2分岐光を示す平面図であり、
図51(b)及び
図51(d)は、夫々、
図51(a)及び
図51(c)に示す第1及び第2分岐光が干渉することで塗装膜の表面に形成する干渉縞を示す平面図である。
【
図52】
図52は、第1及び第2分岐光が交差する角度を調整可能な光照射装置を模式的に示す断面図である。
【
図53】
図53は、第5変形例の加工装置の全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図54】
図54(a)及び
図54(c)の夫々は、塗装膜の表面上での強度分布を示す断面図であり、
図54(b)及び
図54(d)は、夫々、
図54(a)及び
図54(c)に示す強度分布を有する複数の加工光が照射されることで形成されるリブレット構造を示す断面図である。
【
図55】
図55(a)及び
図55(c)は、形状が異なる複数の照射領域を示す断面図であり、
図55(b)及び
図55(d)は、夫々、
図55(a)及び
図55(c)に示す形状を有する複数の照射領域に複数の加工光が照射されることで形成されるリブレット構造を示す断面図である。
【
図56】
図56(a)及び
図56(c)は、大きさが異なる複数の照射領域を示す断面図であり、
図56(b)及び
図56(d)は、夫々、
図56(a)及び
図56(c)に示す大きさを有する複数の照射領域に複数の加工光が照射されることで形成されるリブレット構造を示す断面図である。
【
図57】
図57(a)及び
図57(c)は、強度が異なる複数の加工光を示す断面図であり、
図57(b)及び
図57(d)は、夫々、
図57(a)及び
図57(c)に示す強度の複数の加工光が照射されることで形成されるリブレット構造を示す断面図である。
【
図58】
図58(a)は、延在方向に沿って凹状構造の断面形状が変わるリブレット構造を示す斜視図であり、
図58(b)は、
図58(a)のI-I’断面図であり、
図58(c)は、
図58(a)のII-II’断面図である。
【
図59】
図59(a)は、延在方向に沿って凹状構造の幅が変わるリブレット構造を示す斜視図であり、
図59(b)は、
図54(a)のI-I’断面図であり、
図59(c)は、
図59(a)のII-II’断面図である。
【
図60】
図60は、第6変形例の加工装置の全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図61】
図61は、第7変形例の加工装置の全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図62】
図62は、第8変形例の加工装置の全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図63】
図63は、光照射装置を塗装膜に位置させる吸着部の構成の一例を示す断面図である。
【
図64】
図64は、第9変形例の加工装置の全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図65】
図65は、第10変形例の加工装置の全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図66】
図66は、隣接する他の単位加工領域と部分的に重複する単位加工領域を示す平面図である。
【
図67】
図67は、隣接する2つの単位加工領域に対する加工光の照射の様子を示す断面図である。
【
図68】
図68は、隣接する2つの単位加工領域に対する加工光の照射の様子を示す断面図である。
【
図69】
図69は、隣接する2つの単位加工領域に対して照射される加工光の強度を示す断面図である。
【
図70】
図70は、隣接する2つの単位加工領域に対して照射される加工光の強度を示す断面図である。
【
図71】
図71(a)から
図71(c)の夫々は、1回のスキャン動作で複数の照射領域が移動する領域を示す平面図である。
【
図72】
図72は、第13変形例の加工装置の全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図73】
図73は、ガルバノミラーによって偏向される加工光の様子を示す断面図である。
【
図74】
図74(a)及び
図74(b)のそれぞれは、スキャン動作によって照射領域(更には、目標照射位置)が移動するY軸方向に沿って、照射領域から(つまり、目標照射位置)から離れた位置に配置される回収口を示す平面図である。
【
図75】
図75は、第13変形例における回収口と目標照射位置との位置関係の第1例を示す平面図である。
【
図76】
図76は、第13変形例における回収口と目標照射位置との位置関係の第2例を示す平面図である。
【
図77】
図77は、第13変形例における回収口と目標照射位置との位置関係の第3例を示す断面図である。
【
図78】
図78(a)及び
図78(b)のそれぞれは、スキャン動作によって照射領域(更には、目標照射位置)が移動するY軸方向に沿って、照射領域から(つまり、目標照射位置)から離れた位置に配置される放出口を示す平面図である。
【
図79】
図79は、第13変形例における放出口と目標照射位置との位置関係の第1例を示す平面図である。
【
図80】
図80は、第13変形例における放出口と目標照射位置との位置関係の第2例を示す平面図である。
【
図81】
図81は、第13変形例における放出口と目標照射位置との位置関係の第3例を示す断面図である。
【
図82】
図82(a)は、第13変形例における回収口と放出口との位置関係の一例を示す平面図であり、
図82(b)は、第13変形例における回収口と放出口との位置関係の一例を示す断面図である。
【
図83】
図83は、第14変形例における複数の回収口及び複数の放出口を示す平面図である。
【
図84】
図84は、第14変形例における複数の回収口及び複数の放出口を示す平面図である。
【
図85】
図85は、第14変形例における複数の回収口及び複数の放出口を示す平面図である。
【
図86】
図86は、第15変形例の加工装置の全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図87】
図87は、第16変形例における回収口及び放出口を示す平面図である。
【
図88】
図88(a)から
図88(b)の夫々は、複数の層が積層された構造体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明が以下に説明する実施形態に限定されることはない。
【0018】
(1)加工装置1の構造
図1を参照しながら、本実施形態の加工装置1の構造について説明する。
図1は、本実施形態の加工装置1の構造を模式的に示す断面図である。尚、以下では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸によって規定される三次元座標空間内で、加工装置1の構造を説明する。X軸及びY軸は、水平面に沿った方向であり、Z軸は、X軸及びY軸に直交する方向である。但し、
図1では水平面に沿った表面を有する加工対象物S上に加工装置1が配置されているものの、加工装置1は、水平面に沿った表面を有する加工対象物S上に配置されるとは限らない。例えば、
図6等を参照しながら後に詳述するように、加工装置1は、水平面に交差する表面を有する加工対象物S上に配置されたりすることもあれば、加工対象物Sから吊り下がることもある。この場合には、X軸及びY軸は、便宜上、加工対象物Sの表面に沿った方向として定義されてもよい。
【0019】
図1に示すように、加工装置1は、加工対象物Sの表面に形成された塗装膜SFを加工する。加工対象物Sは、例えば、金属であってもよいし、合金(例えば、ジュラルミン等)であってもよいし、樹脂(例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)等)であってもよいし、ガラスであってもよいし、それ以外の任意の材料から構成される物体であってもよい。塗装膜SFは、加工対象物Sの表面を覆う塗料の膜である。塗装膜SFの厚みは、例えば数十マイクロメートルから数百マイクロメートルであるが、その他の任意のサイズであってもよい。塗装膜SFを構成する塗料は、例えば、樹脂性の塗料(例えば、ポリウレタン系の塗料、ビニル系の塗料、シリコン系の塗料及びエポキシ系の塗料のうちの少なくとも一つ)を含んでいてもよいし、それ以外の種類の塗料を含んでいてもよい。
【0020】
加工装置1は、塗装膜SFを加工するために、塗装膜SFに対して加工光ELを照射する。加工光ELは、塗装膜SFに照射されることで塗装膜SFを加工可能である限りは、どのような種類の光であってもよい。一例として、加工光ELは、レーザ光であってもよい。更に、加工光ELは、塗装膜SFに照射されることで塗装膜SFを加工可能である限りは、どのような波長の光であってもよい。本実施形態では、加工光ELが不可視光(例えば、赤外光及び紫外光の少なくとも一方等)である例を用いて説明を進める。但し、加工光ELは、可視光であってもよい。
【0021】
加工装置1は、塗装膜SFの表面に設定(言い換えれば、形成)される照射領域EAに対して加工光ELを照射する。
図2(a)に示すように、照射領域EAに加工光ELが照射されると、照射領域EAと重なる塗装膜SF(つまり、照射領域EAの-Z側に位置する塗装膜)の一部が加工光ELによって蒸発する。このとき、塗装膜SFの厚み方向において、照射領域EAに重なる塗装膜SFの全てが蒸発しない。つまり、塗装膜SFの厚み方向において、照射領域EAに重なる塗装膜SFの一部(具体的には、塗装膜SFのうち照射領域EAに相対的に近い部分)が蒸発する一方で、照射領域EAに重なる塗装膜SFの他の一部(具体的には、塗装膜SFのうち照射領域EAから相対的に遠い部分)が蒸発しない。言い換えれば、塗装膜SFは、塗装膜SFから加工対象物Sが露出しない程度にしか蒸発しない。その結果、塗装膜SFが蒸発した部分では、塗装膜SFが除去される。一方で、塗装膜SFが蒸発しなかった部分では、塗装膜SFがそのまま残留する。つまり、
図2(b)に示すように、加工光ELが照射された部分において、塗装膜SFが部分的に除去される。その結果、
図2(b)に示すように、加工光ELが照射された部分において、加工光ELが照射されていない部分と比較して、塗装膜SFの厚みが薄くなる。言い換えれば、
図2(b)に示すように、加工対象物Sの表面上には、加工光ELが照射されていないがゆえに相対的に厚いままの塗装膜SFと、加工光ELが照射されたがゆえに相対的に薄くなった塗装膜SFとが存在することになる。つまり、加工光ELの照射により、塗装膜SFの厚みが少なくとも部分的に調整される。その結果、塗装膜SFの表面に、塗装膜SFが相対的に薄い部分に相当する凹部(言い換えれば、溝部)Cが形成される。従って、本実施形態における「塗装膜SFを加工する動作」は、塗装膜SFの厚みを調整する動作、塗装膜SFの一部を除去する動作、及び、塗装膜SFに凹部Cを形成する動作を含む。また、塗装膜SFに照射される加工光ELのエネルギーは、加工光ELの照射によって加工対象物Sに影響を与えないように定められる。言い換えると、加工光ELのエネルギーは、加工光ELの照射によって塗装膜SFのみに影響を与えるように定められる。
【0022】
塗装膜SFは、加工光ELを吸収することで蒸発する。つまり、塗装膜SFは、加工光ELのエネルギーが塗装膜SFに伝達されることで、例えば光化学的に分解され除去される。尚、加工光ELがレーザ光である場合には、加工光ELのエネルギーが塗装膜SFに伝達されることで塗装膜SF等が光化学的に分解され除去される現象を、レーザーアブレーションと称することもある。このため、塗装膜SFは、加工光ELを吸収可能な材料を含んでいる。具体的には、例えば、塗装膜SFは、加工光ELに関する吸収率(つまり、可視光の波長域とは異なる波長の光に関する吸収率)が所定の第1吸収閾値以上となる材料を含んでいてもよい。このような材料は、色素であってもよい。
【0023】
塗装膜SFが色素を含む場合には、当該色素は、可視光の照射時に所望色を呈する色素であってもよい。その結果、このような色素を含む塗装膜SFは、所望色を呈することとなる。この場合、当該色素は、塗装膜SFが所望色を呈するように、可視光の波長域のうち塗装膜SFによって反射されることで所望色の光として人間に認識される波長の第1光成分の吸収率と、可視光のうち第1光成分以外の第2光成分の吸収率とが異なるという特性を有していてもよい。例えば、色素は、第1光成分の吸収率が第2光成分の吸収率よりも小さくなるという特性を有していてもよい。例えば、色素は、第1光成分の吸収率が所定の第2吸収閾値(但し、第2吸収閾値は、第1吸収閾値よりも小さい)以下になり、且つ、第2光成分の吸収率が所定の第3吸収閾値(但し、第3吸収閾値は、第2吸収閾値よりも大きい)以上になるという特性を有していてもよい。このような不可視光である加工光ELを相応に吸収可能である一方で所望色を呈する色素の一例として、例えば、ウクライナ国キエフに所在するスペクトラムインフォ社製の近赤外線吸収色素(一例として、テトラフルオロホウ素化4-((E)-2-{(3E)-2-クロロ-3-[2-(2,6-ジフェニル-4H-チオピラン-4-イリデン)エチリデン]シクロヘキサ-1-エン-1-イル}ビニル)-2,6-ジフェニルチオピリリウム)があげられる。
【0024】
或いは、塗装膜SFが色素を含む場合には、当該色素は、可視光に対して透明な色素であってもよい。その結果、このような色素を含む塗装膜SFは、透明な膜(いわゆる、クリアコート)となる。この場合、当該色素は、塗装膜SFが透明になるように、可視光をあまり吸収しない(つまり、相応に反射する)という特性を有していてもよい。例えば、色素は、可視光の吸収率が所定の第4吸収閾値よりも小さくなるという特性を有していてもよい。このような不可視光である加工光ELを相応に吸収可能である一方で可視光に対して透明になる色素の一例として、例えば、スペクトラムインフォ社製の近赤外線吸収色素(一例として、テトラフルオロホウ素化6-クロロ-2-[(E)-2-(3-{(E)-2-[6-クロロ-1-エチルベンゾ[cd]インドール-2(1H)-イリデン]エチリデン}-2-フェニル-1-シクロペンテン-1-イル)エテニル]-1-エチルベンゾ[cd]インドリウム)があげられる。
【0025】
再び
図1において、塗装膜SFを加工するために、加工装置1は、光照射装置11と、駆動系12と、収容装置13と、支持装置14と、駆動系15と、排気装置16と、気体供給装置17と、制御装置18とを備える。
【0026】
光照射装置11は、制御装置18の制御下で、塗装膜SFに対して加工光ELを照射可能である。加工光ELを照射するために、光照射装置11は、
図3(a)に示すように、加工光ELを射出可能な光源系111と、光源系111から射出された加工光ELを塗装膜SFに導く光学系112とを備える。
【0027】
光源系111は、例えば複数の加工光ELを同時に射出する。このため、光源系111は、
図3(b)に示すように、複数の光源1111を備えている。複数の光源1111は、等間隔で一列に配列される。各光源1111は、パルス光を加工光ELとして射出する。パルス光の発光時間幅(以下、“パルス幅”と称する)が短くなると、加工精度(例えば、後述するリブレット構造の形成精度)が向上する。従って、各光源1111は、パルス幅が相対的に短いパルス光を、加工光ELとして射出してもよい。例えば、各光源1111は、パルス幅が1000ナノ秒以下となるパルス光を、加工光ELとして射出してもよい。或いは、
図3(c)に示すように、光源系111は、単一の光源1111と、当該単一の光源1111からの光を複数の加工光ELに分岐する分岐器1112とを備えていてもよい。分岐器1112が分岐した複数の加工光ELが夫々射出される複数の射出口は、等間隔で一列に配列される。分岐器1112の一例として、光ファイバカプラ及び導波路型スプリッタ等の少なくとも一つがあげられる。尚、後述するように、分岐器1112として、レンズアレイ、回折光学素子及び空間光変調器等の少なくとも一つを用いてもよい。
【0028】
光学系112は、フォーカスレンズ1121と、ガルバノミラー1122と、fθレンズ1123とを備える。複数の加工光ELは、フォーカスレンズ1121と、ガルバノミラー1122と、fθレンズ1123とを介して、塗装膜SFに照射される。
【0029】
フォーカスレンズ1121は、1以上のレンズで構成され、その少なくとも一部のレンズの光軸方向に沿った位置を調整することで、複数の加工光ELの集光位置(つまり、光学系112の焦点位置)を調整するための光学素子である。ガルバノミラー1122は、複数の加工光ELが塗装膜SFの表面を走査する(つまり、複数の加工光ELが夫々照射される複数の照射領域EAが塗装膜SFの表面を移動する)ように、複数の加工光ELを偏向する。ガルバノミラー112は、X走査ミラー1122Xと、Y走査ミラー1122Yとを備える。X走査ミラー1122Xは、複数の加工光ELをY走査ミラー1122Yに向けて反射する。X走査ミラー1122Xは、θY方向(つまり、Y軸周りの回転方向)に揺動又は回転可能である。X走査ミラー1122Xの揺動又は回転により、複数の加工光ELは、塗装膜SFの表面をX軸方向に沿って走査する。X走査ミラー1122Xの揺動又は回転により、複数の照射領域EAは、塗装膜SF上をX軸方向に沿って移動する。X走査ミラー1122Xは、複数の照射領域EAと塗装膜SFとの間のX軸方向に沿った相対的な位置関係を変更する。Y走査ミラー1122Yは、複数の加工光ELをfθレンズ1123に向けて反射する。Y走査ミラー1122Yは、θX方向(つまり、X軸周りの回転方向)に揺動又は回転可能である。Y走査ミラー1122Yの揺動又は回転により、複数の加工光ELは、塗装膜SFの表面をY軸方向に沿って走査する。Y走査ミラー1122Yの揺動又は回転により、複数の照射領域EAは、塗装膜SF上をY軸方向に沿って移動する。Y走査ミラー1122Yは、複数の照射領域EAと塗装膜SFとの間のY軸方向に沿った相対的な位置関係を変更する。fθレンズ1123は、ガルバノミラー1122からの複数の加工光ELを塗装膜SF上に集光するための光学素子である。
【0030】
fθレンズ1123は、光学系112が備える光学素子のうち光学系112の最も光射出側に位置する(言い換えれば、塗装膜SFに最も近い、又は、複数の加工光ELの光路の終端に位置する)終端光学素子である。fθレンズ1123は、光学系112に対して脱着可能なように構成されている。その結果、光学系112から古いfθレンズ1123を取り外した後に、光学系112に新しいfθレンズ1123を取り付けることが可能となる。但し、fθレンズ1123よりも射出側に設けられた光学素子(例えば、カバーレンズ等)を光学系112が備えている場合には、当該光学素子が終端光学素子となり、当該光学素子が光学系112に対して脱着可能なように構成されている。
【0031】
光学系112からの複数の加工光ELの進行方向は、例えば互いに平行になる。その結果、本実施形態では、塗装膜SFに、進行方向が互いに平行な複数の加工光ELが同時に照射される。つまり、塗装膜SF上には、複数の照射領域EAが同時に設定される。このため、塗装膜SFに単一の加工光ELが照射される場合と比較して、塗装膜SFの加工に関するスループットが向上する。尚、光学系112としては、例えば
図3(d)に示すように、全ての光学部材(例えば、フォーカスレンズ1121、ガルバノミラー1122及びfθレンズ1123)が同一平面上に位置しない構成であってもよい。
【0032】
再び
図1において、駆動系12は、制御装置18の制御下で、光照射装置11を、塗装膜SFに対して(つまり、塗装膜SFが表面に形成された加工対象物Sに対して)移動させる。つまり、駆動系12は、光照射装置11と塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、光照射装置11を塗装膜SFに対して移動させる。光照射装置11と塗装膜SFとの間の相対的な位置関係が変更されると、複数の加工光ELが夫々照射される複数の照射領域EAと塗装膜SFとの間の相対的な位置関係もまた変更される。このため、駆動系12は、複数の照射領域EAと塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、光照射装置11を塗装膜SFに対して移動させるとも言える。駆動系12は、塗装膜SFの表面に沿って、光照射装置11を移動させてもよい。
図1に示す例では、塗装膜SFの表面は、X軸及びY軸のうち少なくとも一方に平行な平面であるため、駆動系12は、X軸及びY軸の少なくとも一方に沿って、光照射装置11を移動させてもよい。その結果、塗装膜SF上で照射領域EAがX軸及びY軸の少なくとも一方に沿って移動する。駆動系12は、塗装膜SFの厚み方向(つまり、塗装膜SFの表面に交差する方向)に沿って、光照射装置11を移動させてもよい。
図1に示す例では、塗装膜SFの厚み方向は、Z軸に沿った方向であるため、駆動系12は、Z軸に沿って、光照射装置11を移動させてもよい。駆動系12は、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つに加えて、θX方向、θY方向及びθZ方向(つまり、Z軸周りの回転方向)の少なくとも一つに沿って、光照射装置11を移動させてもよい。
【0033】
駆動系12は、光照射装置11を支持すると共に、当該支持している光照射装置11を移動させる。この場合、駆動系12は、例えば、光照射装置11を支持する第1支持部材と、当該第1支持部材を移動させる第1移動機構とを備えている。
【0034】
収容装置13は、天井部材131と、隔壁部材132とを備えている。天井部材131は、光照射装置11の+Z側に配置される。天井部材131は、XY平面に沿った板状の部材である。天井部材131は、支持部材133を介して駆動系12を支持する。天井部材131の-Z側の面の外縁(或いは、その近傍)には、隔壁部材132が配置されている。隔壁部材132は、天井部材131から-Z側に向かって延伸する筒状(例えば、円筒状の又は矩形筒状の)の部材である。天井部材131と隔壁部材132とによって囲まれた空間は、光照射装置11及び駆動系12を収容するための収容空間SPとなる。従って、上述した駆動系12は、収容空間SP内で光照射装置11を移動させる。更に、収容空間SPは、光照射装置11と塗装膜SFとの間の空間(特に、加工光ELの光路を含む空間)を含んでいる。より具体的には、収容空間SPは、光照射装置11が備える終端光学素子(例えば、fθレンズ1123)と塗装膜SFとの間の空間(特に、加工光ELの光路を含む空間)を含んでいる。
【0035】
天井部材131及び隔壁部材132の夫々は、加工光ELを遮光可能な部材である。つまり、天井部材131及び隔壁部材132の夫々は、加工光ELの波長に対して不透明である。その結果、収容空間SP内を伝搬する加工光ELが収容空間SPの外部(つまり、収容装置13の外部)に漏れ出てくることはない。尚、天井部材131及び隔壁部材132の夫々は、加工光ELを減光可能な部材であってもよい。つまり、天井部材131及び隔壁部材132の夫々は、加工光ELの波長に対して半透明であってもよい。更に、天井部材131及び隔壁部材132の夫々は、加工光ELの照射によって発生した不要物質を透過させない(つまり、遮蔽可能な)部材である。不要物質の一例として、塗装膜SFの蒸気があげられる。その結果、収容空間SP内で発生した不要物質が収容空間SPの外部(つまり、収容装置13の外部)に漏れ出てくることはない。
【0036】
隔壁部材132の端部(具体的には、塗装膜SF側の端部であり、
図1に示す例では、-Z側の端部)134は、塗装膜SFの表面に接触可能である。端部134が塗装膜SFに接触する場合には、収容装置13(つまり、天井部材131及び隔壁部材132)は、塗装膜SFと協働して収容空間SPの密閉性を維持する。端部134は、塗装膜SFと接触した場合に、塗装膜SFの表面の形状に応じてその形状(特に、端部134のうち塗装膜SFに接触する接触面(
図1に示す例では、-Z側の面)の形状、以下同じ)を変化させることが可能である。例えば、表面が平面形状の塗装膜SFに端部134が接触する場合には、端部134の形状は、塗装膜SFと同様に平面形状になる。例えば、表面が曲面形状の塗装膜SFに端部134が接触する場合には、端部134の形状は、塗装膜SFと同様に曲面形状になる。その結果、端部134が塗装膜SFの表面の形状に応じてその形状を変化させることができない場合と比較して、収容空間SPの密閉性が向上する。形状を変化させることが可能な端部134の一例として、ゴム等の弾性を有する部材(言い換えれば、柔軟な部材)から形成されている端部134があげられる。尚、形状を変化させることが可能な端部134として、例えば
図4に示されるような弾性を有する構造である蛇腹状の端部134aが用いられてもよい。
【0037】
図1に戻って、端部134は、塗装膜SFに接触した状態で塗装膜SFに付着可能である。例えば、端部134は、塗装膜SFに吸着可能な吸着機構を備えていてもよい。端部134が塗装膜SFに付着すると、端部134が塗装膜SFに付着していない場合と比較して、収容空間SPの密閉性がより一層向上する。但し、端部134が塗装膜SFに付着可能でなくてもよい。この場合であっても、端部134が塗装膜SFに接触する限りは、収容空間SPの密閉性が相応に維持されることに変わりはない。
【0038】
隔壁部材132は、制御装置18の制御下で動作する不図示の駆動系(例えば、アクチュエータ)によって、Z軸に沿って伸縮可能な部材である。例えば、隔壁部材132は、蛇腹状の部材(いわゆる、ベローズ)であってもよい。この場合、隔壁部材132は、蛇腹部分の伸縮によって伸縮可能である。或いは、例えば、隔壁部材132は、異なる径を有する複数の中空状の円筒部材が組み合わせられたテレスコピックパイプを備えていてもよい。この場合、隔壁部材132は、複数の円筒部材の相対的な移動によって伸縮可能である。隔壁部材132の状態は、少なくとも、隔壁部材132がZ軸に沿って伸びることでZ軸方向の長さが相対的に長い第1伸長状態と、隔壁部材132がZ軸に沿って縮小することでZ軸方向の長さが相対的に短い第1縮小状態とに設定可能である。隔壁部材132が第1伸長状態にある場合には、端部134は、塗装膜SFに接触可能である。一方で、隔壁部材132が第1縮小状態にある場合には、端部134は、塗装膜SFに接触しない。つまり、隔壁部材132が第1縮小状態にある場合には、端部134は、塗装膜SFから+Z側に離れている。尚、隔壁部材132の状態を隔壁部材132の端部134が塗装膜SFに接触可能な第1伸長状態と、端部134が塗装膜SFから離れた第1縮小状態との間で切り換えるための構成は、隔壁部材132を伸縮する構成には限定されない。例えば収容装置13自体を±Z方向に沿って移動可能な構成とすることで、隔壁部材132の状態を第1伸長状態第1縮小状態との間で切り換えてもよい。
【0039】
収容装置13は更に、検出装置135を備えている。検出装置135は、収容空間SP内の不要物質(つまり、加工光ELの照射によって発生した物質)を検出する。検出装置135の検出結果は、後に詳述するように、隔壁部材132の状態を第1伸長状態から第1縮小状態へと変える際に制御装置18によって参照される。検出装置135は、特定の化学物質または化学物質群の濃度を検知する濃度センサ、または物質の放出の程度(空間における濃度)を検知するセンサを有していてもよい。なお、センサは、光線を空間に照射してセンサで光量を検知し、光量低下によって物質の放出の程度(空間における濃度)を検知してもよい。
【0040】
支持装置14は、収容装置13を支持する。収容装置13が駆動系12及び光照射装置11を支持しているため、支持装置14は、実質的には、収容装置13を介して駆動系12及び光照射装置11を支持している。収容装置13を支持するために、支持装置14は、梁部材141と、複数の脚部材142とを備えている。梁部材141は、収容装置13の+Z側に配置される。梁部材141は、XY平面に沿って延伸する梁状の部材である。梁部材141は、支持部材143を介して収容装置13を支持する。梁部材141には、複数の脚部材142が配置されている。脚部材142は、梁部材141から-Z側に向かって延伸する棒状の部材である。
【0041】
脚部材142の端部(具体的には、塗装膜SF側の端部であり、
図1に示す例では、-Z側の端部)144は、塗装膜SFの表面に接触可能である。その結果、支持装置14は、塗装膜SFによって(つまり、加工対象物Sによって)支持される。つまり、支持装置14は、端部144が塗装膜SFに接触した状態で(言い換えれば、支持装置14が塗装膜Sによって支持された状態で)収容装置13を支持する。端部144は、収容装置13の端部134と同様に、塗装膜SFと接触した場合に、塗装膜SFの表面の形状に応じてその形状(特に、端部144のうち塗装膜SFに接触する接触面(
図1に示す例では、-Z側の面)の形状、以下同じ)を変化させることが可能である。端部144は、塗装膜SFに接触した状態で塗装膜SFに付着可能である。例えば、端部144は、塗装膜SFに吸着可能な吸着機構を備えていてもよい。端部144が塗装膜SFに付着すると、端部144が塗装膜SFに付着していない場合と比較して、支持装置14の安定性が向上する。但し、端部144が塗装膜SFに付着可能でなくてもよい。
【0042】
梁部材141は、制御装置18の制御下で動作する駆動系15によって、X軸及びY軸の少なくとも一方に沿って(或いは、XY平面に沿った任意の方向に沿って)伸縮可能な部材である。例えば、梁部材141は、異なる径を有する複数の筒部材が組み合わせられたテレスコピックパイプを備えていてもよい。この場合、梁部材141は、複数の筒部材の相対的な移動によって伸縮可能である。
【0043】
脚部材142は、制御装置18の制御下で動作する駆動系15によって、Z軸に沿って伸縮可能な部材である。例えば、脚部材142は、異なる径を有する複数の筒部材が組み合わせられたテレスコピックパイプを備えていてもよい。この場合、脚部材142は、複数の筒部材の相対的な移動によって伸縮可能である。脚部材142の状態は、少なくとも、脚部材142がZ軸に沿って伸びることでZ軸方向の長さが相対的に長い第2伸長状態と、脚部材142がZ軸に沿って縮小することでZ軸方向の長さが相対的に短い第2縮小状態とに設定可能である。脚部材142が第2伸長状態にある場合には、端部144は、塗装膜SFに接触可能である。一方で、脚部材142が第2縮小状態にある場合には、端部144は、塗装膜SFに接触しない。つまり、脚部材142が第2縮小状態にある場合には、端部144は、塗装膜SFから+Z側に離れている。
【0044】
駆動系15は、制御装置18の制御下で、支持装置14を塗装膜SFに対して(つまり、塗装膜SFが表面に形成された加工対象物Sに対して)移動させる。つまり、駆動系15は、支持装置14と塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、支持装置14を塗装膜SFに対して移動させる。支持装置14が収容装置13を支持しているため、駆動系15は、実質的には、支持装置14を移動させることで、収容装置13を塗装膜SFに対して移動させる。つまり、駆動系15は、実質的には、収容装置13と塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、支持装置14を塗装膜SFに対して移動させる。更に、収容装置13は、駆動系12を介して光照射装置11を支持している。このため、駆動系15は、実質的には、支持装置14を移動させることで、光照射装置11を塗装膜SFに対して移動させることができる。つまり、駆動系15は、実質的には、光照射装置11と塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、支持装置14を塗装膜SFに対して移動させることができる。言い換えれば、駆動系15は、実質的には、複数の照射領域EAと塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、支持装置14を塗装膜SFに対して移動させることができる。
【0045】
駆動系15は、支持装置14を移動させるために、制御装置18の制御下で、梁部材141を伸縮させる。更に、駆動系15は、支持装置14を移動させるために、制御装置18の制御下で、複数の脚部材142を伸縮させる。尚、駆動系15による支持装置14の移動態様については、
図7から
図17を参照しながら後に詳述する。
【0046】
排気装置16は、排気管161を介して収容空間SPに連結されている。排気装置16は、収容空間SP内の気体を排気可能である。特に、排気装置16は、収容空間SP内の気体を排気することで、加工光ELの照射によって発生した不要物質を、収容空間SPから収容空間SPの外部に吸引可能である。特に、この不要物質が加工光ELの光路上に存在する場合、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響を与える可能性がある。このため、排気装置16は特に、光学系112の終端光学素子と塗装膜SFとの間の加工光ELの光路を含む空間から、当該空間内の気体とともに不要物質を吸引する。排気装置16が収容空間SPから吸引した不要物質は、フィルタ162を介して加工装置1の外部へと排出される。フィルタ162は、不要物質を吸着する。尚、フィルタ162は、着脱可能であってもよいし、交換可能であってもよい。
【0047】
気体供給装置17は、吸気管171を介して収容空間SPに連結されている。気体供給装置17は、収容空間SPに気体を供給可能である。収容空間SPに供給する気体としては、大気及びCDA(クリーン・ドライ・エア)、不活性ガスの少なくとも一方があげられる。不活性ガスの一例として、窒素ガスがあげられる。本例では、気体供給装置17はCDAを供給する。このため、収容空間SPは、CDAによってパージされた空間となる。収容空間SPに供給されたCDAの少なくとも一部は、排気装置16によって吸引される。排気装置16が収容空間SPから吸引したCDAは、フィルタ162を通過して加工装置1の外部へと排出される。
【0048】
気体供給装置17は特に、
図3に示すfθレンズ1123の収容空間SP側の光学面1124(つまり、光学系112の終端光学素子の収容空間SP側の光学面)にCDA等の気体を供給する。光学面1124は、収容空間SPに面しているがゆえに、加工光ELの照射によって発生した不要物質にさらされる可能性がある。その結果、光学面1124に不要物質が付着してしまう可能性がある。更に、加工光ELが光学面1124を通過するがゆえに、光学面1124を通過する加工光ELによって光学面1124に付着した不要物質が焼き付けられる(つまり、固着してしまう)可能性がある。光学面1124に付着した(更には、固着した)不要物質は、光学面1124の汚れとなって加工光ELの特性に影響を与えかねない。しかるに、光学面1124にCDA等の気体が供給されると、光学面1124と不要物質との接触が防止される。このため、光学面1124への汚れの付着が防止される。従って、気体供給装置17は、光学面1124への汚れの付着を防止する付着防止装置としても機能する。更には、光学面1124に汚れが付着(更には、固着)してしまった場合であっても、光学面1124に供給されたCDAによって汚れが除去される(例えば、吹き飛ばされる)可能性がある。従って、気体供給装置17は、光学面1124に付着した汚れを除去する付着防止装置としても機能し得る。
【0049】
制御装置18は、加工装置1の全体の動作を制御する。特に、制御装置18は、後に詳述するように、所望の形状の凹部Cが所望の位置に形成されるように、光照射装置11、駆動系12、収容装置13及び駆動系15を制御する。
【0050】
(2)加工装置1による加工動作の具体例
(2-1)加工動作によって形成される構造の具体例
図2を用いて上述したように、本実施形態では、加工装置1は、塗装膜SFに凹部Cを形成する。凹部Cは、塗装膜SFのうち加工光ELが実際に照射された部分(つまり、実際に加工光ELが照射される照射領域EAが設定された部分)に形成される。このため、塗装膜SF上で加工光ELが実際に照射される位置(つまり、実際に加工光ELが照射される照射領域EAが設定される位置)を適切に設定すれば、塗装膜SFの所望位置に凹部Cが形成可能となる。つまり、加工対象物S上に、塗装膜SFによる構造を形成可能となる。
【0051】
本実施形態では、加工装置1は、制御装置15の制御下で、このような塗装膜SFによる構造の一例であるリブレット構造を加工対象物S上に形成する。リブレット構造は、塗装膜SFの表面の流体に対する抵抗(特に、摩擦抵抗、乱流摩擦抵抗)を低減可能な構造である。リブレット構造が形成された加工対象物Sの流体に対する抵抗は、リブレット構造が形成されていない加工対象物Sの流体に対する抵抗よりも小さくなる。このため、リブレット構造は、加工対象物Sの表面の流体に対する抵抗を低減可能な構造であるとも言える。尚、ここでいう流体とは、塗装膜SFの表面に対して流れている媒質(気体、液体)であればよく、例えば、媒質自体が静止していても塗装膜SFの表面が移動する場合には、この媒質を流体と称してもよい。
【0052】
リブレット構造の一例が
図5(a)及び
図5(b)に示されている。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、リブレット構造は、例えば、第1の方向(
図5(a)及び
図5(b)に示す例では、Y軸方向)に沿って凹部Cを連続的に形成することで形成される凹状構造CP1(つまり、第1の方向に沿って延伸するように直線状に形成された凹状構造CP1)が、第1の方向に交差する第2方向(
図5(a)及び
図5(b)に示す例では、X軸方向)に沿って複数配列された構造である。隣り合う2つの凹状構造CP1の間には、周囲から突き出た凸状構造CP2が実質的に存在する。従って、リブレット構造は、例えば、第1の方向(例えば、Y軸方向)に沿って直線状に延伸する凸状構造CP2が、第1の方向に交差する第2方向(例えば、X軸方向)に沿って複数配列された構造であるとも言える。
図5(a)及び
図5(b)に示されるリブレット構造は、周期的な構造である。
【0053】
隣り合う2つの凹状構造CP1の間隔(つまり、凹状構造CP1の配列ピッチP1)は、例えば、数ミクロンから数百ミクロンであるが、その他のサイズであってもよい。更に、各凹状構造CP1の深さ(つまり、Z軸方向の深さ)Dは、例えば、数ミクロンから数百ミクロンであるが、その他のサイズであってもよい。各凹状構造CP1の深さDは、凹状構造CP1の配列ピッチP1以下であってもよい。各凹状構造CP1の深さDは、凹状構造CP1の配列ピッチP1の半分以下であってもよい。各凹状構造CP1のZ軸を含む断面(具体的には、XZ平面に沿った断面)の形状は、お椀型の曲線形状であるが、三角形であってもよいし、四角形であってもよいし、五角形以上の多角形であってもよい。同様に、隣り合う2つの凸状構造CP2の間隔(つまり、凸状構造CP2の配列ピッチP2)は、例えば、数ミクロンから数百ミクロンであるが、その他のサイズであってもよい。更に、各凸状構造CP2の高さ(つまり、Z軸方向の高さ)Hは、例えば、数ミクロンから数百ミクロンであるが、その他のサイズであってもよい。各凸状構造CP2の高さHは、凸状構造CP2の配列ピッチP2以下であってもよい。各凸状構造CP2の高さHは、凸状構造CP2の配列ピッチP2の半分以下であってもよい。各凸状構造CP2のZ軸を含む断面(具体的には、XZ平面に沿った断面)の形状は、斜面が曲線となる山形の形状であるが、三角形であってもよいし、四角形であってもよいし、五角形以上の多角形であってもよい。尚、加工装置1が形成するリブレット構造自体は、例えば、日本機械学会編『機械工学便覧基礎編 α4流体工学』第5章に記述されるような既存のリブレット構造であってもよいため、リブレット構造そのものについての詳細な説明は省略する。
【0054】
このようなリブレット構造は、上述したように、リブレット構造が形成された加工対象物Sの表面の流体に対する抵抗を低減可能である。このため、加工対象物Sは、流体に対する抵抗を低減することが望まれる物体(例えば、構造体)であってもよい。例えば、加工対象物Sは、少なくとも一部が流体(例えば、気体及び液体の少なくとも一方)内を進むように移動可能な物体(つまり、移動体)を含んでいてもよい。具体的には、例えば、加工対象物Sは、
図6(a)から
図6(c)に示すように、航空機PLの機体(例えば、胴体PL1、主翼PL2、垂直尾翼PL3及び水平尾翼PL4のうち少なくとも1つ)を含んでいてもよい。この場合、
図6(a)及び
図6(c)に示すように、加工装置1は、支持装置14により航空機PLの機体上で自立していてもよい。或いは、支持装置14の脚部材142の端部144が塗装膜SFに付着可能であるがゆえに、
図6(b)に示すように、加工装置1は、支持装置14により航空機PLの機体から吊り下がる(つまり、ぶら下がる)ように航空機PLの機体に付着してもよい。更に、支持装置14の脚部材142の端部144が塗装膜SFに付着可能であり且つ収容装置13の隔壁部材132の端部134が塗装膜SFに付着可能であるがゆえに、加工装置1は、塗装膜SFの表面が上方を向いている状態で水平面に対して傾斜している場合であっても、塗装膜SF上で自立可能である。更には、加工装置1は、塗装膜SFの表面が下方を向いている状態で水平面に対して傾斜している場合であっても、塗装膜SFから吊り下がるように塗装膜SFに付着可能である。いずれの場合であっても、光照射装置11は、駆動系12により及び/又は支持装置14の移動により、機体の表面に沿って移動可能である。従って、加工装置1は、航空機の機体のような加工対象物S(つまり、表面が曲面となる、表面が水平面に対して傾斜している又は表面が下方を向いている加工対象物S)にも、塗装膜SFによるリブレット構造を形成可能である。
【0055】
その他、例えば、加工対象物Sは、自動車の車体を含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、船舶の船体を含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、ロケットの機体を含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、タービン(例えば、水力タービン及び風力タービン等の少なくとも一つであり、特にそのタービンブレード)を含んでいてもよい。或いは、例えば、加工対象物Sは、少なくとも一部が流体内を進むように移動可能な物体を構成する部品を含んでいてもよい。或いは、例えば、加工対象物Sは、流動している流体内に少なくとも一部が固定される物体を含んでいてもよい。具体的には、例えば、加工対象物Sは、川又は海の中に設置される橋桁を含んでいてもよい。
【0056】
尚、ここにあげた加工対象物Sの一例は、比較的に大きな物体(例えば、数メートルから数百メートルのオーダーのサイズの物体)である。この場合、
図6(a)から
図6(c)に示すように、光照射装置11の大きさは、加工対象物Sの大きさよりも小さい。しかしながら、加工対象物Sは、どのようなサイズの物体であってもよい。例えば、加工対象物Sは、キロメートル、センチメートル、ミリメートル又はマイクロメートルのオーダーのサイズの物体であってもよい。
【0057】
上述したリブレット構造のサイズ(例えば、凹状構造CP1の配列ピッチP1、各凹状構造CP1の深さD、凸状構造CP2の配列ピッチP2、各凸状構造CP2の高さH等の少なくとも一つ)は、加工対象物Sがどのような物体であるかに応じて、摩擦の低減効果が適切に得られるような適切なサイズに設定されてもよい。より具体的には、リブレット構造のサイズは、使用中の(つまり、運用中)の加工対象物Sの周囲に分布する流体の種類、加工対象物Sの流体に対する相対速度、及び、加工対象物Sの形状等の少なくとも一つに応じて、摩擦の低減効果が適切に得られる適切なサイズに設定されてもよい。例えば、加工対象物Sが、巡航時に10kmの高度を時速1000kmで飛行する航空機の機体である場合には、凹状構造CP1の配列ピッチP1(つまり、凸状構造CP2の配列ピッチP2)は、例えば約78マイクロメートルに設定されてもよい。
【0058】
更に、上述したリブレット構造のサイズは、加工対象物Sがどのような物体であり且つその物体のどの部分にリブレット構造が形成されるかに応じて、摩擦の低減効果が適切に得られるような適切なサイズに設定されてもよい。例えば、加工対象物Sが航空機PLの機体である場合には、胴体PL1に形成されるリブレット構造のサイズと、主翼PL2に形成されるリブレット構造のサイズとが異なっていてもよい。
【0059】
(2-2)加工動作の流れ
続いて、
図7から
図17を参照しながら、リブレット構造を形成するための加工動作の流れについて説明する。
【0060】
まず、上述したように、複数の加工光ELは、ガルバノミラー1122によって偏向される。リブレット構造を形成するためには、ガルバノミラー1122は、複数の加工光ELがY軸に沿って塗装膜SFの表面を走査する(つまり、塗装膜SFの表面上で複数の照射領域EAをY軸に沿って移動させる)スキャン動作と、塗装膜SFの表面上で複数の照射領域EAをX軸に沿って所定量だけ移動させるステップ動作とを交互に繰り返すように、複数の加工光ELを偏向する。このとき、塗装膜SFに対して光照射装置11を静止させたままガルバノミラー1122の制御で複数の加工光ELを走査させることができる塗装膜SFの表面上の領域のサイズには限界がある。従って、本実施形態では、
図7に示すように、制御装置18は、塗装膜SFの表面(特に、塗装膜SFのうちリブレット構造を形成するべき領域)に、複数の単位加工領域SAを設定する。各単位加工領域SAは、塗装膜SFに対して光照射装置11を静止させたままガルバノミラー1122の制御で複数の加工光ELを走査させることができる塗装膜SF上の領域に相当する。各単位加工領域SAの形状は四角形であるが、その形状は任意である。
【0061】
制御装置18は、ガルバノミラー1122によって偏向される複数の加工光ELを一の単位加工領域SA(例えばSA1)に照射するように光照射装置11を制御することで、当該一の単位加工領域SA(SA1)にリブレット構造を形成する。その後、制御装置18は、塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させるように駆動系12及び15の少なくとも一方を制御することで、光照射装置11を、他の単位加工領域SA(例えばSA2)に複数の加工光ELを照射することが可能な位置に配置する。その後、制御装置18は、ガルバノミラー1122によって偏向される複数の加工光ELを他の単位加工領域SA(SA2)に照射するように光照射装置11を制御することで、当該他の単位加工領域SAにリブレット構造を形成する。制御装置18は以下の動作を全ての単位加工領域SA1からSA16を対象に繰り返すことで、リブレット構造を形成する。
【0062】
以下、
図7に示す単位加工領域SA1からSA4にリブレット構造を形成する動作を例にあげて説明を続ける。尚、以下では、X軸に沿って隣接する2つの単位加工領域SAが収容空間SP内に位置する例を用いて説明をする。しかしながら、収容空間SP内に任意の数の単位加工領域SAが位置する場合においても、同様の動作が行われることに変わりはない。
【0063】
図8に示すように、まず、制御装置18は、収容空間SP内に単位加工領域SA1及びSA2が位置する第1収容位置に収容装置13が配置されるように、駆動系15を制御して塗装膜SFに対して支持装置14を移動させる。つまり、制御装置18は、収容装置13により単位加工領域SA1及びSA2が覆われるように、支持装置14が支持する収容装置13を移動させる。更に、制御装置18は、光照射装置11が単位加工領域SA1に複数の加工光ELを照射することが可能な第1照射位置に配置されるように、駆動系12を制御して塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させる。収容装置13が第1収容位置に配置され且つ光照射装置11が第1照射位置に配置された後は、隔壁部材132は、第1伸長状態になる。従って、隔壁部材132の端部134は、塗装膜SFに接触し且つ付着する。同様に、複数の脚部材142は、第2伸長状態になる。従って、複数の脚部材142の端部144は、塗装膜SFに接触し且つ付着する。
【0064】
その後、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、制御装置18は、複数の加工光ELが単位加工領域SA1を走査するように、光照射装置11(特に、ガルバノミラー1122)を制御する。具体的には、制御装置18は、上述したスキャン動作を行うために、単位加工領域SA1内のある領域を複数の加工光ELがY軸方向に沿って走査するように、ガルバノミラー1122のY走査ミラー1122Yを制御する。スキャン動作が行われている間は、光源系111は、複数の加工光ELを照射する。その後、制御装置18は、上述したステップ動作を行うために、ガルバノミラー1122のX走査ミラー1122Xを単位ステップ量だけ回転させる。ステップ動作が行われている間は、光源系111は、複数の加工光ELを照射しない。その後、制御装置18は、上述したスキャン動作を行うために、単位加工領域SA1内のある領域を複数の加工光ELがY軸方向に沿って走査するように、ガルバノミラー1122のY走査ミラー1122Yを制御する。このように、制御装置18は、スキャン動作とステップ動作とを交互に繰り返して単位加工領域SA1の全体(或いは、単位加工領域SA1のうちリブレット構造を形成するべき一部の領域)を複数の加工光ELが走査するように、ガルバノミラー1122を制御する。その結果、単位加工領域SA1にリブレット構造が形成される。尚、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、加工光ELが走査する領域の幅(つまり、単位加工領域SAの幅、特にX軸方向の幅)は、光照射装置11の幅(特に、X軸方向の幅)よりも大きい。
【0065】
制御装置18は、光照射装置11が加工光ELを照射している期間中は、複数の脚部材142が第2伸長状態のまま維持されるように、駆動系15を制御する。その結果、複数の脚部材142の端部144は、塗装膜SFに付着し続ける。その結果、支持装置14の安定性が向上するため、支持装置14の不安定性に起因して加工光ELの照射領域EAが塗装膜SF上で意図せずにずれてしまう可能性が小さくなる。但し、光照射装置11が光ELを照射している期間の少なくとも一部において、支持装置14が塗装膜SF上で自立可能(或いは、塗装膜SFから吊り下がるように塗装膜SFに付着可能)である限りは、複数の脚部材142の一部が第2縮小状態にあってもよい。
【0066】
制御装置18は、光照射装置11が加工光ELを照射している期間中は、隔壁部材132が第1伸長状態のまま維持されるように、隔壁部材132を伸縮させる不図示の駆動系を制御する。その結果、隔壁部材132の端部134は、塗装膜SFに付着し続ける。その結果、収容空間SPの密閉性が維持されるため、収容空間SP内を伝搬する加工光ELが収容空間SPの外部(つまり、収容装置13の外部)に漏れ出てくることはない。更には、収容空間SP内で発生した不要物質が収容空間SPの外部(つまり、収容装置13の外部)に漏れ出てくることはない。
【0067】
尚、塗装膜SFに付着しているはずの端部134の少なくとも一部が、何らかの要因によって塗装膜SFから離れてしまう事態が生ずる可能性がある。この場合に光照射装置11が加工光ELを照射し続けると、加工光EL及び不要物質の少なくとも一方が収容装置13の外部に漏れ出てしまう可能性がある。そこで、制御装置18は、光照射装置11が加工光ELを照射している期間中に端部134の少なくとも一部が塗装膜SFから離れたことを検出した場合には、加工光ELの照射を停止するように光照射装置11を制御してもよい。
【0068】
その後、
図10に示すように、制御装置18は、光照射装置11が、第1照射位置から、光照射装置11が単位加工領域SA2に複数の加工光ELを照射することが可能な第2照射位置へと移動するように、駆動系12を制御する。光照射装置11が移動している期間中は、制御装置18は、光照射装置11が加工光ELを照射しないように、光照射装置11を制御する。
【0069】
その後、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、制御装置18は、複数の加工光ELが単位加工領域SA2を走査するように、光照射装置11(特に、ガルバノミラー1122)を制御する。具体的には、制御装置18は、上述したスキャン動作と上述したステップ動作とを交互に繰り返して単位加工領域SA2の全体(或いは、単位加工領域SA2のうちリブレット構造を形成するべき一部の領域)を複数の加工光ELが走査するように、光照射装置11(特に、ガルバノミラー1122)を制御する。その結果、単位加工領域SA2にリブレット構造が形成される。尚、単位加工領域SA1内のリブレット構造を構成する凹部CP1の1本1本は、単位加工領域SA1に隣接する単位加工領域SA2(或いは、その他の単位加工領域SA)内のリブレット構造を構成する凹部CP1の1本1本と、互いに連続に連結されるようにしてもよいし連結されていなくてもよい。というのも、単位加工領域SAのサイズは10cm程度以上は確保でき、従って、単位加工領域SA内で加工光ELを走査した結果として形成される1本の凹部CP1の連続長は10cm程度以上となるが、これは航空機の使用時(すなわち巡航時)における対気速度と乱流現象の周波数から計算される、リブレット構造が機能を果たしうる連続長(およそ数mm)よりも十分長いからである。
【0070】
単位加工領域SA2にリブレット構造が形成された時点で、収容空間SPには、リブレット構造が未だ形成されていない単位加工領域SAが残っていない。このため、駆動系12によって収容空間SP内で光照射装置11を移動させるだけでは、光照射装置11は、未だリブレット構造が形成されていない単位加工領域SAに複数の加工光ELを照射してリブレット構造を形成することができない。そこで、リブレット構造が未だ形成されていない単位加工領域SAが収容空間SPに残っていない状態になった場合には、制御装置18は、支持装置14を移動させることで(つまり、収容装置13を移動させることで)、リブレット構造が未だ形成されていない単位加工領域SAが収容空間SP内に新たに位置するように、駆動系15を制御する。
【0071】
具体的には、まず、
図12に示すように、制御装置18は、隔壁部材132の状態が第1伸長状態から第1縮小状態に切り替わるように、隔壁部材132を伸縮させる不図示の駆動系を制御する。その結果、隔壁部材132の端部134が塗装膜SFから離れる。尚、支持装置14が移動する期間中は、制御装置18は、光照射装置11が加工光ELを照射しないように、光照射装置11を制御する。このため、端部134が塗装膜SFから離れたとしても、加工光EL及び不要物質の少なくとも一方が収容装置13の外部に漏れ出てくる可能性はない。
【0072】
但し、収容空間SPに存在していた不要物質は、上述した排気装置16によって収容空間SPの外部に吸引されるものの、何らかの要因によって、収容空間SPに存在していた不要物質の全てが排気装置16によって吸引されていない(つまり、収容空間SPに不要物質が残留してしまう)可能性がある。この場合には、端部134が塗装膜SFから離れると、不要物質が収容装置13の外部に漏れ出てくる可能性がある。このため、制御装置18は、収容空間SP内の不要物質を検出する検出装置135の検出結果に基づいて、隔壁部材132を第1伸長状態から第1縮小状態へと切り替えるか否かを判定する。収容空間SPに不要物質が残留している場合には、制御装置18は、隔壁部材132を第1伸長状態から第1縮小状態へと切り替えない。この場合、排気装置16によって、収容空間SPに残留している不要物質が吸引され続ける。一方で、収容空間SPに不要物質が残留していない場合には、制御装置18は、隔壁部材132を第1伸長状態から第1縮小状態へと切り替える。
【0073】
更に、制御装置18は、複数の脚部材142のうち支持装置14の移動(特に、後述するように、縮小していた梁部材141の伸長)に伴って塗装膜SFに対して移動する少なくとも一部の脚部材142の状態が、第2伸長状態から第2縮小状態に切り替わるように、駆動系15を制御する。縮小していた梁部材141の伸長に伴って塗装膜SFに対して移動する脚部材142は、典型的には、複数の脚部材142のうち支持装置14の移動方向(つまり、収容装置13の移動方向)の前方側に位置する脚部材142である。
図12に示す例では、支持装置14が+X側に向かって移動し、支持装置14の移動方向の前方側に位置する脚部材142は、+X側に位置する脚部材142である。以下、支持装置14の移動方向の前方側に位置する脚部材142を、“前方脚部材142”と称する。その結果、前方脚部材142の端部144が塗装膜SFから離れる。
【0074】
その後、
図13に示すように、制御装置18は、収容装置13が、第1収容位置から、収容空間SP内に単位加工領域SA3及SA4が位置する第2収容位置へと移動するように、駆動系15を制御する。具体的には、制御装置18は、支持装置14の移動方向に沿って梁部材141が伸長するように、駆動系15を制御する。その結果、梁部材141は、収容装置13を支持したまま(更には、収容装置13が支持する光照射装置11を支持したまま)伸長する。更に、支持装置14の移動と並行して、制御装置18は、光照射装置11が、第2照射位置から、光照射装置11が単位加工領域SA3に複数の加工光ELを照射することが可能な第3照射位置へと移動するように、駆動系12を制御する。
【0075】
支持装置14が移動している(つまり、縮小していた梁部材141が伸びている)期間中は、制御装置18は、隔壁部材132が第1縮小状態のまま維持されるように、隔壁部材132を伸縮させる不図示の駆動系を制御する。その結果、隔壁部材132の端部134と塗装膜SFとの接触によって支持装置14の移動(つまり、収容装置13の移動)が妨げられることはない。更には、支持装置14の移動中に端部134と塗装膜SFとの接触によって塗装膜SFが傷つけられることはない。但し、端部134と塗装膜SFとの接触によって支持装置14の移動が妨げられることがない場合には、支持装置14が移動している期間の少なくとも一部において、端部134の少なくとも一部が塗装膜SFに接触していてもよい。支持装置14の移動中に端部134と塗装膜SFとの接触によって塗装膜SFが傷つけられることがない場合には、支持装置14が移動している期間の少なくとも一部において、端部134の少なくとも一部が塗装膜SFに接触していてもよい。
【0076】
更に、支持装置14が移動している期間中は、制御装置18は、前方脚部材142が第2縮小状態のまま維持されるように、駆動系15を制御する。その結果、前方脚部材142の端部144と塗装膜SFとの接触によって支持装置14の移動(つまり、収容装置13の移動)が妨げられることはない。更には、支持装置14の移動中に端部144と塗装膜SFとの接触によって塗装膜SFが傷つけられることはない。但し、端部144と塗装膜SFとの接触によって支持装置14の移動が妨げられることがない場合には、支持装置14が移動している期間の少なくとも一部において、端部144の少なくとも一部が塗装膜SFに接触していてもよい。支持装置14の移動中に端部144と塗装膜SFとの接触によって塗装膜SFが傷つけられることがない場合には、支持装置14が移動している期間の少なくとも一部において、端部144の少なくとも一部が塗装膜SFに接触していてもよい。
【0077】
更に、支持装置14が移動している期間中は、制御装置18は、複数の脚部材142のうち前方脚部材142以外の他の脚部材142が第1伸長状態のまま維持されるように、駆動系15を制御する。その結果、前方脚部材142の端部144と塗装膜SFとの接触によって支持装置14の移動(つまり、収容装置14の移動)が妨げられることはない。更には、支持装置14の移動中に端部144と塗装膜SFとの接触によって塗装膜SFが傷つけられることはない。前方脚部材142の端部144が塗装膜SFから離れたとしても、前方脚部材142以外の他の脚部材142の端部144が塗装膜SFに接触している。このため、複数の脚部材142の全ての端部144が塗装膜SFに接触している場合と同様に、支持装置14が塗装膜SF上で自立可能(或いは、塗装膜SFから吊り下がるように塗装膜SFに付着可能)であることに変わりはない。
【0078】
更に、支持装置14が移動している期間中は、制御装置18は、光照射装置11が加工光ELを照射しないように、光照射装置11を制御する。
【0079】
収容装置13が第2収容位置に配置された後、
図14に示すように、制御装置18は、隔壁部材132が第1縮小状態から第1伸長状態に切り替わるように、隔壁部材132を伸縮させる不図示の駆動系を制御する。その結果、隔壁部材132の端部134が塗装膜SFに接触し且つ付着する。更に、制御装置18は、前方脚部材142が第2縮小状態から第2伸長状態に切り替わるように、駆動系15を制御する。その結果、前方脚部材142の端部144が塗装膜SFに接触し且つ付着する。ここで、隔壁部材132の伸長動作と前方脚部材142の伸長動作とは同時に行われてもよいし、時間差をもって行われてもよい。
【0080】
その後、
図15に示すように、制御装置18は、複数の脚部材142のうち支持装置14の移動(特に、後述するように、伸長していた梁部材141の縮小)に伴って塗装膜SFに対して移動する少なくとも一部の脚部材142の状態が、第2伸長状態から第2縮小状態に切り替わるように、駆動系15を制御する。伸長していた梁部材141の縮小に伴って塗装膜SFに対して移動する脚部材142は、典型的には、複数の脚部材142のうち支持装置14の移動方向の後方側に位置する脚部材142である。
図15に示す例では、支持装置14の移動方向の後方側に位置する脚部材142は、-X側に位置する脚部材142である。以下、支持装置14の移動方向の後方側に位置する脚部材142を、“後方脚部材142”と称する。その結果、後方脚部材142の端部144が塗装膜SFから離れる。
【0081】
その後、
図16に示すように、制御装置18は、支持装置14の移動方向に沿って伸長していた梁部材141が縮小するように、駆動系15を制御する。
【0082】
梁部材141の縮小が完了した後、
図17に示すように、制御装置18は、後方脚部材142が第2縮小状態から第2伸長状態に切り替わるように、駆動系15を制御する。その結果、後方脚部材142の端部144が塗装膜SFに接触して付着する。
【0083】
その後は、制御装置18は、複数の加工光ELが単位加工領域SA1及びSA2を走査する場合と同様に、複数の加工光ELが単位加工領域SA3及びSA4を走査するように、光照射装置11を制御する。以下、同様の動作が繰り返されることで、塗装膜SFの表面(特に、塗装膜SFのうちリブレット構造を形成するべき領域)に複数の加工光ELが照射される。その結果、加工対象物S上に、塗装膜SFによるリブレット構造が形成される。
【0084】
(3)加工装置1の技術的効果
以上説明したように、本実施形態の加工装置1は、加工光ELを加工対象物S(特に、その表面に形成された塗装膜SF)に照射することで、加工対象物Sの表面に、塗装膜SFによるリブレット構造を形成することができる。このため、加工装置1は、加工対象物Sの表面をエンドミル等の切削工具で削り取ることでリブレット構造を形成する加工装置と比較して、比較的容易に且つ相対的に短時間でリブレット構造を形成することができる。
【0085】
更に、加工装置1は、複数の加工光ELを同時に照射して複数の凹状構造CP1を同時に形成することができる。このため、単一の加工光ELを照射して一度に単一の凹状構造CP1しか形成することができない加工装置と比較して、リブレット構造の形成に関するスループットが向上する。
【0086】
更に、加工装置1は、ガルバノミラー1122で複数の加工光ELを偏向して、塗装膜SFを相対的に高速に走査することができる。このため、リブレット構造の形成に関するスループットが向上する。
【0087】
更に、加工装置1は、加工対象物Sを直接的に加工することに代えて、加工対象物Sの表面に形成されている塗装膜SFを加工することで、加工対象物Sの表面にリブレット構造を形成することができる。このため、リブレット構造を形成するための特別な材料を加工対象物Sの表面(つまり、塗装膜SFの表面)に新たに付加する(例えば、貼り付ける)ことでリブレット構造を形成する加工装置と比較して、リブレット構造の形成に起因した加工対象物Sの重量の増加が回避可能である。
【0088】
更に、加工装置1は、加工対象物Sを直接的に加工しないがゆえに、リブレット構造を比較的容易に再形成することができる。具体的には、リブレット構造の再形成の際には、まずは、塗装膜SFによるリブレット構造が一旦剥離され、その後、新たな塗装膜SFが塗布される。その後、加工装置1は、新たに塗布された塗装膜SFを加工することで、新たなリブレット構造を形成することができる。従って、リブレット構造の劣化(例えば、破損等)に対して、リブレット構造の再形成によって相対的に容易に対処可能となる。
【0089】
更に、加工装置1は、加工対象物Sを直接的に加工しないがゆえに、直接の加工が困難な又はリブレット構造がもともと形成されていない加工対象物Sの表面にもリブレット構造を形成することができる。つまり、加工対象物Sの表面に塗装膜SFが塗布された後に加工装置1が塗装膜SFを加工すれば、リブレット構造を比較的容易に形成可能である。
【0090】
更に、加工装置1は、塗装膜SFによるリブレット構造を形成することができる。塗装膜SFは、通常は、外部環境(例えば、熱、光、及び風等の少なくとも一つ)に対して相対的に高い耐久性を有している。このため、加工装置1は、相対的に高い耐久性を有するリブレット構造を、比較的容易に形成することができる。
【0091】
更に、本実施形態では、光学系112の終端光学素子と塗装膜SFとの間における加工光ELの光路が収容空間SP内に含まれている。このため、加工光ELの光路が収容空間SPに含まれていない(つまり、開放空間に開放されている)加工装置と比較して、塗装膜SFに照射された加工光EL(或いは、当該加工光ELの塗装膜SFからの散乱光ないしは反射光等)が加工装置1の周囲へ伝搬する(言い換えれば、散乱してしまう)ことを適切に防止可能である。更には、加工光ELの照射によって発生した不要物質が加工装置1の周囲へ伝搬する(言い換えれば、飛散してしまう)ことを適切に防止可能である。
【0092】
更に、本実施形態では、塗装膜SF上を移動可能な支持装置14によって光照射装置11が支持されている。このため、加工装置1は、相対的に広範囲に広がる塗装膜SFを比較的容易に加工することができる。つまり、加工装置1は、加工対象物Sの表面の相対的に広い範囲に渡って塗装膜SFによるリブレット構造を形成することができる。更には、加工装置1は、加工対象物Sを移動させなくてもよいため、相対的に大きな又は重い加工対象物Sの表面にも、相対的に容易にリブレット構造を形成することができる。
【0093】
更に、加工装置1は、排気装置16を用いて、加工光ELの照射によって発生した不要物質を、収容空間SPの外部に吸引可能である。このため、塗装膜SFへの加工光ELの照射が、不要物質によって妨げられることは殆どない。このため、排気装置16を備えていない(つまり、塗装膜SFへの加工光ELの照射が不要物質によって妨げられる可能性がある)加工装置と比較して、加工光ELの照射精度が向上する。その結果、リブレット構造の形成精度が向上する。
【0094】
更に、加工装置1は、気体供給装置17を用いて、光学面1124(つまり、光学系112の終端光学素子の収容空間SP側の光学面)への汚れの付着を防止することができる。このため、気体供給装置17を備えていない加工装置と比較して、塗装膜SFへの加工光ELの照射が、光学面1124に付着してしまった汚れによって妨げられる可能性が小さくなる。このため、加工光ELの照射精度が向上する。その結果、リブレット構造の形成精度が向上する。
【0095】
(4)変形例
続いて、加工装置1の変形例について説明する。
【0096】
(4-1)第1変形例
上述した
図3に示す光照射装置11の構造は一例であり、加工装置1は、
図3に示す光照射装置11とは異なる構造を有する他の光照射装置を備えていてもよい。以下、光照射装置11とは異なる構造を有する他の光照射装置の一例として、光照射装置21a、光照射装置22a、光照射装置23a、光照射装置24a、光照射装置25a、光照射装置26a及び光照射装置27aについて説明する。
【0097】
(4-1-1)光照射装置21aの構造
塗装膜SFに加工光ELを照射するために、光照射装置21aは、
図18に示すように、加工光ELを射出可能な光源系211aと、光源系211aから射出された加工光ELを塗装膜SFに導く光学系212aとを備える。
【0098】
光源系211aは、単一の光源2111aを備える。光源2111aは、上述した光源1111と同一であってもよいため、その詳細な説明を省略する。
【0099】
光学系212aは、光源2111aから射出される加工光ELを複数(典型的には2つ)に分岐した後に、当該分岐した2つの加工光ELを干渉させることで形成される干渉縞を塗装膜SFの表面に形成する。干渉縞を形成するために、光学系212aは、光分岐器2121aと、光射出口2123aと、光射出口2124aと、集光光学系2125aと、集光光学系2126aとを備える。光分岐器2121aは、光源2111aから射出される加工光ELを、第1分岐光EL1と第2分岐光EL2とに分岐する。第1分岐光EL1は、不図示の導光路(例えば、光ファイバ等)を介して光射出口2123aから射出される。第2分岐光EL2は、不図示の導光路(例えば、光ファイバ等)を介して光射出口2124aから射出される。光射出口2123aから射出された第1分岐光EL1は、集光光学系2125aによって平行光に変換された上で、塗装膜SFの表面に照射される。光射出口2124aから射出された第2分岐光EL2は、集光光学系2126aによって平行光に変換された上で、塗装膜SFの表面に照射される。集光光学系2125aから照射される第1分岐光EL1及び集光光学系2126aから照射される第2分岐光EL2は、互いに干渉して、上述したリブレット構造(或いは、凹状構造CP1)に対応する、図中X方向に沿った周期方向の縞パターンである干渉パターンを有する干渉縞を塗装膜SFの表面に形成する。つまり、塗装膜SFには、塗装膜SFの表面上で強度分布を持つ干渉光が、リブレット構造を形成するための加工光として照射される。その結果、干渉縞に応じて塗装膜SFの一部が蒸発することで、加工対象物Sの表面上に、塗装膜SFによるリブレット構造が形成される。
【0100】
光照射装置21aが第1分岐光EL1及び第2分岐光EL2を照射する照射領域EA(つまり、干渉縞を形成する照射領域EA)は、塗装膜SFの表面に沿って二次元的に広がる領域となる。従って、光照射装置21aを備える加工装置1aは、干渉縞を塗装膜SFの表面に形成する動作と、干渉縞を形成する照射領域EAを塗装膜SFの表面上でX軸及びY軸の少なくとも一方に沿って所定量だけ移動させるステップ動作とを交互に繰り返すことで、塗装膜SFによるリブレット構造を形成する。つまり、光照射装置21aを備える加工装置1aは、塗装膜SFの表面上のある領域に干渉縞を形成した後に、塗装膜SFに対して光照射装置21aを移動させ、塗装膜SFの表面上の別の領域に干渉縞を形成する動作を繰り返す。尚、光照射装置21aは、第1分岐光EL1及び第2分岐光EL2を偏向して照射領域EAを移動させることができない。このため、光照射装置21aを備える加工装置1aは、駆動系12によって光照射装置21aを移動させることで、塗装膜SFに対して照射領域EAを移動させる。尚、光照射装置21aにおいて、集光光学系2125a及び2126aと塗装膜SFとの間にガルバノミラーを配置して、照射領域EAを移動させてもよい。また、集光光学系2125aからの第1分岐光EL1と集光光学系2126aからの第2分岐光EL2との交差角度を変更して、干渉縞の縞パターンのピッチを変えてもよい。この場合、光射出口2123aと集光光学系2125aとを一体として移動可能に設け、光射出口2123bと集光光学系2125bとを一体として移動可能に設けて、照射領域EAに達する第1分岐光EL1及び第2分岐光EL2の交差角度を変更すればよい。
【0101】
(4-1-2)光照射装置22aの構造
塗装膜SFに加工光ELを照射するために、光照射装置22aは、
図19に示すように、加工光ELを射出可能な光源系221aと、光源系221aから射出された加工光ELを塗装膜SFに導く光学系222aとを備える。
【0102】
光源系221aは、単一の光源2211aを備える。光源2211aは、上述した光源1111と同一であってもよいため、その詳細な説明を省略する。
【0103】
光学系222aは、光源2211aから射出される加工光ELを複数の加工光EL0に変換した上で、当該複数の加工光EL0を塗装膜SFに投影する。光学系222aは、ミラーアレイ2221aを備えている。ミラーアレイ2221aは、マトリクス状に配列された複数のミラーMを備えている。各ミラーMは、その傾斜角度が可変となるように構成される。動作の一例として、各ミラーMに入射してきた加工光ELを塗装膜SFに向けて反射する状態と、各ミラーMに入射してきた加工光ELを塗装膜SFに向けて反射しない状態との間で切り替えられる。尚、各ミラーMからの加工光EL0の塗装膜SF上での位置を変更するように、各ミラーMの傾斜角度が制御されてもよい。制御装置18は、上述したリブレット構造(特に、その一部である複数の凹状構造CP1)を形成可能な複数の加工光EL0がミラーアレイ2221aから射出するように、デジタルミラーデバイス2221aを制御する。その結果、光照射装置22aは、上述した光照射装置11と同様に、塗装膜SFの表面に複数の加工光ELを同時に照射することができる。つまり、塗装膜SFの表面には、複数の加工光EL0が夫々照射される複数の照射領域EAが同時に設定される。その結果、光照射装置22aは、上述した光照射装置11と同様に、加工対象物Sの表面上に、塗装膜SFによるリブレット構造を形成することができる。
【0104】
光照射装置22aの光学系222aは、光照射装置11と同様に、ガルバノミラー1122及びfθレンズ1123を備えていてもよい。この場合、光照射装置22aは、ガルバノミラー1122を制御して、複数の加工光ELに塗装膜SFの表面を走査させることができる。或いは、光学系222aがガルバノミラー1122及びfθレンズ1123を備えていない場合であっても、駆動系12によって光照射装置22aを移動させることで、複数の加工光ELに塗装膜SFの表面を走査させてもよい。尚、ミラーアレイ2221aの各ミラーMの傾斜角度を制御して各ミラーMの反射面の位置を変化させることにより、複数の加工光ELに塗装膜SFの表面を走査させてもよい。
【0105】
(4-1-3)光照射装置23aの構造
塗装膜SFに加工光ELを照射するために、光照射装置23aは、
図20に示すように、加工光ELを射出可能な光源系231aと、光源系231aから射出された加工光ELを塗装膜SFに導く光学系232aとを備える。
【0106】
光源系231aは、上述した光源系111と同一であってもよいため、その詳細な説明を省略する。尚、
図20では、複数の光源1111を備える光源系231a(つまり、
図3(b)に示す構成を有する光源系231a)を用いて説明を進める。
【0107】
光学系232aは、複数の光源1111から夫々射出される複数の加工光ELを縮小して、塗装膜SFに投影する。光学系232aは、複数のコリメータレンズ2321aと、投影光学系2322aとを備える。複数のコリメータレンズ2321aは、夫々、複数の光源1111から夫々射出される複数の加工光ELを平行光に変換する。投影光学系2322aは、夫々が平行光に変換された複数の加工光ELを、所定の縮小倍率(例えば、1/10の投影倍率)で塗装膜SFに投影する。尚、投影光学系2322aは、塗装膜SF上に光源像を形成するように構成されてもよく、塗装膜SFから光軸方向に離れた位置に光源像を形成するように構成されてもよい。その結果、光照射装置23aは、上述した光照射装置11と同様に、塗装膜SFに複数の加工光ELを同時に照射することができる。つまり、塗装膜SFの表面には、複数の加工光ELが夫々照射される複数の照射領域EAが同時に設定される。その結果、光照射装置23aは、上述した光照射装置11と同様に、加工対象物Sの表面上に、塗装膜SFによるリブレット構造を形成することができる。ここで、投影光学系2322aの投影倍率は縮小倍率には限定されず、等倍であってもよいし、拡大倍率であってもよい。また、投影光学系2322aを構成する1以上の光学部材を移動可能(典型的には光軸方向に沿って移動可能)に設けて、投影倍率を変更する構成であってもよい。この場合には、複数の照射領域EAが形成される間隔が変更でき、ひいてはリブレット構造のピッチを変更できる。尚、複数のコリメータレンズ2321aのそれぞれは、光源1111上に設けてもよい。また、投影光学系2322aから射出される複数の加工光ELの進行方向が互いに平行である構成には限定されず、複数の加工光ELが進行するにつれてそれらの間隔が広がるように進行する、或いは狭まるように進行する構成であってもよい。
【0108】
光照射装置23aの光学系232aは、光照射装置11と同様に、ガルバノミラー1122を備えていてもよい。この場合、光照射装置23aは、ガルバノミラー1122を制御して、複数の加工光ELに塗装膜SFの表面を走査させることができる。或いは、光学系232aがガルバノミラー1122を備えていない場合であっても、駆動系12によって光照射装置23aを移動させることで、複数の加工光ELが塗装膜SFの表面を走査するように構成されてもよい。また、光源1111を移動させることで、複数の加工光ELが塗装膜SFの表面を走査するように構成されてもよい。
【0109】
(4-1-4)光照射装置24aの構造
塗装膜SFに加工光ELを照射するために、光照射装置24aは、
図21に示すように、加工光ELを射出可能な光源系241aと、光源系241aから射出された加工光ELを塗装膜SFに導く光学系242aとを備える。
【0110】
光源系241aは、単一の光源2411aと、照明光学系2412aを備える。光源2411aは、上述した光源1111と同一であってもよいため、その詳細な説明を省略する。照明光学系2412aは、光源2411aからの加工光ELの光量を、加工光ELの光束断面内で均一にする。
【0111】
光学系242aは、マスク2421aと、投影光学系2422aとを備えている。マスク242aは、リブレット構造(或いは、形成するべき構造)に対応する光透過率分布を持つマスクパターン(例えば、加工光ELが通過可能な透過パターン及び加工光ELが遮光される遮光パターンがX方向に周期的に並ぶパターン)が形成されたフォトマスク(言い換えれば、レチクル)である。照明光学系2412aを通過した加工光ELは、マスク2421aを通過してリブレット構造に対応する周期的に変化する強度分布を有する加工光ELとなる。投影光学系2422aは、マスク2421aを通過した加工光ELを、所定の縮小倍率(例えば、1/10の投影倍率)で塗装膜SFに投影する。言い換えると、投影光学系はマスク2421aの縮小像を塗装膜SF上に形成する。その結果、光照射装置24aは、上述したリブレット構造(或いは、凹状構造CP1)に対応する強度分布を有する加工光ELを塗装膜SFの表面に照射する。つまり、塗装膜SFの表面には、塗装膜SFの表面上でリブレット構造に対応する強度分布を持つ加工光ELが照射される。その結果、加工光ELの強度分布に応じて塗装膜SFの一部が蒸発することで、加工対象物Sの表面上に、塗装膜SFによるリブレット構造が形成される。ここで、投影光学系2322aの投影倍率は縮小倍率には限定されず、等倍であってもよいし、拡大倍率であってもよい。また、投影光学系2322aを構成する1以上の光学部材を移動可能(典型的には光軸方向に沿って移動可能)に設けて、投影倍率を変更する構成であってもよい。この場合には、周期的に変化する強度分布の周期が変更でき、ひいてはリブレット構造のピッチを変更できる。
【0112】
光照射装置24aが加工光ELを照射する照射領域EAは、塗装膜SFの表面に沿って二次元的に広がる領域となる。従って、光照射装置24aを備える加工装置1aでは、マスク2421aを介して加工光ELを塗装膜SFの表面に照射する動作と、照射領域EAを塗装膜SFの表面上でX軸及びY軸の少なくとも一方に沿って所定量だけ移動させるステップ動作とを交互に繰り返すことで、塗装膜SFによるリブレット構造を形成する。尚、光照射装置24aは、加工光ELを偏向して照射領域EAを移動させることができない。このため、光照射装置24aを備える加工装置1aは、駆動系12によって光照射装置24aを移動させることで、塗装膜SFに対して照射領域EAを移動させる。
【0113】
光照射装置24aの光学系242aは、光照射装置11と同様に、ガルバノミラー1122を備えていてもよい。この場合、光照射装置24aは、ガルバノミラー1122を制御して、複数の加工光ELに塗装膜SFの表面を走査させることができる。また、マスク2421aと光源系241aとを投影光学系2422aに対して移動させてもよい。
【0114】
尚、光照射装置24aは、マスク2421aに代えて、リブレット構造に応じた変調パターンで加工光ELを空間変調可能な空間光変調器を備えていてもよい。「加工光ELを空間変調する」とは、当該加工光ELの進行方向を横切る断面における当該加工光ELの振幅(強度)、光の位相、光の偏光状態、光の波長及び光の進行方向(言い換えれば、偏向状態)のうちの少なくとも1つである光特性の分布を変化させることを意味する。空間光変調器は、加工光ELを透過させて空間変調する透過型の空間光変調器であってもよいし、加工光ELを反射して空間変調する反射型の空間光変調器であってもよい。
【0115】
(4-1-5)光照射装置25aの構造
塗装膜SFに加工光ELを照射するために、光照射装置25aは、
図22に示すように、加工光ELを射出可能な光源系251aと、光源系251aから射出された加工光ELを複数のビームに分割するレンズアレイ2513aと、レンズアレイ2513aからの複数のビームを塗装膜SFに導く光学系252aとを備える。
【0116】
光源系251aは、単一の光源2511aと、光源2511aからの入射ビームを整形、典型的には拡大して射出するビームエキスパンダ2512aとを備える。ビームエキスパンダ2512aは、光源2511aからの入射ビームのビーム断面内の強度分布を均一にするための光学部材を有していてもよい。
【0117】
レンズアレイ2513aは、入射ビームを横切る方向、典型的には図中YZ平面内に配列されてそれぞれが入射ビームを集光する複数のレンズ素子を備えている。このレンズアレイ2513aの射出側には、二次元的に配列された光源像が形成される。
【0118】
光学系252aは、入射する複数のビームの間隔を所定の間隔にするためのアフォーカルズームレンズ2522a、アフォーカルズームレンズ2522aからの複数のビームを所定位置に集光する集光光学系2523a、及び集光光学系2523aからの複数のビームを、複数の加工光EL0として塗装膜SF上に集光するfθレンズ2524aを備える。
【0119】
光学系252aからの複数の加工光EL0(fθレンズ2524aからの複数の加工光EL0)は、塗装膜SF上に複数の照射領域EAを形成する。言い換えると、塗装膜SF上には、複数の加工光EL0が照射される。
【0120】
ここで、アフォーカルズームレンズ2522aは、両側テレセントリックなズームレンズと見なすこともできる。このとき、レンズアレイ2513aによる複数の光源像形成位置と、アフォーカルズームレンズ2522aと集光光学系2523aとの間の光路と、塗装膜SFとは互いに光学的に共役であってもよい。アフォーカルズームレンズ2522aと集光光学系2523aとの間の光路、すなわちアフォーカルズームレンズ2522aの射出側の光路と塗装膜SFとが互いに共役であることから、アフォーカルズームレンズ2522aから射出される複数のビームの間隔を変更すれば、塗装膜SF上に達する加工光EL0の間隔も変更されることが明らかである。したがって、図示無き駆動部によって、アフォーカルズームレンズ2522aの倍率(角倍率)を変更して、塗装膜SF上に達する加工光EL0の間隔を変更してもよい。
【0121】
また、集光光学系2523aを構成する複数のレンズのうちの一部を、光軸方向に移動可能に設けてフォーカスレンズとしてもよい。
【0122】
尚、上述において、レンズアレイ2513aは光分岐素子と称することができる。レンズアレイ2513aに代えて、反射型のミラーアレイを用いてもよい。
【0123】
(4-1-6)光照射装置26aの構造
塗装膜SFに加工光ELを照射するために、光照射装置26aは、
図23に示すように、加工光ELを射出可能な光源系261aと、光源系261aから射出された加工光ELを複数のビームに分割するレンズアレイ2613aと、レンズアレイ2613aからの複数のビームを塗装膜SFに導く光学系262aとを備える。
【0124】
図23に示した光照射装置26aは、ガルバノミラー2624aの位置が、集光光学系2623a(フォーカスレンズ)とfθレンズ2625aとの間に配置される点で、
図22に示した光照射装置25aと異なる。光照射装置26aのその他の構成は、光照射装置25aのその他の構成と同じであってもよい。このようにガルバノミラー2624aの配置が異なっていても、
図23に示す光照射装置26aは、
図22に示した光照射装置25aと同様の効果を享受することができる。
【0125】
尚、
図23に示した光照射装置26aにおいて、fθレンズ2625aは、塗装膜SF側にテレセントリックな光学系であってもよく、塗装膜SF側が非テレセントリックな光学系であってもよい。fθレンズ2625aが塗装膜SF側に非テレセントリックな光学系である場合には、fθレンズ2625aの大きさよりも大きな面積に対して加工光ELを照射することができる。
【0126】
また、上述の
図22及び
図23に夫々示した光照射装置26a及び26bの夫々において、集光光学系2523a又は2623aのうちの一部のレンズを光軸方向に移動させてフォーカスレンズとする場合、フォーカスレンズの移動に伴って光学系252a、262aの倍率が変更されてしまう恐れがある。この場合、このフォーカスレンズの移動に伴う倍率変動を、アフォーカルズームレンズ2522a又は2622aの倍率変更で補正すればよい。
【0127】
尚、本例では、ガルバノミラー2624aは、互いに直交する2軸廻りに移動可能な2軸ガルバノミラーであってもよいが、それに限定されず、
図3に示したように、2つの1軸ガルバノミラーを組み合わせたものを用いてもよい。
【0128】
(4-1-7)光照射装置27aの構造
塗装膜SFに加工光ELを照射するために、光照射装置27aは、
図24に示すように、加工光ELを射出可能な光源系271aと、光源271aから射出された加工光を複数のビームに分岐する光分岐部材2713aを備える光分岐部と、光分岐部からの複数のビームを塗装膜SFに導く光学系272aとを備えている。ここで、光源系271aと光学系272aとの構成は、
図22に示した光源系251a及び光学系252aと同様であるため、ここでは記載を省略する。
【0129】
光分岐部材2713aとしては、反射型の回折光学素子を用いることができる。光分岐部材2713aに入射した入射ビームは、例えば回折作用により、互いに異なる方向に進行する複数の回折ビームに分割される。光分岐部材2713aの射出側には、光分岐部材2713aの位置に前側焦点が位置するコリメート光学系2714aが設けられており、互いに異なる方向に進行する複数のビームは、コリメート光学系2714aによって互いに平行となるように向きが変えられ、互いに平行な複数のビームとして光学系272aに向かう。
【0130】
尚、光分岐部材2713aとしては、反射型の回折光学素子には限定されず、反射型の空間光変調器を用いてもよい。反射型の空間光変調器としては、互いにその位置及び/又は姿勢が変更可能な複数のミラーを有するミラーアレイ、又は、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)型の空間光変調器等、種々の空間光変調器を用いることができる。ここで、光分岐部材2713aとして、反射光の状態を能動的に変更することができる空間光変調器を用いれば、この空間光変調器からの光の状態(強度分布、進行方向等々)を変更して、塗装膜SF上の照射領域EAの位置、形状、分布等の少なくとも一つを調整できる。また、光分岐部材2713aとして透過型の回折光学素子及び透過型の空間光変調器の少なくとも一方を用いてもよい。
【0131】
尚、
図24に示した光学系272aとして、
図25に示した光学系262aを用いてもよい。
【0132】
(4-1-8)図3に示す光照射装置11の変形例
図3(b)に示す光源系111では、複数の光源1111は、等間隔で一列に配列されている。しかしながら、複数の光源111は、等間隔で配列されていなくてもよいし、一列に配列されていなくてもよい。つまり、複数の光源1111は、
図3(b)に示す配列パターンとは異なるその他の配列パターンで配列されてもよい。例えば、複数の光源1111は、等間隔でマトリクス状に配列されていてもよい。例えば、複数の光源1111は、千鳥状の配列パターンで配列されていてもよい。例えば、複数の光源1111は、ランダムな間隔で一列に又は複数列に配列されていてもよい。
【0133】
図3(c)に示す光源系111では、分岐器1112が分岐した複数の加工光EL夫々が射出される複数の射出口は、等間隔で一列に配列される。しかしながら、複数の射出口は、等間隔で配列されていなくてもよいし、一列に配列されていなくてもよい。つまり、複数の射出口は、
図3(c)に示す配列パターンとは異なるその他の配列パターンで配列されてもよい。例えば、複数の射出口は、等間隔でマトリクス状に配列されていてもよい。例えば、複数の射出口は、千鳥状の配列パターンで配列されていてもよい。例えば、複数の射出口は、ランダムな間隔で一列に又は複数列に配列されていてもよい。或いは、光源系111は、単一の射出口を備えていてもよい。つまり、光源系111は、単一の加工光ELを照射してもよい。この場合、光源系111は、分岐器1112を備えていなくてもよい。
【0134】
図3に示す光照射装置11によれば、塗装膜SFには、複数の加工光ELが同時に照射される。しかしながら、複数の加工光ELが塗装膜SFに同時に照射されなくてもよい。例えば、複数の加工光ELの一部が塗装膜SFに照射されている期間中に、複数の加工光ELの他の一部が塗装膜SFに照射されていなくてもよい。例えば、複数の加工光ELの一部が第1のタイミングで塗装膜SFに照射され、その後、複数の加工光ELの他の一部が第1のタイミングとは異なる第2のタイミングで塗装膜SFに照射されてもよい。例えば、複数の加工光ELが順に塗装膜SFに照射されてもよい。
【0135】
図3に示す光照射装置11では、ガルバノミラー1122は、X走査ミラー1122X及びY走査ミラー1122Yの双方を備える2軸式のガルバノミラーである。しかしながら、ガルバノミラー1122は、X走査ミラー1122X及びY走査ミラー1122Yのいずれか一方を備える1軸式のガルバノミラーであってもよい。このような1軸式のガルバノミラーを備える加工装置は、ガルバノミラーを制御して、複数の加工光ELで塗装膜SFの表面をX軸方向及びY軸方向のいずれか一方に沿って走査し、駆動系12を用いて1軸式のガルバノミラーを備える光照射装置をX軸方向及びY軸方向のいずれか他方に沿って移動させることで、複数の加工光ELで塗装膜SFの表面をX軸方向及びY軸方向のいずれか他方に沿って走査してもよい。尚、ガルバノミラー1122としては、直交する2軸の回りに回転可能な1つのミラーを備えるものであってもよい。
【0136】
(4-2)第2変形例
続いて、
図25を参照しながら、第2変形例の加工装置1bについて説明する。
図25に示すように、第2変形例の加工装置1bは、上述した加工装置1と比較して、表面特性計測装置19bを更に備えているという点で異なる。表面特性計測装置19bは、光照射装置11が複数の加工光ELを塗装膜SFの表面に照射する前に、塗装膜SFの表面(特に、塗装膜SFの表面のうち光照射装置11が複数の加工光ELを照射しようとしている一部の面部分)の特性を計測する。表面特性計測装置19bは、支持部材136bを介して収容装置13によって支持されている。従って、収容空間SP内において、光照射装置11と表面特性計測装置19bとの間の相対的な位置関係は固定されている。更に、第2変形例の加工装置1bは、上述した加工装置1と比較して、表面特性計測装置19bの計測結果に基づいて光照射装置11を制御するという点で異なる。加工装置1bのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同じであってもよい。
【0137】
以下、表面特性計測装置19bの計測結果に基づいて光照射装置11を制御する事前計測制御動作の具体例について説明する。
【0138】
(4-2-1)事前計測制御動作の第1具体例
第1具体例では、表面特性計測装置19bは、塗装膜SFの表面の特性として、塗装膜SFの表面の形状を計測する。表面特性計測装置19bは、塗装膜SFに対して計測光MLb(以下、第1具体例で用いられる計測光MLbを、“計測光MLb1”と称する)を照射する。このため、表面特性計測装置19bは、計測光MLb1を照射する投光装置191bを備えている。更に、表面特性計測装置19bは、塗装膜SFからの計測光MLb1の反射光を計測する。このため、表面特性計測装置19bは、計測光MLb1の反射光を検出する検出装置192bを備えている。反射光は、塗装膜SFの表面で反射された計測光MLb1であるため、反射光の計測結果(つまり、表面特性計測装置19bの出力)は、塗装膜SFの表面の形状に関する情報を含んでいる。このため、制御装置18は、表面特性計測装置19bの計測結果に基づいて、塗装膜SFの表面の形状を特定することができる。尚、塗装膜SFの表面の形状を計測する表面特性計測装置19bの一例として、塗装膜SFの表面上で所定の発光パターン(例えば、線状の発光パターン、又は、格子状の発光パターン)を有する計測光MLb1を照射し、計測光MLb1の照射方向と異なる方向からパターン像を計測して表面形状を計測可能な計測装置(例えば、光切断法を用いた計測装置等)があげられる。また、表面特性計測装置19bの一例としては、格子照射法若しくは格子投影法を用いたモアレトポグラフィ法、ホログラフィ干渉法、オートコリメーション法、ステレオ法、非点収差法、臨界角法、又は、ナイフエッジ法など種々の手法の光学計測装置を用いることができる。
【0139】
第1具体例では、制御装置18は、塗装膜SFの表面の形状に基づいて、複数の加工光ELの照射条件(つまり、照射状態)を設定する。第1具体例では、複数の加工光ELの照射条件は、複数の加工光ELの集光位置FPである。具体的には、制御装置18は、例えば、複数の加工光ELの集光位置FPを、複数の加工光ELの照射によって塗装膜SFを加工することが可能な位置に設定する。ここで、上述したように、塗装膜SFは、加工光ELの照射によって塗装膜SFの一部が蒸発するように加工される。塗装膜SFは、加工光ELの照射によって加工光ELから塗装膜SFに加えられたエネルギー(つまり、塗装膜SFに吸収された加工光ELのエネルギー)に起因して蒸発する。加工光ELから塗装膜SFに加えられるエネルギーは、塗装膜SFの表面における加工光ELの強度が大きくなるほど高くなる。このため、塗装膜SFの表面における加工光ELの強度が、塗装膜SFを蒸発させることが可能な強度以上になっていれば、加工光ELの照射によって塗装膜SFが蒸発する。従って、制御装置18は、塗装膜SFの表面に対する加工光ELの集光位置FPの相対位置と、塗装膜SFの表面における加工光ELの強度との間の関係を考慮した上で、複数の加工光ELの集光位置FPを、複数の加工光ELの照射によって塗装膜SFを加工することが可能な位置に設定する。また、加工光ELが照射される照射領域EL内の塗装膜SFの一部が蒸発するように加工されるところ、加工光ELの集光位置が塗装膜SFの表面から大きく外れる(つまり、Z軸方向に沿って外れる)と、加工光ELが照射される照射領域EAが大きくなり、所要のリブレットを得ることができない恐れがある。従って、制御装置18は、塗装膜SFの表面における加工光ELの照射領域EAの大きさが所要の大きさとなるように、複数の加工光ELの集光位置FPを設定する。
【0140】
このような前提を踏まえると、塗装膜SFの表面が光学系112の焦点深度(つまり、DOF:Depth Of Focusであり、複数の加工光ELの集光位置FPを中心に物体面側及び像面側に広がる領域)の範囲内に位置していれば、塗装膜SFの表面における加工光ELの強度が相応に大きくなる(つまり、塗装膜SFを蒸発させることが可能な強度以上になる)。また、塗装膜SFの表面が光学系112の焦点深度の範囲内に位置していれば、塗装膜SFの表面における加工光ELの照射領域EAの大きさが所要の大きさとなる。塗装膜SFの表面が光学系112の焦点深度の範囲内に位置するとは、塗装膜SFの表面に形成される加工光ELの照射領域EAの大きさが所要の範囲内であることを意味してもよい。従って、
図26(a)から
図26(d)に示すように、制御装置18は、例えば、光学系112の焦点深度の範囲内に塗装膜SFの表面(特に、塗装膜SFの表面のうち複数の加工光ELが照射される一部の面部分)が位置するように、複数の加工光ELの集光位置FPを設定してもよい。
図26(a)は、塗装膜SFの表面が平面となる場合において、光学系112の焦点深度の範囲内に塗装膜SFの表面が位置する様子を示す断面図である。
図26(b)は、塗装膜SFの表面が曲面となる場合において、光学系112の焦点深度の範囲内に塗装膜SFの表面が位置する様子を示す断面図である。
図26(c)は、塗装膜SFの表面に凹凸が存在する場合において、光学系112の焦点深度の範囲内に塗装膜SFの表面が位置する様子を示す断面図である。
図26(d)は、塗装膜SFの表面が光学系112の光軸AX(つまり、Z軸に沿った光軸AX)に対して傾斜している場合において、光学系112の焦点深度の範囲内に塗装膜SFの表面が位置する様子を示す断面図である。
【0141】
塗装膜SFに対して複数の加工光ELの集光位置FPがZ軸に沿って移動すると、塗装膜SFと光学系112の焦点深度の範囲との間の相対的な位置関係(特に、Z軸方向における位置関係)が変わる。このため、制御装置18は、複数の加工光ELの集光位置FPを設定することで、実質的には、塗装膜SFと光学系112の焦点深度の範囲との間の相対的な位置関係を設定していると言える。
【0142】
制御装置18は、このように集光位置FPを設定した後に、設定した集光位置FPに複数の加工光ELが集光されるように、光照射装置11が備えるフォーカスレンズ1121を制御する。つまり、制御装置18は、設定した集光位置FPに複数の加工光ELが集光されるように、フォーカスレンズ1121を制御して複数の加工光ELの集光位置FPをまとめて制御(つまり、調整)する。言い換えると、制御装置18は、設定した集光位置FPに複数の加工光ELが集光されるように、フォーカスレンズ1121を制御して複数の加工光ELの集光位置FPを同時に制御(同時に変更)する。尚、第1変形例で説明した光照射装置21aから24aにおいても、光学系212aから242aがフォーカスレンズ1121を備えていれば、制御装置18は、設定した集光位置FPに複数の加工光ELが集光されるように光照射装置21aから24aを制御可能である。その結果、光学系112の焦点深度の範囲内に塗装膜SFの表面が位置することになる。従って、塗装膜SFの表面には、塗装膜SFを蒸発させることが可能な強度以上の加工光ELが照射される。このため、複数の加工光ELで塗装膜SFが適切に加工される。
【0143】
このような事前計測制御動作の第1具体例によれば、加工装置1bは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受しながら、塗装膜SFの表面の形状の制約を受けることなく、塗装膜SFを加工することができる。
【0144】
尚、複数の加工光ELの走査に伴い、複数の加工光ELが夫々照射される複数の照射領域EAの塗装膜SFの表面上での相対的な位置(特に、塗装膜SFの表面に沿った方向における位置)が変わる。つまり、複数の加工光ELが、塗装膜SFの表面に沿って塗装膜SFに対して移動する。複数の照射領域EAの塗装膜SFの表面上での相対的な位置が変わると、複数の加工光ELが照射されている間に、塗装膜SFの表面のうち複数の照射領域EAが形成されている部分の形状もまた変わる可能性がある。このため、制御装置18は、複数の加工光ELが塗装膜SFに照射されているとき(つまり、複数の加工光ELが塗装膜SFに対して相対的に移動しているとき)に、塗装膜SFの表面のうち複数の照射領域EAが形成されている部分の形状に基づいて集光位置FPを適宜設定し、設定した集光位置FPに複数の加工光ELが集光されるようにフォーカスレンズ1121を制御してもよい。
【0145】
また、塗装膜SFの表面の形状によっては、複数の加工光ELの集光位置FPを設定しても、塗装膜SFの表面(特に、塗装膜SFの表面のうち複数の加工光ELが照射される一部の面部分)の一部が光学系112の焦点深度の範囲内に位置できない場合がある。つまり、塗装膜SFの表面の一部が光学系112の焦点深度の範囲内に位置する一方で、塗装膜SFの表面の他の一部が光学系112の焦点深度の範囲内に位置することができない場合がある。この場合には、加工装置1bは、光学系112の焦点深度の範囲内に表面が位置する塗装膜SFの一部に対して加工光ELが照射される一方で、光学系112の焦点深度の範囲内に表面が位置しない塗装膜SFの他の一部に対して加工光ELが照射されないように、複数の加工光ELの一部だけを選択的に塗装膜SFに照射してもよい。
【0146】
また、フォーカスレンズ1121による複数の加工光ELの集光位置FPの制御は、Z軸方向における塗装膜SFの表面と複数の加工光ELの集光位置FPとの間の相対的な位置関係の制御と等価である。このため、制御装置18は、フォーカスレンズ1121を制御して複数の加工光ELの集光位置FPを制御することに加えて又は代えて、駆動系12を制御して塗装膜SFに対する光照射装置11のZ軸方向における相対位置を制御してもよい。この場合であっても、加工装置1bは、塗装膜SFの表面の形状の制約を受けることなく、塗装膜SFを加工することができる。
【0147】
また、集光位置FPが変わると、塗装膜SFの表面と交差する軸を含む面(例えば、
図26(a)から
図26(d)に示す例では、XZ平面)内での複数の加工光ELの強度分布が変わる。このため、フォーカスレンズ1121による複数の加工光ELの集光位置FPの制御は、塗装膜SFの表面と交差する軸を含む面内での複数の加工光ELの強度分布の制御と等価である。逆に言えば、制御装置18は、複数の加工光ELの照射によって塗装膜SFを加工することができるように、塗装膜SFの表面と交差する軸を含む面内での複数の加工光ELの強度分布を制御してもよい。この場合、光学系112は、制御装置18の制御下で複数の加工光ELの強度分布を調整するための強度分布調整素子を備えていてもよい。強度分布調整素子としては、例えば光路を横切る面内で所要の濃度分布を有するフィルタ、光路を横切る面内で所要の面形状を有する非球面(屈折又は反射)光学部材、回折光学素子、空間光変調器等を用いることができる。或いは、塗装膜SFの表面と交差する軸を含む面内での複数の加工光ELの形状が変わると、複数の加工光ELの強度分布もまた変わり得る。このため、制御装置18は、複数の加工光ELの照射によって塗装膜SFを加工することができるように、塗装膜SFの表面と交差する軸を含む面内での複数の加工光ELの形状を制御してもよい。この場合、光学系112は、制御装置18の制御下で複数の加工光ELの形状を調整するための光形状調整素子を備えていてもよい。光形状調整素子としては、強度分布調整素子としては、例えば所定の開口形状を有する絞り、光路を横切る面内で所要の濃度分布を有するフィルタ、光路を横切る面内で所要の面形状を有する非球面(屈折又は反射)光学部材、回折光学素子、空間光変調器等を用いることができる。尚、制御装置18は、複数の加工光ELの強度分布及び形状の少なくとも一方を制御する場合には、複数の加工光ELの集光位置FPを制御してもよいし、制御しなくてもよい。
【0148】
また、集光位置FPが変わると、塗装膜SFの表面上での照射領域EAの大きさが変わる。具体的には、塗装膜SFの表面に沿った方向において集光位置FPが塗装膜SFの表面に近づくほど、照射領域EAの大きさが小さくなる。塗装膜SFの表面に沿った方向において集光位置FPが塗装膜SFの表面から遠ざかるほど、照射領域EAの大きさが大きくなる。このため、フォーカスレンズ1121による複数の加工光ELの集光位置FPの制御は、塗装膜SF上での複数の照射領域EAの大きさの制御と等価である。従って、制御装置18は、実質的には、塗装膜SFと複数の照射領域EAとの位置関係に基づいて、塗装膜SFの表面上での複数の照射領域EAの大きさを制御しているとも言える。例えば、
図26(c)に示す例で言えば、制御装置18は、(i)塗装膜SF上の第1部分(
図26(c)に示す左側に位置する部分)に形成される照射領域EAの大きさを相対的に小さくし、(i)塗装膜SF上の第2部分(
図26(c)に示す中央に位置する部分)及び第3部分(
図26(c)に示す右側に位置する部分)に形成される照射領域EAの大きさを相対的に大きくするように、複数の照射領域EAの大きさを制御しているとも言える。つまり、制御装置18は、塗装膜SF上の第1部分に形成される照射領域EAの大きさを所望の第1の大きさに設定し、塗装膜SF上の第2部分に形成される照射領域EAの大きさを所望の第2の大きさに設定し、塗装膜SF上の第3部分に形成される照射領域EAの大きさを所望の第3の大きさに設定しているとも言える。
【0149】
また、上述した説明では、制御装置18は、フォーカスレンズ1121を制御することで、複数の加工光ELの集光位置FPをまとめて制御(同時に制御)可能である。しかしながら、制御装置18は、複数の加工光ELの集光位置FPを個別に又は別個独立に制御してもよい。但し、複数の加工光ELの集光位置FPを個別に又は別個独立に制御する場合には、加工装置1bは、光照射装置11に代えて、複数の加工光ELの集光位置FPを夫々調整するための複数のフォーカスレンズ1121を備える光照射装置11b-1を備える。複数のフォーカスレンズ1121を備える光照射装置11b-1の一例は、
図27に示されている。
図27に示すように、光照射装置11b-1は、複数の照射ユニット110b-1を備えている。各照射ユニット110b-1は、光源系111b-1と、上述した光学系112とを備えている。光源系111b-1は、単一の光源1111を備えている。このような光照射装置11b-1では、複数の加工光ELを夫々照射する複数の照射ユニット110b-1が複数のフォーカスレンズ1121を夫々備えているため、複数の加工光ELの集光位置FPが個別に又は別個独立に制御可能となる。尚、各照射ユニット110b-1は、複数の加工光ELをそれぞれ塗装膜SFに照射するものには限定されず、単一の加工光ELをそれぞれ塗装膜SFに照射するものであってもよい。
【0150】
尚、各照射ユニット110b-1が単一の加工光ELを照射する場合、
図28に示すように、各照射ユニット110b-1の光学系112が塗装膜SF側に非テレセントリックな光学系であるときには、塗装膜SFの表面が平面であっても塗装膜SF上の位置に依存して光学系112から集光位置FPまでの距離が変わる。この場合には、加工光ELの塗装膜SF上での照射位置に応じて、フォーカスレンズ1121を制御すればよい。
【0151】
複数の加工光ELの集光位置FPが個別に又は別個独立に制御される場合においても、制御装置18は、光学系112の焦点深度の範囲内に塗装膜SFの表面が位置するように、複数の加工光ELの集光位置FPを設定してもよい。或いは、制御装置18は、
図29(a)から
図29(d)に示すように、複数の加工光ELの夫々の集光位置FPが塗装膜SFの表面に位置するように、複数の加工光ELの集光位置FPを設定してもよい。
図29(a)は、塗装膜SFの表面が平面となる場合において、複数の加工光ELの集光位置FPが塗装膜SFの表面に位置する様子を示す断面図である。
図29(b)は、塗装膜SFの表面が曲面となる場合において、複数の加工光ELの集光位置FPが塗装膜SFの表面に位置する様子を示す断面図である。
図29(c)は、塗装膜SFの表面に凹凸が存在する場合において、複数の加工光ELの集光位置FPが塗装膜SFの表面に位置する様子を示す断面図である。
図29(d)は、塗装膜SFの表面が光学系112の光軸AXに対して傾斜している場合において、複数の加工光ELの集光位置FPが塗装膜SFの表面に位置する様子を示す断面図である。
【0152】
更に、複数の加工光ELの集光位置FPが個別に又は別個独立に制御される場合においても、塗装膜SFの表面の形状によっては、複数の加工光ELのうちの一部の集光位置FPが塗装膜SFの表面に位置できない場合がある。つまり、複数の加工光ELの一部の集光位置FPが塗装膜SFの表面に位置する一方で、複数の加工光ELの他の一部の集光位置FPが塗装膜SFの表面に位置することができない場合がある。この場合には、加工装置1bは、集光位置FPが塗装膜SFの表面に位置する加工光ELが塗装膜SFに照射される一方で、集光位置FPが塗装膜SFの表面に位置しない加工光ELが照射されないように、複数の加工光ELの一部だけを選択的に塗装膜SFに照射してもよい。或いは、複数の加工光ELの集光位置FPが個別に又は別個独立に制御される場合においても、複数の加工光ELのうちの一部の加工光ELを照射するための光学系112の焦点深度の範囲内に塗装膜SFの表面が位置できない場合がある。つまり、複数の加工光ELのうちの一の加工光ELを照射するための一の光学系112の焦点深度の範囲内に塗装膜SFの表面が位置する一方で、複数の加工光ELのうちの他の加工光ELを照射するための他の光学系112の焦点深度の範囲内に塗装膜SFの表面が位置できない場合がある。この場合にも、加工装置1bは、塗装膜SFの表面が焦点深度の範囲内に含まれる光学系112を介して加工光ELが照射される一方で、塗装膜SFの表面が焦点深度の範囲内に含まれない光学系112を介して加工光ELが照射されないように、複数の加工光ELの一部だけを選択的に塗装膜SFに照射してもよい。
【0153】
尚、
図29(a)から
図29(d)に示すように、複数の加工光ELの集光位置FPの個別の制御は、実質的には、Z軸方向(或いは、塗装膜SFの表面に交差する方向)における塗装膜SFに対する複数の加工光ELの集光位置FPの相対的な位置関係の変更と等価である。このため、制御装置18は、複数のフォーカスレンズ1121を制御して複数の加工光ELの集光位置FPを制御することに加えて又は代えて、複数の照射ユニット110b-1を個別に移動可能な不図示の駆動系を制御して塗装膜SFに対する複数の照射ユニット110b-1の夫々のZ軸方向における相対位置を制御してもよい。複数の照射ユニット110b-1の夫々のZ軸方向における相対位置の制御によって、Z軸方向における塗装膜SFの表面と複数の加工光ELの集光位置FPとの間の相対的な位置関係が変わる。このため、加工装置1bは、複数の照射ユニット110b-1の夫々のZ軸方向における相対位置を制御しても、塗装膜SFの表面の形状の制約を受けることなく、塗装膜SFを加工することができる。
【0154】
或いは、塗装膜SFに対する複数の照射ユニット110b-1の夫々の姿勢(例えば、チルト量であって、θX方向及びθY方向の少なくとも一方における相対位置)が変化しても、複数の照射ユニット110b-1が夫々出射する複数の加工光ELの集光位置FPの相対的な位置関係が変わる。このため、制御装置18は、複数の照射ユニット110b-1を個別に移動可能な不図示の駆動系を制御して塗装膜SFに対する複数の照射ユニット110b-1の夫々の姿勢を制御してもよい。この場合であっても、加工装置1bは、塗装膜SFの表面の形状の制約を受けることなく、塗装膜SFを加工することができる。尚、複数の照射ユニット110b-1を備えていない光照射装置11を加工装置1bが備えている場合であっても、制御装置18は、塗装膜SFに対する光照射装置11の姿勢を制御してもよい。この場合であっても、塗装膜SFに対する複数の加工光ELの集光位置FPの相対的な位置が制御可能である。
【0155】
(4-2-2)事前計測制御動作の第2具体例
事前計測制御動作の第2具体例は、上述した事前計測制御動作の第1具体例と比較して、複数の加工光ELの照射条件として、複数の加工光ELの集光位置FPに代えて、光学系112の焦点深度に関する条件(以下の説明では、焦点深度の範囲を用いる)が用いられるという点で異なる。事前計測制御動作の第2具体例のその他の特徴は、事前計測制御動作の第1具体例と同じであってもよい。
【0156】
第2具体例においても、第1具体例と同様に、制御装置18は、複数の加工光ELの集光位置FPを、複数の加工光ELで塗装膜SFを加工することが可能な位置に設定する。例えば、
図30(a)から
図30(d)に示すように、制御装置18は、光学系112の焦点深度の範囲内に塗装膜SFの表面(特に、塗装膜SFの表面のうち複数の加工光ELが照射される一部の面部分)が位置するように、光学系112の焦点深度の範囲を設定してもよい。言い換えると、制御装置18は、塗装膜SFの表面に形成される加工光ELの照射領域EAの大きさが所要の範囲内となるように、光学系112の焦点深度の範囲を設定してもよい。
図30(a)は、塗装膜SFの表面が平面となる場合において、塗装膜SFの表面を含むように設定された光学系112の焦点深度の範囲を示す断面図である。
図30(b)は、塗装膜SFの表面が曲面となる場合において、塗装膜SFの表面を含むように設定された光学系112の焦点深度の範囲を示す断面図である。
図30(c)は、塗装膜SFの表面に凹凸が存在する場合において、塗装膜SFの表面を含むように設定された光学系112の焦点深度の範囲を示す断面図である。
図30(d)は、塗装膜SFの表面が光学系112の光軸AXに対して傾斜している場合において、塗装膜SFの表面を含むように設定された光学系112の焦点深度の範囲を示す断面図である。
【0157】
第2具体例では、光学系112は、光学系112の焦点深度の範囲を調整するための光学素子(以下、この光学素子を、“焦点深度調整素子”と称する)を備えている。焦点深度調整素子としては、例えばフォーカスレンズ1121とすることができる。焦点深度の範囲は、光の進行方向における焦点深度の範囲の下限及び上限の位置とすることができる。制御装置18は、光学系112の焦点深度の範囲が設定した焦点深度の範囲となるように、焦点深度調整素子を制御する。その結果、光学系112の焦点深度の範囲内に塗装膜SFの表面が位置することになる。従って、塗装膜SFの表面には、塗装膜SFを蒸発させることが可能な強度以上の加工光ELが照射され、所要の範囲で塗装膜SFが除去される。このため、複数の加工光ELで塗装膜SFが適切に加工される。尚、第2具体例では、焦点深度の範囲の大きさを一定としたが、焦点深度の範囲の大きさを変更するようにしてもよい。焦点深度の範囲の大きさを変更する場合、光学系112の塗装膜SF側の開口数を変更してもよい。
【0158】
このような事前計測制御動作の第2具体例によれば、加工装置1bは、上述した事前計測制御動作の第1具体例によって享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
【0159】
尚、第2具体例においても、第1具体例と同様に、塗装膜SFの表面の形状によっては、光学系112の焦点深度の範囲を設定しても、塗装膜SFの表面(特に、塗装膜SFの表面のうち複数の加工光ELが照射される一部の面部分)の一部が光学系112の焦点深度の範囲内に位置できない場合がある。この場合には、加工装置1bは、光学系112の焦点深度の範囲内に表面が位置する塗装膜SFの一部に対して加工光ELが照射される一方で、光学系112の焦点深度の範囲内に表面が位置しない塗装膜SFの他の一部に対して加工光ELが照射されないように、複数の加工光ELの一部だけを選択的に塗装膜SFに照射してもよい。
【0160】
(4-2-3)事前計測制御動作の第3具体例
事前計測制御動作の第3具体例は、上述した事前計測制御動作の第1具体例と比較して、制御装置18が、塗装膜SFの表面の形状に基づいて、光学系112の像面(つまり、光学系112を介して加工光ELが結像する光学面)の状態を設定するという点で異なる。更に、事前計測制御動作の第3具体例は、上述した事前計測制御動作の第1具体例と比較して、制御装置18が、光学系112の像面の状態が、設定した状態となるように、光学系112を制御するという点で異なる。事前計測制御動作の第3具体例のその他の特徴は、事前計測制御動作の第1具体例と同じであってもよい。ここで、光学系112の像面としては、複数の集光位置FPをフィッティングした仮想面としてもよい。また、
図21の変型例の場合には、マスク2421aの像が形成される面としてもよい。
【0161】
制御装置18は、塗装膜SFの表面の形状に基づいて、像面の大きさを設定してもよい。例えば、制御装置18は、像面の大きさを、塗装膜SFの表面の形状に応じた所定の大きさに設定してもよい。制御装置18は、塗装膜SFの表面の形状に基づいて、塗装膜SF(特に、塗装膜SFの表面)に対する像面の相対的な位置(例えば、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のうちの少なくとも一つに沿った相対的な位置)を設定してもよい。例えば、制御装置18は、像面の位置を、塗装膜SFの表面の形状に応じた所定の位置に設定してもよい。制御装置18は、塗装膜SFの表面の形状に基づいて、像面の形状を設定してもよい。例えば、制御装置18は、像面の形状を、塗装膜SFの表面の形状に応じた所定の形状に設定してもよい。
【0162】
像面の状態を設定する際に、
図31(a)から
図31(d)に示すように、制御装置18は、像面と塗装膜SFの表面とが一致するように、像面の状態を設定してもよい。
図31(a)は、塗装膜SFの表面が平面となる場合において、塗装膜SFの表面に一致するように設定された像面を示す断面図である。
図31(b)は、塗装膜SFの表面が曲面となる場合において、塗装膜SFの表面に一致するように設定された像面を示す断面図である。
図31(b)に示すように、塗装膜SFの表面が曲面である(つまり、湾曲している)場合には、設定される像面もまた曲面となる(つまり、湾曲する)ように像面の状態が設定される。
図31(c)は、塗装膜SFの表面に凹凸が存在する場合において、塗装膜SFの表面に一致するように設定された像面を示す断面図である。
図31(c)に示すように、塗装膜SFの表面の形状によっては単一の像面を塗装膜SFの表面に一致させることが困難な場合がある。この場合には、塗装膜SFの表面を複数の分割領域(
図31(c)に示す例では、3つの分割領域#1から#3)に分割して、各分割領域の表面に一致する像面(
図31(c)に示す例では、3つの像面#1から#3)が得られるように、像面の状態(特に、大きさ及び位置の少なくとも一方)が設定されてもよい。更に、この場合には、複数の分割領域に順に加工光ELが照射される。つまり、加工装置1bは、光学系112の像面を像面#1に設定した状態で加工光ELを照射して分割領域#1を加工し、続いて、光学系112の像面を像面#2に設定した状態で加工光ELを照射して分割領域#2を加工し、続いて、光学系112の像面を像面#3に設定した状態で加工光ELを照射して分割領域#3を加工する。
図31(d)は、塗装膜SFの表面が光学系112の光軸AXに対して傾斜している場合において、塗装膜SFの表面に一致するように設定された像面を示す断面図である。
図31(d)に示すように、塗装膜SFの表面が傾斜している場合には、設定される像面もまた傾斜するように像面の状態が設定される。
【0163】
第3具体例では、加工光ELを塗装膜SFに導く光学系112は、像面の状態を調整するための光学素子(以下、この光学素子を、“像面調整素子”と称する)を備えている。制御装置18は、加工光ELが実際に結像する像面が、設定した像面となるように、像面調整素子を制御する。或いは、制御装置18は、加工光ELが実際に結像する像面が、設定した像面となるように、塗装膜SFに対する光照射装置11の相対的な位置及び姿勢の少なくとも一方を制御してもよい。その結果、加工光ELが結像する像面が塗装膜SFの表面に一致することになる。従って、複数の加工光ELで塗装膜SFが適切に加工される。尚、例えば光学系112を構成する光学部材のうち、移動可能又は変形可能な光学部材を像面調整素子としてもよい。例えば光軸廻りに回転可能な一対のクサビプリズムを設け、一対のクサビプリズム全体の頂角を変更して、像面を傾斜させてもよい。また、像面調整素子として、光学系112を構成する光学部材のうちの少なくとも1つを、光軸に対して偏心させる、或いは光軸に対して傾斜させて、像面を傾斜させてもよい。また、像面調整素子として、光軸廻りに回転可能な一対のシリンドリカルレンズを設け、これらの光軸廻りの相対角度を変更して像面湾曲の度合いを調整してもよい。また、像面調整素子として、変形可能な光学部材を設け、この光学部材の変形により、光学系112の像面湾曲の度合いを調整してもよい。尚、加工光ELが単一の加工光である場合には、フォーカスレンズ1121を像面調整素子としてもよい。
【0164】
このような事前計測制御動作の第3具体例によれば、加工装置1bは、上述した事前計測制御動作の第1具体例によって享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
【0165】
(4-2-4)事前計測制御動作の第4具体例
事前計測制御動作の第4具体例は、上述した事前計測制御動作の第1具体例と比較して、制御装置18が、塗装膜SFの表面の形状に基づいて、加工光ELの照射によって塗装膜SFを加工するべきでない非加工領域を塗装膜SFの表面上に設定するという点で異なる。更に、事前計測制御動作の第4具体例は、上述した事前計測制御動作の第1具体例と比較して、制御装置18が、非加工領域には加工光ELを照射しないように光照射装置11を制御するという点で異なる。事前計測制御動作の第4具体例のその他の特徴は、事前計測制御動作の第1具体例と同じであってもよい。
【0166】
制御装置18は、
図32(a)に示すように、塗装膜SFの表面上において許容サイズ以上の構造物が存在する領域を、非加工領域に設定する。具体的には、例えば、制御装置18は、塗装膜SFの表面上において、周囲と比較して突き出た凸状構造物であって、且つ、周囲からの突出量T1が許容サイズに応じた所定の突出閾値(例えば、数ミリメートル、数センチメートル等)よりも大きい凸状構造物が存在する領域を、非加工領域に設定する。例えば、制御装置18は、凸状構造物が存在する領域に加えて又は代えて、塗装膜SFの表面上において、周囲と比較して窪んだ凹状構造物であって、且つ、周囲からの窪み量T2が許容サイズに応じた所定の窪み閾値(例えば、数ミリメートル、数センチメートル等)よりも大きい凹状構造物が存在する領域を、非加工領域に設定する。このような凸状構造物又は凹状構造物は、典型的には、
図32(a)に示すように、加工対象物S自体が突き出ている又は窪んでいる部分に存在する。
【0167】
上述したように、加工対象物Sの一例は、航空機PLの機体である。この場合、許容サイズ以上の構造物は、例えば、航空機PLの運行のために機体の表面に形成された運用構造物を含む。運用構造物の一例として、アンテナに関するアンテナ構造物があげられる。アンテナ構造物は、例えば、アンテナそのもの及びアンテナに付随して設置される付属物の少なくとも一方を含む。アンテナの一例として、ELT(Emergency Locator Transmitter)アンテナ、VHF(Very High Frequency)アンテナ、ADF(Automatic Direction Finder)アンテナ、ATC(Air Tranffic Control)トランスポンダアンテナ、TCAS(Traffic alert and Collision Avoidance System)アンテナ、及び、気象レーダアンテナ等の少なくとも一つがあげられる。運用構造物の一例として、センサに関するセンサ構造物があげられる。センサ構造物は、例えば、センサそのもの及びセンサに付随して設置される付属物の少なくとも一方を含む。センサの一例として、凍結感知センサ、ピトー管、AOA(Angle Of Attack)センサ、及び、高度センサ等の少なくとも一つがあげられる。運用構造物の一例として、流体(典型的には、気体)の流出入に関するフロー構造物があげられる。フロー構造物の一例として、流体が流入してくる流入口(例えば、エアインテーク及び冷却口等の少なくとも一つ)、及び、流体を流出させる流出口(例えば、ドレイン排水口及び排気口等の少なくとも一つ)等の少なくとも一つがあげられる。その他、運用構造物の一例として、監視カメラ用の窓、ワイパー、及び、格納扉等の少なくとも一つがあげられる。
【0168】
非加工領域を設定した後、制御装置18は、複数の加工光ELが塗装膜SFの表面を走査するように光制御装置11を制御する。この間、
図32(a)及び
図32(b)に示すように、制御装置18は、非加工領域には加工光ELを照射しないように光照射装置11を制御する。つまり、制御装置18は、ある照射領域EAが非加工領域と重なる場合に、当該ある照射領域EAに照射される加工光ELをオフにしてもよい。加工光ELのオフは、例えば、光源1111のオフ、及び、加工光ELの光路への遮光部材の挿入等の少なくとも一つによって実現可能である。一方で、制御装置18は、非加工領域に設定されてない領域には加工光ELを照射するように光照射装置11を制御する。尚、加工光ELが単一である場合、加工光ELの走査範囲を非加工領域以外の加工領域のみとする制御を行ってもよい。
【0169】
このような事前計測制御動作の第4具体例によれば、加工装置1bは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、第4具体例では、加工装置1bは、塗装膜SFを加工するべきでない部分にまで加工光ELを照射することはない。このため、加工装置1bは、加工光ELの照射による悪影響が運用構造物等のような何らかの構造物に及ぶことを防止しながら、塗装膜SFを加工することができる。
【0170】
尚、上述した説明では、塗装膜SFの表面上において許容サイズ以上の構造物が存在する領域を非加工領域に設定している。しかしながら、場合によっては、許容サイズ以上の構造物が存在する領域にもリブレット構造を形成したい場合がある。例えば、上述した運用構造物が存在しないものの、加工対象物Sの歪み及び塗装膜SFの厚みムラ等の少なくとも一つに起因して、塗装膜SFの表面上において許容サイズ以上の構造物が存在する領域が生じてしまう可能性がある。この場合、許容サイズ以上の構造物が存在する領域は、運用構造物が存在する領域でないがゆえに、リブレット構造を形成するべき領域である可能性がある。そこで、制御装置18は、許容サイズ以上の構造物が存在するもののリブレット構造を形成したい領域(以降、便宜上、この領域を“加工希望領域”と称する)を非加工領域に設定することなく、加工希望領域に加工光ELを照射してもよい。或いは、制御装置18は、加工希望領域を一旦非加工領域に設定した上で、塗装膜SFの表面上の加工希望領域以外の領域に加工光ELを照射する前に又は後に、加工希望領域に加工光ELを照射してもよい。但し、許容サイズ以上の構造物が存在する領域は、許容サイズ以上の構造物が存在しない領域と比較して突き出た領域(つまり、上述の
図26(c)に示す凹凸が存在する領域)に相当する。このため、許容サイズ以上の構造物が存在する領域に加工光ELを照射するために、制御装置18は、複数の加工光ELの集光位置FPを調整してもよいし(上述した第1具体例参照)、駆動系12を制御して光照射装置11をZ軸に沿って移動させてもよいし(上述した第1具体例参照)、光学系112の焦点深度を調整してもよい(上述した第2具体例参照)。
【0171】
また、制御装置18は、塗装膜SFの表面上において許容サイズ以上の構造物が存在する領域に加えて又は代えて、既にリブレット構造が形成されている(つまり、凹状構造CP1及び/又は凸状構造CP2が形成されている)領域を、非加工領域に設定してもよい。この場合、既に形成されているリブレット構造が、再度の加工光ELの照射によって特性が悪化する(例えば、形状が望ましくない形状になる)ように加工されてしまうことがない。
【0172】
また、制御装置18は、非加工領域に照射領域EAが重ならない(つまり、塗装膜SFの表面上で非加工領域を避けて照射領域EAが移動する)ように、光照射装置11を制御してもよい。例えば、制御装置18は、光照射装置11が加工光ELを照射している間に、非加工領域に照射領域EAが重ならないように、駆動系12を制御して塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させてもよい。この場合であっても、加工装置1bは、塗装膜SFを加工するべきでない部分にまで加工光ELを照射することはないため、加工光ELの照射による悪影響が運用構造物等のような何らかの構造物に及ぶことを防止しながら、塗装膜SFを加工することができる。
【0173】
(4-2-5)事前計測制御動作の第5具体例
第5具体例では、表面特性計測装置19bは、塗装膜SFの表面の特性として、加工光ELに対する塗装膜SFの反射率Rを計測する。反射率Rを計測するために、表面特性計測装置19bの投光装置191bは、塗装膜SFに対して計測光MLb(以下、第5具体例で用いられる計測光MLbを、“計測光MLb2”と称する)を照射する。計測光MLb2は、加工光ELの波長と同じ波長の光である。或いは、計測光MLb2は、加工光ELの波長と同じ波長の光成分を含む光であってもよい。この際、計測光MLb2の強度が、塗装膜SFを蒸発させることが可能な強度以上になっていると、計測光MLb2の照射によって塗装膜SFが蒸発してしまう可能性がある。このため、投光装置191bは、塗装膜SFを蒸発させることが可能な強度未満の強度を有する計測光MLb2を照射する。つまり、投光装置191bは、塗装膜SFを蒸発させることができない程度に強度が小さい計測光MLbを照射する。
【0174】
表面特性計測装置19bの検出装置192bは、塗装膜SFからの計測光MLb2の反射光(特に、その強度)を計測する。計測光MLb2が加工光ELの波長と同じ波長の光であるため、計測光MLb2の反射光の強度は、加工光ELに対する塗装膜SFの反射率Rが大きくなるほど大きくなる。従って、反射光の計測結果(つまり、表面特性計測装置19bの出力)は、反射率Rに関する情報を含んでいる。このため、制御装置18は、表面特性計測装置19bの計測結果に基づいて、反射率Rを特定することができる。
【0175】
第5具体例では、制御装置18は、反射率Rに基づいて複数の加工光ELの強度を設定する。具体的には、
図33(a)に示すように、制御装置18は、反射率Rが大きくなるほど複数の加工光ELの強度が大きくなるように、複数の加工光ELの強度を設定する。制御装置18は、このように複数の加工光ELの強度を設定した後に、設定した強度を有する複数の加工光ELを照射するように、光照射装置11を制御する。尚、反射率Rと加工光ELの強度との関係は、
図33(a)に示したように線形には限定されず、例えば
図33(b)及び
図33(c)に示すように非線形であってもよい。
【0176】
このような事前計測制御動作の第5具体例によれば、加工装置1bは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、第5具体例では、加工装置1bは、加工光ELに対する塗装膜SFの反射率Rが大きくなるほど大きい強度の加工光ELを塗装膜SFに照射する。このため、加工装置1bは、塗装膜SFの反射率Rの違いに影響を受けることなく、塗装膜SFを適切に加工することができる。つまり、加工装置1bは、反射率Rが相対的に大きい塗装膜SF及び反射率Rが相対的に小さい塗装膜SFを同じように加工して、同じリブレット構造を形成することができる。その理由について、以下に説明する。
【0177】
まず、上述したように、塗装膜SFは、加工光ELの照射によって加工光ELから塗装膜SFに加えられたエネルギーに起因して蒸発する。このため、反射率Rが相対的に大きい塗装膜SFに照射される加工光ELの強度と反射率Rが相対的に小さい塗装膜SFに照射される加工光ELの強度が同じであるとすると、反射率Rが相対的に大きい塗装膜SFに加えられる加工光ELからのエネルギーは、反射率Rが相対的に小さい塗装膜SFに加えられる加工光ELからのエネルギーよりも小さくなる。なぜならば、反射率Rが相対的に大きい塗装膜SFは、反射率Rが相対的に小さい塗装膜SFと比較して、多くの加工光ELを反射するがゆえに、塗装膜SFにエネルギーとして吸収される加工光ELの割合が小さくなるからである。つまり、反射率Rが相対的に大きい塗装膜SFが加工光ELを吸収する度合い(つまり、加工光ELに対する塗装膜SFの吸収率)が、反射率Rが相対的に小さい塗装膜SFが加工光ELを吸収する度合い(つまり、加工光ELに対する塗装膜SFの吸収率)よりも小さいからである。その結果、反射率Rが相対的に大きい塗装膜SF及び反射率Rが相対的に小さい塗装膜SFが同じように加工されない可能性がある。つまり、反射率Rが相対的に大きい塗装膜SFを加工して形成されるリブレット構造が、反射率Rが相対的に小さい塗装膜SFを加工して形成されるリブレット構造と同じにならない可能性がある。
【0178】
しかるに、第5具体例では、反射率Rが相対的に大きい塗装膜SFに照射される加工光ELの強度が、反射率Rが相対的に小さい塗装膜SFに照射される加工光ELの強度よりも大きくなるため、加工光ELから反射率Rが相対的に大きい塗装膜SFに加えられるエネルギーと、加工光ELから反射率Rが相対的に小さい塗装膜SFに加えられるエネルギーとが一致し得る。逆に言えば、制御装置18は、加工光ELから反射率Rが相対的に大きい塗装膜SFに加えられるエネルギーと、加工光ELから反射率Rが相対的に小さい塗装膜SFに加えられるエネルギーとが一致するように、反射率Rに基づいて複数の加工光ELの強度を設定する。その結果、反射率Rが相対的に大きい塗装膜SF及び反射率Rが相対的に小さい塗装膜SFが同じように加工される。つまり、反射率Rが相対的に大きい塗装膜SFを加工して形成されるリブレット構造が、反射率Rが相対的に小さい塗装膜SFを加工して形成されるリブレット構造と同じになる。従って、加工装置1bは、塗装膜SFの反射率Rの違いに起因してリブレット構造の形成精度がばらつくことを防止することができる。尚、反射率Rが相対的に小さい塗装膜SFに、大きな強度の加工光ELを照射した場合、リブレットの加工範囲が塗装膜SFを超えて、加工対象物Sに影響を与えてしまう恐れがある。本例では、反射率Rに基づいて複数の加工光ELの強度を設定しているため、加工対象物Sに悪影響を及ぼす恐れが少ない。
【0179】
尚、複数の加工光ELの走査に伴い、複数の加工光ELが夫々照射される複数の照射領域EAの塗装膜SFの表面上での相対的な位置(特に、塗装膜SFの表面に沿った方向における位置)が変わることは上述したとおりである。複数の照射領域EAの塗装膜SFの表面上での相対的な位置が変わると、複数の加工光ELが照射されている間に、塗装膜SFの表面のうち複数の照射領域EAが設定されている部分の反射率Rもまた変わる可能性がある。このため、制御装置18は、複数の加工光ELが塗装膜SFに照射されているとき(つまり、複数の加工光ELが塗装膜SFに対して相対的に移動しているとき)に、塗装膜SFの表面のうち複数の照射領域EAが設定されている部分の反射率Rに基づいて複数の加工光ELの強度を設定し、設定した強度の複数の加工光ELを照射するように光照射装置11を制御してもよい。尚、塗装膜SFの表面の形状によっては、複数の照射領域EAの塗装膜SFの表面上での相対的な位置が変わると、加工光ELの塗装膜SFに対する入射角が変わる可能性がある。或いは、複数の照射領域EAの塗装膜SFの表面上での相対的な位置が変わらなくても、何らかの要因によって加工光ELの塗装膜SFに対する入射角が変わる可能性がある。加工光ELの塗装膜SFに対する入射角が変わると、反射率Rが変わる可能性がある。この場合も、制御装置18は、計測された、或いは予め準備された塗装膜SFの表面の形状の情報を用いて、加工光ELの強度を適切な強度に設定すればよい。
【0180】
また、加工光ELから塗装膜SFに加えられるエネルギーは、加工光ELの強度のみならず、加工光ELの照射時間にも依存して変動し得る。具体的には、加工光ELから塗装膜SFに加えられるエネルギーは、加工光ELの照射時間が長くなるほど大きくなる。
ここで言う「加工光ELの照射時間」は、塗装膜SFの表面上の同じ領域に加工光ELが照射される時間を意味する。このため、制御装置18は、複数の加工光ELの強度に加えて又は代えて、反射率Rに基づいて複数の加工光ELの照射時間を設定してもよい。具体的には、
図34(a)から
図34(c)に示すように、制御装置18は、反射率Rが大きくなるほど複数の加工光ELの照射時間が長くなるように、複数の加工光ELの照射時間を設定する。尚、
図34(a)は加工光ELの照射時間と反射率Rとの関係が線形的に変化する場合、
図34(b)及び
図34(c)は加工光ELの照射時間と反射率Rとの関係が非線形的に変化する場合を示している。制御装置18は、このように複数の加工光ELの照射時間を設定した後に、設定した照射時間に基づいて複数の加工光ELを照射するように、光照射装置11を制御する。具体的には、制御装置18は、設定した照射時間に基づいて、複数の加工光ELの走査速度(つまり、塗装膜SFに対する複数の照射領域EAの相対的な移動速度)を制御する。より具体的には、制御装置18は、照射時間が長くなるほど加工光ELの走査速度が遅くなるように、加工光ELの走査速度を制御する。走査速度を制御するために、制御装置18は、ガルバノミラー1122の回転周波数又は揺動周波数を制御してもよい。具体的には、制御装置18は、照射時間が長くなるほどガルバノミラー1122の回転周波数又は揺動周波数が低くなるようにガルバノミラー1122の回転周波数又は揺動周波数を制御してもよい。その結果、照射時間が長くなるほど加工光ELの走査速度が遅くなる。このように反射率Rに基づいて複数の加工光ELの照射時間が設定される場合であっても、反射率Rに基づいて複数の加工光ELの強度が設定される場合に享受可能な効果と同様の効果が享受可能となる。尚、塗装膜SFの表面の形状によっては、複数の照射領域EAの塗装膜SFの表面上での相対的な位置が変わると、加工光ELの塗装膜SFに対する入射角が変わる可能性がある。或いは、複数の照射領域EAの塗装膜SFの表面上での相対的な位置が変わらなくても、何らかの要因によって加工光ELの塗装膜SFに対する入射角が変わる可能性がある。加工光ELの塗装膜SFに対する入射角が変わると、反射率Rが変わる可能性がある。この場合も、制御装置18は、計測された、或いは予め準備された塗装膜SFの表面の形状の情報を用いて、加工光ELの照射時間を適切な時間に設定すればよい。
【0181】
尚、加工装置1bが事前計測動作の第5具体例に加えて事前計測動作の第1具体例から第4具体例の少なくとも一つを行う場合には、加工装置1bは、塗装膜SFの表面の形状を計測する表面特性計測装置19b-1と、塗装膜SFの反射率を計測する表面と構成計測装置19b-2とを別個に備えている。この場合、表面特性計測装置19b-1及び19b-2は、夫々、計測光MLb1及びML2を照射するが、計測光MLb1及びML2の光源を共用してもよい。つまり、表面特性計測装置19b-1及び19b-2は、計測光MLb1及びML2として使用可能な計測光MLbを射出する単一の光源を共用してもよい。
【0182】
上述した説明では、反射率Rを計測するための計測光MLb2は、加工光ELの波長と同じ波長の光(或いは、加工光ELの波長と同じ波長の光成分を含む光)である。しかしながら、計測光MLb2は、加工光ELの波長と異なる波長の光(或いは、加工光ELの波長と同じ波長の光成分を含まない光)であってもよい。この場合であっても、計測光MLb2に対する塗装膜SFの反射率と加工光ELに対する塗装膜SFの反射率Rとの間に何らかの相関を有するような計測光MLb2が用いられる限りは、制御装置18は、表面特性計測装置19bの計測結果から反射率Rを特定することができる。
【0183】
上述した説明では、表面特性計測装置19bは、加工光ELに対する塗装膜SFの反射率Rを計測している。しかしながら、加工光ELに対する塗装膜SFの反射率Rが大きくなるほど、加工光ELに対する塗装膜SFの吸収率は小さくなる。このため、表面特性計測装置19bは、実質的には、加工光ELに対する塗装膜SFの吸収率を計測しているとも言える。この場合、制御装置18は、実質的には、加工光ELに対する塗装膜SFの吸収率が大きくなるほど複数の加工光ELの強度が小さくなるように、複数の加工光ELの強度を設定していると言える。更には、制御装置18は、実質的には、加工光ELに対する塗装膜SFの吸収率が大きくなるほど複数の加工光ELの照射時間が短くなるように、複数の加工光ELの照射時間を設定していると言える。
【0184】
(4-2-6)事前計測制御動作の第6具体例
第6具体例では、表面特性計測装置19bは、塗装膜SFの表面の特性として、波長が異なる複数の計測光MLb(以下、第6具体例で用いられる計測光MLbを、“計測光MLb3”と称する)に対する塗装膜SFの反射率Raを計測する。反射率Raを計測するために、表面特性計測装置19bの投光装置191bは、塗装膜SFに対して波長が異なる複数の計測光MLb3を照射する。複数の計測光MLb3には、加工光ELの波長と同じ波長の光が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。複数の計測光MLb3には、加工光ELの波長と同じ波長の光成分を含む光が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。複数の計測光MLb3の強度は、第5具体例と同様に、塗装膜SFを蒸発させることが可能な強度未満の強度に設定される。更に、表面特性計測装置19bの検出装置192bは更に、塗装膜SFからの複数の計測光MLb3の夫々の反射光(特に、その強度)を計測する。このため、制御装置18は、表面特性計測装置19bの計測結果に基づいて、複数の計測光MLb3の夫々に対する塗装膜の反射率Raを特定することができる。尚、
図35は、特定された複数の反射率Raの一例を示すグラフである。
【0185】
その後、制御装置18は、複数の計測光MLb3のうちのいずれか一つの波長を、加工光ELの波長に設定する。具体的には、制御装置18は、複数の計測光MLb3のうち反射率Raが最も小さい一の計測光MLb3の波長を、加工光ELの波長に設定する。つまり、制御装置18は、複数の計測光MLb3のうち塗装膜SFの吸収率が最も大きい一の計測光MLb3の波長を、加工光ELの波長に設定する。
図35に示す例では、5つの計測光MLb3(つまり、計測光MLb3(#1)から計測光MLb3(#5))のうち計測光MLb3(#3)に対応する反射率Raが最も小さい。このため、制御装置18は、計測光MLb3(#3)の波長を、加工光ELの波長に設定する。
【0186】
その後、制御装置18は、設定した波長の加工光ELを塗装膜SFに照射するように、光照射装置11を制御する。具体的には、事前計測制御動作の第6具体例を行う加工装置1bは、上述した光照射装置11に代えて、
図36に示すように、出射する加工光ELの波長が異なる複数の光源系111を備える光照射装置11b-6を備えている。複数の光源系111が夫々出射する複数の加工光ELの波長は、夫々、複数の計測光MLb3の波長と同じである。制御装置18は、複数の光源系111のうち、設定した波長の加工光ELを射出可能な一の光源系111が、設定した波長の複数の加工光ELを射出するように、一の光源系111を制御する。一方で、制御装置18は、複数の光源系111のうち一の光源系111以外の他の光源系111が加工光ELを出射しないように、他の光源系111を制御する。その結果、光照射装置111は、設定した波長の加工光ELを塗装膜SFに照射することができる。
【0187】
尚、上述の例では、光照射装置11b-6は、互いに異なる波長を有する複数の加工光ELを夫々射出する複数の光源系111を有していたが、これに代えて、或いは加えて、射出波長を連続的に変更可能な波長可変光源を含む光源系111を備えていてもよい。
【0188】
このような事前計測制御動作の第6具体例によれば、加工装置1bは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、第6具体例では、加工装置1bは、複数の計測光MLb3のうち塗装膜SFの反射率Raが最も小さい一の計測光MLb3と同じ波長の加工光ELを、塗装膜SFに照射することができる。このため、加工装置1bは、塗装膜の反射率Rが相対的に小さい(つまり、塗装膜SFの吸収率が相対的に大きい)加工光ELを塗装膜SFに照射することができる。このため、加工装置1bは、塗装膜SFの特性の違いに影響を受けることなく、塗装膜SFを適切に加工することができる。
【0189】
尚、第5具体例においても説明したように、複数の加工光ELが照射されている間に、塗装膜SFの表面のうち複数の照射領域EAが設定されている部分の反射率Raもまた変わる可能性がある。このため、制御装置18は、複数の加工光ELが塗装膜SFに照射されているとき(つまり、複数の加工光ELが塗装膜SFに対して相対的に移動しているとき)に、塗装膜SFの表面のうち複数の照射領域EAが設定されている部分の反射率Raに基づいて加工光ELの波長を設定し、設定した波長の複数の加工光ELを照射するように光照射装置11を制御してもよい。尚、第5具体例において説明したように、加工光ELの塗装膜SFに対する入射角が変わると、反射率Rが変わる可能性がある。この場合、制御装置18は、計測された、或いは予め準備された塗装膜SFの表面の形状の情報を用いて、加工光ELの波長を適切な波長に設定すればよい。
【0190】
また、制御装置18は、複数の計測光MLb3のうち反射率Raが所定の反射閾値以下となる(つまり、塗装膜SFの吸収率が所定の吸収閾値以上になる)一の計測光MLb3の波長を、加工光ELの波長に設定してもよい。反射閾値は、塗装膜SFに照射された加工光ELの一部を反射率Rが反射閾値以上となる塗装膜SFが反射したとしても、塗装膜SFが加工光ELによって蒸発することができるという条件を満たすように設定される。吸収閾値も同じ観点から設定される。この場合であっても、加工装置1bは、塗装膜SFの特性の違いに影響を受けることなく、塗装膜SFを適切に加工することができる。
【0191】
(4-2-7)事前計測制御動作の第7具体例
事前計測制御動作の第7具体例は、上述した事前計測制御動作の第1具体例と比較して、制御装置18が、塗装膜SFの表面の形状に基づいて、塗装膜SFと複数の照射領域EAとの間の相対的な位置関係を制御するという点で異なる。事前計測制御動作の第7具体例のその他の特徴は、事前計測制御動作の第1具体例と同じであってもよい。
【0192】
具体的には、第7具体例では、表面特性計測装置19bは、塗装膜SFに対して光照射装置11が相対的に移動する(更には、光照射装置11との相対位置が固定されている表面特性計測装置19bもまた相対的に移動する)場合において、光照射装置11が移動する前に塗装膜SFの表面の形状を計測し、且つ、光照射装置11が移動した後に(或いは、光照射装置11が移動中に、以下同じ)塗装膜SFの表面の形状を計測する。このとき、表面特性計測装置19bは、
図37に示すように、光照射装置11が移動する前に表面特性計測装置19bによる計測対象となった塗装膜SFの表面上の領域31bと、光照射装置11が移動した後に表面特性計測装置19bによる計測対象となった塗装膜SFの表面上の領域32bとが部分的に重複するように、塗装膜SFの表面の形状を計測する。つまり、表面特性計測装置19bは、領域31b及び32bの双方に含まれる重複領域33bの表面の形状を計測するように、光照射装置11の移動に合わせて計測を行う。その結果、領域31bの計測結果と領域32bの計測結果の双方に、領域31b及び領域32bの双方に含まれる重複領域33bの計測結果が含まれる。
【0193】
制御装置18は、領域31bの計測結果と領域32bの計測結果に基づいて、重複領域33bがどのように移動したかを特定する。具体的には、制御装置18は、領域31bの計測結果から、領域31b内において表面の形状が一意に区別可能な何らかの形状となる特定領域を特定する。更に、制御装置18は、領域32bの計測結果から、当該領域32b内において特定領域が存在するか否かを、特定領域の表面の形状をテンプレートに用いたパターンマッチングで判定する。領域32b内に特定領域が存在しない場合には、制御装置18は、領域31b内で新たな特定領域を特定し、当該新たな特定領域が領域32b内に存在するかを判定する。領域32b内に特定領域が存在した場合には、当該特定領域が重複領域33bに相当する。制御装置18は、領域31b内での重複領域33bの位置と、領域32b内での重複領域33bの位置とを比較して、重複領域33bに対する表面特性計測装置19bの相対的な位置が、光照射装置11の移動に伴ってどのように変化したかを特定する。具体的には、制御装置18は、重複領域33bに対して、表面特性計測装置19bがX軸方向及びY軸方向の夫々の沿ってどの程度移動したかを特定する。尚、光照射装置11は、領域31b内において表面の形状が一意に区別可能な何らかの形状となる特定領域を形成するように、塗装膜SFの表面に加工光ELを照射してもよい。例えば、リブレット構造が所定方向に沿って直線状に延伸する凸状構造又は凹状構造の一部が切り欠かれた形状となるように加工してもよく、後述の
図58、
図59のように、リブレットの延在方向において断面形状が異なるようなリブレット構造であってもよい。
【0194】
重複領域33bに対する表面特性計測装置19bの相対的な移動量は、塗装膜SFに対する光照射装置11の相対的な移動量と同じである。重複領域33bに対する表面特性計測装置19bの相対的な移動方向は、塗装膜SFに対する光照射装置11の相対的な移動方向と同じである。従って、制御装置18は、塗装膜SFに対して、光照射装置11がX軸方向及びY軸方向の夫々の沿ってどの程度移動したかを特定することができる。つまり、制御装置18は、重複領域33bに対する表面特性計測装置19bの相対的な位置を特定することで、塗装膜SFに対する光照射装置11の相対的な位置を特定することができる。
【0195】
光照射装置11が塗装膜SFに対して加工光ELを照射することから、塗装膜SFに対する光照射装置11の相対的な位置の特定は、実質的には、塗装膜SFに対する複数の照射領域EAの相対的な位置の特定と等価である。従って、制御装置18は、塗装膜SFの表面の形状に基づいて、塗装膜SFに対する複数の照射領域EAの相対的な位置(特に、X軸方向及びY軸方向の夫々に沿った位置)を特定することができる。その後、特定した複数の照射領域EAの位置が、リブレット構造(或いは、塗装膜SFを加工して形成したい構造)を形成するために要求される複数の照射領域EAの位置からずれている場合には、制御装置18は、塗装膜SFに対して複数の照射領域EAが相対的に移動するように、光照射装置11を制御する。つまり、制御装置18は、塗装膜SFと複数の照射領域EAとの間の相対的な位置関係を制御する。例えば、制御装置18は、駆動系12を制御して塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させることで、複数の照射領域EAを相対的に移動させてもよい。
【0196】
このような事前計測制御動作の第7具体例によれば、加工装置1bは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、第7具体例では、加工装置1bは、塗装膜SFの表面上での複数の照射領域EAの相対的な位置を適切に調整することができるため、リブレット構造をより適切に(例えば、より一層精度よく)形成することができる。
【0197】
(4-2-8)事前計測制御動作のその他の例
上述した説明では、加工装置1bは、表面特性計測装置19bを備えている。しかしながら、加工装置1bは、表面特性計測装置19bを備えていなくてもよい。この場合であって、塗装膜SFの表面に関する情報を制御装置18が取得可能である限りは、加工装置1bは、上述した事前計測制御動作を行うことができる。例えば、塗装膜SFの表面の形状は、加工対象物Sの三次元モデル等の設計データから推定可能である。このため、制御装置18は、加工対象物Sの設計データを取得し、当該設計データから塗装膜SFの表面の形状を推定し、推定した塗装膜SFの表面の形状に基づいて上述した事前計測制御動作の第1具体例から第4具体例を行ってもよい。または、当該設計データに予め加工領域と非加工領域の情報を付加したデータを制御装置18が取得してもよい。或いは、例えば、塗装膜SFの反射率Rは、塗装膜SFの仕様から推定可能である。このため、制御装置18は、塗装膜SFの仕様に関する情報を取得し、当該仕様に関する情報から塗装膜SFの反射率Rを推定し、推定した反射率Rに基づいて上述した事前計測制御動作の第5具体例から第6具体例を行ってもよい。または、当該設計データに予め塗装の反射率情報(一般には色彩の情報)を付加したデータを制御装置18が取得してもよい。その結果、表面特性計測装置19bの計測が不要となるため、塗装膜SFの加工に要する時間の短縮が可能となる。尚、この場合に行われる動作は、表面特性計測装置19bによる計測を必要としないという点で、事前計測制御動作と称さなくてもよい。尚、非加工領域をマスキングテープ等でマスキングしてもよい。
【0198】
上述した説明では、制御装置18は、塗装膜SFの表面の形状に基づいて、加工光ELの集光位置FP、加工光ELの強度分布、加工光ELの形状及び光学系112の焦点深度の少なくとも一つを制御している。制御装置18は、塗装膜SFの反射率に基づいて、複数の加工光ELの強度、複数の加工光ELの照射時間及び複数の加工光ELの波長の少なくとも一つを制御している。しかしながら、制御装置18は、複数の加工光ELの照射によって塗装膜SFを加工することができるように、塗装膜SFの任意の特性に基づいて、加工光ELの任意の特性を制御してもよい。加工光ELの任意の特性の一例として、複数の照射領域EAの形状、複数の照射領域EAの大きさ、複数の照射領域EAの位置、複数の加工光ELの間の相対位置、複数の加工光ELの間の相対角度、複数の加工光ELの偏光状態、複数の加工光ELの強度、複数の加工光ELの照射時間及び複数の加工光ELの波長の少なくとも一つがあげられる。
【0199】
上述した説明では、表面特性計測装置19bは、光照射装置11が複数の加工光ELを塗装膜SFの表面に照射する前に、塗装膜SFの表面の特性を計測している。つまり、表面特性計測装置19bが塗装膜SFの表面の特性を計測している期間中には、光照射装置11は、複数の加工光ELをせず、光照射装置11が複数の加工光ELを照射している期間中には、表面特性計測装置19bは、塗装膜SFの表面の特性を計測しない。しかしながら、表面特性計測装置19bは、光照射装置11が複数の加工光ELを塗装膜SFの表面に照射する期間の少なくとも一部において、塗装膜SFの表面の特性を計測してもよい。光照射装置11は、表面特性計測装置19bが塗装膜SFの表面の特性を計測する期間の少なくとも一部において、複数の加工光ELを塗装膜SFの表面に照射してもよい。つまり、表面特性計測装置19bによる塗装膜SFの表面の特性の計測動作と、光照射装置11による塗装膜SFへの複数の加工光ELの照射動作(つまり、塗装膜SFの加工動作)とが並行して行われてもよい。例えば、表面特性計測装置19bは、既に表面特性計測装置19bがその特性を計測した塗装膜SFの一の領域に光照射装置11が複数の加工光ELを照射している期間の少なくとも一部において、塗装膜SFの一の領域とは異なる他の領域の特性を計測してもよい。例えば、光照射装置11は、表面特性計測装置19bが塗装膜SFの他の領域の特性を計測している期間の少なくとも一部において、既に表面特性計測装置19bがその特性を計測した塗装膜SFの一の領域に複数の加工光ELを照射してもよい。この場合、リブレット構造の形成に関するスループットの向上が期待できる。
【0200】
(4-3)第3変形例
続いて、
図38を参照しながら、第3変形例の加工装置1cについて説明する。
図38(a)に示すように、第3変形例の加工装置1cは、上述した加工装置1と比較して、構造計測装置19cを更に備えているという点で異なる。加工装置1cのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同じであってもよい。
【0201】
構造計測装置19cは、光照射装置11からの加工光ELの照射によって形成されたリブレット構造(或いは、その他任意の構造、以下この変形例において同じ)の特性を計測する。リブレット構造の特性の一例として、リブレット構造の有無、リブレット構造の形状(例えば、凹状構造CP1の断面形状、及び、凹状構造CP1の断面形状等の少なくとも一つ)、リブレット構造のサイズ(例えば、凹状構造CP1の深さD、凹状構造CP1の幅、凹状構造CP1の配列ピッチP1、凸状構造CP2の高さH、凸状構造CP2の幅、及び、凸状構造CP2の配列ピッチP2等の少なくとも一つ)、及び、リブレット構造の位置(例えば、凹状構造CP1及び凸状構造CP2の少なくとも一方の位置)の少なくとも一つがあげられる。
【0202】
リブレット構造の特性を計測するために、構造計測装置19cは、投光装置191cと、検出装置192cとを備えている。投光装置191c及び検出装置192cは、支持部材136cを介して収容装置13によって支持されている。投光装置191cは、リブレット構造に対して(つまり、塗装膜SFに対して)、計測光MLc1を照射する。リブレット構造に計測光MLc1が照射されると、リブレット構造によって計測光MLc1が反射又は散乱される。その結果、リブレット構造からは、計測光MLc1の反射光及び散乱光の少なくとも一方を含む計測光MLc2が出射する。検出装置192cは、この計測光MLc2を検出する。
【0203】
リブレット構造が形成されている部分に計測光MLc1が照射されると、計測光MLc2は、計測光MLc1の進行方向に対して交差する進行方向に伝搬する反射光及び散乱光の少なくとも一方を含む。一方で、リブレット構造が形成されていない部分に計測光MLc1が照射されると、計測光MLc2は、計測光MLc1の進行方向に対して交差する進行方向に伝搬する反射光及び散乱光の少なくとも一方を含まない。つまり、計測光MLc2の進行方向は、計測光MLc1の進行方向に対して概ね平行である。このため、
図39に示すように、計測光MLc1の進行方向に対して交差する方向に進行してくる計測光MLc2を検出するように投光装置191c及び検出装置192cが配置されると、制御装置18は、検出装置192cの検出結果に基づいて、計測光MLc1が照射された部分におけるリブレット構造の有無を判定可能である。更に、計測光MLc2の特性(例えば、強度等)は、リブレット構造の形状及びサイズの少なくとも一方に依存して変動する。従って、制御装置18は、検出装置192cの検出結果に基づいて、リブレット構造の形状、リブレット構造のサイズ、リブレット構造を構成する凹状構造CP1の位置、及び、リブレット構造を構成する凸状構造CP2の位置の少なくとも一つも特定可能である。
【0204】
構造計測装置19cは、更に、計測光MLc1の進行方向を変更可能に構成されている。例えば、投光装置191cが計測光MLc1の進行方向を光学的に変更する光学素子を備えている場合には、当該光学素子によって計測光MLc1の進行方向が変更されてもよい。例えば、投光装置191cが塗装膜SFに対して相対的に移動可能である場合には、当該投光装置191cの相対的な移動によって計測光MLc1の進行方向が変更されてもよい。ここで、仮にある一つの方向からしかリブレット構造に対して計測光MLc1を照射することができない場合には、リブレット構造の延在方向によっては、計測光MLc1をリブレット構造に照射しても、計測光MLc2が発生しない可能性がある。しかるに、計測光MLc1の進行方向が変更可能であれば、投光装置191cは、ある方向に延在するリブレット構造に対して、様々な方向から計測光MLc1を照射することができる。このため、構造計測装置19cは、リブレット構造の延在方向の違いに影響を受けることなく、リブレット構造の特性を計測することができる。尚、計測光MLc1の進行方向を変更するために、構造計測装置19c自体をZ軸廻りに回転させてもよい。また、互いに計測光MLc1の進行方向が異なるような複数の構造計測装置19cを設けてもよい。
【0205】
構造計測装置19cは、計測光MLc1の進行方向を変更することに加えて又は代えて、検出装置192cが検出可能な計測光MLc2の進行方向を変更可能に構成されていてもよい。例えば、検出装置192cが塗装膜SFに対して相対的に移動可能である場合には、当該検出装置192cの相対的な移動によって、検出装置192cが検出可能な計測光MLc2の進行方向が変更されてもよい。ここで、仮にある一つの方向に進行してくる計測光MLc2しか検出装置192cが検出できない場合には、リブレット構造の延在方向によっては、計測光MLc2が検出装置192cに向かって進行せず、検出装置192cが計測光MLc2を検出することができない可能性がある。しかるに、検出装置192cが検出可能な計測光MLc2の進行方向が変更可能であれば、検出装置192cは、ある方向に延在するリブレット構造から様々な方向に進行してくる計測光MLc2を検出することができる。このため、構造計測装置19cは、リブレット構造の延在方向の違いに影響を受けることなく、リブレット構造の特性を計測することができる。
【0206】
構造計測装置19cは、加工装置1cが形成した全てのリブレット構造の特性を計測してもよい。しかしながら、加工装置1cが形成した全てのリブレット構造の特性を計測すると、リブレット構造の特性を計測するために必要な時間が膨大になる。このため、第3変形例では、構造計測装置19cは、
図40に示すように、加工装置1cがリブレット構造を形成した加工済領域のうちの一部に相当するサンプル領域DAcに形成されたリブレット構造の特性を選択的に計測する。構造計測装置19cは、加工済領域内において均等に分布する複数のサンプル領域DAcに形成されたリブレット構造の特性を選択的に計測する。但し、構造計測装置19cは、加工済領域内においてランダムに分布する複数の(或いは、一つの)サンプル領域DAcに形成されたリブレット構造の特性を選択的に計測してもよい。
【0207】
構造計測装置19cは、加工装置1cがリブレット構造を形成するべきある領域にリブレット構造を形成した後に、当該ある領域内のサンプル領域DAcに形成されたリブレット構造の特性を選択的に計測してもよい。例えば、構造計測装置19cは、加工装置1cがある単位加工領域SAにリブレット構造を形成した後に、当該単位加工領域SA内でサンプル領域DAcを設定し、当該設定したサンプル領域DAcに形成されたリブレット構造の特性を選択的に計測してもよい。その後、加工装置1cが別の単位加工領域SAにリブレット構造を形成した場合には、構造計測装置19cは、当該別の単位加工領域SA内でサンプル領域DAcを設定し、当該設定したサンプル領域DAcに形成されたリブレット構造の特性を選択的に計測してもよい。つまり、加工装置1cによるリブレット構造の形成と、構造計測装置19cによるリブレット構造の特性の計測とが交互に繰り返されてもよい。
【0208】
或いは、構造計測装置19cは、加工装置1cが塗装膜SFの表面の一の領域に複数の加工光ELを照射している(つまり、一の領域にリブレット構造を形成している)期間の少なくとも一部において、一の領域とは異なる他の領域に加工装置1cが既に形成したリブレット構造の特性を計測してもよい。例えば、構造計測装置19cは、加工装置1cがある一の単位加工領域SAにリブレット構造を形成している期間中の少なくとも一部において、当該一の単位加工領域SAとは異なり且つ加工装置1cが既にリブレット構造を形成した他の単位加工領域SA内のサンプル領域DAcに形成されたリブレット構造の特性を選択的に計測してもよい。つまり、加工装置1cによるリブレット構造の形成と、構造計測装置19cによるリブレット構造の特性の計測とが並行して行われてもよい。この場合、スループットの向上が期待できる。
【0209】
構造計測装置19cによる計測が終了すると、構造計測装置19cによる計測結果は、制御装置18に出力される。制御装置18は、上述したように、構造計測装置19cによる計測結果に基づいて、リブレット構造の特性を特定する。制御装置18は、特定したリブレット構造の特性に基づいて、リブレット構造の特性の良否判定を行う。更に、制御装置18は、リブレット構造の特性の良否判定の結果を、ディスプレイ及びスピーカ等の少なくとも一つを含む出力装置を介して、加工装置1cのオペレータに通知する。
【0210】
例えば、制御装置18は、塗装膜SFの表面に交差する方向におけるリブレット構造のサイズ(つまり、凹状構造CP1の深さDないしは凸状構造CP2の高さH)の良否判定を行ってもよい。
図41(a)は、加工装置1cが形成するべき理想的なリブレット構造を示す断面図である。制御装置18は、特定したリブレット構造のサイズが、
図41(b)に示すように理想的なリブレット構造のサイズと同じになった場合には、リブレット構造のサイズが正常である(つまり、リブレット構造が良品である)と判定する。この場合、制御装置18は、リブレット構造のサイズが正常である旨を通知する。一方で、制御装置18は、特定したリブレット構造のサイズが、
図41(c)に示すように理想的なリブレット構造のサイズよりも小さくなった場合には、リブレット構造のサイズが異常である(つまり、リブレット構造が不良品である)と判定する。この場合、制御装置18は、リブレット構造のサイズが異常である旨(特に、サイズが小さい旨)を通知する。一方で、制御装置18は、特定したリブレット構造のサイズが、
図41(d)に示すように理想的なリブレット構造のサイズよりも大きくなった場合には、リブレット構造のサイズが異常である(つまり、リブレット構造が不良品である)と判定する。この場合、制御装置18は、リブレット構造のサイズが異常である旨(特に、サイズが大きい旨)を通知する。
【0211】
例えば、制御装置18は、リブレット構造の形状の良否判定を行ってもよい。制御装置18は、特定したリブレット構造の形状が、
図42(a)に示すように理想的なリブレット構造の形状と同じになった場合には、リブレット構造の形状が正常である(つまり、リブレット構造が良品である)と判定する。この場合、制御装置18は、リブレット構造の形状が正常である旨を通知する。一方で、制御装置18は、特定したリブレット構造の形状が、
図42(b)に示すように理想的なリブレット構造の形状と異なる場合には、リブレット構造の形状が異常である(つまり、リブレット構造が不良品である)と判定する。この場合、制御装置18は、リブレット構造の形状が異常である旨を通知する。
【0212】
例えば、制御装置18は、リブレット構造を構成する凹状構造CP1(更には、凸状構造CP2、以下同じ)の位置の良否判定を行ってもよい。制御装置18は、特定した凹状構造CP1の位置が、
図43の上段に示すように理想的なリブレット構造を構成する凹状構造CP1の位置と同じになった場合には、リブレット構造を構成する凹状構造CP1の位置が正常である(つまり、リブレット構造が良品である)と判定する。この場合、制御装置18は、リブレット構造を構成する凹状構造CP1の位置が正常である旨を通知する。一方で、制御装置18は、特定した凹状構造CP1の位置が、
図43の下段に示すように理想的なリブレット構造を構成する凹状構造CP1の位置と異なる場合には、リブレット構造を構成する凹状構造CP1の位置が異常である(つまり、リブレット構造が不良品である)と判定する。この場合、制御装置18は、リブレット構造を構成する凹状構造CP1の位置が異常である旨を通知する。
【0213】
例えば、制御装置18は、リブレット構造の有無の良否判定を行ってもよい。制御装置18は、
図44(a)に示すように、サンプル領域DA内においてリブレット構造が存在する場合には、リブレット構造が形成されている(つまり、リブレット構造が良品である)と判定する。この場合、制御装置18は、リブレット構造が形成されている旨を通知する。一方で、制御装置18は、
図44(b)に示すように、サンプル領域DA内においてリブレット構造が存在しない場合には、リブレット構造が形成されていない(つまり、リブレット構造が不良品である)と判定する。この場合、制御装置18は、リブレット構造が形成されていない旨を通知する。
【0214】
制御装置18は、リブレット構造が不良品であると判定した場合には、既に形成されているリブレット構造を修正するように光照射装置11を制御してもよい。具体的には、リブレット構造が不良品であると判定された場合には、当該不良品のリブレット構造が存在するサンプル領域DA内のリブレット構造が不良品であるだけでなく、当該サンプル領域DAを包含する塗装膜SF上のより広範な領域内のリブレット構造が不良品である可能性がある。そこで、制御装置18は、サンプル領域DAを包含する塗装膜SF上のより広範な領域(以下、この領域を、“修正対象領域”と称する)に対して加工光ELを照射して当該修正領域内のリブレット構造を修正するように、光照射装置11を制御する。例えば、
図45(a)に示すように、リブレット構造を構成する凹状構造CP1のサイズ(ここでは、深さD)が理想的なリブレット構造を構成する凹状構造CP1のサイズよりも小さくなった場合には、制御装置18は、当該凹状構造CP1に加工光ELを照射して塗装膜SFを更に除去する(つまり、塗装膜SP1を更に薄くする)ことで当該凹状構造CP1が大きくなるように、光照射装置11を制御してもよい。その結果、
図45(b)に示すように、修正対象領域内のリブレット構造のサイズが、理想的なリブレット構造のサイズと一致するように修正される。尚、構造計測装置19cによるリブレット構造の特性の計測結果を用いて、加工装置1cによる加工条件を変更してもよい。例えばリブレット構造の形状、形成位置、サイズが所定の範囲(規格)の上下限から外れそうになっていると計測された場合、加工装置1cによる加工条件を変更してリブレット構造の形状、形成位置、サイズを規格の中心値に近づけるようにしてもよい。
【0215】
このような第3変形例の加工装置1cは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、加工装置1cは、実際に形成したリブレット構造の良否を適切に評価することができる。
【0216】
(4-4)第4変形例
続いて、第4変形例の加工装置1dについて説明する。第4変形例の加工装置1dは、凹状構造CP1の配列ピッチP1を変更可能である。凹状構造CP1の配列ピッチP1が変わると、凸状構造CP2の配列ピッチP2もまた変わる。このため、加工装置1dは、凸状構造CP2の配列ピッチP2を変更可能とも言える。
【0217】
配列ピッチP1を変更するために、加工装置1dは、上述した光照射装置11に代えて、光照射装置11dを備えている。光照射装置11dは、
図46に示すよう、ズームレンズ1124dを備える光学系112dを備えているという点で、光照射装置11とは異なる。光照射装置11dのその他の特徴は、光照射装置11のその他の特徴と同じであってもよい。ズームレンズ1124dは、制御装置18の制御下で、光学系112dの投影倍率を変更可能である。ズームレンズ1124dは、制御装置18の制御下で、射出する複数の加工光ELの間隔を変更可能である。
【0218】
光学系112dの投影倍率が変わると、塗装膜SFの表面に沿った方向における複数の照射領域EAの相対的な位置関係が変わる。具体的には、
図47(a)に示すように、光学系112dの投影倍率が第1倍率となる(つまり、射出する複数の加工光ELの間隔が第1間隔となる)場合には、複数の照射領域EAの配列ピッチは、第1ピッチPe1となっている。尚、複数の照射領域EAの配列ピッチは、ステップ動作中に複数の照射領域EAが塗装膜EAの表面上で移動する方向(
図47(a)に示す例では、X軸方向)に沿った配列ピッチを意味する。一方で、
図47(b)に示すように、光学系112dの投影倍率が第1倍率よりも大きい第2倍率となる(つまり、射出する複数の加工光ELの間隔が第1間隔よりも大きい第2間隔となる)場合には、複数の照射領域EAの配列ピッチは、第1ピッチPe1よりも大きい第2ピッチPe2となっている。つまり、制御装置18は、光学系112dの投影倍率を変更することで、塗装膜SFの表面に沿った方向における複数の照射領域EAの相対的な位置関係(特に、複数の照射領域EAの配列ピッチ)を変更することができる。
【0219】
複数の照射領域EAの配列ピッチが変わると、複数の照射領域EAに夫々照射された複数の加工光ELによって形成される複数の凹状構造CP1の配列ピッチP1もまた変わる。具体的には、
図47(c)に示すように、配列ピッチが第1ピッチPe1となる複数の照射領域EAに照射された加工光ELによって形成される複数の凹状構造CP1の配列ピッチP1は、第1ピッチPe1に対応する第1ピッチPp1となる。一方で、
図47(d)に示すように、配列ピッチが第2ピッチPe2となる複数の照射領域EAに照射された加工光ELによって形成される複数の凹状構造CP1の配列ピッチP1は、第2ピッチPe2に対応する第2ピッチPp2となる。第2ピッチPe2が第1ピッチPe1よりも大きいため、第2ピッチPp2もまた第1ピッチPp1よりも大きくなる。
【0220】
尚、光照射装置11dが互いに平行な複数の加工光ELを照射しているがゆえに、複数の照射領域EAの配列ピッチが変わると、複数の加工光ELの相対的な位置関係が変わる。つまり、
図47(c)及び
図47(d)に示すように、複数の照射領域EAの配列ピッチが大きくなればなるほど複数の加工光ELの間隔(特に、塗装膜SFの表面に沿った方向の間隔)が大きくなるように、複数の加工光ELの相対的な位置関係が変わる。このため、複数の照射領域EAの配列ピッチの制御は、複数の加工光ELの相対的な位置関係の制御と等価である。従って、制御装置18は、実質的には、複数の加工光ELの相対的な位置関係を変更することで、凹状構造CP1の配列ピッチを変更しているとも言える。
【0221】
制御装置18は、リブレット構造を形成しようとしている領域が加工対象物Sのどの部分に対応する領域であるかに応じて、凹状構造CP1の配列ピッチP1を変更してもよい。例えば、上述したように加工対象物Sが航空機である場合には、胴体PL1の摩擦の低減効果を効率的に発揮可能な凹状構造CP1の配列ピッチP1と、主翼PL2の摩擦の低減効果を効率的に発揮可能な凹状構造CP1の配列ピッチP1とが同じになるとは限らない。このため、制御装置18は、胴体PL1上の塗装膜SFを加工することで形成される凹状構造CP1の配列ピッチP1が、主翼PL2上の塗装膜SFを加工することで形成される凹状構造CP1の配列ピッチP1と異なるように、凹状構造CP1の配列ピッチP1を変更してもよい。
【0222】
制御装置18は、塗装膜SFの表面の形状に基づいて、凹状構造CP1の配列ピッチP1を変更してもよい。具体的には、上述したように、塗装膜SFの表面の形状は、塗装膜SFの下の加工対象物Sの表面の形状に依存している可能性が高い。つまり、表面が平面となる加工対象物S上に塗布された塗装膜SFの表面は、平面である可能性が高く、表面が曲面となる加工対象物S上に塗布された塗装膜SFの表面は、曲面である可能性が高い。この場合、第1の形状となる加工対象物Sの表面の摩擦の低減効果を効率的に発揮可能な凹状構造CP1の配列ピッチP1と、第1の形状とは異なる第2の形状となる加工対象物Sの表面の摩擦の低減効果を効率的に発揮可能な凹状構造CP1の配列ピッチP1とが同じになるとは限らない。このため、制御装置18は、表面の形状が第1の形状となる塗装膜SFを加工することで形成される凹状構造CP1の配列ピッチP1が、表面の形状が第2の形状となる塗装膜SFを加工することで形成される凹状構造CP1の配列ピッチP1と異なるように、凹状構造CP1の配列ピッチP1を変更してもよい。尚、この場合、加工装置1dは、塗装膜SFの表面の形状に基づいて凹状構造CP1の配列ピッチP1を変更するために、加工装置1bと同様に、塗装膜SFの表面の形状を計測可能な表面特性計測装置19bを備えていてもよいし、塗装膜SFの表面の形状に関する情報(例えば、上述した設計データ)を取得してもよい。また、光照射装置11dが互いに平行な複数の加工光ELを塗装膜SFに照射している場合、加工対象物Sの形状が平面でないときには、複数の加工光ELの間隔(ピッチ)と形成される凹状構造CP1の配列ピッチP1とが同じになるとは限らない。この場合、凹状構造CP1の配列ピッチP1を所定のピッチとするように、複数の加工光ELの間隔を変えてもよい。尚、光照射装置11dが互いに非平行な複数の加工光ELを塗装膜SFに照射している場合であっても、加工対象物Sの形状が平面でないときには、複数の加工光ELの間隔(ピッチ)と形成される凹状構造CP1の配列ピッチP1とが同じになるとは限らないため、複数の加工光ELの間隔を変えてもよい。
【0223】
複数の加工光ELの走査に伴い、複数の加工光ELが夫々照射される複数の照射領域EAの塗装膜SFの表面上での相対的な位置(特に、塗装膜SFの表面に沿った方向における位置)が変わる。複数の照射領域EAの塗装膜SFの表面上での相対的な位置が変わると、複数の加工光ELが照射されている間に、複数の照射領域EAが形成されている領域が、加工対象物Sのある部分に対応する領域(例えば、胴体PL1に対応する領域)から、加工対象物Sの別部分に対応する領域(例えば、主翼PL2に対応する領域)へと変わる可能性がある。或いは、複数の照射領域EAの塗装膜SFの表面上での相対的な位置が変わると、複数の加工光ELが照射されている間に、塗装膜SFの表面のうち複数の照射領域EAが形成されている部分の形状もまた変わる可能性がある。このため、制御装置18は、複数の加工光ELが塗装膜SFに照射されているとき(つまり、複数の加工光ELが塗装膜SFに対して相対的に移動しているとき)に、凹状構造CP1の配列ピッチP1を変更してもよい。上述のように、加工対象物Sの形状が異なると、複数の加工光ELの間隔が一定であっても、形成される凹状構造CP1の配列ピッチが異なる恐れがある。この場合、塗装膜SFの形状に応じて、複数の加工光ELの間隔(ピッチ)を変更してもよい。
【0224】
このような第4変形例の加工装置1dは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受しつつ、リブレット構造を構成する凹状構造CP1及び凸状構造CP2の配列ピッチを変更することができる。従って、凹状構造CP1及び凸状構造CP2の配列ピッチを変更することができない場合と比較して、より適切なリブレット構造が形成可能となる。具体的には、例えば、摩擦の低減効果が適切に得られるような適切な配列ピッチが採用されたリブレット構造が形成可能となる。
【0225】
尚、
図18から
図24を参照しながら説明した上述した光照射装置21aから27aの少なくとも一つもまた、ズームレンズ1124dを備えていてもよい。この場合も、リブレット構造を構成する凹状構造CP1及び凸状構造CP2の配列ピッチが変更可能である。
【0226】
また、上述した説明では、制御装置18は、ズームレンズ1124dを用いて光学系112dの投影倍率を変更することで、凹状構造CP1の配列ピッチP1(つまり、複数の照射領域EAの配列ピッチ)及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更している。しかしながら、制御装置18は、その他の方法で、凹状構造CP1の配列ピッチP1(つまり、複数の照射領域EAの配列ピッチ)及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。加工装置1dが光照射装置11dに代えて上述した光照射装置21aから27aのいずれかを備える場合においても、制御装置18は、その他の方法で、凹状構造CP1の配列ピッチP1(つまり、複数の照射領域EAの配列ピッチ)及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。
【0227】
例えば、光源系111から射出される複数の加工光ELの各々の光路中に、光軸に対する傾斜角度が変更可能な平行平面板をそれぞれ設け、これらの平行平面板の角度をそれぞれ所定の角度に設定することにより、複数の照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。複数の加工光ELを照射する上述した光照射装置22aから23a及び25aから27aの少なくとも一つもまた、平行平面板を備えていてもよい。
【0228】
例えば、加工装置1dが、上述した
図27に示す複数の照射ユニット110b-1を備えている場合には、制御装置18は、複数の照射ユニット110b-1を塗装膜SFの表面に沿った方向に沿って移動させることで、複数の照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。具体的には、制御装置18は、複数の照射ユニット110b-1を移動させて複数の照射ユニット110b-1の配列間隔を変更することで、複数の照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。その結果、凹状構造CP1の配列ピッチP1が変更される。複数の加工光ELを照射可能な上述した光照射装置22aから23a及び25aから27aのいずれかを加工装置1dが備え且つ光照射装置22aから23a及び25aから27aのいずれかが複数の加工光ELを照射するために複数の照射ユニット110b-1を備えている場合においても同様である。
【0229】
例えば、加工装置1dが、上述した
図3(b)に示す複数の光源1111を備えている場合には、制御装置18は、複数の光源1111を塗装膜SFの表面に沿った方向に沿って移動させることで、複数の照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。具体的には、制御装置18は、複数の光源1111を移動させて複数の光源1111の配列間隔を変更することで、複数の照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。その結果、凹状構造CP1の配列ピッチP1が変更される。複数の加工光ELを照射可能な上述した光照射装置22aから23a及び25aから27aのいずれかを加工装置1dが備え且つ光照射装置22aから23a及び25aから27aのいずれかが複数の加工光ELを照射するために複数の光源1111を備えている場合においても同様である。
【0230】
例えば、加工装置1dが、上述した
図3(c)に示す単一の光源1111からの加工光ELを分岐器1112で分岐して複数の射出口から射出する場合には、制御装置18は、複数の射出口の位置を変更することで、複数の照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。具体的には、制御装置18は、複数の射出口の配列間隔を変更することで、複数の照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。その結果、凹状構造CP1の配列ピッチP1が変更される。複数の加工光ELを照射可能な上述した光照射装置22aから23a及び25aから27aのいずれかを加工装置1dが備え且つ光照射装置22aから23a及び25aから27aのいずれかが複数の加工光ELを照射するために単一の光源1111からの加工光ELを分岐器1112で分岐する場合においても同様である。
【0231】
例えば、加工装置1dが、ミラーアレイ222aを備える光照射装置22aを備えている場合には、制御装置18は、ミラーアレイ2221aの各ミラーMの傾斜角度を制御して各ミラーMの反射面の位置(特に、Y軸周りの位置)を変化させることで、複数の照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。例えば、ミラーアレイ2221aが、XY平面上でマトリクス状に配列される複数のミラーMを備えている場合には、制御装置18は、Y軸方向に沿って並ぶ一群のミラーMの単位で各ミラーMの傾斜角度を制御することで、X軸方向に沿って並ぶ複数の照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。
【0232】
例えば、加工装置1dが複数の加工光ELの相対角度を変更可能な光照射装置11d-1を備えていれば、制御装置18は、複数の加工光ELの相対角を変更することで、複数の照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。具体的には、
図48(a)は、複数の加工光ELの相対角度が第1の角度状態にある様子を示し、
図48(b)は、複数の加工光ELの相対角度が第1の角度状態とは異なる第2の角度状態にある様子を示している。
図48(a)及び
図48(b)に示すように、複数の加工光ELの相対角度が変わると、複数の加工光ELが塗装膜SFに入射する角度が変わる。一方で、複数の加工光ELの相対角度が変わったとしても、複数の加工光ELの出射点は、光出射装置11d-1の光源系のまま変わらない。その結果、
図48(c)及び
図48(d)に示すように、複数の加工光ELの相対角度が変わると、複数の照射領域EAの配列ピッチが変わる。具体的には、
図48(c)に示すように、複数の加工光ELの相対角度が第1の角度状態にある場合には、複数の照射領域EAの配列ピッチは、第3ピッチPe3となっている。一方で、
図48(d)に示すように、複数の加工光ELの相対角度が第2の角度状態にある場合には、複数の照射領域EAの配列ピッチは、第3ピッチPe3よりも大きい第4ピッチPe4となっている。その結果、その結果、凹状構造CP1の配列ピッチP1が変更される。尚、光照射装置11d-1は、複数の加工光ELを照射可能な上述した光照射装置11及び光照射装置22aから23a及び25aから27aのいずれか一つに対して、複数の加工光ELの相対角度を変更するための光学部材を設けた光照射装置であってもよい。
【0233】
例えば、加工装置1dが互いに非平行な複数の加工光ELを塗装膜SFに照射可能な光照射装置11d-2を備えていれば、制御装置18は、塗装膜SFの表面に交差する方向(
図49(a)から
図49(b)に示す例では、Z軸方向)における光照射装置11d-2と塗装膜SFとの相対的な位置関係(光照射装置11d-2と塗装膜SFとの距離)を変更することで、複数の照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。具体的には、
図49(a)に示すように、Z軸方向における光照射装置11d-2と塗装膜SFとの間の距離がD5となる場合には、複数の照射領域EAの配列ピッチは、第5ピッチPe5となっている。その後、
図49(b)に示すように、駆動系12によって光照射装置11d-2が塗装膜SFから離れるようにZ軸に沿って移動した結果、Z軸方向における光照射装置11d-2と塗装膜SFとの間の距離がD6(但し、D5<D6)となった場合には、複数の照射領域EAの配列ピッチは、第5ピッチPe5よりも大きい第6ピッチPe6となっている。その結果、凹状構造CP1の配列ピッチP1が変更される。尚、光照射装置11d-2は、複数の加工光ELを照射可能な上述した光照射装置11及び光照射装置22aから23a及び25aから27aのいずれか一つに対して、互いに非平行な複数の加工光ELを照射するための光学部材を設けた光照射装置であってもよい。
【0234】
例えば、加工装置1dが、夫々が加工光ELを出射可能な複数の光源1111を備えていれば、制御装置18は、複数の光源1111のうち加工光ELを実際に出射する光源111の数を変更することで、複数の照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。具体的には、
図50(a)に示す例では、複数の光源1111のうちの6個の光源1111が、加工光ELを射出する光源111として選択されている。この場合、6個の光源1111が加工光ELを出射し、その他の光源1111は加工光ELを射出しない。或いは、その他の光源1111もまた加工光ELを射出してもよいが、射出された加工光ELは遮光されて塗装膜SFには照射されない。この場合、
図50(b)に示すように、複数の照射領域EAの配列ピッチは、第7ピッチPe7となっている。一方で、
図50(c)に示す例では、複数の光源1111のうちの3個の光源1111(特に、
図50(a)に示す例で選択されていた6個の光源1111のうちの1つおきに選択される3つの光源1111)が、加工光ELを出射する光源111として選択されている。この場合、
図50(d)に示すように、複数の照射領域EAの配列ピッチは、第7ピッチPe7よりも大きい(例えば、2倍の)第8ピッチPe8となっている。その結果、凹状構造CP1の配列ピッチP1が変更される。複数の加工光ELを照射可能な上述した光照射装置22aから23a及び25aから27aのいずれかを加工装置1dが備え且つ光照射装置22aから23a及び25aから27aのいずれかが複数の加工光ELを照射するために複数の光源1111を備えている場合においても同様である。
【0235】
或いは、制御装置18は、複数の照射領域EAの配列ピッチを変更する(つまり、複数の照射領域EAの相対的な位置関係を変更する)ことに加えて又は代えて、その他の方法で凹状構造CP1の配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更してもよい。例えば、光源系111から射出される複数の加工光ELの各々の光路中にシャッタを設けてもよい。
【0236】
例えば、加工装置1dが、上述した
図18に示す第1分岐光EL1及び第2分岐光EL2を干渉させることで形成される干渉縞を塗装膜SFの表面に形成する光照射装置21aを備えていれば、制御装置18は、第1分岐光EL1と第2分岐光ELとが交差する角度(つまり、第1分岐光EL1と第2分岐光との間の相対角)を変更することで、凹状構造CP1の配列ピッチP1を変更してもよい。具体的には、
図51(a)に示す例では、第1分岐光EL1と第2分岐光ELとが交差する角度は、第1角度θ1となっている。この場合、
図51(b)に示すように、塗装膜SFの表面に形成されている干渉縞のピッチは、第9ピッチPe9となっている。一方で、
図51(c)に示す例では、第1分岐光EL1と第2分岐光ELとが交差する角度は、第1角度θ1とは異なる第2角度θ2となっている。この場合、
図51(d)に示すように、塗装膜SFの表面に形成されている干渉縞のピッチは、第9ピッチPe9とは異なる第10ピッチPe10となっている。その結果、凹状構造CP1の配列ピッチP1が変更される。
【0237】
但し、第1分岐光EL1と第2分岐光ELとが交差する角度を変更するために、加工装置1dは、光照射装置21aに代えて、
図52に示すように、第1分岐光EL1と第2分岐光ELとが交差する角度を調整するための角度調整素子2127dを備える光照射装置11d-3を備えている。角度調整素子2127dは、光出射口2123a及び投影光学系2125aを同期して移動することで、第2分岐光EL2に対する第1分岐光EL1の相対角度を調整可能である。更に、角度調整素子2127dは、光出射口2123a及び投影光学系2125aを同期して移動することに加えて又は代えて、光出射口2124a及び集光光学系2126aを同期して移動することで、第1分岐光EL1に対する第2分岐光EL2の相対角度を調整可能であってもよい。従って、角度調整素子2127dは、第1分岐光EL1と第2分岐光ELとが交差する角度を変更可能である。
【0238】
例えば、上述した複数の照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔が変更されると、塗装膜SFの表面上での複数の加工光ELの強度分布が変更する。従って、複数の照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔の変更は、塗装膜SFの表面上での複数の加工光ELの強度分布の制御と等価である。同様に、上述した第1分岐光EL1と第2分岐光EL2とが干渉することで塗装膜SFの表面上に形成される干渉縞のピッチが変更されると、塗装膜SFの表面上での複数の加工光EL強度分布が変更する。従って、第1分岐光EL1と第2分岐光EL2とが交差する角度の変更は、塗装膜SFの表面上での複数の加工光ELの強度分布の制御と等価である。このため、制御装置18は、凹状構造CP1の配列ピッチP1及び/又は複数の加工光ELの間隔を変更することに加えて又は代えて、塗装膜SFの表面上での複数の加工光ELの強度分布(或いは、塗装膜SFの表面に沿った面内での複数の加工光ELの強度分布)を制御してもよい。この場合、光学系112は、制御装置18の制御下で複数の加工光ELの強度分布を調整するための強度分布調整素子を備えていてもよい。強度分布調整素子は、例えば、加工光ELを空間変調可能な空間光変調器であってもよい。従って、加工装置1dが、空間光変調器を含む光照射装置24a(
図21参照)を備えていれば、制御装置18は、空間光変調器を制御して複数の加工光ELの強度分布を変更してもよい。
【0239】
また、上述した説明では、制御装置18は、凹状構造CP1の配列ピッチP1の変更を目的に、照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔の変更、第1分岐光EL1と第2分岐光ELとが交差する角度の変更、及び、塗装膜SFの表面上での複数の加工光ELの強度分布の変更の少なくとも一つを行っている。しかしながら、制御装置18は、凹状構造CP1の配列ピッチP1の維持(つまり、配列ピッチP1の変動の防止)を目的に、照射領域EAの配列ピッチ及び/又は複数の加工光ELの間隔の変更、第1分岐光EL1と第2分岐光ELとが交差する角度の変更、及び、塗装膜SFの表面上での複数の加工光ELの強度分布の変更の少なくとも一つを行ってもよい。具体的には、上述したように、加工装置1dは、ガルバノミラー1122を介して複数の加工光ELで単位加工領域SAを走査している。ここで、ガルバノミラー1122から単位加工領域SAの中央部までの加工光ELの光路の長さと、ガルバノミラー1122から単位加工領域SAの端部までの加工光ELの光路の長さとは、厳密にいえば異なる。このため、単位加工領域SAの中央部での複数の照射領域EAの配列ピッチと、単位加工領域SAの端部での複数の照射領域EAの配列ピッチとが一致しない可能性がある。或いは、上述したように加工対象物Sが航空機の機体等であるがゆえに、塗装膜SFの表面は、曲面になっていたり、凹凸を有していたり、傾斜していたりする可能性が高い。この場合も、ガルバノミラー1122から単位加工領域SAのある部分までの加工光ELの光路の長さと、ガルバノミラー1122から単位加工領域SAの別の部分までの加工光ELの光路の長さとは、厳密にいえば異なる。このため、単位加工領域SAのある部分での複数の照射領域EAの配列ピッチと、単位加工領域SAの別の部分での複数の照射領域EAの配列ピッチとが一致しない可能性がある。その結果、単位加工領域SAに同じ配列ピッチP1の凹状構造CP1を形成したい状況下で、単位加工領域SAのある部分に形成される凹状構造CP1の配列ピッチP1と、単位加工領域SAの別の部分に形成される凹状構造CP1の配列ピッチP1とが、意図せずして一致しなくなってしまう可能性がある。そこで、制御装置18は、このような凹状構造CP1の配列ピッチP1の意図せぬ変動を相殺するように、照射領域EAの配列ピッチの変更、第1分岐光EL1と第2分岐光ELとが交差する角度の変更、及び、塗装膜SFの表面上での複数の加工光ELの強度分布の変更の少なくとも一つを行ってもよい。その結果、凹状構造CP1の配列ピッチP1の意図せぬ変動が相殺され、同じ配列ピッチP1の凹状構造CP1が適切に形成可能となる。
【0240】
(4-5)第5変形例
上述した第4変形例の加工装置1dは、リブレット構造を構成する凹状構造CP1の配列ピッチP1の変更を目的に、加工光ELの特性(例えば、複数の照射領域EAの間の相対的な位置関係、第1分岐光EL1と第2分岐光EL2とが交差する角度、及び、塗装膜SF上での複数の加工光ELの強度分布の少なくとも一つ)を変更している。一方で、第5変形例の加工装置eは、リブレット構造の任意の特性の変更を目的に、加工光ELの任意の特性を変更する。尚、第5変形例における「リブレット構造の任意の特性」の一例として、第3変形例で説明したように、リブレット構造の有無、リブレット構造の形状(例えば、凹状構造CP1の断面形状、及び、凹状構造CP1の断面形状等の少なくとも一つ)、リブレット構造のサイズ(例えば、凹状構造CP1の深さD、凹状構造CP1の幅、凹状構造CP1の配列ピッチP1、凸状構造CP2の高さH、凸状構造CP2の幅、及び、凸状構造CP2の配列ピッチP2等の少なくとも一つ)、及び、リブレット構造の位置(例えば、凹状構造CP1及び凸状構造CP2の少なくとも一方の位置)の少なくとも一つがあげられる。このため、加工装置1eは、
図53に示すように、加工光ELの特性を調整するための特性調整装置41eを備えているという点で、上述した加工装置1とは異なる。尚、加工装置1eは、光照射装置11とは別個に特性調整装置41eを備えていてもよいし、光照射装置11に組み込まれた(つまり、光照射装置11の一部を構成する)特性調整装置41eを備えていてもよい。加工装置1eのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同じであってもよい。
【0241】
制御装置18は、リブレット構造の任意の特性を変更してより適切なリブレット構造を形成するように、加工光ELの任意の特性を変更してもよい。例えば、制御装置18は、リブレット構造の任意の特性を変更して摩擦の低減効果が適切に得られる適切なリブレット構造を形成するように、加工光ELの任意の特性を変更してもよい。
【0242】
複数の加工光ELの特性は、塗装膜SFの表面上における複数の加工光ELの強度分布を含んでいてもよい。つまり、制御装置18は、特性調整装置41eを制御して、塗装膜SFの表面上における複数の加工光ELの強度分布を変更してもよい。塗装膜SFの表面上における複数の加工光ELの強度分布が変わると、凹状構造CP1の特性(特に、形状及び位置等の少なくとも一つ)が変わる。その結果、このような凹状構造CP1から形成されるリブレット構造の特性(特に、形状及び位置等の少なくとも一つ)が変わる。例えば、
図54(a)に示す第1の強度分布を有する複数の加工光ELが塗装膜SFの表面に照射されると、
図54(b)に示す凹状構造CP1が形成される。一方で、例えば、
図54(c)に示す第1の強度分布とは異なる第2の強度分布を有する複数の加工光ELが塗装膜SFの表面に照射されると、
図54(b)に示す凹状構造CP1とは特性が異なる
図54(d)に示す凹状構造CP1が形成される。
【0243】
複数の加工光ELの特性は、複数の照射領域EAの形状を含んでいてもよい。つまり、制御装置18は、特性調整装置41eを制御して、複数の照射領域EAの形状を変更してもよい。複数の照射領域EAの形状が変わると、凹状構造CP1の特性(特に、形状及び位置等の少なくとも一つ)が変わる。その結果、このような凹状構造CP1から形成されるリブレット構造の特性(特に、形状及び位置等の少なくとも一つ)が変わる。例えば、
図55(a)に示す第1の形状の複数の照射領域EAに複数の加工光ELが照射されると、
図55(b)に示す凹状構造CP1が形成される。一方で、例えば、
図55(c)に示す第1の形状とは異なる第2の形状の複数の照射領域EAに複数の加工光ELが照射されると、
図55(b)に示す凹状構造CP1とは特性が異なる
図55(d)に示す凹状構造CP1が形成される。
【0244】
複数の加工光ELの特性は、複数の照射領域EAの大きさを含んでいてもよい。つまり、制御装置18は、特性調整装置41eを制御して、複数の照射領域EAの大きさを変更してもよい。複数の照射領域EAの大きさが変わると、凹状構造CP1の特性(特に、形状及び位置等の少なくとも一つ)が変わる。その結果、このような凹状構造CP1から形成されるリブレット構造の特性(特に、形状及び位置等の少なくとも一つ)が変わる。例えば、
図56(a)に示す第1の大きさの複数の照射領域EAに複数の加工光ELが照射されると、
図51(b)に示す凹状構造CP1が形成される。一方で、例えば、
図56(c)に示す第1の大きさよりも小さい第2の大きさの複数の照射領域EAに複数の加工光ELが照射されると、
図56(b)に示す凹状構造CP1よりも幅が狭い
図56(d)に示す凹状構造CP1が形成される。
【0245】
複数の加工光ELの特性は、複数の加工光ELの強度を含んでいてもよい。つまり、制御装置18は、特性調整装置41eを制御して、複数の加工光ELの強度を変更してもよい。複数の加工光ELの強度が変わると、凹状構造CP1の特性(特に、形状等)が変わる。具体的には、複数の加工光ELの強度が大きくなるほど、複数の加工光ELの照射によって塗装膜SFに加えられるエネルギーが大きくなるがゆえに、より多くの塗装膜SFが除去される。従って、複数の加工光ELの強度が大きくなるほど、形成される凹状構造CP1の深さが大きくなる。その結果、このような凹状構造CP1から形成されるリブレット構造の特性(特に、形状等)が変わる。例えば、
図57(a)に示す第1の強度を有する複数の加工光ELが照射されると、
図57(b)に示す凹状構造CP1が形成される。一方で、例えば、
図57(c)に示す第1の強度よりも大きい第2の強度を有する複数の加工光ELが照射されると、
図57(b)に示す凹状構造CP1よりも深い
図57(d)に示す凹状構造CP1が形成される。
【0246】
複数の加工光ELの特性は、複数の加工光ELの照射時間を含んでいてもよい。つまり、制御装置18は、特性調整装置41eを制御して、複数の加工光ELの照射時間を変更してもよい。複数の加工光ELの照射時間が変わると、凹状構造CP1の特性(特に、形状等)が変わる。具体的には、複数の加工光ELの照射時間が長くなるほど、複数の加工光ELの照射によって塗装膜SFに加えられるエネルギーが大きくなるがゆえに、より多くの塗装膜SFが除去される。従って、複数の加工光ELの照射時間が長くなるほど、形成される凹状構造CP1の深さが大きくなる。その結果、このような凹状構造CP1から形成されるリブレット構造の特性(特に、形状等)が変わる。
【0247】
複数の加工光ELの特性は、複数の加工光ELの偏光状態(例えば、s偏光かp偏光かの違い、及び、円偏光か直線偏光か楕円偏光かの違い等の少なくとも一つ)を含んでいてもよい。つまり、制御装置18は、特性調整装置41eを制御して、複数の加工光ELの偏光状態を変更してもよい。複数の加工光ELの偏光状態が変わると、当該複数の加工光ELの塗装膜SFに対する吸収度合いが変わり得る。その結果、複数の加工光ELの照射によって塗装膜SFに加えられるエネルギーが変わり得るため、複数の凹状構造CP1の特性(特に、形状等)が変わり得る。その結果、このような凹状構造CP1から形成されるリブレット構造の特性(特に、形状等)が変わり得る。
【0248】
複数の加工光ELの特性は、複数の加工光ELの波長を含んでいてもよい。つまり、制御装置18は、特性調整装置41eを制御して、複数の加工光ELの波長を変更してもよい。複数の加工光ELの波長が変わると、当該複数の加工光ELの塗装膜SFに対する吸収度合いが変わり得る。その結果、複数の加工光ELの照射によって塗装膜SFに加えられるエネルギーが変わり得るため、複数の凹状構造CP1の特性(特に、形状等)が変わり得る。その結果、このような凹状構造CP1から形成されるリブレット構造の特性(特に、形状等)が変わり得る。
【0249】
制御装置18は、制御装置18は、複数の加工光ELが塗装膜SFに照射されているとき(つまり、複数の加工光ELが塗装膜SFに対して相対的に移動しているとき)に、複数の加工光ELの特性を変更してもよい。その結果、ある方向に延在している一連の凹状構造CP1は、第1の特性を有する部分と、第1の特性とは異なる第2の特性を有する部分とを有することになる。例えば、
図58(a)から
図58(c)に示すように、ある方向に延在している一連の凹状構造CP1は、第1の形状を有する部分(
図58(a)のI-I’断面図である
図53(b)参照)と、第1の形状とは異なる第2の形状を有する部分(
図58(a)のII-II’断面図である
図58(c)参照)とを有することになる。つまり、凹状構造CP1の延在方向に沿って凹状構造CP1の断面形状が変わる。或いは、例えば、
図59(a)から
図59(c)に示すように、ある方向に延在している一連の凹状構造CP1は、第1の幅を有する部分(
図59(a)のI-I’断面図である
図54(b)参照)と、第1の幅とは異なる第2の幅を有する部分(
図59(a)のII-II’断面図である
図59(c)参照)とを有することになる。つまり、凹状構造CP1の延在方向に沿って凹状構造CP1の幅が変わる。
【0250】
このような第5変形例の加工装置1eは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受しつつ、リブレット構造の特性を変更することができる。従って、リブレット構造の特性を変更することができない場合と比較して、より適切なリブレット構造が形成可能となる。具体的には、例えば、摩擦の低減効果が適切に得られるような適切な特性を有するリブレット構造が形成可能となる。
【0251】
(4-6)第6変形例
続いて、
図60を参照しながら、第6変形例の加工装置1fについて説明する。上述した説明では、支持装置14の端部144は、塗装膜SFの表面に接触可能である。つまり、支持装置14は、塗装膜SFに接触した状態で収容装置13(更には、収容装置13が支持している光照射装置11)を支持している。一方で、第6変形例の加工装置1fは、
図60に示すように、このような支持装置14に代えて、塗装膜SFの表面に非接触な支持装置14fを備えているという点で、上述した加工装置1とは異なる。加工装置1fのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同じであってもよい。
【0252】
支持装置14fが塗装膜SFの表面に非接触であるがゆえに、支持装置14は、塗装膜SFに接触することなく、収容装置13(更には、収容装置13が支持している光照射装置11、以下第6変形例において同じ)を支持している。支持装置14fは、塗装膜SF(更には、加工対象物S)から分離された支持フレーム(或いは、任意の支持部材等)Ffによって支持される。支持装置14fは、支持フレームFfに接触した状態で、収容装置13を支持している。
【0253】
支持装置14fは、支持装置14と同様に梁部材141を備えている。更に、支持装置14fは、支持装置14が備えている複数の脚部材142に代えて、梁部材141に配置される複数の柱部材142fを備えている。柱部材142fは、梁部材141から+Z側に向かって延伸する棒状の部材である。脚部材142fの端部(
図60に示す例では、+Z側の端部)144fは、支持フレームFfに接触可能である。端部144fは、脚部材142の端部144と同様に、支持フレームFfに接触した状態で支持フレームFfに付着可能である。
【0254】
柱部材142fは、脚部材142と同様に、駆動系15によって、Z軸に沿って伸縮可能な部材である。つまり、柱部材142fの状態は、柱部材142fがZ軸に沿って伸びることでZ軸方向の長さが相対的に長い第3伸長状態と、柱部材142fがZ軸に沿って縮小することでZ軸方向の長さが相対的に短い第3縮小状態との間で切り替え可能である。柱部材142fの状態は、脚部材142と同様に、支持装置14fが移動する際に、第3伸長状態と第3縮小状態との間で切り替えられる。柱部材142fが第3伸長状態にある場合には、柱部材142fの端部144fは、支持フレームFfに接触可能である。一方で、柱部材142fが第3縮小状態にある場合には、端部144fは、支持フレームFfに接触しない。つまり、柱部材142fが第3縮小状態にある場合には、端部144fは、支持フレームFfから-Z側に離れている。従って、柱部材142fの端部144fと支持フレームFfとの接触によって支持装置14fの移動が妨げられることはない。尚、柱部材142fは、X軸及びY軸の少なくとも一方に沿って移動可能な天井クレーンに取り付け可能であってもよい。また、支持装置14fは、クレーン及びロボットアームの少なくとも一方であってもよい。
【0255】
このような第6変形例の加工装置1fは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
【0256】
但し、加工装置1fでは、支持装置14fと塗装膜SFとが非接触であるため、支持装置14fと塗装膜SFとが振動的に分離される。支持装置14fが光照射装置11を支持しているため、光照射装置11と塗装膜SFとが振動的に分離される。従って、振動等に起因して塗装膜SFが光照射装置11に対して相対的に移動すると、塗装膜SFの表面において、光照射装置11による加工光ELの照射位置(つまり、照射領域EAの位置)が、本来の照射位置からずれてしまう可能性がある。つまり、塗装膜SFと照射領域EAとの相対的な位置関係が変わる可能性がある。そこで、第6変形例では、制御装置18は、支持装置14fに対する塗装膜SFの振動状態及び支持装置14fに対する塗装膜SFの相対的な位置関係の少なくとも一方に基づいて、塗装膜SFに対する照射領域EAの相対的な位置が変わらないように、支持装置14fに対して照射領域EAを相対的に移動させる。支持装置14fに対して塗装膜SFが振動(或いは、移動)すると塗装膜SFと照射領域EAとの相対的な位置関係が変わることから、制御装置18は、塗装膜SFと照射領域EAとの相対的な位置関係に基づいて、塗装膜SFに対する照射領域EAの相対的な位置関係が一定に維持されるように、塗装膜SFに対する照射領域EAの相対的な位置を変更する。
【0257】
このため、加工装置14fは、支持装置14fに対する塗装膜SFの相対的な振動状態を計測する振動計測装置51fを備えている。振動計測装置としては、例えば格子照射法若しくは格子投影法を用いたモアレトポグラフィ法、ホログラフィ干渉法、オートコリメーション法、ステレオ法、非点収差法、臨界角法、又は、ナイフエッジ法など種々の計測原理を持つ光学計測装置を用いることができる。尚、加工装置14fは、それ自体の振動状態を計測する、変位計、速度計、或いは加速度計を備える振動計測装置を備えていてもよい。制御装置18は、振動計測装置51fの計測結果に基づいて、支持装置14fに対して塗装膜SFが振動したとしても塗装膜SFに対する照射領域EAの位置が変わらないように、支持装置14fに対する照射領域EAの位置を変更する。ここで、振動に起因して支持装置14fに対して塗装膜SFが一の移動方向に一の移動量だけ移動する一方で、支持装置14fに対して照射領域EAが静止していると、照射領域EAに対して塗装膜SFが一の移動方向に一の移動量だけ移動することになる。つまり、塗装膜SFの表面上では、塗装膜SFに対して一の移動方向とは逆向きの他の移動方向に向かって一の移動量だけ照射領域EAが移動することになる。このため、塗装膜SFに対する照射領域EAの相対位置を変えないためには、照射領域EAを塗装膜SFと同じように移動させる必要がある。つまり、塗装膜SFの移動に合わせて照射領域EAが一の移動方向に一の移動量だけ移動すれば、塗装膜SFに対する照射領域EAの位置が変わらなくなる。より具体的には、支持装置14fに対して照射領域EAが一の移動方向に一の移動量だけ移動すれば、塗装膜SFに対する照射領域EAの位置が変わらなくなる。このため、制御装置18は、支持装置14fに対する塗装膜SFの移動方向と同じ方向に向かって、支持装置14fに対する塗装膜SFの移動量と同じ移動量だけ、支持装置14fに対して照射領域EAを移動させる。尚、照射領域EAの移動は、駆動系12による光照射装置11の移動によって実現されてもよいし、光照射装置11が備える光学部材のうちの少なくとも1つの光学部材の移動及び/又は姿勢制御(例えば、ガルバノミラー1122の回転状態の制御)によって実現されてもよいし、その他の方法で実現されてもよい。
【0258】
尚、支持装置14と塗装膜SFとが接触可能な上述した加工装置1等においても、支持装置14の振動状態と塗装膜SFの振動状態とが一致しない可能性はある。このため、上述した加工装置1等においても、制御装置18は、支持装置14fに対する塗装膜SFの振動状態(つまり、支持装置14fに対する塗装膜SFの相対的な位置)に基づいて、塗装膜SFに対する照射領域EAの相対的な位置が変わらないように、支持装置14fに対して照射領域EAを相対的に移動させてもよい。
【0259】
(4-7)第7変形例
続いて、
図61を参照しながら、第7変形例の加工装置1gについて説明する。上述した加工装置1は、加工対象物SFを移動させることなく、駆動系12及び15によって光照射装置11を塗装膜SFに対して移動させることが可能である。一方で、第7変形例の加工装置1gは、光照射装置11を移動させることなく、塗装膜SF(つまり、加工対象物SF)を光照射装置11に対して移動させることが可能であるという点で、上述した加工装置1とは異なる。加工装置1gのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同じであってもよい。
【0260】
加工対象物SFを移動させるために、加工装置1gは、ステージ61gを備えている。ステージ61gは、定盤62gによって-Z側から支持されている。ステージ61gは、収容空間SPに収容される。ステージ61gは、光照射装置11に対向するように配置される。ステージ61gは、塗装膜SFと光照射装置11とが対向するように加工対象物Sを保持可能である。ステージ61gは、光照射装置11からの複数の加工光ELが塗装膜SFに照射されるように加工対象物Sを保持可能である。ステージ61gは、保持した加工対象物Sをリリース可能である。
【0261】
ステージ61gは、駆動系63gによって移動可能である。ステージ61gは、加工対象物Sを保持したまま移動可能である。ステージ61gは、光照射装置11に対して移動可能である。ステージ61gは、光照射装置11からの複数の加工光ELが照射される照射領域EAに対して移動可能である。駆動系63gは、制御装置18の制御下で、光照射装置11と塗装膜SFとの相対的な位置関係(つまり、照射領域EAと塗装膜SFとの相対的な位置関係)を変更するように、ステージ61gを移動させる。駆動系63gは、X軸及びY軸の少なくとも一方に沿って、ステージ61gを移動させてもよい。その結果、塗装膜SF上で照射領域EAがX軸及びY軸の少なくとも一方に沿って移動する。駆動系63gは、Z軸に沿って、ステージ61gを移動させてもよい。駆動系63gは、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つに加えて、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って、ステージ61gを移動させてもよい。
【0262】
ステージ61gの移動により光照射装置11に対して加工対象物Sが移動するため、収容装置13(特に、隔壁部材132の端部134)及び支持装置14(特に、脚部材142の端部144)に対して塗装膜SFが移動する。このため、端部134及び144の少なくとも一方が塗装膜SFに接触した状態でステージ61gが移動すると、端部134及び144の少なくとも一方と塗装膜SFとの接触によってステージ61gの移動(つまり、加工対象物Sの移動)が妨げられる可能性がある。このため、第7変形例では、端部134及び144は、塗装膜SFに接触しない。この場合、端部134は、例えば、定盤62gに接触する。その結果、収容装置13は、定盤62gと協働して収容空間SPの密閉性を維持する。更に、端部144もまた、例えば、定盤62gに接触する。その結果、支持装置14は、定盤62g上で自立することができる。つまり、支持装置14は、端部144が定盤62gに接触した状態で収容装置13を支持する。
【0263】
第7変形例では、光照射装置11を移動させなくてもよいため、加工装置1gは、光照射装置11を移動させる駆動系12及び支持装置15を移動させる駆動系15を備えていなくてもよい。但し、加工装置1gは、上述した加工装置1と同様に、光照射装置11を移動させてもよく、その場合には、駆動系12及び15の少なくとも一方を備えていてもよい。
【0264】
このような第7変形例の加工装置1gは、上述した加工装置1では光照射装置11の移動によって実現されていた塗装膜SFと照射領域EAとの間の相対位置の変更を、ステージ61gの移動(つまり、加工対象物Sの移動)によって実現することができる。更に、加工装置1gは、上述した加工装置1ではガルバノミラー1122の回転によって実現されていた塗装膜SFと照射領域EAとの間の相対位置の変更もまた、ステージ61gの移動(つまり、加工対象物Sの移動)によって実現することができる。このため、加工装置1gもまた、加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。つまり、加工装置1gは、ステージ61gの移動によって加工対象物Sを移動させることで、複数の加工光ELがY軸に沿って塗装膜SFの表面を走査する(つまり、複数の照射領域EAをY軸に沿って移動させる)スキャン動作と、複数の照射領域EAをX軸に沿って所定量だけ移動させるステップ動作とを交互に繰り返すことができる。その結果、加工装置1gは、複数の単位加工領域SAを複数の加工光ELで走査することができ、結果、上述したリブレット構造を形成することができる。
【0265】
(4-8)第8変形例
続いて、
図62を参照しながら、第8変形例の加工装置1hについて説明する。上述した加工装置1は、光照射装置11が収容装置13に支持された状態で、駆動系12によって光照射装置11を移動させている。つまり、加工装置1は、塗装膜SFに非接触な状態で、光照射装置11を移動させている。一方で、第8変形例の加工装置1hは、光照射装置11hが収容装置13に支持されていない状態で、光照射装置11hを移動させているという点で、上述した加工装置1とは異なる。このため、加工装置1hは、収容装置13が光照射装置11を支持していなくてもよいという点で、上述した加工装置1とは異なる。つまり、加工装置1hは、収容装置13によって支持されていない光照射装置11hを備えているという点で、上述した加工装置1とは異なる。更に、加工装置1hは、上述した駆動系12に代えて、収容装置13に支持されていない光照射装置11hを移動させるための駆動系12hを備えているという点で、上述した加工装置1とは異なる。加工装置1hのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同じであってもよい。
【0266】
収容装置13が光照射装置11hを支持していないため、光照射装置11hは、塗装膜SFの表面に載せられている。光照射装置11hは、塗装膜SFの表面を接触可能な接触部113hを備えているという点で、上述した光照射装置11とは異なる。光照射装置11hのその他の特徴は、光照射装置11のその他の特徴と同じであってもよい。光照射装置11hは、接触部113hを介して塗装膜SFの表面に接触した状態で、塗装膜SFの表面に載せられている。このため、光照射装置11hは、塗装膜SFによって支持される。
【0267】
駆動系12hは、制御装置18の制御下で、光照射装置11hを、塗装膜SFに対して(つまり、加工対象物Sに対して)に移動させる。より具体的には、駆動系12hは、光照射装置11hを塗装膜SFの表面に沿って移動させる。この際、駆動系12hは、光照射装置11hが接触部113hを介して塗装膜SFに接触した状態で、光照射装置11hを移動させる。このため、接触部113hは、塗装膜SFとの間の摩擦抵抗が相対的に小さい部材である。或いは、接触部113は、転がり抵抗が相対的に小さい部材(例えば、タイヤ及びボール等の少なくとも一つ)である。このため、光照射装置11hは、塗装膜SFの表面に沿って、塗装膜SFの表面上をいわば自走しているかのように移動することができる。
【0268】
光照射装置11hは、光照射装置11hが接触部113hを介して塗装膜SFに接触した状態で、加工光ELを照射する。光照射装置11は、塗装膜SFの表面に沿って光照射装置11hが移動している間に、加工光ELを照射してもよい。その結果、塗装膜SFに対して照射領域EAが移動するため、複数の加工光ELがY軸に沿って塗装膜SFの表面を走査する(つまり、複数の照射領域EAをY軸に沿って移動させる)スキャン動作を行うことができる。つまり、加工装置1hは、光照射装置11hの移動により、ガルバノミラー1122を回転させなくても、スキャン動作と上述したステップ動作とを交互に繰り返して、リブレット構造を形成することができる。但し、加工装置1hは、ガルバノミラー1122を回転させることで、スキャン動作とステップ動作とを交互に繰り返してもよい。
【0269】
上述したように、加工装置1hは、支持装置14により塗装膜SFから吊り下がる(例えば、加工対象物Sの一例である航空機PLの機体から吊り下がる)ように、塗装膜SFに対して配置されることがある(上述した
図6(b)参照)。このように加工装置1hが塗装膜SFから吊り下がると、光照射装置11hが収容装置13によって支持されていないため、光照射装置11hが落下してしまう可能性がある。このため、光照射装置11自身が塗装膜SFに付着可能であってもよい。例えば、接触部113hが塗装膜SFに付着可能であってもよい。例えば、接触部113hは、塗装膜SFに吸着可能な吸着機構を備えていてもよい。或いは、例えば
図63に示すように、光照射装置11hを塗装膜SF上に位置させる吸着部114hを設けてもよい。
図63において、光照射装置11hはフレーム115hによって支持されている。このフレーム115hには、接触部としての車輪113hと、吸着部114hの一部を構成する吸引ノズル114h1とが設けられている。吸引ノズル114h1は、吸引配管114h2を介して吸引ポンプ114h3と接続されている。吸引ポンプ114h3は、吸引配管114h2を介して吸引ノズル114h1と塗装膜SFとの間を減圧して、光照射装置11hを塗装膜SFに吸着する。尚、車輪113hは、駆動系12hによって駆動可能である。尚、吸着部114hとしては、上述に示した負圧吸引式に限定されず、例えば磁石吸引式であってもよい。
【0270】
このような第8変形例の加工装置1hは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、加工装置1hでは、光照射装置11hが塗装膜SFに接触した状態で塗装膜SFの表面に沿って移動可能である。従って、塗装膜SFの表面がどのような形状であっても、光照射装置11は、塗装膜SFの表面に沿って移動することができる。このため、加工装置1hは、塗装膜SFの表面の形状の制約をそれほど受けることなく、塗装膜SFを加工することができる。
【0271】
(4-9)第9変形例
続いて、
図64を参照しながら、第9変形例の加工装置1iについて説明する。
図64に示すように、加工装置1iは、位置計測装置71iを更に備えているという点で、上述した加工装置1とは異なる。加工装置1iのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同じであってもよい。
【0272】
位置計測装置71iは、塗装膜SFに対する(つまり、加工対象物Sに対する)複数の照射領域EAの位置を計測する。第9変形例では、複数の照射領域EAの位置を計測するために、位置計測装置71iは、塗装膜SFの少なくとも一部と光照射装置11の少なくとも一部との双方を同時に撮像可能な撮像機器(例えば、カメラ)72iを含み、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置を計測して、塗装膜SFに対する照射領域EAの位置を間接的に計測する。塗装膜SFの少なくとも一部と光照射装置11の少なくとも一部とを同時に撮像するためには、撮像機器72iは、塗装膜SFの少なくとも一部と光照射装置11の少なくとも一部とが撮像機器72iの撮像範囲に同時に含まれるように、塗装膜SF(つまり、加工対象物S)及び光照射装置11の少なくとも一方に対して位置合わせされている。この場合、典型的には、撮像機器72iは、塗装膜SF及び光照射装置11から所定距離以上離れた位置に配置されている。この場合、撮像機器72iは、塗装膜SF及び光照射装置11から所定距離以上離れた位置から、塗装膜SFの少なくとも一部と光照射装置11の少なくとも一部を撮像する。つまり、撮像機器72iは、塗装膜SF及び光照射装置11を俯瞰する状態で、塗装膜SFの少なくとも一部と光照射装置11の少なくとも一部とを撮像する。
【0273】
撮像機器72iが塗装膜SFの少なくとも一部と光照射装置11の少なくとも一部とを同時に撮像するがゆえに、撮像機器72iの撮像結果(つまり、位置計測装置71iの計測結果)は、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置に関する情報を含んでいる。
【0274】
ここで、上述したように、光照射装置11は、隔壁部材132によって囲まれた収容空間SPに収容されている。隔壁部材132が可視光を通過させる部材である場合には、撮像機器72iは、収容空間SPに収容されている光照射装置11を直接的に撮像することができる。その結果、位置計測装置71iの計測結果は、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置に関する情報を含むことになる。このため、隔壁部材132は、可視光を通過させる部材であってもよい。この場合であっても、加工光ELが不可視光であれば、加工光ELが隔壁部材132によって遮光可能であることに変わりはない。
【0275】
或いは、隔壁部材132が可視光を遮光する部材である場合には、撮像機器72iが光照射装置11を直接撮像することができない可能性がある。しかしながら、この場合であっても、撮像機器72iは、光照射装置11を支持している収容装置13、及び、収容装置13を支持している支持装置14を撮像することができる。従って、この場合、位置計測装置71iの計測結果は、塗装膜SFに対する収容装置13及び支持装置14の少なくとも一方の位置に関する情報を含んでいる。更に、塗装膜SFに対する収容装置13及び支持装置14の少なくとも一方の位置が変わると、収容装置13及び支持装置14に支持されている光照射装置11の塗装膜SFに対する位置もまた変わる。つまり、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置は、塗装膜SFに対する収容装置13及び支持装置14の少なくとも一方の位置に依存する。従って、収容装置13及び支持装置14の少なくとも一方と光照射装置11との位置関係が既知であれば、塗装膜SFに対する収容装置13及び支持装置14の少なくとも一方の位置に関する情報は、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置に関する情報に変換可能である。従って、隔壁部材132が可視光を遮光する部材である場合であっても、位置計測装置71iの計測結果は、実質的には、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置に関する情報を含んでいる。尚、制御装置18が駆動系12及び15を制御して夫々光照射装置11及び支持装置14を移動させているため、収容装置13及び支持装置14の少なくとも一方と光照射装置11との位置関係は、制御装置18にとって既知の情報である。従って、制御装置18は、隔壁部材132が可視光を遮光する部材である場合であっても、位置計測装置71iの計測結果から、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置に関する情報を取得可能である。
【0276】
或いは、隔壁部材132が可視光を遮光する部材であっても、撮像機器72iが、不可視光の照明光を用いて塗装膜SFの少なくとも一部と光照射装置11の少なくとも一部を撮像する機器である場合には、撮像機器72iは、光照射装置11を直接的に撮像することができる。従って、撮像機器72iは、隔壁部材132を通過可能な不可視光の照明光を用いて塗装膜SFの少なくとも一部と光照射装置11の少なくとも一部を撮像してもよい。但し、塗装膜SFによって相応に吸収可能な波長の不可視光が照明光として用いられ、且つ、照明光の強度が塗装膜SFを蒸発させることが可能な強度以上になっていると、照明光の照射によって塗装膜SFが蒸発してしまう可能性がある。このため、撮像機器72iが用いる照明光の強度は、塗装膜SFを蒸発させることが可能な強度未満に設定される。つまり、照明光の強度は、塗装膜SFを蒸発させることができない程度に強度が小さくなるように設定される。
【0277】
位置計測装置71iの計測結果は、位置計測装置71iから、有線又は無線の通信回線を介して、制御装置18に出力される。制御装置18は、位置計測装置71iの計測結果を受信する。制御装置18は、位置計測装置71iの計測結果から、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置を特定し、ひいては、塗装膜SFに対する複数の照射領域EAの位置を特定する。具体的には、上述したように、位置計測装置71iの計測結果は、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置に関する情報を含む。ここで、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置が変わると、塗装膜SFに対する複数の照射領域EAの位置もまた変わる。つまり、塗装膜SFに対する複数の照射領域EAの位置は、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置に依存する。従って、光照射装置11と複数の照射領域EAとの位置関係が既知であれば、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置に関する情報は、塗装膜SFに対する複数の照射領域EAの位置に関する情報に変換可能である。更に、制御装置18が光照射装置11(特に、ガルバノミラー1122)を制御して塗装膜SF上での複数の照射領域EAの位置を変更している。このため、光照射装置11と複数の照射領域EAとの位置関係は、制御装置18にとって既知の情報である。従って、制御装置18は、位置計測装置71iの計測結果及び光照射装置11と複数の照射領域EAとの位置関係(言い換えれば、ガルバノミラー1122の制御状態)に基づいて、塗装膜SFに対する複数の照射領域EAの位置を特定可能である。
【0278】
制御装置18は、特定した複数の照射領域EAの位置に基づいて、リブレット構造を形成するように光照射装置11、駆動系12及び駆動系15の少なくとも一つを制御する。例えば、制御装置18は、塗装膜SF上の所望位置に照射領域EAが設定されるように、光照射装置11や、駆動系12や、駆動系15を制御してもよい。或いは、例えば、制御装置18は、特定した複数の照射領域EAの位置(或いは、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置)に、第2変形例で説明した塗装膜SFの表面の特性(例えば、表面の形状及び反射率等の少なくとも一つ)を関連付けると共に、当該関連付けた情報に基づいて、上述した第2変形例における事前計測制御動作を行ってもよい。
【0279】
このような第9変形例の加工装置1iは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。更に、加工装置1iは、塗装膜SFに対する複数の照射領域EAの位置を適切に特定することができる。従って、加工装置1iは、塗装膜SFの表面上で複数の照射領域EAを適切な位置に設定しながら、塗装膜SFを適切に(つまり、相対的に精度よく)加工することができる。
【0280】
尚、上述したように、位置計測装置71iは、塗装膜SFの表面を撮像できる。このため、制御装置18は、位置計測装置71が撮像した塗装膜SFの表面の画像から、塗装膜SFの表面の形状、及び、塗装膜SFの表面上においてそのような形状が存在する位置の少なくとも一方を特定することもできる。このため、位置計測装置71iは、上述した第2変形例で用いられる、塗装膜SFの表面の形状を計測するための表面特性計測装置19bとして用いられてもよい。この場合、制御装置18は、位置計測装置71iの計測結果から、例えば、第2変形例における事前計測制御動作の第1具体例から第3具体例で用いられる「塗装膜SFの表面の形状」を特定してもよい。或いは、制御装置18は、位置計測装置71iの計測結果から、例えば、第2変形例における事前計測制御動作の第4具体例で用いられる「塗装膜SFの表面上において存在する許容サイズ以上の構造物」の形状、及び、このような構造物が存在する領域の塗装膜SF上の位置の少なくとも一方を特定してもよい。
【0281】
尚、上述の例では、位置計測装置71iが塗装膜SFに対する照射領域EAの位置を間接的に計測したが、位置計測装置71iは、塗装膜SFに対する照射領域EAの位置を直接的に計測してもよい。例えば、光照射装置11から、弱い強度(塗装膜SFを蒸発させない程度であって且つ撮像機器72iで検出できる強度)の加工光ELを塗装膜SF上に照射して照射領域EAを塗装膜SF上に形成する。その照射領域EAの位置を撮像機器72iで撮像することによって、塗装膜SFに対する照射領域EAの位置を直接的に計測することができる。なお、塗装膜SFに対する加工中に、照射領域EAの位置を直接的に計測してもよい。
【0282】
また、上述した説明では、加工装置1i自体が位置計測装置71iを備えている例を説明している。しかしながら、上述したように、位置計測装置71i(特に、撮像機器72i)が光照射装置11から所定距離以上離れた位置に配置されていることから、位置計測装置71iは、加工装置1iとは別個の装置であってもよい。つまり、加工装置1iに代えて、有線又は無線の通信回線を介して情報の送受信が可能な加工装置1と位置計測装置71iとを備える加工システムであっても、上述した第9変形例の加工装置1iが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
【0283】
(4-10)第10変形例
続いて、
図65を参照しながら、第10変形例の加工装置1jについて説明する。第10変形例の加工装置1jは、塗装膜SFに対する複数の照射領域EAの位置を計測し、計測結果に基づいてリブレット構造を形成するように光照射装置11、駆動系12及び駆動系15の少なくとも一つを制御するという点では、上述した第9変形例の加工装置1iと同じである。加工装置1jは、位置計測装置71iに代えて、位置計測装置71jを備えているという点で、上述した加工装置1iとは異なる。加工装置1jのその他の特徴は、加工装置1iのその他の特徴と同じであってもよい。
【0284】
位置計測装置71jは、塗装膜SFに対する(つまり、加工対象物Sに対する)複数の照射領域EAの位置を計測するという点では、上述した位置計測装置71iと同じである。第10変形例では、複数の照射領域EAの位置を計測するために、位置計測装置71jは、第1計測装置711jと、第2計測装置712jとを備えている。第1計測装置711jと、第2計測装置712jとは、互いに協働して、塗装膜SFに対する複数の照射領域EAの位置を計測する。
【0285】
第1計測装置711jは、塗装膜SFと所定の第1位置関係を有する第1位置に配置される。所定の第1位置関係は、制御装置18に既知である。つまり、制御装置18は、第1位置関係に関する情報を保有している。
図65に示す例では、第1計測装置711jは、塗装膜SFの表面に配置されている。しかしながら、第1計測装置711jは、塗装膜SFの表面以外に配置されていてもよい。例えば、第1計測装置711jは、塗装膜SFの内部に配置されてもよいし、計測対象物Sに配置されてもよいし、その他の位置に配置されてもよい。
【0286】
第2計測装置712jは、光照射装置11と所定の第2位置関係を有する第2位置に配置される。所定の第2位置関係は、制御装置18に既知である。つまり、制御装置18は、第2位置関係に関する情報を保有している。
図65に示す例では、第2計測装置712jは、光照射装置11に配置されている。しかしながら、第2計測装置712jは、加工装置1jのうち光照射装置11以外の部分に配置されていてもよい。或いは、第2計測装置712jは、加工装置1j以外に配置されていてもよい。
【0287】
第1計測装置711jは、周囲に向かって信号を出力(つまり、発信)可能な信号出力装置を含む。この場合、位置計測装置71jは、配置位置が異なる複数の(例えば、2つの又は3つ以上の)第1計測装置711jを備えている。更に、この場合、第2計測装置712jは、複数の第1計測装置711jが出力した信号を検出する信号検出装置を含む。第2計測装置712jの計測結果(つまり、信号検出装置の検出結果)は、制御装置18に出力される。制御装置18は、第2計測装置712jの計測結果から、複数の第1計測装置711jの夫々に対する第2計測装置712jの位置を特定する。制御装置18は、複数の信号出力装置に対する信号検出装置の位置の特定するための既知の方法(例えば、GPS(Global Positioning System)等で採用されている3次元測位法等)を用いて、複数の第1計測装置711jの夫々に対する第2計測装置712jの位置を特定してもよい。
【0288】
その後、制御装置18は、複数の第1計測装置711jの夫々に対する第2計測装置712jの位置に基づいて、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置を特定する。具体的には、複数の第1計測装置711jの夫々と塗装膜SFとの間の第1位置関係及び第2計測装置712jと光照射装置11との間の第2位置関係が制御装置18にとって既知であるがゆえに、複数の第1計測装置711jの夫々と第2計測装置712jとの間の位置関係は、塗装膜SFと光照射装置11との間の位置関係と等価である。このため、制御装置18は、複数の第1計測装置711jの夫々に対する第2計測装置712jの位置に加えて、制御装置18にとって既知の情報である、複数の第1計測装置711jの夫々と塗装膜SFとの間の第1位置関係及び第2計測装置712jと光照射装置11との間の第2位置関係に基づいて、塗装膜SFに対する光照射装置11の位置を特定する。塗装膜SFに対する光照射装置11の位置を特定した後の動作は、第10変形例においても、第9変形例と同じである。つまり、制御装置18は、特定した塗装膜SFに対する光照射装置11の位置に基づいて、塗装膜SFに対する複数の照射領域EAの位置を特定する。
【0289】
このような第10変形例の加工装置1jであっても、上述した第9変形例の加工装置1iが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
【0290】
尚、第1計測装置711jは、周囲に向かって信号を出力(つまり、発信)可能な信号出力装置を含んでいなくてもよい。例えば、第1計測装置711jは、第2計測装置712jによって検出可能な任意の被検出装置を含んでいてもよい。任意の被検出装置の一例として、マーカがあげられる。更に、この場合、第2計測装置712jは、任意の被検出装置を検出可能な検出装置を含んでいてもよい。任意の検出装置の一例として、カメラ等の撮像機器があげられる。この場合であっても、制御装置18は、第2計測装置712jの計測結果から、第1計測装置711jに対する第2計測装置712jの位置を特定することができる。このため、制御装置18は、塗装膜SFに対する複数の照射領域EAの位置を特定可能である。
【0291】
(4-11)第11変形例
続いて、第11変形例の加工装置1kについて説明する。加工装置1kは、上述した加工装置1と同様に、塗装膜SFの表面に複数の単位加工領域SAを設定し、複数の単位加工領域SAに順に複数の加工光ELを照射する。第11変形例では、各単位加工領域SAは、隣接する他の単位加工領域SAと部分的に重複する。つまり、各単位加工領域SAは、他の単位加工領域SAと重複する重複領域SAaと、他の単位加工領域SAと重複しない非重複領域SAbとを含む。例えば、
図66(a)に示すように、単位加工領域SA1は、単位加工領域SA1の+X側に隣接する単位加工領域SA2と部分的に重複する(但し、単位加工領域SA6とは重複しない)重複領域SAa1-2と、単位加工領域SA1の+Y側に隣接する単位加工領域SA5と部分的に重複する(但し、単位加工領域SA6とは重複しない)重複領域SAa1-5と、単位加工領域SA2及びSA5と部分的に重複し且つ単位加工領域SA1と斜め方向に隣接する単位加工領域SA6と部分的に重複する重複領域SAa1-256と、他の単位加工領域SAと重複しない非重複領域SAb1とを含む。例えば、
図66(b)に示すように、単位加工領域SA2は、単位加工領域SA2の-X側に隣接する単位加工領域SA1と部分的に重複する(但し、単位加工領域SA5とは重複しない)重複領域SAa2-1と、単位加工領域SA2の+X側に隣接する単位加工領域SA3と部分的に重複する(但し、単位加工領域SA7とは重複しない)重複領域SAa2-3と、単位加工領域SA2の+Y側に隣接する単位加工領域SA6と部分的に重複する(但し、単位加工領域SA5及びSA7とは重複しない)重複領域SAa2-6と、単位加工領域SA1及びSA6に部分的に重複し且つ加えて単位加工領域SA2と斜め方向に隣接する単位加工領域SA5と部分的に重複する重複領域SAa2-156と、単位加工領域SA3及びSA6に部分的に重複し且つ加えて単位加工領域SA2と斜め方向に隣接する単位加工領域SA7と部分的に重複する重複領域SAa2-367と、他の単位加工領域SAと重複しない非重複領域SAb2とを含む。
【0292】
加工装置1kは、加工装置1と比較して、重複領域SAaに照射される加工光ELの特性と、非重複領域SAbに照射される加工光ELの特性とが異なるものとなるように複数の加工光ELを照射するという点で、上述した加工装置1とは異なる。というのも、一の単位加工領域SAと他の単位加工領域SAとが部分的に重複する重複領域SAaには、一の単位加工領域SAに照射される加工光ELと、他の単位加工領域SAに照射される加工光ELとが重複して照射される可能性がある。一方で、一の単位加工領域SAに含まれる非重複領域SAbには、一の単位加工領域SAに照射される加工光ELが照射される一方で、他の単位加工領域SAに照射される加工光ELが照射されることはない。このため、重複領域SAaに照射される加工光ELの特性と非重複領域SAbに照射される加工光ELの特性とが同じになると、重複領域SAaに形成される凹状構造CP1の特性と、非重複領域SAbに形成される凹状構造CP1の特性とが変わってしまう可能性がある。その結果、リブレット構造の特性が、本来必要としていた特性から乖離してしまう可能性がある。そこで、第11変形例では、加工装置1kは、重複領域SAaに照射される加工光ELの特性と、非重複領域SAbに照射される加工光ELの特性とが異なるものとなるように複数の加工光ELを照射する。以下、重複領域SAaに照射される加工光ELの特性及び非重複領域SAbに照射される加工光ELの特性が異なる3つの例について説明する。尚、加工装置1kのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同じであってもよい。
【0293】
(4-11-1)重複領域SAaに照射される加工光ELの特性が非重複領域SAbに照射される加工光ELの特性と異なる第1具体例
第1具体例では、
図67に示すように、制御装置18は、未だ加工光ELが照射されていない重複領域SAa(つまり、未だ凹状構造CP1が形成されていない重複領域SAa)に対しては加工光ELを照射するように、光照射装置11を制御する。一方で、制御装置18は、既に加工光ELが照射された重複領域SAa(つまり、既に凹状構造CP1が形成されている重複領域SAa)に対しては加工光ELを照射しないように、光照射装置11を制御する。更に、制御装置18は、非重複領域SAbに加工光ELを照射するように、光照射装置11を制御する。つまり、制御装置18は、既に加工光ELが照射された重複領域SAaに照射される加工光ELの強度をゼロに設定し、未だ加工光ELが照射されていない重複領域SAa及び非重複領域SAbに照射される加工光ELの強度をゼロよりも大きい強度に設定する。言い換えれば、制御装置18は、既に加工光ELが照射された重複領域SAaに照射される加工光ELの照射時間をゼロに設定し、未だ加工光ELが照射されていない重複領域SAa及び非重複領域SAbに照射される加工光ELの照射時間をゼロよりも大きい時間に設定する。尚、
図67は、単位加工領域SA1に加工光ELを照射した後に、単位加工領域SA1と部分的に重複する単位加工領域SA2に加工光ELを照射する場合において、単位加工領域SA1に加工光ELを照射するタイミングでは、未だ加工光ELが照射されていない重複領域SAa1-2に加工光ELを照射し、単位加工領域SA1に続いて単位加工領域SA2に加工光ELを照射するタイミングでは、既に加工光ELが照射された重複領域SAa2-1に加工光ELを照射しない例を示している。
【0294】
このように、既に加工光ELが照射された重複領域SAaに照射される加工光ELの強度がゼロに設定されると、重複領域SAaに既に形成されているリブレット構造が、再度の加工光ELの照射によって特性が悪化する(例えば、形状が望ましくない形状になる)ように加工されてしまうことがない。このため、加工装置1kは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受しながら、隣接する複数の単位加工領域SAが部分的に重複する場合においても、リブレット構造を適切に形成することができる。
【0295】
(4-11-2)重複領域SAaに照射される加工光ELの特性が非重複領域SAbに照射される加工光ELの特性と異なる第2具体例
第2具体例では、
図68に示すように、制御装置18は、未だ加工光ELが照射されていない重複領域SAaに対しては、塗装膜SFを蒸発させることができる程度に強度が大きい加工光ELを照射するように、光照射装置11を制御する。一方で、制御装置18は、既に加工光ELが照射された重複領域SAaに対しては、塗装膜SFを蒸発させることができない程度に強度が小さい加工光ELを照射するように、光照射装置11を制御する。更に、制御装置18は、非重複領域SAbに対しては、塗装膜SFを蒸発させることができる程度に強度が大きい加工光ELを照射するように、光照射装置11を制御する。つまり、制御装置18は、既に加工光ELが照射された重複領域SAaに照射される加工光ELの強度を、塗装膜SFを蒸発させることができない非加工可能強度に設定し、未だ加工光ELが照射されていない重複領域SAa及び非重複領域SAbに照射される加工光ELの強度を、非加工可能強度よりも大きい強度(つまり、塗装膜SFを蒸発させることができる加工可能強度)に設定する。尚、
図68は、単位加工領域SA1に加工光ELを照射した後に、単位加工領域SA1と部分的に重複する単位加工領域SA2に加工光ELを照射する場合において、単位加工領域SA1に加工光ELを照射するタイミングでは、未だ加工光ELが照射されていない重複領域SAa1-2に加工可能強度を有する加工光ELを照射し、単位加工領域SA1に続いて単位加工領域SA2に加工光ELを照射するタイミングでは、既に加工光ELが照射された重複領域SAa2-1に非加工強度の加工光ELを照射する例を示している。
【0296】
このように、既に加工光ELが照射された重複領域SAaに照射される加工光ELの強度が非加工可能強度に設定される場合も、既に加工光ELが照射された重複領域SAaに照射される加工光ELの強度がゼロに設定される場合と同様に、重複領域SAaに既に形成されているリブレット構造が、再度の加工光ELの照射によって特性が悪化するように加工されてしまうことがない。このため、加工装置1kは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受しながら、隣接する複数の単位加工領域SAが部分的に重複する場合においても、リブレット構造を適切に形成することができる。
【0297】
尚、上述したように、塗装膜SFは、照射された加工光ELから塗装膜SFに加えられるエネルギーによって蒸発する。更に、上述したように、加工光ELから塗装膜SFに加えられるエネルギーは、加工光ELの強度のみならず、加工光ELの照射時間にも依存して変動し得る。このため、制御装置18は、未だ加工光ELが照射されていない重複領域SAaに対して、塗装膜SFを蒸発させることができる程度に長い照射時間だけ加工光ELを照射するように、光照射装置11を制御してもよい。一方で、制御装置18は、既に加工光ELが照射された重複領域SAaに対して、塗装膜SFを蒸発させることができない程度に短い照射時間だけ加工光ELを照射するように、光照射装置11を制御してもよい。更に、制御装置18は、非重複領域SAbに対して、塗装膜SFを蒸発させることができる程度に長い照射時間だけ加工光ELを照射するように、光照射装置11を制御してもよい。つまり、制御装置18は、既に加工光ELが照射された重複領域SAaに照射される加工光ELの照射時間を、塗装膜SFを蒸発させることができない非加工時間に設定し、未だ加工光ELが照射されていない重複領域SAa及び非重複領域SAbに照射される加工光ELの照射時間を、非加工可能時間よりも長い照射時間(つまり、塗装膜SFを蒸発させることができる加工可能時間)に設定してもよい。
【0298】
(4-11-3)重複領域SAaに照射される加工光ELの特性が非重複領域SAbに照射される加工光ELの特性と異なる第3具体例
第3具体例では、
図69に示すように、制御装置18は、重複領域SAa及び非重複領域SAbの双方に、加工可能強度を有する加工光ELを照射するように、光照射装置11を制御する。但し、この場合には、制御装置18は、重複領域SAaに照射される加工光ELの強度が、非重複領域SAbに照射される加工光ELの強度よりも小さくなるように、光照射装置11を制御する。より具体的には、制御装置18は、重複領域SAaがn(但し、nは、2以上の整数)個の単位加工領域SAが部分的に重複する領域である場合には、重複領域SAaに照射される加工光ELの強度が、非重複領域SAbに照射される加工光ELの強度の1/n倍になるように、光照射装置11を制御する。例えば、
図69に示す例では、重複領域SAa1-2(つまり、重複領域SAa2-1)は、2つの単位加工領域SA1及びSA2が部分的に重複する領域である。このため、単位加工領域SA1に加工光ELを照射するタイミングで重複領域SAa1-2に照射される加工光ELの強度及び単位加工領域SA2に加工光ELを照射するタイミングで重複領域SAa2-1に照射される加工光ELの強度は、共に、非重複領域SAb1及びSAb2の夫々に照射される加工光ELの強度の1/2倍(つまり、半分)になる。
【0299】
このように、重複領域SAaに照射される加工光ELの強度が非重複領域SAbに照射される加工光ELの1/n倍に設定されると、重複領域SAaに形成される凹状構造CP1の特性と、非重複領域SAbに形成される凹状構造の特性が大きく変わってしまうことはない。というのも、重複領域SAaを含むn個の単位加工領域SAに複数の加工光ELを照射する都度、重複領域SAaには、非重複領域SAbに照射される加工光ELの1/n倍の強度の加工光ELが照射される。つまり、重複領域SAaには、非重複領域SAbに照射される加工光ELの1/n倍の強度の加工光ELがn回に分けて照射される。その結果、n回の加工光ELの照射によって重複領域SAaに加えられるエネルギーの総量は、1回の加工光ELの照射によって非重複領域SAbに加えられるエネルギーの総量と同じになる。従って、n回の加工光ELの照射によって重複領域SAaに形成される凹状構造CP1の特性(例えば、深さ)は、1回の加工光ELの照射によって非重複領域SAbに形成される凹状構造CP1の特性(例えば、深さ)と概ね同じになる。つまり、第3ぐらい例では、凹状構造CP1が徐々に深くなっていくように形成される。このため、加工装置1kは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受しながら、隣接する複数の単位加工領域SAが部分的に重複する場合においても、リブレット構造を適切に形成することができる。
【0300】
尚、n回の加工光ELの照射によって重複領域SAaに加えられるエネルギーの総量が1回の加工光ELの照射によって非重複領域SAbに加えられるエネルギーの総量と同じになる限りは、重複領域SAaに照射される加工光ELの強度が非重複領域SAbに照射される加工光ELの1/n倍に設定されなくてもよい。例えば、
図69に示す例では、重複領域SAaに加工光ELが照射されている間は、加工光ELの強度は、非重複領域SAbに照射される加工光ELの1/n倍の強度に固定されている。しかしながら、
図70に示すように、制御装置18は、重複領域SAaに加工光ELが照射されている間に、加工光ELの強度を連続的に(或いは、非連続的に)変化させてもよい。
【0301】
また、加工光ELから塗装膜SFに加えられるエネルギーは、加工光ELの強度のみならず、加工光ELの照射時間にも依存して変動し得ることは上述したとおりである。このため、制御装置18は、重複領域SAaに照射される加工光ELの照射時間が、非重複領域SAbに照射される加工光ELの照射時間よりも短くなるように、光照射装置11を制御してもよい。より具体的には、制御装置18は、重複領域SAaがn個の単位加工領域SAが部分的に重複する領域である場合には、重複領域SAaに照射される加工光ELの照射時間が、非重複領域SAbに照射される加工光ELの照射時間の1/n倍になるように、光照射装置11を制御してもよい。尚、照射された加工光ELから塗装膜SFに加えられるエネルギー量(加工光ELの強度×照射時間)に対する、塗装膜SFが蒸発した部分の厚みの変化量が線形的でない場合には、重複領域SAaに照射される加工光ELのエネルギー量を、非重複領域SAbに照射される加工光ELのエネルギー量の1/n倍と異ならせてよい。
【0302】
尚、第11変形例では、照射する加工装置1kが、重複領域SAaに照射される加工光ELの特性と非重複領域SAbに照射される加工光ELの特性とが異なるものとなるように複数の加工光ELを照射する例について説明した。しかしながら、塗装膜SFの表面上で二次元的に広がる照射領域EAに加工光ELを照射する光照射装置21a(
図18参照)又は光照射装置24a(
図21参照)を備える加工装置1aであっても、加工光ELのうち重複領域SAaに照射される光成分の強度(或いは、任意の特性、以下この段落において同じ)と加工光ELのうち非重複領域SAbに照射される光成分の強度とが異なるものとなるように加工光ELを照射してもよい。つまり、光照射装置21a又は24aを備える加工装置1aであっても、重複領域SAaにおける加工光ELの強度と非重複領域SAbにおける加工光ELの強度とが異なるものとなるように加工光ELを照射してもよい。この場合、加工装置1aは、例えば、重複領域SAaにおける加工光ELの強度と非重複領域SAbにおける加工光ELの強度とが異なるものとなるように、塗装膜SFの表面上における加工光ELの強度分布を調整してもよい。この場合であっても、上述した効果と同様の効果が享受可能である。
【0303】
(4-12)第12変形例
続いて、第12変形例の加工装置1lについて説明する。加工装置1lは、上述した加工装置1と同様に、各単位加工領域SA内でスキャン動作とステップ動作とを交互に繰り返すように、複数の加工光ELを照射する。つまり、加工装置1lは、塗装膜SFの表面上で複数の照射領域EAをY軸方向に沿って移動させるスキャン動作を、各スキャン動作が終了した後にステップ動作を行いながら繰り返すように、複数の加工光ELを照射している。第12変形例では、特に、第1のスキャン動作で複数の照射領域EAの少なくとも一つが移動する塗装膜SFの表面上の領域は、第1のスキャン動作に続けて行われる第2のスキャン動作で複数の照射領域EAの少なくとも他の一つが移動する塗装膜SFの表面上の領域と重複する。つまり、塗装膜SFの表面には、第1のスキャン動作で照射領域EAが設定され且つ第2のスキャン動作でも照射領域EAが設定される重複領域SAcと、第1のスキャン動作で照射領域EAが設定される一方で第2のスキャン動作で照射領域EAが設定されない非重複領域SAdとが含まれる。言い換えれば、複数の照射領域EAには、スキャン動作が複数回行われる間に他の照射領域EAと同じ位置に設定される重複照射領域EAcと、スキャン動作が複数回行われる間に他の照射領域EAと同じ位置に設定されることがない重複照射領域EAdとが含まれる。
【0304】
例えば、
図71(a)は、m(但し、mは、1以上の整数)回目のスキャン動作が行われている間に照射領域EA#1から照射領域EA#4が移動する塗装膜SFの表面上の領域を示している。
図71(b)は、m+1回目のスキャン動作が行われている間に照射領域EA#1から照射領域EA#4が移動する塗装膜SFの表面上の領域を示している。
図71(c)は、m+2回目のスキャン動作が行われている間に照射領域EA#1から照射領域EA#4が移動する塗装膜SFの表面上の領域を示している。
図71(a)から
図71(c)に示す例では、m回目のスキャン動作が行われている間に照射領域EA#4が移動する領域は、m+1回目のスキャン動作が行われている間に照射領域EA#1が移動する領域と重複する。同様に、m+1回目のスキャン動作が行われている間に照射領域EA#4が移動する領域は、m+2回目のスキャン動作が行われている間に照射領域EA#1が移動する領域と重複する。従って、
図71(a)から
図71(c)に示す例では、照射領域EA#1及びEA#4の夫々が、重複照射領域EAcに相当し、照射領域EA#2及びEA#3の夫々が、非重複照射領域EAdに相当する。
【0305】
尚、
図71(a)から
図71(c)に示すように、塗装膜SF上において、複数の照射領域EAは、スキャン動作中に複数の照射領域EAが移動するY軸方向に交差するX軸方向に沿って並んでいる。この場合、重複照射領域EAcは、複数の照射領域EAのうち、X軸方向における両端の照射領域EAを少なくとも含む。つまり、非重複照射領域EAdは、複数の照射領域EAのうち、X軸方向における両端の照射領域EAを少なくとも除く他の照射領域EAを含む。
【0306】
加工装置1lは、上述した第11変形例の加工装置1kと比較して、重複照射領域EAcに照射される加工光ELの特性と、非重複照射領域EAdに照射される加工光ELの特性とが異なるものとなるように複数の加工光ELを照射するという点で、上述した加工装置1とは異なる。というのも、重複照射領域EAcが設定される塗装膜SFの表面上の領域(つまり、重複領域SAc)には、一のスキャン動作中に加えて他のスキャン動作中にも加工光ELが重複して照射される可能性がある。一方で、非重複照射領域EAdが設定される塗装膜SFの表面上の領域(つまり、非重複領域SAd)には、一のスキャン動作中に加工光ELが照射される一方で、他のスキャン動作中に加工光ELが照射されることはない。このため、重複照射領域EAcに照射される加工光ELの特性と非重複照射領域EAdに照射される加工光ELの特性とが同じになると、重複照射領域EAcに照射された加工光ELによって形成される凹状構造CP1の特性と、非重複照射領域EAdに照射された加工光ELによって形成される凹状構造CP1の特性とが変わってしまう可能性がある。その結果、リブレット構造の特性が、本来必要としていた特性から乖離してしまう可能性がある。そこで、第12変形例では、加工装置1kは、重複照射領域EAcに照射される加工光ELの特性と、非重複照射領域EAdに照射される加工光ELの特性とが異なるものとなるように複数の加工光ELを照射する。尚、加工装置1lのその他の特徴は、加工装置1kのその他の特徴と同じであってもよい。
【0307】
上述したように、重複照射領域EAcと非重複照射領域EAdとが存在することで生ずる第12変形例の技術的課題は、重複領域SAaと非重複領域SAbとが存在することで生ずる第11変形例の技術的課題と実質的には同じである。従って、加工装置1lは、制御装置18の制御下で、加工装置1kと同様の観点から重複照射領域EAcに照射される加工光ELの特性と非重複照射領域EAdに照射される加工光ELの特性とが異なるものとなるように、複数の加工光ELを照射してもよい。例えば、制御装置18は、既に加工光ELが照射された塗装膜SF上の領域に設定されている重複照射領域EAcに照射される加工光ELの強度をゼロ又は非加工強度に設定し、未だ加工光ELが照射されていない塗装膜SF上の領域に設定されている重複照射領域EAc及び非重複照射領域EAdに照射される加工光ELの強度をゼロよりも大きい強度又は加工可能強度に設定してもよい。例えば、制御装置18は、既に加工光ELが照射された塗装膜SF上の領域に設定されている重複照射領域EAcに照射される加工光ELの照射時間をゼロ又は非加工時間に設定し、未だ加工光ELが照射されていない塗装膜SF上の領域に設定されている重複照射領域EAc及び非重複照射領域EAdに照射される加工光ELの照射時間をゼロよりも大きい時間又は加工可能時間に設定してもよい。例えば、制御装置18は、重複照射領域EAcに照射される加工光ELの強度が、非重複照射領域EAdに照射される加工光ELの強度よりも小さくなる(例えば、1/2倍になる)ように、光照射装置11を制御してもよい。例えば、制御装置18は、重複照射領域EAcに照射される加工光ELの照射時間が、非重複照射領域EAdに照射される加工光ELの照射時間よりも短くなる(例えば、1/2倍になる)ように、光照射装置11を制御してもよい。
【0308】
このような第12変形例の加工装置1lは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受しながら、スキャン動作が複数回行われる間に他の照射領域EAと同じ位置に設定される重複照射領域EAcが塗装膜SF上に設定される場合においても、リブレット構造を適切に形成することができる。
【0309】
尚、第12変形例においても、第11変形例と同様に、塗装膜SFの表面上で二次元的に広がる照射領域EAに加工光ELを照射する光照射装置21a(
図18参照)又は光照射装置24a(
図21参照)を備える加工装置1aは、複数回のスキャン動作によって複数回にわたって加工光ELが照射される重複領域SAcに照射される光成分の強度(或いは、任意の特性、以下この段落において同じ)と、複数回のスキャン動作によっても一度だけ加工光ELが照射される非重複領域SAdに照射される光成分の強度とが異なるものとなるように、加工光ELを照射してもよい。
【0310】
(4-13)第13変形例
続いて、
図72を参照しながら、第13変形例の加工装置1mについて説明する。
図72は、第13変形例の加工装置1mの全体構造を模式的に示す断面図である。
【0311】
図72に示すように、第13変形例の加工装置1mは、上述した加工装置1と比較して、回収装置21mと、気体放出装置22mとを更に備えているという点で異なる。加工装置1mのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同じであってもよい。尚、
図72は、図面の簡略化のために、制御装置18を図示省略しているが、加工装置1と同様に加工装置1mは制御装置18を備えている。
【0312】
回収装置21mは、回収装置21mから収容装置13に延びる管路である回収管211mを介して、収容空間SPに連結されている。回収管211mは、収容空間SP内に配置される管路である回収管212mに連結されている。回収管212mは、伸縮自在な管路であるが、伸縮自在な管路でなくてもよい。回収管212mは、収容空間SP内に配置される管路である回収管213mに連結されている。回収管213mの端部のうち回収管212mに連結されていない端部は、開放端である回収口214mとなっている。回収口214mは、収容空間SP内に配置されている。回収口214mは、塗装膜SFの表面に向けられているが、塗装膜SFの表面に向けられていなくてもよい。
【0313】
回収装置21mは、回収口214mを介して(更には、回収管211mから213mを介して)、収容空間SPのうちの少なくとも一部から物質を回収可能である。例えば、回収装置21mは、収容空間SPのうちの少なくとも一部から物質を吸引する(例えば、収容空間SPのうちの少なくとも一部を排気して気体と共に物質を吸引する)ことで、物質を回収してもよい。この場合には、回収口は、吸引口と称してもよい。その結果、回収装置21mは、収容空間SPのうちの少なくとも一部の空間から物質を回収して、収容空間SPの内部から収容空間SPの外部に物質を排出可能である。例えば、上述したように、収容空間SP内には、加工光ELの照射によって発生した不要物質(特に、加工対象物S及び塗装膜SFの少なくとも一方から発生した不要物質)が存在する。この場合、回収装置21mは、加工光ELの照射によって発生した不要物質を回収してもよい。以下の説明では、説明の便宜上、回収装置21mは、加工光ELの照射によって発生した不要物質を回収するものとする。回収装置21mが収容空間SPから回収した不要物質は、フィルタ215mを介して加工装置1mの外部へと排出される。フィルタ215mは、不要物質を吸着する。尚、フィルタ215mは、着脱可能であってもよいし、交換可能であってもよい。
【0314】
上述したように、不要物質が加工光ELの光路上に存在する場合、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響を与える可能性がある。このため、回収装置21mは、不要物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響を低減するという観点から設定される収容空間SP内の回収対象領域から、不要物質を回収してもよい。尚、回収対象領域から不要物質を回収するために、回収口214mは、回収対象領域内又は回収対象領域の近傍に配置されていてもよい。但し、回収口214mが加工光ELの光路に配置されると、塗装膜SFに対する加工光ELの照射が回収口214mによって妨げられる可能性がある。このため、回収口214mは、加工光ELの光路から離れた位置に配置されてもよい。
【0315】
例えば、回収対象領域は、光照射装置11の光学系112の終端光学素子と塗装膜SFとの間の加工光ELの光路を含む空間の少なくとも一部を含んでいてもよい。なぜならば、終端光学素子と塗装膜SFとの間の加工光ELの光路を含む空間から不要物質が回収されれば、不要物質が加工光ELの光路上に存在しにくくなるため、不要物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響が低減される可能性が高いからである。この場合、回収装置21mは、終端光学素子と塗装膜SFとの間の加工光ELの光路を含む空間の少なくとも一部から不要物質を回収してもよい。
【0316】
更に、上述したように、光照射装置11は、塗装膜SFに加工光ELを照射する際に、ガルバノミラー1122を用いて加工光ELを偏向する。このため、ガルバノミラー1122によって偏向される加工光ELの様子を示す断面図である
図73に示すように、光照射装置11が加工光ELを照射可能な領域(つまり、偏向角度が異なる複数の加工光ELの光路を包含する領域)である照射可能領域ELAは、光照射装置11が射出した加工光ELが通過する可能性がある一定の広がりを有する領域(典型的には、空間)となる。尚、
図73では、照射可能領域ELAを、ハッチングされた領域として示している。従って、回収対象領域は、照射可能領域ELAの少なくとも一部を含んでいてもよい。なぜならば、照射可能領域ELAから不要物質が回収されれば、不要物質が加工光ELの光路上に存在しにくくなるため、不要物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響が低減される可能性が高いからである。この場合、回収装置21mは、照射可能領域ELAの少なくとも一部から不要物質を回収してもよい。
【0317】
更に、塗装膜SFの表面に加工光ELが照射されることで不要物質が発生することを考慮すれば、不要物質は、主として、塗装膜SFの表面から発生する。その結果、塗装膜SFの表面から発生した不要物質が、加工光ELの光路に侵入する可能性がある。このため、回収対象領域は、塗装膜SFの表面の少なくとも一部を含んでいてもよい。なぜならば、不要物質の発生源である塗装膜SFの表面の少なくとも一部から不要物質が回収されれば、不要物質が加工光ELの光路に侵入しにくくなるため、不要物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響が低減される可能性が高いからである。この場合、回収装置21mは、塗装膜SFの表面の少なくとも一部から不要物質を回収してもよい。一例として、回収対象領域は、塗装膜SFの表面と照射可能領域ELAとが交差する部分の少なくとも一部を含んでいてもよい。
【0318】
特に、加工光ELが塗装膜SFの表面に設定される照射領域EAに照射されることを考慮すれば、不要物質は、主として、塗装膜SFの表面上において照射領域EAが設定される位置から発生する。このため、回収対象領域は、塗装膜SFの表面上において照射領域EAが設定される位置を含む領域であってもよい。この場合、回収装置21mは、塗装膜SFの表面のうちの照射領域EAが設定される位置(或いは、塗装膜SFの表面のうちの照射領域EAが設定される位置を含む領域)から不要物質を回収してもよい。
【0319】
尚、光照射装置11は、少なくとも塗装膜SFの表面に対する光照射装置11の位置及び光照射装置11が備える光学系112(特に、ガルバノミラー1122)の状態に基づいて定まる塗装膜SFの表面上の目標照射位置Etgtに対して、加工光ELを照射可能である。具体的には、光照射装置11が塗装膜SFに対して既に加工光ELを照射している場合には、光照射装置11は、目標照射位置Etgtに対して(つまり、目標照射位置Etgtに設定される照射領域EAに対して)、加工光ELを照射している。一方で、光照射装置11が塗装膜SFに対して未だ加工光ELを照射していない(例えば、光源系111が加工光ELを射出していない)場合には、光照射装置11は、目標照射位置Etgtに対して加工光ELを照射可能な状態にある。従って、塗装膜SFの表面上で照射領域EAが設定される位置は、目標照射位置Etgtと等価であると言える。このため、回収対象領域は、目標照射位置Etgtを含む領域であってもよい。この場合、回収装置21mは、目標照射位置Etgtから(或いは、目標照射位置Etgtを含む領域から)不要物質を回収してもよい。
【0320】
上述したように、光照射装置11は、駆動系12により、塗装膜SFの表面に対して移動可能である。このため、光照射装置11の移動に伴って、回収対象領域(特に、加工光ELの光路を含む空間、照射可能領域ELA及び目標照射位置Etgtのそれぞれ)もまた、塗装膜SFの表面に対して移動する。更には、光照射装置11の移動に限らず、加工光ELを偏向するガルバノミラー1122によって、目標照射位置Etgtについてもまた、塗装膜SFの表面に対して移動する。このため、回収口214mは、塗装膜SFの表面に対する回収対象領域の移動に合わせて、塗装膜SFの表面に対して移動可能であってもよい。例えば、回収口214mは、塗装膜SFの表面に対して移動し得る回収対象領域から不要物質を回収することができるように、塗装膜SFの表面に対して移動可能であってもよい。例えば、回収口214mは、塗装膜SFの表面に対して移動し得る回収対象領域に追従する(特に、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って追従する)ように、塗装膜SFの表面に対して移動可能であってもよい。
【0321】
光照射装置11の移動に起因して回収対象領域が移動することを考慮すれば、回収対象領域は、光照射装置11と共に移動する可能性が高い。このため、回収口214mは、塗装膜SFの表面に対する光照射装置11の移動に合わせて、塗装膜SFの表面に対して移動可能であってもよい。例えば、回収口214mは、塗装膜SFの表面に対して移動し得る光照射装置11に追従する(特に、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って追従する)ように、塗装膜SFの表面に対して移動可能であってもよい。
【0322】
回収口214mを塗装膜SFの表面に対して移動させるために、回収管213mが塗装膜SFの表面に対して移動可能であってもよい。例えば、回収管213mをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って移動させる駆動系を加工装置1mが備えていてもよい。或いは、回収管213mの少なくとも一部が光照射装置11によって支持されれば、回収管213m(更には、回収管213mの端部である回収口214m)は、光照射装置11と共に(更には、回収対象領域と共に)移動可能になる。尚、塗装膜SFの表面に対して移動可能な回収管213mに連結される回収管212mが伸縮自在(特に、回収管213mの移動方向に沿って伸縮自在)であれば、回収管213mの移動によって回収管213mが回収管212mから脱落する(その結果、排気装置21mが回収口214mを介して不要物質を回収することができなくなる)ことはない。
【0323】
上述したように、不要物質の一例として、塗装膜SFの蒸気(つまり、塗装膜SFの蒸気が凝集してできた微細な粒子を含む気体であり、いわゆるヒューム)があげられる。この場合、不要物質は、その発生源(つまり、塗装膜SFの表面上で照射領域EAが設定される位置であり、目標照射位置Etgt)から回収口214mに向けて流れ込むことになる。このように不要物質が発生源から回収口214mに向けて流れ込むように回収される場合には、回収口214mと不要物質の発生源との位置関係によっては、発生源から回収口214mに向けて流れ込む不要物質の少なくとも一部が、加工光ELの光路上に存在してしまうという技術的問題が生ずる可能性がある。回収口214mと不要物質の発生源との位置関係によっては、発生源から回収口214mに向けて流れ込む不要物質の少なくとも一部が、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響を与えてしまうという技術的問題が生ずる可能性がある。以下、この技術的問題について、
図74(a)及び
図74(b)を参照しながら説明する。
図74(a)及び
図74(b)のそれぞれは、スキャン動作によって照射領域EA(更には、目標照射位置Etgt)が移動するY軸方向に沿って、照射領域EAから(つまり、目標照射位置Etgt)から離れた位置に配置される回収口214mを示す平面図である。
【0324】
図74(a)は、スキャン動作によって目標照射位置Etgtが-Y側から+Y側に向かって移動する状況下で、回収口214mが、目標照射位置Etgtから+Y側に向かって(つまり、スキャン動作によって目標照射位置Etgtが移動する向きと同じ向きであり、目標照射位置Etgtの移動方向の前方側に向かって)離れており且つY軸方向に直交するX軸方向に関して目標照射位置Etgtと同じ位置に配置される例を示している。この場合には、
図74(a)に示すように、不要物質は、その発生源(つまり、目標照射位置Etgt)から、発生源よりも+Y側に位置する回収口214mに向かって流れる。つまり、不要物質は、その発生源(つまり、目標照射位置Etgt)から+Y側に向かって流れる。そうすると、スキャン動作によって目標照射位置Etgtが+Y側に向かって移動することを考慮すれば、不要物質の少なくとも一部は、これから照射される加工光ELの光路の少なくとも一部に向かって流れてしまう可能性がある。その結果、加工光ELの少なくとも一部が不要物質によって遮られてしまい、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響が出る可能性がある。
【0325】
また、
図74(b)は、スキャン動作によって目標照射位置Etgtが-Y側から+Y側に向かって移動する状況下で、回収口214mが、目標照射位置Etgtから-Y側に向かって(つまり、スキャン動作によって目標照射位置Etgtが移動する向きと逆向きであり、目標照射位置Etgtの移動方向の後方側に向かって)離れており且つY軸方向に直交するX軸方向に関して目標照射位置Etgtと同じ位置に配置される例を示している。この場合には、
図74(b)に示すように、不要物質は、その発生源(つまり、目標照射位置Etgt)から、発生源よりも-Y側に位置する回収口214mに向かって流れる。つまり、不要物質は、その発生源(つまり、目標照射位置Etgt)から-Y側に向かって流れる。そうすると、スキャン動作とステップ動作とが交互に行われる(つまり、目標照射位置Etgtが+Y側に向かって移動する動作と+X側に向かって移動する動作とが繰り返される)ことを考慮すれば、不要物質の少なくとも一部は、今行っているスキャン動作の次に行われるスキャン動作で目標照射位置Etgtが移動する領域の上方の空間に向かって流れてしまう可能性がある。つまり、不要物質の少なくとも一部は、これから照射される加工光ELの光路の少なくとも一部に向かって流れてしまう可能性がある。その結果、加工光ELの少なくとも一部が不要物質によって遮られてしまい、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響が出る可能性がある。
【0326】
従って、スキャン動作によって照射領域EA(更には、目標照射位置Etgt)が移動するY軸方向に直交するX軸方向に関して、回収口214mと目標照射位置Etgtとが離れていない(言い換えれば、同じ位置に位置する)場合には、加工光ELの少なくとも一部が不要物質によって遮られてしまい、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響が出る可能性がある。
【0327】
このような技術的問題を解決するために、第13変形例では、回収口214mは、スキャン動作によって目標照射位置Etgtが移動するY軸方向に交差し且つXY平面に沿った方向に関して、目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されていてもよい。尚、第13変形例における「ある軸方向に関してXからYが離れた」状態は、少なくともある軸方向におけるXの位置とある軸方向におけるYの位置とが異なる状態を意味している。従って、ある軸方向に関してXからYが離れていても、ある軸に交差する別の軸方向におけるXの位置と別の軸方向におけるYの位置とは同じになっていてもよいし、異なっていてもよい。例えば、「Y軸方向に関して目標照射位置Etgtから回収口214mが離れた」状態は、少なくともY軸方向における目標照射位置EtgtとY軸方向における回収口214mの位置とが異なる状態を意味している。このため、Y軸方向に関して目標照射位置Etgtから回収口214mが離れていても、X軸方向における目標照射位置EtgtとX軸方向における回収口214mの位置とは同じになっていてもよいし、異なっていてもよい。同様に、Y軸方向に関して目標照射位置Etgtから回収口214mが離れていても、Z軸方向における目標照射位置EtgtとZ軸方向における回収口214mの位置とは同じになっていてもよいし、異なっていてもよい。
【0328】
例えば、第13変形例における回収口214mと目標照射位置Etgtとの位置関係の第1例を示す平面図である
図75に示すように、回収口214mは、Y軸方向に直交し且つXY平面に沿ったX軸方向に沿って、目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されていてもよい。つまり、回収口214mは、X軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れており且つY軸方向に関して目標照射位置Etgtと同じ位置に配置されていてもよい。或いは、例えば、第13変形例における回収口214mと目標照射位置Etgtとの位置関係の第2例を示す平面図である
図76に示すように、回収口214mは、Y軸方向に直交しないものの交差し且つXY平面に沿った方向(つまり、X軸方向及びY軸方向の双方に交差し且つXY平面に沿った方向)に沿って、目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されていてもよい。つまり、回収口214mは、X軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れており且つY軸方向に関しても目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されていてもよい。いずれの例においても、X軸方向に関して回収口214mが目標照射位置Etgtと同じ位置に配置される場合と比較して、不要物質の少なくとも一部が、目標照射位置Etgtの移動先に向かって流れてしまう可能性が小さくなる。つまり、不要物質の少なくとも一部が、これから照射される加工光ELの光路の少なくとも一部に向かって流れてしまう可能性が小さくなる。その結果、加工光ELの少なくとも一部が不要物質によって遮られてしまい、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響が出る可能性が小さくなる。つまり、不要物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響が低減される。
【0329】
更に、
図75及び
図76に示すように、ステップ動作による目標照射位置Etgtの移動方向であるX軸方向に関して、回収口214mは、目標照射位置Etgtから、ステップ動作による目標照射位置Etgtの移動方向の後方側(
図75及び
図76に示す例では、-X側)に向かって離れた位置に配置されていてもよい。この場合、X軸方向に関して、ステップ動作による目標照射位置Etgtの移動方向の前方側(
図75及び
図76に示す例では、+X側)に向かって離れた位置に回収口214mが配置される場合と比較して、不要物質の少なくとも一部が、これから照射される加工光ELの光路の少なくとも一部に向かって流れてしまう可能性がより一層小さくなる。言い換えれば、不要物質の少なくとも一部が、既に加工光ELが照射された塗装膜SFの表面上の領域(つまり、これ以上加工光ELが照射されない領域)の上方の空間に向かって流れる可能性が高くなる。その結果、加工光ELの少なくとも一部が不要物質によって遮られてしまい、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響が出る可能性がより一層小さくなる。つまり、不要物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響がより一層低減される。
【0330】
但し、上述したように、回収口214mが加工光ELの光路に配置されると、塗装膜SFに対する加工光ELの照射が回収口214mによって妨げられる可能性がある。このため、回収口214mは、Y軸方向に交差し且つXY平面に沿った方向に関して、加工光ELの光路から離れた位置に配置されてもよい。例えば、第13変形例における回収口214mと目標照射位置Etgtとの位置関係の第3例を示す平面図である
図77に示すように、回収口214mは、Y軸方向に交差し且つXY平面に沿った方向に関して、光照射装置11が加工光ELを照射可能な領域(つまり、偏向角度が異なる複数の加工光ELの光路を包含する領域)である照射可能領域ELAから離れた位置に配置されてもよい。例えば、回収口214mは、Y軸方向に直交し且つXY平面に沿ったX軸方向に沿って、照射可能領域ELAから離れた位置に配置されていてもよい。つまり、回収口214mは、X軸方向に関して照射可能領域ELAから離れており且つY軸方向に関して照射可能領域ELAと同じ位置に配置されていてもよい。或いは、例えば、回収口214mは、Y軸方向に直交しないものの交差し且つXY平面に沿った方向(つまり、X軸方向及びY軸方向の双方に交差し且つXY平面に沿った方向)に沿って、照射可能領域ELAから離れた位置に配置されていてもよい。つまり、回収口214mは、X軸方向に関して照射可能領域ELAから離れており且つY軸方向に関しても照射可能領域ELAから離れた位置に配置されていてもよい。
【0331】
回収装置21mは、収容空間SP内の不要物質を検出する検出装置135の検出結果に基づいて、不要物質の回収態様を制御してもよい。また、回収装置21mは、加工光ELを照射していない期間の少なくとも一部で不要物質を回収しなくてもよい。回収装置21mは、収容空間SP内の不要物質を検出する検出装置135の検出結果に基づいて、不要物質の回収態様を変更してもよい。例えば、回収装置21mは、収容空間SP内に不要物質が存在している期間の少なくとも一部において、収容空間SPの少なくとも一部から不要物質を回収してもよい。例えば、回収装置21mは、収容空間SP内に不要物質が存在していない期間の少なくとも一部において、収容空間SPの少なくとも一部から不要物質を回収しなくてもよい。例えば、回収装置21mは、収容空間SP内に第1濃度以上の不要物質が収容空間SP内に存在している場合には、収容空間SPの少なくとも一部から不要物質を回収してもよい。例えば、回収装置21mは、第2濃度(但し、第2濃度は、第1濃度以下であってもよい)以下の不要物質しか収容空間SP内に存在していない場合には、収容空間SPの少なくとも一部から不要物質を回収しなくてもよい。例えば、回収装置21mは、収容空間SP内に存在する不要物質の濃度が高くなればなるほど、単位時間当たりに回収する不要物質の量が多くしてもよい。つまり、回収装置21mは、収容空間SP内に存在する不要物質の濃度が高くなればなるほど、不要物質の回収速度を高くしてもよい。また、回収装置21mは、加工装置1全体を移動させるときなど収容空間SPを開放するときには人体や環境への影響をより低減させるために、開放に先立って不要物質の回収速度を高めてもよい。
【0332】
再び
図72において、気体放出装置22mは、気体放出装置22mから収容装置13に延びる管路である放出管221mを介して、収容空間SPに連結されている。放出管221mは、収容空間SP内に配置される管路である放出管222mに連結されている。放出管222mは、伸縮自在な管路であるが、伸縮自在な管路でなくてもよい。放出管222mは、収容空間SP内に配置される管路である放出管223mに連結されている。放出管223mの端部のうち放出管222mに連結されていない端部は、開放端である放出口224mとなっている。放出口224mは、収容空間SP内に配置されている。放出口224mは、塗装膜SFの表面に向けられているが、塗装膜SFの表面に向けられていなくてもよい。
【0333】
気体放出装置22mは、放出口224mを介して(更には、放出管221mから223mを介して)、収容空間SPのうちの少なくとも一部に気体を放出可能である。収容空間SPに供給する気体の一例としては、大気、CDA(クリーン・ドライ・エア)及び不活性ガスの少なくとも一つがあげられる。不活性ガスの一例として、窒素ガスがあげられる。気体放出装置22mが放出する気体は、気体供給装置17が供給する気体と同一であってもよい。この場合、気体放出装置22mと気体供給装置17とは、気体源を共有してもよい。但し、気体放出装置22mが放出する気体は、気体供給装置17が供給する気体と異なっていてもよい。尚、収容空間SPに放出された気体の少なくとも一部は、回収装置21mによって回収されてもよい。更には、収容空間SPに放出された気体の少なくとも一部は、排気装置16によって吸引されてもよい。
【0334】
上述したように、不要物質が加工光ELの光路上に存在する場合、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響を与える可能性がある。このため、気体放出装置22mは、不要物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響を低減するという観点から設定される収容空間SP内の放出対象領域に向けて気体を供給してもよい。尚、放出対象領域は、上述した回収対象領域と異なっていてもよいし、部分的に重複していてもよいし、一致していてもよい。放出対象領域は、典型的には、不要物質が存在する可能性がある領域を含んでいてもよい。この場合、放出対象領域に向けて気体を放出することは、不要物質に向けて気体を放出することと等価である。尚、放出対象領域に気体を放出するために、放出口224mは、放出対象領域内又は放出対象領域の近傍に配置されていてもよい。但し、放出口224mが加工光ELの光路に配置されると、塗装膜SFに対する加工光ELの照射が放出口224mによって妨げられる可能性がある。このため、放出口224mは、加工光ELの光路から離れた位置に配置されてもよい。
【0335】
例えば、放出対象領域は、光照射装置11の光学系112の終端光学素子と塗装膜SFとの間の加工光ELの光路を含む空間の少なくとも一部を含んでいてもよい。なぜならば、終端光学素子と塗装膜SFとの間の加工光ELの光路を含む空間に気体が放出されると、当該空間から不要物質が吹き飛ばされる及び/又は当該空間への不要物質の侵入が抑制され、不要物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響が低減される可能性が高いからである。この場合、気体放出装置22mは、終端光学素子と塗装膜SFとの間の加工光ELの光路を含む空間の少なくとも一部に気体を放出してもよい。
【0336】
更に、上述したように、光照射装置11が加工光ELを照射可能な領域である照射可能領域ELAは、光照射装置11が射出した加工光ELが通過する可能性がある一定の広がりを有する領域(典型的には、空間)となる。従って、放出対象領域は、照射可能領域ELAの少なくとも一部を含んでいてもよい。なぜならば、照射可能領域ELAに気体が放出されると、照射可能領域ELAから不要物質が吹き飛ばされる及び/又は照射可能領域ELAへの不要物質の侵入が抑制され、不要物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響が低減される可能性が高いからである。この場合、気体放出装置22mは、照射可能領域ELAの少なくとも一部に気体を放出してもよい。
【0337】
更に、上述したように不要物質が主として塗装膜SFの表面から発生するため、放出対象領域は、塗装膜SFの表面の少なくとも一部を含んでいてもよい。なぜならば、不要物質の発生源である塗装膜SFの表面の少なくとも一部に気体が放出されれば、発生源において発生した不要物質が吹き飛ばされ、不要物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響が低減される可能性が高いからである。この場合、気体放出装置22mは、塗装膜SFの表面の少なくとも一部に気体を放出してもよい。一例として、放出対象領域は、塗装膜SFの表面と照射可能領域ELAとが交差する部分の少なくとも一部を含んでいてもよい。
【0338】
特に、不要物質が主として塗装膜SFの表面上において照射領域EAが設定される位置(つまり、目標照射位置Etgt)から発生するため、放出対象領域は、塗装膜SFの表面上において照射領域EAが設定される位置(つまり、目標照射位置Etgt)を含む領域であってもよい。この場合、気体放出装置22mは、塗装膜SFの表面のうちの照射領域EAが設定される位置(つまり、目標照射位置Etgt)に気体を放出してもよい。気体放出装置22mは、塗装膜SFの表面のうちの照射領域EAが設定される位置(つまり、目標照射位置Etgt)を含む領域に気体を放出してもよい。
【0339】
上述したように、光照射装置11は、駆動系12により、塗装膜SFの表面に対して移動可能である。このため、光照射装置11の移動に伴って、放出対象領域(特に、加工光ELの光路を含む空間、照射可能領域ELA及び目標照射位置Etgtのそれぞれ)もまた、塗装膜SFの表面に対して移動する。更には、光照射装置11の移動に限らず、加工光ELを偏向するガルバノミラー1122によって、目標照射位置Etgt(更には、塗装膜SFの表面上で照射領域EAが設定される位置)についてもまた、塗装膜SFの表面に対して移動する。このため、放出口224mは、塗装膜SFの表面に対する放出対象領域の移動に合わせて、塗装膜SFの表面に対して移動可能であってもよい。例えば、放出口224mは、塗装膜SFの表面に対して移動し得る放出対象領域に対して気体を放出することができるように、塗装膜SFの表面に対して移動可能であってもよい。例えば、放出口224mは、塗装膜SFの表面に対して移動し得る放出対象領域に追従する(特に、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って追従する)ように、塗装膜SFの表面に対して移動可能であってもよい。
【0340】
光照射装置11の移動に起因して放出対象領域が移動することを考慮すれば、放出対象領域は、光照射装置11と共に移動する可能性が高い。このため、放出口224mは、塗装膜SFの表面に対する光照射装置11の移動に合わせて、塗装膜SFの表面に対して移動可能であってもよい。例えば、放出口224mは、塗装膜SFの表面に対して移動し得る光照射装置11に追従する(特に、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に沿って追従する)ように、塗装膜SFの表面に対して移動可能であってもよい。
【0341】
放出口224mを塗装膜SFの表面に対して移動させるために、放出管223mが塗装膜SFの表面に対して移動可能であってもよい。例えば、放出管223mをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って移動させる駆動系を加工装置1mが備えていてもよい。或いは、放出管223mの少なくとも一部が光照射装置11によって支持されれば、放出管223m(更には、放出管223mの端部である放出口224m)は、光照射装置11と共に(更には、放出対象領域と共に)移動可能になる。尚、塗装膜SFの表面に対して移動可能な放出管223mに連結される放出管222mが伸縮自在(特に、放出管223mの移動方向に沿って伸縮自在)であれば、放出管223mの移動によって放出管223mが放出管222mから脱落する(その結果、気体放出装置22mが放出口224mを介して気体を放出することができなくなる)ことはない。
【0342】
上述したように、不要物質の一例として、塗装膜SFの蒸気(いわゆるヒューム)があげられる。この場合、不要物質は、その発生源(つまり、塗装膜SFの表面上で照射領域EAが設定される位置であり、目標照射位置Etgt)から、放出口224mが気体を放出する方向に向けて流れ出すことになる。つまり、不要物質は、その発生源から、放出口224mから放出される気体の流れに乗って流れ出すことになる。このように気体放出装置22mが気体を放出して不要物質が発生源から流れ出す場合には、放出口224mと不要物質の発生源との位置関係によっては、発生源から流れ出す不要物質の少なくとも一部が、加工光ELの光路上に存在してしまうという技術的問題が生ずる可能性がある。放出口224mと不要物質の発生源との位置関係によっては、発生源から流れ出す不要物質の少なくとも一部が、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響を与えてしまうという技術的問題が生ずる可能性がある。以下、この技術的問題について、
図78(a)及び
図78(b)を参照しながら説明する。
図78(a)及び
図78(b)のそれぞれは、スキャン動作によって照射領域EA(更には、目標照射位置Etgt)が移動するY軸方向に沿って、照射領域EAから(つまり、目標照射位置Etgt)から離れた位置に配置される放出口224mを示す平面図である。
【0343】
図78(a)は、スキャン動作によって目標照射位置Etgtが-Y側から+Y側に向かって移動する状況下で、放出口224mが、目標照射位置Etgtから-Y側に向かって(つまり、スキャン動作によって目標照射位置Etgtが移動する向きと逆向きであり、目標照射位置Etgtの移動方向の後方側に向かって)離れており且つY軸方向に直交するX軸方向に関して目標照射位置Etgtと同じ位置に配置される例を示している。この場合には、
図78(a)に示すように、不要物質の発生源よりも-Y側に位置する放出口224mから発生源に向けて(或いは、発生源から発生した不要物質に向けて)気体が放出される。つまり、不要物質は、その発生源(つまり、目標照射位置Etgt)から+Y側に向かって流れる。そうすると、スキャン動作によって目標照射位置Etgtが+Y側に向かって移動することを考慮すれば、不要物質の少なくとも一部は、これから照射される加工光ELの光路の少なくとも一部に向かって流れてしまう可能性がある。その結果、加工光ELの少なくとも一部が不要物質によって遮られてしまい、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響が出る可能性がある。
【0344】
また、
図78(b)は、スキャン動作によって目標照射位置Etgtが-Y側から+Y側に向かって移動する状況下で、放出口224mが目標照射位置Etgtから+Y側に向かって(つまり、スキャン動作によって目標照射位置Etgtが移動する向きと同じ向きであり、目標照射位置Etgtの移動方向の前方側に向かって)離れており且つY軸方向に直交するX軸方向に関して目標照射位置Etgtと同じ位置に配置される例を示している。この場合には、
図78(b)に示すように、不要物質の発生源よりも+Y側に位置する放出口224mから発生源に向けて(或いは、発生源から発生した不要物質に向けて)気体が放出される。つまり、不要物質は、その発生源(つまり、目標照射位置Etgt)から-Y側に向かって流れる。そうすると、スキャン動作とステップ動作とが交互に行われる(つまり、目標照射位置Etgtが+Y側に向かって移動する動作と+X側に向かって移動する動作とが繰り返される)ことを考慮すれば、不要物質の少なくとも一部は、今行っているスキャン動作の次に行われるスキャン動作で目標照射位置Etgtが移動する領域の上方の空間に向かって流れてしまう可能性がある。つまり、不要物質の少なくとも一部は、これから照射される加工光ELの光路の少なくとも一部に向かって流れてしまう可能性がある。その結果、加工光ELの少なくとも一部が不要物質によって遮られてしまい、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響が出る可能性がある。
【0345】
従って、スキャン動作によって照射領域EA(更には、目標照射位置Etgt)が移動するY軸方向に直交するX軸方向に関して、放出口224mと目標照射位置Etgtとが離れていない(言い換えれば、同じ位置に位置する)場合には、加工光ELの少なくとも一部が不要物質によって遮られてしまい、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響が出る可能性がある。
【0346】
このような技術的問題を解決するために、第13変形例では、放出口224mは、スキャン動作によって目標照射位置Etgtが移動するY軸方向に交差し且つXY平面に沿った方向に関して、目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されていてもよい。例えば、第13変形例における放出口224mと目標照射位置Etgtとの位置関係の第1例を示す平面図である
図79に示すように、放出口224mは、Y軸方向に直交し且つXY平面に沿ったX軸方向に沿って、目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されていてもよい。つまり、放出口224mは、X軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れており且つY軸方向に関して目標照射位置Etgtと同じ位置に配置されていてもよい。或いは、例えば、第13変形例における放出口224mと目標照射位置Etgtとの位置関係の第2例を示す平面図である
図80に示すように、放出口224mは、Y軸方向に直交しないものの交差し且つXY平面に沿った方向(つまり、X軸方向及びY軸方向の双方に交差し且つXY平面に沿った方向)に沿って、目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されていてもよい。つまり、放出口224mは、X軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れており且つY軸方向に関しても目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されていてもよい。いずれの例においても、X軸方向に関して放出口224mが目標照射位置Etgtと同じ位置に配置される場合と比較して、不要物質の少なくとも一部が、目標照射位置Etgtの移動先に向かって流れてしまう可能性が小さくなる。つまり、不要物質の少なくとも一部が、これから照射される加工光ELの光路の少なくとも一部に向かって流れてしまう可能性が小さくなる。その結果、加工光ELの少なくとも一部が不要物質によって遮られてしまい、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響が出る可能性が小さくなる。つまり、不要物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響が低減されるからである。
【0347】
更に、
図79及び
図80に示すように、ステップ動作による目標照射位置Etgtの移動方向であるX軸方向に関して、放出口224mは、目標照射位置Etgtから、ステップ動作による目標照射位置Etgtの移動方向の前方側(
図79及び
図80に示す例では、+X側)に向かって離れた位置に配置されていてもよい。この場合、X軸方向に関して、ステップ動作による目標照射位置Etgtの移動方向の後方側(
図79及び
図80に示す例では、-X側)に向かって離れた位置に放出口224mが配置される場合と比較して、不要物質の少なくとも一部が、これから照射される加工光ELの光路の少なくとも一部に向かって流れてしまう可能性がより一層小さくなる。言い換えれば、不要物質の少なくとも一部が、既に加工光ELが照射された塗装膜SFの表面上の領域(つまり、これ以上加工光ELが照射されない領域)の上方の空間に向かって流れる可能性が高くなる。その結果、加工光ELの少なくとも一部が不要物質によって遮られてしまい、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響が出る可能性がより一層小さくなる。つまり、不要物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響がより一層低減される。
【0348】
但し、上述したように、放出口224mが加工光ELの光路に配置されると、塗装膜SFに対する加工光ELの照射が放出口224mによって妨げられる可能性がある。このため、放出口224mは、Y軸方向に交差し且つXY平面に沿った方向に関して、加工光ELの光路から離れた位置に配置されてもよい。例えば、第13変形例における放出口224mと目標照射位置Etgtとの位置関係の第3例を示す平面図である
図81に示すように、放出口224mは、Y軸方向に交差し且つXY平面に沿った方向に関して、光照射装置11が加工光ELを照射可能な領域(つまり、偏向角度が異なる複数の加工光ELの光路を包含する領域)である照射可能領域ELAから離れた位置に配置されてもよい。例えば、放出口224mは、Y軸方向に直交し且つXY平面に沿ったX軸方向に沿って、照射可能領域ELAから離れた位置に配置されていてもよい。つまり、放出口224mは、X軸方向に関して照射可能領域ELAから離れており且つY軸方向に関して照射可能領域ELAと同じ位置に配置されていてもよい。或いは、例えば、放出口224mは、Y軸方向に直交しないものの交差し且つXY平面に沿った方向(つまり、X軸方向及びY軸方向の双方に交差し且つXY平面に沿った方向)に沿って、照射可能領域ELAから離れた位置に配置されていてもよい。つまり、放出口224mは、X軸方向に関して照射可能領域ELAから離れており且つY軸方向に関しても照射可能領域ELAから離れた位置に配置されていてもよい。
【0349】
尚、目標照射位置Etgtから放出口224mが離れる方向(つまり、目標照射位置Etgtから放出口224mに延びる仮想的な軸の延伸方向)は、目標照射位置Etgtから回収口214mが離れる方向(つまり、目標照射位置Etgtから回収口214mに延びる仮想的な軸の延伸方向)と平行であってもよい。例えば、第13変形例における回収口214mと放出口224mとの位置関係の一例を示す平面図である
図82(a)及び第13変形例における回収口214mと放出口224mとの位置関係の一例を示す断面図である
図82(b)に示すように、X軸方向に関して回収口214m及び放出口224mの双方が目標照射位置Etgtから離れており且つY軸方向に関して回収口214m及び放出口224mが同じ位置に位置する状態は、目標照射位置Etgtから放出口224mが離れる方向と、目標照射位置Etgtから回収口214mが離れる方向とが平行になる状態の一例である。或いは、目標照射位置Etgtから放出口224mが離れる方向は、目標照射位置Etgtから回収口214mが離れる方向と交差していてもよい。つまり、目標照射位置Etgtから放出口224mが離れる方向は、目標照射位置Etgtから回収口214mが離れる方向と非平行であってもよい。例えば、X軸方向に関して回収口214mが目標照射位置Etgtから離れており、Y軸方向に関して回収口214mが目標照射位置Etgtと同じ位置に位置し、且つ、X軸方向及びY軸方向の双方に関して放出口224mが目標照射位置Etgtから離れている状態は(
図75及び
図80参照)、目標照射位置Etgtから放出口224mが離れる方向と、目標照射位置Etgtから回収口214mが離れる方向とが交差する状態の一例である。
【0350】
また、
図82(a)及び
図82(b)に示すように、目標照射位置Etgtに照射される加工光ELの光路が回収口214mと放出口224mとの間に位置するように、回収口214m及び放出口224mが配置されていてもよい。照射可能領域ELAの少なくとも一部が回収口214mと放出口224mとの間に位置するように、回収口214m及び放出口224mが配置されていてもよい。目標照射位置Etgtの上方の空間が回収口214mと放出口224mとの間に位置するように、回収口214m及び放出口224mが配置されていてもよい。この場合、放出口224mから放出された気体によって発生源から流れ出た不要物質が、回収口214mによって相対的に円滑に回収可能となる。
【0351】
また、
図82(a)及び
図82(b)に示すように、目標照射位置Etgtに照射される加工光ELの光路と回収口214mとの間の距離D1(特に、目標照射位置Etgtから回収口214mが離れる方向に沿った距離D1)と、目標照射位置Etgtに照射される加工光ELの光路と放出口224mとの間の距離D2(特に、目標照射位置Etgtから放出口224mが離れる方向に沿った距離D2)とが異なっていてもよい。例えば、距離D1は、距離D2よりも長くてもよい。この場合、放出口224mから放出された気体によって発生源から流れ出た不要物質が、回収口214mによって相対的に円滑に回収可能となる。但し、距離D1が距離D2よりも短くてもよいし、距離D1が距離D2と同じであってもよい。尚、加工光ELの光路と回収口214mとの間の距離は、目標照射位置EtgtからZ軸に沿って延びる仮想的な軸と回収口214mとの間の距離を意味していてもよい。また、加工光ELの光路と放出口224mとの間の距離は、目標照射位置EtgtからZ軸に沿って延びる仮想的な軸と放出口224mとの間の距離を意味していてもよい。
【0352】
また、
図82(a)及び
図82(b)に示すように、照射可能領域ELAと回収口214mとの間の距離D3(特に、照射可能領域ELAから回収口214mが離れる方向に沿った距離D3)と、照射可能領域ELAと放出口224mとの間の距離D4(特に、照射可能領域ELAから放出口224mが離れる方向に沿った距離D4)とが異なっていてもよい。例えば、距離D3は、距離D4よりも長くてもよい。この場合、放出口224mから放出された気体によって発生源から流れ出た不要物質が、回収口214mによって相対的に円滑に回収可能となる。但し、距離D3が距離D4よりも短くてもよいし、距離D3が距離D4と同じであってもよい。
【0353】
気体放出装置22mは、収容空間SP内の不要物質を検出する検出装置135の検出結果に基づいて、気体の放出態様を制御してもよい。気体放出装置22mは、収容空間SP内の不要物質を検出する検出装置135の検出結果に基づいて、気体の放出態様を変更してもよい。例えば、気体放出装置22mは、収容空間SP内に不要物質が存在している期間の少なくとも一部において、気体を放出してもよい。例えば、気体放出装置22mは、収容空間SP内に不要物質が存在していない期間の少なくとも一部において、気体を放出しなくてもよい。例えば、気体放出装置22mは、収容空間SP内に第3濃度以上の不要物質が収容空間SP内に存在している場合には、気体を放出してもよい。例えば、気体放出装置22mは、第4濃度(但し、第4濃度は、第3濃度以下であってもよい)以下の不要物質しか収容空間SP内に存在していない場合には、気体を放出しなくてもよい。例えば、気体放出装置22mは、収容空間SP内に存在する不要物質の濃度が高くなればなるほど、単位時間当たりに放出する気体の量が多くしてもよい。つまり、気体放出装置22mは、収容空間SP内に存在する不要物質の濃度が高くなればなるほど、気体の放出速度を高くしてもよい。
【0354】
このような第13変形例の加工装置1mは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受しながら、加工光ELの照射に起因して塗装膜SF等から発生する物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響を低減することができる。
【0355】
尚、上述した説明では、加工装置1mは、回収装置21m及び気体放出装置22mの双方を備えている。しかしながら、加工装置1mは、回収装置21mを備える一方で、気体放出装置22mを備えていなくてもよい。加工装置1mは、気体放出装置22mを備える一方で、回収装置21mを備えていなくてもよい。
【0356】
回収装置21mは、収容空間SPを排気可能であると言う点で、排気装置16と共通する性質を有している。このため、排気装置16が、回収装置21mとして機能してもよい。例えば、排気装置16は、第1の排気経路(例えば、排気管161)を介して収容空間SPを排気すると共に、第1の排気経路(例えば、回収管211mから回収管213m)を介して不要物質を回収しもよい。この場合には、加工装置1mは、回収装置21mを備えていなくてもよい。
【0357】
気体放出装置22mは、収容空間SPに気体を供給可能であると言う点で、気体供給装置17と共通する性質を有している。このため、気体供給装置17が、気体放出装置22mとして機能してもよい。例えば、気体供給装置17は、第1の供給経路(例えば、配管171)を介して収容空間SPに気体を供給すると共に、第2の供給経路(例えば、放出管221mから223m)を介して収容空間SPに気体を放出してもよい。この場合には、加工装置1mは、気体放出装置22mを備えていなくてもよい。
【0358】
尚、上述した加工装置1(或いは、第1変形例の加工装置1aから第12変形例の加工装置1lの少なくとも一つ)に対して、第13変形例の加工装置1mの構成要件の少なくとも一部が組み合わせられてもよい。例えば、上述した加工装置1(或いは、第1変形例の加工装置1aから第12変形例の加工装置1lの少なくとも一つ)は、回収装置21m及び気体放出装置22mの少なくとも一方を備えていてもよい。
【0359】
(4-14)第14変形例
続いて、第14変形例の加工装置1nについて説明する。第14変形例の加工装置1nは、上述した第13変形例の加工装置1mと比較して、複数の回収口214mを介して不要物質を回収可能であるという点及び/又は複数の放出口224mを介して気体を放出可能であるという点で異なる。加工装置1nのその他の特徴は、加工装置1mのその他の特徴と同じであってもよい。以下、複数の回収口214m及び複数の放出口224mについて、
図83を参照しながら説明する。
図83は、複数の回収口214m及び複数の放出口224mを示す平面図である。
【0360】
図83に示すように、加工装置1nは、複数の(
図83に示す例では、2つの)回収管213mを備えている。各回収管213mの端部のうち回収管212mに連結されていない端部は、開放端である回収口214mとなっている。従って、
図83に示す例では、加工装置1nは、2つの回数口214mを介して、不要物質を回収することができる。
【0361】
2つの回収口214mのうちの一方は、X軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されており、2つの回収口214mのうちの他方は、Y軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されている。より具体的には、2つの回収口214mのうちの一方は、X軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れており且つY軸方向に関して目標照射位置Etgtと同じ位置に配置されており、2つの回収口214mのうちの他方は、Y軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れており且つX軸方向に関して目標照射位置Etgtと同じ位置に配置されている。以下、説明の便宜上、X軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されている回収口214mを、“回収口214m(X)”と称し、Y軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されている回収口214mを、“回収口214m(Y)”と称する。但し、2つの回収口214mが目標照射位置Etgtから離れる方向が異なる(典型的には、交差する)限りは、2つの回収口214mはどのように配置されてもよい。例えば、2つの回収口214mのうちの一方は、一の方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されており、2つの回収口214mのうちの他方は、一の方向に交差する(或いは、直交する)他の方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されていてもよい。
【0362】
更に、加工装置1nは、複数の(
図83に示す例では、2つの)放出管224mを備えている。各放出管223mの端部のうち放出管212mに連結されていない端部は、開放端である放出口224mとなっている。従って、
図83に示す例では、加工装置1nは、2つの放出口224mを介して、気体を放出することができる。
【0363】
2つの放出口224mのうちの一方は、X軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されており、2つの放出口224mのうちの他方は、Y軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されている。より具体的には、2つの放出口224mのうちの一方は、X軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れており且つY軸方向に関して目標照射位置Etgtと同じ位置に配置されており、2つの放出口224mのうちの他方は、Y軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れており且つX軸方向に関して目標照射位置Etgtと同じ位置に配置されている。以下、説明の便宜上、X軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されている放出口224mを、“放出口224m(X)”と称し、Y軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されている放出口224mを、“放出口224m(Y)”と称する。但し、2つの放出口224mが目標照射位置Etgtから離れる方向が異なる(典型的には、交差する)限りは、2つの放出口224mはどのように配置されてもよい。例えば、2つの放出口224mのうちの一方は、一の方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されており、2つの放出口224mのうちの他方は、一の方向に交差する(或いは、直交する)他の方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されていてもよい。
【0364】
このような第14変形例の加工装置1nは、加工光ELがY軸に沿って塗装膜SFの表面を走査する(つまり、塗装膜SFの表面上で照射領域EAをY軸に沿って移動させる)第1スキャン動作と、加工光ELがX軸に沿って塗装膜SFの表面を走査する(つまり、塗装膜SFの表面上で照射領域EAをX軸に沿って移動させる)第2スキャン動作とを行う場合においても、加工光ELの照射に起因して塗装膜SF等から発生する物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響を低減することができる。
【0365】
具体的には、加工装置1nは、第1スキャン動作を行う期間の少なくとも一部において、複数の回収口214m及び複数の放出口224mを示す平面図である
図84に示すように、第1スキャン動作によって目標照射位置Etgtが移動するY軸方向に直交するX軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置される回収口214m(X)を介して、不要物質を回収してもよい。更に、加工装置1nは、第1スキャン動作を行う期間の少なくとも一部において、
図84に示すように、第1スキャン動作によって目標照射位置Etgtが移動するY軸方向に交差するX軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置される放出口224m(X)を介して、気体を放出してもよい。この際、回収口214m(X)と目標照射位置Etgtとの位置関係は、第13変形例における回収口214mと目標照射位置Etgtとの位置関係(
図75及び
図76参照)と同じであってもよい。放出口224m(X)と目標照射位置Etgtとの位置関係は、第13変形例における放出口224mと目標照射位置Etgtとの位置関係(
図79及び
図80参照)と同じであってもよい。回収口214m(X)と放出口224m(X)との位置関係は、第13変形例における回収口214mと放出口224mとの位置関係(
図82(a)及び
図82(b)参照)と同じであってもよい。その結果、第1スキャン動作が行われている期間中に、不要物質の少なくとも一部が、これから照射される加工光ELの光路の少なくとも一部に向かって流れてしまう可能性が小さくなる。その理由は、第13変形例において説明済みである。その結果、不要物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響が低減される。
【0366】
他方で、加工装置1nは、第2スキャン動作を行う期間の少なくとも一部において、複数の回収口214m及び複数の放出口224mを示す平面図である
図85に示すように、第2スキャン動作によって目標照射位置Etgtが移動するX軸方向に直交するY軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置される回収口214m(Y)を介して、不要物質を回収してもよい。更に、加工装置1nは、第2スキャン動作を行う期間の少なくとも一部において、
図85に示すように、第2スキャン動作によって目標照射位置Etgtが移動するX軸方向に交差するY軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置される放出口224m(Y)を介して、気体を放出してもよい。この際、回収口214m(Y)と目標照射位置Etgtとの位置関係は、第13変形例における回収口214mと目標照射位置Etgtとの位置関係(
図75及び
図76参照)と同じであってもよい。放出口224m(Y)と目標照射位置Etgtとの位置関係は、第13変形例における放出口224mと目標照射位置Etgtとの位置関係(
図79及び
図80参照)と同じであってもよい。回収口214m(Y)と放出口224m(Y)との位置関係は、第13変形例における回収口214mと放出口224mとの位置関係(
図82(a)及び
図82(b)参照)と同じであってもよい。その結果、第2スキャン動作が行われている期間中に、不要物質の少なくとも一部が、これから照射される加工光ELの光路の少なくとも一部に向かって流れてしまう可能性が小さくなる。その理由は、第13変形例において説明済みである。その結果、不要物質が加工光ELの光路上に存在することに起因した影響が低減される。
【0367】
以上説明したように、第14変形例の加工装置1nは、加工光ELが複数の軸のそれぞれに沿って塗装膜SFの表面を走査するスキャン動作を行う場合においても、上述した加工装置1mが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
【0368】
尚、加工装置1nは、加工光ELが第1の軸に沿って塗装膜SFの表面を走査する(つまり、塗装膜SFの表面上で照射領域EAをY軸に沿って移動させる)第3スキャン動作と、加工光ELが第1の軸に交差する第2の軸に沿って塗装膜SFの表面を走査する(つまり、塗装膜SFの表面上で照射領域EAをX軸に沿って移動させる)第4スキャン動作とを行ってもよい。この場合、2つの回収口214mのうちの一方は、第1の軸に沿った第1軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されており、2つの回収口214mのうちの他方は、第2の軸に沿った第2軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されていてもよい。更に、2つの放出口224mのうちの一方は、第1軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されており、2つの放出口224mのうちの他方は、第2軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置されていてもよい。この場合、加工装置1nは、第3スキャン動作を行う期間の少なくとも一部において、第3スキャン動作によって目標照射位置Etgtが移動する第1軸方向に直交する第2軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置される回収口214mを介して、不要物質を回収してもよい。更に、加工装置1nは、第3スキャン動作を行う期間の少なくとも一部において、第3スキャン動作によって目標照射位置Etgtが移動する第1軸方向に交差する第2軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置される放出口224mを介して、気体を放出してもよい。他方で、加工装置1nは、第4スキャン動作を行う期間の少なくとも一部において、第4スキャン動作によって目標照射位置Etgtが移動する第2軸方向に直交する第1軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置される回収口214mを介して、不要物質を回収してもよい。更に、加工装置1nは、第4スキャン動作を行う期間の少なくとも一部において、第4スキャン動作によって目標照射位置Etgtが移動する第2軸方向に交差する第1軸方向に関して目標照射位置Etgtから離れた位置に配置される放出口224mを介して、気体を放出してもよい。
【0369】
尚、上述した加工装置1(或いは、第1変形例の加工装置1aから第13変形例の加工装置1mの少なくとも一つ)に対して、第14変形例の加工装置1nの構成要件の少なくとも一部が組み合わせられてもよい。例えば、上述した加工装置1(或いは、第1変形例の加工装置1aから第13変形例の加工装置1mの少なくとも一つ)は、複数の回収口214mを介して不要物質を回収可能であってもよい。上述した加工装置1(或いは、第1変形例の加工装置1aから第13変形例の加工装置1mの少なくとも一つ)は、複数の放出口224mを介して気体を放出可能であるという点で異なる。
【0370】
(4-15)第15変形例
続いて、
図86を参照しながら、第15変形例の加工装置1oについて説明する。
図86は、第15変形例の加工装置1oの全体構造を模式的に示す断面図である。
【0371】
図86に示すように、第15変形例の加工装置1oは、上述した加工装置1と比較して、筐体23oと、圧力調整装置24oとを更に備えているという点で異なる。加工装置1oのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同じであってもよい。
【0372】
筐体23oは、収容空間SP内に配置される。筐体23oの内部には、筐体23oの隔壁によって囲まれた収容空間231oが形成されている。収容空間231oには、光照射装置11の少なくとも一部が収容される。尚、
図86は、光照射装置11の全体が収容空間231oに収容される例を示している。筐体23oは、収容空間231oに収容された光照射装置11を支持する。この場合、駆動系12は、光照射装置11を支持することに代えて、筐体23oを支持してもよい。更に、駆動系12は、光照射装置11を移動させることに代えて、筐体23oを移動させてもよい。その結果、筐体23oに支持された光照射装置11もまた移動する。
【0373】
筐体23oには、光照射装置11が照射する加工光ELが射出される射出口(言い換えれば、開口)232oが形成されている。光照射装置11は、射出口232oを介して、塗装膜SFの表面に加工光ELを照射する。更に、筐体23oの内部空間は、射出口232oを介して、筐体23oの外部空間(具体的には、収容空間SP)につながっている。但し、射出口232oが、加工光ELが通過可能な部材で覆われていてもよい。射出口232oが、加工光ELが通過可能な部材で埋められていてもよい。
【0374】
圧力調整装置24oは、筐体23oの内部空間231oの圧力(つまり、気圧)を調整する。具体的には、圧力調整装置24oは、筐体23oの内部空間231oの圧力が、筐体23oの外部空間である収容空間SPの圧力よりも高くなるように、内部空間231oの圧力を調整する。つまり、圧力調整装置24oは、内部空間231oの陽圧が維持されるように、内部空間231oの圧力を調整する。内部空間231oの圧力が収容空間SPの圧力よりも高くなると、収容空間SP内の物質(例えば、不要物質)が収容空間SPから内部空間231oに侵入しにくくなる。その結果、光照射装置11への不要物質等の汚れの付着(特に、光学系112への汚れの付着)をより適切に防止することができる。このため、圧力調整装置24oは、筐体23oと協働して、光照射装置11への汚れの付着を防止する付着防止装置としても機能する。
【0375】
圧力調整装置24oは、配管241oを介して内部空間231oに気体を供給することで、内部空間231oの圧力を調整してもよい。圧力調整装置24oが供給する気体の一例としては、大気、CDA(クリーン・ドライ・エア)及び不活性ガスの少なくとも一つがあげられる。不活性ガスの一例として、窒素ガスがあげられる。圧力調整装置24oが供給する気体は、気体供給装置17が供給する気体と同一であってもよい。この場合、圧力調整装置24oと気体供給装置17とは、気体源を共有してもよい。但し、圧力調整装置24oが放出する気体は、気体供給装置17が供給する気体と異なっていてもよい。尚、圧力調整装置24oに加えて又は代えて、気体供給装置17が内部空間231oに気体を供給することで、内部空間231oの圧力を調整してもよい。つまり、気体供給装置17が圧力調整装置24oとして機能してもよい。この場合、加工装置1oは、圧力調整装置24oを備えていなくてもよい。
【0376】
このような第15変形例の加工装置1oは、上述した加工装置1が享受可能な効果と同様の効果を享受しながら、光照射装置11への不要物質等の汚れの付着(特に、光学系112への汚れの付着)をより適切に防止することができる。
【0377】
尚、上述した加工装置1(或いは、第1変形例の加工装置1aから第14変形例の加工装置1nの少なくとも一つ)に対して、第15変形例の加工装置1oの構成要件の少なくとも一部が組み合わせられてもよい。例えば、上述した加工装置1(或いは、第1変形例の加工装置1aから第14変形例の加工装置1nの少なくとも一つ)は、筐体23o及び圧力調整装置24oの少なくとも一つを備えていてもよい。
【0378】
(4-16)第16変形例
次に、第16変形例の加工装置1pについて説明する。第16変形例の加工装置1pは、上述した第13変形例の加工装置1mと比較して、回収口214m及び放出口224mのそれぞれが、照射領域EA(目標照射位置Etgt)の移動軌跡を含む領域全体を覆う点で異なる。以下、このような第16変形例の回収口214m及び放出口224mについて、
図87を参照しながら説明する。
図87は、第16変形例の回収口214m及び放出口224mを示す平面図である。
【0379】
図87に示すように、回収口214mは、Y軸方向に関して、照射領域EAの移動軌跡よりも長い寸法を有する。これにより、照射領域EAがY軸方向に移動しても確実に不要物質を回収することができる。また、放出口224mも、Y軸方向に関して、照射領域EAの移動軌跡よりも長い寸法を有する。これにより、照射領域EAの移動軌跡を含む表面SF上の領域近傍に気体の層流を形成することができる。尚、この第16変形例を第14変形例や第15変形例と組み合わせてもよい。
【0380】
(4-17)その他の変形例
上述した説明では、複数の加工光ELの照射により複数の凹部Cが夫々形成されている。つまり、ある1つの凹部Cは、ある1つの加工光ELの照射によって形成されている。しかしながら、ある1つの凹部Cが2つ以上の加工光ELの照射によって形成されていてもよい。この場合、制御装置18は、2つ以上の加工光ELの特性(例えば、強度分布等)を調整して、凹部Cの特性(例えば、形状、深さ及び形成位置等の少なくとも一つ)を制御してもよい。
【0381】
上述した説明では、加工装置1は、複数の加工光ELに塗装膜SFの表面を走査させるために、ガルバノミラー1122で加工光ELを偏向している。しかしながら、加工装置1は、ガルバノミラー1122で加工光ELを偏向することに加えて又は代えて、塗装膜SFに対して光照射装置11を相対的に移動させることで、複数の加工光ELに塗装膜SFの表面を走査させてもよい。つまり、制御装置18は、駆動系12を制御して、塗装膜SFの表面を加工光ELが走査するように光照射装置11を塗装膜SFに対して相対的に移動させてもよい。
【0382】
駆動系12が光照射装置11を塗装膜SFに対して相対的に移動させる目的の一つは、上述したように加工光ELに塗装膜SFの表面を走査させることである。このため、光照射装置11が移動しなくても加工光ELによる塗装膜SFの走査が実現できる場合には、光照射装置11は移動しなくてもよい。つまり、加工装置1は、駆動系12を備えていなくてもよい。
【0383】
駆動系12が光照射装置11を塗装膜SFに対して相対的に移動させる目的の一つは、収容装置13の収容空間SPに複数の単位加工領域SAが収容される場合において、収容装置13及び支持装置14を移動させることなく、複数の単位加工領域SAを順に加工光ELで走査するためである。このため、収容空間SPに単一の単位加工領域SAが収容される場合には、光照射装置11は移動しなくてもよい。つまり、加工装置1は、駆動系12を備えていなくてもよい。
【0384】
上述した説明では、収容装置13は、支持部材133を介して駆動系12(更には、光照射装置11)を支持している。しかしながら、駆動系12及び光照射装置11の少なくとも一方は、収容装置13以外の部材(例えば、支持装置14)によって支持されていてもよい。
【0385】
上述した説明では、収容装置13は、板状の天井部材131と、天井部材131から-Z側に向かって延伸する筒状の隔壁部材132とを備えている。しかしながら、天井部材131と隔壁部材132とによって囲まれた収容空間SPが確保可能である限りは、天井部材131の形状及び配置位置等、並びに、隔壁部材132の形状及び配置位置等は、どのようなものであってもよい。
【0386】
上述した説明では、収容装置13は、単一の隔壁部材132を備えている。しかしながら、収容装置13は、天井部材131から-Z側に向かって延伸し且つ加工光ELの光路を取り囲むように配列される複数の隔壁部材を備えていてもよい。この場合、複数の隔壁部材は、隣り合う2つの隔壁部材がその配列方向(例えば、周方向)において部分的に重なるように配列されていてもよい。複数の隔壁部材の少なくとも一部は、天井部材131に対して移動可能であってもよい。複数の隔壁部材の全ての端部(具体的には、塗装膜SF側の端部)が塗装膜SFの表面に接触可能であってもよい。複数の隔壁部材の全ての端部が塗装膜SFの表面に付着可能であってもよい。或いは、複数の隔壁部材の一部の端部が塗装膜SFの表面に接触可能である一方で、複数の隔壁部材の他の一部の端部が塗装膜SFの表面に接触可能でなくてもよい。複数の隔壁部材の一部の端部が塗装膜SFの表面に付着可能である一方で、複数の隔壁部材の他の一部の端部が塗装膜SFの表面に付着可能でなくてもよい。
【0387】
上述した説明では、天井部材131及び隔壁部材132の夫々は、加工光ELを遮光可能な又は減光可能な部材である。しかしながら、天井部材131及び隔壁部材132の少なくとも一方は、加工光ELを遮光可能な又は減光可能な部材でなくてもよい。天井部材131の少なくとも一部は、加工光ELを遮光可能な又は減光可能な部材でなくてもよい。隔壁部材132の少なくとも一部は、加工光ELを遮光可能な又は減光可能な部材でなくてもよい。
【0388】
上述した説明では、天井部材131及び隔壁部材132の夫々は、加工光ELの照射によって発生した不要物質を透過させない部材である。しかしながら、天井部材131及び隔壁部材132の少なくとも一方は、不要物質を透過させない部材でなくてもよい。天井部材131及び隔壁部材132の少なくとも一方は、不要物質が通過可能な部材であってもよい。天井部材131の少なくとも一部は、不要物質を透過させない部材でなくてもよい。隔壁部材132の少なくとも一部は、不要物質を透過させない部材でなくてもよい。
【0389】
上述した説明では、収容装置13の収容空間SPに光照射装置11が配置されている。しかしながら、光照射装置11の一部が収容装置13の外部に配置されていてもよい。この場合であっても、収容装置13は、光学系112の終端光学素子と塗装膜SFとの間における加工光ELの光路を含む空間を少なくとも収容していてもよい。この場合、収容装置13は、天井部材131及び隔壁部材132の少なくとも一方を備えていなくてもよいし、天井部材131及び隔壁部材132の少なくとも一方に加えて又は代えて加工光ELの光路を含む空間を収容するための部材を備えていてもよい。或いは、収容空間SPに光照射装置11の全体が配置されている場合であっても、収容装置13は、天井部材131及び隔壁部材132の少なくとも一方を備えていなくてもよいし、天井部材131及び隔壁部材132の少なくとも一方に加えて又は代えて収容空間SPを形成するための部材を備えていてもよい。或いは、光照射装置11の全体が収容装置13の外部に配置されていてもよい。この場合、収容装置13は、天井部材131及び隔壁部材132の少なくとも一方を備えていなくてもよい。或いは、加工装置1は、収容装置13そのものを備えていなくてもよい。
【0390】
上述した説明では、収容装置13の端部134は、塗装膜SFの表面の形状に応じてその形状を変化させることが可能である。しかしながら、端部134は、塗装膜SFの表面の形状に応じてその形状を変化させなくてもよい。この場合、端部134の形状は、塗装膜SFの表面の形状に相補的な形状であってもよい。例えば、表面が平面形状の塗装膜SFに端部134が接触する場合には、端部134の形状は、塗装膜SFと同様に平面形状である。例えば、表面が端部134に向かって凸状に湾曲している塗装膜SFに端部134が接触する場合には、端部134の形状は、塗装膜SFから見て凹状にへこんだ形状である。
【0391】
上述した説明では、収容装置13は、収容空間SP内の不要物質(つまり、加工光ELの照射によって発生した物質)を検出する検出装置135を備えている。しかしながら、収容装置13は、検出装置135を備えていなくてもよい。
【0392】
上述した説明では、支持装置14は、支持部材143を介して収容装置13(更には、駆動系12及び光照射装置11)を支持している。しかしながら、収容装置13、駆動系12及び光照射装置11の少なくとも一つは、支持装置14以外の部材によって支持されていてもよい。
【0393】
上述した説明では、排気装置16は、排気装置16が収容空間SPから吸引した不要物質を吸着するフィルタ162を備えている。しかしながら、排気装置16は、フィルタ162を備えていなくてもよい。例えば、塗装膜SFに対する加工光ELの照射によって不要物質が発生しない場合には、排気装置16は、フィルタ162を備えていなくてもよい。
【0394】
上述した説明では、加工装置1は、排気装置16を備えている。しかしながら、加工装置1は、排気装置16を備えていなくてもよい。例えば、塗装膜SFに対する加工光ELの照射によって不要物質が発生しない場合には、加工装置1は、排気装置16を備えていなくてもよい。例えば、気体供給装置17から収容空間SPに供給された気体を排気しなくてもよい(つまり、収容空間SPの外部に吸引しなくてもよい)場合には、加工装置1は、排気装置16を備えていなくてもよい。或いは、加工装置1は、排気装置16に加えて又は代えて、加工光ELの照射によって発生した不要物質が加工光ELの光路(特に、光学系112の終端光学素子の収容空間SP側の光学面)に還流することを防止する任意の還流防止装置を備えていてもよい。還流防止装置の一例として、不要物質を収容空間SP内で吸着する吸着装置があげられる。尚、排気装置16に加えて又は代えて、光学系112の終端光学素子の収容空間SP側の光学面に気体を吹き付ける気体ノズルを設けてもよい。
【0395】
上述した説明では、気体供給装置17は、fθレンズ1123の光学面1124(つまり、光学系112の終端光学素子の収容空間SP側の光学面)に不活性ガス等の気体を供給することで、光学面1124への汚れの付着を防止している。しかしながら、加工装置1は、気体供給装置17に加えて又は代えて、光学面1124への汚れの付着を防止する任意の付着防止装置を備えていてもよい。例えば、加工装置1は、光学面1124に液体(例えば、純水)を噴出することで光学面1124への汚れの付着を防止する付着防止装置を備えていてもよい。例えば、加工装置1は、液体(例えば、純水)で満たされ且つ光学面1124に面する液浸空間を形成することで光学面1124への汚れの付着を防止する付着防止装置を備えていてもよい。この場合、液浸空間に不純物が混入する可能性があるため、液浸空間内の液体は適宜入れ替えられてもよい。
【0396】
上述した説明では、気体供給装置17は、fθレンズ1123の光学面1124に不活性ガス等の気体を供給することで、光学面1124に付着した汚れを除去、或いは光学面1121に汚れが付着することを防止している。しかしながら、加工装置1は、気体供給装置17に加えて又は代えて、光学面1124に付着した汚れを除去する任意の付着防止装置を備えていてもよい。例えば、加工装置1は、光学面1124に液体(例えば、純水)を噴出することで光学面1124に付着した汚れを除去する付着防止装置を備えていてもよい。例えば、加工装置1は、光学面1124を物理的にふき取ることで光学面1124に付着した汚れを除去する付着防止装置を備えていてもよい。
【0397】
上述した説明では、加工装置1は、加工対象物Sの表面上に、塗装膜SFによるリブレット構造を形成している。しかしながら、加工装置1は、加工対象物Sの表面上に、任意の形状を有する塗装膜SFによる任意の構造を形成してもよい。この場合であっても、形成するべき構造に応じた走査軌跡に沿って塗装膜SFの表面を加工光ELが走査するように制御装置18が光照射装置11等を制御すれば、任意の形状を有する任意の構造が形成可能である。
【0398】
上述した説明では、加工装置1は、加工光ELの照射によって塗装膜SFを蒸発させることで、塗装膜SFを除去している。しかしながら、加工装置1は、加工光ELの照射によって塗装膜SFを蒸発させることに加えて又は代えて、加工光ELの照射によって塗装膜SFの性質を変えることで塗装膜SFを除去してもよい。例えば、加工装置1は、加工光ELの照射によって塗装膜SFを溶融させ、溶融させた塗装膜SFを除去することで塗装膜SFを除去してもよい。例えば、加工装置1は、加工光ELの照射によって塗装膜SFを脆くし、脆くした塗装膜SFを剥離することで塗装膜SFを除去してもよい。上述した説明では、加工装置1は、加工対象物Sの表面に形成された塗装膜SFをアブレーション加工している。しかしながら、加工装置1は、加工対象物Sの表面に形成された塗装膜SFの一部を熱加工によって除去してもよい。
【0399】
上述した説明では、加工装置1は、塗装膜SFを除去することで凹部C(或いは、凹状構造CP1、又は、当該凹状構造CP1によるリブレット構造等の任意の構造)を形成している。つまり、加工装置1は、塗装膜SFを部分的に薄くするように塗装膜SFを加工している。しかしながら、加工装置1は、塗装膜SFを部分的に薄くすることに加えて又は代えて、塗装膜を部分的に厚くするように塗装膜SFを加工してもよい。つまり、加工装置1は、塗装膜SFを除去することで凹部Cを形成することに加えて又は代えて、塗装膜SFを付加することで凸部(或いは、凸状構造CP2又は、当該凸状構造CP2による任意の構造)を形成してもよい。例えば、加工装置1は、塗装膜SFの第1部分に加工光ELを照射することで第1部分の塗装膜SFを除去し、その後、除去した塗装膜SFを塗装膜SFの第2部分に定着させることで、当該第2部分における塗装膜SFを相対的に厚くしてもよい(つまり、第2部分に凸部を形成してもよい)。
【0400】
上述した説明では、加工装置1は、加工対象物Sの表面に形成された塗装膜SFを加工している。しかしながら、加工装置1は、加工対象物Sの表面に形成された、塗装膜SF以外の任意の被膜を加工してもよい。或いは、加工装置1は、複数の層が積層された構造体を加工してもよい。具体的には、加工装置1は、構造体を構成する複数の層のうちの少なくとも一つの層(典型的には、最も表面側の層を含む少なくとも一つの層)を加工してもよい。加工装置1は、構造体を構成する複数の層のうちの少なくとも一つの層を加工して、当該層による構造を形成してもよい。この場合、加工される少なくとも一つの層が上述した塗装膜SFの相当し、当該少なくとも一つの層以外の他の層が加工対象物Sに相当する。例えば、
図88(a)は、層S1から層S3が積層された構造体において、層S3が露出しないように層S1及び層S2が加工される例を示している。
図88(a)に示す例では、層S1及び層S2が、加工光ELの照射によって加工される層(つまり、リブレット構造等を形成する層)であり、上述した塗装膜SFに相当する層である。一方で、
図88(a)に示す例では、層S3が、加工光ELの照射によって加工されない層(つまり、リブレット構造等を形成する層がその表面に形成されている層)であり、上述した加工対象物Sに相当する層である。或いは、例えば、
図88(b)は、層S1から層S3が積層された構造体において、層S2が露出しないように層S1が加工される例を示している。
図88(b)に示す例では、層S1が、加工光ELの照射によって加工される層であり、上述した塗装膜SFに相当する層である。一方で、
図88(b)に示す例では、層S2及び層S3が、加工光ELの照射によって加工されない層であり、上述した加工対象物Sに相当する層である。或いは、加工装置1は、加工対象物Sそのものを加工してもよい。つまり、加工装置1は、表面に塗装膜SF又は任意の被膜が形成されていない加工対象物Sを加工してもよい。
【0401】
尚、上述の実施形態では、加工装置1は、表面の流体に対する抵抗を低減させるためのリブレット構造を形成したが、流体と表面とが相対的に移動するときに発生する騒音を低減するためのリブレット構造や、表面上の流れに対して渦を発生する構造、表面に疎水性を与えるための構造など、様々な構造を形成することができる。また、上述の実施形態では、加工装置1は、加工対象物S上に塗布されている塗装膜SFを加工したが、加工対象物Sを直接的に加工してもよい。
【0402】
上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。例えば、上述した第1変形例から第16変形例のうちの一の変形例の構成要件が、上述した第1変形例から第16変形例のうちの他の変形例においても用いられてもよい。一例として、例えば、上述した第2変形例における表面特性計測装置19bを用いる事前計測制御動作が、上述した第3変形例の加工装置1cによって行われてもよい。この場合、加工装置1cは、構造計測装置19cに加えて、表面特性計測装置19bを備えていてもよい。その他の変形例の組み合わせについても、加工装置1等は、組み合わせのパターンに応じた装置を適宜備えていてもよい。上述の各実施形態の要件のうちの一部が用いられなくてもよい。上述の各実施形態の要件は、適宜他の実施形態の要件と置き換えることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した装置等に関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0403】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う加工装置、加工方法、塗料、加工システム、移動体、及び、流体中を移動する移動体の製造方法もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0404】
1 加工装置
11 光照射装置
111 光源系
112 光学系
12 駆動系
13 収容装置
132 隔壁部材
14 支持装置
15 駆動系
16 排気装置
17 気体供給装置
18 制御装置
21m 回収装置
214m 回収口
22m 気体放出装置
224m 放出口
C 凹部
CP1 凹状構造
CP2 凸状構造
SP 収容空間
EA 照射領域
EL 加工光
S 加工対象物
SF 塗装膜