(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20221012BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20221012BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221012BHJP
C08J 7/043 20200101ALI20221012BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B27/36
C08J5/18 CFD
C08J7/043
(21)【出願番号】P 2021071761
(22)【出願日】2021-04-21
(62)【分割の表示】P 2017019658の分割
【原出願日】2017-02-06
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智博
(72)【発明者】
【氏名】西河 博以
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/093307(WO,A1)
【文献】特開2017-009646(JP,A)
【文献】特開2017-002307(JP,A)
【文献】特開2016-066079(JP,A)
【文献】特開2015-166193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 27/36
C08J 5/18
C08J 7/043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の少なくとも片面に、偏光子保護フィルムを有する偏光板であって、
前記偏光子保護フィルムが、共重合ポリエステル成分を含有する、単層からなるポリエステルフィルム(ただし、ジオール単位中の1~80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位とジカルボン酸単位で構成されたポリエステル樹脂からなるポリエステルフィルムを除く)であ
り、入射角0°における波長590nmの面内リターデーション(Re)が70nm以下であり、100℃、3分間熱処理後の収縮率が0.3%以下であり、かつ入射角50°における波長590nmの厚み方向リターデーション(Rth)が70nm以下であ
る一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム
を用いた偏光子保護フィルムであり、単層からなる前記ポリエステルフィルム(ただし、ポリエステル樹脂からなる層が2層以上積層された積層フィルムを除く)として前記偏光子の少なくとも片面に設けられることを特徴とする、偏光板。
【請求項2】
前記
ポリエステルフィルム
の厚みが5μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の
偏光板。
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に塗布層が設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の
偏光板。
【請求項4】
前記塗布層に、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、およびカルボジイミド系化合物からなる群より選択される、少なくとも1種類以上の架橋剤を含有することを特徴とする、請求項3に記載の
偏光板。
【請求項5】
塗布層の上に
偏光子が設けられることを特徴とする請求項4に記載の
偏光板。
【請求項6】
前記面内リターデーション(Re)が52nm以下である、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の
偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムに関するものであり、詳しくは、液晶ティスプレイ、タッチパネル、OLED(Organic Light Emitting Diode)等に用いられる各種光学用部材や、光学製品の製造工程において使用される偏光子保護フィルム等に用いられるポリエステルフィルムであって、偏光下において、光干渉に伴う干渉色が発生せず、外観良好であるポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエステルフィルムは、優れた機械的特性、耐薬品性を有しており、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、写真、包装、電子部品、電気絶縁、金属ラミネート等、各種用途の部材として広く用いられている。
【0003】
近年、特に各種光学用フィルムに多く使用される傾向にあり、LCD用部材である、プリズムシート、光拡散シート、反射板、タッチパネル等のベースフィルムや反射防止用のベースフィルム、OLED用部材等の各種用途に用いられている。
【0004】
前記光学製品においては、鮮明な画像を得るために、光学用フィルムとしては、透明性が良好で、かつ画像に影響を与える異物やキズ等の欠陥がないことが必要である。その中でも、偏光板の構成部材である偏光子保護フィルム用途では、低コスト化を目的として従来のTAC(トリアセチルセルロース)フィルムから二軸延伸ポリエステルフィルムへの置換が検討される状況にある。二軸延伸ポリエステルフィルムは、延伸時の異方性により
、偏光下において、光干渉による干渉色が発生する問題があった。当該問題に対する解決策として、例えば、リターデーションを特定の範囲に制御する対応策が講じられている。(特許文献1、2)
【0005】
また、偏光下での光干渉に伴う干渉色低減策として、例えば、特許文献3のようにフィルムのリターデーションを極端に大きくすることで対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-200435号公報
【文献】特開2013-200578号公報
【文献】特開2012-230390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2では、改善効果はあるものの、ディスプレイを目視する際の角度によって、例えば、斜め方向から目視した場合、光干渉に伴う干渉色の発生を低減するのが不十分な場合があり、さらなる改善が期待されている。
また特許文献3では、当該フィルムは光干渉による干渉色発生は抑制される反面、基材の薄膜化には限界があり、特に50μm以下の薄膜領域への対応が困難な場合があった。そのため、現状、光干渉に伴う干渉色を抑制し、特に基材厚みが50μm以下の薄膜化対応も可能であり、連続生産性が良好なフィルムが必要とされる状況にあった。
【0008】
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであって、その解決課題は、液晶ディスプレイ、タッチパネル、OLED等に用いる各種光学用部材として、例えば、偏光下において、光干渉に伴う干渉色を発生させることなく、特に50μm以下の薄膜化対応も可能であり、連続生産性が良好なポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を採用すれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、共重合ポリエステル成分を含有し、面内リターデーション(Re)が150nm以下であり、100℃、3分間熱処理後の収縮率が0.3%以下であることを特徴とするポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液晶ディスプレイ、タッチパネル、OLED等に用いる各種光学用部材として、偏光下において、光干渉に伴う干渉色を発生させることなく、50μm以下の薄膜化対応可能であり、連続生産性が良好なポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[ポリエステルフィルム]
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、ジカルボン酸単位とジオール単位を重縮合させて得られるものを指す。
【0013】
ジカルボン酸単位としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、ジオール単位としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0014】
代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。
【0015】
本発明では面内リターデーション(Re)を150nm以下にするために、共重合ポリエステル成分をポリエステルフィルムに含有することを必須要件とする。
【0016】
ジオール成分の具体例として、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルバイド、スピログリコール、テトラメチルシクロブタンジオールなどが例示される。その中でも、イソソルバイド、スピログリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、テトラメチルシクロブタンジオールがポリエステルとの相溶性が良好な点で好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種類のみ用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
使用するイソソルバイドとは、以下の構造をもつ1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトールである。
【0018】
【0019】
本発明においては、フィルム連続生産性を良好とする観点より、ジオール成分として、エチレングリコール、イソソルバイド、1,4-シクロヘキサンジメタノールの組み合わせが好ましい。さらに好ましくは、当該三成分の中で、1,4-シクロヘキサンジメタノールの占める割合は三成分の合計量に対して、40モル%~60モル%の範囲が好ましく、さらに好ましくは40モル%~50モル%の範囲がよい。当該範囲を外れる場合、フィルム連続生産性を確保するのが困難になる場合がある。
【0020】
当該成分をフィルム中に含有させる方法としては、フィルムを製造する原料として所定量の共重合成分として含有する共重合ポリエステルを用いてもよいし、所定量より多い共重合成分を含有する共重合ポリエステルフィルムと、共重合成分が少ない含有量の共重合ポリエステルまたはホモポリエステルをブレンドして得られる原料を用いてもよい。
【0021】
ポリエステルは、従来公知の方法で、例えば、ジカルボン酸とジオールとの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとジオールを従来公知のエステル交換触媒で反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。重合触媒としては、アンチモン触媒、ゲルマニウム化合物、チタン化合物等公知の触媒を使用してよい。好ましくはアンチモン化合物の量をアンチモン元素として100ppm以下にすることによりフィルムのくすみを低減したものが好ましい。
【0022】
ポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素等不活性気流中に必要に応じてさらに固相重合を施したものでもよい。得られたポリエステルの固有粘度
は0.40~0.90dl/gであることが好ましい。
【0023】
ポリエステルフィルムには、取り扱いを容易にするために透明性を損なわない範囲で粒子を含有させてもよい。粒子の具体例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子や、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。また粒子添加方法としては、原料とするポリエステル中に粒子を添加する方法、押出機に直接添加する方法等を挙げることができ、このうちいずれか一方の方法を採用してもよく、2つの方法を併用してもよい。
【0024】
用いる粒子の平均粒径は通常0.05~5.0μm、好ましくは0.1~4.0μmである。平均粒径が5.0μmより大きいとフィルムヘーズが大きくなりフィルムの透明性が低下する場合がある。平均粒径が0.05μmより小さいと表面粗度が小さくなりすぎてフィルムの取り扱いが困難になる場合がある。
粒子含有量は、通常0.001~30.0重量%であり、好ましくは0.01~10.0重量%である。粒子含有量が30.0重量%より多いとヘーズが大きくなり、可視光領域の透過率が低下することがある。一方、粒子含有量が0.001重量%より小さいとフィルムの取り扱いが困難になる場合がある。
【0025】
ポリエステルに粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混錬押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混錬押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0026】
また、本発明の主旨を損なわない範囲において、上記粒子の他にも添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0027】
本発明においては、ポリエステルの溶融押出機を1台用いて、単層構成のポリエステルフィルムとすることができる。また、ポリエステルの溶融押出機を2台または3台以上用いて、いわゆる共押出法により少なくとも2層以上の積層フィルムとすることもできる。 その場合、積層構成として、A原料とB原料を用いたA層/B層/A層構成、さらにC原料を用いたA層/B層/C層構成またはそれ以外の3層以上の構成のフィルムとすることができる。
【0028】
本発明においては、公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移点以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0029】
次いで、得られた未延伸シートをガラス転移温度以上の温度において、ロールまたはテンター方式の延伸機で一軸延伸後、必要に応じて熱処理を施す方法が挙げられる。延伸温度は120~160℃、好ましくは120~150℃であり、延伸倍率は2.5~7.0倍、好ましくは3.5~6.0倍であり、熱処理温度は130~230℃、好ましくは130~180℃である。
【0030】
一方、二軸延伸の場合は、最初に、前記未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70~160℃、好ましくは80~150℃であり、延伸倍率は通常1.1~7.0倍、好ましくは1.5~6.0倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する延伸温度は通常70~160℃であり、延伸倍率は通常1.1~7.0倍、好ましくは1.5~6.0倍である。そして、引き続き130~250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0031】
また、同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来から公知の延伸方式を採用することができる。
【0032】
ポリエステルフィルムの厚みは、用途上、5μm~50μmの範囲が好ましい。さらに好ましくは9μm~38μm、最も好ましくは12~38μmである。フィルム厚みが5μm未満の場合、フィルム強度の点で不十分となる場合がある。一方、フィルム厚みが50μmを超える場合、基材の薄膜化が必要とされる光学用途に不適となる場合がある。
【0033】
ポリエステルフィルムのヘーズ値は、通常2.0%以下、好ましくは1.0%以下である。ヘーズ値が2.0%より高い場合には、透明性が低下し、光学用途に不適となる場合がある。
【0034】
[塗布層]
ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面には、塗布層を設けるのが好ましい。また塗布層には、必要に応じて、帯電防止剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
【0035】
塗布層の上に接着剤層などの機能層を積層する際、耐久密着性向上の観点より、塗布層には、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、およびカルボジイミド系化合物からなる群より選択される、少なくとも1種類以上の架橋剤を含有することが好ましい。
【0036】
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミ
ド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β-不飽和モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン、等のα,β-不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
【0037】
塗布層を形成する塗布液中に含有されるオキサゾリン化合物のオキサゾリン基量は、通常0.5~10mmol/g、好ましくは3~9mmol/g、より好ましくは5~8mmol/gの範囲である。上記範囲で使用することで、塗膜の耐久性が向上する。
【0038】
メラミン化合物とは、メラミン構造を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
【0039】
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えば、エピクロロヒドリンとエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0040】
イソシアネート系化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレ
ンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等が例示される。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートがより好ましい。
【0041】
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール系化合物、イソブタノイル酢酸メチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタムなどのラクタム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミンなどのアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
【0042】
また、イソシアネート系化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート系化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂との混合物や結合物を使用することが好ましい。
【0043】
カルボジイミド系化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物であるが、より良好な密着性等のために、分子内に2つ以上有するポリカルボジイミド系化合物がより好ましい。
【0044】
カルボジイミド系化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
カルボジイミド系化合物に含有されるカルボジイミド基の含有量は、カルボジイミド当量(カルボジイミド基1molを与えるためのカルボジイミド化合物の重さ[g])で、通常100~1000、好ましくは250~700、より好ましくは300~500の範囲である。上記範囲で使用することで、塗膜の耐久性が向上する。
【0046】
さらに本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド系化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
【0047】
これらの架橋剤は単独でも2種類以上の併用でもあってもよい。その中でも、特に機能層との密着性向上の観点では、オキサゾリン化合物とメラミン化合物との組合せが好まし
い。
【0048】
かかる架橋成分を含有する場合、同時に架橋を促進するための成分、例えば架橋触媒などを併用することができる。
【0049】
塗布層を形成する塗布液について、架橋剤の含有率は、全不揮発成分に対して、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。割合が上記範囲を超える場合、例えば、機能層に対する密着性向上効果が不十分となる場合がある。
【0050】
また、塗布層の形成には、外観の向上や塗布層の上に機能層が形成されたときの密着性向上のためにポリマーを併用することも可能である。
【0051】
ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも、種々の表面機能層との密着性向上の観点からは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。
ポリマーの含有量は、全不揮発成分に対して、通常70重量%以下、好ましくは50重量%以下である。ポリマーの含有量を70重量%以下とすることで、機能層を積層する際に十分な接着性を確保することができる。
【0052】
また、塗布層の形成にはブロッキング、滑り性改良を目的として粒子を併用することも可能である。その平均粒径はフィルムの透明性の観点から、好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.2μm以下の範囲である。また、下限は滑り性をより効果的に向上させるために、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、特に好ましくは塗布層の膜厚よりも大きい範囲である。粒子の具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、有機粒子等が挙げられる。その中でも透明性の観点からシリカが好ましい。粒子の含有量は、全不揮発成分に対して、通常0.1~30重量%、好ましくは0.5~10重量%以下である。粒子の含有量を0.1~30重量%とすることで、十分な滑り性を確保することができる。
【0053】
さらに塗布層の形成には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を併用することも可能である。
【0054】
塗布層の厚み(乾燥後)は、通常0.003μm~1μmの範囲であり、好ましくは0.005μm~0.5μm、さらに好ましくは0.01μm~0.2μmの範囲である。厚みが0.003μmより薄い場合には、所望する接着性を発現するのが困難になる場合がある。また、1μmより厚い場合には、塗布層の外観の悪化や、ブロッキングしやすくなるなどの問題を生じることがある。
【0055】
塗布液の塗布方法としては、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターなど、従来から公知の塗布方法を採用することができる。
【0056】
なお、塗布液のポリエステルフィルムへの塗布性や接着性を改良するため、塗布前にポリエステルフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、表面特性をさらに改良するため、塗布層形成後に放電処理を施してもよい。
【0057】
なお、塗布液の塗布方法として、ポリエステルフィルムの製造時に塗布液を塗布するインラインコートと呼ばれる方法でも、フィルム製造後に塗布液を塗布するオフラインコートと呼ばれる方法でもよい。また片面コート、両面コートは問わない。塗布液に用いる溶
媒としては、水であっても有機溶媒であってもよい。
【0058】
得られたポリエステルフィルムの面内リターデーション(Re)は視認性を良好とするために150nm以下を必要要件とする。Reに関して、好ましくは70nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。Reが150nmを超える場合、偏光子保護フィルムとして用いた場合、得られる偏光板の視認性が低下する。
さらに厚み方向リターデーション(Rth)は300nm以下を満足するのが好ましい。さらに好ましくは200nm以下、最も好ましくは50nm以下である。Rthが300nmを超える場合、偏光子保護フィルムとして用いた場合、得られる偏光板を用いて、ディスプレイを製造した際に、ディスプレイ面に対して、斜めから視る角度によっては、視認性が低下する場合がある。本発明ではReとRthに関して、前記範囲を同時に満足することで、例えば、ディスプレイ用部材として用いた場合、さらに良好な視認性を確保できる点で好ましい。
【0059】
上述のReおよびRthを同時に満足するための具体的手段として、延伸方式は一軸延伸を採用するのが好ましい。さらに好ましくは、延伸倍率に関しては、3.0倍以上4.5倍以下がよい。また、延伸倍率が4.5倍以下とすることで、連続生産性を十分確保することができる。
【0060】
さらに、本発明のポリエステルフィルムにおいて、良好なフィルム平面性を確保するために、100℃、3分間熱処理後の収縮率は0.3%以下であることを必要要件とする。
前記収縮率に関して、好ましくは0.2%以下がよい。収縮率が0.3%を超える場合、例えば、偏光子保護フィルムとして、接着剤層を介して偏光子と貼り合わせて、偏光板を製造した場合、良好な平面性を確保することが困難になる。
【0061】
塗布層上には機能層を設けるのが好ましい。本発明においては、偏光子保護用途を事例として、説明する。
本発明においてポリエステルフィルム上に塗布層を設けた後、塗布層面はポリビニルアルコール(PVA)系接着層を介して、偏光子と貼り合わされ、偏光板を製造する。
【0062】
PVA系接着剤としては、従来から公知の材料を用いることが出来る。
本発明では、偏光板を構成する偏光子保護フィルムとして、少なくとも一方のフィルム基材は、前記塗布層を設けたポリエステルフィルムが貼り合わされた構成であるのが好ましい。当該構成を採用することにより、視認性良好な偏光板を製造することが可能となる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、種々の諸物性、特性は以下のように測定、または定義されたものである。実施例中、「%」は「重量%」を意味する。
【0064】
(1)ポリエステルの固有粘度(dl/g)の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0065】
(2)平均粒径(d50)
島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(SA-CP3型)を用いて測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径を平均粒径d50とした。
【0066】
(3)ポリエステルフィルムの厚み
フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡写真にて観察した。その断面のうちフィルム表面とほぼ平行に2本、明暗によって界面が観察される。その2本の界面とフィルム表面までの距離を10枚の写真から測定し、その平均値をもってポリエステルフィルムの厚みとした。
【0067】
(4)ガラス転移点Tgの測定
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC7タイプ)を用い、窒素雰囲気下で、耐熱原料を使用したB層の原料と同じ原料比率のサンプル5mgを昇温速度10℃/分で常温から昇温し、二次転移形に伴う比熱の変化点をガラス転移点Tgとした。
【0068】
(5)ReおよびRthの測定
王子計測機器(株)製 位相差測定装置(KOBRA-21ADH)を用いた。サンプルをフィルム幅方向中央部から3.5cm×3.5cmで切り出し、フィルム幅方向が本測定装置にて定義されている角度0°となるように装置に設置し、入射角0°設定における波長590nmの面内リターデーション(Re)を測定した。
厚み方向リターデーション(Rth)については屈折率モードにて入射角50°における波長590nmのリターデーションを測定した。
【0069】
(6)収縮率の測定
試料フィルムを無張力状態で所定の温度(100℃)に保った熱風式オーブン中、3分間熱処理し、その前後の試料の長さを測定して次式にて算出した。なお、フィルムの流れ方向(MD)と幅方向(TD)のそれぞれについて測定した。
収縮率(%)={(熱処理前のサンプル長)-(熱処理後のサンプル長)}÷(熱処理前のサンプル長)×100
【0070】
(7)ヘーズの測定
試料フィルムをJIS-K-7136に準じて、日本電色工業株式会社製ヘーズメーターNDH-20Dを用いて、ヘーズを測定した。
【0071】
(8)塗布層(或いはコロナ処理面)の接着性評価
試料フィルムの塗布層面(或いはコロナ処理面)に接着剤として重合度1000、ケン化度98.5mol%のポリビニルアルコール5重量%水溶液を乾燥後の厚みが2μmになるように塗布・乾燥し、接着剤層とした。この接着剤層の上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)、エルパック(登録商標)LP-18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後、剥離面を観察し、下記判定基準により、判定を行った。
(判定基準)
○:剥離面積が20%以下。
△:剥離面積が20%を超え50%以下。
×:剥離面積が50%を超える。
【0072】
(9)視認性評価
<偏光板Aの製造>
ポリビニルアルコールフィルム(クラレ製)を30℃の純水で膨潤後、0.032重量部のヨウ素と水100重量部にたいして0.2重量部のヨウ化カリウムとを含む水溶液で染色しながら、延伸倍率(最終)が6倍になるように延伸した。この延伸フィルムを40℃で、1分間乾燥した後、厚み10μmの偏光子を得た。
次に、得られた偏光子の両面にポリビニルアルコール系水溶性接着剤(日本合成化学製ゴーセファイマーZ200)を厚み(乾燥後)が5μmになるように設けた。その後、両面に設けた接着剤層の上に、本発明で得られた実施例、比較例の各ポリエステルフィルムを
貼りあわせ、偏光板Aを得た。
<偏光板Bの製造>
ポリビニルアルコールフィルム(クラレ製)を30℃の純水で膨潤後、0.032重量部のヨウ素と水100重量部にたいして0.2重量部のヨウ化カリウムとを含む水溶液で染色しながら、延伸倍率(最終)が6倍になるように延伸した。この延伸フィルムを40℃で、1分間乾燥した後、厚み10μmの偏光子を得た。
次に、得られた偏光子の両面にポリビニルアルコール系水溶性接着剤(日本合成化学製ゴーセファイマーZ200)を厚み(乾燥後)が5μmになるように設けた。その後、両面に設けた接着剤層の上に、富士写真フィルム社製フジタックシリーズ(TACフィルム:厚み40μm)を貼りあわせ、厚み100μmの偏光板Bを得た。
<評価方法>
偏光板A,偏光板Bを100mm角サイズに断裁した後、両者をクロスニコル状態に配置して重ね合わせ、LED光源(トライテック製A3-101)上においた場合の視認性を目視評価し、下記判定基準により、判定を行った。
(判定基準)
◎:虹ムラ、或いは干渉色の発生が無い。
○:虹ムラ、或いは干渉色の発生がほとんど無い。(実用上、問題ないレベル)
△:虹ムラ、或いは干渉色の発生がわずかに有る。(実用上、問題になる場合があるレベル)
×:虹ムラ、或いは干渉色の発生が明瞭に有る。 (実用上、問題あるレベル)
【0073】
(10)フィルム連続生産性評価
試料フィルムを12時間、連続生産した際にフィルムが破断する状況を以下判定基準により、判定を行った。
(判定基準)
○:殆どフィルム破断を起こさず、連続生産性が良好。(実用上、問題ないレベル)
△:時々、フィルム破断を生じ、連続生産性がやや劣る。(実用上、問題になる場合があるレベル)
×:頻繁にフィルム破断を生じ、明らかに連続生産性が劣る。(実用上、問題になるレベル)
【0074】
(11)平面性評価
(9)項で得られた100mm角の試料フィルムを用いて作製した偏光板について、100℃、5分間熱処理した後、水平なガラス板上に置き、ガラス板面から垂直方向での4隅の浮き上がり量を測定し、当該4隅のうち最大の高さをカール高さとして下記判定基準におり、判定を行った。
(判定基準)
○:カール高さが5mm未満。
△:カール高さが5mm以上10mm未満。
×:カール高さが10mm以上。
【0075】
(12)総合評価
実施例および比較例において製造した各試料フィルムを用いて、接着性、視認性、フィルム連続生産性、平面性の各項目につき、評価を行った。
(判定基準)
○:接着性、視認性、フィルム連続生産性、平面性のすべてが○以上。
△:接着性、視認性、フィルム連続生産性、平面性の内、少なくとも一つが△。
×:接着性、視認性、フィルム連続生産性、平面性の内、少なくとも一つが×。
【0076】
(ポリエステル樹脂(A)の製造)
製造例1:
ジメチルテレフタレート100モル%、エチレングリコール100モル%、および酢酸カルシウム一水塩0.07重量部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノール留去させエステル交換反応を行い、反応開始後、約4時間半を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次に燐酸0.04重量部および三酸化アンチモン0.035重量部を添加し、常法に従って重合した。すなわち、反応温度を徐々に上げて、最終的に280℃とし、一方、圧力は徐々に減じて、最終的に0.05mmHgとした。4時間後、反応を終了し、常法に従い、チップ化してポリエステル樹脂(A)を得た(固有粘度:0.66dl/g)。
【0077】
(共重合ポリエステル樹脂(B)の製造)
製造例1において、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、ジオール成分としてイソソルバイド成分が30モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール成分が50モル%、エチレングリコール成分が20モル%となるように反応を行ったこと以外は、ポリエステル樹脂(A)の製造と同様の方法を用いて共重合ポリエステル樹脂(B)を得た(固有粘度:0.68dl/g)。
【0078】
(共重合ポリエステル樹脂(C)の製造)
製造例1において、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール成分が75モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール成分が25モル%となるように反応を行ったこと以外は、ポリエステル樹脂(A)の製造と同様の方法を用いて共重合ポリエステル樹脂(C)を得た(固有粘度:0.70dl/g)。
【0079】
(共重合ポリエステル樹脂(D)の製造)
製造例1において、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、ジオール成分として1,4-シクロヘキサンジメタノール成分が100モル%となるように反応を行ったこと以外は、ポリエステル樹脂(A)の製造と同様の方法を用いて共重合ポリエステル樹脂(D)を得た(固有粘度:0.75dl/g)。
【0080】
(共重合ポリエステル樹脂(E)の製造)
製造例1において、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール成分が65モル%、1,3-プロパンジオール成分が35モル%となるように反応を行ったこと以外は、ポリエステル樹脂(A)の製造と同様の方法を用いて共重合ポリエステル樹脂(E)を得た(固有粘度:0.75dl/g)。
【0081】
(共重合ポリエステル樹脂(F)の製造)
製造例1において、ジカルボン酸成分として2,6-ナフタレンジカルボン酸成分が100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール成分が100モル%となるように反応を行ったこと以外は、ポリエステル樹脂(A)の製造と同様の方法を用いて共重合ポリエステル樹脂(F)を得た(固有粘度:0.72dl/g)。
【0082】
(共重合ポリエステル樹脂(G)の製造)
製造例1において、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が75モル%、イソフタル酸成分が25モル%、ジオール成分としてエチレングリコール成分が100モル%となるように反応を行ったこと以外は、ポリエステル樹脂(A)の製造と同様の方法を用いて共重合ポリエステル樹脂(G)を得た(固有粘度:0.70dl/g)。
【0083】
(共重合ポリエステル樹脂(H)の製造)
上記共重合ポリエステル樹脂(B)を製造する際、さらに平均粒径2μmの非晶質シリ
カを3000ppm添加し、共重合ポリエステル樹脂(H)を作成した。
【0084】
(ポリエステルフィルムの製造)
実施例1:
上記共重合ポリエステル樹脂(B)を溶融押出機により溶融押出して単層構成の無定形シートを得た。ついで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、下記塗布層構成からなる塗布液を塗布厚み(乾燥後)が0.05g/m2になるように塗布した後、テンターに導き、150℃にて横方向に4.0倍延伸した後、180℃で10秒間の熱処理を行い、厚み25μmの一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0085】
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・ポリビニルアルコール(I):
ケン化度88mol%、重合度500のポリビニルアルコール
・イソシアネート系化合物(II):
ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とマレイン酸とのポリエステル(分子量2000)200重量部に、ヘキサメチレンジイソシアネート33.6重量部を添加し、100℃で2時間反応を行った。次いで系の温度を一旦50℃まで下げ、30重量%重亜硫酸ナトリウム水溶液73重量部を添加し、45℃で60分間攪拌を行った後、水718重量部で希釈したブロックイソシアネート系化合物。
・ポリエステル樹脂(III):
下記組成で共重合したポリエステル樹脂のカルボン酸系水分散体
モノマー組成:(酸成分)イソフタル酸/トリメリット酸//(ジオール成分)ジエチレングリコール/ネオペンチルグリコール=96/4//80/20(mol%)
・粒子(IV):平均粒径65nmのシリカゾル
上記化合物を用いて、I/II/III/IV=35/30/30/5(重量%)の比率で配合して、塗布液を作製した。
【0086】
実施例2:
延伸温度を変更する以外は実施例1と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。
【0087】
実施例3:
延伸温度、フィルム厚みを変更する以外は実施例1と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。
【0088】
実施例4:
延伸方式、延伸倍率を変更する以外は実施例1と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。
【0089】
実施例5~8:
実施例1において、フィルム厚みを変更する以外は実施例1と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。
【0090】
実施例9:
上記共重合ポリエステル樹脂(B)、(H)をそれぞれ90重量%、10重量%の割合で混合した混合原料を表層であるA層用の原料とし、共重合ポリエステル樹脂(B)を内層であるB層の原料とし、A層およびB層用原料を溶融押出機により溶融押出して(A/B/A)の2種3層積層の無定形シートを得た。ついで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、実施例1と同様に、塗布液を塗布した後、テンターに導き、150℃にて横方向に4.0倍延伸した後、180℃で10秒間の熱処理を行い、厚み25μm(A層:5μm、B層:20μm)の一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0091】
実施例10:
実施例9において、塗布層を設けないでフィルム表面にコロナ処理を施す以外は実施例9と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。
【0092】
実施例11:
上記ポリエステル樹脂(A)、共重合ポリエステル樹脂(B)をそれぞれ20重量%、80重量%の割合で混合した原料を溶融押出機により溶融押出して単層構成の無定形シートを得た。ついで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、実施例1と同様に、塗布液を塗布した後、テンターに導き、150℃にて横方向に4.0倍延伸した後、180℃で10秒間の熱処理を行い、厚み25μmの一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0093】
実施例12,13:
実施例11において、延伸温度を変更する以外は実施例11と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。
【0094】
実施例14:
実施例11において、延伸方式、延伸倍率、延伸温度を変更する以外は実施例11と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。
【0095】
実施例15~18:
実施例11において、フィルム厚みを変更する以外は実施例11と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。
【0096】
実施例19:
上記ポリエステル樹脂(A)、共重合ポリエステル樹脂(B)、(H)をそれぞれ20重量%、70重量%、10重量%の割合で混合した混合原料を表層であるA層用の原料とし、ポリエステル樹脂(A)、共重合ポリエステル樹脂(B)をそれぞれ20重量%、80重量%の割合で混合した混合原料を内層であるB層の原料とし、A層およびB層用原料を溶融押出機により溶融押出して(A層/B層/A層)の2種3層積層の無定形シートを得た。ついで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、実施例1と同様に、塗布液を塗布した後、テンターに導き、150℃にて横方向に4.0倍延伸した後、180℃で10秒間の熱処理を行い、厚み25μm(A層:5μm、B層:20μm)の一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0097】
実施例20:
実施例19において、塗布層を設けないでフィルム表面にコロナ処理を施す以外は実施例19と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。
【0098】
実施例21:
上記共重合ポリエステル樹脂(B)、(C)をそれぞれ80重量%、20重量%の割合で混合した原料を溶融押出機により溶融押出して単層構成の無定形シートを得た。ついで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、実施例1と同様に、塗布液を塗布した後、テンターに導き、150℃にて横方向に4.0倍延伸した後、180℃で10秒間の熱処理を行い、厚み25μmの一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0099】
実施例22,23:
実施例21において、延伸温度を変更する以外は実施例21と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。
【0100】
実施例24:
実施例21において、延伸方式、延伸倍率、延伸温度を変更する以外は実施例21と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。
【0101】
実施例25:
上記共重合ポリエステル樹脂(B)、(C)、(H)をそれぞれ70重量%、20重量%、10重量%の割合で混合した混合原料を表層であるA層用の原料とし、共重合ポリエステル樹脂(B)、(C)をそれぞれ80重量%、20重量%の割合で混合した混合原料を内層であるB層の原料とし、A層およびB層用原料を溶融押出機により溶融押出して(A層/B層/A層)の2種3層積層の無定形シートを得た。ついで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、実施例1と同様に製造して、厚み25μm(A層:5μm、B層:20μm)の一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0102】
実施例26:
上記共重合ポリエステル樹脂(B)、(D)をそれぞれ80重量%、20重量%の割合で混合した原料を溶融押出機により溶融押出して単層構成の無定形シートを得た。ついで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、実施例1と同様に塗布液を塗布した後、テンターに導き、140℃にて横方向に4.0倍延伸した後、180℃で10秒間の熱処理を行い、厚み25μmの一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0103】
実施例27:
上記共重合ポリエステル樹脂(B)、(E)をそれぞれ80重量%、20重量%の割合で混合した原料を溶融押出機により溶融押出して単層構成の無定形シートを得た。ついで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、実施例1と同様に塗布液を塗布した後、テンターに導き、140℃にて横方向に4.0倍延伸した後、180℃で10秒間の熱処理を行い、厚み25μmの一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0104】
実施例28:
上記共重合ポリエステル樹脂(B)、(F)をそれぞれ80重量%、20重量%の割合で混合した原料を溶融押出機により溶融押出して単層構成の無定形シートを得た。ついで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、実施例1と同様に、塗布液を塗布した後、テンターに導き、140℃にて横方向に4.0倍延伸した後、180℃で10秒間の熱処理を行い、厚み25μmの一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0105】
実施例29:
上記共重合ポリエステル樹脂(B)、(G)をそれぞれ80重量%、20重量%の割合で混合した原料を溶融押出機により溶融押出して単層構成の無定形シートを得た。ついで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、実施例1と同様に、塗布液を塗布した後、テンターに導き、140℃にて横方向に4.0倍延伸した後、180℃で10秒間の熱処理を行い、厚み25μmの一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0106】
比較例1:
実施例1において、延伸温度、フィルム厚みを変更する以外は実施例1と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムはReが大きく、偏光子保護用に用いた場合には視認性に劣るものであった。
【0107】
比較例2:
上記ポリエステル樹脂(A)、共重合ポリエステル樹脂(B)をそれぞれ35重量%、65重量%の割合で混合した原料を溶融押出機により溶融押出して単層構成の無定形シートを得た。ついで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、実施例1と同様に、塗布液を塗布した後、テンターに導き、140℃にて横方向に4.0倍延伸した後、180℃で10秒間の熱処理を行い、厚み25μmの一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは収縮率が大きく、偏光子保護用に用いた場合には平面性に劣るものであった。
【0108】
比較例3:
上記共重合ポリエステル樹脂(B)、(C)をそれぞれ65重量%、35重量%の割合で混合した原料を溶融押出機により溶融押出して単層構成の無定形シートを得た。ついで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、実施例1と同様に、塗布液を塗布した後、テンターに導き、140℃にて横方向に4.0倍延伸した後、180℃で10秒間の熱処理を行い、厚み25μmの一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは収縮率が大きく、偏光子保護用に用いた場合には平面性に劣るものであった。
【0109】
比較例4:
上記ポリエステル樹脂(A)を溶融押出機により溶融押出して単層構成の無定形シートを得た。ついで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、実施例1と同様に、塗布液を塗布した後、テンターに導き、100℃にて横方向に4.0倍延伸した後、180℃で10秒間の熱処理を行い、厚み25μmの一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムはReが大きく、偏光子保護用に用いた場合には視認性に劣るものであった。
【0110】
比較例5:
比較例4において、延伸方式、延伸倍率を変更する以外は比較例4と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムはReが大きく、偏光子保護用に用いた場合には視認性に劣るものであった。
【0111】
比較例6:
比較例5において、原料を上記共重合ポリエステル樹脂(C)に変更する以外は、比較例5と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは収縮率が大きく、偏光子保護用に用いた場合には平面性に劣るものであった。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
上記表1~4において、EGはエチレングリコール、ISはイソソルバイド、CHDMは1,4-シクロヘキサンジメタノール、PDOは1,3-プロパンジオール、NDCは2,6-ナフタレンジカルボン酸、TPAはテレフタル酸、IPAはイソフタル酸をそれぞれ意味する。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明のポリエステルフィルムは、例えば、液晶ディスプレイ、タッチパネル等に用いる各種光学部材に好適に利用することができる。