(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】安定化ハロゲン製造装置及び安定化ハロゲン製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/50 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
C02F1/50 550D
C02F1/50 531L
C02F1/50 531M
C02F1/50 531P
C02F1/50 532C
C02F1/50 532D
C02F1/50 532H
C02F1/50 532J
C02F1/50 532L
C02F1/50 540B
(21)【出願番号】P 2022517489
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2022011918
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2021093707
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敦士
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-009178(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208405(WO,A1)
【文献】特開2017-001908(JP,A)
【文献】特開2019-014612(JP,A)
【文献】特開2013-123680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0246295(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/50
C02F 1/70- 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化ハロゲンを製造するための装置であって、
ハロゲン系酸化剤水溶液の貯留タンク、
安定化剤水溶液の貯留タンク、
ハロゲン系酸化剤水溶液と安定化剤水溶液とが導入される、安定化ハロゲン生成用の混合槽、
ハロゲン系酸化剤水溶液貯留タンクから該混合槽にハロゲン系酸化剤を供給するためのハロゲン系酸化剤水溶液供給手段を備えたハロゲン系酸化剤水溶液供給路、
安定化剤水溶液貯留タンクから該混合槽に安定化剤水溶液を供給するための安定化剤水溶液供給手段を備えた安定化剤水溶液供給路、
該混合槽内の液を撹拌して混合する撹拌手段、
該安定化剤水溶液供給手段、ハロゲン系酸化剤水溶液供給手段及び該撹拌手段を制御する制御手段、及び
該
混合槽内の安定化ハロゲン水溶液を送出するための安定化ハロゲン水溶液供給路
を備えてなり、
該制御手段は、
該撹拌手段による撹拌により、該混合槽内に均一濃度の安定化ハロゲン水溶液が調製された後も撹拌を継続するように、該混合槽内を常時、実質的に連続的に撹拌するように該
撹拌手段を制御する
安定化ハロゲン製造装置。
【請求項2】
前記撹拌手段は、混合槽内の液を底部から上部へ循環させる循環手段である請求項1の安定化ハロゲン製造装置。
【請求項3】
前記循環路を循環する混合槽内の液に前記ハロゲン系酸化剤水溶液が供給されるよう、前記ハロゲン系酸化剤水溶液供給路が前記循環路に接続されている請求項2の安定化ハロゲン製造装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの安定化ハロゲン製造装置を用いた安定化ハロゲン製造方法であって、前記混合槽内を常時、実質的に連続的に撹拌しながら、
前記安定化剤水溶液供給手段により所定量の安定化剤水溶液を前記混合槽に供給する安定化剤水溶液供給工程と、
前記ハロゲン系酸化剤水溶液供給手段によって所定量のハロゲン系酸化剤水溶液を該混合槽に供給するハロゲン系酸化剤水溶液供給工程と
を行う安定化ハロゲン製造方法。
【請求項5】
前記ハロゲン系酸化剤水溶液供給工程においては、ハロゲン系酸化剤水溶液を複数回にわたって前記混合槽に供給する請求項4の安定化ハロゲン製造方法。
【請求項6】
前記ハロゲン系酸化剤水溶液供給工程の後、前記混合槽内を所定時間撹拌した後に薬注工程を行う請求項4又は5の安定化ハロゲン製造方法。
【請求項7】
前記ハロゲン系酸化剤水溶液供給工程において、前記混合槽内の液温上昇が所定値以上である場合、安定化剤水溶液を混合槽に追加する請求項4~6のいずれかの安定化ハロゲン製造方法。
【請求項8】
前記混合槽内で常時、実質的に連続的に行われる撹拌は、単位時間における撹拌停止時間の割合が25%以下となる撹拌である請求項4~6のいずれかの安定化ハロゲン製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水系に安定化ハロゲンを供給するための安定化ハロゲン製造装置及び安定化ハロゲンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水系やRO(逆浸透)装置への給水系などにおいて、水系に安定化ハロゲンを添加することにより、冷却水系の防藻や、RO装置の膜ファウリングを防止することが行われている(特許文献1~2)。
【0003】
特許文献1には、塩素系酸化剤とスルファミン酸及び/又はスルファミン酸塩とを含有する防藻組成物を冷却水系や排水処理水系等に添加することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、塩素系酸化剤及びスルファミン酸化合物を含有するスライム防止剤を膜分離装置の給水又は洗浄水に添加することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-267812号公報
【文献】特開2006-263510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
次亜塩素酸や次亜塩素酸ナトリウム等のハロゲン系酸化剤の水溶液とスルファミン酸化合物等の安定化剤水溶液とを予め添加薬剤製造工場にて混合して添加薬剤水溶液を調製し、添加対象施設(以下、現場ということがある。)まで運搬して水系に添加する場合に比べ、ハロゲン系酸化剤と安定化剤とを別々に添加対象施設に搬入し、現場にて混合して添加薬剤を調製する方が、種々のコストの点において有利である。
【0007】
現場にてハロゲン系酸化剤水溶液と安定化剤水溶液とを混合槽に供給して混合し、添加薬剤水溶液を調製する場合、混合槽へのハロゲン系酸化剤の供給停止時に、チャッキ弁の故障などで意図せずに混合槽にハロゲン系酸化剤が漏れ出し、その結果、安定化剤とハロゲン系酸化剤とのバランスが局所的にくずれることで、安定化剤の分解反応が生じ、窒素ガスの生成と温度の上昇することを防止するために、混合槽内の液を均一状態に維持し、また、ハロゲン系酸化剤と安定化剤とが急激に反応しないように対策を講じる必要がある。
【0008】
本発明は、混合槽内の液を均一状態に維持し、また、ハロゲン系酸化剤と安定化剤との急激な反応を生じさせることなくハロゲン系酸化剤水溶液と安定化剤水溶液とを混合して安定化ハロゲン水溶液を調製することができる安定化ハロゲン製造装置及び製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の安定化ハロゲン製造装置及び安定化ハロゲン製造方法は、以下の通りである。
【0010】
[1] 安定化ハロゲンを製造するための装置であって、ハロゲン系酸化剤水溶液の貯留タンク、安定化剤水溶液の貯留タンク、ハロゲン系酸化剤水溶液と安定化剤水溶液とが導入される、安定化ハロゲン生成用の混合槽、ハロゲン系酸化剤水溶液貯留タンクから該混合槽にハロゲン系酸化剤を供給するためのハロゲン系酸化剤水溶液供給手段を備えたハロゲン系酸化剤水溶液供給路、安定化剤水溶液貯留タンクから該混合槽に安定化剤水溶液を供給するための安定化剤水溶液供給手段を備えた安定化剤水溶液供給路、該混合槽内の液を撹拌して混合する撹拌手段、該安定化剤水溶液供給手段、ハロゲン系酸化剤水溶液供給手段及び該撹拌手段を制御する制御手段、及び該反応槽内の安定化ハロゲン水溶液を送出するための安定化ハロゲン水溶液供給路を備えてなり、該制御手段は、該混合槽内を常時、実質的に連続的に撹拌するように該混合手段を制御する安定化ハロゲン製造装置。
【0011】
[2] 前記撹拌手段は、混合槽内の液を底部から上部へ循環させる循環手段及び循環路である[1]の安定化ハロゲン製造装置。
【0012】
[3] 前記循環路を循環する混合槽内の液に前記ハロゲン系酸化剤水溶液が供給されるよう、前記ハロゲン系酸化剤水溶液供給路が前記循環路に接続されている[2]の安定化ハロゲン製造装置。
【0013】
[4] [1]~[3]のいずれかの安定化ハロゲン製造装置を用いた安定化ハロゲン製造方法であって、前記混合槽内を常時連続的に撹拌しながら、前記安定化剤水溶液供給手段により所定量の安定化剤水溶液を前記混合槽に供給する安定化剤水溶液供給工程と、前記ハロゲン系酸化剤水溶液供給手段によって所定量のハロゲン系酸化剤水溶液を該混合槽に供給するハロゲン系酸化剤水溶液供給工程とを行う安定化ハロゲン製造方法。
【0014】
[5] 前記ハロゲン系酸化剤水溶液供給工程においては、ハロゲン系酸化剤水溶液を複数回にわたって前記混合槽に供給する[4]の安定化ハロゲン製造方法。
【0015】
[6] 前記ハロゲン系酸化剤水溶液供給工程の後、前記混合槽内を所定時間撹拌した後に薬注工程を行う[4]又は[5]の安定化ハロゲン製造方法。
【0016】
[7] 前記ハロゲン系酸化剤水溶液供給工程において、前記混合槽内の液温上昇が所定値以上である場合、安定化剤水溶液を混合槽に追加する[4]~[6]のいずれかの安定化ハロゲン製造方法。
[8] 前記混合槽内で常時、実質的に連続的に行われる撹拌は、単位時間における撹拌停止時間の割合が25%以下となる撹拌である[4]~[7]のいずれかの安定化ハロゲン製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、混合槽内を常時連続的に撹拌することにより、混合槽内の液を均一状態に維持することができる。本発明によると、次の課題すなわち、混合槽へのハロゲン系酸化剤の供給停止時に、チャッキ弁の故障などで意図せずに混合槽にハロゲン系酸化剤が漏れ出し、その結果、安定化剤とハロゲン系酸化剤とのバランスが局所的にくずれることで、安定化剤の分解反応が生じ、窒素ガスが生成し温度が上昇するという課題が解決される。また、本発明によると、ハロゲン系酸化剤と安定化剤との急激な反応を生じさせることなくハロゲン系酸化剤水溶液と安定化剤水溶液とを混合して安定化ハロゲン製造水溶液を調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態に係る安定化ハロゲン供給装置の構成図である。
【
図2】
図1の安定化ハロゲン供給装置の作動を示す説明図である。
【
図3】
図1の安定化ハロゲン供給装置の作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明では、ハロゲン系酸化剤と安定化剤とを反応させて安定化ハロゲンを生成させる。
【0020】
ハロゲン系酸化剤としては、塩素系酸化剤、臭素系酸化剤のいずれでもよい。
【0021】
本発明で用いる塩素系酸化剤に特に制限はなく、例えば、次亜塩素酸又はその塩、亜塩素酸又はその塩、塩素酸又はその塩、過塩素酸又はその塩、塩素化イソシアヌル酸又はその塩などを挙げることができる。これらのうち、塩形のものの具体例としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムなどの次亜塩素酸アルカリ金属塩、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸バリウムなどの次亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムなどの亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸バリウムなどの亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ニッケルなどの他の亜塩素酸金属塩、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウムなどの塩素酸アルカリ金属塩、塩素酸カルシウム、塩素酸バリウムなどの塩素酸アルカリ土類金属塩などを挙げることができる。これらの塩素系酸化剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの中で、次亜塩素酸塩は取り扱いが容易なので、好適に用いることができる。
【0022】
臭素系酸化物としては、上記塩素系酸化剤と同様のもの(塩素を臭素に置換したもの)を用いることができる。
【0023】
本発明で用いる安定化剤としてはスルファミン酸化合物が好適である。スルファミン酸化合物としては、一般式(1)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【0024】
(R1)(R2)―N―SO3H …(1)
一般式(1)において、R1及びR2は、各々独立に、水素又は炭素数1~8の炭化水素である。
【0025】
このようなスルファミン酸化合物としては、例えば、R1とR2がともに水素であるスルファミン酸のほかに、N-メチルスルファミン酸、N,N-ジメチルスルファミン酸、N-フェニルスルファミン酸などを挙げることができる。本発明に用いるスルファミン酸化合物のうち、前記化合物の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩などの他の金属塩、アンモニウム塩及びグアニジン塩などを挙げることができ、具体的には、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウム、スルファミン酸カルシウム、スルファミン酸ストロンチウム、スルファミン酸バリウム、スルファミン酸鉄、スルファミン酸亜鉛などを挙げることができる。スルファミン酸及びこれらのスルファミン酸塩は、1種を単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0026】
次亜塩素酸塩等の塩素系酸化剤や臭素系酸化剤とスルファミン酸塩等のスルファミン酸化合物を混合すると、これらが結合して、クロロスルファミン酸塩又はブロモスルファミン酸塩を形成して安定化し、水中で安定した遊離塩素又は臭素濃度を保つことが可能となる。
【0027】
本発明において、ハロゲン系酸化剤とスルファミン酸化合物との混合割合は、ハロゲン系酸化剤の有効ハロゲン1モルあたりスルファミン酸化合物を0.5~5.0モルとすることが好ましく、0.5~2.0モルとすることがより好ましい。
【0028】
本発明の装置及び方法によって調製された安定化ハロゲンは、冷却水系や逆浸透膜装置の給水系などに添加するのに好適であるが、これに限定されない。
【0029】
図1を参照して安定化ハロゲン製造装置の構成について説明する。
【0030】
安定化剤水溶液タンク1内の安定化剤水溶液が、ポンプ2及び配管3を介して混合槽10に供給可能とされている。また、ハロゲン系酸化剤水溶液タンク4内のハロゲン系酸化剤水溶液がポンプ5及び配管6を介して混合槽10に供給可能とされている。配管3の末端は、混合槽10内の上部において、槽内壁面に向って液を注ぎかけ得るように傾斜形状となっている。そして、配管6の末端は、ハロゲン系酸化剤水溶液が後述する配管14を流れる槽内液(安定化ハロゲン水溶液)に直接注入可能なよう、配管14に接続されている。このようにハロゲン系酸化剤水溶液を安定化ハロゲン水溶液に直接注入することで、ハロゲン系酸化剤が揮発し反応槽上部、及び装置周辺が酸化劣化することを防ぐことが可能となる。また、配管14内を流れる安定化ハロゲン水溶液がハロゲン系酸化剤水溶液に直接注入されることで、ハロゲン系酸化剤と安定化ハロゲン水溶液とを効率よく混合することが可能となり、局所的にハロゲン濃度が過剰となることを防ぐことが可能となる。なお、配管3,6には緊急遮断弁や逆止弁、その他のバルブ類が設けられている。
【0031】
混合槽10には、槽内液を撹拌するための撹拌手段11が設けられている。
【0032】
この実施の形態では、撹拌手段11は、混合槽10の底部から配管12によって槽内の液を抜き出し、循環ポンプ13及び配管14によって液を混合槽10の上部へ循環させるよう構成されている。配管12には液温検出用の温度センサ15が設けられている。配管14には流量計16とフロートスイッチ26が設けられている。配管14の末端は、混合槽10内において、槽内壁面に液を注ぎかけ得るように傾斜している。
【0033】
混合槽10には、槽内の液レベルを検出するための水位センサ17が設けられている。水位センサ17の下端は、混合槽10の底部近傍に位置している。
配管3,14の末端を傾斜形状とすることで、混合槽10の上部から液が落ちることで発生する気泡を抑制し、水位センサ17の測定値が安定する。
【0034】
混合槽10には、槽内の水位が上限水位に到達したことを検知するためのフロートスイッチ18が設けられている。
【0035】
混合槽10の上部には、該上限水位よりも水位が上昇したときにオーバーフローさせるためのオーバーフロー管19がエアベント管29と一体的に設けられている。このようにエアベント管29とオーバーフロー官19とを一体的に設けることで、エアベント管29内に発生した結露水を原因とする、装置底部に配置した漏水センサ(WLS)30の誤作動を防止することができる。
【0036】
混合槽10の下部には、調製された安定化ハロゲン水溶液を薬注箇所に送液するための、薬注ポンプ20を有した薬注配管21が接続されている。
【0037】
なお、薬注ポンプ20によって薬注箇所に薬注する代りに、ポンプ20によって安定化ハロゲン水溶液貯槽(図示略)に送液し、該貯槽内に貯留しておいて安定化ハロゲン水溶液を薬注に使用してもよい。
【0038】
この安定化ハロゲン製造装置を用いた安定化ハロゲン製造方法について、
図2,3を参照して説明する。
【0039】
図2(1)の通り、初期状態では混合槽10内は空となっている。安定化ハロゲン水溶液を調製するには、
図2(2)及び
図3のステップS1(初期安定液注入工程)の通り、まず混合槽10内に安定化剤水溶液を水位がZとなるまで注入する。この水位Zは、水位センサ17の検出下限水位LLよりも若干上位である。なお、混合槽10内の液面は、液の流入時には安定しないので、流入停止後、所定時間(例えば数秒)経過した時点の水位を確定値とすることが望ましい。なお、この工程では混合槽10内の液面が低く、循環ポンプ13が空運転する可能性があるため、循環ポンプ13は停止となっている。
【0040】
次に、
図2(3)及びステップS2の通り、循環ポンプ13を稼働することで混合槽10内の液を撹拌しながら、安定化剤水溶液を水位X分だけさらに混合槽10内に注入する。これにより、混合槽10内の水位はZ+Xとなる。Z+Xの水位は、予め設定した規定水位Mよりも若干上位である。
【0041】
次に、
図2(4)及びステップS3の通り、混合槽10内の液を撹拌しながらハロゲン系酸化剤水溶液を規定量(槽内の増加水位分としてYだけ)添加する。なお、この際、ハロゲン系酸化剤水溶液を連続的に添加してもよく、少量ずつ(例えばYの1/3~1/5ずつ)複数回(例えば3回~5回)添加してもよい。
【0042】
規定量のハロゲン系酸化剤水溶液を添加した後、さらに所定時間撹拌を行い、混合槽10内に均一濃度の安定化ハロゲン水溶液を生成させる。
【0043】
均一濃度の安定化ハロゲン水溶液が調製された後も、循環ポンプ13による混合槽10内の撹拌を継続する。
【0044】
安定化ハロゲン水溶液調製後、薬注需要箇所(例えば逆浸透(RO)システムや循環式冷却水系など)からの薬注要求信号の入力があった場合には、薬注ポンプ20を作動させて薬注を行う(
図2(5)、ステップS4,S5)。このときも混合槽10内は撹拌されている。
【0045】
薬注は、設定量を添加する方式で行われてもよく、薬注需要箇所からの薬注停止要求信号が送信されるまで行われてもよい。
【0046】
薬注終了後、混合槽10内の水位が基準水位Mより高い場合には、ステップS4に戻る。薬注終了後、混合槽10内の水位が基準水位M以下である場合には、ステップS2に戻り、再度安定化ハロゲン水溶液を調製する。即ち、
図2(5)~(6)のように、混合槽10に安定化剤水溶液を水位X分だけ添加した後、
図2(7)のようにハロゲン系酸化剤水溶液を水位Y分だけ添加し、混合して安定化ハロゲン水溶液を調製する。この場合も、混合槽10内を常時撹拌する。
【0047】
このように、この安定化ハロゲン製造装置及び方法では、初期安定液注入工程を除き混合槽10内を常時連続的に撹拌するので、混合槽10内の液が均一状態に維持され、混合槽10へのハロゲン系酸化剤の供給停止時に、チャッキ弁の故障などで意図せずに混合槽にハロゲン系酸化剤が漏れ出し、その結果、安定化剤とハロゲン系酸化剤とのバランスが局所的にくずれることで、安定化剤の分解反応が生じ、窒素ガスの生成と温度の上昇することが防止され、また、ハロゲン系酸化剤と安定化剤とが急激に反応することがなく、安定して安定化ハロゲン水溶液を製造することができる。
【0048】
なお、上記実施の形態では、常時連続して、すなわち撹拌停止を間に挟むことなく継続的に撹拌を行うものとなっているが、撹拌は実質的に連続的であればよく、撹拌の途中で一時的に撹拌を停止してもよい。1回の撹拌停止時間は15分以下、特に5分以下であることが好ましい。また、単位時間(例えば1時間又は1日)に占める撹拌停止時間の割合は25%以下、特に10%以下であることが好ましい。
【0049】
この実施の形態では、安定化ハロゲン水溶液の調製プロセスは次のような非常時等への対策を備えることが好ましい。
【0050】
<液温急上昇対策(1)>
液を撹拌しながらハロゲン系酸化剤水溶液を添加しているとき(
図2(3)→(4)、又は(6)→(7))に、何らかの原因で液温が想到値よりも急激に上昇することが考えられる。
【0051】
この場合には、安定化剤水溶液を所定量(例えば前記添加量Xの30~70%、特に40~60%程度)追加する。通常は、これにより、ハロゲン系酸化剤と安定化剤との反応が穏やかとなり、液温が想定値以下となる。この対策を行っても液温が想定値まで低下しないときには、運転を停止し、装置の点検を行う。
【0052】
なお、このような液温管理を行うために、安定化剤水溶液やハロゲン系酸化剤水溶液の温度及び安定化剤水溶液の流入完了時の混合槽10内の液温をメモリに記憶させておき、これらに基づいてその後の混合槽10内の温度の上昇をチェックすることが好ましい。
【0053】
<液温急上昇対策(2)>
水系に薬注を行っているとき(
図2(4)→(5)、又は(7)→(5))又は薬注待機しているときに液温が急上昇した場合には、混合槽内の撹拌を強くする。なお、このような液温管理を行うために、安定化ハロゲン水溶液調製完了時の液温をメモリに記憶させておき、これらに基づいてその後の混合槽10内の温度の上昇をチェックすることが好ましい。
【0054】
<ポンプ作動不良検知>
ポンプ2又は5を作動開始させてから所定量の安定化剤水溶液又はハロゲン系酸化剤水溶液の注入完了までに要する時間を計測し、注入所要時間が規定時間以内であるか否かによってポンプ作動をチェックする。
【0055】
循環ポンプ13については、流量計16の検出流量及びフロートスイッチ26によって作動をチェックすることができる。
【0056】
<安定化剤水溶液又はハロゲン系酸化剤水溶液の漏れ込み対策>
何らかの原因で配管3又は6から水溶液が混合槽10に漏れ込んだ場合には、混合槽10内の水位が想定値よりも上昇する。そこで、水位センサ17の検出水位に基づいて、これらの液漏れ込みをチェックする。なお、ハロゲン系酸化剤水溶液の漏れ込みがあった場合には、反応熱により混合槽10内の温度が予期せずに上昇するので、この温度上昇に基づいても、ハロゲン系酸化剤水溶液の漏れ込みをチェックすることができる。
【0057】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の構成とされてもよい。例えば、混合槽10内の撹拌手段は、撹拌羽根であってもよい。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
本出願は、2021年6月3日付で出願された日本特許出願2021-93707に基づいており、その全体が引用により援用される。
【符号の説明】
【0058】
1 安定化剤水溶液タンク
4 ハロゲン系酸化剤水溶液タンク
10 混合槽
11 撹拌手段
13 循環ポンプ
17 水位センサ
18,26 フロートスイッチ
19 オーバーフロー管
【要約】
混合槽内の液を均一状態に維持し、また、ハロゲン系酸化剤と安定化剤との急激な反応を生じさせることなくハロゲン系酸化剤水溶液と安定化剤水溶液とを混合して安定化ハロゲン製造水溶液を調製する。混合槽10内を常時、実質的に連続的に撹拌しながらタンク1から安定化剤水溶液を混合槽10に供給し、ハロゲン系酸化剤水溶液をタンク4から混合槽10に供給する。その後、混合槽10内をさらに撹拌して安定化ハロゲン水溶液を調製し、薬注する。撹拌は循環ポンプ13によって行われる。