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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-11
(45)【発行日】2022-10-19
(54)【発明の名称】液体塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/08 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
B05C1/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018120261
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020000959
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 武志
(72)【発明者】
【氏名】清水 英満
(72)【発明者】
【氏名】三浦 秀宣
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-076032(JP,A)
【文献】特開平5-220847(JP,A)
【文献】特開2010-256757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00- 3/20
7/00-21/00
B05D1/00- 7/26
G02B5/00- 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺基材を長さ方向に搬送するための搬送手段と、
前記長尺基材の表面に液体を塗布するためのグラビアロールと、
前記長尺基材と前記グラビアロールとを接触させるためのバックアップロールと
を備え、
前記グラビアロールの幅は、長尺基材への液体塗布幅よりも広くなっており、
前記長尺基材の幅方向における両端部のそれぞれにおいて、長尺基材とグラビアロールとの間に、搬送される長尺基材の端部に接触しながら該端部をグラビアロールから離すための2以上の長尺基材離隔部材が設けられており、
前記2以上の長尺基材離隔部材は、長尺基材の搬送方向において異なる位置に設けられており、
前記長尺基材離隔部材は、長尺基材と接触する長尺基材接触面の長尺基材への液体塗布面に対する角度が10度以下であり、
前記長尺基材は樹脂フィルムであり、
前記長尺基材の厚みは、10μm以上200μm以下であり、
前記長尺基材の幅は、100mm以上2000mm以下であり、
前記長尺基材の端部が前記長尺基材離隔部材によって持ち上げられることにより、前記長尺基材の幅方向に撓みが生じ、前記撓みの幅は8mm以下であり、
前記液体は接着剤であり、
前記長尺基材は、前記樹脂フィルムの一方の面に剥離性硬化物層を有する多層フィルムであり、および長尺基材幅方向の両端部においてウェーブカールを有し、
前記接着剤が前記剥離性硬化物層上からはみ出さずに塗布されることを特徴とする液体塗布装置。
【請求項2】
前記長尺基材離隔部材は、長尺基材の幅方向の両端部において、グラビアロールの回転軸を基準に長尺基材の搬送方向の上流側と下流側のそれぞれに1以上設けられる、請求項1に記載の液体塗布装置。
【請求項3】
前記長尺基材離隔部材は、長尺基材の幅方向において可動式である、請求項1または2に記載の液体塗布装置。
【請求項4】
前記長尺基材離隔部材は、搬送方向から見て断面形状が楔形である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体塗布装置。
【請求項5】
前記長尺基材離隔部材と長尺基材とが接触する幅は、長尺基材の搬送方向において1mm以上20mm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体塗布装置。
【請求項6】
前記長尺基材離隔部材と長尺基材とが接触する幅は、長尺基材の幅方向において1mm以上100mm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の液体塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺基材に液体を塗布するためのロールを備えた液体塗布装置が知られている(特許文献1乃至3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-220847号公報
【文献】特開2014-188410号公報
【文献】特開2000-24565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長尺基材に液体を塗布するとき、長尺基材の両端部に液体非塗布部分を形成することが要求される場合がある。
【0005】
本発明の目的は、長尺基材の両端部に液体非塗布部分を形成しながら長尺基材に液体を塗布することができ、長尺基材の液体塗布幅の安定性および長尺基材の搬送性に優れた塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様[1]~[7]を含む。
[1]長尺基材を長さ方向に搬送するための搬送手段と、
前記長尺基材の表面に液体を塗布するためのグラビアロールと、
前記長尺基材と前記グラビアロールとを接触させるためのバックアップロールと
を備え、
前記グラビアロールの幅は、長尺基材への液体塗布幅よりも広くなっており、
前記長尺基材の幅方向における両端部のそれぞれにおいて、長尺基材とグラビアロールとの間に、搬送される長尺基材の端部に接触しながら該端部をグラビアロールから離すための2以上の長尺基材離隔部材が設けられており、
前記2以上の長尺基材離隔部材は、長尺基材の搬送方向において異なる位置に設けられており、
前記長尺基材離隔部材は、長尺基材と接触する長尺基材接触面の長尺基材への液体塗布面に対する角度が10度以下である
ことを特徴とする液体塗布装置。
[2]前記長尺基材離隔部材は、長尺基材の幅方向の両端部において、グラビアロールの回転軸を基準に長尺基材の搬送方向の上流側と下流側のそれぞれに1以上設けられる、[1]に記載の液体塗布装置。
[3]前記長尺基材離隔部材は、長尺基材の幅方向において可動式である、[1]または[2]に記載の液体塗布装置。
[4]前記長尺基材離隔部材は、搬送方向から見て断面形状が楔形である、[1]~[3]のいずれかに記載の液体塗布装置。
[5]前記長尺基材離隔部材と長尺基材とが接触する幅は、長尺基材の搬送方向において1mm以上20mm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の液体塗布装置。
[6]前記長尺基材離隔部材と長尺基材とが接触する幅は、長尺基材の幅方向において1mm以上100mm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の液体塗布装置。
[7]前記長尺基材は、一方の面に剥離性硬化物層を有する多層フィルムである、[1]~[6]のいずれかに記載の液体塗布装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長尺基材の両端部に液体非塗布部分を形成しながら長尺基材に液体を塗布することが可能な、長尺基材の液体塗布幅の安定性に優れた塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の液体塗布装置の一例を示す長尺基材搬送方向から見た概略断面図である。
図2】本発明の液体塗布装置の一例を示す長尺基材幅方向から見た概略断面図である。
図3】長尺基材の持ち上げられた端部の概略断面図である。
図4】実施例1に用いた長尺基材離隔部材1を示す概略図である。
図5】本発明の液体塗布装置を備える積層体の製造装置の一例を示す概略図である。
図6】実施例1に用いた液体塗布装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(液体塗布装置)
本発明の液体塗布装置について、以下、図面を参照して説明する。
【0010】
図1および図2は、本発明の一態様に係る液体塗布装置を模式的に示す。図1中、円弧状破線矢印はロールの回転方向を示し、矢印110は、長尺基材の搬送方向を示す。液体塗布装置101は、長尺基材102を長さ方向に搬送するための搬送手段の一部としてのガイドロール103と、長尺基材102の表面に液体106を塗布するためのグラビアロール104と、液体供給循環手段105と、長尺基材102とグラビアロール104とを接触させるためのバックアップロール107とを備える。さらに、液体塗布装置101は、長尺基材102の幅方向(以下、長尺基材幅方向ともいう)における両端部において、長尺基材102とグラビアロール104との間に、搬送される長尺基材の端部に接触しながら該端部をグラビアロールから離すための2以上の長尺基材離隔部材108が設けられており、長尺基材幅方向における両端部のそれぞれにおいて2以上の長尺基材離隔部材108は、長尺基材の搬送方向において異なる位置に設けられている。液体塗布装置101は、図1において、グラビアロール104を長尺基材102の搬送方向(以下、長尺基材搬送方向ともいう)と逆方向に回転させるリバースグラビアコート方式として示されているが、グラビアロール104を長尺基材搬送方向と正方向に回転させるコート方式であってもよい。
【0011】
長尺基材102は、例えば樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板、ガラスシート、ガラス板等であってよい。中でも好ましいのは樹脂フィルムである。樹脂フィルムは、長尺の樹脂フィルムであってよく、枚葉状樹脂フィルムであってよい。樹脂フィルムは、図1に示される通り、連続的に塗布できる点で長尺の樹脂フィルムが好ましい。また、樹脂フィルムは、単層であっても、複数の樹脂フィルムが積層体された多層フィルムであってもよい。多層フィルムとしては、例えば樹脂フィルムの一方の面に剥離性硬化物層を有する多層フィルム等が挙げられる。
【0012】
一般に、長尺基材102を搬送する場合、長尺基材幅方向の両端部においてウェーブカールが発生し易く、基材厚みが厚いほどその発生が顕著になる傾向にある。長尺基材102が一方の面に剥離性硬化物層を有する多層フィルムである場合、このようなウェーブカールにより剥離性硬化物層の樹脂フィルムからの剥落が生じる場合がある。しかしながら、本発明によれば、長尺基材102の幅方向両端部を特定角度以下で持ち上げることにより、ウェーブカールによる剥離性硬化物層の樹脂フィルムからの剥落への影響が低減され易くなる傾向にある。
【0013】
また、従来、液体塗布時に長尺基材102が蛇行することにより、長尺基材102への液体塗布幅にばらつきが生じることがあった。そのため、長尺基材102が一方の面に剥離性硬化物層を有する多層フィルムであり、液体106として接着剤を塗工した後、長尺基材102とさらなる長尺基材とを接着剤を介して貼合する場合、剥離性硬化物層上から接着剤がはみ出して長尺基材102上に接着剤が塗工されることにより、長尺基材102とさらなる長尺基材とが接着剤により直接的に接着する箇所が発生し、剥離性硬化物層の長尺基材102からの部分的な剥離が起こったり、長尺基材102とさらなる長尺基材とを剥離できなくなったりすることがあった。しかしながら、本発明によれば、液体106の塗工安定性に優れるため、剥離性硬化物層上から接着剤がはみ出しにくくなる。したがって、本発明の液体塗布装置101は、剥離性硬化物層を有する多層フィルムの塗工に好適である。
【0014】
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂等が挙げられる。中でも好ましくは透光性を有する熱可塑性樹脂であり、より好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂で構成されるフィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えばトリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、シクロオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂等であってよい。また、樹脂フィルムは、例えばポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等から構成されるフィルムであってもよい。これらの樹脂は、単独でまたは組合わせて用いることができる。
【0015】
長尺基材102の厚みは、例えば1μm以上1mm以下であってよく、好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上200μm以下、さらに好ましくは20μm以上100μm以下である。長尺基材102の厚みが1μm以上1mm以下である場合、長尺基材102が破断しにくく、かつ搬送安定性が向上し易い傾向にある。
【0016】
長尺基材102の幅は、例えば100mm以上2000mm以下であってよく、好ましくは200mm以上1800mm以下、より好ましくは400mm以上1500mm以下である。
【0017】
長尺基材102と液体106との密着性を高めるために、長尺基材102に液体106を塗布するのに先立って、長尺基材102の塗布面に表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えばコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線処理、プライマー塗布処理、ケン化処理などの表面処理が挙げられる。中でも均一な処理が可能であり、装置が簡便でコストが低い観点から好ましくはコロナ放電処理およびプラズマ処理である。
【0018】
搬送手段103は、長尺基材102を長さ方向に搬送するためのロールである。搬送手段103は、例えば駆動ロール(例えばニップロール、サクションロール等)、ガイドロール(フリーロール)、巻取装置およびこれらの組合せ等であってよい。
【0019】
長尺基材102を搬送する速度は、例えば1m/分以上100m/分以下であってよく、好ましくは5m/分以上50m/分以下、より好ましくは15m/分以上30m/分以下である。
【0020】
グラビアロール104は、表面に凹凸の彫刻加工が施されており、その表面が塗布する液体106と接触することにより、グラビアロール104の表面の凹部に液体106を溜め、グラビアロール104の表面の余分な液体をブレード109で掻き落とした後、回転しながら長尺基材102がバックアップロール107により押付けられることによりグラビアロール104の凹部に溜った液体106を長尺基材102に転写させる。グラビアロール104を長尺基材102へ押付ける圧力は、長尺基材102の張力やバックアップロール107の長尺基材102への押付け深さによって調節することができる。
【0021】
グラビアロール104の幅(グラビアロール104における長尺基材幅方向長さ)は、長尺基材102の幅および長尺基材への液体塗布幅より広くなっている。グラビアロール104の幅は、例えば200mm以上2500mm以下であってよく、好ましくは300mm以上2200mm以下、より好ましくは500mm以上2000mm以下である。
【0022】
グラビアロール104の直径は、例えば50mm以上500mm以下であってよい。
【0023】
グラビアロール104の液体106の塗布量は、例えば0.05g/m以上12g/m以下であってよく、好ましくは0.2g/m以上6g/m以下、より好ましくは0.5g/m以上4g/m以下である。グラビアロール104の液体106の塗布量が0.05g/m以上12g/m以下である場合、液垂れ等による塗布ムラが生じにくく、かつ目的とする液体106の塗布膜厚が得られ易くなる傾向にある。塗布量はグラビアロール104の彫刻加工の種類、凹凸の深さ、回転数、押付け圧等の選択により調節することができる。
【0024】
グラビアロール104の回転速度は、例えば1回転/分以上100回転/分以下であってよく、好ましくは10回転/分以上80回転/分以下、より好ましくは15回転/分以上60回転/分以下である。グラビアロール104の回転速度が1回転/分以上100回転/分以下である場合、液体106を長尺基材102へ均一に塗布し易くなる傾向にある。
【0025】
グラビアロール104の表面に彫刻加工される凹凸の形状は、例えば格子型、ハニカム型、斜線型等であってよい。凹凸部の幅および深度は、例えば1μm以上3mm以下であってよい。
【0026】
液体塗布装置101は、液体供給循環手段105を備える。液体供給循環手段105は、液体106を矢印111方向から矢印112方向へ循環させながらグラビアロール104の表面に供給する。液体106自体またはそれに含まれる揮発性成分の気化および液体106への異物混入を防止するために、液体供給循環手段105は密閉型が好ましい。
【0027】
液体106は、グラビアコーティング可能な溶液や分散液等であれば特に限定されず、例えば活性エネルギー線硬化性化合物を含有する組成物(以下、活性エネルギー線硬化性組成物ともいう)等であってよい。活性エネルギー線硬化性組成物は、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化することができる。活性エネルギー線硬化性組成物は、例えば接着剤、インク、プライマー、ハードコート形成用材料、偏光膜形成用材料等として用いることができる。
【0028】
本発明の液体塗布装置によれば、長尺基材幅方向における端部に非塗布部分が形成されるため、液体106を塗布した長尺基材102を、引き続く貼合工程において更なる長尺基材と例えばニップロール等を用いて貼合し、積層体とした場合でも、塗布された液体が貼り合わせた長尺基材からはみ出しにくい傾向にある。したがって、本発明の液体塗布装置は、例えば積層体の製造に用いる接着剤の塗布に好適である。
【0029】
液体106は、粘度が例えば10mPa・s以上200mPa・s以下であってよく、好ましくは20mPa・s以上150mPa・s以下、より好ましくは30mPa・s以上120mPa・s以下である。液体106の粘度が10mPa・s以上200mPa・s以下である場合、塗布膜厚の調節が行い易い傾向にある。
【0030】
バックアップロール107は、矢印113のいずれの方向へも可動性を有しており、例えばバックアップロール107の位置を調節して所望の塗布膜厚を得ることができる。
【0031】
液体106の塗布膜厚は、例えば0.1μm以上10μm以下であってよく、好ましくは0.2μm以上5μm以下、より好ましくは0.5μm以上3μm以下である。
【0032】
バックアップロール107の幅は、長尺基材102の幅より広くすることができる。バックアップロール107の幅を長尺基材102の幅より広くする場合、長尺基材102に対してグラビアロール104の押付ける圧力が均等に加わる傾向にあり、塗布膜厚均一性や搬送安定性を向上させ易い傾向にある。バックアップロール107の幅は、例えば200mm以上2500mm以下であってよく、好ましくは300mm以上2200mm以下、より好ましくは500mm以上2000mm以下である。
【0033】
バックアップロール107の直径は、例えば50mm以上500mm以下であってよい。
【0034】
2以上の長尺基材離隔部材108が、長尺基材幅方向における両端部のそれぞれにおいて、長尺基材102とグラビアロール104との間に、搬送される長尺基材102の端部に接触するように設けられる。これにより、長尺基材102の端部がグラビアロールと接触しなくなり、長尺基材102の端部に非塗布部分を形成しながら長尺基材102に液体106を塗布することが可能となる。
【0035】
2以上の長尺基材離隔部材108は、長尺基材幅方向における両端部のそれぞれについて、長尺基材搬送方向において異なる位置に設けられている。図1では、長尺基材離隔部材108は、各端部について長尺基材搬送方向において異なる位置に2つ設けられている。2以上の長尺基材離隔部材108が長尺基材の搬送方向において異なる位置に設けられることにより、長尺基材離隔部材108が長尺基材の搬送方向において1つしか設けられない場合に比べ、液体塗布幅の安定性が向上し、蛇行搬送や長尺基材の損傷が抑制され易くなる。長尺基材離隔部材108は、長尺基材搬送方向において異なる位置に、3以上または4以上設けられてもよい。
【0036】
長尺基材離隔部材108は、長尺基材搬送方向においてグラビアロール104の回転軸を基準に例えば5mm以上50mm以下離れていてよく、好ましくは10mm以上40mm以下、より好ましくは15mm以上30mm以下離れていてよい。長尺基材離隔部材108が、長尺基材搬送方向においてグラビアロール104の回転軸を基準に5mm以上50mm以下離れている場合、長尺基材102の液体塗布幅の安定性が向上し易くなる傾向にある。
【0037】
長尺基材幅方向の一方の端部に設けられる長尺基材離隔部材108は、長尺基材搬送方向において設けられる別の長尺基材離隔部材108から例えば10mm以上100mm以下間隔を空けて設置することができ、好ましくは20mm以上80mm以下、より好ましくは30mm以上60mm以下間隔を空けて設置する。長尺基材離隔部材108を、長尺基材搬送方向において設けられる別の長尺基材離隔部材108から10mm以上100mm以下間隔を空けて設置する場合、長尺基材102の液体塗布幅の安定性が向上し易い傾向にある。長尺基材離隔部材108は好ましくは、長尺基材搬送方向において、グラビアロール104とバックアップロール107との間に設置される。もう一方の端部に設けられる長尺基材離隔部材108もまた同様にして長尺基材搬送方向に設置することができる。長尺基材102の両端部に設けられる長尺基材離隔部材108はそれぞれ、好ましくは搬送方向において同じ位置に設けられる。
【0038】
長尺基材離隔部材108は、長尺基材102の液体塗布幅の安定性が向上し易くなり、蛇行搬送や長尺基材の損傷、長尺基材の撓みが抑制され易くなる観点から好ましくは、長尺基材の搬送方向においてグラビアロールの回転軸を基準に、上流側と下流側のそれぞれに1以上設けられる。長尺基材離隔部材108を長尺基材搬送方向において3以上設置する場合、上流側に2つ、下流側に1つ設置してもよく、上流側に1つ、下流側に2つ設置してもよい。長尺基材離隔部材108を長尺基材搬送方向において4つ設置する場合、上流側に2つ、下流側に2つ設置してもよく、上流側に3つ、下流側に1つ設置してもよく、または上流側に1つ、下流側に3つ設置してもよい。
【0039】
長尺基材離隔部材108は、長尺基材幅方向において可動式である。長尺基材の種類や製品の仕様、通紙後の運転初期における蛇行状況等に応じて液体塗布幅の調節が必要となる場合がある。したがって、長尺基材離隔部材108が長尺基材幅方向において可動式である場合、塗布運転中でも液体塗布幅の調節が行い易くなる傾向にある。長尺基材離隔部材108は、長尺基材に対して垂直方向に可動式であってもよい。
【0040】
液体非塗布部分の幅は、例えば1mm以上100mm以下であってよく、好ましくは3mm以上80mm以下、より好ましくは5mm以上50mm以下である。液体非塗布部分の幅は、例えば液体106および液体106が塗布された長尺基材102の種類や用途、塗布後に行う処理の種類等に応じて変えることができる。
【0041】
長尺基材離隔部材108の形状は、長尺基材102と接触できる面を有する形状であれば特に限定されず、例えば角柱形(例えば直方体、立方体、三角柱、四角柱等)、角錐形(例えば三角錐、四角錐等)、半角錐形、角錐台形(例えば三角錐台、四角錐台等)、円筒形、半円筒形、円錐形、円錐台形、半円錐形等であってよい。長尺基材離隔部材108の形状が円柱形または円錐形である場合、長尺基材離隔部材108をフリーロールとすることもできる。長尺基材離隔部材108は、搬送方向から見て断面形状が楔形であることが好ましい。
【0042】
長尺基材離隔部材108は、例えば金属、プラスチック、紙等からできていてよく、好ましくは金属製である。金属の例としては、例えばステンレス、鉄、アルミ等が挙げられる。
【0043】
図2では、搬送方向から見て断面形状が楔形である長尺基材離隔部材108が設置されている。長尺基材離隔部材108は、長尺基材102の両端部において、長尺基材102の端部がグラビアロール104から離れるように長尺基材102と接触する長尺基材接触面201が傾斜するように設置されている。
【0044】
長尺基材102の端部をグラビアロール104から離すために、長尺基材離隔部材108は、長尺基材102と接触する長尺基材接触面201が長尺基材への液体塗布面202に対して傾斜して設置する。面201の長尺基材塗布面202に対する角度203(以下、傾斜角ともいう)は10度以下である。傾斜角203は、好ましくは0度以上8度以下であり、より好ましくは0.5度以上4度以下である。本発明によれば、接触角度が10度以下とすることにより、後述する長尺基材の撓み幅が小さくなり、液体106を安定的に塗工することが可能となり、塗工幅も広く確保し易くなるので生産性に優れ、かつ長尺基材102の搬送性も安定し易くなる傾向にある。また、上述の長尺基材幅方向の端部におけるウェーブカールを悪化させることなく長尺基材102を搬送することができる。
【0045】
図3は、長尺基材離隔部材108によって持ち上げられた長尺基材102の端部を概略的に示す。長尺基材102の端部が長尺基材離隔部材108によって持ち上げられることにより長尺基材幅方向に撓みが生じる。図3において、長尺基材102の撓み幅120は、長尺基材幅方向において長尺基材102が撓み始めた点から長尺基材離隔部材108の先端までの距離をいう。撓み幅120は、例えば9mm以下であってよく、好ましくは8mm以下であり、より好ましくは0mmである。
【0046】
長尺基材離隔部材108と長尺基材102とが接触する幅は、長尺基材搬送方向において例えば1mm以上20mm以下であってよく、好ましくは1.5mm以上15mm以下、より好ましくは2mm以上10mm以下である。長尺基材搬送方向における長尺基材離隔部材108と長尺基材102とが接触する幅が1mm以上20mm以下である場合、長尺基材および長尺基材離隔部材が損傷しにくくなる傾向にある。
【0047】
長尺基材離隔部材108と長尺基材102とが接触する幅は、長尺基材幅方向において例えば1mm以上100mm以下であってよく、好ましくは3mm以上80mm以下、より好ましく5mm以上50mm以下である。長尺基材搬送方向における長尺基材離隔部材108と長尺基材102とが接触する幅が1mm以上100mm以下である場合、搬送時の長尺基材102の端部のバタつきが抑制され、搬送位置の精密な調節が行い易くなり、搬送する長尺基材の種類が制限されにくくなる傾向にある。
【0048】
長尺基材102への液体塗布幅204は、例えば100mm以上2000mm以下であってよく、好ましくは200mm以上1800mm以下、より好ましくは400mm以上1500mm以下である。長尺基材102への液体塗布幅204が100mm以上2000mm以下である場合、非塗布部分の幅の制御が行い易い傾向にある。
【0049】
図4を参照しながら搬送方向から見て断面形状が楔形である長尺基材離隔部材について以下に説明する。長尺基材離隔部材108は、長尺基材搬送方向の異なった2つの位置において長尺基材102と面201とが接触するように、支持部材205により支持されながら設置されている。長尺基材離隔部材108は、支持部材205とは一体的に形成されていてよい。
【0050】
長尺基材離隔部材108は、長尺基材搬送方向における寸法206が例えば1mm以上20mm以下であってよく、好ましくは1.5mm以上15mm以下、より好ましくは2mm以上10mm以下である。長尺基材搬送方向における寸法206が1mm以上20mm以下である場合、長尺基材および長尺基材離隔部材が損傷しにくくなる傾向にあるとともに、長尺基材102とグラビアロール104との間隔が適度なものとなり、グラビアロールの押し当て量の微調整が行い易くなる傾向にあり、長尺基材離隔部材108が大きくなり過ぎないため設置個所の省スペース化が行い易くなる傾向にある。
【0051】
長尺基材離隔部材108は、長尺基材幅方向における寸法207が、例えば1mm以上500mm以下であってよく、好ましくは5mm以上400mm以下、より好ましくは10mm以上300mm以下である。長尺基材幅方向における寸法207が1mm以上500mm以下である場合、長尺基材102に液体非塗布部分を形成し易くなると共に、長尺基材102の搬送安定性に優れる傾向にある。
【0052】
長尺基材離隔部材108は、長尺基材接触面201のその対向面に対する傾斜角208が、例えば1度以上20度以下であってよく、好ましくは2度以上15度以下、より好ましくは3度以上10度以下である。傾斜角208が1度以上20度以下である場合、搬送される長尺基材の端部に接触しながら端部をグラビアロールから離し易くなると共に、長尺基材102の撓みが防止され、長尺基材102の搬送安定性が向上し易くなる。
【0053】
長尺基材離隔部材108の長尺基材接触面とその対向面との間の先端部寸法209は、特に制限はなく、例えば1mm以上20mm以下であってよい。
【0054】
長尺基材離隔部材108における長尺基材102と接触する面201には、長尺基材102の滑り性およびスクラッチ性を向上させる観点から例えば研磨処理、セラミックコーティングやフッ素樹脂コーティング等の表面処理を施してもよく、フッ素樹脂製テープ、超高分子量ポリエチレン製テープ等を貼付してもよい。長尺基材離隔部材108は、長尺基材接触面201以外の面、例えば長尺基材接触面201と隣接する面等や、長尺基材離隔部材108の表面全体にわたって上記処理が施されていたり、テープ等が添付されていたりしてもよい。
【0055】
長尺基材接触面201のシクロオレフィンポリマー(COP)基材に対する静摩擦係数μは、0.35以下であり、好ましくは0.32以下である。長尺基材接触面201のシクロオレフィンポリマー(COP)基材に対する静摩擦係数μが0.35以下である場合、長尺基材接触面201での長尺基材102の滑り性が向上し、長尺基材および長尺基材離隔部材の損傷が抑制され易くなる傾向にある。一方、長尺基材接触面201のシクロオレフィンポリマー(COP)基材に対する静摩擦係数μは、通常0以上であり、例えば0.001以上または0.005以上または0.01以上であってよい。シクロオレフィンポリマー(COP)基材に対する静摩擦係数μは、ポータブル摩擦計(新東科学株式会社製ミューズTYPE:94i-II)を用いて測定することができる。
【0056】
長尺基材接触面201の表面粗さの算術平均粗さRaは、0.22μm以下であり、好ましくは0.21μm以下、より好ましくは0.15μm以下、特に好ましくは0.1μm以下である。長尺基材接触面201の表面粗さの算術平均粗さRaが0.22μm以下である場合、長尺基材接触面201での長尺基材および長尺基材離隔部材の損傷が起こりにくくなる傾向にある。長尺基材接触面201の表面粗さの算術平均粗さRaは、通常0μm以上であり、例えば0.001μm以上または0.005μm以上または0.01μm以上であってよい。表面粗さの算術平均粗さRaは、表面粗さ計(株式会社東京精密製サーフコム130A、JIS2001規格)を用いて測定することができる。
【0057】
長尺基材接触面201の表面粗さの最大高さRzは、2.2μm以下であり、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.8μm以下、特に好ましくは1.6μm以下である。長尺基材接触面201の表面粗さの最大高さRzが2.2μm以下である場合、長尺基材接触面201での長尺基材および長尺基材離隔部材の損傷が起こりにくくなる傾向にある。長尺基材接触面201の表面粗さの最大高さRzは、通常0μm以上であり、例えば0.1μm以上または0.2μm以上または0.4μm以上であってよい。表面粗さの最大高さRzは、表面粗さ計(株式会社東京精密製サーフコム130A、JIS2001規格)を用いて測定することができる。
【0058】
(積層体の製造装置)
図5に液体塗布装置101を備えた積層体製造装置301を示す。積層体製造装置301は、長尺の樹脂フィルム302の巻出部303、長尺の樹脂フィルム304の巻出部305、バックアップロール107、長尺基材離隔部材108、グラビアロール104、液体供給循環手段105、ニップロール306、UV照射装置307、ガイドロール308を備える。樹脂フィルム302に、活性エネルギー線硬化性組成物を液体塗布装置101により塗布し、塗膜付長尺基材309とした後、樹脂フィルム304と共にニップロール306間を通過させ貼合した後、UV照射装置307により活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させ、積層体310が得られる。
【0059】
本発明の液体塗布装置によれば、長尺基材の端部に非塗布部分が形成されるため、液体を塗布した長尺基材を、引き続く貼合工程において更なる長尺基材と例えばニップロール等を用いて貼合した場合でも、塗布された液体が貼り合わせた長尺基材からはみ出しにくく、塗布幅のばらつきや蛇行搬送、長尺基材の損傷等が起こりにくいことから、積層体の製造装置のための液体塗布装置に好適である。
【0060】
(液体塗布方法)
本発明に係る別の一態様は、長尺基材端部に非塗布部分を形成しながら長尺基材に液体を塗布する方法(以下、塗布方法ともいう)であり、長尺基材を搬送する搬送工程と、長尺基材とグラビアロールとをバックアップロールにより接触させて、グラビアロールにより長尺基材の表面に液体を塗布する塗布工程とを含み、塗布工程において、長尺基材の両端部をそれぞれ、長尺基材搬送方向において異なる少なくとも2つの位置においてグラビアロールから離す、方法である。
【0061】
塗布方法における、長尺基材、液体、グラビアロール、バックアップロールは上述の液体塗布装置において例示したものがそれぞれ適用される。
【0062】
塗布工程において、長尺基材の両端部を、それぞれ長尺基材搬送方向における異なる2つの位置においてグラビアロールから離す方法は、上述の液体塗布装置において例示した長尺基材離隔部材を用いる方法であってよい。長尺基材離隔部材、設置位置、設置数等に関する例示は、上述の液体塗布装置において例示したものが適用される。
【0063】
実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【実施例
【0064】
[液体塗布幅安定性および搬送安定性]
塗布幅のばらつきの有無および搬送安定性を目視確認した。
【0065】
[長尺基材離隔部材1]
図4に示すSUS304製長尺基材離隔部材。
【0066】
[第1フィルム]
セルローストリアセテート(TAC)フィルム、厚み:80μm
【0067】
[第2フィルム]
セルローストリアセテート(TAC)フィルム、厚み:80μm
【0068】
[活性エネルギー線硬化性組成物1]
エポキシ樹脂系紫外線硬化性接着剤(粘度40mPa・s)
【0069】
[実施例1]
図6示す液体塗布装置101を用いた。液体塗布装置101の長尺基材102の幅方向両端部のそれぞれにおいて、長尺基材離隔部材108を、グラビアロール104とバックアップロール107との間に、グラビアロール104の回転軸から長尺基材搬送方向上流側に30mm離れた位置および長尺基材搬送方向下流側30mm離れた位置に設置した。長尺基材離隔部材108として用いた上記長尺基材離隔部材1長尺基材接触面の幅は、長尺基材搬送方向において6mm、長尺基材幅方向において15mm、長尺基材離隔部材1の長尺基材接触面と長尺基材の液体塗布面とがなす角度を7度とした。この場合、長尺基材の撓み幅は約7mmであった。
上記の通り長尺基材離隔部材1を配置した液体塗布装置を備える積層体製造装置において、長尺の第2フィルムを連続的に搬送するとともに、長尺の第1フィルムを連続的に搬送し、第1フィルム上に活性エネルギー線硬化性組成物1を、第1フィルムの幅方向において端部から22mmの領域には硬化性組成物層を形成させずに塗布厚約1.5μmでグラビアロールにより塗布した後、貼合ロール間に通した。その後、引き続き、紫外線を照射し、硬化性組成物層を硬化させて、第1フィルム/硬化層/第2フィルムからなる積層体を得た。
長尺基材への液体塗布幅のばらつきは確認されなかった。また、蛇行搬送、長尺基材のウェーブカールの悪化、および長尺基材の損傷は認められなかった。
【0070】
[実施例2]
長尺基材を静置した状態とし、離隔部材の長尺基材接触面と長尺基材の液体塗布幅とがなす角度を1度とした以外は、実施例1と同様に操作したところ、長尺基材の撓み幅は約5mmであった。長尺基材を搬送しても、撓み幅および接触幅は同じである。
【符号の説明】
【0071】
101 液体塗布装置、102 長尺基材、103 搬送手段、104 グラビアロール、105 液体供給循環手段、106 液体、107 バックアップロール、108 長尺基材離隔部材、109 ブレード、120 撓み幅、201 長尺基材接触面、202 長尺基材塗布面、203 傾斜角、204 長尺基材への液体塗布幅、205 支持部材、206 長尺基材搬送方向における寸法、207 長尺基材幅方向における寸法、208 傾斜角、209 先端部寸法、301 積層体製造装置、302 樹脂フィルム、303 巻出部、304 樹脂フィルム、305 巻出部、306 ニップロール、307 UV照射装置、308 ガイドロール、309 塗膜付長尺基材、310 積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6