(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】基板研磨方法、トップリングおよび基板研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20221013BHJP
B24B 37/10 20120101ALI20221013BHJP
B24B 37/32 20120101ALI20221013BHJP
B24B 37/005 20120101ALI20221013BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
B24B37/30 A
B24B37/30 E
B24B37/10
B24B37/32 A
B24B37/32 Z
B24B37/005 A
H01L21/304 621B
H01L21/304 622H
H01L21/304 622L
H01L21/304 622K
H01L21/304 622R
(21)【出願番号】P 2017048326
(22)【出願日】2017-03-14
【審査請求日】2019-10-16
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】P 2016050922
(32)【優先日】2016-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】磯野 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】安田 穂積
(72)【発明者】
【氏名】並木 計介
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 治
(72)【発明者】
【氏名】福島 誠
(72)【発明者】
【氏名】富樫 真吾
(72)【発明者】
【氏名】山木 暁
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-046756(JP,A)
【文献】特開2013-157541(JP,A)
【文献】特開2009-178800(JP,A)
【文献】特開2015-193070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0019582(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/30
B24B 37/10
B24B 37/32
B24B 37/005
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップリング本体と、前記トップリング本体の下方に設けられ、前記トップリング本体との間に圧力調整可能な複数の領域を形成するように設けられた弾性膜と、を有するトップリングと、
前記圧力調整可能な複数の領域のそれぞれに連通する流路を介して前記複数の領域のそれぞれの圧力を独立して制御する圧力制御手段と、を有する基板研磨装置を用いた基板研磨方法であって、
前記弾性膜の第1領域を、前記圧力制御手段が前記第1領域に連通する流路を介して真空引きすることによって減圧することにより、前記基板を前記第1領域で吸着して、基板研磨装置において前記吸着された基板の下方に位置するように設けられた研磨パッド上に搬送する搬送工程と、
前記基板を前記研磨パッドと接触させて前記基板を研磨する研磨工程であって、前記基板を研磨する時、前記弾性膜は加圧されて前記基板を前記研磨パッドに押し付けている、研磨工程と、
前記研磨工程の後に、前記弾性膜の、前記第1領域より広い第2領域で前記基板を吸着して前記研磨パッドから前記基板をリフトオフするリフトオフ工程と、を備える基板研磨方法。
【請求項2】
トップリング本体と、前記トップリング本体の下方に設けられ、前記トップリング本体との間に圧力調整可能な複数のエリアを形成するように設けられた弾性膜と、を有するトップリングと、
前記圧力調整可能な複数のエリアのそれぞれに連通する流路を介して前記複数のエリアのそれぞれの圧力を独立して制御する圧力制御手段と、を有する基板研磨装置を用いた基板研磨方法であって、
前記複数のエリアのうちの第1エリアを、前記圧力制御手段が前記第1エリアに連通する流路を介して真空引きすることによって減圧することにより、基板を前記弾性膜の下面で吸着して、基板研磨装置において前記吸着された基板の下方に位置するように設けられた研磨パッド上に搬送する搬送工程と、
前記基板を前記研磨パッドと接触させて前記基板を研磨する研磨工程であって、前記基板を研磨する時、前記弾性膜は加圧されて前記基板を前記研磨パッドに押し付けている、研磨工程と、
前記研磨工程の後に、前記圧力調整可能なエリアのうちの、前記第1エリアより広い第2エリアを減圧することにより、前記基板を前記弾性膜の下面で吸着して前記研磨パッドからリフトオフするリフトオフ工程と、を備える基板研磨方法。
【請求項3】
前記トップリング本体と、前記弾性膜との間に圧力調整可能な複数のエリアが形成されており、
前記第1エリアは、前記複数のエリアのうちの所定数のエリアを含み、
前記第2エリアは、前記複数のエリアのうちの前記所定数より多い数のエリアを含む、請求項2に記載の基板研磨方法。
【請求項4】
前記第2エリアは、前記第1エリアより、同心円状により広い、請求項3に記載の基板研磨方法。
【請求項5】
前記第1エリアは、円状または円環状のエリアである、請求項3に記載の基板研磨方法。
【請求項6】
前記研磨工程では、前記圧力調整可能なエリアの少なくとも一部を加圧する、請求項2乃至5のいずれかに記載の基板研磨方法。
【請求項7】
前記圧力調整可能なエリア内には、前記弾性膜を前記トップリング本体に保持する保持部材から前記弾性膜に向かって延びるサポート部が設けられ、
前記サポート部は、前記弾性膜が前記基板を保持する際に、前記弾性膜の鉛直方向の形状変化を抑える、請求項2乃至6のいずれかに記載の基板研磨方法。
【請求項8】
基板を保持するトップリングであって、
トップリング本体と、
前記トップリング本体の下方に設けられ、前記トップリング本体との間に複数のエリアを形成する弾性膜であって、前記複数のエリアのそれぞれの圧力を独立して調整可能である、弾性膜と、
前記弾性膜を前記トップリング本体に保持する保持部材と、
前記エリア内に設けられ、前記保持部材から前記弾性膜に向かって延びるサポート部であって、前記弾性膜が前記基板を保持する際に、前記弾性膜の鉛直方向の形状変化を抑えるサポート部と、を備えるトップリングと、
前記トップリングに保持された基板と接触して前記基板を研磨する研磨パッドと、
前記複数のエリアのそれぞれの圧力を独立して制御する圧力制御手段と、を備え、
前記圧力制御手段は、
前記基板を研磨する前の搬送時には、前記複数のエリアのうちの第1エリアを減圧して前記基板を前記弾性膜に吸着し、
前記基板を研磨した後に前記研磨パッドからリフトオフする際には、前記複数のエリアのうちの、前記第1エリアより広い第2エリアを減圧して前記基板を前記弾性膜に吸着し、
前記基板の研磨時には、
前記弾性膜は、前記基板の研磨すべき面とは反対側の面に接触して保持し、
前記基板は、前記研磨パッドに押し付けられ
、
前記弾性膜は加圧される、
基板研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を研磨する基板研磨方法、基板を保持するトップリングおよびそのようなトップリングを備える基板研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な基板研磨装置は、基板を保持するトップリングを用い、次のような手順で基板を研磨する。まず、トップリングが搬送装置から基板を受け取り、これを研磨パッド上に搬送する。次いで、基板を保持したトップリングが下降し、基板が研磨パッドに接触する。この状態でトップリングは基板を回転させ、研磨液を供給しながら基板を研磨する。研磨が終了すると、トップリングを上昇させることで、基板を研磨パッドの研磨面から引き離して持ち上げる、リフトオフと呼ばれる動作が行われる(例えば、特許文献1,2)。なお、トップリングは、その下面に設けられたメンブレンに基板を真空吸着することで、基板を保持したりリフトオフしたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5390807号公報
【文献】特開2009-178800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、基板を研磨パッド上に搬送する際も、基板をリフトオフする際も、同程度に真空吸着させることとしている。しかしながら、真空吸着力が強すぎると、基板を研磨パッド上に搬送する際に基板にストレスが加わって基板を傷めてしまうおそれがある。逆に、真空吸着力が弱すぎると、基板をリフトオフする際に基板が割れたり取りこぼしたりするおそれがある。基板と研磨パッドとの間には研磨液が存在し、研磨後の基板と研磨パッドとの間には表面張力が生じるためである。
【0005】
これに対し、特許文献2では、基板を研磨パッド上に搬送する時に比べ、リフトオフ時に真空度を高くすることが開示されている。しかしながら、メンブレン全体の真空度を高くするわけではないので、必ずしも確実にリフトオフできるとは限らない。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、適切に基板を扱うことができる基板研磨方法および基板研磨装置、ならびに、そのような基板研磨装置用のトップリングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、基板を弾性膜の第1領域で吸着して研磨パッド上に搬送する搬送工程と、前記基板を前記研磨パッドと接触させて前記基板を研磨する研磨工程と、前記弾性膜の、前記第1領域より広い第2領域で前記基板を吸着して前記研磨パッドから前記基板をリフトオフするリフトオフ工程と、を備える基板研磨方法が提供される。
基板を研磨パッドに搬送する際には狭い領域で基板を吸着するため、基板に与えるストレスを軽減できる。また、基板をリフトオフする際には広い領域で基板を吸着するため、確実に基板をリフトオフできる。
【0008】
本発明の別の態様によれば、トップリング本体と弾性膜との間に形成された圧力調整可能なエリアのうちの第1エリアを減圧することにより、基板を前記弾性膜の下面で吸着して研磨パッド上に搬送する搬送工程と、前記基板を前記研磨パッドと接触させて前記基板を研磨する研磨工程と、前記圧力調整可能なエリアのうちの、前記第1エリアより広い第2エリアを減圧することにより、前記基板を前記弾性膜の下面で吸着して前記研磨パッドからリフトオフするリフトオフ工程と、を備える基板研磨方法が提供される。
基板を研磨パッドに搬送する際には狭いエリアを減圧して基板を吸着するため、基板に与えるストレスを軽減できる。また、基板をリフトオフする際には広いエリアを減圧して吸着するため、確実に基板をリフトオフできる。
【0009】
前記トップリング本体と、前記弾性膜との間に圧力調整可能な複数のエリアが形成されており、前記第1エリアは、前記複数のエリアのうちの所定数のエリアを含み、前記第2エリアは、前記複数のエリアのうちの前記所定数より多い数のエリアを含むようにしてもよい。
これにより、第2エリアを第1エリアより広くすることができる。
【0010】
前記研磨工程では、前記圧力調整可能なエリアの少なくとも一部を加圧してもよい。
この場合、研磨前に減圧されているエリアは狭いため、研磨時に迅速に所望の圧力まで加圧できる。
【0011】
前記圧力調整可能なエリア内には、前記弾性膜に向かって延びるサポート部が設けられるのが望ましい。
サポート部を設けることで、リフトオフ時に広いエリアで吸着しても弾性膜の形状変化が小さくなり、基板に与えるストレスを軽減できる。
【0012】
本発明の一態様によれば、基板を保持するトップリングであって、トップリング本体と、前記トップリング本体の下方に設けられ、前記トップリング本体との間に圧力調整可能なエリアを形成する弾性膜と、前記エリア内に設けられ、前記弾性膜に向かって延びるサポート部と、を備えるトップリングが提供される。
サポート部を設けることで、リフトオフ時に広いエリアで吸着しても弾性膜の形状変化が小さくなり、基板に与えるストレスを軽減できる。
【0013】
前記弾性膜を前記トップリングに保持する保持部材を備え、前記サポート部は前記保持部材から延びた突起であるのが望ましい。
サポート部を突起形状とすることで、弾性膜の伸びが阻害されない。
【0014】
前記弾性膜の下面に基板が吸着され、前記サポート部は、前記吸着される基板のエッジに相当する部分に設けられるのが望ましい。
エッジに相当する部分にサポート部を設けることで、特に基板の変形を抑えることができる。
【0015】
前記弾性膜の下面に基板が吸着され、前記サポート部は、前記基板を吸着する際に、前記弾性膜の鉛直方向の形状変化を抑制するのが望ましい。
これにより基板に与えるストレスを軽減できる。
【0016】
トップリングは、前記トップリング本体の下方、かつ、前記弾性膜の周囲に設けられたリテーナリングを備えてもよい。
そして、前記リテーナリングは、内側リングと、その外側に設けられた外側リングと、を有してもよい。
【0017】
本発明の別の態様によれば、上記トップリングと、前記トップリングに保持された基板と接触して前記基板を研磨する研磨パッドと、前記圧力調整可能なエリアの圧力を制御する圧力制御手段と、を備える基板研磨装置が提供される。
【0018】
前記圧力制御手段は、前記基板を研磨する前の搬送時には、前記圧力調整可能なエリアのうちの第1エリアを減圧し、前記基板を研磨した後に前記研磨パッドからリフトオフする際には、前記圧力調整可能なエリアのうちの、前記第1エリアより広い第2エリアを減圧するのが望ましい。
【0019】
研磨前搬送時には狭いエリアを減圧して基板を吸着するため、基板に与えるストレスを軽減できる。また、基板をリフトオフする際には広いエリアを減圧して吸着するため、確実に基板をリフトオフできる。
【発明の効果】
【0020】
適切に基板を扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】トップリング1の構造を模式的に示す断面図。
【
図5】基板研磨装置300による基板研磨工程を説明するフローチャート。
【
図6】エリア131~135の圧力変化を模式的に示す図。
【
図7】搬送機構600bからトップリング1への基板受け渡しを詳しく説明する図。
【
図8】搬送機構600bからトップリング1への基板受け渡しを詳しく説明する図。
【
図9】基板の吸着範囲を変えて研磨レートを測定した結果を示すグラフ。
【
図10】基板Wの吸着範囲を変えてリフトオフした場合の、エリアの流量およびメンブレン13の形状変化を模式的に示す図。
【
図11】吸着範囲を広くした場合のリフトオフ時の基板の変形量を測定したグラフ。
【
図14】サポート部の有無によるリフトオフ時の基板の変形量を測定したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、基板処理装置の概略上面図である。本基板処理装置は、直径300mmあるいは450mmの半導体ウエハ、フラットパネル、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)などのイメージセンサ、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)における磁性膜の製造工程などにおいて、種
々の基板を処理するものである。
【0024】
基板処理装置は、略矩形状のハウジング100と、多数の基板をストックする基板カセットが載置されるロードポート200と、1または複数(
図1に示す態様では4つ)の基板研磨装置300と、1または複数(
図1に示す態様では2つ)の基板洗浄装置400と、基板乾燥装置500と、搬送機構600a~600dと、制御部700とを備えている。
【0025】
ロードポート200は、ハウジング100に隣接して配置されている。ロードポート200には、オープンカセット、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、又
はFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載することができる。SMIFポッド、
FOUPは、内部に基板カセットを収納し、隔壁で覆うことにより、外部空間とは独立した環境を保つことができる密閉容器である。
【0026】
基板を研磨する基板研磨装置300、研磨後の基板を洗浄する基板洗浄装置400、洗浄後の基板を乾燥させる基板乾燥装置500は、ハウジング100内に収容されている。基板研磨装置300は、基板処理装置の長手方向に沿って配列され、基板洗浄装置400および基板乾燥装置500も基板処理装置の長手方向に沿って配列されている。
【0027】
ロードポート200、ロードポート200側に位置する基板研磨装置300および基板乾燥装置500に囲まれた領域には、搬送機構600aが配置されている。また、基板研磨装置300ならびに基板洗浄装置400および基板乾燥装置500と平行に、搬送機構600bが配置されている。
【0028】
搬送機構600aは、研磨前の基板をロードポート200から受け取って搬送機構600bに受け渡したり、基板乾燥装置500から取り出された乾燥後の基板を搬送機構600bから受け取ったりする。
【0029】
搬送機構600bは、例えばリニアトランスポータであり、搬送機構600aから受け取った研磨前の基板を基板研磨装置300に受け渡す。後述するように、基板研磨装置300は真空吸着により基板を受け取る。搬送機構600bは再び研磨後の基板を受け取り、基板洗浄装置400に受け渡す。
【0030】
さらに、2つの基板洗浄装置400間に、これら基板洗浄装置400間で基板の受け渡しを行う搬送機構600cが配置されている。また、基板洗浄装置400と基板乾燥装置500との間に、これら基板洗浄装置400と基板乾燥装置500間で基板の受け渡しを行う搬送機構600dが配置されている。
【0031】
制御部700は基板処理装置の各機器の動きを制御するものであり、ハウジング100の内部に配置されてもよいし、ハウジング100の外部に配置されてもよいし、基板研磨装置300、基板洗浄装置400および基板乾燥装置500のそれぞれに設けられてもよい。
【0032】
図2および
図3は、それぞれ基板研磨装置300の概略斜視図および概略断面図である。基板研磨装置300は、トップリング1と、下部にトップリング1が連結されたトップリングシャフト2と、研磨パッド3aを有する研磨テーブル3と、研磨液を研磨テーブル3上に供給するノズル4と、トップリングヘッド5と、支持軸6と、圧力制御手段7とを有する。
【0033】
トップリング1は基板Wを保持する。
図3に示すように、トップリング1は、トップリング本体11と、円環状のリテーナリング12と、トップリング本体11の下方かつリテーナリング12の内側に設けられた可撓性のメンブレン13(弾性膜)と、トップリング本体11とリテーナリング12との間に設けられたエアバッグ14とから構成される。
【0034】
エアバッグ14が設けられることで、リテーナリング12はトップリング本体11に対して鉛直方向に相対移動できる。また、圧力制御手段7がトップリング本体11とメンブレン13と間の空間を減圧することで、基板Wの上面がトップリング1(より詳しくは、メンブレン13の下面)に保持される。保持された基板Wの周縁はリテーナリング12に囲まれることとなり、研磨中に基板Wがトップリング1から飛び出さないようになっている。
【0035】
なお、リテーナリング12は1つの部材であってもよいし、内側リングおよびその外側に設けられた外側リングからなる2重リング構成であってもよい。後者の場合、外側リングをトップリング本体11に固定し、内側リングとトップリング本体11との間にエアバッグ14を設けてもよい。
【0036】
トップリングシャフト2の下端はトップリング1の上面中央に連結されている。不図示の昇降機構がトップリングシャフト2を昇降させることで、トップリング1に保持された基板Wの下面が研磨パッド3aに接触したり離れたりする。また、不図示のモータがトップリングシャフト2を回転させることでトップリング1が回転し、これによって保持された基板Wも回転する。
【0037】
研磨テーブル3の上面には研磨パッド3aが設けられる。研磨テーブル3の下面は回転軸に接続されており、研磨テーブル3は回転可能となっている。研磨液がノズル4から供給され、研磨パッド3aに基板Wの下面が接触した状態で基板Wおよび研磨テーブル3が回転することで、基板Wが研磨される。
【0038】
トップリングヘッド5は、一端にトップリングシャフト2が連結され、他端に支持軸6が連結される。不図示のモータが支持軸6を回転させることでトップリングヘッド5が揺動し、トップリング1が研磨パッド3a上と、基板受け渡し位置(不図示)との間を行き来する。
【0039】
圧力制御手段7は、トップリング本体11とメンブレン13との間に流体を供給したり、真空引きしたり、大気解放したりして、トップリング本体11とメンブレン13との間に形成される空間の圧力を調整する。
【0040】
図4は、トップリング1の構造を模式的に示す断面図である。メンブレン13には、トップリング本体11に向かって上方に延びる周壁13a~13hが形成されている。これら周壁13a~13hにより、メンブレン13の上面とトップリング本体11の下面との間に、周壁13a~13hによって区切られたエリア131~138が形成される。エリア131はトップリング1のほぼ中央に位置しており、円状である。エリア132はエリア131の外側に位置しており、円環状である。以下、エリア133~138も同様に円環状である。
【0041】
トップリング本体11を貫通してエリア131~138にそれぞれ連通する流路141~148が形成されている。また、リテーナリング12の直上には弾性膜からなるエアバッグ14が設けられており、エアバッグ14に連通する流路149が同様に形成されている。流路141~149上に圧力センサや流量センサを設けてもよい。
流路141~149は圧力制御手段7に接続されており、エリア131~138およびエアバッグ14内の圧力を調整可能となっている。以下、圧力制御手段7の構成例を説明する。
【0042】
圧力制御手段7は、制御装置71と、制御装置71によって制御される開閉バルブV1~V9および圧力レギュレータR1~R9と、流体調整部72とを有する。流路141は開閉バルブV1および圧力レギュレータR1を介して流体調整部72に接続されている。流路142~149も同様である。流体調整部72は流体を供給したり真空引きしたりする。
【0043】
例えばエリア131の圧力を調整する場合、制御装置71がバルブV1を開き、圧力レギュレータR1を調整する。これにより流体調整部72から流体がエリア131に供給されてエリア131が加圧されたり、流体調整部72がエリア131を真空引きして減圧されたりする。
【0044】
図5は、基板研磨装置300による基板研磨工程を説明するフローチャートである。また、
図6は、エリア131~135の圧力変化を模式的に示す図であり、実線がエリア134の圧力変化であり、破線がエリア131~133,135の圧力変化である。
【0045】
まず、トップリングヘッド5が揺動することでトップリング1が基板受け渡し位置に移動し、圧力制御手段7がエリア134を減圧することによって搬送機構600bからトップリング1に基板Wが受け渡される。(ステップS1)。
【0046】
図7および
図8は、搬送機構600bからトップリング1への基板受け渡しを詳しく説明する図である。
図7は搬送機構600bおよびトップリング1を側方から見た図であり、
図8はこれらを上方から見た図である。
【0047】
図7(a)に示すように、搬送機構600bのハンド601上に基板Wが載置されている。また、基板Wの受け渡しには、リテーナリングステーション800が用いられる。リテーナリングステーション800は、トップリング1のリテーナリング12を押し上げる押し上げピン801を有する。
【0048】
図8に示すように、ハンド601は基板Wの下面の外周側の一部を支持する。そして、押し上げピン801とハンド601とが互いに接触しないように配置されている。
【0049】
図7(a)に示す状態で、トップリング1が下降するとともに、搬送機構600bが上昇する。トップリング1の下降により、押し上げピン801がリテーナリング12を押し上げ、基板Wがメンブレン13に接近する。さらに搬送機構600bが上昇すると、基板Wの上面がメンブレン13の下面に接触する(
図7(b))。
【0050】
この状態で、トップリング1のメンブレン13が基板Wを吸着する。具体的には、本実施形態における圧力制御手段7は、エリア131~138のうちのエリア134を減圧(例えば、-50kPa、
図6の時刻t0~t1)し、これによって基板Wはメンブレン13に吸着する。このとき、圧力制御手段7は他のエリア131~133,135~138を減圧しない。したがって、基板Wは、メンブレン13の下面におけるエリア134下方の狭い領域(すなわち、円環状の領域)によって吸着、保持されるが、その他の位置には吸着されない。つまり、基板Wの吸着範囲が狭い。
【0051】
このようにして基板Wがメンブレン13に吸着した後、搬送機構600bは下降する(
図7(c))。
【0052】
図5に戻り、エリア134が減圧された状態で、基板Wを保持したトップリングヘッド5が揺動することでトップリング1が研磨パッド3a上に移動する。これにより、基板Wが研磨パッド3aの上方に搬送される(
図5のステップS2、
図6の時刻t1~t2)。基板Wの吸着範囲が狭いため、すなわち、基板Wがメンブレン13の狭い領域で吸着されているため、研磨前搬送時に基板Wに加わるトレスを軽減できる。
【0053】
さらに、トップリングシャフト2が下降することで研磨パッド3a上面に基板Wの下面が接触する。この状態で、基板Wの下面が研磨パッド3aに押し付けられるよう、圧力制御手段7はエリア131~138を加圧する(
図5のステップS3、
図6の時刻t2~t3)。このとき、予め減圧されているのはエリア134のみであるため、メンブレン13が研磨前搬送用の形状から研磨用の形状に変化するのに要する時間が短くてすみ、圧力制御手段7は迅速にエリア131~138を所望の圧力にまで加圧できる。
【0054】
その後、ノズル4から研磨パッド3a上に研磨液を供給しながらトップリング1および研磨テーブル3が回転することで、基板Wが研磨される(
図5のステップS4、
図6の時刻t3~t4)。
【0055】
研磨が完了すると、トップリング1のメンブレン13の下面に基板Wを吸着する。具体的には、本実施形態における圧力制御手段7は、エリア131~138のうちのエリア134のみならず、エリア131~133,135も減圧し(例えば、-50kPa、
図5のステップS5、
図6の時刻t4~t5)、これによって基板Wはメンブレン13に吸着する。したがって、基板Wはメンブレン13におけるエリア131~135下方の広い領域によって吸着される。つまり、基板Wの吸着範囲が広い。
このように、トップリング1は、搬送時には搬送機構600b上の基板Wを円環状の(相対的に狭い)エリア134で吸着するのに対し、研磨後には研磨パッド3a上の基板Wを同心円状により広いエリア131~135で吸着する。より詳しくは、トップリング1は、搬送時の円環状のエリア134に加え、研磨後にはエリア131の内側のエリア131~133および外側のエリア135で吸着する。
エリア131~135が減圧された状態でトップリングシャフト2が上昇することで、基板Wが研磨パッド3aからリフトオフされる(
図5のステップS6)。
【0056】
基板Wと研磨パッド3aとの間には研磨液などの液体が存在しており、基板Wと研磨パッド3aとの間に吸着力が生じている。トップリング1が基板Wを吸着する力が弱いと、基板Wをリフトオフできずにとりこぼしてしまうことがある。これに対し、本実施形態では、基板Wの吸着範囲が広いため、すなわち、基板Wがメンブレン13の広い領域で吸着されているため、基板Wと研磨パッド3aとの間の吸着力より、基板Wとメンブレン13との吸着力の方が強い。そのため、トップリング1は確実に基板Wをリフトオフできる。
【0057】
その後、エリア131~135が減圧された状態で、基板Wは基板受け渡し位置においてトップリング1から搬送機構600bに受け渡される(ステップS7)。
【0058】
以上説明したように、本実施形態では、研磨前搬送時に、基板Wの吸着範囲を狭くする。これにより、基板Wに対するストレスを軽減できるとともに、研磨時の研磨レートを安定化させることができる。
【0059】
図9は、基板の吸着範囲を変えて研磨レートを測定した結果を示すグラフである。四角印が本実施形態で説明したように研磨前搬送時(
図5のステップS2)における吸着範囲を狭くした(エリア134のみ)場合の結果であり、丸印が比較例として研磨前搬送時の吸着範囲を広くした(エリア131~135)場合の結果である。10枚ずつの基板を研磨して研磨レートを測定し、基板のそれぞれを横軸としている。また、縦軸はエリア133下方における基板の研磨レートの測定結果(単位は任意)である。同図の比較例では、吸着範囲を広くすると一部の基板の研磨レートが他の基板より大幅に高くなっており研磨レートは安定していない。これに対し、本実施形態では、吸着範囲を狭くすることで基板の研磨レートが安定している。
【0060】
また、本実施形態では、リフトオフ時に、基板Wの吸着範囲を広くする。これにより、トップリング1の保持力が高くなって基板Wを確実にリフトオフできるとともに、メンブレン13の形状変化を抑えることができる。
【0061】
図10は、基板Wの吸着範囲を変えてリフトオフした場合の、エリアの流量およびメンブレン13の形状変化を模式的に示す図である。同図上段はリフトオフ時の吸着範囲を狭くした(エリア134のみ)場合の比較例であり、同図下段はリフトオフ時の吸着範囲を広くした(エリア131~135)場合の本実施形態である。
【0062】
比較例において、エリア134は吸着されているが、他のエリア131~133,135~138は吸着されておらず、フリー状態である。時刻t1においてトップリング1が上昇を開始した時点では、基板Wが研磨パッド3aに引っ張られ、メンブレン13が伸びてエリア131~138の容積が大きくなる。その結果、エリア131~138にガスが流れ込み、流量が正となる。
【0063】
その後さらにトップリング1が上昇した時刻t2において、メンブレン13の張力によって基板Wが研磨パッド3aから離れ、メンブレン13はもとの状態に戻ってエリア131~138の容積が小さくなる。そのため、一時的に流量が負となり、その後、流量は安定して0になる。
【0064】
このように、リフトオフ時の吸着範囲が狭い場合、メンブレン13の形状変化があり、エリア131~138の流量が不安定である。
【0065】
一方、本実施形態において、エリア131~135が吸着されている。時刻t1においてトップリング1が上昇を開始した時点で、吸着範囲が広いため、基板Wが研磨パッド3aに引っ張られる影響は小さく、すぐに基板Wは研磨パッド3aから離れる。そのため、メンブレンの形状変化はほとんどなく、エリア131~138の流量は安定して0である。
【0066】
このように、第1の実施形態では、研磨前搬送時は基板Wの吸着範囲を狭くし、研磨後搬送時は基板Wの吸着範囲を広くする。これにより、基板Wに与えるストレスを軽減でき、研磨レートが安定し、かつ、確実にリフトオフできる。よって、基板Wを受け取ってからリフトオフに至るまで、基板を適切に扱うことができ、基板割れなどの不良、基板落下・取りこぼしなどの搬送エラーを抑制でき、歩留まりや生産性が向上する。
【0067】
なお、本実施形態では、研磨前搬送時にはエリア134のみを減圧し、研磨後搬送時にはエリア131~135を減圧することとしたが、これに限られるわけではなく、研磨前搬送時より研磨後搬送時の吸着範囲を広くすればよい。例えば、研磨前搬送時には、円環状の領域ではなく、円状のエリアのみを減圧して基板Wを吸着してもよい。具体的には、研磨前搬送時に、エリア131のみを減圧してもよいし、エリア131,132を減圧してもよいし、エリア131~133を減圧してもよい。そして、研磨後搬送時には、研磨前搬送時より広い範囲の領域、例えば研磨前搬送時に減圧したエリアと、その内側および/または外側のエリアとを減圧すればよい。
【0068】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態は、リフトオフ時に吸着範囲を広くするものであった。しかしながら、場合によっては、吸着範囲を広くすることで基板が変形し、基板にストレスを与えてしまうこともあり得る。
【0069】
図11は、吸着範囲を広くした場合のリフトオフ時の基板の変形量を測定したグラフである。同図は300mm基板を測定したものであり、横軸は基板上の位置、縦軸は変形量である(ただし、研磨パッド3a側つまり下向きを正としている)。図示のように、基板の外周で大きく変形している。また、基板の中心から約100mmの位置から外側で変形が生じており、この位置にストレスがかかっている。
【0070】
そこで、以下に説明する第2の実施形態では、トップリング本体11とメンブレン13との間にサポート部を設け、メンブレン13の変形を抑えることによって、基板の変形を抑えるものである。
【0071】
図12は、メンブレン13を示す断面図である。メンブレン13は、基板Wに接触する円形の当接部130と、当接部130に直接または間接に接続される8つの周壁13a~13hを有している。当接部130は基板Wの裏面、すなわち研磨すべき表面とは反対側の面に接触して保持する。また、当接部130は、研磨時には基板Wを研磨パッド3aに対して押し付ける。周壁13a~13hは、同心状に配置された環状の周壁である。
【0072】
周壁13a~13hの上端は保持リング22,24,26,27とトップリング本体11の下面との間に挟持され、トップリング本体11に取り付けられている。これら保持リング22,24,26,27は保持手段(図示せず)によってトップリング本体11に着脱可能に固定されている。したがって、保持手段を解除すると、保持リング22,24,26,27がトップリング本体11から離れ、これによってメンブレン13をトップリング本体11から取り外すことができる。保持手段としてはねじなどを用いることが出来る。
【0073】
周壁13hは、最も外側の周壁であり、周壁13gは周壁13hの径方向内側に配置されている。さらに、周壁13fは周壁13gの径方向内側に配置されている。以下、周壁13hを第1エッジ周壁、周壁13gを第2エッジ周壁、周壁13fを第3エッジ周壁と呼ぶ。
【0074】
図13は、メンブレン13の一部を示す拡大断面図である。基板Wのエッジ部の狭い範囲での研磨レートを調整可能とするために、メンブレン13は
図13に示されるような形状を採用している。以下、メンブレン13について詳細に説明する。第1エッジ周壁13hは、当接部130の周端部から上方に延び、第2エッジ周壁13gは第1エッジ周壁13hに接続されている。
【0075】
第2エッジ周壁13gは第1エッジ周壁13hの内周面1010に接続された外側水平部1110を有している。第1エッジ周壁13hの内周面1010は、当接部130に対して垂直に延びる上側内周面1010aおよび下側内周面1010bを有している。上側内周面1010aは第2エッジ周壁13gの水平部1110から上方に延び、下側内周面1010bは第2エッジ周壁13gの水平部1110から下方に延びている。言い換えれば、当接部130に対して垂直に延びる内周面1010を分割する位置に第2エッジ周壁13gの外側水平部1110が接続されている。下側内周面1010bは当接部130の終端部に接続されている。下側内周面1010bの外側に位置する外周面1020も、当接部130に対して垂直に延びている。上側内周面1010aおよび下側内周面1010bは、同一面内にある。この「同一面」とは、当接部130に垂直な想像面である。つまり、上側内周面1010aの径方向位置と下側内周面1010bの径方向位置は同じである。
【0076】
第1エッジ周壁13hは、当接部130の上下動を許容する折り曲げ部1030を有している。この折り曲げ部1030は、上側内周面1010aに接続されている。折り曲げ部1030は、当接部130と垂直な方向(すなわち、鉛直方向)に伸縮自在に構成されたベローズ構造を有している。したがって、トップリング本体11と研磨パッド3aとの距離が変化しても、当接部130の周端部と基板Wとの接触を維持することができる。第1エッジ周壁13hは、折り曲げ部1030の上端から径方向内側に延びるリム部1040を有している。リム部1040は、
図12に示す保持リング27によってトップリング本体11の下面に固定される。
【0077】
第2エッジ周壁13gは、第1エッジ周壁13hの内周面1010から水平に延びる外側水平部1110を有している。さらに、第2エッジ周壁13gは、外側水平部1110に接続された傾斜部1120と、傾斜部1120に接続された内側水平部1130と、内側水平部1130に接続された鉛直部1140と、鉛直部1140に接続されたリム部1150とを有している。傾斜部1120は、外側水平部1110から径方向内側に延びつつ上方に傾斜している。リム部1150は、鉛直部1140から径方向外側に延びており、
図12に示す保持リング27によってトップリング本体11の下面に固定される。第1エッジ周壁13hおよび第2エッジ周壁13gが保持リング27によってトップリング本体11の下面に取り付けられると、第1エッジ周壁13hと第2エッジ周壁13gとの間にエリア138が形成される。
【0078】
第3エッジ周壁13fは、第2エッジ周壁13gの径方向内側に配置されている。第3エッジ周壁13fは、当接部130の上面に接続された傾斜部1210と、傾斜部1210に接続された水平部1220と、水平部1220に接続された鉛直部1230と、鉛直部1230に接続されたリム部1240とを有している。傾斜部1210は、当接部130の上面から径方向内側に延びつつ上方に傾斜している。リム部1240は、鉛直部1230から径方向内側に延びており、
図12に示す保持リング26によってトップリング本体11の下面に固定される。第2エッジ周壁13gおよび第3エッジ周壁13fが保持リング27,26によってそれぞれトップリング本体11の下面に取り付けられると、第2エッジ周壁13gと第3エッジ周壁13fとの間にエリア137が形成される。
【0079】
周壁13eは、第3エッジ周壁13fの径方向内側に配置されている。周壁13eは、当接部130の上面に接続された傾斜部1310と、傾斜部1310に接続された水平部1320と、水平部1320に接続された鉛直部1330と、鉛直部1330に接続されたリム部1340とを有している。傾斜部1310は、当接部130の上面から径方向内側に延びつつ上方に傾斜している。リム部1340は、鉛直部1330から径方向外側に延びており、
図12に示す保持リング26によってトップリング本体11の下面に固定される。周壁13eおよび第3エッジ周壁13fが保持リング26によってトップリング本体11の下面に取り付けられると、周壁13eと第3エッジ周壁13fとの間にエリア136が形成される。
【0080】
図12に示す周壁13b,13dは、
図12に示す第3エッジ周壁13fと実質的に同じ構成を有しており、
図12に示す周壁13a,13cは、
図12に示す周壁13eと実質的に同じ構成を有しているので、それらの説明を省略する。
図12に示すように、周壁13a,13bのリム部は保持リング22によってトップリング本体11の下面に固定され、周壁13c,13dのリム部は保持リング24によってトップリング本体11の下面に固定される。なお、エリア131,133,135には、トップリング本体11から突出したリング21,23,25がそれぞれ形成されている。
そして、保持リング26の下方に形成されるエリア136は、保持リング22,24の下方にそれぞれ形成されるエリア132,134およびリング21,23,25下方の各エリア131,133,135より狭い。
【0081】
本実施形態におけるトップリング1は、エリア136内にあって、メンブレン13に向かって延びるサポート部161を有する。具体的には、サポート部161は、メンブレン13における周壁13eと周壁13fとの間を通って下方に延びており、より具体的には周壁13eの傾斜部1310(
図13)とほぼ平行に傾斜しているが、周壁13fの水平部1220の下方までは延びていない。また、サポート部161の下面はメンブレン13とほぼ平行である。サポート部161は保持リング26と一体の部材であって、保持リング26から延びた同心のリング状の突起であってもよい。
【0082】
また、トップリング1は、エリア134内にあって、メンブレン13とほぼ平行に延びるサポート部151を有してもよい。サポート部151は保持リング24と一体の部材であって、保持リング24から延びた同心のリング状の突起であってもよい。
【0083】
このように、保持リング22の下面と、保持リング24およびサポート部151の下面と、サポート部161の下面(さらにエリア131,133,135のトップリング本体11と一体となったそれぞれのリング21,23,25の下面)とができるだけ同一平面上にあるようにするのが望ましい。
【0084】
サポート部161,151が突起状であることでメンブレン13の鉛直方向および径方向の伸びを阻害しないが、エリアを減圧して基板を保持する際に、メンブレン13の鉛直方向の形状変化が抑えられる。これにより、研磨後搬送において基板を広い領域(例えば上述したエリア131~135)で吸着する場合でも、基板の変形を極力抑えて平坦かつ均一に基板を保持でき、基板に対するストレスを抑制できる。
【0085】
メンブレン13で基板を吸着する際、エリア136は基板のエッジ(基板の周縁から約20mm以内)が当接する部分に相当する。また、エリア136は内側のエリア131~135より狭い。通常、研磨プロファイルのエッジ制御性向上のため、このようなエリア136にサポート部を設けることは考えづらい。しかしながら、本実施形態では、あえて基板のエッジに相当するエリア136にサポート部を設けることで、基板の変形を抑えることができる。
【0086】
図14は、サポート部の有無によるリフトオフ時の基板の変形量を測定したグラフである。同図の実線はサポート部がある場合である。同図の破線はサポート部がない場合であり、
図11と同様である。図示のように、サポート部を設けないと基板の外周部において大きく変形するが、サポート部を設けることで基板Wの形状変化を半分未満に抑えることができている。
【0087】
このように、第2の実施形態では、エリア内にサポート部を設ける。そのため、広い範囲で基板を吸着する場合にもメンブレン13の形状変化が抑えられ、基板に対するストレスを軽減できる。
【0088】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0089】
1 トップリング
11 トップリング本体
12 リテーナリング
13 メンブレン
131~138 エリア
22,24,26,27 保持リング
151,161 サポート部
3a 研磨パッド
7 圧力制御手段
300 基板研磨装置